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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電子部品およびコイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20240409BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/00 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021163409
(22)【出願日】2021-10-04
(65)【公開番号】P2023054513
(43)【公開日】2023-04-14
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187584
【弁理士】
【氏名又は名称】村石 桂一
(72)【発明者】
【氏名】間木 祥文
(72)【発明者】
【氏名】比留川 敦夫
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-300769(JP,A)
【文献】特開2019-062100(JP,A)
【文献】特開2009-218353(JP,A)
【文献】特開2005-236161(JP,A)
【文献】特開2015-084360(JP,A)
【文献】特開2022-181019(JP,A)
【文献】特開2017-220524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00 -21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26
H01F 27/28 -27/29
H01F 27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 30/00 -38/12
H01F 38/16
H01F 38/42
H01G 4/00 - 4/224
H01G 4/255- 4/40
H01G 13/00 -17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装基板と対向する実装面と、引出配線が露出する露出面と、を備えた素体と、
前記実装面に設けられた第1電極と、
前記引出配線と電気的に接続して前記露出面に設けられた第2電極と、を備え、
前記第1電極と前記第2電極とが互いに離間しており、
前記第2電極の厚みは、前記第1電極の厚みよりも厚くなっており、
前記第1電極と前記第2電極との間に、絶縁部材が配置され、前記絶縁部材の厚みは、前記第1電極の厚みおよび前記第2電極の厚みよりも薄くなっている、電子部品。
【請求項2】
前記露出面および前記実装面によって構成される前記素体の角部は、R面取りされている、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第1電極および前記第2電極を被覆する、第3電極をさらに備えた、請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第3電極は、NiおよびSnを含むメッキ電極である、請求項3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記第1電極または前記第2電極は、AgまたはCuを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記第1電極と前記第2電極との間の前記素体の外面に沿う長さは、6μm以上66μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記絶縁部材は、前記露出面から前記実装面に亘って設けられている、請求項1~6のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項8】
前記絶縁部材は、ガラス材料を含んで成る、請求項1~7のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の電子部品において、前記素体は、コイル導体層を積層させて成る、コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品およびコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および2には、素体の主面から側面に亘って外部電極が形成された電子部品(コンデンサまたはインダクタ)であって、外部電極は、電極層とメッキ層とを含む電子分が開示されている。このような電子部品によれば、半田を介して外部電極と回路基板とを電気的に接続することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-137285号公報
