(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】光学シート及び表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20240409BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20240409BHJP
H10K 59/35 20230101ALI20240409BHJP
G02B 1/11 20150101ALI20240409BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20240409BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240409BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240409BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G02B5/22
H10K50/86
H10K59/35
G02B1/11
G02B5/02 A
B32B7/023
B32B27/00 M
G09F9/00 313
(21)【出願番号】P 2022576954
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 JP2021026647
(87)【国際公開番号】W WO2022158008
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2021006750
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】石丸 佳子
(72)【発明者】
【氏名】石川 真也
【審査官】中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-056865(JP,A)
【文献】特開2001-147319(JP,A)
【文献】特開2018-136361(JP,A)
【文献】特開2011-141356(JP,A)
【文献】特開2009-115882(JP,A)
【文献】特開2009-031733(JP,A)
【文献】特開2010-061066(JP,A)
【文献】特開2003-315544(JP,A)
【文献】特開平11-231301(JP,A)
【文献】特開2008-083597(JP,A)
【文献】国際公開第2006/118277(WO,A1)
【文献】特開平10-226172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G02B 1/11
G02B 5/02
B32B 7/023
B32B 27/00
G09F 9/00
H10K 50/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤と、色素とを含有する第一の粘着層と、
前記第一の粘着層の第一面側に積層される紫外線遮蔽層と、
を備え、
前記色素は、
極大吸収波長が470~530nmの範囲内にあり、かつ吸光スペクトルの半値幅が15~
26nm
のピロメテンコバルト錯体染料である第一の色材と、
極大吸収波長が560~620nmの範囲内にあり、かつ吸光スペクトルの半値幅が15~55nmである第二の色材
、および400~800nmの波長範囲において最も透過率の低い波長が650~800nmの範囲内にある第三の色
材のうち、いずれか
一方または両方の色材と、を少なくとも含有し、
前記第一の粘着層において、前記色素の吸収波長帯である470~530nm、560~620nm、および650~800nmのうち、いずれか一つの
吸収波長帯
の極大吸収波長で
の透過率が1%以上50%未満であり、その他の色材の吸収波長帯
の極大吸収波長での透過率は50%以上であり、
前記紫外線遮蔽層のJIS L 1925に準拠した紫外線遮蔽率が85%以上であり、
温度45℃・湿度50%RH条件にて波長300~400nmでの照度が60W/cm
2のキセノンランプを120時間照射する耐光性試験の前後の色度差であるΔE*abが、下記式(1):
ΔE*ab≦5 式(1)
を満たす、光学シート。
【請求項2】
前記第一の粘着層が、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、または一重項酸素クエンチャーの少なくとも1種以上を含有する、請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記ラジカル捕捉剤が分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤である、請求項2に記載の光学シート。
【請求項4】
前記一重項酸素クエンチャーがジアルキルホスフェイト、ジアルキルジチオカルバネートまたはベンゼンジチオールあるいはその類似ジチオールの遷移金属錯体である、請求項2に記載の光学シート。
【請求項5】
前記第一の粘着層に含まれる前記
第二の色材および前記第三の色材が、ポルフィリン構造、メロシアニン構造、フタロシアニン構造、アゾ構造、シアニン構造、スクアリリウム構造、クマリン構造、ポリエン構造、キノン構造、テトラジポルフィリン構造、ピロメテン構造及びインジゴ構造のいずれかを有する化合物及びその金属錯体からなる群から選択される1以上の化合物を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項6】
前記紫外線遮蔽層が、粘着剤と紫外線吸収剤とを含有する第二の粘着層である、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項7】
前記紫外線遮蔽層が、透明基材である、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項8】
前記第一の粘着層の前記第一面側に、酸素透過度が10cc/(m
2・day・atm)以下である酸素バリア層を更に備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項9】
前記紫外線遮蔽層の上層に、入射した外光の反射を低減する光学機能層をさらに備え、
前記光学機能層は、
高屈折率層および低屈折率層を含む反射防止層、
高屈折率層および防眩層を含む反射防止層、
高屈折率層、防眩層および低屈折率層を含む反射防止層、または
防眩層を含む反射防止層のうち、いずれか一つを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項10】
帯電防止層または防汚層を更に備える、請求項1~9のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項11】
前記高屈折率層、前記防眩層、または前記低屈折率層のうち少なくとも1つは、帯電防止性をさらに有し、
前記高屈折率層、前記防眩層、または前記低屈折率層のうち少なくとも1つは、防汚性をさらに有する、請求項9に記載の光学シート。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の光学シートを備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学シート及び表示装置に関する。
