(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】腰部アシスト装置
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20240409BHJP
A61H 3/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A61H1/02 N
A61H3/00 B
(21)【出願番号】P 2021532753
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2020025075
(87)【国際公開番号】W WO2021010129
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2019130197
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 奈々
(72)【発明者】
【氏名】小山 由朗
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕仁
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109528451(CN,A)
【文献】特開2012-024557(JP,A)
【文献】特開2016-059763(JP,A)
【文献】特開2003-144467(JP,A)
【文献】特開2005-192764(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0196789(US,A1)
【文献】特開2012-100983(JP,A)
【文献】国際公開第2017/217869(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02-3/00
A61F 5/01-5/02
B25J 11/00
A63B 21/02-21/055
A63B 23/035-23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の腰部に装着される腰部装着部と、
前記使用者の下肢の一部に装着される下肢装着部と、
前記腰部装着部と前記下肢装着部との間に延びる硬質フレームと、
前記使用者の背面側において、前記腰部装着部から前記下肢装着部に向かって延びる弾性体と
を有し
、
前記下肢装着部は、前記弾性体が取り付けられる弾性体取付部を有し、前記弾性体取付部は、硬質材料で形成され、前記硬質フレームに対する鉛直方向での相対移動が規制された状態で前記硬質フレームに接続されている、腰部アシスト装置。
【請求項2】
前記腰部装着部は、硬質材料によって形成された基部を有し、前記基部に前記硬質フレームが接続されている、請求項
1に記載の腰部アシスト装置。
【請求項3】
前記腰部装着部と前記硬質フレームとは、偽関節部によって接続されている、請求項1
または2に記載の腰部アシスト装置。
【請求項4】
前記偽関節部は、前記下肢の股関節に対応する位置に一対設けられており、
前記偽関節部は、
下肢の外側から内側に向かって延びる軸部と、
前記軸部と同軸上に配置されたコイルバネと、
前記コイルバネを被覆するゴム体と
を有している、請求項
3に記載の腰部アシスト装置。
【請求項5】
前記下肢装着部が、一方の下肢に装着される第1下肢装着部および他方の下肢に装着される第2下肢装着部を有し、
前記硬質フレームが、前記腰部装着部から前記一方の下肢の側方のうち外側を通って前記第1下肢装着部まで延びる第1硬質フレームと、前記腰部装着部から前記他方の下肢の側方のうち外側を通って前記第2下肢装着部まで延びる第2硬質フレームとを有している、請求項1~
4のいずれか1項に記載の腰部アシスト装置。
【請求項6】
前記弾性体が、前記腰部アシスト装置から着脱自在である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の腰部アシスト装置。
【請求項7】
前記弾性体が、前記弾性体の張力を調整するために長さの調節が可能な長さ調節機構を備えている、請求項1~
