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特許7468513調理器用トッププレート及びディスプレイ付き調理器用トッププレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】調理器用トッププレート及びディスプレイ付き調理器用トッププレート
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/10 20060101AFI20240409BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20240409BHJP
   C03C 17/42 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
F24C15/10 B
H05B6/12 305
C03C17/42
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021516043
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 JP2020016658
(87)【国際公開番号】W WO2020218135
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2019081903
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 雄亮
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-215018(JP,A)
【文献】国際公開第2017/043640(WO,A1)
【文献】特開2014-234980(JP,A)
【文献】特開2008-267633(JP,A)
【文献】特開2011-208820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
F24C 15/10
C03C 17/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイからの情報を表示することができる表示領域と、可視光を遮光する非表示領域とを有する、調理器用トッププレートであって、
調理器具が載せられる調理面及び該調理面とは反対側の裏面を有する、ガラス基板と、
前記ガラス基板の裏面上に設けられている、誘電体多層膜と、
前記誘電体多層膜上において前記表示領域と重なる部分に設けられており、透明材料を含む、光透過層と、
前記誘電体多層膜上において前記非表示領域と重なる部分に設けられている、遮光層と、
を備え、
前記表示領域の反射率が20%~80%の範囲内にあり、
前記光透過層と前記遮光層との屈折率の差の絶対値が、0.1以下である、調理器用トッププレート。
【請求項2】
前記透明材料が、紫外線硬化樹脂である、請求項1に記載の調理器用トッププレート。
【請求項3】
前記光透過層が、粘着層を兼ねている、請求項1又は2に記載の調理器用トッププレート。
【請求項4】
前記遮光層が、樹脂と、着色顔料とを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の調理器用トッププレート。
【請求項5】
前記光透過層及び前記遮光層の厚みが、実質的に同一である、請求項1~4のいずれか1項に記載の調理器用トッププレート。
【請求項6】
前記誘電体多層膜が、相対的に屈折率が高い高屈折率膜と、相対的に屈折率が低い低屈折率膜とが交互に積層された積層膜である、請求項1~5のいずれか1項に記載の調理器用トッププレート。
【請求項7】
前記表示領域と前記非表示領域との反射率の差の絶対値が5%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の調理器用トッププレート。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の調理器用トッププレートと、
前記調理器用トッププレートを構成する前記光透過層上に、直接的または間接的に設けられている、ディスプレイと、
を備える、ディスプレイ付き調理器用トッププレート。
【請求項9】
前記ディスプレイのカバーガラスが、前記光透過層に直接貼り合わされている、請求項に記載のディスプレイ付き調理器用トッププレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器用トッププレート及びディスプレイ付き調理器用トッププレートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁調理器、ラジアントヒーター調理器、ガス調理器などの調理器のトッププレートには、電源や加熱状態等の各種情報を表示するため、LED(Light Emitting Diode)等を用いた発光サインが設けられている。また、調理器用トッププレートでは、調理器内部の構造を隠蔽するために、黒色のガラスを用いたり、透明ガラスに耐熱性樹脂層を設けたりしている。
【0003】
下記の特許文献1には、ガラス板と、ガラス板の上に設けられた無機顔料層と、無機顔料層の上に設けられた表示層とを備える、調理器用トッププレートが開示されている。上記表示層は、LED光等を透過させる透明樹脂部と、LED光等を遮光する耐熱性樹脂部とを有する。特許文献1では、このLED光等を透過させる透過部の形状を変えたり、透過部においてパターニングされた光を透過させたりすることにより、文字や数字、記号等を表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-215018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ディスプレイが内蔵された調理器に使用されるトッププレートの開発が行われている。しかしながら、ディスプレイからの情報を表示する表示領域には、遮光層が設けられないことから、ディスプレイなどの調理器内部の構造を隠蔽することができないという問題がある。また、ディスプレイの点灯時に表示領域での表示を明確に見えるようにしつつ、消灯時に調理器内部の構造を隠蔽しようとすると、消灯時に表示領域と非表示領域の境界が視認されることがあり、美観上好ましくないという問題が生じることがある。
