(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】光学フィルム、及び表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20240409BHJP
H10K 59/35 20230101ALI20240409BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20240409BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20240409BHJP
G02B 1/11 20150101ALI20240409BHJP
G02B 1/18 20150101ALI20240409BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20240409BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240409BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240409BHJP
【FI】
G02B5/22
H10K59/35
H10K50/86
G02B1/14
G02B1/11
G02B1/18
G02B5/02 B
G09F9/00 313
B32B7/023
(21)【出願番号】P 2022576953
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 JP2021026616
(87)【国際公開番号】W WO2022158007
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2021006752
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】石丸 佳子
(72)【発明者】
【氏名】二俣 開
【審査官】中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-147319(JP,A)
【文献】国際公開第2005/022212(WO,A1)
【文献】特開2018-136361(JP,A)
【文献】特開2011-141356(JP,A)
【文献】特開2009-031733(JP,A)
【文献】特開2010-061066(JP,A)
【文献】特開2003-315544(JP,A)
【文献】特開平11-231301(JP,A)
【文献】特開2008-083597(JP,A)
【文献】特開2019-056865(JP,A)
【文献】特開平10-226172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G02B 1/14
G02B 1/11
G02B 1/18
G02B 5/02
G09F 9/00
B32B 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS L 1925に準拠した紫外線遮蔽率が85%以上であるシート状の基材と、
前記基材の第一面側に形成された光学機能層と、
前記基材の第二面側に形成され、色素を含有する着色層と、を備え、
温度45℃・湿度50%RH条件にて波長300~400nmでの照度が60W/cm
2のキセノンランプを120時間照射する耐光性試験前後の色度差であるΔE*abが、下記式(1):
ΔE*ab≦5 式(1)
を満たし、
前記着色層に含まれる前記色素は、
極大吸収波長が470~530nmの範囲内にあり、かつ吸光スペクトルの半値幅が15~
26nm
のピロメテンコバルト錯体染料である第一の色材と、
極大吸収波長が560~620nmの範囲内にあり、かつ吸光スペクトルの半値幅が15~55nmである第二の色材
、および400~800nmの波長範囲において最も透過率の低い波長が650~800nmの範囲内にある第三の色
材のうち、いずれか
一方または両方の色材と、を少なくとも含有し、
前記色素の吸収波長帯である470~530nm、560~620nm、および650~800nmのうちいずれか一つの
吸収波長帯
の極大吸収波長で
の透過率が1%以上50%未満であり、その他の色材の吸収波長帯
の極大吸収波長での透過率は50%以上である、光学フィルム。
【請求項2】
表面の500g荷重での鉛筆硬度がH以上である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記着色層が、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、または一重項酸素クエンチャーの1種類以上を含有する、請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記ラジカル捕捉剤が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤である、請求項3に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記一重項酸素クエンチャーが、ジアルキルホスフェイト、ジアルキルジチオカルバネート又はベンゼンジチオールあるいはその類似ジチオールの遷移金属錯体である、請求項3に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記着色層に含まれる前記
第二の色材および前記第三の色材が、ポルフィリン構造、メロシアニン構造、フタロシアニン構造、アゾ構造、シアニン構造、スクアリリウム構造、クマリン構造、ポリエン構造、キノン構造、テトラジポルフィリン構造、ピロメテン構造及びインジゴ構造のいずれかを有する化合物及びその金属錯体からなる群から選択される1以上の化合物を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記基材と前記着色層との間、又は、前記基材の前記第二面側に、酸素透過度が10cc/(m
2・day・atm)以下の酸素バリア層を更に備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記光学機能層が、
高屈折率層及び低屈折率層を含む反射防止層、
高屈折率層および防眩層を含む反射防止層、
高屈折率層、防眩層および低屈折率層を含む反射防止層、または
防眩層を含む反射防止層のうち、いずれか一つを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項9】
帯電防止層又は防汚層を更に含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記高屈折率層、前記防眩層、または前記低屈折率層のうち少なくとも1つは、帯電防止性をさらに有し、
前記高屈折率層、前記防眩層、または前記低屈折率層のうち少なくとも1つは、防汚性をさらに有する、請求項8に記載の光学フィルム。
【請求項11】
光源と、
前記基材の前記第二面側を前記光源に向けて配置された請求項1~10のいずれか1項に記載の光学フィルムを備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、及び表示装置に関する。
本願は、2021年1月19日に日本に出願された特願2021-006752号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の色純度向上において、カラーフィルタを用いて表示装置の光源から発せられる白色光や単色光を色分離、もしくは補正し、狭半値化させる手法が知られている。
【0003】