6のいずれか1項に記載の腰部アシスト装置。
【請求項8】
前記弾性体が布帛からなる、請求項1~
7のいずれか1項に記載の腰部アシスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰部アシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物の運搬作業や、農作業、介護作業など、各種作業において、腰部の負担を軽減する装置が用いられている。このような装置の1つとして、特許文献1には、リュックサックのように背負うことにより着用する腰部負担軽減具が開示されている。
【0003】
特許文献1の腰部負担軽減具は、背負うことにより介護者の背中に着用されるフレームと、介護者の下肢に装着される下肢脱着具と、弾性体とを備えている。下肢脱着部は、膝関節の下にマジックテープ(登録商標)によって締着して巻き付けられ、フレームの下端と下肢脱着具とが弾性体によって連結されている。この特許文献1の腰部負担軽減具では、介護者が前屈などによって腰を曲げた際に、弾性体の復元力によって介護者の腰部への負担を軽減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
しかし、特許文献1の腰部負担軽減具のように、下肢の一部を締め付けた状態で用いる場合、いくつかの問題がある。たとえば、下肢脱着具を下肢に締め付けた状態で、介護者等の使用者が前屈をした場合、下肢脱着具には、伸長した弾性体の復元力によって、最初に装着した装着位置から上側に移動しようとする力が加わる。そのため、介護作業を繰り返す間に下肢脱着具が当初の装着位置から上にずり上がってしまう。
【0006】
この下肢脱着具のずり上がりは、使用者にとって不快なだけではなく、フレームの下端と下肢脱着具との間の離間距離が短くなってしまう。この場合、使用者が前屈しても、当初想定していた弾性体の伸び量が得られず、弾性体の復元力によるアシスト力が低下してしまう。また、下肢脱着具のずり上がりを防ぐために、下肢脱着具を下肢に強く締め付けた場合には、ずり上がりは多少抑制されるが、強い締め付けによる圧迫感や痛みが生じてしまう。また、下肢脱着具がずり上がりにくい位置(たとえば膝下など)に下肢脱着具を取り付けた場合には、下肢脱着具と引っ掛かる人体の部位(膝下など)に痛みが生じる場合がある。このように、上述した腰部負担軽減具のような構成では、作業時に着用感が不快であるとともに、作業時にアシスト力が低下してしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明はかかる問題点に鑑みて、着用感が良好で、所望のアシスト力を継続して得ることが可能な、腰部アシスト装置を提供することを目的とする。
【0008】
上記課題を解決する本発明の腰部アシスト装置には、以下の構成が主に含まれる。
【0009】
使用者の腰部に装着される腰部装着部と、前記使用者の下肢の一部に装着される下肢装着部と、前記腰部装着部と前記下肢装着部との間に延びる硬質フレームと、前記使用者の背面側において、前記腰部装着部から前記下肢装着部に向かって延びる弾性体とを有している、腰部アシスト装置。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の腰部アシスト装置の装着状態を示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態の腰部アシスト装置の装着状態を示す背面図である。
【
図3】本発明の一実施形態の腰部アシスト装置の装着状態を示す側面図である。
【
図4】
図1の腰部アシスト装置の腰部ベルトおよび締付ベルトを取り除いた状態の正面図である。
【
図5】
図1の腰部アシスト装置の腰部ベルトおよび締付ベルトを取り除いた状態の側面図である。
【
図6】
図1の腰部アシスト装置の腰部ベルトおよび締付ベルトを取り除いた状態の斜視図である。
【
図7】
図1の腰部アシスト装置の腰部装着部と硬質フレームとの間に設けられた偽関節部を示す図である。
【
図8】
