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特許7468744感放射線性組成物、硬化膜及びその製造方法、半導体素子並びに表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】感放射線性組成物、硬化膜及びその製造方法、半導体素子並びに表示素子
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/039 20060101AFI20240409BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240409BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240409BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G03F7/039 601
G03F7/004 503A
G03F7/20 501
G03F7/20 521
G09F9/30 348A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023070383
(22)【出願日】2023-04-21
【審査請求日】2023-04-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】成子 朗人
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/039
G03F 7/004
G03F 7/20
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]下記式(1)で表される部分構造を有する第1構造単位と、下記式(2)で表される部分構造を有する第2構造単位とを、同一分子内又は異なる分子内に含む重合体成分と、
[B]光酸発生剤と、
を含有し、
前記重合体成分の全構造単位に対して、前記第1構造単位を1040質量%含み、前記第2構造単位を~20質量%含み、
前記第1構造単位は、下記式(1-1A)で表される構造単位、下記式(1-2A)で表される構造単位、下記式(1-1B)で表される構造単位、下記式(1-2B)で表される構造単位、4-トリメチルシリルオキシ-N-フェニルマレイミドに由来する構造単位及び4-トリメチルシリルオキシフェニル(メタ)アクリレートに由来する構造単位よりなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記第2構造単位は、下記式(2A-1)で表される構造単位及び下記式(2A-2)で表される構造単位よりなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記重合体成分は、マレイミドに由来する構造単位、カルボキシ基を有する構造単位、スルホン酸基を有する構造単位及びフェノール性水酸基を有する構造単位よりなる群から選択される少なくとも1種である第3構造単位を更に含み、
前記重合体成分の全構造単位に対して、前記第3構造単位を1~30質量%含む、感放射線性組成物。
【化1】
(式(1)中、Arは2価の芳香環基である。Yは酸解離性基である。nは0又は1である。「*」は結合手を表す。ただし、nが0の場合、前記第1構造単位はマレイミド環を有する単量体に由来する構造単位であり、Y は前記マレイミド環の窒素原子に結合している。
【化2】
(式(2)中、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキル基、又はフェニル基である。ただし、R、R及びRのうち1つ以上は、炭素数1~6のアルコキシ基である。「*」は、炭素原子に結合する結合手を表す。)
【化3】
(式(1-1A)及び式(1-2A)中、R は、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、シアノ基又はトリフルオロメチル基である。R 、R 及びR は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~20の1価の炭化水素基、又は当該炭化水素基が有する水素原子の一部若しくは全部が置換基で置換された基である。A 及びA は、互いに独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~6のアルコキシ基である。n1は0~4の整数である。n2は0~6の整数である。ただし、n1が2以上の場合、複数のA は、互いに同一の基又は異なる基である。n2が2以上の場合、複数のA は、互いに同一の基又は異なる基である。)
【化4】
(式(1-1B)及び式(1-2B)中、R は、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、シアノ基又はトリフルオロメチル基である。R 、R 及びR は、次の(1)又は(2)を満たす。(1)R は水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基である。R 及びR は、互いに独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、又は炭素数7~20のアラルキル基である。(2)R は、水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基である。R 及びR は、互いに合わせられR 及びOR が結合する炭素原子とともに構成される環状エーテル構造を表す。R 10 は3級アルキル基である。A は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~6のアルコキシ基である。n3は0~4の整数である。)
【化5】
(式(2A-1)及び式(2A-2)中、R は、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、シアノ基又はトリフルオロメチル基である。R 12 は、2価の芳香環基又は鎖状炭化水素基である。R 13 は、単結合、2価の芳香環基又は鎖状炭化水素基である。R 、R 及びR は、上記式(2)と同義である。)
【請求項2】
前記光酸発生剤は、オキシムスルホネート化合物及びN-スルホニルオキシイミド化合物よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の感放射線性組成物。
【請求項3】
前記第3構造単位は、マレイミドに由来する構造単位である、請求項1に記載の感放射線性組成物。
【請求項4】
前記重合体成分は、架橋性基を有する構造単位(ただし、前記第1構造単位前記第2構造単位及び前記第3構造単位を除く。)を更に含む、請求項1に記載の感放射線性組成物。
【請求項5】
更に、オルトエステル化合物を含有する、請求項1に記載の感放射線性組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の感放射線性組成物を用いて形成された硬化膜。
【請求項7】
周波数10kHzにおける比誘電率が3.3以下である、請求項に記載の硬化膜。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の感放射線性組成物を用いて塗膜を形成する工程と、
前記塗膜の少なくとも一部を露光する工程と、
露光後の塗膜を現像する工程と、
現像された前記塗膜を加熱する工程と、
を含む、硬化膜の製造方法。
【請求項9】
請求項に記載の硬化膜を備える半導体素子。
【請求項10】
請求項に記載の硬化膜を備える表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性組成物、硬化膜及びその製造方法、半導体素子並びに表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や表示素子が有する硬化膜(例えば、層間絶縁膜やスペーサー、保護膜等)は一般に、重合体成分と感放射線性化合物(光酸発生剤や光重合開始剤等)とを含有する感放射線性組成物を用いて形成される。例えば、感放射線性組成物により形成された塗膜に対して放射線照射を行い、次いで現像処理を施すことによってパターンを形成した後、加熱処理を行って熱硬化させることにより、パターン形状を有する硬化膜を得ることができる。
【0003】
半導体素子や表示素子に設ける硬化膜を形成する材料として、従来、種々の感放射線性組成物が提案されている(例えば、特許文献1~特許文献3参照)。特許文献1には、硬化膜の形成に用いる感放射線性組成物として、トリアルコキシシリル基がアルキル鎖、ベンゼン環又はナフタレン環に結合した部分構造を有する構造単位を含む重合体と、エポキシ化合物と、感放射線性化合物とを含有する感放射線性樹脂組成物が開示されている。また、特許文献1の感放射線性組成物によれば、優れた耐熱性、耐薬品性、表面硬度、現像密着性、透明性及び低誘電性を有する硬化膜を得ることができ、保存安定性及び感度といった特性も満足できることが特許文献1に記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、マレイミドに由来する構造単位と、アルコキシシリル基を含む構造単位とを同一の又は異なる重合体中に有する重合体成分と、感放射線性化合物とを含有する感放射線性組成物が開示されている。この特許文献2の感放射線性組成物は放射線性感度が高く、当該組成物を用いることにより、耐薬品性が高く、金属配線腐食性の低い硬化膜が得られることが特許文献2に記載されている。
【0005】
特許文献3には、トリアルキルシリルオキシ基が芳香環に結合した部分構造を有する構造単位と、架橋性基を有する構造単位とを同一の又は異なる重合体中に含む重合体成分と、感放射線性酸発生体とを含有する感放射線性組成物が開示されている。また、特許文献3の感放射線性組成物は、重合体成分中に上記の構造単位を含むことにより、放射線感度が良好であって、かつ保存安定性、アウトガス特性及び塗布性が良好であることが特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-107024号公報
【文献】特開2019-174614号公報
【文献】特開2021-196577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3の感放射線性組成物によれば、放射線感度を良好にしながら、アウトガスの発生が低減された硬化膜を得ることができる。しかしながら、特許文献3の感放射線性組成物により得られる硬化膜は誘電率が比較的高く、更なる改善の余地がある。また、透明性が要求される用途では、感放射線性組成物により得られる膜の透過率が高いことが求められる。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、放射線感度に優れ、かつ低誘電率であって透明性に優れた硬化膜を形成することができる感放射線性組成物を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下の感放射線性組成物、硬化膜及びその製造方法、半導体素子並びに表示素子が提供される。
【0010】
[1] [A]下記式(1)で表される部分構造を有する第1構造単位と、下記式(2)で表される部分構造を有する第2構造単位とを、同一分子内又は異なる分子内に含む重合体成分と、[B]光酸発生剤と、を含有し、前記重合体成分の全構造単位に対して、前記第1構造単位を5~50質量%含み、前記第2構造単位を0.1~20質量%含む、感放射線性組成物。
【化1】
(式(1)中、Arは2価の芳香環基である。Yは酸解離性基である。nは0又は1である。「*」は結合手を表す。ただし、nが0の場合、前記第1構造単位はマレイミド環を有する単量体に由来する構造単位であり、Yは前記マレイミド環の窒素原子に結合している。)
【化2】
(式(2)中、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキル基、又はフェニル基である。ただし、R、R及びRのうち1つ以上は、炭素数1~6のアルコキシ基である。「*」は、炭素原子に結合する結合手を表す。)
【0011】
[2] 上記[1]に記載の感放射線性組成物を用いて形成された硬化膜。
[3] 上記[1]に記載の感放射線性組成物を用いて塗膜を形成する工程と、前記塗膜の少なくとも一部を露光する工程と、露光後の塗膜を現像する工程と、現像された前記塗膜を加熱する工程と、を含む、硬化膜の製造方法。
[4] 上記[2]に記載の硬化膜を備える半導体素子。
[5] 上記[2]に記載の硬化膜を備える表示素子。
【発明の効果】
【0012】
本発明の感放射線性組成物は放射線感度に優れている。また、本発明の感放射線性組成物によれば、低誘電率であって、透明性に優れた硬化膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施態様に関連する事項について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」を用いて記載された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。「構造単位」とは、主鎖構造を主として構成する単位であって、少なくとも主鎖構造中に2個以上含まれる単位をいう。
【0014】