カラーフィルタにより色純度を向上させる場合、色材濃度を高くしたり、フィルタを厚くしたりする必要がある。色材濃度を高くすると、フォトリソグラフィ特性が悪化することがある。フィルタを厚くすると、画素形状や視野角特性が悪化することがある。
さらに、色純度を向上させたカラーフィルタは概して透過率が低く、輝度効率を低下させやすい。
【0004】
上記に鑑み、カラーフィルタを用いずに色純度を向上させる方法が提案されている。
特許文献1には、反射防止層及び電磁波遮断層を有するフィルタベース上に色補正層を設けたディスプレイフィルタが開示されている。このディスプレイフィルタは、反射防止フィルムに色補正層を設けた構成であるため、製造にフォトリソグラフィ工程は必要なく、輝度効率も低下しにくい。
特許文献2には、色補正層に適した色材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2007-226239号公報
【文献】日本国特許第6142398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
色補正層に用いる色材に含まれる機能性色素には、耐光性や耐熱性、耐湿熱性が高いとは言えないものが少なくない。したがって、このような機能性色素を用いたディスプレイフィルタは、使用とともに機能性色素の機能が低下し、色補正機能を十分に発揮できなくなる場合がある。
発明者らは、この問題を解決法について検討し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は、色補正機能が良好であり、かつ長期間の使用に耐える光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様に係る光学フィルムは、JIS L 1925に準拠した紫外線遮蔽率が85%以上であるシート状の基材と、前記基材の第一面側に形成された光学機能層と、前記基材の第二面側に形成され、色素を含有する着色層と、を備え、温度45℃・湿度50%RH条件にて波長300~400nmでの照度が60W/cm2のキセノンランプを120時間照射する耐光性試験前後の色度差であるΔE*abが、下記式(1):
ΔE*ab≦5 式(1)
を満たし、前記着色層に含まれる前記色素は、極大吸収波長が470~530nmの範囲内にあり、かつ吸光スペクトルの半値幅が15~45nmである第一の色材と、極大吸収波長が560~620nmの範囲内にあり、かつ吸光スペクトルの半値幅が15~55nmである第二の色材と、400~800nmの波長範囲において最も透過率の低い波長が650~800nmの範囲内にある第三の色材と、の少なくともいずれか一つを含有し、前記色素の吸収波長帯のうちいずれか一つの波長帯で透過率が1%以上50%未満である。
【0009】
本発明の第二の態様に係る表示装置は、光源と、第二面側を光源に向けて配置された第一の態様に係る光学フィルムとを備える。
【0010】
本発明の第三の態様に係る着色層形成用組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤と、色素と、添加剤と、溶剤とを含有する。
色素は、極大吸収波長が470~530nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15~45nmである第一の色材と、
極大吸収波長が560~620nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15~55nmである第二の色材と、
400~800nmの波長範囲において最も透過率の低い波長が650~800nmの範囲内にある第三の色材と、
のいずれか一つを少なくとも含有し、前記色素の吸収波長帯のいずれか1つの波長帯で透過率が1%以上50%未満であり、添加剤は、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、または一重項酸素クエンチャーの1種類以上を含有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記態様によれば、色補正機能が良好であり、かつ長期間の使用に耐える光学フィルム、光学フィルムを用いた表示装置及び、光学フィルムの製造に用いる着色層形成用組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る光学フィルム1の模式断面図である。
【
図2】本発明の第二実施形態に係る光学フィルム1Aの模式断面図である。
【
図3】本発明の第三実施形態に係る光学フィルム1Bの模式断面図である。
【
図4】本発明の第四実施形態に係る光学フィルム1Cの模式断面図である。
【
図5】透明基材の光線透過プロファイルを示すグラフである。
【
図6】透過特性の評価に用いた光源のスペクトルである。
【
図7】色再現性の評価に用いた光源のスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1~
図4は、それぞれ本発明の第一~第四実施形態に係る光学フィルム1、1A~1Cの模式断面図である。
図1~
図4における上側が、表示装置の表示画像を観察するときの観察側に相当する。以下、本発明の第一実施形態について、
図1を参照しながら説明する。
<第一実施形態>
図1は、本実施形態に係る光学フィルム1の模式断面図である。光学フィルム1は、シート状の透明基材10と、透明基材10の第一面10a側に形成された光学機能層20と、透明基材10の第二面10b側に形成された着色層30とを備えている。なお、透明基材10を単に基材10と呼ぶ場合もある。
本実施形態では、着色層30、基材10、および光学機能層20が積層された方向を厚さ方向といい、厚さ方向における一方側(表示装置の表示画像を観察するときの観察側)を上側といい、その反対側を下側という。
【0014】
基材10は、85%以上の紫外線遮蔽率を有しており、着色層30に含まれる色素を紫外線から保護するための紫外線遮蔽層(紫外線吸収層)として機能する。ここで、紫外線遮蔽率は、JIS L 1925に準拠して測定される値であり、以下の式により算出される。
紫外線遮蔽率(%)=100-波長290~400nmの紫外線の平均透過率(%)
【0015】
基材10の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリアクリレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、シクロオレフィンコポリマー、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン等の透明樹脂や無機ガラス等を例示できる。この中でも、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルム(PET)、トリアセチルセルロースからなるフィルム(TAC)、ポリメチルメタクリレートからなるフィルム(PMMA)を好適に利用できる。基材10の厚みは、特に限定されないが、10~100μmとすることが好ましい。
図5に、これらの材質からなる透明基材の光線透過プロファイルを示す。
図5において、基材の紫外線遮蔽率は以下の通りであり、いずれも基材10として好適に使用できる。
TAC:91.7%
PMMA:90.2%
PET:88.1%
【0016】
基材10の紫外線吸収性は、例えば、基材10を形成するための樹脂材料そのもので付与してもよいし、紫外線吸収剤を配合することによって付与してもよい。紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、しゅう酸アニリド系、シアノアクリレート系の化合物を使用できる。
【0017】
