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特許7468637撮像システム、撮像方法、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】撮像システム、撮像方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03B 15/00 20210101AFI20240409BHJP
   G03B 19/06 20210101ALI20240409BHJP
   G03B 19/07 20210101ALI20240409BHJP
   G06T 7/20 20170101ALI20240409BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20240409BHJP
【FI】
G03B15/00 Q
G03B15/00 P
G03B19/06
G03B19/07
G06T7/20 300Z
H04N23/60 500
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022522444
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2020019310
(87)【国際公開番号】W WO2021229761
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】荻野 有加
(72)【発明者】
【氏名】蝶野 慶一
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/065852(WO,A1)
【文献】特開2010-154391(JP,A)
【文献】特開2019-192969(JP,A)
【文献】特開2006-163683(JP,A)
【文献】大阪大学,第1部 モダリティ別の技術動向,生体認証技術の動向と活用:科学技術に関す る調査プロジェクト,日本,国立国会図書館,2019年03月29日,26-27頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 15/00
G03B 19/06
G03B 19/07
H04N 23/60
G06T 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を相異なるタイミングで撮像した複数の画像を取得する取得手段と、
前記複数の画像に基づいて、前記被写体の動きを推定する推定手段と、
前記被写体の虹彩を撮像する撮像部の設定値を変更する変更手段と
を備え、
前記変更手段は、前記撮像部の合焦地点において前記被写体の虹彩が、固定された前記撮像部の撮像範囲に含まれるように、前記被写体の動きに応じて、前記撮像部の合焦地点におけるROI(Region Of Interest)を変更することを特徴とする撮像システム。
【請求項2】
前記推定手段は、前記合焦地点以前において前記被写体を撮像した前記複数の画像に基づいて、前記被写体の動きを推定し、
前記変更手段は、前記撮像部の合焦地点において前記被写体の虹彩が前記撮像部の撮像範囲に含まれるように、前記ROIを変更することを特徴とする請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記変更手段は、前記撮像部の合焦地点において前記被写体の虹彩が前記撮像部の撮像範囲に含まれるように、前記被写体が動く方向に前記ROIを変化させることを特徴とする請求項に記載の撮像システム。
【請求項4】
前記推定手段は、前記複数の画像の差分から前記被写体の動きを推定することを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の撮像システム。
【請求項5】
前記推定手段は、前記複数の画像から前記被写体の歩容周期を推定することで、前記被写体の動きを推定することを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の撮像システム。
【請求項6】
前記推定手段は、前記歩容周期が所定範囲内でない場合に、前記複数の画像の差分から前記被写体の動きを推定することを特徴とする請求項に記載の撮像システム。
【請求項7】
前記取得手段は、前記撮像部から前記複数の画像を取得することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の撮像システム。
【請求項8】
前記取得手段は、前記撮像部とは異なる第2の撮像部から前記複数の画像を取得することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の撮像システム。
【請求項9】
