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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】全固体電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20240409BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240409BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20240409BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M50/531
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023011894
(22)【出願日】2023-01-30
(62)【分割の表示】P 2020503480の分割
【原出願日】2019-02-25
(65)【公開番号】P2023041785
(43)【公開日】2023-03-24
【審査請求日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2018037225
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】馬場 彰
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-82097(JP,A)
【文献】特開2015-220105(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092640(WO,A1)
【文献】特開2016-143520(JP,A)
【文献】特開2007-80812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00 -10/39
H01M 50/00 -50/77
H01G 11/00 -11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一のエレメントと、前記一のエレメントと隣接している他のエレメントとを含む複数のエレメントを有する電池本体であって、前記一のエレメントが、前記電池本体の一の面に引き出されている一の正極と、前記一の正極と対向しており、前記電池本体の他の面に引き出されている一の負極と、前記一の正極と前記一の負極との間に配された一の固体電解質層とを有しており、前記他のエレメントが、前記他の面に引き出されている他の正極と、前記他の正極と対向しており、前記一の面に引き出されている他の負極と、前記他の正極と前記他の負極との間に配された前記一の固体電解質層と連続する他の固体電解質層とを有する前記電池本体と、
前記一の面の上に設けられており、前記一の正極に接することで電気的に接続されている第1の外部電極と、
前記他の面の上に設けられており、前記一の負極に接することで電気的に接続されている第2の外部電極と、
前記他の面の上に設けられており、前記他の正極に接することで電気的に接続されている第3の外部電極と、
前記一の面の上に設けられており、前記他の負極に接することで電気的に接続されている第4の外部電極と、
を備え、
前記第1の外部電極と前記第4の外部電極とが一体に設けられているか、または前記第2の外部電極と前記第3の外部電極とが一体に設けられていることにより前記一のエレメントと前記他のエレメントとが直列に接続されている、全固体電池。
【請求項2】
前記複数のエレメントは、3以上のエレメントであり、
前記3以上のエレメントにおいて、隣接するエレメントの一方が前記一のエレメントとなり、かつ、他方が前記他のエレメントとなることにより、前記3以上のエレメントが直列に接続されている、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
一のエレメントと、前記一のエレメントと隣接している他のエレメントとを含む複数のエレメントを有する電池本体であって、前記一のエレメントが、前記電池本体の一の面に引き出されている一の正極と、前記一の正極と対向しており、前記電池本体における前記一の面に対向する他の面に引き出されている一の負極と、前記一の正極と前記一の負極との間に配された一の固体電解質層とを有しており、前記他のエレメントが、前記他の面に引き出されている他の正極と、前記他の正極と対向しており、前記一の面に引き出されている他の負極と、前記他の正極と前記他の負極との間に配された前記一の固体電解質層とを有する前記電池本体と、
