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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】動作制御システム
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/04 20060101AFI20240409BHJP
   F16H 59/56 20060101ALI20240409BHJP
   F16H 61/682 20060101ALI20240409BHJP
   F16D 48/02 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
F16H61/04
F16H59/56
F16H61/682
F16D48/02 640A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022129293
(22)【出願日】2022-08-15
(65)【公開番号】P2024025917
(43)【公開日】2024-02-28
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】石井 信貴
【審査官】角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-118356(JP,A)
【文献】特開2022-53141(JP,A)
【文献】特開平10-274260(JP,A)
【文献】特開2022-53143(JP,A)
【文献】特開平2-225829(JP,A)
【文献】特開2002-21883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00
-61/12
F16H 61/16
-61/24
F16H 61/66
-61/70
F16H 63/40
-63/50
F16D 25/00
-39/00
F16D 48/00
-48/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたエンジンの出力軸から駆動輪への動力の伝達を接続したり切断したりするクラッチを動作させる動作装置と、
停車中の前記車両を発進させるための発進準備動作中に接続状態の前記クラッチを切断状態にするときの前記動作装置の第1動作速度を、前記車両の走行中に接続状態の前記クラッチを切断状態にするときの前記動作装置の第2動作速度よりも遅くする動作制御部と、
を有する動作制御システム。
【請求項2】
前記動作制御部は、前記発進準備動作中に接続状態の前記クラッチを前記第1動作速度で切断状態にしてから前記クラッチと前記駆動輪との間に設けられた変速機を変速させた後に切断状態の前記クラッチを再度接続状態にするときの前記動作装置の第3動作速度を、前記第1動作速度よりも速くかつ前記第2動作速度以下にする、
請求項1に記載の動作制御システム。
【請求項3】
停車中の前記車両の直前の信号が止まれを示す状態から進行可を示す状態になるまでの待機時間を取得する待機時間取得部をさらに有し、
前記動作制御部は、前記待機時間が長いほど前記第1動作速度を遅くする、
請求項1又は2に記載の動作制御システム。
【請求項4】
前記動作制御部は、前記待機時間が取得されない場合には、前記動作装置の下限速度よりも速く前記第2動作速度よりも遅い所定動作速度を前記第1動作速度にする、
請求項3に記載の動作制御システム。
【請求項5】
前記発進準備動作を実行するときに前記車両の進行方向後方に後続車が存在するか否かを判定する後続判定部をさらに有し、
前記動作制御部は、
後続車が存在していれば、前記動作装置の下限動作速度よりも速く前記第2動作速度よりも遅い所定動作速度にした前記第1動作速度で接続状態の前記クラッチを切断状態にした後、切断状態の前記クラッチを前記第2動作速度で再度接続状態にし、
後続車が存在していなければ、前記所定動作速度にした前記第1動作速度で接続状態の前記クラッチを切断状態にした後、当該第1動作速度よりも速くかつ前記第2動作速度以下の第3動作速度で切断状態の前記クラッチを再度接続状態にする、
請求項1又は2に記載の動作制御システム。
【請求項6】
前記クラッチと前記駆動輪との間に設けられた変速機を動作させる変速動作装置をさらに有し、
前記動作制御部は、前記発進準備動作中に前記変速動作装置の動作速度を、前記車両の走行中の前記変速動作装置の動作速度よりも遅く、かつ前記第1動作速度よりも速くする、