前記撮像部が撮像した前記被写体の虹彩の画像を用いて、前記被写体の認証処理を実行する認証手段を更に備えることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の撮像システム。
【請求項10】
被写体を相異なるタイミングで撮像した複数の画像を取得し、
前記複数の画像に基づいて、前記被写体の動きを推定し、
前記被写体の虹彩を撮像する撮像部の合焦地点において前記被写体の虹彩が、固定された前記撮像部の撮像範囲に含まれるように、前記被写体の動きに応じて、前記撮像部の合焦地点におけるROIを変更する
ことを特徴とする撮像方法。
【請求項11】
被写体を相異なるタイミングで撮像した複数の画像を取得し、
前記複数の画像に基づいて、前記被写体の動きを推定し、
前記被写体の虹彩を撮像する撮像部の合焦地点において前記被写体の虹彩が、固定された前記撮像部の撮像範囲に含まれるように、前記被写体の動きに応じて、前記撮像部の合焦地点におけるROIを変更する
ようにコンピュータを動作させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、被写体を撮像する撮像システム、撮像方法、及びコンピュータプログラムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムとして、被写体の目周辺の画像(例えば、虹彩画像等)を撮像するものが知られている。例えば特許文献1では、広角カメラで撮像した画像に基づいて、狭角カメラの撮像方向を変更する技術が開示されている。特許文献2では、広角レンズが装着された撮像部で虹彩の位置を検出し、狭角レンズ装着された撮像部で虹彩の画像を撮像する技術が開示されている。特許文献3では、ワイドカメラで撮像された画像内の瞳の位置に基づいて、ナローカメラの撮像方向を変更する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-192343号公報
【文献】特開2008-299045号公報
【文献】特開2003-030633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この開示は、上記各引用文献に鑑みてなされたものであり、被写体の画像を適切に撮像することが可能な撮像システム、撮像方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この開示の撮像システムの一の態様は、被写体を相異なるタイミングで撮像した複数の画像を取得する取得手段と、前記複数の画像に基づいて、前記被写体の動きを推定する推定手段と、前記被写体の動きに応じて、前記被写体の特定部分を撮像する撮像部の設定値を変更する変更手段とを備える。
【0006】
この開示の撮像方法の一の態様は、被写体を相異なるタイミングで撮像した複数の画像を取得し、前記複数の画像に基づいて、前記被写体の動きを推定し、前記被写体の動きに応じて、前記被写体の特定部分を撮像する撮像部の設定値を変更することを特徴とする撮像方法。
【0007】
この開示のコンピュータプログラムの一の態様は、被写体を相異なるタイミングで撮像した複数の画像を取得し、前記複数の画像に基づいて、前記被写体の動きを推定し、前記被写体の動きに応じて、前記被写体の特定部分を撮像する撮像部の設定値を変更するようにコンピュータを動作させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る撮像システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る撮像システムの機能的構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係る撮像システムの動作の流れを示すフローチャートである。
図4】第1変形例に係る撮像システムの機能的構成を示すブロック図である。
図5】第2変形例に係る撮像システムの機能的構成を示すブロック図である。
図6】第3変形例に係る撮像システムの機能的構成を示すブロック図である。
図7】歩容による被写体の頭の上下動作を示す概念図である。
図8】被写体の動きに合わせて虹彩カメラのROIを移動させる方法の一例を示す概念図である。
図9】第3実施形態に係る撮像システムの動作の流れを示すフローチャートである。
図10】オプティカルフローを利用して被写体の移動方向を算出する方法の一例を示す概念図である。
図11】目位置の変動から被写体の移動方向を算出する方法の一例を示す概念図である。
図12】第4実施形態に係る撮像システムの動作の流れを示すフローチャートである。
図13】被写体の歩容周期を推定してROIを周期振動させる方法の一例を示す概念図である。
図14】第5実施形態に係る撮像システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、撮像システム、撮像方法、及びコンピュータプログラムの実施形態について説明する。