前記一の面の上に設けられており、前記一の正極に電気的に接続されている第1の外部電極と、
前記他の面の上に設けられており、前記一の負極に電気的に接続されている第2の外部電極と、
前記他の面の上に設けられており、前記他の正極に電気的に接続されている第3の外部電極と、
前記一の面の上に設けられており、前記他の負極に電気的に接続されている第4の外部電極と、
を備え、
前記第1の外部電極と前記第4の外部電極とが一体に設けられているか、または前記第2の外部電極と前記第3の外部電極とが一体に設けられていることにより前記一のエレメントと前記他のエレメントとが直列に接続されている、全固体電池。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の全固体電池の製造方法であって、
前記固体電解質層を構成するための複数の第1のグリーンシート及び複数の第2のグリーンシートを用意する工程と、
前記複数の第1のグリーンシート上のそれぞれにおいて、前記正極を構成するための正極導電性ペースト層を第1のマトリクス状に複数形成することにより、複数の正極グリーンシートを作製する工程と、を備え、
前記第1のマトリクス状とは、前記正極導電性ペースト層が一定の方向そって所定のピッチで配置されており、かつ、前記一定の方向に配置された前記正極導電性ペースト層の群を示す第1の群が、隣りの前記第1の群に対して前記一定の方向にそって前記所定のピッチの半分ずれて配置されていることであり、
さらに、
前記複数の第2のグリーンシート上のそれぞれにおいて、前記負極を構成するための負極導電性ペースト層を第2のマトリクス状に複数形成することにより、複数の負極グリーンシートを作製する工程を備え、
前記第2のマトリクス状とは、前記負極導電性ペースト層が前記一定の方向そって前記所定のピッチで配置されており、かつ、前記一定の方向に配置された前記負極導電性ペースト層の群を示す第2の群が、隣りの前記第2の群に対して前記一定の方向にそって前記所定のピッチの半分ずれて配置されていることであり、
さらに、
対向する前記第1の群と前記第2の群とが、前記一定の方向にそって前記所定のピッチの半分ずれるように、前記正極グリーンシートと前記負極グリーンシートとを交互に積層することにより、前記複数のエレメントを有する積層体を作製する工程と、
前記電池本体となる生チップの単位で前記積層体から複数の前記生チップを切り出す工程と、
前記積層体から切り出された1つの前記生チップを焼成することにより前記電池本体を得る工程と、
を備える、全固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電解液を用いない全固体電池が知られている(例えば、特許文献1等)。全固体電池は、電解液を用いないため、高温雰囲気下での使用が可能であったり、安全性に優れているというメリットを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-220105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、電子装置の種類によっては、正極と負極との間の電位差によって決まる電圧よりも高い電圧が必要とされる場合がある。その場合、出力電圧が固定されている全固体電池を用いるのであれば、全固体電池を複数用意して直列に接続する必要がある。複数の全固体電池を用いると、全固体電池の実装が煩雑になるだけではなく、全固体電池の実装スペースとして大きなスペースが必要となるという問題も生じる。
【0005】
本発明の主な目的は、高い電圧を有する全固体電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係る全固体電池は、電池本体と、第1の外部電極と、第2の外部電極と、第3の外部電極と、第4の外部電極とを備えている。電池本体は、一のエレメントと、一のエレメントと隣接している他のエレメントとを含む複数のエレメントを有する。一のエレメントは、一の正極と、一の負極と、一の固体電解質層とを有している。一の正極は、電池本体の一の面に引き出されている。一の負極は、一の正極と対向している。一の負極は、電池本体の他の面に引き出されている。