(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】映像伝送システム、映像送信装置、映像受信装置、映像配信方法、映像送信方法、映像受信方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 19/132 20140101AFI20240409BHJP
H04N 19/167 20140101ALI20240409BHJP
H04N 19/176 20140101ALI20240409BHJP
【FI】
H04N19/132
H04N19/167
H04N19/176
(21)【出願番号】P 2021522195
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2020019202
(87)【国際公開番号】W WO2020241269
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2019100291
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123021
【氏名又は名称】渥美 元幸
(74)【代理人】
【識別番号】100126538
【氏名又は名称】嶺 直道
(72)【発明者】
【氏名】前田 直樹
【審査官】岩井 健二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/125579(WO,A1)
【文献】特表2017-509189(JP,A)
【文献】特開2013-229806(JP,A)
【文献】特開2006-332882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00 - 19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像データに対して圧縮処理を行い、前記圧縮処理済みの前記映像データを送信する映像送信装置と、
前記映像送信装置から前記圧縮処理済みの前記映像データを受信し、受信した前記映像データの伸長処理を行う映像受信装置とを備え、
前記映像送信装置は、前記映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理を実行し、前記注目領域に対して前記所定の圧縮処理を実行
せず、
前記注目領域は、前記画面内でのユーザの視線位置に基づいて定められ、
前記注目領域は、前記視線位置の所定領域内での持続時間に基づいて、所定時間固定される、映像伝送システム。
【請求項2】
前記ユーザの数は複数であり、
前記注目領域は、前記ユーザごとに定められる、請求項
1に記載の映像伝送システム。
【請求項3】
映像データに対して圧縮処理を行い、前記圧縮処理済みの前記映像データを送信する映像送信装置と、
前記映像送信装置から前記圧縮処理済みの前記映像データを受信し、受信した前記映像データの伸長処理を行う映像受信装置とを備え、
前記映像送信装置は、前記映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理を実行し、前記注目領域に対して前記所定の圧縮処理を実行せず、
前記映像送信装置は、前記圧縮処理済みの前記映像データの
伝送の遅延に関連する送信状況を示す送信状況情報に応じて前記注目領域のサイズを変化させる
、映像伝送システム。
【請求項4】
前記映像データは、移動体に搭載されるカメラにより生成され、前記注目領域は、前記移動体の進行方向に基づいて定められる、請求項1または請求項
3に記載の映像伝送システム。
【請求項5】
前記注目領域は、前記映像データの画面間での輝度値の変化量に基づいて定められる、請求項1、請求項
3、請求項
4のいずれか1項に記載の映像伝送システム。
【請求項6】
前記映像受信装置は、前記注目領域を指定するための情報を前記映像送信装置に送信する、請求項1、請求項
3および請求項
4のいずれか1項に記載の映像伝送システム。
【請求項7】
前記所定の圧縮処理は、前記非注目領域内の各画素の色深度を削減する処理である、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の映像伝送システム。
【請求項8】
前記所定の圧縮処理は、前記非注目領域内の各ブロックに対するダウンコンバート処理である、請求項
7に記載の映像伝送システム。
【請求項9】
前記非注目領域は、前記所定の圧縮処理における圧縮率の異なる複数の領域を含み、当該複数の領域の中で前記注目領域に隣接する領域の圧縮率が最も小さい、請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の映像伝送システム。
【請求項10】
映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理を実行する圧縮処理部と、
前記所定の圧縮処理後の前記映像データを、映像受信装置に送信する送信部とを備
え、
前記注目領域は、前記画面内でのユーザの視線位置に基づいて定められ、
前記注目領域は、前記視線位置の所定領域内での持続時間に基づいて、所定時間固定される、映像送信装置。
【請求項11】
映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理を実行し、前記注目領域に対して前記所定の圧縮処理を実行しない圧縮処理部と、
前記所定の圧縮処理後の前記映像データを、映像受信装置に送信する送信部と、
前記圧縮処理済みの前記映像データの伝送の遅延に関連する送信状況を示す送信状況情報に応じて前記注目領域のサイズを変化させる領域決定部を備える、映像送信装置。
【請求項12】
映像送信装置から、映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理が実行された映像データを受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記映像データを伸長する伸長部とを備
え、
前記注目領域は、前記画面内でのユーザの視線位置に基づいて定められ、
前記注目領域は、前記視線位置の所定領域内での持続時間に基づいて、所定時間固定される、映像受信装置。
【請求項13】
映像送信装置が、映像データに対して圧縮処理を行い、前記圧縮処理済みの前記映像データを送信するステップと、
映像受信装置が、前記映像送信装置から前記圧縮処理済みの前記映像データを受信し、受信した前記映像データの伸長処理を行うステップとを含み、
前記映像データを送信するステップにおいて、前記映像送信装置は、前記映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理を実行し、前記注目領域に対して前記所定の圧縮処理を実行
せず、
前記注目領域は、前記画面内でのユーザの視線位置に基づいて定められ、
前記注目領域は、前記視線位置の所定領域内での持続時間に基づいて、所定時間固定される、映像配信方法。
【請求項14】
映像配信方法であって、
映像送信装置が、映像データに対して圧縮処理を行い、前記圧縮処理済みの前記映像データを送信するステップと、
映像受信装置が、前記映像送信装置から前記圧縮処理済みの前記映像データを受信し、受信した前記映像データの伸長処理を行うステップとを含み、
前記映像データを送信するステップにおいて、前記映像送信装置は、前記映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理を実行し、前記注目領域に対して前記所定の圧縮処理を実行せず、
前記映像配信方法は、さらに、前記圧縮処理済みの前記映像データの伝送の遅延に関連する送信状況を示す送信状況情報に応じて前記注目領域のサイズを変化させるステップを含む、映像配信方法。
【請求項15】
映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理を実行するステップと、
前記所定の圧縮処理後の前記映像データを、映像受信装置に送信するステップとを含
み、
前記注目領域は、前記画面内でのユーザの視線位置に基づいて定められ、
前記注目領域は、前記視線位置の所定領域内での持続時間に基づいて、所定時間固定される、映像送信方法。
【請求項16】
映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理を実行し、前記注目領域に対して前記所定の圧縮処理を実行しないステップと、
前記所定の圧縮処理後の前記映像データを、映像受信装置に送信するステップと、
前記圧縮処理済みの前記映像データの伝送の遅延に関連する送信状況を示す送信状況情報に応じて前記注目領域のサイズを変化させるステップを含む、映像送信方法。
【請求項17】
映像送信装置から、映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理が実行された映像データを受信するステップと、
受信した前記映像データを伸長するステップとを含
み、
前記注目領域は、前記画面内でのユーザの視線位置に基づいて定められ、
前記注目領域は、前記視線位置の所定領域内での持続時間に基づいて、所定時間固定される、映像受信方法。
【請求項18】
コンピュータに、
映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理を実行するステップと、
前記所定の圧縮処理後の前記映像データを、映像受信装置に送信するステップとを実行させるための、コンピュータプログラム
であって、
前記注目領域は、前記画面内でのユーザの視線位置に基づいて定められ、
前記注目領域は、前記視線位置の所定領域内での持続時間に基づいて、所定時間固定される、コンピュータプログラム。
【請求項19】
コンピュータに、
映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理を実行し、前記注目領域に対して前記所定の圧縮処理を実行しないステップと、
前記所定の圧縮処理後の前記映像データを、映像受信装置に送信するステップと、
前記圧縮処理済みの前記映像データの伝送の遅延に関連する送信状況を示す送信状況情報に応じて前記注目領域のサイズを変化させるステップとを実行させるための、コンピュータプログラム。
【請求項20】
コンピュータに、
映像送信装置から、映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理が実行された映像データを受信するステップと、
受信した前記映像データを伸長するステップとを実行させるための、コンピュータプログラム
であって、
前記注目領域は、前記画面内でのユーザの視線位置に基づいて定められ、
前記注目領域は、前記視線位置の所定領域内での持続時間に基づいて、所定時間固定される、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、映像伝送システム、映像送信装置、映像受信装置、映像配信方法、映像送信方法、映像受信方法およびコンピュータプログラムに関する。
本出願は、2019年5月29日出願の日本出願第2019-100291号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
放送等では、8K UHDTV(Ultra High Definition Television)(以下、「8K」と略記する。)のような超高解像度の高精細な映像データを伝送するための技術が開発されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
超高解像度映像は、その表現力ゆえ、監視用途、防犯用途、建物などの外観検査用途などのあらゆる分野で用いられることが今後急増するものと考えられる。その一方、その表現力のために、例えば、伝送レートが数十Gbps(gigabits per second)以上に達するため、映像データを伝送するために高速な通信路が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】”ウィキペディア”、[online]、[平成31年4月8日検索]、インターネット〈URL:http://ja.wikipedia.org/wiki/H.265〉
【文献】“視線検出技術 基本原理”、[online]、2013年4月23日、富士通研究所、[令和2年1月6日検索]、インターネット〈URL:https://www.fujitsu.com/jp/group/labs/resources/tech/techguide/list/eye-movements/p03.html〉
【発明の概要】
【0005】
