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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】燃料電池車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04746 20160101AFI20240409BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20240409BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20240409BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20240409BHJP
   B60L 7/22 20060101ALI20240409BHJP
   B60L 50/75 20190101ALI20240409BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20240409BHJP
   B60L 58/40 20190101ALI20240409BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/0438
H01M8/04537
H01M8/04858
B60L7/22 Z
B60L50/75
B60L58/12
B60L58/40
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022148043
(22)【出願日】2022-09-16
(65)【公開番号】P2024043060
(43)【公開日】2024-03-29
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 研一郎
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-032171(JP,A)
【文献】特開2005-348499(JP,A)
【文献】特開2014-241215(JP,A)
【文献】実開昭62-058207(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
空気を圧縮するコンプレッサと、
圧縮空気を貯留するエアタンクと、
前記エアタンク内の前記圧縮空気の圧力である第1圧力、および、前記燃料電池が所望の電力を発電するために前記燃料電池が必要とする前記圧縮空気の圧力である第2圧力に基づいて、外気および前記エアタンク内の前記圧縮空気のうち、いずれを前記燃料電池に供給するかを選択する制御部と、
を備え
前記制御部は、前記第1圧力が前記第2圧力より小さい場合、前記コンプレッサにより前記エアタンク内の前記圧縮空気をさらに圧縮して前記燃料電池に供給することを選択する
燃料電池車両。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1圧力が前記第2圧力以上である場合、前記エアタンク内の前記圧縮空気を選択する、
請求項に記載の燃料電池車両。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1圧力が、前記第2圧力より小さい所定の第3圧力よりさらに小さい場合、前記コンプレッサにより前記外気を圧縮して前記燃料電池に供給することを選択する、
請求項に記載の燃料電池車両。
【請求項4】
走行用モータと、
2次電池と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記走行用モータが回生発電を行った場合に、前記2次電池の充電残量に基づいて、前記回生発電により得られた電力の供給先を選択する、
請求項1に記載の燃料電池車両。
【請求項5】
前記制御部は、前記充電残量が所定の第1閾値より低い場合、前記回生発電により得られた電力を前記2次電池に供給する、
請求項に記載の燃料電池車両。
【請求項6】
記制御部は、前記充電残量が前記第1閾値以上である場合、前記回生発電により得られた電力を前記コンプレッサに供給して、外気を圧縮して前記エアタンクに貯留させる、
請求項に記載の燃料電池車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池が発電した電力を用いて走行する燃料電池車両に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中の酸素と燃料ガス(水素など)とを反応させて発電し、発電した電力を用いて駆動力を発生させる燃料電池車両が開発されている。トラックなどの大型車両を燃料電池車両とすることを考えた場合、乗用車などと比較して燃料電池ユニットから大きな出力を引き出す必要がある。