一の固体電解質は、一の正極と一の負極との間に配されている。他のエレメントは、他の正極と、他の負極と、前記一の固体電解質層と連続する他の固体電解質層とを有する。他の正極は、他の面に引き出されている。他の負極は、他の正極と対向している。他の負極は、一の面に引き出されている。他の固体電解質層は、他の正極と他の負極との間に配されている。第1の外部電極は、一の面の上に設けられている。第1の外部電極は、一の正極に接することで電気的に接続されている。第2の外部電極は、他の面の上に設けられている。第2の外部電極は、一の負極に接することで電気的に接続されている。第3の外部電極は、他の面の上に設けられている。第3の外部電極は、他の正極に接することで電気的に接続されている。第4の外部電極は、一の面の上に設けられている。第4の外部電極は、他の負極に接することで電気的に接続されている。第1の外部電極と第4の外部電極とが一体に設けられているか、または第2の外部電極と、第3の外部電極とが一体に設けられていることにより一のエレメントと他のエレメントとが直列に接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、高い電圧を有する全固体電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る全固体電池の模式的斜視図である。
図2図1の線II-IIにおける模式的断面図である。
図3図1の線III-IIIにおける模式的断面図である。
図4図2及び図3における線IV-IVにおける模式的断面図である。
図5図2及び図3における線V-Vにおける模式的断面図である。
図6】第1の実施形態に係る全固体電池の模式的回路図である。
図7】第2の実施形態に係る全固体電池の模式的回路図である。
図8】正極グリーンシートの一部分の模式的平面図である。
図9】負極グリーンシートの一部分の模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0010】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものである。図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る全固体電池の模式的斜視図である。図2は、図1の線II-IIにおける模式的断面図である。図3は、図1の線III-IIIにおける模式的断面図である。図4は、図2及び図3における線IV-IVにおける模式的断面図である。図5は、図2及び図3における線V-Vにおける模式的断面図である。図6は、第1の実施形態に係る全固体電池の模式的回路図である。
【0012】
図1に示す全固体電池1は、電解質として固体電解質を用い、液体の電解液を用いない全ての構成要素が固体である電池である。本実施形態では、具体的には、全固体電池1が、全固体リチウムイオン二次電池である例について説明する。もっとも、本発明に係る全固体電池は、リチウムイオン二次電池以外の全固体電池であってもよい。
【0013】
図1図5に示すように、全固体電池1は、電池本体10を備えている。電池本体10の形状は、特に限定されない。本実施形態では、電池本体10は、具体的には、直方体状である。なお、「直方体状」には、角部や稜線部が面取り状または丸められた形状である直方体状が含まれるものとする。
【0014】
電池本体10は、第1及び第2の主面10a、10bと、第1~第4の側面10c~10fとを備えている。第1及び第2の主面10a、10bは、それぞれ、x軸方向及びy軸方向に沿って延びている。第1及び第2の側面10c、10dは、それぞれ、y軸方向及びz軸方向に沿って延びている。第3及び第4の側面10e、10fは、それぞれ、x軸方向及びz軸方向に沿って延びている。
【0015】
電池本体10は、複数のエレメントを有している。ここで、「エレメント」とは、正極と、負極と、正極と負極との間に設けられた固体電解質層とを有しており、充放電可能な蓄電エレメントのことを意味する。
【0016】
本実施形態では、具体的には、主として図6に示すように、電池本体10は、第1のエレメントE1と、第2のエレメントE2との2つのエレメントを有している。第2のエレメントE2は、y軸方向において、第1のエレメントE1と隣接している。
【0017】
