(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】スイッチング素子モジュール、インバータ装置、及び車両駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 11/30 20160101AFI20240409BHJP
H02K 9/02 20060101ALI20240409BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240409BHJP
【FI】
H02K11/30
H02K9/02 B
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2022580692
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2022005465
(87)【国際公開番号】W WO2022173016
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2021021048
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 裕也
(72)【発明者】
【氏名】堀田 豊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良太
(72)【発明者】
【氏名】井原 寛里
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-012642(JP,A)
【文献】特開2007-116840(JP,A)
【文献】特開2013-062996(JP,A)
【文献】特開2001-332679(JP,A)
【文献】特開2016-201932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/30
H02K 9/02
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の正極と負極との間に接続される第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、
前記直流電源の正極と負極との間に接続される平滑コンデンサと、
冷却器に熱的に接続され
、前記第1スイッチング素子と第2スイッチング素子との間のみに配置された冷却ブロックとを備え、
前記第1スイッチング素子は、前記冷却ブロックの一側面に固定され、
前記第2スイッチング素子は、前記冷却ブロックの前記一側面に対向する他側面に固定され、
前記平滑コンデンサは、前記第1スイッチング素子の正極端子及び前記第2スイッチング素子の負極端子に固定されると共に、前記冷却ブロックの前記一側面と前記他側面とを連結する第1連結面に対向して設けられる、スイッチング素子モジュール。
【請求項2】
前記平滑コンデンサは、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子とのそれぞれの距離が等しい、請求項1に記載のスイッチング素子モジュール。
【請求項3】
前記冷却ブロックは、前記一側面と前記他側面とを連結する連結面であって、前記第1連結面と対向する第2連結面を更に有し、
前記第1スイッチング素子は、前記第1連結面の側に前記正極端子を有するとともに、前記第2連結面の側に出力端子を有し、
前記第2スイッチング素子は、前記第1連結面の側に前記負極端子を有するとともに、前記第2連結面の側に出力端子を有し、
前記第1スイッチング素子の前記出力端子と前記第2スイッチング素子の前記出力端子とは、互いに接続される、請求項1又は2に記載のスイッチング素子モジュール。
【請求項4】
請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のスイッチング素子モジュールを複数備え、回転電機を制御するインバータ装置であって、
複数の前記スイッチング素子モジュールは、前記回転電機の周方向に沿って分散して配置される、インバータ装置。
【請求項5】
前記第1連結面は、前記回転電機の径方向内側又は径方向外側に向く面を含む、請求項4に記載のインバータ装置。
【請求項6】
前記スイッチング素子モジュールは、前記回転電機の相ごとに複数設けられ、
同相に係る複数の前記スイッチング素子モジュールは、前記回転電機の周方向に沿って隣接して配置され、
周方向で隣接する同相に係る前記スイッチング素子モジュール間の周方向の距離よりも、周方向で隣接する異なる相に係る前記スイッチング素子モジュール間の周方向の距離が大きい、請求項5に記載のインバータ装置。
【請求項7】
複数の前記スイッチング素子モジュールは、前記回転電機を収容する収容部材の軸方向一端側に設けられるカバー部材に対して軸方向に隣接して配置され、
複数の前記スイッチング素子モジュールのそれぞれの前記冷却ブロック及び前記平滑コンデンサは、冷却水を流す冷却水路の形態の前記冷却器が形成される前記カバー部材に熱的に接続される、請求項6に記載のインバータ装置。
【請求項8】
ロータ及びステータを有する回転電機と、
前記回転電機が収容される収容室を形成する収容部材と、
軸方向で前記収容部材の一端側に配置され、前記回転電機に軸方向に対向するカバー部材と、
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子と、前記平滑コンデンサと、前記冷却ブロックとを一体化した前記請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の複数のスイッチング素子モジュールとを備え、
前記複数のスイッチング素子モジュールは、軸方向で前記カバー部材と前記回転電機の間に、周方向に沿って配置される、車両駆動装置。
【請求項9】
前記複数のスイッチング素子モジュールは、前記回転電機の相ごとに複数設けられ、
同相に係る複数の前記スイッチング素子モジュールは、前記回転電機の周方向に沿って隣接して配置され、
周方向で隣接する同相に係る前記スイッチング素子モジュール間の周方向の距離よりも、周方向で隣接する異なる相に係る前記スイッチング素子モジュール間の周方向の距離が大きい、請求項8に記載の車両駆動装置。
【請求項10】
前記カバー部材は、冷却水を流す冷却水路の形態の冷却器を備え、
前記冷却器は、軸方向に視て、周方向で隣接する異なる相に係る前記スイッチング素子モジュール間に、径方向に延在する水路部を含む、請求項9に記載の車両駆動装置。
【請求項11】
軸方向に視て、周方向で隣接する異なる相に係る前記スイッチング素子モジュール間に、前記スイッチング素子モジュールを相ごとに前記回転電機に電気的に接続するためのバスバーが配置される、請求項9又は10に記載の車両駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スイッチング素子モジュール、インバータ装置、及び車両駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却ブロック(ヒートシンク等)まわりにスイッチング素子や平滑コンデンサを配置する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、一の半導体モジュールが上下アームを形成する一体型であるので、その分だけ一の半導体モジュールの体格が大きくなりやすい。このため、上記のような従来技術では、冷却ブロックまわりに半導体モジュールや平滑コンデンサを効率的に配置することが難しい。
【0005】
そこで、本開示は、冷却ブロックまわりにスイッチング素子や平滑コンデンサを効率的に配置することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面によれば、直流電源の正極と負極との間に接続される第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、
前記直流電源の正極と負極との間に接続される平滑コンデンサと、
冷却器に熱的に接続される冷却ブロックとを備え、
前記第1スイッチング素子は、前記冷却ブロックの一側面に固定され、
前記第2スイッチング素子は、前記冷却ブロックの前記一側面に対向する他側面に固定され、
前記平滑コンデンサは、前記第1スイッチング素子の正極端子及び前記第2スイッチング素子の負極端子に固定されると共に、前記冷却ブロックの前記一側面と前記他側面とを連結する第1連結面に対向して設けられる、スイッチング素子モジュールが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、冷却ブロックまわりにスイッチング素子や平滑コンデンサを効率的に配置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1による回転電機を含む電気回路の一例の概略図である。
【
図2】実施例1による回転電機を含む車両用駆動システムのスケルトン図である。
【
図3A】実施例1による車両駆動装置の要部を概略的に示す断面図である。
【
図3B】冷却水路構造を概略的に示す他の断面図である。
【
図3C】カバー部材をX2側から視た斜視図である。
【
図3D】変形例によるモールド樹脂部の層構造を説明する概略的な断面図である。
【
図4】ステータコイルを形成するコイル辺の一例を概略的に示す図である。
【
図7】実施例1によるモータ駆動装置をX1側から視た斜視図である。
【
図8】実施例1によるカバー部材に配置されたパワーモジュール及びコンデンサモジュールをX2側から視た斜視図である。
【
図9】実施例1によるパワーモジュール及びコンデンサモジュールの構成とともに組み付け性を説明するための説明図である。
【
図10】実施例1によるブロック組立体により形成される電気回路の説明図である。
【
図11】実施例1による回転電機とブロック組立体との間の電気的な接続方法の一例を示す概略図である。
【
図12】実施例1によるモータ駆動装置の配線部のうちの電源用バスバーをX1側から視た斜視図である。
【
図13】実施例1による制御基板を概略的に示す平面図である。
【
図13A】変形例による車両駆動装置の要部を概略的に示す断面図である。
【
図14A】実施例1によるブロック組立体を6つだけ周方向に沿って配置した回転電機を説明する概略的な斜視図である。
【
図14B】実施例1によるブロック組立体を3つだけ周方向に沿って配置した回転電機を説明する概略的な斜視図である。
【
図15】比較例による車両駆動装置の配線構造の概略的な説明図である。
【
図16】実施例1による回転電機で実現可能な配線構造の一例の概略的な説明図である。
【
図17A】実施例1による回転電機で実現可能な配線構造の他の一例の概略的な説明図である。
【
図17B】実施例1による回転電機で実現可能な配線構造の他の一例を説明する等価の電気回路図である。
【
図18】実施例1による回転電機で実現可能な仕様の概略的な説明図である。
【
図19】実施例2による車両駆動装置をX1側から示す斜視図である。
【
図20】実施例2による車両駆動装置をX2側から示す斜視図である。
【
図21】実施例2による管部材をX1側から示す斜視図である。
【
図22】実施例2による管部材をX2側から示す斜視図である。
【
図23】実施例2による車両駆動装置の要部の断面図である。
【
図24】他の実施例による車両駆動装置の要部の断面図である。
【
図25】更なる他の実施例による車両駆動装置の要部の断面図である。
【
図26】実施例3による車両駆動装置の要部を概略的に示す断面図である。
【
図27】実施例3によるカバー部材にモータ駆動装置を組み付けたサブアセンブリした状態を説明する概略的な断面図である。
【
図28】実施例3によるカバー部材に好適な冷却水路構造を示す説明図であり、軸方向に視た平面図である。
【
図29】実施例3の車両駆動装置に適用されるモータ駆動装置を示す説明図である。
【
図30】実施例3の冷却水路構造とモータ駆動装置との位置関係を示す説明図である。
【
図31】第1変形例によるモータ駆動装置の要部のレイアウトを概略的に示す断面図である。
【
図32】第2変形例によるモータ駆動装置の要部のレイアウトを概略的に示す断面図である。
【
