(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】物体までの距離を計算するためのLIDAR装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240409BHJP
G01S 7/484 20060101ALI20240409BHJP
G01S 17/42 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G01S7/481 Z
G01S7/484
G01S17/42
(21)【出願番号】P 2022537251
(86)(22)【出願日】2021-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2021001422
(87)【国際公開番号】W WO2021153304
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(74)【代理人】
【識別番号】100170689
【氏名又は名称】金 順姫
(72)【発明者】
【氏名】木村 禎祐
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 憲幸
(72)【発明者】
【氏名】植野 晶文
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/123722(WO,A1)
【文献】特開2012-038077(JP,A)
【文献】特開2019-211358(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179650(WO,A1)
【文献】特表2014-503820(JP,A)
【文献】特開2009-156810(JP,A)
【文献】特開2014-119414(JP,A)
【文献】特開2019-100919(JP,A)
【文献】特開平06-265628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S17/00-17/95
G01C 3/06- 3/08
G01B11/00-11/30
G02B26/10-26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査ゾーン(SZ)内の物体(X)までの距離を測定するためのLIDAR装置であって、
光ビームを放射するように構成される光源(12)と、
走査ゾーン内の物体によって反射された戻りビームを受信するように構成される受光器(14)と、
光源から放射された光ビームを、走査ゾーンに向けて反射するように構成される回転可能なミラー(18)と、
第1の位置と第2の位置との間でミラーを揺動させることによって、第1の位置と第2の位置との間で往復するよう、ミラーを回転させるように構成されるモータ(26)と、
ミラーの第1の位置と第2の位置との間での各回転サイクルの間、複数の所定の角度間隔で、ミラーの回転角度を検出し、ミラーの回転角度を示す検出信号を出力するように構成される角度センサ(28)と、及び
光源及び角度センサに結合されるコントローラ(21)と、を備え、
コントローラは、角度センサからの検出信号がミラーの複数の所定のターゲット回転角度のいずれか1つに一致したとき、光源に制御信号を出力し、光ビームを放射するように構成され、角度センサからの検出信号がミラーの複数の所定のターゲット回転角度のいずれにも一致しないとき、光源に制御信号を出力しないように構成され、
複数の所定のターゲット回転角度は、ミラーが第1の位置から第2の位置に揺動される間において、不規則な角度間隔に定められている、LIDAR装置。
【請求項2】
複数の所定のターゲット回転角度は、ターゲット角度テーブルを使用し
て設定される、請求項
1に記載のLIDAR装置。
【請求項3】
走査ゾーン(SZ)内の物体(X)までの距離を測定するように光源(12)を制御するための、コントローラ(21)によって実行される方法であって、
ミラー(18)の第1の位置と第2の位置との間での各回転サイクルの間、複数の所定の角度間隔で、第1の位置と第2の位置との間でミラーを揺動させることによって、第1の位置と第2の位置との間で往復するよう回転するミラーの回転角度を示す検出信号を受信すること、
検出信号がミラーの複数の所定のターゲット回転角度のいずれか1つに一致するかどうかを判定すること、
検出信号が複数の所定のターゲット回転角度のいずれか1つに一致すると判定されると、光ビームを放射するよう光源に制御信号を出力すること、
走査ゾーン内の物体によって反射された戻り光を受けて生成された戻り信号を受信すること、及び、
制御信号が出力されたタイミングと戻り信号が受信されたタイミングとに基づいて、物体までの距離を計算すること、を備え、
検出信号が複数の所定のターゲット回転角度のいずれにも一致しないとき、光源に制御信号を出力
せず、
複数の所定のターゲット回転角度は、ミラーが第1の位置から第2の位置に揺動される間において、不規則な角度間隔に定められている、方法。
【請求項4】
複数の所定のターゲット回転角度は、ターゲット角度テーブルを使用し
て設定される、請求項
3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体までの距離を計算するためのLIDAR装置、及び距離を計算するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LIDARは、Light Detection and Rangingの略で、走査領域内の物体までの距離を測定するリモートセンシング方式である。このようなLIDARシステムは、自動運転の分野を含む、さまざまな分野で良く使用されている。LIDARシステムは通常、発光器、受光器、及び、放射された光を走査領域に向けて反射するためのミラーを使用する。走査ミラーは、通常、検出範囲を拡大するため、ミラーを回転させることによって使用される。
【発明の概要】
【0003】
本開示の第1の態様は、走査ゾーン内の物体までの距離を測定するためのLIDAR装置である。LIDAR装置は、光源、受光器、回転可能なミラー、モータ、角度センサ、及びコントローラを含む。
【0006】
光源は、光ビームを放射するように構成される。受光器は、走査ゾーン内の物体によって反射された戻りビームを受信するように構成される。回転可能なミラーは、光源から放射された光ビームを、走査ゾーンに向けて反射するように構成される。モータは、第1の位置と第2の位置との間でミラーを揺動させることによって、第1の位置と第2の位置との間で往復するよう、ミラーを回転させるように構成される。角度センサは、ミラーの第1の位置と第2の位置との間での各回転サイクルの間、複数の所定の角度間隔で、ミラーの回転角度を検出し、ミラーの回転角度を示す検出信号を出力するように構成される。コントローラは、光源及び角度センサに結合される。コントローラは、角度センサからの検出信号がミラーの複数の所定のターゲット回転角度のいずれか1つに一致したとき、光源に制御信号を出力し、光ビームを放射するように構成される。さらに、コントローラは、角度センサからの検出信号がミラーの複数の所定のターゲット回転角度のいずれにも一致しないとき、光源に制御信号を出力しないように構成される。複数の所定のターゲット回転角度は、ミラーが第1の位置から第2の位置に揺動される間において、不規則な角度間隔に定められている。