【文献】特開2019-79844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および2に記載されたように、半田を介して外部電極と回路基板とを電気的に接続する場合、半田が冷えることによって半田の収縮が起こるため、外部電極に対して半田の収縮に起因する引張応力が生じる。そうすると、外部電極が素体から剥がれ、電子部品の信頼性が低下する虞があった。
【0005】
そこで、本開示の主たる目的は、信頼性の高い電子部品およびコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電子部品は、
実装面と、引出配線が露出する露出面と、を備えた素体と、
前記実装面に設けられた第1電極と、
前記引出配線と電気的に接続して前記露出面に設けられた第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極とが離間している。
【0007】
本開示のコイル部品は、上述の電子部品において、前記素体は、コイル導体層を積層させて成る。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、信頼性の高い電子部品およびコイル部品を提供することができる。具体的には、第1電極と第2電極とが離間しているため、半田の収縮に起因する引張応力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の電子部品の斜視図である。
図2図2は、本開示の電子部品の一態様であるコイル部品の断面図である。
図3図3は、本開示の電子部品の一態様であるコイル部品における素体を構成する各積層部材の平面図である。
図4図4は、図2の破線部分の拡大断面図である。
図5図5は、比較例の電子部品の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の電子部品を詳細に説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図示する内容は、本開示の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。
【0011】
-本開示の電子部品について-
本開示の電子部品は、素体Sおよび外部電極Eが形成されている(図1参照)。素体Sは、実装基板bと対向する実装面S1と、引出配線が露出する露出面S2と、を備えており、外部電極Eは、実装面に設けられた第1電極e1と、露出面に設けられた第2電極e2と、を備えている(一例として、図2参照)。そして、第1電極e1と第2電極e2とが互いに離間している。本明細書でいう「離間」とは、第1電極e1および第2電極e2が接触せずに、離れている状態をいう。
【0012】
このように、第1電極e1および第2電極e2が互いに離間した電子部品とすると、当該電子部品を実装基板bに半田hを介して電気的に接続した場合、半田の収縮に起因する引張応力を低減することができる。具体的な「離間」の態様は、後述する実施例で説明する。
【0013】
以下、本開示の電子部品の一例として、図2および図3に示すようなコイル部品を例示して具体的に説明する。なお、本開示の電子部品は、コイル部品に限られることなく、コンデンサ、バリスタ、アクチュエータ、サーミスタ、もしくは積層複合部品などの積層電子部品、又は、積層電子部品以外の電子部品としてもよい。
【0014】
本開示のコイル部品1は、一例として複数の積層部材sb1~sb9が積層された素体Sと、外部電極として作用する第1電極e1および第2電極e2と、を備えてよい。図示例では、9つの積層部材sb1~sb9を積層しているが(図3参照)、積層数はこの例に限定されるものではない。
【0015】
最外面の積層部材sb1,sb9は、後述するコイル導体層Mを被覆するものであり、絶縁層Iを備えてよい。絶縁層Iは、好ましくは磁性体、さらに好ましくは、焼結フェライトから構成されてよい。上記絶縁層Iは、主成分として、少なくともFe、Zn、CuおよびNiを含んでよい。一例として、Feは、Feに換算して40.0mol%以上49.5mol%以下、Znは、ZnOに換算して2mol%以上35mol%以下、Cuは、CuOに換算して6mol%以上13mol%以下、Niは、NiOに換算して10mol%以上45mol%以下としてよい。また、絶縁層Iは、さらにCo、Bi、SnまたはMn等の添加物または製造上不可避な不純物を含んでいてもよい。
