(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】測定システム及び測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 15/02 20060101AFI20240409BHJP
G01P 3/481 20060101ALI20240409BHJP
G01P 13/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G01B15/02 A
G01P3/481
G01P13/00 E
(21)【出願番号】P 2022057256
(22)【出願日】2022-03-30
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 実
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-204565(JP,A)
【文献】特開2009-184309(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103878101(CN,A)
【文献】特開2014-224763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 17/00-17/08
5/00-5/30
7/00-7/34
11/00-11/30
21/00-21/32
B05C 7/00-21/00
G01P 3/00-3/80
13/00
G01N 21/00-21/01
21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が搬送中のシートを走査測定する複数のフレームと、
各前記フレームを同期制御する同期制御ユニットと、
を備え、
前記同期制御ユニットは、
各前記フレームでの前記シートの速度を算出する速度算出部と、
前記速度算出部によって算出された各前記フレームでの前記シートの算出速度に基づいて、各前記フレームが前記シートの同じ位置を走査測定するように各前記フレームを制御する制御部と、
を含み、
前記複数のフレームは、前記シートの搬送方向において順に配置された前段のフレーム及び後段のフレームを含み、
前記制御部は、前記前段のフレームと前記後段のフレームとの間のパス長と、前記前段のフレームでの前記シートの算出速度と、前記後段のフレームでの前記シートの算出速度とに基づいて、前記前段のフレームの走査に対する前記後段のフレームの走査の遅れ時間を算出し、算出した遅れ時間に基づいて、前記後段のフレームの走査タイミングを制御する
、
測定システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記パス長を、前記前段のフレームでの前記シートの算出速度及び前記後段のフレームでの前記シートの算出速度の平均速度で除算することによって、前記遅れ時間を算出する、
請求項
1に記載の測定システム。
【請求項3】
各々が搬送中のシートを走査測定する複数のフレームと、
各前記フレームを同期制御する同期制御ユニットと、
を備え、
前記同期制御ユニットは、
各前記フレームでの前記シートの速度を算出する速度算出部と、
前記速度算出部によって算出された各前記フレームでの前記シートの算出速度に基づいて、各前記フレームが前記シートの同じ位置を走査測定するように各前記フレームを制御する制御部と、
を含み、
前記同期制御ユニットは、
前記速度算出部によって算出された各前記フレームでの前記シートの算出速度どうしの間の異常差分を検知する検知部と、
前記速度算出部によって算出された各前記フレームでの前記シートの算出速度のうち、前記検知部によって検知された異常差分に対応するフレームでの前記シートの算出速度を補正する速度補正部と、
を含む
、
測定システム。
【請求項4】
前記速度補正部は、前記異常差分に対応するフレームでの前記シートの算出速度を、他のフレームでの前記シートの算出速度に基づいて補正する、
請求項
3に記載の測定システム。
【請求項5】
前記速度補正部は、前記異常差分に対応するフレームでの前記シートの算出速度を、前記異常差分に対応するフレームと他のフレームとの間のパス長と、前記他のフレームでの前記シートの算出速度とに基づいて補正する、
請求項
4に記載の測定システム。
【請求項6】
前記速度算出部は、各前記フレームの近くに配置され前記シートの搬送手段を構成するローラのエンコーダからのエンコーダ信号に基づいて、各前記フレームでの前記シートの速度を算出する、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項7】
