(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ヒータ
(51)【国際特許分類】
H05B 3/02 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
H05B3/02 B
(21)【出願番号】P 2022577828
(86)(22)【出願日】2021-01-26
(86)【国際出願番号】 JP2021002618
(87)【国際公開番号】W WO2022162729
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】木村 功一
(72)【発明者】
【氏名】藤見 良平
(72)【発明者】
【氏名】板倉 克裕
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/008889(WO,A1)
【文献】特開2008-243990(JP,A)
【文献】国際公開第2020/008859(WO,A1)
【文献】特開2017-174713(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109314039(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02
H01L 21/00 - 21/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の基材と、
前記基材の内部に配置された複数の発熱体と、
前記複数の発熱体の各々に接続された複数の端子と、
前記基材に取り付けられた筒状部材とを備えるヒータであって、
前記基材は、
加熱対象が載置される第一面と、
前記第一面に向かい合う第二面とを備え、
前記複数の発熱体は、
前記基材の中心を含む領域に配置された内側発熱体と、
前記内側発熱体の外側に前記基材と同心状に配置された複数の外側発熱体とを備え、
前記内側発熱体と前記複数の外側発熱体とは、前記基材の厚さ方向に間隔をあけて配置されており、
前記内側発熱体は、前記基材の厚さ方向で最も前記第一面側に位置する第一層に配置されており、
前記複数の外側発熱体は、
前記基材の厚さ方向で前記第一層に隣り合う第二層に配置された第一外側発熱体と、
前記基材の厚さ方向で前記第二層よりも前記第二面側に位置する第三層に配置された第二外側発熱体とを備え、
前記複数の端子は、前記基材の中心側から順に同心状に配置された第一端子と第二端子と第三端子とを備え、
前記第一端子は、前記内側発熱体に接続されており、
前記第二端子は、前記第二外側発熱体に接続されており、
前記筒状部材は、前記ヒータを前記第一面側から平面視したときに前記複数の端子を囲むように前記第二面に取り付けられている、
ヒータ。
【請求項2】
前記ヒータを前記第一面側から平面視したとき、前記内側発熱体の外周輪郭線は、前記基材の中心を中心として前記第三端子で構成される内接円の外側に位置する請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記ヒータを前記第一面側から平面視したとき、前記内側発熱体の外周輪郭線は、前記筒状部材の内周輪郭線の外側に位置する請求項1又は請求項2に記載のヒータ。
【請求項4】
前記複数の外側発熱体の少なくとも一つは、周方向に分割された複数の発熱体セグメントで構成されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項5】
前記第二端子は、前記第二外側発熱体における前記第一面側の面から前記第一面に向かって突出した先端部を備え、
前記先端部の突出方向の長さは、層間距離よりも小さく、
前記層間距離は、前記第二外側発熱体における前記第一面側の面と、前記内側発熱体における前記第二面側の面との間の長さである請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項6】
前記層間距離は、1mm以上15mm以下である請求項5に記載のヒータ。
【請求項7】
前記複数の発熱体の各々は、箔状体であり、
前記複数の発熱体の各々の平均厚さは、1μm以上500μm以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項8】
円板状の基材と、
前記基材の内部に配置された複数の発熱体と、
前記複数の発熱体の各々に接続された複数の端子と、
前記基材に取り付けられた筒状部材とを備えるヒータであって、
前記基材は、
加熱対象が載置される第一面と、
前記第一面に向かい合う第二面とを備え、
前記複数の発熱体は、
前記基材の中心を含む領域に配置された内側発熱体と、
前記内側発熱体の外側に前記基材と同心状に配置された外側発熱体と、
前記内側発熱体と前記外側発熱体との間に配置された中間発熱体とを備え、
前記内側発熱体、前記外側発熱体、及び前記中間発熱体は、前記基材の厚さ方向に間隔をあけて配置されており、
前記内側発熱体は、前記基材の厚さ方向で最も前記第一面側に位置する第一層に配置されており、
前記外側発熱体は、前記基材の厚さ方向で最も前記第二面側に位置する第三層に配置されており、
前記中間発熱体は、前記第一層と前記第三層との間に位置する第二層に配置されており、
前記複数の端子は、前記基材の中心側から順に同心状に配置された第一端子と、第二端子と、第三端子とを備え、
前記第一端子は、前記内側発熱体に接続されており、
前記第二端子は、前記外側発熱体に接続されており、
前記第三端子は、前記中間発熱体に接続されており、
前記筒状部材は、前記ヒータを前記第一面側から平面視したときに前記複数の端子を囲むように前記第二面に取り付けられている、
ヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、載置台と、複数の発熱回路と、複数の端子部と、筒状支持部材とを備えるヒータを開示する。載置台における被加熱物の載置面は、二つ以上のゾーンに区分されている。複数の発熱回路は、ゾーンごとに載置台の内部に埋設されている。また、複数の発熱回路は、載置台の厚さ方向で異なる位置に層状に埋設されている。複数の端子部は、発熱回路の端部に電気的に接続されている。筒状支持部材は、複数の端子部を内部に収納している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示のヒータは、円板状の基材と、前記基材の内部に配置された複数の発熱体と、前記複数の発熱体の各々に接続された複数の端子と、前記基材に取り付けられた筒状部材とを備えるヒータであって、前記基材は、加熱対象が載置される第一面と、前記第一面に向かい合う第二面とを備え、前記複数の発熱体は、前記基材の中心を含む領域に配置された内側発熱体と、前記内側発熱体の外側に前記基材と同心状に配置された複数の外側発熱体とを備え、前記内側発熱体と前記複数の外側発熱体とは、前記基材の厚さ方向に間隔をあけて配置されており、前記内側発熱体は、前記基材の厚さ方向で最も前記第一面側に位置する第一層に配置されており、前記複数の外側発熱体は、前記基材の厚さ方向で前記第一層に隣り合う第二層に配置された第一外側発熱体と、前記基材の厚さ方向で前記第二層よりも前記第二面側に位置する第三層に配置された第二外側発熱体とを備え、前記複数の端子は、前記基材の中心側から順に同心状に配置された第一端子と第二端子と第三端子とを備え、前記第一端子は、前記内側発熱体に接続されており、前記第二端子は、前記第二外側発熱体に接続されており、前記筒状部材は、前記ヒータを前記第一面側から平面視したときに前記複数の端子を囲むように前記第二面に取り付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、実施形態のヒータの概略を示す説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態のヒータにおける複数の発熱体の位置関係を示す説明図である。
【
図3】
図3は、実施形態のヒータにおける複数の端子の位置関係を示す説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態のヒータにおける発熱体と端子との位置関係を示す説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態のヒータにおける内側発熱体の回路パターンの一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態のヒータにおける内側発熱体の回路パターンの別の一例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、比較例のヒータにおける発熱体と端子との位置関係を示す説明図である。
【
図8】
図8は、比較例のヒータにおける内側発熱体の回路の一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、変形例1のヒータにおける複数の発熱体の位置関係を示す説明図である。
【
図10】
図10は、変形例1のヒータにおける複数の端子の位置関係を示す説明図である。
【
図11】
図11は、変形例2のヒータにおける複数の発熱体の位置関係を示す説明図である。
【
図12】
図12は、変形例2のヒータにおける複数の端子の位置関係を示す説明図である。
【
図13】
図13は、変形例3のヒータにおける発熱体と端子との位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
複数の発熱体が設けられたヒータは、各発熱体の両端部が基材の中心側の所定箇所に集約され、この所定箇所に各端子が接続されることが多い。基材の中心側には、端子及び端子につながる引出線を収納する筒状部材が接続されているからである。複数の発熱体が設けられたヒータは、基材の中心側に複数の端子が密集する。複数の端子が密集すると、各端子が基材の中心側に配置された内側発熱体に干渉し易い。例えば、内側発熱体が配置された層と外側発熱体が配置された層との間の層間距離が小さい場合、外側発熱体に接続された端子が内側発熱体に接触するおそれがある。他に、内側発熱体と外側発熱体に接続された端子とが近接すると、内側発熱体の熱が外側発熱体に接続された端子を伝って外部に逃げるおそれがある。
【0007】
上記干渉を抑制するために、外側発熱体に接続された端子のうち、内側発熱体に干渉し得る端子を避けるように内側発熱体を配置することが考えられる。この場合、基材の中心側に内側発熱体を配置するスペースが十分に確保されず、基材の中心側の温度低下を生じさせるおそれがある。
【0008】
本開示は、基材の中心側の温度低下を抑制できるヒータを提供することを目的の一つとする。
【0009】
[本開示の効果]
本開示のヒータは、基材の中心側の温度低下を抑制できる。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
(1)本開示の一態様に係るヒータは、円板状の基材と、前記基材の内部に配置された複数の発熱体と、前記複数の発熱体の各々に接続された複数の端子と、前記基材に取り付けられた筒状部材とを備えるヒータであって、前記基材は、加熱対象が載置される第一面と、前記第一面に向かい合う第二面とを備え、前記複数の発熱体は、前記基材の中心を含む領域に配置された内側発熱体と、前記内側発熱体の外側に前記基材と同心状に配置された複数の外側発熱体とを備え、前記内側発熱体と前記複数の外側発熱体とは、前記基材の厚さ方向に間隔をあけて配置されており、前記内側発熱体は、前記基材の厚さ方向で最も前記第一面側に位置する第一層に配置されており、前記複数の外側発熱体は、前記基材の厚さ方向で前記第一層に隣り合う第二層に配置された第一外側発熱体と、前記基材の厚さ方向で前記第二層よりも前記第二面側に位置する第三層に配置された第二外側発熱体とを備え、前記複数の端子は、前記基材の中心側から順に同心状に配置された第一端子と第二端子と第三端子とを備え、前記第一端子は、前記内側発熱体に接続されており、前記第二端子は、前記第二外側発熱体に接続されており、前記筒状部材は、前記ヒータを前記第一面側から平面視したときに前記複数の端子を囲むように前記第二面に取り付けられている。
【0012】