図1に示す光学機能層20は、第一面10aと接するハードコート層21と、ハードコート層21上に形成された低屈折率層22とを有する。
【0018】
ハードコート層21は、硬質な樹脂層であり、光学フィルム1の耐傷性を高める。また、ハードコート層21は、低屈折率層22よりも屈折率が高くてもよい。ハードコート層21を構成する樹脂としては、紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射により重合して硬化する樹脂であり、例えば、単官能、2官能又は3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを使用できる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方の総称であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルの両方の総称である。
【0019】
単官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタン、アダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレート等のアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
2官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0022】
また、活性エネルギー線硬化性樹脂として、ウレタン(メタ)アクリレートも使用できる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることによって得られるものを挙げることができる。
【0023】
ウレタン(メタ)アクリレートの例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0024】
上述した樹脂は1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上述した樹脂は、ハードコート層形成用組成物中でモノマーであってもよいし、一部が重合したオリゴマーであってもよい。ハードコート層21の硬度は、表面の500g荷重での鉛筆硬度がH以上であることが好ましい。
【0025】
ハードコート層21は、着色層30に含まれる色素の劣化を抑制するため、紫外線吸収剤を含有してもよい。基材10同様に、ハードコート層21の紫外線遮蔽率は85%以上のであることが好ましい。ハードコート層21に含有させる紫外線吸収剤の紫外線領域における吸収波長域は、290~370nmの範囲であることが好ましい。このような紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、しゅう酸アニリド系、シアノアクリレート系の化合物を例示できる。紫外線吸収剤は、着色層30に含まれる色素の劣化を抑制するために配合される。このため、紫外線領域のうち、着色層30に含まれる色素の劣化に寄与する波長域の光の吸収性を有する紫外線吸収剤を使用する。
ただし、紫外線吸収剤を含有する組成物を硬化させる際、紫外線吸収剤による紫外線吸収量が多くなりすぎると、組成物の硬化が不十分となり、得られる光学フィルムの表面硬度が不足してしまう。
そこで、本実施形態においては、エネルギー線硬化型化合物と光重合開始剤と紫外線吸収剤とを含有する組成物の硬化膜である紫外線遮蔽層(紫外線吸収層)においては、紫外線領域における吸収波長域が、光重合開始剤の紫外線領域における吸収波長域と異なる範囲である紫外線吸収剤を使用する。これにより、紫外線吸収剤により硬化膜の硬化が阻害されることを抑制できる。また、硬化膜を所定の硬化度まで硬化させることができるため、確実に目的の硬度の硬化層を得ることができる。
紫外線遮蔽層を構成するいずれかの層に含有させる紫外線吸収剤の吸収波長域(着色層30に含まれる色素の劣化に寄与する波長域)とは吸収波長域が異なる光重合開始剤として、アシルフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤を好適に使用することができる。アシルフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドやフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドなどを例示できる。
紫外線吸収剤と光重合開始剤との吸収波長域を異ならせることにより、紫外線吸収剤を含有する紫外線遮蔽層を形成する際の硬化阻害を抑制できると共に、硬化後においては、着色層30に含まれる色素が紫外線により劣化することを抑制できる。
【0026】
ハードコート層形成用組成物に用いる、その他の光重合開始剤としては、例えば、2,2-エトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、p-クロロベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2-クロロチオキサントン等を使用できる。これらのうち1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて使用してよい。
【0027】
また、ハードコート層形成用組成物に用いる溶剤としては、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3,5-トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトール等のエーテル類、またアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n-ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n-ペンチル、及びγ-プチロラクトン等のエステル類、さらにメチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類が挙げられる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いてもよい。
【0028】
また、ハードコート層形成用組成物には、屈折率調整や硬度付与を目的として金属酸化物微粒子を含有させてもよい。金属酸化物微粒子としては、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0029】
また、ハードコート層形成用組成物は、撥水性及び/又は撥油性を付与し、防汚性を高める珪素酸化物、フッ素含有シラン化合物、フルオロアルキルシラザン、フルオロアルキルシラン、フッ素含有珪素系化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤のいずれかを含有してもよい。
【0030】
その他の添加剤として、ハードコート層形成用組成物に、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、光安定剤、光増感剤、導電材料等を加えてもよい。
【0031】
低屈折率層22は、光学フィルム1が表示装置に適用される際に、表示を見る使用者(視認者)に最も近い側に配置される。低屈折率層22は、外光の強い反射を防ぎ、表示装置の視認性を向上する。
【0032】
低屈折率層22は、無機物や無機化合物を含む層であってもよい。無機物や無機化合物としては、LiF、MgF、3NaF・AlF、AlF、Na3AlF6等の微粒子やシリカ微粒子を例示できる。また、シリカ微粒子が、多孔質シリカ微粒子や中空シリカ微粒子等の粒子内部に空隙を有すると、低屈折率層の低屈折率化に有効である。また、低屈折率層形成用組成物には、ハードコート層21で説明した光重合開始剤や溶剤、その他の添加剤を適宜配合してもよい。