【0016】
最外面の積層部材sb1,sb9よりも内側に配置される積層部材sb2~sb8は、上述した絶縁層Iと、コイル導体層Mおよびビア導体Vを備えてよい。
【0017】
コイル導体層Mを構成する材料は、特に限定されないが、例えば、Au、Ag、Cu、Pdおよび/またはNi等が挙げられる。好ましくはAgまたはCu、より好ましくはAgとしてよい。導電性材料は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。コイル導体層Mは、U字形状といった端部同士が接続されない形状(つまり、コイル導体層が閉じられていない形状)で構成され、コイル導体層Mは、絶縁層I上に形成されてよい。コイル導体層Mの厚みは、コイル部品に流れる定格電流によって定められるが、コイル導体層Mの厚みを厚くすることにより、コイル部品の抵抗値をより小さくできる。
【0018】
最外面の積層部材sb1,sb9と隣接する積層部材sb2,sb8のコイル導体層Mには、外部電極E(第2電極e2)と電気的に接続される引出配線として作用する引出部Mdが設けられてよい(図3参照)。引出部Mdを介してコイル導体層Mに電力が供給される。
【0019】
ビア導体Vは、製造上の観点から、コイル導体層Mと同じ材料を用いることが好ましいが、コイル導体層Mと異なる材料を用いてもよい。ビア導体Vを介して積層部材sb2~sb8のコイル導体層M各々が電気的に接続されてよい。本開示の積層部材sb2~sb8は、各々直列接続されてよく、積層数に応じて、所望のコイル特性を得ることができる。
【0020】
積層部材sb1~sb9を積層して形成された素体Sにおいて、必須の構成ではないが、露出面S2および実装面S1によって構成される素体Sの角部は、R面取りされていてよい。角部がR面取りされていると、後述する外部電極を形成する際、素体Sの角部に電極(第1電極または第2電極)が形成されていない領域を適切に形成することができる。この理由は、電子部品の製造方法の説明で詳述する。
【0021】
外部電極として作用する第1電極e1は、素体Sにおける実装基板bと対向する実装面S1に設けられている。第1電極e1は、AgまたはCuを含むことが好ましい。一例として、AgペーストまたはCuペーストに素体Sを浸漬することで容易に外部電極を形成することができる。なお、本開示の電子部品の外部電極の形成手法は、上述のペーストを用いたものに限定されず、例えば、スパッタ法や蒸着法等の電極形成手法を用いてもよい。また、第1電極e1の厚みは、5μm以上20μm以下程度であることが好ましい。
【0022】
外部電極として作用する第2電極e2は、素体Sにおける引出配線が露出する露出面S2に設けられている。第2電極e2は、第1電極e1と同じ金属材料から構成されてよく、異なる金属材料であってもよい。第2電極e2の厚みは、第1電極e1の厚みよりも厚く、10μm以上30μm以下であることが好ましい。このように、第2電極e2の厚みが第1電極e1よりも厚いため、引出配線との電気的接続を良好に行うことができる。
【0023】
第1電極e1および第2電極e2は、互いに離間して形成されている。したがって、当該電子部品を実装基板bに半田hを介して電気的に接続した場合、半田の収縮に起因する引張応力を低減することができる。
【0024】
外部電極における任意の構成として、第1電極e1および第2電極e2を被覆する第3電極e3をさらに備えてもよい。一例として、第3電極e3は、第1電極e1および第2電極e2を下地電極とするメッキ電極としてよく、具体的には、Ni層e3aおよびSn層e3bを含んでいてよい。Niは半田食われを防止する観点から、Snは半田との接着性の観点から用いてよい。
【0025】
-本開示の電子部品の付加的な構成について-
さらに、本開示の電子部品の好適な態様として、第1電極e1と第2電極e2との間に、絶縁部材cが配置されていてもよい。このような構成によれば、絶縁部材cによって第1電極e1と第2電極e2とを適切に離間させることができる。
【0026】
好適な絶縁部材の態様として、絶縁部材cは、素体Sの露出面S2から素体Sの実装面S1に亘って設けられていてよい。これにより、第1電極e1と第2電極e2との間の離間距離を長くすることができ、第1電極e1と第2電極e2との接触を低減することができる。
【0027】
好適な絶縁部材の態様として、絶縁部材cは、ガラス材料を含んでよい。このような材料を用いることにより、絶縁層Iを有する素体Sとの接着性がよいため、第1電極e1と第2電極e2との接触を低減することができる。