【0009】
本開示の第2の態様は、走査ゾーン内の物体までの距離を測定するように光源を制御するための、コントローラによって実行される方法である。方法は、ミラーの第1の位置と第2の位置との間での各回転サイクルの間、複数の所定の角度間隔で、第1の位置と第2の位置との間でミラーを揺動させることによって、第1の位置と第2の位置との間で往復するよう回転するミラーの回転角度を示す検出信号を受信すること、検出信号がミラーの複数の所定のターゲット回転角度のいずれか1つに一致するかどうかを判定すること、検出信号が複数の所定のターゲット回転角度のいずれか1つに一致すると判定されると、光ビームを放射するよう光源に制御信号を出力すること、走査ゾーン内の物体によって反射された戻り光を受けて生成された戻り信号を受信すること、及び、制御信号が出力されたタイミングと戻り信号が受信されたタイミングとに基づいて、物体までの距離を計算すること、を含む。検出信号が複数の所定のターゲット回転角度のいずれにも一致しないとき、光源に制御信号は出力されない。複数の所定のターゲット回転角度は、ミラーが第1の位置から第2の位置に揺動される間において、不規則な角度間隔に定められている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の上記及び他の目的、特徴及び利点は、添付の図面を参照してなされる以下の詳細な説明からより明らかになる。
【0011】
【
図1】第1実施形態によるLIDAR装置の概略図である。
【
図2】発光モジュールと走査ミラーとの間の位置関係を示す上面図である。
【
図4】(a)-60度、(b)0度、及び(c)+60度、での走査ミラーによるレーザービームの反射を示す図である。
【
図6】第1実施形態による、検出信号、発光制御信号、及び戻り信号のタイミングチャートである。
【
図7】第1実施形態によるLIDAR装置によって実行されるフローチャートである。
【
図8】発光モジュールと走査ミラーとの間の位置関係を示す比較例の概略図である。
【
図9】比較例の、検出信号、発光制御信号、及び戻り信号のタイミングチャートである。
【
図10】第2実施形態による、検出信号、発光制御信号、及び戻り信号のタイミングチャートである。
【
図11】第2実施形態によるLIDAR装置によって実行されるフローチャートである。
【
図12】第3実施形態による、検出信号、発光制御信号、及び戻り信号のタイミングチャートである。
【
図13】第3実施形態によるLIDAR装置によって実行されるフローチャートである。
【
図14】第4実施形態による、検出信号、発光制御信号、及び戻り信号のタイミングチャートである。
【
図15】第4実施形態によるLIDAR装置によって実行されるフローチャートである。
【
図16】第5実施形態によるLIDAR装置のブロック図である。
【
図17】第5実施形態による、検出信号、発光制御信号、及び戻り信号のタイミングチャートである。
【
図18】第5実施形態によるLIDAR装置によって実行されるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の複数の実施形態が、図面を参照して説明される。以下の実施形態では、同一又は同等の部分は、互いに同じ参照番号で示され、説明を簡略化するために、説明は、同じ参照番号に対して与えられる。さらに、以下の実施形態では、レーザー画像検出及び測距(LIDAR)装置は、自動車などの車両に取り付けられるが、LIDAR装置1は、自動二輪、飛行機、船、ドローンなどの任意の種類の車両に取り付けられても良い。
【0013】
(第1実施形態)
図1から
図3は、第1実施形態によるLIDAR装置10の概略図を示す。LIDAR装置10は、飛行時間(ToF)技術を使用して、走査ゾーンSZ内の物体Xまでの距離を計算するように構成される。LIDAR装置10は、基本的に、発光モジュール12、受光モジュール14、走査モジュール18、及びモータコントローラ50(
図5参照)を含む。物体Xまでの距離の計算は、後述されるように、受光モジュール14内に一体的に配置されるコントローラ21によって実行される。
【0014】
LIDAR装置10は、
図1に示されるように、箱状のケース10aに収容された単一のコンポーネントとして形成される。この実施形態では、
図1に定義されるように、垂直面が、発光モジュール12の光軸が伸びる方向に沿い、かつ(後述される)回転可能なシャフト24の中心軸CXに平行である表面として定義され、垂直方向が、中心軸CXと平行である方向として定義される。そして、発光モジュール12及び受光モジュール14は、
図1に定義されるように、垂直方向に沿う方向に配置される。
図1に定義される垂直方向は、LIDAR装置10が搭載される車両の上下方向と一致していても良い。換言すれば、発光モジュール12及び受光モジュール14は、走査モジュール18の回転可能なシャフト24に沿った方向に配置される。より具体的には、
図1に示されるように、発光モジュール12は、受光モジュール14の上方に配置される。しかしながら、発光モジュール12及び受光モジュール14の配置は、必ずしもこの例に限定されない。例えば、発光モジュール12が、受光モジュール14の下方に配置されても良い。
【0015】
発光モジュール12、つまり光源は、走査モジュール18の走査ミラー16に向けてレーザー光を放射するように構成される。
図1、2に示されるように、発光モジュール12は、2組の発光素子20a、20bと投光レンズ22a、22bを含む。発光素子20a、20bのそれぞれは、例えば、パルスレーザーを放射するように構成された半導体レーザーダイオードである。発光素子20a、20bのそれぞれは、コントローラ21に電気的に接続され、発光モジュール12がコントローラ21から発光制御信号を受信したときにレーザー光を放射するように構成される。従って、発光素子20a、20bの発光タイミングは、コントローラ21から出力される発光制御信号を介して制御可能である。
【0016】
発光モジュール12は、さらに、実際の発光タイミングをコントローラ21に出力するように構成される。実際の発光タイミングは、発光モジュール12が実際に光ビームを放射するタイミングである。以下に説明するように、実際の発光タイミングは、コントローラ21によって距離を計算するときに生じる誤差を補償するために使用される。
【0017】
投光レンズ22a、22bのそれぞれは、発光素子から放射されたパルスレーザーを集束させて、垂直方向(
図1参照)に沿った方向に延びる垂直線(つまり、ライン状のビーム)を形成するように構成されたレンズである。すなわち、LIDAR装置10は、垂直方向に伸びるライン状レーザービームを用いて水平走査を行う1D線走査方式を採用している。