本開示の一実施態様に係る映像伝送システムは、映像データに対して圧縮処理を行い、前記圧縮処理済みの前記映像データを送信する映像送信装置と、前記映像送信装置から前記圧縮処理済みの前記映像データを受信し、受信した前記映像データの伸長処理を行う映像受信装置とを備え、前記映像送信装置は、前記映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理を実行し、前記注目領域に対して前記所定の圧縮処理を実行しない。
【0006】
本開示の他の実施態様に係る映像送信装置は、映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理を実行する圧縮処理部と、前記所定の圧縮処理後の前記映像データを、映像受信装置に送信する送信部とを備える。
【0007】
本開示の他の実施態様に係る映像受信装置は、映像送信装置から、映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理が実行された映像データを受信する受信部と、前記受信部が受信した前記映像データを伸長する伸長部とを備える。
【0008】
本開示の他の実施態様に係る映像配信方法は、映像送信装置が、映像データに対して圧縮処理を行い、前記圧縮処理済みの前記映像データを送信するステップと、映像受信装置が、前記映像送信装置から前記圧縮処理済みの前記映像データを受信し、受信した前記映像データの伸長処理を行うステップとを含み、前記映像データを送信するステップにおいて、前記映像送信装置は、前記映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理を実行し、前記注目領域に対して前記所定の圧縮処理を実行しない。
【0009】
本開示の他の実施態様に係る映像送信方法は、映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理を実行するステップと、前記所定の圧縮処理後の前記映像データを、映像受信装置に送信するステップとを含む。
【0010】
本開示の他の実施態様に係る映像受信方法は、映像送信装置から、映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理が実行された映像データを受信するステップと、前記受信部が受信した前記映像データを伸長するステップとを含む。
【0011】
本開示の他の実施態様に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理を実行するステップと、前記所定の圧縮処理後の前記映像データを、映像受信装置に送信するステップとを実行させる。
【0012】
本開示の他の実施態様に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、映像送信装置から、映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理が実行された映像データを受信するステップと、前記受信部が受信した前記映像データを伸長するステップとを実行させる。
【0013】
なお、上記コンピュータプログラムを、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)等のコンピュータ読取可能な非一時的な記録媒体やインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは、言うまでもない。また、本開示は、映像送信装置または映像受信装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1に係る映像伝送システムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態1に係る映像送信装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図3に示した画像データを小ブロックに分割した後の画像データの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、ブロック分割部から差分部および領域指定部への小ブロックの出力順序を説明するための図である。
【
図6】
図6は、差分処理を説明するための図である。
【
図7】
図7は、領域決定部により決定された1画面分(画像データ)のブロック情報を示す図である。
【
図8】
図8は、ダウンコンバート処理の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、領域指定部、ダウンコンバート部および映像整列部が実行する処理について説明するための図である。
【
図10】
図10は、領域指定部、ダウンコンバート部および映像整列部が実行する処理について説明するための図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態1に係る映像受信装置の構成を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、圧縮済み映像データの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、映像伝送システムによる処理手順の一例を示すシーケンス図である。
【
図16】
図16は、映像送信装置が実行する圧縮処理(
図13のステップS2)の詳細を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、領域指定部、ダウンコンバート部および映像整列部が実行する処理について説明するための図である。
【
図18】
図18は、映像送信装置が実行する圧縮処理(
図13のステップS2)の詳細を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、本開示の実施形態4に係る映像送信装置の構成を示すブロック図である。
【
図20】
図20は、本開示の実施形態4に係る映像受信装置の構成を示すブロック図である。
【
図21】
図21は、映像伝送システムによる処理手順の一例を示すシーケンス図である。
【
図23】
図23は、圧縮済み映像データの一例を示す図である。
【
図24】
図24は、本開示の実施形態5に係る映像伝送システムの全体構成を示す図である。
【
図25】
図25は、表示装置及びカメラの一例を示す図である。
【
図26】
図26は、本開示の実施形態5に係る映像受信装置の構成を示すブロック図である。
【
図27】
図27は、注目領域の決定方法について説明するための図である。
【
図28】
図28は、映像伝送システムによる処理手順の一例を示すシーケンス図である。
【
図29】
図29は、注目領域決定処理(
図28のステップS52)の詳細を示すフローチャートである。
【
図30】
図30は、ドローンによる映像の撮影を模式的に示す図である。
【
図31】
図31は、ドローンを操作するためのコントローラとコントローラを操作するユーザを模式的に示す図である。
【
図32】
図32は、ドローンを操作するためのコントローラとコントローラを操作するユーザを模式的に示す図である。
【
図33】
図33は、本開示の実施形態6に係る注目領域決定処理(
図28のステップS52)の詳細を示すフローチャートである。
【
図34】
図34は、表示装置及びカメラの一例を示す図である。
【
図35】
図35は、注目領域の決定方法について説明するための図である。
【
図36】
図36は、注目領域及び非注目領域の決定方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[本開示が解決しようとする課題]
例えば、重機(クレーン車、ブルドーザー等)、ドローン、ロボット等の移動体に設置された8Kの映像データを撮影可能なカメラ(以下、「8Kカメラ」と言う。)で撮影された映像データを映像送信装置から映像受信装置に送信し、遠隔地において映像データを監視するといった利用方法も考えられる。
【0016】
しかしながら、「第5世代移動通信システム」(以下、「5G」(5th Generation)と略記する。)の無線通信の伝送能力は、数Gbps程度である。一方、8Kのデュアルグリーン方式の映像データを伝送するには、24Gbps程度の伝送能力を要する。このため、8Kの映像データをそのままの形式で5Gの無線通信を利用して送信することは困難である。なお、8Kの映像データを10ギガビット・イーサネット(登録商標)のネットワークプロトコルを利用して送信する場合においても同様の問題が生じる。
【0017】
放送等で用いられるH.265(ISO/IEC 23008-2 HEVC)などの方式を用いて映像データを圧縮して伝送することも考えられるが、圧縮処理および伸長処理に数秒程度の時間を要するため、映像の遅延が生じる。
【0018】
一方、伝送された映像データは、例えば、不審者、人の流れ、または入場者等を監視する監視用途に用いられる。具体的には、映像データを画像認識処理することにより、不審者等の認識対象が抽出される。監視用途において重要な映像データ中の領域は、認識対象の周囲の領域であり、それ以外の領域は解像度を落としてよい場合もある。それ以外のアプリケーションにおいても、注目すべき領域以外の領域の解像度を落としてよい場合もある。
【0019】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、注目領域においてオリジナル映像との同一性を保持した映像データの低遅延配信が可能な映像伝送システム、映像送信装置、映像受信装置、映像配信方法、映像送信方法、映像受信方法およびコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【0020】
[本開示の効果]
本開示によると、注目領域においてオリジナル映像との同一性を保持した映像データの低遅延配信ができる。
【0021】
[本開示の実施形態の概要]
最初に本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
(1)本開示の一実施形態に係る映像伝送システムは、映像データに対して圧縮処理を行い、前記圧縮処理済みの前記映像データを送信する映像送信装置と、前記映像送信装置から前記圧縮処理済みの前記映像データを受信し、受信した前記映像データの伸長処理を行う映像受信装置とを備え、前記映像送信装置は、前記映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理を実行し、前記注目領域に対して前記所定の圧縮処理を実行しない。
【0022】
この構成によると、映像データの画面内の注目領域に対して所定の圧縮処理を実行せずに、非注目領域に対して所定の圧縮処理を実行した上で、圧縮済みの映像データを送信することができる。このため、注目領域についてはオリジナル映像との同一性が保持される。また、上記所定の圧縮処理は画面内での圧縮処理である。このため、画面間で圧縮処理を行うH.265などに生じる映像の遅延が生じにくい。よって、映像データの低遅延配信ができる。
【0023】
(2)好ましくは、前記注目領域は、前記画面内でのユーザの視線位置に基づいて定められる。
【0024】
この構成によると、例えば、画面内でのユーザの視線位置の近傍の領域が注目領域とされ、それ以外の領域が非注目領域とされる。このため、ユーザが見ている画面内の領域においてはオリジナル映像との同一性が保持され、ユーザが見ていない領域においては所定の圧縮処理が実行される。よって、画面を見るユーザに違和感を与えることなく、映像データの圧縮及び低遅延配信を行うことができる。
【0025】
(3)さらに好ましくは、前記注目領域は、前記視線位置の所定領域内での持続時間に基づいて、所定時間固定される。
【0026】
この構成によると、ユーザが画面内の所定位置又は所定位置の近傍を注視することにより、注目領域を所定時間固定することが可能となる。ここで、所定位置の近傍とは、例えば、所定位置から所定距離内の位置を示す。これにより、ユーザが、上記の注視を行った後に視線を一瞬そらした場合であっても、注目領域は固定されたままである。よって、その後に、ユーザが元の位置に視線を戻した場合には、即座に、オリジナル映像と同一性が保持された映像を見ることができる。
【0027】
(4)また、前記ユーザの数は複数であり、前記注目領域は、前記ユーザごとに定められてもよい。
【0028】
この構成によると、ユーザごとに、当該ユーザの視線位置に基づいて注目領域が定められる。このため、複数のユーザが同一の画面上の異なる位置を見ていたとしても、それぞれのユーザの視線位置の近傍の領域が注目領域とされ、各注目領域においてオリジナル映像との同一性を保持される。このため、上記複数のユーザに違和感を与えることがない。
【0029】
(5)また、前記映像送信装置は、前記圧縮処理済みの前記映像データの送信状況を示す送信状況情報に応じて前記注目領域のサイズを変化させてもよい。
【0030】
