(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物および半導体ナノ粒子複合体硬化膜
(51)【国際特許分類】
C09K 11/70 20060101AFI20240409BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20240409BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240409BHJP
C08K 9/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C09K11/70 ZNM
C09K11/08 A
C09K11/08 G
C08L101/00
C08K9/00
(21)【出願番号】P 2021526029
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(86)【国際出願番号】 JP2020021873
(87)【国際公開番号】W WO2020250762
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2019110305
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000186762
【氏名又は名称】昭栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城戸 信人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 洋和
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-216603(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016589(WO,A1)
【文献】特開2002-121549(JP,A)
【文献】特開2002-162501(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188300(WO,A1)
【文献】特開2019-73705(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106479503(CN,A)
【文献】国際公開第2017/038487(WO,A1)
【文献】MAHMOUD, WALEED E. ET AL.,"6-Mercaptohexanoic acid assisted synthesis of high quality InP quantum dots for optoelectronic applications",SUPERLATTICES AND MICROSTRUCTURES,2013年01月17日,vol. 56,86 - 91
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/70
C09K 11/08
C09K 9/00
C08L 101/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Science Direct
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ナノ粒子の表面に、リガンドIを含む有機リガンドが配位した半導体ナノ粒子複合体であって、
前記有機リガンドは有機基と配位性基を含むリガンドであり、
前記リガンドIは下記一般式(1)で表されるチオカルボン酸であり、
前記有機リガンドに占める前記リガンドIのモル分率が0.20mоl%~35.00mоl%であること、
を特徴とする半導体ナノ粒子複合体。
一般式(1):
HS-X-(COOH)
n (1)
(一般式(1)中、Xは(n+1)価の炭化水素基であり、nは1~3の自然数である。)
【請求項2】
前記有機リガンドは、少なくとも、前記リガンドIと、SP値が9.0以上である極性リガンドIIと、を含むことを特徴とする請求項1記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項3】
前記極性リガンドIIのSP値が9.3以上であることを特徴とする請求項2記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項4】
前記リガンドIの分子量が300以下であることを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項5】
前記極性リガンドIIの分子量が前記リガンドIの分子量より大きいことを特徴とする請求項2~4いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項6】
前記リガンドIは、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトヘキサン酸、メルカプトウンデカン酸及びチオリンゴ酸からなる群から選択される1種以上からなることを特徴とする請求項1~5いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項7】
前記リガンドIは、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸及びチオリンゴ酸からなる群から選択される1種以上からなることを特徴とする請求項1~6いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項8】
前記極性リガンドIIの配位性基が、カルボキシル基又はメルカプト基であることを特徴とする請求項2~7いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項9】
前記極性リガンドIIの有機基は、エーテル結合又はエステル結合を含むことを特徴とする請求項2~8いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項10】
前記有機リガンドは、脂肪族リガンドを含むことを特徴とする請求項2~9いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項11】
前記脂肪族リガンドは、脂肪族チオール、脂肪族カルボン酸、脂肪族アミン、脂肪族ホスフィン及び脂肪族ホスフィンオキシドからなる群から選択される1種以上からなることを特徴とする請求項10記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項12】
前記脂肪族リガンドと前記極性リガンドIIとのモル比(脂肪族リガンド/極性リガンドII)が0.10~5.00であることを特徴とする請求項10又は11記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項13】
前記脂肪族リガンドと前記極性リガンドIIとのモル比(脂肪族リガンド/極性リガンドII)が0.10~3.00であることを特徴とする請求項10~12いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項14】
前記半導体ナノ粒子は、該半導体ナノ粒子の表面に亜鉛を含有することを特徴とする請求項1~13いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項15】
前記半導体ナノ粒子はインジウムおよびリンを含むことを特徴とする請求項1~14いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項16】
前記半導体ナノ粒子複合体の蛍光粒子収率が85%以上である請求項1~15いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項17】
前記半導体ナノ粒子複合体の発光スペクトルの半値幅が38nm以下であることを特徴とする請求項1~16いずれか1項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
【請求項18】
請求項1~17いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体が有機分散媒に分散した半導体ナノ粒子複合体分散液。
