(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】燃焼装置およびボイラ
(51)【国際特許分類】
F23J 7/00 20060101AFI20240409BHJP
F23C 1/12 20060101ALI20240409BHJP
F23D 1/00 20060101ALI20240409BHJP
F23D 17/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
F23C99/00 317
F23C1/12
F23D1/00 B
F23D17/00 103
(21)【出願番号】P 2023500576
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2021046067
(87)【国際公開番号】W WO2022176353
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2021025117
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小崎 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】大野 恵美
(72)【発明者】
【氏名】越前屋 誠
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-174051(JP,A)
【文献】特開2019-086189(JP,A)
【文献】特開2019-203631(JP,A)
【文献】特公昭59-041084(JP,B2)
【文献】特公昭57-012922(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2018/0216828(US,A1)
【文献】特開平06-347018(JP,A)
【文献】米国特許第05326536(US,A)
【文献】特開2022-091595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 1/00 - 99/00
F23C 1/00 - 99/00
F23J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炉の内部空間に噴射口が臨むアンモニア噴射ノズル
と、前記火炉の前記内部空間に噴射口が臨む微粉炭噴射ノズルとを有するバーナと、
前記
アンモニア噴射ノズルの噴射口と前記内部空間との離隔距離を調整する調整機構と、
前記微粉炭噴射ノズルにおける微粉炭の流量に基づいて、前記調整機構の動作を制御する制御装置と、
を備える、
燃焼装置。
【請求項2】
火炉の内部空間に噴射口が臨むアンモニア噴射ノズルを有するバーナと、
前記
アンモニア噴射ノズルの噴射口と前記内部空間との離隔距離を調整する調整機構と、
前記火炉の前記内部空間に噴射口が臨む空気供給部と、
前記空気供給部における空気の流量に基づいて、前記調整機構の動作を制御する制御装置と、
を備える、
燃焼装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記アンモニア噴射ノズルにおけるアンモニアの流量が小さいほど、前記
アンモニア噴射ノズルの噴射口が前記火炉の内側に向かう方向に移動するように、前記調整機構の動作を制御す
る、
請求項1
または2に記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記火炉の前記内部空間における温度に基づいて、前記調整機構の動作を制御す
る、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の燃焼装置。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の燃焼装置を備えるボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼装置およびボイラに関する。本出願は2021年2月19日に提出された日本特許出願第2021-025117号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
