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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】最適化システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240409BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/00 130
H02J3/00 170
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022533788
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(86)【国際出願番号】 JP2021021767
(87)【国際公開番号】W WO2022004306
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2020114689
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】大野 正夫
【審査官】田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-149885(JP,A)
【文献】特開2019-097267(JP,A)
【文献】特開2019-022369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H02J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個別システムと、
前記個別システムと通信可能な上位システムと、
を備え、
前記個別システムは、
エネルギー源と接続され、エネルギーを前記エネルギー源から受け、または、エネルギーを前記エネルギー源に送る機器と、
前記機器を通じたエネルギーのパラメータが目的関数および制約条件にそれぞれ設定され、少なくとも前記目的関数の値と、前記複数の個別システムを総合したエネルギー需給バランスを示す指標である総合インバランス量を適切な値に向かわせるような動機付けとなる要素であるインセンティブの値との重み付き和を最小とする最適化演算を行うことで、前記個別システムにおいて前記エネルギー源から受けるエネルギー需要の予測値の推移を含む最適化演算結果を導出する最適化演算部と、を有し、
前記上位システムは、前記個別システムごとに導出された複数の前記最適化演算結果に基づいて前記インセンティブの値改めて導出する上位演算部を有し、
前記最適化演算部は、少なくとも前記目的関数の値と前記上位演算部で導出された前記インセンティブの値との重み付き和を最小とする前記最適化演算を再度行う最適化システム。
【請求項2】
記上位演算部は、前記複数の最適化演算結果に基づいて、前記総合インバランス量の予測値を導出し、前記総合インバランス量の予測値に基づいて前記インセンティブの値を導出する請求項1に記載の最適化システム。
【請求項3】
前記上位演算部は、導出した前記総合インバランス量の予測値が所定範囲内となるまで、前記インセンティブの値の導出を繰り返し、
前記最適化演算部は、前記インセンティブの値が導出される都度、導出された前記インセンティブの値に基づく前記最適化演算を繰り返す請求項2に記載の最適化システム。
【請求項4】
前記最適化演算部は、所定の制御周期で訪れる割込みタイミングごとに前記最適化演算を開始し、
前記上位演算部は、いずれかの前記個別システムから前記最適化演算結果を受信したタイミングで、前記最適化演算結果に基づく演算を開始する請求項1から3のいずれか1項に記載の最適化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、個別システムを最適化する最適化システムに関する。本出願は2020年7月2日に提出された日本特許出願第2020-114689号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、EVパワーステーション、産業用蓄電システムおよび住宅用蓄電システムが電力の調整力としてアグリゲータによって制御されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6574466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工場等の事業所、バッテリが設置される蓄電電力設備、または、充電ステーション(EVパワーステーション)など、各種の個別システムがある。このような個別システムに対して、予め設定される項目(例えば、電気料金)を最小とする最適化が個々になされることがある。
【0005】
しかし、個別システムの各々が最適化されても、複数の個別システムを総合すると最適とはいえないようになることがある。そうすると、最適化の効果が低減されてしまう。
【0006】
本開示は、最適化の効果の低減を抑制することが可能な最適化システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る最適化システムは、複数の個別システムと、個別システムと通信可能な上位システムと、を備え、個別システムは、エネルギー源と接続され、エネルギーをエネルギー源から受け、または、エネルギーをエネルギー源に送る機器と、機器を通じたエネルギーのパラメータが目的関数および制約条件にそれぞれ設定され、少なくとも前記目的関数の値と、複数の個別システムを総合したエネルギー需給バランスを示す指標である総合インバランス量を適切な値に向かわせるような動機付けとなる要素であるインセンティブの値との重み付き和を最小とする最適化演算を行うことで、個別システムにおいてエネルギー源から受けるエネルギー需要の予測値の推移を含む最適化演算結果を導出する最適化演算部と、を有し、上位システムは、個別システムごとに導出された複数の最適化演算結果に基づいてインセンティブの値改めて導出する上位演算部を有し、最適化演算部は、少なくとも目的関数の値と上位演算部で導出されたインセンティブの値との重み付き和を最小とする最適化演算を再度行う。