本開示のヒータは、基材の中心側に複数の端子が密集していたとしても、第二端子及び第三端子が内側発熱体に干渉することを抑制できる。複数の端子が中心側から順に同心状に配置されていると共に、第二端子が第二外側発熱体に接続されているからである。第二端子が第二外側発熱体に接続されている端子であることで、第二端子が第一外側発熱体に接続される端子である場合に比較して、内側発熱体と第二端子との間隔を大きくできる。第二外側発熱体が配置された第三層は、第一外側発熱体が配置された第二層よりも第一層から離れた位置にあるからである。上記間隔が大きいことで、第二端子が内側発熱体に干渉することを抑制できる。第二端子が内側発熱体に干渉しないことで、第二端子の位置を考慮することなく内側発熱体を所望の位置に配置できる。第三端子は、第二端子よりも中心から離れた位置にある。よって、第三端子における周方向の配置スペースを広く確保でき、ヒータを第一面側から平面視したとき、内側発熱体に重ならないように第三端子を配置し易い。そのため、第三端子の位置に起因して内側発熱体の位置が制限されることを抑制できる。第二端子及び第三端子が内側発熱体に干渉することを抑制できることで、基材の中心側に内側発熱体を十分に配置できる。以上より、本開示のヒータは、基材の中心側の温度低下を抑制できる。
【0013】
ここで、端子が発熱体に干渉するとは、機械的要因、電気的要因、又は製造上の理由によって、発熱体の所望の位置に端子を配置できないことを言う。機械的要因としては、端子と発熱体とが接触することが挙げられる。電気的要因としては、端子と発熱体との間隔が小さくなることで、電気的絶縁性が確保できないことが挙げられる。製造上の理由としては、ヒータの構成部材を所望の位置に配置するための作業スペースが確保できないことが挙げられる。
【0014】
(2)本開示のヒータの一例として、前記ヒータを前記第一面側から平面視したとき、前記内側発熱体の外周輪郭線は、前記基材の中心を中心として前記第三端子で構成される内接円の外側に位置する形態が挙げられる。
【0015】
上記形態は、第二端子及び第三端子が内側発熱体に干渉し易い。本開示のヒータは、上述したように、第二端子及び第三端子が内側発熱体に干渉することを抑制できる。よって、本開示のヒータは、上記形態であっても、基材の中心側の温度低下を抑制できる。
【0016】
(3)本開示のヒータの一例として、前記ヒータを前記第一面側から平面視したとき、前記内側発熱体の外周輪郭線は、前記筒状部材の内周輪郭線の外側に位置する形態が挙げられる。
【0017】
上記形態は、第二端子及び第三端子が内側発熱体により干渉し易い。本開示のヒータは、上述したように、第二端子及び第三端子が内側発熱体に干渉することを抑制できる。よって、本開示のヒータは、上記形態であっても、基材の中心側の温度低下を抑制できる。
【0018】
(4)本開示のヒータの一例として、前記複数の外側発熱体の少なくとも一つは、周方向に分割された複数の発熱体セグメントで構成されている形態が挙げられる。
【0019】
内側発熱体の外側に基材と同心状に複数の外側発熱体が配置されていることで、複数の発熱体を基材の径方向に独立して温度制御することができる。上記形態は、更に各外側発熱体が複数の発熱体セグメントで構成されていることで、基材の径方向の温度制御に加えて、各外側発熱体を周方向に独立して温度制御することができる。よって、上記形態は、加熱対象を全面にわたって均一に加熱し易い。
【0020】
(5)本開示のヒータの一例として、前記第二端子は、前記第二外側発熱体における前記第一面側の面から前記第一面に向かって突出した先端部を備え、前記先端部の突出方向の長さは、層間距離よりも小さく、前記層間距離は、前記第二外側発熱体における前記第一面側の面と、前記内側発熱体における前記第二面側の面との間の長さである形態が挙げられる。
【0021】
上記形態は、第二端子が先端部を備えていたとしても、第二端子が内側発熱体に干渉することを抑制できる。
【0022】
(6)上記(5)のヒータの一例として、前記層間距離は、1mm以上15mm以下である形態が挙げられる。
【0023】
層間距離が1mm以上であることで、基材の厚さ方向に隣り合う発熱体同士の間隔を確保し易く、基材の内部に発熱体を構成し易い。層間距離が15mm以下であることで、各発熱体の厚さを含む基材の厚さが大きくなることを抑制できる。層間距離が15mm以下であることで、第二外側発熱体と内側発熱体との間の距離が大きくなることを抑制でき、ひいては第一面の温度制御を行い易い。層間距離が15mm以下であっても、本開示のヒータは、第二端子が内側発熱体に干渉することを抑制できる。
【0024】
(7)本開示のヒータの一例として、前記複数の発熱体の各々は、箔状体であり、前記複数の発熱体の各々の平均厚さは、1μm以上500μm以下である形態が挙げられる。
【0025】
各発熱体が箔状体であることで、各発熱体における第一面側の面から第一面までの距離のばらつきを小さくでき、第一面を均一に加熱し易い。各発熱体の平均厚さが1μm以上であることで、基材の内部に発熱体を構成し易い。各発熱体の平均厚さが500μm以下であることで、加熱対象を良好に加熱し易い。各発熱体の平均厚さが500μm以下であると、接続される端子が発熱体を貫通し易い。例えば、上述したように、第二端子が第二外側発熱体から突出した先端部を備える。この場合であっても、本開示のヒータは、第二端子が内側発熱体に干渉することを抑制できる。
【0026】
(8)本開示の一態様に係るヒータは、円板状の基材と、前記基材の内部に配置された複数の発熱体と、前記複数の発熱体の各々に接続された複数の端子と、前記基材に取り付けられた筒状部材とを備えるヒータであって、前記基材は、加熱対象が載置される第一面と、前記第一面に向かい合う第二面とを備え、前記複数の発熱体は、前記基材の中心を含む領域に配置された内側発熱体と、前記内側発熱体の外側に前記基材と同心状に配置された外側発熱体と、前記内側発熱体と前記外側発熱体との間に配置された中間発熱体とを備え、前記内側発熱体、前記外側発熱体、及び前記中間発熱体は、前記基材の厚さ方向に間隔をあけて配置されており、前記内側発熱体は、前記基材の厚さ方向で最も前記第一面側に位置する第一層に配置されており、前記外側発熱体は、前記基材の厚さ方向で最も前記第二面側に位置する第三層に配置されており、前記中間発熱体は、前記第一層と前記第三層との間に位置する第二層に配置されており、前記複数の端子は、前記基材の中心側から順に同心状に配置された第一端子と、第二端子と、第三端子とを備え、前記第一端子は、前記内側発熱体に接続されており、前記第二端子は、前記外側発熱体に接続されており、前記第三端子は、前記中間発熱体に接続されており、前記筒状部材は、前記ヒータを前記第一面側から平面視したときに前記複数の端子を囲むように前記第二面に取り付けられている。