【0033】
低屈折率層22の屈折率は、ハードコート層21の屈折率よりも低ければよく、1.55以下であることが好ましい。また、低屈折率層22の膜厚は、特に限定されないが、40nm~1μmとすることが好ましい。
【0034】
低屈折率層22は、珪素酸化物、フッ素含有シラン化合物、フルオロアルキルシラザン、フルオロアルキルシラン、フッ素含有珪素系化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤のいずれかを含有してもよい。これらの材料によれば、低屈折率層22に撥水性及び/又は撥油性を付与できるため、防汚性を高めることができる。
【0035】
着色層30は、可視光線の波長帯を選択的に吸収するための、色素を含有する。着色層30は、活性エネルギー線硬化樹脂からなるベース樹脂に色素が含まれた構成であってもよい。
色素は、以下に示す第一~第三の3種類の色材の群のうち少なくともいずれか一つを含む。含まれる色材の種類は一種類に限定されず、二種類以上の色材が含まれていてもよい。
第一の色材は、極大吸収波長が470nm~530nmの範囲内にあり吸光スペクトルの半値幅(半値全幅)が15nm~45nmである。
第二の色材は、極大吸収波長が560nm~620nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅(半値全幅)が15nm~55nmである。
第三の色材は、400~800nmの波長範囲において最も透過率の低い波長が650~800nmの範囲内にある。
なお、以降の説明において、吸光スペクトルの半値幅は、半値全幅を指す。
着色層30は、前記色材の吸収波長帯のうちいずれか1つの波長帯の極大吸収波長の透過率が1%以上50%未満の極大吸収波長をもつ。
着色層30に含有させる第一乃至第三の色材として、上記の吸収特性を有する色材を使用することにより、表示装置が発光する可視光線のうち、相対的に発光強度が低い波長域の可視光線を着色層30に吸収させることができる。例えば、第一、第二、第三の色材により、400~800nmの波長範囲の可視光線のうち、それぞれ、470nm~530nm、560nm~620nm、650~800nmの範囲内にある可視光を着色層30に吸収させることができる。第一、第二、第三の色材により吸収される波長は、例えば、
図6に示される有機EL表示装置の白表示時の分光スペクトルにおける表示装置が発光する可視光線のうち、相対的に発光強度が低い波長域と重なる範囲である。なお、表示装置は有機EL表示装置に限られず、その他の表示装置でもよい。
【0036】
第一乃至第三の色材として、ポルフィリン構造、メロシアニン構造、フタロシアニン構造、アゾ構造、シアニン構造、スクアリリウム構造、クマリン構造、ポリエン構造、キノン構造、テトラジポルフィリン構造、ピロメテン構造及びインジゴ構造のいずれかを有する化合物及びその金属錯体からなる群から選択される1以上の化合物を含む色材を使用できる。特に、分子内にポルフィリン構造やピロメテン構造、フタロシアニン構造を持つ金属錯体、スクアリリウム構造を用いることがより好ましい。例えば、ピロメテンコバルト錯体は第一の色材として使用できる。また、テトラアザポルフィリン銅錯体は第二の色材として使用できる。
【0037】
着色層30は、ラジカル捕捉剤、一重項酸素クエンチャー及び過酸化物分解剤の少なくとも1種類を含有してもよい。
着色層30に含まれる色材は、酸素影響下で促進される光線、熱などによっても劣化する。ラジカル捕捉剤を着色層30に混合することにより、色素が酸化劣化する際のラジカルを捕捉して自動酸化による色材の劣化を防ぐことができ、色補正機能の持続時間をさらに長くすることができる。
また、一重項酸素クエンチャーを着色層30に混合することにより、色素を酸化劣化(退色)させやすい性質を持つ反応性の高い一重項酸素を不活性化し、色素の酸化劣化(退色)を抑制することができる。過酸化物分解剤を着色層30に混合した場合、色素が酸化劣化した際に発生する過酸化物を過酸化物分解剤が分解するため、自動酸化サイクルを停止させ、色素劣化(退色)を抑制できる。
ラジカル捕捉剤と一重項酸素クエンチャーとが併用されてもよい。さらに、過酸化物分解剤が組み合わされてもよい。
【0038】
ラジカル捕捉剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤を使用できる。分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤で高い退色抑制効果が得られるため、特に好ましい。ラジカル捕捉剤の分子量が低い場合、揮発しやすいため、着色層30内へ留まる分子が少なく、十分な退色抑制効果を得ることが難しい場合がある。ラジカル捕捉剤として好適に用いられる材料としては、例えば、BASF社製Chimassorb2020FDL、Chimassorb944FDL、Tinuvin622、ADEKA社製LA-63Pなどが挙げられる。
【0039】
一重項酸素クエンチャーとしては遷移金属錯体、色素類、アミン類、フェノール類、スルフィド類が挙げられるが、特に好適に用いられる材料としては、ジアルキルホスフェイト、ジアルキルジチオカルバネート又はベンゼンジチオールあるいはその類似ジチオールの遷移金属錯体を例示でき、これらの遷移金属錯体の中心金属としてはニッケル、銅又はコバルトが好適に用いられる。
【0040】
過酸化物分解剤は、色素が酸化劣化した際に発生する過酸化物を分解し、自動酸化サイクルを停止させ、色素劣化(退色)を抑制する働きがある。過酸化物分解剤としては、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤を用いることができる。
【0041】
リン系酸化防止剤としては、例えば2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、及び6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンなどが挙げられる。
【0042】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル-ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオネート]、2-メルカプトベンズイミダゾール、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、2-メルカプトベンゾチアゾールなどが挙げられる。
【0043】
光学フィルム1は、基材10の第一面10a上に光学機能層20を形成し、第二面10b上に着色層30を形成することにより製造できる。
ハードコート層21、低屈折率層22及び着色層30は、例えば各層の構成材料を含む塗工液を塗工し、乾燥することで形成できる。また、低屈折率層22は、例えば、蒸着やスパッタリング等によっても形成できる。
光学機能層20及び着色層30は、いずれが先に形成されてもよい。
【0044】
紫外線硬化樹脂等のエネルギー線硬化型化合物でハードコート層21を形成すると、簡便に形成できる。この場合は、エネルギー線硬化型化合物、重合開始剤、及び紫外線吸収剤を含有する塗工液を塗布し、対応するエネルギー線を照射することにより、ハードコート層21を形成できる。紫外線硬化樹脂を用いる場合は、前述したように、光重合開始剤の紫外線領域における吸収波長域と、紫外線吸収剤の紫外線領域における吸収波長域とが異なることが好ましい。
【0045】