【0028】
好適な絶縁部材の厚みとして、絶縁部材cの厚みは、0.5μm以上3μm以下としてよい。つまり、絶縁部材cの厚みは、第1電極e1および第2電極e2よりも薄くてよい。このような絶縁部材cの厚みと第1電極e1および第2電極e2の厚みの関係より、絶縁部材cの体積は、第1電極e1および第2電極e2の合計体積よりも少ないことを理解できる。
【0029】
-本開示の電子部品の製造方法について-
次に、本開示の電子部品の製造方法について説明する。一例として、コイル部品の製造方法を説明するが、本開示の電子部品は、コイル部品に限られることなく、コンデンサ、バリスタ、アクチュエータ、サーミスタ、もしくは積層複合部品などの積層電子部品、又は、積層電子部品以外の電子部品としてもよい。コイル部品の製造方法は、素体作製工程、外部電極形成工程を備えている。
【0030】
-素体作製工程-
まず、原料としてFe、ZnO、CuOおよびNiOを上述した所定の組成になるように秤量する。当該原料を純水およびPSZ(部分安定化ジルコニア)ボールと共にボールミルに入れ、湿式で4時間以上8時間以下混合粉砕する。そして、水分を蒸発・乾燥させた後、700℃以上800℃以下の温度で2時間以上5時間以下仮焼することにより、仮焼物(仮焼粉)を作製する。
【0031】
作製した仮焼物をPSZメディアとともにボールミルに入れ、さらにポリビニルブチラール系の有機バインダ、エタノールまたはトルエン等の有機溶剤および可塑剤をいれて混合する。そして、ドクターブレード法等で膜厚が20μm以上30μm以下のシート状に成形加工し、これを矩形状に打ち抜いて、シート状の絶縁層I(例えば、図3参照)を作製する。
【0032】
作製したシート状の絶縁層Iに対し、所定箇所にレーザーを照射してスルーホールを形成する。そして、スルーホールに供給する導電性材料を準備する。導電性材料は、例えば、Ag粉末またはCu粉末、より好ましくはAg粉末である。所定量の導電性材料の粉末を秤量し、所定量の溶剤(オイゲノールなど)、樹脂(エチルセルロースなど)、および分散剤と、プラネタリーミキサー等で混錬した後、3本ロールミル等で分散することで、導電性ペーストを作製することができる。
【0033】
所定のコイル導体層Mの形状となるように、絶縁層Iに導電性ペーストを印刷するとともに、形成されたスルーホールに導電性ペーストを供給する。なお、導電性ペーストの形成手法は、印刷に限定されず、塗布形成等であってもよい。
【0034】
以上の手順で作製した積層部材sb1~sb9を所定の順番(例えば、図3参照)で積層し、熱圧着することにより積層体ブロックを作製する。積層体ブロックを個片化した後に、焼成炉で900℃以上920℃以下の温度で2時間以上4時間以下焼成を行う。その後、任意の工程として、焼成後の積層体を回転バレル機に入れて角部をR面取りする。以上のようにして、素体Sが作製される。
【0035】
-外部電極作製工程-
まず、原料としてAg粉末、ガラス材料、樹脂および溶剤を含有したAgペーストを準備する。ここで、ガラス材料の体積は、Ag粉末の体積よりも少ないことが好ましい。より好ましくは、ガラス材料の体積とAg粉末の体積の比率は、0.7以上0.75以下であるとよい。なお、本明細書でいう「ガラス材料の体積とAg粉末の体積の比率」は、ガラス材料の体積/Ag粉末の体積で算出される値を意図している。ガラス材料の体積とAg粉末の体積の比率を0.7以上0.75以下の範囲で調整することで、離間距離を調整することができる。なお、体積の比率が0.7に近いとガラス材料が少なく離間距離が小さくなり、0.75に近いとガラス材料が多く離間距離が大きくなる。
【0036】
準備したAgペーストに素体Sを浸漬すると、Agペーストは、素体Sの角部はペーストが薄く付着する一方、素体Sの露出面S2および実装面S1は、ペーストが厚く付着する。
【0037】
素体SにAgペーストを浸漬させた後、750℃以上850℃以下の温度で1分以上10分以下の時間で熱処理を行う。熱処理によって素体S角部のAgは、素体Sの上面、下面または露出面に流動して、第1電極e1および第2電極e2が形成される。一方でガラス材料は、角部に留まって絶縁部材cが形成される。素体Sの角部がR面取りされていると、R面に沿って好適にペースト内のAgを素体Sの上面、下面または露出面に流動させることができる。また、当該形成手法によれば、第1電極e1の厚みよりも第2電極e2の厚みを厚くすることができる。第2電極e2が厚く形成されるため、引出配線を適切に電気的に接続することができる。
【0038】