請求項1又は2に記載の動作制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の動力伝達装置を動作させる動作装置を制御する動作制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の動力部と駆動輪との間に設けられたクラッチや変速機などの動力伝達装置を動作させる油圧機構やアクチュエータなどの動作装置が知られている。特許文献1には、切断状態のクラッチを接続状態にする場合において、アクセル開度が大きいほど動作装置の動作速度を速くする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-61341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、油圧機構やアクチュエータなどの動作装置の動作速度を速くすると、動作装置が摩耗や発熱により劣化してしまうことがあった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、動力伝達装置を動作させる動作装置の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様においては、車両に搭載されたエンジンの出力軸から駆動輪への動力の伝達を接続したり切断したりするクラッチを動作させる動作装置と、停車中の前記車両を発進させるための発進準備動作中に接続状態の前記クラッチを切断状態にするときの前記動作装置の第1動作速度を、前記車両の走行中に接続状態の前記クラッチを切断状態にするときの前記動作装置の第2動作速度よりも遅くする動作制御部と、を有する動作制御システムを提供する。
【0007】
前記動作制御部は、前記発進準備動作中に接続状態の前記クラッチを前記第1動作速度で切断状態にしてから前記クラッチと前記駆動輪との間に設けられた変速機を変速させた後に切断状態の前記クラッチを再度接続状態にするときの前記動作装置の第3動作速度を、前記第1動作速度よりも速くかつ前記第2動作速度以下にしてもよい。
【0008】
前記動作制御システムは、停車中の前記車両の直前の信号が止まれを示す状態から進行可を示す状態になるまでの待機時間を取得する待機時間取得部をさらに有し、前記動作制御部は、前記待機時間が長いほど前記第1動作速度を遅くしてもよい。
【0009】
前記動作制御部は、接続状態の前記クラッチを前記第2動作速度で切断状態にする動作を少なくとも含む走行中変速動作にかかる走行中変速動作時間を前記待機時間から除いた残時間が、接続状態の前記クラッチを前記動作装置の下限動作速度で切断状態にする動作を少なくとも含む最長発進準備動作にかかる最大発進準備動作時間と前記走行中変速動作時間との動作時間差以上である場合、前記下限動作速度を前記第1動作速度にしてもよい。
【0010】
前記動作制御部は、前記残時間が前記動作時間差未満である場合、接続状態の前記クラッチを切断状態にする動作を少なくとも含む発進準備動作にかかる発進準備時間を前記待機時間以下にできる動作速度を前記第1動作速度にしてもよい。
【0011】
前記動作制御部は、前記待機時間が取得されない場合には、前記動作装置の下限速度よりも速く前記第2動作速度よりも遅い所定動作速度を前記第1動作速度にしてもよい。
【0012】
前記動作制御システムは、前記発進準備動作を実行するときに前記車両の進行方向後方に後続車が存在するか否かを判定する後続判定部をさらに有し、前記動作制御部は、後続車が存在していれば、前記動作装置の下限動作速度よりも速く前記第2動作速度よりも遅い所定動作速度にした前記第1動作速度で接続状態の前記クラッチを切断状態にした後、切断状態の前記クラッチを前記第2動作速度で再度接続状態にし、後続車が存在していなければ、前記所定動作速度にした前記第1動作速度で接続状態の前記クラッチを切断状態にした後、当該第1動作速度よりも速くかつ前記第2動作速度以下の第3動作速度で切断状態の前記クラッチを再度接続状態にしてもよい。
【0013】
前記動作制御システムは、前記クラッチと前記駆動輪との間に設けられた変速機を動作させる変速動作装置をさらに有し、前記動作制御部は、前記発進準備動作中に前記変速動作装置の動作速度を、前記車両の走行中の前記変速動作装置の動作速度よりも遅く、かつ前記第1動作速度よりも速くしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、動力伝達装置を動作させる動作装置の劣化を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】動作制御システムが搭載された車両の構成を説明するための図である。
図2】走行中の車両が停車して再度発進するときのクラッチと変速機の動作シーケンスを示す模式図である。
図3】待機時間が長いほど第1動作速度を遅くする処理を説明するための図である。
図4】発進準備動作が待機時間以内に終わるように第1動作速度を設定する処理を説明するための図である。
図5】動作制御装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図6】待機時間未取得時処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[動作制御システムSの構成]
図1は、動作制御システムSが搭載された車両Vの構成を説明するための図である。車両Vには、エンジン1、駆動輪2、クラッチ31、変速機41、通信部5、前方カメラ6、後方物体検知部7が搭載されている。動作制御システムSは、クラッチ動作装置32、変速動作装置46及び動作制御装置8を含む。
【0017】
エンジン1は、燃料と吸気(空気)との混合気を燃焼、膨張させて、動力を発生させる内燃機関である。エンジン1は、例えば自動車や船舶に搭載されたディーゼルエンジンであるが、軽油以外の燃料(ガソリン、エタノール、メタノール、圧縮天然ガス(Compressed Natural Gas;CNG)、液化天然ガス(Liquefied Natural Gas;LNG)、合成燃料、水素など)を使用するエンジンでもよい。エンジン1の出力軸と駆動輪2は、クラッチ31及び変速機41を介して接続されている。