【0018】
この実施形態では、
図1に定義されるように、水平面が、垂直面に垂直な面として定義され、水平方向は水平面に沿う。そして、2組の発光素子20a、20bと投光レンズ22a、22bが水平方向に配置されている。つまり、水平方向は、レーザー射出方向に対して直交する方向である。
以下、2組の発光素子と投光レンズのうちの一方(
図2の左側の組20a、22a)から放射されるレーザービームは第1のレーザービームは呼ばれ、2組の発光素子と投光レンズのうちの他方(
図2の右側の組20b、22b)から放射されるレーザービームは第2のレーザービームと呼ばれる。そして、2つの発光素子20a、20bから放射され、投光レンズ22a、22bを通して集束される第1及び第2のレーザービームは、まとめて、光ビームバンドLBと呼ばれる。
【0019】
図2に示されるように、2つの発光素子20a、20bの光ビームバンドLBは、上から見たときに光の進行方向に垂直な方向の幅である光ビーム幅Wを有する。そして、光ビーム中心BCは、光ビームバンドLBの光ビーム幅Wの中心として定義される。より具体的には、光ビーム中心BCは、上から見たときに光の進行方向に垂直な方向における光ビーム幅Wの中心点に沿って延びる中心線である。
【0020】
図3に示されるように、走査モジュール18は、走査ミラー16、回転可能なシャフト24、駆動モータ26、及び角度センサ28を含む。回転可能なシャフト24は、中心軸CXを中心に回転するように構成されたシャフトである。この実施形態では、中心軸CXは、
図1に定義されるように垂直方向と平行な方向に沿って延びる。回転可能なシャフト24は、特定の直径を有する円柱形状を有する。回転可能なシャフト24の側面24aは、例えば接続部材を介してミラー16に接続されている。なお、
図1~
図3には、接続部材を図示していない。
【0021】
走査ミラー16は、直接、又は別の1つ以上のミラーを介して間接的に、レーザービームを走査ゾーンSZに向けて反射するように構成されたミラーである。さらに、この実施形態の走査ミラー16は、物体Xによって反射された戻りビームを受光モジュール14に向けて反射するように構成される。すなわち、走査ミラー16は、送信ミラー及び受信ミラーの両方として機能する。
【0022】
走査ミラー16は、この実施形態では板状の部材であり、反射面16aと、反射面16aとは反対側の裏面16bとを含む。走査ミラー16の裏面16bは、回転可能なシャフト24の側面に、例えば接続部材を介して接続される。従って、
図2に示されるように、反射面16aは、所定の距離(例えば、回転可能なシャフト24の半径+ミラーの厚さ+接続部材の厚さ)、回転可能なシャフト24の中心軸CXから離れており、その結果、走査ミラー16は、中心軸CXを中心としてではなく、その周りを回転する(つまり、スイングする)。
【0023】
この実施形態では、反射面16aは、正面から見たときに矩形(長方形)の形状を有する(例えば、
図5参照)。ただし、反射面16aの形状は矩形に限られず、例えば、垂直方向において、短辺と、短辺の上方に位置する長辺とを有する台形であっても良い。あるいは、反射面16aの形状は、長方形の角部を面取りして形成された形状であっても良い。反射面16aは、垂直方向に沿った方向に長くされている。
図5を参照すると、反射面16aの2つのエッジ部分30は、垂直方向に沿った方向に延びる反射面16aの長い側縁を含む部分として定義される。また、反射面16aの中央部分32は、2つのエッジ部分30の間の反射面16aの中心領域である部分として定義される。そして、ミラー中心MCは、中心軸CXに沿った方向、つまり、垂直方向から見たとき、
図2に示されるように、回転可能なシャフト24の中心軸CXに最も近い、反射面16aのポイントとして定義される。この実施形態では、ミラー中心MCは、中心軸CXに沿った方向から見たときの2つのエッジ部分30の間の中心点である。換言すれば、ミラー中心MCは、反射面16aの幅の中心点である。
【0024】
駆動モータ26は、回転可能なシャフト24を中心軸CXを中心に回転させるように構成された電気モータである。駆動モータ26はモータコントローラ50に電気的に接続されており、駆動モータ26の動作はモータコントローラ50から出力されるモータ駆動信号によって制御される。モータコントローラ50は、例えば、少なくとも1つのプロセッサ及び1つのメモリを含む電子制御ユニット(ECU)である。メモリには、ランダムアクセスメモリ、リードオンリーメモリ、フラッシュメモリ、又はこれらの組み合わせが含まれる。メモリは、プロセッサによって実行されるとき、プロセッサに駆動モータ26を制御させる命令を記憶している。
【0025】
モータコントローラ50は、交互に反対方向に動作するように駆動モータ26を制御するように構成される。その結果、回転可能なシャフト24は、走査ミラー16が、所定の走査角度範囲で第1の位置と第2の位置との間で揺動するよう、モータによって往復するように(つまり、双方向に)回転される。すなわち、走査ミラー16は、第1の位置と第2の位置との間を周期的に揺動する。
【0026】
図2に示されるように、走査ミラー16の第1の位置は、走査ゾーンSZの一端Aに対応する位置であり、走査ミラー16の第2の位置は、走査ゾーンSZの他端Bに対応する位置である。
図4に示されるように、反射面16aへの光ビームの入射角は、ミラー16が第2の位置にあるときよりも、ミラーが第1の位置にあるときの方が大きい。この実施形態では、走査角度範囲は120度に設定され(すなわち、-60°≦走査角度θ≦+60°)、走査ミラー16が第1の位置にあるとき走査角度θは-60°であり、走査ミラー16が第2の位置にあるとき、走査角度θは+60°である(
図4参照)。
【0027】
図2を参照すると、動作範囲は、中心軸CXに沿った方向から見たときのシャフト24の中心軸CXを含む光ビーム中心BCの片側として定義される(
図2のハッチング領域)。そして、発光モジュール12と走査ミラー16は、回転可能なシャフト24の中心軸CXに沿った方向から見た場合、ミラーが第1の位置にあるとき、ミラー中心MCが光ビーム中心BCと位置合わせされる(
図2及び
図4(a)参照)ような位置関係を有するように配置されている。一方、ミラー16が第1の位置(含まない)と第2の位置(含む)との間で揺動しているとき、ミラー中心MCは動作範囲内でシフトする(
図4の(b)及び(c)を参照)。換言すれば、走査ミラー16のミラー中心MCは、走査ミラー16が第1の位置に到達したときを除いて、動作範囲内を移動する。従って、ミラー中心MCと光ビーム中心BCは、ミラー16が第1の位置にある場合を除いて、互いにずれている。
【0028】
図4(a)に示されるように、走査ミラー16が第1の位置にあるとき、左の発光素子から放射された第1のレーザービームは反射面16aの左エッジ部分30で反射され、右の発光素子から放射された第2のレーザービームは反射面16aの右エッジ部分30で反射される(ただし、第1のレーザービームの一部及び第2のレーザービームの一部は、中央部分32でも反射され得る)。一方、
