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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】気泡発生装置、および気泡発生システム
(51)【国際特許分類】
   B01F 23/231 20220101AFI20240409BHJP
   B01F 31/85 20220101ALI20240409BHJP
   B06B 1/06 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B01F23/231
B01F31/85
B06B1/06 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023505276
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2022007356
(87)【国際公開番号】W WO2022190865
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/047548
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021037605
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 克己
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/189270(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/189271(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/189272(WO,A1)
【文献】特開2006-087984(JP,A)
【文献】特開2004-097851(JP,A)
【文献】特開2001-197594(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207395(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 23/20 - 23/2375
B01F 25/40 - 25/46
B01F 31/00 - 31/87
B06B 1/00 - 3/04
C02F 1/72 - 1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体槽に取り付け、前記液体槽の液体中に微細な気泡を発生させる気泡発生装置であって、
複数の開口部が形成され、一方の面が前記液体槽の液体と接し、他方の面が気体と接する位置に設けられる振動板と、
一方の端により前記振動板を支持する第1筒状体と、
前記第1筒状体の他方の端を支持する板状のバネ部と、
前記第1筒状体を支持する位置より外側にある位置において前記バネ部を一方の端により支持する第2筒状体と、
前記バネ部を振動させる圧電素子と、を備え、
前記圧電素子は、前記第2筒状体により支持される側の前記バネ部の面において、前記第2筒状体により支持される位置よりも内側に設けられる、気泡発生装置。
【請求項2】
前記圧電素子は、前記第2筒状体により支持される側の前記バネ部の面において、前記第2筒状体の内径の全面に設けられる、請求項1に記載の気泡発生装置。
【請求項3】
前記バネ部の外側の端部、または前記第2筒状体の外側面が前記液体槽と接し、
前記圧電素子の駆動を制御することができる制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記バネ部の外側の端部または前記第2筒状体の外側面が振動のノードとなるように、前記圧電素子の駆動を制御する、請求項1または請求項2に記載の気泡発生装置。
【請求項4】
前記第2筒状体の他方の端に設けられる錘部を、さらに備え、
前記錘部は、前記圧電素子を駆動させた場合に、前記バネ部の外側の端部または前記第2筒状体の外側面が振動のノードとなる駆動が可能となる条件を満たす形状、位置および質量を有する、請求項3に記載の気泡発生装置。
【請求項5】
前記錘部は、前記圧電素子を駆動させた場合に、前記振動板が平行に上下振動する駆動が可能となる条件を満たす形状、位置および質量を有する、請求項4に記載の気泡発生装置。
【請求項6】
前記錘部は、前記振動板が液体と接する面側から見た形状が矩形形状である、請求項4または請求項5に記載の気泡発生装置。
【請求項7】
前記振動板は、前記振動板に形成された前記複数の開口部の貫通方向が、前記第1筒状体の振動方向に対して平行となる位置において前記第1筒状体に支持される、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の気泡発生装置。
【請求項8】