ボイラ等の火炉に設けられるバーナにおいて、アンモニアを燃料として噴射するアンモニア噴射ノズルを有するバーナがある。アンモニアを燃料として用いることによって、二酸化炭素の排出量の削減が図られる。例えば、特許文献1には、微粉炭とアンモニアとを燃料として混焼させるバーナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アンモニア噴射ノズルを有するバーナでは、アンモニア噴射ノズルから噴射されたアンモニアが火炎の還元領域(つまり、還元対象である窒素酸化物(以下、NOxとも呼ぶ)が還元される領域)に到達することによってNOxが還元される。ここで、作動条件によっては、噴射されたアンモニアが火炎の還元領域に十分には供給されなくなり、排気される燃焼ガス中のNOxが増加するおそれがある。そこで、NOxを低減するための新たな提案が望まれている。
【0005】
本開示の目的は、窒素酸化物(NOx)を低減することが可能な燃焼装置およびボイラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の燃焼装置は、火炉の内部空間に噴射口が臨むアンモニア噴射ノズルと、火炉の内部空間に噴射口が臨む微粉炭噴射ノズルとを有するバーナと、アンモニア噴射ノズルの噴射口と内部空間との離隔距離を調整する調整機構と、微粉炭噴射ノズルにおける微粉炭の流量に基づいて、調整機構の動作を制御する制御装置と、を備える。
上記課題を解決するために、本開示の燃焼装置は、火炉の内部空間に噴射口が臨むアンモニア噴射ノズルを有するバーナと、アンモニア噴射ノズルの噴射口と内部空間との離隔距離を調整する調整機構と、火炉の内部空間に噴射口が臨む空気供給部と、空気供給部における空気の流量に基づいて、調整機構の動作を制御する制御装置と、を備える。
【0007】
制御装置は、アンモニア噴射ノズルにおけるアンモニアの流量が小さいほど、アンモニア噴射ノズルの噴射口が火炉の内側に向かう方向に移動するように、調整機構の動作を制御してもよい。
【0010】
制御装置は、火炉の内部空間における温度に基づいて、調整機構の動作を制御してもよい。
【0011】
上記課題を解決するために、本開示のボイラは、上記の燃焼装置を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、窒素酸化物(NOx)を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るボイラを示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る燃焼装置を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る制御装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るバーナによって形成される火炎を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係るアンモニア噴射ノズルの噴射口が
図4の例と比べて火炉に近づいた状態を示す模式図である。
【
図6】
図6は、第1の変形例に係る燃焼装置を示す模式図である。
【
図7】
図7は、第2の変形例に係る燃焼装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態に係るボイラ1を示す模式図である。
図1に示すように、ボイラ1は、火炉2と、煙道3と、バーナ4とを備える。
【0016】
火炉2は、燃料を燃焼させて燃焼熱を発生させる炉である。以下では、火炉2において、アンモニアおよび微粉炭が燃料として用いられる例を主に説明する。アンモニアおよび微粉炭が燃料として用いられることによって、二酸化炭素の排出量が削減される。ただし、後述するように、火炉2において用いられる燃料は、この例に限定されない。
【0017】
火炉2は、鉛直方向に延在する筒形状(例えば、矩形筒形状)を有する。火炉2では、燃料が燃焼することによって、高温の燃焼ガスが発生する。火炉2の底部には、燃料の燃焼によって発生する灰分を外部に排出する排出口2aが設けられている。