【0006】
本発明の目的は、ディスプレイの点灯時には、表示領域での表示を明確に見えるようにすることができ、消灯時には、調理器内部の構造を隠蔽しつつ、表示領域と非表示領域との境界を見え難くすることができる、調理器用トッププレート及びディスプレイ付き調理器用トッププレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る調理器用トッププレートは、ディスプレイからの情報を表示することができる表示領域と、可視光を遮光する非表示領域とを有する、調理器用トッププレートであって、調理器具が載せられる調理面及び該調理面とは反対側の裏面を有する、ガラス基板と、前記ガラス基板の裏面上に設けられている、誘電体多層膜と、前記誘電体多層膜上において前記表示領域と重なる部分に設けられており、透明材料を含む、光透過層と、前記誘電体多層膜上において前記非表示領域と重なる部分に設けられている、遮光層と、を備え、前記表示領域の反射率が20%~80%の範囲内にあり、前記光透過層と前記遮光層との屈折率の差の絶対値が、0.1以下であることを特徴としている。
【0008】
本発明においては、前記透明材料が、紫外線硬化樹脂であることが好ましい。
【0009】
本発明においては、前記光透過層が、粘着層を兼ねていることが好ましい。
【0010】
本発明においては、前記遮光層が、樹脂と、着色顔料とを含むことが好ましい。
【0011】
本発明においては、前記光透過層及び前記遮光層の厚みが、実質的に同一であることが好ましい。
【0012】
本発明においては、前記誘電体多層膜が、相対的に屈折率が高い高屈折率膜と、相対的に屈折率が低い低屈折率膜とが交互に積層された積層膜であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る調理器用トッププレートは、ディスプレイからの情報を表示することができる表示領域と、可視光を遮光する非表示領域とを有する、調理器用トッププレートであって、調理器具が載せられる調理面及び該調理面とは反対側の裏面を有する、ガラス基板と、前記ガラス基板の裏面上に設けられている、誘電体多層膜と、前記誘電体多層膜上において前記表示領域と重なる部分に設けられており、透明材料を含む、光透過層と、前記誘電体多層膜上において前記非表示領域と重なる部分に設けられている、遮光層と、を備え、前記表示領域の反射率が20%~80%の範囲内にあり、前記表示領域と前記非表示領域との明度の差の絶対値が5以下であり、彩度の差の絶対値が1以下であることを特徴としている。
【0014】
本発明に係るディスプレイ付き調理器用トッププレートは、本発明に従って構成される調理器用トッププレートと、前記調理器用トッププレートを構成する前記光透過層上に、直接的または間接的に設けられている、ディスプレイと、を備えることを特徴としている。
【0015】
本発明においては、前記ディスプレイのカバーガラスが、前記光透過層に直接貼り合わされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ディスプレイの点灯時には、表示領域での表示を明確に見えるようにすることができ、消灯時には、調理器内部の構造を隠蔽しつつ、表示領域と非表示領域との境界を見え難くすることができる、調理器用トッププレート及びディスプレイ付き調理器用トッププレートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係る調理器用トッププレートの消灯時の効果を説明するための模式的断面図である。
図3図3は、本発明の第2の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係るディスプレイ付き調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
図5図5は、実施例1及び比較例1の調理器用トッププレートの反射スペクトルを示す図である。
図6図6は、実施例2及び比較例2の調理器用トッププレートの反射スペクトルを示す図である。
図7図7は、比較例の調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
図8図8は、実施例3及び比較例3の調理器用トッププレートの反射スペクトルを示す図である。
図9図9は、実施例4及び比較例4の調理器用トッププレートの反射スペクトルを示す図である。
図10図10は、実施例5及び比較例5の調理器用トッププレートの反射スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0019】
[調理器用トッププレート]
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。図1に示すように、調理器用トッププレート1(以下、「調理器用トッププレート1」を、単に「トッププレート1」とする)は、ガラス基板2を備える。ガラス基板2は、対向している調理面2a及び裏面2bを有する。調理面2aは、鍋やフライパンなどの調理器具が載せられる側の面である。裏面2bは、調理器の内部側においてディスプレイ32や加熱装置と対向する面である。従って、調理面2a及び裏面2bは、表裏の関係にある。
【0020】
ガラス基板2は、波長400nm~700nmにおける少なくとも一部の光を透過する。ガラス基板2は、有色透明であってもよいが、トッププレート1の美観性をより一層高める観点から、無色透明であることが好ましい。なお、本明細書において、「透明」であるとは、波長400nm~700nmにおける可視波長域の平均光透過率が70%以上であることをいう。
【0021】
トッププレート1では、加熱及び冷却が繰り返しなされる。そのため、ガラス基板2は、高い耐熱性及び低い熱膨張係数を有するものであることが好ましい。具体的には、ガラス基板2の軟化温度は、700℃以上であることが好ましく、750℃以上であることがより好ましい。また、ガラス基板2の30℃~750℃における平均線熱膨張係数は、-10×10-7/℃~+60×10-7/℃の範囲内であることが好ましく、-10×10-7/℃~+50×10-7/℃の範囲内であることがより好ましく、-10×10-7/℃~+40×10-7/℃の範囲内であることがさらに好ましい。従って、ガラス基板2は、ガラス転移温度が高く、低膨張なガラスや、低膨張の結晶化ガラスからなるものであることが好ましい。低膨張の結晶化ガラスの具体例としては、例えば、日本電気硝子社製の「N-0」が挙げられる。なお、ガラス基板2としては、ホウケイ酸ガラスなどを用いてもよい。
