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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ステータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20240409BHJP
   H02K 3/30 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H02K3/34 C
H02K3/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023500816
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2022005574
(87)【国際公開番号】W WO2022176794
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2021024027
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森野 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】田村 康
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-163797(JP,A)
【文献】特開2014-154262(JP,A)
【文献】特開2018-107921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/34
H02K 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、コイルと、を備え、
前記ステータコアは、環状のヨーク部と、環状に並ぶ複数のティース部と、を有し、
各々の前記ティース部が前記ヨーク部から突出し、
隣り合う2つの前記ティース部によってスロットが構成されたステータであって、
前記スロット内に充填される絶縁樹脂を有し、
前記コイルは、前記スロット内を通って前記ティース部に巻き回される巻線を有し、
前記巻線は、導電路をなす芯線と、前記芯線を被覆する被覆部と、を具備し、
前記スロット内において前記ティース部の内壁と前記被覆部との間で連続的に前記絶縁樹脂が充填され、
前記絶縁樹脂は、同一の前記スロット内で隣り合って配置される2つの前記挿通部間でも連続的に充填され、
前記挿通部間の間隔は、前記被覆部の厚さよりも小さい
ステータ。
【請求項2】
前記ティース部の上端部側から下端部側に跨る構成で連続的に前記絶縁樹脂が充填される
請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記スロットの内壁部は、全体にわたって前記巻線から離間している
請求項1又は請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記被覆部は、低誘電率エナメルである
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はステータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、ステータが開示されている。このステータは、絶縁紙を介してステータコアにコイルが固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-33433号公報
【文献】特開2013-62911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したステータでは、コイルの放熱性を向上させることが望まれている。
【0005】
そこで、本開示では、コイルの放熱性を向上させることが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のステータは、
ステータコアと、コイルと、を備え、
前記ステータコアは、環状のヨーク部と、環状に並ぶ複数のティース部と、を有し、
各々の前記ティース部が前記ヨーク部から突出し、
隣り合う2つの前記ティース部によってスロットが構成されたステータであって、
前記スロット内に充填される絶縁樹脂を有し、
前記コイルは、前記スロット内を通って前記ティース部に巻き回される巻線を有し、
前記巻線は、導電路をなす芯線と、前記芯線を被覆する被覆部と、を具備し、
前記スロット内において前記ティース部の内壁と前記被覆部との間で連続的に前記絶縁樹脂が充填される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、コイルの放熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態のステータコアの斜視図である。
図2図2は、スロット内に配置されたコイル周辺の断面図である。
図3図3は、図2におけるA-A線断面図である。
図4図4は、第1実施形態のステータコアによってモータの最大トルクを上昇させることができることを説明する説明図である。
図5図5は、第1実施形態のステータコアによってステータコアの積厚を小さくすることができることを説明する説明図である。
図6図6は、第1実施形態のステータコアによって芯線の断面積を小さくすることができることを説明する説明図である。
図7図7は、第1実施形態のステータコアによって有効磁束を増加させることができることを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。
【0010】
〔1〕ステータコアと、コイルと、を備え、前記ステータコアは、環状のヨーク部と、環状に並ぶ複数のティース部と、を有し、各々の前記ティース部が前記ヨーク部から突出し、隣り合う2つの前記ティース部によってスロットが構成されたステータであって、前記スロット内に充填される絶縁樹脂を有し、前記コイルは、前記スロット内を通って前記ティース部に巻き回される巻線を有し、前記巻線は、導電路をなす芯線と、前記芯線を被覆する被覆部と、を具備し、前記スロット内において前記ティース部の内壁と前記被覆部との間で連続的に前記絶縁樹脂が充填されるステータ。