【0003】
しかしながら、燃料電池ユニットを大出力化すると水素の消費量が増大する。このため、燃費を改善することが要望される。
【0004】
特許文献1には、燃料電池の発電電力に余剰がある場合、当該発電電力を用いてコンプレッサを運転し、エアタンクに圧縮空気を供給する技術が開示されている。このような技術により、余剰電力がエアタンクの空気圧に変換され、ブレーキやドア開閉などに有効に利用されることで、燃費改善が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-241215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、燃料電池の発電電力に余剰を生じさせるため、燃料電池の発電能力を大きめに確保する必要がある。これにより、車両の製造コストが増大してしまう。
【0007】
本開示は、低コストで燃費を改善することができる燃料電池車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る燃料電池車両は、燃料電池と、空気を圧縮するコンプレッサと、圧縮空気を貯留するエアタンクと、前記エアタンク内の前記圧縮空気の圧力である第1圧力、および、前記燃料電池が所望の電力を発電するために前記燃料電池が必要とする前記圧縮空気の圧力である第2圧力に基づいて、外気および前記エアタンク内の前記圧縮空気のうち、いずれを前記燃料電池に供給するかを選択する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1圧力が前記第2圧力より小さい場合、前記コンプレッサにより前記エアタンク内の前記圧縮空気をさらに圧縮して前記燃料電池に供給することを選択する
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、低コストで燃費を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態に係る燃料電池車両の構成を模式的に示す図
図2】制御部による、燃料電池への空気供給元の選択制御について説明するためのフローチャート
図3】エアタンク内の圧縮空気を燃料電池へ供給することが選択された場合の、空気の供給路を説明するための図
図4】外気をコンプレッサで圧縮して燃料電池およびエアタンクに供給する場合の、空気の供給路を説明するための図
図5】エアタンク内の圧縮空気を、コンプレッサを介して燃料電池に供給する場合の、空気の供給路を説明するための図
図6】制御部による、回生電力の供給先の選択制御について説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の各実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明等は省略する場合がある。
【0012】
<車両の構成>
図1は、本開示の実施の形態に係る燃料電池車両100の構成を模式的に示す図である。燃料電池車両100としては、例えばトラックなど、大型の車両が想定されている。
【0013】
図1に示すように、燃料電池車両100は、燃料電池1と、水素タンク2と、走行用モータ3と、2次電池としてのバッテリ4と、コンプレッサ5と、エアタンク6と、空気圧装置7と、吸気口8と、を備える。また、燃料電池車両100は、各構成を制御する制御部10をさらに備える。図1において、実線の矢印は気体(空気、または水素)の流れを示している。破線の矢印は燃料電池1またはバッテリ4から供給される電力の流れを示している。一点鎖線の矢印は走行用モータ3の回生により生じた電力の流れを示している。
【0014】
燃料電池1は、水素タンク2に貯留される水素と、吸気口8から取り込まれる空気(外気)とを反応させて発電を行う電池である。空気と水素とを反応させる燃料電池1には様々な種類のものが知られているが、本開示における燃料電池1としては、いずれの種類のものが使用されてもよい。また、空気と反応させる燃料ガスとしては水素に限らず、どのようなものが使用されてもよい。
【0015】
走行用モータ3は、燃料電池1で発電された電力により、燃料電池車両100の車輪を駆動させるモータである。また、走行用モータ3は、バッテリ4に充電された電力により、車輪を駆動させてもよい。走行用モータ3は、インバータを介して燃料電池1またはバッテリ4と接続されている。走行用モータ3がいずれの電力を用いて車輪を駆動させるかは、制御部10により制御される。
【0016】
