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  • 特許-配線基板及び配線基板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20240409BHJP
   C23C 18/36 20060101ALI20240409BHJP
   C23C 18/34 20060101ALI20240409BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20240409BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20240409BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20240409BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20240409BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H05K3/34 501F
C23C18/36
C23C18/34
H01L21/288 E
H01L21/88 R
H01L21/88 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022547523
(86)(22)【出願日】2021-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2021032088
(87)【国際公開番号】W WO2022054657
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2020150470
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 順一
(72)【発明者】
【氏名】水白 雅章
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-306816(JP,A)
【文献】特開2011-211057(JP,A)
【文献】特開2004-281426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
C23C 18/36
C23C 18/34
H01L 21/288
H01L 21/3205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の少なくとも一方の主面にCuまたはAgを主成分とする電極が配置された配線基板であって、
前記電極は前記基板から突出しており、
前記電極の表面は、結晶質Niを主成分とする第1のNi膜に覆われており、
前記第1のNi膜の表面は、非晶質Niを主成分とする第2のNi膜に覆われており、
前記第1のNi膜は、前記電極の側面が前記基板と接する第1の隅部を覆っている、ことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記第1のNi膜が、Ni-B、Ni-N又は純Niを主成分とし、
前記第2のNi膜が、Ni-Pを主成分とする、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
基板の少なくとも一方の主面にCuまたはAgを主成分とする電極が配置された配線基板であって、
前記電極は前記基板から突出しており、
前記電極の表面は、第1のNi膜に覆われており、
前記第1のNi膜の表面は、第2のNi膜に覆われており、
前記第1のNi膜が、Ni-B、Ni-N又は純Niを主成分とし、
前記第2のNi膜が、Ni-Pを主成分とし、
前記第1のNi膜は、前記電極の側面が前記基板と接する第1の隅部を覆っている、ことを特徴とする配線基板。
【請求項4】
前記第2のNi膜は、前記第1のNi膜の側面が前記基板と接する第2の隅部を覆っている、請求項1~3のいずれかに記載の配線基板。
【請求項5】
前記第2のNi膜の膜厚が、前記第1のNi膜の膜厚よりも厚い、請求項1~4のいずれかに記載の配線基板。
【請求項6】
前記第1のNi膜の膜厚と前記第2のNi膜の膜厚の合計が、3μm以上、10μm以下である請求項1~5のいずれかに記載の配線基板。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法であって、
前記第1のNi膜を形成する方法が、N系還元剤又はB系還元剤を還元剤とする無電解ニッケルめっき処理であり、
前記第2のNi膜を形成する方法が、P系還元剤を還元剤とする無電解ニッケルめっき処理である、ことを特徴とする配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種配線基板の銅配線や銅電極に対する表面処理として、無電解Niめっきが用いられている。一般的な無電解Niめっき皮膜は、還元剤成分に由来するリン(P)を数%程度含有する非晶質の皮膜である。
