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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ステータおよびモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20240409BHJP
   H02K 3/48 20060101ALI20240409BHJP
   H02K 3/12 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H02K3/04 Z
H02K3/48
H02K3/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021550463
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2020033150
(87)【国際公開番号】W WO2021065298
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2019179971
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 響
(72)【発明者】
【氏名】上田 智哉
(72)【発明者】
【氏名】檜皮 隆宏
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-034848(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107492959(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/04
H02K 3/48
H02K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに用いられるステータであって、
中心軸を中心とする環状のコアバックと、コアバックから径方向内側に向かって延びる複数のティースとを有するステータコアと、
前記ティース間のスロット内において軸方向に延びる導電性の作用部を有する複数のピンと、
前記複数のピンと電気的に接続される、複数のバスバーと、を有し、
それぞれの前記スロットには、前記作用部が径方向に複数段にわたって並び、
前記複数のピンは、
前記ティースを跨いで配置される2つの前記作用部を有する第1ピンと、
前記ティースを跨いで配置される2つの前記作用部を有する第2ピンと、
前記作用部を1つ有し、前記バスバーと接続される第3ピンと、を有し、
前記第1ピンおよび前記第2ピンはそれぞれ、
軸方向の一方側において2つの前記作用部を周方向に繋ぐ渡り部と、
前記作用部の軸方向の他方側において他の前記ピンと接続される接続部と、をさらに有し、
前記第1ピンにおいて、2つの前記作用部は、同じ段または径方向に隣合う段に挿入され、
前記第2ピンの前記作用部および前記第3ピンの前記作用部はそれぞれ、前記スロットの最外段および最内段のいずれか一方に配置され、
前記第2ピンが跨ぐ前記ティースの数は、前記第1ピンが跨ぐ前記ティースの数よりも少ない、ステータ。
【請求項2】
請求項1に記載のステータであって、
前記第1ピンの有する2つの前記作用部が跨ぐ前記ティースの数は、前記ティースの数を前記ステータの極数で除した数である、ステータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のステータであって、
前記第2ピンの有する2つの前記作用部が跨ぐ前記ティースの数は、前記第1ピンの有する2つの前記作用部が跨ぐ前記ティースの数よりも1つ少ない、ステータ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のステータであって、
前記第3ピンはそれぞれ、
前記作用部の軸方向の前記一方側において前記バスバーと電気的に接続される第1の接続部と、
前記作用部の軸方向の前記他方側において他の前記ピンと接続される第2の接続部と、をさらに有する、ステータ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のステータであって、
前記第3ピンの数は6個である、ステータ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のステータであって、
前記バスバーは、それぞれ、
径方向に延び、径方向外側の端部が電源装置と直接または間接的に接続される電源接続部と、
前記電源接続部の径方向内側の端部から周方向に延びる円弧状部と、
前記円弧状部から軸方向に延び、前記第3ピンと電気的に接続されるピン接続部と、を有する、ステータ。
【請求項7】
請求項6に記載のステータであって、
