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特許7468730印刷装置、印刷制御方法及び制御プログラム
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  • 特許-印刷装置、印刷制御方法及び制御プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240409BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 301
B41J2/21
B41J2/01 109
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023035191
(22)【出願日】2023-03-08
(62)【分割の表示】P 2021140927の分割
【原出願日】2021-08-31
(65)【公開番号】P2023065663
(43)【公開日】2023-05-12
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2021016737
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉井 雅一
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-028463(JP,A)
【文献】特開2017-154396(JP,A)
【文献】特開2020-127087(JP,A)
【文献】特開2013-139159(JP,A)
【文献】特開2017-109493(JP,A)
【文献】特開2013-085209(JP,A)
【文献】特開平11-309883(JP,A)
【文献】特開平11-005319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地を印刷するための第1インクを吐出する第1の印刷ヘッドと、
デザインを印刷するための複数の第2インクを吐出する第2の印刷ヘッドと、
前記第1の印刷ヘッド及び前記第2の印刷ヘッドの一方をアライメントパターン印刷用、他方を補助印刷用として、前記一方の印刷ヘッドのアライメント調整を行う場合に、前記複数の第2インクのうちの一つを前記第2の印刷ヘッドから吐出させる制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記複数の第2インクのうちから吐出するインクを、前記複数の第2インクの各々の残量と、アライメントパターン印刷又は補助印刷に必要な各々の吐出量と、に基づいて決定することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記複数の第2インクのうちから吐出するインクを、前記複数の第2インクの各々の残量と、アライメントパターン印刷又は補助印刷に必要な各々の吐出量と、に基づいて前記複数の第2インクの各々の印刷可能回数を導出し、前記印刷可能回数が最も多い第2インクを吐出するインクとして決定することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記複数の第2インクの各々の残量を、アライメントパターン印刷又は補助印刷に必要な各々の吐出量で割った値を前記複数の第2インクの各々の前記印刷可能回数として導出することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第1の印刷ヘッド及び前記第2の印刷ヘッドの印刷対象面を撮影する撮影手段を備え、
前記制御手段は、前記撮影手段により取得された画像に基づいて、前記補助印刷が必要か否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記複数の第2インクの各々の吐出履歴情報を記憶する記憶手段を備え、
前記制御手段は、前記吐出履歴情報に基づいて、前記複数の第2インクの各々の残量を検出することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
下地を印刷するための第1インクを吐出する第1の印刷ヘッドと、
デザインを印刷するための複数の第2インクを吐出する第2の印刷ヘッドと、を備える印刷装置の印刷制御方法であって、
制御手段が、
前記第1の印刷ヘッド及び前記第2の印刷ヘッドの一方をアライメントパターン印刷用、他方を補助印刷用として、前記一方の印刷ヘッドのアライメント調整を行う場合に、前記複数の第2インクのうちの一つを前記第2の印刷ヘッドから吐出させる工程と、
前記複数の第2インクのうちから吐出するインクを、前記複数の第2インクの各々の残量と、アライメントパターン印刷又は補助印刷に必要な各々の吐出量と、に基づいて決定する工程と、
を実行することを特徴とする印刷制御方法。
【請求項7】
下地を印刷するための第1インクを吐出する第1の印刷ヘッドと、
デザインを印刷するための複数の第2インクを吐出する第2の印刷ヘッドと、を備える印刷装置の制御プログラムであって、
コンピュータを、
前記第1の印刷ヘッド及び前記第2の印刷ヘッドの一方をアライメントパターン印刷用、他方を補助印刷用として、前記一方の印刷ヘッドのアライメント調整を行う場合に、前記複数の第2インクのうちの一つを前記第2の印刷ヘッドから吐出させる手段、
前記複数の第2インクのうちから吐出するインクを、前記複数の第2インクの各々の残量と、アライメントパターン印刷又は補助印刷に必要な各々の吐出量と、に基づいて決定する手段、
として機能させることを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指の爪等にネイルデザインの印刷を行う印刷装置(ネイルプリント装置)が知られている。
このような印刷装置を用いれば、簡易にネイルプリントを楽しむことができる。
【0003】
ネイルプリントを印刷装置で実現する場合、爪の所定の位置に正確に印刷を行う必要がある。この点、印刷を行う印刷ヘッドは、装置本体のキャリッジに装着して使用されるが、キャリッジや印刷ヘッドには、製造段階での公差等による装着遊びがあるため、印刷ヘッドの取り付け、交換時に装着位置ずれやガタを生じるおそれがある。