図33】第3変形例によるモータ駆動装置の要部のレイアウトを概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。
【0010】
以下では、本実施例の車両駆動装置10の電気系(制御系)、及び、本実施例の車両駆動装置10を含む駆動システム全体を概説してから、本実施例の車両駆動装置10の詳細について説明する。
【0011】
[車両駆動装置の電気系]
図1は、本実施例の回転電機1を含む電気回路200の一例の概略図である。
図1には、制御装置500についても併せて示される。
図1において、制御装置500に対応付けられた点線矢印は、情報(信号やデータ)のやり取りを表す。
【0012】
回転電機1は、制御装置500によるインバータINVの制御を介して駆動される。
図1に示す電気回路200では、回転電機1は、電源VaにインバータINVを介して電気的に接続される。なお、インバータINVは、例えば、相ごとに、電源Vaの高電位側と低電位側とにそれぞれパワースイッチング素子(例えばMOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect TransistorやIGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor等)を備え、高電位側のパワースイッチング素子と低電位側のパワースイッチング素子とが上下アームを形成する。なお、インバータINVは、相ごとに、複数組の上下アームを備えてもよい。各パワースイッチング素子は、制御装置500による制御下で、所望の回転トルクが発生するようにPWM(Pulse Width Modulation)駆動されてよい。なお、電源Vaは、例えば比較的定格電圧の高いバッテリであり、例えばリチウムイオンバッテリや燃料電池等であってよい。
【0013】
本実施例では、
図1に示す電気回路200のように、電源Vaの高電位側と低電位側の間には、インバータINVに対して並列に、平滑コンデンサCが電気的に接続される。なお、平滑コンデンサCは、複数組、互いに並列に、電源Vaの高電位側と低電位側の間に電気的に接続されてもよい。また、電源VaとインバータINVとの間にDC/DCコンバータが設けられてもよい。
【0014】
[駆動システム全体]
図2は、回転電機1を含む車両用駆動システム100のスケルトン図である。
図2には、X方向と、X方向に沿ったX1側とX2側が定義されている。X方向は、第1軸A1の方向(以下、「軸方向」とも称する)に平行である。
【0015】
図2に示す例では、車両用駆動システム100は、車輪の駆動源となる回転電機1と、回転電機1と車輪Wとを結ぶ動力伝達経路に設けられた駆動伝達機構7と、を備える。駆動伝達機構7は、入力部材3と、カウンタギヤ機構4と、差動歯車機構5と、左右の出力部材61、62と、を備える。
【0016】
入力部材3は、入力軸31と、入力ギヤ32とを有する。入力軸31は、第1軸A1まわりに回転する回転部材である。入力ギヤ32は、回転電機1からの回転トルク(駆動力)をカウンタギヤ機構4に伝達するギヤである。入力ギヤ32は、入力部材3の入力軸31と一体的に回転するように、入力部材3の入力軸31に連結される。
【0017】
カウンタギヤ機構4は、動力伝達経路において、入力部材3と差動歯車機構5との間に配置される。カウンタギヤ機構4は、カウンタ軸41と、第1カウンタギヤ42と、第2カウンタギヤ43とを有する。
【0018】
カウンタ軸41は、第2軸A2まわりに回転する回転部材である。第2軸A2は、第1軸A1に平行に延在する。第1カウンタギヤ42は、カウンタギヤ機構4の入力要素である。第1カウンタギヤ42は、入力部材3の入力ギヤ32と噛み合う。第1カウンタギヤ42は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結される。
【0019】
第2カウンタギヤ43は、カウンタギヤ機構4の出力要素である。本実施例では、一例として、第2カウンタギヤ43は、第1カウンタギヤ42よりも小径に形成される。第2カウンタギヤ43は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結される。
【0020】
差動歯車機構5は、その回転軸心としての第3軸A3上に配置される。第3軸A3は、第1軸A1に平行に延在する。差動歯車機構5は、回転電機1の側から伝達される駆動力を、左右の出力部材61、62に分配する。差動歯車機構5は、差動入力ギヤ51を備え、差動入力ギヤ51は、カウンタギヤ機構4の第2カウンタギヤ43と噛み合う。また、差動歯車機構5は、差動ケース52を備え、差動ケース52内には、ピニオンシャフトや、ピニオンギヤ、左右のサイドギヤ等が収容される。左右のサイドギヤは、それぞれ、左右の出力部材61、62と一体的に回転するように連結される。
【0021】
左右の出力部材61、62のそれぞれは、左右の車輪Wに駆動連結される。左右の出力部材61、62のそれぞれは、差動歯車機構5によって分配された駆動力を車輪Wに伝達する。なお、左右の出力部材61、62は、2つ以上の部材により構成されてもよい。
【0022】
このようにして回転電機1は、駆動伝達機構7を介して車輪Wを駆動する。ただし、他の実施例では、回転電機1は、ホイールインモータとして、車輪内に配置されてもよい。この場合、車両用駆動システム100は、駆動伝達機構7を含まない構成であってよい。また、他の実施例では、駆動伝達機構7の一部又は全部を共用化して複数の回転電機1が設けられてもよい。
【0023】
[車両駆動装置の詳細]
車両駆動装置10は、上述した回転電機1と、ケース2と、モータ駆動装置8とを含む。
【0024】
図3Aは、本実施例の車両駆動装置10の要部を概略的に示す断面図である。
図3Aでは、回転電機1の回転軸である第1軸A1を通る平面で切断された断面図で、回転電機1の軸方向一端側(X1側)の一部が示されている。以下の説明において、特に言及しない限り、軸方向とは、回転電機1の回転軸である第1軸A1が延在する方向を指し、径方向とは、第1軸A1を中心とした径方向を指す。従って、径方向外側とは、第1軸A1から離れる側を指し、径方向内側とは、第1軸A1に向かう側を指す。また、周方向とは、第1軸A1まわりの回転方向に対応する。また、
図3Aには、
図2と同様、X方向と、X方向に沿ったX1側とX2側が定義されている。以下の説明において、X1側とX2側の各用語は、相対的な位置関係を表すために用いられる場合がある。
図3Bは、冷却水路構造を概略的に示す車両駆動装置10の他の断面図(
図3Aとは異なるラインで切断した断面図)である。
図3Cは、カバー部材252をX2側から視た斜視図である。
図3Dは、変形例によるモールド樹脂部2523Aの層構造を説明する概略的な断面図である。
図4は、ステータコイル322を形成するコイル辺121の一例を概略的に示す図である。
【0025】
車両駆動装置10は、車両用駆動システム100の一部として車両に搭載され、上述したように、車両を前進又は後退させる駆動力を生成する。なお、車両は、任意の形態であり、例えば4輪の自動車であってもよいし、バス、トラック、二輪車や建設機械等であってもよい。なお、車両駆動装置10は、他の駆動源(例えば内燃機関)とともに車両に搭載されてもよい。
【0026】
回転電機1は、ロータ310及びステータ320を有する。
図3Aには、回転電機1の軸方向一端側(X1側)の一部が示されている。回転電機1は、インナロータタイプであり、ステータ320がロータ310の径方向外側を囲繞するように設けられる。すなわち、ロータ310は、ステータ320の径方向内側に配置される。
【0027】
ロータ310は、ロータコア312と、シャフト部314とを備える。
【0028】
ロータコア312は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなってよい。ロータコア312の内部には、永久磁石325が埋め込まれてよい。あるいは、永久磁石325は、ロータコア312の外周面に取り付けられてもよい。なお、永久磁石325の配列等は任意である。ロータコア312は、シャフト部314の外周面に固定され、シャフト部314と一体となって回転する。
【0029】
シャフト部314は、回転電機1の回転軸である第1軸A1を画成する。シャフト部314は、ロータコア312が固定される部分よりもX1側において、ケース2のカバー部材252(後述)にベアリング240を介して回転可能に支持される。なお、シャフト部314は、回転電機1の軸方向他端側(X2側)において、ベアリング240に対応するベアリングを介してケース2に回転可能に支持される。このようにして、シャフト部314が軸方向両端で回転可能にケース2に支持されてよい。
【0030】
シャフト部314は、例えば中空管の形態であり、中空内部314Aを有する。中空内部314Aは、シャフト部314の軸方向の全長にわたり延在してよい。中空内部314Aは、軸心油路として機能することができる。この場合、シャフト部314は、ステータ320のコイルエンド部322A等に油を吐出する油孔が形成されてよい。
【0031】
シャフト部314は、ロータコア312が固定される部分よりもX1側に、ロータ310の回転角度情報を取得する回転角センサ900に係る被検出部3141が設けられる。回転角センサ900は、例えば、ホール素子や磁気抵抗型素子のようなセンサ素子を用いるロータリーエンコーダであってよい。本実施例では、被検出部3141は、軸方向で、ベアリング240にX2側から隣接して設けられる。なお、回転角センサ900のセンサ素子がホール素子である場合、被検出部3141は、シャフト部314の外周部に設けられる永久磁石により実現されてよい。この場合、永久磁石は、シャフト部314の外周部の磁極が周方向に沿って周期的に変化するように配置され、回転角センサ900のセンサ素子は、径方向に被検出部3141に対向する態様で、第1軸A1まわりに、等ピッチで複数配置されてよい。なお、被検出部3141は、シャフト部314に取り付けられるリング状の形態であってもよいし、シャフト部314に一体的に形成されてもよい。
【0032】
ステータ320は、ステータコア321と、ステータコイル322とを備える。
【0033】
ステータコア321は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなってよい。ステータコア321の内周部には、径方向内側に突出するティース(図示せず)が放射状に形成される。
【0034】
ステータコイル322は、例えば断面平角状又は断面円形状の導体に絶縁被膜が付与された形態であってよい。ステータコイル322は、ステータコア321のティース(図示せず)まわりに巻装される。なお、ステータコイル322は、例えば、1つ以上の並列関係で、Y結線で電気的に接続されてもよいし、Δ結線で電気的に接続されてもよい。
【0035】
ステータコイル322は、ステータコア321のスロットから軸方向外側に突出する部分であるコイルエンド部322Aを有する。例えば、ステータコイル322は、
図4に示すようなコイル辺121を複数、ステータコア321に組み付けることで実現されてもよい。
図4に示す例では、コイル辺121は、2つのスロットに挿入されるスロット挿入部1211、1214と、渡り部1215A、1215Bと、端部1210、1218とを含む。この場合、渡り部1215A、1215Bや端部1210、1218がコイルエンド部322Aを形成する。なお、ステータコイル322は、他の形態のコイルにより形成されてもよく、例えば、カセットコイルの形態以外のコイルにより形成されてもよい。以下の説明において、コイルエンド部322Aとは、特に言及しない限り、ステータコイル322の一部であって、ステータコア321の軸方向両側のそれぞれで周方向に沿って延在する部分のうちの、リード側である軸方向一端側(X1側)に沿って延在する部分を指す。
【0036】
ケース2は、例えばアルミ等により形成されてよい。ケース2は、鋳造等により形成できる。ケース2は、モータケース250と、カバー部材252とを含む。ケース2は、回転電機1及びモータ駆動装置8を収容する。また、
図2に示した車両用駆動システム100の場合、ケース2は、
図2に模式的に示すように、駆動伝達機構7を更に収容してもよい。
【0037】