【0008】
また、上位演算部は、複数の最適化演算結果に基づいて、総合インバランス量の予測値を導出し、総合インバランス量の予測値に基づいてインセンティブの値を導出するとしてもよい。
【0009】
また、上位演算部は、導出した総合インバランス量の予測値が所定範囲内となるまで、インセンティブの値の導出を繰り返し、最適化演算部は、インセンティブの値が導出される都度、導出されたインセンティブの値に基づく最適化演算を繰り返すとしてもよい。
【0010】
また、最適化演算部は、所定の制御周期で訪れる割込みタイミングごとに最適化演算を開始し、上位演算部は、いずれかの個別システムから最適化演算結果を受信したタイミングで、最適化演算結果に基づく演算を開始するとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、最適化の効果の低減を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態に係る最適化システムの概略図である。
図2図2は、個別システムの最適化演算部の動作の流れを説明するフローチャートである。
図3図3は、緒言の一例を示す図である。
図4図4は、電力需要の予測値の推移の一例を示す図である。
図5図5は、電力使用量単価の推移の一例を示す図である。
図6図6は、電力需要の予測値の推移の他の例を示す図である。
図7図7は、車両のバッテリにおける充電のオンオフの一例を示す図である。
図8図8は、電力需要の予測値の推移の他の例を示す図である。
図9図9は、上位演算部の動作の流れを説明するフローチャートである。
図10図10は、収束化回数と総合インバランス量の予測値との関係の一例を示す図である。
図11図11は、最適化システムの効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る最適化システム1の概略図である。最適化システム1は、下位システム10および上位システム12を含む。下位システム10は、複数の個別システム20から構成される。図1の例では、下位システム10として3個の個別システム20a、20b、20cが例示されている。以後、個別システム20a、20b、20cを総称して、単に個別システム20と呼ぶ場合がある。下位システム10を構成する個別システム20の数は、3個に限らず、複数であれば足り、2個でもよいし、4個以上でもよい。
【0015】
個別システム20は、個別システム20ごとに、電力系統22と電気的に接続される電気機器30を有する。電力系統22は、電気エネルギー(電力)のエネルギー源である。電気機器30は、電力を電力系統22から受け、または、電力を電力系統22に送る。なお、電力を電力系統22に送るとは、電気機器30等で生成された電力を電力系統22に売電することに相当する。
【0016】
図1では、説明の便宜のため、1個の個別システム20内に1個の電気機器30を例示している。しかし、個別システム20内の電気機器30の数は、1個に限らず、2個以上でもよい。また、個別システム20内に複数の電気機器30がある場合、それら複数の電気機器30の種類は、異なっていてもよいし、一部または全部が同じであってもよい。また、複数の個別システム20間における電気機器30の種類は、個別システム20ごとに異なっていてもよいし、一部または全部の個別システム20で同じであってもよい。
【0017】
個別システム20aは、例えば、工場、倉庫またはオフィスなど各種の事業所である。個別システム20aの電気機器30は、例えば、モータ、空調設備または照明設備などであり、電力系統22の電力を消費する。
【0018】
個別システム20bの電気機器30は、例えば、バッテリ(蓄電池)である。バッテリは、電力系統22から供給される電力により充電される。また、バッテリは、蓄えた電力を放電して電力系統22に供給することができる。個別システム20bは、例えば、上述のバッテリが設置された蓄電電力設備である。蓄電電力設備は、例えば、電力系統22の負荷が小さいときにバッテリを充電しておき、蓄えた電力を電力系統22の負荷が大きいときに電力系統22に供給してもよい。
【0019】
個別システム20cは、例えば、車両のバッテリを充電可能な充電ステーション(所謂、EVパワーステーション)である。ここでの車両は、駆動源に電力を供給するバッテリを搭載している電気自動車またはハイブリッド自動車などである。以後、電気自動車またはハイブリッド自動車などの車両を、EVと呼ぶ場合がある。個別システム20cの電気機器30は、例えば、電力系統22の電力を変換してEVのバッテリに供給する充電器である。例えば、個別システム20cでは、複数台の充電器が設けられてもよい。
【0020】
なお、電気機器30は、具体的に例示したものに限らず、電力系統22との間で電力の受電または供給が可能な任意の機器であってもよい。また、個別システム20は、例示したものに限らず、電気機器30の種類または規模などによって適宜設定されてもよい。また、複数の個別システム20は、各々が異なる構内に設けられてもよいし、一部または全部が共通の構内に設けられてもよい。
【0021】