複数の前記バスバーは、周方向の90°の範囲内に配置される、ステータ。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のステータと、
前記ステータコアの径方向内側に配置され、前記中心軸を中心として回転可能に支持されるロータと、を有する、モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに用いられるステータと、モータとに関する。本出願は、2019年9月30日に提出された日本特許出願第2019-179971号に基づいている。本出願は、当該出願に対して優先権の利益を主張するものである。その内容全体は、参照されることによって本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車やプラグインハイブリッド車等の車両には、モータを動力源とする駆動装置が搭載される。車両の走行用の駆動力を出力するトラクションモータなどの、入力電力が大きいモータでは、細長い板状の導体板を折り曲げて形成されたコイル(以下、板コイルと称する)が用いられる場合がある。このようなコイルを用いた従来のモータについては、例えば、日本国公開公報2012-16195号公報に記載されている。
【文献】日本国公開公報2012-16195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような板コイルは、導線で形成されたコイルに比べて、スロット間の接続形状が複雑になると組み立てがしにくいという問題が生じる。特に、日本国公開公報2012-16195号公報に記載のコイルでは、コイルを円周方向に1周配置した後に、次の1周配置する際に、板コイルの曲げ角度を変えて次のスロットに繋がるように配線しなければならず、製造上の難易度が高い。
【0004】
本発明は、板コイルを備えるモータの製造容易性を向上できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の第1発明は、モータに用いられるステータであって、中心軸を中心とする環状のコアバックと、コアバックから径方向内側に向かって延びる複数のティースとを有するステータコアと、前記ティース間のスロット内において軸方向に延びる導電性の作用部を有する複数のピンと、前記複数のピンと電気的に接続される、複数のバスバーと、を有し、それぞれの前記スロットには、前記作用部が径方向に複数段にわたって並び、前記複数のピンは、前記ティースを跨いで配置される2つの前記作用部を有する第1ピンと、前記ティースを跨いで配置される2つの前記作用部を有する第2ピンと、前記作用部を有し、前記バスバーと接続される第3ピンと、を有し、前記第1ピンおよび前記第2ピンはそれぞれ、軸方向の一方側において2つの前記作用部を周方向に繋ぐ渡り部と、前記作用部の軸方向の他方側において他の前記ピンと接続される接続部と、をさらに有し、前記第1ピンにおいて、2つの前記作用部は、同じ段または径方向に隣合う段に挿入され、前記第2ピンの前記作用部および前記第3ピンの前記作用部はそれぞれ、前記スロットの最外段および最内段のいずれか一方に配置され、前記第2ピンが跨ぐ前記ティースの数は、前記第1ピンが跨ぐ前記ティースの数よりも少ない。
【発明の効果】
【0006】
本願の第1発明によれば、同じ極を形成する同相の作用部が複数スロット連続して配置される場合に効率よくピンを配置できる。また、全てのピンの接続部の曲げ角度を同じとすることができる。したがって、ステータの製造容易性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係るモータの概略断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係るステータおよびバスバー部の斜視図である。
図3図3は、第1実施形態に係るステータおよびバスバー部の軸方向一方側から見た平面図である。
図4図4は、第1実施形態に係るコイルの斜視図である。
図5図5は、第1実施形態に係る右寄せ第1ピン、中央寄せ第1ピンおよび左寄せ第1ピンの斜視図である。
図6図6は、第1実施形態に係る第2ピン、両開き第3ピンおよび片寄せ第3ピンの斜視図である。
図7図7は、第1実施形態に係るU相コイルの斜視図である。
図8図8は、第1実施形態に係るコイル部の全てのピンの接続を模式的に示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、モータの中心軸と平行な方向を「軸方向」、モータの中心軸に直行する方向を「径方向」、モータの中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。
【0009】
<1.第1実施形態>