各々が搬送中のシートを走査測定する複数のフレームを用いる測定方法であって、
各前記フレームでの前記シートの速度を算出することと、
算出した各前記フレームでの前記シートの算出速度に基づいて、各前記フレームが前記シートの同じ位置を走査測定するように各前記フレームを制御することと、
を含
み
前記複数のフレームは、前記シートの搬送方向において順に配置された前段のフレーム及び後段のフレームを含み、
前記制御することでは、前記前段のフレームと前記後段のフレームとの間のパス長と、前記前段のフレームでの前記シートの算出速度と、前記後段のフレームでの前記シートの算出速度とに基づいて、前記前段のフレームの走査に対する前記後段のフレームの走査の遅れ時間を算出し、算出した遅れ時間に基づいて、前記後段のフレームの走査タイミングを制御する、
測定方法。
【請求項8】
各々が搬送中のシートを走査測定する複数のフレームを用いる測定方法であって、
各前記フレームでの前記シートの速度を算出することと、
算出した各前記フレームでの前記シートの算出速度に基づいて、各前記フレームが前記シートの同じ位置を走査測定するように各前記フレームを制御することと、
を含み
前記制御することでは、
算出した各前記フレームでの前記シートの算出速度どうしの間の異常差分を検知し、
算出した各前記フレームでの前記シートの算出速度のうち、前記検知した異常差分に対応するフレームでの前記シートの算出速度を補正する、
測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定システム及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送中のシートを走査測定するための複数のフレームを同期制御することが知られている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば搬送時にシートが延びる等して、各フレームでのシートの速度が異なる場合がある。この点を考慮しないと、同期がずれて、同期制御の精度が低下する。
【0005】
本発明の一側面は、複数のフレームの同期制御の精度の低下を抑制することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面に係る測定システムは、各々が搬送中のシートを走査測定する複数のフレームと、各フレームを同期制御する同期制御ユニットと、を備え、同期制御ユニットは、各フレームでのシートの速度を算出する速度算出部と、速度算出部によって算出された各フレームでのシートの算出速度に基づいて、各フレームがシートの同じ位置を走査測定するように各フレームを制御する制御部と、を含む。
【0007】
一側面に係る測定方法は、各々が搬送中のシートを走査測定する複数のフレームを用いる測定方法であって、各フレームでのシートの速度を算出することと、算出した各フレームでのシートの算出速度に基づいて、各フレームがシートの同じ位置を走査測定するように各フレームを制御することと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数のフレームの同期制御の精度の低下を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る測定システムの概略構成の例を示す図である。
【
図3】測定システムにおいて実行される処理(測定方法)の例を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態に係る測定システムで用いられる同期制御ユニットの機能ブロックの例を示す図である。
【
図6】測定システムにおいて実行される処理(測定方法)の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ実施形態について説明する。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る測定システムの概略構成の例を示す図である。測定システム100は、搬送中のシート9を測定する。シート9の例は、紙、樹脂、電池電極シート等である。例えば、製造工程中のシート9が、測定システム100によって測定される。製造工程に含まれる工程の例は、塗工工程、乾燥工程等である。測定システム100は、複数のフレーム1と、複数のローラ2と、オペレータステーション3と、同期制御ユニット4とを含む。
【0012】
複数のフレーム1の各々は、シート9が内側を通過するように配置され、搬送中のシート9を走査測定する。測定には、センサヘッドが用いられる。この例では、フレーム1は、センサヘッド11と、センサヘッド12とを含む。
