(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/64 20060101AFI20240409BHJP
E04B 1/70 20060101ALI20240409BHJP
E04B 1/80 20060101ALI20240409BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
E04B1/64 E
E04B1/64 D
E04B1/70 E
E04B1/80 100J
E04B9/00 C
(21)【出願番号】P 2022123906
(22)【出願日】2022-08-03
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】東 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】峯 永治
(72)【発明者】
【氏名】嶽釜 恒夫
(72)【発明者】
【氏名】梅野 徹也
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-116560(JP,A)
【文献】特開平10-183789(JP,A)
【文献】特開平11-241426(JP,A)
【文献】特開平7-127177(JP,A)
【文献】特開平9-235834(JP,A)
【文献】特開2018-96170(JP,A)
【文献】特開2005-350889(JP,A)
【文献】特開2021-116559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/64ー1/80
E04B 9/00
E04D 11/00ー12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物であって、
屋外空間と屋内空間とを区画する屋根部と、
前記屋根部の下方の前記屋根部から離れた位置で、水平方向に沿うように配置される構造部材と、
上下方向において前記屋根部と前記構造部材との間に設けられた断熱部材と、
前記構造部材と前記断熱部材との間に水平方向に沿うように配置され、前記屋外空間と前記屋内空間との間における気密性を高めることが可能な第一水平気密部材と、
前記構造部材を挟んで前記第一水平気密部材の下方に水平方向に沿うように配置され、前記屋外空間と前記屋内空間との間における気密性を高めることが可能な第二水平気密部材と、
を備えている、建築物。
【請求項2】
前記構造部材は、水平方向に沿うように延びる上面部を有しており、
前記第一水平気密部材は、前記上面部上に配置されている、請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
前記構造部材は、水平方向において並んで配置される複数の副構造部材を含んでおり、
前記複数の副構造部材同士の間には継ぎ目が形成されており、
前記第一水平気密部材は、少なくとも前記継ぎ目を覆うように前記上面部上に配置される、請求項2に記載の建築物。
【請求項4】
前記構造部材はALC製とされ、
前記継ぎ目には湿式の態様により充填される継ぎ目充填部材が介在している、請求項3に記載の建築物。
【請求項5】
前記屋根部と前記断熱部材との間に前記屋外空間と連通する通気層が形成されるように前記屋根部を支持する支持部材をさらに備えている、請求項1から4のいずれか1項に記載の建築物。
【請求項6】
前記屋根部に接続されるように上下方向に沿って延びるとともに、前記屋外空間と前記屋内空間とを区画する外壁部と、
前記外壁部の内側に配置され、前記屋外空間と前記屋内空間との間における気密性を高めるために上下方向に沿うように延びるとともに、前記第一水平気密部材に接続された第一上下気密体と、をさらに備えている、請求項1から4のいずれか1項に記載の建築物。
【請求項7】
前記第一上下気密体の内側において、前記屋外空間と前記屋内空間との間における気密性を高めるために上下方向に沿うように延びるとともに、前記第二水平気密部材に接続された第二上下気密体をさらに備えている、請求項6に記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、屋外空間と屋内空間とを区画する屋根部と、前記屋根部の下方の前記屋根部から離れた位置に配置された構造部材と、前記屋根部と前記構造部材との間に設けられた断熱部材と、前記構造部材の下方に水平方向に沿うように配置された防湿部材と、を有する建築物が知られている。
【0003】
前記建築物では、冬季に室内空間に存在する湿気を含む空気が前記構造部材の下方に移動することが前記防湿部材により抑制される。そのため、前記建築物では、冬季に前記構造部材の下方において結露が発生することが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の建築物では、前記建築物が寒冷地等に建築された場合、冬季に屋根部の近傍において結露が発生するおそれがあるという課題がある。具体的に、前記建築物では、前記防湿部材が流入を抑制しきれなかった湿気を含む空気が前記構造部材の隙間等を通じて前記構造部材の下方から前記屋根部の近傍に流入する可能性がある。また、寒冷地等の冬季においては、前記屋外空間の冷気が前記屋根部に伝わり、前記屋根部の近傍の空気の温度が著しく低下することがある。このように、前記屋根部の近傍の空気の温度が著しく低下した状態で、前記屋根部の近傍に上記の湿気を含む空気が流入した場合、前記屋根部の近傍において結露が発生するおそれがある。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、寒冷地等における冬季に前記屋根部の近傍において結露が発生することを抑制可能な建築物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって提供されるのは建築物であって、屋外空間と屋内空間とを区画する屋根部と、前記屋根部の下方の前記屋根部から離れた位置で、水平方向に沿うように配置される構造部材と、上下方向において前記屋根部と前記構造部材との間に設けられた断熱部材と、前記構造部材と前記断熱部材との間に水平方向に沿うように配置され、前記屋外空間と前記屋内空間との間における気密性を高めることが可能な第一水平気密部材と、前記構造部材を挟んで前記第一水平気密部材の下方に水平方向に沿うように配置され、前記屋外空間と前記屋内空間との間における気密性を高めることが可能な第二水平気密部材と、を備えている。