本願は、2021年1月19日に日本に出願された特願2021-006750号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の色純度向上において、カラーフィルタを用いて表示装置の光源から発せられる白色光や単色光を色分離、もしくは補正し、狭半値化させる手法が知られている。
【0003】
カラーフィルタにより色純度を向上させる場合、色材濃度を高くしたり、フィルタを厚くしたりする必要がある。色材濃度を高くすると、フォトリソグラフィ特性が悪化することがある。フィルタを厚くすると、画素形状や視野角特性が悪化することがある。
さらに、色純度を向上させたカラーフィルタは概して透過率が低く、輝度効率を低下させやすい。
【0004】
上記に鑑み、カラーフィルタを用いずに色純度を向上させる方法が提案されている。
特許文献1には、粘着樹脂層に所定の波長帯域の光の吸収が強い色材を含有させた光学フィルタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2019-56865号公報
【文献】日本国特許第5917659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
色補正層に用いる色材に含まれる機能性色素には、耐光性や耐熱性、耐湿熱性が高いとは言えないものが少なくない。したがって、このような機能性色素を用いた光学フィルタは、使用とともに機能性色素の機能が低下し、色補正機能を十分に発揮できなくなる場合がある。
特許文献2には、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等を粘着層に混合して耐光性を改善する技術が開示されている。
発明者らは、特許文献2に記載の手法では耐光性が十分改善しない可能性があることを見出した。さらに、解決法について検討し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は、色補正機能が良好であり、かつ長期間の使用に耐える光学シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様に係る光学シートは、粘着剤と、色素とを含有する第一の粘着層と、前記第一の粘着層の第一面側に積層される紫外線遮蔽層と、を備え、前記色素は、極大吸収波長が470~530nmの範囲内にあり、かつ吸光スペクトルの半値幅が15~45nmである第一の色材と、極大吸収波長が560~620nmの範囲内にあり、かつ吸光スペクトルの半値幅が15~55nmである第二の色材と、400~800nmの波長範囲において最も透過率の低い波長が650~800nmの範囲内にある第三の色材と、のいずれか一つを少なくとも含有し、前記第一の粘着層において、前記色素の吸収波長帯のうちいずれか一つの波長帯で透過率が1%以上50%未満の極大吸収波長をもち、前記紫外線遮蔽層のJIS L 1925に準拠した紫外線遮蔽率が85%以上であり、温度45℃・湿度50%RH条件にて波長300~400nmでの照度が60W/cm2のキセノンランプを120時間照射する耐光性試験の前後の色度差であるΔE*abが、下記式(1):
ΔE*ab≦5 式(1)
を満たす。
【0009】
本発明の第二の態様に係る表示装置は、光源と、第一の粘着層側を光源に向けて配置された第一の態様に係る光学シートとを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記態様によれば、色補正機能が良好であり、かつ長期間の使用に耐える光学シート、および光学シートを用いた表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る光学シート1の模式断面図である。
【
図2】本発明の第二実施形態に係る光学シート1Aの模式断面図である。
【
図3】本発明の第三実施形態に係る光学シート1Bの模式断面図である。
【
図4】本発明の第四実施形態に係る光学シート1Cの模式断面図である。
【
図5】本発明の第五実施形態に係る光学シート1Dの模式断面図である。
【
図6】本発明の第六実施形態に係る光学シート1Eの模式断面図である。
【
図7】本発明の第七実施形態に係る光学シート1Fの模式断面図である。
【
図8】透明基材の光線透過プロファイルを示すグラフである。
【
図9】透過特性の評価に用いた光源のスペクトルである。
【
図10】色再現性の評価に用いた光源のスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~
図7は、それぞれ本発明の第一~第七実施形態に係る光学シート1、1A~1Fの模式断面図である。
図1~
図7における上側が、表示装置の表示画像を観察するときの観察側に相当する。
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る光学シート1の模式断面図である。光学シート1は、着色粘着層(第一の粘着層)10と、着色粘着層10上に形成された紫外線遮蔽層20とを備えている。光学シート1の厚さ方向の両面が粘着性を有するシートとして構成されている。光学シート1の厚さ方向両側の面は、使用時までセパレータS等により保護される。セパレータSとして、樹脂フィルムや紙等を使用できる。セパレータSが透明である場合は、セパレータSを剥離せずに光学シート1を使用できる。
本実施形態では、着色粘着層10と紫外線遮蔽層20とが積層された方向を厚さ方向といい、厚さ方向における一方側(表示装置の表示画像を観察するときの観察側)を上側といい、その反対側を下側という。
【0013】
着色粘着層10は、粘着剤と、色素とを含有する。粘着剤は、粘着性を発揮する樹脂である。粘着剤の樹脂成分には特に制限はなく、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤等を例示できる。色素は、可視光線の波長帯を選択的に吸収する。着色粘着層10は、粘着性を発揮するベース粘着剤に色素が含まれた構成である。
色素は、以下に示す第一~第三の3種類の色材の群のうち少なくともいずれか一つを含む。含まれる色材の種類は一種類に限定されず、二種類以上の色材が含まれていてもよい。
第一の色材は、極大吸収波長が470nm~530nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅(半値全幅)が15nm~45nmである。
第二の色材は、極大吸収波長が560nm~620nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅(半値全幅)が15nm~55nmである。
第三の色材は、400~800nmの波長範囲において最も透過率の低い波長が650~800nmの範囲内にある。
なお、以降の説明において、吸光スペクトルの半値幅は、半値全幅を指す。
着色粘着層10は、前記色材の吸収波長帯のうちいずれか1つの波長帯の極大吸収波長の透過率が1%以上50%未満となる吸収をもつ。
着色粘着層10に含有させる第一乃至第三の色材として、上記の吸収特性を有する色材を使用することにより、表示装置が発光する可視光線のうち、相対的に発光強度が低い波長域の可視光線を着色粘着層10に吸収させることができる。例えば、第一、第二、第三の色材により、400~800nmの波長範囲の可視光線のうち、それぞれ、470nm~530nm、560nm~620nm、650~800nmの範囲内にある可視光を着色粘着層10に吸収させることができる。第一、第二、第三の色材により吸収される波長は、例えば、
