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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
B60T7/12 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023069916
(22)【出願日】2023-04-21
(62)【分割の表示】P 2018217209の分割
【原出願日】2018-11-20
(65)【公開番号】P2023083497
(43)【公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相原 仁
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-228745(JP,A)
【文献】特開2012-071790(JP,A)
【文献】特開2017-007505(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0321675(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102004026722(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第10151846(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルと、運転者による前記ブレーキペダルの踏み込み量に応じた制動力を発生する制動力発生部と、車速を検出する車速検出部と、車両の傾斜を検出する傾斜検出部と、を備えた車両の制御装置であって、
前記ブレーキペダルの操作中又は操作後に前記制動力を所定の制動力に保持可能であって、
前記車両の減速時に前記車速が所定車速以下となったときに前記ブレーキペダルの操作中又は操作後に前記制動力を、
前記車速が前記所定車速以下となったときの前記ブレーキペダルの踏み込み量に応じた制動力が第1の制動力以上であるときは、前記ブレーキペダルの操作中又は操作後に前記制動力が前記第1の制動力となった場合に前記所定の制動力として前記第1の制動力で保持し、
その後、停車時の前記ブレーキペダルの操作中又は操作後に前記制動力を、
前記停車時の前記ブレーキペダルの踏み込み量に応じた制動力が第2の制動力以上であるときは、前記ブレーキペダルの操作中又は操作後に前記制動力が前記第2の制動力となった場合に前記所定の制動力として前記第2の制動力で保持し、
前記第1の制動力が前記第2の制動力よりも小さいことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記停車後、前記ブレーキペダルの踏み込み量に応じた制動力が増加するまで、前記車速が前記所定車速以下となったときに保持した前記所定の制動力で保持することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記所定の制動力より大きい制動力で前記ブレーキペダルを踏んだとき、前記所定の制動力での保持を終了することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記第1の制動力は、前記車両のクリープ力と釣り合う制動力以下の制動力であり、
前記第2の制動力は、前記車両の分力に釣り合う制動力以上の制動力であることを特徴とする請求項に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アイドリングストップ制御によるエンジンの自動停止後、車両の停止前に、ブレーキ解除操作が行われたことによりエンジン始動条件が成立してからエンジンの始動が完了するまでの期間で、車両が上り坂路に位置すると判定する場合、車両に制動力を自動的に発生させるブレーキ制御部を備える車両制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-7505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転者は、車両走行時にブレーキペダルを踏み込んでいても停車間際に当該ブレーキペダルの踏み込みを緩める傾向にある。車両が上り坂に差し掛かっている場合に前述したようなブレーキ操作を行うと、運転者がブレーキペダルを踏み込んでいてもその踏力が弱く、その結果、運転者の意図しない車両後退に繋がるおそれがある。
【0005】
こうした車両後退を防止するために、例えば特許文献1に記載のブレーキ制御部のように、制動力を自動的に発生させる機能を採用すると、ブレーキ加圧のための消費電力増大に伴い燃費が悪化したり、ブレーキ加圧のためのモータ作動音等によってドライバが不快に感じたりするおそれがある。