【0022】
ガラス基板2の厚みは、特に限定されない。ガラス基板2の厚みは、光透過率などに応じて適宜設定することができる。ガラス基板2の厚みは、例えば、2mm~8mm程度とすることができる。
【0023】
ガラス基板2の裏面2b上には、誘電体多層膜3が設けられている。誘電体多層膜3上には、光透過層6及び遮光層7が設けられている。本実施形態では、平面視において、光透過層6が設けられる領域が、表示領域Aとされている。また、平面視において遮光層7が設けられる領域が、非表示領域Bとされている。
【0024】
光透過層6及び遮光層7の下方には、液晶ディスプレイなどのディスプレイ32が設けられている。ディスプレイ32は、表示領域Aで情報を表示するために設けられる部材である。表示領域Aで表示する情報としては、特に限定されるものではなく、例えば、電源がオン状態であることや、加熱中であることなどのように調理器の状態を示す情報や、時間などの情報が挙げられる。
【0025】
ディスプレイ32からの光は、表示領域Aでは、光透過層6、誘電体多層膜3、及びガラス基板2を透過して外部に出射される。また、ディスプレイ32からの光は、非表示領域Bでは、遮光層7により遮光される。従って、表示領域Aにおいて、ディスプレイ32からの光を透過させることにより、文字や数字、記号等を表示することもできる。
【0026】
表示領域Aにおけるトッププレート1の反射率は、20%~80%である。本明細書における反射率は、トッププレート1の調理面2a側における波長400nm~700nmの反射率の平均値をいう。ディスプレイ32の点灯時に表示領域Aでの表示をより一層明確に見えるようにしつつ、消灯時に調理器内部の構造をより一層確実に隠蔽する観点から、表示領域Aにおけるトッププレート1の反射率は、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下である。
【0027】
誘電体多層膜3は、ディスプレイ32の点灯時には、表示領域Aでの表示を明確に見えるようにしつつ、ディスプレイ32の消灯時には、調理器内部の構造を隠蔽することができる半透過膜である。
【0028】
誘電体多層膜3は、ガラス基板2の裏面2b上において、相対的に屈折率が低い低屈折率膜4と、相対的に屈折率が高い高屈折率膜5とが、この順に交互に積層された積層膜である。本実施形態では、誘電体多層膜3の積層数は、6層である。また、本実施形態では、低屈折率膜4がSiOであり、高屈折率膜5がNbである。
【0029】
もっとも、誘電体多層膜3は、トッププレート1の反射率が上記範囲である限りにおいて、低屈折率膜4と高屈折率膜5とが、必ずしも交互に積層されていなくてもよい。一部の低屈折率膜4と高屈折率膜5とが交互に積層されていてもよい。また、本実施形態では、ガラス基板2の裏面2b上において、低屈折率膜4から順に、低屈折率膜4と高屈折率膜5とが交互に積層されているが、高屈折率膜5から順に、高屈折率膜5と低屈折率膜4とが交互に積層されていてもよい。
【0030】
低屈折率膜4の材料としては、例えば、本実施形態のような酸化ケイ素、あるいは酸化アルミニウムが挙げられる。
【0031】
高屈折率膜5の材料としては、例えば、本実施形態のような酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムが挙げられる。
【0032】
低屈折率膜4の厚みは、特に限定されないが、例えば、1nm以上、400nm以下とすることができる。また、高屈折率膜5の厚みは、特に限定されないが、例えば、1nm以上、300nm以下とすることができる。
【0033】
誘電体多層膜3における低屈折率膜4及び高屈折率膜5の積層数の総数は、特に限定されないが、例えば、4層以上、16層以下とすることができる。
【0034】
光透過層6は、誘電体多層膜3上に設けられている。より具体的には、光透過層6は、誘電体多層膜3上において、平面視で表示領域Aと重なる部分に設けられている。光透過層6は、有色透明であってもよいが、ディスプレイ32の点灯時における表示領域Aでの表示をより一層明確に見えるようにする観点から、無色透明であることが好ましい。なお、光透過層6は、波長400nm~700nmにおける可視波長域の光透過率が70%以上であることが好ましい。
【0035】
光透過層6は、透明材料を含む。透明材料とは、波長400nm~700nmにおける可視波長域の光透過率が70%以上となる材料である。本実施形態では、透明材料が紫外線硬化樹脂である。紫外線硬化樹脂は、例えば、アクリル樹脂や、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。なお、透明材料は、他の透明樹脂であってもよい。光透過層6は、例えば、紫外線硬化樹脂溶液を塗布したり、ゾルゲル溶液を塗布したりすることにより形成することができる。
【0036】
光透過層6は、粘着層を兼ねていてもよい。従って、光透過層6は、光学粘着シート(OCA)であってもよい。光透過層6が粘着層を兼ねている場合、ディスプレイ32を直接貼り合わせることができ、部品点数を少なくすることができる。
【0037】
また、光透過層6は、実質的に着色顔料を含んでいないことが好ましい。なお、実質的に着色顔料を含んでいないとは、光透過層6中に含まれている着色顔料の含有量が5質量%以下であることをいう。
【0038】
もっとも、光透過層6は、タルクやマイカなどの体質顔料をさらに含んでいてもよい。
【0039】
光透過層6の厚みは、特に限定されないが、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下である。光透過層6の厚みが、上記範囲内にある場合、ディスプレイ32の点灯時における表示領域Aでの表示をより一層明確に見えるようにすることができる。
【0040】