光学フィルム1は、色補正フィルタとしてディスプレイ等の表示装置の内部に配置できる。配置する際は、着色層30を光源側に向けて配置する。
光源から出射された光は、着色層30を透過する際に、含まれる色材の極大吸収波長付近の波長成分が吸収される。これにより、表示装置の色純度を向上できる。さらに、カラーフィルタと異なり、色材濃度をそれほど高くする必要がないため、表示装置の輝度を過度に低下させずに色純度を向上できる。
【0046】
着色層30に含まれる色材は、優れた色補正機能を有するものの、光線、特に紫外線に対する耐性が十分でない場合がある。このため、紫外線が照射されると経時的に劣化し、極大吸収波長付近の光を吸収できなくなる。
本実施形態の光学フィルム1が、基材10の第一面10aを観察側に向け、第二面10bを光源側に向けて配置され表示装置に取り付けられた場合、表示画面に入射する紫外線を含む外光は、基材10を透過してから着色層30に入射する。基材10は高い紫外線遮蔽率を有するため、外光に含まれる紫外線の大部分は基材10を透過せず、着色層30に到達しない。これにより、光学フィルム1では、耐光性試験(キセノンランプ照度60W/cm2(300~400nm)、温度45℃・湿度50%RH条件にて120時間照射)前後の色度差であるΔE*abが、下記式(1):
ΔE*ab≦5 式(1)
を満たすことができる。つまり、着色層30に含まれる色材の劣化を防ぐことができ、色補正機能を長時間持続させることができる。なお、式(1)のΔE*abは、CIE(国際照明委員会:Commission international de l’eclairage)で規格化された色度差である。
【0047】
<第二実施形態>
本発明の第二実施形態について、
図2を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0048】
図2は、本実施形態の光学フィルム1Aの層構成を示す模式断面図である。光学フィルム1Aは、透明基材10と、基材10の第一面10a側に形成された光学機能層20と、基材10の第二面10b側に形成された着色層30とを備えている。光学フィルム1Aでは光学機能層20として防眩層(Anti Glare Layer:AG層)23を備えている。
【0049】
防眩層23は、表面に微細な凹凸を有し、この凹凸で外光を散乱させることにより外光の映り込みを低減する層である。防眩層23は、活性エネルギー線硬化性樹脂と、必要に応じて有機微粒子及び/又は無機微粒子とを含有する防眩層形成用組成物を塗布し硬化させることによって形成することができる。防眩層形成用組成物に用いる活性エネルギー線硬化性樹脂としては、ハードコート層21で説明した樹脂を使用することができる。これにより、光学フィルム1Aの耐傷性を高めることができる。防眩層23の膜厚は、特に限定されないが、1~10μmであることが好ましい。
【0050】
防眩層形成用組成物に用いる有機微粒子は、主として防眩層23の表面に微細な凹凸を形成し、外光を拡散させる機能を付与する材料である。有機微粒子としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン系樹脂等の透光性樹脂材料からなる樹脂粒子を使用できる。屈折率や樹脂粒子の分散性を調整するために、材質(屈折率)の異なる2種類以上の樹脂粒子を混合して使用してもよい。
【0051】
防眩層形成用組成物に用いる無機微粒子は、主として防眩層23中の有機微粒子の沈降や凝集を調整するための材料である。無機微粒子としては、シリカ微粒子や、金属酸化物微粒子、各種の鉱物微粒子等を使用することができる。シリカ微粒子としては、例えば、コロイダルシリカや(メタ)アクリロイル基等の反応性官能基で表面修飾されたシリカ微粒子等を使用することができる。金属酸化物微粒子としては、例えば、アルミナや酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタニア、ジルコニア等を使用することができる。鉱物微粒子としては、例えば、雲母、合成雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、層状チタン酸、スメクタイト、合成スメクタイト等を使用することができる。鉱物微粒子は、天然物及び合成物(置換体、誘導体を含む)のいずれであってもよく、両者の混合物を使用してもよい。鉱物微粒子の中でも、層状有機粘土がより好ましい。層状有機粘土とは、膨潤性粘土の層間に有機オニウムイオンを導入したものをいう。有機オニウムイオンは、膨潤性粘土の陽イオン交換性を利用して有機化することができるものであれば制限されない。鉱物微粒子として、層状有機粘土鉱物を用いる場合、上述した合成スメクタイトを好適に使用できる。合成スメクタイトは、防眩層形成用の塗工液の粘性を増加させ、樹脂粒子及び無機微粒子の沈降を抑制して、光学機能層の表面の凹凸形状を調整する機能を有する。
【0052】
防眩層形成用組成物は、珪素酸化物、フッ素含有シラン化合物、フルオロアルキルシラザン、フルオロアルキルシラン、フッ素含有珪素系化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤のいずれかを含有してもよい。これらの材料により、防眩層23に撥水性及び/又は撥油性を付与できるため、防汚性を高めることができる。
【0053】
防眩層23は、材料を偏在させることにより、着色層30側(下側)から順に、相対的に屈折率が高い層と、相対的に屈折率が低い層とが積層された層として形成してもよい。材料を偏在させた防眩層23は、例えば、表面修飾したシリカ微粒子又は中空シリカ微粒子を含有する低屈折率材料と、高屈折率材料とを含有する組成物を塗工し、両者の表面自由エネルギーの差を利用して相分離させることにより形成することができる。防眩層23を相分離した2層で構成する場合、着色層30側の相対的に屈折率が高い層の屈折率を1.50~2.40とし、光学フィルム1Aの表面側の相対的に屈折率が低い層の屈折率を1.20~1.55とすることが好ましい。
【0054】
光学フィルム1Aは、基材10の第一面10a上に防眩層23を形成し、基材10の第二面10b上に着色層30を順次形成することにより製造できる。防眩層23は、例えば各層の構成材料を含む塗工液を塗工し、乾燥することで形成できる。
本実施形態に係る光学フィルム1Aは、上述した第一実施形態と同様に着色層30に含まれる色材の劣化を防ぎつつ、外光の映り込みを低減することができる。
【0055】
<第三実施形態>
本発明の第三実施形態について、
図3を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図3は、本実施形態の光学フィルム1Bの層構成を示す模式断面図である。光学フィルム1Bは、透明基材10と、基材10の第一面10a側に形成された光学機能層20と、基材10の第二面10b側に形成された着色層30とを備えている。光学フィルム1Bでは光学機能層20として防眩層23と、防眩層23上に形成された低屈折率層22とを備えている。防眩層23は、低屈折率層22よりも屈折率が高くてもよい。
【0056】
光学フィルム1Bは、基材10の第一面10a上に防眩層23を形成し、防眩層23上に低屈折率層22を順次形成し、基材10の第二面10b上に着色層30を形成することにより製造できる。
本実施形態に係る光学フィルム1Bは、上述した各実施形態と同様の効果を奏するとともに、光学機能層20に基づく光学機能を発揮できる。
【0057】
<第四実施形態>
本発明の第四実施形態について、