【0008】
この建築物によれば、構造部材を挟んで第一水平気密部材と第二水平気密部材とが配置されているため、冬季に屋根部の近傍において結露が発生することを抑制できる。具体的に、上記の建築物では、構造部材の下方に第二水平気密部材が配置されているため、室内空間に存在する湿気を含む空気が室内空間から構造部材の下方に流入することが抑制される。さらに、上記の建築物では、構造部材の上方に第一水平気密部材が配置されているため、たとえ第二水平気密部材を通過した少量の湿気を含む空気が構造部材の下方に流入したとしても、当該空気が構造部材の隙間等を通じて構造部材の下方から屋根部の近傍に流入することが抑制される。このように、上記の建築物では、室内空間から構造部材の下方に湿気を含む空気が流入すること、及び、構造部材の下方から屋根部の近傍に湿気を含む空気が流入することが抑制されているため、寒冷地等における冬季に屋根部の近傍において結露が発生することを抑制できる。
【0009】
加えて、上記の建築物によれば、断熱部材が第一水平気密部材の上方に配置されているため、屋外空間の冷気により第一水平気密部材が冷却されることを抑制できる。そのため、第一水平気密部材が構造部材の下方からの湿気を含む空気をせき止めた際に、第一水平気密部材の近傍において結露が発生することを抑制できる。
【0010】
上記の構成において、前記構造部材は、水平方向に沿うように延びる上面部を有しており、前記第一水平気密部材は、前記上面部上に配置されていてもよい。
【0011】
本構成によれば、作業者は、水平方向に沿うように延びる上面部上に第一水平気密部材を配置することができるため、構造部材に沿って第一水平気密部材を容易に施工することができる。
【0012】
上記の構成において、前記構造部材は、水平方向において並んで配置される複数の副構造部材を含んでおり、前記複数の副構造部材同士の間には継ぎ目が形成されており、前記第一水平気密部材は、少なくとも前記継ぎ目を覆うように前記上面部上に配置されていてもよい。
【0013】
本構成によれば、少なくとも継ぎ目を覆うように第一水平気密部材が配置されているため、冬季に構造部材の下方に存在し、少量の湿気を含む空気が継ぎ目を通じて屋根部の近傍へと流入することを抑制できる。そのため、第一水平気密部材が継ぎ目を覆うことなく上面部上に配置される場合と比較して、冬季に屋根部の近傍において結露が発生することをより確実に抑制できる。
【0014】
上記の構成において、前記構造部材はALC製とされ、前記継ぎ目には、湿式の態様により前記継ぎ目に充填される継ぎ目充填部材が介在していてもよい。
【0015】
本構成によれば、構造部材がALC製であるため、構造部材により建築物を頑強に支えることができる。特に、屋根部とその周辺を構造部材により頑強に支えることができる。
【0016】
また、本構成によれば、継ぎ目には湿式の態様により充填される継ぎ目充填部材が介在するため、継ぎ目を隙間なく埋めて副構造部材同士を接続することができる。そのため、副構造部材同士を乾式の態様で接続する場合(継ぎ目に隙間が形成された状態で副構造部材同士を接続する場合)と比較して、冬季に構造部材の下方に存在し、少量の湿気を含む空気が継ぎ目を通じて屋根部の近傍へと流入することをより確実に抑制することができる。
【0017】
上記の構成において、前記屋根部と前記断熱部材との間に前記屋外空間と連通する通気層が形成されるように前記屋根部を支持する支持部材をさらに備えていてもよい。
【0018】
本構成によれば、屋根部と断熱部材との間の領域に屋外空間と連通する通気層が形成されるため、万が一、冬季に当該領域に湿気を含む空気が流入した場合であっても、湿気を含む空気を当該領域から屋外空間に排出することができる。そのため、屋根部と前記断熱部材との間の領域、すなわち、屋根部の近傍において結露が発生することをより確実に抑制できる。
【0019】
上記の構成において、前記屋根部に接続されるように上下方向に沿って延びるとともに、前記屋外空間と前記屋内空間とを区画する外壁部と、前記外壁部の内側に配置され、前記屋外空間と前記屋内空間との間における気密性を高めるために上下方向に沿うように延びるとともに、前記第一水平気密部材に接続された第一上下気密体と、をさらに備えていてもよい。
【0020】
本構成によれば、第一上下気密体を第一水平気密部材に接続することができるため、冬季に構造部材の下方に存在し、少量の湿気を含む空気が第一水平気密部材を迂回して屋根部の近傍に流入することを抑制できる。
【0021】
上記の構成において、前記第一上下気密体の内側において、前記屋外空間と前記屋内空間との間における気密性を高めるために上下方向に沿うように延びるとともに、前記第二水平気密部材に接続された第二上下気密体をさらに備えていてもよい。
【0022】
本構成によれば、第二上下気密体を第二水平気密部材に接続することができるため、冬季に室内空間に存在する湿気を含む空気が、第二水平気密部材を迂回して構造部材の下方に流入することを抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、寒冷地等における冬季に屋根部の近傍において結露が発生することを抑制可能な建築物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る建築物の構造を示す部分断面図である。
【
図2】本発明の変形実施形態に係る建築物の構造を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る建築物1について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る建築物1の構造を示す部分断面図である。なお、