【0006】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、停車間際にブレーキペダルの踏み込みを緩めることによる坂道での運転者の意図しない車両移動を、運転者が不快に感じる音を発生することなく少ない消費電力で防止することができる車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、ブレーキペダルと、運転者による前記ブレーキペダルの踏み込み量に応じた制動力を発生する制動力発生部と、車速を検出する車速検出部と、車両の傾斜を検出する傾斜検出部と、を備えた車両の制御装置であって、前記ブレーキペダルの操作中又は操作後に前記制動力を所定の制動力に保持可能であって、前記車両の減速時に前記車速が所定車速以下となったときに前記ブレーキペダルの操作中又は操作後に前記制動力を、前記車速が前記所定車速以下となったときの前記ブレーキペダルの踏み込み量に応じた制動力が第1の制動力以上であるときは、前記ブレーキペダルの操作中又は操作後に前記制動力が前記第1の制動力となった場合に前記所定の制動力として前記第1の制動力で保持し、その後、停車時の前記ブレーキペダルの操作中又は操作後に前記制動力を、前記停車時の前記ブレーキペダルの踏み込み量に応じた制動力が第2の制動力以上であるときは、前記ブレーキペダルの操作中又は操作後に前記制動力が前記第2の制動力となった場合に前記所定の制動力として前記第2の制動力で保持し、前記第1の制動力が前記第2の制動力よりも小さい構成を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、停車間際にブレーキペダルの踏み込みを緩めることによる坂道での運転者の意図しない車両移動を、運転者が不快に感じる音を発生することなく少ない消費電力で防止することができる車両の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施例に係る制御装置を搭載した車両の概略構成図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係るブレーキコントローラによって実行される制動力保持制御の処理の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、図2に続くフローチャートである。
図4図4は、本発明の一実施例に係る制御装置を搭載した車両の減速時及び停車時の制動力の変化を説明するタイミングチャートの第1の例である。
図5図5は、本発明の一実施例に係る制御装置を搭載した車両の減速時及び停車時の制動力の変化を説明するタイミングチャートの第2の例である。
図6図6は、本発明の一実施例に係る制御装置を搭載した車両の減速時及び停車時の制動力の変化を説明するタイミングチャートの第3の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、ブレーキペダルと、運転者によるブレーキペダルの踏み込み量に応じた制動力を発生する制動力発生部と、車速を検出する車速検出部と、車両の傾斜を検出する傾斜検出部と、を備えた車両の制御装置であって、ブレーキペダルの操作中又は操作後に制動力を所定の制動力に保持可能であって、当該保持可能な所定の制動力を、車両の減速時に車速が所定車速以下となったときと、停車後となったときと、で異ならせることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、停車間際にブレーキペダルの踏み込みを緩めることによる坂道での運転者の意図しない車両移動を、運転者が不快に感じる音を発生することなく少ない消費電力で防止することができる。
【実施例
【0011】
図1から図6を参照して、本発明の一実施例に係る車両の制御装置について説明する。
【0012】
図1に示すように、車両1は、エンジン2と、アイドリングストップECU3と、ブレーキコントローラ4と、車輪5と、を含んで構成されている。
【0013】
エンジン2は、車両1の動力源であり、アイドリングストップECU3によって自動停止及び再始動可能に構成されている。
【0014】
アイドリングストップECU3は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。コンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等のほか、当該コンピュータユニットの機能を実現するためのプログラムが格納されている。
【0015】
アイドリングストップECU3には、アクセルセンサ31が接続されている。アクセルセンサ31は、運転者によるアクセルペダル30の踏み込み量を検出して、検出結果をアイドリングストップECU3に送信する。
【0016】
アイドリングストップECU3は、所定の自動停止条件が成立するとエンジン2を自動的に停止するアイドリングストップを実行可能である。所定の自動停止条件としては、例えば車速が所定値より小さいこと、ブレーキペダル40が踏まれていること、図示しないバッテリのSOCが所定値より大きいこと等が含まれる。アイドリングストップECU3は、車両1の減速中においても、前述の自動停止条件が成立するとエンジン2を自動停止させることができる。本実施例に係るアイドリングストップECU3は、アイドリングストップ制御部を構成する。
【0017】
また、アイドリングストップECU3は、所定の再始動条件が成立するとエンジン2を再始動させるようになっている。所定の再始動条件としては、例えばアクセルペダル30が踏まれたこと、ブレーキペダル40の踏み込みが解除されたこと等が含まれる。
【0018】
ブレーキコントローラ4は、CPUと、RAMと、ROMと、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。コンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等のほか、当該コンピュータユニットの機能を実現するためのプログラムが格納されている。
【0019】
ブレーキコントローラ4には、ブレーキセンサ41、加速度センサ42、イグニッションスイッチ43、及びブレーキ装置45が接続されている。ブレーキセンサ41は、運転者によるブレーキペダル40の踏み込み量を検出して、検出結果をブレーキコントローラ4に送信する。