図4(c)に示されるように、走査ミラー16が第2の位置にあるとき、両方の発光素子から放射された第1及び第2のレーザービームは、主として反射面16aの中央部分32で反射される。このため、ミラー16が第2の位置にあるとき、ミラー16が第1の位置にあるときに比べて、一対のエッジ部分30で反射される光ビームの量が少なくなる。
【0029】
走査モジュール18は、走査ミラー16の回転角を検出する角度センサ28をさらに含む。角度センサ28は、光センサ、機械センサ、超音波センサなどであり得る。角度センサ28は、第1の位置と第2の位置との間での走査ミラー16の各回転サイクルの間に、複数の所定の角度間隔で回転角度を検出するように構成される。この実施形態では、角度センサ28は、ミラー16の回転角度の各0.1度を検出するように構成される(すなわち、最大角度分解能は0.1度である)。しかしながら、角度センサ28の分解能は、必ずしも0.1度に限定されるわけではなく、例えば、0.05度又は0.2度であっても良い。
【0030】
角度センサ28は、コントローラ21に接続され、角度間隔(すなわち、0.1度間隔)でミラーの回転角度を示す検出信号を出力するように構成される。本開示の発明者は、走査ミラー16が第1の位置と第2の位置との間で揺動するように移動されるので、揺動中に走査ミラー16に加速度が加えられることを見出した。従って、走査ミラー16の回転速度は、走査ミラー16の1回転サイクル中に変化する(一定値を維持しない)。その結果、走査ミラー16の回転角度は、
図6に示されるように、同じ時間間隔で角度センサ28によってカウントされない。すなわち、角度センサ28は、同じ角度間隔であるが異なる時間間隔で検出信号をコントローラ21に出力する。
【0031】
受光モジュール14は、受光器34及びコントローラ21を含む。受光器34は、受光レンズ35、複数の感光性デバイスを有する集積回路36を含み、コントローラ21は、受光器34の集積回路36内に設けられる。換言すれば、この実施形態では、受光器34とコントローラ21は、単一のモジュールとして一体的に形成されている。この実施形態では、受光器34の複数の感光性デバイスは、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)38であり、複数のSPAD38を列及び行の両方に配置することによって2DSPADアレイ34aとして形成される。SPADアレイ34aはデジタル回路を構成するので、従って、アナログタイプの回路を形成する他の感光性デバイスと比較して高い角度分解能を有する。それゆえ、受光器34は、0.1度間隔などの小さな回転角度間隔で戻りビームを検出することができる。受光器34(SPADアレイ34a)は、戻りビームを受信すると、物体Xによって反射された戻りビームに従って、デジタル信号である戻り信号をコントローラ21に出力する。受光器34はまた、列内のSPAD38が戻りビームを受信できるように構成されたデコーダ37を含む。なお、受光器34は、複数のSPAD以外の受光素子を含んでも良い。例えば、通常のアバランシェフォトダイオード、又は他のフォトダイオードが受光素子として使用されても良い。
【0032】
この実施形態におけるコントローラ21は、発光モジュール12を制御することによってレーザービームの放射を制御するように構成される。コントローラ21はさらに、後述されるように、発光モジュール12がレーザービームを放射した発光タイミングと、受光モジュール14が戻りビームを受信した受光タイミングとの差に基づいて、物体Xまでの距離を計算するように構成される。コントローラ21は、デジタル回路である集積回路36上に受光器34(SPADアレイ34a)と共に実装されるので、コントローラ21は、プログラム可能なプロセッサなしで上記の機能を実行することができる。
【0033】
図5は、コントローラ21の機能ブロックを示している。
図5は、これらの機能を有するコントローラ21を示すが、1つ又はいくつかの機能は、1つ以上の物理的に分離された回路によって実行されてもよい。コントローラ21は、機能ブロックとして、発光制御部39及び計算部40を含む。
【0034】
発光制御部39は、発光制御信号を発光モジュール12に出力することによって、発光モジュール12を制御するように構成される。この実施形態では、発光制御部39は、角度センサ28から検出信号を受信すると発光制御信号を出力するように構成される(
図6参照)。このように、発光モジュール12は、角度センサ28が走査ミラー16の回転角度を検出するたびにレーザービームを放射する。換言すれば、発光モジュール12は、角度間隔(すなわち、0.1度間隔)と同じ間隔でレーザービームを放射する。さらに、発光制御部39は、信号出力タイミングを計算部40に出力するように構成される。信号出力タイミングは、発光制御部39が制御信号を発光モジュール12に出力するタイミングである。
【0035】
計算部40は、受光モジュール14からの戻り信号及び発光制御部39からの信号出力タイミングを使用して、物体Xまでの距離を計算するように構成される。より具体的には、計算部40は、飛行時間原理を用いて、信号出力タイミングと受光タイミング(すなわち、戻り信号)との時間差から物体Xまでの距離を計算する。さらに、計算部40は、発光モジュール12から上記の実際の発光タイミングを受信するように構成される(
図5参照)。そして、計算部40は、実際の発光タイミングを使用して計算された距離を補正するように構成される。すなわち、コントローラ21が信号出力タイミングを出力してから発光モジュール12が実際にレーザービームを放射するまでにタイムラグがある。従って、コントローラ21は、実際の発光タイミングを使用して、信号出力タイミングから計算された距離を補正する。あるいは、計算部40は、実際の発光タイミングと戻り信号の受光タイミングとの時間差を使用して、物体Xまでの距離を計算しても良い。
【0036】
図7は、物体Xまでの距離を計算するためにLIDAR装置10によって実行されるフローチャートを示す。角度センサ28がステップS10で所定角度ごとに走査ミラー16の回転角度を検出すると、角度センサ28は、ステップS20で、検出された回転角度を示す検出信号をコントローラ21(発光制御部39)に出力する。上記のように、走査ミラー16の回転速度は第1の位置と第2の位置との間で変化するが、角度センサ28は所定の回転角度間隔(たとえば、0.1度間隔)で回転角度を検出する。コントローラ21が角度センサ28から検出信号を受信すると、コントローラ21は、ステップS30で発光制御信号を発光モジュール12に出力する。
【0037】
発光モジュール12が発光制御信号を受信すると、発光モジュール12は、ステップS40で走査ミラー16に向けてレーザービームを放射する。発光モジュール12はさらに、ステップS50で、発光モジュール12が実際にレーザービームを放射するタイミングとして、実際の発光タイミングをコントローラ21(計算部40)に出力する。