個別システム20は、電気機器30の他に、通信部40、記憶部42および個別制御部44を含む。通信部40は、有線または無線によって上位システム12との間の通信を確立することができる。記憶部42は、例えば、不揮発性の記憶装置で構成される。記憶部42には、例えば、個別システム20内で利用される各種の情報が記憶される。
【0022】
個別制御部44は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路から構成される。個別制御部44は、プログラムを実行することで、最適化演算部50として機能する。
【0023】
個別システム20では、電気機器30を通じたエネルギー(電力)のパラメータが目的関数および制約条件にそれぞれ設定される。なお、目的関数に設定されるパラメータと制約条件に設定されるパラメータとは、互いに別のパラメータとされる。ここでのパラメータは、例えば、エネルギー量(電力量)、エネルギーコスト(電気料金)、エネルギー効率(充電率、エネルギー変換率)、エネルギー使用時間(電力使用時間)、エネルギー使用契約に関する事項(例えば、契約電力)またはエネルギー送受方向(例えば、逆潮流禁止)などに関する任意の項目である。
【0024】
目的関数は、後述する最適化において最小化したい項目に相当する。目的関数は、個別システム20ごとに設定される。例えば、個別システム20aでは、事業所における電気料金が目的関数に設定される。また、例えば、個別システム20bでは、バッテリの充放電サイクル数が目的関数に設定される。なお、充放電サイクルは、充電が開始されてから充電が終了して次の充電が開始されるまで、または、放電が開始されてから放電が終了して次の放電が開始されるまでとされる。充放電サイクル数は、充放電サイクルの回数である。また、例えば、個別システム20cでは、EVのバッテリの充電終了予定時におけるSOC(State Of Charge:充電率)の目標値と予測値との誤差が目的関数に設定される。なお、個別システム20cでは、EVの運転パターン(換言すると、充電器の稼働パターン)の目標パターンと予測パターンとの差が目的関数に設定されてもよい。
【0025】
制約条件は、最適化演算で順守される条件が設定される。例えば、個別システム20aでは、事業所の契約電力や逆潮流禁止条件が設定される。また、例えば、個別システム20bと20cでは、バッテリのSOC上限値、SOC下限値、充放電電力上限値および充放電電力下限値などが設定される。
【0026】
最適化演算部50は、設定された制約条件を順守し、設定された目的関数が最小となる最適化演算を行う。最適化演算は、個別システム20ごとに行われる。最適化演算によって得られる結果(最適化演算結果)には、個別システム20においてエネルギー源(電力系統22)から受けるエネルギー需要(具体的には、電力需要)の予測値が含まれる。なお、ここでは、個別システム20から電力系統22に供給する電力を、マイナスの電力需要として含むことができる。
【0027】
より詳細には、最適化演算部50は、目的関数が最小となるときの、個別システム20内における現在以降の所定期間における電力需要の予測値の推移を導出する。所定期間は、例えば、現在から24時間先までとするが、この例に限らず、任意に設定することができる。
【0028】
例えば、個別システム20aの最適化演算部50は、事業所における電気料金が最小となるときの、事業所内における電力需要の予測値の推移を導出する。また、個別システム20bの最適化演算部50は、充放電サイクル数が最小となるときの、蓄電電力設備内における電力需要の予測値の推移を導出する。なお、充電については、電力系統22の電力を消費するため、正の電力需要とする。また、放電については、電力系統22に電力を供給するため、負の電力需要とする。また、個別システム20cの最適化演算部50は、SOCの目標値との誤差が最小となるときの、充電ステーションにおける電力需要の予測値の推移を導出する。
【0029】
また、最適化演算部50は、所定の制御周期(以後、個別制御開始周期と呼ぶ場合がある)で訪れる割込みタイミングごとに最適化演算を開始する。個別制御開始周期の1周期は、例えば、10分または15分などに設定される。なお、個別制御開始周期の1周期は、この例に限らず、任意の時間に設定されてもよい。つまり、各々の個別システム20では、個別制御開始周期の1周期が経過するごとに、大凡リアルタイムで、最適化演算結果が更新される。
【0030】
なお、個別制御開始周期は、複数の個別システム20間で異なっていてもよい。また、個別制御開始周期の1周期が経過するタイミング(最適化演算の開始タイミング)は、複数の個別システム20間で非同期とされるが、同期されてもよい。
【0031】
このように、個別システム20では、個別システム20ごとに最適化することができ、最適化された電力需要の予測値の推移が得られる。
【0032】
しかし、個別システム20の各々が最適化されても、複数の個別システム20を総合すると最適とはいえないようになることがある。例えば、個別システム20内では需給バランスが最適であっても、複数の個別システム20を総合したときの需給バランスが最適とはいえないようになる、という具合である。そうすると、個別システム20での最適化の効果が低減されてしまう。例えば、複数の個別システム20が、同一の事業者、または、協力関係にある事業者によって運営される場合などでは、最適化の効果の低減による影響を受け易い。
【0033】
そこで、本実施形態では、個別システム20と通信可能な上位システム12が設けられている。上位システム12は、例えば、エネルギー(電力)に関する管理または情報処理などのサービスを提供する事業者によって設置される。なお、上位システム12は、電力アグリゲータによって設置されてもよい。