【0020】
加速度センサ42は、車両1の加速度を検出して、検出結果をブレーキコントローラ4に送信する。ブレーキコントローラ4は、加速度センサ42から入力された検出結果に基づき、車両1の傾斜を検出する傾斜検出部46としての機能を有する。イグニッションスイッチ43は、イグニッションのオン又はオフを検出して、検出結果をブレーキコントローラ4に送信する。
【0021】
ブレーキ装置45は、運転者によるブレーキペダル40の踏み込み量に応じた制動力を発生するようになっている。本実施例に係るブレーキ装置45は、制動力発生部を構成する。
【0022】
具体的には、ブレーキ装置45は、ブレーキペダル40の操作(以下、「ブレーキ操作」という)に応じたブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと、エンジン2で発生した負圧を利用してマスタシリンダにおけるブレーキ液圧を増大する倍力装置と、ブレーキ液圧を受けることにより車輪5に制動力を付与するホイールシリンダと、ブレーキ装置45の各構成要素間でブレーキ液圧を伝達する液圧伝達経路と、を含んで構成されている。
【0023】
液圧伝達経路上には、ソレノイドバルブ等からなる保持バルブが設けられている。保持バルブは、ブレーキコントローラ4に電気的に接続されており、ブレーキコントローラ4によって通電されることにより車輪5のブレーキ液圧を保持する。
【0024】
ブレーキコントローラ4は、車両1の減速時のブレーキペダル40の操作中又は操作後に制動力を第1の制動力で保持し、停車時のブレーキペダル40の操作中又は操作後に制動力を第2の制動力で保持する制動力保持部47としての機能を有する。
【0025】
第1の制動力は、車両1の減速時に保持される制動力であり、例えば、後述するクリープ力と釣り合う制動力や、後述するクリープ力以下での最大制動力である。第2の制動力は、車両1の停車後に保持される制動力であり、例えば、後述する傾斜に応じた制動力や、傾斜に応じた制動力以上での最大制動力である。
【0026】
ブレーキコントローラ4は、液圧伝達経路上に設けられた保持バルブを制御することにより車輪5のブレーキ液圧を保持することで制動力を保持する。ここで、第1の制動力は、第2の制動力よりも小さい制動力に設定される。
【0027】
また、車両1には、各車輪5の車輪速度を検出する車輪速センサ51が設けられている。各車輪速センサ51は、車速検出部50に接続され、検出結果を車速検出部50に送信する。車速検出部50は、各車輪速センサ51から入力された検出結果に基づき車両1の速度である車速を検出する。
【0028】
本実施例において、アイドリングストップECU3とブレーキコントローラ4と車速検出部50とは、相互にデータのやりとりが可能に構成されている。車速検出部50は、アイドリングストップECU3やブレーキコントローラ4とは別のECUの機能として設けられていてもよいし、アイドリングストップECU3やブレーキコントローラ4の機能として設けられていてもよい。
【0029】
次に、図2及び図3を参照して、本実施例に係るブレーキコントローラ4によって実行される制動力保持制御の処理の流れについて説明する。図2は、車両1の減速時における制動力保持制御を示し、図3は、車両1の停車後の制動力保持制御を示している。制動力保持制御は、ブレーキコントローラ4によって所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0030】
図2に示すように、ブレーキコントローラ4は、アイドリングストップECU3からの情報に基づきアイドリングストップ中か否かを判定する(ステップS1)。ブレーキコントローラ4は、アイドリングストップ中でないと判定した場合には、ステップS1に戻る。
【0031】
ブレーキコントローラ4は、アイドリングストップ中であると判定した場合には、ブレーキONであるか否か、具体的にはブレーキ操作に応じた制動力が車両1のクリープ力よりも大きいか否かを判定する(ステップS2)。
【0032】
ここで、ステップS2においては、既にアイドリングストップ中であるため実際には車両1のクリープ力は発生していない。したがって、ステップS2の判定におけるクリープ力は、例えばエンジン2のアイドリング回転により生成され、トルクコンバータや変速機構を介して車輪5に伝達される駆動力をクリープ力として予め実験的に求めたものである。
【0033】
ブレーキコントローラ4は、ステップS2において、ブレーキONであると判定した場合には、車速検出部50により検出された車速が所定車速以下か否かを判定する(ステップS3)。所定車速は、停車直前の車両1の車速に相当し、例えば3[km/h]に設定されている。
【0034】
ブレーキコントローラ4は、ステップS3において、車速検出部50により検出された車速が所定車速以下でないと判定した場合には、制動力を保持している場合にはその制動力の保持を終了して(ステップS15)、今回の制動力保持制御を終了する。
【0035】
ブレーキコントローラ4は、ステップS3において、車速検出部50により検出された車速が所定車速以下であると判定した場合には、保持監視制御をONにして(ステップS4)、ステップS5に処理を移行する。保持監視制御は、車両1の減速時に、ブレーキ操作に応じた制動力を保持可能な状態になった場合にONされる。
【0036】
ステップS5において、ブレーキコントローラ4は、ブレーキ操作がなされたか否か、すなわちブレーキ入力に変化があったか否かを判定する。ブレーキコントローラ4は、ブレーキ入力に変化がないと判定した場合には、処理をステップS5に戻す。