印刷ヘッドに位置ずれ等が生じたまま印刷を行うと爪に印刷されたデザインがずれたり、爪以外の皮膚の部分にはみ出して印刷されてしまう等のおそれが生じる。
【0004】
このため、例えば特許文献1には、印刷対象面(特許文献1では爪の表面)に対してネイルデザインの印刷に用いられるインクの色調よりも低い色調で補正用パターン(特許文献1では位置調整用マーク)を印刷し、補正用パターンが出力された印刷対象面の画像に基づいて印刷ヘッドによる印刷位置を調整(アライメント調整)することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-18589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、単純にアライメント調整用の印刷を行った場合、例えば複数のインクのうちアライメント調整用の印刷に用いたインクのみが早く減るなどして、各インクの消費量に偏りが生じるおそれがある。1カートリッジで複数色のインクを備える印刷ヘッドは、複数色のうち1色でもインクが無くなればインク残量が0%とされて使用不可となるため、このようなインク消費量の偏りは印刷ヘッド(インクカートリッジ)の使用寿命を短くしてしまう。
【0007】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、印刷ヘッドの使用寿命を延ばすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の印刷装置は、
下地を印刷するための第1インクを吐出する第1の印刷ヘッドと、
デザインを印刷するための複数の第2インクを吐出する第2の印刷ヘッドと、
前記第1の印刷ヘッド及び前記第2の印刷ヘッドの一方をアライメントパターン印刷用、他方を補助印刷用として、前記一方の印刷ヘッドのアライメント調整を行う場合に、前記複数の第2インクのうちの一つを前記第2の印刷ヘッドから吐出させる制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記複数の第2インクのうちから吐出するインクを、前記複数の第2インクの各々の残量と、アライメントパターン印刷又は補助印刷に必要な各々の吐出量と、に基づいて決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、印刷ヘッドの使用寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態における印刷装置の要部外観構成を示す斜視図である。
図2】指保持部の本体に用紙配置部材を装着しようとする状態を示す斜視図である。
図3】実施形態における印刷装置と端末装置の概略の制御構成を示す制御ブロック図である。
図4】実施形態における下地用ヘッドのアライメント調整処理の流れを示すフローチャートである。
図5】実施形態における下地用ヘッドのアライメント調整処理を説明するための図である。
図6】実施形態におけるデザイン用ヘッドのアライメント調整処理の流れを示すフローチャートである。
図7】実施形態におけるデザイン用ヘッドのアライメント調整処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1から図7を参照しつつ、本発明に係る印刷装置、印刷制御方法及び制御プログラムの一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
本実施形態の印刷装置は、印刷対象面に印刷を施すものであって、具体的には、例えば手の指の爪を印刷対象とし、爪の表面を印刷対象面としてこれにネイルプリントを施す。また印刷装置は、後述する印刷ヘッドのアライメント調整を行う際に、アライメント調整(補正)を行うためのアライメントパターンを印刷するための所定の用紙(後述の調整用紙P)を印刷対象とし、その表面(印刷対象面)にアライメントパターンを印刷する。
なお、本発明における印刷装置は、ここに示す以外のものを印刷対象としてもよく、例えば足の指の爪等を印刷対象としてもよい。また、ネイルチップや各種アクセサリの表面等、人の爪以外の爪様のものや各種のシートやシール等を印刷対象としてもよい。
【0012】
図1は、本実施形態に係る印刷装置1の要部外観構成を示す斜視図である。
なお、以下の実施形態において、上下、左右及び前後は、図1に示した向きをいうものとする。また、X方向は左右方向、Y方向は前後方向をいうものとする。
【0013】
図1に示すように、印刷装置1は、ほぼ箱形に形成された筐体2を有している。
筐体2は、前面側(印刷装置1の正面側、図1において前側)の下側部分に、左右方向(印刷装置1の横方向、図1において左右方向、X方向)のほぼ全面に亘って形成された開口部21を有している。また、筐体2の左右方向のほぼ中央部には、開口部21の上側に連続して切り欠き部22が形成されている。切り欠き部22は、後述する印刷ヘッド41を装置に対して着脱する際の出入口として機能する。
【0014】
筐体2の上面(天板)には、印刷装置1の操作部12が設けられている。操作部12は、例えば印刷装置1の電源をON/OFFする操作ボタン(電源スイッチボタン)である。操作部12が操作されると、操作信号が後述の制御装置30に出力され、制御装置30が操作信号に従った制御を行い、印刷装置1の各部を動作させる。例えば操作部12が電源スイッチボタンである場合、ボタン操作に応じて印刷装置1の電源がON/OFFされる。
なお、操作部12に代えて、後述する端末装置7の操作部71から入力された操作信号に従って印刷装置1の各部が動作するようにしてもよい。
筐体2各部の形状や各部の配置等は、図示例に限定されず、適宜設定可能である。例えば、操作部12は、筐体2の上面ではなく側面や背面等に設けられていてもよい。また、筐体2にはその他各種の操作ボタンが操作部12として設けられていてもよいし、各種表示部やインジケータ等が設けられていてもよい。
【0015】
筐体2の内部には、装置本体10が収容されている。
装置本体10は、基台11と、これに取り付けられた指保持部6、印刷部40等を備えている。
【0016】