本明細書において「炭化水素基」は、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、鎖状炭化水素基は飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素基は脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香族炭化水素基は芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が有する環構造は、炭化水素構造からなる置換基を有していてもよい。「環状炭化水素基」は、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「芳香環基」とは、芳香環の環部分からr個(rは整数)の水素原子を取り除いた基を意味する。「芳香環」は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環を含む。「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」を包含する意味である。
【0015】
《感放射線性組成物》
本開示の感放射線性組成物(以下、「本組成物」ともいう)は、[A]重合体成分と[B]光酸発生剤とを含有する。以下に、本組成物に含まれる各成分、及び必要に応じて配合されるその他の成分について説明する。なお、各成分については、特に言及しない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
<[A]重合体成分>
[A]重合体成分は、下記式(1)で表される部分構造を有する第1構造単位と、下記式(2)で表される部分構造を有する第2構造単位とを同一分子内又は異なる分子内に含む。また、[A]重合体成分は、[A]重合体成分の全構造単位に対して、第1構造単位を5~50質量%含み、第2構造単位を0.1~20質量%含む。
【化3】
(式(1)中、Arは2価の芳香環基である。Yは酸解離性基である。nは0又は1である。「*」は結合手を表す。ただし、nが0の場合、前記第1構造単位はマレイミド環を有する単量体に由来する構造単位であり、Yは前記マレイミド環の窒素原子に結合している。)
【化4】
(式(2)中、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキル基、又はフェニル基である。ただし、R、R及びRのうち1つ以上は、炭素数1~6のアルコキシ基である。「*」は、炭素原子に結合する結合手を表す。)
【0017】
(第1構造単位)
第1構造単位は、上記式(1)で表される部分構造を有する。本組成物に放射線が照射されると、[B]光酸発生剤から生じた酸の作用により上記式(1)中の酸解離性基(Y)が脱離する。これにより、上記式(1)中のnが1の場合には芳香環に結合する水酸基を生じ、nが0の場合には-NH-を生じる。その結果、[A]重合体成分の現像液への溶解性(より詳細には、アルカリ可溶性)を変化させることができ、パターンが形成された硬化膜を得ることができる。また、芳香環に結合する水酸基又は-NH-が生成されることにより、[A]重合体成分の硬化反応性を高めることができる。[A]重合体成分の硬化反応性をより高くできる点で、上記式(1)中のnは1であることが好ましい。なお、本明細書において、「アルカリ可溶」とは、2.38質量%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液等のアルカリ水溶液に溶解又は膨潤可能であることを意味する。
【0018】
上記式(1)において、Arで表される2価の芳香環基は、置換又は無置換の芳香環の環部分から2個の水素原子を取り除いた基である。当該芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。Arが有する芳香環が置換基を有する場合、当該置換基としては、例えばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。Arとしては、これらのうち、置換又は無置換のフェニレン基、ナフチレン基又はアントリレン基であることが好ましく、置換又は無置換のフェニレン基又はナフチレン基であることがより好ましい。
【0019】
で表される酸解離性基は特に限定されない。ここで、本明細書において「酸解離性基」とは、酸基(例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基等)が有する極性の水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。本組成物の感度や保存安定性、パターン形状性の改善効果を高める観点から、Yで表される酸解離性基は、下記式(Y-1)、式(Y-2)又は式(Y-3)で表される基であることが好ましい。
【化5】
(式(Y-1)中、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~20の1価の炭化水素基、又は当該炭化水素基が有する水素原子の一部若しくは全部が置換基で置換された基である。「*」は結合手を表す。)
【化6】
(式(Y-2)中、R、R及びRは、次の(1)又は(2)を満たす。(1)Rは水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基である。R及びRは、互いに独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、又は炭素数7~20のアラルキル基である。(2)Rは、水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基である。R及びRは、互いに合わせられR及びORが結合する炭素原子とともに構成される環状エーテル構造を表す。「*」は結合手を表す。)
【化7】
(式(Y-3)中、R10は3級アルキル基である。「*」は結合手を表す。)
【0020】
上記式(Y-1)において、R、R又はRで表される1価の炭化水素基としては、炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基、炭素数4~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。これらの具体例としては、炭素数1~20の鎖状炭化水素基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基等が挙げられる。
【0021】
炭素数4~20の脂環式炭化水素基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基等の単環の脂環式炭化水素基;ビシクロ[2.2.2]オクチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等の多環の脂環式炭化水素基等が挙げられる。
【0022】
炭素数6~20の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
、R又はRで表される基が、炭素数1~20の炭化水素基が有する水素原子の一部若しくは全部が置換基で置換された基である場合、当該置換基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0023】
、R又はRで表される基は、組成物の放射線感度及び塗布性を良好にする観点、並びにアウトガスの少ない硬化膜を得る観点から、上記のうち、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~5のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~3のアルキル基であることが更に好ましい。
【0024】
上記式(Y-2)において、R、R及びRで表される炭素数1~12のアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。当該アルキル基の炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4である。R、R及びRで表される炭素数1~12のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
【0025】
、R及びRで表される炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。R及びRで表される炭素数7~20のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基等が挙げられる。
【0026】
及びRが互いに合わせられて構成される環状エーテル構造は、環員数5以上であることが好ましい。具体的には、例えばテトラヒドロフラン環構造、テトラヒドロピラン環構造等が挙げられる。
【0027】
酸により解離しやすい点で、Rは中でも、水素原子、メチル基又はエチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
上記式(Y-3)において、R10で表される3級アルキル基は、脱離性が良好である点で、tert-ブチル基が好ましい。
【0028】
上記式(1)中のYが上記式(Y-1)で表される基である場合、上記式(1)で表される基は、下記式(Y1-1)又は式(Y1-2)で表されることが好ましい。
【化8】
(式(Y1-1)及び式(Y1-2)中、A及びAは、互いに独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~6のアルコキシ基である。n1は0~4の整数である。n2は0~6の整数である。ただし、n1が2以上の場合、複数のAは、互いに同一の基又は異なる基である。n2が2以上の場合、複数のAは、互いに同一の基又は異なる基である。R、R及びRは、上記式(Y-1)と同義である。「*」は、結合手を表す。)
【0029】
上記式(Y1-1)又は式(Y1-2)において、A又はAで表される炭素数1~6のアルキル基及び炭素数1~6のアルコキシ基の具体例については、上記式(Y-1)のR~Rのアルキル基、アルコキシ基として例示した基が挙げられる。
【0030】
芳香環に結合する基「-O-SiR」の位置は、A及びAを除く他の基に対していずれの位置であってもよい。例えば上記式(Y1-1)の場合、「-O-SiR」の位置は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれでもよく、パラ位であることが好ましい。n1は0又は1が好ましく、0がより好ましい。n2は、0~2が好ましく、0がより好ましい。第1構造単位が上記式(Y-1)で表される基を有する場合、第1構造単位は、これらの中でも、上記式(Y1-1)で表される基を有する構造単位であることが特に好ましい。
【0031】
上記式(1)中のYが上記式(Y-1)で表される基である場合、第1構造単位は、重合性炭素-炭素不飽和結合を有する単量体(以下、「不飽和単量体」ともいう。)に由来する構造単位であることが好ましい。具体的には、第1構造単位は、下記式(1-1A)で表される構造単位及び下記式(1-2A)で表される構造単位よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、下記式(1-1A)で表される構造単位であることがより好ましい。
【化9】
(式(1-1A)及び式(1-2A)中、Rは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、シアノ基又はトリフルオロメチル基である。R、R及びRは、上記式(Y-1)と同義である。A、A、n1及びn2は、上記式(Y1-1)及び式(Y1-2)と同義である。)
【0032】
上記式(1)中のYが上記式(Y-1)で表される基である場合、第1構造単位を与える単量体の具体例としては、上記式(1)中のnが1である場合の例として、4-イソプロペニルフェニルオキシトリメチルシラン、4-イソプロペニルフェニルオキシトリエチルシラン、4-イソプロペニルフェニルオキシメチルジエチルシラン、4-イソプロペニルフェニルオキシジメチルエチルシラン、3-イソプロペニルフェニルオキシトリメチルシラン、4-イソプロペニルナフチルオキシトリメチルシラン、4-ビニルフェニルオキシトリメチルシラン、4-ビニルフェニルオキシトリエチルシラン、4-ビニルフェニルオキシメチルジエチルシラン、4-ビニルフェニルオキシジメチルエチルシラン、3-ビニルフェニルオキシトリメチルシラン、4-ビニルナフチルオキシトリメチルシラン、4-トリメチルシリルオキシ-N-フェニルマレイミド、4-トリメチルシリルオキシフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記式(1)中のnが0である場合の例として、N-トリメチルシリルマレイミド、N-トリエチルシリルマレイミド、N-メチルジエチルシリルマレイミド等が挙げられる。
【0033】
上記式(1)中のYが上記式(Y-2)又は式(Y-3)で表される基である場合、第1構造単位は、不飽和単量体に由来する構造単位であることが好ましい。具体的には、第1構造単位は、下記式(1-1B)で表される構造単位及び下記式(1-2B)で表される構造単位よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【化10】
(式(1-1B)及び式(1-2B)中、Rは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、シアノ基又はトリフルオロメチル基である。R、R及びRは、上記式(Y-2)と同義である。R10は、上記式(Y-3)と同義である。Aは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~6のアルコキシ基である。n3は0~4の整数である。)
【0034】