【0003】
例えば、特許文献1には、基板上に設けられた銅配線と、銅配線の上面のみに設けられた結晶性Ni皮膜からなるキャップ膜と、キャップ膜の上面と銅配線及びキャップ膜の側面とを覆うように設けられた非晶質Ni皮膜からなる第2のバリア膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-85998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電極構造を有する基板をはんだ付けのためにリフロー等で加熱すると、実装部品の脱落や導通不良等の不具合が生じることがあった。
これは、加熱によって非晶質Ni皮膜の結晶化が進行してNi皮膜に収縮する力が生じることによるものと考えられる。
【0006】
特許文献1では、基板の表面に設けられた銅配線の側面に、直接、非晶質Ni皮膜が設けられている。そのため、加熱によって非晶質Ni皮膜の結晶化が進行して圧縮応力が生じた場合、銅配線と基板と非晶質Ni皮膜とが接する点に応力が集中して接合強度の低下や界面剥離が生じ、実装部品の脱落や導通不良といった不具合が発生すると考えられる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、リフロー等の加熱によってNi膜の剥離が生じにくい配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の配線基板の第1実施形態は、基板の少なくとも一方の主面にCuまたはAgを主成分とする電極が配置された配線基板であって、上記電極は上記基板から突出しており、上記電極の表面は、結晶質Niを主成分とする第1のNi膜に覆われており、上記第1のNi膜の表面は、非晶質Niを主成分とする第2のNi膜に覆われており、上記第1のNi膜は、上記電極の側面が上記基板と接する第1の隅部を覆っている、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の配線基板の第2実施形態は、基板の少なくとも一方の主面にCuまたはAgを主成分とする電極が配置された配線基板であって、上記電極は上記基板から突出しており、上記電極の表面は、第1のNi膜に覆われており、上記第1のNi膜の表面は、第2のNi膜に覆われており、上記第1のNi膜が、Ni-B、Ni-N又は純Niを主成分とし、上記第2のNi膜が、Ni-Pを主成分とし、上記第1のNi膜は、上記電極の側面が上記基板と接する第1の隅部を覆っている、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の配線基板の製造方法は、本発明の配線基板の製造方法であって、上記第1のNi膜を形成する方法が、N系還元剤又はB系還元剤を還元剤とする無電解ニッケルめっき処理であり、上記第2のNi膜を形成する方法が、P系還元剤を還元剤とする無電解ニッケルめっき処理である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リフロー等の加熱によってNi膜の剥離が生じにくい配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の配線基板の一例を模式的に示す上面図である。
図2図2は、図1におけるA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の配線基板及び配線基板の製造方法について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0014】
[配線基板の第1実施形態]
本発明の配線基板の第1実施形態は、基板の少なくとも一方の主面にCuまたはAgを主成分とする電極が配置された配線基板であって、上記電極は上記基板から突出しており、上記電極の表面は、結晶質Niを主成分とする第1のNi膜に覆われており、上記第1のNi膜の表面は、非晶質Niを主成分とする第2のNi膜に覆われており、上記第1のNi膜は、上記電極の側面が上記基板と接する第1の隅部を覆っている、ことを特徴とする。
【0015】
図1は、本発明の配線基板の一例を模式的に示す上面図であり、図2図1におけるA-A線断面図である。
図1及び図2に示すように、配線基板1は、基板10と、基板10の一方の主面10aに設けられたCu又はAgを主成分とする電極20と、電極20の表面を覆う第1のNi膜30と、第1のNi膜30の表面を覆う第2のNi膜40とを備えている。
【0016】
図2に示すように、電極20は基板10から突出しており、電極20の上面20a及び側面20bは、第1のNi膜30に覆われている。
このとき、第1のNi膜30は、電極20の側面20bと基板10と接する第1の隅部(図2中、Cで示す箇所)を覆っている。電極20の側面20bと基板10が接する第1の隅部Cが、結晶質Niを主成分とする第1のNi膜30によって覆われていることで、応力の集中しやすい部分である第1の隅部Cに応力が集中しにくくなる。