この構成によると、例えば、映像データの伝送レートが低下した場合には、注目領域のサイズを小さくすることにより映像データのサイズを小さくすることができる。これにより、映像データの低遅延配信ができる。
【0031】
(6)また、前記映像データは、移動体に搭載されるカメラにより生成され、前記注目領域は、前記移動体の進行方向に基づいて定められてもよい。
【0032】
この構成によると、移動体の進行方向に基づいて定められる注目領域についてオリジナル映像との同一性を保持した映像データの低遅延配信ができる。これにより、例えば、移動体を安定的に飛行させることができる。
【0033】
(7)また、前記映像データは、外観検査の対象物の像を含み、前記注目領域は、前記対象物の検査箇所を含む領域であってもよい。
【0034】
この構成によると、外観検査の対象物の検査箇所についてオリジナル映像との同一性を保持した映像データの低遅延配信ができる。このため、対象物の外観検査を低遅延で実行することができる。
【0035】
(8)また、前記注目領域は、前記映像データの画面間での輝度値の変化量に基づいて定められてもよい。
【0036】
この構成によると、例えば、画面間で輝度値の変化量が大きい部分を優先的に注目領域とすることができる。これにより、例えば、映像データを監視用途に用いる場合に、不審者を含む領域を注目領域とすることができ、効率的に画像認識処理を行うことができる。
【0037】
(9)また、前記映像受信装置は、前記注目領域を指定するための情報を前記映像送信装置に送信してもよい。
【0038】
この構成によると、指定された領域についてオリジナル映像との同一性を保持した映像データの低遅延配信ができる。例えば、映像データを予め監視対象領域が分かっている監視用途に用いる場合に、監視対象領域をユーザが注目領域として指定することで、効率的に監視処理を行うことができる。
【0039】
(10)また、前記所定の圧縮処理は、前記非注目領域内の各画素の色深度を削減する処理でもよい。
【0040】
この構成によると、非注目領域内の各画素の色深度を低下させることができるため、映像データの低遅延配信ができる。また、非注目領域は、ユーザの視野の周辺部に相当するため、色深度が低下したとしてもユーザに気づかれにくい。
【0041】
(11)また、前記画面は複数のブロックに分割されており、前記注目領域および前記非注目領域は、ブロック単位で指定されてもよい。
【0042】
この構成によると、ブロック単位で所定の圧縮処理を実行することができる。これにより、圧縮処理を高速に実行することができる。
【0043】
(12)また、前記所定の圧縮処理は、前記非注目領域内の各ブロックに対するダウンコンバート処理であってもよい。
【0044】
この構成によると、非注目領域内の解像度を低下させることができるため、映像データの低遅延配信ができる。
【0045】
(13)また、前記非注目領域は、前記所定の圧縮処理における圧縮率の異なる複数の領域を含み、当該複数の領域の中で前記注目領域に隣接する領域の圧縮率が最も小さくてもよい。
【0046】
この構成によると、非注目領域の内、ユーザの視野の中心部に近い領域ほど圧縮率を低くし、上記中心部から遠い領域ほど圧縮率を高くして圧縮処理を行うことができる。このため、注目領域と非注目領域との境界部分において映像の見え方が急激に変化することを防ぎつつ、映像データの低遅延配信を行うことができる。
【0047】
(14)本開示の他の実施形態に係る映像送信装置は、映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理を実行する圧縮処理部と、前記所定の圧縮処理後の前記映像データを、映像受信装置に送信する送信部とを備える。
【0048】
この構成によると、映像データの画面内の注目領域に対して所定の圧縮処理を実行せずに、非注目領域に対して所定の圧縮処理を実行した上で、圧縮済みの映像データを送信することができる。このため、注目領域についてはオリジナル映像との同一性が保持される。また、上記所定の圧縮処理は画面内での圧縮処理である。このため、画面間で圧縮処理を行うH.265などに生じる映像の遅延が生じにくい。よって、映像データの低遅延配信ができる。
【0049】
(15)本開示の他の実施形態に係る映像受信装置は、映像送信装置から、映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理が実行された映像データを受信する受信部と、前記受信部が受信した前記映像データを伸長する伸長部とを備える。
【0050】
この構成によると、映像データの画面内の注目領域に対して所定の圧縮処理を実行せずに、非注目領域に対して所定の圧縮処理が実行された、圧縮済みの映像データを受信することができる。このため、注目領域についてはオリジナル映像との同一性が保持される。また、非注目領域に対しては画面内での所定の圧縮処理が実行される。このため、画面間で圧縮処理を行うH.265などに生じる映像の遅延が生じにくい。よって、映像データの低遅延配信ができる。
【0051】
(16)本開示の他の実施形態に係る映像配信方法は、映像送信装置が、映像データに対して圧縮処理を行い、前記圧縮処理済みの前記映像データを送信するステップと、映像受信装置が、前記映像送信装置から前記圧縮処理済みの前記映像データを受信し、受信した前記映像データの伸長処理を行うステップとを含み、前記映像データを送信するステップにおいて、前記映像送信装置は、前記映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理を実行し、前記注目領域に対して前記所定の圧縮処理を実行しない。
【0052】
この構成には、上述の映像伝送システムが備える特徴的な処理部に対応するステップを含む。このため、この構成によると、上述の映像伝送システムと同様の作用および効果を奏することができる。
【0053】
(17)本開示の他の実施形態に係る映像送信方法は、映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理を実行するステップと、前記所定の圧縮処理後の前記映像データを、映像受信装置に送信するステップとを含む。
【0054】
この構成には、上述の映像送信装置が備える特徴的な処理部に対応するステップを含む。このため、この構成によると、上述の映像送信装置と同様の作用および効果を奏することができる。
【0055】
(18)本開示の他の実施形態に係る映像受信方法は、映像送信装置から、映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理が実行された映像データを受信するステップと、受信した前記映像データを伸長するステップとを含む。
【0056】
この構成には、上述の映像受信装置が備える特徴的な処理部に対応するステップを含む。このため、この構成によると、上述の映像受信装置と同様の作用および効果を奏することができる。
【0057】
(19)本開示の他の実施形態に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理を実行するステップと、前記所定の圧縮処理後の前記映像データを、映像受信装置に送信するステップとを実行させる。
【0058】
この構成によると、コンピュータを、上述の映像送信装置として機能させることができる。このため、上述の映像送信装置と同様の作用および効果を奏することができる。
【0059】
(20)本開示の他の実施形態に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、映像送信装置から、映像データの画面内の所定の注目領域と、前記画面内の前記注目領域とは異なる所定の非注目領域とのうち、前記非注目領域に対して前記画面内での所定の圧縮処理が実行された映像データを受信するステップと、受信した前記映像データを伸長するステップとを実行させる。
【0060】
この構成によると、コンピュータを、上述の映像受信装置として機能させることができる。このため、上述の映像受信装置と同様の作用および効果を奏することができる。
【0061】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する趣旨ではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
【0062】
また、同一の構成要素には同一の符号を付す。それらの機能および名称も同様であるため、それらの説明は適宜省略する。
【0063】
[実施形態1]
<映像伝送システムの全体構成>
図1は、本開示の実施形態1に係る映像伝送システムの全体構成を示す図である。
図1を参照して、映像伝送システム100は、カメラ1と、映像送信装置2と、映像受信装置4と、表示装置5とを備える。
【0064】
カメラ1は、所定の対象を撮像する。カメラ1は、例えば、施設等に設置される監視カメラなどである。なお、カメラ1は、重機やドローンなどの移動体に取り付けられてもよい。
【0065】
カメラ1は、撮影対象の高精細映像を撮影する。映像データには複数の画面が含まれる。例えば、60fps(frame per second)の映像データには、1秒当たり60枚の画面が含まれる。
【0066】
より詳細には、カメラ1は、例えば、デュアルグリーン方式または4:2:2方式等に従って、8K UHDTVの解像度を有する撮影対象物の映像データを生成する。この映像データには、画面ごとの画像データが含まれる。
【0067】
デュアルグリーン方式に従って生成された60fpsの映像データの伝送レートは、例えば23.89Gbpsまたは19.91Gbpsである。また、4:2:2方式に従って生成された映像データの伝送レートは、例えば47.78Gbpsまたは39.81Gbpsである。
【0068】
映像送信装置2は、カメラ1が撮影した映像データを、ネットワーク3を介して映像受信装置4に送信する。
【0069】
映像受信装置4は、映像送信装置2から映像データを受信し、受信した映像データを表示装置5に表示する。
【0070】
<映像送信装置2の構成>
図2は、本開示の実施形態1に係る映像送信装置2の構成を示すブロック図である。
【0071】
図2を参照して、映像送信装置2は、ブロック分割部21と、バッファ部22と、差分部23と、領域決定部24と、領域指定部25と、ダウンコンバート部26と、映像整列部27と、映像圧縮部28と、圧縮映像整列部29と、送信部30とを備える。
【0072】
映像送信装置2の一部または全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路等を含むハードウェアにより実現される。
【0073】
なお、映像送信装置2は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等を備えるコンピュータにより実現することもできる。CPU等の演算処理装置上でコンピュータプログラムを実行することにより、各処理部は機能的な構成要素として実現される。
【0074】
ブロック分割部21は、通信インタフェースを含んで構成され、カメラ1が撮像した映像データを構成する画面(以下、「画像データ」ともいう)を受け、画像データを所定サイズの小ブロックに分割する処理部である。
【0075】
図3は、画像データの一例を示す図である。画像データ10は、例えば、空中を飛行する飛行機11の像を示している。
【0076】
図4は、
図3に示した画像データ10を小ブロックに分割した後の画像データ10の一例を示す図である。
図4に示すように、画像データ10は、左右および上下に規則的に配列された小ブロック12に分割される。なお、小ブロック12の個数は図示したものに限定されるものではない。
【0077】
なお、ブロック分割部21は、カメラ1から受信した映像データをバッファ部22に一時的に記憶させる。
【0078】
ブロック分割部21は、所定の順序に従って、小ブロック12を差分部23および領域指定部25に出力する。
【0079】
図5は、ブロック分割部21から差分部23および領域指定部25への小ブロック12の出力順序を説明するための図である。
図5に示すように、画像データ10は、左右および上下に規則的に配列された大ブロック14に分割される。各大ブロック14は、2×2個の小ブロック12から構成される。ブロック分割部21は、画像データ10において、処理対象の大ブロック14を左上の大ブロック14Aから右下の大ブロック14Zまでラスター順で走査する。また、ブロック分割部21は、各大ブロック14において、処理対象の小ブロック12を左上から右下までラスター順で走査して、小ブロック12を出力する。例えば、ブロック分割部21は、大ブロック14Zにおいて、小ブロック12A→小ブロック12B→小ブロック12C→小ブロック12Dの順に走査し、各小ブロック12を差分部23および領域指定部25に出力する。なお、大ブロック14を構成する小ブロック12の個数は上述したものには限定されない。例えば、大ブロック14が3×3個の小ブロック12から構成されていてもよい。