図2も参照して説明する。
【0013】
図2は、フレームの概略構成の例を示す図である。フレーム1は、シート9が内側を通過できるリング形状を有する。このようなフレーム1は、O型フレーム等とも称される。センサヘッド11及びセンサヘッド12は、フレーム1に係留等することによって支持される。
【0014】
センサヘッド11及びセンサヘッド12は、フレーム1内をシート9の搬送方向と交差する方向(例えば直交する方向)に移動することによって、シート9を走査する。シート9における走査位置を、走査位置9Pと称し模式的に図示する。センサヘッド11及びセンサヘッド12は、シート9を挟んで互いに反対側に位置するように配置され、位置関係が固定された状態で、前進及び後進を繰り返しながらシート9の全幅を走査するように一緒に移動する。例えば図示しないアクチュエータ等によって、センサヘッド11及びセンサヘッド12が駆動される。
【0015】
例えば、センサヘッド11には、β線、X線等の放射線源が搭載される。センサヘッド12には、センサヘッド11からの放射線を検出する放射線検出器が搭載される。センサヘッド11からの放射線は、シート9を透過して、センサヘッド12で検出される。これにより、シート9を透過した放射線の透過量や減衰量(透過率や減衰率でもよい)が検出される。例えばシート9の透過率等とシート9の厚さとの関係を示す検量線に基づいて、シート9の厚さが算出される。シート9の厚さ測定が可能である。
【0016】
図1に戻り、複数のフレーム1として、フレーム1-1~フレーム1-5が例示される。シート9は、フレーム1-1~フレーム1-5をこの順に通過するように搬送される。例えば、フレーム1-1によって、塗工前の状態のシート9の厚さが測定される。塗工機C-1が、シート9の表(おもて)面に塗料を塗布する。フレーム1-2は、表面に塗料が塗布された状態のシート9の厚さを測定する。その後、シート9は、乾燥炉D-1を通過する。フレーム1-3は、乾燥状態のシート9の厚さを測定する。塗工機C-2が、シート9の裏(うら)面に塗料を塗布する。フレーム1-4は、裏面に塗料が塗布された状態のシート9の厚さを測定する。その後、シート9は、乾燥炉D-2を通過する。フレーム1-5は、乾燥状態のシート9の厚さを測定する。
【0017】
シート9の搬送方向におけるフレーム1どうしの間の距離を、パス長Lと称する。パス長Lの例は、フレーム1-1とフレーム1-2との間のパス長L12、フレーム1-2とフレーム1-3との間のパス長L23、フレーム1-3とフレーム1-4との間のパス長L34、及び、フレーム1-4とフレーム1-5との間のパス長L45等である。
【0018】
ローラ2は、シート9の搬送装置の構成要素の1つである。搬送装置の例は、コンベヤ等である。ローラ2は、搬送されるシート9の移動に応じて回転する。複数のローラ2のうち、フレーム1-1~フレーム1-5それぞれの近くに位置するローラ2を、ローラ2-1~ローラ2-5と称し図示する。
【0019】
複数のローラ2のうちの少なくとも一部のローラ2の回転は、エンコーダによって検出される。検出結果を示す信号を、エンコーダ信号ESと称する。エンコーダ信号ESは、ローラ2のエンコーダから同期制御ユニット4に送信される。
図1に示される例では、少なくともローラ2-1~ローラ2-5の回転が、エンコーダによって検出される。ローラ2-1~ローラ2-5それぞれのエンコーダ信号ESを、エンコーダ信号ES-1~エンコーダ信号ES-5と称し図示する。
【0020】
オペレータステーション3は、各フレーム1での測定結果、具体的に、シート9の厚さのデータを取得する。測定結果は、例えばモニタ等によってオペレータに表示される。測定結果に応じて必要なオペレーションが行われる。例えば、シート9の厚さが目的の厚さになるように、塗工機C-1、塗工機C-2、乾燥炉D-1、乾燥炉D-2等のパラメータが調整される。
【0021】
同期制御ユニット4は、各フレーム1を同期制御する。
図1には、同期制御ユニット4の機能ブロックも示される。この例では、同期制御ユニット4は、速度算出部41と、制御部42とを含む。
【0022】
速度算出部41は、各フレーム1でのシート9の速度を算出する。
図1に示される例では、速度算出部41は、各フレーム1の近くのローラ2からのエンコーダ信号ESに基づいて、各フレーム1でのシート9の速度を算出する。例えば、エンコーダ信号ESから把握されるローラ2の回転速度に基づいて、対応するフレーム1でのシート9の速度が算出される。
図1に示される例では、エンコーダ信号ES-1~エンコーダ信号ES-5それぞれに基づいて、フレーム1-1~フレーム1-5それぞれでのシート9の速度が算出される。以下では、速度算出部41によって算出されるシート9の速度を、算出速度Vとも称する。