【0011】
この構成によれば、スロット内において、絶縁紙が介在することなく、ティース部の内壁と被覆部との間で連続的に絶縁樹脂が充填されるため、絶縁紙が介在する構成と比較して、コイルの放熱性を向上させることができる。
【0012】
〔2〕前記ティース部の上端部側から下端部側に跨る構成で連続的に前記絶縁樹脂が充填される〔1〕に記載のステータ。
【0013】
この構成によれば、ティース部の上端部側から下端部側に跨る構成で連続的に絶縁樹脂が充填されるため、より一層放熱性を向上させることができる。しかも、コイルがスロット内で固定された状態をより安定化させることができる。
【0014】
〔3〕前記スロットの内壁部は、全体にわたって前記巻線から離間している〔1〕又は〔2〕に記載のステータ。
【0015】
この構成によれば、コイルとステータコアとの絶縁性をより確実に担保することができる。
【0016】
〔4〕前記被覆部は、低誘電率エナメルである〔1〕から〔3〕のいずれかに記載のステータ。
【0017】
この構成によれば、コイルとステータコアとの絶縁性をより確実に担保しつつ、被覆部の厚さを抑えやすいため、芯線を太くしやすい。したがって、モータの性能を向上しやすい。
【0018】
<第1実施形態>
第1実施形態のステータ1は、回転電機(具体的には、モータ)の部品として使用される。ステータ1は、図2に示すように、ステータコア10と、コイル30と、絶縁樹脂50と、を備える。なお、以下では、ステータ1の径方向を径方向と称し、ステータ1の軸方向を軸方向と称し、ステータ1の周方向を周方向と称する。
【0019】
ステータコア10は、図1に示すように、ヨーク部11と、ティース部12と、を有する。ヨーク部11は、環状、より具体的には円環状をなしている。ティース部12は、ヨーク部11の内周面に沿って環状に並んで複数設けられている。各々のティース部12は、周方向に互いに間隔をあけて配置されている。各々のティース部12は、ヨーク部11の内周面から径方向内側に突出している。各々のティース部12は、径方向及び軸方向に沿った壁状をなしている。各々のティース部12は、径方向及び軸方向の沿った壁状をなすティース本体13と、ティース本体13の先端部(言い換えると、径方向内側の端部)から周方向両側に張り出した張出部14と、を有する。
【0020】
ステータコア10は、例えば、複数の電磁鋼板(例えばケイ素鋼板)を厚み方向に積層して製造される積層鋼板であってもよいし、絶縁被覆された磁性粒子をプレス成形して構成される圧粉磁芯であってもよい。
【0021】
図1に示すように、隣り合う2つのティース部12によってスロット20が構成されている。スロット20は、周方向の両側がティース部12によって区画され、径方向の外側面がヨーク部11によって区画されている。スロット20は、ステータ1の軸方向の両面及び径方向の内側面に開口している。
【0022】
コイル30は、分布巻であってもよいし、集中巻であってもよい。コイル30は、図2に示すように、スロット20内を通ってティース部12に巻き回される巻線31を有する。巻線31は、導電路をなす芯線32と、芯線32を被覆する被覆部33と、を具備する。芯線32は、導体である。被覆部33は、絶縁層を形成する。被覆部33の材料は特に限定されない。被覆部33は、本実施形態では、誘電率が低い低誘電率エナメルである。被覆部33は、例えばポリビニルホルマール、熱硬化ポリウレタン、熱硬化アクリル、エポキシ、熱硬化ポリエステル、熱硬化ポリエステルイミド、芳香族ポリアミド、熱硬化ポリアミドイミド、熱硬化ポリイミド等の熱硬化性樹脂を主成分としてもよい。また、被覆部33は、例えばポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂を主成分としてもよい。ここで「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば50質量%以上含有される成分である。
【0023】
図2に示すように、スロット20内には、絶縁樹脂50が充填されている。充填方法は、特に限定されない。充填方法は、例えばトランスファー成形である。絶縁樹脂の種類は、特に限定されない。絶縁樹脂の種類は、例えば、エポキシ樹脂、PBT樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、SPS樹脂、m-PPE樹脂、ナイロン樹脂(PA6、PA46、PA66)、芳香族ナイロン樹脂(PA4T、PA6T、PA9T、PA10T)、LCP樹脂などが好ましい。
【0024】
図2及び図3に示すように、絶縁樹脂50は、スロット20内において、ティース部12の内壁12Aと、巻線31の被覆部33との間で連続的に充填されている。このため、このステータ1では、スロット20内において、絶縁紙が介在することなく、ティース部12の内壁12Aと被覆部33との間で連続的に絶縁樹脂50が充填される。したがって、ステータ1は、絶縁紙が介在する構成と比較して、コイル30の放熱性を向上させることができる。例えば、絶縁紙にワニスを浸透させる場合には、空気層が生じやすく、その結果、放熱性が低下しやすいが、ステータ1では、このような問題を解消することができる。また、巻線31は、同一のスロット20内に配置される複数の挿通部34を有している。挿通部34は、上述した芯線32と、被覆部33と、を具備する。複数の挿通部34は、径方向に並んで配置されている。絶縁樹脂50は、同一のスロット20内で隣り合って配置される2つの挿通部34間でも連続的に充填されている。このため、同一のスロット20内で隣り合って配置される2つの挿通部34間でも放熱性を向上しやすい。
【0025】