<1-1.モータの構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係るステータ21を有するモータ1の概略断面図である。図2は、ステータ21およびバスバー部22の斜視図である。また、図3は、ステータ21およびバスバー部22を軸方向一方側から見た平面図である。
【0010】
このモータ1は、電気自動車やプラグインハイブリッド車等の車両に搭載され、車両の走行用の駆動力を出力するトラクションモータである。ただし、本発明のモータ1は、トラクションモータ以外の用途のモータであってもよい。例えば、送風機器、家電製品、医療機器、産業用の大型設備等に搭載されて、駆動力を出力するものであってもよい。
【0011】
図1に示すように、モータ1は、モータカバー10と、静止部2と、回転部3とを有する。モータカバー10は、静止部2および回転部3の少なくとも一部を収容する筐体である。静止部2は、モータカバー10に対して相対的に静止する。回転部3は、静止部2に対して中心軸9を中心として回転可能に支持される。
【0012】
図1に示すように、静止部2は、ステータ21、バスバー部22、および2つの軸受23を有する。回転部3は、シャフト31およびロータ32を有する。
【0013】
ステータ21は、バスバー部22を介して供給される駆動電流に応じて磁束を発生させる電機子である。図2および図3に示すように、ステータ21は、中心軸9の周りを環状に取り囲む。図1図3に示すように、ステータ21は、ステータコア41およびコイル部42を有する。
【0014】
ステータコア41は、電磁鋼板が軸方向に積層された積層鋼板からなる。ステータコア41は、環状のコアバック411と、コアバック411から径方向内側に延びる複数のティース412とを有する。コアバック411の内周部は、中心軸9を中心とした円環状である。複数のティース412は、周方向に略等間隔に配列される。
【0015】
コイル部42は、絶縁紙やインシュレータ等の絶縁材料を介して、ティース412の周囲に配置される。コイル部42の詳細な構成については、後述する。
【0016】
バスバー部22は、ステータ21の軸方向一方側に配置される。本実施形態のバスバー部22は、第1バスバー221、第2バスバー222および第3バスバー223を有する。バスバー部22は、コイル部42と電気的に接続される。
【0017】
3つのバスバー221,222,223はそれぞれ、径方向に延びる電源接続部81と、周方向に延びる円弧状部82と、円弧状部82から軸方向に延びる2つのピン接続部83を有する。電源接続部81は、径方向外側の端部が、電源装置(図示せず)と直接または間接的に接続される。円弧状部82は、電源接続部81の径方向内側の端部から、コイル部42の外周に沿って周方向に延びる。2つのピン接続部83はそれぞれ、コイル部42の後述するコイル端部と溶接され、電気的に接続される。
【0018】
本実施形態では、コイル部42にバスバー部22を介して3相交流電流が入力される。コイル部42は、それぞれ位相の異なる3相の駆動電流が供給されるU相コイル421、V相コイル422およびW相コイル423を有する。
【0019】
第1バスバー221、第2バスバー222および第3バスバー223には、それぞれ、1/3波長ずつ位相の異なる電流が供給される。また、U相コイル421のコイル一端部(後述する片寄せ第3ピン53bの第1接続部)は第1バスバー221のピン接続部83と接続され、U相コイル421のコイル他端部(後述する両開き第3ピン53aの第1接続部)は第2バスバー222のピン接続部83と接続される。V相コイル422のコイル一端部は第2バスバー222のピン接続部83に接続され、V相コイル422のコイル他端部は第3バスバー223のピン接続部83に接続される。また、W相コイル423のコイル一端部は第3バスバー223のピン接続部83に接続され、W相コイル423のコイル他端部は第1バスバー221のピン接続部83に接続される。すなわち、本実施形態のU相コイル421、V相コイル422およびW相コイル423は、デルタ結線により接続されている。
【0020】
これにより、各バスバー221,222,223に駆動電流が供給されると、U相コイル421、V相コイル422およびW相コイル423には、それぞれ、1/3波長ずつ位相の異なる電流が流れる。
【0021】
2つの軸受23は、モータカバー10に対して、シャフト31を回転可能に支持する機構である。図1に示すように、2つの軸受23の一方は、ステータ21の軸方向一方側に配置される。また、2つの軸受23の他方は、ステータ21の軸方向他方側に配置される。軸受23には、例えば、モータカバー10に対して固定された外輪と、シャフト31とともに回転する内輪との間に球状の転動体が介在する玉軸受が用いられる。
【0022】
シャフト31は、中心軸9に沿って配置された円柱状の部材である。シャフト31は、2つの軸受23に支持され、中心軸9を中心として回転する。シャフト31の軸方向他方側の端部は、モータカバー10よりも軸方向他方側へ突出し、回転駆動力を出力する。