遮光層7は、誘電体多層膜3上に設けられている。より具体的には、遮光層7は、誘電体多層膜3上において、平面視で非表示領域Bと重なる部分に設けられている。本実施形態において、遮光層7は、黒色である。なお、遮光層7の色は、ディスプレイ32からの光(可視光)を遮光できる限りにおいて、特に限定されない。
【0041】
遮光層7は、例えば、樹脂により構成されていてもよいし、ガラスにより構成されていてもよい。もっとも、後述するように、ディスプレイ32の消灯時に表示領域Aと非表示領域Bとの境界をより一層見え難くする観点からは、樹脂により構成されていることが好ましい。
【0042】
遮光層7を構成する樹脂は、例えば、光透過層6で説明した適宜の樹脂を用いることができる。また、トッププレート1の耐熱性をより一層高める観点から、遮光層7を構成する樹脂は、耐熱樹脂であってもよい。耐熱樹脂としては、特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などを用いることができる。なかでも、シリコン原子に直接結合した官能基が、メチル基及びフェニル基のうち少なくとも一方であるシリコーン樹脂であることが好ましい。この場合、トッププレート1の耐熱性をさらに一層高めることができる。
【0043】
これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0044】
また、遮光層7は、調理器の内部構造の隠蔽性をより一層確実に高めるために設けられる塗膜であるので、有色の着色顔料を含んでいることが好ましい。有色の着色顔料は、調理器の内部構造の隠蔽性を考慮して、適宜選定することができる。
【0045】
着色顔料は、有色の無機物である限りにおいて特に限定されない。着色顔料としては、例えば、TiO粉末、ZrO粉末若しくはZrSiO粉末などの白色の顔料粉末、Coを含む青色の無機顔料粉末、Coを含む緑色の無機顔料粉末、Ti-Sb-Cr系若しくはTi-Ni系の黄色の無機顔料粉末、Co-Si系の赤色の無機顔料粉末、Feを含む茶色の無機顔料粉末、又はCuを含む黒色の無機顔料粉末などが挙げられる。
【0046】
Coを含む青色の無機顔料粉末の具体例としては、例えば、Co-Al系又はCo-Al-Ti系の無機顔料粉末が挙げられる。Co-Al系の無機顔料粉末の具体例としては、CoAl粉末などが挙げられる。Co-Al-Ti系の無機顔料粉末の具体例としては、CoAl-TiO-LiO粉末などが挙げられる。
【0047】
Coを含む緑色の無機顔料粉末の具体例としては、例えば、Co-Al-Cr系又はCo-Ni-Ti-Zn系の無機顔料粉末が挙げられる。Co-Al-Cr系の無機顔料粉末の具体例としては、Co(Al,Cr)粉末などが挙げられる。Co-Ni-Ti-Zn系の無機顔料粉末の具体例としては、(Co,Ni,Zn)TiO粉末などが挙げられる。
【0048】
Feを含む茶色の無機顔料粉末の具体例としては、例えば、Fe-Zn系の無機顔料粉末が挙げられる。Fe-Zn系の無機顔料粉末の具体例としては、(Zn,Fe)Fe粉末などが挙げられる。
【0049】
Cuを含む黒色の無機顔料粉末の具体例としては、例えば、Cu-Cr系の無機顔料粉末やCu-Fe系の無機顔料粉末が挙げられる。Cu-Cr系の無機顔料粉末の具体例としては、Cu(Cr,Mn)粉末や、Cu-Cr-Mn粉末などが挙げられる。また、Cu-Fe系の無機顔料粉末の具体例としては、Cu-Fe-Mn粉末などが挙げられる。
【0050】
遮光層7中に含まれる着色顔料の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上、好ましくは90質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。遮光層7に用いられる着色顔料の含有量が上記下限値以上である場合、調理器の内部構造の隠蔽性をより一層高めることができる。また、遮光層7に用いられる着色顔料の含有量が上記上限値以下である場合、誘電体多層膜3との密着性をより一層高めることができる。
【0051】
また、遮光層7は、タルクやマイカなどの体質顔料をさらに含んでいてもよい。
【0052】
遮光層7の厚みは、光透過層6の厚みと実質的に同一であることが好ましい。なお、遮光層7の厚みが光透過層6の厚みと実質的に同一であるとは、遮光層7と光透過層6との厚みの差の絶対値が10μm以下であることをいう。もっとも、遮光層7の厚みは、光透過層6の厚みと異なっていてもよい。遮光層7の厚みは、特に限定されないが、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下である。遮光層7の厚みが上記下限値以上である場合、調理器の内部構造の隠蔽性をより一層高めることができる。一方、遮光層7の厚みが上記上限値以下である場合、誘電体多層膜3との熱膨張係数の差により生じる剥離をより一層生じ難くすることができる。
【0053】
本実施形態では、ガラス基板2の裏面2b上に設けられている誘電体多層膜3上において、平面視で表示領域Aと重なる部分に光透過層6が設けられており、平面視で非表示領域Bと重なる部分に遮光層7が設けられている。特に、光透過層6と遮光層7との波長550nmにおける屈折率の差の絶対値が、0.1以下である。これにより、消灯時には、調理器内部の構造を隠蔽しつつ、表示領域Aと非表示領域Bとの境界を見え難くすることができる。これについて、以下、図2及び図7を参照して詳細に説明する。
【0054】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る調理器用トッププレートの消灯時の効果を説明するための模式的断面図である。また、図7は、比較例の調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。なお、図7に示すように、比較例のトッププレート101では、光透過層6が設けられていない。
【0055】
図2及び図7に示すように、ガラス基板2の裏面2b上に、誘電体多層膜3を設けることにより、ディスプレイ32の点灯時には、表示領域Aでの表示を明確に見えるようにしつつ、消灯時には、調理器内部の構造を隠蔽することができる。
【0056】