【0018】
煙道3は、火炉2で発生した燃焼ガスを排ガスとして外部に案内する通路である。煙道3は、火炉2の上部と接続される。煙道3は、水平煙道3aと、後部煙道3bとを有する。水平煙道3aは、火炉2の上部から水平方向に延在する。後部煙道3bは、水平煙道3aの端部から下方に延在する。
【0019】
ボイラ1は、火炉2の上部等に設置される図示しない過熱器を備えている。過熱器では、火炉2で発生した燃焼熱と水との間での熱交換が行われる。それにより、水蒸気が生成される。また、ボイラ1は、
図1で図示されていない各種機器(例えば、再熱器、節炭器または空気予熱器等)を備え得る。
【0020】
バーナ4は、火炉2の下部の壁部に設けられている。火炉2には、複数のバーナ4が、火炉2の周方向に間隔を空けて設けられている。なお、
図1では図示を省略しているが、複数のバーナ4は、火炉2の延在方向(上下方向)にも間隔を空けて設けられている。バーナ4は、アンモニアおよび微粉炭を燃料として火炉2内に噴射する。バーナ4から噴射された燃料が燃焼することにより、火炉2内で火炎Fが形成される。なお、火炉2には、バーナ4から噴射された燃料を着火する図示しない着火装置が設けられている。
【0021】
図2は、本実施形態に係る燃焼装置100を示す模式図である。
図2に示すように、燃焼装置100は、バーナ4と、空気供給部5と、調整機構6と、アンモニアタンク7と、アンモニア流量計8と、排ガス分析計9と、制御装置10とを備える。
【0022】
バーナ4は、火炉2の外部において、火炉2の壁部に取り付けられる。バーナ4は、アンモニア噴射ノズル41と、空気噴射ノズル42と、微粉炭噴射ノズル43とを有する。アンモニア噴射ノズル41は、アンモニアを噴射するノズルである。空気噴射ノズル42は、燃焼用の空気を噴射するノズルである。微粉炭噴射ノズル43は、微粉炭を噴射するノズルである。
【0023】
アンモニア噴射ノズル41、空気噴射ノズル42および微粉炭噴射ノズル43は、円筒形状を有する。空気噴射ノズル42は、アンモニア噴射ノズル41と同軸上に、アンモニア噴射ノズル41を囲むように配置される。微粉炭噴射ノズル43は、空気噴射ノズル42と同軸上に、空気噴射ノズル42を囲むように配置される。アンモニア噴射ノズル41、空気噴射ノズル42および微粉炭噴射ノズル43によって、三重円筒構造が形成される。アンモニア噴射ノズル41、空気噴射ノズル42および微粉炭噴射ノズル43の中心軸は、火炉2の壁部に対して交差する(具体的には、略直交する)。
【0024】
以下、バーナ4の径方向、バーナ4の軸方向、および、バーナ4の周方向を、単に径方向、軸方向および周方向とも呼ぶ。バーナ4における火炉2側(
図2中の右側)を先端側と呼び、バーナ4における火炉2側に対する逆側(
図2中の左側)を後端側と呼ぶ。
【0025】
アンモニア噴射ノズル41は、本体41aと、供給口41bと、噴射口41cとを含む。本体41aは、円筒形状を有する。本体41aは、バーナ4の中心軸上に延在する。本体41aの肉厚、内径および外径は、軸方向位置によらず略一定である。ただし、本体41aの肉厚、内径および外径は、軸方向位置に応じて変化してもよい。本体41aの後端に、開口である供給口41bが形成される。供給口41bは、アンモニアタンク7と接続されている。本体41aの先端に、開口である噴射口41cが形成される。噴射口41cは、火炉2の内部空間に臨む。つまり、噴射口41cは、火炉2の内部空間を向いている。
【0026】
アンモニアは、アンモニアタンク7から供給口41bを介して本体41a内に供給される。矢印A1により示すように、本体41a内に供給されたアンモニアは、本体41a内を流れる。本体41a内を通過したアンモニアは、噴射口41cから火炉2の内部空間に向けて噴射される。このように、アンモニア噴射ノズル41は、火炉2の内部空間に向けて設けられる。
【0027】
空気噴射ノズル42は、本体42aと、噴射口42bとを含む。本体42aは、円筒形状を有する。本体42aは、アンモニア噴射ノズル41の本体41aと同軸上に、本体41aを囲むように配置される。本体42aは、先端側に進むにつれて先細りする形状を有する。本体42aの後部(つまり、後端側の部分)に、図示しない供給口が設けられる。
