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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ステータおよびモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20240409BHJP
   H02K 3/52 20060101ALI20240409BHJP
   H02K 3/50 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H02K3/04
H02K3/52 E
H02K3/50 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021550462
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2020033149
(87)【国際公開番号】W WO2021065297
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2019179970
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 響
(72)【発明者】
【氏名】上田 智哉
(72)【発明者】
【氏名】檜皮 隆宏
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-034848(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107492959(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/04
H02K 3/52
H02K 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに用いられるステータであって、

中心軸を中心とする環状のコアバックと、コアバックから径方向内側に向かって延びる複数のティースとを有するステータコアと、

前記ティース間のスロット内において軸方向に延びる導電性の作用部を有する複数のピンと、

前記複数のピンと電気的に接続される、複数のバスバーと、を有し、

それぞれの前記スロットには、前記作用部が径方向に複数段にわたって並び、

前記複数のピンは、

前記ティースを跨いで配置される2つの前記作用部を有する第1ピンと、

前記ティースを跨いで配置される2つの前記作用部を有する第2ピンと、

前記作用部を1つ有し、バスバーと接続される第3ピンと、を有し、

前記第1ピンおよび前記第2ピンはそれぞれ、

軸方向の一方側において2つの前記作用部を周方向に接続する渡り部と、

前記作用部の軸方向の他方側において他の前記ピンと接続される接続部と、をさらに有し、

前記第1ピンにおいて、2つの前記作用部は、同じ段または径方向に隣合う段に挿入され、

前記第2ピンの前記作用部はいずれも、前記スロットの最外段および最内段のいずれか一方に配置され、

前記第3ピンの前記作用部はいずれも、前記スロットの最外段および最内段のいずれか一方または他方に配置され、

前記第2ピンが跨ぐ前記ティースの数は、前記第1ピンが跨ぐ前記ティースの数よりも2つ多い、ステータ。
【請求項2】

請求項1に記載のステータであって、

前記第1ピンの有する2つの前記作用部が跨ぐ前記ティースの数は、前記ティースの数を前記ステータの極数で除した数よりも1つ少なく、

前記第2ピンの有する2つの前記作用部が跨ぐ前記ティースの数は、前記ティースの数を前記ステータの極数で除した数よりも1つ多い、ステータ。
【請求項3】

請求項1または請求項2に記載のステータであって、

前記バスバーの数は4つであり、

前記第3ピンの数は6つであり、

前記バスバーは、

3つの前記第3ピンと接続する、中性点バスバーと、

1つの前記第3ピンと接続する、U相バスバーと、

1つの前記第3ピンと接続する、V相バスバーと、

1つの前記第3ピンと接続する、W相バスバーと、を含む、ステータ。
【請求項4】

請求項1または請求項2に記載のステータであって、

前記バスバーの数は4つであり、

前記第3ピンの数は12個であり、

前記バスバーは、

6つの前記第3ピンと接続する、中性点バスバーと、

2つの前記第3ピンと接続する、U相バスバーと、

2つの前記第3ピンと接続する、V相バスバーと、

2つの前記第3ピンと接続する、W相バスバーと、を含む、ステータ。
【請求項5】

請求項3または請求項4に記載のステータであり、

前記ステータコアの複数の前記スロットは、

前記U相バスバーと電気的に接続する前記作用部、前記V相バスバーと電気的に接続する前記作用部および前記W相バスバーと電気的に接続する前記作用部のうちのいずれか1種類のみが配置される単相スロットと、

前記U相バスバーと電気的に接続する前記作用部、前記V相バスバーと電気的に接続する前記作用部および前記W相バスバーと電気的に接続する前記作用部のうちのいずれか2種類が配置される複相スロットと、を含み、

前記単相スロットと、前記複相スロットとが、周方向に交互に配置される、ステータ。
【請求項6】

請求項3ないし請求項5のいずれかに記載のステータであり、

前記中性点バスバーと接続される前記第3ピンは、

前記作用部の周方向一方側において前記中性点バスバーと接続される中性点バスバー接続部と、

前記中性点バスバー接続部と作用部とを繋ぐ第1斜行部と、を有し、

前記U相バスバー、前記V相バスバーおよび前記W相バスバーのうちのいずれかと接続される前記第3ピンは、

前記作用部と、前記作用部の周方向他方側において前記U相バスバー、前記V相バスバーおよび前記W相バスバーのいずれかと接続される相バスバー接続部と、

前記相バスバー接続部と前記作用部とを繋ぐ第2斜行部と、を有し、

複数の前記第1斜行部の少なくとも一部と、複数の前記第2斜行部の少なくとも一部とは、交差する、ステータ。
【請求項7】

請求項3ないし請求項6のいずれかに記載のステータであり、

前記中性点バスバーは、

前記第3ピンと電気的に接続される中性点接続部を有し、

前記U相バスバー、前記V相バスバーおよび前記W相バスバーはそれぞれ、 前記第3ピンと電気的に接続されるピン接続部を有し、

前記中性点接続部および前記ピン接続部は、周方向に交互に配置される、ステータ。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のステータであって、

前記第3ピンはそれぞれ、

前記作用部の軸方向の前記一方側において前記バスバーと電気的に接続される第1の接続部と、

前記作用部の軸方向の前記他方側において他の前記ピンと溶接される第2の接続部と、をさらに有する、ステータ。
【請求項9】
請求項3または請求項4に記載のステータであって、