【0027】
本開示のヒータは、上記(1)のヒータと同様に、基材の中心側に複数の端子が密集していたとしても、第二端子及び第三端子が内側発熱体に干渉することを抑制できる。本開示のヒータは、第二端子及び第三端子の位置を考慮することなく内側発熱体を所望の位置に配置できる。具体的には、基材の中心側に内側発熱体を十分に配置できる。よって、本開示のヒータは、基材の中心側の温度低下を抑制できる。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のヒータの実施形態を、図面を参照して説明する。図中の同一符号は、同一名称物を示す。
【0029】
図1から
図6を参照して、実施形態のヒータ1を説明する。ヒータ1は、基材2と、複数の発熱体3と、複数の端子6と、筒状部材7とを備える。基材2は、図示しない加熱対象が載置される第一面2aと、第一面2aに向かい合う第二面2bとを備える。以下の説明では、基材2の第一面2a側を「上」とし、第二面2b側を「下」と表現することがある。
図1は、複数の発熱体3と複数の端子6との位置関係を仮想断面で示した模式図である。そのため、
図1に示す各発熱体3の形状や位置並びに各端子6の数と、
図5や
図6に示す各発熱体3の形状や位置並びに各端子6の数とは必ずしも合致しない。この点は、
図7に示す各発熱体3の形状や位置並びに各端子6の数と
図8に示す各発熱体3の形状や位置並びに各端子6の数との関係も同様である。
図2は、基材2を第一面2a側から見た図である。
図2では、説明の便宜上、複数の発熱体3の大まかな配置領域を三種類のハッチングで分けて示す。
図3は、ヒータ1を第一面2a側から平面視したときの筒状部材7と複数の端子6との位置関係を示す図である。
図3では、複数の端子6を三種類のハッチングで分けて示す。
図3では、第一端子61で構成される内接円、第二端子62で構成される内接円、及び第三端子63で構成される内接円をそれぞれ二点鎖線で示す。
図4は、
図1と同様に、ヒータ1の構成部材の位置関係を示す説明図である。
図5及び
図6は、ヒータ1を第一面2a側から平面視したときの筒状部材7と内側発熱体4と複数の端子6との位置関係を示す。
図5及び
図6では、分かり易いように、内側発熱体4にハッチングを付している。
図5と
図6とでは、内側発熱体4の回路パターンのみが異なる。各図では、分かり易いように、各発熱体3及び各端子6を誇張して示す。各図において、基材2の厚さや各発熱体3の厚さ等は模式的に示されたものであり、必ずしも実際の厚さに対応しているわけではない。基材2の厚さ及び各発熱体3の厚さは、各図の上下方向に沿った長さのことである。
【0030】
<全体構成>
複数の発熱体3は、
図1及び
図4に示すように、基材2の内部に配置されている。複数の発熱体3は、内側発熱体4と複数の外側発熱体5とを備える。内側発熱体4は、基材2の中心を含む領域、
図2に示す内側領域20に配置されている。内側領域20は、基材2の中心を中心とした円形状の領域である。内側領域20は、基材2の直径の80%以下の直径で構成される円形状の領域である。複数の外側発熱体5は、内側発熱体4の外側に基材2と同心状に配置されている。複数の外側発熱体5は、第一外側発熱体51と第二外側発熱体52とを備える。複数の外側発熱体5は、内側発熱体4の外側であって、基材2の中心と同心状の複数の環状領域に配置されている。この環状領域は、
図2に示す第一外側領域21及び第二外側領域22である。第二外側領域22は、第一外側領域21の外側に位置する。内側発熱体4と複数の外側発熱体5とは、基材2の厚さ方向に間隔をあけて配置されている。複数の端子6は、
図1及び
図4に示すように、複数の発熱体3の各々に接続されている。筒状部材7は、
図1に示すように、基材2に取り付けられている。
【0031】
実施形態のヒータ1の特徴の一つは、
図4に示すように、内側発熱体4が基材2内の第一層に配置されている点にある。第一層は、基材2の内部において各発熱体3が配置される層のうち、基材2の厚さ方向で最も第一面2a側に位置する層である。実施形態のヒータ1の別の特徴の一つは、
図4に示すように、複数の端子6が基材2の中心側から順に同心状に配置された第一端子61と第二端子62と第三端子63とを備え、第一端子61が内側発熱体4に接続され、第二端子62が第二外側発熱体52に接続されている点にある。第一外側発熱体51は、複数の外側発熱体5のうち、基材2の厚さ方向で第一層に隣り合う第二層に配置された発熱体である。第二外側発熱体52は、複数の外側発熱体5のうち、基材2の厚さ方向で第二層よりも第二面2b側に位置する第三層に配置された発熱体である。以下では、基材2、筒状部材7、発熱体3、及び端子6の各構成を詳細に説明する。
【0032】
<基材>
基材2は円板である。基材2は、第一面2aと第二面2bとを備える。第一面2aと第二面2bとは互いに向かい合っている。第一面2aには、図示しない加熱対象が載置される。加熱対象は、例えば半導体等のウエハである。第二面2bには、後述する筒状部材7が取り付けられている。第二面2bには、後述する複数の端子6が嵌め込まれる複数の穴が設けられている。基材2は、
図1及び
図4における各端子6の位置に、各端子6に対応した上記穴が設けられている。
【0033】
基材2は、
図2に示すように、同心状に複数の領域に区切られている。本例の基材2は、内側領域20と、第一外側領域21と、第二外側領域22とに区切られている。
図2では、分かり易いように、内側領域20と、第一外側領域21と、第二外側領域22とに異なるハッチングを付している。内側領域20は、基材2の中心を中心とした円形状の領域である。基材2の中心とは、平面視した基材2の輪郭で構成された円の中心のことである。内側領域20の直径は、基材2の直径の80%以下である。内側領域20の直径が基材2の直径の80%以下であることで、内側発熱体4の外側に複数の外側発熱体5を配置可能な面積を確保できる。内側領域20の直径は、更に基材2の直径の50%以下であることが挙げられる。内側領域20の直径は、基材2の直径の10%以上であることが挙げられる。内側発熱体4の直径が基材2の直径の10%以上あることで、基材2の中心に内側発熱体4を配置可能な面積を確保できる。第一外側領域21は、内側領域20の外側に位置する環状の領域である。第二外側領域22は、第一外側領域21の外側に位置する環状の領域である。複数の領域に対応して、後述する複数の発熱体3が配置されている。