【0010】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る撮像システムについて、図1から図3を参照して説明する。
【0011】
(ハードウェア構成)
まず、図1を参照しながら、第1実施形態に係る撮像システム10のハードウェア構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る撮像システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、第1実施形態に係る撮像システム10は、プロセッサ11と、RAM(Random Access Memory)12と、ROM(Read Only Memory)13と、記憶装置14とを備えている。撮像システム10は更に、入力装置15と、出力装置16とを備えていてもよい。プロセッサ11と、RAM12と、ROM13と、記憶装置14と、入力装置15と、出力装置16とは、データバス17を介して接続されている。
【0013】
プロセッサ11は、コンピュータプログラムを読み込む。例えば、プロセッサ11は、RAM12、ROM13及び記憶装置14のうちの少なくとも一つが記憶しているコンピュータプログラムを読み込むように構成されている。或いは、プロセッサ11は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体が記憶しているコンピュータプログラムを、図示しない記録媒体読み取り装置を用いて読み込んでもよい。プロセッサ11は、ネットワークインタフェースを介して、撮像システム10の外部に配置される不図示の装置からコンピュータプログラムを取得してもよい(つまり、読み込んでもよい)。プロセッサ11は、読み込んだコンピュータプログラムを実行することで、RAM12、記憶装置14、入力装置15及び出力装置16を制御する。本実施形態では特に、プロセッサ11が読み込んだコンピュータプログラムを実行すると、プロセッサ11内には、被写体を撮像するための機能ブロックが実現される。また、プロセッサ11として、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(field-programmable gate array)、DSP(Demand-Side Platform)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のうち一つを用いてもよいし、複数を並列で用いてもよい。
【0014】
RAM12は、プロセッサ11が実行するコンピュータプログラムを一時的に記憶する。RAM12は、プロセッサ11がコンピュータプログラムを実行している際にプロセッサ11が一時的に使用するデータを一時的に記憶する。RAM12は、例えば、D-RAM(Dynamic RAM)であってもよい。
【0015】
ROM13は、プロセッサ11が実行するコンピュータプログラムを記憶する。ROM13は、その他に固定的なデータを記憶していてもよい。ROM13は、例えば、P-ROM(Programmable ROM)であってもよい。
【0016】
記憶装置14は、撮像システム10が長期的に保存するデータを記憶する。記憶装置14は、プロセッサ11の一時記憶装置として動作してもよい。記憶装置14は、例えば、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、SSD(Solid State Drive)及びディスクアレイ装置のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0017】
入力装置15は、撮像システム10のユーザからの入力指示を受け取る装置である。入力装置15は、例えば、キーボード、マウス及びタッチパネルのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0018】
出力装置16は、撮像システム10に関する情報を外部に対して出力する装置である。例えば、出力装置16は、撮像システム10に関する情報を表示可能な表示装置(例えば、ディスプレイ)であってもよい。
【0019】
(機能的構成)
次に、図2を参照しながら、第1実施形態に係る撮像システム10の機能的構成について説明する。図2は、第1実施形態に係る撮像システムの機能的構成を示すブロック図である。
【0020】
図2に示すように、第1実施形態に係る撮像システム10は、被写体の虹彩を撮像可能な虹彩カメラ20と接続されている。ただし、撮像システム10は、虹彩カメラ20以外のカメラ(即ち、被写体の虹彩以外の部分を撮像するカメラ)と接続されていてもよい。
【0021】