【0080】
差分部23は、ブロック分割部21から小ブロック12を順番に受け、受けた順に小ブロック12の差分処理を行う。具体的には、差分部23は、ブロック分割部21から受けた圧縮対象の画像データの小ブロック12と、当該画像データの所定フレーム前(例えば、1フレーム前)の画像データの同一ブロック位置の小ブロック12との差分処理を行う。
【0081】
図6は、差分処理を説明するための図である。
図6は、映像データを構成する画像データ10の時間的な並びを示しており、フレーム1からフレーム3までの時間的に連続する3枚の画像データ10の並びを示している。フレーム1の画像データ10が最も時間的に古く、フレーム3の画像データ10が時間的に最も新しい。差分部23は、ブロック分割部21から圧縮対象のフレーム3の画像データ10中の小ブロック12を受けたとする。差分部23は、バッファ部22に記憶されている1フレーム前のフレーム2の画像データ10から、ブロック分割部21から受けたのと同じ位置の小ブロック12を読み出す。差分部23は、フレームの異なる同位置の2つの小ブロック12間で画素ごとに輝度値の差分を計算する。
【0082】
例えば、小ブロック12のサイズはm×n画素であり、小ブロック12の各画素の輝度値をI(t,i,j)で表すものとする。ここで、tはフレーム番号であり、(i,j)は小ブロック12内の座標を表し、1≦i≦m、1≦j≦nである。
【0083】
フレーム番号tおよびt-1の小ブロック12間の差分subは、以下の式1により表される。ここで、tは圧縮対象のフレームの番号である。また、Lは輝度階調数(輝度値が8ビットの場合は256)である。
【0084】
【0085】
なお、差分処理は隣接するフレーム間で行うものには限定されない。例えば、フレーム1の画像データ10と、フレーム1と2フレーム離れたフレーム3の画像データ10との間で差分処理を行ってもよい。
【0086】
領域決定部24は、差分部23から小ブロック12間の差分subを受け、差分subと所定の閾値Tsubとを比較することにより、着目している小ブロック12を注目領域とするか非注目領域とするかを決定する。具体的には、以下の式2を満たす場合には小ブロック12を注目領域と決定し、満たさない場合には非注目領域と決定する。つまり、領域決定部24は、フレーム間で輝度値の変化の大きい小ブロック12を注目領域と決定し、輝度値の変化の小さい小ブロック12を非注目領域と決定する。
sub>=Tsub …(式2)
【0087】
領域決定部24は、注目領域または非注目領域の決定結果をブロック情報とし、ブロック情報と、画像データ10上での小ブロック12の位置情報とを合わせて領域指定部25および映像整列部27に出力する。ブロック分割部21から差分部23に出力される小ブロック12の出力順序は、上述したように事前に決定されている。このため、小ブロック12の位置情報は、出力順序に基づいて決定される。小ブロック12の位置は、画像データ10上での小ブロック12の位置が特定できる情報であれば限定されるものではなく、例えば、画像データ10上での小ブロック12の左上隅座標であってもよいし、小ブロック12の出力順序であってもよい。
【0088】
領域指定部25は、領域決定部24から受け取った小ブロック12のブロック情報に基づいて、ブロック分割部21から受け取った小ブロック12をダウンコンバート部26または映像整列部27に出力する。
【0089】
次に、領域指定部25による小ブロック12の出力処理について説明する。
図7は、領域決定部24により決定された1画面分(画像データ10)のブロック情報を示す図である。
【0090】
Bとのみ記載された大ブロック14(例えば、大ブロック14B~14D)は、大ブロック14に含まれる全て(4つ)の小ブロック12がいずれも非注目領域(以下、「ブロックB」ともいう)であることを示す。
【0091】
一方、4つの小ブロック12に分割されている大ブロック14(例えば、大ブロック14E~14I)は、注目領域(以下、「ブロックA」ともいう)のみからなる大ブロック14またはブロックAおよびBが混在した大ブロック14を示す。例えば、大ブロック14Eは、ブロックAおよびBが混在した4つの小ブロック12P~12Sからなる。また、大ブロック14Fは、ブロックAのみの4つの小ブロック12からなる。
【0092】
領域指定部25は、大ブロック14の中にブロックAが1つでも含まれる場合には、その大ブロック14に含まれる全ての小ブロック12を映像整列部27に出力する。例えば、
図7に示す小ブロック12SはブロックAと決定される。このため、領域指定部25は、小ブロック12Sが属する大ブロック14Eに含まれる全ての小ブロック12P~12Sを映像整列部27に出力する。
【0093】
一方、領域指定部25は、大ブロック14の中の小ブロック12が全てブロックBの場合には、その大ブロック14に含まれる全ての小ブロック12をダウンコンバート部26に出力する。例えば、
図7に示す大ブロック14B中の小ブロック12は全てブロックBである。このため、領域指定部25は、大ブロック14Bに含まれる全ての小ブロック12をダウンコンバート部26に出力する。
【0094】
ダウンコンバート部26は、所定の前処理としての圧縮処理を実行する圧縮処理部として機能し、前処理圧縮処理として、領域指定部25から受けた小ブロック12のサイズを縮小するダウンコンバート処理を行う。
【0095】
図8は、ダウンコンバート処理の一例を示す図である。例えば、ダウンコンバート部26は、領域指定部25から処理対象の大ブロック14に含まれる4つの小ブロック12を受け取る。ダウンコンバート部26は、大ブロック14を縦横それぞれ1/2に縮小するダウンコンバート処理を実行し、縮小ブロック16(以下、「ブロックC」ともいう)を生成する。ダウンコンバート部26は、生成した縮小ブロック16を映像整列部27に出力する。
【0096】
映像整列部27は、領域指定部25またはダウンコンバート部26から小ブロック12または縮小ブロック16を受け、領域指定部25からの出力に対応した順に整列して出力する。また、映像整列部27は、小ブロック12または縮小ブロック16の位置情報およびブロック情報を圧縮映像整列部29に出力する。
【0097】
以下では、領域指定部25、ダウンコンバート部26および映像整列部27が実行する処理について説明する。
図9は、一例として、
図7の画像データ10における大ブロック14B~14Dに対する処理を説明するための図である。
図10は、一例として、
図7の画像データ10における大ブロック14E~14Gに対する処理を説明するための図である。
【0098】
図9の上段は、領域指定部25から出力される小ブロック12の順序を示し、
図9の下段は、映像整列部27に入力される小ブロック12の順序を示す。
図10についても同様である。
【0099】
図9を参照して、領域指定部25は、大ブロック14Bに含まれる4つの小ブロック12をラスター順にブロック分割部21から順次受ける。また、領域指定部25は、領域決定部24から4つの小ブロック12のブロック情報をラスター順に受ける。領域指定部25は、ブロック情報から4つの小ブロック12が全てブロックBであることを判定する。このため、領域指定部25は、4つのブロックBをダウンコンバート部26に出力する。ダウンコンバート部26は、領域指定部25から4つのブロックBを受け、これらのブロックBに対してダウンコンバート処理を実行することにより、縮小ブロック16(ブロックC)を生成する。ダウンコンバート部26は、生成したブロックCを映像整列部27に出力する。
【0100】
映像整列部27は、ダウンコンバート部26から受けた縮小ブロック16を、受けた順に映像圧縮部28に出力する。また、映像整列部27は、縮小ブロック16の位置情報およびブロック情報を圧縮映像整列部29に出力する。縮小ブロック16の位置情報は、縮小ブロック16の生成の元となった大ブロック14Bに含まれるいずれか(例えば、左上隅)の小ブロック12の位置情報である。縮小ブロック16のブロック情報は、縮小ブロック16が小ブロック12をダウンコンバート処理することにより生成されたことを示す情報(例えば、ブロックCを示す情報)である。
【0101】
領域指定部25、ダウンコンバート部26および映像整列部27は、大ブロック14Cおよび大ブロック14Dについても同様の処理を順次実行する。
【0102】
図10を参照して、領域指定部25は、大ブロック14Eに含まれる4つの小ブロック12P~12Sをラスター順にブロック分割部21から順次受ける。また、領域指定部25は、領域決定部24から4つの小ブロック12P~12Sのブロック情報をラスター順に受ける。領域指定部25は、ブロック情報から4つの小ブロック12の中にブロックAである小ブロック12Sが含まれることを判定する。このため、領域指定部25は、4つの小ブロック12P~12Sをラスター順で映像整列部27に出力する。
【0103】
映像整列部27は、領域指定部25から受けた小ブロック12P~12Sを、受けた順に映像圧縮部28に出力する。また、映像整列部27は、小ブロック12P~12Sの位置情報およびブロック情報を圧縮映像整列部29に出力する。小ブロック12P~12Sの位置情報およびブロック情報は、領域決定部24から受けたものと同じである。
【0104】
領域指定部25は、大ブロック14Fおよび14Gについても同様の処理を順次実行する。
【0105】
映像圧縮部28は、映像整列部27から、小ブロック12(ブロックA、B)または縮小ブロック16(ブロックC)を受ける。映像圧縮部28は、受けたブロックの順に、ブロックに対して、映像全体としての映像圧縮処理を実行し、圧縮済みブロックを圧縮映像整列部29に出力する。映像圧縮処理は、可逆圧縮処理または非可逆圧縮処理である。可逆圧縮処理とは、圧縮後のブロックを圧縮前のブロックに戻すことが可能なように圧縮する処理であり、一般に圧縮率が低く、画像により圧縮率が大きく変動する。具体的には、雑音に近い画像の圧縮率は低い。一方、シャープな画像の圧縮率は高い。一方、非可逆圧縮処理は、圧縮後のブロックを圧縮前のブロックに戻すことが不可能なように圧縮する処理である。ただし、Visually Lossless CompressionまたはVisually Reversible Compressionと呼ばれるアルゴリズムを用いた非可逆圧縮処理は、視覚的な可逆性を有する圧縮方法である。このため、本実施形態では、例えば、映像圧縮部28は、Visually Reversible
Compressionに基づく非可逆圧縮処理を行う。
【0106】
圧縮映像整列部29は、映像圧縮部28から圧縮済みブロックを受ける。圧縮映像整列部29は、受けたブロックの順に、ブロックに映像整列部27から取得した位置情報およびブロック情報を付加して送信部30に出力する。
【0107】
送信部30は、通信インタフェースを含んで構成され、位置情報およびブロック情報が付加された圧縮済みブロックを符号化して圧縮済み映像データとして映像受信装置4に送信する。
【0108】
<映像受信装置4の構成>
図11は、本開示の実施形態1に係る映像受信装置4の構成を示すブロック図である。
【0109】
図11を参照して、映像受信装置4は、受信部41と、情報抽出部42と、映像伸長部44と、映像整列部45と、アップコンバート部46と、映像合成部47とを備える。
【0110】
映像受信装置4の一部または全部は、ASICまたはFPGA等の集積回路等を含むハードウェアにより実現される。
【0111】
なお、映像受信装置4は、CPU、RAMおよびROM等を備えるコンピュータにより実現することもできる。CPU等の演算処理装置上でコンピュータプログラムを実行することにより、各処理部は機能的な構成要素として実現される。
【0112】
受信部41は、通信インタフェースを含んで構成される。受信部41は、映像送信装置2から、1画面分の圧縮済み映像データを受信し、受信したデータを復号化する。復号化後のデータは、位置情報およびブロック情報が付加された圧縮済みブロックを含む。受信部41は、圧縮済みブロックを情報抽出部42および映像伸長部44に順次出力する。
【0113】
情報抽出部42は、受信部41から圧縮済みブロックを受ける。情報抽出部42は、当該ブロックから位置情報およびブロック情報を抽出し、映像整列部45および映像合成部47に出力する。
【0114】
映像伸長部44は、受信部41から圧縮済みブロックを順次受ける。映像伸長部44は、受けた順に圧縮済みブロックに対して映像伸長処理を実行し、伸長後のブロックを映像整列部45に出力する。映像伸長処理は、可逆伸長処理または非可逆伸長処理である。映像伸長部44は、映像送信装置2の映像圧縮部28の圧縮処理に対応した伸長処理を実行する。つまり、映像伸長部44は、映像圧縮部28が可逆圧縮処理を実行した場合には、その処理に対応した可逆伸長処理を実行し、映像圧縮部28が非可逆圧縮処理を実行した場合には、その処理に対応した非可逆伸長処理を実行する。