指保持部6は、基台11における装置前面側の左右方向(X方向)のほぼ中央部に配置されており、本実施形態における印刷対象である爪を有する指(印刷指)を印刷に適した位置に固定(保持)する。
指保持部6は、装置前面側に開口部61を有している。また指保持部6の内部には、指固定部材62が設けられている。指固定部材62は、開口部61から挿入された指を下側から押し上げ支持するものであり、例えば柔軟性を有する樹脂等で形成されている。
指保持部6の上面には開口部61から挿入され指固定部材62により保持された指の爪部分を露出させる窓部63が形成されている。
【0017】
図2は、指保持部6を斜め後方から見た斜視図である。
この図に示すように、指保持部6は、調整用紙Pを印刷対象とする場合にこれを所定の位置に配置する用紙配置部材67を着脱可能に備えている。
調整用紙Pは、後述するように、印刷ヘッド41のアライメント調整(補正)のための補正用パターン(アライメントパターン)を印刷するための用紙であり、各種印刷に適した紙質を有し、白色又はそれと類似の表面色の用紙である。なお、記録用紙Pは、白色やこれに近い色のインクが目立つような色(例えば黒色等)であって各種印刷に適した紙質の用紙であってもよい。
印刷装置1には、予めいずれかの色(表面色)の調整用紙Pが同梱されていてもよいし、ユーザが適宜用意したものを調整用紙Pとして用紙配置部材67にセットしてもよい。
【0018】
図2では、用紙配置部材67を指保持部6の本体に装着しようとする状態を示している。用紙配置部材67を指保持部6に取り付ける際は、図2に示すように指保持部6の後方から窓部63を覆うように用紙配置部材67を装着する。
調整用紙Pをセットした状態の用紙配置部材67を指保持部6に取り付けることで、調整用紙Pの表面(すなわち、調整用紙Pが印刷対象である場合における印刷対象面)が、爪の表面(すなわち、爪が印刷対象である場合における印刷対象面)が印刷に適した適正位置に配置された際の高さ位置とほぼ面一となる高さ位置に配置される。
【0019】
印刷部40は、印刷対象である爪や記録用紙Pに印刷を施す印刷手段である。
図1に示すように、印刷部40は、キャリッジ42に搭載されて印刷動作を行う印刷ヘッド41と、印刷ヘッド41(キャリッジ42)を移動させるヘッド移動機構49(図3参照)等を備えている。
【0020】
本実施形態では、印刷ヘッド41として、印刷対象面(爪の表面や調整用紙Pの表面)に互いに異なる色を印刷する下地用ヘッド41aとデザイン用ヘッド41bとが搭載されている。以下、単に「印刷ヘッド41」と記載したときは、下地用ヘッド41a及びデザイン用ヘッド41bの両方を含むものとする。なお、下地用ヘッド41aとデザイン用ヘッド41bとの配置等は図示例に限定されない。
【0021】
下地用ヘッド41aは、デザイン以外を印刷するヘッドであり、デザインを印刷する前に、デザインが印刷される領域に下地となる液剤(以下「下地用インク」という。)を印刷するものである。下地用ヘッド41aによって印刷される下地用インクは、デザインの印刷を行ったときにインクの発色がよくなるように、白色若しくはこれに近い色の液剤であることが好ましい。白色等で下地を形成することにより、爪周辺の皮膚の色(肌色等)との区別もつきやすくなり、爪画像から爪の領域をより正確に認識しやすくなる。
【0022】
デザイン用ヘッド41bは、下地用ヘッド41aによる下地印刷後に、下地が印刷された領域にデザインを印刷するものであり、例えばシアン(C;CYAN)、マゼンタ(M;MAGENTA)、イエロー(Y;YELLOW)等の各色のインク(以下「色インク」という。)を吐出可能となっている。なお、デザイン用ヘッド41bが吐出可能な色インクの種類はこれに限定されず、この他の色のインクを吐出可能となっていてもよい。
【0023】
本実施形態の印刷ヘッド41は、爪表面に対向する面がインクを吐出させる複数のノズル口を備えたインク吐出面(図示せず)となっており、インクを微滴化し、インク吐出面から印刷対象(爪)の被印刷面である爪表面に対して直接にインクを吹き付けて印刷を行うインクジェット方式のインクジェットヘッドである。印刷ヘッド41の構成は特に限定されないが、例えばインク吐出面等の吐出機構部とインクカートリッジ(いずれも図示せず)とが一体となったカートリッジ一体型のヘッドである。
【0024】
ヘッド移動機構49は、印刷ヘッド41を装置の左右方向(X方向)に移動させるための図示しないX方向移動機構、及び印刷ヘッド41を装置の前後方向(Y方向)に移動させるための図示しないY方向移動機構を備える。
X方向移動機構は、X方向移動モータ46(図3参照)を含んでおり、X方向移動モータ46が駆動することにより印刷ヘッド41を装置の左右方向(X方向)に移動させる。Y方向移動機構は、Y方向移動モータ48(図3参照)を含んでおり、Y方向移動モータ48が駆動することにより印刷ヘッド41を装置の前後方向(Y方向)に移動させる。
【0025】
また、筐体2の上面(天板)の内側であって、指保持部6の窓部63の上方位置には、撮影部50が設けられている。撮影部50は、窓部63から露出する爪(爪を含む指)や、用紙配置部材67にセットされた調整用紙Pの表面を撮影し、爪の画像(爪を含む指の画像、以下「爪画像」という。)や調整用紙Pの用紙画像を取得する。
撮影部50は、例えばカメラ等である撮影装置51と、撮影対象である爪を照明する白色LED等で構成された照明装置52とを備えている(図3参照)。
撮影装置51は、例えば、200万画素以上の画素を有するCCD(Charge Coupled Device)型やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型等の固体撮影素子とレンズ等を備えて構成された小型カメラである。
なお、撮影部50は、指保持部6に載置された指の爪や調整用紙Pの表面を撮影可能な位置に設けられていればよく、具体的な配置等は特に限定されない。例えば、撮影部50は、印刷ヘッド41を移動させるヘッド移動機構49によってXY方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0026】
図3は、印刷装置1と後述の端末装置7の概略の制御構成を示す制御ブロック図である。