図4を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図4は、本実施形態の光学フィルム1Cの層構成を示す模式断面図である。光学フィルム1Cは、透明基材10と、基材10の第一面10a側に形成された光学機能層20と、基材10の第二面10b側に形成された着色層30とを備えている。光学フィルム1Cでは酸素バリア層40と、酸素バリア層40上に形成された光学機能層20を備える。光学機能層20は、ハードコート層21と、ハードコート層21上に形成された低屈折率層22とを備えている。
【0058】
酸素バリア層40は光透過性を有する透明な層であり、酸素透過度は、10cc/(m2・day・atm)以下であり、5cc/(m2・day・atm)以下であることがより好ましく、1cc/(m2・day・atm)以下であることがさらに好ましい。酸素バリア層40の形成材料は、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、塩化ビリニデン、シロキサン樹脂等を含有するのが好ましく、三菱ガス化学社製のマクシーブ(登録商標)、株式会社クラレ製のエバール、旭化成株式会社のサランラテックス、サランレジン等を用いることができる。また、酸素バリア層40の厚さは特に限定されず、所望の酸素バリア性が得られる厚さとすればよい。
【0059】
また、酸素バリア層40には、無機物粒子(無機化合物からなる粒子)が分散していてもよい。無機物粒子により、酸素透過度をより低くでき、着色層30の酸化劣化(退色)をより抑制することができる。無機物粒子の大きさや含有量は、特に限定されず、酸素バリア層40の厚さ等に応じて、適宜、設定すればよい。酸素バリア層40に分散させる無機物粒子の大きさ(最大長)は、酸素バリア層40の厚さ未満であるのが好ましく、小さいほど有利である。なお、酸素バリア層40に分散させる無機物粒子の大きさは、均一でも不均一でもよい。酸素バリア層40に分散する無機物粒子としては、具体的には、シリカ粒子、アルミナ粒子、銀粒子、銅粒子、チタン粒子、ジルコニア粒子、スズ粒子等が挙げられる。
【0060】
本実施形態において、酸素バリア層40の数や位置は適宜設定できる。酸素バリア層40は、着色層30より上層の観察者側に積層されていればよい。例えば、基材10と着色層30との間、又は、基材10の第二面10b側に酸素バリア層40が配置されてもよい。また、第二及び第三の実施形態に係る光学フィルム1A、1Bにおいて、基材10と防眩層23との間に酸素バリア層40が更に設けられていてもよい。また、第三の実施形態に係る光学フィルム1Bにおいて、防眩層23と低屈折率層22の間に酸素バリア層40が更に設けられていてもよい。酸素バリア層40を更に設けることによって、第四の実施形態と同様に、外気中の酸素影響下での光線、熱などによる色素の酸化による退色をより抑制することができる。
【0061】
光学フィルム1Cは、基材10の第一面10a上に酸素バリア層40を形成し、酸素バリア層40上にハードコート層21、低屈折率層22を順次形成し、基材10の第二面10b上に着色層30を形成することにより製造できる。
【0062】
本実施形態に係る光学フィルム1Cが上述のように表示装置に取り付けられた場合、外気に含まれる酸素は、酸素バリア層40を透過しなければ着色層に到達しない。これにより外気中の酸素影響下での光線、熱などによる色材の劣化が抑制され、色補正機能が長時間持続する。
【0063】
例えば、着色層30と基材10との間に別の酸素バリア層をさらに設け、基材10が酸素バリア層で挟まれた構成としてもよい。
【0064】
本発明において、光学機能層20は、上述した構成に限られない。
例えば、低屈折率層22と高屈折率層とを複数組み合わせた反射防止層、高屈折率層および防眩層23を含む反射防止層、高屈折率層、防眩層23および低屈折率層22を含む反射防止層、または防眩層23を含む反射防止層も、本発明における光学機能層20の一例である。さらに、高屈折率層、防眩層23または低屈折率層22のうち少なくとも1つが帯電防止性を有し、高屈折率層、防眩層23または低屈折率層22のうち少なくとも1つが防汚性を有していてもよい。例えば、高屈折率層および防眩層23に帯電防止剤を添加し、帯電防止性を付与してもよい。撥水性及び/又は撥油性を有する材料を低屈折率層22に含有させることで、低屈折率層22の機能に防汚性を付与してもよい。また、高屈折率層や防眩層23に防汚性を付与してもよい。なお、高屈折率層、防眩層23または低屈折率層22のうち少なくとも1つに、帯電防止性および防汚性の両方が付与されていてもよい。これにより、光学機能層に更なる機能を付与することができる。
また、高屈折率層形成用組成物に用いる樹脂は、ハードコート層21で説明した活性エネルギー線硬化性樹脂を使用してもよい。これにより、反射を防止する機能に加え、光学フィルムの耐傷性を高めることができる。
【実施例】
【0065】
本発明に係る光学フィルムについて、実施例及び比較例を用いてさらに説明する。本発明は、以下の各実施例の具体的内容によって何ら限定されない。
【0066】
(実施例1~17、比較例1~14)
以下の実施例及び比較例では、表1、表2に示す層構成の光学フィルム1~24を作製し、作製したフィルムの特性を評価した。また、表3に示す、光学フィルム7、13、14、21~24を用いた有機EL表示装置1~7の光学特性をシミュレーションにより確認した。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
<光学フィルムの作製>
以下、各層の形成方法を説明する。
【0071】
[着色層の形成]
(着色層形成用組成物 使用材料)
下記の着色層形成に用いる着色層形成用組成物の使用材料を用いた。なお、色材の最大吸収波長及び半値幅は硬化塗膜での特性値を分光透過率より算出した。
・第一の色材:
Dye-1 後述する化1で示されるピロメテンコバルト錯体染料(最大吸収波長 493nm、半値幅 26nm)
・第二の色材:
Dye-2 テトラアザポルフィリン銅錯体染料(山田化学社製 FDG-007、最大吸収波長595nm、半値幅 22nm)
Dye-3 テトラアザポルフィリン銅錯体染料(山本化成社製 PD-311S、最大吸収波長 586nm、半値幅 22nm)
・第三の色材:
Dye-4 フタロシアニン銅錯体染料(山田化学社製 FDN-002、最大吸収波長 800nm(400~800nmの波長範囲において最も透過率の低い波長が800nmである。))
・第一~第三の色材以外の色材:
Dye-5 染料(山田化学社製 FDG-003、最大吸収波長 545nm、半値幅79μm)
Dye-6 染料(山田化学社製 FDG-004、最大吸収波長 575nm、半値幅63μm)
・添加剤:
ヒンダードアミン系光安定剤 Chimassorb944FDL(BASFジャパン社製、分子量 2000~3100)
ヒンダードアミン系光安定剤 Tinuvin249(BASFジャパン社製、分子量 482)
一重項酸素クエンチャー D1781(東京化成工業社製、ジアルキルジチオカルバネートニッケル錯体)
・紫外線吸収剤:
Tinuvin479(BASFジャパン社製、極大吸収波長 322nm)
LA-36(ADEKA社製、極大吸収波長 310nm、350nm)
・活性エネルギー線硬化樹脂:
UA-306H(共栄社化学社製、ペンタエリスリトールトリアクリレート ヘキサメチレンジイソシアネート ウレタンプレポリマー)
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
PETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート)
・開始剤(光重合開始剤):
Omnirad TPO(IGM Resing B.V.社製、吸収波長ピーク 275nm,379nm)
・溶剤:
MEK(メチルエチルケトン)
酢酸メチル
【0072】
【0073】