撮像システム10は、その機能を実現するための処理ブロックとして、画像取得部110と、動き推定部120と、設定変更部130とを備えている。画像取得部110、動き推定部120、及び設定変更部130は、例えば上述したプロセッサ11(図1参照)において実現されればよい。
【0022】
画像取得部110は、虹彩カメラ20で虹彩を撮像しようとする被写体の画像を取得可能に構成されている。なお、画像取得部110の画像取得先は、虹彩カメラ20に限られない。画像取得部110は、被写体を相異なるタイミングで撮像した複数の画像を取得する。画像取得部110で取得された複数の画像は、動き推定部120に出力される構成となっている。
【0023】
動き推定部120は、画像取得部110で取得された複数の画像を用いて、被写体の動き(言い換えれば、移動方向)を推定可能に構成されている。なお、複数の画像から被写体の動きを推定する具体的な手法については、既存の技術を適宜採用することができるため、ここでの詳しい説明は省略する。動き推定部120で推定された被写体の動きに関する情報は、設定変更部130に出力される構成となっている。
【0024】
設定変更部130は、動き推定部120で推定された被写体の動きに応じて、虹彩カメラ20の設定値を変更可能に構成されている。なお、ここでの「設定値」とは、虹彩カメラ20を撮像画像に影響を与える調整可能なパラメータであり、典型的には虹彩カメラのROI(Region Of Interest)に関する値が一例として挙げられる。設定値は、被写体の動きから算出されてもよいし、予め設定されたマップ等から決定されてもよい。ちなみに、ROIの初期値(即ち、設定変更部130による変更前の値)は、被写体の動き、或いは虹彩カメラ以外のカメラ(例えば、後述する全体俯瞰カメラ30)やセンサ等で取得した被写体の目の高さを元に設定すればよい。
【0025】
(動作の流れ)
次に、図3を参照しながら、第1実施形態に係る撮像システム10の動作の流れについて説明する。図3は、第1実施形態に係る撮像システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【0026】
図3に示すように、第1実施形態に係る撮像システム10が動作する際には、まず画像取得110が、被写体の複数の画像を取得する(ステップS101)。そして、動き推定部120が、複数の画像から被写体の動きを推定する(ステップS102)。
【0027】
次に、設定変更部130が、被写体の動きに応じて虹彩カメラ20の設定値を変更する(ステップS103)。この結果、虹彩カメラ20による被写体の撮像は、設定値を変更した状態で実行されることになる。
【0028】
(技術的効果)
次に、第1実施形態に係る撮像システム10によって得られる技術的効果について説明する。
【0029】
歩行する被写体は、その歩容に応じて体の各部の位置が変化する。このため、事前に撮像したい部分の位置を特定したとしても、実際の撮像タイミングで撮像したい部分を適切に撮像することは容易ではない。
【0030】
図1から図3で説明したように、第1実施形態に係る撮像システム10では、複数の画像から被写体の動きが推定され、推定された動きに応じて虹彩カメラ20の設定値が変更される。よって、被写体の動きを考慮した適切な状態で虹彩カメラ20による撮像を実行できる。
【0031】
<変形例>
以下、第1実施形態の変形例について、図4から図6を参照して説明する。なお、図4から図6では、図2で示した構成要素と同様のものに同一の符号を付している。下記変形例は、それぞれ組み合わせることも可能である。また、後述する第2実施形態以降の実施形態にも適用可能である。
【0032】
(第1変形例)
まず、図4を参照して第1変形例について説明する。図4は、第1変形例に係る撮像システムの機能的構成を示すブロック図である。
【0033】
図4に示すように、画像取得部110は、虹彩カメラ20から複数の画像を取得するように構成されてもよい。この場合、虹彩カメラ20では、まず被写体の動きを推定するための複数の画像が撮像され、その後、被写体の動きに応じて設定値が変更されてから被写体の虹彩画像が撮像されることになる。第1変形例では、虹彩カメラ20以外のカメラを必要としないため、システムの複雑化やコストの増大を抑制することが可能である。
【0034】
(第2変形例)
次に、図5を参照して第2変形例について説明する。図5は、第2変形例に係る撮像システムの機能的構成を示すブロック図である。
【0035】
図5に示すように、画像取得部110は、全体俯瞰カメラ30から複数の画像を取得するように構成されてもよい。全体俯瞰カメラ30は、虹彩カメラ20のより撮像範囲(即ち、画角)が広いカメラとして構成されている。第2変形例では、例えば被写体の全体が写った画像から被写体の動きを推定することができる。よって、虹彩カメラ20のみで被写体の動きを推定する場合(即ち、第1変形例)と比較すると、より柔軟に被写体の動きを推定することが可能となる。