この図に示すように、印刷装置1は、上述した印刷部40及び撮影部50等のほかに、通信部13と、制御装置30とを備えている。
【0027】
通信部13は、印刷装置1と連携して動作する後述の端末装置7との間で情報の送受信が可能に構成されたものである。
印刷装置1と端末装置7との間での通信は、例えば無線LAN等により行われる。なお、印刷装置1と端末装置7との間での通信はこれに限定されず、いかなる方式によるものでもよい。例えば、インターネット等のネットワーク回線を使うものであってもよいし、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi等の近距離無線通信規格に基づく無線通信を行うものであってもよい。また、この通信は無線に限定されず、有線接続により両者間で各種データの送受信が可能な構成としてもよい。通信部13は端末装置7の通信方式に対応するアンテナチップ等を備えている。
【0028】
制御装置30は、図示しないCPU(Central Processing Unit)により構成される制御部31と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有して構成される記憶部32とを備えるコンピュータである。
【0029】
記憶部32は、印刷装置1を動作させるための各種プログラム等が格納されたプログラム記憶領域321を有している。プログラム記憶領域321には、印刷処理を行うための印刷プログラムや、後述のアライメント調整処理(図4、6参照)を実行するアライメント調整プログラム等の各種プログラムが格納されている。制御部31がこれらのプログラムを作業領域に展開して実行することにより、印刷装置1の各部が統括制御される。また、記憶部32には、撮影部50により取得された画像や、印刷対象に印刷するデザインのデータを含む各種データが記憶されてもよい。
【0030】
制御部31は、撮影制御部311、印刷制御部313、通信制御部314等の機能部を備えている。これら各機能部の機能は、制御部31のCPUと記憶部32のROM821に記憶されたプログラムとの協働によって実現される。
また、制御部31は、キャリッジ42への印刷ヘッド41の着脱を検知可能に構成されている。
【0031】
撮影制御部311は、撮影部50の撮影装置51及び照明装置52を制御し、撮影装置51により、指保持部6に固定された印刷指の爪を含む指の画像(爪画像)や、調整用紙Pの画像(用紙画像)を撮影させる。
撮影部50により取得された爪画像の画像データは、通信部13を介して後述の端末装置7に送信される。なお、画像データは記憶部32に記憶されてもよい。
【0032】
印刷制御部313は、後述の端末装置7から送信された印刷用データに基づいて印刷部40に制御信号を出力し、印刷対象に対してこの印刷用データにしたがった印刷を施すように印刷部40のX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48、印刷ヘッド41等を制御する。
【0033】
通信制御部314は、通信部13の動作を制御するものである。本実施形態では、通信制御部314は、通信部13による後述の端末装置7との間での通信を制御し、当該端末装置7と印刷装置1との間で各種データを送受信する。
【0034】
また、本実施形態の印刷装置1は、端末装置7との間で通信可能に構成されており、端末装置7からの動作指令に基づいて印刷動作等を実行する。
端末装置7は、例えばスマートフォンやタブレット等の携帯端末である。ただし、端末装置7は、印刷装置1と通信可能なものであれば特に限定されず、例えばノート型又は定置型のパソコンや、ゲーム用の端末装置等であってもよい。
具体的に、端末装置7は、操作部71、表示部72、通信部73、制御装置80等を備えている。
【0035】
操作部71は、ユーザの操作に応じて各種の入力・設定等を行うことができるようになっており、操作部71が操作されると、当該操作に対応する入力信号が制御装置80に送信される。本実施形態では表示部72の表面にタッチパネルが一体的に設けられており、ユーザはタッチパネルへのタッチ操作によっても各種の入力・設定等の操作を行うことができるようになっている。
なお、各種の入力・設定等の操作を行う操作部71はタッチパネルである場合に限定されない。例えば各種の操作ボタンやキーボード、ポインティングデバイス等が操作部71として設けられていてもよい。
本実施形態では、ユーザが操作部71を操作することで、端末装置7から印刷装置1に対して印刷開始等の各種指示が出力されるようになっており、端末装置7は印刷装置1の操作手段としても機能する。
【0036】
表示部72は、後述する制御部81の制御にしたがって各種の表示画面を表示させる。
本実施形態では、表示部72には、ユーザが操作部71から入力・選択したネイルデザインや、印刷装置1から送信された画像等が表示可能となっている。なお、本実施形態の表示部72は、上述のとおり、各種入力を行うためのタッチパネルと一体的に構成されている。
【0037】
通信部73は、印刷装置1の通信部13との間で通信可能に構成されたものである。なお、通信部73は、印刷装置1との間で通信を行うことのできるものであればよく、印刷装置1の通信部13の通信規格と合致するものが適用される。
【0038】
制御装置80は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等により構成される制御部81と、図示しないROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等で構成される記憶部82とを備えるコンピュータである。
【0039】
記憶部82には、端末装置7の各部を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的に、本実施形態の記憶部82は、プログラム記憶領域821と、デザイン記憶領域822等とを備えている。
プログラム記憶領域821には、端末装置7の各部を統括制御するための動作プログラムの他、印刷装置1を用いたネイルプリントを行うためのネイルプリントアプリケーションプログラム等の各種プログラムが格納されている。制御部81がこれらのプログラムを例えば記憶部82の作業領域に展開して実行することによって、端末装置7の各部が統括制御される。