【0034】
上位システム12は、通信部60、記憶部62および上位制御部64を含む。通信部60は、有線または無線によって個別システム20との間の通信を確立することができる。記憶部62は、例えば、不揮発性の記憶装置で構成される。記憶部62には、例えば、上位システム12内で利用される各種の情報が記憶される。
【0035】
上位制御部64は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路から構成される。上位制御部64は、プログラムを実行することで、上位演算部70として機能する。
【0036】
上位演算部70は、個別システム20において導出された最適化演算結果を、複数の個別システム20からそれぞれ取得する。上位演算部70は、個別システム20ごとに導出された複数の最適化演算結果に基づいて、将来の総合インバランス量の予測値を導出する。そして、上位演算部70は、総合インバランス量の予測値に基づいてインセンティブを導出する。
【0037】
インバランス量は、エネルギー(電力)需給バランスを示す指標である。総合インバランス量は、複数の個別システム20を総合したときのエネルギー(電力)需給バランスを示す指標である。例えば、総合インバランス量は、複数の個別システム20全体における電力供給量から、その全体の電力需要量を減算した値に相当する。総合インバランス量の予測値の具体的な導出方法については、後に詳述する。
【0038】
インセンティブは、複数の個別システム20全体のエネルギー需給バランス(すなわち、総合インバランス量)を適切な値に向かわせるような動機付けとなる要素である。例えば、電気料金の低下量などがインセンティブとして設定される。なお、インセンティブは、電気料金の低下量に限らず、適宜設定されてもよい。例えば、ポイント、クーポンまたはサービス券など、経済的に付与される各種の特典であってもよい。また、インセンティブは、直接的には数値ではない要素を数値化して設定されてもよい。また、インセンティブは、利益(ベネフィット)だけでなく、不利益(ペナルティ)を含んでもよい。
【0039】
上位演算部70は、導出した総合インバランス量を個別システム20の個数で除算して単位インバランス量を導出する。単位インバランス量は、1個の個別システム20当たりのインバランス量を示す。
【0040】
上位演算部70は、導出した単位インバランス量およびインセンティブを個別システム20に送信する。個別システム20の最適化演算部50は、受信した単位インバランス量およびインセンティブに基づいて、最適化演算を再度行う。
【0041】
これにより、個別システム20における最適化演算結果が、複数の個別システム20全体の電力需給バランスを考慮して実質的に補正されることとなる。そうすると、複数の個別システム20を総合すると最適とはいえなくなる、という事態を回避することができる。したがって、最適化システム1では、複数の個別システム20を総合しても、個別システム20における最適化の効果の低減を抑制することができる。
【0042】
また、上位演算部70は、導出した総合インバランス量の予測値が所定範囲内となるまで、インセンティブの導出を繰り返す。また、最適化演算部50は、インセンティブが導出される都度、導出されたインセンティブに基づく最適化演算を繰り返す。つまり、最適化システム1では、総合インバランス量の予測値が所定範囲内に収束するまで最適化演算の実質的な補正が繰り返される。これにより、最適化システム1では、最適化の効果の低減を早期に抑制することができる。
【0043】
以後、総合インバランス量の予測値を所定範囲内に収束させるための最適化演算の繰り返し動作のことを、便宜的に収束化と呼ぶ場合がある。また、収束化の開始から終了までの最適化演算の回数を、収束化回数と呼ぶ場合がある。また、収束化にかかる時間(総合インバランス量の予測値が所定範囲内となるまでにかかる時間)を、収束化時間と呼ぶ場合がある。以下、最適化演算部50および上位演算部70の動作について詳述する。
【0044】
図2は、個別システム20の最適化演算部50の動作の流れを説明するフローチャートである。最適化演算部50は、所定の制御周期(個別制御開始周期)で訪れる割込みタイミングとなると、図2の一連の処理を開始する。
【0045】
最適化演算部50は、まず、最適化演算に必要な情報である緒言を設定する(S100)。緒言としては、例えば、目的関数、制約条件およびその他の情報がある。
【0046】
図3は、緒言の一例を示す図である。なお、緒言は、図3で例示したものに限らず、個別システム20ごとに適宜設定されてもよい。目的関数には、最小としたい項目が設定される。制約条件には、最適化演算で順守される条件が設定される。その他の情報は、最適化演算で利用されるパラメータである。
【0047】
例えば、図3に示すように、最適化演算部50が属する個別システム20が事業所(個別システム20a)である場合、電気料金が目的関数に設定される。また、この場合、契約電力および逆潮流禁止が制約条件に設定される。また、この場合、契約電力値および電力使用量単価がその他の情報として利用される。
【0048】
また、例えば、最適化演算部50が属する個別システム20が蓄電電力設備(個別システム20b)である場合、充放電サイクル数が目的関数に設定される。また、この場合、SOC上限値、SOC下限値、充放電電力上限値および充放電電力下限値が制約条件に設定される。また、この場合、各種上限値、各種下限値、目標値および初期SOCがその他の情報として利用される。
【0049】