上記式(1)中のYが上記式(Y-2)で表される基である場合、第1構造単位を与える単量体の具体例としては、下記式(1-2-1)~式(1-2-3)のそれぞれで表される構造単位が挙げられる。また、上記式(1)中のYが上記式(Y-3)で表される基である場合、第1構造単位を与える単量体の具体例としては、下記式(1-3-1)で表される構造単位が挙げられる。
【化11】
(式(1-2-1)~式(1-2-3)及び式(1-3-1)中、Rは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、シアノ基又はトリフルオロメチル基である。)
【0035】
第1構造単位は、放射線感度や透過率の観点から、上記の中でも、上記式(1)中のYが上記式(Y-1)で表される基であることが好ましい。
【0036】
[A]重合体成分における第1構造単位の含有割合は、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、5~50質量%である。第1構造単位の含有割合が5質量%未満であると、本組成物の放射線感度が低くなり、解像性に劣る。また、第1構造単位の含有割合が50質量%を超えると、本組成物を用いて得られる膜の透過率が低下し、また硬化膜からアウトガスが発生しやすくなる。上記の観点から、[A]重合体成分における第1構造単位の含有割合は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。また、膜の透過率と解像性を両立する観点から、第1構造単位の含有割合は、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0037】
(第2構造単位)
第2構造単位は、上記式(2)で表される部分構造を有する構造単位である。なお、第2構造単位は、上記式(1)で表される部分構造を有しない点において第1構造単位とは異なる。
【0038】
上記式(2)において、R、R又はRで表される炭素数1~6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、及びtert-ブトキシ基等が挙げられる。これらのうち、R、R又はRで表されるアルコキシ基は、炭素数1~5が好ましく、炭素数1~3がより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が更に好ましい。特に、上記式(2)で表される基が芳香環基に結合している場合、R、R及びRのうち少なくとも1つはメトキシ基であることが好ましい。上記式(2)で表される基が鎖状炭化水素基に結合している場合、R、R及びRのうち少なくとも1つはエトキシ基であることが好ましい。
【0039】
、R又はRで表される炭素数1~10のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。R、R又はRで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。これらのうち、R、R又はRで表されるアルキル基は、メチル基、エチル基又はプロピル基が好ましい。
【0040】
、R又はRで表される基のうち少なくとも1個は、炭素数1~6のアルコキシ基である。R、R又はRが炭素数1~6のアルコキシ基とは異なる基である場合、当該基としては、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキル基、フェニル基等が挙げられる。
【0041】
架橋構造の形成により耐熱性に優れた硬化膜を得る観点から、R、R及びRのうち2個以上が炭素数1~6のアルコキシ基であることが好ましく、R、R及びRの全部が炭素数1~6のアルコキシ基であることがより好ましい。
【0042】
第2構造単位において、上記式(2)で表される基は炭素原子に結合していればよい。膜の透明性やアウトガス特性を改善する観点から、上記式(2)で表される基は、芳香環基若しくは鎖状炭化水素基に結合しているか、又は重合体の主鎖を構成する炭素原子に結合していることが好ましい。上記式(2)で表される基が芳香環基に結合している場合、上記式(2)で表される基が結合する芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。これらの環は、アルキル基等の置換基を有していてもよい。上記式(2)で表される基が鎖状炭化水素基に結合している場合、当該鎖状炭化水素基としては、アルカンジイル基、アルケンジイル基等が挙げられる。
【0043】
上記式(2)で表される基が芳香環基又は鎖状炭化水素基に結合している場合、上記式(2)で表される基は、上記のうち、ベンゼン環、ナフタレン環又はアルキル鎖に結合していることが好ましい。具体的には、上記式(2)で表される基が芳香環基又は鎖状炭化水素基に結合している場合、第2構造単位は、下記式(2-1)で表される基、下記式(2-2)で表される基及び下記式(2-3)で表される基よりなる群から選択される少なくとも1種を有することが好ましい。
【化12】
(式(2-1)、式(2-2)及び式(2-3)中、A及びAは、互いに独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基である。m1は0~4の整数である。m2は0~6の整数である。ただし、m1が2以上の場合、複数のAは同一又は異なる。m2が2以上の場合、複数のAは同一又は異なる。R11はアルカンジイル基である。R、R及びRは、上記式(2)と同義である。「*」は、結合手を表す。)
【0044】
上記式(2-1)又は式(2-2)において、A又はAで表される炭素数1~6のアルコキシ基及び炭素数1~6のアルキル基の例示については、上記式(2)のR~Rとして例示した基と同様の基が挙げられる。芳香環に対する基「-SiR」の結合位置は、A及びAを除く他の基の結合位置(すなわち、「*」で表される結合手の位置)に対しいずれの位置であってもよい。例えば、上記式(2-1)の場合、「-SiR」の位置は、「*」で表される結合手の位置に対して、オルト位、メタ位及びパラ位のうちいずれでもよい。好ましくはパラ位である。m1は0又は1が好ましく、0がより好ましい。m2は、0~2が好ましく、0がより好ましい。
上記式(2-3)において、R11は直鎖状であることが好ましい。得られる硬化膜の耐熱性を高くする観点から、R11は、炭素数1~6が好ましく、1~4がより好ましい。
【0045】
硬化膜の耐熱性、耐薬品性及び硬度を高くできる点で、第2構造単位は、上記式(2-1)~式(2-3)のうち、上記式(2-1)で表される基及び上記式(2-2)で表される基よりなる群から選択される少なくとも1種を有することが好ましい。また、芳香環に基「-SiR」が直接結合している場合、水の存在に伴い生じたシラノール基の安定化を図ることが可能となる。これにより、アルカリ現像液に対する露光部の溶解性を高くでき、良好なパターンを形成することができる点において好ましい。第2構造単位は、これらの中でも、上記式(2-1)で表される基を有する構造単位であることが特に好ましい。
【0046】
第2構造単位は、重合に関与する結合として重合性炭素-炭素不飽和結合を有する単量体(以下、「不飽和単量体」ともいう)に由来する構造単位であることが好ましい。具体的には、第2構造単位は、下記式(2A-1)で表される構造単位及び下記式(2A-2)で表される構造単位よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【化13】
(式(2A-1)及び式(2A-2)中、Rは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、シアノ基又はトリフルオロメチル基である。R12は、2価の芳香環基又は鎖状炭化水素基である。R13は、単結合、2価の芳香環基又は鎖状炭化水素基である。R、R及びRは、上記式(1)と同義である。)
【0047】
上記式(2A-1)及び式(2A-2)において、R12又はR13で表される2価の芳香環基は、置換若しくは無置換のフェニレン基、又は置換若しくは無置換のナフタレンジイル基であることが好ましい。芳香環基において、環に結合する置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルキル基及び炭素数1~6のアルコキシ基よりなる群から選択される1種以上が挙げられる。2価の鎖状炭化水素基は、炭素数1~6のアルカンジイル基であることが好ましく、炭素数1~4のアルカンジイル基であることがより好ましい。
【0048】
耐熱性、耐薬品性及び硬度がより高い硬化膜を得ることができる点、並びにアルカリ現像液に対する露光部の溶解性を高くできる点で、R12及びR13は、上記の中でも2価の芳香環基であることが好ましく、置換又は無置換のフェニレン基であることがより好ましい。
【0049】
上記式(2A-1)で表される構造単位の具体例としては、下記式(2A-1-1)及び式(2A-1-2)のそれぞれで表される構造単位等が挙げられる。上記式(2A-2)で表される構造単位の具体例としては、下記式(2A-2-1)、式(2A-2-2)及び式(2A-2-3)のそれぞれで表される構造単位等が挙げられる。
【化14】
(式(2A-1-1)、式(2A-1-2)、式(2A-2-1)、式(2A-2-2)及び式(2A-2-3)中、R21及びR22は、互いに独立して、炭素数1~4のアルキル基である。R23は、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基又は水酸基である。n3は1~4の整数である。A、A、m1及びm2は、上記式(2-1)及び式(2-2)と同義である。Rは、上記式(2A-1)及び式(2A-2)と同義である。)
【0050】
第2構造単位を構成する単量体の具体例としては、上記式(2-1)で表される基を有する化合物として、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、スチリルメチルジメトキシシラン、スチリルエチルジエトキシシラン、スチリルジメトキシヒドロキシシラン、スチリルジエトキシヒドロキシシラン、4-ビニルフェニルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシフェニルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシフェニルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシフェニルメトキシジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシフェニルエチルジエトキシシラン等を;
上記式(2-2)で表される基を有する化合物として、トリメトキシ(4-ビニルナフチル)シラン、トリエトキシ(4-ビニルナフチル)シラン、メチルジメトキシ(4-ビニルナフチル)シラン、エチルジエトキシ(4-ビニルナフチル)シラン、(メタ)アクリロキシナフチルトリメトキシシラン等を;
上記式(2-3)で表される基を有する化合物として、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン等を;それぞれ挙げることができる。また、第2構造単位を構成する単量体の具体例としては、上記のほか、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0051】
[A]重合体成分において、第2構造単位の含有割合は、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、0.1~20質量%である。第2構造単位の含有割合が0.1質量%未満であると、本組成物を用いて得られる硬化膜の低誘電率化を十分に図ることができない。また、第2構造単位の含有割合が20質量%を超えると、本組成物の放射線感度に劣る。硬化膜の高誘電率化を図る観点から、[A]重合体成分における第2構造単位の含有割合は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、本組成物の感度と、得られる硬化膜の低誘電率化及び高透過率化とを両立させる観点から、第2構造単位の含有割合は、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0052】
(その他の構造単位)
[A]重合体成分は、第1構造単位及び第2構造単位とは異なる構造単位(以下、「その他の構造単位」ともいう)を更に含んでいてもよい。その他の構造単位としては、以下に示す第3構造単位~第5構造単位等が挙げられる。
【0053】
・第3構造単位
[A]重合体成分は、マレイミドに由来する構造単位及び酸基を有する構造単位よりなる群から選択される少なくとも1種の構造単位(ただし、第1構造単位及び第2構造単位を除く。これを「第3構造単位」とする。)を更に含むことが好ましい。[A]重合体成分が第3構造単位を更に含むことにより、アルカリ現像液に対する[A]重合体成分の溶解性(アルカリ可溶性)を高めたり、硬化反応性を高めたりすることができる。
【0054】
第3構造単位が酸基を有する場合、酸基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基等が挙げられる。第3構造単位は、具体的には、カルボキシ基を有する構造単位、スルホン酸基を有する構造単位、フェノール性水酸基を有する構造単位及びマレイミド単位よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、本明細書において「フェノール性水酸基」とは、芳香環(例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等)に直接結合するヒドロキシ基を意味する。
【0055】