【0017】
第1のNi膜30は、結晶質Niを主成分としている。従って、配線基板1に対してリフロー等の加熱が行われた場合であっても、結晶質Niを主成分とする第1のNi膜30は結晶化が進行せず、圧縮応力が生じにくい。そのため、電極20と第1のNi膜30との界面において界面剥離が生じにくい。
【0018】
なお、配線基板1を上面視した際には、第1の隅部Cが、電極20の外形形状に沿って基板10と電極20の境界を一周するように設けられている。
図1に示す配線基板1では、第1のNi膜30は、第1の隅部Cをすべて覆っている。
【0019】
配線基板1では、第1のNi膜30の上面30a及び側面30bが、非晶質Niを主成分とする第2のNi膜40に覆われている。第2のNi膜40は、第1のNi膜30の側面30bと基板10が接する第2の隅部(図2中、Cで示す箇所)を覆っている。
【0020】
非晶質Niを主成分とする第2のNi膜は、次亜リン酸を還元剤として用いる、いわゆる中リンめっきで形成することができる。このようなNi膜は、皮膜強度が高く耐酸性に優れる。さらに、はんだ接続性を向上させるためのAuめっき膜の形成が容易である。
【0021】
配線基板に対してリフロー等の加熱が行われた場合、第2のNi膜は結晶化が進行して圧縮応力が生じる。しかし、第1のNi膜と第2のNi膜は、同じNiを主成分とするため界面強度が高く、第1のNi膜と第2のNi膜との界面での界面剥離は生じにくい。また、電極は第2のNi膜と直接接触していないため、第2のNi膜に圧縮応力が生じたとしても、電極と第1のNi膜との界面剥離を生じにくい。
【0022】
第1のNi膜が結晶質Niを主成分としているかどうかは、X線の回折パターンから判断することができる。
具体的には、X線源としてFeKα(λ=0.19373nm)を用いてX線回折パターンを測定し、Niの(111)に由来する57°付近のピークの有無を確認する。Niの(111)に由来する57°付近のピークを確認できるものは、結晶質Niを主成分としていると判断する。
【0023】
第2のNi膜が非晶質Niを主成分としているかどうかは、X線の回折パターンから判断することができる。
具体的には、X線源としてFeKαを用いてX線回折パターンを測定し、Niの(111)に由来する57°付近のピークの有無を確認する。Niの(111)に由来する57°付近のピークを確認できないものは、非晶質Niを主成分としていると判断する。
【0024】
第1のNi膜を構成する材料としては、Ni-B、Ni-N又は純Niを主成分とする材料が挙げられる。
Ni-Bは不純物としてホウ素(B)を含むニッケル合金である。
Ni-BにおけるBの含有量は、例えば0.05wt%以上、3wt%以下とすればよい。
Ni-Nは不純物として窒素(N)を含むニッケル合金である。
Ni-NにおけるNの含有量は、例えば0.05wt%以上、3wt%以下とすればよい。
純Niは、不純物としてのPを0.05wt%以上、4wt%以下含んでいてもよい。
第1のNi膜の組成は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により測定することができる。
【0025】
Ni-Bを主成分とする第1のNi膜は、B系還元剤を還元剤とする無電解ニッケルめっきにより形成することができる。
B系還元剤としては、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等が挙げられる。
【0026】
Ni-Nを主成分とする第1のNi膜は、N系還元剤を還元剤とする無電解ニッケルめっきにより形成することができる。
N系還元剤としては、ヒドラジン等が挙げられる。
【0027】
第1のNi膜の膜厚(図2中、両矢印tで示される長さ)は特に限定されないが、例えば、0.005μm以上、4μm以下とすればよい。
【0028】
第2のNi膜を構成する材料としては、Ni-Pを主成分とする材料が挙げられる。
Ni-Pは不純物としてリン(P)を5wt%以上含むニッケル合金である。
Ni-PにおけるPの含有量は、例えば、5wt%以上、11wt%以下とすればよい。
第2のNi膜の組成は、ICP発光分析により測定することができる。
【0029】
第2のNi膜の膜厚(図2中、両矢印tで示される長さ)は特に限定されないが、例えば、1μm以上、4μm以下とすればよい。
【0030】
Ni-Pを主成分とする第2のNi膜は、P系還元剤を還元剤とする無電解ニッケルめっきにより形成することができる。
P系還元剤としては、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等の次亜リン酸塩等が挙げられる。
【0031】
第1のNi膜の膜厚と第2のNi膜の膜厚の大小関係は特に限定されないが、例えば、図2に示すように、第2のNi膜40の膜厚tを第1のNi膜30の膜厚tより厚くしてもよい。