【0018】
クラッチ31は、車両Vに搭載されたエンジン1の出力軸から駆動輪2への動力の伝達を接続したり切断したりする動力伝達装置である。クラッチ31は、例えばフライホイール311及びクラッチ板312を含む乾式クラッチであるが、これに限らない。クラッチ動作装置32は、クラッチ31を動作させる。クラッチ動作装置32は、例えばピストン、シリンダ、及びビストンを動作させるための電磁ソレノイドを含む。クラッチ動作装置32が動作することによって、クラッチ板312がフライホイール311から離れるとエンジン1の回転動力は変速機41に伝達しなくなる。クラッチ動作装置32は、クラッチ31がエンジン1の回転動力を変速機41に伝達している接続状態、又はクラッチ31がエンジン1の回転動力を変速機41に伝達していない切断状態にする。
【0019】
変速機41は、クラッチ31と駆動輪2との間に設けられている。変速機41は、エンジン1からクラッチ31を介して伝達される回転動力の速度を遅くするための複数段に変速可能な変速機構を含む動力伝達装置である。変速機41が備えるギアのうちクラッチ31に連結されたシャフト45に接続しているギアは、スリーブ42、スリーブ43及びスリーブ44によって固定及び解除が可能である。変速動作装置46は、スリーブ42、スリーブ43及びスリーブ44をシャフト45上で摺動させるためのアクチェータ(モータや電磁ソレノイドなど)を含む。変速動作装置46は、アクチュエータを動作させて3つのスリーブのうちのいずれかのスリーブと当該スリーブに対応するギアとを連結させる。3つのスリーブのうちのいずれかのスリーブと当該スリーブに対応するギアとが連結すると、シャフト45の回転動力はギアを介して駆動輪2に伝達される。変速動作装置46によってスリーブとギアの連結が解除されると、変速機41は、駆動輪2とシャフト45との間で回転動力を伝達しないニュートラル状態となる。
【0020】
通信部5は、外部装置から無線通信を介して車両Vの進行方向前方に設置された信号機の状態が変化するまでの時間を示す情報を受信する通信モジュールである。外部装置は、例えばTSPS(Traffic Signal Prediction Systems)のサーバである。無線通信は、例えば光ビーコンであるが、これに限らない。通信部5は、外部装置が管理する送信機から、停車中の車両Vの直前の信号が止まれを示す状態(赤信号)から進行可を示す状態(青信号)になるまでの待機時間を示す待機時間情報を受信する。
【0021】
前方カメラ6は、車両Vの進行方向前方を撮像した前方画像を生成する。例えば、前方カメラ6は、車両Vが走行する道路と交差する交差道路の歩行者用信号及び車両用信号の少なくともいずれかを含む前方画像を生成する。また、前方カメラ6は、車両Vの直前の信号を含む前方画像を生成してもよい。
【0022】
後方物体検知部7は、車両Vの進行方向後方の物体の有無を検知する。後方物体検知部7は、車両Vの後方を撮像した後方撮像画像を生成するカメラ、LIDAR(Light Detection and Ranging)、超音波センサのうちの少なくともいずれかを含む。後方物体検知部7は、後方撮像画像を解析したり、LIDAR及び超音波センサの検出値を解析したりすることにより、車両Vの進行方向後方の後続車の有無を検知する。
【0023】
ところで車両Vの走行中におけるクラッチ動作装置32の動作速度は、走行性能や安全性、ドライブフィーリングの観点から、できるだけ速くするのがよい。しかし、クラッチ動作装置32の動作速度を速くすると、クラッチ動作装置32が摩耗したり発熱したりしすることにより、クラッチ動作装置32が劣化してしまう。具体的には、クラッチ動作装置32のピストンやシリンダ等の摺動部品が摩耗したり、電磁ソレノイドに含まれているコイルの導線の被膜が熱により劣化して絶縁性が低下したりして、クラッチ動作装置32が所望の性能を発揮できなくなる。
【0024】
クラッチ動作装置32の劣化を抑制するためには、クラッチ動作装置32の動作速度を遅くすればよいが、車両Vの走行中にクラッチ31の切断動作や接続動作の動作速度を遅くすると、安全性や走行性能が低下してしまう。一方、車両Vが停車中であれば、クラッチ動作装置32の動作速度を遅くしても安全性や走行性能が低下するおそれがない。そこで、動作制御装置8は、停車中の車両Vを発進させるための発進準備動作において、クラッチ動作装置32の動作速度を走行中よりも遅くする。これにより、動作制御装置8は、車両Vが発進する際に生じるクラッチ動作装置32の摩耗や発熱の量を、車両Vの走行中にクラッチ動作装置32に生じる摩耗や発熱の量よりも少なくできるので、クラッチ動作装置32の劣化を抑制できる。以下、動作制御装置8の構成を説明する。
【0025】
動作制御装置8は、例えばECU(Electronic Control Unit)であるが、これに限らない。動作制御装置8は、記憶部81及び制御部82を備える。記憶部81は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等を含む記憶媒体である。記憶部81は、制御部82が実行するプログラムを記憶する。