図3に示される状態から使用者が前屈姿勢になったときの、腰部アシスト装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の腰部アシスト装置を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の腰部アシスト装置は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1~
図3に示されるように、本実施形態の腰部アシスト装置1は、腰部装着部2と、下肢装着部3と、硬質フレーム4と、弾性体5とを有している。腰部アシスト装置1は、後述するように、使用者が正立姿勢から前屈した際、前屈姿勢から正立姿勢に戻る際(
図3および
図8参照)などにおいて、弾性体5が伸長したときの弾性力によって、人体の筋張力を補助し、腰部W(および大腿部T)に加わる負荷を軽減する。
【0013】
腰部アシスト装置1の用途は特に限定されない。腰部アシスト装置1は、たとえば、荷物の運搬作業や、農作業、介護作業、家事などの、各種作業において、腰部Wの負担を軽減する際に用いられる。腰部アシスト装置1は、使用者が衣服を着用した状態で、衣服の上から着用できるように構成されている。本実施形態の腰部アシスト装置1は、腰部Wのアシストに空気圧やモータ等の動力は用いておらず、基本的には弾性体5の弾性力によるアシストを意図している。
【0014】
以下、本実施形態の腰部アシスト装置1の各構成について説明する。
【0015】
腰部装着部2は、
図1~
図3に示されるように、腰部アシスト装置1のうち、使用者の腰部Wに装着される部位である。なお、
図1~
図3において、使用者は二点鎖線で示されている。
【0016】
腰部装着部2の形状や構造は、使用者の腰部Wに装着することができれば、特に限定されない。本実施形態では、腰部装着部2は、腰部Wの周囲に巻き付けられて装着されている。具体的には、腰部装着部2は、腰部Wの背面側に装着される基部21と、腰部Wに巻き付けられる腰部ベルト22とを有している。
【0017】
基部21は、腰部Wの背面側に装着される。本実施形態では、基部21は、使用者の臀部G(
図2および
図3参照)を覆うことなく、臀部Gの上方において腰部Wの背面側に装着されるように構成されている。基部21を構成する材料は特に限定されないが、たとえば、基部21に接続された弾性体5から基部21に対して張力が加わった際に破損しない程度の剛性を有する硬質材料によって構成される。これにより、基部21に弾性体5が接続され、弾性体5に張力が加わった際に、弾性体5の腰部W側の位置を所望の位置に保持しやすくなる。基部21を構成する材料としては、たとえば、アルミニウム、鉄、チタン等の金属や、ナイロン、塩化ビニル、アクリル、ABS、ポリカーボネイト、ポリプロピレン、ポリエチレン、カーボン、繊維強化プラスチック(FRP)等の硬質樹脂とすることができる。
【0018】
基部21は、本実施形態では、
図2および
図3に示されるように、上部フレーム21aと、下部フレーム21bとを有し、上部フレーム21aおよび下部フレーム21bは、腰部Wの両側部W1、W2に対応する部位において、下肢L1、L2側に向かって湾曲して合流している。基部21は、鉛直方向Vに上部フレーム21aおよび下部フレーム21bを接続する(複数の)補強フレーム21cを有している。
【0019】
腰部ベルト22は、腰部Wに巻き付けられ、腰部装着部2を腰部Wの所定の位置に保持する。本実施形態では、腰部ベルト22は、基部21に取り付けられている。腰部ベルト22が腰部Wに巻き付けられることによって、基部21が所定の位置に保持される。腰部ベルト22は、たとえば、
図1に示されるように、腰部Wの正面側において重なるように構成された帯状のベルトとして構成される。腰部ベルト22は、たとえば、合成繊維等によって構成された生地に弾性糸が挿入されて伸縮可能に構成される。腰部ベルト22は、端部に面ファスナー(図示せず)を有し、腰部ベルト22を所望の張力で腰部Wに巻き付けることができる。なお、
図1~