【請求項19】
請求項1~17いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体が分散媒に分散した半導体ナノ粒子複合体組成物であって、前記分散媒はモノマーまたはプレポリマーである、半導体ナノ粒子複合体組成物。
【請求項20】
請求項1~17いずれか1項記載の半導体ナノ粒子複合体が高分子マトリクス中に分散した半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物および半導体ナノ粒子複合体硬化膜に関する。
【背景技術】
【0002】
量子閉じ込め効果が発現するほど微小な半導体ナノ粒子は、粒径に依存したバンドギャップを有する。光励起、電荷注入等の手段によって半導体ナノ粒子内に形成された励起子は、再結合によりバンドギャップに応じたエネルギーの光子を放出するため、半導体ナノ粒子の組成とその粒径を適切に選択することにより、所望の波長での発光を得ることができる。
【0003】
半導体ナノ粒子は、研究初期はCdやPbを含む元素を中心に検討が行われてきたが、CdやPbが特定有害物質使用制限などの規制対象物質であることから、近年では非Cd系、非Pb系の半導体ナノ粒子の研究がなされてきている。
【0004】
半導体ナノ粒子は、ディスプレイ用途、生体標識用途、太陽電池用途など、様々な用途への応用が試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】神隆著、「半導体量子ドット、その合成法と生命科学への応用」、生産と技術、第63巻、第2号、p.58-63、2011年
【文献】Fabien Dubois et al, “A Versatile Strategy for Quantum Dot Ligand Exchange” J.AM.CHEM.SOC Vol.129, No.3, p.482-483, 2007
【文献】Boon-Kin Pong et al, “Modified Ligand-Exchange for Efficient Solubilization of CdSe/ZnS Quantum Dots in Water: A Procedure Guided by Computational Studies” Langmuir Vol.24, No.10, p.5270-5276, 2008
【文献】Samsulida Abd. Rahman et al, “Thiolate-Capped CdSe/ZnS Core-Shell Quantum Dots for the Sensitive Detection of Glucose” Sensors Vol.17, No.7, p.1537, 2017
【文献】Whitney Nowak Wenger et al, “Functionalization of Cadmium Selenide Quantum Dots with Poly(ethylene glycol): Ligand Exchange, Surface Coverage, and Dispersion Stability” Langmuir, Vol.33, No.33, pp8239-8245, 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体ナノ粒子および半導体ナノ粒子複合体は、分散媒に分散させることで分散液として調製され、各分野に応用される。特に、ディスプレイ用途においては、グリコールエーテル類、およびグリコールエーテルエステル類等の極性有機分散媒に分散させた分散液を使用する。
【0008】
液相法で合成された半導体ナノ粒子および半導体ナノ粒子複合体は、疎水性が高いため、非極性分散媒への分散は容易であるが、SP値が8.5以上の極性分散媒への分散は困難であった。半導体ナノ粒子をSP値8.5以上の極性分散媒へ分散可能にする方法としては、リガンド交換法が知られている。
【0009】
リガンド交換法は、半導体ナノ粒子の表面にリガンドを結合させて得た半導体ナノ粒子複合体に含まれるリガンドを、親水基を有するリガンドに置換する方法である。これによって得られる半導体ナノ粒子複合体は、極性分散媒に分散させることが可能である。しかし、非特許文献1~非特許文献5、および特許文献1で開示されている半導体ナノ粒子複合体は、半導体ナノ粒子の極性分散媒への分散は可能になるが、発光効率が低下するという問題がある。
【0010】
そこで本発明は、上記の問題点を解決すべく、半導体ナノ粒子の高い蛍光量子効率(QY)を保ったまま、極性を有する有機分散媒に分散可能な半導体ナノ粒子複合体を提供することを目的とする。
【発明を解決するための手段】
【0011】
極性分散媒の一種である水に対して半導体ナノ粒子を分散させるためのリガンドとしてチオカルボン酸が知られている。半導体ナノ粒子にチオカルボン酸が配位した半導体ナノ粒子複合体は、アルカリ溶液で処理することにより、チオカルボン酸のカルボキシル基がイオン化してカルボン酸塩となり、このカルボン酸塩が水和によって電離するになることで静電反発が起こり、水中で分散することが可能となる。
【0012】
ところが、極性分散媒でも極性有機溶媒中の場合、溶媒と塩との相互作用が水の場合と比較して弱いため、溶媒和によってカルボン酸塩を電離させることはできず、静電反発によって分散させることはできない。また、イオン化していないチオカルボン酸リガンドは、カルボン酸同士が水素結合すること、さらにチオール基とカルボキシル基がそれぞれ別の量子ドット表面へ結合することが原因となり、凝集を招いてしまうため、極性有機分散媒中ではチオカルボン酸を用いて極性有機分散媒に分散させることは困難であった。そのため、これまでチオカルボン酸は極性有機溶媒分散のためのリガンドとして積極的に採用されてこなかった。
【0013】
しかし、有機分散媒中において分散に寄与しないチオカルボン酸を他のリガンド種と共に半導体ナノ粒子に配位させた場合、得られた半導体ナノ粒子複合体が高い蛍光量子効率を保ちつつ、極性有機溶媒へ分散することが可能であることを発明者らは見出した。
【0014】
すなわち、本発明(1)は、半導体ナノ粒子の表面に、リガンドIを含む有機リガンドが配位した半導体ナノ粒子複合体であって、
前記有機リガンドは有機基と配位性基を含むリガンドであり、
前記リガンドIは下記一般式(1)で表されるチオカルボン酸であり、
前記有機リガンドに占める前記リガンドIのモル分率が0.20mоl%~35.00mоl%であること、
を特徴とする半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
一般式(1):
HS-X-(COOH)n (1)
(一般式(1)中、Xは(n+1)価の炭化水素基であり、nは1~3の自然数である。)
【0015】
また、本発明(2)は、前記有機リガンドは、少なくとも、前記リガンドIと、SP値が9.0以上である極性リガンドIIと、を含むことを特徴とする(1)の半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0016】
また、本発明(3)は、前記極性リガンドIIのSP値が9.3以上であることを特徴とする(2)の半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0017】
また、本発明(4)は、前記リガンドIの分子量が300以下であることを特徴とする(1)~(3)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0018】
また、本発明(5)は、前記極性リガンドIIの分子量が前記リガンドIの分子量より大きいことを特徴とする(2)~(4)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0019】
また、本発明(6)は、前記リガンドIは、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトヘキサン酸、メルカプトウンデカン酸及びチオリンゴ酸からなる群から選択される1種以上からなることを特徴とする(1)~(5)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0020】