図1では上下方向及び左右方向(水平方向)が図示されているが、当該方向は本実施形態に係る建築物1を説明するために示すものであり、本発明に係る建築物の構造、使用態様などを限定するものではない。また、
図1では、紙面左方向が建築物1の外部に向かう方向(外)として図示され、紙面右方向が建築物1の内部に向かう方向(内)として図示されている。
【0026】
本実施形態に係る建築物1は、寒冷地に建築された鉄骨住宅である。
図1に示すように、建築物1は、屋根部10と、構造部材20と、隙間調整部材30と、断熱部材40と、第一水平気密部材50と、複数の支持部材60と、複数の梁70と、断熱防湿体80と、野縁90と、第二水平気密部材100と、天井板材110と、を備える。また、建築物1は、外壁部120と、パネル材130と、壁側第一断熱部材140と、枠体150と、第一上下気密体160と、壁側第二断熱部材170と、第二上下気密体180と、内壁パネル190と、を備える。
【0027】
屋根部10は、屋外空間OSと屋内空間ISとを区画する。
図1に示すように、屋根部10は、屋外空間OSに面した防水シート11と、防水シート11の下方に配置された屋根部断熱部材12と、屋根部断熱部材12の下方に配置された面状部材13と、を有している。防水シート11は、外側方向に延びるにつれて先下がりに傾斜しており、防水シート11の上面に降った雨水や撒かれた水などを外側方向に向かって排出する。屋根部断熱部材12は、屋外空間OSと第一屋根下空間S1との間における断熱性を高める。面状部材13は、例えば合板から構成される。面状部材13は、作業者が屋根部10に乗った際などに作業者を支持する部材として機能する。
【0028】
屋外空間OSは、屋根部10の上方又は外壁部120の左方(外方)に位置する空間である。屋内空間ISは、屋根部10の下方かつ外壁部120の右方(内方)に位置する空間であり、第一屋根下空間S1と、第二屋根下空間S2と、室内空間S3とを含む。第一屋根下空間S1は、屋根部10の近傍に位置する空間であり、上下方向において屋根部10と構造部材20とに挟まれた空間である。第二屋根下空間S2は、構造部材20の下方に位置する空間であり、上下方向において構造部材20と天井板材110とに挟まれた空間である。室内空間S3は、天井板材110の下方に位置する空間である。なお、本実施形態において、室内空間S3には冷房運転及び暖房運転を実行可能な図示しない空気調和装置が設置されている。
【0029】
構造部材20は、屋根部10の下方の屋根部10から離れた位置で、左右方向に沿うように配置され、建築物1を支える機能を有する。構造部材20は、建築物1を頑強に支えることが可能なものにより構成されることが好ましい。例えば、本実施形態に係る建築物1には、JISA5416に規定の規格を満たすALC(Autoclaved Lightweight Aerated Concrete;オートクレーブ養生した軽量気泡コンクリート)製の構造部材20が用いられている。
図1に示すように、構造部材20は、左右方向に沿うように延びる上面部21を有している。本実施形態に係る構造部材20は、それぞれがALCパネルにより構成されるとともに左右方向において並んで配置される副構造部材20aを含んでおり、当該複数の副構造部材20aの各上面により構造部材20の上面部21が形成されている。
図1に示すように、複数の副構造部材20a同士の間には継ぎ目Jが形成されている。上記の継ぎ目Jには、湿式の態様により継ぎ目Jに充填される継ぎ目充填部材23が介在している。なお、本実施形態において、継ぎ目充填部材23が有する防湿性は、副構造部材20aが有する防湿性よりも低い。一例として、継ぎ目充填部材23はモルタルにより構成される。
【0030】
隙間調整部材30は、構造部材20の外側端部(
図1では左側端部)に配置されている。
図1に示すように、本実施形態に係る隙間調整部材30は、構造部材20の上面部21と面一の上面部(符号省略)を有している。
【0031】
断熱部材40は、上下方向において屋根部10と構造部材20との間に設けられており、屋外空間OSと第二屋根下空間S2との間における断熱性を高めることができる。具体的に、本実施形態に係る断熱部材40は、上下方向において屋根部10から離れた位置で第一水平気密部材50を上方から覆うように設けられている。一例として、断熱部材40は、3層に積層された押出発泡ポリスチレン等の硬質の断熱材から構成される。ただし、断熱部材40はセルロースファイバー、ロックウール、グラスウール等の繊維系の断熱材から構成されてもよく、断熱部材40を構成する層の数は適宜変更可能である。
【0032】
第一水平気密部材50は、構造部材20と断熱部材40との間に左右方向に沿うように配置され、屋外空間OSと屋内空間ISとの間における気密性、より詳しくは第一屋根下空間S1と第二屋根下空間S2との間の気密性を高めることが可能である。具体的に、冬季において、第二屋根下空間S2には後述する第二水平気密部材100が室内空間S3からの流入を抑制しきれなかった少量の湿気を含む空気が存在しているが、第一水平気密部材50は、当該空気が第二屋根下空間S2から第一屋根下空間S1に流入することを抑制する。また、夏季において、屋外空間OSには湿気を多く含む空気が存在しているが、第一水平気密部材50は、当該空気が第一屋根下空間S1を介して第二屋根下空間S2に流入することを抑制する。一例として、第一水平気密部材50は、防湿性を有する1枚の樹脂製のシートから構成される。
図1に示すように、本実施形態に係る第一水平気密部材50は、構造部材20の上面部21上に配置されている。また、第一水平気密部材50は、少なくとも継ぎ目Jを覆うように上面部21上に配置されている。また、本実施形態において、第一水平気密部材50は、構造部材20の上面部21と隙間調整部材30の上面部とを左右方向に亘り全面的に覆うように配置されている。
【0033】
複数の支持部材60のそれぞれは、屋根部10と断熱部材40との間に屋外空間OSと連通する通気層V1を形成するように屋根部10を支持する。