【0023】
ロータ32は、シャフト31に固定され、シャフト31とともに回転する。本実施形態のロータ32は、電磁鋼板が軸方向に積層された積層鋼板で形成されたロータコア321の内部にマグネット322が挿入された、所謂IPM型のロータである。内部に挿入されたマグネットにより、ロータ32の外周面には、N極の磁界と、S極の磁界とが、周方向に交互に形成される。また、ロータ32の外周面は、ティース412の径方向内側の端面と、僅かな間隙を介して径方向に対向する。すなわち、ロータ32は、ステータ21と径方向に対向する磁極面を有する。
【0024】
なお、ロータ32は、例えば、磁性体である円筒状のロータコアの外周面に複数のマグネットを固定した、所謂SPM型のロータであってもよいし、略円筒状に形成され、外周面がN極とS極とに周方向に交互に着磁されたマグネット樹脂ロータであってもよい。
【0025】
モータ1の駆動時には、モータ1の駆動回路から、バスバー部22を介してコイル部42に駆動電流が供給される。これにより、ステータコア41の複数のティース412に磁束が生じる。そして、ティース412とロータ32との間の磁束が及ぼす作用により、周方向のトルクが発生する。その結果、中心軸9を中心として回転部3が回転する。このようにして、シャフト31の軸方向他方側の端部に連結された駆動対象へ、回転駆動力が出力される。
【0026】
<1-2.コイル部の構成>
次に、図3図6を参照しつつ、コイル部42の構成について説明する。図4は、コイル部42の斜視図である。図5は、第1ピン51の具体的態様である右寄せ第1ピン51a、中央寄せ第1ピン51b、および左寄せ第1ピン51cの斜視図である。図6は、第2ピン52と、第3ピン53の具体的態様である両開き第3ピン53aおよび片寄せ第3ピン53bの斜視図である。図5および図6では、各ピン51a,51b,51c,52,53a,53bをそれぞれ周方向外側から見た図を示している。
【0027】
コイル部42は、図4に示すように、複数の第1ピン51と、複数の第2ピン52と、複数の第3ピン53とを含む。複数のピン51,52,53はそれぞれ、細長い板状の導電性材料を折り曲げて形成される。
【0028】
第1ピン51は、図5に示す右寄せ第1ピン51a、中央寄せ第1ピン51b、および左寄せ第1ピン51cの総称である。図5に示すように、第1ピン51は、2つの作用部61と、渡り部62と、2つの接続部63とを有する。第1ピン51の2つの作用部61は、6つのティース412を跨いで配置される。
【0029】
第2ピン52は、図6に示すように、2つの作用部61と、渡り部62と、2つの接続部63とを有する。第2ピン52の2つの作用部61は、5つのティース412を跨いで配置される。すなわち、第2ピン52の有する2つの作用部61が跨ぐティース412の数は、第1ピン51の有する2つの作用部61が跨ぐティース412の数よりも1つ少ない。
【0030】
第3ピン53は、図6に示す両開き第3ピン53aおよび片寄せ第3ピン53bの総称である。図6に示すように、第3ピン53は、1つの作用部61と、2つの接続部63とを有する。
【0031】
作用部61は、隣合うティース412間に形成されたスロット内において軸方向に延びる部位である。第1ピン51および第2ピン52において、渡り部62はそれぞれ、軸方向一方側において、2つの作用部61を周方向に接続する。第1ピン51において渡り部62が跨ぐティース412の数は6つであり、第2ピン52において渡り部62が跨ぐティース412の数は5つである。
【0032】
接続部63はそれぞれ、他のピン51,52,53またはバスバー部22のバスバー221~223のいずれかと溶接される。接続部63は、作用部61の軸方向の端部から軸方向に対して斜めに延びる斜行部631と、斜行部631の先端部から軸方向に延びる溶接端部632とを有する。第1ピン51および第2ピン52の有する2つの接続部63は、それぞれ、作用部61の軸方向他方側に配置される。第3ピン53の有する2つの接続部63の一方は作用部61の軸方向他方側に配置され、他方は作用部61の軸方向一方側に配置される。
【0033】
図5に示すように、右寄せ第1ピン51aでは、2つの斜行部631がそれぞれ、作用部61から溶接端部632に向かって周方向他方側へと延びる。右寄せ第1ピン51aにおいて、2つの溶接端部632はそれぞれ、斜行部631を介して接続する作用部61に対して3スロット分周方向他方側へずれた位置に配置される。
【0034】
中央寄せ第1ピン51bでは、2つの溶接端部632が周方向の中央に配置される。このため、中央寄せ第1ピン51bでは、2つの斜行部631がそれぞれ、作用部61から周方向中央に配置された溶接端部632へと延びる。具体的には、周方向一方側の作用部61と接続する溶接端部632は、接続する作用部61に対して3スロット分周方向他方側へずれた位置に配置される。
【0035】