【0038】
放射されたレーザービームは、走査ミラー16の反射面16aで反射され、走査ゾーンSZに進む。そして、レーザービームが物体Xによって反射されると、戻り信号がLIDAR装置10に戻ってきて、走査ミラー16の反射面16aにより受光モジュール14に向けて再び反射される。戻りビームが受光モジュール14に到達すると、受光モジュール14(SPADアレイ)がステップS60で戻りビームを検出し、その後、受光モジュール14は、ステップS70で戻りビームの受信に応じて戻り信号をコントローラ21(計算部40)に出力する。
【0039】
コントローラ21(計算部40)は、ステップS80で信号出力タイミングと戻り信号を用いて、物体Xまでの距離を計算する。次に、コントローラ21(計算部40)は、ステップS90で実際の発光タイミングを使用して、計算された距離を修正する。
【0040】
上記のように、第1の実施形態に係るLIDAR装置10は、回転可能なシャフト24の中心軸CXに沿った方向から見たとき、ミラー16が第1の位置にあるときにミラー中心MCが光ビーム中心BCと位置合わせされる位置関係を有するように配置される、発光モジュール12及び走査ミラー16を含む。第1の位置は、走査ゾーンSZの一端Aに対応する位置として定義され、反射面16aへの光ビームの入射角は、走査ミラー16が第1の位置にあるときに走査角度範囲において最大値を有する。他方、ミラー16が第1の位置(含まない)と第2の位置(含む)との間で揺動しているとき、ミラー中心MCは動作範囲内をシフトする。第2の位置は、走査ゾーンSZの他端Bに対応する位置として定義され、反射面16aへの光ビームの入射角は、走査ミラー16が第2の位置にあるときに走査角度範囲において最小値を有する。
【0041】
このように、走査ミラー16が第1の位置にあるとき、光ビーム中心BCはミラー中心MCと位置合わせされるので、第1の光ビーム及び第2の光ビームは、主としてミラー中心が間に置かれる反射面16aのエッジ部分30で反射される。より具体的には、
図4(a)に示されるように、第1の光ビーム及び第2の光ビームは、走査ミラー16が第1の位置にあるとき、それぞれ、反射面16aの左エッジ部分及び右エッジ部分で主として反射される。従って、反射面16a(走査ミラー16)の幅は、ミラー16が第1の位置にあるときに反射面16aが両方のエッジ部分30で第1及び第2の光ビームを受けることができる限り、最小化することができる。その結果、最小幅のミラー16により、LIDAR装置10のサイズを縮小することができる。
【0042】
反対に、発光モジュール12及び走査ミラー16が、
図8に示されるように、ミラー中心MCが中心軸CXと位置合わせされるように配置される場合、少なくとも反射面16aの左側は、走査ミラー16が第1の位置にあるときに第1のレーザービームを捕捉するように延長される必要がある。その結果、LIDAR装置10のサイズは、延長された幅を有するミラー16のために増加する。
【0043】
この実施形態では、角度センサ28は、走査ミラー16の回転角度を検出するように配置され、走査ミラー16の第1の位置と第2の位置との間の各回転サイクル中に、複数の所定の角度間隔(この実施形態では0.1度間隔)で検出信号を出力する。そして、コントローラ21は、
図6に示されるように、角度センサ28から検出信号を受信すると、制御信号を発光モジュール12に出力する。その結果、発光モジュール12は、複数の所定の角度間隔と同じ間隔でレーザービームを放射することができる。
【0044】
ここで、
図9は、発光モジュール12が、複数の所定の「時間」間隔(例えば、各27.8マイクロ秒)でレーザービームを放射するように制御される比較例を示す。走査ミラー16は、第1の位置と第2の位置との間で揺動するため、ミラー16に加えられる加速度により、回転速度が不規則に変化する。従って、発光モジュール12は、所定の「時間」間隔でレーザービームを放射することができるが、発光モジュール12は、第1の位置と第2の位置との間の複数の所定の「回転角度」間隔でレーザービームを放射することはできない。その結果、レーザービームの量は、回転角度間隔のそれぞれに対応する走査ゾーンSZの各領域に対して変動する。
【0045】
反対に、発光モジュール12は、時間間隔ではなく、本実施形態により、角度センサ28によって検出された走査ミラー16の回転角度に基づいてレーザービームを放射するように制御されるので、LIDAR装置10は、回転角度間隔ごとに均等にレーザービームを放射することができる。従って、LIDAR装置10は、走査ゾーンSZを等しく走査することができる。
【0046】
受光モジュール14は、コントローラ21が実装される集積回路36を含む。すなわち、本実施形態では、コントローラ21は、受光器34(SPADアレイ34a)と一体的に形成されており、コントローラ21が受光器34と物理的に分離された状況と比較して、コントローラ21と受光器34との間の距離を短くすることができる。その結果、受光器34からコントローラ21に戻り信号を送信するために必要な時間を短縮することができ、従って、計算された距離の精度を高めることができる。
【0047】
受光モジュール14は、感光性デバイスとして複数のSPAD38を含む。SPAD38は、高分解能の時間間隔で戻りビームを受信する感度を有する。従って、受光モジュール14は、小さな回転角度間隔(すなわち、この実施形態では0.1度)で戻りビームを検出することができ、それゆえ、LIDAR装置10は、走査ゾーンSZを細かく走査することができる。さらに、SPADアレイは、コントローラ21と共にデジタル回路を形成する。従って、物体Xまでの距離が、プロセッサなしで計算することができ、その結果、LIDAR装置10の製造コストが削減される。
【0048】
この実施形態では、発光モジュール12は、発光モジュール12が実際に光ビームを放射する実際の発光タイミングを出力するように構成される。そして、コントローラ21は、実際の発光タイミングを使用して、計算された距離を修正する。従って、距離は、コントローラ21が制御信号を発光モジュール12に出力する信号出力タイミングを用いて計算され、それゆえ、計算された距離には、信号出力タイミングと実際の発光タイミングとのタイムラグから生じる誤差が必然的に含まれるが、その誤差は、実際の発光タイミングを用いて、修正され、補償されることができる。その結果、LIDAR装置10は、物体Xまでの距離を高精度に取得することができる。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、本開示の第2の実施形態を、
図10及び
図11を参照して説明する。以下の説明では、第1の実施形態とは異なる部分のみを説明する。
【0050】
第1の実施形態では、コントローラ21は、角度センサ28から検出信号を受信すると、発光制御信号を出力するように構成される。第2の実施形態では、コントローラ21は、角度センサ28から検出信号を受信すると、次の1つの検出信号を受信する前に、複数の制御信号を発光モジュール12に出力するように構成される。