しかしながら、本発明者は、図7に示す比較例の調理器用トッププレート101のように、光透過層6が設けられていない場合、表示領域Aと非表示領域Bとで反射スペクトルに差異が生じることを見出した。また、本発明者がこの原因について鋭意検討した結果、非表示領域Bでは誘電体多層膜3が遮光層7に接しているのに対し、表示領域Aでは誘電体多層膜3が空気に接していることから、遮光層7と空気との屈折率の差により、上記のような反射スペクトルの差が生じることを見出した。
【0057】
これに対して、本実施形態では、誘電体多層膜3上において表示領域Aと重なる部分に光透過層6が設けられている。特に、光透過層6と遮光層7との波長550nmにおける屈折率の差の絶対値が、0.1以下とされている。そのため、表示領域Aと非表示領域Bにおける反射スペクトルの差を小さくすることができる。そのため、ディスプレイ32の消灯時において、表示領域Aと非表示領域Bとの明度や色度の差を小さくすることができ、その結果、表示領域Aと非表示領域Bとの境界を見え難くすることができる。
【0058】
なお、表示領域Aと非表示領域Bとの境界をより一層見え難くする観点から、光透過層6と遮光層7との波長550nmにおける屈折率の差の絶対値は、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.03以下である。もっとも、光透過層6と遮光層7との波長550nmにおける屈折率が同一であってもよい。
【0059】
なお、光透過層6の波長550nmにおける屈折率は、例えば、1.46以上、1.60以下である。また、遮光層7の波長550nmにおける屈折率は、例えば、1.46以上、1.60以下である。
【0060】
本実施形態では、表示領域Aと非表示領域Bとの明度(L)の差の絶対値が5以下であり、彩度(C)の差の絶対値が1以下である。ここで、明度(L)及び彩度(C)は、JIS Z 8781-4:2013で採用されているL*a*b*表色系における、D65光源をトッププレートの調理面側から照射したときの反射光の明度(L)及び彩度(C)である。なお、彩度(C)は色度(a及びb)より求められ、C=((a+(b1/2で表される。絶対値を上記上限値以下にすることにより、表示領域Aと非表示領域Bとの境界を見え難くすることが可能となる。
【0061】
なお、表示領域Aと非表示領域Bとの境界をより一層見え難くする観点から、表示領域Aと非表示領域Bとの明度(L)の差の絶対値は、好ましくは3以下、より好ましくは1以下である。また、表示領域Aと非表示領域Bとの彩度(C)の差の絶対値は、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.4以下である。
【0062】
また、表示領域Aと非表示領域Bとの波長400nm~700nmの反射率の平均値の差の絶対値は、好ましくは5以下、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1以下である。もっとも、表示領域Aと非表示領域Bとの波長400nm~700nmの反射率の平均値が同一であってもよい。
【0063】
(製造方法)
トッププレート1は、例えば、以下の製造方法により製造することができる。
【0064】
まず、ガラス基板2の裏面2b上に、誘電体多層膜3を形成する。誘電体多層膜3は、真空蒸着法や、スパッタリング等の適宜の方法により形成することができる。
【0065】
次に、誘電体多層膜3上に、光透過層6及び遮光層7を形成する。具体的には、まず、誘電体多層膜3上において、表示領域Aと重なる部分をマスキングし、非表示領域Bと重なる部分に遮光層7を形成する。次に、誘電体多層膜3上において、表示領域Aと重なる部分に、光透過層6を形成する。もっとも、非表示領域Bをマスキングして表示領域Aに光透過層6を先に形成した後に、非表示領域Bに遮光層7を形成してもよい。
【0066】
光透過層6は、例えば、透明な樹脂と、溶剤とを含むペーストを調製し、このペーストを誘電体多層膜3上に塗布した後、乾燥することにより形成することができる。光透過層6は、ペーストを連続的にかつ均一に塗布し、ベタ塗りの塗膜とすることが好ましい。ペーストを塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷法を用いることができる。また、マスキングする場合は、印刷するスクリーン版にマスクを設けることにより、マスキングすることができる。
【0067】
遮光層7を形成する方法としても、特に限定されず、例えば、樹脂と、着色顔料粉末と、溶剤とを含むペーストを塗布し、乾燥することにより得ることができる。この場合においても、ペーストの塗布方法としては、スクリーン印刷法を用いることができる。また、調理器の内部構造の隠蔽性をより一層高める観点から、遮光層7も、ペーストを連続的にかつ均一に塗布し、ベタ塗りの塗膜とすることが好ましい。
【0068】
光透過層6及び遮光層7を形成する際のペーストの乾燥温度としては、例えば、50℃以上、150℃以下の温度とすることができる。乾燥時間としては、例えば、10分以上、5時間以下とすることができる。
【0069】
なお、光透過層6及び遮光層7が形成された積層体をさらに焼成してもよい。光透過層6及び遮光層7は、別々に焼成してもよい。なお、各工程における焼成温度は、特に限定されるものではないが、それぞれ、400℃以上であることが好ましく、500℃以上であることがより好ましい。また、焼成温度は、900℃以下であることが好ましく、850℃以下であることがより好ましい。
【0070】
以上のようにして、トッププレート1を製造することができる。
【0071】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。図3に示すように、調理器用トッププレート21(以下、「調理器用トッププレート21」を、単に「トッププレート21」とする)では、誘電体多層膜23の積層数が、8層である。具体的に、誘電体多層膜23は、ガラス基板2の裏面2b上において、SiOからなる低屈折率膜4と、Nbからなる高屈折率膜5とが、この順に交互に積層された8層の積層膜である。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0072】