一方、周方向他方側の作用部61と接続する溶接端部632は、接続する作用部61に対して3スロット分周方向一方側へずれた位置に配置される。その結果、中央寄せ第1ピン51bの有する2つの溶接端部632は、周方向の位置が一致する。なお、中央寄せ第1ピン51bの有する2つの作用部61および接続部63は径方向の位置が異なるため、2つの溶接端部632の径方向の位置も異なる。
【0036】
左寄せ第1ピン51cでは、2つの斜行部631がそれぞれ、作用部61から溶接端部632に向かって周方向一方側へと延びる。左寄せ第1ピン51cにおいて、2つの溶接端部632はそれぞれ、斜行部631を介して接続する作用部61に対して3スロット分周方向一方側へずれた位置に配置される。
【0037】
図6に示すように、第2ピン52では、2つの斜行部631がそれぞれ、作用部61から溶接端部632へ向かって周方向一方側へと延びる。第2ピン52において、2つの溶接端部632はそれぞれ、斜行部631を介して接続する作用部61に対して周方向一方側へずれた位置に配置される。
【0038】
両開き第3ピン53aの軸方向一方側の接続部63では、斜行部631が作用部61の軸方向一方側の端部から溶接端部632に向かって周方向他方側に延びる。軸方向一方側の溶接端部632は、作用部61に対して3スロット分周方向他方側へずれた位置に配置される。また、両開き第3ピン53aの軸方向他方側の接続部63では、斜行部631が作用部61の軸方向他方側の端部から溶接端部632に向かって周方向一方側に延びる。軸方向他方側の溶接端部632は、作用部61に対して周方向一方側へずれた位置に配置される。
【0039】
片寄せ第3ピン53bの2つの接続部63では、いずれも、斜行部631が作用部61の端部から溶接端部632に向かって周方向一方側に延びる。2つの溶接端部632はそれぞれ、作用部61に対して3スロット分周方向一方側へずれた位置に配置される。
【0040】
コイル部42は、それぞれ、複数のピン51,52,53で構成される。また、コイル部42は、互いに同形状であるU相コイル421、V相コイル422およびW相コイル423により構成される。V相コイル422は、U相コイル421と4スロット分周方向一方側に回転した位置に配置される。W相コイル423は、U相コイル421と8スロット分周方向一方側に回転した位置に配置される。
【0041】
U相コイル421を構成する複数のピン51,52,53は、第1バスバー221と接続されるピンと、第2バスバー222と接続されるピンとの間で直列に接続される。V相コイル422を構成する複数のピン51,52,53は、第2バスバー222と接続されるピンと、第3バスバー223と接続されるピンとの間で直列に接続される。W相コイル423を構成する複数のピン51,52,53は、第3バスバー223と接続されるピンと、第1バスバー221と接続されるピンとの間で直接に接続される。
【0042】
このような構成を簡易な構成で実現するために、以下に説明するピン51,52,53の配置を行う。ここで、図7は、コイル部42のうち、U相コイル421のみを示した斜視図である。なお、上述の通り、V相コイル422およびW相コイル423は、U相コイル421と同様の構成である。図8は、コイル部42の全てのピン51,52,53の接続を模式的に示した概略図である。
【0043】
図1図2図4および図7に示すように、1つのスロットに、複数の作用部61が径方向に並んで配置される。本実施形態では、1つのスロットに、4つの作用部61が配置される。ここで、以下では、1つのスロット内で最も径方向外側に配置される作用部61を第1段(最外段)、第1段の径方向内側に隣合う作用部61を第2段、第2段の径方向内側に隣合う作用部61を第3段、最も径方向内側に配置される作用部61を第4段(最内段)と称する。
【0044】
図8において、U相コイル421に属するピン51,52,53が太線で記載されている。また、図8中において、U相コイル421に属する作用部61には、スロット番号を付している。U相コイル421の作用部61が連続して配置された2つのスロットのうちの1組に1番および2番とスロット番号を振った。周方向一方側から他方側へ向かうにつれてスロット番号が大きくなる。本実施形態では、ティース412およびスロットの数が60個である。このため、60番のスロットの周方向他方側には、1番のスロットが隣接している。
【0045】
図8に示すように、このステータ21では、1つのスロットに配置される4つの作用部61は、いずれも、U相コイル421、V相コイル422、W相コイル423のうちのどれか1つに属する作用部61のみである。
【0046】
ここで、以下では、U相コイル421の作用部61が配置されるスロットをU相スロット、V相コイル422の作用部61が配置されるスロットをV相スロット、W相コイル423の作用部61が配置されるスロットをW相スロットと称する。
【0047】