【0023】
ここで、各フレーム1での算出速度Vが異なる場合がある。要因の一つは、搬送中のシート9の延びである。シート9の材質等によっては、搬送時にシート9が延びる。この後で説明するように、本実施形態では、シート9の延び等に起因して各フレーム1での算出速度Vが異なる場合でも、各フレーム1が適切に同期制御される。
【0024】
制御部42は、各フレーム1でのシート9の算出速度Vに基づいて、各フレーム1がシート9の同じ位置を走査測定するように各フレーム1を制御する。換言すると、各フレーム1でのシート9の走査位置9Pが同じになるように、各フレーム1の走査タイミング、すなわちセンサヘッド11及びセンサヘッド12の駆動タイミングが制御される。
【0025】
複数のフレーム1のうち、シート9の搬送方向において順に配置された2つのフレーム1を例に挙げて説明する。制御部42は、2つのフレーム1のうち、前段のフレーム1と後段のフレーム1との間のパス長Lと、前段のフレーム1での算出速度Vと、後段のフレーム1での算出速度Vとに基づいて、前段のフレーム1の走査に対する後段のフレーム1の走査の遅れ時間Tを算出する。
【0026】
例えば、制御部42は、前段のフレーム1と後段のフレーム1との間のパス長Lを、前段のフレーム1でのシート9の算出速度V及び後段のフレーム1でのシート9の算出速度Vの平均速度で除算することによって、遅れ時間Tを算出する。
【0027】
具体的に、前段のフレーム1及び後段のフレーム1として、フレーム1-1及びフレーム1-2を例に挙げて説明する。フレーム1-1でのシート9の算出速度Vを、算出速度V1とする。フレーム1-2でのシート9の算出速度Vを、算出速度V2とする。フレーム1-1とフレーム1-2との間のパス長Lを、先にも述べたようにパス長L12とする。フレーム1-1の走査に対するフレーム1-2の走査の遅れ時間Tを、遅れ時間T12とする。この場合、制御部42は、例えば下記の式(1)に基づいて、遅れ時間T12を算出する。
T12=L12/((V1+V2)/2) (1)
【0028】
同様にして、例えば、フレーム1-2の走査に対するフレーム1-3の走査の遅れ時間T23が算出される。フレーム1-3の走査に対するフレーム1-4の走査の遅れ時間T34が算出される。フレーム1-4の走査に対するフレーム1-5の走査の遅れ時間T45が算出される。
【0029】
制御部42は、算出した遅れ時間Tに基づいて、後段のフレーム1の走査タイミングを制御する。制御部42は、後段のフレーム1の走査が、前段のフレーム1の走査よりも遅れ時間Tだけ遅れるように、後段のフレーム1の走査タイミングを制御する。例えば、フレーム1-2の走査タイミングが、フレーム1-1の走査タイミングよりも遅れ時間T12だけ遅れるように、フレーム1-2の走査タイミングが制御される。フレーム1-3の走査タイミングが、フレーム1-2の走査タイミングよりも遅れ時間T23だけ遅れるように、フレーム1-3の走査タイミングが制御される。フレーム1-4の走査タイミングが、フレーム1-3の走査タイミングよりも遅れ時間T34だけ遅れるように、フレーム1-4の走査タイミングが制御される。フレーム1-5の走査タイミングが、フレーム1-4の走査タイミングよりも遅れ時間T45だけ遅れるように、フレーム1-5の走査タイミングが制御される。
【0030】
図1に示される例では、制御部42は、各フレーム1に指令信号CSを送信することによって、各フレーム1を制御する。フレーム1-1~フレーム1-5に送信される指令信号CSを、指令信号CS-1~指令信号CS-5と称し図示する。各フレーム1は、同期制御ユニット4の制御部42からの指令信号CSに基づいて、センサヘッド11及びセンサヘッド12を駆動する。各フレーム1がシート9の同じ位置を走査測定するように、各フレーム1がセンサヘッド11及びセンサヘッド12を駆動する。
【0031】
上記の測定システム100によれば、例えば搬送中のシート9の延び等に起因して各フレーム1での算出速度Vが異なる場合であっても、各フレーム1でのシート9の算出速度Vに基づいて、各フレーム1がシート9の同じ位置を走査測定するように各フレーム1が制御される。シート9の同じ走査位置9Pの厚さを正確に測定することができる。
【0032】
図3は、測定システムにおいて実行される処理(測定方法)の例を示すフローチャートである。具体的な処理はこれまで説明したとおりであるので、詳細な説明は省略する。
【0033】
ステップS1において、各フレームでのシートの速度が算出される。同期制御ユニット4の速度算出部41は、各フレーム1の近くのローラ2からのエンコーダ信号ESに基づいて、各フレーム1でのシート9の速度を算出する。