図1に示すように、複数の支持部材60のそれぞれは、屋根部10に下方から当接する上端部を含む本体部61と、本体部61の下方に位置しており、上下方向における寸法が本体部61の上下方向における寸法よりも小さく、かつ、左右方向における寸法が本体部61の左右方向における寸法よりも大きい座部62と、を有している。本実施形態に係る座部62は、上面部21との間で第一水平気密部材50を上下方向に挟持するように構造部材20に固定されている。言い換えると、本実施形態では、第一水平気密部材50を上面部21に押さえつけた状態の座部62が構造部材20に固定されている。詳細な図示は省略するが、座部62は、頭部と軸部とを有するボルトにより構造部材20に固定されている。頭部は、座部62に着座する。軸部は、座部62に形成された図示しない貫通穴と第一水平気密部材50に形成された図示しない貫通穴とを上下方向に貫通するとともに構造部材20に設けられた図示しない被締結部に螺合される。これに限らず、頭部と軸部を有するビスのような固定手段を用いることもできる。このように、本実施形態では、支持部材60が構造部材20に固定される座部62を有しているため、作業者は支持部材60を構造部材20に容易に固定することができる。また、本実施形態では、本体部61を構造部材20に固定する場合と比較して、本体部61を上下方向に貫通する程度の長さを有するボルトを用意する必要がなくなる。上記構成は、第一屋根下空間S1における断熱性能を十分に確保するために断熱部材40を上下方向に分厚く配置する必要があるなどの事情により本体部61の上下方向における寸法が大きくなる場合に好適である。
【0034】
通気層V1は、第一屋根下空間S1に存在する空気を後述する連通部131及び後述する通気部V2を介して屋外空間OSに排出する。冬季において、第一屋根下空間S1に存在する空気の温度は、屋外空間OSに存在する低温の空気の影響を受けて低下することがあるが、本実施形態に係る通気層V1は、冬季において第一屋根下空間S1の中でも特に空気の温度が低下しやすい領域に形成される。具体的に、
図1に示すように、本実施形態に係る通気層V1は、第一屋根下空間S1における上方の領域であって、屋根部10に密接した領域に形成されている。
【0035】
複数の梁70は、それぞれが構造部材20を支持するように構造部材20の下方に配置されている。複数の梁70は、建築物1の外側寄り(
図1の左側寄り)に配置された第一の梁70aと、建築物1の内側寄り(
図1の右側寄り)に配置された第二の梁70bとを含む。一例として、複数の梁70のそれぞれは、左右方向に延びるとともに上下方向に対向する一対のフランジと、両フランジの左右方向における中間部同士を接続するように上下方向に延びるウェブとを有するH形鋼により構成される。
【0036】
断熱防湿体80は、第二屋根下空間S2に配置されており、第一屋根下空間S1と室内空間S3との間における断熱性及び防湿性を高めることが可能である。
図1に示すように、断熱防湿体80は、第一断熱防湿部80aと、第二断熱防湿部80bと、第三断熱防湿部80cと、第四断熱防湿部80dと、第五断熱防湿部80eと、を含む。第一断熱防湿部80a~第五断熱防湿部80eのそれぞれは、例えば吹き付けにより設けられる発砲ウレタンから構成される。第一断熱防湿部80aは、第一の梁70aの内側面(符号省略)に沿って構造部材20の下面部22から第二水平気密部材100の上面に亘って設けられている。第二断熱防湿部80bは、第二の梁70bの外側面(符号省略)及び第二の梁70bの下方のフランジの下面(符号省略)の外側寄りの部分を覆うように構造部材20の下面部22から野縁90の上方部に亘って設けられている。第三断熱防湿部80cは、第二の梁70bのウェブの内側面(符号省略)及び第二の梁70bの下方のフランジの下面の内側寄りの部分を覆うように構造部材20の下面部22から野縁90の上方部に亘って設けられている。第四断熱防湿部80dは、第一断熱防湿部80aから第二断熱防湿部80bに亘って構造部材20の下面部22を覆うように設けられている。第五断熱防湿部80eは、構造部材20の下面部22の第三断熱防湿部80cの内側に位置する部分を覆うように設けられている。
【0037】
野縁90は、天井板材110を支持する下地材として機能する。
図1に示すように、野縁90は、複数の梁70の下方で左右方向に沿うように配置されている。
【0038】
第二水平気密部材100は、構造部材20を挟んで第一水平気密部材50の下方に左右方向に沿うように配置され、屋外空間OSと屋内空間ISとの間における気密性、より詳しくは、第二屋根下空間S2と室内空間S3との間の気密性を高めることが可能である。具体的に、冬季において、暖房運転が実行される室内空間S3には湿気を含む空気が存在しているが、第二水平気密部材100は、当該空気が室内空間S3から第二屋根下空間S2に流入することを抑制する。また、夏季において、第二屋根下空間S2には第一水平気密部材50が屋外空間OSからの流入を抑制しきれなかった少量の湿気を含む空気が存在しているが、第二水平気密部材100は、当該空気が第二屋根下空間S2から室内空間S3に流入することを抑制する。一例として、第二水平気密部材100は、防湿性を有する1枚の樹脂製のシートから構成される。
図1に示すように、本実施形態に係る第二水平気密部材100は、天井板材110の上面に沿って設けられており、天井板材110と野縁90との間に挟まれている。なお、
図1に示すような外周部付近において、第二水平気密部材100は、後述する第二上下気密体180に接続されるとともに、第二屋根下空間S2に吹き付けられる第一断熱防湿部80aに接続するよう構成される。
【0039】
天井板材110は、例えば石膏ボード等の板材から構成される。天井板材110は、第二の梁70bに連結される吊り金具(図示しない)を介して野縁90に固定されており、左右方向に沿うように配置されている。天井板材110は、野縁90との間で第二水平気密部材100を上下方向に挟持する上面(符号省略)と、室内空間S3に面する下面(符号省略)とを有している。
【0040】
外壁部120は、屋根部10に接続されるように上下方向に沿って延びるとともに、屋外空間OSと屋内空間ISとを区画する。外壁部120は、例えば外壁パネルから構成される。また、外壁部120は、外壁部120を左右方向に貫通するように形成された通気口121を有している。通気口121は、例えばガラリにより構成される。