前記U相バスバー、前記V相バスバーおよび前記W相バスバーは、それぞれ、

径方向に延び、一端が電源装置と直接または間接的に接続される電源接続部と、

前記電源接続部の他端と接続され、周方向に延びる円弧状部と、

一端が前記円弧状部と接続されるとともに、前記第3ピンと電気的に接続されるピン接続部と、を有する、ステータ。
【請求項10】

請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のステータであって、

複数の前記バスバーは、周方向の90°の範囲内に配置される、ステータ。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のステータと、

前記ステータコアの径方向内側に配置され、前記中心軸を中心として回転可能に支持されるロータと、を有する、モータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに用いられるステータと、モータとに関する。本出願は、2019年9月30日に提出された日本特許出願第2019-179970号に基づいている。本出願は、当該出願に対して優先権の利益を主張するものである。その内容全体は、参照されることによって本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車やプラグインハイブリッド車等の車両には、モータを動力源とする駆動装置が搭載される。車両の走行用の駆動力を出力するトラクションモータなどの、入力電力が大きいモータでは、細長い板状の導体板を折り曲げて形成されたコイル(以下、板コイルと称する)が用いられる場合がある。このようなコイルを用いた従来のモータについては、例えば、日本国公開公報2012-16195号公報に記載されている。
【文献】日本国公開公報2012-16195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような板コイルは、導線で形成されたコイルに比べて、スロット間の接続形状が複雑になると組み立てがしにくいという問題が生じる。特に、日本国公開公報2012-16195号公報に記載のコイルでは、コイルを円周方向に1周配置した後に、次の1周配置する際に、板コイルの曲げ角度を変えて次のスロットに繋がるように配線しなければならず、製造上の難易度が高い。コイルピッチが磁極ピッチと異なる短節巻のコイル配線を行う場合には、特に、製造上の難易度が高くなる。
【0004】
本発明は、板コイルを備えるモータの製造容易性を向上できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の第1発明は、モータに用いられるステータであって、中心軸を中心とする環状のコアバックと、コアバックから径方向内側に向かって延びる複数のティースとを有するステータコアと、前記ティース間のスロット内において軸方向に延びる導電性の作用部を有する複数のピンと、前記複数のピンと電気的に接続される、複数のバスバーと、を有し、それぞれの前記スロットには、前記作用部が径方向に複数段にわたって並び、前記複数のピンは、前記ティースを跨いで配置される2つの前記作用部を有する第1ピンと、前記ティースを跨いで配置される2つの前記作用部を有する第2ピンと、前記作用部を1つ有し、前記バスバーと接続される第3ピンと、を有し、前記第1ピンおよび前記第2ピンはそれぞれ、軸方向の一方側において2つの前記作用部を周方向に接続する渡り部と、前記作用部の軸方向の他方側において他の前記ピンと接続される接続部と、をさらに有し、前記第1ピンにおいて、2つの前記作用部は、同じ段または径方向に隣合う段に挿入され、前記第2ピンの前記作用部はいずれも、前記スロットの最外段および最内段のいずれか一方に配置され、前記第3ピンの前記作用部はいずれも、前記スロットの最外段および最内段のいずれか一方または他方に配置され、前記第2ピンが跨ぐ前記ティースの数は、前記第1ピンが跨ぐ前記ティースの数よりも2つ少ない。
【発明の効果】
【0006】
本願の第1発明によれば、同じ極を形成する同相の作用部が複数スロット連続して配置される場合に効率よくピンを配置できる。また、全てのピンの接続部の曲げ角度を同じとすることができる。したがって、短節巻を実現しつつ、ステータの製造容易性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係るモータの概略断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係るステータおよびバスバー部の斜視図である。
図3図3は、第1実施形態に係るステータおよびバスバー部の軸方向一方側から見た平面図である。
図4図4は、第1実施形態に係るコイルの斜視図である。
図5図5は、第1実施形態に係る片寄せ第1ピン、内側中央寄せ第1ピンおよび外側中央寄せ第1ピンの斜視図である。
図6図6は、第1実施形態に係る第2ピン、両開き第3ピンおよび片寄せ第3ピンの斜視図である。
図7図7は、第1実施形態に係るU相コイルの斜視図である。
図8図8は、第1実施形態に係るコイル部の全てのピンの接続を模式的に示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、モータの中心軸と平行な方向を「軸方向」、モータの中心軸に直行する方向を「径方向」、モータの中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。
【0009】
<1.第1実施形態>
<1-1.モータの構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係るステータ21を有するモータ1の概略断面図である。図2は、ステータ21およびバスバー部22の斜視図である。また、図3は、ステータ21およびバスバー部22を軸方向一方側から見た平面図である。