また、走行用モータ3は、燃料電池車両100の制動時などには、車輪の回転力を入力として発電を行う。本明細書では、制動時などにおける走行用モータ3による発電を回生発電と記載し、回生発電により生じた電力を回生電力と記載する。回生電力は、バッテリ4に充電される、または、燃料電池車両100が有する、電気で動作する構成で消費されてもよい。電気で動作する構成の例としては、コンプレッサ5、水素ポンプ(水素タンク2の水素を燃料電池1に供給する構成)などの補機類、およびエアコンやラジオなどのアクセサリ類が挙げられる。以下の説明において、燃料電池車両100の電気で動作する構成を、電動機器と記載する。
【0017】
バッテリ4は、本開示の2次電池の一例である。バッテリ4は、燃料電池1で発電された電力、および、走行用モータ3で回生発電された電力のうち、少なくとも一部を蓄え、必要に応じて燃料電池車両100の電動機器に電力を供給する。一般的に多くの種類のバッテリが知られているが、本開示の燃料電池車両100に搭載されるバッテリ4の種類は特に限定されない。
【0018】
コンプレッサ5は、空気を圧縮する圧縮機である。コンプレッサ5の入口側には、吸気口8およびエアタンク6の出口側から延びる配管が接続されている。コンプレッサ5は、吸気口8から取り込んだ外気を圧縮する、または、コンプレッサ5は、エアタンク6内の圧縮された空気を取り込んでさらに圧縮する。コンプレッサ5の出口側には、エアタンク6および燃料電池1の入口側に向かって延びる配管が接続されている。コンプレッサ5が圧縮した空気は、制御部10の制御によりエアタンク6または燃料電池1に供給される。
【0019】
エアタンク6は、圧縮された空気を貯留するタンクである。エアタンク6に貯留された圧縮空気は、主に空気圧装置7で使用される。空気圧装置7は、空気圧の力によって仕事をする装置である。空気圧装置7の例としては、トランスミッション、ブレーキ、サスペンションなどが挙げられる。
【0020】
また、エアタンク6に貯留された圧縮空気の圧力が十分に高い場合には、制御部10の制御により、エアタンク6に貯留された圧縮空気が燃料電池1に供給される。この場合、既に圧縮された空気がエアタンク6から燃料電池1に供給されるため、外気をコンプレッサ5で圧縮する必要がないこともある。制御部10の制御についての詳細は後述する。
【0021】
吸気口8は、燃料電池車両100に外気を取り込む。吸気口8は、コンプレッサ5を介して燃料電池1およびエアタンク6に接続されている。
【0022】
制御部10は、燃料電池車両100の各構成を統括的に制御する。以下では、制御部10の制御について詳細に説明する。
【0023】
(1)燃料電池1への空気供給元の制御
制御部10は、燃料電池1へ圧縮空気を供給する供給元を、燃料電池車両100の状況に合わせて選択的に決定する。以下ではこの場合の制御について説明する。
【0024】
図2は、制御部10による、燃料電池1への空気供給元の選択制御について説明するためのフローチャートである。
【0025】
ステップS1において、制御部10は、燃料電池1の発電が必要な動作を要求するドライバーの操作を受け付ける。燃料電池1の発電が必要な動作とは、例えば燃料電池車両100の走行である。より具体的には、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んだとき、制御部10は、踏み込み量に応じた駆動力を走行用モータ3が発生させる電力を発電するように、燃料電池1に水素および空気を供給させる。または、ドライバーが他の電動機器、すなわち例えばアクセサリ類の起動スイッチを操作したとき、制御部10は、動作させる電動機器の消費電力に応じて、燃料電池1に水素および空気を供給させてもよい。
【0026】
ステップS2において、制御部10は、エアタンク内の圧縮空気の圧力を取得する。以下では、エアタンク内の圧縮空気の圧力を、第1圧力と記載する。第1圧力に関するデータは、例えばエアタンク内に設けられた圧力センサなどから得られる。
【0027】
ステップS3において、制御部10は、ステップS1の操作に応じるために必要な電力を燃料電池1が発電するのに必要とする圧縮空気の圧力である第2圧力を算出する。制御部10は、例えば第2圧力を以下のようにして求めればよい。まず、制御部10は、ステップS1の操作に応じるために燃料電池1が発電すべき発電量(要求電力[kW])を算出する。そして、要求電力に基づいて、燃料電池1が必要とする圧縮空気の時間あたり流量(要求空気流量[L/s])を算出する。そして、第2圧力は、要求空気流量に基づいて算出される。
【0028】
なお、図2に示す例では、ステップS2の第1圧力の取得の方がステップS3の第2圧力の算出よりも先に行われているが、実際にはこれらが逆の順番で行われてもよいし、これらが同時に行われてもよい。
【0029】