前記振動板は、前記複数の開口部の貫通方向が前記第1筒状体の振動方向に対して垂直となる構造体を有する、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の気泡発生装置。
【請求項9】
前記構造体は、筒状体である、請求項8に記載の気泡発生装置。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の前記気泡発生装置と、
前記液体槽と、を備える、気泡発生システム。
【請求項11】
前記気泡発生装置は、前記第2筒状体の側面において前記液体槽と結合されている、請求項10に記載の気泡発生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気泡発生装置、および気泡発生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微細な気泡を使って水質浄化、排水処理、魚の養殖などが行なわれており、微細な気泡が様々な分野において利用されている。そのため、微細な気泡を発生する気泡発生装置が開発されている(特開2016-209825号公報:特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の気泡発生装置では、圧電素子を利用して微細な気泡を発生させている。この気泡発生装置では、屈曲振動により振動板の中央部を上下振動させて、振動板に形成した細孔において発生した気泡を振動により引きちぎり微細化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-209825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の気泡発生装置では、液体槽に入れる液体の種類によって、液体の比重が大きい、液体の表面張力が大きい、液体の粘性が高いなどが原因により、細孔において発生した気泡を振動板の振動により引きちぎって微細な気泡を発生させることができない場合があった。
【0006】
気泡発生装置により微細な気泡を発生させるために、振動板を圧電素子でより強く振動させる必要がある。しかし、圧電素子により振動板をより強く振動させると、振動板の振動が液体槽に漏れ、液体槽自体を振動させる問題があった。
【0007】
そこで、本開示の目的は、液体槽に入れる液体の種類によらず、微細な気泡を効果的に発生させる気泡発生装置、および気泡発生システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一形態に係る気泡発生装置は、液体槽に取り付け、液体槽の液体中に微細な気泡を発生させる気泡発生装置であって、複数の開口部が形成され、一方の面が液体槽の液体と接し、他方の面が気体と接する位置に設けられる振動板と、一方の端により振動板を支持する第1筒状体と、第1筒状体の他方の端を支持する板状のバネ部と、第1筒状体を支持する位置より外側にある位置においてバネ部を一方の端により支持する第2筒状体と、バネ部を振動させる圧電素子と、を備え、圧電素子は、第2筒状体により支持される側の前記バネ部の面において、第2筒状体により支持される位置よりも内側に設けられる。
【0009】
本開示の別の一形態に係る気泡発生システムは、前述の気泡発生装置と、液体槽と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、圧電素子を第2筒状体により支持される側の前記バネ部の面において、第2筒状体により支持される位置よりも内側に設けることで、液体槽に入れる液体の種類によらず、微細な気泡を効果的に発生させることができる。また、第1筒状体の外径を、振動板の外径よりも小さくすることで、圧電素子を小さくすることができ、コストダウンが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る気泡発生装置が用いられる気泡発生システムの概略図である。
図2】本実施の形態に係る気泡発生装置の斜視図である。
図3】本実施の形態に係る気泡発生装置の断面図である。
図4】本実施の形態に係る気泡発生装置の振動板の振動を説明するための図である。
図5】本実施の形態に係る気泡発生装置の圧電素子に印加する駆動信号の周波数とインピーダンスとの関係を示す図である。
図6】本実施の形態に係る気泡発生装置の振動板を気中でさせた場合と、振動板を液中で駆動させた場合と共振周波数の変化を示す図である。
図7】本実施の形態に係る気泡発生装置の振動板を気中でさせた場合と、振動板を液中で駆動させた場合と振動板の変位量を示す図である。
図8】変形例1に係る気泡発生装置の斜視図である。
図9】変形例2に係る気泡発生装置の断面図である。
図10】別の構造体の斜視図である。
図11】さらに別の構造体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態)
以下に、本実施の形態に係る気泡発生装置、および気泡発生システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