【0034】
ステップS2において、各フレームが同期制御される。同期制御ユニット4の制御部42は、各フレーム1でのシート9の算出速度Vに基づいて、各フレーム1がシート9の同じ位置を走査測定するように、各フレーム1を制御する。
【0035】
<第2実施形態>
搬送中のシート9に滑りが発生すると、一部のフレーム1でのシート9の算出速度Vが、実際のシート9の速度と異なる場合がある。このような場合には、第2実施形態による対処が行われてもよい。
【0036】
図4は、第2実施形態に係る測定システムで用いられる同期制御ユニットの機能ブロックの例を示す図である。同期制御ユニット4は、検知部43と、速度補正部44とをさらに含む。
【0037】
検知部43は、速度算出部41によって算出された各フレーム1でのシート9の速度、すなわち各フレーム1での算出速度Vどうしの間の異常差分を検知する。検知手法のいくつかの具体例について述べる。
【0038】
検知部43は、各フレーム1での算出速度Vどうしの差分の大きさが閾値よりも大きい場合に、異常差分を検知してよい。その場合、他のフレーム1での算出速度Vから大きく離れている(例えば最も離れている)算出速度Vのフレーム1が、異常差分に対応するフレーム1として検知されてよい。
【0039】
検知部43は、シート9の搬送方向に順に配置された3つのフレーム1のうち、真ん中のフレーム1での算出速度Vの、その前段のフレーム1での算出速度Vに対する差分の大きさ及びその後段のフレーム1での算出速度Vに対する差分の大きさがそれぞれ閾値よりも大きい場合に、異常差分を検知してよい。その場合、真ん中のフレーム1が、異常差分に対応するフレーム1として検知されてよい。
【0040】
図5は、異常差分の検知の例を示す図である。グラフの横軸は、フレーム1-1~フレーム1-5に対応する。グラフの縦軸は、各フレーム1でのシート9の算出速度Vを示す。
【0041】
4種類のプロットは、4通りの測定結果のパターンを示す。一点鎖線は、想定される各フレーム1でのシート9の算出速度Vを仮想的に示す。シート9の延びが考慮されており、想定される算出速度Vは、フレーム1-1~フレーム1-5の順に大きくなる。
【0042】
ひし形プロットは、正常パターンの測定結果を示す。すべてのフレーム1でのシート9の算出速度Vが、想定される算出速度Vに従う。Xプロット、四角プロット及び三角プロットは、異常パターンの測定結果を示す。少なくとも1つのフレーム1でのシート9の算出速度Vが、想定される算出速度Vから大きく離れている異常パターンを示す。
【0043】
異常パターン1では、白抜き矢印AR1で示されるように、フレーム1-5での算出速度Vの、他のフレーム1での算出速度Vに対する差分の大きさが閾値よりも大きく、異常差分が検知される。また、異常差分に対応するフレーム1として、フレーム1-5が検知される。
【0044】
異常パターン2及び異常パターン3では、白抜き矢印AR2及び白抜き矢印AR3で示されるように、フレーム1-3でのシート9の算出速度Vの、その前後に配置されたフレーム1-2及びフレーム1-4での算出速度Vに対する差分の大きさが閾値よりも大きく、異常差分が検知される。また、異常差分に対応するフレーム1として、フレーム1-3が検知される。
【0045】
上述の異常パターン1で検知される異常差分は、フレーム1-5に対応するローラ2-5においてシート9の滑りが発生している場合に生じ得る。異常パターン2及び異常パターン3で検知される異常差分は、フレーム1-3に対応するローラ2-3においてシート9の滑りが発生している場合に生じ得る。従って、異常差分の検知は、シート9の滑りの発生の検知であるともいえる。
【0046】
図4に戻り、速度補正部44は、速度算出部41によって算出された各フレーム1での算出速度Vのうち、検知部43によって検知された異常差分に対応するフレーム1でのシート9の算出速度Vを補正する。
【0047】
一実施形態において、速度補正部44は、異常差分に対応するフレーム1でのシート9の算出速度Vを、他のフレーム1での算出速度Vに基づいて補正する。速度補正部44は、他のフレーム1での算出速度Vに基づいて、異常差分に対応するフレーム1でのシート9の速度を算出する。速度補正部44は、算出した速度が、異常差分に対応するフレーム1でのシート9の算出速度Vとなるように、そのフレーム1でのシート9の算出速度Vを補正する。速度算出部41によって算出された異常差分に対応するフレーム1のシート9の算出速度Vが、速度補正部44によって改めて算出され、更新されるともいえる。
【0048】
速度補正部44は、異常差分に対応するフレーム1でのシート9の算出速度Vを、異常差分に対応するフレーム1と他のフレーム1との間のパス長Lと、他のフレーム1でのシート9の算出速度Vとに基づいて補正してよい。