第3構造単位を与える単量体は特に限定されないが、共重合性の観点から不飽和単量体であることが好ましい。第3構造単位を与える単量体の具体例としては、カルボキシ基を有する構造単位を与える単量体として、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、4-ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボン酸:マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸等を;スルホン酸基を有する構造単位を与える単量体として、例えばビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリルイルオキシエチルスルホン酸等を;フェノール性水酸基を有する構造単位を与える単量体として、例えば4-ヒドロキシスチレン、o-イソプロペニルフェノール、m-イソプロペニルフェノール、p-イソプロペニルフェノール、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート等を、それぞれ挙げることができる。また、第3構造単位を与える単量体としてマレイミドを用いることもできる。
【0056】
[A]重合体成分において、第3構造単位の含有割合は、アルカリ現像液への良好な溶解性を付与する観点から、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。また、露光部分と未露光部分とにおいて、アルカリ現像液への溶解性の違いを十分に生じさせ、良好な形状のパターンを得る観点から、第3構造単位の含有割合は、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0057】
・第4構造単位
[A]重合体成分は、架橋性基を有する構造単位(ただし、第1構造単位、第2構造単位及び第3構造単位を除く。これを「第4構造単位」とする。)を更に含むことが好ましい。[A]重合体成分が第4構造単位を更に含むことにより、本組成物を用いて得られる膜の解像性や密着性をより高めることができる点で好ましい。
【0058】
第4構造単位としては、オキシラニル基及びオキセタニル基よりなる群から選択される1種以上を有する構造単位が挙げられる。なお、本明細書では、オキシラニル基及びオキセタニル基を包含して「エポキシ基」ともいう。第4構造単位がエポキシ基を有する場合、エポキシ基が架橋性基として作用することにより、耐薬品性が高く、長期間に亘って劣化が抑制される硬化膜を形成できる点で好ましい。
【0059】
第4構造単位は、エポキシ基を有する不飽和単量体に由来する構造単位であることが好ましく、具体的には下記式(4-1)で表される構造単位及び下記式(4-2)で表される構造単位よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【化15】
(式(4-1)及び式(4-2)中、R30は、オキシラニル基又はオキセタニル基を有する1価の基である。Rは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、シアノ基又はトリフルオロメチル基である。Xは、単結合又は2価の連結基である。)
【0060】
上記式(4-1)及び式(4-2)において、R30としては、オキシラニル基、オキセタニル基、3,4-エポキシシクロヘキシル基、3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、3-エチルオキセタニル基等が挙げられる。
【0061】
の2価の連結基としては、メチレン基、エチレン基、1,3-プロパンジイル基等のアルカンジイル基;アルカンジイル基の任意のメチレン基が酸素原子に置き換えられた2価の基等が好ましい。
【0062】
エポキシ基を有する単量体の具体例としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デシル(メタ)アクリレート、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル[3,4-エポキシトリシクロ(5.2.1.02,6)デカン-9-イル]、(3-メチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)(メタ)アクリレート、(オキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、3-(メタ)アクリロイルオキシメチル-3-エチルオキセタン、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0063】
[A]重合体成分が第4構造単位を含む場合、[A]重合体成分における第4構造単位の含有割合は、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。また、第4構造単位の含有割合は、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、55質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。第4構造単位の含有割合を上記範囲とすることにより、本組成物を用いて得られる膜がより良好な解像性を示すとともに、得られる硬化膜の耐熱性及び耐薬品性を十分に高くすることができる点で好ましい。
【0064】
・第5構造単位
[A]重合体成分は、酸解離性基を有する構造単位(ただし、第1構造単位、第2構造単位、第3構造単位及び第4構造単位を除く。これを「第5構造単位」とする。)を更に含んでいてもよい。第5構造単位は第1構造単位とは異なり、上記式(1)で表される部分構造を有しない。第5構造単位が有する酸解離性基は、カルボキシ基、アルコール性水酸基又はスルホン酸基が有する水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基であることが好ましい。第5構造単位は中でも、酸の作用により酸解離性基が脱離してカルボキシ基を生じる構造単位であることが好ましい。
【0065】
第5構造単位が、酸の作用により酸解離性基が脱離してカルボキシ基を生じる場合、第5構造単位としては、保護された不飽和カルボン酸に由来する構造単位が挙げられる。不飽和カルボン酸は特に限定されず、例えば、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和酸無水物、不飽和多価カルボン酸等が挙げられる。
【0066】
これらの具体例としては、不飽和モノカルボン酸として、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α-クロロアクリル酸、桂皮酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-コハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-フタル酸、(メタ)アクリル酸-2-カルボキシエチルエステル、4-ビニル安息香酸等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。不飽和酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。不飽和多価カルボン酸としては、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、酸解離性基としては、例えば、アセタール系官能基、第3級アルキル基、第3級アルキルカーボネート基、トリアルキルシリル基等が挙げられる。これらのうち、酸により解離しやすい点で、アセタール系官能基が好ましい。
【0067】
第5構造単位が、アセタール系官能基で保護されたカルボキシ基を有する場合、第5構造単位は、カルボン酸のアセタールエステル構造を有することが好ましく、具体的には、下記式(5-1)で表される基を有することが好ましい。
【化16】
(式(5-1)中、R41、R42及びR43は、次の(1)又は(2)を満たす。(1)R41は水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基である。R42及びR43は、互いに独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、又は炭素数7~20のアラルキル基である。(2)R41は、水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基である。R42及びR43は、互いに合わせられR42及びOR43が結合する炭素原子とともに構成される環状エーテル構造を表す。「*」は結合手を表す。)
【0068】
41、R42又はR43で表される基の具体例及び好ましい例については、上記式(Y-2)中のR、R又はRで表される基として説明した基と同様の基が挙げられる。
【0069】
上記式(5-1)で表されるカルボン酸のアセタールエステル構造の具体例としては、1-メトキシエトキシカルボニル基、1-エトキシエトキシカルボニル基、1-プロポキシエトキシカルボニル基、1-ブトキシエトキシカルボニル基、1-シクロヘキシルオキシエトキシカルボニル基、2-テトラヒドロフラニルオキシカルボニル基、2-テトラヒドロピラニルオキシカルボニル基、1-フェニルメトキシエトキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0070】
第5構造単位の具体例としては、下記式(5-1-1)~式(5-1-6)のそれぞれで表される構造単位等が挙げられる。なお、式中、Rは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、シアノ基又はトリフルオロメチル基である。
【化17】
【0071】
[A]重合体成分が第5構造単位を含む場合、[A]重合体成分における第5構造単位の含有割合は、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0072】
その他の構造単位としては、更に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、N-置換マレイミド化合物、複素環構造を有するビニル化合物、共役ジエン化合物、窒素含有ビニル化合物、及び不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の単量体に由来する構造単位等が挙げられる。これらの構造単位を[A]重合体成分に導入することにより、[A]重合体成分のガラス転移温度を調整し、得られる硬化膜のパターン形状、耐薬品性を向上させることができる。
【0073】
その他の構造単位であって、第3構造単位~第5構造単位とは異なる構造単位(以下、「第6構造単位」ともいう)を与える単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル、(メタ)アクリル酸n-ステアリル等を;
脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸2-メチルシクロへキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,5]デカン-8-イルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等を;
芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等を;
芳香族ビニル化合物として、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、t-ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4-ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、N,N-ジメチルアミノメチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2-t-ブチルスチレン、3-t-ブチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、ジフェニルエチレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等を;
N-置換マレイミド化合物として、N-シクロヘキシルマレイミド、N-シクロペンチルマレイミド、N-(2-メチルシクロヘキシル)マレイミド、N-(4-メチルシクロヘキシル)マレイミド、N-(4-エチルシクロヘキシル)マレイミド、N-(2,6-ジメチルシクロヘキシル)マレイミド、N-ノルボルニルマレイミド、N-トリシクロデシルマレイミド、N-アダマンチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-エチルフェニル)マレイミド、N-(2,6-ジメチルフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-ナフチルマレイミド等を、
複素環構造を有するビニル化合物として、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロピラニル、(メタ)アクリル酸5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イルメチル、(メタ)アクリル酸5-メチル-1,3-ジオキサン-5-イルメチル、(メタ)アクリル酸(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル、2-(メタ)アクリロキシメチル-1,4,6-トリオキサスピロ[4,6]ウンデカン、(メタ)アクリル酸(γ-ブチロラクトン-2-イル)、(メタ)アクリル酸グリセリンカーボネート、(メタ)アクリル酸(γ-ラクタム-2-イル)、N-(メタ)アクリロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等を;