【0036】
(第3変形例)
次に、図6を参照して第3変形例について説明する。図6は、第3変形例に係る撮像システムの機能的構成を示すブロック図である。
【0037】
図6に示すように、撮像システム10は、図1の構成に加えて認証処理部140を更に備えて構成されてもよい。認証処理部140は、虹彩カメラ20で撮像された画像を用いて虹彩認証(即ち、生体認証)を実行可能に構成されている。ここで特に、虹彩カメラ20で撮像される虹彩画像は、上述したように被写体の動きを考慮した状態で撮像される。従って、虹彩認証の精度を高めることが可能である。なお、認証処理部140は、例えば上述したプロセッサ11(図1参照)において実現されればよい。或いは、認証処理部140は、撮像システム10の外部(例えば、外部サーバやクラウド等)に設けられていてもよい。
【0038】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る撮像システム10について、図7及び図8を参照して説明する。なお、第2実施形態は、上述した第1実施形態における設定値の変更の具体例を説明するものであり、その構成や動作の流れは第1実施形態(図1から図3参照)と同一であってよい。このため、以下では、第1実施形態と重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0039】
(歩容による頭の上下動作)
まず、図7を参照して、歩容による被写体の頭の上下動作について説明する。図7は、歩容による被写体の頭の上下動作を示す概念図である。
【0040】
図7に示すように、歩行する被写体500は、その歩容により頭が上下に動く。このため、虹彩カメラ20で被写体500の虹彩を撮像しようとする場合、歩容により虹彩位置(即ち、目位置)が移動し続けることになり、適切な画像を撮像することは容易ではない。特に、虹彩カメラ20では、高精細な画像を撮像して高速通信を行うことが要求されるため、その撮像範囲は比較的狭く設定されることが多い。よって、虹彩カメラ20の撮像範囲(即ち、ROI)内に被写体500の虹彩を正確に収めることは容易ではない。
【0041】
これに対し、第2実施形態に係る撮像システム10では、被写体500の動きに応じてROIを移動させることで、被写体500の虹彩画像を撮像する。即ち、第2実施形態では、虹彩カメラ20の設定値として、虹彩カメラ20のROIを変更する。より具体的には、虹彩カメラ20の合焦地点において、被写体500の目(即ち、特定部分)が虹彩カメラのROI内に含まれるように制御する。
【0042】
次に、図8を参照して、虹彩カメラのROIを変更する方法について説明する。図8は、被写体の動きに合わせて虹彩カメラのROIを移動させる方法の一例を示す概念図である。
【0043】
図8に示すように、仮にROIが固定であったとすると、虹彩カメラ20の合焦地点直前においてROI内に被写体の目位置が含まれていた場合でも、その直後の合焦地点においては、被写体の目位置がROIの外に出てしまうおそれがある。よって、合焦地点直前において正確に目位置を推定できたとしても、合焦地点において目位置をROI内に収めることは難しい。
【0044】
しかるに第2実施形態に係る撮像システム10では、被写体500の動きに応じて虹彩カメラ20のROIを移動させる。例えば、図に示す例では、被写体500が撮像範囲の上側に移動していることが分かる。この場合、設定変更部130は、虹彩カメラ20のROIを上側に移動するように変更する。この結果、虹彩カメラ20の合焦地点において、被写体500の目が虹彩カメラのROI内に含まれることになる。なお、ROIの移動は、虹彩カメラ20の読み込み画素を変更することで移動されてもよいし、虹彩カメラ20そのものを移動させてもよい。虹彩カメラ20そのものを移動させる場合には、虹彩カメラ20本体角をパンチルトさせてもよいし、虹彩カメラ20本体を上下左右に移動させてもよいし、虹彩カメラ20の光軸に合わせた稼働ミラーをパンチルトさせてもよいし、これらを組み合わせてもよい。或いは、撮像範囲の異なる複数の虹彩カメラを用意しておき、撮像に利用する虹彩カメラ20を適宜選択するようにしてもよい。
【0045】
(技術的効果)
次に、第2実施形態に係る撮像システム10によって得られる技術的効果について説明する。
【0046】
図7及び図8で説明したように、第2実施形態に係る撮像システム10では、被写体500の動きに合わせてROIが移動される。従って、被写体500が動いている場合であっても、その虹彩を適切に撮像することが可能である。なお、上述した例では、被写体500が上下に動く場合を例に挙げたが、被写体が左右方向、或いは斜め方向に移動する場合であっても、その方向にROIを移動させることで適切な撮像を実現することができる。