【0037】
ブレーキコントローラ4は、ステップS5において、ブレーキペダル40の踏み込み量が増加するブレーキ入力の変化があったと判定した場合には、運転者のブレーキ操作に応じた制動力を発生させるよう、ブレーキ装置45を制御する(ステップS6)。
【0038】
次いで、ブレーキコントローラ4は、車速が0[km/h]より大きいか否かを判定する(ステップS7)。ブレーキコントローラ4は、車速が0[km/h]より大きいと判定した場合には、処理をステップS5に戻す。ブレーキコントローラ4は、車速が0[km/h]より大きくないと判定した場合には、図3に示すステップS30に処理を移行する。ステップS30以降は、停車時の処理となる。
【0039】
ステップS5において、ブレーキコントローラ4は、ブレーキペダル40の踏み込み量が減少するブレーキ入力の変化があったと判定した場合には、ブレーキ操作に応じた制動力が車両1のクリープ力以下か否かを判定する(ステップS8)。
【0040】
ブレーキコントローラ4は、ステップS8において、ブレーキ操作に応じた制動力が車両1のクリープ力以下でないと判定した場合には、運転者のブレーキ操作に応じた制動力を発生させるよう、ブレーキ装置45を制御する(ステップS9)。
【0041】
次いで、ブレーキコントローラ4は、車速が0[km/h]より大きいか否かを判定する(ステップS10)。ブレーキコントローラ4は、車速が0[km/h]より大きいと判定した場合には、処理をステップS1に戻す。ブレーキコントローラ4は、車速が0[km/h]より大きくないと判定した場合には、図3に示すステップS30に処理を移行する。
【0042】
ステップS8において、ブレーキコントローラ4は、ブレーキ操作に応じた制動力が車両1のクリープ力以下であると判定した場合には、ブレーキ装置45の制動力を当該クリープ力と釣り合う制動力で保持する(ステップS11)。本実施例において、クリープ力と釣り合う制動力は、上述した第1の制動力に相当する。
【0043】
次いで、ブレーキコントローラ4は、アイドリングストップ中か否かを判定する(ステップS12)。ブレーキコントローラ4は、アイドリングストップ中でないと判定した場合には、制動力の保持を終了して(ステップS15)、今回の制動力保持制御を終了する。
【0044】
ブレーキコントローラ4は、ステップS12において、アイドリングストップ中であると判定した場合には、車速が0[km/h]であるか否かを判定する(ステップ13)。ブレーキコントローラ4は、車速が0[km/h]でないと判定した場合には、処理をステップS1に戻す。ブレーキコントローラ4は、車速が0[km/h]であると判定した場合には、図3に示すステップS30に処理を移行する。
【0045】
ステップS2において、ブレーキコントローラ4は、ブレーキONでないと判定した場合には、車速検出部50により検出された車速が所定車速以下か否かを判定する(ステップS14)。
【0046】
ブレーキコントローラ4は、ステップS14において、車速検出部50により検出された車速が所定車速以下でないと判定した場合には、制動力を保持している場合にはその制動力の保持を終了して(ステップS15)、今回の制動力保持制御を終了する。
【0047】
ブレーキコントローラ4は、ステップS14において、車速検出部50により検出された車速が所定車速以下であると判定した場合には、保持監視制御をONにして(ステップS16)、ステップS17に処理を移行する。
【0048】
ステップS17において、ブレーキコントローラ4は、ブレーキ操作がなされたか否か、すなわちブレーキ入力に変化があったか否かを判定する。ブレーキコントローラ4は、ブレーキ入力に変化がないと判定した場合には、処理をステップS17に戻す。
【0049】
ブレーキコントローラ4は、ステップS17において、ブレーキペダル40の踏み込み量が増加するブレーキ入力の変化があったと判定した場合には、運転者のブレーキ操作に応じた制動力を発生させるよう、ブレーキ装置45を制御する(ステップS18)。
【0050】
次いで、ブレーキコントローラ4は、車速が0[km/h]より大きいか否かを判定する(ステップS19)。ブレーキコントローラ4は、車速が0[km/h]より大きいと判定した場合には、今回の制動力保持制御を終了する。ブレーキコントローラ4は、車速が0[km/h]より大きくないと判定した場合には、図3に示すステップS30に処理を移行する。
【0051】
ステップS17において、ブレーキコントローラ4は、ブレーキペダル40の踏み込み量が減少するブレーキ入力の変化があったと判定した場合には、そのときの最大制動力でブレーキ装置45の制動力を保持する(ステップS20)。本実施例において、このときの最大制動力は、上述した第1の制動力に相当する。
【0052】
次いで、ブレーキコントローラ4は、車速が0[km/h]より大きいか否かを判定する(ステップS21)。ブレーキコントローラ4は、車速が0[km/h]より大きいと判定した場合には、今回の制動力保持制御を終了する。ブレーキコントローラ4は、車速が0[km/h]より大きくないと判定した場合には、図3に示すステップS30に処理を移行する。
【0053】
次に、車両1の停車後の制動力保持制御である、図3のステップS30以降の処理について説明する。
【0054】
図3に示すように、ステップS30において、ブレーキコントローラ4は、ブレーキ操作がなされたか否か、すなわちブレーキ入力に変化があったか否かを判定する。ブレーキコントローラ4は、ブレーキ入力に変化がないと判定した場合には、処理をステップS30に戻す。
【0055】