トッププレート21においても、ガラス基板2の裏面2b上に設けられている誘電体多層膜23上において、平面視で表示領域Aと重なる部分に光透過層6が設けられており、平面視で非表示領域Bと重なる部分に遮光層7が設けられている。特に、光透過層6と遮光層7との波長550nmにおける屈折率の差の絶対値が、0.1以下である。これにより、ディスプレイ32の点灯時には、表示領域Aでの表示を明確に見えるようにすることができ、消灯時には、調理器内部の構造を隠蔽しつつ、表示領域Aと非表示領域Bとの境界を見え難くすることができる。
【0073】
あるいは、表示領域Aと非表示領域Bとの明度(L)の差の絶対値が5以下であり、彩度(C)の差の絶対値が1以下である。それによって、ディスプレイ32の点灯時には、表示領域Aでの表示を明確に見えるようにすることができ、消灯時には、調理器内部の構造を隠蔽しつつ、表示領域Aと非表示領域Bとの境界を見え難くすることができる。
【0074】
また、トッププレート21のように、誘電体多層膜23の積層数は、8層であってもよい。本発明においては、誘電体多層膜の積層数が、好ましくは4層以上、より好ましくは6層以上、好ましくは16層以下、より好ましくは12層以下である。誘電体多層膜の積層数が、上記範囲にある場合、ディスプレイ32の点灯時には、表示領域Aでの表示をより一層明確に見えるようにすることができ、消灯時には、調理器内部の構造をより一層確実に隠蔽することができる。
【0075】
[ディスプレイ付き調理器用トッププレート]
図4は、本発明の一実施形態に係るディスプレイ付き調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。図4に示すように、ディスプレイ付き調理器用トッププレート31は、調理器用トッププレート1と、ディスプレイ32とを備える。本実施形態では、調理器用トッププレート1の光透過層6が粘着層を兼ねている。そして、調理器用トッププレート1の光透過層6にディスプレイ32の図示しないカバーガラスが直接貼り合わされている。
【0076】
本実施形態のディスプレイ付き調理器用トッププレート31は、調理器用トッププレート1を備えるので、ディスプレイ32の点灯時には、表示領域Aでの表示を明確に見えるようにすることができ、消灯時には、調理器内部の構造を隠蔽しつつ、表示領域Aと非表示領域Bとの境界を見え難くすることができる。
【0077】
また、ディスプレイ付き調理器用トッププレート31では、光透過層6の表面が空気ではなくディスプレイ32のカバーガラスと接している。この場合、空気の屈折率よりもディスプレイ32のカバーガラスの屈折率の方が光透過層6の屈折率に近づけられるため、光透過層6の誘電体多層膜3とは反対側の表面における反射も抑制することができる。よって、表示領域Aと非表示領域Bとの明度や色度をより一層近づけることができ、表示領域Aと非表示領域Bとの境界をより一層見え難くすることができる。
【0078】
ディスプレイ32の消灯時における表示領域Aと非表示領域Bとの境界をより一層見え難くする観点から、光透過層6とディスプレイ32のカバーガラスとの波長550nmにおける屈折率の差の絶対値は、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.05以下である。もっとも、光透過層6とディスプレイ32のカバーガラスとの屈折率が同じであってもよい。なお、ディスプレイ32のカバーガラスの波長550nmにおける屈折率は、例えば、1.5以上、1.55以下である。また、表示領域Aと非表示領域Bとの波長400nm~700nmの反射率の平均値の差の絶対値は、好ましくは5以下、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1以下である。
【0079】
また、ディスプレイ32のカバーガラスは、必ずしも光透過層6に直接的に貼り合わされていなくてもよく、他の接着剤や粘着剤を介して間接的に貼り合わせられていてもよい。その場合においても、空気と接する場合よりは、光透過層6との屈折率の差を小さくすることができるので、ディスプレイ32の消灯時における表示領域Aと非表示領域Bとの境界をより一層見え難くすることができる。
【0080】
以下、本発明について、実施例に基づいてさらに詳細を説明する。但し、以下の実施例は、単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0081】
(実施例1)
実施例1では、図1に示すトッププレート1を作製した。
【0082】
まず、ガラス基板2としての透明結晶化ガラス板(日本電気硝子社製、商品名「N-0」、30℃~750℃における平均線熱膨張係数:0.5×10-7/℃、厚み:4mm)の裏面2bの上に、スパッタリングにより誘電体多層膜3を作製した。具体的には、ガラス基板2の裏面2bの上に、SiO(50.3nm)、Nb(21.7nm)、SiO(38.3nm)、Nb(31.6nm)、SiO(90.7nm)、Nb(45.2nm)がこの順に設けられた誘電体多層膜3を作製した。
【0083】
次に、シリコーン樹脂と、黒色顔料と、溶剤とを混合し、遮光層形成用ペーストを調製した。
【0084】
次に、遮光層形成用ペーストを誘電体多層膜3上において非表示領域Bと重なる部分に、厚みが20μmとなるように、スクリーン印刷し、遮光層7を形成した(波長550nmにおける屈折率1.47)。なお、表示領域Aがマスキングされるように、印刷するスクリーン版にマスクを設けた。次に、光透過層形成用ペースト(デクセリアルズ社製、SVR1150)を誘電体多層膜3上に、厚みが20μmとなるように、スクリーン印刷した後紫外線を照射し、波長550nmにおける屈折率が1.50である光透過層6を形成して、反射率が36.4%のトッププレート1を得た。なお、上記のように、光透過層6と遮光層7との屈折率の差の絶対値は、0.1以下である。
【0085】
(比較例1)
比較例1では、光透過層6を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてトッププレートを作製した。
【0086】
図5は、実施例1及び比較例1の調理器用トッププレートの反射スペクトルを示す図である。図5においては、実施例1の表示領域Aにおける反射スペクトルを実線、実施例1の非表示領域Bにおける反射スペクトルを一点鎖線、比較例1の表示領域Aにおける反射スペクトルを破線で示している。
