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特許7468727車両制御装置、車両制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/02 20120101AFI20240409BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20240409BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B60W30/02
B60W40/02
G08G1/16 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023023203
(22)【出願日】2023-02-17
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】桶谷 涼太
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-063398(JP,A)
【文献】特開2020-190799(JP,A)
【文献】特開2008-084072(JP,A)
【文献】特開2016-193660(JP,A)
【文献】特開2008-290469(JP,A)
【文献】特開2000-142321(JP,A)
【文献】特開2015-164828(JP,A)
【文献】特開平06-286540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/02
B60W 40/02
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が走行する位置の周囲の降雨量及び降雪量の少なくとも一方を示す天候情報を取得し、前記天候情報と当該天候情報を取得した時刻とを記憶部に記憶させる取得部と、
現在の時刻よりも、降雨又は降雪により路面に付着した水分が前記路面から蒸発するまでの所定時間前の時刻に前記取得部が前記記憶部に記憶させた、前記自車両の進行方向と反対方向に走行する他車両であって、前記所定時間前に、前記自車両の現在の時刻の位置に存在した前記他車両から取得した、前記他車両が走行する位置の周囲の降雨量及び降雪量の少なくとも一方を示す前記天候情報に基づいて、前記自車両の減速を開始するタイミングを決定する決定部と、
前記決定部が決定した前記タイミングにおいて前記自車両の減速を開始させる走行制御部と、
を有する車両制御装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記自車両の進行方向と反対方向に走行する他車両が備える雨滴センサが検出した雨滴量、前記他車両が備えるワイパーの速度、及び前記他車両が備える外気温センサが検出した気温を含む情報を取得し、
前記ワイパーの速度と前記気温とに基づいて前記自車両が走行する位置の周囲の天候を特定し、前記天候と前記雨滴量とに基づいて前記天候情報を取得する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
降雨量の多さ及び降雪量の多さそれぞれに対応するタイヤの摩擦係数を記憶する記憶部をさらに有し、
前記取得部は、前記自車両の車速をさらに取得し、
前記決定部は、前記取得部が取得した前記天候情報が示す前記降雨量又は前記降雪量に対応する前記タイヤの摩擦係数を用いて、前記自車両の車速に対応する制動距離を算出することにより、前記自車両の減速を開始するタイミングを決定する、
請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記自車両の積載量をさらに取得し、
前記決定部は、前記積載量を含む前記自車両の重量と、前記降雨量又は前記降雪量に対応する前記タイヤの摩擦係数とを用いて、前記自車両の減速度を算出することにより、前記自車両の減速を開始するタイミングを決定する、
請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記決定部は、前記天候情報が降雨又は降雪を示す場合、前記自車両が走行する位置の周囲の気温に基づいて、前記自車両の減速を開始するタイミングを決定する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項6】
プロセッサが実行する、
自車両が走行する位置の周囲の降雨量及び降雪量の少なくとも一方を示す天候情報を取得し、前記天候情報と当該天候情報を取得した時刻とを記憶させるステップと、
現在の時刻よりも、降雨又は降雪により路面に付着した水分が前記路面から蒸発するまでの所定時間前の時刻に前記記憶させるステップにおいて記憶させた、前記自車両の進行方向と反対方向に走行する他車両であって、前記所定時間前に、前記自車両の現在の時刻の位置に存在した前記他車両から取得した、前記他車両が走行する位置の周囲の降雨量及び降雪量の少なくとも一方を示す前記天候情報に基づいて前記自車両の減速を開始するタイミングを決定するステップと、
前記タイミングにおいて前記自車両の減速を開始させるステップと、