図3に示されるように、腰部装着部2は、腰部ベルト22に加えて、締付ベルト23を有していてもよい。締付ベルト23は、端部にバックルを有し、長さ調整が可能に構成され、所望の締付状態で腰部装着部2を腰部Wに固定することができる。この締付ベルト23によって、腰部装着部2を腰部Wに対してさらに安定して装着することができる。
【0020】
なお、腰部装着部2は、使用者の腰部Wに装着することが可能であれば、基部21、腰部ベルト22の一方のみを有している構成であってもよい。
【0021】
下肢装着部3は、腰部アシスト装置1のうち、使用者の下肢L1、L2の一部に装着される部位である。本実施形態では、
図1および
図2に示されるように、下肢装着部3は、一方の下肢(右脚)L1に装着される第1下肢装着部3aおよび他方の下肢(左脚)L2に装着される第2下肢装着部3bを有している。
【0022】
下肢装着部3は、使用者の下肢L1、L2を動作させた際に下肢L1、L2の動作に追従するように、下肢L1、L2の外周の一部を覆うように装着される。本実施形態では、下肢装着部3は環状に形成され(
図6参照)、下肢L1、L2の外周の全体を取り囲んでいる。下肢装着部3は、下肢L1、L2の動作に追従することができれば、たとえば鉛直方向Vに垂直な断面が略C字状等、外周の一部に隙間を有しているものであってもよい。下肢装着部3は、図示は省略しているが、下肢L1、L2への装着が容易となるように、下肢装着部3の一部が開閉可能に構成されている。たとえば、下肢装着部3は、下肢装着部3の開閉部(前部)を基部(後部)に対して開閉可能とするためのヒンジ部と、下肢装着部3の開閉部を基部に対して閉鎖状態で固定するための係止部(たとえばバックルなど)とを有することにより、下肢装着部3の一部を開閉可能とすることができる。なお、下肢装着部3を開閉可能にする構成は特に限定されない。
【0023】
下肢装着部3は、
図4~
図6に示されるように、硬質フレーム4に接続される。本実施形態では、下肢装着部3は、硬質フレーム4に対して鉛直方向Vに移動することが規制された状態で接続されている。本実施形態では、下肢装着部3は、硬質フレーム4に対して一体成形されているが、腰部アシスト装置1の使用時に、硬質フレーム4に対する鉛直方向Vでの下肢装着部3の移動が規制されるように接続されていれば、一体に成形される必要はない。
【0024】
また、下肢装着部3は、
図4~
図6に示されるように、腰部装着部2と弾性体5を介して接続されている。下肢装着部3は、弾性体5が取り付けられる弾性体取付部31を有している(
図5および
図6参照)。弾性体取付部31は、下肢装着部3の背面側となる後部に設けられている。本実施形態では、弾性体取付部31は、下肢装着部3の後部に設けられたスリットを有する部位であり、弾性体5を挿通可能に構成されている。弾性体取付部31の形状や構造は、張力が加わった状態で弾性体5の取付状態を維持することができれば、特に限定されない。
【0025】
本実施形態では、弾性体取付部31は、硬質材料で形成され、硬質フレーム4に対する鉛直方向Vでの相対移動が規制された状態で硬質フレーム4に接続されている。これにより、後述するように、弾性体5に張力が加わった際に、弾性体取付部31(すなわち下肢装着部3)が鉛直方向Vで上側にずり上がることがさらに規制される。
【0026】
なお、本実施形態では、弾性体取付部31は、下肢装着部3の他の部位と一体成形されている。しかし、硬質フレーム4に対する弾性体取付部31の鉛直方向Vでの相対移動が規制されていれば、下肢装着部3の弾性体取付部31を除く他の部位は、硬質材料以外の材料によって形成されていてもよい。たとえば、下肢装着部3が、硬質フレーム4と一体に形成された硬質材料で構成された弾性体取付部31と、弾性体取付部31とは別に、下肢L1、L2に巻き付けられる、腰部ベルト22と同様の材料で構成された柔軟な下肢用ベルト(図示せず)とを有するような構造であってもよい。この場合、弾性体5の張力は弾性体取付部31には加わるが下肢用ベルトには加わらないので、下肢L1、L2に下肢用ベルトを巻き付けても、下肢用ベルトのずり上がりは生じない。また、この場合、下肢用ベルトのずり上がりが生じないので、下肢用ベルトを下肢L1、L2に対して必要以上に強く巻き付ける必要がない。
【0027】