【0049】
具体的に、フレーム1-1、フレーム1-2及びフレーム1-3を例に挙げて説明する。フレーム1-2が、異常差分に対応するフレーム1であるものとする。フレーム1-1でのシート9の算出速度Vを、算出速度V1とする。フレーム1-3でのシート9の算出速度Vを、算出速度V3とする。フレーム1-1とフレーム1-2との間のパス長Lを、先にも述べたようにパス長L12とする。フレーム1-2とフレーム1-3との間のパス長Lを、先にも述べたようにパス長L23とする。この場合、制御部42は、例えば下記の式(2)に基づいて、フレーム1-2でのシート9の速度V2を算出する。
V2=V1+(V3-V1)L12/(L12+L23)
=(V1L23+V3L12)/(L12+L23) (2)
【0050】
速度補正部44は、フレーム1-2でのシート9の算出速度Vが、上記のように算出した速度V2となるように、フレーム1-2でのシート9の算出速度Vを補正する。
【0051】
なお、速度補正部44は、他のフレーム1での算出速度Vではなく、搬送装置全体の代表速度に基づいて、異常差分に対応するフレーム1でのシート9の算出速度Vを補正してもよい。代表速度は、複数のローラ2のうちの任意のローラ2からのエンコーダ信号ESに基づいて算出される速度であってよい。速度補正部44は、代表速度が、異常差分に対応するフレーム1でのシート9の算出速度Vとなるように、そのフレーム1でのシート9の算出速度Vを補正してよい。
【0052】
制御部42は、必要に応じて速度補正部44による補正が行われた後の各フレーム1での算出速度Vに基づいて、各フレーム1がシート9の同じ位置を走査測定するように各フレーム1を制御する。これにより、例えば搬送中のシート9に滑りが発生し、一部のフレーム1でのシート9の算出速度Vが実際のシート9の速度と異なる場合であっても、補正後の算出速度Vに基づいて、各フレーム1がシート9の同じ位置を走査測定するように各フレーム1が制御される。シート9の同じ走査位置9Pの厚さを正確に測定することができる。
【0053】
なお、検知部43によって検知された異常差分は、オペレータステーション3によってオペレータ等に通知されてもよい。
【0054】
図6は、測定システムにおいて実行される処理(測定方法)の例を示すフローチャートである。具体的な処理はこれまで説明したとおりであるので、詳細な説明は省略する。
【0055】
ステップS11において、各フレームでのシートの速度が算出される。この処理は、先に説明した
図3のステップS1の処理と同様である。
【0056】
ステップS12において、異常差分を検出したか否かが判断される。同期制御ユニット4の検知部43は、先のステップS11で算出された各フレーム1でのシート9の算出速度Vどうしの間に異常差分がある場合には、その異常差分を検知する。異常差分を検知した場合(ステップS12:Yes)、ステップS13に処理が進められる。そうでない場合(ステップS12:No)、ステップS14に処理が進められる。
【0057】
ステップS13において、異常差分に対応するフレームでのシートの算出速度が補正される。同期制御ユニット4の速度補正部44は、他のフレーム1でのシート9の算出速度Vや代表速度に基づいて、異常差分に対応するフレーム1でのシート9の算出速度Vを補正する。その後、ステップS14に処理が進められる。
【0058】
ステップS14において、各フレームが同期制御される。この処理は、先に説明した
図3のステップS2の処理と同様である。
【0059】
<変形例>
開示される技術は、上記実施形態に限定されない。いくつかの変形例について述べる。
【0060】
上記実施形態では、同期制御ユニット4が、各フレーム1の近くに配置された各ローラ2からのエンコーダ信号ESを取得する場合を例に挙げて説明した。ただし、このようなエンコーダ信号ESの取得は必須ではない。例えば、各フレーム1でのシート9の速度(算出速度Vに相当)が、オペレータステーション3においてオペレータ等によって手動で入力され、同期制御ユニット4に送信されてもよい。シート9の速度の入力は、速度の絶対値だけでなく、他のフレーム1でのシート9の速度や所定の基準速度との速度差、速度比率等を用いて行われてもよい。速度やシートの延びが銘柄(材料、測定レンジ等)によって異なるので、銘柄ごとに設定し銘柄管理してもよい。
【0061】
上記実施形態では、測定システム100によってシート9の厚さが測定される場合を例に挙げて説明した。ただし、シート9の厚さに限らず、シート9に関するさまざまなファクタ、例えば坪量や重量等が、測定システム100によって測定されてよい。