【0034】
基材2の材質は、公知のセラミックスが挙げられる。セラミックスとしては、例えば、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化珪素等が挙げられる。基材2は、上記セラミックスと金属との複合材料で構成されていてもよい。金属としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等が挙げられる。基材2の材質は、本例ではセラミックスである。
【0035】
<筒状部材>
筒状部材7は、
図1に示すように、基材2を第二面2b側から支持している。筒状部材7は、ヒータ1を第一面2a側から平面視したときに複数の端子6を囲むように第二面2bに取り付けられている。筒状部材7の形状は、特に限定されない。本例の筒状部材7は、円筒状部材である。筒状部材7は、基材2と同心状に配置されている。本例では、円筒状の筒状部材7の中心と、円板状の基材2の中心とが同軸となるように、基材2と筒状部材7とが接続されている。
【0036】
筒状部材7の両端部は、外側に屈曲したフランジ部71を備える。上端部のフランジ部71と第二面2bとの間には、図示しないシール部材が配置されている。下端部のフランジ部71とヒータ1の設置対象9との間にも、図示しないシール部材が配置されている。これらのシール部材によって、筒状部材7の内部はシールされている。ヒータ1が配置されるチャンバー内には、代表的には、腐食性ガスが充満される。筒状部材7の内部がシールされていることで、筒状部材7の内部に収納された各端子6や各端子6の引出線65を腐食性ガスから隔離することができる。上端部のフランジ部71と第二面2bとは、シール部材を介さずに直接接合されていてもよい。
【0037】
筒状部材7の材質は、基材2の材質と同様に、公知のセラミックスが挙げられる。筒状部材7の材質と基材2の材質とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0038】
<発熱体>
複数の発熱体3の各々は、基材2を介して図示しない加熱対象を加熱する熱源である。各発熱体3の形状は、特に限定されない。ヒータ1を第一面2a側から平面視したとき、各発熱体3の外周輪郭線の形状は、一般的には円形である。複数の発熱体3は、基材2に設けられた複数の領域の各々に対応して配置されている。各発熱体3は、基材2及び筒状部材7と同心状に配置されている。よって、複数の発熱体3は、同心状に配置されている。ここでの同心状とは、ヒータ1を第一面2a側から平面視したとき、各発熱体3の包絡円が共通する中心を有し、かつ各包絡円の直径が異なることを言う。この包絡円の中心は、基材2の中心と一致する。本明細書において、中心側とは包絡円の中心側のこと、外側とは中心から包絡円の径方向に離れる側のことを言う。
【0039】
複数の発熱体3は、
図1及び
図4に示すように、一つの内側発熱体4と、複数の外側発熱体5とを備える。各外側発熱体5の包絡円の直径は、内側発熱体4の包絡円の直径よりも大きい。内側発熱体4の大部分は、
図2に示す内側領域20に配置されている。複数の外側発熱体5は、第一外側発熱体51と第二外側発熱体52とを備える。本例では、第一外側発熱体51の大部分は、
図2に示す第一外側領域21に配置されている。本例では、第二外側発熱体52の大部分は、
図2に示す第二外側領域22に配置されている。本例では、複数の発熱体3の各包絡円の直径は、内側発熱体4、第一外側発熱体51、第二外側発熱体52の順に大きくなっている。ヒータ1を第一面2a側から平面視したとき、各発熱体3は、各包絡円の径方向に部分的に重なって配置されていてもよいし、重なることなく間隔をあけて配置されていてもよい。本例では、ヒータ1を第一面2a側から平面視したとき、各発熱体3は、互いに重なっている部分を備える。例えば、
図1及び
図4に示すように、内側発熱体4と第一外側発熱体51とは互いに重なっている部分を備える。内側発熱体4と第二外側発熱体52とは互いに重なっている部分を備える。第一外側発熱体51と第二外側発熱体52とは互いに重なっている部分を備える。
【0040】
本例では、三つの発熱体3が配置されている。本例では、第二外側発熱体52は、最も外側に配置された外側発熱体であり、第一外側発熱体51は、内側発熱体4と第二外側発熱体52との間に配置された中間発熱体である。
【0041】
各発熱体3は、互いに独立して温度制御される。複数の発熱体3が同心状に配置されていることで、基材2が径方向に温度制御される。
【0042】
各発熱体3は、
図1及び
図4に示すように、基材2の内部に配置されている。各発熱体3は、基材2の厚さ方向に間隔をあけて層状に配置されている。内側発熱体4は、基材2の厚さ方向で最も第一面2a側に位置する第一層に配置されている。内側発熱体4が第一層に配置されていることで、内側発熱体4と第二面2bとの間の長さを長く確保できる。また、内側発熱体4が第一層に配置されていることで、内側発熱体4が第一層以外の層に配置されている場合に比較して、外側発熱体5に接続された端子6の位置の影響を受け難く、内側発熱体4を基材2に配置し易い。
【0043】
第一外側発熱体51と第二外側発熱体52とは、基材2の厚さ方向に特定の位置関係にある。第一外側発熱体51は、基材2の厚さ方向で第一層に隣り合う第二層に配置されている。第二外側発熱体52は、基材2の厚さ方向で第二層よりも第二面2b側に位置する第三層に配置されている。第二外側発熱体52は、第一外側発熱体51よりも内側発熱体4から離れた位置に配置されている。
【0044】
各発熱体3が配置された隣り合う層の間隔は、1mm以上15mm以下であることが挙げられる。上記間隔は、第一層と第二層との間隔、又は第二層と第三層との間隔のことである。第一層と第二層との間隔は、
図4に示す層間距離D2である。層間距離D2は、内側発熱体4における第二面側の面4bと、第一外側発熱体51における第一面側の面51aとの間の長さである。第二層と第三層との間隔は、