また、例えば、最適化演算部50が属する個別システム20が充電ステーション(個別システム20c)である場合、SOCの目標値との誤差が目的関数に設定される。なお、EVの運転パターン(換言すると、充電器の稼働スケジュール)が目的関数に設定されてもよい。また、この場合、SOC上限値、SOC下限値、充放電電力上限値および充放電電力下限値が制約条件に設定される。また、この場合、各種上限値、各種下限値、目標値および初期SOCがその他の情報として利用される。
【0050】
図2に戻って、緒言の設定(S100)後、最適化演算部50は、現在以降の所定期間における電気機器30の利用予定を取得する(S110)。電気機器30の利用予定は、例えば、個別システム20の管理者などによって入力されてもよいし、電気機器30の過去の利用時間および利用履歴を参照して予測されるとしてもよい。現在以降の所定期間は、例えば、現在から24時間先までとするが、この例に限らず、任意に設定できる。
【0051】
次に、最適化演算部50は、前回の割込みタイミングにおける電気機器30の利用予定と比べ、今回の割込みタイミングにおける電気機器30の利用予定に変更があるか否かを判断する(S120)。変更がなければ(S120におけるNO)、最適化演算部50は、今回の割込みタイミングにおける一連の処理を終了する。
【0052】
変更があれば(S120におけるYES)、最適化演算部50は、今回の電気機器30の利用予定に基づいて、現在以降の所定期間(例えば、現在から24時間先まで)における電力需要の推移を予測する(S130)。
【0053】
図4は、電力需要の予測値の推移の一例を示す図である。図4は、最適化演算部50が属する個別システム20が事業所(個別システム20a)である場合を示している。実線A10は、電力需要の予測値の推移を示している。一点鎖線A12は、契約電力を示している。図4で示すように、電力需要の予測値は、契約電力以下に収まっている。
【0054】
図5は、電力使用量単価の推移の一例を示す図である。図5で示すように、電力使用量単価は、時間に従って変動している。
【0055】
図6は、電力需要の予測値の推移の他の例を示す図である。図6は、最適化演算部50が属する個別システム20が蓄電電力設備(個別システム20b)である場合を示している。図6では、蓄電電力設備のバッテリにおける充電を正の電力需要とし、放電を負の電力需要として示している。図6で示すように、蓄電電力設備では、充電および放電が適宜繰り返されている。
【0056】
図7は、車両のバッテリにおける充電のオンオフの一例を示す図である。図7は、車両(EV)の運転スケジュール、つまり、充電ステーションの充電器の利用予定の一例を示す。図7では、10台のEVについて例示している。なお、EVの台数は、この例に限らず、任意に設定できる。
【0057】
図8は、電力需要の予測値の推移の他の例を示す図である。図8は、最適化演算部50が属する個別システム20が充電ステーション(個別システム20c)である場合を示している。図8では、図7の10台のEVに各々対応するように例示している。図8で示す電力需要の予測値の推移は、図7で示すEVの運転スケジュールに基づいて導出される。図8で示すように、EVの充電開始タイミングおよび充電時間は、EVごとに異なっている。
【0058】
図2に戻って、電力需要を予測した(S130)後、最適化演算部50は単位インバランス量およびインセンティブを取得して設定する(S140)。今回の割込みタイミングにおいて初めてステップS140を行う場合、単位インバランス量およびインセンティブには所定の初期値が設定される。また、後述するが、単位インバランス量およびインセンティブを上位システム12から受信した場合には、受信した単位インバランス量およびインセンティブが設定される。
【0059】
次に、最適化演算部50は、設定された目的関数、制約条件、単位インバランス量およびインセンティブを用いて最適化演算を実行する(S150)。最適化演算では、例えば、目的関数、インセンティブ、および、単位インバランス量を減少させる関数の重み付き和を、制約条件の下で最小化する。
【0060】
以後、単位インバランス量を減少させる関数を、単位インバランス低減関数と呼ぶ場合がある。単位インバランス低減関数は、例えば、以下の式(1)によって導出することができる。単位インバランス低減関数は、最適化演算を収束させるために用いられる。
【数1】
【0061】
式(1)において、kは、時間を示すパラメータである。例えば、k=0は、現在を示す。また、kは、1時間ごとにカウントアップされる。例えば、k=1は現在から1時間先に相当し、k=24は、現在から24時間先に相当する。
【0062】
また、Nは、個別システム20の数を示す。図1の例では、3個の個別システム20a、20b、20cから構成されるため、N=3と設定される。P(k)/Nは、単位インバランス量を示す。P(k)は、後に式(2)で導出される現在からk時間先の総合インバランス量の予測値である。今回の割込みタイミングにおいて初めてステップS150を行う場合、P(k)/Nは、ステップS140で設定された単位インバランス量の初期値に相当する。また、後述するが、単位インバランス量を上位システム12から受信した場合、受信した単位インバランス量でP(k)/Nが更新される。
【0063】
また、nは、今回の割込みタイミングにおける最適化演算の回数(収束化回数)を示す。今回の割込みタイミングにおいて初めてステップS150を行う場合、nは1とされる。また、Pは、個別システム20ごとの電力需要の予測値を示す。例えば、個別システム20が事業所(個別システム20a)の場合、Pは、事業所の電力需要の予測値PBUに相当する。また、P (k)-P n-1(k)は、今回の割込みタイミングにおけるn回目の電力需要の予測値からn-1回目の電力需要の予測値を減算したものに相当する。
【0064】