ステップS4において、制御部10は、第1圧力と第2圧力とを比較する。ステップS4で第1圧力が第2圧力以上であると判断した場合(ステップS4:YES)、制御部10は、処理をステップS5に進める。そうでない場合(ステップS4:NO)、制御部10は、処理をステップS6に進める。
【0030】
第1圧力が第2圧力以上である場合、エアタンク6内の圧縮空気は、燃料電池1が要求電力を発電するために必要な要求圧力を満たしていると考えられる。このため、ステップS4で第1圧力が第2圧力以上であると判断した場合、制御部10は、ステップS5において、エアタンク6内の圧縮空気を燃料電池1へ供給することを選択する。
【0031】
図3は、エアタンク6内の圧縮空気を燃料電池1へ供給することが選択された場合の、空気の供給路を説明するための図である。太線の矢印が供給路を示している。
【0032】
一方、第1圧力が第2圧力未満である場合、エアタンク6内には燃料電池1に供給するために十分な圧縮空気が貯留されていないと考えられる。この場合、制御部10は、ステップS6において、第1圧力と、第2圧力より小さい閾値である第3圧力とをさらに比較する。ステップS6で第1圧力が第3圧力未満であると判断した場合(ステップS6:YES)、制御部10は、処理をステップS7に進める。そうでない場合(ステップS6:NO)、制御部10は、処理をステップS9に進める。
【0033】
第3圧力は、空気圧装置7を動作させるために最低限必要なエアタンク6内の圧縮空気の圧力である。すなわち、第1圧力が第3圧力未満である場合、エアタンク6内には、必要な圧縮空気が足りていない状況である。この場合、ステップS7において、制御部10は、吸気口8から取り込んだ外気をコンプレッサ5で圧縮して燃料電池1へ供給することを選択する。そして、ステップS8において、制御部10は、吸気口8から取り込んだ外気をコンプレッサ5で圧縮してエアタンク6に供給し、エアタンク6内の圧縮空気を補充する動作を行う。
【0034】
図4は、外気をコンプレッサ5で圧縮して燃料電池およびエアタンク6に供給する場合の、空気の供給路を説明するための図である。太線の矢印が供給路を示している。
【0035】
ステップS6で第1圧力が第2圧力未満であり、かつ第3圧力以上であると判断された場合、エアタンク6内の圧縮空気の圧力は、補充が必要なほどではないが、そのままでは要求電力を発電するための要求圧力を満たしていないと考えられる。このため、ステップS9において、制御部10は、エアタンク6内の圧縮空気をコンプレッサ5により要求圧力まで昇圧して燃料電池1に供給することを選択する。
【0036】
図5は、エアタンク内の圧縮空気を、コンプレッサ5を介して燃料電池に供給する場合の、空気の供給路を説明するための図である。太線の矢印が供給路を示している。
【0037】
燃料電池1への圧縮空気の供給元を選択した後、ステップS10において、制御部10は、燃料電池1に対し、選択した供給元から圧縮空気を供給するように、燃料電池車両100の各部を制御する。当該制御は、例えば各構成間を接続する空気供給配管に設けられたバルブを開閉させるとともに、必要に応じてコンプレッサ5を動作させる制御である。
【0038】
以上説明した制御は、例えば所定時間毎に繰り返し実行される。これにより、例えばドライバーがアクセルの踏み込み量を変化させた場合など、要求電力が変化した場合には、変化した要求電力に対応するように第2圧力を随時変化させることができる。
【0039】
以上説明した制御により、燃料電池1が発電を行う場合の圧縮空気の供給元を適切に決定することができる。燃料電池1へ供給される圧縮空気にエアタンク6内の圧縮空気を用いる場合、外気をコンプレッサ5により圧縮して供給する必要がないので、燃料電池車両100の消費エネルギーを低減することができ、ひいては燃料電池車両100の燃費を向上させることができる。また、エアタンク6内の圧縮空気の圧力が要求圧力に満たないとき、エアタンク6内の圧縮空気をコンプレッサ5により圧縮して燃料電池1に供給する場合、エアタンク6内の圧縮空気は外気よりは圧力が高いため、外気を圧縮する場合と比較して必要なエネルギーが少なくて済む。これにより、燃料電池車両100の消費エネルギーを低減することができ、ひいては燃料電池車両100の燃費を向上させることができる。
【0040】
(2)回生発電による電力の供給先の制御
制御部10は、また、走行用モータ3の回生発電により生じた電力(以下、回生電力)の供給先を選択的に決定する。以下ではこの場合の制御について説明する。
【0041】
図6は、制御部10による、回生電力の供給先の選択制御について説明するためのフローチャートである。
【0042】
ステップS11において、制御部10は、バッテリ4の充電残量を取得する。
【0043】