図2に示すように、第1のエレメントE1は、複数の第1の正極11aと、複数の第1の負極12aとを有する。第1の正極11aと、第1の負極12aとは、それぞれ、x軸方向及びy軸方向に沿って延びている。従って、第1の正極11aと、第1の負極12aとは、それぞれ、第1及び第2の主面10a、10bと平行である。複数の第1の正極11aと複数の第1の負極12aとは、z軸方向において、相互に間隔をおいて交互に設けられている。z軸方向(積層方向)において隣接する第1の正極11aと第1の負極12aとは、第1の固体電解質層13aを介して対向している。
【0018】
なお、正極11aの大きさと負極11bの大きさとは、同じであっても異なっていてもよいし、異なっていてもよい。
【0019】
複数の第1の正極11aは、それぞれ、第1の側面10cに引き出されている一方、第2の側面10dには引き出されていない。複数の第1の正極11aは、第1の側面10cの上に設けられた第1の外部電極(第1の正極端子電極)14aに電気的に接続されている。
【0020】
複数の第1の負極12aは、それぞれ、第2の側面10dに引き出されている一方、第1の側面10cには引き出されていない。複数の第1の負極12aは、第2の側面10dの上に設けられた第2の外部電極(第1の負極端子電極)15aに電気的に接続されている。
【0021】
図3に示すように、第2のエレメントE2は、複数の第2の正極11bと、複数の第2の負極12bとを有する。第2の正極11bと、第2の負極12bとは、それぞれ、x軸方向及びy軸方向に沿って延びている。従って、第2の正極11bと、第2の負極12bとは、それぞれ、第1及び第2の主面10a、10bと平行である。複数の第2の正極11bと、複数の第2の負極12bとは、z軸方向において、相互に間隔をおいて交互に設けられている。z軸方向(積層方向)において隣接する第2の正極11bと、第2の負極12bとは、第2の固体電解質層13bを介して対向している。
【0022】
複数の第2の正極11bは、それぞれ、第2の側面10dに引き出されている一方、第1の側面10cには引き出されていない。複数の第2の正極11bは、第2の側面10dの上に設けられた第3の外部電極(第2の正極端子電極)14bに電気的に接続されている。
【0023】
複数の第2の負極12bは、それぞれ、第1の側面10cに引き出されている一方、第2の側面10dには引き出されていない。複数の第2の負極12bは、第1の側面10cの上に設けられた第4の外部電極(第2の負極端子電極)15bに電気的に接続されている。
【0024】
図1図4図5及び図6に示すように、全固体電池1では、第2の外部電極(第1の負極端子電極)15aと、第3の外部電極(第2の正極端子電極)14bとが一体に設けられている。このため、第1のエレメントE1と第2のエレメントE2とは、直列に接続されている。このため、第1のエレメントE1の電圧をV1とし、第2のエレメントE2の電圧をV2とすると、全固体電池1は、V1、V2、V1+V2の3種類の出力電圧を有する。換言すれば、全固体電池1からは、V1、V2、V1+V2の3種類の電圧の電力を出力することができる。具体的には、第1の外部電極14aと第2の外部電極15aとを接続することにより、出力電圧V1を得ることができる。第3の外部電極14bと第4の外部電極15bとを接続することにより、出力電圧V2を得ることができる。第1の外部電極14aと第4の外部電極15bを接続することにより、出力電圧V1+V2を得ることができる。よって、全固体電池1は、電圧V1、電圧V2、電圧V1+V2の電源として用いることができる。また、電圧V1、電圧V2及び電圧V1+V2のうちの少なくとも2種の電圧の電力を必要とする電子装置を、ひとつの全固体電池1により駆動させることが可能である。従って、出力電圧が相互に異なる複数の全固体電池を用いる場合よりも全固体電池1を用いた場合の方が、実装面積を小さくすることができる。
【0025】
本実施形態では、第2の外部電極(第1の負極端子電極)15aと、第3の外部電極(第2の正極端子電極)14bとが一体に設けられることにより第1のエレメントE1と第2のエレメントE2とが直列に接続される例について説明した。但し、本発明において、第1のエレメントE1と第2のエレメントE2とが直列に接続されている限りにおいて、外部電極の形態は特に限定されない。例えば、第1の外部電極(第1の正極端子電極)14aと、第4の外部電極(第2の負極端子電極)15bとが一体に設けられており、第2及び第3の外部電極15a、14bが別体に設けられていてもよい。
【0026】