【0051】
より具体的には、
図10に示されるように、コントローラ21は、各回転角度間隔内(すなわち、コントローラ21が検出信号を受信してから次の検出信号を受信するまでの間)に所定数の制御信号を出力する。この実施形態では、各回転角度間隔内に出力される制御信号の数は10である。また、コントローラ21は、所定の「時間」間隔(回転角度間隔ではない)で制御信号を10回連続して出力し、10回目の制御信号が出力されると制御信号の出力を停止する。
【0052】
コントローラ21はさらに、各回転角度間隔での複数の制御信号に対応する複数の戻り信号を使用して、物体Xまでの距離を計算するように構成される。例えば、コントローラ21は、各回転角度間隔での10個の制御信号に対応する10個の距離を計算する。そして、コントローラ21は、10個の距離を積算し、10個の計算された距離から平均距離を取得する。
【0053】
図11は、第2の実施形態によるLIDAR装置10によって実行されるプロセスのフローチャートを示す。実際の発光タイミングを使用して、計算された距離を補正するステップ(すなわち、
図7のステップS50及びS90)は、第2の実施形態では省略されていることに留意されたい。
【0054】
角度センサ28が、ステップS100で走査ミラー16の回転角を検出すると、角度センサ28は、ステップS110で、検出された回転角を示す検出信号をコントローラ21に出力する。コントローラ21が角度センサ28から検出信号を受信すると、コントローラ21は、ステップS120で発光制御信号を発光モジュール12に出力する。
【0055】
発光モジュール12が発光制御信号を受信すると、発光モジュール12は、ステップS130で走査ミラー16に向けてレーザービームを放射する。放射されたレーザービームは、走査ミラー16の反射面で反射され、走査ゾーンSZに進む。そして、レーザービームが物体Xによって反射された場合、戻りビームがLDIAR装置に戻り、走査ミラー16の反射面16aによって受光モジュール14に向けて再び反射される。戻りビームが受光モジュール14に到達すると、受光モジュール14は、ステップS140で戻りビームを検出し、次に、受光モジュール14は、戻りビームの受信に応答して、ステップS150でコントローラ21に戻り信号を出力する。
【0056】
コントローラ21は、ステップS160で信号出力タイミングと戻り信号を用いて、物体Xまでの距離を計算する。次に、コントローラ21は、ステップS170において、検出信号を受信した後に発せられる発光制御信号の数が10となったかどうかを判定する。その数が10でない場合(ステップS170:No)、プロセスはステップS180に進み、コントローラ21は、発光制御信号を出力した後、所定の時間間隔(例えば、3マイクロ秒)が経過したかどうかを判定する。時間間隔が経過していない場合(ステップS180:No)、コントローラ21はステップS180を繰り返す。時間間隔が経過した場合(ステップS180:Yes)、プロセスはステップS120に進み、コントローラ21は再び発光制御信号を出力する。次いで、プロセスはステップS120からS160を繰り返し、コントローラ21は、発せられた発光制御信号の数が10となったかどうかを判定する。ステップS170で「Yes」の場合、コントローラ21は、ステップS190で発光制御信号の出力を停止し、次に、ステップS200で計算された10個の距離から平均距離を計算する。そして、プロセスはステップS100に戻る。
【0057】
上記のように、第2の実施形態によるLIDAR装置10は、角度センサ28から検出信号を受信すると、次の検出信号を受信するまでに、複数の発光制御信号を出力する。そして、コントローラ21は、複数の発光制御信号に対応する複数の戻り信号に基づいて、物体Xまでの複数の距離を計算し、計算された複数の距離から平均距離を取得する。従って、LIDAR装置10は、物体Xまでの距離を高精度に取得することができる。
【0058】
(第3の実施形態)
次に、本開示の第3の実施形態を、
図12及び
図13を参照して説明する。以下の説明では、第1及び第2の実施形態とは異なる部分のみが説明される。
【0059】
第2の実施形態では、コントローラ21は、検出信号を受信した後、次の検出信号を受信するまでに、所定数(例えば、10)の発光制御信号を出力するように構成される。第3の実施形態では、コントローラ21は、検出信号を受信した後、次の検出信号を受信するまで、所定の時間間隔で発光制御信号を連続的に出力するように構成される(
図12参照)。
【0060】
第2の実施形態と同様に、コントローラ21は、複数の発光制御信号に対応する複数の戻り信号に基づいて、回転角度間隔ごとに物体Xまでの複数の距離を計算し、次いで、計算された複数の距離から平均距離を取得する。
【0061】
図13は、第3の実施形態によるLIDAR装置10によって実行されるプロセスのフローチャートを示す。第2の実施形態と同様に、実際の発光タイミングを使用して、計算された距離を補正するステップ(すなわち、
図7のステップS50及びS90)は、第3の実施形態では省略されていることに留意されたい。
【0062】
角度センサ28がステップS300で走査ミラー16の回転角を検出すると、角度センサ28は、ステップS310で、検出された回転角を示す検出信号をコントローラ21に出力する。コントローラ21が角度センサ28から検出信号を受信すると、コントローラ21は、ステップS320で、発光制御信号を発光モジュール12に出力する。発光モジュール12が発光制御信号を受信すると、発光モジュール12は、ステップS330で走査ミラー16に向けてレーザービームを放射する。
【0063】
戻りビームが受光モジュール14に到達すると、受光モジュール14は、ステップS340で戻りビームを検出し、次に、受光モジュール14は、ステップS350で戻りビームの受信に応答して、戻り信号をコントローラ21に出力する。
【0064】
コントローラ21は、ステップS360で信号出力タイミングと戻り信号を用いて、物体Xまでの距離を計算する。次に、コントローラ21は、S370で以前の検出信号を受信した後、コントローラ21が角度センサ28から次の検出信号を受信したかどうかを判定する。ステップS370がNoの場合、プロセスはステップS380に進み、コントローラ21は、発光制御信号を出力した後、所定の時間間隔(例えば、3マイクロ秒)が経過したかどうかを判定する。時間間隔が経過していない場合(ステップS380:No)、コントローラ21はステップS380を繰り返す。時間間隔が経過した場合(ステップS380:Yes)、プロセスはステップS320に戻り、コントローラ21は再び発光制御信号を出力する。そして、プロセスは、ステップS320からS370を繰り返し、コントローラ21は、次の検出信号を受信するまで、所定の時間間隔で複数の発光制御信号を出力する。
【0065】