(着色層形成)
(基材)
以下の透明基材を用いた。
・TAC:トリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製 TG60UL、基材厚60μm、紫外線遮蔽率92.9%)
・PMMA1:ポリメチルメタクリレートフィルム(住友化学社製 W001U80、基材厚80μm、紫外線遮蔽率93.4%)
・PMMA2:ポリメチルメタクリレートフィルム(住友化学社製 W002N80、基材厚80μm、紫外線遮蔽率13.9%)
・PET1:ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製 SRF、基材厚80μm、紫外線遮蔽率 88.3%)
・PET2:ポリエチレンテレフタレートフィルム(SKC社製 TOR20、基材厚40μm、紫外線遮蔽率88.6%)
透明基材の一方の面に、表4に示す着色層形成用組成物を塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させた。その後、紫外線照射装置を用いて照射線量150mJ/cm2(フュージョンUVシステムズジャパン社製、光源Hバルブ)で紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させ、硬化後の膜厚が5.0μmとなるよう調整して着色層1~10を形成した。なお、添加量は質量比である。
【0074】
【0075】
[酸素バリア層の形成]
・酸素バリア層形成用組成物:
PVA117(クラレ社製)80%水溶液
【0076】
(酸素バリア層形成)
透明基材上に、上記の酸素バリア層形成用組成物を塗布し、乾燥させ、酸素透過度が1cc/(m2・day・atm)である表1の酸素バリア層1を形成した。
【0077】
[光学機能層の形成]
(ハードコート層形成用組成物)
下記のハードコート層形成に用いるハードコート層形成用組成物の使用材料を用いた。
・紫外線吸収剤:
Tinuvin479(BASFジャパン社製、極大吸収波長 322nm)
LA-36(ADEKA社製、極大吸収波長 310nm、350nm)
・活性エネルギー線硬化樹脂:
UA-306H(共栄社化学社製、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネート ウレタンプレポリマー)
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
PETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート)
・開始剤:
Omnirad TPO(IGM Resins B.V.社製、吸収波長ピーク 275nm,379nm)
Omnirad 184(IGM Resins B.V.社製、吸収波長ピーク 243nm,331nm)
・溶剤:
MEK(メチルエチルケトン)
酢酸メチル
【0078】
(ハードコート層形成)
透明基材上又は酸素バリア層上に、表5に示すハードコート層形成用組成物を塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させ、その後、紫外線照射装置を用いて照射線量150mJ/cm2で紫外線照射(フュージョンUVシステムズジャパン社製、光源Hバルブ)を行うことにより塗膜を硬化させ、硬化後の膜厚が5.0μmである表1及び2のハードコート層1~3を形成した。なお、ハードコート層1、3は紫外線吸収剤を含むので、紫外線遮蔽層ともなる。
【0079】
【0080】
(防眩層形成用組成物)
下記の防眩層形成に用いる防眩層形成用組成物を用いた。
・活性エネルギー線硬化樹脂:
ライトアクリレートPE-3A(共栄社化学株式会社製、屈折率1.52)
・光重合開始剤:
Omnirad TPO(IGM Resins B.V.社製、吸収波長ピーク 275nm,379nm)
・有機微粒子:
スチレン-メタクリル酸メチル共重合体粒子(屈折率1.515、平均粒径2.0μm)
・無機微粒子1:
合成スメクタイト
・無機微粒子2:
アルミナナノ粒子、平均粒径40nm
・溶剤
トルエン
イソプロピルアルコール
【0081】
(防眩層の形成)
透明基材上又はハードコート層上に、表6に示す防眩層形成用組成物を表1の層構成上に塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させ、その後、紫外線照射装置を用いて照射線量150mJ/cm2で紫外線照射(フュージョンUVシステムズジャパン社製、光源Hバルブ)を行うことにより塗膜を硬化させ、硬化後の膜厚が5.0μmである表1の防眩層を形成した。
【0082】
【0083】
(低屈折率層形成用組成物)
低屈折率層形成に用いる低屈折層形成用組成物として下記の使用材料を用いた。
・屈折率調整剤:
多孔質シリカ微粒子分散液(平均粒子径75nm、固形分20%、溶剤メチルイソブチルケトン) 8.5質量部
・防汚性付与剤:
オプツールAR-110(ダイキン工業社製、固形分15%、溶剤メチルイソブチルケトン) 5.6質量部
・活性エネルギー線硬化樹脂:
ペンタエリスリトールトリアクリレート 0.4質量部
・開始剤:
Omnirad 184(IGM Resins B.V.社製) 0.07質量部・レベリング剤:
RS-77(DIC社製) 1.7質量部
・溶剤:
メチルイソブチルケトン 83.73質量部
【0084】
(低屈折率層の形成)
ハードコート層上又は防眩層上に、上記組成の低屈折率層形成用組成物を塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させ、その後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて照射線量200mJ/cm2で紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させて、硬化後の膜厚が100nmである表1及び表2の低屈折率層を形成した。
【0085】
[フィルム特性評価]
(紫外線遮蔽率)
光学フィルムの紫外線遮蔽層(紫外線吸収層)の紫外線遮蔽率を測定した。光学フィルムの基材上に形成された紫外線遮蔽層(紫外線吸収層)の紫外線遮蔽率の測定では、JIS-K5600付着性試験準拠のセロハンテープを用いて着色層から剥離し、セロハンテープ上に紫外線遮蔽層単層を転写させた。なお、光学フィルムの紫外線遮蔽層(紫外線吸収層)は、光学フィルムのうち紫外線吸収能を有する層であり、例えば、透明基材、ハードコート層1、3や着色層4である。各光学フィルムに含まれる紫外線遮蔽層(紫外線吸収層)を表7、8に示す。
紫外線遮蔽層単層の透過率を自動分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて測定し、紫外域(290~400nm)の平均透過率を算出した。なお、セロハンテープ上に紫外線遮蔽層単層を転写させた場合には、紫外線遮蔽層の無いセロハンテープ部分をリファレンスとして、平均透過率を算出した。得られた平均透過率を用いて、式(2)に示す紫外線遮蔽率を算出した。
式(2)
紫外線遮蔽率(%)=100-紫外域(290~400nm)の平均透過率(%)
【0086】
(鉛筆硬度試験)
JIS-K5400-1990に準拠した、500gの荷重をかけた鉛筆(三菱鉛筆社製 UNI、鉛筆硬度H)を用いて行う鉛筆硬度試験を、クレメンス型引掻き硬度試験機(テスター産業株式会社製、HA-301)を用いて光学フィルムの表面に実施した。キズによる外観の変化を目視で評価し、キズが観察されない場合をOK、キズが観察される場合をNGとした。
【0087】
(耐光性試験)