【0010】
このモータ1は、電気自動車やプラグインハイブリッド車等の車両に搭載され、車両の走行用の駆動力を出力するトラクションモータである。ただし、本発明のモータ1は、トラクションモータ以外の用途のモータであってもよい。例えば、送風機器、家電製品、医療機器、産業用の大型設備等に搭載されて、駆動力を出力するものであってもよい。
【0011】
図1に示すように、モータ1は、モータカバー10と、静止部2と、回転部3とを有する。モータカバー10は、静止部2および回転部3の少なくとも一部を収容する筐体である。静止部2は、モータカバー10に対して相対的に静止する。回転部3は、静止部2に対して中心軸9を中心として回転可能に支持される。
【0012】
図1に示すように、静止部2は、ステータ21、バスバー部22、および2つの軸受23を有する。回転部3は、シャフト31およびロータ32を有する。
【0013】
ステータ21は、バスバー部22を介して供給される駆動電流に応じて磁束を発生させる電機子である。図2および図3に示すように、ステータ21は、中心軸9の周りを環状に取り囲む。図1図3に示すように、ステータ21は、ステータコア41およびコイル部42を有する。
【0014】
ステータコア41は、電磁鋼板が軸方向に積層された積層鋼板からなる。ステータコア41は、環状のコアバック411と、コアバック411から径方向内側に延びる複数のティース412とを有する。コアバック411の内周部は、中心軸9を中心とした円環状である。複数のティース412は、周方向に略等間隔に配列される。
【0015】
コイル部42は、絶縁紙やインシュレータ等の絶縁材料を介して、ティース412の周囲に配置される。コイル部42の詳細な構成については、後述する。
【0016】
バスバー部22は、ステータ21の軸方向一方側に配置される。本実施形態のバスバー部22は、U相バスバー221、V相バスバー222、W相バスバー223および中性点バスバー224を有する。バスバー部22は、コイル部42と電気的に接続される。
【0017】
U相バスバー221、V相バスバー222およびW相バスバー223は、径方向に延びる電源接続部81と、周方向に延びる第1円弧状部82と、第1円弧状部82から径方向および軸方向に延びるピン接続部83とを有する。電源接続部81は、径方向外側の端部が、電源装置(図示せず)と直接または間接的に接続される。第1円弧状部82は、電源接続部81の径方向内側の端部から、コイル部42に沿って周方向に延びる。2つのピン接続部83はそれぞれ、コイル部42の後述するコイル421,422,423のいずれかの一端部(以下では「コイル一端部」と称する)と溶接され、電気的に接続される。
【0018】
中性点バスバー224は、周方向に延びる第2円弧状部84と、第2円弧状部84から径方向および軸方向に延びる6つの中性点接続部85とを有する。第2円弧状部84は、6つの中性点接続部85を電気的に接続する。6つの中性点接続部85はそれぞれ、コイル部42のコイル421,422,423のいずれかの他端部(以下では「コイル他端部」と称する)と溶接され、電気的に接続される。
【0019】
本実施形態では、コイル部42にバスバー部22を介して3相交流電力が入力される。コイル部42は、それぞれ位相の異なる3相の駆動電流が入力されるU相コイル421、V相コイル422およびW相コイル423を有する。本実施形態のコイル部42では、各相コイル421,422,423が、並列に接続された2つのコイルから構成される。以下では、U相コイル421に含まれる2つのコイルを第1U相コイル421aおよび第2U相コイル421b、V相コイル422に含まれる2つのコイルを第1V相コイル422aおよび第2V相コイル422b、W相コイル423に含まれる2つのコイルを第1W相コイル423aおよび第2W相コイル423bと称する。
【0020】
U相バスバー221、V相バスバー222およびW相バスバー223には、それぞれ、1/3波長ずつ位相の異なる電流が供給される。U相バスバー221の2つのピン接続部83はそれぞれ、第1U相コイル421aおよび第2U相コイル421bのコイル一端部(後述する両開き第3ピン53aの第1接続部)と接続される。V相バスバー222の2つのピン接続部83はそれぞれ、第1V相コイル422aおよび第2V相コイル422bのコイル一端部と接続される。W相バスバー223の2つのピン接続部83はそれぞれ、第1W相コイル423aおよび第2W相コイル423bのコイル一端部と接続される。
【0021】
中性点バスバー224の6つの中性点接続部85はそれぞれ、第1U相コイル421a、第2U相コイル421b、第1V相コイル422a、第2V相コイル422b、第1W相コイル423aおよび第2W相コイル423bのコイル他端部(後述する片寄せ第3ピン53bの第1接続部)と接続される。このように、本実施形態のU相コイル421、V相コイル422およびW相コイル423は、2並列のスター結線により接続されている。
【0022】
これにより、U相バスバー221、V相バスバー222およびW相バスバー223に駆動電流が供給されると、U相コイル421、V相コイル422およびW相コイル423には、それぞれ、1/3波長ずつ位相の異なる電流が流れる。
【0023】
なお、U相バスバー221、V相バスバー222、W相バスバー223の第1円弧状部82および中性点バスバー224の第2円弧状部84はそれぞれ、各相コイル421,422,423とバスバー221,222,223,224との溶接箇所よりも径方向内側に配置される。
【0024】
2つの軸受23は、モータカバー10に対して、シャフト31を回転可能に支持する機構である。図1に示すように、2つの軸受23の一方は、ステータ21の軸方向一方側に配置される。また、2つの軸受23の他方は、ステータ21の軸方向他方側に配置される。軸受23には、例えば、モータカバー10に対して固定された外輪と、シャフト31とともに回転する内輪との間に球状の転動体が介在する玉軸受が用いられる。