モータケース250は、回転電機1を収容するモータ収容室SP1を形成する。なお、モータ収容室SP1は、回転電機1(及び/又は駆動伝達機構7)を冷却及び/又は潤滑するための油を含む油密空間であってよい。モータケース250は、回転電機1の径方向外側を囲繞する周壁部を有する形態である。モータケース250は、複数の部材を結合して実現されてもよい。また、モータケース250は、軸方向他端側(X2側)で、駆動伝達機構7を収容する他のケース部材に一体化されてよい。
【0038】
カバー部材252は、モータケース250の軸方向一端側(X1側)に結合される。カバー部材252は、モータ収容室SP1における軸方向一端側(X1側)を覆うカバーの形態である。この場合、カバー部材252は、モータケース250の軸方向一端側(X1側)の開口部を完全に又は略完全に閉塞する態様で覆ってもよい。
【0039】
カバー部材252は、モータ駆動装置8を収容するインバータ収容室SP2を形成する。なお、インバータ収容室SP2の一部は、モータケース250により形成されてもよいし、逆に、モータ収容室SP1の一部は、カバー部材252により形成されてもよい。
【0040】
カバー部材252は、モータ駆動装置8を支持する。例えばモータ駆動装置8は、後述するモジュールの形態で、カバー部材252に取り付けられてもよい。これにより、カバー部材252にモータ駆動装置8の一部又は全体を組み付けてから、カバー部材252とモータケース250とを結合でき、モータ駆動装置8の組み付け性が向上する。
【0041】
カバー部材252には、ロータ310を回転可能に支持するベアリング240が設けられる。すなわち、カバー部材252は、ベアリング240を支持するベアリング支持部2524を有する。なお、ベアリング支持部2524とは、カバー部材252のうちの、ベアリング240が設けられる軸方向範囲の部分全体を指す。
【0042】
ベアリング240は、
図3Aに示すように、シャフト部314のX1側の端部における径方向外側に設けられる。具体的には、ベアリング240は、アウタレースの径方向外側がカバー部材252に支持され、インナレースの径方向内側がシャフト部314の外周面に支持される。なお、変形例では、逆に、ベアリング240は、インナレースの径方向内側がカバー部材252に支持され、アウタレースの径方向外側がシャフト部314の内周面に支持されてもよい。
【0043】
本実施例では、カバー部材252は、
図3A及び
図3Cに示すように、第1軸A1を中心とした円環状の底部2521、2521Aと、底部2521の内周縁から軸方向他端側(X2側)へと突出する周壁部2522とを含み、底部2521と周壁部2522とが、インバータ収容室SP2を画成する。底部2521における軸方向他端側(X2側)の中央部(第1軸A1を中心とした部分)には、軸方向他端側(X2側)に突出する円筒状部位25211が形成され、円筒状部位25211にベアリング支持部2524が設定される。なお、円筒状部位25211は、第1軸A1を中心として同芯に形成される。なお、底部2521、2521Aには、後述する第1冷却水路25281、第2冷却水路25282がそれぞれ形成されてよい。
【0044】
インバータ収容室SP2は、空間であってもよいが、好ましくは、比較的高い伝熱性を有するフィラーを含む樹脂により封止される。すなわち、カバー部材252は、好ましくは、伝熱性のモールド樹脂部2523を有する。この場合、モールド樹脂部2523は、後述するモータ駆動装置8を封止して支持する機能と、モータ収容室SP1内の油に対してモータ駆動装置8を保護する機能と、モータ駆動装置8からの熱をカバー部材252に伝達する機能を有することができる。なお、
図3Aでは、モールド樹脂部2523内に封止される要素(後述するブロック組立体90等)が透視で示されている。モールド樹脂部2523の形成範囲は、
図3A等に示す範囲に限られず、底部2521側から、よりX1側までしか延在しなくてもよいし、よりX2側まで延在してもよい。
【0045】
また、
図3Dに示す変形例の車両駆動装置10Aのモールド樹脂部2523Aのように、複数の樹脂材料による層構造を有してもよい。具体的には、モールド樹脂部2523Aは、第1樹脂層25231と、第2樹脂層25232とを含む態様で、軸方向に層をなす層構造を有する。この場合、第1樹脂層25231は、好ましくは、軸方向で第2樹脂層25232よりも回転電機1に近い側(すなわちX2側)に配置され、かつ、第2樹脂層25232よりも熱伝導性が低い。例えば、第1樹脂層25231は、断熱性の比較的高い樹脂材料(例えば発泡樹脂材料)により形成されてよく、第2樹脂層25232は、熱伝導性の比較的高い樹脂材料(例えば金属のフィラー等を含む樹脂材料)により形成されてよい。かかるモールド樹脂部2523Aによれば、モータ駆動装置8におけるコイルエンド部322Aからの受熱を抑制しつつ、モータ駆動装置8からの熱をカバー部材252に効率的に伝達できる。なお、この場合、コイルエンド部322Aの冷却は、別の冷却系(例えばモータケース250内の油路及び/又は冷却水路)により実現されてもよい。
【0046】
なお、モールド樹脂部2523は、後述するコンデンサモジュール82等を含むモータ駆動装置8をカバー部材252に固定する機能をも有する。この場合、モールド樹脂部2523は、コンデンサモジュール82の全体を封止するように形成されてもよい。
【0047】
カバー部材252は、好ましくは、比較的高い伝熱性を有する材料(例えばアルミ)により形成され、内部に冷却水路2528を有する。冷却水路2528には、水が冷却水として流れる。なお、水は、例えばLLC(Long Life Coolant)を含む水であってよい。この場合、冷却水路2528を流れる冷却水は、車両に搭載されるラジエーター(図示せず)で放熱されることで、比較的低温に維持できる。カバー部材252の冷却水路2528に冷却水が流れると、カバー部材252の熱が冷却水に奪われることで、カバー部材252が冷却される。これにより、カバー部材252は、軸方向に隣接して配置されるモータ駆動装置8を冷却する機能を有することができる。すなわち、モータ駆動装置8からの熱は、カバー部材252を介して冷却水により奪われ、モータ駆動装置8の冷却が促進される。このような冷却機能は、上述したモールド樹脂部2523により更に促進することができる。なお、変形例では、冷却水に代えて、他の冷媒(例えば油)が利用されてもよい。
【0048】
冷却水路2528は、軸方向に視て任意の形態であってよく、例えば、円環状の形態であってもよいし、螺旋状の形態であってもよいし、径方向外側と内側に蛇行しながら周方向に沿って延在する形態であってもよい。冷却水路2528には、フィン等が形成されてもよい。なお、カバー部材252を中子等を用いて製造する場合は、冷却水路2528の形状等の自由度を高めることができる。
【0049】
ここで、本実施例では、
図3Bに示すように、冷却水路2528は、第1冷却水路25281と、第2冷却水路25282とを有する。第1冷却水路25281は、軸方向に視て円環状の形態であり、軸方向に視て、パワーモジュール80(後述)に対向する。これにより、第1冷却水路25281の全周にわたってパワーモジュール80を冷却できる。第2冷却水路25282は、軸方向に視て円環状の形態であり、軸方向に視て、コンデンサモジュール82(後述)に対向する。これにより、第2冷却水路25282の全周にわたってコンデンサモジュール82を冷却できる。第1冷却水路25281及び第2冷却水路25282は、径方向の接続流路25283(
図3A参照)により連通する。第1冷却水路25281は、好ましくは、第2冷却水路25282よりも上流側(図示しないウォーターポンプの吐出側に近い側)に配置される。すなわち、冷却水路2528への入口部(カバー部材252に形成される入口部)(図示せず)は、好ましくは、第1冷却水路25281に接続される。このような構成によれば、コンデンサモジュール82よりも高温化しやすいパワーモジュール80のサブモジュール800(パワー半導体チップ801、802)(後述)を、第2冷却水路25282よりも上流側の第1冷却水路25281内の冷却水(比較的新鮮な冷却水)により効率的に冷却できる。
【0050】
モータ駆動装置8は、上述したインバータINVや平滑コンデンサC、制御装置500等を含む。モータ駆動装置8の要素の詳細は、
図6から
図13を参照して後述する。
【0051】
モータ駆動装置8は、
図3Aに示すように、軸方向でカバー部材252と回転電機1との間に配置される。すなわち、モータ駆動装置8は、インバータ収容室SP2に配置される。
【0052】
このようにして、本実施例によれば、カバー部材252と回転電機1との間にモータ駆動装置8が配置されるので、モータ駆動装置8’がモータケース250’の外部に搭載される場合(
図5参照)に比べて、車両駆動装置10全体としての体格を低減できる。
【0053】
特に、本実施例によれば、カバー部材252にベアリング支持部2524を設けつつ、軸方向でカバー部材252と回転電機1との間にモータ駆動装置8を配置することで、車両駆動装置10の軸方向の体格の低減を図ることができる。具体的には、軸方向でカバー部材252よりもX1側にモータ駆動装置8を設ける場合、モータ駆動装置8のX1側をカバーするカバー部材が別に必要となり、その分、車両駆動装置10の軸方向の体格の増加を招きやすい。この点、本実施例によれば、カバー部材252は、回転電機1のみならず、モータ駆動装置8に対しても、X1側のカバーとして機能できるので、車両駆動装置10の軸方向の体格の低減を図ることができる。
【0054】
更に、本実施例では、カバー部材252のベアリング支持部2524は、軸方向に視てモータ駆動装置8(後述するパワーモジュール80やコンデンサモジュール82等)よりも径方向内側に配置され、かつ、径方向に視てモータ駆動装置8にオーバラップする。これにより、カバー部材252の軸方向の寸法(ベアリング支持部2524からX2側への寸法)の低減を図りつつ、モータ駆動装置8を、軸方向でカバー部材252と回転電機1との間に配置できる。この結果、車両駆動装置10の軸方向の体格を更に効果的に低減できる。
【0055】
また、本実施例によれば、軸方向でモータ駆動装置8と回転電機1の間に、ベアリング支持部2524に対応するベアリング支持部を有するブラケットが設けられることがない。これにより、かかるブラケットが設けられる構成に比べて、部品点数の低減を図るとともに、モータ駆動装置8と回転電機1との間の軸方向の距離の短縮を図ることができ、上述したように車両駆動装置10の軸方向の体格の低減を図ることができる。また、軸方向でモータ駆動装置8と回転電機1との間を隔てる壁部(ブラケット)がないので、モータ駆動装置8と回転電機1との間の配線長の短縮を図ることができ、モータ駆動装置8と回転電機1との間の配線効率を高めることができる。
【0056】
また、本実施例によれば、カバー部材252に冷却水路2528が形成される場合、カバー部材252をモータ駆動装置8に熱的に接続(熱伝導可能に接続)できる。すなわち、モータ駆動装置8をカバー部材252を介して冷却水路2528内の冷却水により冷却できる。冷却水路2528には冷却水を安定的に流すことができるので、モータ駆動装置8の冷却の安定化を図ることができる。また、冷却水の流量を制御できる場合は、モータ駆動装置8の状態に応じた冷却の最適化を図ることも可能である。
【0057】
また、本実施例によれば、モータ駆動装置8と回転電機1との間の軸方向の距離の短縮を図ることで、カバー部材252(冷却水路2528を備えるカバー部材252)によりモータ駆動装置8のみならず、回転電機1の一部を冷却することも可能となる。例えば、上述したモールド樹脂部2523を回転電機1のステータコイル322に熱的に接続してもよい。具体的には、モールド樹脂部2523を回転電機1のコイルエンド部322Aに当接又は近接させることで、コイルエンド部322Aをモールド樹脂部2523及びカバー部材252を介して冷却水路2528内の冷却水により冷却できる。
【0058】
次に、
図6から
図13を参照して、モータ駆動装置8の具体的な例を説明する。
【0059】
図6は、
図3AのQ1部の拡大図である。
図7は、モータ駆動装置8をX1側から視た斜視図である。
図8は、カバー部材252に配置されたパワーモジュール80及びコンデンサモジュール82をX2側から視た斜視図である。