また、本発明(7)は、前記リガンドIは、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸及びチオリンゴ酸からなる群から選択される1種以上からなることを特徴とする(1)~(6)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0021】
また、本発明(8)は、前記極性リガンドIIの配位性基が、カルボキシル基又はメルカプト基であることを特徴とする(2)~(7)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0022】
また、本発明(9)は、前記極性リガンドIIの有機基は、エーテル結合又はエステル結合を含むことを特徴とする(2)~(8)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0023】
また、本発明(10)は、前記有機リガンドは、脂肪族リガンドを含むことを特徴とする(2)~(9)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0024】
また、本発明(11)は、前記脂肪族リガンドは、脂肪族チオール、脂肪族カルボン酸、脂肪族アミン、脂肪族ホスフィン及び脂肪族ホスフィンオキシドからなる群から選択される1種以上からなることを特徴とする(10)の半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0025】
また、本発明(12)は、前記脂肪族リガンドと前記極性リガンドIIとのモル比(脂肪族リガンド/極性リガンドII)が0.10~5.00であることを特徴とする(10)又は(11)の半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0026】
また、本発明(13)は、前記脂肪族リガンドと前記極性リガンドIIとのモル比(脂肪族リガンド/極性リガンドII)が0.10~3.00であることを特徴とする(10)~(12)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0027】
また、本発明(14)は、前記半導体ナノ粒子は、該半導体ナノ粒子の表面に亜鉛を含有することを特徴とする(1)~(13)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0028】
また、本発明(15)は、前記半導体ナノ粒子はインジウムおよびリンを含むことを特徴とする(1)~(14)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0029】
また、本発明(16)は、前記半導体ナノ粒子複合体の蛍光粒子収率が85%以上である(1)~(15)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0030】
また、本発明(17)は、前記半導体ナノ粒子複合体の発光スペクトルの半値幅が38nm以下であることを特徴とする(1)~(16)いずれかの半導体ナノ粒子複合体を提供するものである。
【0031】
また、本発明(18)は、(1)~(17)いずれかの半導体ナノ粒子複合体が有機分散媒に分散した半導体ナノ粒子複合体分散液を提供するものである。
【0032】
また、本発明(19)は、(1)~(17)いずれかの半導体ナノ粒子複合体が分散媒に分散した半導体ナノ粒子複合体組成物であって、前記分散媒はモノマーまたはプレポリマーである、半導体ナノ粒子複合体組成物を提供するものである。
【0033】
また、本発明(20)は、(1)~(17)いずれかの半導体ナノ粒子複合体が高分子マトリクス中に分散した半導体ナノ粒子複合体硬化膜を提供するものである。
【0034】
なお、本願において「~」で示す範囲は、その両端に示す数字を含んだ範囲とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、高い量子効率を保ったまま極性有機分散媒に分散可能な半導体ナノ粒子複合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(半導体ナノ粒子複合体)
本発明は半導体ナノ粒子に少なくとも2種以上のリガンドが配位した半導体ナノ粒子複合体に関する。本発明において、半導体ナノ粒子複合体とは、発光特性を有する半導体のナノ粒子複合体である。本発明の半導体ナノ粒子複合体は340nm~480nmの光を吸収し、発光ピーク波長が400nm~750nmの光を発光する粒子である。
【0037】
本発明の半導体ナノ粒子複合体は、半導体ナノ粒子の表面に、リガンドIを含む有機リガンドが配位した半導体ナノ粒子複合体であって、
前記有機リガンドは有機基と配位性基を含むリガンドであり、
前記リガンドIは下記一般式(1):
HS-X-(COOH)n (1)
(一般式(1)中、Xは(n+1)価の炭化水素基であり、nは1~3の自然数である。)
で表されるチオカルボン酸であり、
前記有機リガンドに占める前記リガンドIのモル分率が0.20mоl%~35.00mоl%である、半導体ナノ粒子複合体である。
【0038】
本発明の半導体ナノ粒子複合体は、半導体ナノ粒子と、該半導体ナノ粒子の表面に配位している有機リガンドと、を有する。
【0039】
本発明の半導体ナノ粒子複合体は、高い発光特性を有し、且つ、極性分散媒に分散することが可能である。
【0040】
本発明の半導体ナノ粒子複合体の発光スペクトルの半値幅(FWHM)は38nm以下であることが好ましく、さらには35nm以下であることが好ましい。発光スペクトルの半値幅が前記範囲であることで、半導体ナノ粒子複合体をディスプレイ等に応用した際に混色を低減することができる。
【0041】
本発明の半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率(QY)は、85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましい。半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率が85%以上であることで、より効率よく色変換ができる。
【0042】
本発明において、半導体ナノ粒子複合体の光学特性を、量子効率測定システムを用いて測定することができる。半導体ナノ粒子複合体を分散液に分散させ、励起光を当て発光スペクトルを得る。ここで得られた発光スペクトルより再励起されて蛍光発光した分の再励起蛍光発光スペクトルを除いた再励起補正後の発光スペクトルより蛍光量子効率(QY)と半値幅(FWHM)を算出する。分散液は例えばノルマルヘキサンやPGMEA、クロロホルム等が挙げられる。
【0043】
-半導体ナノ粒子-
本発明の半導体ナノ粒子複合体を構成する半導体ナノ粒子、すなわち、リガンドが配位する粒子は、前述した蛍光量子効率、及び半値幅のような発光特性を満たすものであれば特に限定されず、1種類の半導体からなる粒子でもよいし、2種類以上の異なる半導体からなる粒子であってもよい。半導体ナノ粒子が、2種類以上の異なる半導体からなる粒子の場合には、それらの半導体でコア-シェル構造を構成していてもよい。例えば、半導体ナノ粒子は、III族元素およびV族元素を含有するコアと、前記コアの少なくとも一部を覆うII族およびVI族元素を含有するシェルとを有するコア-シェル型の粒子であってもよい。ここで、前記シェルは異なる組成からなる複数のシェルを有していてもよく、シェル中でシェルを構成する元素の比率が変化する勾配型のシェルを1つ以上有していてもよい。
【0044】
III族元素としては、具体的にはIn、AlおよびGaが挙げられる。V族元素としては、具体的にはP、NおよびAsが挙げられる。コアを形成する組成としては、特に限定はないが、発光特性および安全性の観点からはInPが好ましい。
【0045】
II族元素としては、特に限定はないが、例えばZnおよびMg等が挙げられる。VI族元素としては、例えば、S、Se、TeおよびOが挙げられる。シェルを形成する組成としては、特に限定はないが、量子閉じ込め効果の観点からは、ZnS、ZnSe、ZnSeS、ZnTeSおよびZnTeSe等が好ましい。特に半導体ナノ粒子の表面にZn元素が存在している場合、本発明の効果をより発揮することができる。
【0046】
複数のシェルを有する場合、前述した組成のシェルが少なくとも1つ含まれていればよい。また、シェル中でシェルを構成する元素の比率が変化する勾配型のシェルを有している場合、シェルは必ずしも組成表記通りの組成である必要はない。