ステップS150で最適化演算が実行されると、最適化演算結果が導出される。最適化演算結果は、例えば、最適化演算部50が属する個別システム20における現在以降の所定期間における電力需要の予測値の推移として導出される。
【0065】
ステップS150で最適化演算を1回実行後、最適化演算部50は、最適化演算結果を記憶部42に記憶させる(S160)。そして、最適化演算部50は、通信部40を通じて最適化演算結果を上位システム12に送信する(S170)。
【0066】
最適化演算結果の送信後、最適化演算部50は、再演算要求フラグを受信するまで待機する(S180におけるNO)。再演算要求フラグは、最適化演算を再び行うことを要求するか否かを示す。なお、最適化演算部50は、最適化演算結果を送信してから所定時間内に再演算要求フラグを受信しなかった場合、その所定時間が経過した後(タイムアウト)、一連の処理を終了してもよい。
【0067】
再演算要求フラグを受信した場合(S180におけるYES)、最適化演算部50は、受信した再演算要求フラグがオン状態であるか否かを判断する(S190)。再演算要求フラグがオフ状態である場合(S190におけるNO)、最適化演算部50は、再演算が不要(以後の収束化が不要)であるとみなし、一連の処理を終了する。
【0068】
再演算要求フラグがオン状態である場合(S190におけるYES)、最適化演算部50は、再演算が必要(収束化が必要)であるとみなし、ステップS200の処理に移る。
【0069】
ステップS200において、最適化演算部50は、単位インバランス量およびインセンティブを上位システム12から受信するまで待機する(S200におけるNO)。なお、最適化演算部50は、最適化演算結果を送信してから所定時間内に単位インバランス量およびインセンティブを受信しなかった場合、その所定時間が経過した後(タイムアウト)、一連の処理を終了してもよい。
【0070】
単位インバランス量およびインセンティブを受信した場合(S200におけるYES)、最適化演算部50は、ステップS140に戻る。そして、最適化演算部50は、単位インバランス量およびインセンティブの設定値を、受信した単位インバランス量およびインセンティブに更新する(S140)。その後、最適化演算部50は、更新された単位インバランス量およびインセンティブを用いて最適化演算を再び実行する(S150)。
【0071】
このように、個別システム20では、今回の割込みタイミングにおいて、上位システム12からの再演算の要求がなくなるまで最適化演算が繰り返される(収束化が行われる)。なお、図2で示す一連の処理中において他の割込み制御の実行を制限し、収束化を早期に終了させるようにしてもよい。
【0072】
図9は、上位演算部70の動作の流れを説明するフローチャートである。上位演算部70は、いずれかの個別システム20から最適化演算結果を受信すると、図9の一連の処理を開始する。
【0073】
上位演算部70は、まず、受信した最適化演算結果を、送信元の個別システム20に関連付けて記憶部62に記憶させる(S300)。ここで、各々の個別システム20では非同期に最適化演算結果が導出されるため、上位演算部70は、個別システム20ごとの複数の最適化演算結果を異なるタイミングで受信する。上位演算部70は、異なるタイミングで受信する最適化演算結果を、受信するごとに記憶部62に記憶させる。このため、記憶部62には、個別システム20ごとの複数の最適化演算結果の最新値が保持される。
【0074】
次に、上位演算部70は、現在以降の所定期間における合計受電電力の予測値の推移を取得する(S310)。受電電力は、電力系統22から個別システム20に供給される電力である。合計受電電力は、個別システム20ごとの受電電力を、複数の個別システム20全体で加算した値に相当する。つまり、合計受電電力は、複数の個別システム20に亘る総合の電力供給量に相当する。
【0075】
上位演算部70は、例えば、個別システム20それぞれの過去の受電電力から将来の合計受電電力を推定することで、合計受電電力の予測値の推移を取得してもよい。また、個別システム20それぞれにおいて受電電力の予測値の推移が導出され、上位演算部70は、受電電力の予測値の推移を個別システム20それぞれから取得して加算することで、合計受電電力の予測値の推移を取得してもよい。
【0076】
次に、上位演算部70は、再演算要求フラグがオン状態であるか否かを判断する(S320)。つまり、ステップS320では、受信した最適化演算結果が、収束化の途中の最適化演算結果であるかが判断される。
【0077】
再演算要求フラグがオフ状態である場合(S320におけるNO)、上位演算部70は、収束化回数nを初期化する(n=1とする)(S330)。再演算要求フラグがオン状態である場合(S320におけるYES)、上位演算部70は、収束化回数nをインクリメントする(S340)。
【0078】
ステップS330またはステップS340の後、上位演算部70は、受信した最適化演算結果および合計受電電力の予測値の推移に基づいて、現在以降の所定期間における総合インバランス量の予測値を導出する(S350)。具体的には、以下の式(2)によって総合インバランス量の予測値を導出する。
【数2】
【0079】
式(2)において、kは、上述の式(1)と同様に時間を示す。また、P(k)は、現在からk時間先の総合インバランス量の予測値を示す。PNET(k)は、現在からk時間先の合計受電電力を示す。
【0080】
BU(k)は、現在からk時間先の事業所(個別システム20a)における電力需要の予測値を示す。つまり、PBU(k)は、個別システム20aの最適化演算結果に相当する。PBU(k)は、合計受電電力であるPNET(k)が、図3に例示した事業所(個別システム20a)の制約条件(契約電力および逆潮流禁止など)を順守し、かつ、目的関数(電気料金など)を最小化するように、最適化演算される。