図9は、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の構成とともに組み付け性を説明するための説明図である。
図10は、ブロック組立体90により形成される電気回路の説明図である。
図11は、回転電機1とブロック組立体90との間の電気的な接続方法の一例を示す概略図である。
図12は、モータ駆動装置8の配線部88のうちの電源用バスバー886をX1側から視た斜視図である。
図13は、制御基板84を概略的に示す平面図である。
【0060】
モータ駆動装置8は、パワーモジュール80と、コンデンサモジュール82と、制御基板84と、配線部88とを含む。なお、
図7では、制御基板84及び配線部88の一部(リード線888や中継バスバー889等)の図示は省略されている。
【0061】
本実施例では、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82は、
図7に示すように、複数の組(
図7に示す例では、12組)をなして、周方向に沿って配置される。パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組の数は、回転電機1の仕様に応じて変化させる。基本的には、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組の数が増加すると、回転電機1の出力が大きくなる。従って、回転電機1の設計の際に、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組の数が異なる複数のバリエーションを設定できる。
【0062】
パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82は、好ましくは、組ごとに、周方向に沿って等ピッチで配置される。例えば、
図7に示す例では、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組数は12組であり、12組は、30度ピッチで配置される。これにより、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82からの熱に起因した周方向に沿った温度分布を均一化できる。ただし、変形例では、異なるピッチが利用されてもよい。
【0063】
パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82は、好ましくは、複数の組のそれぞれにおいて、一体化された組立体の形態である。すなわち、各組のパワーモジュール80及びコンデンサモジュール82は、一体化されたブロック組立体90を形成する。
図9には、一の組に係るブロック組立体90の形成方法が模式的に示されている。この場合、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82は、サブアセンブリした状態でカバー部材252に組み付けることができる(
図8参照)。これにより、組み付け性が良好となる。具体的には、組み付け方法は、モータ駆動装置8をカバー部材252に組み付ける工程と、モータ駆動装置8が組み付けられたカバー部材252をモータケース250に組み付ける工程とを含むことができる。モータ駆動装置8をカバー部材252に組み付ける工程は、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82を、サブアセンブリした状態でカバー部材252に組み付けることができるので、良好な作業性となる。なお、モータ駆動装置8をカバー部材252に組み付ける工程は、上述したモールド樹脂部2523を形成する工程を含んでよい。これにより、モータ駆動装置8とカバー部材252が強固に結合されるので、モータ駆動装置8が組み付けられたカバー部材252をモータケース250に組み付ける工程の作業性も良好となる。
【0064】
ブロック組立体90のそれぞれにおいて、パワーモジュール80は同じ構成を有し、コンデンサモジュール82は同じ構成(電気的特性や形状等)を有する。これにより、ブロック組立体90ごとの交換や整備も可能であり、汎用性を高めることができる。本実施例では、ブロック組立体90のそれぞれにおいて、パワーモジュール80は、サブモジュール800と、放熱部材810とを含む。この場合、ブロック組立体90のそれぞれにおいて、サブモジュール800は同じ構成(電気的特性や形状等)を有し、放熱部材810は同じ構成(材料や形状等)を有する。これにより、複数のブロック組立体90を周方向に沿って配置する際、どのブロック組立体90を、どの周方向の位置に配置するかを考慮する必要性がなくなり、組み付け性が良好となる。なお、電気的特性が同じとは、電気的特性に有意差がないことを意味し、個体差に起因した微差を無視する概念である。電気的特性とは、任意であるが、例えば、コンデンサモジュール82の電気的特性は、定格容量等であってよく、サブモジュール800(パワー半導体チップ801、802)の電気的特性は、ゲート閾値電圧等であってよい。同様に、形状が同じとは、形状に有意差がないことを意味し、個体差に起因した微差(例えば許容公差内の寸法の差等)を無視する概念である。
【0065】
なお、例えば、12個のブロック組立体90のうちのU相用の4つのブロック組立体90は、周方向に隣接して一塊で配置され、V相用の4つのブロック組立体90は、周方向に隣接して一塊で配置され、W相用の4つのブロック組立体90は、周方向に隣接して一塊で配置されてもよい。この場合、後述する中継バスバー889の数の低減を図ることができる。あるいは、U相用のブロック組立体90と、V相用のブロック組立体90と、W相用のブロック組立体90とが、周方向に沿って1つずつ又は2つずつ周期的に配置されてもよい。
【0066】
サブモジュール800のそれぞれは、インバータINV(
図1参照)における一の相に係る上下アームを形成する。これにより、上下アームごとにサブモジュール化が可能となり、配線効率が向上する。具体的には、12組のうちの、4組におけるパワーモジュール80において、サブモジュール800のそれぞれは、U相に係る上下アームを形成し、他の4組におけるパワーモジュール80において、サブモジュール800のそれぞれは、V相に係る上下アームを形成し、更なる他の4組におけるパワーモジュール80において、サブモジュール800のそれぞれは、W相に係る上下アームを形成する。
【0067】
また、ブロック組立体90のそれぞれにおいて、サブモジュール800は、対のパワー半導体チップ801、802を有する。具体的には、対のパワー半導体チップ801、802は、高電位側(
図10のP参照)の上アームを形成するパワー半導体チップ801と、低電位側(
図10のN参照)の下アームを形成するパワー半導体チップ802とからなる。パワー半導体チップ801、802は、それぞれ、上述したパワースイッチング素子を含む。
【0068】
パワー半導体チップ801及びパワー半導体チップ802は、
図9に示すように、好ましくは、放熱部材810と一体化される。これにより、上述したパワーモジュール80が放熱部材810を一体的に含むことになり、放熱部材810を介して対のパワー半導体チップ801、802の熱を効率的に放熱できる。また、対のパワー半導体チップ801、802及び放熱部材810をそれぞれ別々にカバー部材252又はコンデンサモジュール82に組み付ける場合よりも、組み付け性を高めることができる。
【0069】
また、パワー半導体チップ801及びパワー半導体チップ802は、
図9に示すように、配線部88の一部としてバスバー881、882、883、884を有する。パワー半導体チップ801と一体化されるバスバー881は、パワー半導体チップ801とコンデンサモジュール82(例えば
図9のコンデンサバスバー821)とを電気的に接続する。また、パワー半導体チップ801と一体化されるバスバー883は、放熱部材810の径方向内側の連結面8104の側に突出し、パワー半導体チップ801と、回転電機1における対応する相のステータコイル322(例えば
図4に示すコイル辺121における端部1210又は1218)とを電気的に接続する。同様に、パワー半導体チップ802と一体化されるバスバー882は、パワー半導体チップ802とコンデンサモジュール82(例えば
図9のコンデンサバスバー822)とを電気的に接続する。また、パワー半導体チップ802と一体化されるバスバー884は、放熱部材810の径方向内側の連結面8104の側に突出し、パワー半導体チップ802と、回転電機1における対応する相のステータコイル322(
図4に示すコイル辺121における端部1210又は1218)とを電気的に接続する。
【0070】
本実施例では、対のパワー半導体チップ801、802は、放熱部材810の周方向の側面8101、8102に接合される。この際、パワー半導体チップ801は、放熱部材810の周方向一方側の側面(表面)8102に接合され、パワー半導体チップ802は、放熱部材810の周方向他方側の側面(表面)8101に接合される。なお、接合方法は任意であり、比較的高い伝熱性の接着材料等が利用されてもよい。これにより、放熱部材810は、対のパワー半導体チップ801、802から周方向の側面を介して効率的に熱を受けることができる。また、周方向で隣り合う放熱部材810の間のスペースを効率的に利用して、対のパワー半導体チップ801、802を配置できる。また、上下アームのパワー半導体チップ801、802を放熱部材810の異なる側面(周方向の側面)8101、8102に配置することで、径方向内側においてバスバー883、884及び中継バスバー889を介して上下アームのパワー半導体チップ801、802を効率的に互いに対して電気的に接続できる。また、径方向外側(放熱部材810の径方向外側の連結面8103の側)において上下アームのパワー半導体チップ801、802をコンデンサモジュール82(及び電源Va)に効率的に電気的に接続できる。
【0071】
放熱部材810は、比較的高い伝熱性を有する材料(例えばアルミ)により形成される。本実施例では、放熱部材810は、中実のブロックの形態である。これにより、放熱部材810の熱容量を効率的に高めることができる。
【0072】
放熱部材810は、サブモジュール800からの熱を効率的に受け、受けた熱をカバー部材252(及び冷却水路2528内の冷却水)に効率的に伝達する機能を有する。
【0073】
本実施例では、上述したように、放熱部材810は、対のパワー半導体チップ801、802が周方向の側面に接合されるので、軸方向の表面(例えばX1側の表面)がフリーとなる。これにより、放熱部材810は、カバー部材252(及びそれに伴い冷却水路2528)に軸方向に近接又は当接する態様で、配置できる。この場合、放熱部材810を介して対のパワー半導体チップ801、802の熱をカバー部材252(及びそれに伴い冷却水路2528内の冷却水)へと効率的に伝達できる。なお、放熱部材810の軸方向他方側(X2側)の表面は、制御基板84上の素子の冷却等に利用されてもよい。
【0074】
本実施例では、
図6に示すように、放熱部材810は、カバー部材252に軸方向で当接する。これにより、放熱部材810の熱をカバー部材252(及びそれに伴い冷却水路2528内の冷却水)へと効率的に伝達できる。また、放熱部材810は、軸方向に視て、冷却水路2528にオーバラップする。これにより、放熱部材810の熱をカバー部材252(及びそれに伴い冷却水路2528内の冷却水)へと、更に効率的に伝達できる。
【0075】
放熱部材810は、好ましくは、
図7に示すように、軸方向に視て、径方向内側に向かうほど周方向幅が小さくなる形態である。すなわち、放熱部材810は、好ましくは、対のパワー半導体チップ801、802が接合される周方向の側面間の距離L1が、径方向で第1軸A1に近い側の方が第1軸A1から遠い側よりも小さい。これにより、放熱部材810をコンデンサモジュール82よりも径方向内側に配置しつつ、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組数(すなわちブロック組立体90の数)を比較的大きくした場合でも、放熱部材810のレイアウトを比較的容易に成立させることができる。また、周方向の側面に対のパワー半導体チップ801、802を配置した場合にも、径方向内側の配置スペース(放熱部材810の配置スペース)を確保しやすくすることができる。ただし、別の実施例では、距離L1は一定等であってもよい(