なお、全固体電池1の実装基板への実装態様は特に限定されない。例えば、第1の側面10cを実装基板側に向けて全固体電池1を実装してもよい。第1又は第2の主面10a、10bを実装基板側に向けて全固体電池1を実装してもよい。
【0027】
本実施形態では、第1のエレメントE1と第2のエレメントE2との2つのエレメントを有する全固体電池1について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。
例えば、本発明に係る全固体電池は、外部電極により直列に接続された3つ以上のエレメントを有していてもよい。全固体電池が有するエレメントの数が多いほど出力可能な電圧の種類を多くすることができる。
【0028】
具体的には、例えば、図7に示す第2の実施形態に係る全固体電池1aでは、第1のエレメントE1と、第2のエレメントE2と、第3のエレメントE3とが、この順番で、外部電極によって直列に接続されている。このため、全固体電池1aからは、V1、V2、V3、V1+V2、V2+V3、V1+V2+V3の6種類の電圧の電力を出力することができる。
【0029】
(構成材料)
各エレメントE1、E2を構成している正極、負極、外部電極、固体電解質層の材料は、特に限定されない。
【0030】
正極は、例えば、正極活物質層により構成されていてもよいし、正極集電体層と、正極集電体層の上に設けられた正極活物質層により構成されていてもよい。
【0031】
正極集電体層は、炭素材料や金属材料などの導電性材料を含んでいる。好ましく用いられる炭素材料の具体例としては、例えば、黒鉛やカーボンナノチューブ等が挙げられる。好ましく用いられる金属材料の具体例としては、例えば、Cu、Mg、Ti、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Ge、In、Au、Pt、Pdやそれらの金属材料を含む合金等が挙げられる。なお、正極集電体層は、導電性材料に加え、結着剤や固体電解質などをさらに含んでいてもよい。
【0032】
正極活物質層は、正極活物質を含む。好ましく用いられる正極活物質としては、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物やリチウム遷移金属リン酸化合物等が挙げられる。リチウム遷移金属複合酸化物の具体例としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiVO、LiCrO、LiMn等が挙げられる。リチウム遷移金属リン酸化合物の具体例としては、例えば、LiFePO、LiCoPO等が挙げられる。なお、正極活物質層は、正極活物質に加え、結着剤、導電材、固体電解質などをさらに含んでいてもよい。
【0033】
負極は、例えば、負極活物質層により構成されていてもよいし、負極集電体層と、負極集電体層の上に設けられた負極活物質層により構成されていてもよい。
【0034】
負極集電体層は、炭素材料や金属材料などの導電性材料を含んでいる。負極集電体層に好ましく用いられる炭素材料や金属材料は、上述した正極集電体層に好ましく用いられる炭素材料や金属材料と同様のものが挙げられる。なお負極集電体層は、導電性材料に加え、結着剤や固体電解質などをさらに含んでいてもよい。
【0035】
負極活物質層は、負極活物質を含む。好ましく用いられる負極活物質としては、例えば、炭素材料、金属系材料、半金属系材料、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム金属等が挙げられる。負極活物質として好ましく用いられる炭素材料の具体例としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)などが挙げられる。負極活物質として好ましく用いられる金属系材料、半金属系材料の具体例としては、Si、Sn、SiB、TiSi、SiC、Si、SiO(0<v≦2)、LiSiO、SnO(0<w≦2)、SnSiO、LiSnO、MgSn等が挙げられる。負極活物質として好ましく用いられるリチウム遷移金属複合酸化物の具体例としては、LiTi12等が挙げられる。なお、負極活物質層は、負極活物質に加え、結着剤、導電材、固体電解質などをさらに含んでいてもよい。
【0036】
固体電解質層は、固体電解質を含んでいる。好ましく用いられる固体電解質の具体例としては、例えば、LiS-P、LiS-SiS-LiPO、Li11、Li3.25Ge0.250.75S、Li10GeP12等の硫化物、LiLaZr12、Li6.75LaZr1.75Nb0.2512、LiBaLaTa12、Li1+xAlTi2-x(PO、La2/3-xLi3xTiO等の酸化物、ポリエチレンオキシド(PEO)などの高分子材料等が挙げられる。なお、固体電解質層は、固体電解質に加え、結着剤等をさらに含んでいてもよい。