【0047】
ここで、本発明において、シェルがコアの少なくとも一部を覆っているかどうかや、シェル内部の元素分布は、例えば、透過型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分光法(TEM-EDX)を用いて組成分析解析することにより確認することができる。
【0048】
以下に半導体ナノ粒子の作製方法に関する例を開示する。
III族の前駆体、V族の前駆体、および必要に応じて添加物を溶媒中で混合し得られた前駆体混合液を加熱することで、半導体ナノ粒子のコアを形成することができる。
【0049】
溶媒としては配位性溶媒や非配位性溶媒が用いられる。溶媒の例としては、1-オクタデセン、ヘキサデカン、スクアラン、オレイルアミン、トリオクチルホスフィン、およびトリオクチルホスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0050】
III族の前駆体としては、前記III族元素を含む酢酸塩、カルボン酸塩、およびハロゲン化物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
V族の前駆体としては、前記V族元素を含む有機化合物やガスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前駆体がガスの場合には、前記ガス以外を含む前駆体混合液にガスを注入しながら反応させることでコアを形成することができる。
【0052】
半導体ナノ粒子は、本発明の効果を害さない限り、III族、およびV族以外の元素を1種またはそれ以上含んでいてもよく、その場合は前記元素の前駆体をコア形成時に添加すればよい。
【0053】
添加物としては、例えば、分散剤としてカルボン酸、アミン類、チオール類、ホスフィン類、ホスフィンオキシド類、ホスフィン酸類、およびホスホン酸類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。分散剤は溶媒を兼ねることもできる。
【0054】
半導体ナノ粒子のコアを形成後、必要に応じてハロゲン化物を加えることで、半導体ナノ粒子の発光特性を向上させることができる。
【0055】
ある実施形態では、In前駆体、および必要に応じて分散剤を溶媒中に添加した金属前駆体溶液を真空下で混合し、一旦100℃~300℃で6時間~24時間加熱した後、さらにP前駆体を添加して200℃~400℃で3分~60分加熱後、冷却する。さらにハロゲン前駆体を添加し、25℃~300℃、好ましくは100℃~300℃、より好ましくは150℃~280℃で加熱処理することで、コア粒子を含むコア粒子分散液を得ることができる。
【0056】
合成されたコア粒子分散液に、シェル形成前駆体を添加することにより、半導体ナノ粒子はコア-シェル構造をとり、蛍光量子効率(QY)および安定性を高めることができる。
【0057】
シェルを構成する元素はコア粒子の表面で合金やヘテロ構造、またはアモルファス構造等の構造を取っていると思われるが、一部は拡散によりコア粒子の内部に移動していることも考えられる。
【0058】
添加されたシェル形成元素は、主にコア粒子の表面付近に存在し、半導体ナノ粒子を外的因子から保護する役割を持っている。本発明の実施形態に係る半導体ナノ粒子のコア-シェル構造はシェルがコアの少なくとも一部を覆っていることが好ましく、さらに好ましくはコア粒子の表面全体を均一に覆っていることが好ましい。
【0059】
シェル形成時に添加する前駆体としては、酢酸塩、プロピオン酸塩、ミリスチン酸塩、およびオレイン酸塩等のカルボン酸塩や、ハロゲン化物、有機塩等を用いることができる。
【0060】
ある実施形態では、前述したコア粒子分散液にZn前駆体とSe前駆体を添加後、150℃~300℃、好ましくは180℃~250℃で加熱し、その後Zn前駆体とS前駆体を添加し、200℃~400℃、好ましくは250℃~350℃で加熱する。これによりコア-シェル型の半導体ナノ粒子を得ることができる。
【0061】
シェルの前駆体はあらかじめ混合し、一度で、あるいは複数回に分けて添加してもよいし、それぞれ別々に一度で、あるいは複数回に分けて添加してもよい。シェル前駆体を複数回に分けて添加する場合は、各シェル前駆体添加後にそれぞれ温度を変えて加熱してもよい。
【0062】
本発明において半導体ナノ粒子の作製方法は特に限定されず、上記に示した方法の他、従来行われている、ホットインジェクション法や、均一溶媒法、逆ミセル法、CVD法等による作製方法や、任意の方法を採用しても構わない。
【0063】
-リガンド-
本発明の半導体ナノ粒子複合体は、前記半導体ナノ粒子の表面にリガンドが配位したものである。ここで述べる配位とは、配位子が半導体ナノ粒子の表面に化学的に影響していることを表す。半導体ナノ粒子の表面に配位結合や他の任意の結合様式(例えば共有結合、イオン結合、水素結合等)で結合していてもよいし、あるいは半導体ナノ粒子の表面の少なくとも一部に配位子を有している場合には、必ずしも結合を形成していなくてもよい。
【0064】
本発明において、半導体ナノ粒子に配位するリガンドは、有機リガンドであり、有機基と配位性基を有する。半導体ナノ粒子の表面には、リガンドIを含む有機リガンドが配位している。つまり、本発明の半導体ナノ粒子複合体は、リガンドとして、リガンドIと、少なくとも1種のリガンドI以外の有機リガンドと、を含む。リガンドI以外の有機リガンドは、1種であっても、2種以上であってもよい。
【0065】
リガンドIは、下記一般式(1)で表されるチオカルボン酸である。
一般式(1):
HS-X-(COOH)n (1)
【0066】
一般式(1)中、Xは(n+1)価の炭化水素基であり、nは1~3の自然数である。リガンドIは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0067】
本発明の半導体ナノ粒子複合体において、有機リガンド全体に占めるリガンドIのモル分率は、0.20mоl%~35.00mоl%、好ましくは0.20~30.00mol%である。有機リガンド全体に占めるリガンドIのモル分率が上記範囲であることで、高い量子効率を保ったまま極性有機分散媒に分散させることが可能となる。
【0068】
リガンドIは、分子量が300以下であることが好ましい。リガンドIの分子量が300以下であることで、有機溶媒への分散性が向上する。
【0069】
リガンドIは、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトヘキサン酸、メルカプトウンデカン酸及びチオリンゴ酸からなる群から選択される1種以上であることが好ましく、さらにチオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸及びチオリンゴ酸からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0070】
リガンドI以外の有機リガンドとしては、極性リガンドIIが挙げられる。極性リガンドIIとは、有機基に電荷の偏りを有する基を含むリガンドである。極性リガンドIIは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。本発明の半導体ナノ粒子複合体は、有機リガンドとして、リガンドIと極性リガンドIIとを含むことが好ましい。極性リガンドIIのSP値は、9.0以上であることが好ましく、さらに9.3以上であることが好ましい。極性リガンドIIのSP値が上記範囲であることで、PGMEAなど極性溶媒への分散性が向上する。なお、極性リガンドのSP値はY-MB法により計算して決定することができる。
【0071】
極性リガンドIIの配位性基は、カルボキシル基又はメルカプト基であることが好ましい。極性リガンドIIの配位性基がカルボキシル基又はメルカプト基であることで、半導体ナノ粒子複合体の長期安定性が向上する。
【0072】
極性リガンドIIの有機基は、極性リガンドIIのSP値が9.0以上である限り特に制限はなく、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、ニトロ基、シアノ基、ビニル基、アリール基、ハロゲノ基、ケトン基、エーテル結合、エステル結合、シロキサン結合などの基を含むことができ、特に、エーテル結合またはエステル結合を含むことが好ましい。極性リガンドIIの有機基が、エーテル結合又はエステル結合を含むことで極性の高い有機分散媒への半導体ナノ粒子複合体の分散性が向上する。