を有する車両制御方法。
【請求項7】
プロセッサに、
自車両が走行する位置の周囲の降雨量及び降雪量の少なくとも一方を示す天候情報を取得し、前記天候情報と当該天候情報を取得した時刻とを記憶させるステップと、
現在の時刻よりも、降雨又は降雪により路面に付着した水分が前記路面から蒸発するまでの所定時間前の時刻に前記記憶させるステップにおいて記憶させた、前記自車両の進行方向と反対方向に走行する他車両であって、前記所定時間前に、前記自車両の現在の時刻の位置に存在した前記他車両から取得した、前記他車両が走行する位置の周囲の降雨量及び降雪量の少なくとも一方を示す前記天候情報に基づいて前記自車両の減速を開始するタイミングを決定するステップと、
前記タイミングにおいて前記自車両の減速を開始させるステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の車両制御装置は、天候に応じて、車両と当該車両の進行方向前方を走行する他の車両との車間距離を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-35795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両制御装置においては、雨又は雪により路面が滑りやすい場合であっても、路面が滑りにくい場合と同じタイミングで車両を減速させる。その結果、天候に応じて決定した車間距離を確保しつつ走行したとしても、当該車間距離よりも制動距離が長くなることにより、進行方向前方の車両に接触するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、路面が滑りやすい場合に車両が安全に減速できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る車両制御装置は、自車両が走行する位置の周囲の降雨量及び降雪量の少なくとも一方を示す天候情報を取得する取得部と、前記天候情報に基づいて、前記自車両の減速を開始するタイミングを決定する決定部と、前記決定部が決定した前記タイミングにおいて前記自車両の減速を開始させる走行制御部と、を有する。
【0007】
前記取得部は、前記自車両の進行方向と反対方向に走行する他車両が備える雨滴センサが検出した雨滴量、前記他車両が備えるワイパーの速度、及び前記他車両が備える外気温センサが検出した気温を含む情報を取得し、前記ワイパーの速度と前記気温とに基づいて前記自車両が走行する位置の周囲の天候を特定し、前記天候と前記雨滴量とに基づいて前記天候情報を取得してもよい。
【0008】
降雨量の多さ及び降雪量の多さそれぞれに対応するタイヤの摩擦係数を記憶する記憶部をさらに有し、前記取得部は、前記自車両の車速をさらに取得し、前記決定部は、前記取得部が取得した前記天候情報が示す前記降雨量又は前記降雪量に対応する前記タイヤの摩擦係数を用いて、前記自車両の車速に対応する制動距離を算出することにより、前記自車両の減速を開始するタイミングを決定してもよい。
【0009】
前記取得部は、前記自車両の積載量をさらに取得し、前記決定部は、前記積載量を含む前記自車両の重量と、前記降雨量又は前記降雪量に対応する前記タイヤの摩擦係数とを用いて、前記自車両の減速度を算出することにより、前記自車両の減速を開始するタイミングを決定してもよい。
【0010】
前記決定部は、前記天候情報が降雨又は降雪を示す場合、前記自車両が走行する位置の周囲の気温に基づいて、前記自車両の減速を開始するタイミングを決定してもよい。
【0011】
前記決定部は、現在の時刻よりも所定時間前の時刻に前記取得部が取得した前記天候情報に基づいて、前記自車両の減速を開始するタイミングを決定してもよい。
【0012】
本発明の第2の態様に係る車両制御方法は、プロセッサが実行する、自車両が走行する位置の周囲の降雨量及び降雪量の少なくとも一方を示す天候情報を取得するステップと、前記天候情報に基づいて前記自車両の減速を開始するタイミングを決定するステップと、前記タイミングにおいて前記自車両の減速を開始させるステップと、を有する。
【0013】
本発明の第3の態様に係るプログラムは、プロセッサに、自車両が走行する位置の周囲の降雨量及び降雪量の少なくとも一方を示す天候情報を取得するステップと、前記天候情報に基づいて前記自車両の減速を開始するタイミングを決定するステップと、前記タイミングにおいて前記自車両の減速を開始させるステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、路面が滑りやすい場合に車両が安全に減速できるようにするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。
図2】記憶部11に記憶された摩擦係数テーブルの一例を示す図である。
図3】減速開始タイミングを決定する動作を説明するための図である。
図4】車両制御装置10における処理シーケンスの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<車両Sの概要>