【0115】
映像整列部45は、映像伸長部44から伸長済みブロックを順次受ける。また、映像整列部45は、情報抽出部42から伸長済みブロックの位置情報およびブロック情報を受ける。映像整列部45は、位置情報に基づいて伸長済みブロックを整列する。つまり、映像整列部45は、ラスター順に伸長済みブロックを整列する。映像整列部45は、ブロック情報に基づいて、伸長済みブロックの種類を判断する。映像整列部45は、伸長済みブロックがブロックAまたはブロックBの場合には、当該ブロックを映像合成部47に出力する。映像整列部45は、伸長済みブロックがブロックCの場合には、当該ブロックをアップコンバート部46に出力する。
【0116】
アップコンバート部46は、映像整列部45からブロックCを受け、ブロックCを縦横それぞれ2倍に拡大するアップコンバート処理を実行する。つまり、アップコンバート部46は、ブロックCを高解像度化する処理を行う。アップコンバート部46は生成したアップコンバート済みブロックを映像合成部47に出力する。
【0117】
映像合成部47は、映像整列部45またはアップコンバート部46からブロックを受け、情報抽出部42からブロックの位置情報を受ける。映像合成部47は、各ブロックを位置情報が示す位置に配置することにより画像データを合成する。映像合成部47は、映像データを表示装置5に順次出力することにより、映像データを表示装置5に出力する。
【0118】
次に、映像整列部45、アップコンバート部46および映像合成部47が実行する処理について具体例を挙げて説明する。
図12は、圧縮済み映像データの一例を示す図である。
図12は、
図7に示す画像データ10を圧縮した1画面分のデータを示している。
【0119】
図7の画像データ10の1行目の大ブロック14は全てBブロックから構成される。このため、
図12に示す圧縮済み映像データの1行目は全てCブロックから構成される。画像データ10の4行目および5行目についても同様である。
【0120】
画像データ10の2行目の最初の3つの大ブロック14は全てBブロックから構成される。このため、圧縮済み映像データの2行目の最初の3つはCブロックから構成される。画像データ10の2行目の4つ目の大ブロック14Hと5つ目の大ブロック14Iとは1以上のAブロックを含む。このため、圧縮済み映像データの2行目の4つ目から11個目までは大ブロック14Hおよび14Iに含まれる小ブロック12と同じである。画像データ10の2行目の6つ目から8つ目の大ブロック14は全てBブロックから構成される。このため、圧縮済み映像データの2行目の最後の3つはCブロックから構成される。
【0121】
圧縮済み映像データの3行目についても、画像データ10の3行目と対応するように同様に構成される。
【0122】
映像整列部45は、
図12に示す圧縮済み映像データを伸長した映像データを構成するブロックを、
図12に示す位置順に受ける。つまり、映像整列部45は、左上のブロックCから右下のブロックCまでラスター順でブロックを受ける。
【0123】
映像整列部45は、ブロックCを受けた場合にはアップコンバート部46に出力する。アップコンバート部46は、ブロックCをアップコンバートして映像合成部47に出力する。映像整列部45は、ブロックAまたはBを受けた場合には映像合成部47に出力する。
【0124】
映像合成部47は、映像整列部45から受けたブロックAまたはBと、アップコンバート部46から受けたアップコンバート後のブロックCとを合成することにより、
図7に示すブロックの並びの画像データ10を生成する。
【0125】
<映像伝送システム100の処理フロー>
図13は、映像伝送システム100による処理手順の一例を示すシーケンス図である。
【0126】
図13を参照して、映像送信装置2は、カメラ1から映像データを取得する(S1)。
【0127】
映像送信装置2は、取得した映像データに対し、映像データを構成する画像データごとに圧縮処理を実行する(S2)。圧縮処理の詳細については後述する。
映像送信装置2は、圧縮済み映像データを符号化する(S3)。
【0128】
映像送信装置2は、符号化された圧縮済み映像データを映像受信装置4に送信し、映像受信装置4は当該データを受信する(S4)。
映像受信装置4は、受信した圧縮済み映像データを復号化する(S5)。
【0129】
映像受信装置4は、圧縮済み映像データを画面ごとに伸長処理する(S6)。伸長処理の詳細については後述する。
映像受信装置4は、伸長された映像データを表示装置5に出力する(S7)。
【0130】
次に、圧縮処理(
図13のステップS2)について説明する。
図14は、圧縮処理(
図13のステップS2)の詳細を示すフローチャートである。
【0131】
ブロック分割部21は、画像データを所定サイズの小ブロック12に分割する(S11)。これにより、
図4に示すように画像データ10が小ブロック12に分割される。
【0132】
映像送信装置2は、
図5に示すラスター順の大ブロック14単位で、後述するループBおよびステップS17~S21を繰り返し実行する(ループA)。
【0133】
映像送信装置2は、各大ブロック14について、ラスター順の小ブロック12単位で、後述するステップS12~S16を繰り返し実行する(ループB)。
【0134】
つまり、差分部23は、式1に従ってフレーム間で小ブロック12の差分subを算出する(S12)。
【0135】
領域決定部24は、式2に従って差分subと閾値Tsubとの比較を行う(S13)。
【0136】
領域決定部24は、式2を満たす場合(S13でYES)、小ブロック12をブロックAと決定し、小ブロック12のブロック情報および位置情報を領域指定部25および映像整列部27に出力する(S14)。領域決定部24は、式2を満たさない場合には(S13でNO)、小ブロック12をブロックBと決定し、小ブロック12のブロック情報および位置情報を領域指定部25および映像整列部27に出力する(S15)。
【0137】
領域指定部25は、種類が決定された小ブロック12をバッファ部22にバッファリングする(S16)。
【0138】
ループBの処理後、領域指定部25は、領域決定部24から受け取った小ブロック12のブロック情報に基づいて、大ブロック14中にブロックAが含まれるか否かを判断する(S17)。ブロックAが含まれる場合には(S17でYES)、領域指定部25は、バッファ部22にバッファリングされた大ブロック14に含まれる4つの小ブロック12を映像整列部27に出力する(S18)。
【0139】
ブロックAが含まれない場合には(S17でNO)、領域指定部25は、バッファ部22にバッファリングされた大ブロック14に含まれる4つの小ブロック12をダウンコンバート部26に出力する。ダウンコンバート部26は、4つの小ブロック12をダウンコンバートして縮小ブロック16を映像整列部27に出力する(S19)。
【0140】
映像整列部27は、領域指定部25またはダウンコンバート部26から受けた小ブロック12または縮小ブロック16を映像圧縮部28に出力し、映像圧縮部28が当該ブロックに映像圧縮処理を実行する(S20)。
【0141】
圧縮映像整列部29は、圧縮済みブロックに対して位置情報およびブロック情報を付加して、送信部30に出力する(S21)。
【0142】
次に、伸長処理(
図13のステップS6)について説明する。
図15は、伸長処理(
図13のステップS6)の詳細を示すフローチャートである。
【0143】
映像受信装置4は、圧縮済み映像データを構成する圧縮済みブロック単位で以下のステップS42~S48を繰り返し実行する(ループC)。
【0144】
情報抽出部42は、圧縮済みブロックから位置情報およびブロック情報を抽出し、映像整列部45および映像合成部47に出力する(S42)。
【0145】
映像伸長部44は、圧縮済みブロックに対して映像伸長処理を実行し、伸長後のブロックを映像整列部45に出力する(S44)。
【0146】
映像整列部45は、伸長済みブロックがブロックCか否かを判断する(S45)。ブロックCの場合には(S45でYES)、映像整列部45は当該ブロックをアップコンバート部46に出力し、アップコンバート部46は、ブロックCをアップコンバートし、アップコンバート済みブロックを映像合成部47に出力する(S46)。
【0147】
伸長済みブロックがブロックAまたはブロックBの場合には(S45でNO)、映像整列部45は、当該ブロックを映像合成部47に出力する(S47)。
【0148】
映像合成部47は、映像整列部45またはアップコンバート部46からブロックを受け、各ブロックを位置情報が示す位置に配置することにより画像データを合成する(S48)。
【0149】
<実施形態1の効果等>
以上説明したように、本開示の実施形態1によると、映像データの画面内の注目領域に対してダウンコンバート処理を実行せずに、非注目領域に対してダウンコンバート処理を実行した上で、圧縮済みの映像データを送信することができる。このため、注目領域についてはオリジナル映像との同一性が保持される。また、非注目領域に対しては画面内でのダウンコンバート処理が実行される。このため、画面間で圧縮処理を行うH.265などに生じる映像の遅延が生じにくい。よって、映像データの低遅延配信ができる。
【0150】
また、注目領域および非注目領域は、ブロック単位で指定される。このため、ブロック単位でダウンコンバート処理を実行することができる。これにより、圧縮処理を高速に実行することができる。
【0151】
なお、実施形態1では、大ブロック14中のすべての小ブロック12がBブロックの場合に、大ブロック14をダウンコンバートすることとしたが、大ブロック14中に1つでもBブロックが含まれている場合には、大ブロック14をダウンコンバートすることとしてもよい。
【0152】
[実施形態2]
実施形態1では、1つの大ブロック14中にAブロックおよびBブロックが混在する場合には、大ブロック14中の小ブロック12をダウンコンバートしないこととした。これに対し、実施形態2では、このような大ブロック14について、ダウンコンバートしないAブロックと、大ブロック14をダウンコンバートしたCブロックとを含む圧縮済み映像データを生成する映像伝送システム100について説明する。
【0153】
映像伝送システム100の構成は実施形態1と同様である。
また、映像伝送システム100による処理手順は実施形態1と同様である。ただし、圧縮処理(
図13のステップS2)が実施形態1とは異なる。
【0154】
図16は、映像送信装置2が実行する圧縮処理(
図13のステップS2)の詳細を示すフローチャートである。
図14に示すフローチャートと同様の処理については同じステップ番号を付す。
【0155】
ステップS14の処理の後、領域指定部25は、ブロックAを映像整列部27に出力する(S31)。
【0156】
また、ループBの処理後、領域指定部25は、領域決定部24から受け取った小ブロック12のブロック情報に基づいて、大ブロック14中にブロックBが含まれるか否かを判断する(S32)。ブロックBが含まれる場合には(S32でYES)、領域指定部25は、バッファ部22にバッファリングされた大ブロック14に含まれる4つの小ブロック12をダウンコンバート部26に出力する。ダウンコンバート部26は、4つの小ブロック12をダウンコンバートして縮小ブロック16を映像整列部27に出力する(S33)。
【0157】
以下では、領域指定部25、ダウンコンバート部26および映像整列部27が実行する処理について説明する。
図17は、一例として、
図7の画像データ10における大ブロック14E~14Gに対する処理を説明するための図である。
図17の上段は、領域指定部25から出力される小ブロック12の順序を示し、
図17の下段は映像整列部27に入力される小ブロック12の順序を示す。
【0158】
図17を参照して、領域指定部25は、大ブロック14Eに含まれる4つの小ブロック12P~12Sをラスター順にブロック分割部21から順次受ける。また、領域指定部25は、領域決定部24から4つの小ブロック12P~12Sのブロック情報をラスター順に受ける。領域指定部25は、ブロックAの小ブロック12Sが含まれることを判定し、小ブロック12Sを映像整列部27に出力する。また、領域指定部25は、4つの小ブロック12の中にブロックBが含まれることを判定する。このため、領域指定部25は、小ブロック12P~12Sをラスター順でダウンコンバート部26に出力する。ダウンコンバート部26は、小ブロック12P~12Sを受け、これらの小ブロックに対してダウンコンバート処理を実行することにより、縮小ブロック16(ブロックC)を生成する。ダウンコンバート部26は、生成したブロックCを映像整列部27に出力する。