図11参照)。
【0076】
コンデンサモジュール82は、平滑コンデンサC(
図1参照)を形成するモジュールの形態である。コンデンサモジュール82は、平滑コンデンサCを形成するコンデンサ素子や配線部88のコンデンサバスバー821、822(
図9参照)を樹脂により封止した形態であってよい。なお、コンデンサバスバー821、822は、それぞれ、封止樹脂部から露出した各端部が、コンデンサ素子の高電位側端子と、コンデンサ素子の低電位側端子とを形成する。コンデンサバスバー821、822は、サブモジュール800に接続されるとともに、電源用バスバー886(
図3A、
図6、及び
図12参照)に接続される。
【0077】
ブロック組立体90のそれぞれにおいて、コンデンサモジュール82は、
図10に示すように、対応する組のサブモジュール800の高電位側と低電位側との間に並列に電気的に接続される平滑コンデンサCを形成する。
【0078】
本実施例では、コンデンサモジュール82は、パワーモジュール80の径方向外側に配置される。これにより、コンデンサモジュール82がパワーモジュール80の径方向内側に配置される場合に比べて、配置できる周方向範囲が広くなり、コンデンサモジュール82の体格を大きくしやすくなる。例えば、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組数を比較的大きくした場合でも、比較的大きな体格のコンデンサモジュール82を実現できる。この結果、回転電機1の高出力化に対応することが容易となる。
【0079】
また、本実施例では、コンデンサモジュール82の軸方向の延在範囲は、
図6に示すように、パワーモジュール80の軸方向の延在範囲とオーバラップする。特に、本実施例では、パワーモジュール80のサブモジュール800は、径方向に視て、コンデンサモジュール82とオーバラップする。これにより、車両駆動装置10の軸方向の体格の最小化を図りつつ、軸方向でカバー部材252と回転電機1との間にコンデンサモジュール82及びサブモジュール800を配置できる。
【0080】
コンデンサモジュール82は、パワー半導体チップ801、802のそれぞれとの距離が等しくなるように配置される。この場合、パワー半導体チップ801、802のそれぞれに接続されるコンデンサバスバー821(
図9参照)の共用化を図ることができる。
【0081】
コンデンサモジュール82は、カバー部材252と熱的に接続される。例えば、コンデンサモジュール82は、放熱部材810を介してカバー部材252に熱的に接続されてもよい。コンデンサモジュール82は、放熱部材810の径方向外側の連結面8103(対のパワー半導体チップ801、802が固定される2つの側面8101、8102を連結する連結面8103)(
図9参照)に径方向に対向することで、放熱部材810に熱的に接続できる。この場合、放熱部材810は、コンデンサモジュール82に近接するような径方向外側の突出部(図示せず)を有してもよい。
【0082】
あるいは、コンデンサモジュール82は、放熱部材810を介さずに、又は、放熱部材810を介した熱的な接続に加えて、直接的にカバー部材252に熱的に接続されてもよい。具体的には、コンデンサモジュール82は、軸方向でサブモジュール800よりも回転電機1から遠い側(すなわちX1側)まで延在し、カバー部材252に軸方向に近接又は当接する。本実施例では、コンデンサモジュール82は、
図6に示すように、放熱部材810と同様、カバー部材252に軸方向に当接する。この場合、コンデンサモジュール82の熱をカバー部材252(及びそれに伴い冷却水路2528内の冷却水)へと効率的に伝達できる。また、コンデンサモジュール82は、カバー部材252の周壁部2522に径方向に当接されてもよい。
【0083】
あるいは、コンデンサモジュール82は、これらの熱的な接続方法に代えて又は加えて、モールド樹脂部2523を介してカバー部材252に熱的に接続されてもよい。
【0084】
このようにして、コンデンサモジュール82がカバー部材252と熱的に接続することで、コンデンサモジュール82の熱をカバー部材252(及び冷却水路2528内の冷却水)に効率的に伝達し、コンデンサモジュール82を効率的に冷却できる。
【0085】
特に本実施例では、コンデンサモジュール82、放熱部材810、及びサブモジュール800(パワー半導体チップ801、802)は、軸方向の延在範囲が、互いに対してオーバラップするので、モータ駆動装置8の軸方向の搭載スペースの最小化を図りつつ、放熱部材810を介したカバー部材252への伝熱性能を高めることができる。
【0086】
また、コンデンサモジュール82は、好ましくは、X2側の端部が、コイルエンド部322AよりもX2側まで延在する。すなわち、コンデンサモジュール82は、径方向に視て、コイルエンド部322Aにオーバラップする。これにより、コンデンサモジュール82と回転電機1との間の軸方向の隙間の最小化を図ることができる。この結果、コンデンサモジュール82の軸方向の必要な体格を確保しつつ、車両駆動装置10の軸方向の体格の低減を図ることができる。
【0087】
また、コンデンサモジュール82は、好ましくは、軸方向に視て、コイルエンド部322Aよりも径方向外側に配置される。これにより、径方向に視てコンデンサモジュール82をコイルエンド部322Aにオーバラップさせるレイアウトを実現することが可能となる。この場合、コンデンサモジュール82は、軸方向に視て、ステータコア321のバックヨーク部にオーバラップするように配置されてもよい。この場合、コンデンサモジュール82を、比較的径方向内側に配置できるので、モータケース250の径方向の体格が、パワーモジュール80よりも径方向外側でのコンデンサモジュール82の配置に起因して増加してしまう可能性又はその増分を、低減できる。
【0088】
制御基板84は、制御装置500(
図1参照)の一部又は全体を形成する。制御基板84は、例えば多層プリント基板により形成されてもよい。制御基板84は、基板表面に対する法線方向が軸方向に沿う向きに配置される。これにより、制御基板84を軸方向の僅かな隙間を利用して配置できる。例えば、本実施例では、制御基板84は、
図6に示すように、軸方向で回転電機1とパワーモジュール80との間に配置されてよい。より詳細には、制御基板84は、軸方向で回転電機1のコイルエンド部322Aとパワーモジュール80との間に配置されてよい。これにより、デッドスペースになりやすいスペースを利用した効率的な配置を実現できる。また、制御基板84は、軸方向に視て、コイルエンド部322Aにオーバラップする径方向位置まで径方向外側に延在できるので、制御基板84の面積(回路部形成範囲)の最大化を図ることができる。
【0089】
制御基板84は、好ましくは、径方向に視て、コンデンサモジュール82とオーバラップする。なお、
図6に示す例では、コンデンサモジュール82は、X2側の端部がコイルエンド部322AよりもX2側まで延在し、かつ、径方向に視てサブモジュール800にオーバラップする。かかるレイアウトでは、制御基板84は、径方向に視て、コンデンサモジュール82とオーバラップするためには、軸方向で回転電機1のコイルエンド部322Aとパワーモジュール80(又はパワーモジュール80のサブモジュール800)との間に配置されればよい。
【0090】
制御基板84は、好ましくは、ロータ310のシャフト部314(
図3Aも参照)が通る中央孔84aを有する円環状の形態である。この場合、周方向に沿って配置された複数のパワーモジュール80のいずれに対してもその近傍に制御基板84を配置できる。これにより、パワーモジュール80のサブモジュール800を形成する各パワー半導体チップ801、802(例えばパワースイッチング素子のゲート端子)と制御基板84の駆動回路846(
図13参照)との間の電気的な接続(図示せず)が容易となる。
【0091】
制御基板84は、
図13に示すように、中央孔84aまわりに円環状の低圧領域841と、低圧領域841よりも径方向外側に円環状の高圧領域842とを有する。高圧領域842と低圧領域841とは、円環状の絶縁領域843を介して電気的に絶縁される。これにより、制御基板84において、円環状の2つの領域(低圧領域841及び高圧領域842)のそれぞれに低圧系の回路と高圧系の回路とを共存させることができる。制御基板84における高圧領域842には、電源Vaに係る高圧を扱う回路部や素子が配置される。例えば、高圧領域842には、高圧系の電子部品として、パワー半導体チップ801、802を駆動するための駆動回路846が設けられてもよい。また、低圧領域841には、低圧系の電子部品として、制御装置500を実現するマイコン(マイクロコンピュータの略)502や電源回路503等が設けられてもよい。なお、制御基板84には、モータ収容室SP1内の油を循環させる電動オイルポンプ用の電子部品が実装されてもよい。
【0092】
本実施例では、制御基板84は、低圧領域841において、ステータコイル322とパワー半導体チップ801、802とを電気的に接続するリード線888(配線部88の要素)を通す貫通孔845を有する(
図6参照)。これにより、制御基板84の必要なサイズを確保しつつ、リード線888を比較的短い配線長で成立させることができる。リード線888は、例えば
図4に示したコイル辺121の場合、端部1210、1218により実現されてもよい。
図6に示す例では、リード線888は、コイルエンド部322Aから径方向内側に曲げられて径方向内側に引き出され、かつ、ロータコア312のX1側で軸方向に曲げられて軸方向に延在する。そして、リード線888は、軸方向に延在する区間において、制御基板84を軸方向に貫通する。
図13に示す例では、制御基板84は、3相のステータコイル322に対応して、3つの貫通孔845を有する。なお、リード線888のX1側の端部は、
図11に示すように、中継バスバー889に接合されてよい。この場合、中継バスバー889には、上述したパワーモジュール80からのバスバー883、884が接合される。なお、中継バスバー889は、相ごとに設けられてもよく、相ごとに2つ以上のリード線888が共通の中継バスバー889に接合されてもよい。
【0093】
また、本実施例では、制御基板84は、貫通孔845にリード線888が通る構成を利用して、貫通孔845まわりに電流センサ902が設けられる。この場合、電流センサ902は、リード線888を通る電流を容易に検出できる。電流センサ902は、例えばホールセンサ等であってよい。電流センサ902は、図示しない制御基板84内の配線を介して、制御装置500に係るマイコン502(
図13参照)に電気的に接続される。これにより、電流センサ902と制御装置500との間の配線を、制御基板84内の配線により容易に実現できるとともに、電流センサ902と制御装置500との間の配線長の短縮を図ることができる。
【0094】
また、本実施例では、制御基板84は、回転角センサ900が設けられる。回転角センサ900は、径方向で被検出部3141(上述したシャフト部314に設けられる被検出部3141、
図6参照)に対向する。具体的には、回転角センサ900は、中央孔84aまわりの位置(すなわち開口縁部)に設けられる。なお、回転角センサ900は、制御基板84に一体に形成され、磁極位置センサとして機能してよい。これにより、回転角センサ900と制御装置500との間の配線を、制御基板84内の配線により容易に実現できるとともに、回転角センサ900と制御装置500との間の配線長の短縮を図ることができる。
【0095】
配線部88は、上述したコンデンサバスバー821、822と、上述したバスバー881、882、883、884と、電源用バスバー886と、上述したリード線888と、上述した中継バスバー889とを含む。
【0096】
電源用バスバー886は、
図12に示すように、円環状の形態であり、
図6(及び