【0062】
上記実施形態では、フレーム1が、
図2に示されるようなリング形状を有し、内側を通過するシート9を走査測定するものである場合を例に挙げて説明した。このような構成に限らず、シート9を走査測定することのできるあらゆる測定手段が、本開示におけるフレーム1として用いられてよい。
【0063】
以上で説明した技術は、例えば次のように特定される。開示される技術の1つは、測定システム100である。
図1等を参照して説明したように、測定システム100は、各々が搬送中のシート9を走査測定する複数のフレーム1と、各フレーム1を同期制御する同期制御ユニット4と、を備える。同期制御ユニット4は、各フレーム1でのシート9の速度を算出する速度算出部41と、速度算出部41によって算出された各フレーム1でのシート9の算出速度Vに基づいて、各フレーム1がシート9の同じ位置を走査測定するように各フレーム1を制御する制御部42と、を含む。
【0064】
上記の測定システム100によれば、例えば搬送中のシート9の延び等に起因して各フレーム1での算出速度Vが異なる場合であっても、各フレーム1でのシート9の算出速度Vに基づいて、各フレーム1がシート9の同じ位置を走査測定するように各フレーム1が制御される。これにより、複数のフレーム1の同期制御の精度の低下を抑制することができる。
【0065】
図1及び式1等を参照して説明したように、複数のフレーム1は、シート9の搬送方向において順に配置された前段のフレーム1及び後段のフレーム1を含み、制御部42は、前段のフレーム1と後段のフレーム1との間のパス長Lと、前段のフレーム1でのシート9の算出速度Vと、後段のフレーム1でのシート9の算出速度Vとに基づいて、前段のフレーム1の走査に対する後段のフレーム1の走査の遅れ時間Tを算出し、算出した遅れ時間Tに基づいて、後段のフレーム1の走査タイミングを制御してよい。制御部42は、パス長Lを、前段のフレーム1でのシート9の算出速度V及び後段のフレーム1でのシート9の算出速度Vの平均速度で除算することによって、遅れ時間Tを算出してよい。例えばこのように遅れ時間Tを算出することによって、各フレーム1を同期制御することができる。
【0066】
図4等を参照して説明したように、同期制御ユニット4は、速度算出部に41よって算出された各フレーム1でのシート9の算出速度Vどうしの間の異常差分を検知する検知部43と、速度算出部41によって算出された各フレーム1でのシート9の算出速度Vのうち、検知部43によって検知された異常差分に対応するフレーム1でのシート9の算出速度Vを補正する速度補正部44と、を含んでよい。これにより、例えば搬送中のシート9に滑りが発生し、一部のフレーム1でのシート9の算出速度Vが実際のシート9の速度と異なる場合であっても、各フレーム1を同期制御することができる。
【0067】
図4及び式2等を参照して説明したように、速度補正部44は、異常差分に対応するフレーム1でのシート9の算出速度Vを、他のフレーム1でのシート9の算出速度Vに基づいて補正してよい。例えば、速度補正部44は、異常差分に対応するフレーム1でのシート9の算出速度Vを、異常差分に対応するフレーム1と他のフレーム1との間のパス長Lと、他のフレーム1でのシート9の算出速度Vとに基づいて補正してよい。例えばこのようにして、異常差分に対応するフレーム1でのシート9の算出速度Vを補正することができる。
【0068】
速度算出部41は、各フレーム1の近くに配置されシート9の搬送手段を構成するローラ2のエンコーダからのエンコーダ信号ESに基づいて、各フレーム1でのシート9の速度Vを算出してよい。例えばこのようにして、各フレーム1でのシート9の算出速度Vを算出することができる。
【0069】
図3及び
図6等を参照して説明した測定方法も、開示される技術の1つである。測定方法は、各々が搬送中のシート9を走査測定する複数のフレーム1を用いる測定方法であって、各フレーム1でのシート9の速度を算出すること(ステップS1、ステップS11)と、算出した各フレーム1でのシート9の算出速度に基づいて、各フレーム1がシート9の同じ位置を走査測定するように各フレーム1を制御すること(ステップS2、ステップS14)と、を含む。このような測定方法によっても、これまで説明したように、複数のフレーム1の同期制御の精度の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0070】
100 測定システム
1 フレーム
11 センサヘッド
12 センサヘッド
2 ローラ
3 オペレータステーション
4 同期制御ユニット
41 速度算出部
42 制御部
43 検知部
44 速度補正部
9 シート
9P 走査位置