ステップS30において、ブレーキコントローラ4は、ブレーキペダル40の踏み込み量が減少するブレーキ入力の変化があったと判定した場合には、ブレーキ装置45において制動力を保持中であるか否かを判定する(ステップS31)。
【0056】
ブレーキコントローラ4は、ステップS31において、ブレーキ装置45において制動力を保持中であると判定した場合には、処理をステップS30に戻す。ブレーキコントローラ4は、ステップS31において、ブレーキ装置45において制動力を保持中でないと判定した場合には、ブレーキ操作に応じた制動力が車両1の傾斜に応じた制動力より大きいか否かを判定する(ステップS32)。
【0057】
車両1の傾斜に応じた制動力は、傾斜面に位置する車両1がずり下がらない程度の制動力、すなわち、重力の傾斜面方向の分力に釣り合う制動力であり、車両1の重量等に基づき予め実験的に求められている。本実施例において、車両1の傾斜に応じた制動力は、上述した第2の制動力に相当する。
【0058】
ブレーキコントローラ4は、ステップS32において、ブレーキ操作に応じた制動力が車両1の傾斜に応じた制動力より大きいと判定した場合には、そのときの最大制動力でブレーキ装置45の制動力を保持する(ステップS33)。本実施例において、このときの最大制動力は、上述した第2の制動力に相当する。
【0059】
次いで、ブレーキコントローラ4は、イグニッションがオフか否かを判定する(ステップS34)。ブレーキコントローラ4は、イグニッションがオフでないと判定した場合には、処理をステップS33に戻す。ブレーキコントローラ4は、イグニッションがオフであると判定した場合には、制動力の保持を終了して(ステップS51)、今回の制動力保持制御を終了する。
【0060】
ブレーキコントローラ4は、ステップS32において、ブレーキ操作に応じた制動力が車両1の傾斜に応じた制動力より大きくないと判定した場合には、運転者のブレーキ操作に応じた制動力を発生させるよう、ブレーキ装置45を制御する(ステップS35)。
【0061】
次いで、ブレーキコントローラ4は、ブレーキ操作に応じた制動力が車両1の傾斜に応じた制動力より小さいか否かを判定する(ステップS36)。ブレーキコントローラ4は、ブレーキ操作に応じた制動力が車両1の傾斜に応じた制動力より小さくないと判定した場合には、処理をステップS35に戻す。
【0062】
ブレーキコントローラ4は、ステップS36において、ブレーキ操作に応じた制動力が車両1の傾斜に応じた制動力より小さいと判定した場合には、ブレーキ装置45の制動力を車両1の傾斜に応じた制動力で保持する(ステップS37)。
【0063】
次いで、ブレーキコントローラ4は、イグニッションがオフか否かを判定する(ステップS38)。ブレーキコントローラ4は、イグニッションがオフでないと判定した場合には、処理をステップS37に戻す。ブレーキコントローラ4は、イグニッションがオフであると判定した場合には、制動力の保持を終了して(ステップS51)、今回の制動力保持制御を終了する。
【0064】
ステップS30において、ブレーキコントローラ4は、ブレーキペダル40の踏み込み量が増加するブレーキ入力の変化があったと判定した場合には、ブレーキ操作に応じた制動力がブレーキ保持力よりも大きいか否かを判定する(ステップS39)。ブレーキ保持力とは、ブレーキ操作に関わらず既に保持されている制動力のことである。なお、制動力の保持がない場合は、「保持なし」としてブレーキ保持力は「0」となる。
【0065】
ブレーキコントローラ4は、ステップS39において、ブレーキ操作に応じた制動力がブレーキ保持力よりも大きくないと判定した場合には、既に保持されている制動力を維持して、すなわち制動力の保持を継続して(ステップS40)、処理をステップS30に戻す。
【0066】
ブレーキコントローラ4は、ステップS39において、ブレーキ操作に応じた制動力がブレーキ保持力よりも大きいと判定した場合には、運転者のブレーキ操作に応じた制動力を発生させるよう、ブレーキ装置45を制御する(ステップS41)。
【0067】
次いで、ブレーキコントローラ4は、ブレーキ操作に応じた制動力が車両1の傾斜に応じた制動力より小さいか否かを判定する(ステップS42)。
【0068】
ブレーキコントローラ4は、ステップS42において、ブレーキ操作に応じた制動力が車両1の傾斜に応じた制動力より小さいと判定した場合には、ブレーキ操作がなされたか否か、すなわちブレーキ入力に変化があったか否かを判定する(ステップS43)。ブレーキコントローラ4は、ブレーキ入力に変化がないと判定した場合には、処理をステップS41に戻す。
【0069】
ステップS43において、ブレーキコントローラ4は、ブレーキペダル40の踏み込み量が増加するブレーキ入力の変化があったと判定した場合には、処理をステップS41に戻す。
【0070】
ステップS43において、ブレーキコントローラ4は、ブレーキペダル40の踏み込み量が減少するブレーキ入力の変化があったと判定した場合には、そのときの最大制動力でブレーキ装置45の制動力を保持する(ステップS44)。本実施例において、このときの最大制動力は、上述した第2の制動力に相当する。
【0071】
次いで、ブレーキコントローラ4は、イグニッションがオフか否かを判定する(ステップS45)。ブレーキコントローラ4は、イグニッションがオフでないと判定した場合には、処理をステップS44に戻す。ブレーキコントローラ4は、イグニッションがオフであると判定した場合には、制動力の保持を終了して(ステップS51)、今回の制動力保持制御を終了する。
【0072】