図1に示すように、外壁部120の内側には、通気口121を通じて屋外空間OSに連通する通気部V2が形成されている。
【0041】
パネル材130は、通気部V2の内側の位置であって隙間調整部材30を構造部材20との間で左右方向に挟む位置に配置されており、第一の梁70aが有する上側のフランジから屋根部10の上方に亘って設けられている。パネル材130は、例えば公知のパラペットパネルにより構成される。
図1に示すように、パネル材130は、通気層V1と通気部V2とを連通させるための連通部131を有している。一例として、連通部131は、パネル材130を左右方向に貫通するように形成された開口部からなる。これにより、本実施形態に係る建築物1では、通気層V1に存在する空気を連通部131及び通気部V2を介して屋外空間OSに排出することができる(
図1の矢印A参照)。
【0042】
壁側第一断熱部材140は、通気部V2の内側であり、かつ、第一の梁70aの下方の位置に設けられており、屋外空間OSと屋内空間ISとの間における断熱性を高めることができる。壁側第一断熱部材140は、例えば押出発泡ポリスチレン等の硬質の断熱材から構成される。ただし、壁側第一断熱部材140は、セルロースファイバー、ロックウール、グラスウール等の繊維系の断熱材から構成されてもよい。
【0043】
枠体150は、壁側第一断熱部材140の内側に配置されており、図示しない固定部材を介して第一の梁70aに固定されている。枠体150は、
図1の紙面奥行き方向に延びるとともに上下方向に対向する一対の横材150aと、一対の横材150aの手前側端部同士及び奥側端部同士を接続するように上下方向に延びるとともに上記の奥行き方向に対向する図示しない一対の縦材と、を有する。なお、
図1では、一対の横材150aのうちの上側の横材の断面が図示されている。また
図1に示すように、一対の横材150aのうちの上側の横材の内側面と上面とは、第一断熱防湿部80aに覆われている。
【0044】
第一上下気密体160は、外壁部120の内側に配置され、屋外空間OSと屋内空間ISとの間における気密性を高めるために上下方向に沿うように延びるとともに第一水平気密部材50に接続されている。
図1に示すように、本実施形態に係る第一上下気密体160は、シート部材161と、連絡部材162と、上記の第一の梁70aと、接続部材163とを含んでいる。シート部材161は、例えば防湿性を有する樹脂製のシートにより構成されており、左右方向において壁側第一断熱部材140と枠体150の一対の縦材とに挟まれた位置で上下方向に沿うように配置されている。連絡部材162は、シート部材161の上端部と第一の梁70aとの間の上下方向における隙間を塞いだ状態で両者を連絡するように設けられた断面が略U字状の部材である。具体的に、連絡部材162は、第一の梁70aに対して気密性を確保した状態で取り付けられた被取り付け部(符号省略)と、シート部材161に対して気密性を確保した状態で直接的に接続された被接続部(符号省略)と、被取り付け部材と被接続部とを連絡するとともに内側面が第一断熱防湿部80aに覆われた連絡部(符号省略)と、を有している。接続部材163は、左右方向において隙間調整部材30とパネル材130との間に挟まれた位置で上下方向に延びており、第一の梁70aと第一水平気密部材50とを気密性が保たれた状態で接続する。具体的に、接続部材163は、第一の梁70aの上側のフランジに接続された下端部と、第一水平気密部材50の外側端部に接続された上端部とを有している。
【0045】
壁側第二断熱部材170は、枠体150の内部に充填された断熱材であり、屋外空間OSと屋内空間ISとの間における断熱性を高めることができる。具体的に、壁側第二断熱部材170は、枠体150の一対の横材150aと一対の縦材とにより囲まれる領域の内部に充填された断熱材であり、例えばセルロースファイバー、ロックウール、グラスウール等の繊維系の断熱材から構成される。ただし、壁側第二断熱部材170は、押出発泡ポリスチレン等の硬質の断熱材から構成されていてもよい。
【0046】
第二上下気密体180は、第一上下気密体160の内側において、屋外空間OSと屋内空間ISとの間における気密性を高めるために上下方向に沿うように延びるとともに、第二水平気密部材100に接続されている。具体的に、第二上下気密体180は、枠体150の一対の縦材と内壁パネル190との間の位置に配置されており、第二水平気密部材100の外側端部と直接的に接続された上端部を有している。一例として、第二上下気密体180は、防湿性を有する樹脂製のシートにより構成される。
【0047】
内壁パネル190は、例えば石膏ボード等の板材から構成されるものであり、第二上下気密体180の内側の位置で上下方向に沿うように配置されている。内壁パネル190は、室内空間S3に面する内面(符号省略)と、第二上下気密体180に面する外面(符号省略)とを有する。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る建築物1によれば、構造部材20を挟んで第一水平気密部材50と第二水平気密部材100とが配置されているため、冬季に屋根部10の近傍の第一屋根下空間S1において結露が発生することを抑制できる。具体的に、上記の建築物1では、構造部材20の下方の第二屋根下空間S2に第二水平気密部材100が配置されているため、室内空間S3に存在する湿気を含む空気が室内空間S3から第二屋根下空間S2に流入することが抑制される。さらに、構造部材20の上方に第一水平気密部材50が配置されているため、たとえ第二水平気密部材100を通過した少量の湿気を含む空気が第二屋根下空間S2に流入したとしても、当該空気が構造部材20の隙間等を通じて第二屋根下空間S2から第一屋根下空間S1に流入することが抑制される。このように、上記の建築物1では、室内空間S3から第二屋根下空間S2に湿気を含む空気が流入すること、及び、第二屋根下空間S2から第一屋根下空間S1に湿気を含む空気が流入することが抑制されているため、寒冷地等における冬季に第一屋根下空間S1において結露が発生することを抑制できる。
【0049】