コントローラ21が、コントローラ21は角度センサ28から次の検出信号を受信したことを判定した場合(ステップS370:Yes)、コントローラ21は、ステップS380で、計算された複数の距離から平均距離を計算する。次に、プロセスはステップS320に戻り、コントローラ21は、ステップS320からS370を繰り返すことにより、所定の時間間隔で複数の発光制御信号を再び出力する。
【0066】
上記のように、第3の実施形態によるLIDAR装置10は、各回転角度間隔に対して所定の時間間隔で複数の発光制御信号を連続的に出力する。そして、コントローラ21は、複数の発光制御信号に対応する複数の戻り信号に基づいて、回転角度間隔ごとに物体Xまでの複数の距離を計算し、計算された複数の距離から平均距離を取得する。従って、第2の実施形態と同様に、LIDAR装置10は、物体Xまでの距離を高精度に取得することができる。
【0067】
(第4の実施形態)
次に、本開示の第4の実施形態を、
図14及び
図15を参照して説明する。以下の説明では、第1から第3の実施形態とは異なる部分のみを説明する。
【0068】
第1の実施形態では、コントローラ21は、角度センサ28から検出信号を受信すると、発光制御信号を自動的に出力するように構成される。第4の実施形態では、コントローラ21は、検出信号(回転角度)が複数のターゲット回転角度のうちのいずれか1つと一致する場合に、発光制御信号を出力するように構成される(
図14参照)。この実施形態では、ターゲット回転角度は、例えば、0.0、0.2、0.4、0.6、…、120.00度に設定される。
【0069】
図15は、第4の実施形態によるLIDAR装置10によって実行されるプロセスのフローチャートを示す。実際の発光タイミングを使用して、計算された距離を修正するステップ(すなわち、
図7のステップS50及びS90)は、第4の実施形態では省略されていることに留意されたい。
【0070】
角度センサ28がステップS400で走査ミラー16の回転角を検出すると、角度センサ28は、ステップS410で、検出された回転角を示す検出信号をコントローラ21に出力する。コントローラ21が角度センサ28から検出信号を受信すると、コントローラ21は、ステップS420で、検出信号がターゲット回転角度のいずれか1つと一致するかどうかを判定する。ステップS420で「No」の場合、プロセスはステップS400に戻り、ステップS410からS420を繰り返す。ステップS420で「Yes」の場合、コントローラ21は、ステップS430で発光モジュール12に発光制御信号を出力する。
【0071】
発光モジュール12が発光制御信号を受信すると、発光モジュール12は、ステップS440で走査ミラー16に向けてレーザービームを放射する。従って、LIDAR装置10は、走査ミラー16が所望の回転角度にあるときにレーザービームを放射することができる。戻りビームが受光モジュール14に到達すると、受光モジュール14は、ステップS450で戻りビームを検出し、次いで、受光モジュール14は、ステップS460で、戻りビームの受信に応答して、戻り信号をコントローラ21に出力する。
【0072】
コントローラ21は、ステップS470で、信号出力タイミングと戻り信号を用いて、物体Xまでの距離を計算する。次に、プロセスはステップS400に戻り、ステップS410からS470を繰り返す。
【0073】
上述のように、第4の実施形態によるLIDAR装置10は、回転角度が複数のターゲット回転角度のいずれか1つと一致した場合に、発光制御信号を出力する。従って、LIDARは、走査ゾーンSZの所望の領域に向けてレーザービームを正確に放射することができる。
【0074】
上述の第4の実施形態では、ターゲット回転角度は、規則的な態様(例えば、0.0、0.2、0.4など)で設定される。しかしながら、ターゲット回転角度は、例えば、少なくとも1つのメモリに格納された所定のターゲット角度テーブルを使用して、不規則な態様で設定されてもよい。そのような場合、少なくとも1つのプロセッサを使用して、検出信号(回転角度)がターゲット回転角度と一致するかどうかを判定してもよい。
【0075】
(第5の実施形態)
次に、本開示の第5の実施形態を、
図16から
図18を参照して説明する。以下の説明では、第1から第4の実施形態とは異なる部分のみを説明する。上述した実施形態では、LIDAR装置10は、回転角度間隔ごとに一定の態様でレーザー光を放射する(例えば、第1の実施形態では、回転角度間隔ごとに1つのレーザービームが放射され、第2及び第3実施形態では、回転角度間隔ごとに複数のレーザービームが放射される)。第5の実施形態では、LIDAR装置10は、走査ゾーンSZ内の特定のターゲット領域と残りの領域とに対して異なる態様でレーザービームを放射するように構成される。
【0076】
この実施形態では、ターゲット領域に対応する走査ミラー16の特定回転角度範囲が、回転角度範囲において定義される(例えば、-20°≦特定回転角度θs≦+20°)。
図17に示されるように、発光モジュール12は、特定回転角度範囲内で他の回転角度範囲(すなわち、-60°≦θ<-20°及び+20°<θ≦+60°)とは異なる態様でレーザービームを放射するように構成される。例えば、発光モジュール12は、特定回転角度範囲内の各回転角度間隔に対して所定の数のレーザービーム(例えば、10)を放射するように制御される。以下、特定回転角度範囲以外の走査ミラー16の回転角度範囲を通常範囲と呼び、その通常範囲では、発光モジュール12が、第1の実施形態と同様に、角度センサ28から検出信号を受信するとレーザービームを放射するように制御される。
【0077】
この実施形態では、コントローラ21は、
図16に示されるように、受光モジュール14とは別個に設けられている。すなわち、受光モジュール14は、第1の実施形態で説明したように、コントローラ21を一体的に含まない。コントローラ21は、この実施形態では、少なくとも1つの回路の代わりに、又は組み合わせて、少なくとも1つのプロセッサ21a及び少なくとも1つのメモリ21bを含む電子制御ユニット(ECU)である。メモリ21bは、ランダムアクセスメモリ、リードオンリーメモリ、フラッシュメモリ、又はこれらの組み合わせを含む。メモリ21bは、プロセッサ21aによって実行されると、プロセッサ21aに、後で説明するような様々なタスクを実行させる命令をそこに格納している。メモリ21bは、特定の回転角度範囲も格納している。
【0078】
図18は、この実施形態によるLIDAR装置10によって実行されるフローチャートを示す。実際の発光タイミングを使用して計算された距離を補正するステップ(すなわち、
図7のステップS50及びS90)は第5の実施形態において省略されていることに留意されたい。
【0079】
ステップS500で、角度センサ28が走査ミラー16の回転角度を検出すると、角度センサ28は、ステップS510で検出信号を出力する。コントローラ21が角度センサ28から検出信号を受信すると、コントローラ21(プロセッサ21a)は、ステップS520で、走査ミラー16の回転角度が特定回転角度範囲内にあるかどうかを判定する。ステップS520でNoの場合(回転角度が通常範囲内にある)、プロセスはステップS530に進み、コントローラ21は発光制御信号を出力する。従って、コントローラ21は、走査ミラー16の回転角度が通常範囲内にあるとき、検出信号を受信すると発光制御信号を出力する。