【0026】
制御部82は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部82は、記憶部81に記憶されたプログラムを実行することにより、待機時間取得部821、後続判定部822及び動作制御部823としての機能を実現する。
【0027】
待機時間取得部821は、外部装置から通信部5が受信した待機時間情報が示す待機時間を取得する。待機時間取得部821は、外部装置から待機時間を取得できない場合、前方画像に含まれる交差道路の車両用信号の状態の変化を特定し、特定した状態の変化に基づく待機時間を取得する。例えば、交差道路の車両用信号は黄信号を三秒間継続した後赤信号になり、直前の信号は、交差道路の車両用信号が赤信号になり交差点の信号が全て赤信号になってから二秒後に青信号になる。したがって、直前の信号は、交差道路の車両用信号が黄信号になってから五秒後に青信号になる。そのため、待機時間取得部821は、交差道路の車両用信号が青信号から黄信号になったことを特定したら、待機時間として五秒を取得する。
【0028】
待機時間取得部821は、交差道路の歩行者用信号の変化に基づき待機時間を取得してもよい。例えば、交差道路の車両用信号は、交差道路の歩行者用信号が青信号から赤信号になった後、予め定められた時間(例えば五秒)青信号を継続した後に、青信号から黄信号になる。したがって、直前の信号は、交差道路の歩行者用信号が青信号から赤信号になってから、交差道路の車両用信号の青信号の継続時間(五秒)、黄信号の継続時間(三秒)及び交差点の全ての信号が赤信号である時間(二秒)が経過したら青信号になる。そのため、待機時間取得部821は、交差道路の歩行者用信号が青信号から赤信号になったことを特定したら、待機時間として十秒を取得する。
【0029】
待機時間取得部821は、交差道路の歩行者用信号及び車両用信号が含まれておらず、直前の信号のみが前方画像に含まれている場合、車両Vが走行中の道路が幹線道路か否かに応じて定められた待機時間を取得する。具体例を挙げると、待機時間取得部821は、直前の信号が赤信号である場合に、車両Vが走行中の道路が幹線道路であれば待機時間として五十秒を取得し、幹線道路でなければ五十秒よりも短い時間(一例を挙げると四十秒)を待機時間として取得する。
【0030】
後続判定部822は、車両Vが発進する際に車両Vの進行方向後方に後続車が存在するか否かを判定する。後続判定部822は、後方物体検知部7が後続車を検知した場合、車両Vの進行方向後方に後続車が存在すると判定し、後方物体検知部7が後続車を検知していない場合、車両Vの進行方向後方に後続車が存在しないと判定する。
【0031】
動作制御部823は、クラッチ動作装置32の動作速度を設定する。例えば、動作制御部823は、発進準備動作中に接続状態のクラッチ31を切断状態にする発進準備時切断動作をさせるときのクラッチ動作装置32の第1動作速度を設定する。具体的には、動作制御部823は、車両Vの走行中に接続状態のクラッチ31を切断状態にする走行中切断動作をさせるときのクラッチ動作装置32の第2動作速度よりも遅い所定の動作速度を第1動作速度に設定する。これにより、動作制御部823は、車両Vの発進準備中にクラッチ動作装置32の摩耗や発熱を抑制できる。
【0032】
動作制御部823は、発進準備時切断動作の第1動作速度だけでなく、発進準備動作中に切断状態のクラッチ31を接続状態にする発進準備時接続動作をさせるときのクラッチ動作装置32の第3動作速度を設定する。具体的には、動作制御部823は、発進準備時切断動作を第1動作速度で実行してから、ニュートラル状態の変速機41を発進ギアに変速させた後に、発進準備時接続動作をさせるときの第3動作速度を設定する。
【0033】
変速機41が発進ギアである状態でクラッチ31を接続する際には、クラッチ動作装置32の動作速度を第1動作速度と同じ動作速度にできないので、動作制御部823は、第3動作速度を、第1動作速度よりも速くかつ第2動作速度以下にする。例えば、動作制御部823は、切断状態のクラッチ31を再度接続状態する際にクラッチ動作装置32の動作速度を遅くできる限度動作速度を第3動作速度にする。限度動作速度は、第1動作速度よりも速く、かつ第2動作速度よりも遅い。発進ギアは、例えば1速であるが、これに限らず、車両Vが発進可能なギア段であればよい。これにより、動作制御部823は、クラッチ動作装置32の摩耗や発熱を抑制できる。
【0034】
動作制御部823は、クラッチ動作装置32の動作速度だけでなく、発進準備動作中に変速機41を動作させる変速動作装置46の第1変速動作速度を、走行中に変速機41を動作させる第2変速動作速度よりも遅くする。例えば、変速動作装置46の動作速度は変速動作装置46の構造的な制限によりクラッチ動作装置32の動作速度よりも遅くできないので、動作制御部823は、クラッチ動作装置32の第1動作速度よりも速い第1変速動作速度を設定する。これにより、動作制御部823は、クラッチ動作装置32だけでなく、変速動作装置46の摩耗や発熱を抑制できる。
【0035】
図2は、走行中の車両Vが停車して再度発進するときのクラッチ31と変速機41の動作シーケンスを示す模式図である。横軸は時刻を示す。グラフCは、クラッチ31の動作シーケンスを示すグラフである。グラフMは、変速機41の動作シーケンスを示すグラフである。