図3A)に示すように、第1軸A1まわりに延在する。本実施例では、電源用バスバー886は、軸方向でカバー部材252とサブモジュール800の間において、サブモジュール800に対してX1側から隣接する態様で周方向に延在する。この場合、電源用バスバー886は、軸方向に視てコンデンサモジュール82よりも径方向内側に配置され、かつ、径方向に視てコンデンサモジュール82とオーバラップする。これにより、電源用バスバー886と各ブロック組立体90との間の配線長を効率的に低減できる。
【0097】
電源用バスバー886は、電源Va(
図1参照)の高電位側に電気的に接続される高電位側の電源用バスバー8861と、電源Va(
図1参照)の低電位側に電気的に接続される低電位側の電源用バスバー8862とを含む。高電位側の電源用バスバー8861及び低電位側の電源用バスバー8862は、
図7に示すように、径方向に互いにオフセットして配置されてもよいし、及び/又は、軸方向で互いにオフセットして配置されてもよい。高電位側の電源用バスバー8861は、コンデンサバスバー821のX1側端部に接合され、低電位側の電源用バスバー8862は、コンデンサバスバー822のX1側端部に接合されてよい。
【0098】
電源用バスバー886は、好ましくは、サブモジュール800(パワー半導体チップ801、802)よりもカバー部材252に近くなるように配置される。例えば、電源用バスバー886は、
図3Aに示すように、径方向でコンデンサバスバー822と放熱部材810との間であって、サブモジュール800よりもX1側に配置されてよい。この場合、デッドスペースとなりうる空間を利用して電源用バスバー886を効率的に配置しつつ、電源用バスバー886からの熱をカバー部材252に効率的に伝達できる(すなわち電源用バスバー886を効率的に冷却できる。
【0099】
また、
図13Aに示す変形例の車両駆動装置10Bでは、電源用バスバー886Bは、カバー部材252に形成された円環溝2529に設けられる。円環溝2529は、軸方向に視て、第1軸A1まわりの円環状の形態であり、X1側に凹む。電源用バスバー886Bは、軸方向に視て、径方向で第1冷却水路25281B及び第2冷却水路25282Bの間に延在してもよい。この場合、径方向で冷却水路2528Bの第1冷却水路25281B及び第2冷却水路25282Bの間の空間を利用して電源用バスバー886Bを効率的に配置できるとともに、電源用バスバー886Bを第1冷却水路25281B及び第2冷却水路25282Bにより効率的に冷却できる。
【0100】
次に、
図14Aから
図18を参照して、本実施例の効果の一部について説明する。
【0101】
図14Aは、ブロック組立体90を6つだけ周方向に沿って配置した回転電機1Aを説明する概略的な斜視図であり、
図14Bは、ブロック組立体90を3つだけ周方向に沿って配置した回転電機1Bを説明する概略的な斜視図である。なお、
図14A及び
図14Bは、ブロック組立体90の配置の説明用の図であるので、一部の要素の図示は概略化又は省略されている場合がある。
【0102】
上述したように、本実施例では、ブロック組立体90は、ブロック組立体90ごとに同じ構成であり、任意の数で搭載できるので、多様な仕様の回転電機1を実現できる。例えば、
図14Aに示すように6つ配置したり、
図14Bに示すように3つ配置したりすることで、回転電機1に対して出力が異なる回転電機1A、1Bを容易に構成できる。これにより、部品の共用化を図りつつ、回転電機のバリエーションを効率的に増加させることができる。
【0103】
図15は、比較例による車両駆動装置10’の配線構造の概略的な説明図であり、
図16は、本実施例による回転電機1で実現可能な配線構造の一例の概略的な説明図であり、
図17A及び
図17Bは、本実施例による回転電機1で実現可能な配線構造の他の一例の概略的な説明図であり、
図18は、本実施例による回転電機1で実現可能な仕様の概略的な説明図である。
【0104】
比較例による車両駆動装置10’は、上述したインバータINVや、平滑コンデンサC、制御装置500等(図示せず)を含むパワーモジュールPM’が、モータケース250’の外部に配置される構成であるものとする。この場合、
図15に概略的に示すように、モータケース250’の隔壁を介して、回転電機M’からのリード線(動力線)をパワーモジュールPM’まで引き出す配線構造となる。かかる配線構造では、回転電機M’からのリード線の配線長が長くなりやすく、また、配線の経路の自由度も高くない。
【0105】
これに対して、本実施例では、上述したように、モータ駆動装置8が隔壁を介さずに軸方向で回転電機1に隣接するので(
図3A参照)、
図16に概略的に示すように、各相のブロック組立体90(
図16では、相の相違を示すために、“U”、“V”、“W”と表記)を、ステータコイル322のすぐ近傍に配置できる。(
図3A参照)。これにより、リード線888の配線長の最小化を図ることができる。また、配線長が短くて済むので、電気的特性が良好であり、必要な信頼性を確保しやすく、また、配線の取り回し等が容易であり、周辺部材のレイアウトの自由度を高めることができる。このようにして、本実施例によれば、効率的な配線構造を実現できる。
【0106】
なお、本実施例では、相ごとの中継バスバー889(
図11)に対して、ブロック組立体90を多様な個数で配置できるので、配線構造を複雑化することなく、上述したように、一の回転電機1に配置できるブロック組立体90の個数の自由度を高めることができる。
【0107】
また、本実施例では、
図17A及び
図17Bに示すように、ステータコイル322を相ごとに、並列に結線した場合でも、同様に、効率的な配線構造を実現できる。すなわち、
図16に示した例と同様、
図17A及び
図17Bに概略的に示すように、各相のブロック組立体90を、ステータコイル322のコイルエンド部322Aのすぐ近傍に配置できる。なお、ステータコイル322を相ごとに、並列に結線した場合、直列に結線した場合(
図16参照)に比べて、同じ出力を出すために必要な電流であって、ステータコイル322に流す電流を低減できる。例えば、
図17A及び
図17Bに示すように3並列に結線した場合、直列に結線した場合(
図16参照)に300Aの電流を流す場合と同様の出力を、100Aの電流を流すことで実現できる。このように並列数を増加させることで、サブモジュール800に含まれるパワー半導体チップ801、802の小型化を図り、半導体ウェハの歩留まりを高めることも可能である。このようにして、ブロック組立体90によるインバータモジュールの分散化と、インバータINVに対するステータコイル322の結線の並列化(分散化)とを実現することで、体格の低減のみならず、コスト低減や、巻線構成のバリエーションの増加等を図ることができる。例えば、巻線構成のバリエーションの増加に関しては、
図18に模式的に示すように、9相巻線の構成のような、3相以外の巻線構成も可能となる。
【0108】
また、本実施例では、一の回転電機1に配置できるブロック組立体90の個数の自由度が高いので、例えば
図17A及び
図17Bに示すステータコイル322の結線態様の場合、ブロック組立体90を相ごとに3つ配置できる。この場合、並列で結線されたステータコイル322-1~322-3に対して独立して通電することも可能となり、フェールセーフ機能等、冗長性を高めることも可能である。
【0109】
次に、
図19から
図25を参照して、上述した実施例(以下、区別のため、「実施例1」と称する)による車両駆動装置10とは別の他の実施例(以下、区別のため、「実施例2」と称する)による車両駆動装置10Cについて説明する。以下では、上述した実施例1と同様であってよい構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。
【0110】
図19は、本実施例の車両駆動装置10CをX1側から示す斜視図であり、
図20は、車両駆動装置10CをX2側から示す斜視図であり、
図21は、管部材70をX1側から示す斜視図であり、
図22は、管部材70をX2側から示す斜視図である。
図23は、本実施例の車両駆動装置10Cの要部の断面図であり、
図6に対応する断面図である。
図24は、他の実施例による車両駆動装置8C’の要部の断面図である。
図25は、更なる他の実施例による車両駆動装置8C”の要部の断面図である。
【0111】
本実施例の車両駆動装置10Cは、上述した実施例1による車両駆動装置10に対して、モータ駆動装置8がモータ駆動装置8Cで置換された点が異なる。本実施例のモータ駆動装置8Cは、上述した実施例1によるモータ駆動装置8に対して、パワーモジュール80がパワーモジュール80Cで置換され、かつ、管部材70が設けられる点が異なる。パワーモジュール80Cは、上述した実施例1によるパワーモジュール80に対して、放熱部材810が放熱部材810Cで置換された点が異なる。
【0112】
放熱部材810Cは、上述した実施例1による放熱部材810に対して、形状が異なり、基本的な機能は同じである。具体的には、上述した実施例1による放熱部材810は、中実なブロック(金属ブロック)の形態であるのに対して、本実施例による放熱部材810Cは、中空の形態であり、中空内部に管部材70が通る。また、放熱部材810Cは、中空内部に伝熱性のモールド樹脂部811C(
図20参照)を有する。モールド樹脂部811Cの材料は、上述したモールド樹脂部2523と同じであってよい。また、モールド樹脂部811Cは、モールド樹脂部2523と同じ工程で形成されてもよい。なお、
図19では、モールド樹脂部811Cの図示は省略されており、
図20では、モールド樹脂部811Cで封止されている管部材70の部位(後述する挿入部73)が透視で示されている。
【0113】
管部材70は、軸方向でカバー部材252と回転電機1との間に配置される。管部材70は、カバー部材252の冷却水路2528に連通する。従って、管部材70の流路には、冷却水路2528内を流れる冷却水が流れる。管部材70は、放熱部材810Cの中空内部を通るので、管部材70内を通る冷却水は、放熱部材810Cからの熱を効率的に受けることができる。すなわち、放熱部材810Cは、管部材70内を通る冷却水を介して熱を効率的に放出できる。この結果、放熱部材810Cを介してコンデンサモジュール82及びサブモジュール800(パワー半導体チップ801、802)を効率的に冷却できる。なお、別の実施例では、管部材70は、冷却水路2528を介さずに、同じ冷却水の供給源に連通されてもよい。
【0114】
本実施例では、管部材70は、好ましくは、カバー部材252の冷却水路2528のうちの、第1冷却水路25281に連通する。この場合、コンデンサモジュール82よりも高温化しやすいサブモジュール800(パワー半導体チップ801、802)を、第2冷却水路25282よりも上流側の第1冷却水路25281内の冷却水により効率的に冷却できる。
【0115】
本実施例では、管部材70は、
図21及び
図22に示すように、全体として周方向に沿って延在し、所定の周方向位置で、周方向で隣接し合う入口部71及び出口部72を有する。入口部71及び出口部72は、カバー部材252の冷却水路2528に連通する。なお、管部材70は、入口部71及び出口部72が冷却水路2528内に突出する態様で、カバー部材252に取り付けられてもよい。
【0116】
また、本実施例では、管部材70は、入口部71から出口部72まで連続した形態であり、挿入部73と、渡り部74とを含む。各挿入部73は、U字状の形態で軸方向に延在し、放熱部材810Cの中空内部に挿入される(
図23の点線参照)。渡り部74は、周方向に延在し、周方向で隣り合う挿入部73間をつなぐ。このような管部材70によれば、製造が比較的容易であり、1ピースで実現されるので組み付け性が良好である。
【0117】
なお、変形例では、渡り部74が省略され、個々の挿入部73がそれぞれ入口部71及び出口部72を有する態様で冷却水路2528に連通してもよい。
【0118】
なお、本実施例では、管部材70が放熱部材810C内の冷却水路を形成するが、これに限られない。例えば、
図24に概略的な断面図で示すモータ駆動装置8C’では、上述した実施例1によるパワーモジュール80がパワーモジュール80C’で置換されており、パワーモジュール80C’は、放熱部材810C’に冷却水路815が形成されている。なお、放熱部材810C’は、2ピースで形成されてもよく、冷却水路815以外の部分が中実であってよい。冷却水路815は、