デザイン記憶領域822は、ネイルデザイン(デザイン)のデータを格納する。なお、デザイン記憶領域822に格納されるネイルデザイン(デザイン)は、予め用意された既存のデザインであってもよいし、ユーザが自ら作成したデザインであってもよい。また、端末装置7が各種ネットワークに接続可能である場合には、ネットワーク接続可能な図示しないサーバ装置等に記憶されているネイルデザイン(デザイン)を取り込むことが可能となっていてもよい。
【0040】
制御部81は、通信制御部811、表示制御部812、印刷データ生成部814等の機能部を備えている。これら各機能部としての機能は、制御部81と記憶部82に記憶されたプログラムとの協働によって実現される。
通信制御部811は、通信部73の動作を制御する。
表示制御部812は、表示部72に各種の表示画面を表示させる。
印刷データ生成部814は、取得された画像から印刷領域を検出し、この印刷領域に所望のデザインを合わせ込んで印刷用データを生成する。より詳しくは、印刷データ生成部814は、ユーザによって選択されたネイルデザイン(デザイン)の画像データを抽出し、この画像データを拡大縮小等して印刷領域にフィッティングする。
【0041】
続いて、アライメント調整処理を実行する際の印刷装置1の動作について説明する。
アライメント調整処理は、印刷ヘッド41(下地用ヘッド41a及びデザイン用ヘッド41b)が交換等された場合に、印刷位置にずれを生じないように当該印刷ヘッド41のアライメント調整を行う処理である。このアライメント調整処理は、制御装置30が印刷ヘッド41の交換(すなわち、新たな印刷ヘッド41の装着)を検知した場合に、この検知された印刷ヘッド41の種別に対応したアライメント調整処理プログラムが制御部31により実行されることで開始される。なお、アライメント調整処理は、新たな印刷ヘッド41の装着が検知されていない場合であっても、例えばユーザ操作に基づいて実行可能であってもよい。また、「新たな印刷ヘッド41の装着」の検知とは、印刷ヘッド41が新たに装着されたことの検知であり、交換(脱着)前後での印刷ヘッド41自体の新旧や異同は特に限定されない。
本実施形態では、下地用ヘッド41aとデザイン用ヘッド41bとで、互いに異なるアライメント調整処理が実行される。
【0042】
まず、下地用ヘッド41aのアライメント調整処理について説明する。
図4は、下地用ヘッド41aのアライメント調整処理の流れを示すフローチャートであり、図5は、下地用ヘッド41aのアライメント調整処理を説明するための図である。
ここでは、デザイン用ヘッド41bのアライメント調整は実施済みであるものとする。
【0043】
図4に示すように、下地用ヘッド41aのアライメント調整処理が実行されると、まず制御部31は、撮影部50により調整用紙Pを撮影し、用紙画像を取得する(ステップS1)。
【0044】
次に、制御部31は、ステップS1で取得した用紙画像に基づいて、補助カラーインク印刷が必要か否かを判定する(ステップS2)。ここで、「補助カラーインク印刷」とは、アライメント調整のためのアライメントパターンM1(図5(c)参照)を下地用インクで印刷する前に、このアライメントパターンM1を画像認識できるように、その印刷範囲にデザイン用ヘッド41bのカラーインクを印刷する補助印刷をいう。補助印刷に用いる補助カラーインクは、画像処理により下地用インクのアライメントパターンM1を識別可能なものであるが、これに限定されず、当該下地用インクと異なる色であればよい。
具体的に、このステップでは、まず制御部31は、用紙画像に基づいて調整用紙Pの状態を確認する。ここでは、調整用紙Pの状態として、調整用紙P上に所要範囲のパターン印刷領域A(図5(b)参照)が存在するか否かが確認される。パターン印刷領域Aとは、下地用インクを識別可能な色の領域であってアライメントパターンM1を印刷する領域であり、その所要範囲とは、アライメント調整に用いる所定数量及び位置の複数のアライメントパターンM1を印刷可能な範囲である。本実施形態のアライメント調整では、X、Yの各方向に2つずつ配列させた計4つのパターン印刷領域A及びアライメントパターンM1を用いる(図5(c)参照)。ただし、アライメントパターンM1の数量及び位置はこれに限定されない。
またここでは、調整用紙Pの状態として、調整用紙Pの有無及び種類(色)を併せて確認してもよい。制御部31は、調整用紙Pが無い(検出できない)場合には、ユーザに記録用紙Pのセットを促すメッセージを端末装置7の表示部72に表示させるなどし、調整用紙Pがある場合には、その種類(色)を検出して設定する。
そして、制御部31は、所要範囲のパターン印刷領域Aを検出した場合には、補助カラーインク印刷が必要でないと判定し、所要範囲のパターン印刷領域Aを検出できない場合には、補助カラーインク印刷が必要であると判定する。
そして、補助カラーインク印刷が必要でないと判定した場合(ステップS2;No)、制御部31は、後述のステップS6に処理を移行する。
【0045】
また、ステップS2において、補助カラーインク印刷が必要であると判定した場合(ステップS2;Yes)、制御部31は、デザイン用ヘッド41bの各カラーインクの残量を検出する(ステップS3)。
具体的に、このステップでは、制御部31は、デザイン用ヘッド41bのシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各カラーインクの残量を、当該カラーインクの吐出履歴に基づいて検出する。記憶部32には、印刷ヘッド41が新品のカートリッジ状態で装着されたときからの各カラーインクの吐出履歴データが記録されており、制御部31は、この吐出履歴データに基づいて各カラーインクの残量を検出する。吐出1発当たりのインク吐出量は既知である。ただし、インク残量の検出手法はこれに限定されない。
【0046】
次に、制御部31は、デザイン用ヘッド41bの複数のカラーインクのうち、補助カラーインク印刷の印刷可能回数が最も多いインクを、補助カラーインクとして決定する(ステップS4)。