【0028】
空気噴射ノズル42の供給口は、図示しない空気供給源と接続されている。本体42aの先端に、開口である噴射口42bが形成される。本体42aの先端の径方向内側には、アンモニア噴射ノズル41の本体41aの先端部が位置している。噴射口42bは、本体42aの先端と、アンモニア噴射ノズル41の本体41aの先端との間の円環形状の開口である。噴射口42bは、火炉2の内部空間に臨む。つまり、噴射口42bは、火炉2の内部空間を向いている。
【0029】
空気は、空気供給源から図示しない供給口を介して本体42a内に供給される。矢印A2により示すように、本体42a内に供給された空気は、本体42aの内周部と、アンモニア噴射ノズル41の本体41aの外周部との間の空間内を流れる。本体42a内を通過した空気は、噴射口42bから火炉2の内部空間に向けて噴射される。このように、空気噴射ノズル42は、火炉2の内部空間に向けて設けられる。
【0030】
微粉炭噴射ノズル43は、本体43aと、噴射口43bとを含む。本体43aは、円筒形状を有する。本体43aは、空気噴射ノズル42の本体42aと同軸上に、本体42aを囲むように配置される。本体43aは、先端側に進むにつれて先細りする形状を有する。本体43aの後部(つまり、後端側の部分)に、図示しない供給口が設けられる。
【0031】
微粉炭噴射ノズル43の供給口は、図示しない微粉炭供給源と接続されている。本体43aの先端に、開口である噴射口43bが形成される。本体43aの先端の軸方向位置は、空気噴射ノズル42の本体42aの先端の軸方向位置と略一致する。噴射口43bは、本体43aの先端と、空気噴射ノズル42の本体42aの先端との間の円環形状の開口である。噴射口43bは、火炉2の内部空間に臨む。つまり、噴射口43bは、火炉2の内部空間を向いている。
【0032】
微粉炭は、微粉炭を搬送するための空気とともに、微粉炭供給源から図示しない供給口を介して本体43a内に供給される。矢印A3により示すように、本体43a内に供給された微粉炭は、本体43aの内周部と、空気噴射ノズル42の本体42aの外周部との間の空間内を空気とともに流れる。本体43a内を通過した微粉炭は、噴射口43bから火炉2の内部空間に向けて噴射される。このように、微粉炭噴射ノズル43は、火炉2の内部空間に向けて設けられる。
【0033】
空気供給部5は、バーナ4により形成される火炎(
図1の火炎Fを参照)に対して、径方向外側から燃焼用の空気を供給する。空気供給部5は、バーナ4の先端部と火炉2との間を覆うように配置される。空気供給部5には、空気が流通する流路51が形成されている。流路51は、バーナ4と同軸の円筒形状に形成される。流路51は、図示しない空気供給源と接続されている。流路51のうち火炉2側の端部には、噴射口52が形成されている。
【0034】
矢印A4により示すように、空気供給源から空気供給部5に供給された空気は、流路51を通過し、噴射口52から火炉2の内部空間に向けて噴射される。噴射口52は、火炉2の内部空間に臨む。つまり、噴射口52は、火炉2の内部空間を向いている。このように、空気供給部5は、火炉2の内部空間に向けて設けられる。空気供給部5の噴射口52から噴射される空気は、周方向に旋回しながら、火炉2の内部空間に向けて進む。
【0035】
調整機構6は、アンモニア噴射ノズル41の噴射口41cと火炉2の内部空間との離隔距離を調整する。
図2の例では、調整機構6は、駆動装置61を有する。ただし、後述するように、調整機構6の構成はこの例に限定されない。
【0036】
駆動装置61は、アンモニア噴射ノズル41の本体41aを軸方向に移動させる。例えば、駆動装置61は、アンモニア噴射ノズル41の本体41aの軸方向への移動を案内する機構と、動力を発生させる装置(例えば、モータ等)とを含む。そして、駆動装置61は、アンモニア噴射ノズル41の本体41aの後部に動力を伝達することによって、本体41aを軸方向に移動させることができる。
【0037】