図24に示すように、カバー部材252の冷却水路2528に連通する。このようなモータ駆動装置8C’によっても、管部材70を利用しないことにより低減された部品点数で、上述した実施例2と同様の効果を得ることができる。
【0119】
また、他の変形例として、
図25に模式的に断面図で示すように、軸方向でブロック組立体90と回転電機1の間に、放熱部材89が設けられてもよい。この場合、放熱部材89は、放熱性を有し、例えばアルミ等により形成される。放熱部材89は、ロータ310のシャフト部314が通る中央孔89aを有する円環状の形態であり、例えばシャフト部314に圧入等により固定されてもよい。このような構成によれば、回転電機1からの熱に対して放熱部材89により制御基板84を保護できる。また、放熱部材89は、電磁波をシールドして制御基板84を保護し、制御基板84を介して実現される制御の信頼性を高めることができる。
【0120】
次に、
図26から
図30を参照して、更なる別の他の実施例(以下、区別のため、「実施例3」と称する)による車両駆動装置10Dについて説明する。以下では、上述した実施例1と同様であってよい構成要素(配置やサイズが異なるだけの構成要素を含む)については、同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。また、
図26等においては、
図3A等においては示した構成要素の一部であって、本実施例の車両駆動装置10Dが備えてもよい構成要素の一部(例えば回転角センサ900)等の図示が省略されている場合がある。
【0121】
図26は、実施例3による車両駆動装置10Dの要部を概略的に示す断面図である。
【0122】
実施例3による車両駆動装置10Dは、上述した実施例1による車両駆動装置10に対して、コンデンサモジュール82が制御基板84DよりもX1側に配置されている点が主に異なる。この場合、上述した実施例1では、コンデンサモジュール82は、径方向に視て、制御基板84Dやコイルエンド部322Aとオーバラップするのに対して、本実施例では、コンデンサモジュール82は、径方向に視て、制御基板84Dやコイルエンド部322Aとオーバラップしない。
【0123】
かかる構成によれば、制御基板84Dの大径化(又は径方向外側への配置)が可能となる。具体的には、
図26に示すように、制御基板84Dは、軸方向に視てコンデンサモジュール82とオーバラップする位置又はコンデンサモジュール82を径方向外側に超える位置まで、径方向外側に延在できる。このようにして、本実施例によれば、制御基板84Dの配置やサイズの自由度を高めることができる。ただし、変形例では、コンデンサモジュール82のX2側の端部は、上述した実施例1と同様、径方向に視てコイルエンド部322Aとオーバラップするように配置されてもよい。この場合、制御基板84Dの大径化に代えて、コンデンサモジュール82の軸方向の体格の大型化(容量の増加)を図ることができる。
【0124】
なお、実施例3では、コンデンサモジュール82は、上述した実施例1と同様、軸方向に視てコイルエンド部322Aとオーバラップしない態様で、コイルエンド部322Aよりも径方向外側に配置されている。ただし、変形例では、コンデンサモジュール82は、軸方向に視てコイルエンド部322Aとオーバラップする態様で、より径方向内側に配置されてもよい。この場合、カバー部材252Dの径方向の体格の低減を図ることができる。
【0125】
また、実施例3による車両駆動装置10Dは、上述した実施例1による車両駆動装置10に対して、カバー部材252が、カバー部材252Dで置換された点が異なる。
【0126】
ここで、本実施例では、上述したように、コンデンサモジュール82が制御基板84DよりもX1側に配置されていることに起因して、コンデンサモジュール82のX1側の端部は、パワーモジュール80よりもX1側まで延在する。すなわち、コンデンサモジュール82は、パワーモジュール80の放熱部材89よりもX1側まで延在する。このため、カバー部材252Dは、かかるパワーモジュール80とコンデンサモジュール82のX1側の段差に合わせて、X2側の表面が段差2526Dを有する。すなわち、カバー部材252DのX2側の表面は、径方向外側の表面部分(コンデンサモジュール82に軸方向に対向する表面部分)が、径方向内側の表面部分(パワーモジュール80に軸方向に対向する表面部分)よりもX1側にオフセットしている。これにより、カバー部材252Dは、パワーモジュール80とコンデンサモジュール82の双方に対して軸方向に近接又は当接できるので、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の双方に対する熱的な接続を効果的に維持できる。
【0127】
本実施例においても、カバー部材252Dには、上述した実施例1による冷却水路2528と同様の機能を有する冷却水路2528Dが形成される。上述した実施例1による冷却水路2528と同様に、冷却水路2528Dは、第1冷却水路25281Dと、第2冷却水路25282Dとを有する。
【0128】
本実施例では、上述した実施例1による冷却水路2528とコンデンサモジュール82との位置関係とは異なり、コンデンサモジュール82は、
図26に示すように、径方向に視て、第1冷却水路25281Dとオーバラップする。すなわち、上述したカバー部材252Dの段差2526Dに起因して、コンデンサモジュール82は、第1冷却水路25281Dに対して径方向で対向する。これにより、第1冷却水路25281Dによりコンデンサモジュール82に対する冷却性能を若干ながら高めることが可能である。
【0129】
また、本実施例では、
図26に示すように、径方向で第1冷却水路25281Dとコンデンサモジュール82との間には電源用バスバー886Dが配置される。すなわち、電源用バスバー886Dは、カバー部材252Dの段差2526D近傍に配置される。これにより、径方向で第1冷却水路25281D及び第2冷却水路25282Dの間の空間を利用して電源用バスバー886Dを効率的に配置できるとともに、電源用バスバー886Dを第1冷却水路25281D及び第2冷却水路25282Dにより効率的に冷却できる。
【0130】
図27は、本実施例によるカバー部材252にモータ駆動装置8を組み付けたサブアセンブリした状態を説明する概略的な断面図である。
【0131】
カバー部材252Dは、上述した実施例1によるベアリング支持部2524と同様のベアリング支持部2524Dを有する。ベアリング支持部2524Dは、円筒状部位25211Dに設定されている。本実施例では、円筒状部位25211Dは、径方向に視て制御基板84Dにオーバラップする位置又は制御基板84DをX方向X2側に超える位置まで延在する態様で、X方向X2側へと突出する。この場合、
図27に示すように、円筒状部位25211Dの径方向外側に位置するパワーモジュール80、コンデンサモジュール82、及び制御基板84Dを完全にモールド樹脂部2523Dにより封止できる。すなわち、X2側で段差を有さないモールド樹脂部2523Dによりモータ駆動装置8D及び制御基板84Dを覆うことができる。これにより、カバー部材252Dにモータ駆動装置8及び制御基板84Dをモールド樹脂部2523Dにより一体化することが容易となる。なお、モールド樹脂部2523Dは、
図3Dを参照して上述したように層構造を有してもよい。
【0132】
図28は、本実施例によるカバー部材252Dに好適な冷却水路構造を示す説明図であり、軸方向に視た平面図である。
図28では、カバー部材252Dにより形成される冷却水路構造が透視で示されている。
【0133】
本実施例においても、上述した実施例1による冷却水路2528と同様、第1冷却水路25281Dは、軸方向に視て円環状の形態であり、軸方向に視て、パワーモジュール80に対向する。第2冷却水路25282Dは、軸方向に視て円環状の形態であり、軸方向に視て、コンデンサモジュール82に対向する。第1冷却水路25281D及び第2冷却水路25282Dは、径方向の接続流路25283Dにより連通する。第1冷却水路25281Dは、好ましくは、第2冷却水路25282Dよりも上流側(図示しないウォーターポンプの吐出側に近い側)に配置される。すなわち、冷却水路2528Dは、第1冷却水路25281Dへの入口水路部(カバー部材252に形成される入口水路部)25288Dを更に有し、入口水路部25288Dは、
図28に示すように、第1冷却水路25281Dに径方向に接続される。このような構成によれば、コンデンサモジュール82よりも高温化しやすいパワーモジュール80のサブモジュール800(パワー半導体チップ801、802、
図29参照)を、第2冷却水路25282Dよりも上流側の第1冷却水路25281D内の冷却水により効率的に冷却できる。
【0134】
本実施例では、上述したように第1冷却水路25281Dと第2冷却水路25282Dとが軸方向にオフセットしているので、第2冷却水路25282Dよりも径方向内側に位置する第1冷却水路25281Dへの入口水路部25288Dの形成が比較的容易である。すなわち、入口水路部25288Dは、
図28に示すように、軸方向に視て、第2冷却水路25282Dを径方向に跨ぐ態様で、径方向外側へと延在できる。なお、入口水路部25288Dの端部は、図示しない冷却水路の供給管に接続されてよい。
【0135】
なお、
図28に示す例では、冷却水路2528Dは、第2冷却水路25282Dからの出口水路部25289D(カバー部材252に形成される出口水路部)を更に有し、第2冷却水路25282Dからの出口水路部25289Dは、第1冷却水路25281Dへの入口水路部25288Dと並んで配置されている。これにより、カバー部材252Dに対する冷却水の供給系と排出系の取り付けが1箇所に集約されるので、かかる取り付けの作業性等の向上を図ることができる。
【0136】
図29は、本実施例の車両駆動装置10Dに適用されるモータ駆動装置8Dを示す説明図であり、モータ駆動装置8DをX2側から軸方向に視た平面図である。なお、以下で説明するモータ駆動装置8Dは、上述した実施例1による車両駆動装置10のモータ駆動装置8に置換される態様で、上述した実施例1にも同様に適用可能である。
【0137】
本実施例によるモータ駆動装置8Dは、上述した実施例1によるモータ駆動装置8に対して、複数のブロック組立体90の周方向の配置態様が異なる。具体的には、本実施例では、回転電機1の相ごとに複数のブロック組立体90が設けられる点や、同相に係る複数のブロック組立体90が回転電機の周方向に沿って隣接して配置される点等は、上述した実施例によるモータ駆動装置8と同じであってよい。他方、本実施例によるモータ駆動装置8Dは、周方向で隣接する同相に係るブロック組立体90間の周方向の距離よりも、周方向で隣接する異なる相に係るブロック組立体90間の周方向の距離が大きい点が、上述した実施例によるモータ駆動装置8と異なる。すなわち、上述した実施例によるモータ駆動装置8では、複数のブロック組立体90は、各相の相違とは無関係に、周方向に沿って等間隔に配置されるのに対して、本実施例によるモータ駆動装置8Dは、周方向で隣接する同相に係るブロック組立体90間の周方向の距離よりも、周方向で隣接する異なる相に係るブロック組立体90間の周方向の距離が大きい。これにより、周方向で隣接する異なる相間において絶縁距離を適切に確保できる。
【0138】
例えば、
図29に示す例では、12個のブロック組立体90のうちのU相用の4つのブロック組立体90(
図29では、区別のため「90(U)」と表記)は、周方向に隣接して一塊で配置され、V相用の4つのブロック組立体90(
図29では、区別のため「90(V)」と表記)は、周方向に隣接して一塊で配置され、W相用の4つのブロック組立体90(
図29では、区別のため「90(W)」と表記)は、周方向に隣接して一塊で配置されている。この場合、例えば、U相用の4つのブロック組立体90(U)は、距離d1だけ周方向に離れて配置されるのに対して、U相用の周方向端の一のブロック組立体90(U)と、V相用の周方向端の一のブロック組立体90(V)とは、距離d1よりも有意に大きい距離d2だけ周方向に離れて配置される。これは、U相用の周方向端の一のブロック組立体90(U)と、W相用の周方向端の一のブロック組立体90(W)との関係についても同様であるし、V相用の周方向端の一のブロック組立体90(V)と、W相用の周方向端の一のブロック組立体90(W)との関係についても同様である。