図9に示される有機EL表示装置の白表示時の分光スペクトルにおける表示装置が発光する可視光線のうち、相対的に発光強度が低い波長域と重なる範囲である。なお、表示装置は上記の有機EL表示装置に限られず、その他の表示装置でもよい。
【0014】
第一の色材乃至第三の色材として、ポルフィリン構造、メロシアニン構造、フタロシアニン構造、アゾ構造、シアニン構造、スクアリリウム構造、クマリン構造、ポリエン構造、キノン構造、テトラジポルフィリン構造、ピロメテン構造及びインジゴ構造のいずれかを有する化合物及びその金属錯体からなる群から選択される1以上の化合物を含む色材を使用できる。特に、分子内にポルフィリン構造やピロメテン構造、フタロシアニン構造を持つ金属錯体、スクアリリウム構造を用いることがより好ましい。
【0015】
着色粘着層10は、ラジカル捕捉剤、一重項酸素クエンチャー及び過酸化物分解剤の少なくとも1種類を含有してもよい。
着色粘着層10に含まれる色材は、酸素影響下で促進される光線、熱などによっても劣化する。ラジカル捕捉剤を着色粘着層10に混合することにより、色素が酸化劣化する際のラジカルを捕捉して自動酸化による色材の劣化を防ぐことができ、色補正機能の持続時間をさらに長くすることができる。
また、一重項酸素クエンチャーを着色粘着層10に混合することにより、色素を酸化劣化(退色)させやすい性質を持つ反応性の高い一重項酸素を不活性化し、色素の酸化劣化(退色)を抑制することができる。
過酸化物分解剤を着色粘着層10に混合した場合、色素が酸化劣化した際に発生する過酸化物を過酸化物分解剤が分解するため、自動酸化サイクルを停止させ、色素劣化(退色)を抑制できる。
ラジカル捕捉剤と一重項酸素クエンチャーとが併用されてもよい。さらに、過酸化物分解剤が組み合わされてもよい。
【0016】
ラジカル捕捉剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤を使用できる。分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤で高い退色抑制効果が得られるため、特に好ましい。ラジカル捕捉剤の分子量が低い場合、揮発しやすいため、着色粘着層10内へ留まる分子が少なく、十分な退色抑制効果を得ることが難しい場合がある。ラジカル捕捉剤として好適に用いられる材料としては、例えば、BASF社製Chimassorb2020FDL、Chimassorb944FDL、Tinuvin622、ADEKA社製LA-63Pなどが挙げられる。
【0017】
一重項酸素クエンチャーとしては遷移金属錯体、色素類、アミン類、フェノール類、スルフィド類が挙げられるが、特に好適に用いられる材料としては、ジアルキルホスフェイト、ジアルキルジチオカルバネート又はベンゼンジチオールあるいはその類似ジチオールの遷移金属錯体を例示でき、これらの遷移金属錯体の中心金属としてはニッケル、銅又はコバルトが好適に用いられる。
【0018】
過酸化物分解剤は、色素が酸化劣化した際に発生する過酸化物を分解し、自動酸化サイクルを停止させ、色素劣化(退色)を抑制する働きがある。過酸化物分解剤としては、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤を用いることができる。
【0019】
リン系酸化防止剤としては、例えば2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、及び6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンなどが挙げられる。
【0020】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル-ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオネート]、2-メルカプトベンズイミダゾール、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、2-メルカプトベンゾチアゾールなどが挙げられる。
【0021】
紫外線遮蔽層20は、着色粘着層10に含まれる色素の劣化を抑制するため、紫外線吸収剤を含有している。これにより、紫外線遮蔽層20は85%以上の紫外線遮蔽率を有する。ここで、紫外線遮蔽率は、JIS L 1925に準拠して測定される値であり、以下の式により算出される。
紫外線遮蔽率(%)=100-波長290~400nmの紫外線の平均透過率(%)
【0022】
紫外線遮蔽層20に含有させる紫外線吸収剤の紫外線領域における吸収波長域は、290~370nmの範囲であることが好ましい。このような紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、しゅう酸アニリド系、シアノアクリレート系の化合物を例示できる。紫外線吸収剤は、着色粘着層10に含まれる色素の劣化を抑制するために配合される。このため、紫外線領域のうち、着色粘着層10に含まれる色素の劣化に寄与する波長域の光の吸収性を有する紫外線吸収剤を使用する。
紫外線遮蔽層20は、粘着性を発揮する樹脂をさらに含んでいてもよい。以降、紫外線遮蔽層20が、粘着性を発揮する樹脂を含む場合には、「紫外線吸収粘着層20」または「第二の粘着層20」とも呼ぶ。紫外線吸収粘着層20において、粘着性を発揮する樹脂成分には特に制限はなく、着色粘着層10と同様の樹脂を使用できる。
【0023】
光学シート1は、樹脂等で形成されたベースフィルム上に着色粘着層10または紫外線遮蔽層(紫外線吸収粘着層)20の一方を形成し、その上に他方を形成してからベースフィルムを剥離することにより製造できる。ベースフィルムを剥離せずに、そのままセパレータSとして使用してもよい。
着色粘着層10および紫外線遮蔽層(紫外線吸収粘着層)20は、例えば各層の構成材料を含む塗工液を塗工し、乾燥することで形成できる。
【0024】
光学シート1は、セパレータSを剥離することにより、着色粘着層10または紫外線遮蔽層(紫外線吸収粘着層)20を様々な対象物に接合して取り付けることができ、色補正能を付与できる。
光学シート1を取り付ける対象としては、反射防止フィルムや防眩フィルム等の各種光学機能性フィルムや、ディスプレイ等の表示装置等を例示できる。光学シート1は、入射する紫外線を含む外光が紫外線遮蔽層(紫外線吸収粘着層)20を透過してから着色粘着層10に入射するように取り付けられる。
光源から出射された光(表示装置側から出射された光)は、着色粘着層10を透過する際に、含まれる色材の極大吸収波長付近の波長成分が吸収される。これにより、表示装置の色純度を向上できる。さらに、カラーフィルタと異なり、色材濃度をそれほど高くする必要がないため、表示装置の輝度を過度に低下させずに色純度を向上できる。
【0025】
着色粘着層10に含まれる色材は、優れた色補正機能を有するものの、光線、特に紫外線に対する耐性が十分でない場合がある。このため、紫外線が照射されると経時的に劣化し、極大吸収波長付近の光を吸収できなくなる。
本実施形態の光学シート1において、紫外線遮蔽層(紫外線吸収粘着層)20は高い紫外線遮蔽率を有するため、上述のように取り付けると、外光に含まれる紫外線の大部分は紫外線遮蔽層(紫外線吸収粘着層)20を透過せず、着色粘着層10に到達しない。これにより、耐光性試験(キセノンランプ照度60W/cm2(300~400nm)、温度45℃・湿度50%RH条件にて120時間照射)前後の色度差であるΔE*abが、下記式(1):
ΔE*ab≦5 式(1)