加えて、本実施形態に係る建築物1では、断熱部材40が第一水平気密部材50の上方に配置されているため、屋外空間OSの冷気により第一水平気密部材50が冷却されることを抑制できる。そのため、第一水平気密部材50が第二屋根下空間S2からの湿気を含む空気をせき止めた際に、第一水平気密部材50の近傍において結露が発生することを抑制できる。
【0050】
さらに、本実施形態に係る建築物1では、構造部材20の下方の第二屋根下空間S2に断熱性及び防湿性を有する断熱防湿体80が配置されているため、寒冷地等における冬季に屋根部10の近傍の第一屋根下空間S1において結露が発生することをより確実に抑制することができる。
【0051】
また、夏季において、冷房運転が実行される室内空間S3には低温の空気が存在するため、仮に屋外空間OSに存在する湿気を多く含む空気が室内空間S3に流入した場合、室内空間S3において結露が発生する可能性がある。一方、本実施形態に係る建築物1では、構造部材20を挟んで第一水平気密部材50と第二水平気密部材100とが配置されているため、屋外空間OSに存在する湿気を多く含む空気が室内空間S3に流入することが二重に抑制されている。そのため、本実施形態では、夏季に室内空間S3において結露が発生することを抑制できる。
【0052】
さらに、本実施形態に係る建築物1では、構造部材20の上方に第一水平気密部材50が配置されているため、夏季に構造部材20の下方の第二屋根下空間S2において結露が発生することを抑制できる。具体的に、本実施形態に係る建築物1では、第一水平気密部材50により、夏季に屋外空間OSに存在する湿気を多く含む空気が屋外空間OSから第二屋根下空間S2に流入することが抑制される。そのため、第二屋根下空間S2に室内空間S3から低温の空気が流入したとしても、第二屋根下空間S2において結露が発生することを抑制できる。
【0053】
さらに、本実施形態に係る建築物1では、構造部材20の近傍における結露の発生を抑制できる。具体的に、本実施形態では、ALC製の構造部材20が用いられている。一般に、ALCは冷却されやすいため、ALC製の構造部材20を用いる場合、構造部材20の近傍に湿気を多く含む空気が仮に流入すると、構造部材20の近傍で結露が発生する可能性がある。一方、本実施形態では、上下方向において第一水平気密部材50と第二水平気密部材100とに挟まれた位置に構造部材20が配置されており、構造部材20の近傍に湿気を含む空気が流入することが抑制されている。そのため、本実施形態では、構造部材20の近傍において結露が発生することを抑制できる。
【0054】
また、本実施形態に係る建築物1では、作業者は、水平方向に沿うように延びる上面部21上に第一水平気密部材50を配置することができるため、構造部材20に沿って第一水平気密部材50を容易に施工することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る建築物1では、少なくとも継ぎ目Jを覆うように第一水平気密部材50が配置されているため、冬季に構造部材20の下方の第二屋根下空間S2に存在し、少量の湿気を含む空気が継ぎ目Jを通じて屋根部10の近傍の第一屋根下空間S1へと流入することを抑制できる。具体的に、本実施形態では、ALCパネルが副構造部材20aとして用いられている。一般に、ALCはある程度の防湿性を有している。しかしながら、本実施形態において、副構造部材20a同士の間には継ぎ目Jが形成されている。そして、上記の継ぎ目Jには副構造部材20aが有する防湿性よりも低い防湿性を有する継ぎ目充填部材23が介在している。本実施形態では、このように湿気を含む空気の第一屋根下空間S1への流入経路となる可能性がある継ぎ目Jが第一水平気密部材50により覆われているため、少量の湿気を含む空気が継ぎ目Jを通じて第一屋根下空間S1へと流入することが抑制される。したがって、第一水平気密部材50が継ぎ目Jを覆うことなく上面部21上に配置される場合と比較して、冬季に第一屋根下空間S1において結露が発生することをより確実に抑制できる。
【0056】
さらに、本実施形態に係る建築物1では、上側のフランジのそれぞれが継ぎ目Jの下端部のそれぞれを塞ぐように複数の梁70が配置されている。このように、湿気を含む空気が継ぎ目Jに流れる流路の入り口となる部分を塞ぐように複数の梁70を配置することにより、第一水平気密部材50に到達する湿気を含む空気の量を減らすことができる。
【0057】
また、本実施形態に係る建築物1では、少なくとも継ぎ目Jを覆うように第一水平気密部材50が配置されているため、夏季に屋外空間OSから屋根部10の近傍の第一屋根下空間S1に流入した湿気を多く含む空気が継ぎ目Jを通じて構造部材20の下方の第二屋根下空間S2へと流入することを抑制できる。そのため、第一水平気密部材50が継ぎ目Jを覆うことなく上面部21上に配置される場合と比較して、夏季に第二屋根下空間S2において結露が発生することをより確実に抑制できる。
【0058】
また、本実施形態に係る建築物1では、構造部材20がALC製であるため、構造部材20により建築物1を頑強に支えることができる。特に、屋根部10とその周辺を構造部材20により頑強に支えることができる。
【0059】
また、本実施形態に係る建築物1では、継ぎ目Jには湿式の態様により充填される継ぎ目充填部材23が介在するため、継ぎ目Jを隙間なく埋めて副構造部材20a同士を接続することができる。そのため、副構造部材20a同士を乾式の態様で接続する場合(継ぎ目Jに隙間が形成された状態で副構造部材20a同士を接続する場合)と比較して、冬季に構造部材20の下方に存在し、少量の湿気を含む空気が継ぎ目Jを通じて屋根部10の近傍へと流入することをより確実に抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る建築物1では、屋根部10と断熱部材40との間の領域に屋外空間OSと連通する通気層V1が形成されているため、万が一、冬季に当該領域に湿気を含む空気が流入した場合であっても、湿気を含む空気を当該領域から屋外空間OSに排出することができる。そのため、屋根部10と断熱部材40との間の領域、すなわち屋根部10の近傍の第一屋根下空間S1において結露が発生することをより確実に抑制できる。