【0025】
シャフト31は、中心軸9に沿って配置された円柱状の部材である。シャフト31は、2つの軸受23に支持され、中心軸9を中心として回転する。シャフト31の軸方向他方側の端部は、モータカバー10よりも軸方向他方側へ突出し、回転駆動力を出力する。
【0026】
ロータ32は、シャフト31に固定され、シャフト31とともに回転する。本実施形態のロータ32は、電磁鋼板が軸方向に積層された積層鋼板で形成されたロータコア321の内部にマグネット322が挿入された、所謂IPM型のロータである。内部に挿入されたマグネットにより、ロータ32の外周面には、N極の磁界と、S極の磁界とが、周方向に交互に形成される。また、ロータ32の外周面は、ティース412の径方向内側の端面と、僅かな間隙を介して径方向に対抗する。すなわち、ロータ32は、ステータ21と径方向に対向する磁極面を有する。
【0027】
なお、ロータ32は、例えば、磁性体である円筒状のロータコアの外周面に複数のマグネットを固定した、所謂SPM型のロータであってもよいし、略円筒状に形成され、外周面がN極とS極とに周方向に交互に着磁されたマグネット樹脂ロータであってもよい。
【0028】
モータ1の駆動時には、モータ1の駆動回路から、バスバー部22を介してコイル部42に駆動電流が供給される。これにより、ステータコア41の複数のティース412に磁束が生じる。そして、ティース412とロータ32との間の磁束が及ぼす作用により、周方向のトルクが発生する。その結果、中心軸9を中心として回転部3が回転する。このようにして、シャフト31の軸方向他方側の端部に連結された駆動対象へ、回転駆動力が出力される。
【0029】
<1-2.コイル部の構成>
次に、図4図6を参照しつつ、コイル部42の構成について説明する。図4は、コイル部42の斜視図である。図5は、第1ピン51の具体的態様である片寄せ第1ピン51a、内側中央寄せ第1ピン51b、および外側中央寄せ第1ピン51cの斜視図である。図6は、第2ピン52と、第3ピン53の具体的態様である両開き第3ピン53aおよび片寄せ第3ピン53bの斜視図である。図5および図6では、各ピン51a,51b,51c,52,53a,53bをそれぞれ周方向外側から見た図を示している。
【0030】
コイル部42は、図4に示すように、複数の第1ピン51と、複数の第2ピン52と、複数の第3ピン53とを含む。複数のピン51,52,53はそれぞれ、細長い板状の導電性材料を折り曲げて形成される。
【0031】
第1ピン51は、図5に示す片寄せ第1ピン51a、外側中央寄せ第1ピン51b、および内側中央寄せ第1ピン51cの総称である。図5に示すように、第1ピン51は、2つの作用部61と、渡り部62と、2つの接続部63とを有する。第1ピン51の2つの作用部61は、5つのティース412を跨いで配置される。
【0032】
第2ピン52は、図6に示すように、2つの作用部61と、渡り部62と、2つの接続部63とを有する。第2ピン52の2つの作用部61は、7つのティース412を跨いで配置される。すなわち、第2ピン52の有する2つの作用部61が跨ぐティース412の数は、第1ピン51の有する2つの作用部61が跨ぐティース412の数よりも2つ多い。
【0033】
第3ピン53は、図6に示す両開き第3ピン53aおよび片寄せ第3ピン53bの総称である。図6に示すように、第3ピン53は、1つの作用部61と、2つの接続部63とを有する。
【0034】
作用部61は、隣合うティース412間に形成されたスロット内において軸方向に延びる部位である。第1ピン51および第2ピン52において、渡り部62はそれぞれ、軸方向一方側において、2つの作用部61を周方向に接続する。第1ピン51において渡り部62が跨ぐティース412の数は5つであり、第2ピン52において渡り部62が跨ぐティース412の数は7つである。
【0035】
接続部63はそれぞれ、他のピン51,52,53またはバスバー部22のバスバー221~224のいずれかと溶接される。接続部63は、作用部61の軸方向の端部から軸方向に対して斜めに延びる斜行部631と、斜行部631の先端部から軸方向に延びる溶接端部632とを有する。第1ピン51および第2ピン52の有する2つの接続部63は、それぞれ、作用部61の軸方向他方側に配置される。第3ピン53の有する2つの接続部63の一方は作用部61の軸方向他方側に配置され、他方は作用部61の軸方向一方側に配置される。
【0036】
図5に示すように、片寄せ第1ピン51aでは、2つの斜行部631がそれぞれ、作用部61から溶接端部632に向かって周方向他方側へと延びる。片寄せ第1ピン51aにおいて、2つの溶接端部632はそれぞれ、斜行部631を介して接続する作用部61に対して2.5スロット分周方向他方側へずれた位置に配置される。
【0037】
外側中央寄せ第1ピン51bと内側中央寄せ第1ピン51cとは、類似した形状をしているが、配置される径方向の位置が異なるため、外側中央寄せ第1ピン51bの2つの作用部61の周方向の間隔と、内側中央寄せ第1ピン51cの2つの作用部61の周方向の間隔とが異なる。
【0038】
外側中央寄せ第1ピン51bおよび内側中央寄せ第1ピン51cでは、2つの溶接端部632が2つの作用部61の周方向の間の中央に配置される。このため、外側中央寄せ第1ピン51bおよび内側中央寄せ第1ピン51cでは、2つの斜行部631がそれぞれ、作用部61から周方向中央に配置された溶接端部632へと延びる。具体的には、周方向一方側の作用部61と接続する溶接端部632は、接続する作用部61に対して2.5スロット分周方向他方側へずれた位置に配置される。
【0039】