【0081】
BA(k)は、現在からk時間先の蓄電電力設備(個別システム20b)における電力需要の予測値を示す。つまり、PBA(k)は、個別システム20bの最適化演算結果に相当する。
【0082】
EV (k)は、現在からk時間先のi番目のEVにおける電力需要の予測値を示す。そして、ΣPEV (k)は、EVにおける電力需要の予測値をすべてのEVについて加算した合計値を示す。つまり、ΣPEV (k)は、個別システム20cの最適化演算結果に相当する。なお、iの上限は、式(2)では10としているが、EVの台数によって適宜設定できる。
【0083】
式(2)に示すように、上位演算部70は、合計受電電力の予測値から個別システム20それぞれの電力需要の予測値(最適化演算結果)を減算して、総合インバランス量の予測値を導出する。上位演算部70は、この演算を現在(k=0)から所定時間先(例えば、k=24)まで行って、総合インバランス量の予測値の推移を導出する。
【0084】
なお、総合インバランス量は、合計受電電力の予測値が、個別システム20それぞれの電力需要の予測値の合計よりも大きければ、正値となる。一方、総合インバランス量は、合計受電電力の予測値よりも、個別システム20それぞれの電力需要の予測値の合計が大きければ、負値となる。
【0085】
また、今回受信した最適化演算結果が属する個別システム20以外の個別システム20における最適化演算結果(電力需要の予測値の推移)については、最新値が記憶部62から読み出されて使用される。
【0086】
総合インバランス量の導出後、最適化演算部50は、総合インバランス量の予測値が所定範囲内であるか否かを判断する(S360)。例えば、最適化演算部50は、現在以降の所定期間(例えば、k=0~24)に亘って総合インバランス量が所定範囲内に維持されている場合、総合インバランス量の予測値が所定範囲内であると判断する。なお、総合インバランス量の予測値の絶対値が所定値未満であることをもって、総合インバランス量の予測値が所定範囲内であるとみなしてもよい。
【0087】
総合インバランス量の予測値が所定範囲内である場合(S360におけるNO)、最適化演算部50は、総合インバランス量の予測値に基づいてインセンティブを導出する(S370)。具体的には、以下の式(3)によってインセンティブを導出する。
【数3】
【0088】
式(3)において、kは、上述の式(2)と同様に時間を示す。また、nは、収束化回数(ステップS330またはステップS340の収束化回数n)を示す。また、λ(k)は、収束化回数がn回目のときの現在からk時間先のインセンティブを示す。また、λn-1(k)は、収束化回数がn-1回目のときの現在からk時間先のインセンティブを示す。また、ρは、予め設定される係数であり、0より大きな値に設定される。なお、P(k)は、式(2)で導出された総合インバランス量の予測値を示す。
【0089】
式(3)に示すように、上位演算部70は、導出された総合インバランス量の予測値に所定係数を乗算した値を、1回前(n-1)のインセンティブに加算して、今回(n)のインセンティブを導出する。上位演算部70は、この演算を現在(k=0)から所定時間先(例えば、k=24)まで行って、インセンティブの予測値の推移を導出する。
【0090】
例えば、総合インバランス量の予測値が電力余剰を示す(P(k)>0)場合、インセンティブ(λ(k))は、総合インバランス量の予測値に応じて増加する。例えば、インセンティブが電気料金とすると、インセンティブの増加量は、電気料金の低下量(値下げ額)に相当する。
【0091】
逆に、例えば、総合インバランス量の予測値が電力不足を示す(P(k)<0)場合、インセンティブ(λ(k))は、総合インバランス量の予測値に応じて減少する。例えば、インセンティブが電気料金とすると、インセンティブの減少量は、電気料金の上昇量(値上げ額)に相当する。
【0092】
インセンティブの導出後、上位演算部70は、単位インバランス量の予測値を導出する(S380)。単位インバランス量の予測値は、ステップS350で導出された総合インバランス量の予測値を個別システム20の個数で除算して得られる。
【0093】
次に、上位演算部70は、再演算要求フラグをオン状態とする(S390)。再演算要求フラグは、オフ状態とされるまでオン状態で維持される。
【0094】
次に、上位演算部70は、最適化演算結果の送信元の個別システム20に、通信部60を通じてオン状態の再演算要求フラグを送信する(S400)。その後、上位演算部70は、最適化演算結果の送信元の個別システム20に、ステップS380で導出された単位インバランス量の予測値、および、ステップS370で導出されたインセンティブを送信する(S410)。
【0095】
これにより、最適化演算結果の送信元の個別システム20では、送信された単位インバランス量の予測値およびインセンティブに基づいて最適化演算が再び行われる(図2参照)。そして、上位演算部70は、再演算による最適化演算結果の受信に応じて、図9の一連の処理を再び開始する。つまり、収束化が継続される。
【0096】
また、ステップS360において、総合インバランス量の予測値が所定値未満となった場合(S360におけるYES)、上位演算部70は、再演算要求フラグをオフ状態とする(S420)。再演算要求フラグは、オン状態とされるまでオフ状態で維持される。
【0097】
次に、上位演算部70は、最適化演算結果の送信元の個別システム20に、通信部60を通じてオフ状態の再演算要求フラグを送信する(S430)。
【0098】