【0047】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る撮像システム10について、図9から図11を参照して説明する。なお、第3実施形態は、上述した第1及び第2実施形態と比べて一部の動作が異なるのみで、その構成については第1実施形態(図1及び図2参照)、或いはその変形例(図4から図6参照)と同一であってよい。このため、以下では、すでに説明した部分と重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0048】
(動作の流れ)
まず、図9を参照しながら、第3実施形態に係る撮像システム10の動作の流れについて説明する。図9は、第3実施形態に係る撮像システムの動作の流れを示すフローチャートである。なお、図9では、図3に示した処理と同様の処理に同一の符号を付している。
【0049】
図9に示すように、第3実施形態に係る撮像システム10が動作する際には、まず画像取得110が、被写体500の複数の画像を取得する(ステップS101)。そして第3実施形態では特に、動き推定部120が、複数の画像の差分を用いて被写体500の動きを推定する(ステップS201)。
【0050】
次に、設定変更部130が、被写体500の動きに応じて虹彩カメラ20の設定値を変更する(ステップS103)。その後、撮像が終了したと判定された場合(ステップS202:YES)、一連の動作は終了することになる。なお、撮像が終了したか否かは、予め設定された撮像枚数が撮像されたか否かによって判定してもよい。
【0051】
一方、撮像が終了したと判定されない場合(ステップS202:NO)、ステップS101から処理が繰り返し実行される。よって、第3実施形態では、虹彩カメラ20による虹彩画像の撮像が終了するまで、虹彩カメラ20の設定値変更が逐次実行されることになる。
【0052】
(具体的な推定方法)
次に、図10及び図11を参照して、画像差分を用いて被写体500の動きを推定する方法の具体例について説明する。図10は、オプティカルフローを利用して被写体の移動方向を算出する方法の一例を示す概念図である。図11は、目位置の変動から被写体の移動方向を算出する方法の一例を示す概念図である。
【0053】
図10に示すように、第3実施形態に係る撮像システム10では、オプティカルフローを用いて被写体500の動きが推定されてもよい。具体的には、動き推定部120は、虹彩カメラ20で、合焦地点直前(1)のタイミングで撮像された画像と、その直後の合焦地点直前(2)で撮像された画像とから、オプティカルフローを算出する。そして、設定値変更部130は、算出されたオプティカルフローに基づいて、虹彩カメラ20のROIを移動させる。この結果、合焦地点直前(2)の直後である合焦地点直前(3)においては、ROIが上側(即ち、オプティカルフローの方向)に移動された状態で虹彩画像の撮像が実行されることになる。
【0054】
図11に示すように、第3実施形態に係る撮像システム10では、被写体500の目位置を検出して被写体500の動きが推定されてもよい。具体的には、動き推定部120は、全体俯瞰カメラ30で、合焦地点直前(1)のタイミングで撮像された画像と、その直後の合焦地点直前(2)で撮像された画像とから、それぞれ被写体500の目位置を検出する。なお、目位置の検出には、既存の技術を適宜採用することができる。動き推定部120は、2つの画像の目位置の差分から、被写体500の目位置の変動方向を算出する。その後、設定値変更部130は、算出された目位置の変動方向に基づいて、虹彩カメラ20のROIを移動させる。この結果、合焦地点直前(2)の直後である合焦地点直前(3)においては、ROIが上側(即ち、目位置の変動方向)に移動された状態で虹彩画像の撮像が実行されることになる。
【0055】
(技術的効果)
次に、第3実施形態に係る撮像システム10によって得られる技術的効果について説明する。
【0056】
図9から図11で説明したように、第3実施形態に係る撮像システム10では、複数の画像の差分から被写体500の動きが推定され、虹彩カメラ20のROI(即ち、設定値)が変更される。このようにすれば、被写体500の動きに合わせて逐次虹彩カメラ20の設定値が変更されることになるため、より適切に被写体500の画像を撮像することが可能である。
【0057】
<第4実施形態>
第4実施形態に係る撮像システム10について、図12及び図13を参照して説明する。
なお、第4実施形態は、上述した第1から第3実施形態と比べて一部の動作が異なるのみで、その構成については第1実施形態(図1及び図2参照)、或いはその変形例(図4から図6参照)と同一であってよい。このため、以下では、すでに説明した部分と重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0058】
(動作の流れ)