共役ジエン化合物として、1,3-ブタジエン、イソプレン等を;
窒素含有ビニル化合物として、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等を;
不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物として、イタコン酸ジエチル等を、それぞれ挙げることができる。また、その他の構造単位与える単量体としては、上記のほか、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル等の単量体が挙げられる。
【0074】
[A]重合体成分が第6構造単位を更に含む場合、第6構造単位の含有割合は、[A]重合体成分のガラス転移温度を適度に高くする観点から、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、第6構造単位の含有割合は、[A]重合体成分を構成する全構造単位に対して、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、45質量%以下が更に好ましい。
【0075】
[A]重合体成分は、例えば、上述した各構造単位を導入可能な不飽和単量体を用い、適当な溶媒中、重合開始剤等の存在下で、ラジカル重合等の公知の方法に従って製造することができる。重合開始剤としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等のアゾ化合物が挙げられる。重合開始剤の使用割合は、反応に使用する単量体の全量100質量部に対して、0.01~30質量部であることが好ましい。重合溶媒としては、例えばアルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、炭化水素類等が挙げられる。重合溶媒の使用量は、反応に使用する単量体の合計量が、反応溶液の全体量に対して、0.1~60質量%になるような量にすることが好ましい。
【0076】
重合において、反応温度は、通常、30℃~180℃である。反応時間は、重合開始剤及び単量体の種類や反応温度に応じて異なるが、通常、0.5~10時間である。重合反応により得られた重合体は、反応溶液に溶解された状態のまま感放射線性組成物の調製に用いられてもよいし、反応溶液から単離された後、感放射線性組成物の調製に用いられてもよい。重合体の単離は、例えば、反応溶液を大量の貧溶媒中に注ぎ、これにより得られる析出物を減圧下乾燥する方法;反応溶液をエバポレーターで減圧留去する方法;等の公知の単離方法により行うことができる。
【0077】
[A]重合体成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、2,000以上であることが好ましい。Mwが2,000以上であると、耐熱性や耐薬品性が十分に高く、かつ良好な現像性を示す硬化膜を得ることができる点で好ましい。[A]重合体成分のMwは、より好ましくは5,000以上であり、更に好ましくは6,000以上であり、特に好ましくは7,000以上である。また、[A]重合体成分のMwは、成膜性を良好にする観点から、好ましくは50,000以下であり、より好ましくは30,000以下であり、更に好ましくは20,000以下であり、特に好ましくは15,000以下である。
【0078】
[A]重合体成分につき、GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、4.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.5以下が更に好ましい。なお、[A]重合体成分が2種以上の重合体からなる場合、各重合体のMw及びMw/Mnがそれぞれ上記範囲を満たすことが好ましい。
【0079】
<[B]光酸発生剤>
[B]光酸発生剤は、放射線照射により酸を発生する化合物であればよく、特に限定されない。[B]光酸発生剤としては、例えば、オキシムスルホネート化合物、オニウム塩、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物等が挙げられる。
【0080】
オキシムスルホネート化合物、オニウム塩、N-スルホニルオキシイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、及びカルボン酸エステル化合物の具体例としては、特開2014-157252号公報の段落0078~0106に記載された化合物、国際公開第2016/124493号に記載された化合物等が挙げられる。[B]光酸発生剤としては、放射線感度の観点から、オキシムスルホネート化合物及びN-スルホニルオキシイミド化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0081】
オキシムスルホネート化合物は、下記式(6)で表されるスルホネート基を有する化合物であることが好ましい。
【化18】
(式(6)中、R50は、1価の炭化水素基、又は当該炭化水素基が有する水素原子の一部若しくは全部が置換基で置換された1価の基である。「*」は結合手であることを表す。)
【0082】
上記式(6)において、R50で表される1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~12のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基等が挙げられる。置換基としては、例えば、炭素数1~5のアルコキシ基、オキソ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等が挙げられる。
【0083】
オキシムスルホネート化合物を例示すると、(5-プロピルスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、(5-オクチルスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、(カンファースルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、(5-p-トルエンスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、(2-[2-(4-メチルフェニルスルホニルオキシイミノ)]-2,3-ジヒドロチオフェン-3-イリデン]-2-(2-メチルフェニル)アセトニトリル)、2-(オクチルスルホニルオキシイミノ)-2-(4-メトキシフェニル)アセトニトリル、国際公開第2016/124493号に記載の化合物、特許第5914663号公報に記載の化合物等が挙げられる。オキシムスルホネート化合物の市販品としては、BASF社製のIrgacure PAG121等が挙げられる。
【0084】
N-スルホニルオキシイミド化合物を例示すると、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(カンファスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(カンファスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(2-フルオロフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(カンファスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、4-メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、トリフルオロメタンスルホン酸-1,8-ナフタルイミド(N-ヒドロキシナフタルイミドトリフラート)が挙げられる。
【0085】
本組成物における[B]光酸発生剤の含有量は、[A]重合体成分100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることが更に好ましい。また、[B]光酸発生剤の含有量は、[A]重合体成分100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることが好ましい。[B]光酸発生剤の含有量を0.01質量部以上とすると、放射線の照射によって酸が十分に生成し、アルカリ溶液に対する露光部と未露光部との溶解度の差を十分に大きくできる。これにより、良好なパターニングを行うことができる。また、[A]重合体成分との反応に関与する酸の量を多くでき、耐熱性及び耐溶剤性を十分に確保できる。一方、[B]光酸発生剤の含有量を20質量部以下とすることにより、露光後において未反応の[B]光酸発生剤の量を十分に少なくでき、[B]光酸発生剤の残存による現像性の低下を抑制できる点で好適である。
【0086】
<その他の成分>
本組成物は、[A]重合体成分及び[B]光酸発生剤と共に、[A]重合体成分及び[B]光酸発生剤とは異なる成分(以下、「その他の成分」ともいう)を更に含有していてもよい。他の成分としては、[C]酸化防止剤、[D]酸拡散制御剤、[E]オルトエステル化合物、[F]架橋剤、[G]密着助剤、[F]溶剤等が挙げられる。
【0087】
([C]酸化防止剤)
[C]酸化防止剤は、露光若しくは加熱により発生したラジカルの捕捉により、又は酸化によって生成した過酸化物の分解により、重合体分子の結合の解裂を抑制する成分である。本組成物が[C]酸化防止剤を含有する場合、硬化膜中における重合体分子の解裂劣化が抑制され、耐光性等を向上できる点で好ましい。
【0088】
[C]酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール構造を有する化合物、ヒンダードアミン構造を有する化合物、アルキルホスファイト構造を有する化合物、チオエーテル構造を有する化合物等が挙げられる。これらのうち、耐光性の改善効果が高い点で、[C]酸化防止剤としてヒンダードフェノール構造を有する化合物を含むことが好ましい。
【0089】
ヒンダードフェノール構造を有する化合物の具体例としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレイト、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N'-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、3,3',3',5',5'-ヘキサ-tert-ブチル-a,a',a'-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミン)フェノール等が挙げられる。
【0090】
ヒンダードフェノール構造を有する化合物の市販品としては、例えば、アデカスタブAO-20、同AO-30、同AO-40、同AO-50、同AO-60、同AO-60G、同AO-70、同AO-80、同AO-330(以上、ADEKA社製);sumilizerGM、同GS、同MDP-S、同BBM-S、同WX-R、同GA-80(以上、住友化学社製);IRGANOX1010、同1035、同1076、同1098、同1135、同1330、同1726、同1425WL、同1520L、同245、同259、同3114、同565、IRGAMOD295(以上、チバジャパン社製);ヨシノックスBHT、同BB、同2246G、同425、同250、同930、同SS、同TT、同917、同314(以上、エーピーアイコーポレーション社製)等が挙げられる。
【0091】
本組成物に[C]酸化防止剤を配合する場合、本組成物における[C]酸化防止剤の含有量は、[A]重合体成分100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることが好ましい。また、[C]酸化防止剤の含有量は、[A]重合体成分100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好まし、5質量部以下であることが好ましい。
【0092】
([D]酸拡散制御剤)
[D]酸拡散制御剤は、露光により[B]光酸発生剤から発生した酸の拡散長を制御する成分である。本組成物に[D]酸拡散制御剤を配合することにより、酸の拡散長を適度に制御することができ、パターン現像性を改善できる点で好ましい。
【0093】
[D]酸拡散制御剤としては、化学増幅レジストにおいて用いられる塩基性化合物の中から任意に選択して使用することができる。塩基性化合物としては、例えば、脂肪酸アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、4級アンモニウムヒドロキシド、カルボン酸4級アンモニウム塩等が挙げられる。塩基性化合物の具体例としては、特開2011-232632号公報の段落0128~段落0147に記載された化合物等が挙げられる。[D]酸拡散制御剤としては、芳香族アミン及び複素環式アミンよりなる群から選択される少なくとも1種を好ましく使用することができる。
【0094】