一方、周方向他方側の作用部61と接続する溶接端部632は、接続する作用部61に対して2.5スロット分周方向一方側へずれた位置に配置される。その結果、外側中央寄せ第1ピン51bおよび内側中央寄せ第1ピン51cの有する2つの溶接端部632は、周方向の位置が一致する。なお、外側中央寄せ第1ピン51bおよび内側中央寄せ第1ピン51cにおいて、2つの作用部61および接続部63は配置される径方向の位置が異なるため、2つの溶接端部632の径方向の位置も異なる。
【0040】
図6に示すように、第2ピン52では、2つの斜行部631がそれぞれ、作用部61から溶接端部632へ向かって周方向一方側へと延びる。第2ピン52において、2つの溶接端部632はそれぞれ、斜行部631を介して接続する作用部61に対して周方向一方側へずれた位置に配置される。
【0041】
第3ピン53は、軸方向一方側においてバスバー部22と電気的に接続される第1の接続部63と、軸方向他方側において他のピン51と電気的に接続される第2の接続部63とを有する。
【0042】
両開き第3ピン53aの軸方向一方側の接続部63では、斜行部631が作用部61の軸方向一方側の端部から溶接端部632に向かって周方向他方側に延びる。軸方向一方側の溶接端部632は、作用部61に対して2.5スロット分周方向他方側へずれた位置に配置される。また、両開き第3ピン53aの軸方向他方側の接続部63では、斜行部631が作用部61の軸方向他方側の端部から溶接端部632に向かって周方向一方側に延びる。軸方向他方側の溶接端部632は、作用部61に対して周方向一方側へずれた位置に配置される。
【0043】
片寄せ第3ピン53bの2つの接続部63では、いずれも、斜行部631が作用部61の端部から溶接端部632に向かって周方向一方側に延びる。軸方向他方側の溶接端部632および軸方向一方側の溶接端部632はいずれも、作用部61に対して周方向一方側へずれた位置に配置される。軸方向他方側の溶接端部632は、作用部61に対して2.5スロット分周方向一方側へずれた位置に配置される。
【0044】
コイル部42は、それぞれ、複数のピン51,52,53で構成される。また、コイル部42は、互いに同形状であるU相コイル421、V相コイル422およびW相コイル423により構成される。V相コイル422は、U相コイル421と4スロット分周方向一方側に回転した位置に配置される。W相コイル423は、U相コイル421と2スロット分周方向一方側に回転した位置に配置される。
【0045】
第1U相コイル421aを構成する複数のピン51,52は、U相バスバー221と接続される第3ピン53と、中性点バスバー224と接続される第3ピン53との間で直列に接続される。また、第2U相コイル421bを構成する複数のピン51,52は、U相バスバー221と接続される第3ピン53と、中性点バスバー224と接続される第3ピン53との間で直列に接続される。このため、第1U相コイル421aと第2U相コイル421bとは、並列に接続される。
【0046】
第1V相コイル422aを構成する複数のピン51,52は、V相バスバー222と接続される第3ピン53と、中性点バスバー224と接続される第3ピン53との間で直列に接続される。また、第2V相コイル422bを構成する複数のピン51,52は、V相バスバー222と接続される第3ピン53と、中性点バスバー224と接続される第3ピン53との間で直列に接続される。このため、第1V相コイル422aと第2V相コイル422bとは、並列に接続される。
【0047】
第1W相コイル423aを構成する複数のピン51,52は、W相バスバー223と接続される第3ピン53と、中性点バスバー224と接続される第3ピン53との間で直列に接続される。また、第2W相コイル423bを構成する複数のピン51,52は、W相バスバー223と接続される第3ピン53と、中性点バスバー224と接続される第3ピン53との間で直列に接続される。このため、第1W相コイル423aと第2W相コイル423bとは、並列に接続される。
【0048】
このような構成を簡易な構成で実現するために、以下に説明するピン51,52,53の配置を行う。ここで、図7は、コイル部42のうち、U相コイル421のみを示した斜視図である。なお、上述の通り、V相コイル422およびW相コイル423は、U相コイル421と同様の構成である。図8は、コイル部42の全てのピン51,52,53の接続を模式的に示した概略図である。
【0049】
図1図2図4および図7に示すように、1つのスロットに、複数の作用部61が径方向に並んで配置される。本実施形態では、1つのスロットに、6つの作用部61が配置される。ここで、以下では、1つのスロット内で最も径方向外側に配置される作用部61を第1段(最外段)、第1段の径方向内側に隣合う作用部61を第2段、第2段の径方向内側に隣合う作用部61を第3段、第3段の径方向内側に隣合う作用部61を第4段、第4段の径方向内側に隣合う作用部61と第5段、最も径方向内側に配置される作用部61を第6段(最内段)と称する。
【0050】
図8において、第1U相コイル421aに属するピン51,52,53が太線の実線で記載されている。第2U相コイル421bに属するピン51,52,53が太線の破線で記載されている。また、図8中において、U相コイル421に属する作用部61には、スロット番号を付している。U相コイル421の作用部61が連続して配置された3つのスロットのうちの1組に1番、2番および3番とスロット番号を振った。周方向一方側から他方側へ向かうにつれてスロット番号が大きくなる。本実施形態では、ティース412およびスロットの数が48個である。このため、48番のスロットの周方向他方側には、1番のスロットが隣接している。
【0051】
このコイル部42では、コイルピッチが磁極ピッチよりも短い短節巻を採用している。短節巻を採用することにより、コイルピッチと磁極ピッチが一致した全節巻に比べて誘導起電力の大きさがやや劣るものの、誘導起電力の波形を大幅に正弦波に近づけることができる。