ステップS42において、ブレーキコントローラ4は、ブレーキ操作に応じた制動力が車両1の傾斜に応じた制動力より小さくないと判定した場合には、ブレーキ操作がなされたか否か、すなわちブレーキ入力に変化があったか否かを判定する(ステップS46)。ブレーキコントローラ4は、ブレーキ入力に変化がないと判定した場合には、処理をステップS41に戻す。
【0073】
ステップS46において、ブレーキコントローラ4は、ブレーキペダル40の踏み込み量が増加するブレーキ入力の変化があったと判定した場合には、処理をステップS41に戻す。
【0074】
ステップS46において、ブレーキコントローラ4は、ブレーキペダル40の踏み込み量が減少するブレーキ入力の変化があったと判定した場合には、ブレーキ操作に応じた制動力が車両1の傾斜に応じた制動力以下か否かを判定する(ステップS47)。
【0075】
ブレーキコントローラ4は、ステップS47において、ブレーキ操作に応じた制動力が車両1の傾斜に応じた制動力以下であると判定した場合には、ブレーキ装置45の制動力を車両1の傾斜に応じた制動力で保持する(ステップS48)。
【0076】
次いで、ブレーキコントローラ4は、イグニッションがオフか否かを判定する(ステップS49)。ブレーキコントローラ4は、イグニッションがオフでないと判定した場合には、処理をステップS48に戻す。ブレーキコントローラ4は、イグニッションがオフであると判定した場合には、制動力の保持を終了して(ステップS51)、今回の制動力保持制御を終了する。
【0077】
ステップS47において、ブレーキコントローラ4は、ブレーキ操作に応じた制動力が車両1の傾斜に応じた制動力以下でないと判定した場合には、運転者のブレーキ操作に応じた制動力を発生させるよう、ブレーキ装置45を制御して(ステップ49)、処理をステップS46に戻す。
【0078】
上述した車両1の停車後の制動力保持制御においては、ステップS34、ステップS38、ステップS45、及びステップS49に示すように、イグニッションがオフであることを、制動力の保持を終了させるための所定の終了条件とした。ここで、イグニッションがオフであることに代えて、アクセルがONされたこと、又は、ブレーキペダル40の踏み込みが解除されてから所定時間が経過したことのいずれかを、所定の終了条件としてもよい。
【0079】
次に、図4から図6を参照して、車両1の減速時及び停車時の制動力の変化について説明する。図4から図6の各タイムチャートにおいて、実線は、本実施例で説明した、減速時に制動力を保持する場合を示し、破線は、減速時に制動力を保持しない場合を示している。
【0080】
図4は、車両1の減速中に、ブレーキ装置45の制動力をクリープ力に釣り合う制動力に保持し、車両1の停車後に、ブレーキ装置45の制動力を傾斜に応じた制動力に保持する一例(第1の例)を示している。
【0081】
図4に示すように、運転者によるブレーキ操作がなされると、当該ブレーキ操作に応じたブレーキ液圧によって制動力が発生、増加する。これにより、車両1が減速する。
【0082】
その後、時刻t1において、所定の自動停止条件が成立すると、アイドリングストップがON、すなわち実行される。その後、時刻t2において、減速中の車両1の車速が所定車速以下となると、保持監視制御がONとなり、制動力を保持可能な状態となる。
【0083】
その後、運転者の所望の制動力を得られるまでブレーキ液圧が上昇すると、その所望の制動力で運転者のブレーキ操作によって一旦、保持される。その後、時刻t3から時刻t4に向かって、停車前に運転者がブレーキペダル40の踏み込みを弱める、すなわちブレーキペダル40の踏み込み量を減少させると、そのブレーキ操作に応じて制動力も減少する。
【0084】
そして、時刻t4において、運転者のブレーキ操作に応じた制動力が車両1のクリープ力と釣り合うと、ブレーキ装置45の制動力がそのときの制動力、つまりクリープ力に釣り合う制動力に保持される。
【0085】
このとき、図中、破線で示すように、減速時に制動力を保持しない場合には、ブレーキ装置45の制動力がクリープ力を下回ってしまう。このため、減速時に制動力を保持しない例では、車両が進行方向に向かって傾斜しているときには、車両がずり下がってしまうおそれがある。
【0086】
本実施例では、図中、実線で示すように、ブレーキ装置45の制動力がクリープ力に釣り合う制動力に保持されるので、車両1が進行方向に向かって傾斜しているときであっても、ずり下がることがない。
【0087】
その後、時刻t5において、車速が0となり、車両1が停車する。このとき、時刻t4で保持された制動力は、そのまま維持されている。
【0088】
その後、停車後の時刻t6において、運転者によるブレーキペダル40の踏み込み量が増加する、すなわちブレーキペダル40が踏み増されると、ブレーキ装置45の制動力が、傾斜に応じた制動力を超えてブレーキペダル40の踏み込み量に応じた制動力まで増加する。
【0089】
その後、時刻t7において、運転者がブレーキペダル40の踏み込みを弱める、すなわちブレーキペダル40の踏み込み量を減少させると、そのブレーキ操作に応じて制動力も減少する。
【0090】
そして、時刻t8において、運転者のブレーキ操作に応じて減少する制動力が傾斜に応じた制動力と釣り合うと、ブレーキ装置45の制動力がそのときの制動力、つまり傾斜に応じた制動力に保持される。これにより、傾斜した路面に停車した車両1がずり下がることがない。
【0091】
図5は、車両1の減速中に、ブレーキ装置45の制動力を最大制動力に保持し、車両1の停車後に、ブレーキ装置45の制動力を傾斜に応じた制動力に保持する一例(第2の例)を示している。