【0159】
映像整列部27は、領域指定部25から受けた縮小ブロック16を、受けた順に映像圧縮部28に出力する。また、映像整列部27は、縮小ブロック16の位置情報およびブロック情報を圧縮映像整列部29に出力する。縮小ブロック16の位置情報およびブロック情報は、領域決定部24から受けたものと同じである。
【0160】
領域指定部25は、大ブロック14Fおよび14Gについても同様の処理を順次実行する。
【0161】
伸長処理(
図13のステップS6)の流れは、
図15に示したものと同様である。ただし、画像データ合成処理(
図15のステップS48)が一部異なる。つまり、
図17に示したように、実施形態2では1つの大ブロック14Eについて、AブロックおよびCブロックが生成される場合がある。このため、AブロックとCブロックをアップコンバートしたブロックとは領域が一部重なり合う。このため、映像合成部47は、Aブロックを配置した後に、アップコンバート済みブロックをAブロックの位置に配置する際には、Aブロックを残し、アップコンバート済みブロックをAブロックの領域を除いて配置する。これにより、Aブロックがアップコンバート済みブロックで上書きされるのを防止する。
【0162】
[実施形態3]
実施形態1または実施形態2では、小ブロック12を注目領域とするか非注目領域とするかを判定するための差分subの閾値Tsubを固定としたが、閾値Tsubを可変とすることもできる。実施形態3では、圧縮済み映像データの伝送状況に応じて閾値Tsubを変化させる例について説明する。つまり、伝送状況が悪化した場合には閾値Tsubを大きくすることにより注目領域の個数を減らし、これにより、圧縮済み映像データのデータサイズを削減する。
【0163】
映像伝送システム100の構成は実施形態1と同様である。
また、映像伝送システム100による処理手順は実施形態1と同様である。ただし、圧縮処理(
図13のステップS2)が実施形態1とは異なる。
【0164】
図18は、映像送信装置2が実行する圧縮処理(
図13のステップS2)の詳細を示すフローチャートである。
図14に示すフローチャートと同様の処理については同じステップ番号を付す。
【0165】
ステップS12の処理の後、領域決定部24は、バッファ部22に蓄積されている未処理のバッファデータ量が閾値Tdata1よりも大きいか否かを判断する(S33)。なお、ブロック分割部21は、バッファ部22にカメラ1から受信した映像データを順次記憶させるが、映像送信装置2から映像受信装置4への圧縮済み映像データの伝送に遅延が発生すると、バッファ部22の未処理のバッファデータ量が増加することとなる。つまり、未処理のバッファデータ量が、映像データの送信状況を示す送信状況情報としての役割を果たす。
【0166】
未処理のバッファデータ量がTdata1よりも大きい場合には(S33でYES)、領域決定部24は閾値Tsubをα(正の定数)だけ大きくする。これにより、注目領域を生成されにくくすることができる。
【0167】
未処理のバッファデータ量がTdata1以下の場合には(S33でNO)領域決定部24は、未処理のバッファデータ量が閾値Tdata2以下か否かを判断する(S35)。ここで、Tdata2はTdata1以下の値である。未処理のバッファデータ量が閾値Tdata2以下の場合には(S35でYES)、ブロック分割部21は閾値Tsubをβ(正の定数)だけ小さくする。これにより、注目領域を生成されやすくすることができる。
なお、αとβは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0168】
未処理のバッファデータ量が閾値Tdata2よりも大きい場合(S35でNO)、またはS34もしくはS36の処理の後、ステップS13以降の処理が実行される。
【0169】
実施形態3によると、未処理のバッファデータ量が増加した場合に注目領域と判定される小ブロック12の個数を減少させることができる。映像データの伝送レートが低下すると未処理のバッファデータ量が増加する。つまり、実施形態2によると、映像データの伝送レートが低下した場合に注目領域のサイズを小さくすることにより伝送される映像データのサイズを小さくすることができる。これにより、映像データの低遅延配信ができる。
【0170】
[実施形態4]
実施形態1から実施形態3では小ブロック12間の差分subに基づいて注目領域を決定した。実施形態4では、ユーザが注目領域を指定する。
【0171】
映像伝送システム100の構成は実施形態1と同様である。ただし、映像送信装置2および映像受信装置4の構成が実施形態1とは一部異なる。
【0172】
図19は、本開示の実施形態4に係る映像送信装置2の構成を示すブロック図である。
【0173】
図19を参照して、実施形態4に係る映像送信装置2は、ブロック分割部21と、バッファ部22と、領域指定部25と、ダウンコンバート部26と、映像整列部27と、映像圧縮部28と、圧縮映像整列部29と、送信部30と、受信部31とを備える。処理部21、22及び25~30は、
図2に示したものと同様である。
【0174】
受信部31は、映像受信装置4から注目領域情報を受信する。注目領域情報は、映像データの画面中における注目領域の位置を示す情報である。注目領域情報は、例えば、注目領域の左上隅座標を含んでいてもよいし、小ブロック12の位置に対応付けられた番号であってもよい。なお、注目領域情報は、注目領域の位置情報の代わりに非注目領域の位置情報を含んでいてもよい。また、注目領域情報は、注目領域の位置情報および非注目領域の位置情報の両方を含んでいてもよい。
【0175】
領域指定部25は、受信部31が受信した注目領域情報に基づいて、ブロック分割部21が分割した小ブロック12をダウンコンバート部26または映像整列部27に出力する。つまり、領域指定部25は、注目領域の小ブロック12を映像整列部27に出力し、非注目領域の小ブロック12をダウンコンバート部26に出力する。
【0176】
図20は、本開示の実施形態4に係る映像受信装置4の構成を示すブロック図である。
【0177】
図20を参照して、実施形態4に係る映像受信装置4は、受信部41と、情報抽出部42と、映像伸長部44と、映像整列部45と、アップコンバート部46と、映像合成部47と、位置情報取得部48と、注目領域決定部49と、送信部50とを備える。処理部41~47は、
図11に示したものと同様である。
【0178】
位置情報取得部48は、ユーザがマウスやキーボード等の入力手段を操作して入力した注目領域の位置情報を取得し、取得した位置情報を注目領域決定部49に出力する。なお、位置情報取得部48は、映像受信装置4に接続された処理装置から注目領域の位置情報を取得してもよい。例えば、処理装置は、映像受信装置4から映像データを受信し、その映像データに基づいて、画像処理を行うことにより注目領域の位置情報を決定したり、人工知能を用いて注目領域の位置情報を決定したりする。処理装置は、決定した注目領域の位置情報を映像受信装置4に出力することにより、映像受信装置4の位置情報取得部48が、当該位置情報を取得する。
【0179】
注目領域決定部49は、位置情報取得部48から位置情報を受け、注目領域を指定するための注目領域情報を生成する。例えば、注目領域決定部49は、注目領域の小ブロック12の左上隅座標または注目領域の小ブロック12の位置に対応付けられた番号を含む注目領域情報を生成する。注目領域決定部49は、生成した注目領域情報を送信部50に出力する。
【0180】
送信部50は、注目領域決定部49から注目領域情報を受け、映像送信装置2に送信する。
次に、映像伝送システム100の処理の流れについて説明する。
【0181】
図21は、映像伝送システム100による処理手順の一例を示すシーケンス図である。
【0182】
図21を参照して、映像受信装置4は、ユーザ入力に基づいて生成された注目領域情報を映像送信装置2に対して送信し、映像送信装置2は注目領域情報を受信する(S8)。
【0183】
ステップS8の処理の後、
図13に示したのと同様のステップS1~S7の処理が実行される。ただし、圧縮処理(ステップS2)の内容が一部異なる。
【0184】
図22は、圧縮処理(
図21のステップS2)の詳細を示すフローチャートである。
図22に示すフローチャートは、
図14に示す圧縮処理の詳細を示すフローチャートから、小ブロック12がブロックAおよびブロックBのいずれであるかを決定する処理(
図14のステップS12~S15)を除いたものである。
【0185】
つまり、映像送信装置2は、映像受信装置4から受信した注目領域情報に基づいて、小ブロック12がブロックAおよびブロックBのいずれであるかを判断することができる。このため、
図14のステップS12~S15の処理を省略可能である。
【0186】
実施形態4によると、ユーザが指定した領域についてオリジナル映像との同一性を保持した映像データの低遅延配信ができる。例えば、映像データを予め監視対象領域が分かっている監視用途に用いる場合に、監視対象領域をユーザが注目領域として指定することで、効率的に監視処理を行うことができる。
【0187】
[実施形態5]
実施形態5では、ユーザの視線に基づいて注目領域を決定する例について説明する。
【0188】
図24は、本開示の実施形態5に係る映像伝送システムの全体構成を示す図である。
図24を参照して、映像伝送システム100Aは、カメラ1と、映像送信装置2と、映像受信装置4Aと、表示装置5及びカメラ6とを備える。
【0189】
カメラ1及び表示装置5の構成は、実施形態1に示したものと同様である。
映像送信装置2の構成は、実施形態4に示したものと同様である。
【0190】
映像受信装置4Aは、実施形態4で説明した映像受信装置4と同様に、映像送信装置2から映像データを受信し、受信した映像データを表示装置5に表示する。ただし、構成が映像受信装置4とは一部異なる。映像受信装置4Aの構成については後述する。
【0191】
図25は、表示装置5及びカメラ6の一例を示す図である。
表示装置5は、液晶ディスプレイや有機EL(electroluminescence)ディスプレイ等の画面に映像を表示するための装置である。
【0192】
表示装置5のベゼル部分にはカメラ6が内蔵されている。ただし、カメラ6は、表示装置5とは別に設けられていてもよい。例えば、カメラ6を表示装置5に取り付けて使用してもよい。なお、表示装置5の画面とカメラ6との位置関係は予め分かっているものとする。カメラ6は、表示装置5の画面を見るユーザ61Aの顔を撮影可能な位置に設けられる。特に、カメラ6は、ユーザ61Aの目を撮像可能な位置に設けられる。
【0193】
図26は、本開示の実施形態5に係る映像受信装置4Aの構成を示すブロック図である。
図26を参照して、実施形態5に係る映像受信装置4Aは、
図20に示した実施形態4に係る映像受信装置4の構成において、位置情報取得部48及び注目領域決定部49の代わりに、映像データ取得部51及び注目領域決定部49Aを備える。
【0194】
映像データ取得部51は、カメラ6からカメラ6が撮像した映像データを受信し、受信した映像データを注目領域決定部49Aに出力する。
【0195】
注目領域決定部49Aは、映像データ取得部51から映像データを受け、当該映像データに基づいて、表示装置5の画面上におけるユーザの視線位置を決定する。例えば、
図25に示すように、ユーザ61Aは視線方向71Aに目を向け、表示装置5の画面に表示されたオートバイ81を見ているものとする。視線方向71Aの検出には公知の技術を用いることができる。例えば、注目領域決定部49Aは、ユーザ61Aの映像データから、目の動かない部分(基準点)と動く部分(動点)とを検出する。ここで、基準点をユーザ61Aの目頭、動点をユーザ61Aの虹彩とする。注目領域決定部49Aは、基準点に対する動点の位置に基づいて、カメラ6の光軸の向きを基準とした場合のユーザ61Aの視線の向きを検出する(例えば、非特許文献2参照)。注目領域決定部49Aは、視線方向71Aと画面との交点を視線位置72Aとして決定する。視線位置72Aは、例えば、画面に表示される映像データの座標で示される。
【0196】
注目領域決定部49Aは、決定した視線位置72Aに基づいて、表示装置5に表示された映像データ内の注目領域を決定する。
【0197】
図27は、注目領域の決定方法について説明するための図である。
図27は、表示装置5の画面に表示される画像データ10を、複数の小ブロック12に分割した一例を示している。ユーザ61Aは、例えば、小ブロック12E内を見ているものとする。つまり、ユーザ61Aの視線位置72Aは小ブロック12E内に存在するものとする。注目領域決定部49Aは、視線位置72Aの座標から、視線位置72Aが小ブロック12Eに含まれることを判断する。注目領域決定部49Aは、小ブロック12Eを含む複数の小ブロック12により構成される領域を注目領域91Aと決定する。例えば、注目領域決定部49Aは、小ブロック12Eと小ブロック12Eに隣接する8近傍の小ブロック12とから構成される領域を注目領域91Aと決定する。