【0087】
図5に示すように、実施例1の表示領域A及び非表示領域Bにおける反射スペクトルは、ほぼ差異がないことが確認できた。一方、比較例1の表示領域Aの反射スペクトルは、実施例1の非表示領域Bにおける反射スペクトルと大きく相違していた。
【0088】
なお、波長400nm~700nmの反射率の平均値は、下記の表1に示す通りである。
【0089】
【表1】
【0090】
また、色差計(コニカミノルタ株式会社製、「CM2600d」)を用いて、実施例1の表示領域A及び非表示領域B、並びに比較例1の表示領域AのL表色系におけるD65光源を照射したときの反射光の明度(L)、色度(a及びb)及び彩度(C)を評価した。なお、彩度はC=((a+(b1/2で表される。
【0091】
結果を下記の表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
表2より、表示領域Aに光透過層6を設けることにより、非表示領域Bとの明度Lの差の絶対値を7.8から0.3に、彩度Cの差の絶対値を1.6から0.1と小さくすることができ、ディスプレイ32の消灯時における表示領域Aと非表示領域Bとの境界をより一層見え難くすることができることが確認できた。
【0094】
また、目視によって、実施例1の調理器用トッププレートでは、ディスプレイ32の点灯時には、表示領域Aでの表示を明確に見えるようにすることができ、消灯時には、調理器内部の構造を隠蔽しつつ、表示領域Aと非表示領域Bとの境界を見え難くすることができることが確認できた。一方、比較例1の調理器用トッププレートでは、ディスプレイ32の消灯時には、表示領域Aと非表示領域Bとの境界が確認された。
【0095】
(実施例2)
実施例2では、図3に示すトッププレート21を作製した。
【0096】
具体的には、ガラス基板2の裏面2bの上に、SiO(50nm)、Nb(17.5nm)、SiO(69.4nm)、Nb(15nm)、SiO(130nm)、Nb(38.5nm)、SiO(93.8nm)、Nb(80nm)がこの順に設けられた誘電体多層膜23を作製したこと以外は、実施例1と同様にしてトッププレートを作製した。従って、実施例2においても、光透過層6と遮光層7との屈折率の差の絶対値は、0.1以下である。
【0097】
(比較例2)
比較例2では、光透過層6を形成しなかったこと以外は、実施例2と同様にしてトッププレートを作製した。
【0098】
図6は、実施例2及び比較例2の調理器用トッププレートの反射スペクトルを示す図である。図6においては、実施例2の表示領域Aにおける反射スペクトルを実線、実施例2の非表示領域Bにおける反射スペクトルを一点鎖線、比較例2の表示領域Aにおける反射スペクトルを破線で示している。
【0099】
図6に示すように、実施例2の表示領域A及び非表示領域Bにおける反射スペクトルは、ほぼ差異がないことが確認できた。一方、比較例2の表示領域Aの反射スペクトルは、実施例2の非表示領域Bにおける反射スペクトルと大きく相違していた。
【0100】
なお、波長400nm~700nmの反射率の平均値は、下記の表3に示す通りである。
【0101】
【表3】
【0102】
また、色差計(コニカミノルタ株式会社製、「CM2600d」)を用いて、実施例2の表示領域A及び非表示領域B、並びに比較例2の表示領域AのL表色系におけるD65光源を照射したときの反射光の明度(L)、色度(a及びb)及び彩度(C)を評価した。
【0103】
結果を下記の表4に示す。
【0104】
【表4】
【0105】
表4より、表示領域Aに光透過層6を設けることにより、非表示領域Bとの明度Lの差の絶対値を6.4から0.3に、彩度の差の絶対値を13.1から0.1と小さくすることができ、ディスプレイ32の消灯時における表示領域Aと非表示領域Bとの境界をより一層見え難くすることができることが確認できた。
【0106】
また、目視によって、実施例2の調理器用トッププレートでは、ディスプレイ32の点灯時には、表示領域Aでの表示を明確に見えるようにすることができ、消灯時には、調理器内部の構造を隠蔽しつつ、表示領域Aと非表示領域Bとの境界を見え難くすることができることが確認できた。一方、比較例2の調理器用トッププレートでは、ディスプレイ32の消灯時には、表示領域Aと非表示領域Bとの境界が確認された。
【0107】
(実施例3)
実施例3では、ガラス基板2の裏面2bの上に、Nb(24.6nm)、SiO(100.9nm)、Nb(39.4nm)、SiO(65.0nm)、Nb(51.4nm)、SiO(101.7nm)、Nb(65.5nm)、SiO(113.6nm)、Nb(72.2nm)、SiO(117.8nm)、Nb(86.9nm)がこの順に設けられた誘電体多層膜を作製したこと以外は、実施例1と同様にしてトッププレートを作製した。従って、実施例3においても、光透過層6と遮光層7との屈折率の差の絶対値は、0.1以下である。
【0108】
(比較例3)
比較例3では、光透過層6を形成しなかったこと以外は、実施例3と同様にしてトッププレートを作製した。
【0109】
図8は、実施例3及び比較例3の調理器用トッププレートの反射スペクトルを示す図である。図8においては、実施例3の表示領域Aにおける反射スペクトルを実線、実施例3の非表示領域Bにおける反射スペクトルを一点鎖線、比較例3の表示領域Aにおける反射スペクトルを破線で示している。
【0110】
図8に示すように、実施例3の表示領域A及び非表示領域Bにおける反射スペクトルは、ほぼ差異がないことが確認できた。一方、比較例3の表示領域Aの反射スペクトルは、実施例3の非表示領域Bにおける反射スペクトルと大きく相違していた。
【0111】
なお、波長400nm~700nmの反射率の平均値は、下記の表5に示す通りである。
【0112】
【表5】
【0113】
また、色差計(コニカミノルタ株式会社製、「CM2600d」)を用いて、実施例3の表示領域A及び非表示領域B、並びに比較例3の表示領域AのL表色系におけるD65光源を照射したときの反射光の明度(L)、色度(a及びb)及び彩度(C)を評価した。
【0114】
結果を下記の表6に示す。
【0115】