図4に示す層間距離D1から層間距離D2と第一外側発熱体51の厚さとを引いた長さである。層間距離D1は、内側発熱体4における第二面側の面4bと、第二外側発熱体52における第一面側の面52aとの間の長さである。上記間隔が1mm以上であることで、基材2の内部に複数の発熱体3を基材2の厚さ方向に間隔をあけて層状に構成し易い。各発熱体3の製造方法は後述する。上記間隔が15mm以下であることで、各発熱体3の厚さを含む基材2の厚さが過大となることを抑制できる。上記間隔が15mm以下であることで、各発熱体3から第一面2aまでの距離の差が過大となることを抑制でき、第一面2aの温度制御を行い易い。上記間隔は、更に2mm以上10mm以下、特に3mm以上8mm以下であることが挙げられる。基材2の厚さは、一般的に10mm以上30mm以下である。
【0045】
各発熱体3は、帯状部を屈曲させて構成されることが挙げられる。帯状部の屈曲には、渦巻き状や蛇行状に屈曲することが挙げられる。帯状部の幅は、帯状部の長手方向に一様な幅であってもよいし、帯状部の長手方向の部位によって異なる幅であってもよい。帯状部の幅は、ヒータ1を第一面2a側から平面視したときの帯状部の長手方向と直交する方向の寸法である。帯状部の幅は、0.1mm以上10mm以下、更に0.5mm以上8mm以下、特に1mm以上5mm以下であることが挙げられる。各発熱体3は、帯状部よりも幅の広い所定形状の面状部を備えていてもよい。面状部は、帯状部と一連につながって配置される。面状部の形状は、例えば扇状や半円状等が挙げられる。帯状部及び面状部は、箔状体であることが好ましい。各発熱体3の回路パターンは、特に限定されない。各発熱体3の回路パターンは、加熱する温度や求められる温度分布に応じて適宜選択できる。
【0046】
各発熱体3が箔状体である場合、各発熱体3の平均厚さは、1μm以上500μm以下であることが挙げられる。各発熱体3の平均厚さが1μm以上であることで、基材2の内部に発熱体3を構成し易い。各発熱体3の平均厚さが500μm以下であることで、図示しない加熱対象を良好に加熱し易い。各発熱体3の平均厚さが500μm以下であると、後述する端子6が発熱体3を貫通し易い。例えば、
図4に示すように、第二端子62が第二外側発熱体52を貫通する。この場合であっても、本例のヒータ1であれば、後述するように、発熱体3を貫通した端子6が内側発熱体4に干渉することを抑制できる。各発熱体3の平均厚さは、更に5μm以上100μm以下、特に10μm以上50μm以下であることが挙げられる。各発熱体3の平均厚さが5μm以上であると、各端子6との電気的接続を確保し易い。各発熱体3の平均厚さが10μm以上であると、各発熱体3の機械的強度を確保し易い。各発熱体3の平均厚さは、発熱体3の長手方向の3箇所以上の測定点で測定した厚さの平均値である。
【0047】
内側発熱体4は、
図5及び
図6に示すように、ヒータ1を第一面2a側から平面視したとき、第三端子63で構成される内接円の外側にまで位置することが挙げられる。即ち、内側発熱体4の外周輪郭線4cは、第三端子63で構成される内接円の外側に位置することが挙げられる。特に、内側発熱体4の外周輪郭線4cは、筒状部材7の内周輪郭線7cの外側に位置することが挙げられる。
図5及び
図6に示す筒状部材7は、フランジ部71以外の箇所である。本例の外周輪郭線4cは、内周輪郭線7cの外側に位置する。外周輪郭線4cは、内周輪郭線7cの内側であって、第三端子63で構成される内接円の外側に位置していてもよい。
【0048】
本例の内側発熱体4は、後述するように、基材2の中心側に十分な回路パターンが設定される。よって、本例の内側発熱体4は、基材2の中心を十分に加熱できる。
【0049】
複数の外側発熱体5の少なくとも一つは、周方向に分割された複数の発熱体セグメントで構成されていることが挙げられる。本例では、基材2に設けられた第一外側領域21は、
図2に示すように、周方向に分割された複数の分割領域210を備える。本例の第一外側発熱体51は、複数の分割領域210に対応して周方向に分割された複数の発熱体セグメント510で構成されている。
図2では、各発熱体セグメント510の輪郭を仮想的に破線で示す。
図9及び
図11も同様である。本例では、複数の発熱体セグメント510の個数は、三つである。複数の発熱体セグメント510の個数は、後述する変形例1のように二つでもよいし、変形例2のように四つでもよいし、五つ以上でもよい。第一外側発熱体51が複数の発熱体セグメント510で構成されていることで、基材2が分割領域210ごとに独立して温度制御される。第一外側発熱体51は、分割されていない一つの環状部材で構成されていてもよい。
【0050】
本例では、基材2に設けられた第二外側領域22は、
図2に示すように、周方向に分割された複数の分割領域220を備える。本例の第二外側発熱体52は、複数の分割領域220に対応して周方向に分割された複数の発熱体セグメント520で構成されている。
図2では、各発熱体セグメント520の輪郭を仮想的に破線で示す。
図9及び
図11も同様である。本例では、複数の発熱体セグメント520の個数は、三つである。複数の発熱体セグメント520の個数は、後述する変形例1のように二つでもよいし、変形例2のように四つでもよいし、五つ以上でもよい。第二外側発熱体52が複数の発熱体セグメント520で構成されていることで、基材2が分割領域220ごとに独立して温度制御される。第二外側発熱体52は、分割されていない一つの環状部材で構成されていてもよい。
【0051】
第一外側発熱体51及び第二外側発熱体52のいずれもが複数の発熱体セグメントで構成されていることで、基材2の径方向の温度制御に加えて、基材2が周方向に温度制御される。
【0052】
各発熱体3における後述する端子6との接続箇所は、
図4に示すように、基材2の中心側に引き寄せられる。内側発熱体4における端子6との接続箇所は、基材2のほぼ中心に位置する。第一外側発熱体51は、基材2の中心側にのびる引込部511を備える。この引込部511に端子6が接続される。第二外側発熱体52は、基材2の中心側にのびる引込部521を備える。この引込部521に端子6が接続される。各引込部511、521は、接続される端子6の位置までのびている。