下肢装着部3を構成する材料は特に限定されないが、たとえば、所定の剛性を有する硬質材料によって構成されることが好ましい。下肢装着部3を構成する硬質材料としては、たとえば、アルミニウム、鉄、チタン等の金属や、ナイロン、塩化ビニル、アクリル、ABS、ポリカーボネイト、ポリプロピレン、ポリエチレン、カーボン、繊維強化プラスチック(FRP)等の硬質樹脂とすることができる。なお、本実施形態では、下肢装着部3の全体が硬質材料によって構成されているが、一部(たとえば、弾性体取付部31)が硬質材料によって構成され、他の部位は硬質材料以外によって構成されていてもよい。なお、後述するように、硬質フレーム4によって下肢装着部3のずり上がり効果が得られるので、下肢装着部3は必ずしも硬質である必要はない。
【0028】
本実施形態では、下肢装着部3は、下肢L1、L2のうち、膝N近傍の位置に装着されるように構成されている。具体的には、下肢装着部3は、膝Nの上部の大腿部Tに装着される。下肢装着部3は、たとえば、下肢L1、L2の付け根および膝Nの中間位置と、膝Nとの間の領域に装着されるように構成されていることが好ましい。なお、下肢装着部3は、膝Nよりも下部に設けられていてもよい。
【0029】
また、下肢装着部3は、特に図示はしていないが、鉛直方向Vにおける位置を調節できるように構成されていてもよい。たとえば、下肢装着部3は、硬質フレーム4に対する鉛直方向Vでの位置を調節できるように硬質フレーム4に接続されていてもよい。この場合、使用者の身長や体型に応じて、下肢装着部3を鉛直方向Vで最適な位置に位置付けることができる。下肢装着部3を位置調節するための位置調節機構の構造は特に限定されない。たとえば、下肢装着部3を硬質フレーム4に対して鉛直方向Vに相対移動できるように構成し、下肢装着部3の硬質フレーム4に対する位置を調節した後に、所定の固定具によって下肢装着部3の硬質フレーム4に対する位置を固定することによって、下肢装着部3の位置を調節することができる。
【0030】
弾性体5は、
図4~
図6に示されるように、腰部装着部2と下肢装着部3とに接続されている。弾性体5は、使用者の背面側において、腰部装着部2から下肢装着部3に向かって延びている。これにより、後述するように、使用者が前屈した際に弾性体5は伸長し(
図8参照)、伸長した際の張力によって、使用者が前屈姿勢から正立姿勢へ復帰する際のアシスト力を発生させる。
【0031】
弾性体5の種類は、腰部装着部2と下肢装着部3とを繋ぐ方向で伸縮可能であり、使用者が前屈姿勢から正立姿勢へ復帰する際のアシスト力を発生させることができれば、特に限定されない。本実施形態では、弾性体5は伸縮可能な布帛によって構成されている。弾性体5が布帛によって構成されている場合、弾性体5の製造が容易で、衣服などの上に装着した際に違和感がない。なお、弾性体5は、ゴムチューブやバネ等によって構成されていてもよい。
【0032】
本実施形態では、
図4~
図6に示されるように、弾性体5は帯状に形成され、1本の帯状の弾性体5が、V字状に折り返されて延びている。より詳細には、弾性体5は腰部装着部2から臀部G、大腿部Tの背面を通って第1下肢装着部3aに延びている。弾性体5は第1下肢装着部3aの弾性体取付部31において折り返され、大腿部Tの背面、臀部Gを通って腰部装着部2の上部フレーム21aに延びている。弾性体5は上部フレーム21aにおいて再度折り返されて、臀部G、大腿部Tの背面を通って、第2下肢装着部3bに延びている。弾性体5はさらに第2下肢装着部3bの弾性体取付部31において折り返されて、腰部装着部2の下部フレーム21bに接続されている。なお、弾性体5の形状は限定されず、臀部G全体と下肢L1、L2の上部を覆うような1枚のシート状の弾性体によって構成されていてもよい。
【0033】
本実施形態では、弾性体5は、
図4~
図6に示されるように、弾性体5の張力を調整するために長さの調節が可能な長さ調節機構51を備えている。長さ調節機構51の構造は特に限定されないが、たとえば長さ調節ができるように弾性体を通すことができるバックルとすることができる。これにより、使用者や使用者の作業内容に応じて、弾性体5の張力を調節することが容易となる。