補助カラーインク印刷の印刷可能回数は、ステップS3で検出されたインクの残量(残り吐出可能量)を、後述のステップS5の補助カラーインク印刷に必要な吐出量で割って算出(小数点以下切り捨て)する。
なお、補助カラーインクとして使用可能なカラーインク(画像処理により下地用インクと識別可能なカラーインク)が1つだけであった場合、ステップS3、S4での残量検出とそれに基づく選択を省略し、当該カラーインクを補助カラーインクとして決定してもよい。
【0047】
ここで、ステップS4におけるインク量の比較判定例を示す。
ステップS3で検出された残量(残り吐出可能量)が、
シアン :100
マゼンタ:95
イエロー:105
であり、補助カラーインク印刷に必要な各インクの吐出量が、
シアン :20
マゼンタ:10
イエロー:30
であるとする。
このとき、仮に残量だけで比較した場合には、「イエロー > シアン >マゼンタ」となるため、イエローが補助カラーインクとなる。
しかし、これに補助カラーインク印刷に必要な濃度(吐出量)を加味して印刷可能回数で比較した場合、印刷可能回数が「マゼンタ(95/10≒9) > シアン(100/20=5) > イエロー(105/30≒3)」となるため、マゼンタが補助カラーインクとなる。
【0048】
なお、ステップS4では、デザイン用ヘッド41bの複数のカラーインクのうち、補助カラーインク印刷に必要な吐出量(濃度)を残量から引いた量が最も多いインクを、補助カラーインクとして決定してもよい。
すなわち、この場合には、ステップS3で検出された残量から、後述のステップS5の補助カラーインク印刷に必要な吐出量を減算した値が比較される。
この場合のインク量の比較判定例を、上述したインク量の設定値で示すと、印刷後の残量が「マゼンタ(95-10=85) > シアン(100-20=80) > イエロー(105-30=75)」となるため、マゼンタが補助カラーインクとなる。
【0049】
次に、制御部31は、デザイン用ヘッド41bの動作を制御し、ステップS4で決定した補助カラーインクにより、調整用紙Pに補助カラーインク印刷を行う(ステップS5)。
本実施形態では、図5(a)に示す白色の記録用紙Pに対し、図5(b)に示すように、X、Yの各方向に2つずつ配列させた計4つのパターン印刷領域Aを印刷する。
【0050】
次に、制御部31は、下地用ヘッド41aの動作を制御し、記録用紙Pのパターン印刷領域A上に下地用インクでアライメントパターンM1を印刷する(ステップS6)。
本実施形態では、図5(c)に示すように、制御部31は、各パターン印刷領域A上に、X、Y方向に略沿った線分からなる十字状のアライメントパターンM1を印刷する。なお、アライメントパターンM1の形状は十字状に限定されず、三角形や四角形等の各種多角形、円形、各種の文字、数字、記号等でもよい。
【0051】
次に、制御部31は、印刷されたアライメントパターンM1を撮影部50により撮影する(ステップS7)。これにより、制御部31は、アライメントパターンM1が印刷された記録用紙Pの用紙画像を取得する。
【0052】
次に、制御部31は、ステップS7で取得した用紙画像に基づいて、アライメント値を算出して設定する(ステップS8)。アライメント値とは、実際に印刷されたアライメントパターンM1の位置(これを「実印刷位置」という。)と、本来印刷されるはずの目標印刷位置とのずれに関する補正情報である。
具体的に、このステップでは、まず制御部31は、アライメントパターンM1の中心(2本の線分の交点)を求める。そして、制御部31は、このアライメントパターンM1の中心の実印刷位置と、これに対応する目標印刷位置との差を、アライメント値として算出する。例えば、アライメントパターンM1の中心の実印刷位置の座標が(Cx、Cy)であり、これに対応する目標印刷位置の座標が(Dx、Dy)である場合、X方向のアライメント値Exを「Ex=Cx-Dx」とし、Y方向のアライメント値Eyを「Ey=Cy-Dy」として算出する。算出されたアライメント値は、記憶部32に記憶される。
【0053】
こうして算出・設定されたアライメント値は、その後の印刷用データの生成時において、座標補正値として参照される。これにより、下地用ヘッド41aが適正にアライメント調整されて、下地用インクの実印刷位置と目標印刷位置との乖離が解消され、これを反映させた印刷用データが生成される。
【0054】
なお、アライメントパターンM1を複数印刷して複数の中心位置(中心点)をとる場合には、中心点同士の実印刷距離を求めることができる。これを、対応する中心点同士の目標印刷距離と比較することにより、中心点同士の実印刷距離が本来印刷されるべき中心点同士の目標印刷距離よりも長い又は短いということも求めることができ、これに基づいて用紙画像を取得した撮影装置51の高さ位置(すなわち、撮影装置51が装置内の上目に設置されているか下目に設置されているか、という印刷対象面までの距離)のずれ量を取得することができる。
さらに、実際に印刷された中心点同士をつないだ場合の直線と、対応する中心点同士をつないだ場合の直線との傾きのずれ量を取得することで、撮影装置51の回転(設置角度)の程度をも取得することが可能となる。
印刷装置1に設けられる撮影部50の撮影装置51(カメラ)には、多少の組付け時の誤差がある。アライメントパターンM1を複数印刷して、各中心点を得ることで、印刷ヘッド41の位置ずれ等のみならず、こうした撮影装置51の設置誤差についても取得することができ、これに基づいて補正を行うことにより、一層正確な印刷処理を行うことができる。
【0055】
続いて、デザイン用ヘッド41bのアライメント調整処理について説明する。
図6は、デザイン用ヘッド41bのアライメント調整処理の流れを示すフローチャートであり、図7は、デザイン用ヘッド41bのアライメント調整処理を説明するための図である。
ここでは、下地用ヘッド41aのアライメント調整は実施済みであるものとする。
【0056】
図6に示すように、デザイン用ヘッド41bのアライメント調整処理が実行されると、まず制御部31は、撮影部50により調整用紙Pを撮影し、用紙画像を取得する(ステップT1)。
【0057】
次に、制御部31は、デザイン用ヘッド41bの各カラーインクの残量を検出する(ステップT2)。