【0052】
このため、U相コイル421に属する作用部61が配置された連続する3スロットのうち、周方向中央のスロットには、U相コイル421に属する作用部61のみが配置される。また、当該3スロットのうち、残りの2スロットには、U相コイル421に属する作用部61と、V相コイル422またはW相コイル423のいずれか一方に属する作用部61とが径方向に交互に配置される。
【0053】
以下では、U相バスバー221と電気的に接続する作用部61と、V相バスバー222と電気的に接続する作用部61と、W相バスバー223と電気的に接続する作用部61とのいずれか1種類のみが配置されるスロットを単相スロットと称する。また、U相バスバー221と電気的に接続する作用部61と、V相バスバーと電気的に接続する作用部61と、W相バスバー223と電気的に接続する作用部61とのいずれか2種類が配置されるスロットを複相スロットと称する。
【0054】
具体的には、U相コイル421に属する作用部61のみが配置されたスロットをU相単相スロット、V相コイル422に属する作用部61のみが配置されたスロットをV相単相スロット、W相コイル423に属する作用部61のみが配置されたスロットをW相単相スロットと称する。また、U相コイル421に属する作用部61とV相コイル422に属する作用部61とが配置されたスロットをU相V相複相スロット、V相コイル422に属する作用部61とW相コイル423に属する作用部61とが配置されたスロットをV相W相複相スロット、W相コイル423に属する作用部61とU相コイル421に属する作用部61とが配置されたスロットをW相U相複相スロットと称する。
【0055】
周方向一方側から他方側に向かうにつれて、U相単相スロット、U相V相複相スロット、V相単相スロット、V相W相複相スロット、W相単相スロット、およびW相U相複相スロットの6つのスロット編成が繰り返し並ぶ。すなわち、単相スロットと複相スロットとが、周方向に交互に配置される。図8では、2番、8番、14番、26番、32番、38番および44番のスロットがU相単相スロットである。すなわち、U相電流の流れる3つのスロット組は、周方向の8箇所に配置される。このため、ステータ21の極数は8である。
【0056】
このように、同相の単相スロットの間隔は、6スロットごとに配置されるが、これが磁極ピッチとなる。ここで、以下では、磁極ピッチと一致するスロット数を、基準スロット数と称する。本実施形態では、基準スロット数は、6となる。
【0057】
図8に示すように、スロットの最内段である第6段には、渡り部62が軸方向一方側となるように、第2ピン52が配置される。第2ピン52は、2つの作用部61がいずれも第6段に配置される。第2ピン52の周方向一方側の作用部61は、周方向一方側に隣り合う同相の第2ピン52の周方向他方側の作用部61の周方向一方側に隣合う。同様に、第2ピン52の周方向他方側の作用部61は、周方向他方側に隣合う同相の第2ピン52の周方向一方側の作用部61の周方向他方側に隣合う。このため、各第2ピン52の渡り部62と、周方向に隣合う第2ピン52の渡り部62とは、周方向の位置が1スロット分重なり合う。
【0058】
スロットの第5段から第4段には、内側中央寄せ第1ピン51cが配置される。第5段および第4段に配置される内側中央寄せ第1ピン51cは、周方向他方側の作用部61が第5段に配置されるとともに、周方向一方側の作用部61が第4段に配置される。第6段に配置された第2ピン52の2つの作用部61から延びる接続部63の溶接端部632は、それぞれ、第5段に配置された内側中央寄せ第1ピン51cの作用部61から延びる接続部63の溶接端部632と溶接される。第6段に配置された第2ピン52の2つの作用部61はそれぞれ、異なる内側中央寄せ第1ピン51cと接続される。
【0059】
スロットの第3段から第2段には、外側中央寄せ第1ピン51bが配置される。第3段および第2段に配置される外側中央寄せ第1ピン51bは、周方向他方側の作用部61が第3段に配置されるとともに、周方向一方側の作用部61が第2段に配置される。第4段に配置された内側中央寄せ第1ピン51cの作用部61から延びる接続部63の溶接端部632は、それぞれ、第3段に配置された外側中央寄せ第1ピン51bの作用部61から延びる接続部63の溶接端部632と溶接される。
【0060】
スロットの最外段である第1段には、所定の4スロット(図8の例では26番、31番、32番および37番)を除いて、片寄せ第1ピン51aが配置される。なお、この所定の4スロットを変則配置スロットと称する。変速配置スロットは、互いに隣合う片寄せ第1ピン51a2つ分に代わって、2つの両開き第3ピン53aおよび2つの片寄せ第3ピン53bが配置される。
【0061】
変速配置スロットを除いて、片寄せ第1ピン51aの周方向一方側の作用部61は、周方向一方側に隣合う同相の片寄せ第1ピン51aの周方向他方側の作用部61の周方向他方側に隣合う。また、片寄せ第1ピン51aの周方向他方側の作用部61は、周方向他方側に隣合う同相の片寄せ第1ピン51aの周方向一方側の作用部61の周方向一方側に隣合う。
【0062】
変則配置スロットの4スロットは、V相単相スロットおよびW相単相スロットを含む4スロットを挟んで隣合う、両開き第3ピン53aが配置されるスロットおよび片寄せ第3ピン53bが配置されるスロットの2スロットを2組含む。当該2スロットのうち、周方向一方側(図8では26番および32番)には、両開き第3ピン53aの作用部61が配置される。当該2スロットのうち、周方向他方側(図8では31番および37番)には、片寄せ第3ピン53bの作用部61が配置される。
【0063】
第1段に配置された片寄せ第1ピン51aの2つの作用部61から延びる接続部63の溶接端部632は、それぞれ、第2段に配置された外側中央寄せ第1ピン51bの作用部61から延びる接続部63の溶接端部632と溶接される。第1段に配置された片寄せ第1ピン51aの2つの作用部61はそれぞれ、異なる外側中央寄せ第1ピン51bと接続される。