【0034】
また、弾性体5は、腰部アシスト装置1から着脱自在としてもよい。この場合、弾性体5の交換や、洗濯などのメンテナンスなどが容易となる。
【0035】
硬質フレーム4は、腰部装着部2と下肢装着部3との間に延びる硬質材料によって構成されたフレームである。硬質フレーム4は、使用者が前屈姿勢になった際などに弾性体5が伸長して弾性体5に張力が加わり、弾性体5の張力によって下肢装着部3に鉛直方向Vで上側に加わる力を硬質フレーム4の剛性によって支持する。これにより、弾性体5の張力によって下肢装着部3のずり上がりが抑制され、腰部アシスト装置1の着用感を良好とし、弾性体5による所望のアシスト力を継続して得ることができる。この点の詳細については後述する。
【0036】
硬質フレーム4を構成する硬質材料は、弾性体5の張力を支持することができる剛性を有していれば、特に限定されない。たとえば、硬質フレーム4の硬質材料としては、アルミニウム、鉄、チタン等の金属や、ナイロン、塩化ビニル、アクリル、ABS、ポリカーボネイト、ポリプロピレン、ポリエチレン、カーボン、繊維強化プラスチック(FRP)等の硬質樹脂とすることができる。
【0037】
本実施形態では、硬質フレーム4は、
図1および
図2に示されるように、腰部装着部2から一方の下肢L1の側方のうち外側を通って第1下肢装着部3aまで延びる第1硬質フレーム4aと、腰部装着部2から他方の下肢L2の側方のうち外側を通って第2下肢装着部3bまで延びる第2硬質フレーム4bとを有している。なお、「外側」とは人体の左右方向で、使用者の正中線から遠い方をいう。また、「内側」とは人体の左右方向で、使用者の正中線に近い方をいう。
【0038】
本実施形態では、硬質フレーム4は、
図3および
図5に示されるように、下肢L1、L2の外側に沿って鉛直方向Vに延びる幅狭の板状に形成されている。硬質フレーム4の形状は、腰部装着部2と下肢装着部3との間に延びる部分を含み、弾性体5の張力を支持することができれば、特に限定されない。たとえば、硬質フレーム4は、下肢L1、L2の外側に沿って鉛直方向Vに延びる幅狭のロッド状に形成されていてもよい。硬質フレーム4が下肢L1、L2の外側に沿って鉛直方向Vに延びる幅狭の板状またはロッド状に形成されている場合、腰部アシスト装置1全体を軽量化することができるとともに、使用者の歩行時に邪魔にならない。上記構成以外に、硬質フレーム4は、たとえば、下肢L1、L2の前面および/または後面を部分的に覆うように構成されていてもよい。
【0039】
硬質フレーム4は、腰部装着部2に接続されている。本実施形態では、硬質フレーム4は、硬質材料によって形成された基部21に接続されている。ともに硬質材料によって構成された基部21と硬質フレーム4とが接続されることによって、弾性体5による張力を支持しやすくなる。
【0040】
また、本実施形態では、腰部装着部2と硬質フレーム4とは、
図4および
図6に示されるように、偽関節部6によって接続されている。偽関節部6は、腰部装着部2に対する硬質フレーム4の関節動作を可能にする。これにより、腰部アシスト装置1を装着した使用者が下肢L1、L2を動作させたときに、下肢L1、L2の動作に追随して動作する下肢装着部3および硬質フレーム4の動作の自由度が高まる。
【0041】
本実施形態では、偽関節部6は、
図4および
図6に示されるように、下肢L1、L2の股関節に対応する位置に一対設けられている。偽関節部6は、
図7に示されるように、下肢L1、L2の外側から内側に向かって延びる軸部61と、軸部61と同軸上に配置されたコイルバネ62と、コイルバネ62を被覆するゴム体63とを有している。この構造の場合、人体の股関節と同様に、下肢L1、L2の外旋、内旋、外転、内転等の自由な動作が可能となる。さらに、硬質フレーム4が初期状態から移動した後にコイルバネ62およびゴム体63の弾性力によって初期状態への復帰が容易となる。なお、偽関節部6の構造は特に限定されず、たとえば、ボールジョイントを用いて、股関節と同様の動作を実現してもよい。
【0042】
つぎに、本実施形態の腰部アシスト装置1を例にあげて、腰部アシスト装置1の作用効果をより詳細に説明する。なお、以下の例はあくまで一例であり、以下の例によって本発明が限定されるものではない。