図1は、本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。図1に示す車両Sは、受信装置1と、速度センサ2と、重量センサ3と、ブレーキ4と、車両制御装置10と、を備える。車両Sは、車両Sの周囲の天候情報に基づいて、車両Sが所定の停止位置で停止するために減速を開始するタイミング(以下、「減速開始タイミング」という)を決定する機能を有する。所定の停止位置は、例えば、一時停止等の規制標識に対応する停止位置、交差点における停止位置、車両Sの進行方向前方を走行する他車両が停止したことにより停止する位置である。天候情報は、例えば、降雨量及び降雪量の少なくとも一方を示す情報である。
【0017】
受信装置1は、V2V(Vehicle-to-Vehicle;車車間)通信又はV2X(Vehicle-to-Everything)通信を介して、車両Sの周囲の他車両から、当該他車両が検出した情報を受信する無線通信装置である。無線通信の規格は、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communications)であるが、これに限らない。他車両が検出した情報は、降雨量又は降雪量の少なくともいずれかを特定するための情報であり、例えば、他車両が備えるワイパーの速度、他車両が備える雨滴センサが検出した雨滴量、他車両が備える外気温センサが検出した気温を含む。受信装置1は、外部の情報処理装置を介して、他車両が検出した情報を受信してもよい。
【0018】
速度センサ2は、車両Sの車速を検出して車両制御装置10に送信する。重量センサ3は、車両Sの荷台に作用する重量(すなわち、車両Sの積荷の重量)を検出して車両制御装置10に送信する。ブレーキ4は、車両Sが備えるディスクブレーキ、ドラムブレーキの少なくともいずれかである。ブレーキ4は、リターダ、排気ブレーキ等の補助ブレーキを含んでもよい。
【0019】
車両制御装置10は、車両Sの減速開始タイミングを決定する処理を実行する。車両制御装置10は、電子部品を含む筐体を有していてもよく、電子部品が実装されたプリント基板であってもよい。
【0020】
雨又は雪により路面が滑りやすい場合、車両Sの制動距離は、乾燥した路面を走行する際の制動距離よりも長くなる。したがって、乾燥した路面における走行と同じタイミングで減速を開始すると、車間距離よりも制動距離が長いことにより進行方向前方の他車両に接触したり、所定の停止位置で停止できなかったりする場合がある。
【0021】
そこで、車両制御装置10は、車両Sが走行する位置の周囲の降雨量及び降雪量の少なくとも一方に対応するタイヤの摩擦係数から制動距離を算出する。そして、車両制御装置10は、算出した制動距離と、速度センサ2が検出した車速と、重量センサ3が検出した積荷の重量とに基づいて、減速開始タイミングを決定する。例えば、車両制御装置10は、降雨量及び降雪量が多ければ多いほど、乾燥した路面を走行する際の減速開始タイミングよりも早い減速開始タイミングに決定する。これにより、車両Sは、路面が滑りやすい場合であっても安全に減速できる。
以下、車両制御装置10の構成及び動作を詳細に説明する。
【0022】
<車両制御装置10の構成>
車両制御装置10は、記憶部11と、制御部12と、を有する。制御部12は、取得部121と、決定部122と、走行制御部123と、を有する。
【0023】
記憶部11は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部11は、制御部12が実行するプログラムを記憶している。記憶部11は、車両Sが減速を開始するタイミングを決定するための各種の情報を記憶している。一例として、記憶部11は、降雨量の多さ及び降雪量の多さそれぞれに対応するタイヤの摩擦係数を示す摩擦係数テーブルを記憶している。図2は、記憶部11に記憶された摩擦係数テーブルの一例を示す図である。図2においては、降雨量、降雪量、降雨量及び降雪量の少なくともいずれかに対応するタイヤの摩擦係数が示されている。
【0024】
制御部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はECU(Electronic Control Unit)等のプロセッサである。制御部12は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部121、決定部122及び走行制御部123として機能する。なお、制御部12は、1つのプロセッサで構成されていてもよいし、複数のプロセッサ又は1以上のプロセッサと電子回路との組み合わせにより構成されていてもよい。
以下、制御部12により実現される各部の構成を説明する。
【0025】
取得部121は、車両Sが走行する位置の周囲の降雨量及び降雪量の少なくとも一方を示す天候情報を取得する。例えば、取得部121は、車両Sの進行方向と反対方向に走行する他車両(対向車)が備える雨滴センサが検出した雨滴量、対向車が備えるワイパーの速度、及び対向車が備える外気温センサが検出した気温を含む情報を、受信装置1から取得する。そして、取得部121は、ワイパーの速度と気温とに基づいて車両Sが現在の時刻よりも後の時刻に走行する位置の周囲の天候(例えば、晴、雨、雪)を特定し、天候と雨滴量とに基づいて天候情報(すなわち、降雨量、降雪量)を取得する。