【0037】
外部電極は、金属材料などの導電性材料を含む。外部電極に好ましく用いられる金属材料としては、例えば、Ag、Au、Pt、Al、Cu、Sn、Ni、それらの金属を含む合金等が挙げられる。なお、外部電極は、導電性材料に加え、結着剤や固体電解質等をさらに含んでいてもよい。
【0038】
(全固体電池1の製造方法)
次に、第1の実施形態に係る全固体電池1の製造方法の一例について説明する。
【0039】
まず、固体電解質層13a、13bを構成するためのグリーンシート31a、31bを用意する(図8及び図9を参照)。グリーンシート31a、31bは、例えば、以下の要領で作製することができる。まず、固体電解質と、有機バインダー、溶剤、添加剤等を混合してスラリーを作製する。次に、スラリーを樹脂シート等の上に塗布し、シート状に形成し、乾燥させることによりグリーンシート31a、31bを作製することができる。
【0040】
次に、図8に示すように、グリーンシート31a上に正極11a、11bを構成するための正極導電性ペースト層32aをマトリクス状に複数形成し、正極グリーンシート30aを作製する。本実施形態では、正極11aを構成するための2つの正極導電性ペースト層32a1をx軸方向に連続して設け、正極11bを構成するための2つの導電性ペースト層32a2をx軸方向に連続して設ける例について説明する。詳細には、本実施形態では、一体に設けた2つの正極導電性ペースト層32a1と、一体に設けた2つの正極導電性ペースト層32a2とを、y軸方向に半周期ずつずれるように千鳥状に設ける。
【0041】
これは、言い換えれば、以下の通りである。正極導電性ペースト層32a1により、2つの第1の正極11aが形成され(第1の正極11a×2)、正極導電性ペースト層32a2により、2つの第2の正極11bが形成される(第2の正極11b×2)。正極導電性ペースト層32aがx方向そって所定のピッチPで配置されている。x方向に配置された正極導電性ペースト層32aの群を示す第1の群G1が、隣りの第1の群G1に対してx方向にそってピッチPの半分ずれて配置されている。
【0042】
同様に、図9に示すように、グリーンシート31b上に負極12a、12bを構成するための負極導電性ペースト層32bをマトリクス状に複数形成し、負極グリーンシート30bを作製する。本実施形態では、負極12aを構成するための2つの負極導電性ペースト層32b1をx軸方向に連続して設け、負極12bを構成するための負極導電性ペースト層32b2をx軸方向に連続して設ける例について説明する。詳細には、本実施形態では、一体に設けた2つの負極導電性ペースト層32b1と、一体に設けた2つの負極導電性ペースト層32b2とを、y軸方向に半周期ずつずれるように千鳥状に設ける。
【0043】
これは、言い換えれば、以下の通りである。負極導電性ペースト層32b1により、2つの第1の負極12aが形成され(第1の負極12a×2)、負極導電性ペースト層32b2により、2つの第2の負極12bが形成される(第2の負極12b×2)。負極導電性ペースト層32bがx方向そって所定のピッチP(このピッチPは図8に示すピッチPと同じである)で配置されている。x方向に配置された負極導電性ペースト層32bの群を示す第2の群G2が、隣りの第2の群G2に対してx方向にそってピッチPの半分ずれて配置されている。
【0044】
なお、グリーンシート31a、31bの導電性ペースト層が形成されていない部分の上に、必要に応じて、絶縁層を形成してもよい。
【0045】
次に、導電性ペースト層が形成されていないグリーンシートと、正極グリーンシート30aと、負極グリーンシート30bとを適宜積層することにより、積層体を形成する。この際に、複数の正極導電性ペースト層32a1、32a2のマトリクスパターンの周期と、複数の負極導電性ペースト層32b1、21b2のマトリクスパターンの周期とがx軸方向に対して1/2ピッチPずれるようにグリーンシート31a、31bを積層する。具体的には、一体に設けた2つの正極導電性ペースト層32a1と、一体に設けた2つの負極導電性ペースト層32b1との周期がx軸方向において半周期(1/2ピッチP)ずつずれ、一体に設けた2つの正極導電性ペースト層32a2と、一体に設けた2つの負極導電性ペースト層32b2との周期がx軸方向において半周期(1/2ピッチP)ずつずれるようにグリーンシート31a、31bを積層する。