を満たすことができる。つまり、着色粘着層10に含まれる色材の劣化を防ぐことができ、色補正機能を長時間持続させることができる。なお、式(1)のΔE*abは、CIE(国際照明委員会:Commission international de l’eclairage)で規格化された色度差である。
【0026】
<第二実施形態>
本発明の第二実施形態について、
図2を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図2は、本実施形態の光学シート1Aの層構成を示す模式断面図である。光学シート1Aは、紫外線吸収粘着層20に代えて、透明基材30を備えている。透明基材30は粘着性を有さないため、セパレータSは、着色粘着層10側にのみ配置されている。
【0027】
透明基材30は、85%以上の紫外線遮蔽率を有し、紫外線遮蔽層として機能する。紫外線遮蔽率の定義は、紫外線遮蔽層(紫外線吸収粘着層)20で説明したものと同じである。
透明基材30の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、シクロオレフィンコポリマー、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン等の透明樹脂や無機ガラスを利用できる。この中でも、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルム(PET)、トリアセチルセルロースからなるフィルム(TAC)、ポリメチルメタクリレートからなるフィルム(PMMA)、ポリエステルからなるフィルムを好適に利用できる。透明基材30の厚みは、特に限定されないが、10~100μmとすることが好ましい。
【0028】
図8に、これらの材質からなる透明基材の光線透過プロファイルを示す。
図8において、透明基材の紫外線遮蔽率は以下の通りであり、いずれも透明基材30として好適に使用できる。
TAC:91.7%
PMMA:90.2%
PET:88.1%
透明基材の紫外線遮蔽率は、樹脂の吸収特性そのものによるものであってもよいし、紫外線遮蔽層(紫外線吸収粘着層)20で例示した紫外線吸収剤を用いてもよく、特に限定されない。
【0029】
本実施形態に係る光学シート1Aでは、透明基材30が着色粘着層10に含まれる色材の紫外線による劣化を抑制する。その結果、第一実施形態に係る光学シート1と同様の効果を奏する。
光学シート1Aにおいては、透明基材30の着色粘着層10が設けられていない側(透明基材30の上側)に透明の粘着層を設けてもよい。このようにすると、着色粘着層10が設けられていない側を対象に接合でき、汎用性が高まる。
【0030】
<第三実施形態>
本発明の第三実施形態について、
図3を参照して説明する。
図3は、本実施形態の光学シート1Bの層構成を示す模式断面図である。光学シート1Bは、光学シート1の構成に、紫外線遮蔽層(紫外線吸収粘着層)20において、着色粘着層10が設けられた面と反対側の面(紫外線遮蔽層20の上面)に透明基材30を備えている。透明基材30は、紫外線遮蔽層20で例示した紫外線吸収剤を含んでいてもよい。
セパレータSは、着色粘着層10において、紫外線遮蔽層(紫外線吸収粘着層)20が設けられた面と反対側の面(着色粘着層10の下面)にのみ配置されている。
本実施形態に係る光学シート1Bでは、透明基材30及び紫外線遮蔽層(紫外線吸収粘着層)20が着色粘着層10に含まれる色材の紫外線による劣化を抑制する。その結果、第一実施形態に係る光学シート1及び/又は第二実施形態に係る光学シート1Aと同様か、それ以上の効果を奏する。
光学シート1Bにおいては、透明基材30の着色粘着層10が設けられていない側(透明基材30の上側)に透明の粘着層を設けてもよい。このようにすると、着色粘着層10が設けられていない側(透明基材30の上側)を対象に接合でき、汎用性が高まる。
【0031】
<第四実施形態>
本発明の第四実施形態について、
図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態の光学シート1Cの層構成を示す模式断面図である。光学シート1Cは、透明基材30において、着色粘着層10が設けられた面と反対側の面(透明基材30の上面)に酸素バリア層40を備えている。透明基材30が樹脂の吸収特性や紫外線吸収粘着層20で例示した紫外線吸収剤含有し、紫外線遮蔽能をもつ場合には、
図4に示す一例のように、透明基材30が紫外線遮蔽層となってもよい。
【0032】
酸素バリア層40は光透過性を有する透明な層であり、酸素透過度は、10cc/(m2・day・atm)以下であり、5cc/(m2・day・atm)以下であることがより好ましく、1cc/(m2・day・atm)以下であることがさらに好ましい。酸素バリア層40の形成材料は、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、塩化ビリニデン、シロキサン樹脂等を含有するのが好ましく、三菱ガス化学社製のマクシーブ(登録商標)、株式会社クラレ製のエバール、旭化成株式会社のサランラテックス、サランレジン等を用いることができる。また、酸素バリア層40の厚さは特に限定されず、所望の酸素バリア性が得られる厚さとすればよい。
【0033】
また、酸素バリア層40には、無機物粒子(無機化合物からなる粒子)が分散していてもよい。無機物粒子により、酸素透過度をより低くでき、着色粘着層10の酸化劣化(退色)をより抑制することができる。無機物粒子の大きさや含有量は、特に限定されず、酸素バリア層40の厚さ等に応じて、適宜、設定すればよい。酸素バリア層40に分散させる無機物粒子の大きさ(最大長)は、酸素バリア層40の厚さ未満であるのが好ましく、小さいほど有利である。なお、酸素バリア層40に分散させる無機物粒子の大きさは、均一でも不均一でもよい。酸素バリア層40に分散する無機物粒子としては、具体的には、シリカ粒子、アルミナ粒子、銀粒子、銅粒子、チタン粒子、ジルコニア粒子、スズ粒子等が挙げられる。
【0034】
本実施形態に係る光学シート1Cでは、酸素バリア層40により、外気中の酸素影響下で促進される光線、熱などによる着色粘着層10に含まれる色材の劣化が抑制され、色補正機能をより長時間持続させることができる。
本実施形態において、酸素バリア層40の数や位置は適宜設定できる。例えば、酸素バリア層40は、着色粘着層10より上層の観察者側に積層されていればよい。また、第二及び第四の実施形態に係る光学シート1A、1Cにおいて、着色粘着層10と透明基材30との間に酸素バリア層40が設けられていてもよい。また、第三の実施形態に係る光学シート1Bにおいて、着色粘着層10と紫外線吸収粘着層20との間、もしくは、紫外線吸収粘着層20と透明基材30との間に酸素バリア層40が設けられていてもよい。酸素バリア層40を設けることによって、第四の実施形態と同様に、外気に含まれる酸素は、酸素バリア層40を透過しなければ着色粘着層10に到達しない。これにより外気中の酸素による色材の劣化が抑制され、色補正機能をより長時間持続させることができる。
光学シート1Cにおいては、酸素バリア層40上に透明の粘着層を設けてもよい。このようにすると、酸素バリア層40側を対象に接合でき、汎用性が高まる。
【0035】
<第五実施形態>
本発明の第五実施形態について、
図5を参照して説明する。
図5は、本実施形態の光学シート1Dの層構成を示す模式断面図である。光学シート1Dは、透明基材30と、透明基材30の第一面側(透明基材30の下面側)に積層された着色粘着層10と、透明基材30上の第一面と反対側の第二面(透明基材30の上面側)に形成された光学機能層50とを備えている。光学シート1Dでは光学機能層50としてハードコート層51と、ハードコート層51上に形成された低屈折率層52とを備えている。