【0036】
走行中の車両Vは、時刻T0から減速している。動作制御部823は、時刻T1でギア段を2速から1速にする走行中変速動作を開始する。具体的には、まず、動作制御部823は、時刻T1で接続状態のクラッチ31を第2動作速度で切断状態にする走行中切断動作を実行する。走行中切断動作には、時間A2かかる。時間A2は例えば1秒である。
【0037】
動作制御部823は、クラッチ31が切断状態になった後バッファ時間が経過したら、第2変速動作速度で変速機41を2速から1速にする動作を実行する。バッファ時間は、直前に実行した動作の完了の確認に要する時間であり、例えば0.1秒である。第2変速動作速度で変速機41を2速から1速にする動作には、時間B2かかる。時間B2は例えば1秒である。
【0038】
動作制御部823は、変速機41が1速になってからバッファ時間が経過したら、切断状態のクラッチ31を第2動作速度で再度接続状態にする走行中接続動作を実行する。走行中接続動作には時間A2かかる。時刻T1から時刻T2までの走行中変速動作には、走行中変速動作時間かかる。
【0039】
減速中の車両Vは、時刻T3において停車準備動作を開始する。まず、動作制御部823は、時刻T3で接続状態のクラッチ31を第2動作速度で切断状態にする。これにより、車速が0km/hになる前にエンジン1の出力軸から変速機41への動力の伝達をすみやかに切断することができ、エンジンがストールする事なくアイドル状態での運転が可能となる。
【0040】
待機時間取得部821は、クラッチ31が切断状態になった時刻T4で待機時間を取得する。時刻Tcは、時刻T4から待機時間が経過して、車両Vの直前の信号が赤信号から青信号になる時刻である。
【0041】
クラッチ31が切断状態、または変速機41がニュートラル状態になればエンジン1の回転動力が駆動輪2に伝達されないので変速動作装置46及びクラッチ動作装置32の動作速度を遅くしても車両Vの走行状態に影響しない。そこで、動作制御部823は、クラッチ31が切断状態になった後の変速動作装置46及びクラッチ動作装置32の少なくともいずれかの動作速度を遅くする。例えば、動作制御部823は、取得された待機時間に応じて動作速度を遅くする。以下、待機時間が十分に長く、変速動作装置46及びクラッチ動作装置32を下限動作速度で動かせるものとして、処理の流れを説明する。
【0042】
動作制御部823は、クラッチ31が切断状態になってからバッファ時間が経過したら、変速動作装置46の下限動作速度に設定した第1変速動作速度で1速の変速機41をニュートラル状態に変速させる。下限動作速度で変速機41を変速する動作には、時間B1かかる。時間B1は例えば5秒である。
【0043】
変速機41がニュートラル状態であればクラッチ動作装置32の動作速度を遅くしても車両Vの走行状態に影響しない。そこで、動作制御部823は、変速機41がニュートラル状態になってバッファ時間が経過した時刻T5で、クラッチ動作装置32の下限動作速度に設定した第1動作速度で切断状態のクラッチ31を再度接続状態にする。クラッチ動作装置32の下限動作速度でクラッチ31を再度接続状態にする動作には、時間A1かかる。時間A1は例えば10秒である。
【0044】
時刻T6において、変速機41はニュートラル状態であり、クラッチ31は接続状態であり、車両Vは停車状態になる。
【0045】
動作制御部823は、時刻T7になったら、時刻Tcで車両を発進させるための発進準備動作が完了するように、停車中の車両Vを発進させるための発進準備動作を開始する。発進準備動作を開始する際には変速機41がニュートラル状態であるのでクラッチ動作装置32の動作速度を遅くしても車両Vの走行状態に影響しない。動作制御部823は、発進準備動作において、第2動作速度よりも遅い第1動作速度で接続状態のクラッチ31を切断状態にする発進準備時切断動作を実行する。例えば、動作制御部823は、クラッチ動作装置32の下限動作速度に設定した第1動作速度で接続状態のクラッチ31を切断状態にする最長発進準備時切断動作を実行する。最長発進準備時切断動作には、時間A1かかる。
【0046】
動作制御部823は、クラッチ31が切断状態になってからバッファ時間が経過した時刻T8において変速機41を第1変速動作速度でニュートラルから発進ギアである1速にする発進準備時変速動作を実行する。発進準備時変速動作においては、クラッチ31が切断状態であるので変速動作装置46の動作速度を遅くしても車両Vの走行状態に影響しない。具体例を挙げると、動作制御部823は、変速動作装置46の下限動作速度に設定した第1変速動作速度でニュートラル状態の変速機41を発進ギアに変速する最長発進準備時変速動作を実行する。最長発進準備時変速動作には時間B3かかる。
【0047】
そして、動作制御部823は、変速機41が発進ギアになってからバッファ時間が経過した時刻T9において、時刻Tcにおいて再度接続状態になるように切断状態のクラッチ31を第3動作速度で動作させる発進準備時接続動作を実行する。発進準備時接続動作では、変速機41が発進ギアでありクラッチ動作装置32を下限動作速度で動作させることができない。そのため、動作制御部823は、下限動作速度よりも速い限度動作速度にした第3動作速度で切断状態のクラッチ31を再度接続状態にする最長発進準備時接続動作を実行する。最長発進準備時接続動作には時間A3かかる。各動作装置の動作速度を最も遅くした最長発進準備動作には、時刻T4からTcまでの最大発進準備時間かかる。