【0073】
極性リガンドIIの分子量は、リガンドIの分子量より大きいことが好ましい。極性リガンドIIの分子量が、リガンドIの分子量より大きいことで、有機分散媒への半導体ナノ粒子複合体の分散性が向上する。
【0074】
リガンドI以外の有機リガンドとしては、脂肪族リガンドが挙げられる。有機リガンドが脂肪族リガンドを含むことで、半導体ナノ粒子複合体の分散性のウィンドウが広がり、有機分散媒としてより幅広いSP値の分散媒を選択することができる。脂肪族リガンドは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。脂肪族リガンドは、脂肪族チオール、脂肪族カルボン酸、脂肪族アミン、脂肪族ホスフィン及び脂肪族オキシドからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。そして、有機リガンドが、リガンドIに加え、極性リガンドII及び脂肪族リガンドを含むことが好ましい。
【0075】
有機リガンドが、リガンドIに加え、極性リガンドII及び脂肪族リガンドを含む場合、脂肪族リガンドと極性リガンドIIのモル比(脂肪族リガンド/極性リガンドII)は、0.10~5.00であることが好ましく、0.10~3.00であることがより好ましい。脂肪族リガンドと極性リガンドIIのモル比(脂肪族リガンド/極性リガンドII)が前記範囲にあることで、分散性のウィンドウが広がり、分散媒としてより幅広いSP値の分散媒を選択することができる。
【0076】
有機リガンドが、極性リガンドII及び/又は脂肪族リガンドを含む場合、有機リガンド全体に占めるリガンドII及び脂肪族リガンドの合計モルのモル分率は、好ましくは58.50~99.80mol%、特に好ましくは66.50~99.80mol%である。
【0077】
有機リガンドが、極性リガンドII及び/又は脂肪族リガンドを含む場合、有機リガンド全体に占めるリガンドI、リガンドII及び脂肪族リガンドの合計モルのモル分率は、好ましくは90.0~100.0mol%、特に好ましくは95.0~100.0mol%である。
【0078】
(分散液)
本発明の半導体ナノ粒子複合体分散液は、本発明の半導体ナノ粒子複合体が有機分散媒に分散した半導体ナノ粒子複合体分散液である。本発明の半導体ナノ粒子複合体は有機分散媒に分散し、半導体ナノ粒子複合体分散液を形成することができる。なお、本発明において、半導体ナノ粒子複合体が分散媒に分散している状態とは、半導体ナノ粒子複合体と分散媒とを混合させた場合に、半導体ナノ粒子複合体が沈殿しない状態、もしくは目視可能な濁り(曇り)として残留しない状態であることを表す。なお、半導体ナノ粒子複合体が有機分散媒に分散しているものを半導体ナノ粒子複合体分散液と表す。
【0079】
本発明の半導体ナノ粒子複合体は、SP値が8.0以上の有機分散媒、さらにはSP値が9.0以上の有機分散媒やSP値が10.0以上の有機分散媒にも分散し、半導体ナノ粒子複合体分散液を形成する。ここでのSP値は、前記極性リガンドのSP値の決定方法と同様に、ハンセン溶解度パラメーターから算出した値である。ハンセン溶解度パラメーターは、ハンドブック、例えば“Hansen Solubility Parameters: A User’s Handbook”,第2版、C. M. Hansen (2007),中の値や、HansonおよびAbbot et al.によって提供されているPractice(HSPiP)プログラム(第2版)を用いて決定することができる。前記ハンドブックに記載のない有機分散媒はY-MB法により計算して決定することができる。
【0080】
本発明の半導体ナノ粒子複合体は、分散させる有機分散媒として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ノルマルブチル、乳酸エチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールエーテル類、エチレングリコールアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルエステル類などを選択することが可能となる。半導体ナノ粒子複合体をこれらの有機分散媒に分散させることで、後述する硬化膜や樹脂への分散に応用する際に、半導体ナノ粒子複合体の分散性を保ったまま使用することができる。
【0081】
本発明の半導体ナノ粒子複合体を、PGMEA、PGMEに分散させることができる。フォトレジストの分野ではPGMEAおよびPGMEが希釈溶媒として一般に用いられており、半導体ナノ粒子複合体がPGMEAおよびPGMEへ分散可能であると、半導体ナノ粒子複合体をフォトレジスト分野に広く応用することができる。
【0082】
本発明の半導体ナノ粒子複合体分散液において、本発明の半導体ナノ粒子複合体は、半導体ナノ粒子を、質量分率で25質量%以上、好ましくは30質量%以上分散させることができる。
【0083】
(半導体ナノ粒子複合体組成物)
本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物は、モノマー又はプレポリマーに本発明の半導体ナノ粒子複合体が分散した半導体ナノ粒子複合体組成物である。本発明の半導体ナノ粒子複合体分散液の有機分散媒としてモノマー又はプレポリマーを選択し、半導体ナノ粒子複合体組成物を形成することができる。
モノマーは特に限定しないが、半導体ナノ粒子の応用先が幅広く選択できる(メタ)アクリルモノマーであることが好ましい。(メタ)アクリルモノマーは半導体ナノ粒子分散液の応用に応じて、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3、5、5-トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エチルヘキシルジグリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n≒2)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールエトキシ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルりん酸、アクリロイルモルホリン、ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、イロプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、およびN-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドなどの(メタ)アクリルモノマーから選択される。これらは単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。特にアクリルモノマーは半導体ナノ粒子分散媒の応用に応じて、ラウリル(メタ)アクリレート、および1、6-ヘキサジオールジ(メタ)アクリレートから選ばれる1種または2種以上の混合物であることが好ましい。
【0084】
本発明の半導体ナノ粒子複合体分散液の有機分散媒として、プレポリマーを選択することができる。プレポリマーは特に限定しないが、アクリル樹脂プレポリマー、シリコーン樹脂プレポリマー、およびエポキシ樹脂プレポリマーが挙げられる。さらに、本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物は架橋剤を添加してもよい。
【0085】
架橋剤は半導体ナノ粒子複合体組成物中のモノマーの種類によって、多官能(メタ)アクリレート、多官能シラン化合物、多官能アミン、多官能カルボン酸、多官能チオール、多官能アルコール、および多官能イソシアネートなどから選択される。
【0086】
さらに、本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物中に、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、イソヘキサン、へプタン、オクタンおよび石油エーテル等の脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびミネラルスピリット等の芳香族炭化水素類、およびジクロロメタンおよびクロロホルム等のハロゲン化アルキルなど、硬化に影響しない各種有機溶媒をさらに含むことができる。なお、上記の有機溶媒は、半導体ナノ粒子複合体組成物の希釈用としてだけでなく、有機分散媒としても用いることができる。すなわち、本発明の半導体ナノ粒子複合体を上記の有機溶媒に分散させて、半導体ナノ粒子複合体分散液とすることも可能である。