このステップでは、制御部31は、上述した下地用ヘッド41aのアライメント調整処理におけるステップS3と同様にして、デザイン用ヘッド41bのシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各カラーインクの残量を検出する。
【0058】
次に、制御部31は、デザイン用ヘッド41bの複数のカラーインクのうち、アライメントパターン印刷の印刷可能回数が最も多いインクを、補助カラーインクとして決定する(ステップT3)。
このステップでは、制御部31は、上述した下地用ヘッド41aのアライメント調整処理におけるステップS4と同様にして、補助カラーインクを決定する。ただし、この場合の「補助カラーインク」は、下地用ヘッド41aのアライメント調整処理と異なり、アライメントパターンM2(図7(c)参照)の印刷に用いる。すなわち、このステップでは、ステップT2で検出されたインクの残量(残り吐出可能量)を、後述のステップT6のアライメントパターンの印刷に必要な吐出量で割った値(小数点以下切り捨て)が、印刷可能回数として比較される。
【0059】
なお、ステップT3では、デザイン用ヘッド41bの複数のカラーインクのうち、アライメントパターン印刷に必要な吐出量(濃度)を残量から引いた量が最も多いインクを、補助カラーインクとして決定してもよい。
すなわち、この場合には、ステップT2で検出された残量から、後述のステップT6のアライメントパターンの印刷に必要な吐出量を減算した値が比較される。
【0060】
次に、制御部31は、ステップT1で取得した用紙画像に基づいて、補助下地インク印刷が必要か否かを判定する(ステップT4)。ここで、「補助下地インク印刷」とは、アライメント調整のためのアライメントパターンM2をカラーインクで印刷する前に、このアライメントパターンM2を画像認識できるように、その印刷範囲に下地用ヘッド41aの下地用インクを印刷する補助印刷をいう。この補助印刷に用いる補助カラーインクは、画像処理により当該カラーインクのアライメントパターンM2を識別可能なものであるが、これに限定されず、当該カラーインクと異なる色であればよい。
このステップでは、制御部31は、上述した下地用ヘッド41aのアライメント調整処理におけるステップS2と同様にして、補助下地インク印刷が必要か否かを判定する。すなわち、制御部31は、調整用紙Pの状態として、調整用紙P上に所要範囲のパターン印刷領域Bが存在するか否かを確認する。パターン印刷領域Bとは、補助カラーインクを識別可能な色の領域であってアライメントパターンM2を印刷する領域であり、その所要範囲とは、アライメント調整に用いる所定数量及び位置の複数のアライメントパターンM2を印刷可能な範囲である。本実施形態のアライメント調整では、X、Yの各方向に2つずつ配列させた計4つのパターン印刷領域B及びアライメントパターンM2を用いる(図7(b)、(c)参照)。ただし、アライメントパターンM2の数量及び位置はこれに限定されない。
そして、制御部31は、所要範囲のパターン印刷領域Bを検出した場合には、補助下地インク印刷が必要でないと判定し、所要範囲のパターン印刷領域Bを検出できない場合には、補助下地インク印刷が必要であると判定する。
そして、補助下地インク印刷が必要でないと判定した場合(ステップT4;No)、制御部31は、後述のステップT6に処理を移行する。
【0061】
また、ステップT4において、補助下地インク印刷が必要であると判定した場合(ステップT4;Yes)、制御部31は、下地用インクにより、調整用紙Pに補助下地インク印刷を行う(ステップT5)。
例えば、図7(a)に示すように、前回の下地用ヘッド41aのアライメント調整時に印刷したパターン印刷領域AとアライメントパターンM1とが記録用紙Pに印刷されていた場合、制御部31は、図7(b)に示すように、下地用インクにより、パターン印刷領域AとアライメントパターンM1とを塗り潰すようにパターン印刷領域Bを印刷する。
【0062】
次に、制御部31は、デザイン用ヘッド41bの動作を制御し、ステップT3で決定した補助カラーインクにより、記録用紙Pのパターン印刷領域BにアライメントパターンM2を印刷する(ステップT6)。
本実施形態では、図7(c)に示すように、制御部31は、各パターン印刷領域B上に、X、Y方向に沿った線分からなる十字状のアライメントパターンM2を印刷する。なお、アライメントパターンM2の形状は十字状に限定されず、三角形や四角形等の各種多角形、円形、各種の文字、数字、記号等でもよい。
【0063】
次に、制御部31は、印刷されたアライメントパターンM2を撮影し(ステップT7)、取得した用紙画像に基づいてアライメント値を算出して設定する(ステップT8)。
このステップでは、制御部31は、上述した下地用ヘッド41aのアライメント調整処理におけるステップS7、S8と同様にして、アライメントパターンM2の撮影及びアライメント値の算出を行う。
こうして、アライメント値が算出・設定され、これが事後の印刷用データの生成時において、座標補正値として参照される。これにより、デザイン用ヘッド41bが適正にアライメント調整されて、各カラーインクの実印刷位置と目標印刷位置との乖離が解消され、これを反映させた印刷用データが生成される。
【0064】
また、2つの印刷ヘッド41(下地用ヘッド41a及びデザイン用ヘッド41b)の両方を交換したときなど、これら両方の印刷ヘッド41のアライメント調整を行う場合には、まず、白色の記録用紙Pに補助印刷無しでデザイン用ヘッド41bのアライメント調整を行う。そして、アライメント調整が済んだデザイン用ヘッド41bを補助印刷用として、下地用ヘッド41aのアライメント調整を行えばよい。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、下地用ヘッド41a及びデザイン用ヘッド41bの一方をアライメントパターン印刷用、他方を補助印刷用として、当該一方の印刷ヘッド41のアライメント調整を行う場合に、デザイン用ヘッド41bからは、複数のカラーインクのうち、アライメントパターン印刷又は補助印刷の印刷可能回数が最も多いものを吐出させる。