ステップS12において、制御部10は、充電残量が所定の第1閾値以上であるか否かを判断する。第1閾値は、例えば燃料電池車両100の電動機器を十分に動作させることができる電力量である。第1閾値は、例えば燃料電池車両100を実験的に運用して得られた消費電力量に基づいて、事前に設定されればよい。
【0044】
充電残量が第1閾値以上である場合(ステップS12:YES)、制御部10は、処理をステップS13に進める。そうでない場合(ステップS12:NO)、制御部10は、処理をステップS15に進める。
【0045】
充電残量が第1閾値以上である場合、ステップS13において、制御部10は、回生電力の供給先をコンプレッサ5に選択する。そして、ステップS14において、制御部10は、吸気口8から取り込んだ外気をコンプレッサ5で圧縮してエアタンク6に貯留させる。
【0046】
一方、充電残量が第1閾値未満である場合、ステップS15において、制御部10は、回生電力の供給先をバッテリ4に選択する。
【0047】
以上の制御により、バッテリ4の充電残量が十分であり、回生電力をバッテリ4に供給する必要性が小さい場合、制御部10は、回生電力をコンプレッサ5に供給し、外気を圧縮してエアタンク6に貯留させることができる。これにより、回生電力が行き場を失い、回生が無駄となってしまう事態(回生失効)を防止することができる。回生電力によりコンプレッサ5で圧縮された空気は、その後必要に応じて、空気圧装置7を動作させたり、燃料電池1に供給されて発電に用いられたりすることで、有効利用される。このため、走行用モータ3による回生の効率を向上させることができる。
【0048】
<作用、効果>
以上説明したように、本開示の実施の形態に係る燃料電池車両100は、燃料電池1と、圧縮空気を貯留するエアタンク6と、エアタンク6内の圧縮空気の圧力である第1圧力に基づいて、外気およびエアタンク内の圧縮空気のうち、いずれを燃料電池1に供給するかを選択する制御部10と、を備える。
【0049】
このような構成により、燃料電池1が発電を行う場合の圧縮空気の供給元を適切に決定することができる。燃料電池1へ供給される圧縮空気にエアタンク6内の圧縮空気を用いる場合、外気をコンプレッサ5により圧縮して供給する必要がないので、燃料電池車両100の消費エネルギーを低減することができ、ひいては燃料電池車両100の燃費を向上させることができる。
【0050】
また、本開示の実施の形態に係る燃料電池車両100によれば、エアタンク6内の圧縮空気の圧力(第1圧力)が要求圧力(第2圧力)に満たないとき、エアタンク6内の圧縮空気をコンプレッサ5により圧縮して燃料電池1に供給する。この際、エアタンク6内の圧縮空気は外気よりは圧力が高いため、外気を圧縮して燃料電池1に供給する場合と比較して必要なエネルギーが少なくて済む。従って、燃料電池車両100の消費エネルギーを低減することができ、ひいては燃料電池車両100の燃費を向上させることができる。
【0051】
また、本開示の実施の形態に係る燃料電池車両100によれば、バッテリ4の充電残量が十分であり、回生電力をバッテリ4に供給する必要性が小さい場合、制御部10は、回生電力をコンプレッサ5に供給し、外気を圧縮させてエアタンク6に貯留させることができる。これにより、回生電力が行き場を失い、回生が無駄となってしまう事態(回生失効)を防止することができる。回生電力によりコンプレッサ5で圧縮された空気は、その後必要に応じて、空気圧装置7を動作させたり、燃料電池1に供給されて発電に用いられたりすることで、有効利用される。このため、回生の効率を向上させることができる。
【0052】
以上のような構成により、本開示の実施の形態に係る燃料電池車両100は、燃料電池1に発電を行わせるために必要な消費エネルギーを低減できるとともに、回生失効などによるエネルギーの損失も防止できる。従って、燃料電池車両100全体における省エネルギーを実現することができる。例えば、トラックなどの大型車両においては、乗用車などと比較して運用に必要なエネルギーが大幅に増大するが、そのような場合でも本開示の構成によりエネルギー消費を抑え、燃費を向上させることができる。また、燃料電池車両では、内燃機関により走行する車両とは異なり、燃料電池に発電させるための補機を動作させるのに電力が必要であるが、本開示の構成により補機を動作させるのに必要な電力を確保することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本開示は、燃料電池を搭載した燃料電池車両に有用である。
【符号の説明】
【0054】
100 燃料電池車両
1 燃料電池
2 水素タンク
3 走行用モータ
4 バッテリ
5 コンプレッサ
6 エアタンク
7 空気圧装置
8 吸気口
9 ステップ
10 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6