【0046】
次に、積層体を複数に分断し、生のチップを作製する。具体的には、本実施形態では、y軸方向に延びるカットラインL1及びx軸方向に延びるカットラインL2に沿って積層体を複数にカットすることにより複数に分断する。
【0047】
次に、生のチップを焼成することにより電池本体10を得る。
【0048】
次に、電池本体10の上に、外部電極14a、14b、15a、15bを形成する。外部電極14a、14b、15a,15bは、例えば、導電性樹脂を含む熱硬化性樹脂を硬化させることにより形成することができる。また、必要に応じて、外部電極14a、14b、15a,15bの上にめっき層を形成してもよい。電池本体10の上に、保護層を設けてもよい。保護層を設けることにより、電池本体10内への水分等の侵入を抑制することができる。
【0049】
(実施形態の纏め)
本実施形態に係る全固体電池は、電池本体と、第1の外部電極と、第2の外部電極と、第3の外部電極と、第4の外部電極とを備えている。電池本体は、一のエレメントと、一のエレメントと隣接している他のエレメントとを含む複数のエレメントを有する。一のエレメントは、一の正極と、一の負極と、一の固体電解質層とを有している。一の正極は、電池本体の一の面に引き出されている。一の負極は、一の正極と対向している。一の負極は、電池本体の他の面に引き出されている。一の固体電解質は、一の正極と一の負極との間に配されている。他のエレメントは、他の正極と、他の負極と、他の固体電解質層とを有する。他の正極は、他の面に引き出されている。他の負極は、他の正極と対向している。他の負極は、一の面に引き出されている。他の固体電解質層は、他の正極と他の負極との間に配されている。第1の外部電極は、一の面の上に設けられている。第1の外部電極は、一の正極に電気的に接続されている。第2の外部電極は、他の面の上に設けられている。第2の外部電極は、一の負極に電気的に接続されている。第3の外部電極は、他の面の上に設けられている。第3の外部電極は、他の正極に電気的に接続されている。第4の外部電極は、一の面の上に設けられている。第4の外部電極は、他の負極に電気的に接続されている。第1の外部電極と第4の外部電極とが一体に設けられているか、または第2の外部電極と、第3の外部電極とが一体に設けられていることにより一のエレメントと他のエレメントとが直列に接続されている。
【0050】
本実施形態に係る全固体電池は、直列に接続されており、それぞれ、正極に接続された外部電極と負極に接続された外部電極とを有する一及び他のエレメントを有している。このため、本実施形態に係る全固体電池は、1つのエレメントから得られる電圧の2倍以上となる出力電圧を有している。
【0051】
本実施形態に係る全固体電池では、電池本体が、一のエレメントと他のエレメントとに加え、さらなるエレメントを少なくとも一つ有し、複数のエレメントが外部電極により直列に接続されていてもよい。
【0052】
別の表現を用いれば、複数のエレメントは、3以上のエレメントであり、3以上のエレメントにおいて、隣接するエレメントの一方が一のエレメントとなり、かつ、他方が他のエレメントとなることにより、3以上のエレメントが直列に接続されている。
【0053】
本実施形態に係る全固体電池の製造方法は、本実施形態に係る全固体電池を製造する方法に関する。本実施形態に係る全固体電池の製造方法では、固体電解質層を構成するためのグリーンシートを用意する。グリーンシート上に正極を構成するための正極導電性ペースト層をマトリクス状に複数形成し、正極グリーンシートを作製する。グリーンシート上に負極を構成するための負極導電性ペースト層をマトリクス状に複数形成し、負極グリーンシートを作製する。複数の正極導電性ペースト層のマトリクスパターンが一定の方向に対して1/2ピッチずつずれ、複数の負極導電性ペースト層のマトリクスパターンが一定の方向に対して1/2ピッチずつずれるように正極グリーンシートと負極グリーンシートとを積層することにより、一定の方向にそって極性が反転する複数のエレメントを有する積層体を作製する。積層体を、一定の方向に沿って複数エレメントが繋がるように分断し、生のチップを作製する。生のチップを焼成することにより電池本体を得る。
【0054】