【0064】
第1段に配置された2つの両開き第3ピン53aおよび2つの片寄せ第3ピン53bの作用部61から軸方向他方側に延びる接続部63の溶接端部632は、それぞれ、第2段に配置された外側中央寄せ第1ピン51bの作用部61から延びる接続部63の溶接端部632と溶接される。
【0065】
第1段に配置された2つの両開き第3ピン53aの軸方向一方側に延びる接続部63の溶接端部632は、それぞれ、中性点バスバー224の中性点接続部85のうちの2つと溶接される。すなわち、これらの両開き第3ピン53aの軸方向一方側の溶接端部632は、第1U相コイル421aおよび第2U相コイル421bの中性点バスバー接続部としての役割を果たす。
【0066】
また、第1段に配置された2つの片寄せ第3ピン53bの軸方向一方側に延びる接続部63の溶接端部632は、それぞれ、U相バスバー221の2つのピン接続部83と溶接される。すなわち、これらの片寄せ第3ピン53bの軸方向一方側の溶接端部632は、第1U相コイル421aおよび第2U相コイル421bの相バスバー接続部としての役割を果たす。
【0067】
このように、両開き第3ピン53aおよび片寄せ第3ピン53bの軸方向一方側の接続部63は、作用部61の軸方向一方側においてバスバー部22と電気的に接続される第1の接続部である。また、両開き第3ピン53aおよび片寄せ第3ピン53bの軸方向他方側の接続部63は、作用部61の軸方向他方側において他のピン51と溶接される第2の接続部である。
【0068】
図8に示すように、37番の第3ピン53と32番の第3ピン53との間において、実線の太線で示されるように、複数のピン51,52が直列に接続される。これらのピン51,52,53によって第1U相コイル421aが構成される。また、31番の第3ピン53と26番の第3ピン53との間において、破線の太線で示されるように、複数のピン51,52が直列に接続される。これらのピン51,52,53によって第2U相コイル421bが構成される。
【0069】
各段において、U相コイル421に属する作用部61は6スロットごとに連続する2スロットずつ配置される。U相の連続する2スロットは、全部で8組あるが、周方向一方側から他方側へ向かって第1U相コイル421aに属する作用部61、第2U相コイル421bに属する作用部61の順に並ぶ組と、周方向一方側から他方側へ向かって第2U相コイル421bに属する作用部61、第1U相コイル421aに属する作用部61の順に並ぶ組とが交互に配置される。
【0070】
この第1U相コイル421aに属する作用部61と第2U相コイル421bに属する作用部61との周方向の位置関係は、最内段である第6段において周方向に隣合う組へと向かう際に、入れ替わる。
【0071】
このように、隣合う組のうち周方向に近い位置に配置される2つの作用部61が、互いに直列に接続される作用部61であることは、第1ピン51の有する2つの作用部61が跨ぐティース412の数が、ティース412の数をステータ21の極数で除した数(基準スロット数)よりも1つ少ないことによって実現される。そして、隣合う組の2つの作用部61の並びが反転していることは、第2ピン52の有する2つの作用部61が跨ぐティース412の数が、基準スロット数よりも1つ多いことによって実現される。これにより、第2ピン52の有する2つの作用部61が跨ぐティース412の数は、第1ピン51の有する2つの作用部61が跨ぐティース412の数よりも2つ多い。
【0072】
このような構成にすることにより、短節巻のコイル配線を行う場合であっても、効率よくピン51,52,53を配置することができる。また、全てのピン51,52,53の軸方向他方側の全ての溶接端部632を、斜行部631を介して接続する作用部61から同じスロット数周方向にずれた位置に配置することができる。すなわち、全ての斜行部631の作用部61に対する角度をほぼ均一とすることができる。
【0073】
コイル部42の製造時には、接続部63が作用部61と連続して直線状に配置された状態で、作用部61をステータコア41のスロット内に配置する。その後、器具を用いて接続部63を折り曲げることで、斜行部631を作用部61に対して斜めに配置する。上記のように、全ての斜行部631の作用部61に対する角度を均一とすれば、コイル部42の製造時に接続部63を折り曲げるための器具を単一種類とすることができる。また、全ての斜行部631の作用部61に対する角度を均一とすれば、ピン51,52,53によって曲げ角度が複数種類ある場合と比べて、製造工程を簡素化できる。したがって、板コイルであるコイル部42の製造容易性を向上できる。
【0074】
さらに、第1ピンの跨ぐスロット数を基準スロット数よりも1つ少なくし、第2ピンの跨ぐスロット数を基準スロット数よりも1つ多くすることにより、コイルピッチが磁極ピッチと異なる短節巻のコイル配線を行う場合であっても、コイル部42の製造容易性を向上できる。
【0075】
上述の通り、両開き第3ピン53aにおいて、軸方向一方側の斜行部631は、中性点バスバー接続部である軸方向一方側の溶接端部632と作用部とを繋ぐ。また、片寄せ第3品53bにおいて、軸方向一方側の斜行部631は、相バスバー接続部である軸方向一方側の溶接端部632と作用部61とを繋ぐ。ここで、両開き第3ピン53aの軸方向一方側の斜行部631を第1斜行部631a、片寄せ第3ピン53bの軸方向一方側の斜行部631を第2斜行部631bと称する。
【0076】