【0043】
まず、腰部アシスト装置1を装着する場合、使用者は衣服の上から腰部Wに基部21を押し当てた状態で、腰部ベルト22を腰部Wに巻き付ける。つぎに、締付ベルト23を締め付けて、腰部装着部2を腰部Wに固定する。さらに、たとえば、下肢装着部3の前部を開放して下肢L1、L2の大腿部Tに取り付け、下肢装着部3の前部を閉鎖して固定することによって、腰部アシスト装置1の装着が完了する(
図1~
図3参照)。
【0044】
腰部アシスト装置1の装着が完了して、使用者が歩行する際には、
図1および
図3に示されるように、硬質フレーム4は使用者の下肢L1、L2の外側に位置しており、歩行の邪魔にならない。さらに、使用者が歩行や、下肢L1、L2を広げるなど、様々な動作をした際に、硬質フレーム4と腰部装着部2とが偽関節部6により接続されていることによって、硬質フレーム4および下肢装着部3が下肢L1、L2の動作に追随する。そのため、腰部アシスト装置1は使用者の円滑な動作を妨げることがない。
【0045】
使用者が腰部アシスト装置1を装着した状態で重い物を持ち上げる場合に、
図8に示されるように、使用者は前屈姿勢となる。使用者が前屈姿勢になると、使用者の腰部Wの前傾移動に伴って、腰部装着部2が偽関節部6の軸部61を中心に回転する。弾性体5の腰部装着部2との接続部位および弾性体5の弾性体取付部31との接続部位は、
図8に示されるように、
図3に示される正立姿勢に対して前方に移動する。それとともに、弾性体5の鉛直方向Vの中央部は、前屈姿勢となるときの使用者の臀部Gの後方への突き出しに伴って、後方へと撓んで変形する。これにより、弾性体5は伸長して張力が加わる。このとき、使用者には、弾性体5によって、
図8に矢印A1で示す臀部Gを前方に押し戻す力と、矢印A2で示す腰部Wを引き戻す力とが作用する。これにより、使用者が前屈姿勢から正立姿勢へと移行する際に、弾性体5によるアシスト力を得ることができる。
【0046】
このように、使用者が前屈姿勢となる際に弾性体5が伸長して、それにより、下肢装着部3には鉛直方向Vで上向きに、
図8において矢印A3で示す力がかかる。この矢印A3で示す力は硬質フレーム4によって支持され、下肢装着部3は鉛直方向Vで上側への移動が規制され、所定の位置に保持される。したがって、下肢装着部3が鉛直方向Vで上側に移動してしまうこと、下肢装着部3が上側に移動することにより弾性体5の伸び量が低下(張力によるアシスト力が低下)してしまうことが抑制される。よって、使用者が前屈姿勢になったときの弾性体5の伸び量が変化することがなく、弾性体5による所望のアシスト力を継続して得ることができる。さらに、硬質フレーム4が設けられていることによって、下肢装着部3が衣服の上から衣服ごとずり上がってしまうことが抑制される。したがって、腰部アシスト装置1の装着時に、使用者が、下肢装着部3のずり上がりによる不快になることを抑制することができる。また、硬質フレーム4によって、下肢装着部3のずり上がりが抑制されるので、下肢装着部3を大腿部Tに対してきつく締め付けたりする必要がなく、下肢装着部3を大腿部Tに緩く巻き付けたり、大腿部Tとの間に隙間を持たせて装着することもできる。したがって、腰部アシスト装置1の着用感を良好にすることができる。
【0047】
また、硬質フレーム4が設けられていることによって、前屈姿勢および正立姿勢において使用者が重量物を持っているときに、人体の股関節に加わる鉛直方向Vの力の一部が硬質フレーム4によって支持される。そのため、人体の股関節に加わる力が軽減され、使用者が股関節を傷めることが抑制される。
【0048】
また、本実施形態では、腰部アシスト装置1は、腰部装着部2よりも上側に構成部品を有していない。すなわち、腰部アシスト装置1は、使用者の腰部Wよりも上側に負荷を加える部分(たとえば、弾性体や背中に背負う部分、肩にかける部分など)を有していない。そのため、腰部アシスト装置1は、肩や背中など、上半身に負荷がかからず、使用者への負担を小さくすることができる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明した。本発明は、上記実施形態に格別限定されない。なお、上記した実施形態は、以下の構成を有する発明を主に説明するものである。