【0092】
図5に示すように、運転者によるブレーキ操作がなされると、当該ブレーキ操作に応じたブレーキ液圧によって制動力が発生、増加する。これにより、車両1が減速する。
【0093】
その後、時刻t11において、所定の自動停止条件が成立すると、アイドリングストップがON、すなわち実行される。そして、時刻t11後に、運転者によるブレーキペダル40の踏み込みが弱められ、そのブレーキ操作に応じて制動力も減少する。このとき、ブレーキ装置45の制動力は、クリープ力を下回った制動力まで減少する。
【0094】
その後、時刻t12において、減速中の車両1の車速が所定車速以下となると、保持監視制御がONとなり、制動力を保持可能な状態となる。このときのブレーキ装置45の制動力は、クリープ力を下回っている。
【0095】
その後、時刻t13において、運転者がブレーキペダル40の踏み込みをさらに弱めると、ブレーキ装置45の制動力がそのときの最大制動力に保持される。
【0096】
このとき、図中、破線で示すように、減速時に制動力を保持しない場合には、ブレーキ装置45の制動力がクリープ力を大きく下回ってしまう。このため、減速時に制動力を保持しない例では、車両が進行方向に向かって傾斜しているときには、車両がずり下がってしまうおそれがある。
【0097】
本実施例では、図中、実線で示すように、減速時の制動力がクリープ力を下回る場合には、ブレーキ装置45の制動力が最大制動力に保持されるので、ブレーキ装置45の制動力がクリープ力を大きく下回ることがない。このため、本実施例では、車両1が進行方向に向かって傾斜している状況において、車両1のずり下がりを抑制することができる。
【0098】
その後、時刻t14において、車速が0となり、車両1が停車する。このとき、時刻t13で保持された制動力は、そのまま維持されている。
【0099】
その後、停車後の時刻t15において、運転者によるブレーキペダル40の踏み込み量が増加する、すなわちブレーキペダル40が踏み増されると、ブレーキ装置45の制動力が、傾斜に応じた制動力を超えてブレーキペダル40の踏み込み量に応じた制動力まで増加する。
【0100】
その後、時刻t16において、運転者がブレーキペダル40の踏み込みを弱める、すなわちブレーキペダル40の踏み込み量を減少させると、そのブレーキ操作に応じて制動力も減少する。
【0101】
そして、時刻t17において、運転者のブレーキ操作に応じて減少する制動力が傾斜に応じた制動力と釣り合うと、ブレーキ装置45の制動力がそのときの制動力、つまり傾斜に応じた制動力に保持される。これにより、傾斜した路面に停車した車両1がずり下がることがない。
【0102】
図6は、車両1の減速中に、ブレーキ装置45の制動力をクリープ力に釣り合う制動力に保持し、車両1の停車後に、ブレーキ装置45の制動力を最大制動力に保持する一例(第3の例)を示している。
【0103】
図6に示すように、運転者によるブレーキ操作がなされると、当該ブレーキ操作に応じたブレーキ液圧によって制動力が発生、増加する。これにより、車両1が減速する。
【0104】
その後、時刻t21において、所定の自動停止条件が成立すると、アイドリングストップがON、すなわち実行される。その後、時刻t22において、減速中の車両1の車速が所定車速以下となると、保持監視制御がONとなり、制動力を保持可能な状態となる。
【0105】
その後、運転者の所望の制動力を得られるまでブレーキ液圧が上昇すると、その所望の制動力で運転者のブレーキ操作によって一旦、保持される。その後、時刻t23から時刻t24に向かって、停車前に運転者がブレーキペダル40の踏み込みを弱める、すなわちブレーキペダル40の踏み込み量を減少させると、そのブレーキ操作に応じて制動力も減少する。
【0106】
そして、時刻t24において、運転者のブレーキ操作に応じた制動力が車両1のクリープ力と釣り合うと、ブレーキ装置45の制動力がそのときの制動力、つまりクリープ力に釣り合う制動力に保持される。
【0107】
このとき、図中、破線で示すように、減速時に制動力を保持しない場合には、ブレーキ装置45の制動力がクリープ力を下回ってしまう。このため、減速時に制動力を保持しない例では、車両が進行方向に向かって傾斜しているときには、車両がずり下がってしまうおそれがある。
【0108】
本実施例では、図中、実線で示すように、ブレーキ装置45の制動力がクリープ力に釣り合う制動力に保持されるので、車両1が進行方向に向かって傾斜しているときであっても、ずり下がることがない。
【0109】
その後、時刻t25において、車速が0となり、車両1が停車する。このとき、時刻t24で保持された制動力は、そのまま維持されている。
【0110】
その後、停車後の時刻t26において、運転者によるブレーキペダル40の踏み込み量が増加する、すなわちブレーキペダル40が踏み増されると、ブレーキ装置45の制動力が、クリープ力と釣り合う制動力を超えてブレーキペダル40の踏み込み量に応じた制動力まで増加する。ただし、このときのブレーキペダル40の踏み込み量に応じた制動力は、運転者によるブレーキペダル40の踏み増しが図4図5に示す例と比較して弱いため、傾斜に応じた制動力を下回る制動力までしか増加していない。
【0111】
その後、時刻t27において、運転者がブレーキペダル40の踏み込みを弱める、すなわちブレーキペダル40の踏み込み量を減少させると、ブレーキ装置45の制動力がそのときの最大制動力に保持される。
【0112】