まず、図12を参照しながら、第4実施形態に係る撮像システム10の動作の流れについて説明する。図12は、第4実施形態に係る撮像システムの動作の流れを示すフローチャートである。なお、図12では、図3に示した処理と同様の処理に同一の符号を付している。
【0059】
図12に示すように、第4実施形態に係る撮像システム10が動作する際には、まず画像取得110が、被写体の複数の画像を取得する(ステップS101)。そして第4実施形態では特に、動き推定部120が、複数の画像から被写体500の歩容周期を推定する(ステップS301)。なお、複数の画像を用いた歩容周期の推定方法については、既存の技術を適宜採用することが可能である。
【0060】
次に、設定変更部130が、被写体500の歩容周期に応じて虹彩カメラ20のROIを周期振動させる(ステップS302)。このため、虹彩カメラ20のROIは、被写体500の歩容周期に合わせて変動し続けることになる。なお、被写体500の歩容周期は、典型的に上下動作であるが(図7参照)、例えば左右方向、或いは斜め方向の動作であってもよい。
【0061】
(具体的な動作例)
次に、図13を参照して、第4実施形態に係る撮像システム10のより具体的な動作例について説明する。図13は、被写体の歩容周期を推定してROIを周期振動させる方法の一例を示す概念図である。
【0062】
図13に示すように、第4実施形態に係る撮像システム10では、虹彩カメラの合焦地点よりも手前にあるエリアにおいて、複数の画像が撮像され被写体500の歩容周期が推定される。なお、歩容周期を推定するエリアは予め設定しておけばよく、例えば各種センサ等を配置しておくことで、被写体500が歩容周期を推定するエリアに進入したことを検出できる。
【0063】
その後、被写体500が虹彩カメラ20の合焦地点の周辺(言い換えれば、虹彩カメラ20で虹彩画像を撮像するエリア)に到達すると、虹彩カメラ20のROIが推定した歩容周期に応じて周期振動される。虹彩カメラ20のROIは、典型的には虹彩画像20の撮像処理(例えば、所定枚数の撮像)が完了するまで振動され続ける。
【0064】
(技術的効果)
次に、第4実施形態に係る撮像システム10によって得られる技術的効果について説明する。
【0065】
図12及び図13で説明したように、第4実施形態に係る撮像システム10では、複数の画像から被写体500の歩容周期が推定され、その歩容周期に合わせて虹彩カメラ20のROI(即ち、設定値)が変更される。このようにすれば、被写体500の動きを追従するように虹彩カメラ20のROIが移動されるため、より適切に被写体500の虹彩画像を撮像することが可能である。また、第4実施形態に係る撮像システム10は、上述した第3実施形態(即ち、画像差分から被写体500の動きを推定する場合)と比較して、被写体の動きを推定する際の処理負荷が小さい。よって、処理時間を短縮することができ、合焦地点付近における虹彩画像撮像時のフレームレートを高速に維持することができる。従って、よりよく合焦した虹彩画像を撮像することが可能である。
【0066】
<第5実施形態>
第5実施形態に係る撮像システム10について、図14を参照して説明する。なお、第5実施形態は、上述した第3及び第4実施形態を組み合わせたものであり、その構成については第1実施形態(図1及び図2参照)、或いはその変形例(図4から図6参照)と同一であってよい。このため、以下では、すでに説明した部分と重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0067】
(動作の流れ)
まず、図14を参照しながら、第5実施形態に係る撮像システム10の動作の流れについて説明する。図14は、第5実施形態に係る撮像システムの動作の流れを示すフローチャートである。なお、図14では、図9及び図12に示した処理と同様の処理に同一の符号を付している。
【0068】
図14に示すように、第5実施形態に係る撮像システム10が動作する際には、まず画像取得110が、被写体の複数の画像を取得する(ステップS101)。そして、動き推定部120が、複数の画像から被写体500の歩容周期を推定する(ステップS301)。
【0069】
ここで特に、第5実施形態に係る撮像システム10は、推定した歩容周期が所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS401)。なお、ここでの「所定範囲」とは、歩容周期を用いたROIの周期振動(即ち、上述した第4実施形態の動作)を実現可能かを判定するための閾値であり、例えば想定される一般的な歩容周期が所定範囲内となる一方で、怪我している人や、足が不自由な人等の不規則な歩容については所定範囲外となるように設定される。
【0070】
歩容周期が所定範囲内であると判定された場合(ステップS401:YES)、設定変更部130が、被写体500の歩容周期に応じて虹彩カメラ20のROIを周期振動させる(ステップS302)。即ち、第4実施形態と同様の動作が実現される(図12及び図13等を参照)。