【0053】
各発熱体3の材質は、加熱対象を所望の温度に加熱できる材質であれば特に限定されない。各発熱体3の材質は、抵抗加熱に好適な公知の金属が挙げられる。金属としては、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル合金、銀、銀合金、タングステン、タングステン合金、モリブデン、モリブデン合金、クロム、及びクロム合金からなる群より選択される1種が挙げられる。ニッケル合金としては、例えば、ニクロムが挙げられる。
【0054】
各発熱体3は、例えば、スクリーン印刷法とホットプレス接合法とを組み合わせて製造できる。本例の場合、以下の手順で製造できる。四枚のセラミックス基板と、各発熱体3を転写できるスクリーンマスクとを用意する。スクリーンマスクは、内側発熱体4、第一外側発熱体51、及び第二外側発熱体52の各回路パターンを作製可能なものを用いる。三枚のセラミックス基板の各々に、作製する回路パターンのスクリーンマスクを置く。発熱体3となるペーストをスクリーンマスクが載せられたセラミックス基板に塗布する。スキージを使用して発熱体3をセラミックス基板に転写する。発熱体3の転写後、スクリーンマスクを除去する。以上により、内側発熱体4が転写された第一基板と、第一外側発熱体51が転写された第二基板と、第二外側発熱体52が転写せれた第三基板とが得られる。第一基板、第二基板、第三基板、及び発熱体を転写していないセラミックス基板を順に重ね合わせてホットプレスで接合する。この接合によって、基材2の内部に各発熱体3が配置される。
【0055】
各発熱体3の形態は特に問わない。例えば、上述したように、タングステン等の金属粉を含んだペーストをスクリーン印刷及び焼成して形成したものが挙げられる。銀ペースト及び銀にパラジウムを添加したペーストをスクリーン印刷に使用してもよい。他に、ステンレス鋼箔等の金属箔をパターニング加工したものが挙げられる。また、各発熱体3として、タングステンコイルやモリブデンコイルを用いることもできる。
【0056】
<端子>
複数の端子6の各々は、接続された各発熱体3に電力を供給する。複数の端子6は、複数の発熱体3に対応して設けられている。本例の複数の端子6は、第一端子61と、第二端子62と、第三端子63とを備える。第一端子61、第二端子62、及び第三端子63は、
図3に示すように、中心側から順に同心状に配置されている。複数の端子6が同心状に配置されているとは、各層に配置された各発熱体3に接続された一群の端子6が、各発熱体3の包絡円と同心の円周上に重なるように配置されていることを言う。第一端子61による一群の端子、第二端子62による一群の端子、及び第三端子63による一群の端子の各々は、上記包絡円と同心の円周上に少なくとも重なる部分を有していればよく、各一群の端子6の中心が上記円周上からずれていてもよい。本例では、各一群の端子6の中心同士は、上記円周上に位置している。
【0057】
第一端子61は、
図4に示すように、基材2のほぼ中心に位置する。第一端子61は、内側発熱体4に接続されている。第二端子62は、第二外側発熱体52に接続されている。第二外側発熱体52は、基材2の厚さ方向で第一層に隣り合う第二層よりも第二面2b側に位置する第三層に配置された発熱体である。第三端子63は、第一外側発熱体51に接続されている。第一外側発熱体51は、基材2の厚さ方向で第一層に隣り合う第二層に配置された発熱体である。
【0058】
複数の端子6は、各発熱体3の数に対応して設けられている。複数の端子6の数は、通常偶数である。本例の内側発熱体4は、分割されておらず一つで構成されている。よって、第一端子61の数は帯状部の両端に位置する二つである。本例の第二外側発熱体52は、三つの発熱体セグメントで構成されている。よって、第二端子62の数は六つである。六つの第二端子62は、円周上に等間隔に配置されている。各第二端子62は、第二外側発熱体52の引込部521に接続されている。本例の第一外側発熱体51は、三つの発熱体セグメントで構成されている。よって、第三端子63の数は六つである。六つの第三端子63は、円周上に等間隔に配置されている。各第三端子63は、第一外側発熱体51の引込部511に接続されている。
【0059】
複数の端子6は、
図3に示すように、ヒータ1を第一面2a側から平面視したとき、筒状部材7の内側に位置することが挙げられる。複数の端子6は、基材2の中心側に密集している。本例の各端子6は、
図1に示すように、基材2の第二面2bから筒状部材7の内側まで延びている。各端子6は、
図1に示す引出線65を介して図示しない外部電源に接続されている。各端子6の材質は、発熱体3の材質と同様の材質が挙げられる。引出線65は導電性部材からなる。
【0060】
本例の各端子6は、
図4に示すように、各発熱体3を貫通している。本例の各端子6は、接続された発熱体3における第一面側の面から第一面2aに向かって突出した先端部を備える。第一端子61は、内側発熱体4における第一面側の面から第一面2aに向かって突出した先端部610を備える。先端部610は、第一面2aまで到達していない。
【0061】
第二端子62は、第二外側発熱体52における第一面側の面52aから第一面2aに向かって突出した先端部620を備える。先端部620の突出方向の長さL2は、内側発熱体4と第二外側発熱体52との層間距離D1よりも小さい。層間距離D1は、1mm以上15mm以下、更に2mm以上10mm以下、特に3mm以上8mm以下であることが挙げられる。先端部620は、内側発熱体4に干渉していない。先端部620と内側発熱体4との間にはある程度大きな間隔を有する。
【0062】
第三端子63は、第一外側発熱体51における第一面側の面から第一面2aに向かって突出した先端部630を備える。先端部630は、内側発熱体4に近接しているが干渉していない。先端部630の直上には、
図1及び
図4に示すように、内側発熱体4は配置されない。先端部630は、先端部620よりも基材2の径方向の外側に位置する。そのため、隣り合う第三端子63間のスペースは、隣り合う第二端子62間のスペースに比較して余裕がある。よって、第三端子63は、ヒータ1を第一面2a側から平面視したとき、内側発熱体4に重ならないように配置し易い。
【0063】