【0087】
また、本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物は、半導体ナノ粒子複合体組成物中のモノマーの種類によって、適切な開始剤や散乱剤、触媒、バインダー、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、および分散剤等を含んでもよい。
【0088】
さらに、本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物、あるいは後述する発光性ナノ粒子硬化膜の光学特性を向上するために、半導体ナノ粒子複合体組成物に散乱剤を含んでもよい。散乱剤は酸化チタンや酸化亜鉛などの金属酸化物であり、これらの粒径は100nm~500nmであることが好ましい。散乱の効果の観点から、散乱剤の粒径は200nm~400nmであることがさらに好ましい。散乱剤が含まれることで、吸光度が2倍程度向上する。散乱剤の含有量は組成物に対して2質量%~30質量%であることが好ましく、組成物のパターン性の維持の観点から5質量%~20質量%であることがより好ましい。
【0089】
(希釈組成物)
本発明の希釈組成物は、前述の本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物が有機溶媒で希釈されてなるものである。
【0090】
半導体ナノ粒子組成物を希釈する有機溶媒は特に限定されるものではなく、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、イソヘキサン、へプタン、オクタンおよび石油エーテル等の脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびミネラルスピリット等の芳香族炭化水素類、およびジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルキルなどが挙げられる。これらの中でも、幅広い樹脂への溶解性および塗膜時の被膜均一性の観点からは、グリコールエーテル類およびグリコールエーテルエステル類が好ましい。
【0091】
(半導体ナノ粒子複合体硬化膜)
本発明において、半導体ナノ粒子複合体硬化膜とは半導体ナノ粒子複合体を含有した膜であり、硬化しているものを表す。半導体ナノ粒子複合体硬化膜は、前述の半導体ナノ粒子複合体組成物または希釈組成物を膜状に硬化することで得ることができる。
【0092】
本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜は、半導体ナノ粒子複合体と高分子マトリクスを含んでいる。
【0093】
高分子マトリクスとしては特に限定はないが、(メタ)アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、マレイン酸樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。なお、前述した半導体ナノ粒子複合体組成物を硬化させることで半導体ナノ粒子複合体硬化膜を得てもよい。半導体ナノ粒子複合体硬化膜は架橋剤をさらに含んでもよい。
【0094】
膜を硬化させる方法は特に限定されないが、熱処理、紫外線処理など膜を構成する組成物に適した硬化方法により硬化することができる。
【0095】
本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜中に含まれる、半導体ナノ粒子と半導体ナノ粒子の表面に配位したリガンドは、前述した半導体ナノ粒子複合体を構成していることが好ましい。
【0096】
本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜は、半導体ナノ粒複合体子を高質量分率で含有しているため、半導体ナノ粒子複合体硬化膜の吸光度を高めることができる。半導体ナノ粒子複合体硬化膜を10μmの厚さとした時、半導体ナノ粒子複合体硬化膜の垂線方向からの波長450nmの光に対して、吸光度は1.0以上が好ましく、1.3以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。
【0097】
さらに、本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜には、高い発光特性を有する半導体ナノ粒子複合体を含有しているため、発光特性が高い半導体ナノ粒子複合体硬化膜を提供できる。半導体ナノ粒子複合体硬化膜の蛍光量子効率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
【0098】
半導体ナノ粒子複合体硬化膜の厚みは、半導体ナノ粒子複合体硬化膜を適用するデバイスの小型化するために、50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。
【0099】
本明細書に記載の構成および/または方法は例として示され、多数の変形形態が可能であるため、これらの具体例または実施例は限定の意味であると見なすべきではないことが理解されよう。本明細書に記載の特定の手順または方法は、多数の処理方法の1つを表しうる。したがって、説明および/または記載される種々の行為は、説明および/または記載される順序で行うことができ、または省略することもできる。同様に前述の方法の順序は変更可能である。
【0100】
本開示の主題は、本明細書に開示される種々の方法、システムおよび構成、並びにほかの特徴、機能、行為、および/または性質のあらゆる新規のかつ自明でない組み合わせおよび副次的組み合わせ、並びにそれらのあらゆる均等物を含む。
【実施例】
【0101】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0102】
[例1]
以下の方法に従って、InP系半導体ナノ粒子複合体の作製を行った。
(コア粒子の製造)
酢酸インジウム(0.3mmol)とオレイン酸亜鉛(0.6mmol)を、オレイン酸(0.9mmol)と1-ドデカンチオール(0.1mmol)とオクタデセン(10mL)の混合物に加え、真空下(<20Pa)で約120℃に加熱し、1時間反応させた。真空下で反応させた混合物を25℃、窒素雰囲気下にして、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(0.2mmol)を加えたのち、約300℃に加熱し、10分間反応させた。反応液を25℃に冷却し、オクタン酸クロリド(0.45mmol)を注入し、約250℃で30分間加熱後、25℃に冷却して、InP系半導体ナノ粒子の分散液を得た。
このInP系半導体ナノ粒子をコアとして使用し、コア表面に以下のようにシェルを形成してコア-シェル型半導体ナノ粒子を作製し、光学特性の測定を行った。
【0103】
(シェル形成用の前駆体)
シェルの作製にあたって、まずは以下の前駆体の調製を行った。
-Zn前駆体溶液の調製-
40mmolのオレイン酸亜鉛と75mLのオクタデセンを混合し、真空化で110℃にて1時間加熱し、[Zn]=0.4MのZn前駆体を調製した。
-Se前駆体(セレン化トリオクチルホスフィン)の調製-
22mmolのセレン粉末と10mLのトリオクチルホスフィンを窒素中で混合し、全て溶けるまで撹拌して[Se]=2.2Mのセレン化トリオクチルホスフィンを得た。
-S前駆体(硫化トリオクチルホスフィン)の調製-
22mmolの硫黄粉末と10mLのトリオクチルホスフィンを窒素中で混合し、全て溶けるまで撹拌して[S]=2.2Mの硫化トリオクチルホスフィンを得た。
上記のようにして得られた各前駆体を用いて、前記InP系半導体ナノ粒子(コア)の表面に次のようにしてシェルの形成を行った。
(シェルの形成)
コアの分散液を200℃まで加熱した。200℃において0.75mLのZn前駆体溶液、セレン化トリオクチルホスフィン(Se前駆体)を同時に添加し、30分間反応させInP系半導体ナノ粒子の表面にZnSeシェルを形成した。