調整機構6は、駆動装置61によりアンモニア噴射ノズル41の本体41aを軸方向に移動させることによって、アンモニア噴射ノズル41の噴射口41cと火炉2の内部空間との離隔距離を調整することができる。本実施形態では、燃焼装置100に調整機構6が設けられることによって、窒素酸化物(NOx)の低減が実現される。調整機構6によってNOxが低減される作用および効果については、後述する。
【0038】
アンモニア流量計8は、アンモニアタンク7からアンモニア噴射ノズル41に供給されるアンモニアの流量を計測する。アンモニア流量計8による計測結果は、制御装置10に出力される。
【0039】
排ガス分析計9は、火炉2から排出される燃焼ガスである排ガスの成分を分析する。排ガス分析計9による分析結果は、制御装置10に出力される。
【0040】
制御装置10は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含み、燃焼装置100全体を制御する。特に、制御装置10は、調整機構6の動作を制御する。例えば、調整機構6から制御装置10へ、アンモニア噴射ノズル41の本体41aの現在の軸方向位置が出力される。そして、制御装置10は、アンモニア噴射ノズル41の本体41aの軸方向位置が目標位置となるように、調整機構6による出力結果に基づいて、調整機構6の動作を制御することができる。
【0041】
図3は、本実施形態に係る制御装置10が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図3に示す処理フローは、例えば、設定時間間隔で繰り返し実行される。
【0042】
図3に示す処理フローが開始すると、ステップS101において、制御装置10は、アンモニア噴射ノズル41におけるアンモニアの流量(以下、アンモニア流量とも呼ぶ)を取得する。例えば、制御装置10は、アンモニア流量計8による計測結果を、アンモニア噴射ノズル41におけるアンモニアの流量として取得する。
【0043】
ステップS101の次に、ステップS102において、制御装置10は、アンモニア流量に基づいて、アンモニア噴射ノズル41の本体41aの目標位置(具体的には、目標となる軸方向位置)を設定する。ここで、制御装置10は、アンモニア流量が小さいほど、火炉2の内部空間に近い位置を本体41aの目標位置として設定する。
【0044】
ステップS102の次に、ステップS103において、制御装置10は、アンモニア噴射ノズル41の本体41aの現在位置(具体的には、現在の軸方向位置)を取得する。例えば、制御装置10は、調整機構6から本体41aの現在位置を取得する。
【0045】
ステップS103の次に、ステップS104において、制御装置10は、アンモニア噴射ノズル41の本体41aの軸方向位置が目標位置となるように、駆動装置61を制御し、
図3に示す処理フローは終了する。ステップS104では、制御装置10は、例えば、本体41aの現在位置と目標位置との差分がある場合、当該差分がなくなるように、本体41aを移動させる。
【0046】
上記のように、
図3に示す処理フローでは、制御装置10は、アンモニア流量が小さいほど、アンモニア噴射ノズル41の本体41aが火炉2の内側に向かう方向に移動するように、駆動装置61の動作を制御する。それにより、制御装置10は、アンモニア流量が小さいほど、アンモニア噴射ノズル41の噴射口41cが火炉2の内側に向かう方向に移動するように(つまり、噴射口41cと火炉2の内部空間との離隔距離が短くなるように)、調整機構6の動作を制御することができる。
【0047】
図4は、本実施形態に係るバーナ4によって形成される火炎Fを示す模式図である。バーナ4では、アンモニア噴射ノズル41からアンモニアが噴射され、空気噴射ノズル42から燃焼用の空気が噴射され、微粉炭噴射ノズル43から微粉炭が噴射され、空気供給部5から燃焼用の空気が供給されることによって、バーナ4の前方に火炎Fが形成される。このように形成される火炎Fは、NOxが還元される領域である還元領域を有する。還元領域は、例えば、火炎Fが形成される領域のうちの径方向外側に存在する。
【0048】