第1のNi膜は、第2のNi膜よりも時間あたりの成膜量が小さく、めっき浴の安定性が低いため、製造コストが高くなりやすい。また、第2のNi膜の表面には、はんだ濡れ性を向上させるためにAu置換めっきを施すことが多い。そのため、第1のNi膜と第2のNi膜の合計の膜厚に制約が設けられている場合には、第2のNi膜の膜厚を第1のNi膜の膜厚よりも厚くすることで、製造コストを抑制しつつ、第2のNi膜の表面に形成されるAu置換めっきの安定性を高めることができる。
【0032】
第1のNi膜の膜厚と第2のNi膜の膜厚の合計は、例えば、3μm以上、10μm以下とすればよい。
【0033】
配線基板を構成する基板は、セラミック基板であってもよく、樹脂基板であってもよい。
図1及び図2に示す配線基板1では、基板10の内部に配線等が設けられていないが、本発明の配線基板においては、基板の内部に配線等が設けられていてもよい。
【0034】
[配線基板の第2実施形態]
本発明の配線基板の第2実施形態は、基板の少なくとも一方の主面にCuまたはAgを主成分とする電極が配置された配線基板であって、上記電極は上記基板から突出しており、上記電極の表面は、第1のNi膜に覆われており、上記第1のNi膜の表面は、第2のNi膜に覆われており、上記第1のNi膜が、Ni-B、Ni-N又は純Niを主成分とし、上記第2のNi膜が、Ni-Pを主成分とし、上記第1のNi膜は、上記電極の側面が上記基板と接する第1の隅部を覆っている、ことを特徴とする。
【0035】
本発明の配線基板の第2実施形態は、第1のNi膜が、結晶性を問わず、Ni-B、Ni-N又は純Niを主成分とし、第2のNi膜が、結晶性を問わず、Ni-Pを主成分としていることを除いて、本発明の配線基板の第1実施形態と共通している。
Ni-B、Ni-N又は純Niを主成分とするNi膜は結晶性が高い。
【0036】
本発明の配線基板の第2実施形態では、電極の側面と基板が接する第1の隅部が、Ni-B、Ni-N又は純Niを主成分とする第1のNi膜によって覆われていることで、応力の集中しやすい部分である第1の隅部に応力が集中しにくくなる。
【0037】
第1のNi膜は、Ni-B、Ni-N又は純Niを主成分とする。
【0038】
Ni-Bは不純物としてホウ素(B)を含むニッケル合金である。
Ni-BにおけるBの含有量は、例えば、0.05wt%以上、3wt%以下とすればよい。
【0039】
Ni-Nは不純物として窒素(N)を含むニッケル合金である。
Ni-NにおけるNの含有量は、例えば、0.05wt%以上、3%wt以下とすればよい。
純Niは、不純物であるPを0.05wt%以上、4wt%以下含んでいてもよい。
【0040】
第1のNi膜及び第2のNi膜に含まれる不純物の種類及び割合は、ICP発光分析により測定することができる。
なお、「主成分」とは、全体の90wt%以上を占める成分をいう。
【0041】
Ni-B、Ni-N又は純Niを主成分とする第1のNi膜は結晶性が高い。
本発明の配線基板の第2実施形態では、Ni-B、Ni-N又は純Niを主成分とする第1のNi膜によって、電極の側面と基板が接する第1の隅部が覆われているため、リフロー等の加熱によって応力が発生することがない。そのため、第1の隅部に応力が集中しにくくなる。
【0042】
第2のNi膜は、Ni-Pを主成分とする。
Ni-Pは不純物としてリン(P)を含むニッケル合金である。
Ni-PにおけるPの含有量は、例えば、5wt%以上、11wt%以下とすればよい。
【0043】
上述した以外の点は、本発明の配線基板の第1実施形態と同様である。
【0044】
[配線基板の製造方法]
本発明の配線基板の製造方法は、第1のNi膜を形成する方法が、N系還元剤又はB系還元剤を還元剤とする無電解ニッケルめっき処理であり、第2のNi膜を形成する方法が、P系還元剤を還元剤とする無電解ニッケルめっき処理である、ことを特徴とする。
【0045】
電極の表面に対して、N系還元剤又はB系還元剤を還元剤とする無電解ニッケルめっき処理を行うことでNi膜が形成される。
このNi膜は結晶質Niであるため、本発明の配線基板の第1実施形態を構成する第1のNi膜である。またこのNi膜はNi-B又はNi-Nを主成分とするため、本発明の配線基板の第2実施形態を構成する第1のNi膜でもある。
【0046】
第1のNi膜を形成するために行われる無電解ニッケルめっき処理に用いられるめっき浴の組成としては、例えば、酢酸ニッケル、硫酸ニッケル等のニッケル塩の濃度を0.025M以上0.1M以下とし、B系還元剤又はN系還元剤の濃度を0.02M以上、0.1M以下とする組成が挙げられる。
めっき浴の温度は、例えば、50℃以上、90℃以下とすればよい。
めっき浴のpHは、例えば、5以上、9以下とすればよい。
めっき浴には、必要に応じて、錯化剤、安定剤、pH調整剤等を添加してもよい。
【0047】
第2のNi膜を形成するために行われる無電解ニッケルめっき処理に用いられるめっき浴の組成としては、例えば、酢酸ニッケル、硫酸ニッケル等のニッケル塩の濃度を0.025M以上0.1M以下とし、P系還元剤の濃度を0.025M以上、0.3M以下とする組成が挙げられる。