【0048】
このように、動作制御部823は、時刻Tcで変速機41が発進ギアでクラッチ31が接続状態になるようにクラッチ動作装置32及び変速動作装置46を走行中の動作速度よりも遅い動作速度で動作させる。その結果、クラッチ動作装置32及び変速動作装置46の摩耗や発熱が抑制されるので、クラッチ動作装置32及び変速動作装置46の劣化が抑制される。さらに、動作制御部823は、時刻Tcで車両Vが発進可能な状態になるように、車両Vのブレーキを解除してアクセルペダルを踏み込む発進操作がされる前から発進準備動作を開始している。その結果、車両Vの運転者は、時刻Tcの直前で発進操作をすれば、直ちに車両Vを発進させることができる。なお、時刻Tcで信号が青になっても車両Vの運転者が発進操作をしなければ、動作制御部823は切断状態のクラッチ動作装置32を接続状態にする動作を止めて、クラッチ31の切断状態を保持する。
【0049】
動作制御部823は、待機時間が長いほど第1動作速度を遅くしてもよい。以下、待機時間が長いほど第1動作速度を遅くする処理を具体的に説明する。図3は、待機時間が長いほど第1動作速度を遅くする処理を説明するための図である。
【0050】
まず、動作制御部823は、最長停車時動作にかかる最大停車時動作時間と、最長発進準備動作にかかる最大発進準備時間とに4つのバッファ時間を加えた最大時間を算出する。バッファ時間は斜線で塗りつぶした領域である。次に、動作制御部823は、最大時間と走行中変速動作時間との動作時間差を算出する。そして、動作制御部823は、待機時間から走行中変速動作時間を除いた残時間が、動作時間差以上であるか否かを判定する。動作制御部823は、残時間が動作時間差以上である場合、各動作装置の動作速度を下限動作速度に設定する。具体的には、動作制御部823は、クラッチ動作装置32の下限動作速度を第1動作速度にする。
【0051】
動作制御部823は、残時間が0以下である場合、各動作装置の動作速度を遅くできないと判定し、発進準備動作の第1動作速度及び第3動作速度を第2動作速度に設定し、発進準備動作の第1変速動作速度を走行中の第2変速動作速度に設定する。
【0052】
動作制御部823は、残時間が動作時間差未満であれば、発進準備動作が待機時間以内に終わるように第1動作速度を設定する。動作制御部823は、発進準備動作にかかる発進準備時間を待機時間以下にできる動作速度を第1動作速度にする。図4は、発進準備動作が待機時間以内に終わるように第1動作速度を設定する処理を説明するための図である。
【0053】
図4(1)は、クラッチ動作装置32の動作速度をできるだけ遅くする例である。例えば、動作制御部823は、停車時動作中に切断状態のクラッチ31を接続状態にする停車時接続動作及び発進準備動作中に接続状態のクラッチ31を切断状態にする発進準備時切断動作の動作速度をできるだけ遅くする。具体的には、動作制御部823は、停車時接続動作を下限動作速度で行った際の時間A1と、発進準備動作中を下限動作速度で行った際の時間A1の和と時間A2のクラッチ動作時間差が残時間よりも大きいか否かを判定する。クラッチ動作時間差が残時間よりも大きければ、時間A2及び残時間を合計した時間だけクラッチ動作装置32を動作させられる。動作制御部823は、時間A2及び残時間を合計した時間内に停車時接続動作及び発進準備時切断動作が完了する動作速度を第1動作速度にする。具体的には、動作制御部823は、クラッチ動作時間差が残時間以下であれば、クラッチ動作装置32の下限動作速度を第1動作速度にする。
【0054】
動作制御部823は、時間B1と時間B2の変速動作時間差が、クラッチ動作時間差を残時間から除いた時間よりも大きいか否かを判定する。変速動作時間差がクラッチ動作時間差を残時間から除いた時間よりも大きければ、時間B2及び当該除いた時間を合計した時間内にニュートラル状態の変速機41を発進ギアに変速させる動作が完了する動作速度を第1変速動作速度にする。動作制御部823は、変速動作時間差が、クラッチ動作時間差を残時間から除いた時間以下であれば、変速動作装置46の下限動作速度を第1変速動作速度にする。
【0055】
動作制御部823は、時間A3と時間A2との接続動作時間差が、クラッチ動作時間差及び変速動作時間差を残時間から除いた時間よりも大きいか否かを判定する。動作制御部823は、接続動作時間差が、クラッチ動作時間差及び変速動作時間差を残時間から除いた時間よりも大きければ、クラッチ動作時間差及び変速動作時間差を残時間から除いた時間内に発進準備時接続動作が終わる動作速度を第3動作速度にする。動作制御部823は、接続動作時間差が、クラッチ動作時間差及び変速動作時間差を残時間から除いた時間以下であれば、切断状態のクラッチ31を接続する際にクラッチ動作装置32の動作速度を遅くできる限度動作速度を第3動作速度にする。
【0056】