【0061】
さらに、本実施形態に係る建築物1では、冬季において屋根部10の近傍の第一屋根下空間S1の中でも特に空気の温度が低下しやすい領域に通気層V1が形成されている。言い換えると、冬季において、湿気を含む空気が流入した場合に、第一屋根下空間S1の中でも特に結露が発生しやすい領域に通気層V1が形成されている。そのため、本実施形態では、第一屋根下空間S1において結露が発生することをより確実に抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る建築物1では、第一上下気密体160が第一水平気密部材50に接続されているため、冬季に構造部材20の下方の第二屋根下空間S2に存在し、少量の湿気を含む空気が第一水平気密部材50を迂回して屋根部10の近傍の第一屋根下空間S1に流入することを抑制できる。
【0063】
さらに、本実施形態に係る建築物1では、第一上下気密体160が第一水平気密部材50に接続されているため、夏季に屋外空間OSから屋根部10の近傍の第一屋根下空間S1に流入した湿気を多く含む空気が、第一水平気密部材50を迂回して構造部材20の下方の第二屋根下空間S2に流入することを抑制できる。
【0064】
また、本実施形態に係る建築物1では、第二上下気密体180が第二水平気密部材100に接続されているため、冬季に室内空間S3に存在する湿気を含む空気が、第二水平気密部材100を迂回して構造部材20の下方の第二屋根下空間S2に流入することを抑制できる。
【0065】
さらに、本実施形態に係る建築物1では、第二上下気密体180が第二水平気密部材100に接続されているため、夏季に構造部材20の下方の第二屋根下空間S2に存在し、少量の湿気を含む空気が第二水平気密部材100を迂回して室内空間S3に流入することを抑制できる。
【0066】
以上、本発明の一実施形態に係る建築物1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を採用することができる。
【0067】
(1)先の実施形態では、建築物1が鉄骨住宅である場合について説明したが、本発明は、建築物が木造住宅である場合にも適用可能である。以下、
図2を参照して、本発明の第1変形実施形態に係る建築物2について説明する。
図2は、本発明の変形実施形態に係る建築物2の構造を示す部分断面図である。なお、
図2において、先の実施形態と同じ構成を有する部材には同じ符号を付している。建築物2は、寒冷地に建築された木造住宅である。建築物2は、先の実施形態に係る建築物1とは異なり、構造部材220と、複数の梁270と、断熱防湿体280と、外壁部320と、第一上下気密体360と、を備える。
【0068】
構造部材220は、屋根部10の下方の屋根部10から離れた位置で、左右方向に沿うように配置され、建築物2を支える機能を有する。先の実施形態に係る構造部材220と同様に、構造部材220は、建築物2を頑強に支えることが可能なものにより構成されることが好ましい。例えば、本変形実施形態に係る構造部材220は、それぞれが合板の日本農林規格(最終改正平成26年2月25日農林水産省告示第303号)の第6条の規定を満たす構造用合板により構成される複数の副構造部材220aを含んでいる。先の実施形態と同様に、構造部材220の上面部221上には第一水平気密部材50が配置されている。なお、複数の副構造部材220aは、構造用パネルの日本農林規格(最終改正平成25年11月28日農林水産省告示第2904号)に規定の規格を満たす構造用パネル(いわゆるOSB(Oriented Strand Board))、構造用パーティクルボード、又は構造用MDF(Medium Density Fiberboard)、などの面材から構成されていてもよい。あるいは、複数の副構造部材220aは、上記規格を満たす各面材と同等の強度(曲げ性能)を有する面材から構成されていてもよい。
【0069】
複数の梁270は、それぞれが角材により構成されている。
図2に示すように、複数の梁270は、建築物2の外側寄り(
図2の紙面左側寄り)に配置された第一の梁270aと、建築物2の内側寄り(
図2の紙面右側寄り)に配置された第二の梁270bとを含む。
【0070】
断熱防湿体280は、第一断熱防湿部280aと、第二断熱防湿部280bと、第三断熱防湿部280cと、を有する。第一断熱防湿部280a~第三断熱防湿部280cのそれぞれは、例えば吹き付けにより設けられる発砲ウレタンからなる。
図1に示すように、第一断熱防湿部280aは、第一の梁270aの内側面(符号省略)を覆うように構造部材220の下面部222から第二水平気密部材100の上面に亘って設けられている。第二断熱防湿部280bは、第一の梁270aの内側面から第二の梁270bの外側面(符号省略)に亘って構造部材220の下面部222を覆うように設けられている。第三断熱防湿部280cは、構造部材220の下面部222の第二の梁270bの内側に位置する部分を覆うように設けられている。
【0071】
外壁部320は、屋外空間OSに面する外壁材320aと、外壁材320aから内側方向に離れて設けられた壁下地合板320bと、を有している。
図2に示すように、外壁材320aと壁下地合板320bとの間には、通気部V2が形成されている。
【0072】
第一上下気密体360は、シート部材361と、接続部材362とを含んでいる。シート部材361は、第一部分361aと第二部分361bとを有している。第一部分361aは、壁側第一断熱部材140及び第一の梁270aの内側の位置で上下方向に沿うように延びている。また、第一部分361aは、構造部材220の下面部222に当接する上端部を有している。第二部分361bは、上下方向において構造部材220と第一の梁270aとの間に挟まれた位置で、第一部分361aの上端部から外側方向に向かって延びている。一例として、シート部材361は、
図2の平面視において略L字状を呈するように折り曲げられた一枚の防湿性を有するシートにより構成される。接続部材362は、左右方向において構造部材220とパネル材130との間に挟まれた位置で上下方向に延びており、シート部材361と第一水平気密部材50とを気密性が保たれた状態で接続する。具体的に、接続部材362は、第二部分361bの外側端部に接続された下端部と、第一水平気密部材50の外側端部に接続された上端部と、を有している。