周方向一方側から他方側へ向かうにつれて、U相スロットが2つ、V相スロットが2つ、W相スロットが2つの併せて6つのスロット編成が繰り返し並ぶ。図8では、1番、2番、7番、8番、13番、14番、19番、20番、25番、26番、31番、32番、37番、38番、43番、44番、49番、50番、55番および56番のスロットがU相スロットである。すなわち、U相電流の流れるスロットは、2つずつ、10箇所に配置される。このため、ステータ21の極数は10である。
【0048】
図8に示すように、スロットの最内段である第4段には、渡り部62が軸方向一方側となるように、右寄せ第1ピン51aが配置される。右寄せ第1ピン51aは、2つの作用部61がいずれも第4段に配置される。
【0049】
スロットの第3段から第2段には、中央寄せ第1ピン51bが配置される。より詳細には、第3段および第2段に配置される中央寄せ第1ピン51bのうち、周方向他方側の作用部61が第3段に配置されるとともに、周方向一方側の作用部61が第2段に配置される。
【0050】
第4段に配置された右寄せ第1ピン51aの2つの作用部61はそれぞれ、異なる中央寄せ第1ピン51bと接続される。より詳細には、第4段に配置された右寄せ第1ピン51aの2つの作用部61から延びる接続部63の溶接端部632は、それぞれ、第3段に配置された中央寄せ第1ピン51bの作用部61から延びる接続部63の溶接端部632と溶接される。
【0051】
スロットの最外段である第1段には、所定の4スロット(図8の例では25番、26番、31番、32番)を除いて、左寄せ第1ピン51cが配置される。なお、この所定の4スロットを変則配置スロットと称する。変則配置スロットは、互いに隣合う2つのU相スロット(図8の例では25番、26番)の組と、互いに隣合う2つのU相スロットのもう一つの組(図8の例では31番、32番)とを含む。当該一組の2スロットと、もう一組の2スロットとは、2つのV相スロットおよび2つのW相スロットを挟んで周方向に隣接する。
【0052】
第1段に配置された左寄せ第1ピン51cの2つの作用部61はそれぞれ、異なる中央寄せ第1ピン51bと接続される。より詳細には、第1段に配置された左寄せ第1ピン51cの2つの作用部61から延びる接続部63の溶接端部632は、それぞれ、第2段に配置された中央寄せ第1ピン51bの作用部61から延びる接続部63の溶接端部632と溶接される。
【0053】
また、1つの右寄せ第1ピン51aに接続される2つの中央寄せ第1ピン51bは、それぞれ、異なる左寄せ第1ピン51cと接続される。ここまで説明した第1ピン51での接続において、変則配置スロットの第1段を除いて、偶数番のU相スロットの全ての段が直列に接続されるとともに、奇数番のU相スロットの全ての段が直列に接続される。
【0054】
このようにU相スロットの作用部61同士を接続し、変則配置スロットの最外段を除くU相スロットの作用部61の回転対称性を確保するために、第1ピン51の有する作用部が跨ぐティース412の数(6)は、ティース412の数(60)をステータ21の極数(10)で除した数となっている。
【0055】
第2ピン52は、その2つの作用部61が、変則配置スロットに含まれる4つのスロットのうち、周方向一方側の2スロットのうちの周方向他方側のスロット(図8の例では26番)と、周方向他方側の2スロットの内の周方向一方側のスロット(図8の例では31番)とに配置される。そして、第2ピン52の2つの作用部61から延びる接続部63の溶接端部632は、第2段に配置された中央寄せ第1ピン51bの溶接端部632と溶接される。
【0056】
これにより、直列に接続された偶数番のU相スロットと、直列に接続された奇数番のU相スロットとが、直列に接続される。このとき、仮に、互いに隣合う奇数番のU相スロットと偶数番のU相スロット(例えば25番と26番)との周方向他方側の溶接端部632を接続すると、隣合う2つのU相スロットにおいて流れる電流の向きが逆になってしまう。このコイル部42では、第1ピン51よりも跨ぐティース412の数が1つ小さい第2ピン52を用いることにより、互いに隣合う2つのU相スロットにおいて流れる電流の向きを揃えることができる。
【0057】
両開き第3ピン53aは、変則配置スロットの最も周方向一方側(図8の例では25番)に配置される。また、片寄せ第3ピン53bは、変則配置スロットの最も周方向他方側(図8の例では32番)に配置される。これにより、両開き第3ピン53aの軸方向他方側の溶接端部632と、片寄せ第3ピン53bの軸方向他方側の溶接端部632との位置を近接して配置することができる。
【0058】
これら2つの第3ピン53の軸方向一方側の溶接端部632が、バスバー部22と溶接され、電気的に接続されるコイル端部としての役割を果たす。すなわち第3ピン53の軸方向一方側の接続部63が、バスバー221,222,223のいずれかと電気的に接続される第1の接続部である。また、第3品52の軸方向他方側の接続部63が、他のピン51と接続される第2の接続部である。