アンモニア噴射ノズル41から噴射されたアンモニアが火炎Fの還元領域に到達することによって、NOxが還元される。ここで、ボイラ1を利用した発電における発電量を変化させる場合に、アンモニアの混焼率(バーナ4から噴射される燃料中のアンモニアの割合)を変化させることがある。この場合、アンモニア噴射ノズル41に供給されるアンモニアの流量を変化させることによって、アンモニア噴射ノズル41におけるアンモニアの流量(つまり、アンモニア流量)が変化する。
【0049】
従来の技術では、アンモニア噴射ノズル41におけるアンモニアの流量(つまり、アンモニア流量)が低下した場合、アンモニア噴射ノズル41から噴射されるアンモニアの噴射速度が低下してしまう。それにより、アンモニア噴射ノズル41から噴射されたアンモニアが火炎Fの還元領域に十分には供給されなくなり、排気される燃焼ガス中のNOxが増加するおそれがあった。
【0050】
そこで、本実施形態では、上述したように、アンモニア流量が小さいほど、噴射口41cが火炉2の内側に向かう方向に移動するように(つまり、噴射口41cと火炉2の内部空間との離隔距離が短くなるように)、調整機構6の動作が制御される。
図5は、本実施形態に係るアンモニア噴射ノズル41の噴射口41cが
図4の例と比べて火炉2に近づいた状態を示す模式図である。
【0051】
図5の例では、
図4の例と比べて、アンモニア流量が小さくなっている。よって、アンモニア噴射ノズル41の本体41aが、
図4の例と比べて、火炉2の内側に向かう方向に移動している。それにより、噴射口41cが、
図4の例と比べて、火炉2の内側に向かう方向に移動している。具体的には、噴射口41cの軸方向位置が、
図4の例では、噴射口42bおよび噴射口43bの軸方向位置と略一致している一方で、
図5の例では、噴射口42bおよび噴射口43bの軸方向位置よりも火炉2に近くなっている。ゆえに、アンモニア流量が
図4の例よりも低下しているものの、噴射されたアンモニアが火炎F内で行き渡る範囲を
図4の例と同程度に維持することができる。したがって、
図4の例において、アンモニアが火炎Fの還元領域に十分に供給されている場合、
図5の例においても、アンモニアが火炎Fの還元領域に十分に供給される。このようにして、NOxの低減が適切に実現される。
【0052】
上記のように、本実施形態に係る燃焼装置100は、アンモニア噴射ノズル41の噴射口41cと火炉2の内部空間との離隔距離を調整する調整機構6を備える。それにより、作動条件が変化した場合であっても、噴射されたアンモニアが火炎F内で行き渡る範囲を維持することができるので、NOxが低減される。特に、アンモニア流量に基づいて調整機構6の動作が制御されることによって、NOxの低減が適切に実現される。
【0053】
ここで、NOxをより効果的に低減する観点では、火炉2から排出される排ガス中のNOxの計測値を用いて、アンモニア流量と上記離隔距離(つまり、噴射口41cと火炉2の内部空間との離隔距離)との関係を最適化することが好ましい。火炉2から排出される排ガス中のNOxの計測値は、例えば、排ガス分析計9の分析結果に基づいて得られる。例えば、同一のアンモニア流量に対して、上記離隔距離を様々に変化させた場合における排ガス中のNOxの計測値をデータとして蓄積する。次に、排ガス中のNOxが効果的に低減されるように、蓄積されたデータを用いて、アンモニア流量と上記離隔距離との関係を規定するマップを作成する。そして、アンモニア流量と上記離隔距離との関係が、作成したマップにより示される関係となるように、調整機構6の制御を制御装置10に行わせる。それにより、NOxがより効果的に低減される。
【0054】
また、NOxをより効果的に低減する観点では、制御装置10は、アンモニア流量以外の各種パラメータに基づいて調整機構6の動作を制御してもよい。例えば、制御装置10は、アンモニア流量に加えて、以下で説明する他のパラメータに基づいて調整機構6の動作を制御してもよい。また、例えば、制御装置10は、アンモニア流量に替えて、以下で説明する他のパラメータに基づいて調整機構6の動作を制御してもよい。以下、調整機構6の制御に用いられ得る各種パラメータの例を説明する。
【0055】