ハードコート層51の硬度は、表面の500g荷重での鉛筆硬度がH以上であることが好ましい。
【0036】
ハードコート層51は、硬質な樹脂層であり、光学シート1Dの耐傷性を高める。また、ハードコート層51は、低屈折率層52よりも屈折率が高くてもよい。ハードコート層51を構成する樹脂としては、紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射により重合して硬化する樹脂であり、例えば、単官能、2官能又は3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを使用できる。尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方の総称であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルの両方の総称である。
【0037】
単官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタン、アダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレート等のアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
2官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0040】
また、活性エネルギー線硬化性樹脂として、ウレタン(メタ)アクリレートも使用できる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることによって得られるものを挙げることができる。
【0041】
ウレタン(メタ)アクリレートの例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0042】
上述した樹脂は1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上述した樹脂は、ハードコート層形成用組成物中でモノマーであってもよいし、一部が重合したオリゴマーであってもよい。
【0043】
ハードコート層51は、着色粘着層10に含まれる色素の劣化を抑制するため、前述した紫外線吸収剤を含有していてもよい。ただし、紫外線吸収剤を含有する組成物を硬化させる際、紫外線吸収剤による紫外線吸収量が多くなりすぎると、組成物の硬化が不十分となり、得られる光学シートの表面硬度が不足してしまう場合がある。このため、紫外線領域における吸収波長域が、光重合開始剤の紫外線領域における吸収波長域と異なる範囲である紫外線吸収剤を使用し、紫外線吸収剤を含有する際の硬化阻害を抑制することが好ましく、アシルフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤を好適に使用することができる。アシルフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドやフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドなどを例示できる。
【0044】
また、ハードコート層51の形成用組成物には、屈折率調整や硬度付与を目的として金属酸化物微粒子を含有させてもよい。金属酸化物微粒子としては、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0045】
紫外線硬化樹脂等のエネルギー線硬化型化合物でハードコート層51を形成すると、簡便に形成できる。この場合は、エネルギー線硬化型化合物、重合開始剤、および紫外線吸収剤を含有する塗工液を塗布し、対応するエネルギー線を照射することにより、ハードコート層51を形成できる。
【0046】
低屈折率層52は、光学シート1Dが表示装置に適用される際に、表示を見る使用者(視認者)に最も近い側に配置される。低屈折率層52は、外光の強い反射を防ぎ、表示装置の視認性を向上する。
低屈折率層52は、無機物や無機化合物からなる層であってもよい。無機物や無機化合物としては、LiF、MgF、3NaF・AlF、AlF、Na3AlF6等の微粒子やシリカ微粒子を例示できる。また、シリカ微粒子が、多孔質シリカ微粒子や中空シリカ微粒子等の粒子内部に空隙を有すると、低屈折率層の低屈折率化に有効である。また、低屈折率層52の形成用組成物には、ハードコート層51で説明した光重合開始剤や溶剤、その他の添加剤を適宜配合してもよい。
低屈折率層52の屈折率は、透明基材30の屈折率よりも低ければよく、1.55以下であることが好ましい。また、低屈折率層52の膜厚は、特に限定されないが、40nm~1μmとすることが好ましい。
【0047】
低屈折率層52は、珪素酸化物、フッ素含有シラン化合物、フルオロアルキルシラザン、フルオロアルキルシラン、フッ素含有珪素系化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤のいずれかを含有してもよい。これらの材料によれば、低屈折率層52に撥水性及び/又は撥油性を付与できるため、防汚性を高めることができる。
低屈折率層52は、例えば、蒸着やスパッタリング等により形成してもよい。また、低屈折率層52の構成材料を含む塗工液を塗工し、乾燥することで形成してもよい。
【0048】
本実施形態に係る光学シート1Dは、上述した各実施形態と同様の効果を奏するとともに、光学機能層50に基づく光学機能を発揮できる。
【0049】
<第六実施形態>
本発明の第六実施形態について、
図6を参照して説明する。
図6は、本実施形態の光学シート1Eの層構成を示す模式断面図である。光学シート1Eは、着色粘着層10、紫外線遮蔽層20、透明基材30、および光学機能層50を備える。紫外線遮蔽層20は透明基材30の第一面側(透明基材30の下面側)に形成されている。光学機能層50は、透明基材30上の第一面と反対側の第二面(透明基材30の上面側)に形成されている。光学シート1Eでは光学機能層50として防眩層53を備えている。
また、透明基材30が、樹脂の吸収特性や紫外線遮蔽層20で例示した紫外線吸収剤含有により紫外線遮蔽能を持つ場合には、光学シート1Eは、着色粘着層10、透明基材30、および光学機能層50を備えていればよい。
【0050】
防眩層53は、表面に微細な凹凸を有し、この凹凸で外光を散乱させることにより外光の映り込みを低減する層である。防眩層53は、活性エネルギー線硬化性樹脂と、必要に応じて有機微粒子及び/又は無機微粒子とを含有する防眩層形成用組成物を塗布し硬化させることによって形成することができる。防眩層形成用組成物に用いる活性エネルギー線硬化性樹脂としては、ハードコート層51で説明した樹脂を使用することができる。防眩層53の膜厚は、特に限定されないが、1~10μmであることが好ましい。
【0051】
防眩層形成用組成物に用いる有機微粒子は、主として防眩層53の表面に微細な凹凸を形成し、外光を拡散させる機能を付与する材料である。有機微粒子としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン系樹脂等の透光性樹脂材料からなる樹脂粒子を使用できる。屈折率や樹脂粒子の分散性を調整するために、材質(屈折率)の異なる2種類以上の樹脂粒子を混合して使用してもよい。
【0052】