【0080】
発光モジュール12が発光制御信号を受信すると、発光モジュール12は、ステップS540で走査ミラー16に向けてレーザービームを放射する。次に、戻りビームが受光モジュール14に到達すると、受光モジュール14は、ステップS550で戻りビームを検出し、次いで、受光モジュール14は、戻りビームの受信に応答して、ステップS560でコントローラ21に戻り信号を出力する。
【0081】
コントローラ21は、ステップS570で、信号出力タイミングと戻り信号を用いて、物体Xまでの距離を計算する。その後、プロセスはステップS500に戻る。このように、回転角度が通常範囲内にあるとき、回転角度間隔ごとに物体Xまでの距離が計算される。
【0082】
コントローラ21が、ステップS520で回転角度は特定回転角度範囲内にあると判定した場合(ステップS520:Yes)、プロセスはステップS580に進み、コントローラ21は、ステップS580で発光制御信号を出力する。発光モジュール12が発光制御信号を受信すると、発光モジュール12は、ステップS590で走査ミラー16に向けてレーザービームを放射する。そして、戻りビームが受光モジュール14に到達すると、受光モジュール14は、ステップS600で戻りビームを検出し、次いで、受光モジュール14は、戻りビームの受信に応答して、ステップS610でコントローラ21に戻り信号を出力する。
【0083】
コントローラ21が戻り信号を受信した場合、コントローラ21は、ステップS620で戻り信号を使用して、物体Xまでの距離を計算する。次に、コントローラ21は、ステップS630において、検出信号を受信した後の発光制御信号の出力回数が10であるかどうかを判定する。ステップS630で「No」の場合、プロセスはステップS640に進み、コントローラ21は、発光制御信号を出力した後、所定の時間間隔(例えば、3マイクロ秒)が経過したかどうかを判断する。時間間隔が経過していない場合(ステップS640:No)、コントローラ21はステップS640を繰り返す。時間間隔が経過した場合(ステップS640:Yes)、プロセスはステップS580に進み、コントローラ21は再び発光制御信号を出力する。その後、プロセスはステップS590からS620を繰り返し、コントローラ21は、ステップS630で、放出された発光制御信号の数が10であるかどうかを判定する。ステップS630で「Yes」の場合、コントローラ21は、ステップS650で発光制御信号の出力を停止し、次いで、ステップS660で、計算された10個の距離から平均距離を計算する。その後、プロセスはステップS500に戻る。
【0084】
従って、回転角度が特定回転角度範囲内にあるとき、コントローラ21は、回転角度間隔ごとに10個の発光制御信号を出力する。コントローラ21は、10個の発光制御信号に対応する10個の戻り信号に基づいて10個の距離を計算する。そして、コントローラ21は、特定回転角度範囲内の回転角度間隔ごとに計算された10個の距離から平均距離を求める。従って、第5の実施形態によるLIDAR装置10は、走査ゾーンSZの特定領域を細かく走査し、そのような特定領域に対して高精度で物体Xまでの距離を取得することができる。
【0085】
(実施形態の変更)
いくつかの変更を上述の実施形態に適用することができる。
【0086】
例えば、上述の実施形態では、発光モジュールは、2つの発光素子から2つのレーザービームを放射するように構成される。しかしながら、発光モジュールは、単一の発光素子から1つのレーザービーム、又は3つ以上の発光素子から3つ以上のレーザービームを放射してもよい。
【0087】
上述の実施形態では、発光モジュールは、走査ミラーの全サイクルの間(すなわち、第1の位置から第2の位置への往路、及び第2の位置から第1の位置への復路)、レーザー光を放射するように構成される。しかしながら、発光モジュールは、走査ミラーの往路の間だけ、レーザー光を放射するように構成されてもよい。例えば、発光モジュールは、ミラーが第1の位置から第2の位置に揺動しているときにのみレーザー光を放射するように制御されてもよい。この場合、ミラーが第2の位置に移動した直後に、ミラーは素早く第1の位置に戻される。
【0088】
上記の実施形態では、受光器は、複数のSPADを含む。しかしながら、他の感光性素子が使用されてもよい。ただし、SPDAが受光器として使用される場合、SPDAはデジタル信号を出力できるため、上述したように物体までの距離を計算するためにプロセッサを使用する必要はない。
【0089】
この出願では、「モジュール」及び「システム」という用語には、ハウジング、固定具、配線などのハードウェアコンポーネントが含まれる場合がある。さらに、この出願では、「プロセッサ」という用語は、コード実行するプロセッシングコアハードウェア(共有、専用、又はグループ)と、プロセッシングコアハードウェアによって実行されるコードを格納するメモリハードウェア(共有、専用、又はグループ)を含むことができる回路又は回路機構を指すか、その一部であるか、又は含むことができる。従って、「プロセッサ」という用語は、「回路」という用語に置き換えることができる。
【0090】
本明細書で説明する方法のステップ、プロセス、及び処理は、実行の順序として具体的に特定されない限り、説明又は図示された特定の順序での実行を必ず必要とするものとして解釈されるべきではない。また、追加又は代替のステップを使用できることも理解されたい。
【0091】
「第1」、「第2」、「特定」などの用語は、様々な要素を説明するために使用されるが、これらの用語は、ある要素を別の要素から区別するためにのみ使用され得る。本明細書で使用される場合、「第1」、「第2」などの用語、及び他の数値的な用語は、文脈で明確に示されていない限り、順序又は順番を意味するものではない。従って、第1の要素、コンポーネント、領域、層、又はセクションは、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、コンポーネント、領域、層、又はセクションと呼ぶことができる。
【0092】
「前」、「後」、「左」、「右」などのような空間的に相対的な用語は、説明を容易にするために、ある要素又は機能と、図に示されるような別の要素又は機能との関係を説明するために使用される場合がある。空間的に相対的な用語は、図に示される向きに加えて、使用中又は動作中のデバイスの異なる向きを包含することが意図され得る。例えば、図のセンサシステムが回転される場合、「前/後」と記述されている要素は、車両に対して「左/右」に向けられるかもしれない。従って、「前」という用語の例は、実際には任意の方向を包含することができる。デバイスは他の向きに向けられ(90°又は他の方向に回転され)てもよく、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈され得る。