【表6】
【0116】
表6より、表示領域Aに光透過層6を設けることにより、彩度の差の絶対値を4.4から0.2と小さくすることができ、ディスプレイ32の消灯時における表示領域Aと非表示領域Bとの境界をより一層見え難くすることができることが確認できた。
【0117】
また、目視によって、実施例3の調理器用トッププレートでは、ディスプレイ32の点灯時には、表示領域Aでの表示を明確に見えるようにすることができ、消灯時には、調理器内部の構造を隠蔽しつつ、表示領域Aと非表示領域Bとの境界を見え難くすることができることが確認できた。一方、比較例3の調理器用トッププレートでは、ディスプレイ32の消灯時には、表示領域Aと非表示領域Bとの境界が確認された。
【0118】
(実施例4)
実施例4では、ガラス基板2の裏面2bの上に、Nb(72.0nm)、SiO(15.4nm)、Nb(59.3nm)、SiO(106.9nm)、Nb(47.9nm)、SiO(79.5nm)、Nb(97.8nm)、SiO(95.7nm)、Nb(97.7nm)がこの順に設けられた誘電体多層膜を作製したこと以外は、実施例1と同様にしてトッププレートを作製した。従って、実施例4においても、光透過層6と遮光層7との屈折率の差の絶対値は、0.1以下である。
【0119】
(比較例4)
比較例4では、光透過層6を形成しなかったこと以外は、実施例4と同様にしてトッププレートを作製した。
【0120】
図9は、実施例4及び比較例4の調理器用トッププレートの反射スペクトルを示す図である。図9においては、実施例4の表示領域Aにおける反射スペクトルを実線、実施例4の非表示領域Bにおける反射スペクトルを一点鎖線、比較例4の表示領域Aにおける反射スペクトルを破線で示している。
【0121】
図9に示すように、実施例4の表示領域A及び非表示領域Bにおける反射スペクトルは、ほぼ差異がないことが確認できた。一方、比較例4の表示領域Aの反射スペクトルは、実施例4の非表示領域Bにおける反射スペクトルと大きく相違していた。
【0122】
なお、波長400nm~700nmの反射率の平均値は、下記の表7に示す通りである。
【0123】
【表7】
【0124】
また、色差計(コニカミノルタ株式会社製、「CM2600d」)を用いて、実施例4の表示領域A及び非表示領域B、並びに比較例4の表示領域AのL表色系におけるD65光源を照射したときの反射光の明度(L)、色度(a及びb)及び彩度(C)を評価した。
【0125】
結果を下記の表8に示す。
【0126】
【表8】
【0127】
表8より、表示領域Aに光透過層6を設けることにより、非表示領域Bとの明度Lの差の絶対値を0.8から0.1に、彩度の差の絶対値を9.6から0.2と小さくすることができ、ディスプレイ32の消灯時における表示領域Aと非表示領域Bとの境界をより一層見え難くすることができることが確認できた。
【0128】
また、目視によって、実施例4の調理器用トッププレートでは、ディスプレイ32の点灯時には、表示領域Aでの表示を明確に見えるようにすることができ、消灯時には、調理器内部の構造を隠蔽しつつ、表示領域Aと非表示領域Bとの境界を見え難くすることができることが確認できた。一方、比較例4の調理器用トッププレートでは、ディスプレイ32の消灯時には、表示領域Aと非表示領域Bとの境界が確認された。
【0129】
(実施例5)
実施例5では、ガラス基板2の裏面2bの上に、SiO(50.0nm)、Nb(6.1nm)、SiO(79.3nm)、Nb(6.7nm)、SiO(126.8nm)、Nb(61.8nm)がこの順に設けられた誘電体多層膜を作製したこと以外は、実施例1と同様にしてトッププレートを作製した。従って、実施例5においても、光透過層6と遮光層7との屈折率の差の絶対値は、0.1以下である。
【0130】
(比較例5)
比較例5では、光透過層6を形成しなかったこと以外は、実施例5と同様にしてトッププレートを作製した。
【0131】
図10は、実施例5及び比較例5の調理器用トッププレートの反射スペクトルを示す図である。図10においては、実施例5の表示領域Aにおける反射スペクトルを実線、実施例5の非表示領域Bにおける反射スペクトルを一点鎖線、比較例5の表示領域Aにおける反射スペクトルを破線で示している。
【0132】
図10に示すように、実施例5の表示領域A及び非表示領域Bにおける反射スペクトルは、ほぼ差異がないことが確認できた。一方、比較例5の表示領域Aの反射スペクトルは、実施例5の非表示領域Bにおける反射スペクトルと大きく相違していた。
【0133】
なお、波長400nm~700nmの反射率の平均値は、下記の表9に示す通りである。
【0134】
【表9】
【0135】
また、色差計(コニカミノルタ株式会社製、「CM2600d」)を用いて、実施例5の表示領域A及び非表示領域B、並びに比較例5の表示領域AのL表色系におけるD65光源を照射したときの反射光の明度(L)、色度(a及びb)及び彩度(C)を評価した。
【0136】
結果を下記の表10に示す。
【0137】
【表10】
【0138】
表10より、表示領域Aに光透過層6を設けることにより、非表示領域Bとの明度Lの差の絶対値を9.7から0.4に、彩度の差の絶対値を1.2から0.1と小さくすることができ、ディスプレイ32の消灯時における表示領域Aと非表示領域Bとの境界をより一層見え難くすることができることが確認できた。
【0139】
また、目視によって、実施例5の調理器用トッププレートでは、ディスプレイ32の点灯時には、表示領域Aでの表示を明確に見えるようにすることができ、消灯時には、調理器内部の構造を隠蔽しつつ、表示領域Aと非表示領域Bとの境界を見え難くすることができることが確認できた。一方、比較例5の調理器用トッププレートでは、ディスプレイ32の消灯時には、表示領域Aと非表示領域Bとの境界が確認された。
【符号の説明】
【0140】
1…調理器用トッププレート
2…ガラス基板
2a…調理面
2b…裏面
3…誘電体多層膜
4…低屈折率膜
5…高屈折率膜
6…光透過層
7…遮光層
21…調理器用トッププレート
23…誘電体多層膜
31…ディスプレイ付き調理器用トッププレート
32…ディスプレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10