防眩層形成用組成物に用いる無機微粒子は、主として防眩層53中の有機微粒子の沈降や凝集を調整するための材料である。無機微粒子としては、シリカ微粒子や、金属酸化物微粒子、各種の鉱物微粒子等を使用することができる。シリカ微粒子としては、例えば、コロイダルシリカや(メタ)アクリロイル基等の反応性官能基で表面修飾されたシリカ微粒子等を使用することができる。金属酸化物微粒子としては、例えば、アルミナや酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタニア、ジルコニア等を使用することができる。鉱物微粒子としては、例えば、雲母、合成雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、層状チタン酸、スメクタイト、合成スメクタイト等を使用することができる。鉱物微粒子は、天然物及び合成物(置換体、誘導体を含む)のいずれであってもよく、両者の混合物を使用してもよい。鉱物微粒子の中でも、層状有機粘土がより好ましい。層状有機粘土とは、膨潤性粘土の層間に有機オニウムイオンを導入したものをいう。有機オニウムイオンは、膨潤性粘土の陽イオン交換性を利用して有機化することができるものであれば制限されない。鉱物微粒子として、層状有機粘土鉱物を用いる場合、上述した合成スメクタイトを好適に使用できる。合成スメクタイトは、防眩層形成用の塗工液の粘性を増加させ、樹脂粒子及び無機微粒子の沈降を抑制して、光学機能層の表面の凹凸形状を調整する機能を有する。
【0053】
防眩層形成用組成物は、珪素酸化物、フッ素含有シラン化合物、フルオロアルキルシラザン、フルオロアルキルシラン、フッ素含有珪素系化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤のいずれかを含有してもよい。これらの材料により、防眩層53に撥水性及び/又は撥油性を付与できるため、防汚性を高めることができる。
【0054】
防眩層53は、材料を偏在させることにより、着色粘着層10側(下側)から順に、相対的に屈折率が高い層と、相対的に屈折率が低い層とが積層された層として形成してもよい。材料を偏在させた防眩層53は、例えば、表面修飾したシリカ微粒子又は中空シリカ微粒子を含有する低屈折率材料と、高屈折率材料と、を含有する組成物を塗工し、両者の表面自由エネルギーの差を利用して相分離させることにより形成することができる。防眩層53を相分離した2層で構成する場合、透明基材30側の相対的に屈折率が高い層の屈折率を1.50~2.40とし、光学シート1Eの表面側の相対的に屈折率が低い層の屈折率を1.20~1.55とすることが好ましい。防眩層53は、例えば各層の構成材料を含む塗工液を塗工し、乾燥することで形成できる。
本実施形態に係る光学シート1Eは、上述した各実施形態と同様の効果を奏するとともに、光学機能層50に基づく光学機能を発揮できる。
【0055】
<第七実施形態>
本発明の第七実施形態について、
図7を参照して説明する。
図7は、本実施形態の光学シート1Fの層構成を示す模式断面図である。光学シート1Fは、着色粘着層10、紫外線遮蔽層20、透明基材30、および光学機能層50を備える。紫外線遮蔽層20は透明基材30の第一面側(透明基材30の下面側)に形成されている。光学機能層50は、透明基材30上の第一面と反対側の第二面(透明基材30の上面側)に形成されている。光学シート1Eでは光学機能層50として、防眩層53と、防眩層53の上に形成された低屈折率層52と、を備えている。
また、透明基材30が、樹脂の吸収特性や紫外線遮蔽層20で例示した紫外線吸収剤含有により紫外線遮蔽能をもつ場合には、光学シート1Fは、着色粘着層10、透明基材30、および光学機能層50を備えていればよい。
【0056】
光学シート1Fは、透明基材30の第一面側(透明基材30の下面側)に紫外線遮蔽層20及び着色粘着層10、または着色粘着層10を積層し、透明基材30上の第一面と反対側の第二面(透明基材30の上面側)に防眩層53及び低屈折率層52を順次形成することにより製造できる。
【0057】
本実施形態に係る光学シート1Fでは、防眩層53および低屈折率層52により外光の映り込みや強い反射を防ぎ、表示装置の視認性を向上させることができる。
本実施形態において、光学機能層50は、上述した構成に限られず、構成を変更することにより発揮する光学機能も変化する。
例えば、低屈折率層と高屈折率層とを複数組み合わせた反射防止層も、本発明における光学機能層50の一例である。低屈折率層は第五実施形態にて説明した低屈折率層52と同様の構造でもよい。高屈折率層は、低屈折率層よりも下面に配置され、低屈折率層よりも高い屈折率を有していてもよい。低屈折率層と高屈折率層とを組み合わせた反射防止層によれば、外光の強い反射を防ぎ、表示装置の視認性を向上することができる。
また、高屈折率層および防眩層を含む反射防止層も、本発明における光学機能層50の一例である。防眩層は第六実施形態にて説明した防眩層53と同様の構造でもよい。高屈折率層は、防眩層53よりも下面に配置され、防眩層53よりも高い屈折率を有していてもよい。また、高屈折率層および防眩層を含む反射防止層は、さらに低屈折率層52を有していてもよい。これらの構成により、表示装置の視認性をさらに向上することができる。
【0058】
また、本実施形態においては、光学機能層50に紫外線遮蔽機能(紫外線吸収能)を付与することにより、紫外線遮蔽層として機能させてもよい。この場合、透明基材30は、紫外線遮蔽機能を有さなくてもよい。光学機能層50に紫外線遮蔽機能を持たせる場合は、ハードコート層51や防眩層53に紫外線吸収剤を添加すればよい。紫外線硬化樹脂製のハードコート層51に紫外線吸収剤を含有させる場合は、重合開始剤の紫外線領域における吸収波長域と、紫外線吸収剤の紫外線領域における吸収波長域とが異なることが好ましい。
【実施例】
【0059】
本発明に係る光学シートについて、実施例および比較例を用いてさらに説明する。本発明は、以下の各実施例の具体的内容によって何ら限定されない。
【0060】
(実施例1~17、比較例1~12)
以下の実施例及び比較例では、表1~3に示す層構成の光学シート1~22を作製し、作製した光学シートの特性を評価した。また、光学シート6、11、12及び19~22を用いた有機EL表示装置1~7の光学特性をシミュレーションにより確認した。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
<光学シートの作製>
以下、各層の形成方法を説明する。
【0065】
(基材)
下記の透明基材を用いた。
・TAC:トリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製 TG60UL、基材厚60μm、紫外線遮蔽率92.9%)
・PMMA1:ポリメチルメタクリレートフィルム(住友化学社製 W001U80、基材厚80μm、紫外線遮蔽率93.4%)
・PMMA2:ポリメチルメタクリレートフィルム(住友化学社製 W002N80、基材厚80μm、紫外線遮蔽率13.9%)
・PET1:ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製 SRF、基材厚80μm、紫外線遮蔽率 88.3%)
・PET2:ポリエチレンテレフタレートフィルム(SKC社製 TOR20、基材厚40μm、紫外線遮蔽率88.6%)
【0066】
(光学機能層の作製)
[酸素バリア層の形成]
表1に示した実施例7の透明基材上に、PVA117(クラレ社製)80%水溶液を塗布し、乾燥させ、酸素透過度が1cc/(m2・day・atm)である酸素バリア層を形成した。
【0067】