【0073】
以上のような構成を有する建築物2においても、冬季に屋根部10の近傍の第一屋根下空間S1において結露が発生することを抑制できる。
【0074】
(2)先の実施形態では、構造部材20が左右方向において並んで配置される複数の副構造部材20aを含む例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、構造部材20は、単一の副構造部材20aを含んでいてもよい。つまり、構造部材20は、一枚のALCパネルにより構成されていてもよい。この場合、副構造部材20a同士の間に継ぎ目Jが形成されることを回避できる。
【0075】
(3)先の実施形態では、第一水平気密部材50が構造部材20の上面部21と隙間調整部材30の上面部とを左右方向に亘り全面的に覆うように配置された例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的に、第一水平気密部材50は、副構造部材20a同士の間に形成された継ぎ目Jの上方のみに配置されていてもよい。なお、構造部材20とその他の部材(例えば、隙間調整部材30)との間に湿気を含む空気を通過させるような隙間が形成される場合、当該隙間の上方にも第一水平気密部材50が配置されることが好ましい。
【0076】
(4)先の実施形態では、上下方向において天井板材110と野縁90との間に挟まれた樹脂製のシートを第二水平気密部材100として扱ったが、第二屋根下空間S2に断熱防湿体80が設けられる場合、断熱防湿体80を第二水平気密部材100として扱ってもよい。具体的に、断熱防湿体80の各断熱防湿部80a~80eの表面が防湿性を発揮することにより、左右方向に延びるとともに第二上下気密体180に接続される気密ラインが実質的に形成される場合、断熱防湿体80を第二水平気密部材100として扱ってもよい。この場合、天井板材110と野縁90との間に樹脂製のシートを設けることは必須ではない。
【0077】
(5)先の実施形態では、継ぎ目Jに湿式の態様により充填された継ぎ目充填部材23が介在している例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、継ぎ目Jには、副構造部材同士を乾式の態様により接続する金具などが介在していてもよい。ただし、湿気の通過を抑制する観点からは、継ぎ目Jに湿式の態様で継ぎ目充填部材23を充填し、継ぎ目Jを隙間なく埋めることが好ましい。
【0078】
(6)先の実施形態では、一枚の樹脂製のシートからなる第一水平気密部材50が上下方向において座部62と上面部21との間で挟持されている例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第一水平気密部材50は、複数の支持部材60同士の間において左右方向に沿うように配置される複数の第一水平気密片(図示省略)により構成されていてもよい。この場合、複数の支持部材60のそれぞれの座部62が、各第一水平気密片の左右方向における端部を上面部21との間で挟持する。
【0079】
(7)先の実施形態では、座部62が上面部21との間で第一水平気密部材50を上下方向に挟持するように構造部材20に固定されている例について説明した。つまり、座部62が第一水平気密部材50を介して間接的に構造部材20に固定されている例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第一水平気密部材50に座部62との干渉を回避するための図示しない開口部を形成し、座部62と上面部21とを直接的に当接させた状態で座部62を構造部材20に固定してもよい。
【0080】
(8)先の実施形態では、建築物1が断熱部材40と第一水平気密部材50と第二水平気密部材100と断熱防湿体80とを有しており、第一屋根下空間S1に通気層V1が形成されている例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、上記の5つの構成の組み合わせは適宜変更可能である。例えば、建築物1が寒冷地以外に建築されるなどの事情により第一屋根下空間S1における結露の発生の可能性が比較的低くなることが想定される場合には、上記の5つの構成のうちのいずれかを省略してもよい。一例として、第一水平気密部材50を省略してもよい。このような構成を採用する場合であっても、断熱部材40と第二水平気密部材100と断熱防湿体80と通気層V1との作用により、冬季に第一屋根下空間S1において結露が発生することを抑制できる。
【0081】
(9)先の実施形態では、構造部材20がALC製である例について説明した。しかしながら、構造部材20の素材はこれに限定されるものではなく、ALC製の構造部材20と同等の強度(曲げ性能)を確保できるのであれば、構造部材20の素材は適宜変更可能である。
【0082】
(10)先の実施形態では、第一断熱防湿部80aと、第二断熱防湿部80bと、第三断熱防湿部80cと、第四断熱防湿部80dと、第五断熱防湿部80eと、を含む断熱防湿体80について説明した。しかしながら、第二断熱防湿部80b及び第三断熱防湿部80cは必須ではない。例えば、断熱防湿体80は、第一断熱防湿部80aと、構造部材20の下面部22の第一断熱防湿部80aの内側の部分を覆うように設けられた第六断熱防湿部(図示省略)とを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1、2 :建築物
10 :屋根部
20、220 :構造部材
20a、220a :副構造部材
21、221 :上面部
23 :継ぎ目充填部材
40 :断熱部材
50 :第一水平気密部材
60 :支持部材
61 :本体部
62 :座部
100 :第二水平気密部材
120、320 :外壁部
160、360 :第一上下気密体
180 :第二上下気密体
IS :屋内空間
J :継ぎ目
OS :屋外空間
S1 :第一屋根下空間
S2 :第二屋根下空間
S3 :室内空間
V1 :通気層