これにより、デザイン用ヘッド41bにおける複数のカラーインクの消費量をより平準化できる。したがって、印刷ヘッド41(デザイン用ヘッド41b)の使用寿命を延ばすことができ、ひいてはインクコストを低減できる。
また、残量情報だけでなく、アライメントパターン印刷又は補助印刷に必要な濃度(吐出量)を含めたインク量を比較判定することにより、さらに精度よくインクの消費量を平準化できる。ひいては、さらに印刷ヘッド41の使用寿命を延ばし、インクコストを低減できる。
【0066】
また本実施形態によれば、アライメントパターンと異なる色のインクにより補助印刷としてパターン印刷領域を印刷させ、このパターン印刷領域上にアライメントパターンを印刷させることにより、いずれの印刷ヘッド41のアライメント調整を行う場合でも1枚の記録用紙Pで足りる。したがって、アライメント調整を行う印刷ヘッド41に応じて記録用紙Pを交換する必要がない。
【0067】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0068】
また、本実施形態では、下地用ヘッド41aが白色の下地用インクを吐出し、デザイン用ヘッド41bが複数のカラーインクを吐出することとしたが、これらのインク色は特に限定されない。下地用ヘッド41aが吐出する下地用インクと、デザイン用ヘッド41bが吐出する複数のインクとが互いに異なる色であればよい。
【0069】
また、本実施形態では、印刷装置1が端末装置7と連携して印刷システムを構成することとし、印刷ヘッド41のアライメント調整では、専ら印刷装置1だけで動作制御及び実行がなされる場合を例示した。しかし、印刷ヘッド41のアライメント調整でも、印刷装置1と端末装置7とが連携して動作し、例えば端末装置7の制御部81がシステム全体を統括制御することとしてもよい。
【0070】
また、ネイルデザインや撮影された画像、爪の形状情報等の各種データは、端末装置の記憶部に記憶されてもよいし、印刷装置1の記憶部に記憶されていてもよい。
あるいは、ネットワーク回線等を介して接続可能なサーバ装置等に各種データを記憶させておき、端末装置又は印刷装置1がサーバ装置等にアクセスしてこのデータを参照可能に構成してもよい。このようにすることで、より多くのネイルデザインの中から印刷するデザインを選択することなどが可能となる。
【0071】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
第1インクを吐出する第1の印刷ヘッドと、
前記第1インクとは異なる色の複数の第2インクを吐出する第2の印刷ヘッドと、
前記第1の印刷ヘッド及び前記第2の印刷ヘッドの一方をアライメントパターン印刷用、他方を補助印刷用として、前記一方の印刷ヘッドのアライメント調整を行う場合に、前記複数の第2インクのうち、アライメントパターン印刷又は補助印刷の印刷可能回数が最も多いものを、前記第2の印刷ヘッドから吐出させる制御手段と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
<請求項2>
前記制御手段は、前記第1の印刷ヘッド及び前記第2の印刷ヘッドのうち、前記補助印刷用の印刷ヘッドにはパターン印刷領域を印刷させ、前記アライメントパターン印刷用の印刷ヘッドには前記パターン印刷領域上にアライメントパターンを印刷させることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
<請求項3>
前記複数の第2インクの各々の吐出履歴情報を記憶する記憶手段を備え、
前記制御手段は、前記吐出履歴情報に基づいて、前記複数の第2インクの各々の残量を検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
<請求項4>
前記第1の印刷ヘッド及び前記第2の印刷ヘッドの印刷対象面を撮影する撮影手段を備え、
前記制御手段は、前記撮影手段により取得された画像に基づいて、前記補助印刷が必要か否かを判定することを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項5>
前記第1インクは白色の下地用インクであり、
前記第2インクはカラーインクであることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項6>
アライメント調整における前記第1の印刷ヘッド及び前記第2の印刷ヘッドの印刷対象面は、前記第1インクと同一又は類似の表面色であることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項7>
第1インクを吐出する第1の印刷ヘッドと、前記第1インクとは異なる色の複数の第2インクを吐出する第2の印刷ヘッドとを備える印刷装置の印刷制御方法であって、
制御手段が、
前記第1の印刷ヘッド及び前記第2の印刷ヘッドの一方をアライメントパターン印刷用、他方を補助印刷用としてアライメント調整を行う場合に、前記複数の第2インクのうち、アライメントパターン印刷又は補助印刷の印刷可能回数が最も多いものを、前記第2の印刷ヘッドから吐出させる工程を実行することを特徴とする印刷制御方法。
<請求項8>
第1インクを吐出する第1の印刷ヘッドと、前記第1インクとは異なる色の複数の第2インクを吐出する第2の印刷ヘッドとを備える印刷装置の制御プログラムであって、
コンピュータを、
前記第1の印刷ヘッド及び前記第2の印刷ヘッドの一方をアライメントパターン印刷用、他方を補助印刷用として、前記一方の印刷ヘッドのアライメント調整を行う場合に、前記複数の第2インクのうち、アライメントパターン印刷又は補助印刷の印刷可能回数が最も多いものを、前記第2の印刷ヘッドから吐出させる手段、として機能させることを特徴とする制御プログラム。
【符号の説明】
【0072】
1 印刷装置
6 指保持部
30 制御装置
31 制御部
32 記憶部
41 印刷ヘッド
41a 下地用ヘッド(第1の印刷ヘッド)
41b デザイン用ヘッド(第2の印刷ヘッド)
50 撮影部
67 用紙配置部材
A、B パターン印刷領域
M1、M2 アライメントパターン
P 調整用紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7