[ハードコート層の形成]
(ハードコート形成用組成物)
下記のハードコート層形成に用いるハードコート層形成用組成物の使用材料を用い、表4に示す組成物を調製した。
・活性エネルギー線硬化性樹脂:
UA-306H(共栄社化学社製、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネート ウレタンプレポリマー)
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
PETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート)
・開始剤:
Omnirad TPO(IGM Resins B.V.社製)
・紫外線吸収剤:
Tinuvin479(BASFジャパン社製、極大吸収波長 322nm)
LA-36(ADEKA社製、極大吸収波長 310nm、350nm)
・溶剤:
MEK(メチルエチルケトン)
酢酸メチル
【0068】
【0069】
表1~表3に示す透明基材または酸素バリア層上に、表4に示すハードコート形成用組成物を塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させ、その後、紫外線照射装置を用いて照射線量150mJ/cm2で紫外線照射(フュージョンUVシステムズジャパン社製、光源Hバルブ)を行うことにより塗膜を硬化させ、硬化後の膜厚が5.0μmである表1~表3に記載のハードコート層1及び2を形成した。なお、ハードコート層2は紫外線吸収剤を含むので、紫外線遮蔽層ともなる。
【0070】
[低屈折率層の形成]
(低屈折率層形成用組成物)
低屈折率層形成に用いる低屈折層形成用組成物として下記の使用材料を用いた。
・屈折率調整剤:
多孔質シリカ微粒子分散液(平均粒子径75nm、固形分20%、溶剤メチルイソブチルケトン) 8.5質量部
・防汚性付与剤:
オプツールAR-110(ダイキン工業社製、固形分15%、溶剤メチルイソブチルケトン) 5.6質量部
・活性エネルギー線硬化性樹脂:
ペンタエリスリトールトリアクリレート 0.4質量部
・開始剤:
Omnirad 184(IGM Resins B.V.社製) 0.07質量部
・レベリング剤:
RS-77(DIC社製) 1.7質量部
・溶剤:
メチルイソブチルケトン 83.73質量部
【0071】
表1~表3に示すハードコート層上に、上記組成の低屈折率層形成用組成物を塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させ、その後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて照射線量200mJ/cm2で紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させて、硬化後の膜厚が100nmである表1~表3の低屈折率層を形成した。
【0072】
[防眩層の形成]
(防眩層形成用組成物)
防眩層形成に用いる防眩層形成用組成物として下記の使用材料を用い、表5に示す組成物を調製した。
・活性エネルギー線硬化性樹脂:
ライトアクリレートPE-3A(共栄社化学株式会社製、屈折率1.52)
・光重合開始剤:
Omnirad TPO(IGM Resins B.V.社製)
・有機微粒子:
スチレン-メタクリル酸メチル共重合体粒子(屈折率1.515、平均粒径2.0μm)
・無機微粒子1:
合成スメクタイト
・無機微粒子2:
アルミナナノ粒子、平均粒径40nm
・溶剤
トルエン
イソプロピルアルコール
【0073】
【0074】
表2に示した実施例13の透明基材上に、表5に示す防眩層形成用組成物を塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させ、その後、紫外線照射装置を用いて照射線量150mJ/cm2で紫外線照射(フュージョンUVシステムズジャパン社製、光源Hバルブ)を行うことにより塗膜を硬化させ、硬化後の膜厚が5.0μmである表2の防眩層を形成した。
【0075】
[第一、第二の粘着層の形成]
(ベース粘着剤の作製)
ベース粘着剤として下記の組成物を用いた。
・粘着樹脂:エチルアセテートに溶解されたブチルアクリレート(BA)/ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)共重合体溶液 70質量部
・硬化剤:イソシアネート系架橋剤 0.037質量部
・添加剤:シラン系カップリング剤 0.048質量部
・溶剤:MEK(メチルエチルケトン)30質量部
【0076】
(第一、第二の粘着層形成用組成物)
下記の第一、第二の粘着層形成に用いる粘着層形成用組成物の使用材料を用い、表6に示す組成物を調製した。なお、色材の最大吸収波長及び半値幅は粘着層での特性値を分光透過率より算出した。
・第1色材
Dye-1 後述する化1に示されるピロメテンコバルト錯体染料(最大吸収波長493nm、半値幅 26nm)
・第2色材:
Dye-2 テトラアザポルフィリン銅錯体染料(山田化学社製 FDG-007、最大吸収波長 593nm、半値幅 18nm)
・第3色材:
Dye-3 フタロシアニン銅錯体染料(山田化学社製 FDN-002、最大吸収波長 800nm(400~800nmの波長範囲において最も透過率の低い波長が800nmである。))
・第一~第三の色材以外の色材
Dye-4 (山田化学社製 FDG-003、最大吸収波長545nm、半値幅 57nm)
Dye-5 (山田化学社製 FDG-004、最大吸収波長 575nm、半値幅63μm)
・添加剤:
ヒンダードアミン系光安定剤 Chimassorb944FDL(BASFジャパン社製、分子量 2000~3100)
ヒンダードアミン系光安定剤 Tinuvin249(BASFジャパン社製、分子量 482)
一重項酸素クエンチャー D1781(東京化成工業社製、ジアルキルジチオカルバネートニッケル錯体)
・紫外線吸収剤:
Tinuvin479(BASFジャパン社製、極大吸収波長 322nm)
LA-36(ADEKA社製、極大吸収波長 310nm、350nm)
・粘着剤:上記で作製したベース粘着剤
・溶剤:酢酸エチル
【0077】
【0078】
【0079】
(粘着層及び光学シートの作製)
上記のようにして得られた粘着層形成用組成物を、離型基材フィルムに乾燥時25μmの膜厚となるように塗工し、十分に乾燥させた後、離型フィルムをラミネートし、粘着層を得た。得られた粘着層の片方の離型フィルムを剥離し、厚さ0.7mmの無アルカリガラスの支持体(被着体)へ貼り合わせた。その後、粘着層のもう片方の離型フィルムを剥離し、表1~表3で示した機能層を積層した基材を貼り合わせ、光学シート1~22を得た。なお、実施例1~14、比較例1~8の各サンプルは光学シートを被着体に貼り合わせることで構成されている。被着体は光学シートの特性評価の妨げにならない材料であれば特に限定されず、無アルカリガラス以外でもよい。
【0080】
[光学シート特性評価]
(第一の粘着層より上層の紫外線遮蔽率)
得られた光学シート1~18の第一の粘着層より上層の積層体について、自動分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて透過率を測定した。これらの透過率を用いて、紫外域(290~400nm)の平均透過率を算出し、式(2)に示す紫外線遮蔽率を算出した。
式(2):
紫外線遮蔽率(%)=100-紫外域(290~400nm)の平均透過率(%)
【0081】
(耐光性試験)