さらに、1.5mLのZn前駆体溶液と0.6mmolの硫化トリオクチルホスフィン(S前駆体)を添加し、250℃に昇温して1時間反応させZnSシェルを形成した。
合成で得られた半導体ナノ粒子の反応溶液をアセトンに加え、良く混合したのち遠心分離した。遠心加速度は4000Gとした。沈殿物を回収し、沈殿物にノルマルヘキサンを加え、分散液を作製した。この操作を数回繰り返し、精製した半導体ナノ粒子を得た。
【0104】
(リガンド)
<リガンド単体の作製>
-PEG-SHの調製方法-
フラスコに210gのメトキシPEG-OH(分子量450)および93gのトリエチルアミンを収め、420mLのTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させた。溶液を0℃に冷却し、反応熱で反応溶液の温度が5℃を超えないよう注意しながら、窒素雰囲気下で51gのメタンスルホン酸クロリドを徐々に滴下した。その後、反応溶液を室温に昇温し2時間撹拌した。この溶液をクロロホルム-水系で抽出し、有機相を回収した。得られた溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムをろ過で取り除いたのち、ろ液をエバポレーションにより濃縮して、オイル状の中間体を得た。これを別のフラスコに移し、窒素雰囲気下で400mLの1.3Mのチオ尿素水溶液を加えた。溶液を2時間還流したのち、21gのNaOHを加え、さらに1.5時間還流した。反応溶液を室温まで冷却し、1M HCl水溶液をpH=7になるまで加え、中和した。得られた溶液をクロロホルム-水系で抽出し、目的とするリガンド(PEG-SH、分子量450)を得た。
【0105】
-トリエチレングリコールモノメチルエーテルチオール(TEG-SH)の調製方法-
210gのメトキシPEG-OH(分子量450)を77gのトリエチレングリコールモノメチルエーテルに変え、上記と同様に調製を行うことで、トリエチレングリコールモノメチルエーテルチオール(TEG-SH)を得た。
【0106】
-メルカプトプロピオン酸PEGエステルの調製方法-
フラスコに4.2gの3-メルカプトプロピオン酸(40mmol)と21.6gのメトキシPEG-OH(分子量450、48mmol)、および0.2gの濃硫酸を窒素雰囲気下で混合した。溶液を60℃で撹拌しながら、30mmHg以下に減圧し24時間反応した。反応溶液を室温まで冷却後トルエンに溶解し、飽和重曹水、水、飽和食塩水を用いて順に洗浄した。得られた有機相を硫酸マグネシウムを用いて乾燥したのち、有機相をろ過してエバポレーションで濃縮して目的とするリガンド(メルカプトプロピオン酸PEGエステル、分子量550)を得た。
【0107】
-PEG-COOHの調製方法-
メトキシPEG-OH(分子量400、15g)をトルエン(100mL)に60℃で溶解し、4.2gのカリウムtert-ブトキシドを加え、6時間反応させた。その後、5.5gのエチルブロモアセテートを混合物に添加し、PEG中のヒドロキシル基は酢酸エチル基によって保護した。混合物を濾過し、濾液をジエチルエーテル中で沈殿させた。沈殿を1M NaOH溶液(40mL)に溶解し、NaCl(10g)を加え、室温で1時間撹拌してPEGの末端のエチル基を除外した。この溶液を6M HClの添加によりpH3.0に調整した。得られた溶液をクロロホルム-水系で抽出し、分子量450のPEG-COOHを得た。
【0108】
(半導体ナノ粒子複合体の作製)
フラスコに、精製した半導体ナノ粒子を質量比で10質量%となるように1-オクタデセンに分散させた半導体ナノ粒子1-オクタデセン分散液を調製した。調製した半導体ナノ粒子1-オクタデセン分散液10.0gをフラスコに収め、チオカルボン酸としてチオグリコール酸を0.08gと、極性リガンドとしてトリエチレングリコールモノメチルエーテルチオール(TEG-SH)を4.0gと、脂肪族リガンドとしてドデカンチオールを1.0g添加し、窒素雰囲気下で110℃、60分間攪拌し、25℃まで冷却することで、半導体ナノ粒子複合体を得た。前記半導体ナノ粒子複合体を含む反応溶液を遠沈管に移し、4000Gで20分間遠心分離すると、透明な1-オクタデセン相と半導体ナノ粒子複合体相に分離した。1-オクタデセン相を取り除き、残った半導体ナノ粒子複合体相を回収した。
得られた半導体ナノ粒子複合体相にアセトン5.0mLを加え、分散液を作製した。得られた分散液に50mLのノルマルヘキサンを加え、4000Gで20分間遠心分離した。遠心分離後、透明な上澄みを取り除き、沈殿物を回収した。この操作を数回繰り返し、精製された半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0109】
分析内容
(蛍光量子効率測定)
また、半導体ナノ粒子の光学特性は蛍光量子効率測定システム(大塚電子製、QE-2100)を用いて測定した。合成にて得られた半導体ナノ粒子複合体を分取し、分散媒に分散させ、励起光を当て発光スペクトルを得る。ここで得られた発光スペクトルより再励起されて蛍光発光した分の再励起蛍光発光スペクトルを除いた再励起補正後の発光スペクトルより蛍光量子効率(QY)と半値幅(FWHM)を算出する。分散液はPGMEAを用いた。得られた蛍光特性と半値幅については表2に記載した。
【0110】
(安定性試験)
精製した半導体ナノ粒子複合体に、半導体ナノ粒子の濃度が1質量%となるようにクロロホルムを添加した。調製した溶液を蛍光灯照明の下、室温で72時間静置した。前記手法に基づき静置前後の蛍光量子収率を測定し、安定性(静置前の蛍光量子収率/静置後の蛍光量子収率×100)を算出した。得られた安定性について表2に記載した。
【0111】
(熱重量分析)
精製した半導体ナノ粒子複合体を示唆熱重量分析(DTA-TG)で550℃まで加熱後、10分保持し、降温した。分析後の残留質量を半導体ナノ粒子の質量とし、この値から半導体ナノ粒子複合体中に対する半導体ナノ粒子の質量比を確認した。
【0112】
(分散性試験)
前記質量比を参考に、半導体ナノ粒子複合体に、半導体ナノ粒子の濃度が1質量%になるように有機分散媒(ラウリルアクリレート(LA)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エタノール)を添加し、その時の分散状態を確認した。分散しているものには○を、沈殿、および濁りが観察されたものには×を表2に記載した。
【0113】
(1H-NMR測定)
精製された半導体ナノ粒子複合体について、半導体ナノ粒子に配位しているリガンドを、核磁気共鳴(NMR)装置(日本電子株式会社製JNM-LA400)を用いて分析した。すべての測定において溶媒には重クロロホルムを、化学シフトの内標準物質にはテトラメチルシランを使用し、1H-NMRを測定した。例1で得られた半導体ナノ粒子複合体0.8ppm~2.5ppm付近にオレイン酸のアルキル基に起因するシグナルを、3.3ppm付近にチオグリコール酸のメチレン基に起因するシグナルを、と3.5ppm~4.0ppm付近にTEG-SHのエチレングリコール骨格に起因するシグナルがそれぞれ観測された。これらのシグナルの面積比から、各リガンドの存在比を算出した。各リガンドの存在比から、有機リガンド全体に対するリガンドIのモル比、ならびに極性リガンドに対する脂肪族リガンドのモル比を算出し、表1に記載した。
【0114】
(例2)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、チオカルボン酸として3-メルカプトプロピオン酸を0.01g、極性リガンドとしてメルカプトプロピオン酸メチルを4.0g、脂肪族リガンドとしてオレイン酸を1.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0115】
(例3)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、チオカルボン酸として3-メルカプトプロピオン酸を0.01g、極性リガンドとしてPEG-SHを4.0g、脂肪族リガンドとしてオレイン酸を1.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0116】
(例4)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、チオカルボン酸としてチオリンゴ酸を0.03g、極性リガンドとしてPEG-SHを4.0g、脂肪族リガンドとして1.0gのオレイン酸を用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0117】