制御装置10は、微粉炭噴射ノズル43における微粉炭の流量(以下、微粉炭流量とも呼ぶ)に基づいて、調整機構6の動作を制御してもよい。例えば、制御装置10は、微粉炭流量が大きいほど、噴射口41cが火炉2の内側に向かう方向に移動するように、調整機構6の動作を制御する。微粉炭流量が大きいほど、微粉炭を搬送するための空気の流量が大きくなる。ゆえに、アンモニア噴射ノズル41から噴射されたアンモニアが微粉炭噴射ノズル43から噴射された空気に引きずられ、火炎F全域に行き渡りにくくなる。よって、噴射口41cを火炉2の内側に向かう方向に移動させることにより、アンモニアが火炎Fの還元領域に十分に供給されやすくなる。
【0056】
制御装置10は、空気供給部5における空気の流量(以下、供給空気流量とも呼ぶ)に基づいて、調整機構6の動作を制御してもよい。例えば、制御装置10は、供給空気流量が大きいほど、噴射口41cが火炉2の内側に向かう方向に移動するように、調整機構6の動作を制御する。供給空気流量が大きいほど、アンモニア噴射ノズル41から噴射されたアンモニアが空気供給部5から噴射される空気に引きずられ、火炎F全域に行き渡りにくくなる。よって、噴射口41cを火炉2の内側に向かう方向に移動させることにより、アンモニアが火炎Fの還元領域に十分に供給されやすくなる。
【0057】
制御装置10は、火炉2の内部空間における温度(以下、炉内温度とも呼ぶ)に基づいて、調整機構6の動作を制御してもよい。例えば、制御装置10は、炉内温度が高いほど、噴射口41cが火炉2の内側に向かう方向に移動するように、調整機構6の動作を制御する。炉内温度が大きいほど、空気噴射ノズル42、微粉炭噴射ノズル43および空気供給部5から噴射された空気が膨脹し、当該空気の流量が大きくなる。ゆえに、アンモニア噴射ノズル41から噴射されたアンモニアが空気噴射ノズル42、微粉炭噴射ノズル43および空気供給部5から噴射された空気に引きずられ、火炎F全域に行き渡りにくくなる。よって、噴射口41cを火炉2の内側に向かう方向に移動させることにより、アンモニアが火炎Fの還元領域に十分に供給されやすくなる。
【0058】
上記では、火炉2の着火装置の詳細については言及していないが、火炉2の着火装置としては、例えば、油バーナが用いられる。油バーナは、火炉2の内部空間に油を噴射することによって着火を行う。油バーナは、一部のバーナ4(具体的には、上下方向に並ぶ複数のバーナ4のうちの最も下方のバーナ4)に設けられる。油バーナは、バーナ4の中心軸上に延在する。上記で
図2等を参照して説明したバーナ4は、油バーナが設けられないバーナである。ただし、油バーナが設けられるバーナに調整機構6が設けられてもよい。この場合、例えば、アンモニア噴射ノズル41の本体41a内を挿通するように、油バーナが設けられ得る。
【0059】
図6は、第1の変形例に係る燃焼装置100Aを示す模式図である。
図6に示すように、燃焼装置100Aでは、上述した燃焼装置100と比較して、アンモニア噴射ノズルの先端部の構成が異なる。
【0060】
燃焼装置100Aのアンモニア噴射ノズル41Aでは、上述したアンモニア噴射ノズル41と異なり、本体41aの先端部にテーパ部41dが設けられる。テーパ部41dは、先端側に進むにつれて先細りする形状を有する。テーパ部41dの先端に、噴射口41cが形成される。
【0061】
なお、燃焼装置100Aでは、調整機構6によって本体41aが軸方向に移動することによって、噴射口41cと火炉2の内部空間との離隔距離が調整される点については、上述した燃焼装置100と同様である。
【0062】
上記のように、第1の変形例では、アンモニア噴射ノズル41Aの本体41aの先端部にテーパ部41dが設けられる。それにより、
図6に示すように、アンモニア噴射ノズル41Aの噴射口41cの軸方向位置が微粉炭噴射ノズル43の噴射口43bの軸方向位置よりも火炉2側に位置する場合に、噴射口43bから噴射された微粉炭は、テーパ部41dの外周部に沿って流れる。ここで、微粉炭の噴射方向は、軸方向に対して径方向内側に傾いている。ゆえに、本体41aの先端部のうち、噴射口43bから噴射された微粉炭が当たる外周部の傾きを、微粉炭の噴射方向に近づけることができる。よって、噴射口43bから噴射された微粉炭の流れが本体41aの先端部に阻害されにくくなる。
【0063】