別の表現を用いれば、本実施形態に係る全固体電池の製造方法は、以下の通りである。この方法は、前記固体電解質層を構成するための複数の第1のグリーンシート(グリーンシート31a)及び複数の第2のグリーンシート(グリーンシート31b)を用意する工程と、前記複数の第1のグリーンシート上のそれぞれにおいて、前記正極を構成するための正極導電性ペースト層を第1のマトリクス状に複数形成することにより、複数の正極グリーンシートを作製する工程と、を備える。前記第1のマトリクス状とは、前記正極導電性ペースト層が一定の方向(図8ではx方向)そって所定のピッチで配置されており、かつ、前記一定の方向に配置された前記正極導電性ペースト層の群を示す第1の群が、隣りの前記第1の群に対して前記一定の方向(図8ではx方向)にそって前記所定のピッチの半分ずれて配置されていることである。さらに、この方法は、前記複数の第2のグリーンシート上のそれぞれにおいて、前記負極を構成するための負極導電性ペースト層を第2のマトリクス状に複数形成することにより、複数の負極グリーンシートを作製する工程を備える。前記第2のマトリクス状とは、前記負極導電性ペースト層が前記一定の方向そって前記所定のピッチで配置されており、かつ、前記一定の方向に配置された前記負極導電性ペースト層の群を示す第2の群が、隣りの前記第2の群に対して前記一定の方向にそって前記所定のピッチの半分ずれて配置されていることである。さらに、この方法は、対向する前記第1の群と前記第2の群とが、前記一定の方向にそって前記所定のピッチの半分ずれるように、前記正極グリーンシートと前記負極グリーンシートとを交互に積層することにより、前記複数のエレメントを有する積層体を作製する工程と、前記電池本体となる生チップの単位で前記積層体から複数の前記生チップを切り出す工程と、前記積層体から切り出された1つの前記生チップを焼成することにより前記電池本体を得る工程と、を備える。
【0055】
実施形態に係る全固体電池は、以下の構成を有する。図2図3及び図6を参照して、前記一の正極は、前記一の面に引き出されている複数の第1の正極を備え、前記一の負極は、前記他の面に引き出されている複数の第1の負極を備え、前記他の正極は、前記他の面に引き出されている複数の第2の正極を備え、前記他の負極は、前記一の面に引き出されている複数の第2の負極を備え、前記電池本体は、前記第1の正極と前記第1の負極とが交互に間隔を設けて重ねられ、かつ、前記第2の正極と前記第2の負極とが交互に間隔を設けて重ねられた積層構造(積層体)を備える。
【0056】
図2図5を参照して、前記積層構造において、前記第1の正極と前記第2の正極とは同じ層に位置し、かつ、前記第1の負極と前記第2の負極とは同じ層に位置する。
【0057】
図2図3及び図6を参照して、前記一の面と前記他の面とは、前記積層構造の積層方向と交差(直交)し、かつ、前記一のエレメントと前記他のエレメントが並ぶ方向と交差(直交)する方向において、対向している。
【0058】
図1を参照して、前記第2の外部電極と前記第3の外部電極とが一体に設けられているとは、前記電池本体が、前記第2の外部電極として機能する部分と前記第3の外部電極として機能する部分とを含む第1の導電部材を備えることである。図1の場合、第2の外部電極15aと第3の外部電極14bとで構成される部材が第1の導電部材となる。
【0059】
前記第1の導電部材は、前記他の面に固定されている。前記第1の導電部材は、平板状の形状を有する。前記電池本体が前記第1の導電部材を備えるとき、前記第1の導電部材と前記第4の導電部材とは、前記一の面の上で分離されている。
【0060】
前記第1の外部電極と前記第4の外部電極とが一体に設けられているとは、前記電池本体が、前記第1の外部電極として機能する部分と前記第4の外部電極として機能する部分とを含む第2の導電部材を備えることである。
【0061】
前記第2の導電部材は、平板状の形状を有する。前記第2の導電部材は、前記一の面に固定されている。前記電池本体が前記第2の導電部材を備えるとき、前記第2の導電部材と前記第3の導電部材とは、前記他の面の上で分離されている。
【符号の説明】
【0062】
E1 第1のエレメント
E2 第2のエレメント
1 全固体電池
11a 第1の正極
12a 第1の負極
13a 第1の固体電解層
11b 第2の正極
12b 第2の負極
13b 第2の固体電解層
14a 第1の外部電極
14b 第3の外部電極
15a 第2の外部電極
15b 第4の外部電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9