なお、動作制御部823は、待機時間に応じて、最大発進準備時間における4つの動作時間の比と同等になるように各動作速度を設定してもよい。図4(2)は、最大発進準備時間における4つの動作時間の比と同等になるように各動作速度を設定する例である。言い換えると、図4(2)の5つの動作時間の比B21:A11:B31:A31は、図2の最大発進準備時間の5つの動作時間の比B1:A1:B3:A3と等しい。このようにすることで、動作制御部823は、各動作装置を走行中の動作速度よりも遅い動作速度で動作させるので、発熱や摩耗を全体的に抑制できる。
【0057】
動作制御部823は、例えば車両Vが信号機のない横断歩道の直前で停車して待機時間取得部821が待機時間を取得できない場合には、クラッチ動作装置32の下限動作速度よりも速く第2動作速度よりも所定割合遅い動作速度を第1動作速度にする。所定割合は、適宜定めればよい。これにより、待機時間が取得されない場合でも、動作制御部823は、発熱や摩耗を抑制できる。
【0058】
動作制御部823は、後続車の有無に応じて第1動作速度を設定してもよい。例えば、動作制御部823は、後続車が存在すると後続判定部822が判定していれば、クラッチ動作装置32の下限動作速度よりも速く第2動作速度よりも遅い所定動作速度にした第1動作速度で接続状態のクラッチ31を切断状態にする。その後、動作制御部823は、ニュートラル状態の変速機41を第2変速動作速度で1速にした状態で待機し、車両Vのアクセルペダルが踏み込まれたら、切断状態のクラッチ31を第2動作速度で再度接続状態にする。このように、変速機41を発進ギアにした後クラッチ31が切断状態のままで待機することで、動作制御部823は、車両Vのアクセルペダルが踏み込まれたら、すみやかにクラッチ31を接続させて車両Vを発進させることができる。
【0059】
動作制御部823は、後続車が存在していなければ、変速機41がニュートラル状態であり、かつクラッチ31が接続状態で、車両Vのアクセルペダルを踏み込む発進操作がされるまで待機する。動作制御部823は、発進操作がされたら所定動作速度にした第1動作速度で接続状態のクラッチ31を切断状態にする。その後、動作制御部823は、ニュートラル状態の変速機41を第2変速動作速度で発進ギアにして、第3動作速度で切断状態のクラッチを再度接続状態にする。このように、後続車が存在せず直ちに車両Vを発進させる必要が無い場合に各動作装置の動作速度を遅くすることで、クラッチ動作装置32や変速動作装置46の発熱や摩耗を抑制できる。
【0060】
[動作制御装置8が実行する処理]
図5は、動作制御装置8が実行する処理の一例を示すフローチャートである。図5のフローチャートは、接続状態のクラッチ31が切断状態になった後(変速機41がニュートラル状態になる前)の時刻T4(図4を参照)で開始される。
【0061】
動作制御部823は、待機時間が取得されたか否かを判定する(ステップS1)。動作制御部823は、待機時間が取得された場合(ステップS1でYes)、待機時間に応じて、各動作速度を設定する(ステップS2)。具体的には、動作制御部823は、待機時間が長いほど長くした第1動作速度、第1変速動作速度及び第3動作速度を設定する。
【0062】
動作制御部823は、設定した第1変速動作速度で1速の変速機41をニュートラル状態に変速させる(ステップS3)。動作制御部823は、切断状態のクラッチ31を第1動作速度で再度接続状態にする(ステップS4)。動作制御部823は、クラッチ31が接続状態になった後、発進準備動作を開始する時刻T7になったかを判定する(ステップS5)。動作制御部823は、現在時刻が発進準備動作を開始する時刻T7より前であれば(ステップS5でNo)、発進準備動作を開始する時刻T7になるまで待機する。
【0063】
動作制御部823は、現在時刻が発進準備動作を開始する時刻T7以降であれば(ステップS5でYes)、発進準備動作を開始する。まず、動作制御部823は、接続状態のクラッチ31を第1動作速度で切断状態にする(ステップS6)。動作制御部823は、第1変速動作速度でニュートラル状態の変速機41を発進ギアに変速させる(ステップS7)。そして、動作制御部823は、切断状態のクラッチ31を第3動作速度で再度接続状態にする(ステップS8)。このように、動作制御部823は、待機時間が取得された場合、待機時間が経過して車両Vの直前の信号が赤信号から青信号になる時刻において、変速機41が発進ギアである状態でクラッチ31を接続状態にできる。
【0064】
動作制御部823は、待機時間が取得されない場合(ステップS1でNo)、待機時間未取得時処理をさせる(ステップS9)。図6は、待機時間未取得時処理のフローチャートである。
【0065】
後続判定部822は、後続車の有無を判定する(ステップS91)。動作制御部823は、後続車が存在すると後続判定部822が判定したら(ステップS91でYes)、接続状態のクラッチ31を第1動作速度で切断状態にする(ステップS92)。続いて、動作制御部823は、第1変速動作速度でニュートラル状態の変速機41を発進ギアに変速させる(ステップS93)。
【0066】
動作制御部823は、変速機41を発進ギアに変速させた後、車両Vのアクセルペダルが踏み込まれる発進操作がされたか否かを判定する(ステップS94)。動作制御部823は、発進操作がされていない場合(ステップS94でNo)、発進操作がされるまで待機する。動作制御部823は、発進操作がされた場合(ステップS94でYes)、切断状態のクラッチ31を第2動作速度で再度接続状態にする(ステップS95)。