図7は、第2の変形例に係る燃焼装置100Bを示す模式図である。
図7に示すように、燃焼装置100Bでは、上述した燃焼装置100と比較して、アンモニア噴射ノズルの先端部の構成が異なる。
【0064】
燃焼装置100Bのアンモニア噴射ノズル41Bでは、上述したアンモニア噴射ノズル41と異なり、本体41aの先端部に突起部41eが設けられる。突起部41eは、本体41aの先端部の外周部に設けられ、径方向外側に突出する。突起部41eは、本体41aの先端部の外周部の全周に亘って環状に設けられる。
【0065】
なお、燃焼装置100Bでは、調整機構6によって本体41aが軸方向に移動することによって、噴射口41cと火炉2の内部空間との離隔距離が調整される点については、上述した燃焼装置100と同様である。
【0066】
上記のように、第2の変形例では、アンモニア噴射ノズル41Bの本体41aの先端部に突起部41eが設けられる。それにより、
図7に示すように、アンモニア噴射ノズル41Bの噴射口41cの軸方向位置が微粉炭噴射ノズル43の噴射口43bの軸方向位置よりも火炉2側に位置する場合に、噴射口43bから噴射された微粉炭の一部は、突起部41eに対して後方から衝突する。それにより、突起部41eの後方の位置Pにおいて、微粉炭の流れが淀み、微粉炭の濃度が濃くなる。このように微粉炭の濃度が濃い領域が形成されることによって、燃料が着火されやすくなる。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0068】
上記では、調整機構6が、駆動装置61を有し、駆動装置61によりアンモニア噴射ノズル41の本体41aを軸方向に移動させることによって、アンモニア噴射ノズル41の噴射口41cと火炉2の内部空間との離隔距離を調整する例を説明した。ただし、調整機構6は、アンモニア噴射ノズル41の噴射口41cと火炉2の内部空間との離隔距離を調整する機能を有していればよく、上記の例に限定されない。例えば、アンモニア噴射ノズル41の本体41aが軸方向に伸縮可能となっており、調整機構6は、駆動装置61により本体41aを軸方向に伸縮させることによって、噴射口41cと火炉2の内部空間との離隔距離を調整してもよい。
【0069】
上記では、バーナ4において、空気噴射ノズル42がアンモニア噴射ノズル41の径方向外側に配置され、微粉炭噴射ノズル43が空気噴射ノズル42の径方向外側に配置され、アンモニア噴射ノズル41、空気噴射ノズル42および微粉炭噴射ノズル43によって三重円筒構造が形成される例を説明した。ただし、バーナ4の構成は、上記の例に限定されない。例えば、微粉炭噴射ノズル43の位置とアンモニア噴射ノズル41の位置とが置き換えられてもよい。また、例えば、バーナ4の構成から空気噴射ノズル42が省略されてもよい。この場合、例えば、バーナ4は二重円筒構造を有し、二重円筒構造により区画される空間のうち中心側の空間がアンモニアの流路となり、アンモニアの流路に対して径方向外側に隣り合う空間が微粉炭の流路となっていてもよい。
【0070】
上記では、火炉2において、アンモニアおよび微粉炭が燃料として用いられる例を説明した。ただし、火炉2において用いられる燃料は、少なくともアンモニアを含んでいればよく、上記の例に限定されない。例えば、火炉2においてアンモニアとともに用いられる燃料は、微粉炭以外の燃料(例えば、天然ガスまたはバイオマス等)であってもよい。また、例えば、火炉2において用いられる燃料は、アンモニアのみであってもよい。
【0071】
本開示は、ボイラ等に用いられる燃焼装置における窒素酸化物(NOx)の低減に資するので、例えば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」および目標13「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0072】
1:ボイラ 2:火炉 4:バーナ 5:空気供給部 6:調整機構 10:制御装置 41:アンモニア噴射ノズル 41A:アンモニア噴射ノズル 41B:アンモニア噴射ノズル 41c:噴射口 43:微粉炭噴射ノズル 43b:噴射口 52:噴射口 100:燃焼装置 100A:燃焼装置 100B:燃焼装置