オフ状態の再演算要求フラグが送信されると、最適化演算結果の送信元の個別システム20では、最適化演算の再演算が行われず、収束化が終了される。
【0099】
図10は、収束化回数nと総合インバランス量の予測値との関係の一例を示す図である。図10で示すように、収束化回数nが多くなるに従って、総合インバランス量の予測値をゼロに近づけることができる。
【0100】
図11は、最適化システム1の効果を説明する図である。図11の実線A20は、総合インバランス量の予測値が所定範囲内とされたときの複数の個別システム20全体の電力需要の予測値の推移を示す。つまり、実線A20は、総合インバランス量の予測値が考慮された各々の個別システム20の最適化演算結果を加算したものに相当する。なお、図11の破線A14は、図4の実線A10を破線で示したものである。
【0101】
図11で示すように、複数の個別システム20全体の電力需要の予測値(実線A20)は、現在以降の所定期間(例えば24時間)に亘って、契約電力(一点鎖線A12)未満となっている。例えば、現在から約13.5時間先において、充電ステーション(個別システム20c)での電力需要の予測値が多くなるとしても、その時間における複数の個別システム20全体での電力需要の予測値を契約電力未満とすることができる。
【0102】
以上のように、本実施形態の最適化システム1では、個別システム20と通信可能な上位システム12が設けられている。個別システム20の最適化演算部50は、最適化演算を行い、最適化演算結果を上位システム12に送信する。上位システム12の上位演算部70は、個別システム20ごとに導出された複数の最適化演算結果に基づいてインセンティブを導出する。そして、個別システム20の最適化演算部50は、上位演算部70で導出されたインセンティブに基づいて最適化演算を再度行う。
【0103】
これにより、本実施形態の最適化システム1では、個別システム20ごとの最適化演算結果をインセンティブに従って実質的に補正することができる。その結果、本実施形態の最適化システム1では、個別システム20の各々について適切としつつ、複数の個別システム20を総合したときのエネルギー需要も適切とすることができる。したがって、本実施形態の最適化システム1では、最適化演算の効果の低減を抑制することができる。
【0104】
また、上位演算部70は、複数の最適化演算結果に基づいて総合インバランス量の予測値を導出する。そして、上位演算部70は、総合インバランス量の予測値に基づいてインセンティブを導出する。このため、本実施形態の最適化システム1では、適切なインセンティブを導出することができる。その結果、本実施形態の最適化システム1では、最適化演算の効果の低減を、適切に抑制することができる。
【0105】
また、上位演算部70は、導出した総合インバランス量の予測値が所定範囲内となるまでインセンティブの導出を繰り返す。また、最適化演算部50は、インセンティブが導出される都度、導出されたインセンティブに基づく最適化演算を繰り返す。このため、本実施形態の最適化システム1では、最適化の効果の低減を早期に抑制することができる。
【0106】
また、最適化演算部50は、所定の制御周期で訪れる割込みタイミングごとに最適化演算を開始する。また上位演算部70は、いずれかの個別システム20から最適化演算結果を受信したタイミングで、最適化演算結果に基づく演算を開始する。このため、本実施形態の最適化システム1では、大凡リアルタイムに、最適化演算結果が適切に更新される。
【0107】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0108】
例えば、上記実施形態において、EVの使用用途またはEVの種類などによって、充電ステーションを複数の個別システム20に区分してもよい。
【0109】
また、上記実施形態において、個別システム20の一例である充電ステーションは、EVのバッテリの充電を行うものであった。しかし、個別システム20は、EVのバッテリの充電を行うものに限らず、電動化されたモビリティのバッテリの充電を行うものであってもよい。例えば、個別システム20は、ドローンなどの航空機、または、自律型無人潜水機(AUV)などの水中推進機などのバッテリの充電を行うものであってもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、最適化演算結果として、電力需要の予測値の推移が導出されていた。しかし、最適化演算結果の種類は、電力需要の予測値の推移に限らない。例えば、最適化演算結果として、熱量またはガスなどのエネルギーに関する需要の予測値の推移が導出されてもよい。この場合、電力系統22は、エネルギー源に代えられる。電気機器30は、エネルギー源に接続される機器に代えられる。機器は、エネルギーをエネルギー源から受け、または、エネルギーをエネルギー源に送る。最適化演算部50は、機器を通じたエネルギーのパラメータが最小となる最適化演算を行う。上位演算部70は、複数の個別システム20ごとのエネルギー需要の予測値の推移に基づいて、総合インバランス量の予測値を導出する。総合インバランス量の予測値は、エネルギーの総供給量からエネルギーの総需要量を減算して導出される。上位演算部70は、総合インバランス量の予測値に基づいてインセンティブを導出する。最適化演算部50は、上位演算部70で導出されたインセンティブに基づいて、最適化演算を再度行う。
【符号の説明】
【0111】
1:最適化システム 12:上位システム 20:個別システム 22:電力系統 30:電気機器 50:最適化演算部 70:上位演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11