【0067】
動作制御部823は、後続車が存在しないと後続判定部822が判定したら(ステップS91でNo)、発進操作がされたか否かを判定する(ステップS96)。動作制御部823は、発進操作がされていない場合(ステップS96でNo)、発進操作がされるまで待機する。動作制御部823は、発進操作がされた場合(ステップS96でYes)、接続状態のクラッチ31を第1動作速度で切断状態にする(ステップS97)。続いて、動作制御部823は、第1変速動作速度でニュートラル状態の変速機41を発進ギアに変速させる(ステップS98)。そして、動作制御部823は、切断状態のクラッチ31を第3動作速度で再度接続状態にする(ステップS99)。
【0068】
このようにすることで、例えば信号機のない横断歩道の直前で停車して待機時間が取得できない場合において後続車が存在していれば、動作制御部823は、発進操作がされたらすみやかに車両Vが発進できるようにできる。また、後続車が存在していなければ、動作制御部823は、発進操作がされた後に、走行中の動作速度よりも遅い動作速度でクラッチ動作装置32及び変速動作装置46を動作させるので、発熱や摩耗を抑制できる。
【0069】
(変形例1)
動作制御部823は、車両Vの発進準備中に第1動作速度でクラッチ動作装置32を動作させているときに、アクセルペダルを踏み込む発進操作が行われたら、クラッチ動作装置32の動作速度を第2動作速度に変更してもよい。また、動作制御部823は、車両Vの発進準備中に第1変速動作速度で変速動作装置46を動作させているときに発進操作が行われたら、変速動作装置46の動作速度を第2変速動作速度に変更する。これにより、動作制御部823は、車両Vの運転者が車両Vを発進させたい場合には、すみやかに車両Vを発進させることができる。
【0070】
(変形例2)
動作制御部823は、残時間と動作時間差の大小関係を比較したが、最大発進準備時間と待機時間を比較してもよい。この場合、動作制御部823は、最大発進準備時間が待機時間以下であれば、各動作装置の動作速度を下限動作速度に設定する。また、動作制御部823は、待機時間が走行中変速動作時間未満であれば、動作速度を遅くできないと判定し、各動作装置の動作速度を走行中変速動作の動作速度にする。
【0071】
(変形例3)
動作制御部823は、車両Vの発進準備動作において、各動作装置の動作速度を遅くすることが設定されている場合に、各動作装置の動作速度を遅くしてもよい。例えば、動作制御部823は、図示しない入力装置を介して各動作装置の動作速度を遅くする設定の入力を受け付ける。動作制御部823は、各動作装置の動作速度を遅くしない設定の入力を受け付けた場合、車両Vの発進準備動作において、各動作装置の動作速度を遅くしない。これにより、例えば車両Vの運転者が各動作装置の動作速度を遅くする設定にしたり、遅くしない設定にしたりすることができる。
【0072】
(変形例4)
動作制御部823は、時刻T4で取得した待機時間が短い場合、変速機41をニュートラル状態にせず、クラッチ31を切断状態にしたまま待機させてもよい。具体的には、動作制御部823は、クラッチ動作装置32及び変速動作装置46の最大動作速度で停車時動作及び発進準備動作を行ったときかかる時間よりも待機時間が短い場合、クラッチ31が切断状態になった時刻T4からバッファ時間が経過した後に、停車時動作を行わず、変速機41をニュートラル状態にしない。そして、動作制御部823は、切断状態のクラッチ31が時刻Tcで接続状態になるようにクラッチ31を動作させる。このように、動作制御部823は、待機時間が短い場合に、停車時動作及び発進準備動作のうちの一部の動作を省略することで、アクチュエータの劣化を抑制できる。
【0073】
[動作制御システムSの効果]
以上説明したとおり、変速機41がニュートラル状態で車両Vが停車していればエンジン1の回転動力が駆動輪2に伝わらない。そのため、接続状態のクラッチ31を切断状態にするときのクラッチ動作装置32の動作速度を遅くしても車両Vが動き出してしまうことがなく、安全性が低下するおそれが無い。そこで、動作制御システムSの動作制御装置8は、停止中の車両Vの発進準備中に、接続状態のクラッチ31を切断状態にするときのクラッチ動作装置32の第1動作速度を、走行中のクラッチ動作装置32の第2動作速度よりも遅くする。これにより、動作制御システムSは、発進準備中にクラッチ動作装置32に生じる摩耗や発熱の量を走行中に生じる量よりも抑制することができる。その結果、動作制御システムSは、クラッチ動作装置32の劣化を抑制できる。
【0074】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0075】
V 車両
S 動作制御システム
1 エンジン
2 駆動輪
31 クラッチ
311 フライホイール
312 クラッチ板
32 クラッチ動作装置
41 変速機
42 スリーブ
43 スリーブ
44 スリーブ
45 シャフト
46 変速動作装置
5 通信部
6 前方カメラ
7 後方物体検知部
8 動作制御装置
81 記憶部
82 制御部
821 待機時間取得部
822 後続判定部
823 動作制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6