得られた光学シート1~18の信頼性試験として、キセノンウェザーメーター試験機(スガ試験機株式会社製、X75)を用い、キセノンランプ照度60W/cm2(300~400nm)、試験機内温度45℃・湿度50%RH条件にて120時間試験し、試験前後に自動分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて透過率測定を行い、第一の色材~第三の色材の波長帯の中で最小の透過率を示す波長λでの試験前後透過率差ΔTλ、試験前後でのC光源での色差ΔE*abを算出した。透過率差及び色差はゼロに近い方が良好であり、ΔE*ab≦5となるものが好ましい。
【0082】
上記の項目を評価した結果を表7、表8に示す。
【0083】
【0084】
【0085】
実施例1~14の光学シートは、第一の粘着層(着色粘着層)と、第一の粘着層よりも上側に配置された紫外線吸収能を有する層と、を備えている。例えば、実施例1では第二の粘着層である粘着層8に、実施例2ではハードコート層2に、紫外線吸収剤が含まれている。実施例3~14では、基材が紫外線吸収能を有する。また、表7、8に示されているように、第一の粘着層よりも上側に配置された層の紫外線者遮蔽率は、85%以上である。
表7、8の結果より、本発明における着色粘着層を備える光学シートは、紫外線遮蔽率85%以上の紫外線遮蔽層を上層に備えることで耐光性が大幅に改善した。また、比較例2の結果から、着色粘着層に紫外線吸収剤を添加したとしても、耐光性を向上させることが困難であることがわかる。このように、紫外線吸収能は着色粘着層に備えることでは効果が小さく、上層への別層形成が必要である。
更に酸素バリア層の積層や、着色粘着層内にラジカル捕捉剤として高分子量のヒンダードアミン光安定剤、一重項酸素クエンチャーとしてジアルキルジチオカルバネートニッケル錯体を含有することで更に耐光性が改善された。なお、粘着層3、4、および5を含む光学シートの耐光性の結果から、ラジカル捕捉剤および一重項酸素クエンチャーの2種類のうち、いずれか一種類のみが添加されていてもよいし、両方が添加されていていてもよいことがわかる。
【0086】
[表示装置特性評価]
以下の実施例15~17、比較例9~12では、得られた光学シート6、11、12及び19~22を用いた表示装置1~7について以下のように表示装置特性をシミュレーションにより評価した。シミュレーションにおいて、表示装置1~7は、光学シートを有機EL表示装置(対象物)に接合した構成とした。
なお、光学シートを接合する対象物である有機EL表示装置では、白表示時は
図9に示すような分光スペクトルとなり、赤色表示、緑色表示、青色表示時は
図10に示すような単独スペクトルとなる。
【0087】
(白表示透過特性)
得られた光学シートの透過率を自動分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて測定し、この光学シートの透過率に、
図9に示す、光学シートを介さない有機EL表示装置の白表示時の単独の分光スペクトルを掛け合わせて、光学シート透過後の分光スペクトルを算出した。有機EL表示装置の白表示時の単独でのスペクトル、及び光学シート透過後の分光スペクトルのそれぞれに比視感度をかけてY値を算出し、有機EL表示装置の白表示時の単独でのスペクトルから得られるY値を100とした時の比率を効率とすることで、表示装置の透過特性の指標として評価した。
【0088】
(色再現性)
得られた光学シートの透過率を自動分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて測定し、この光学シートの透過率に、
図10に示す、光学シートを介さない有機EL表示装置の赤色表示、緑色表示、青色表示時の単独スペクトルを掛け合わせて、光学シート透過後のCIE(国際照明委員会:Commission international de l’eclairage)1931表色系の赤、緑、青単色それぞれの色度(x、y)を算出した。次に、得られた赤、緑、青単色の色度を結んで得られる三角形と、IEC(国際電気標準会議)が定めるsRGBの3原色、赤(x=0.640、y=0.330)、緑(x=0.300、y=0.600)、青(x=0.150、y=0.060)を結ぶ三角形、及びDCI(Digital Cinema Initiatives)が提唱するDCI―P3の3原色、赤(x=0.680、y=0.320)、緑(x=0.265、y=0.690)、青(x=0.150、y=0.060)を結ぶ三角形、それぞれと比較して重なり合う面積を求めることで各規格の包含率を算出し、色再現性の指標として評価した。
【0089】
表示装置での特性評価として、白表示透過特性、色再現性を表9に示した。
【0090】
【0091】
表9の結果より、本発明における第一の粘着層である着色粘着層を備える表示装置1~3(実施例15~17)は、sRGB色度包含率が99%以上を呈し、粘着層に色材が含まれていない(着色粘着層を備えない)比較例9に比較し、色再現性が向上した。
第一の色材、第二の色材の複数の波長帯で吸収が深い比較例10では白表示透過特性が低い。このことから、第一の粘着層に複数の種類の色材が含まれている場合、各色材の極大吸収波長のうちいずれか一つのみの極大吸収波長で透過率が1%以上50%未満であることが好ましいことがわかる。また、色材の波長範囲や半値幅が規定に適合しない色材を用いた比較例11、12では白表示透過特性が低い。これらに対し、実施例15~17では一定の色補正機能を呈した上で白表示透過特性にも優れることが示された。
【0092】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、光学シートは、第一の粘着層(着色粘着層)10と、第一の粘着層よりも上側に配置された紫外線吸収能を有する層と、を備えていればよい。紫外線吸収能を有する層は、紫外線遮蔽層20であってもよいし、透明基材30や光学機能層50であってもよい。第一の粘着層10よりも上側に配置された紫外線吸収能を有する層は、JIS L 1925に準拠した紫外線遮蔽率が85%以上であることが好ましい。
また、光学シートは、帯電防止層や防汚層をさらに備えていてもよい。
また、光学シートの光学機能層50の反射防止層に高屈折率層、防眩層53や、低屈折率層52が含まれ、高屈折率層、防眩層53または低屈折率層52のうち少なくとも1つが帯電防止性を有し、高屈折率層、防眩層53または低屈折率層52のうち少なくとも1つが防汚性を有していてもよい。例えば、高屈折率層および防眩層53に帯電防止剤を添加し、帯電防止性を付与してもよい。撥水性及び/又は撥油性を有する材料を低屈折率層52に含有させることで、低屈折率層52の機能に防汚性を付与してもよい。また、高屈折率層や防眩層53に防汚性を付与してもよい。なお、高屈折率層、防眩層53または低屈折率層52のうち少なくとも1つに、帯電防止性および防汚性の両方が付与されていてもよい。
これにより、光学機能層に更なる機能を付与することができる。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、表示装置に用いられる光学シートとして利用できる。
【符号の説明】
【0094】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F 光学シート
10 着色粘着層(第一の粘着層)
20 紫外線遮蔽層(紫外線吸収粘着層、第二の粘着層)
30 透明基材(紫外線遮蔽層)
40 酸素バリア層
50 光学機能層
51 ハードコート層
52 低屈折率層
53 防眩層
S セパレータ