【0059】
本実施形態では、第2ピン52の周方向他方側に配置された片寄せ第3ピン53bの軸方向一方側の溶接端部632が、第1バスバー221と接続されるコイル一端部となる。また、第2ピン52の周方向一方側に配置された両開き第3ピン53aの軸方向一方側の溶接端部632が、第2バスバー222と接続されるコイル他端部となる。このように、U相コイル421は、コイル端部となる2つの第3ピン53とを有する。すなわち、コイル部42は全体として、6つの第3ピン53を有する。
【0060】
このような構成にすることにより、同相のコイルが2周以上に亘って配置され、同じ極を形成する同相の作用部61が複数スロット連続して配置される場合に、効率よくピン51,52,53を配置することができる。また、全てのピン51,52,53の全ての溶接端部632を、斜行部631を介して接続する作用部61から同じスロット数周方向にずれた位置に配置することができる。すなわち、全ての斜行部631の作用部61に対する角度をほぼ均一とすることができる。
【0061】
コイル部42の製造時には、接続部63が作用部61と連続して直線状に配置された状態で、作用部61をステータコア41のスロット内に配置する。その後、器具を用いて接続部63を折り曲げることで、斜行部631を作用部61に対して斜めに配置する。上記のように、全ての斜行部631の作用部61に対する角度を均一とすれば、コイル部42の製造時に接続部63を折り曲げるための器具を単一種類とすることができる。また、全ての斜行部631の作用部61に対する角度を均一とすれば、ピン51,52,53によって曲げ角度が複数種類ある場合と比べて、製造工程を簡素化できる。したがって、板コイルであるコイル部42の製造容易性を向上できる。
【0062】
本実施形態では、U相コイル421、V相コイル422およびW相コイル423のバスバー221,222,223と接続する溶接端部632が、周方向において近くに配置されている。このため、全てのバスバー221,222,223が、周方向の90°の範囲内に配置される。これにより、各コイル421,422,423と各バスバー221,222,223との溶接工程を行いやすい。
【0063】
<2.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0064】
上記の実施形態では、第2ピンおよび第3ピンが最外段に配置されたが、本発明はこれに限られない。第2ピンおよび第3ピンは、最内段に配置されてもよい。
【0065】
また、上記の実施形態では、スロット数が60であったが、本発明はこれに限られない。U相、V相、W相の3相の入力があり、かつ、連続して同相の電流が流れるスロット数が2である場合、上記の実施形態と同様に、第1ピンの跨ぐティースの数は6つである。したがって、スロット数は、例えば、36や48であってもよい。この場合も、上記の実施形態と同様に、スロット数は6の倍数であり、第1ピンの跨ぐティースの数は、ティースの数をステータの極数で除した数となる。
【0066】
また、入力電力の相数は、3相に限られず、4相以上であってもよい。また、連続して同相の電流が流れるスロット数は3以上であってもよい。これらの場合であっても、第1ピンの跨ぐティースの数は、ティースの数をステータの極数で除した数となる。
【0067】
また、上記の実施形態では、1つのスロットに形成される段数が4つであったが、本発明はこれに限られない。1つのスロットに形成される段数が5つ以上であってもよい。この場合であっても、最外段または最内段のいずれかの一部に第2ピンおよび第3ピンが配置されるとともに、その他の段および箇所には、第1ピンが配置される。例えば、1つのスロットに形成される段数が6つである場合、スロットの最外段(第1段)に第1ピン、第2ピンおよび第3品が配置されるとともに、スロットの第2段-第3段、第4段-第5段、および第6段に第1ピンが配置されてもよい。
【0068】
また、ステータおよびモータの細部の形状については、本願の各図に示された形状と相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、ステータおよびモータに利用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 モータ
9 中心軸
21 ステータ
32 ロータ
41 ステータコア
41 ステータ
42 コイル部
51 第1ピン
52 第2ピン
53 第3ピン
61 作用部
62 渡り部
63 接続部
81 電源接続部
82 円弧状部
83 ピン接続部
221,222,223 バスバー
411 コアバック
412 ティース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8