図4および図8に示すように、複数の第1斜行部631aの一部と、複数の第2斜行部631bの一部とは、互いに交差する。例えば、図8において、作用部61が24番、26番、28番、30番および32番に配置される両開き第3ピン53aの第1斜行部631aはそれぞれ、27番、29番、31番、33番および35番に作用部61が配置される片寄せ第3ピン53bの第2斜行部631bと、互いに交差する。これにより、第3ピン63の軸方向一方側の溶接端部632の周方向の配置範囲を小さくすることができる。
【0077】
このため、本実施形態では、U相コイル421、V相コイル422およびW相コイル423の全ての第3ピン53の軸方向一方側の溶接端部632が、周方向において近くに配置されている。このため、全てのバスバー221,222,223,224が、周方向の90°の範囲内に配置される。これにより、各コイル421,422,423と各バスバー221,222,223,224との溶接工程を行いやすい。また、各バスバー221,222,223,224の周方向の長さを短くできる。
【0078】
また、各相のバスバー221,222,223のピン接続部83と、中性点バスバー224の中性点接続部85とは、周方向に交互に配置される。図2および図3では、周方向他方側から周方向一方側へ向かって、U相バスバー221のピン接続部83、U相コイル421と接続する中性点接続部85、V相バスバー222のピン接続部83、V相コイル422と接続する中性点接続部85、W相バスバー223のピン接続部83、W相コイル423と接続する中性点接続部85、U相バスバー221のピン接続部83、U相コイル421と接続する中性点接続部85、V相バスバー222のピン接続部83、V相コイル422と接続する中性点接続部85、W相バスバー223のピン接続部83、W相コイル423と接続する中性点接続部85の順に配置される。このため、各相のバスバー221,222,223のピン接続部83同士の間隔が同じとなる。したがって、U相バスバー221、V相バスバー222およびW相バスバー223のピン接続部83の部品を共通化することができる。
【0079】
<2.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0080】
上記の実施形態では、第2ピンが最内段に配置され、第3ピンが最外段に配置されたが、本発明はこれに限られない。第2ピンが最外段に配置され、第3ピンが最内段に配置されてもよい。また、第2ピンおよび第3ピンがともに、最内段または最外段のいずれか一方に配置されてもよい。
【0081】
また、上記の実施形態では、スロット数が48であったが、本発明はこれに限られない。U相、V相、W相の3相の入力があり、かつ、各相が2つの並列コイルを有する場合、変則スロットの第2ピンおよび第3ピンを除いて、12スロット毎に電気的に同じ構成となる。このため、スロット数は12の倍数であればよい。したがって、スロット数は、例えば、36や60であってもよい。この場合も、上記の実施形態と同様に、第1ピンの有する2つの作用部が跨ぐティースの数は、ティースの数をステータの極数で除した数(基準スロット数)よりも1つ少ない。また、第2ピンの有する2つの作用部が跨ぐティースの数は、基準スロット数よりも1つ多い。
【0082】
また、上記の実施形態では、U相、V相、W相の各相がそれぞれ2つの並列コイルを有していた。このため、第3ピンの数は、各相バスバーと接続する6つと中性点バスバーと接続する6つとを合わせた12個であった。また、バスバーの数は4つであった。そして、4つのバスバーは、6つの中性点接続部を有する中性点バスバー、U相コイルの2つの第3ピンと接続するU相バスバー、V相コイルの2つの第3ピンと接続するV相バスバー、および、コイルの2つの第3ピンと接続するW相バスバーを含む。
【0083】
しかしながら、本発明はこれに限られない。U相、V相、W相の各相は、それぞれ直列に接続された1群のピンで構成されていてもよい。また、U相、V相、W相の各相は、3つ以上の並列コイルを有していてもよい。例えば、U相、V相、W相の各相が並列コイルを有していない場合、第3ピンの数は、3相各相バスバーと接続する3つと、中性点バスバーと接続する3つとを合わせた6つとなる。一方、バスバーの数は上記の実施形態と同様に4つとなる。そして、4つのバスバーは、3つの中性点接続部を有する中性点バスバー、U相コイルの1つの第3ピンと接続するU相バスバー、V相コイルの1つの第3ピンと接続するV相バスバー、および、W相コイルの1つの第3品と接続するW相バスバーを含む。
【0084】
また、上記の実施形態では、入力電力の相数は3相であった。しかしながら、入力電力の相数は、3相に限られず、4相以上であってもよい。また、連続して同相の電流が流れるスロット数は3以上であってもよい。
【0085】
また、上記の実施形態では、1つのスロットに形成される段数が6つであったが、本発明はこれに限られない。1つのスロットに形成される段数が4つや8つ以上であってもよい。この場合であっても、最外段または最内段のいずれかの一部に第2ピンおよび第3ピンが配置されるとともに、その他の段および箇所には、第1ピンが配置される。
【0086】
また、ステータおよびモータの細部の形状については、本願の各図に示された形状と相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、ステータおよびモータに利用できる。
【符号の説明】
【0088】
1 モータ
9 中心軸
21 ステータ
22 バスバー部
32 ロータ
41 ステータコア
42 コイル部
51,51a,51b,51c 第1ピン
52 第2ピン
53,53a,53b 第3ピン
61 作用部
62 渡り部
63 接続部
81 電源接続部
82 第1円弧状部
83 ピン接続部
221 U相バスバー
222 V相バスバー
223 V相バスバー
223 W相バスバー
224 中性点バスバー
411 コアバック
412 ティース
631 斜行部
632 溶接端部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8