光学フィルムの信頼性試験として、キセノンウェザーメーター試験機(スガ試験機株式会社製、X75)を用いて、キセノンランプ照度60W/cm2(300~400nm)、試験機内温度45℃・湿度50%RHの条件下で120時間試験する耐湿熱性試験を、得られた着色層を含むそれぞれの光学フィルムに対して実施した。試験前後に自動分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて透過率測定を行い、第一乃至第三色材の吸収波長範囲の中で最小の透過率を示す波長λでの試験前後透過率差ΔTλ、試験前後でのC光源での色差ΔE*abを算出した。透過率差及び色差はゼロに近い方が良好であり、ΔE*ab≦5となるものが好ましい。
【0088】
[表示装置特性評価]
以下の実施例15~17、比較例11~14では、得られた光学フィルム7、13、14、および21~24を用いた表示装置について以下のように表示装置特性をシミュレーションにより評価した。シミュレーションにおいて、表示装置は、光学フィルムを有機EL表示装置(対象物)に接合した構成とした。
なお、光学フィルムを接合する対象物である有機EL表示装置では、白表示時は
図6に示すような分光スペクトルとなり、赤色表示、緑色表示、青色表示時は
図7に示すような単独スペクトルとなる。
(透過特性(白表示透過特性))
得られた光学フィルムの透過率を自動分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて測定し、この光学フィルムの透過率に、
図6に示す光学フィルムを介さない有機EL表示装置の白表示時の単独の分光スペクトルを掛け合わせて、光学フィルム透過後の分光スペクトルを算出した。有機EL表示装置の白表示時の単独でのスペクトル、及び光学フィルム透過後の分光スペクトルのそれぞれに比視感度をかけてY値を算出し、有機EL表示装置の白表示時の単独でのスペクトルから得られるY値を100とした時の比率を効率とすることで、表示装置の透過特性の指標として評価した。
【0089】
(色再現性)
得られた光学フィルムの透過率を自動分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて測定し、この光学フィルムの透過率に、
図7に示す光学フィルムを介さない有機EL表示装置の赤色表示、緑色表示、青色表示時の単独スペクトルを掛け合わせて、光学フィルム透過後のCIE(国際照明委員会:Commission international de l’eclairage)1931表色系の赤、緑、青単色それぞれの色度(x、y)を算出した。次に得られた赤、緑、青単色の色度を結んで得られる三角形と、DCI(Digital Cinema Initiatives)が提唱するDCI―P3の3原色、赤(x=0.680、y=0.320)、緑(x=0.265、y=0.690)、青(x=0.150、y=0.060)を結ぶ三角形、特開2011-17963を参照できる、Adobe Systems社が提唱するAdobeRGB規格の3原色、赤(x=0.640,y=0.330)、緑(x=0.210,y=0.710)、青(x=0.150,y=0.060)を結ぶ三角形、それぞれと比較して重なり合う面積を求めることで各規格の包含率を算出し、色再現性の指標として評価した。
【0090】
表1、2に示す光学フィルム1~20の光学フィルム特性評価として、紫外線遮蔽層(紫外線吸収層)の紫外線遮蔽率、鉛筆硬度、耐光性試験の結果を表7、8に示した。
【0091】
【0092】
【0093】
実施例1~14の光学フィルムは、着色層と、着色層よりも上側に配置された紫外線吸収能を有する透明基材と、を備えている。また、表7、8に示されているように、着色層よりも上側に配置された紫外線吸収能を有する層の紫外線者遮蔽率は、85%以上である。
表7、8の結果より、比較例1のように基材よりも上側に着色層を設け、紫外線遮蔽層がない場合や、比較例3、5、6のように基材に紫外線吸収機能を設けない場合や、比較例2のように紫外線吸収機能を着色層内に設けた場合には、着色層の耐光性が悪い。これらの比較例と比較して、本発明における着色層を備える光学フィルムは、着色層上層に紫外線遮蔽率85%以上の透明基材を設けることで、着色層の耐光性が大幅に改善された。また、比較例2の結果から、着色層に紫外線吸収剤を添加したとしても、耐光性を向上させることが困難であることがわかる。このように、紫外線吸収能は着色層に備えることでは効果が小さく、上層への別層形成が必要である。
更に酸素バリア層の積層や、着色層内にラジカル捕捉剤として高分子量のヒンダードアミン光安定剤、一重項酸素クエンチャーとしてジアルキルジチオカルバネートニッケル錯体を含有することで更に耐光性が改善された。なお、着色層2、3、および5を含む光学フィルムの耐光性の結果から、ヒンダードアミン系光安定剤および一重項酸素クエンチャーの2種類のうち、いずれか一種類のみが添加されていてもよいし、両方が添加されていてもよいことがわかる。
【0094】
いずれの実施例においても、鉛筆硬度の判定が「OK」とであった。また、ハードコート層3を有する比較例4では、鉛筆硬度の判定が「NG」となっている。これは、ハードコート層3の開始剤の吸収波長ピークが紫外線吸収剤の吸収波長と重なっていたためと考えられる。
実施例12に含まれるハードコート層1は紫外線吸収剤を含有する活性エネルギー線硬化樹脂で形成された紫外線遮蔽層であるが、紫外線吸収剤と光重合開始材の吸収波長帯をずらすことで紫外線遮蔽能と硬度との両立が可能であった。
【0095】
光学フィルム7、13、14及び21~24を用いた表示装置1~7での特性評価として、白表示透過特性、色再現性についてシミュレーションした結果を表9に示した。
【0096】
【0097】
表9の結果より、本発明における着色層を備える光学フィルムを貼り付けた表示装置では、DCI規格包含率が90%以上を呈し、着色層なしの比較例11に比較し、色再現性が向上した。特に第一の色材波長帯で吸収が大きい実施例15についてはDCI色度包含率も大きく向上した。また、第一の色材、第二の色材の複数の波長帯で吸収が深い比較例12では白表示透過特性が低い。このことから、着色層に複数の種類の色材が含まれている場合、各色材の極大吸収波長のうちいずれか一つのみの極大吸収波長で透過率が1%以上50%未満であることが好ましいことがわかる。また、色材の波長範囲や半値幅が規定に適合しない色材を用いた比較例13、14では色再現性評価が低い。これらに対し、実施例15~17では一定の色補正機能を呈した上で白表示透過特性にも優れることが示された。
【0098】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。
例えば、着色層30は、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤と、第1~第三の色材のうち少なくともいずれか一つの色素と、添加剤と、溶剤とを含有する着色層形成用組成物により形成されていてもよい。
特に、着色層30は、第一実施形態にてハードコート層21の組成物で挙げた活性エネルギー線硬化性樹脂に色材が含まれた構成であってもよい。これにより、着色層30の耐傷性を高め、色補正機能を良好に保つことが可能となる。さらに、光学フィルムを添付する対象物の耐傷性をより高めることができる。
【0099】
例えば、本発明の光学フィルムに他の層を設けることにより、所望の機能を付与してもよい。このような他の層としては、帯電防止層や、防汚層等を例示できる。
【符号の説明】
【0100】
1、1A、1B、1C 光学フィルム
10 基材(透明基材)
10a 第一面
10b 第二面
20 光学機能層
21 ハードコート層
22 低屈折率層
23 防眩層
30 着色層
40 酸素バリア層