以上のようにして、素体Sに第1電極e1および第1電極e1から離間した第2電極e2、絶縁部材cを形成することができる。なお、上述の第1電極e1および第2電極e2の形成において、Agペーストを浸漬させる形成手法を説明したが、この例に限定されずに、例えば、スパッタ法や蒸着法等の電極形成手法を用いてもよい。また、絶縁部材cの形成について、ペーストにガラス材料を含有させたものを浸漬させて形成手法を説明したが、この例に限定されずに、第1電極e1および第2電極e2を形成前または形成後に、絶縁部材cを浸漬以外の形成法(例えば、スパッタ、CVD法など)を用いて形成してもよい。
【0039】
第1電極e1および第2電極e2を形成した後に、これらの電極を下地電極とするメッキ電極としての第3電極e3を形成してもよい。第3電極e3は、Ni層e3aおよびSn層e3bを含んでいてよい。Niは半田食われを防止する観点から、Snは半田との接着性の観点から用いてよい。
【0040】
以上により、本開示の電子部品の一例として、コイル部品を製造することができる。
【実施例
【0041】
本開示に係る「電子部品」に関して実証シミュレーションを行った。具体的には、図4に示すように、第1電極e1および第2電極e2が互いに離間した電子部品において、露出面S2に設けられた第2電極e2の実装面側端部a1にかかる応力を計算した。なお、第1電極e1および第2電極e2の離間距離として、6μm、18μm、30μm、36μm、42μm、54μm、66μmの7種類のサンプルに対し応力を計算した。なお、離間距離とは、第1電極e1と第2電極e2との間の素体Sの外面に沿う長さを意図し、図4において、離間距離とは、長さlとする。
【0042】
比較例として、図5に示すように、素体の外面に沿って電極e’が形成された電子部品において、電極の端部a2にかかる応力を計算した。
【0043】
応力計算は、ムラタソフトウェア株式会社製のFemet(R)を用いた。応力計算の結果を下記表に示す。なお、表中の低減率(%)は、比較例の電子部品の応力計算値に対する実施例の応力計算値[100%-{(応力計算値)/(比較例の応力計算値)}%]とした。
【0044】
【表1】
【0045】
[表1]によれば、第1電極e1および第2電極e2が互いに離間した電子部品は、比較例(図5)に対して、応力の計算値が低減される結果が得られた。特に、第1電極e1と第2電極e2との間の素体Sの外面に沿う長さが6μm以上66μm以下とした場合に、応力計算値の低減率が50%以上となり、応力低減効果が得られた。さらに、第1電極e1と第2電極e2との間の素体Sの外面に沿う長さが36μm以上66μm以下とした場合に、応力計算値の低減率が90%以上となり、さらなる応力低減効果が得られた。
【0046】
なお、上述の実施例の応力低減効果において、絶縁部材cを備えたコイル部品について実証シミュレーションを行ったが、絶縁部材を備えていないコイル部品も同程度の低減率となった。つまり、絶縁部材cは任意の構成としてよい。
【0047】
また、実際に作成した電子部品は、外部電極の材料として、Ag粉末(70wt%)およびガラス材料(12wt%)を用いた(この場合の、ガラス材料の体積とAg粉末の体積の比率は約0.72)。この体積比の場合、第1電極e1と第2電極e2との間の素体Sの外面に沿う長さが36μmとなった。
【0048】
また、ガラス材料の体積とAg粉末の体積の比率を0.7以上0.75以下の範囲で、0.75に近づけることで、第1電極e1と第2電極e2との間の素体Sの外面に沿う長さが長くなる電子部品を製造することができた。
【0049】
なお、今回開示した実施態様は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施態様のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本開示の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示の電子部品は、インダクタを例に説明したが、これに限られることなく、コンデンサ、バリスタ、アクチュエータ、サーミスタ、もしくは積層複合部品などの積層電子部品、又は、積層電子部品以外の電子部品などとして幅広く様々な用途に使用され得る。
【符号の説明】
【0051】
1 電子部品(コイル部品)
S 素体
S1 実装面
S2 露出面
M コイル導体層
sb1~sb9 積層部材
I 絶縁層
M コイル導体層
Md 引出部
V ビア導体
E 外部電極
e1 第1電極
e2 第2電極
e3 第3電極
e3a Ni層
e3b Sn層
c 絶縁部材
b 実装基板
h 半田
a1,a2 端部
図1
図2
図3
図4
図5