更に、図3に示すように、絶縁樹脂50は、ティース部12の上端部12B側から下端部12C側に跨る構成で連続的に絶縁樹脂50が充填されている。このため、ステータ1は、より一層放熱性を向上させることができる。しかも、コイル30がスロット20内で固定された状態をより安定化させることができる。
【0026】
更に、図2及び図3に示すように、スロット20の内壁部20Aは、全体にわたって巻線31から離間している。このため、ステータ1は、コイル30とステータコア10との絶縁性をより確実に担保することができる。
【0027】
更に、被覆部33は、低誘電率エナメルである。このため、ステータ1は、コイル30とステータコア10との絶縁性をより確実に担保しつつ、被覆部33の厚さを抑えやすいため、芯線32を太くしやすい。つまり、スロット20内に占める芯線32の割合である占積率を向上させることができる。したがって、モータの性能(例えばトルク)を向上しやすい。また、被覆部33のみによって絶縁性を確保することができる。つまり、スロット20内に絶縁樹脂50を連続的に充填することで放熱性を向上させつつ、低誘電率エナメルの被覆部33によって絶縁性を確保することができる。
【0028】
このように、ステータ1は、スロット20内において、絶縁紙が介在することなく、ティース部12の内壁12Aと被覆部33との間で連続的に絶縁樹脂50が充填されているため、放熱性を向上させることができる。但し、絶縁紙が介在しない場合、巻線31の絶縁性が問題となる。そこで、被覆部33を低誘電率エナメルとしている。これにより、巻線31単体で絶縁性を確保することができる。例えば、巻線31がティース部12の内壁12A側に寄ったり、内壁12A側に接触したりしたとしても絶縁性を確保することができる。つまり、このステータ1によれば、絶縁紙を排除してスロット20内に絶縁樹脂50を連続的に充填することで放熱性を向上させつつ、低誘電率エナメルの被覆部33によって絶縁性をより確実に担保することができる。
【0029】
以下では、コイル30の放熱性が向上することによる具体的な効果を例示する。
【0030】
コイル30に電流が流れると、芯線32が発熱する。芯線32を流れる電流の上限は、芯線32の温度の許容範囲の上限を基準に定められる。上述したように、ステータ1によれば、放熱性が向上するため、芯線32を流れる電流の上限が大きくなる。つまり、ステータ1によれば、ステータ1の大きさを変えることなく、芯線32を流れる電流の上限を大きくすることができる。また、モータの最大トルクは、コイル30を流れる電流に比例する。したがって、ステータ1によれば、ステータ1が適用されるモータの最大トルクを上昇させることができる。例えば、図4に示すように、絶縁紙が設けられるステータに対応した第1領域AR1と比較して、第2領域AR2の分だけ最大トルクを大きくすることができる。
【0031】
あるいは、ステータ1によれば、適用されるモータの最大トルクを変えることなく、ステータコア10の積厚(軸方向の長さ)を小さくすることができる。ステータコア10の積厚は、適用されるモータの最大トルクに比例する。つまり、モータの最大トルクを変えない代わりに、ステータコア10の積厚を小さくすることもできる。例えば、図5に示すように、絶縁紙が設けられるステータのステータコア10Xと比較して、適用されるモータの最大トルクを同じにしつつ、ステータコア10の積厚(軸方向の長さ)を小さくすることができる。ステータコア10の積厚が小さくなることで、材料の使用量が減少し、その結果、材料コストが低減される。なお、図5では、ステータコア10,10Xが模式的に描かれている。
【0032】
あるいは、ステータ1によれば、適用されるモータの最大トルク、及びステータコア10の積厚(軸方向の長さ)を変えることなく、芯線32の断面積を小さくすることができる。芯線32を流れる電流は、芯線32の断面積に比例する。つまり、芯線32を流れる電流(適用されるモータの最大トルク)、及びステータコア10の積厚(軸方向の長さ)を変えることなく、芯線32の断面積を小さくすることができる。例えば、図6に示すように、絶縁紙(図示省略)が設けられるステータ1Yの芯線32Yと比較して、芯線32の幅寸法(周方向の長さ)を小さくすることができる。これにより、芯線32の材料の使用量を減らすことができ、その結果、材料コストが低減される。また、芯線32の断面積を小さくした分、図6に示すように、ティース部12の厚さ(周方向の長さ)を大きくしたとしても、ティース部12の材料の方が芯線32よりも単位体積当たりの価格が安ければ、全体として材料コストが低減される。
【0033】
また、ティース部12の厚さが大きくなった場合、以下の効果が生じ得る。図7に示すように、漏れ磁束61が存在するティース部12Zと比較すると、ティース部12の厚さ(周方向の長さ)が大きくなることで、有効磁束60が増加する。モータの最大トルクは、有効磁束に比例する。このため、この構成によれば、ステータ1が適用されるモータの最大トルクを上昇させることができる。
【0034】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。
【0035】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、請求の範囲によって示された範囲内又は請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0036】
1 :ステータ
1Y :ステータ
10 :ステータコア
10X :ステータコア
11 :ヨーク部
12 :ティース部
12A :ティース部の内壁
12B :ティース部の上端部
12C :ティース部の下端部
12Z :ティース部
13 :ティース本体
14 :張出部
20 :スロット
20A :スロットの内壁部
30 :コイル
31 :巻線
32 :芯線
32Y :芯線
33 :被覆部
34 :挿通部
50 :絶縁樹脂
60 :有効磁束
61 :漏れ磁束
AR1 :第1領域
AR2 :第2領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7