【0026】
具体的には、取得部121は、雨滴センサが検出した2mmの雨滴量と、1分に45回動作することを示すワイパー速度と、外気温センサが検出した10℃の気温を含む情報を、受信装置1を介して対向車から取得する。そして、取得部121は、10℃を示す気温とワイパー速度(1分に45回動作)とに基づいて、車両Sの進行方向前方の天候が雨であることを特定し、特定した天候(雨)と2mmを示す雨滴量とに基づいて、降雨量「2mm」を示す天候情報を取得する。取得部121は、取得した天候情報と当該天候情報を取得した時刻とを記憶部11に記憶させる。取得部121がこのように対向車からの情報を用いて天候情報を取得することで、車両Sの進行方向前方(すなわち、これから走行する位置)の降雨量及び降雪量の少なくともいずれかを特定できる。
【0027】
さらに、取得部121は、速度センサ2が検出した車両Sの車速を取得し、重量センサ3が検出した車両Sの積載量を取得する。
【0028】
決定部122は、天候情報に基づいて、車両Sの減速開始タイミングを決定する。決定部122は、例えば、取得部121が取得した天候情報が示す降雨量又は降雪量に対応するタイヤの摩擦係数を用いて、車両Sの車速に対応する制動距離を算出することにより、車両Sの減速開始タイミングを決定する。
【0029】
具体的には、決定部122は、取得部121が取得した天候情報が示す降雨量「2mm」を特定する。決定部122は、記憶部11に記憶された摩擦係数テーブルが示す「摩擦係数」を参照することにより、降雨量「2mm」に対応するタイヤの摩擦係数が「0.6」であることを特定する。決定部122は、取得部121が取得した車速(例えば、時速40km)と摩擦係数「0.6」とを用いて制動距離を算出する。
【0030】
続いて、決定部122は、算出した制動距離と車速とに基づいて減速開始タイミングを決定する。図3は、減速開始タイミングを決定する動作を説明するための図である。図3においては、一例として、車両Sが規制標識Rに対応する停止位置で停止するための減速開始タイミングを決定する動作を説明する。図3に示す距離L1は、降雨量及び降雪量が0mmである場合(すなわち、路面乾燥時)の制動距離であり、距離L2は、降雨量又は降雪量が0mmより大きい場合(すなわち、路面湿潤時)の制動距離である。
【0031】
降雨量又は降雪量が0mmより大きい場合、決定部122は、取得部121が取得した車速に基づいて、車両Sが制動距離L2を走行する時間を算出する。決定部122は、取得部121が取得した車速で車両Sが走行した場合に、規制標識Rに対応する停止位置を車両Sが通過する時刻から、算出した時間だけ前の時刻を減速開始タイミングに決定する。
【0032】
決定部122が上記ように動作することで、車両Sは、路面乾燥時の減速開始タイミングに対応する位置K1よりも進行方向に対して距離「L2-L1」手前の位置K2から減速を開始することができるため、路面が滑りやすい状態であっても規制標識Rに対応する停止位置で停止できる。また、決定部122が、取得部121が取得した、車両Sの進行方向前方の天候情報を用いることで、これから走行する位置における減速開始タイミングを予め決定したり、これから走行する位置における進行方向前方の他車両との車間距離を予め決定したりすることができる。
【0033】
車両Sは、車両Sの積載量が大きければ大きいほど、制動距離が長くなる。そこで、決定部122は、積載量を含む車両Sの重量と、降雨量又は降雪量に対応するタイヤの摩擦係数とを用いて、車両Sの減速度を算出することにより、車両Sの減速開始タイミングを決定してもよい。
【0034】
決定部122は、例えば、車両Sの重量に重量センサ3が検出した積荷の重量を加算した車両Sの総重量に、降雨量又は降雪量に対応するタイヤの摩擦係数を乗算することにより、タイヤのグリップ力を算出する。決定部122は、算出したタイヤのグリップ力と、記憶部11に記憶されたタイヤの駆動力とに基づいて、ブレーキ4による減速度の上限値(いわゆるスリップ限界)を特定し、減速度の上限値を超えないように減速開始タイミングを決定する。決定部122がこのように動作することで、積載量に応じて制動距離が変化した場合であっても、滑りやすい路面を安全に減速できる。
【0035】
また、車両Sは、車両Sの周囲の気温が低ければ低いほど摩擦係数が小さくなる。そこで、決定部122は、天候情報が降雨又は降雪を示す場合、車両Sが走行する位置の周囲の気温に基づいて、車両Sの減速開始タイミングを決定してもよい。決定部122は、例えば、取得部121が特定した天候が雨又は雪である場合、取得部121が受信装置1から取得した気温、又は車両Sが備える温度センサ(不図示)が検出した気温に基づいて、車両Sが走行する位置の周囲の気温を特定する。決定部122は、記憶部11を参照することにより、天候情報が示す降雨量又は降雪量と気温とに対応する摩擦係数を特定し、当該摩擦係数と車両Sの車速とに基づく制動距離を算出することにより、減速開始タイミングを決定する。決定部122がこのように動作することで、外気温に応じて制動距離が変化した場合であっても、滑りやすい路面を安全に減速できる。