芳香族アミン及び複素環式アミンとしては、例えば、アニリン、N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、N-プロピルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、2-メチルアニリン、3-メチルアニリン、4-メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、トリメチルアニリン、2-ニトロアニリン、3-ニトロアニリン、4-ニトロアニリン、2,4-ジニトロアニリン、2,6-ジニトロアニリン、3,5-ジニトロアニリン、N,N-ジメチルトルイジン等のアニリン誘導体;イミダゾール、4-メチルイミダゾール、4-メチル-2-フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2-フェニルベンズイミダゾール、トリフェニルイミダゾール、N-(tert-ブトキシカルボニル)-2-フェニルベンゾイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ピロール、2H-ピロール、1-メチルピロール、2,4-ジメチルピロール、2,5-ジメチルピロール、N-メチルピロール等のピロール誘導体;ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、4-(1-ブチルペンチル)ピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フェニルピリジン、3-メチル-2-フェニルピリジン、3-メチル-4-フェニルピリジン、4-tert-ブチルピリジン、ジフェニルピリジン、ベンジルピリジン、メトキシピリジン、ブトキシピリジン、ジメトキシピリジン、1-メチル-2-ピリドン、4-ピロリジノピリジン、1-メチル-4-フェニルピリジン、2-(1-エチルプロピル)ピリジン、アミノピリジン、ジメチルアミノピリジン、ニコチン等のピリジン誘導体のほか、特開2011-232632号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0095】
本組成物に[D]酸拡散制御剤を配合する場合、[D]酸拡散制御剤の含有量は、[D]酸拡散制御剤によるパターン現像性の改善効果を十分に得る観点から、[A]重合体成分100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.005質量部以上であることがより好ましく、0.01質量部以上であることが更に好ましい。また、[D]酸拡散制御剤の含有量は、[A]重合体成分100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることが更に好ましい。
【0096】
([E]オルトエステル化合物)
[E]オルトエステル化合物は、「-OR60」で表される基(ただし、R60は1価の炭化水素基である)が同一の炭素に3個結合した構造を有する化合物であり、一般式:R61-C(OR60で表される。ここで、R61は、水素原子又は1価の有機基である。[E]オルトエステル化合物は、酸の存在下で吸水性を発現し、加水分解してエステルに変わる。このため、[E]オルトエステル化合物を本組成物に配合することにより、[B]光酸発生剤から発生した酸(換言すれば、放射線の照射)により[E]オルトエステル化合物の吸水作用が発現され、[E]オルトエステル化合物の吸水作用によって塗膜の現像密着性を向上させることができる。また、[E]オルトエステル化合物は、アルカリ現像液に対し安定で疎水的であり、未露光部に及ぼす影響(例えば、感度への影響)も少ない点で好ましい。
【0097】
「-OR60」で表される基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、フェノキシ基、メチルフェニル基等が挙げられる。これらのうち、「-OR60」で表される基は、アルコキシ基が好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基がより好ましい。同一分子内の3個の基「-OR60」は、同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。
【0098】
61としては、例えば、水素原子、1価の鎖状炭化水素基、1価のハロゲン化鎖状炭化水素基、1価の芳香環基等が挙げられる。これらのうち、R61は、水素原子、1価の鎖状炭化水素基又は1価の芳香環基が好ましく、具体的には、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基が挙げられる。
【0099】
[E]オルトエステル化合物の具体例としては、オルトクロロ酢酸トリエチル、オルト蟻酸トリメチル、オルト蟻酸トリエチル、オルト蟻酸トリプロピル、オルト蟻酸トリイソプロピル、オルト蟻酸トリブチル、オルト蟻酸ジエチルフェニル、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルトジクロロ酢酸トリエチル、オルト酪酸トリメチル、オルト酪酸トリエチル、オルトプロピオン酸トリメチル、オルトプロピオン酸トリエチル、オルト吉草酸トリメチル、オルト吉草酸トリエチル、オルトイソ酪酸トリメチル、オルト安息香酸トリメチル、オルト安息香酸トリエチル等が挙げられる。
【0100】
[E]オルトエステル化合物としては、上記の中でも、塗膜の現像密着性をより高くできる点で、芳香環基を有する化合物を好ましく使用できる。芳香環基を有するオルトエステル化合物の具体例としては、オルト安息香酸トリメチル、オルト安息香酸トリエチル、オルト蟻酸ジエチルフェニル等を挙げることができる。これらのうち、塗膜の現像密着性の改善効果が高い点、及び感度をより良好に維持できる点で、オルト安息香酸トリメチル及びオルト安息香酸トリエチルが好ましい。
【0101】
また、[E]オルトエステル化合物としては、沸点がプレベーク温度よりも高温である化合物を好ましく使用することができる。プレベーク温度に対し十分に高い沸点を有するオルトエステル化合物を用いることにより、塗膜の現像密着性をより高めることができる。具体的には、[E]オルトエステル化合物の沸点は、105℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、115℃以上であることが更に好ましい。
【0102】
沸点が105℃以上であるオルトエステル化合物の具体例としては、オルト蟻酸トリエチル、オルト蟻酸トリプロピル、オルト蟻酸トリブチル、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルトジクロロ酢酸トリエチル、オルト酪酸トリメチル、オルトプロピオン酸トリメチル、オルトプロピオン酸トリエチル、オルト吉草酸トリメチル、オルト安息香酸トリメチル、オルト安息香酸トリエチル等が挙げられる。なお、本明細書において沸点は1気圧下での値である。
【0103】
本組成物において、[E]オルトエステル化合物の含有量は、[A]重合体成分100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることが更に好ましい。また、[E]オルトエステル化合物の含有量は、[A]重合体成分100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。[E]オルトエステル化合物の含有量が0.1質量部以上である場合、[E]オルトエステル化合物を膜中に存在させることによる塗膜の現像密着性の改善効果を十分に得ることができる点で好ましい。また、[E]オルトエステル化合物の含有量が30質量部以下である場合、[E]オルトエステル化合物に起因する感度の低下を抑制することができる点で好ましい。
【0104】
([F]架橋剤)
[F]架橋剤としては、シラノール化合物及びアルコキシシラン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物(以下、「架橋性シラン化合物」ともいう。)を好ましく用いることができる。架橋性シラン化合物は、低誘電率であって、かつ現像密着性に優れた膜を得る観点から、下記式(7)で表される化合物であることが好ましい。また、下記式(7)で表されるシラン化合物は、アルカリ現像液に対し安定で疎水的であり、未露光部に及ぼす影響(例えば、感度への影響)も少ない点で好ましい。
(R70Si(OR714-k …(7)
(式(7)中、R70は疎水性基である。R71は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。kは1~3の整数である。R70が複数存在する場合、複数のR70は同一又は異なる。R71が複数存在する場合、複数のR71は同一又は異なる。)
【0105】
上記式(7)において、R70で表される疎水性基としては、1価の炭化水素基、1価のフッ素化炭化水素基等を挙げることができる。これらの中でも、R70で表される疎水性基は1価の炭化水素基が好ましく、例えば炭素数1~12の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3~12の1価の脂環式炭化水素基、炭素数1~12の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。これらのうち、R70は、1価の鎖状炭化水素基又は1価の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基がより好ましい。
71は、水素原子、メチル基又はエチル基が好ましい。
上記式(7)中のkは、硬化膜の現像密着性及び低誘電率化の効果をより高くできる点で、1又は2が好ましい。
【0106】
架橋性シラン化合物のうち、シラノール化合物の具体例としては、例えば、トリメチルシラノール、エチルジメチルシラノール、ジエチルメチルシラノール、トリエチルシラノール、メチルシラントリオール、ジフェニルシランジオール、フェニルシラントリオール、トリフェニルシラノール、ビス(4-トリル)シランジオール、トリス(4-トリル)シラノール等の水酸基を有するシラノール化合物が挙げられる。
【0107】
架橋性シラン化合物のうち、3官能のアルコキシシラン化合物としては、トリメトキシ(メチル)シラン、トリエトキシ(メチル)シラン、メチルトリプロポキシシラン、トリブトキシ(メチル)シラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、トリエトキシ(エチル)シラン、エチルトリプロポキシシラン、トリブトキシ(エチル)シラン、エチルトリフェノキシシラン、トリメトキシ(プロピル)シラン、トリエトキシ(プロピル)シラン、トリプロポキシ(プロピル)シラン、トリブトキシ(プロピル)シラン、トリフェノキシ(プロピル)シラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、トリブトキシ(ブチル)シラン、ブチルトリフェノキシシラン、トリメトキシ(フェニル)シラン、トリエトキシ(フェニル)シラン、フェニルトリプロポキシシラン、トリブトキシ(フェニル)シラン、トリフェノキシ(フェニル)シラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリプロポキシシラン、シクロヘキシルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリフェノキシシラン等を用いることができる。
【0108】
また、架橋性シラン化合物のうち、2官能性のアルコキシシラン化合物としては、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシル(ジメトキシ)メチルシラン、シクロヘキシルジエトキシメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン等を好ましく用いることができる。
【0109】
本組成物を用いて膜を形成する際には、通常、本組成物からなる塗布膜を加熱(プレベーク)することにより、本組成物に含まれる溶剤成分を除去する処理が行われる。したがって、プレベーク時に架橋性シラン化合物の揮発を抑制し、プレベーク後の膜中に架橋性シラン化合物を多く残存させる観点から、架橋性シラン化合物としては、沸点が十分に高い化合物を好ましく使用できる。具体的には、架橋性シラン化合物の沸点は、80℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが更に好ましく、150℃以上であることがより更に好ましく、180℃以上であることが一層好ましい。
【0110】
また、本組成物に配合する架橋性シラン化合物を、プレベーク温度に応じて選択することもできる。具体的には、架橋性シラン化合物の沸点は、プレベーク温度よりも5℃以上高いことが好ましく、10℃以上高いことがより好ましく、20℃以上高いことが更に好ましく、30℃以上高いことがより更に好ましく、50℃以上高いことが一層好ましい。
【0111】
架橋性シラン化合物としては、上記の中でも、高沸点かつ高疎水性であり、硬化膜の現像密着性及び低誘電率化の改善効果を高くできる点において、芳香環を有する化合物を好ましく使用でき、芳香環を1分子内に2個以上有する化合物をより好ましく使用することができる。
【0112】
[F]架橋剤の分子量は、90以上が好ましく、100以上がより好ましく、150以上が更に好ましい。また、[F]架橋剤の分子量は、500以下が好ましく、450以下がより好ましく、400以下が更に好ましい。[F]架橋剤の分子量が上記範囲であると、本組成物の感度及び現像溶解性の低下を抑制しながら、硬化膜の現像密着性を高くでき、また低誘電率化を図ることができる点で好適である。
【0113】
本組成物において、[F]架橋剤の含有量は、[A]重合体成分100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることが更に好ましい。また、[F]架橋剤の含有量は、[A]重合体成分100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。[F]架橋剤の含有量が0.5質量部以上である場合、塗膜の現像密着性及び低誘電率化の改善効果を十分に得ることができる点で好ましい。また、[F]架橋剤の含有量が30質量部以下である場合、[F]架橋剤に起因する感度の低下を抑制することができる点で好ましい。