(例5)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、チオカルボン酸として6-メルカプトヘキサン酸を0.08g、極性リガンドとしてメルカプトプロピオン酸PEGエステルを4.0g、脂肪族リガンドとしてオレイン酸を1.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0118】
(例6)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、チオカルボン酸として11-メルカプトウンデカン酸を0.13g、極性リガンドとしてメルカプトプロピオン酸PEGエステルを4.0g、脂肪族リガンドとしてオレイン酸を1.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0119】
(例7)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、チオカルボン酸として3-メルカプトプロピオン酸を0.25g、極性リガンドとしてPEG-COOHを4.0g、脂肪族リガンドとしてオレイン酸を1.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0120】
(例8)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、チオカルボン酸として3-メルカプトプロピオン酸を0.5g、極性リガンドとしてPEG-SHを4.0g、脂肪族リガンドとしてオレイン酸を1.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0121】
(例9)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程でチオカルボン酸として0.03gの3-メルカプトプロピオン酸を、極性リガンドとしてPEG-SHを2.5g、脂肪族リガンドとしてオレイン酸を2.5g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0122】
(例10)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、チオカルボン酸として3-メルカプトプロピオン酸を0.03g、極性リガンドとしてPEG-SHを2.0g、脂肪族リガンドとしてオレイン酸を3.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0123】
(例11)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、チオカルボン酸として3-メルカプトプロピオン酸を0.03g、極性リガンドとしてPEG-SHを1.5g、脂肪族リガンドとしてオレイン酸を3.5g用いた。窒素雰囲気下で110℃、60分間攪拌し、25℃まで冷却することで、半導体ナノ粒子複合体を得た。前記半導体ナノ粒子複合体を含む反応溶液を遠沈管に移し、アセトンを加えて4000Gで20分間遠心分離すると、透明な有機相と半導体ナノ粒子複合体相に分離した。有機相取り除き、残った半導体ナノ粒子複合体相を回収した。得られた半導体ナノ粒子複合体相にノルマルヘキサン5.0mLを加え、分散液を作製した。得られた分散液に50mLのアセトンを加え、4000Gで20分間遠心分離した。遠心分離後、透明な上澄みを取り除き、沈殿物を回収した。この操作を数回繰り返し、精製された半導体ナノ粒子複合体を得た。蛍光量子効率測定の分散媒はヘキサンを用いた。
【0124】
(例12)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、チオカルボン酸としてチオグリコール酸を0.03g、極性リガンドとしてTEG-SHを4.9g、脂肪族リガンドとしてドデカンチオールを0.1g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0125】
(例13)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、チオカルボン酸としてチオグリコール酸0.03gを、極性リガンドとしてPEG-SHを5.0g用い、脂肪族リガンドは添加しなかった。それ以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0126】
(例14)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、チオカルボン酸として3-メルカプトプロピオン酸を0.03g、極性リガンドとしてPEG-NH2を4.0g、脂肪族リガンドとしてオレイン酸を1.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0127】
(例15)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、チオカルボン酸として3-メルカプトプロピオン酸を0.03g、極性リガンドとして6-メルカプト-1-ヘキサノールを3.5g、脂肪族リガンドとしてオレイン酸を1.5g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。蛍光量子効率測定の分散媒としてはエタノールを用いた。
【0128】
(例16)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、チオカルボン酸を添加せず、極性リガンドとしてメルカプトプロピオン酸メチルを4.0g、脂肪族リガンドとしてオレイン酸を1.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0129】
(例17)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、チオカルボン酸として3-メルカプトプロピオン酸を0.003g、極性リガンドとしてメルカプトプロピオン酸メチルを4.0g、脂肪族リガンドとしてオレイン酸を1.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0130】
(例18)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、チオカルボン酸として3-メルカプトプロピオン酸を0.006g、極性リガンドとしてメルカプトプロピオン酸メチルを4.0g、脂肪族リガンドとしてオレイン酸を1.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0131】
(例19)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、チオカルボン酸として3-メルカプトプロピオン酸を0.75g、極性リガンドとしてPEG-SHを4.0g、脂肪族リガンドとしてオレイン酸を1.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0132】
(例20)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、チオカルボン酸として3-メルカプトプロピオン酸を4.0g用いて、脂肪族リガンドおよび極性リガンドは添加せずにさらに飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加えて窒素雰囲気下で80℃、12時間攪拌し、25℃まで冷却することで、半導体ナノ粒子複合体を得た。前記半導体ナノ粒子複合体を含む反応溶液を遠沈管に移し、4000Gで20分間遠心分離すると、透明な1-オクタデセン相と半導体ナノ粒子複合体を含む水相に分離した。水相を回収し、大量のメタノールに半導体ナノ粒子複合体を再沈殿させた。固体をろ過により回収し、乾燥して精製された半導体ナノ粒子複合体を得た。蛍光量子効率測定の分散媒として水を用いた。
【0133】
なお、表1~表2に示されている略号の意味は次の通りである。
TEG-SH:トリエチレングリコールモノメチルエーテルチオール
MPA-Me:メルカプトプロピオン酸メチル
DDT :ドデカンチオール
【0134】
【0135】