【0198】
注目領域91Aのサイズは一例であり、上記したものに限定されない。なお、人間の視覚において物の形状や色などを正確に確認できるのは視線方向から1~2度程度の中心視と呼ばれる範囲である。このため、ユーザ61Aから表示装置5までのおおよその距離が分かっている場合には、画面上での中心視も定義可能である。このため、視線位置72Aを中心とする中心視を注目領域91Aと決定してもよい。
【0199】
注目領域決定部49Aは、注目領域決定部49と同様に、注目領域を指定するための注目領域情報を生成し、生成した注目領域情報を送信部50に出力する。
【0200】
次に、映像伝送システム100Aの処理の流れについて説明する。
図28は、映像伝送システム100Aによる処理手順の一例を示すシーケンス図である。
【0201】
図28を参照して、映像受信装置4Aは、カメラ6から表示装置5の画面を見ているユーザ61Aの目の画像を含む映像データを取得する(S51)。
【0202】
映像受信装置4Aは、取得した映像データに基づいて、表示装置5に表示されている映像データにおけるユーザ61Aの注目領域を決定する。
【0203】
映像受信装置4は、決定された注目領域を示す注目領域情報を映像送信装置2に対して送信し、映像送信装置2は注目領域情報を受信する(S8)。
【0204】
ステップS8の処理の後、
図13に示したのと同様のステップS1~S7の処理が実行される。
【0205】
図29は、注目領域決定処理(
図28のステップS52)の詳細を示すフローチャートである。
【0206】
図29を参照して、映像受信装置4の注目領域決定部49Aは、ステップS51で取得した映像データに基づいて、ユーザ61Aの画面上の視線位置72Aを決定する(S61)。
【0207】
注目領域決定部49Aは、視線位置72Aを含む所定の領域を注目領域91Aと決定する(S62)。
【0208】
次に、映像伝送システム100Aの使用態様の一例について説明する。以下では、カメラ1が移動体(例えば、ドローン)に取り付けられる例を説明する。
【0209】
図30は、ドローンによる映像の撮影を模式的に示す図である。
図30を参照して、ドローン110には周囲の映像を撮影するためのカメラ1が搭載されている。ドローン110はユーザの遠隔操縦により飛行しながら、カメラ1により映像を撮影する。例えば、ドローン110は、撮像範囲120Aの映像を撮影した後に、ユーザの操作により他の位置に移動して撮像範囲120Bの映像を撮影する。
【0210】
図31及び
図32は、ドローン110を操作するためのコントローラとコントローラを操作するユーザを模式的に示す図である。
【0211】
図31を参照して、コントローラ111には、映像受信装置4Aが内蔵されているものとする。また、コントローラ111は、映像を表示するための画面112と、ドローン110を操縦するためのジョイスティック113と、コントローラ111を操作するユーザ61Cを撮影するカメラ6とを備える。ユーザ61Cがジョイスティック113を操作することにより、ドローン110の進行方向や速度などを変更することができる。
【0212】
画面112には、撮像範囲120Aの映像が表示されているものとする。ユーザ61Cは、視線方向71Cに目を向け、画面112に表示された船83を見ており、ユーザ61Cの視線は視線位置72Cにあるものとする。この場合、映像受信装置4Aは、視線位置72Cを含む所定の領域を注目領域91Cと決定する。これにより、ユーザが見ている船83は、オリジナル映像との同一性が保持される。他方、画面112上の注目領域91C以外の領域は非注目領域とされ、非注目領域に対してダウンコンバート処理が実行される。
【0213】
図32を参照して、ユーザ61Cが、視線方向71Cを変更して、画面112に表示された船84を見ており、ユーザ61Cの視線は視線位置72Cにあるものとする。この場合、映像受信装置4Aは、視線位置72Cを含む所定の領域を注目領域91Cと決定する。これにより、ユーザが見ている船84は、オリジナル映像との同一性が保持される。他方、画面112上の注目領域91C以外の領域は非注目領域とされ、ダウンコンバート処理が実行される。
【0214】
実施形態5によると、例えば、表示装置5の画面内でのユーザの視線位置の近傍の領域が注目領域とされ、それ以外の領域が非注目領域とされる。このため、ユーザが見ている画面内の領域においてはオリジナル映像との同一性が保持され、ユーザが見ていない領域においては所定の圧縮処理が実行される。よって、画面を見るユーザに違和感を与えることなく、映像データの圧縮及び低遅延配信を行うことができる。
【0215】
[実施形態6]
実施形態5では、ユーザの視線位置に応じて注目領域を決定する例について説明した。実施形態6では、視線位置の持続時間に基づいて注目領域を固定する例について説明する。ユーザが画面上の同じ位置を長時間注視している場合には、その位置への関心が高いためと考えられる。このため、注視位置からユーザが視線をそらしたとしても、再度その位置を見る可能性が高いと考えられる。このため、長時間同じ位置を注視している場合には、注目領域を固定する。
【0216】
実施形態6に係る映像伝送システムの構成は実施形態5と同様である。ただし、映像受信装置4の注目領域決定部49Aによる処理が実施形態5とは異なる。
【0217】
図33は、本開示の実施形態6に係る注目領域決定処理(
図28のステップS52)の詳細を示すフローチャートである。
【0218】
図27及び
図33を参照して、映像受信装置4の注目領域決定部49Aは、注目領域91Aが固定されているか否かを判断する(S71)。注目領域91Aが固定中であれば(S71においてYES)、注目領域決定処理(
図28のステップS52)を終了する。
【0219】
注目領域91Aが固定されていなければ(S71においてNO)、注目領域決定部49Aは、ステップS61及びS62の処理を実行する。これらの処理は、
図29に示したものと同様である。
【0220】
注目領域決定部49Aは、ステップS61で検出された視線位置の情報を図示しない記憶装置に、視線位置の検出時刻の情報とともに記録する(S72)。
【0221】
注目領域決定部49Aは、記憶装置に記録された視線位置及び検出時刻の情報に基づいて、視線位置が一定時間以上同じ小ブロックに留まっているかを判定する(S73)。例えば、注目領域決定部49Aは、視線位置が小ブロック12E内に存在する状態が一定時間以上続いているかを判定する。
【0222】
判定結果が真であれば(S73でYES)、注目領域決定部49Aは、注目領域91Aを、その後所定時間固定する(S74)。
【0223】
判定結果が偽であれば(S73でNO)、注目領域決定部49Aは、注目領域決定処理(
図28のステップS52)を終了する。
【0224】
実施形態6によると、ユーザが画面内の所定位置又は所定位置の近傍を注視することにより、注目領域を所定時間固定することが可能となる。ここで、所定位置の近傍とは、例えば、所定位置と同じ小ブロックに属する位置を示す。これにより、ユーザが、上記の注視を行った後に視線を一瞬そらした場合であっても、注目領域は固定されたままである。よって、その後に、ユーザが元の位置に視線を戻した場合には、即座に、オリジナル映像と同一性が保持された映像を見ることができる。ただし、所定位置の近傍の定義は上記したものに限定されない。
【0225】
[実施形態7]
実施形態5及び実施形態6では、ユーザ数が1の例を説明した。実施形態7では、ユーザ数が複数の例について説明する。
【0226】
実施形態7に係る映像伝送システムの構成は実施形態5と同様である。ただし、映像受信装置4Aの注目領域決定部49Aが決定する注目領域が複数である点が、実施形態5とは異なる。
【0227】
図34は、表示装置5及びカメラ6の一例を示す図である。
図34に示す表示装置5及びカメラ6は、
図25に示したものと同様である。実施形態7では、実施形態5とは異なり、複数のユーザが表示装置5の画面を見ているものとする。例えば、ユーザ61A及びユーザ61Bが表示装置5の画面を見ているものとする。例えば、ユーザ61Aは視線方向71Aに目を向け、画面に表示されたオートバイ81を見ているものとする。また、ユーザ61Bは視線方向71Bに目を向け、画面に表示された自動車82を見ているものとする。
【0228】
映像受信装置4Aの注目領域決定部49Aは、映像データ取得部51から映像データを受け、当該映像データに基づいて、表示装置5の画面上におけるユーザの視線位置を決定する。視線位置の決定方法は、実施形態5と同様である。
図34の例では、注目領域決定部49Aは、視線方向71Aと画面との交点をユーザ61Aの視線位置72Aとして決定する。また、注目領域決定部49Aは、視線方向71Bと画面との交点をユーザ61Bの視線位置72Bとして決定する。視線位置72A及び視線位置72Bは、例えば、画面に表示される映像データの座標で示される。
【0229】
注目領域決定部49Aは、決定した視線位置72A及び視線位置72Bに基づいて、表示装置5に表示された映像データ内の注目領域を決定する。
【0230】
図35は、注目領域の決定方法について説明するための図である。
図35は、表示装置5の画面に表示される画像データ10を、複数の小ブロック12に分割した一例を示している。ユーザ61Aは、例えば、小ブロック12E内を見ているものとする。つまり、ユーザ61Aの視線位置72Aは小ブロック12E内に存在するものとする。注目領域決定部49Aは、視線位置72Aの座標から、視線位置72Aが小ブロック12Eに含まれることを判断する。注目領域決定部49Aは、小ブロック12Eを含む複数の小ブロック12により構成される領域を注目領域91Aと決定する。例えば、注目領域決定部49Aは、小ブロック12Eと小ブロック12Eに隣接する8近傍の小ブロック12とから構成される領域を注目領域91Aと決定する。
【0231】
ユーザ61Bは、例えば、小ブロック12F内を見ているものとする。つまり、ユーザ61Bの視線位置72Bは小ブロック12F内に存在するものとする。注目領域決定部49Aは、視線位置72Bの座標から、視線位置72Bが小ブロック12Fに含まれることを判断する。注目領域決定部49Aは、小ブロック12Fを含む複数の小ブロック12により構成される領域を注目領域91Bと決定する。例えば、注目領域決定部49Aは、小ブロック12Fと小ブロック12Fに隣接する8近傍の小ブロック12とから構成される領域を注目領域91Bと決定する。
【0232】
注目領域91Aのサイズ及び注目領域91Bのサイズは一例であり、上記したものに限定されない。なお、人間の視覚において物の形状や色などを正確に確認できるのは視線方向から1~2度程度の中心視と呼ばれる範囲である。このため、ユーザ61A又はユーザ61Bから表示装置5までのおおよその距離が分かっている場合には、画面上での中心視も定義可能である。このため、視線位置72A及び視線位置72Bを中心とする中心視を注目領域91A及び注目領域91Bとそれぞれ決定してもよい。
【0233】
これにより、映像受信装置4Aにおいて、画面上の注目領域91A及び注目領域91B以外の領域が非注目領域とされ、非注目領域に対してダウンコンバート処理が実行される。
【0234】
実施形態4によると、ユーザごとに、当該ユーザの視線位置に基づいて注目領域が定められる。このため、複数のユーザが同一の画面上の異なる位置を見ていたとしても、それぞれのユーザの視線位置の近傍の領域が注目領域とされ、各注目領域においてオリジナル映像との同一性を保持される。このため、上記複数のユーザに違和感を与えることがない。
【0235】
なお、実施形態4では、カメラ6が撮像した映像データから複数のユーザの視線位置を決定したが、カメラ6がユーザごとに設けられていてもよい。例えば、
図34に示した例では、ユーザ61Aを撮像するためのカメラ6と、ユーザ61Bを撮像するためのカメラ6とがそれぞれ設けられていてもよい。注目領域決定部49Aは、それぞれのカメラ6が撮像した映像データから、注目領域を決定する。
【0236】
[実施形態8]
上述の実施形態では、映像データの画面内を注目領域と非注目領域とに分割した。実施形態8では、非注目領域をさらに2種類の非注目領域に分割する例について説明する。
【0237】
実施形態7に係る映像伝送システムの構成は実施形態5と同様である。ただし、映像受信装置4Aの注目領域決定部49Aが決定する非注目領域に2種類ある点が、実施形態5とは異なる。
【0238】
図36は、注目領域及び非注目領域の決定方法について説明するための図である。
図36は、表示装置5の画面に表示される画像データ10を、複数の小ブロック12に分割した一例を示している。