本例の各端子6の形状は、先端側が先細る円錐台状である。各端子6の形状が円錐台状であることで、外径が一様な円柱状の端子に比較して、各端子6と各発熱体3との接触面積が確保され易い。各端子6における円錐台状のテーパー部分が、各発熱体3に接触している。第二端子62における円錐台状の一部が先端部620である。
【0064】
各端子6の先端がネジ形状に形成されていてもよい。この場合、基材2には、各端子6が配置される位置に上記ネジ形状に対応したネジ穴が形成されている。各端子6のネジ形状と基材2のネジ穴とが嵌め合わされて、基材2に各端子6が固定される。
【0065】
<作用効果>
実施形態1のヒータ1は、
図4に示すように、第二端子62が内側発熱体4に干渉することを抑制できる。第二端子62が第二外側発熱体52に接続されていることで、第二端子62が第一外側発熱体51に接続されている場合に比較して、
図4に示す層間距離D1を大きく確保できるからである。第二端子62が内側発熱体4に干渉しないことで、第二端子62の位置を考慮することなく内側発熱体4を所望の位置に配置できる。例えば、
図5に示すように、ヒータ1を第一面2a側から平面視したとき、第二端子62に重なるように内側発熱体4を配置することができる。他に、
図6に示すように、第一端子61と第二端子62との間、及び第二端子62と第三端子63との間に位置するように内側発熱体4を配置することもできる。なお、ヒータ1を第一面2a側から平面視したとき、第三端子63を避けるように内側発熱体4を配置することが好ましい。第三端子63は、
図4に示すように、内側発熱体4に近接しているからである。内側発熱体4と第一外側発熱体51との層間距離D2は、内側発熱体4と第二外側発熱体52との層間距離D1よりも小さいからである。
【0066】
比較例として、第二端子62が第一外側発熱体51に接続され、第三端子63が第二外側発熱体52に接続されている形態を
図7に示す。この形態のヒータは、
図8に示すように、ヒータ1を第一面2a側から平面視したとき、第二端子62に重なるように内側発熱体4を配置することができず、基材2の中心側に内側発熱体4を十分に配置できない。第二端子62は、
図7に示すように、内側発熱体4に近接しているからである。内側発熱体4と第一外側発熱体51との層間距離D2が、内側発熱体4と第二外側発熱体52との層間距離D1よりも小さいからである。
【0067】
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、上述した実施形態において、以下の変更が可能である。
【0068】
<変形例1>
基材2に設けられた第一外側領域21は、
図9に示すように、二つの分割領域210で構成されていてもよい。つまり、第一外側発熱体51(
図1、
図4)を構成する複数の発熱体セグメント510の個数は、二つでもよい。この場合、第一外側発熱体51(
図1、
図4)に接続された第三端子63の数は、
図10に示すように四つである。また、基材2に設けられた第二外側領域22は、
図9に示すように、二つの分割領域220で構成されていてもよい。つまり、第二外側発熱体52(
図1、
図4)を構成する複数の発熱体セグメント520の個数は、二つでもよい。この場合、第二外側発熱体52(
図1、
図4)に接続された第二端子62の数は、
図10に示すように四つである。変形例1の場合であっても、第二端子62が内側発熱体4に干渉することを抑制でき、基材2の中心側に内側発熱体4を十分に配置できる。
【0069】
<変形例2>
基材2に設けられた第一外側領域21は、
図11に示すよう、四つの分割領域210で構成されていてもよい。つまり、第一外側発熱体51(
図1、
図4)を構成する複数の発熱体セグメント510の個数は、四つでもよい。この場合、第一外側発熱体51(
図1、
図4)に接続された第三端子63の数は、
図12に示すように八つである。また、基材2に設けられた第二外側領域22は、
図11に示すように、四つの分割領域220で構成されていてもよい。つまり、第二外側発熱体52(
図1、
図4)を構成する複数の発熱体セグメント520の個数は、四つでもよい。この場合、第二外側発熱体52(
図1、
図4)に接続された第二端子62の数は、
図12に示すように八つである。変形例2の場合であっても、第二端子62が内側発熱体4に干渉することを抑制でき、基材2の中心側に内側発熱体4を十分に配置できる。
【0070】
<変形例3>
基材2の径方向における複数の外側発熱体5の位置関係として、
図13に示すように、第一外側発熱体51が
図2に示す第二外側領域22に配置され、第二外側発熱体52が
図2に示す第一外側領域21に配置されていてもよい。本例では、第一外側発熱体51の外径は、第二外側発熱体52の外径よりも大きい。この場合であっても、第二端子62は、第三層に配置された第二外側発熱体52に接続されている。第三端子63は、第二層に配置された第一外側発熱体51に接続されている。変形例3の場合であっても、第二端子62が内側発熱体4に干渉することを抑制でき、基材2の中心側に内側発熱体4を十分に配置できる。
【0071】
<変形例4>
複数の外側発熱体は、内側発熱体の外側に三つ以上設けられていてもよい。この場合でも、第二端子は、基材2の厚さ方向で第二層よりも第二面側に位置する第三層以降の層に配置された第二外側発熱体に接続されている。言い換えると、第二端子は、第二層に配置された第一外側発熱体以外の外側発熱体に接続されている。第二端子は、第一外側発熱体以外のいずれの外側発熱体に接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 ヒータ
2 基材
2a 第一面、2b 第二面
20 内側領域、21 第一外側領域、210 分割領域
22 第二外側領域、220 分割領域
D1、D2 層間距離
3 発熱体
4 内側発熱体
4b 第二面側の面、4c 外周輪郭線
5 外側発熱体
51 第一外側発熱体、510 発熱体セグメント
51a 第一面側の面
511 引込部
52 第二外側発熱体、520 発熱体セグメント
52a 第一面側の面
521 引込部
6 端子
61 第一端子、62 第二端子、63 第三端子、610、620、630 先端部
65 引出線
L2 長さ
7 筒状部材
71 フランジ部、7c 内周輪郭線
9 設置対象