【0114】
([G]密着助剤)
[G]密着助剤は、本組成物を用いて形成される硬化膜と基板との接着性を向上させる成分である。[G]密着助剤としては、反応性官能基を有する官能性シランカップリング剤を好ましく使用できる。官能性シランカップリング剤が有する反応性官能基としては、カルボキシ基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、イソシアネート基等が挙げられる。
【0115】
官能性カップリング剤の具体例としては、例えば、トリメトキシシリル安息香酸、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-イソシアナートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0116】
本組成物における[G]密着助剤の含有割合は、[A]重合体成分100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0117】
([H]溶剤)
本組成物は、[A]重合体成分、[B]光酸発生剤及び任意に配合される他の成分が、好ましくは[H]溶剤に溶解又は分散された液状の組成物である。[H]溶剤としては、本組成物に配合される各成分を溶解し、かつ各成分と反応しない有機溶媒が好ましい。
【0118】
[H]溶剤の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレンジグリコールモノメチルエーテル、エチレンジグリコールエチルメチルエーテル、ジメチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素が挙げられる。これらのうち、溶剤は、エーテル類及びエステル類よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコール類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、及びプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートよりなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0119】
その他の成分としては、上記のほか、例えば、多官能重合性化合物(多官能(メタ)アクリレート等)、キノンジアジド化合物、界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等)、重合禁止剤、酸化防止剤、連鎖移動剤等が挙げられる。これらの成分の配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲で各成分に応じて適宜選択され得る。
【0120】
本組成物は、その固形分濃度(感放射線性組成物中の[H]溶剤以外の成分の合計質量が、感放射線性組成物の全質量に対して占める割合)は、粘性や揮発性等を考慮して適宜に選択される。本組成物の固形分濃度は、好ましくは5~60質量%の範囲である。固形分濃度が5質量%以上であると、本組成物を基板上に塗布した際に塗膜の膜厚を十分に確保できる。また、固形分濃度が60質量%以下であると、塗膜の膜厚が過大となりすぎず、さらに感放射線性組成物の粘性を適度に高くでき、良好な塗布性を確保できる。本組成物の固形分濃度は、より好ましくは10~55質量%であり、さらに好ましくは12~50質量%である。
【0121】
《硬化膜及びその製造方法》
本発明の硬化膜は、上記のようにして調製された感放射線性組成物により形成される。上記感放射線性組成物は、放射線感度が高く、保存安定性に優れている。また、当該感放射線性組成物を用いることにより、現像後にも基板に対して高い密着性を示し、低誘電率であり、かつ耐薬品性に優れたパターン膜を形成することができる。したがって、上記感放射線性組成物は、例えば、層間絶縁膜、平坦化膜、スペーサー、保護膜、カラーフィルタ用着色パターン膜、隔壁、バンク等の形成材料として好ましく用いることができる。
【0122】
硬化膜の製造に際し、上記の感放射線性組成物を用いることにより、感光剤の種類に応じてポジ型の硬化膜を形成することができる。硬化膜は、上記感放射線性組成物を用いて、例えば以下の工程1~工程4を含む方法により製造することができる。
(工程1)上記感放射線性組成物を用いて塗膜を形成する工程。
(工程2)上記塗膜の少なくとも一部を露光する工程。
(工程3)露光後の塗膜を現像する工程。
(工程4)現像された塗膜を加熱する工程。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0123】
[工程1:塗布工程]
工程1では、膜を形成する面(以下、「被成膜面」ともいう)に上記感放射線性組成物を塗布し、好ましくは加熱処理(プレベーク)を行うことにより溶媒を除去して被成膜面上に塗膜を形成する。被成膜面の材質は特に限定されない。例えば、層間絶縁膜を形成する場合、TFT等のスイッチング素子が設けられた基板上に上記感放射線性組成物を塗布し、塗膜を形成する。基板としては、例えば、ガラス基板、シリコン基板、樹脂基板が用いられる。塗膜を形成する基板の表面には、用途に応じた金属薄膜が形成されていてもよく、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理等の各種表面処理が施されていてもよい。
【0124】
感放射線性組成物の塗布方法としては、例えば、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット法等が挙げられる。これらの中でも、スピンコート法、スリットダイ塗布法又はバー塗布法により行うことが好ましい。プレベーク条件としては、感放射線性組成物における各成分の種類及び含有割合等によっても異なるが、例えば60~130℃で0.5~10分である。形成される塗膜の膜厚(すなわち、プレベーク後の膜厚)は、0.1~12μmが好ましい。被成膜面に塗布した感放射線組成物に対しては、プレベーク前に減圧乾燥(VCD)を行ってもよい。
【0125】
[工程2:露光工程]
工程2では、上記工程1で形成した塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する。このとき、塗膜に対し、所定のパターンを有するマスクを介して放射線を照射することにより、パターンを有する硬化膜を形成することができる。放射線としては、例えば、紫外線、遠紫外線、可視光線、X線、電子線等の荷電粒子線が挙げられる。これらの中でも紫外線が好ましく、例えばg線(波長436nm)、i線(波長365nm)が挙げられる。放射線の露光量としては、0.1~20,000J/mが好ましい。
【0126】
[工程3:現像工程]
工程3では、上記工程2で放射線を照射した塗膜を現像する。具体的には、工程2で放射線が照射された塗膜に対し、現像液により現像を行って放射線の照射部分を除去するポジ型現像を行う。現像液としては、例えば、アルカリ(塩基性化合物)の水溶液が挙げられる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、特開2016-145913号公報の段落[0127]に例示されたアルカリが挙げられる。アルカリ水溶液におけるアルカリ濃度としては、適度な現像性を得る観点から、0.1~5質量%が好ましい。現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、シャワー法等の適宜の方法が挙げられる。現像時間は、組成物の組成によっても異なるが、例えば30~120秒である。なお、現像工程の後、パターニングされた塗膜に対して流水洗浄によるリンス処理を行うことが好ましい。
【0127】
[工程4:加熱工程]
工程4では、上記工程3で現像された塗膜を加熱する処理(ポストベーク)を行う。ポストベークは、例えばオーブンやホットプレート等の加熱装置を用いて行うことができる。ポストベーク条件について、加熱温度は、例えば120~250℃である。加熱時間は、例えばホットプレート上で加熱処理を行う場合には5~40分、オーブン中で加熱処理を行う場合には10~80分である。以上のようにして、目的とするパターンを有する硬化膜を基板上に形成することができる。硬化膜が有するパターンの形状は特に限定されず、例えば、ライン・アンド・スペースパターン、ドットパターン、ホールパターン、格子パターンが挙げられる。
【0128】
本組成物を硬化することにより、比誘電率が3.3以下と十分に低い硬化膜を得ることができる。なお、硬化膜の比誘電率は、本組成物に対し、積算露光量9,000J/mの条件で紫外線を照射し、220℃で1時間加熱することにより得られる硬化膜の周波数10kHzで測定した値である。硬化膜の比誘電率の測定方法の詳細については、後述する実施例に記載の方法に従う。
【0129】
なお、感放射線性組成物中の重合体成分が第1構造単位を含む場合、露光によって上記式(1)中の酸解離性基(Y)が脱離することにより第1構造単位中に水酸基が生じ、これに起因して硬化膜の誘電率が高くなることが考えられる。この点、第1構造単位を含む重合体成分に対し比較的少量の第2構造単位を導入することにより、露光によって第1構造単位中に生じた水酸基と、第2構造単位中の官能基(具体的には、露光によって生じたシラノール基)とが架橋し、これにより低誘電率であって、しかも透明性の高い硬化膜を形成できたものと考えられる。なお、これはあくまで推測であり、本発明を何ら限定するものではない。
【0130】
<半導体素子>
本開示の半導体素子は、本組成物を用いて形成された硬化膜を備える。当該硬化膜は、好ましくは、半導体素子中の配線間を絶縁する層間絶縁膜である。本開示の半導体素子は、公知の方法を用いて製造することができる。
【0131】
<表示素子>
本開示の表示素子は、本組成物を用いて形成された硬化膜を備える。また、本開示の表示素子は、本開示の半導体素子を備えることにより、本組成物を用いて形成された硬化膜を備えるものであってもよい。また更に、本開示の表示素子は、本組成物を用いて形成された硬化膜として、TFT基板上に形成される平坦化膜を備えていてもよい。表示素子としては、例えば、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示素子が挙げられる。
【0132】
以上詳述した本開示によれば、次の手段が提供される。
<手段1> [A]上記式(1)で表される部分構造を有する第1構造単位と、上記式(2)で表される部分構造を有する第2構造単位とを、同一分子内又は異なる分子内に含む重合体成分と、[B]光酸発生剤と、を含有し、前記重合体成分の全構造単位に対して、前記第1構造単位を5~50質量%含み、前記第2構造単位を0.1~20質量%含む、感放射線性組成物。
<手段2> 前記光酸発生剤は、オキシムスルホネート化合物及びN-スルホニルオキシイミド化合物よりなる群から選択される少なくとも1種である、<手段1>に記載の感放射線性組成物。
<手段3> 前記Yは、上記式(Y-1)、式(Y-2)又は式(Y-3)で表される、<手段1>又は<手段2>に記載の感放射線性組成物。
<手段4> 前記Arは、置換又は無置換のフェニレン基、ナフチレン基又はアントリレン基である、<手段1>~<手段3>のいずれかに記載の感放射線性組成物。
<手段5> 前記重合体成分は、マレイミドに由来する構造単位及び酸基を有する構造単位よりなる群から選択される少なくとも1種を更に含む、<手段1>~<手段4>のいずれかに記載の感放射線性組成物。
<手段6> 前記重合体成分は、架橋性基を有する構造単位(ただし、前記第1構造単位及び前記第2構造単位を除く。)を更に含む、<手段1>~<手段5>のいずれかに記載の感放射線性組成物。
<手段7> 更に、オルトエステル化合物を含有する、<手段1>~<手段6>のいずれかに記載の感放射線性組成物。
<手段8> <手段1>~<手段7>のいずれかに記載の感放射線性組成物を用いて形成された硬化膜。
<手段9> 周波数10kHzにおける比誘電率が3.3以下である、<手段8>に記載の硬化膜。
<手段10> <手段1>~<手段7>のいずれかに記載の感放射線性組成物を用いて塗膜を形成する工程と、前記塗膜の少なくとも一部を露光する工程と、露光後の塗膜を現像する工程と、現像された前記塗膜を加熱する工程と、を含む、硬化膜の製造方法。
<手段11> <手段8>に記載の硬化膜を備える半導体素子。
<手段12> <手段8>に記載の硬化膜を備える表示素子。
【実施例
【0133】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。本実施例において、重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は以下の方法により測定した。
【0134】
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
重合体のMw及びMnは、下記方法により測定した。
・測定方法:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法
・装置:昭和電工社のGPC-101
・GPCカラム:島津ジーエルシー社のGPC-KF-801、GPC-KF-802、GPC-KF-803及びGPC-KF-804を結合
・移動相:テトラヒドロフラン
・カラム温度:40℃
・流速:1.0mL/分
・試料濃度:1.0質量%
・試料注入量:100μL
・検出器:示差屈折計
・標準物質:単分散ポリスチレン