めっき浴の温度は、例えば、80℃以上、90℃以下とすればよい。
めっき浴のpHは、例えば、4以上、11以下とすればよい。
めっき浴には、必要に応じて、錯化剤、安定剤、pH調整剤等を添加してもよい。
【実施例
【0048】
以下、本発明の配線基板をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
[基板上への電極の形成]
まず、アルミナ基板の所定領域にスパッタによりシード層を形成した後、シード層の表面に電解めっき処理によって銅電極を形成した。銅電極の厚さは1μmであった。
【0050】
[第1のNi膜の形成]
続いて、以下に示す組成のめっき浴に30秒浸漬して、銅電極の表面(上面及び側面)に無電解ニッケルめっき処理によって第1のNi膜を形成した。形成された第1のNi膜の膜厚を蛍光X線膜厚計で測定したところ、膜厚は0.005μmであった。
(めっき浴の組成)
0.02M 硫酸ニッケル
0.02M ジメチルアミンボラン
0.1M グリシン
温度:50℃
pH:6.5
【0051】
[第2のNi膜の形成]
続いて、以下に示す組成のめっき浴に30分浸漬して、第1のNi膜の表面(上面及び側面)に無電解ニッケルめっき処理によって第2のNi膜を形成した。形成された第2のNi膜の膜厚を蛍光X線膜厚計で測定したところ、膜厚は3μmであった。
(めっき浴の組成)
0.1M 硫酸ニッケル
0.25M 次亜リン酸ナトリウム
0.3M グリシン
温度:80℃
pH:4.5
【0052】
[Auめっき膜の形成]
最後に、第2のNi膜の表面にAu置換めっきを行った。形成されたAuめっき膜の厚さは0.1μmであった。
以上の手順により、実施例1に係る配線基板を得た。
【0053】
[Ni膜の結晶性の確認]
得られた実施例1に係る配線基板を厚さ方向に沿って切断して、第1のNi膜及び第2のNi膜を露出させた後、断面をX線回折分光分析(線源:FeKα)により分析した。
第1のNi膜のX線回折パターンには、Ni(111)に由来する57°付近のピークが確認できた。そのため、第1のNi膜は、結晶質Niが主成分であることを確認した。
一方、第2のNi膜のX線回折パターンには、Ni(111)に由来する57°付近のピークが確認できなかった。そのため、第2のNi膜は、非晶質Niが主成分であることを確認した。
この結果より、実施例1に係る配線基板が本発明の配線基板の第1実施形態に該当することを確認した。
【0054】
[第1のNi膜及び第2のNi膜の組成の測定]
Au膜を研磨により除去して第2のNi膜を露出させた後、第2のNi膜を王水で溶解させてサンプルを採取した。このサンプルに対してICP発光分析を行うことで、第2のNi膜の組成を測定した。第2のNi膜は、8wt%のリン(P)と、92wt%のニッケル(Ni)を含むNi-Pであった。
また、第2のNi膜と同様の手順で、Au膜及び第2のNi膜を研磨により除去して第1のNi膜を露出させ、第1のNi膜を王水で溶解させて採取したサンプルに対してICP発光分析を行い、第1のNi膜の組成を測定した。第1のNi膜は、1wt%のホウ素(B)と、99wt%のニッケル(Ni)を含むNi-Bであった。
この結果より、実施例1に係る配線基板が本発明の配線基板の第2実施形態に該当することを確認した。
【0055】
[熱処理後の剥離試験]
実施例1に係る配線基板を300℃で3時間加熱して熱処理した。その後、スクラッチ試験機でスクラッチ試験を行い、Ni膜の剥離が発生するかどうかを確認した。スクラッチ試験ではダイヤモンド圧子(先端半径:0.8mm)を用い、圧子移動速度10mm/min、スクラッチ距離5mm、試験荷重50Nとした。剥離試験後のNi膜に剥離が生じていないかを確認した。結果を表1に示す。
【0056】
(実施例2~4)
めっき浴の組成を変更することなく、浸漬時間を変更して、第1のNi膜及び第2のNi膜の厚さを表1に示すように変更したほかは、実施例1と同様の手順で、実施例2~4に係る配線基板を作製し、熱処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0057】
(比較例1)
第1のNi膜の形成を行わずに、電極の表面に第2のNi膜を直接形成したほかは、実施例1と同様の手順で、比較例1に係る配線基板を作製し、熱処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1の結果より、本発明の配線基板は熱処理後の密着性に優れており、リフロー等の加熱によってNi膜の剥離が生じにくいことを確認した。
【符号の説明】
【0060】
1 配線基板
10 基板
10a 基板の一方の主面
20 電極
20a 電極の上面
20b 電極の側面
30 第1のNi膜
30a 第1のNi膜の上面
30b 第1のNi膜の側面
40 第2のNi膜
電極の側面が基板と接する第1の隅部
第1のNi膜の側面が基板と接する第2の隅部
第1のNi膜の膜厚
第2のNi膜の膜厚
図1
図2