【0050】
(1)使用者の腰部に装着される腰部装着部と、前記使用者の下肢の一部に装着される下肢装着部と、前記腰部装着部と前記下肢装着部との間に延びる硬質フレームと、前記使用者の背面側において、前記腰部装着部から前記下肢装着部に向かって延びる弾性体とを有している、腰部アシスト装置。
【0051】
このような構成によれば、着用感を良好とし、所望のアシスト力を継続して得ることが可能となる。
【0052】
(2)前記下肢装着部は、前記弾性体が取り付けられる弾性体取付部を有し、前記弾性体取付部は、硬質材料で形成され、前記硬質フレームに対する鉛直方向での相対移動が規制された状態で前記硬質フレームに接続されている、(1)に記載の腰部アシスト装置。
【0053】
このような構成によれば、下肢装着部の着用感をさらに良好とすることができる。
【0054】
(3)前記腰部装着部は、硬質材料によって形成された基部を有し、前記基部に前記硬質フレームが接続されている、(1)または(2)に記載の腰部アシスト装置。
【0055】
このような構成によれば、腰部装着部の基部と硬質フレームとが接続されることにより、硬質フレームの効果が得られやすい。
【0056】
(4)前記腰部装着部と前記硬質フレームとは、偽関節部によって接続されている、(1)~(3)のいずれか1つに記載の腰部アシスト装置。
【0057】
このような構成によれば、硬質フレームの腰部装着部材に対する動作の自由度が高まる。
【0058】
(5)前記偽関節部は、前記下肢の股関節に対応する位置に一対設けられており、前記偽関節部は、下肢の外側から内側に向かって延びる軸部と、前記軸部と同軸上に配置されたコイルバネと、前記コイルバネを被覆するゴム体とを有している、(4)に記載の腰部アシスト装置。
【0059】
このような構成によれば、偽関節部によって、人体の股関節と同様の自由な動作が可能となるうえ、硬質フレームが初期状態から移動した後に初期状態への復帰が容易となる。
【0060】
(6)前記下肢装着部が、一方の下肢に装着される第1下肢装着部および他方の下肢に装着される第2下肢装着部を有し、前記硬質フレームが、前記腰部装着部から前記一方の下肢の側方のうち外側を通って前記第1下肢装着部まで延びる第1硬質フレームと、前記腰部装着部から前記他方の下肢の側方のうち外側を通って前記第2下肢装着部まで延びる第2硬質フレームとを有している、(1)~(5)のいずれか1つに記載の腰部アシスト装置。
【0061】
このような構成によれば、硬質フレームが、人体の下肢の側方のうち外側を通っており、前屈動作の障害とならず、使用者は円滑な動作を行うことができる。
【0062】
(7)前記弾性体が、前記腰部アシスト装置から着脱自在である、(1)~(6)のいずれか1つに記載の腰部アシスト装置。
【0063】
このような構成によれば、弾性体の交換や、メンテナンスなどが容易となる。
【0064】
(8)前記弾性体が、前記弾性体の張力を調整するために長さの調節が可能な長さ調節機構を備えている、(1)~(7)のいずれか1つに記載の腰部アシスト装置。
【0065】
このような構成によれば、使用者や作業に応じて、弾性体の張力を調整することが容易となる。
【0066】
(9)前記弾性体が布帛からなる、(1)~(8)のいずれか1つに記載の腰部アシスト装置。
【0067】
このような構成によれば、弾性体の製造が容易で、衣服などの上に装着した際に違和感がない。
【符号の説明】
【0068】
1 腰部アシスト装置
2 腰部装着部
21 基部
21a 上部フレーム
21b 下部フレーム
21c 補強フレーム
22 腰部ベルト
23 締付ベルト
3 下肢装着部
3a 第1下肢装着部
3b 第2下肢装着部
31 弾性体取付部
4 硬質フレーム
4a 第1硬質フレーム
4b 第2硬質フレーム
5 弾性体
51 長さ調節機構
6 偽関節部
61 軸部
62 コイルバネ
63 ゴム体
G 臀部
L1、L2 下肢
N 膝
T 大腿部
V 鉛直方向
W 腰部
W1、W2 腰部の両側部