【0071】
一方、歩容周期が所定範囲内でないと判定された場合(ステップS401:NO)、画像取得部110が被写体の画像を再取得し(ステップS402)、動き推定部120が、複数の画像の差分を用いて被写体500の動きを推定する(ステップS201)。そして、設定変更部130が、被写体500の動きに応じて虹彩カメラ20の設定値を変更する(ステップS103)。その後、撮像が終了したと判定された場合(ステップS202:YES)、一連の動作は終了する一方で、撮像が終了したと判定されない場合(ステップS202:NO)、ステップS401から処理が繰り返し実行される。即ち、第3実施形態と同様の動作が実現される(図9から図11等を参照)。
【0072】
(技術的効果)
次に、第5実施形態に係る撮像システム10によって得られる技術的効果について説明する。
【0073】
図14で説明したように、第5実施形態に係る撮像システム10では、歩容周期が所定範囲内である場合に、歩容周期に応じてROIが周期振動される。このため、第4実施形態と同様に、比較的小さい処理負荷で被写体500の動きを推定できる。一方、歩容周期が所定範囲内でない場合には、画像差分を用いてROIが変更される。よって、歩容周期によって被写体の動きを推定することが難しい場合にも、確実に被写体の動きを推定し、適切にROIを変更することができる。
【0074】
<付記>
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0075】
(付記1)
付記1に記載の撮像システムは、被写体を相異なるタイミングで撮像した複数の画像を取得する取得手段と、前記複数の画像に基づいて、前記被写体の動きを推定する推定手段と、前記被写体の動きに応じて、前記被写体の特定部分を撮像する撮像部の設定値を変更する変更手段とを備えることを特徴とする撮像システムである。
【0076】
(付記2)
付記2に記載の撮像システムは、前記変更手段は、前記撮像部の合焦地点において前記特定部分が前記撮像部の撮像範囲に含まれるように前記設定値を変更することを特徴とする付記1に記載の撮像システムである。
【0077】
(付記3)
付記3に記載の撮像システムは、前記推定手段は、前記複数の画像の差分から前記被写体の動きを推定することを特徴とする付記1又は2に記載の撮像システムである。
【0078】
(付記4)
前記推定手段は、前記複数の画像から前記被写体の歩容周期を推定することで、前記被写体の動きを推定することを特徴とする付記1又は2に記載の撮像システムである。
【0079】
(付記5)
付記5に記載の撮像システムは、前記推定手段は、前記歩容周期が所定範囲内でない場合に、前記複数の画像の差分から前記被写体の動きを推定することを特徴とする付記4に記載の撮像システムである。
【0080】
(付記6)
付記6に記載の撮像システムは、前記取得手段は、前記撮像部から前記複数の画像を取得することを特徴とする付記1から5のいずれか一項に記載の撮像システムである。
【0081】
(付記7)
付記7に記載の撮像システムは、前記取得手段は、前記撮像部とは異なる第2の撮像部から前記複数の画像を取得することを特徴とする付記1から5のいずれか一項に記載の撮像システムである。
【0082】
(付記8)
付記8に記載の撮像システムは、前記撮像部が撮像した前記特定部分の画像を用いて、前記被写体の認証処理を実行する認証手段を更に備えることを特徴とする付記1から7のいずれか一項に記載の撮像システムである。
【0083】
(付記9)
付記9に記載の撮像方法は、被写体を相異なるタイミングで撮像した複数の画像を取得し、
前記複数の画像に基づいて、前記被写体の動きを推定し、前記被写体の動きに応じて、前記被写体の特定部分を撮像する撮像部の設定値を変更することを特徴とする撮像方法である。
【0084】
(付記10)
付記10に記載のコンピュータプログラムは、被写体を相異なるタイミングで撮像した複数の画像を取得し、前記複数の画像に基づいて、前記被写体の動きを推定し、前記被写体の動きに応じて、前記被写体の特定部分を撮像する撮像部の設定値を変更するようにコンピュータを動作させることを特徴とするコンピュータプログラムである。
【0085】
この開示は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う撮像システム、撮像方法、及びコンピュータプログラムもまたこの開示の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
10 撮像システム
20 虹彩カメラ
30 全体俯瞰カメラ
110 画像取得部
120 動き推定部
130 設定変更部
140 認証処理部
500 被写体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14