【0036】
ところで、車両Sの周囲の天候が雨又は雪から晴に変化したタイミングにおいては、取得部121が取得した天候情報が示す降雨量及び降雪量が0mmであっても、路面が滑りやすい状態である蓋然性が高い。そこで、決定部122は、現在の時刻よりも所定時間前の時刻に取得部121が取得した天候情報に基づいて、車両Sの減速開始タイミングを決定してもよい。所定時間は、降雨又は降雪により路面に付着した水分が路面から蒸発するまでの時間であり、例えば、1時間等の実験又はシミュレーションにより定められた時間である。
【0037】
例えば、決定部122は、記憶部11を参照することにより、現在の時刻よりも所定時間前の時刻に対応する、現在位置の天候情報を取得する。決定部122は、取得した天候情報が示す降雨量及び降雪量に対応するタイヤの摩擦係数を用いて、車両Sの車速に対応する制動距離を算出することにより、減速開始タイミングを決定する。決定部122がこのように動作することで、車両Sが走行する位置において所定時間前に降雨又は降雪があったことを考慮した減速開始タイミングを決定できるため、減速開始タイミングの精度を高くすることができる。
【0038】
走行制御部123は、決定部122が決定したタイミングにおいて、ブレーキ4に車両Sの減速を開始させる。
【0039】
<車両制御装置10における処理シーケンス>
図4は、車両制御装置10における処理シーケンスの例を示す図である。図4に示す処理シーケンスは、受信装置1から取得した情報、車両Sの車速及び車両Sの積載量に基づいて車両Sの制動距離を算出し、制動距離と車速とに基づいて減速開始タイミングを決定する動作を示す。車両制御装置10は、図4に示す処理シーケンスを一定時間ごとに繰り返す。
【0040】
取得部121は、車両Sの進行方向と反対方向に走行する他車両から受信装置1が受信した情報、速度センサ2が検出した車両Sの車速、及び重量センサ3が検出した車両Sの積載量を取得する(S11)。受信装置1が受信した情報は、例えば、他車両が備える雨滴センサが検出した雨滴量、他車両が備えるワイパーの速度、他車両が備える温度センサが検出した気温である。
【0041】
取得部121は、受信装置1から取得したワイパーの速度と気温とに基づいて車両Sが走行する位置の周囲の天候を特定し、特定した天候と雨滴量とに基づいて降雨量及び降雪量を示す天候情報を取得する(S12)。決定部122は、記憶部11に記憶された摩擦係数テーブルを参照することにより、天候情報が示す降雨量及び降雪量に対応するタイヤの摩擦係数を特定する(S13)。
【0042】
決定部122は、重量センサ3が検出した積載量に、記憶部11に記憶された車両Sの重量を加算した車両総重量を算出する(S14)。決定部122は、算出した車両総重量に、特定したタイヤの摩擦係数を乗算したタイヤのグリップ力と、記憶部11に記憶されたタイヤの駆動力とに基づいて、ブレーキ4による減速度を算出する(S15)。
【0043】
決定部122は、車両Sの車速、特定した摩擦係数及び減速度に基づいて、車両Sの制動距離を算出し(S16)、算出した制動距離を車両Sが走行する時間を算出する(S17)。決定部122は、車両Sが現在の速度で走行した場合に所定の停止位置を通過する時刻から、算出した時間だけ前の時刻を、減速開始タイミングに決定する(S18)。
【0044】
<車両制御装置10による効果>
以上説明したように、車両制御装置10は、車両Sが走行する位置の周囲の降雨量及び降雪量の少なくとも一方を示す天候情報を取得する取得部121と、天候情報に基づいて、車両Sの減速を開始するタイミングを決定する決定部122と、決定部122が決定したタイミングにおいて車両Sの減速を開始させる走行制御部123と、を有する。
【0045】
車両制御装置10がこのように構成されることで、車両Sが走行する位置の周囲の降雨量及び降雪量の少なくともいずれかに応じて、車両Sが所定の停止位置に停止するための減速を開始するタイミングを決定することができる。その結果、路面が滑りやすい状態であっても安全に減速できる。さらに、車両Sの積載量、車両Sが走行する位置の周囲の温度に基づいて減速を開始するタイミングを決定することができるため、減速を開始するタイミングの精度を高くすることができる。
【0046】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0047】
1 受信装置
2 速度センサ
3 重量センサ
4 ブレーキ
10 車両制御装置
11 記憶部
12 制御部
121 取得部
122 決定部
123 走行制御部
【要約】
【課題】路面が滑りやすい場合に車両が安全に減速できる。
【解決手段】車両制御装置10は、自車両が走行する位置の周囲の降雨量及び降雪量の少なくとも一方を示す天候情報を取得する取得部121と、天候情報に基づいて、自車両の減速を開始するタイミングを決定する決定部122と、決定部122が決定したタイミングにおいて自車両の減速を開始させる走行制御部123と、を有する。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4