本実施例では、停車後の制動力が傾斜に応じた制動力を下回る場合には、ブレーキ装置45の制動力が最大制動力に保持されるので、ブレーキ装置45の制動力が傾斜に応じた制動力を大きく下回ることがない。このため、本実施例では、車両1が傾斜面に停車している状況において、車両1のずり下がりを抑制することができる。
【0113】
以上のように、本実施例に係る車両の制御装置は、車両1の減速中に、停車後に保持される制動力よりも小さい制動力でブレーキ装置45の制動力を保持するので、運転者の意図しない減速感を運転者に対して与えないようにすることができる。
【0114】
また、本実施例に係る車両の制御装置は、車両1の減速中及び停車後に、ブレーキ操作に関わらず制動力を増加させるべくブレーキ液圧を増加させるのではなく、ブレーキ装置45によって発生されている制動力を保持するだけのため、ブレーキ液圧を増加させるためにブレーキ液圧の加圧用のポンプ等を駆動する必要がない。このため、加圧用のポンプ等を駆動するモータの作動音等が低減される。また、加圧用のポンプ等を駆動するモータの消費電流も少ないため、省電力を図ることができる。
【0115】
また、本実施例に係る車両の制御装置は、車両1の減速中及び停車後に、状況に応じた制動力を保持するので、運転者が停車間際にブレーキペダルの踏み込みを緩めたときに車両1が傾斜面にあっても、運転者の意図しない車両移動を防止することができる。
【0116】
このように、本実施例に係る車両の制御装置は、車両1の停車間際にブレーキペダル40の踏み込みを緩めることによる坂道での運転者の意図しない車両移動を、運転者が不快に感じる音を発生することなく少ない消費電力で防止することができる。
【0117】
また、本実施例に係る車両の制御装置は、減速時にブレーキペダル40を強く踏むような場合に保持する最大制動力以上の制動力でブレーキペダル40を踏めば制動力の保持を終了するので、不用意に制動力の保持を実行しないため、そのための消費電流を削減することができる。
【0118】
また、本実施例に係る車両の制御装置は、車両1の減速時、車速が所定車速以下である場合にブレーキ装置45の制動力を保持可能である。このように、ブレーキ装置45の制動力を保持する機会を所定車速以下に制限するので、運転者に意図しない減速感を与えることを防止でき、またブレーキ装置45の保持バルブの通電期間を短くすることができ、保持バルブの消費電力を抑えることができる。
【0119】
また、本実施例に係る車両の制御装置は、車両1の停車後に運転者がブレーキペダル40を踏み増した場合には、エンジン2の再始動まで車両1が動き出さないように第1の制動力よりも大きい第2の制動力でブレーキ装置45の制動力を保持することができる。また、車両1の停車後の運転者によるブレーキペダル40の踏み増しがない、又は弱い場合には、少なくとも減速時に保持していた第1の制動力以上の制動力でブレーキ装置45の制動力を保持することができる。
【0120】
また、本実施例に係る車両の制御装置は、車両1の減速時、ブレーキ装置45の制動力を保持する領域をアイドリングストップ中に制限することにより、運転者に意図しない減速感を与えることを防止できる。さらに、ブレーキ装置45の保持バルブの通電機会を制限することができ、保持バルブの消費電力を抑えることができる。
【0121】
また、本実施例に係る車両の制御装置は、アイドリングストップ中の車両1の減速時、ブレーキ装置45の制動力をクリープ力と釣り合う制動力に保持するので、エンジン停止によりアイドリングストップ中にクリープ力が作用しないことによる意図しない車両1の動き出しを防止することができる。
【0122】
また、本実施例に係る車両の制御装置は、車両1の制動力を走行中から停車後も保持する場合には、車速が所定車速を超えても、制動力の保持を終了させるための所定の終了条件が成立するまでは制動力の保持を継続する。このため、車両1の停車時に傾斜に応じた制動力より小さい最大制動力でブレーキ装置45の制動力を保持している場合に、車両1が停車している路面の傾斜によって車両1が動き出したとしても、その動き出しは急にならない。したがって、この場合、運転者の意図しない動き出しになり難いので、運転者が容易に対処可能である。
【0123】
また、本実施例に係る車両の制御装置は、車両1の走行時にブレーキ装置45の制動力を保持していても下り坂などで仮に車速が大きくなった場合には、停車後の車両1の動き出しとは関係がないため制動力の保持を終了させる。また、下り坂などで車速が大きくなっても運転者がブレーキペダル40を踏み増さないような場合は、運転者が車両1を加速させたいと考えていると推測されるため、運転者の意思を優先して制動力の保持を終了することができる。これにより、ブレーキ装置45の保持バルブの通電を解除することができ、消費電力を抑えることもできる。
【0124】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更
が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に
含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0125】
1 車両
2 エンジン
3 アイドリングストップECU(アイドリングストップ制御部)
4 ブレーキコントローラ
5 車輪
31 アクセルセンサ
30 アクセルペダル
40 ブレーキペダル
41 ブレーキセンサ
42 加速度センサ
43 イグニッションスイッチ
45 ブレーキ装置(制動力発生部)
46 傾斜検出部
47 制動力保持部
50 車速検出部
51 車輪速センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6