【0139】
本実施例では、このような比較的大きい距離d2だけ離れたスペース(ブロック組立体90間のスペース)を利用して、中継バスバー889Dが配置されている。中継バスバー889Dは、上述した中継バスバー889と機能は同じであり、相ごとに、回転電機1とパワーモジュール80(上下アームの中点)とを電気的に接続するためのバスバーである。
【0140】
図29に示す例では、U相用の中継バスバー889D(
図29では、区別のため「889D(U)」と表記)は、U相用の周方向端の一のブロック組立体90(U)と、V相用の周方向端の一のブロック組立体90(V)との間の周方向のスペース(距離d2のスペース)を利用して径方向に延在する。同様に、V相用の中継バスバー889D(
図29では、区別のため「889D(V)」と表記)は、V相用の周方向端の一のブロック組立体90(V)と、W相用の周方向端の一のブロック組立体90(W)との間の周方向のスペース(距離d2のスペース)を利用して径方向に延在する。同様に、W相用の中継バスバー889D(
図29では、区別のため「889D(W)」と表記)は、W相用の周方向端の一のブロック組立体90(W)と、W相用の周方向端の一のブロック組立体90(W)との間の周方向のスペース(距離d2のスペース)を利用して径方向に延在する。
【0141】
より具体的には、U相用の中継バスバー889D(U)は、U相用の4つのブロック組立体90(U)の径方向内側で、周方向延在する円弧状部位8891Dと、径方向に延在する径方向部位8892Dと、接続端部8893Dとを含む。径方向部位8892Dは、円弧状部位8891Dの一端から連続し、距離d2のスペースを通って、U相用の4つのブロック組立体90(U)のコンデンサモジュール82の径方向位置まで径方向外側に延在する。接続端部8893Dは、径方向部位8892Dの径方向外側端部から連続し、制御基板84Dの径方向外側で軸方向に延在する。また、接続端部8893Dは、
図26に示すように、制御基板84DよりもX2側まで延在すると、径方向内側に屈曲してコイルエンド部322Aに接合される。なお、接続端部8893Dの一部(コイルエンド部322Aに接続される側の一部)は、回転電機1側から引き出される他の導線により実現されてもよい。
【0142】
かかる構成によれば、上述した実施例1で利用するリード線888(
図3A参照)とは異なり、制御基板84の貫通孔845を通る配索が不要となるので、貫通孔845を不要とすることができる。その結果、モータ駆動装置8Dの配線部88Dに起因して制御基板84における素子実装領域が低減されてしまう可能性を、低減できる。
【0143】
このようにして本実施例によれば、周方向で隣接する異なる相に係るブロック組立体90間に周方向のスペースを形成できる。この結果、周方向で隣接する異なる相間において絶縁距離を適切に確保しつつ、かかるスペースを利用して中継バスバー889Dを効率的に配置できる。
【0144】
図30は、本実施例の冷却水路構造とモータ駆動装置8Dとの位置関係を示す説明図であり、モータ駆動装置8DをX1側から軸方向に視た平面図である。
図30では、
図28を参照して上述した本実施例の冷却水路構造が、点線で、
図29に示したモータ駆動装置8Dに重ねて図示されている。
【0145】
本実施例では、
図30に示すように、軸方向に視て、周方向で隣接する異なる相に係るブロック組立体90間に、径方向に延在する入口水路部25288Dが形成される。なお、
図30に示す例では、入口水路部25288Dは、U相用の周方向端の一のブロック組立体90(U)と、W相用の周方向端の一のブロック組立体90(W)との間の周方向のスペース(距離d2のスペース)を利用して、径方向に延在する。
【0146】
ところで、本実施例では、上述したように、コンデンサモジュール82は、径方向に視て、第1冷却水路25281Dとオーバラップする。従って、入口水路部25288Dを、第1冷却水路25281Dの軸方向位置で径方向に延在させると、コンデンサモジュール82と干渉するおそれがある。しかしながら、本実施例では、U相用の周方向端の一のブロック組立体90(U)と、W相用の周方向端の一のブロック組立体90(W)との間の周方向のスペース(距離d2のスペース)を利用するので、コンデンサモジュール82との干渉が生じることなく、最短経路で入口水路部25288Dを形成できる。
【0147】
次に、
図31から
図33を参照して、モータ駆動装置8に係るレイアウトの変形例について説明する。以下では、上述した実施例1と同様であってよい構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。
【0148】
図31は、第1変形例によるモータ駆動装置8Eの要部のレイアウトを概略的に示す断面図である。
図31(及び後出の
図32及び
図33も同様)では、モータ駆動装置8Eを備える車両駆動装置の第1軸A1の一方側かつX方向X1側の部分だけが概略的に示されている。
【0149】
第1変形例によるモータ駆動装置8Eは、上述した実施例1によるモータ駆動装置8に対して、制御基板84が2つの制御基板84E-1、84E-2で実現される点が異なる。この場合、制御基板84E-1、84E-2は、好ましくは、軸方向に視て、コイルエンド部322Aよりも径方向内側に配置される。この場合、例えばパワーモジュール80の放熱部材810(
図9参照)とコイルエンド部322Aとを軸方向に近接させることで、放熱部材810を介してコイルエンド部322Aを冷却することも可能である。
【0150】
図32は、第2変形例によるモータ駆動装置8Fの要部のレイアウトを概略的に示す断面図である。
【0151】
第2変形例によるモータ駆動装置8Fは、上述した実施例1によるモータ駆動装置8に対して、軸方向に視てコンデンサモジュール82がコイルエンド部322Aにオーバラップする点が異なる。この場合、コンデンサモジュール82は、径方向に視て、コイルエンド部322Aにオーバラップせず、コイルエンド部322AよりもX1側に延在する。この場合、コンデンサモジュール82の径方向の体格を比較的大きくすることが可能となるあるいは、コンデンサモジュール82の配置を径方向内側に寄せることでカバー部材252の径方向の体格の低減を図ることが可能となる。なお、第2変形例でも、上述した第1変形例と同様、上述した実施例1によるモータ駆動装置8に対して、制御基板84が2つの制御基板84F-1、84-2Fで実現される点が異なる。ただし、制御基板84F-1、84-2Fは、一枚に統合されてもよい。
【0152】
図33は、第3変形例によるモータ駆動装置8Gの要部のレイアウトを概略的に示す断面図である。
【0153】
第3変形例によるモータ駆動装置8Gは、上述した実施例1によるモータ駆動装置8に対して、パワーモジュール80とコンデンサモジュール82の径方向の関係が異なる。具体的には、第3変形例では、パワーモジュール80は、軸方向に視て、コンデンサモジュール82よりも径方向外側に配置される。この場合、パワーモジュール80は、軸方向に視て、コイルエンド部322Aとオーバラップしてもよい。すなわち、パワーモジュール80は、コイルエンド部322AのX1側に延在してもよい。なお、パワーモジュール80は、径方向に視て、コンデンサモジュール82とオーバラップする。従って、本変形例の場合も、上述した実施例1による効果(例えば車両駆動装置10の軸方向の体格の低減を図ることができる等)を同様に奏することができる。なお、
図33では、制御基板84Gがパワーモジュール80の径方向外側に配置されているが、他の配置態様が実現されてもよい。
【0154】
このような第3変形例によれば、コンデンサモジュール82の径方向内側にパワーモジュール80が配置されるレイアウトに比べて、パワーモジュール80の放熱部材810の体格(特に周方向の体格)を容易に増加させることができる。これにより、パワーモジュール80の放熱部材810を介した放熱性を効率的に高めることができる。
【0155】
なお、第3変形例においては、コンデンサモジュール82は、パワーモジュール80の放熱部材810に対して径方向内側から径方向に対向してよい。すなわち、コンデンサモジュール82は、放熱部材810の径方向内側の連結面8104(対のパワー半導体チップ801、802が固定される2つの側面を連結する連結面8104)に径方向に対向することで、放熱部材810に熱的に接続できる。この際、コンデンサモジュール82は、放熱部材810の径方向内側の表面に当接してもよい。かかる構成によっても、コンデンサモジュール82を放熱部材810を介して効率的に冷却できる。
【0156】
なお、
図31から
図33を参照して上述したいずれの変形例においても、ベアリング支持部2524は、軸方向に視て、パワーモジュール80の径方向内側に配置されるとともに、径方向に見て、コンデンサモジュール82とオーバラップしている。従って、上述した実施例1と同様の効果(例えば車両駆動装置の軸方向の体格の低減を図ること)を奏することができる。
【0157】
最後に、
図34を参照して、補足的に用語の定義を説明する。本明細書においては、
図34に示すように、Y方向に視て要素Cが要素BよりもZ方向Z1側に配置されるとは、矢印2900で示す位置関係のように、Y方向に平行な各直線のうち、要素Bに対しZ1側に接する直線に対して、要素Cの少なくとも一部がZ1側に位置する関係を含む概念である。なお、この場合、Y方向とZ方向は直交関係であり、各要素の位置関係は、YZ平面に対して垂直な方向に視たときの関係である。
【0158】
また、Y方向で要素Dが要素Bと要素Cの間に配置されるとは、矢印2900で示す位置関係のように、要素DのY方向の延在範囲(Y方向の座標範囲)の少なくとも一部が、要素BのY方向の延在範囲と、要素CのY方向の延在範囲との間にある関係を含む概念である。換言すると、要素Dを通るZ方向に平行な少なくとも1本の直線を、Y方向で要素Bと要素Cの間に(要素B及び要素Cのいずれをも通ることなく)、通すことができる関係を含む概念である。
【0159】
また、Y方向に視て要素Eが要素Fにオーバラップするとは、矢印2902で示す位置関係のように、要素Eを通るY方向に平行な各直線のうちの少なくとも1本の直線が要素Fを通る関係を含む概念である。なお、ここで、要素を通る直線とは、当該要素に接する直線は除く概念である。
【0160】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。また、各実施例の効果のうちの、従属項に係る効果は、上位概念(独立項)とは区別した付加的効果である。
【0161】
例えば、上述した実施例1(実施例2等も同様)では、カバー部材252は、冷却器として冷却水路2528を備えているが、これに限られない。例えば、カバー部材252は、冷却水路2528に代えて又は加えて、他の冷却器として空冷用のフィンを備えてもよい。
【0162】
また、実施例3では、コンデンサモジュール82は、コンデンサモジュール82がコイルエンド部322Aよりも径方向外側に配置されているが、これに限られない。すなわち、コンデンサモジュール82は、軸方向に視て、コイルエンド部322Aとオーバラップしてもよい。この場合、カバー部材252Dにおける径方向の体格の低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0163】
10、10C・・・車両駆動装置、1、1A、1B・・・回転電機、8、8C、8C’、8D、8E、8F、8G・・・モータ駆動装置、310・・・ロータ、320・・・ステータ、322・・・ステータコイル(ステータのコイル)、250・・・モータケース(収容部材)、252・・・カバー部材、2528、2528B、2528D・・・冷却水路(冷却器)、25288D・・・入口水路部(水路部)、801、802・・・パワー半導体チップ(パワースイッチング素子)、810、810C・・・放熱部材(冷却ブロック)、8101・・側面(一側面)、8102・・・側面(他側面)、8103・・・連結面(第1連結面)、8104・・・連結面(第2連結面)、90・・・ブロック組合体(スイッチング素子モジュール)、881、882・・・バスバー(正極端子、負極端子)、883、884・・・バスバー(出力端子)、889、889D・・・中継バスバー(バスバー)、C・・・平滑コンデンサ