【0135】
[単量体]
重合体の合成に用いた単量体の略称は以下のとおりである。
《第1構造単位を与える単量体》
TMSPIPE:4-イソプロペニルフェニルオキシトリメチルシラン
TESPIPE:4-イソプロペニルフェニルオキシトリエチルシラン
TMSPHS:4-ビニルフェニルオキシトリメチルシラン
TMSOPMI:4-トリメチルシリルオキシ-N-フェニルマレイミド
TMSOPMA:4-トリメチルシリルオキシフェニルメタクリレート
EOEPIPE:1-(4-イソプロペニルフェニルオキシ)-1-エトキシエタン
BocPIPE:(4-イソプロペニルフェニル)-(1,1-ジメチルエチル)カーボネート
【0136】
《第2構造単位を与える単量体》
MPTMS:メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
APTMS:アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
MPTES:メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン
STTMS:4-ビニルフェニルトリメトキシシラン
VTES:ビニルトリエトキシシラン
【0137】
《第3構造単位を与える単量体》
MA:メタクリル酸
MI:マレイミド
4IPP:4-イソプロペニルフェノール
HPMA:ヒドロキシフェニルメタクリレート
【0138】
《第4構造単位を与える単量体》
GA:アクリル酸グリシジル
GMA:メタクリル酸グリシジル
ECHMA:3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート
OXMA:3-メタクリロイルオキシメチル-3-エチルオキセタン
EDCPMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル[3,4-エポキシトリシクロ(5.2.1.0^2,6)デカン-9-イル]
【0139】
《第5構造単位を与える単量体》
TMSMA:メタクリル酸トリメチルシリル
M-THP:テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルメタクリレート
M-THF:メタクリル酸2-テトラヒドロフラニル
【0140】
《その他の単量体》
MMA:メタクリル酸メチル
CHMI:N-シクロヘキシルマレイミド
PMI:N-フェニルマレイミド
ST:スチレン
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
【0141】
<重合体成分(A)の合成>
[合成例1]重合体(A-1)の合成
冷却管及び撹拌機を備えたフラスコに、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)10部及びジエチレングリコールメチルエチルエーテル200部を仕込んだ。引き続き、4-イソプロペニルフェニルオキシトリメチルシラン15部、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン5部、マレイミド15部、アクリル酸グリシジル10部、メタクリル酸メチル45部、及び、N-シクロヘキシルマレイミド10部を仕込み、窒素置換した後、緩やかに撹拌しつつ、溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を5時間保持することにより、重合体(A-1)を含有する重合体溶液を得た。この重合体溶液の固形分濃度を30質量%に調整した。重合体(A-1)のMwは10,500、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。
【0142】
[合成例2~22、比較合成例1~5]重合体(A-2)~(A-22)、(CA-1)~(CA-5)の合成
表1に示す種類及び配合量(質量部)の各成分を用いたこと以外は合成例1と同様の手法にて、重合体(A-1)と同等の固形分濃度、重量平均分子量及び分子量分布を有する重合体をそれぞれ含む重合体溶液を得た。
【0143】
【表1】
【0144】
<感放射線性組成物の調製(1)>
感放射線性組成物の調製に用いた成分を以下に示す。
《[A]重合体成分》
A-1~A-22:合成例1~22で合成した重合体(A-1)~(A-22)
CA-1~CA-5:比較合成例1~5で合成した重合体(CA-1)~(CA-5)
【0145】
《[B]光酸発生剤》
B-1:NIT(N-ヒドロキシナフタルイミドトリフラート)
B-2:Irgacure PAG121(BASF社製)
B-3:国際公開第2016/124493号に記載のOS-17
B-4:国際公開第2016/124493号に記載のOS-25
B-5:特許第5914663号公報に記載のB-9
【0146】
《[C]酸化防止剤》
C-1:アデカスタブAO-20(ADEKA社製)
C-2:アデカスタブAO-60(ADEKA社製)
C-3:アデカスタブAO-330(ADEKA社製)
【0147】
《[D]酸拡散制御剤》
D-1:2-フェニルベンゾイミダゾール
D-2:N-(tert-ブトキシカルボニル)-2-フェニルベンゾイミダゾール
【0148】
《[E]オルトエステル化合物》
E-1:オルトギ酸トリメチル
E-2:オルト酢酸トリエチル
E-3:オルト安息香酸トリメチル
【0149】
《架橋剤(F)》
F-1:シクロヘキシルトリメトキシシラン
F-2:メチルフェニルジエトキシシラン
F-3:ジメトキシジフェニルシラン
F-4:ジフェニルシランジオール
F-5:ジシクロペンチルジメトキシシラン
F-6:ジイソブチルジメトキシシラン
【0150】
[実施例1]
上記合成例1で得られた重合体(A-1)を含有する重合体溶液に、重合体(A-1)100部(固形分)に相当する量に対して、光酸発生剤(B-1)3部、酸化防止剤(C-1)1部、酸拡散制御剤(D-1)0.01部、オルトエステル化合物(E-1)1部、及び、架橋剤(F-1)1部を混合し、最終的な固形分濃度が20質量%になるように、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを1:1の質量比で添加した。次いで、孔径0.2μmのメンブランフィルタで濾過して、感放射線性組成物(S-1)を調製した。
【0151】
[実施例2~25、比較例1~5]
表2に示す種類及び配合量(質量部)の各成分を用いたこと以外は実施例1と同様の手法にて、実施例2~25、比較例1~5の感放射線性組成物をそれぞれ調製した。
【0152】
【表2】
【0153】
<評価>
実施例1~25及び比較例1~5の感放射線性組成物を用いて、以下に説明する手法により下記項目を評価した。評価結果を表3に示す。
【0154】
[放射線感度]
スピンナーを用い、60℃で60秒間HMDS処理したシリコン基板上に感放射線性組成物を塗布した後、90℃にて2分間ホットプレート上でプレベークして平均膜厚3.0μmの塗膜を形成した。この塗膜に、幅10μmのライン・アンド・スペースパターンを有するパターンマスクを介して、水銀ランプによって所定量の紫外線を照射した。次いで、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38質量%水溶液を現像液として用いて、25℃で60秒間、現像処理を行った後、超純水で1分間流水洗浄を行った。このとき、幅10μmのライン・アンド・スペースパターンを形成可能な最小露光量を測定し、最小露光量により放射線感度を評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:最小露光量の測定値が300J/m未満であり、放射線感度が良好
×:最小露光量の測定値が300J/m以上であり、放射線感度が不良
【0155】
[比誘電率]
サイザルバフ(麻バフ)により研磨して表面を平滑化したSUS304製基板上に、感放射線性組成物を塗布した後、到達圧力を100Paに設定して真空下で溶媒を除去した。その後、更に90℃において2分間プレベークして平均膜厚3.0μmの塗膜を形成した。得られた塗膜に対し、露光機(キヤノン社製の「MPA-600FA」)で積算照射量が9,000J/mとなるように露光し、露光後の塗膜を有する基板をクリーンオーブン内にて220℃で1時間加熱することによって基板上に絶縁膜を形成した。この絶縁膜上に、蒸着法によりPt/Pd電極パターンを形成して誘電率測定用サンプルを作製した。この電極パターンを有する基板につき、横河・ヒューレットパッカード社製のHP16451B電極及びHP4284AプレシジョンLCRメーターを用いて、周波数10kHzでCV法により比誘電率の測定を行った。評価基準は以下のとおりである。
○:測定値が3.3以下
×:測定値が3.3を超える
【0156】
[透過率(透明性)]
スピンナーを用い、ガラス基板上に感放射線性組成物を塗布した後、90℃にて2分間ホットプレート上でプレベークして膜厚3.0μmの塗膜を形成した。得られた塗膜に水銀ランプによって積算照射量が3,000J/mとなるように紫外線を照射した。次いで、このガラス基板をホットプレート上にて200℃で30分間加熱して硬化膜を得た。得られた硬化膜の透過率を紫外可視分光光度計(日本分光社製の「V-630」)を用いて測定した。評価基準は以下のとおりである。
○:波長400nmの光の透過率が97%以上であり透明性が良好
×:波長400nmの光の透過率が97%未満であり透明性が不良
【0157】
[保存安定性]
調製した感放射線性組成物を遮光・密閉性の容器に封入した。25℃で7日間経過後、容器を開封し、保管前の[放射線感度]の測定で求めた幅10μmのライン・アンド・スペースパターンを形成可能な最小露光量を上記の[放射線感度]と同様の手順により照射し、7日間保管前後での同一露光量に対する線幅の増加率を計算した。評価基準は以下のとおりである。
○:増加量が10%未満であり保存安定性が良好
×;増加量が10%以上であり保存安定性が不良
【0158】
[アウトガス特性]
スピンナーを用い、シリコン基板上に感放射線性組成物を塗布した後、90℃にて2分間ホットプレート上でプレベークして平均膜厚3.0μmの塗膜を形成した。さらに、230℃に加温したオーブンを用いて30分間焼成し、硬化膜を形成した。続いて、シリコン基板を1cm×5cmの大きさにカットした後、日本分析工業社製JTD-505と島津製作所社製GC-QP-2010とからなるP&T-GCMS装置を用いて、230℃で15分間ベークを行い、クロマトグラムを得た。硬化膜を測定試料とした場合のクロマトグラムのC18のピーク面積と、別途同装置を用いて測定した標準試料C18のクロマトグラムのピーク面積を用いて、下記数式(I)よりアウトガス量を算出した。なお、下記数式(I)中、「標準試料の導入量」とは、標準試料C18のクロマトグラムを得る際に装置に導入した標準試料の導入量のことである。
アウトガス量(μg)=(硬化膜のクロマトグラムのピーク面積/標準試料のクロマトグラムのピーク面積)×標準試料の導入量(μg) …(I)
算出したアウトガス量を用い、以下の基準によりアウトガス特性を評価した。
○:アウトガス量が10μg未満でありアウトガス特性が良好
×:アウトガス量が10μg以上でありアウトガス特性が不良
【0159】
[パターン形状性(テーパー形状)]
スピンナーを用い、60℃で60秒間HMDS処理したシリコン基板上に感放射線性組成物を塗布した後、90℃にて2分間ホットプレート上でプレベークして平均膜厚3.0μmの塗膜を形成した。この塗膜に、幅10μmのライン・アンド・スペースパターンを有するパターンマスクを介して、水銀ランプによって所定量の紫外線を照射した。次いで、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38質量%水溶液を現像液として用いて、25℃で60秒間、現像処理を行い、その後、超純水で1分間流水洗浄を行った。さらに、230℃に加温したオーブンを用いて30分間焼成し、硬化膜を形成した。シリコン基板を1cm×1cmの大きさにカットした後、日立ハイテク社製走査型電子顕微鏡Regulus8100を用いてライン・アンド・スペースパターンの断面形状を観察し、テーパー角を求めた。テーパー角により以下の基準によりパターン形状性を評価した。
○:テーパー角が50度以上でありテーパー形状が良好
×:テーパー角が50度未満でありテーパー形状が不良
【0160】
【表3】
【0161】
表3に示されるように、実施例1~25の各感放射線性組成物は、実用特性として放射線感度、比誘電率、透過率、保存安定性、アウトガス特性及びパターン形状性の評価がいずれも良好であり、各種特性のバランスが取れていた。これに対し、比較例1~3では膜の比誘電率が低く、比較例1についてはパターン形状性も不良であった。また、比較例4では膜の透過率が低く、比較例5では、放射線感度及びパターン形状性に劣る結果であった。
【要約】
【課題】放射線感度に優れ、かつ低誘電率であって透明性に優れた硬化膜を形成することができる感放射線性組成物を提供すること。
【解決手段】[A]式(1)で表される部分構造を有する第1構造単位と、式(2)で表される部分構造を有する第2構造単位とを、同一分子内又は異なる分子内に含む重合体成分と、[B]光酸発生剤と、を含有し、重合体成分の全構造単位に対して、第1構造単位を5~50質量%含み、第2構造単位を0.1~20質量%含む感放射線性組成物とする。式(1)中、Arは2価の芳香環基である。Yは酸解離性基である。式(2)中、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキル基、又はフェニル基である。ただし、R、R及びRのうち1つ以上は、炭素数1~6のアルコキシ基である。「*」は、炭素原子に結合する結合手を表す。
【選択図】なし