【0239】
注目領域決定部49Aは、実施形態5と同様に、ユーザ61Aの視線位置72Aに基づいて、注目領域91Aを決定する。次に、注目領域決定部49Aは、注目領域91Aに隣接する領域を非注目領域92Aと決定する。例えば、注目領域決定部49Aは、注目領域91Aの周囲に配置された16個の小ブロック12を非注目領域92Aと決定する。さらに、注目領域決定部49Aは、画像データ10の注目領域91A及び非注目領域92A以外の領域を非注目領域92Bと決定する。
【0240】
注目領域決定部49Aは、注目領域91A、非注目領域92A及び非注目領域92Bをそれぞれ指定するための注目領域情報を生成し、生成した注目領域情報を送信部50に出力する。送信部50は、映像送信装置2に注目領域情報を送信する。
【0241】
映像送信装置2の受信部31は、映像受信装置4Aから注目領域情報を受信し、領域指定部25に出力する。
【0242】
領域指定部25は、受信部31が受信した注目領域情報に基づいて、注目領域91Aの小ブロック12を映像整列部27に出力し、非注目領域92A及び非注目領域92Bの小ブロック12をダウンコンバート部26に出力する。その際、領域指定部25は、非注目領域の識別情報(非注目領域92A及び非注目領域92Bを識別する情報)をダウンコンバート部26に出力する。
【0243】
ダウンコンバート部26は、非注目領域の識別情報に基づいて、小ブロック12の圧縮率を変化させて、小ブロック12のダウンコンバート処理を行う。つまり、ダウンコンバート部26は、非注目領域92Aに対応する小ブロック12の方が非注目領域92Bに対応する小ブロック12に比べて圧縮率が低くなるように圧縮率を決定し、決定した圧縮率に基づいて、小ブロック12のダウンコンバート処理を行う。なお、非注目領域92A及び非注目領域92Bと圧縮率との関係は事前に設定されていてもよい。
【0244】
実施形態8によると、非注目領域の内、ユーザの視野の中心部に近い非注目領域92Aほど圧縮率を低くし、上記中心部から遠い非注目領域92Bほど圧縮率を高くして圧縮処理を行うことができる。このため、注目領域と非注目領域との境界部分において映像の見え方が急激に変化することを防ぎつつ、映像データの低遅延配信を行うことができる。
【0245】
なお、非注目領域の種類は2種類に限定されるものではなく、3種類以上あってもよい。この場合、注目領域91Aに近い非注目領域ほど圧縮率が低いのが望ましい。
【0246】
また、
図2に示した映像送信装置2の領域決定部24において、注目領域決定部49Aと同様に、複数種類の非注目領域を決定してもよい。
【0247】
また、
図20に示した映像受信装置4の注目領域決定部49において、注目領域決定部49Aと同様に、複数種類の非注目領域を決定してもよい。
【0248】
[変形例1]
上述の実施形態では小ブロック12間の差分を式1に従い算出することとしたが、差分の算出方法はこれに限定されるものではない。例えば、小ブロック12間でのPSNR(ピーク信号対雑音比)を、小ブロック12間の差分としてもよい。この場合、PSNRが大きいほど2つの小ブロック12が類似し、PSNRが小さいほど2つの小ブロック12が非類似となる。このため、映像送信装置2は、PSNRが所定の閾値よりも小さい場合に小ブロック12をブロックA(注目領域)と決定し、PSNRが所定の閾値よりも大きい場合に小ブロック12をブロックB(非注目領域)と決定する。
【0249】
[変形例2]
実施形態1~3では、小ブロック12間の差分に基づいて注目領域を決定したが、注目領域の決定方法はこれに限定されるものではない。例えば、カメラ1をドローンに取り付けた場合には、映像送信装置2はドローンの進行方向に基づいて注目領域を決定してもよい。例えば、ドローンの進行方向の周辺が映された小ブロック12を注目領域と決定してもよい。なお、ドローンの進行方向は、ドローンの制御装置から受信するようにしてもよい。また、画像中の被写体の動きからドローンの進行方向を求めてもよい。例えば、カメラ1をドローンの正面に取り付けた場合に画像中の被写体が左に移動している場合には、ドローンは右方向に進行していると判断することができる。なお、被写体の動きは、例えば、画像処理によりオプティカルフローを算出することにより求めることができる。
【0250】
変形例2によると、ドローンの進行方向に基づいて定められる注目領域についてオリジナル映像との同一性を保持した映像データの低遅延配信ができる。これにより、例えば、ドローンを安定的に飛行させることができる。なお、カメラ1の取り付け対象はドローンに限定されるものではなく、重機等の他の移動体であってもよい。
【0251】
[変形例3]
また、映像データが外観検査の対象物の像を含む場合には、対象物の検査箇所を含む領域を注目領域としてもよい。注目領域は、実施形態4に示した方法に従いユーザが指定するようにしてもよいし、映像受信装置4に接続された処理装置が指定するようにしてもよい。
【0252】
変形例3によると、外観検査の対象物の検査箇所についてオリジナル映像との同一性を保持した映像データの低遅延配信ができる。このため、対象物の外観検査を低遅延で実行することができる。
【0253】
[変形例4]
上記実施形態および上記変形例では、小ブロック12を注目領域および非注目領域のいずれかに分類することとしたが、小ブロック12が分類される領域は、これら2種類の領域に限定されるものではない。
【0254】
例えば、小ブロック12を、注目領域と、周辺領域と、非伝送領域のいずれかに分類するものであってもよい。ここで、周辺領域は、注目領域の周辺に位置する領域(例えば、注目領域に隣接する領域)である。また、非伝送領域は、画面内の領域のうち注目領域および周辺領域以外の領域である。
【0255】
周辺領域は、注目領域の範囲外ではあるが、注目領域の周辺領域である。このため、周辺領域については、詳細な映像情報は必要無いものの、ユーザが対象を認識可能な程度の映像情報が必要である。このため、映像送信装置2は、上述の非注目領域としての周辺領域に対してダウンコンバート処理を実行するように制御する。これにより、非注目領域について、一定の視認性を確保しつつ、映像送信装置2から映像受信装置4へのデータ伝送量を減らすことができる。なお、映像送信装置2は、上述の実施形態と同様に、注目領域に対してはダウンコンバート処理を実行しない。
【0256】
また、映像送信装置2は、非伝送領域に属する小ブロック12を映像受信装置4へ伝送しない。このため、映像送信装置2から映像受信装置4へのデータ伝送量を減らすことができる。また、非伝送領域に属する小ブロック12が伝送されないことにより、映像送信装置2は、非伝送領域に対してダウンコンバート処理を実行する必要がない。このため、映像送信装置2の処理量を減らすことができる。
なお、小ブロック12を4つ以上の領域に分類するものであってもよい。
【0257】
[変形例5]
上述の実施形態1では、1つの大ブロック14中に含まれる全ての小ブロック12がBブロックの場合に、その大ブロック14に対してダウンコンバート処理を実行してCブロックを生成した(
図9)。また、1つの大ブロック14中に1つでもAブロックが含まれる場合には、その大ブロック14に対してダウンコンバート処理を実行しないこととした(
図10)。
【0258】
これに対し、映像データを構成する各画像データに含まれる全ての大ブロック14に対して、ダウンコンバート処理を実行し、その後に、ダウンコンバート処理を実行しない小ブロック12を決定してもよい。
【0259】
つまり、
図2を参照して、ブロック分割部21は、画像データを、順次、大ブロック14に分割し、領域指定部25に出力する。
【0260】
領域指定部25は、ブロック分割部21から大ブロック14を受け、ダウンコンバート部26に出力する。
【0261】
ダウンコンバート部26は、ブロック分割部21から受けた大ブロック14に対してダウンコンバート処理を実行し、Cブロックを生成する。
【0262】
映像整列部27は、Cブロックを映像圧縮部28に出力し、Cブロックの位置情報およびブロック情報を圧縮映像整列部29に出力する。
【0263】
映像圧縮部28は、映像整列部27から受けたCブロックに対して映像圧縮処理を実行し、圧縮映像整列部29に出力する。
【0264】
圧縮映像整列部29は、映像圧縮部28から圧縮済みブロックを受ける。圧縮映像整列部29は、受けたブロックの順に、ブロックに映像整列部27から取得した位置情報およびブロック情報を付加して送信部30に出力する。
【0265】
送信部30は、通信インタフェースを含んで構成され、位置情報およびブロック情報が付加された圧縮済みブロックを符号化して圧縮済み映像データとして映像受信装置4に送信する。
【0266】
ここまでの処理により、画像データを構成する大ブロック14に対してダウンコンバート処理が施された圧縮済み映像データが、映像受信装置4に送信される。
【0267】
その後、映像送信装置2は、同じ画像データに対して、実施形態1と同様の処理を実行する。ただし、大ブロック14を構成する小ブロック12が全てBブロックの場合には、その大ブロック14に対する処理は行わない。これにより、重複したCブロックの生成を防ぐことができ、AブロックまたはBブロックのみを映像受信装置4に送信することができる。
【0268】
図23は、圧縮済み映像データの一例を示す図である。
図23は、
図7に示す画像データ10を圧縮した1画面分のデータを示している。つまり、画像データ10に含まれる大ブロック14が全てCブロックに変換されるため、圧縮済み映像データの1行目から5行目までは全てCブロックとされる。
【0269】
また、圧縮済み映像データの6行目は、画像データ10の大ブロック14Hおよび14Iに含まれる小ブロック12から構成される。
【0270】
さらに、圧縮済み映像データの7行目は、画像データ10の大ブロック14E~14Gに含まれる小ブロック12から構成される。
【0271】
[変形例6]
映像送信装置2のダウンコンバート部26は、所定の圧縮処理として非注目領域内の各画素の色深度を削減する処理であってもよい。例えば、オリジナルの映像データの各画素の色深度が24bpp(bits per pixel)のフルカラーであるとする。つまり、各画素のRGB各色の輝度がそれぞれ8ビットで示されているものとする。ダウンコンバート部26は、各色の輝度を8ビットの内の上記4ビットで示した12bppの画素データに変換する。
【0272】
映像受信装置4のアップコンバート部46は、各色4ビットで示された画素データについて、各色4ビットを上位4ビットとし、下位4ビットを0でパディングした各色8ビットの24bppの画素データに変換する。
【0273】
変形例6によると、非注目領域内の各画素の色深度を低下させることができるため、映像データの低遅延配信ができる。また、非注目領域は、ユーザの視野の周辺部に相当するため、色深度が低下したとしてもユーザに気づかれにくい。
【0274】
[付記]
なお、上記実施形態および上記変形例の少なくとも一部を任意に組み合わせるとしてもよい。
【0275】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0276】
1 カメラ
2 映像送信装置
3 ネットワーク
4 映像受信装置
4A 映像受信装置
5 表示装置
6 カメラ
10 画像データ
11 飛行機
12 小ブロック
12A 小ブロック
12B 小ブロック
12C 小ブロック
12D 小ブロック
12P 小ブロック
12Q 小ブロック
12R 小ブロック
12S 小ブロック
14 大ブロック
14A 大ブロック
14B 大ブロック
14C 大ブロック
14D 大ブロック
14E 大ブロック
14F 大ブロック
14G 大ブロック
14H 大ブロック
14I 大ブロック
14Z 大ブロック
16 縮小ブロック
21 ブロック分割部
22 バッファ部
23 差分部
24 領域決定部
25 領域指定部
26 ダウンコンバート部(圧縮処理部)
27 映像整列部
28 映像圧縮部
29 圧縮映像整列部
30 送信部
31 受信部
41 受信部
42 情報抽出部
44 映像伸長部(伸長部)
45 映像整列部
46 アップコンバート部
47 映像合成部
48 位置情報取得部
49 注目領域決定部
49A 注目領域決定部
50 送信部
51 映像データ取得部
61A ユーザ
61B ユーザ
61C ユーザ
71A 視線方向
71B 視線方向
71C 視線方向
72A 視線位置
72B 視線位置
72C 視線位置
81 オートバイ
82 自動車
83 船
84 船
91A 注目領域
91B 注目領域
91C 注目領域
92A 非注目領域
92B 非注目領域
100 映像伝送システム
100A 映像伝送システム
110 ドローン
111 コントローラ
112 画面
113 ジョイスティック
120A 撮像範囲
120B 撮像範囲