まず、図1は、本実施の形態に係る気泡発生装置1が用いられる気泡発生システム100の概略図である。図1に示す気泡発生装置1は、例えば、水,ガソリン,軽油などの液体を貯留する液体槽10の底部に設けられ、液体槽10の液体に微細な気泡200を発生させる気泡発生システム100に用いられる。なお、気泡発生システム100は、例えば、水質浄化装置、排水処理装置、魚の養殖用水槽、燃料噴射装置などの様々なシステムに適用することができる。
【0014】
また、液体槽10は、適用するシステムにより導入される液体が異なり、水質浄化装置であれば水になるが、燃料噴射装置であれば液体燃料になる。さらに、液体槽10は、液体を一時的に貯留することができればよく、液体が導入される管において当該管の中を常に液体が流れるようなものも含む。
【0015】
気泡発生装置1は、振動板2と、筒状体3と、圧電素子4とを備えている。気泡発生装置1は、液体槽10の底部の一部に開けた孔に設けられ、当該孔から液体側に突き出た振動板2を圧電素子4により振動させることにより、振動板2に形成した複数の細孔(開口部)から微細な気泡200を発生させている。
【0016】
振動板2は、例えば、樹脂板、金属板、SiもしくはSOI(Silicon On Insulator)基板、多孔質のセラミック板、ガラス板などで形成されている。振動板2をガラス板により形成する場合、例えば、波長が200nm~380nmの紫外光および深紫外光を透過させるガラス板により形成してもよい。紫外光および深紫外光を透過させるガラス板により形成することで、振動板2の他方の面側から液体槽10の液体に対して紫外光を発する光源を設け、オゾン生成による殺菌と紫外光照射による殺菌とを兼用させることができる。
【0017】
振動板2は、複数の細孔が形成され、一方の面が液体槽10の液体(例えば、水)と接し、他方の面が気体(例えば、空気)と接している。つまり、気泡発生装置1では、振動板2により液体と空気とを分離し、他方の面に背圧を加え(図1に示す矢印方向)ることで、複数の細孔を通って気体が液体槽10の液体に送り込まれる。気泡発生装置1は、複数の細孔を通って送り込まれた気体を、振動板2の振動により引きちぎることで微細な気泡200を発生させている。
【0018】
さらに詳しく説明すると、複数の細孔から気体が出ようとする際、液体の表面張力によって液体側へ気体が侵入するのを阻害する一方、気体の浮力によりその表面張力を断ち切る力が働くことになる。このバランスにより気泡200の径が決まることになるが、振動板2の振動により細孔の壁面からの引きはがし効果が生じ、あたかも表面張力が小さくなったかのような状態となる。その結果、複数の細孔から気体が出ようとする初期の段階で、振動板2の振動により気体が引きちぎられ、振動板2の振動を加えない場合に比べて1/10程度の径の微細な気泡200を発生させることができる。
【0019】
図示していないが、たとえば、直径14mmの振動板2の中央部に設けた5mm×5mmの領域に複数の細孔が形成されている。細孔の孔径を1μm、細孔の間隔を0.25mmにした場合、5mm×5mmの領域に441個の細孔を形成することができる。
【0020】
気泡発生装置1では、筒状体3を介して圧電素子4により振動板2を振動させている。図2は、本実施の形態に係る気泡発生装置1の斜視図である。図3は、本実施の形態に係る気泡発生装置の断面図である。図1に示す筒状体3は、図3に示すように第1筒状体31、バネ部32、第2筒状体33、および錘部34を含んでいる。なお、図3の気泡発生装置1は、第2筒状体33の貫通方向(図中、上下方向)に中央で切断した断面図である。
【0021】
振動板2の端部は、円筒状の第1筒状体31の端部により保持されている。振動板2に形成された複数の細孔の貫通方向が、第1筒状体31の振動方向に対して平行となる位置において、振動板2が第1筒状体31に支持されている。第1筒状体31の外径は、振動板2の直径よりも小さくなっており、例えば振動板2の直径が14mmなのに対して第1筒状体31の外径は8mmである。第1筒状体31は、振動板2側とは反対側の端部がバネ部32に支持されている。バネ部32は、弾性変形可能な板状の部材であり、円筒状の第1筒状体31の底面を支持し、支持した位置から外側に向かって延伸している。バネ部32は、中空円状であり、当該中空円状の上に第1筒状体31が形成されている。
【0022】
バネ部32は、第1筒状体31を支持する位置の外側にある位置において第2筒状体33により支持されている。第2筒状体33は、円筒状の形態である。第2筒状体33は、一方の端によりバネ部32を支持する。第2筒状体33の他方の端には、外側に円筒状の錘部34を有している。なお、錘部34の形状、位置および質量は、バネ部32の外側の端部または第2筒状体33の外側面が振動のノードとなる駆動が可能となる条件を満たしている。錘部34の形状、位置および質量は、気泡発生装置1の他の構成を含めてシミュレーションを行い、当該条件を満たすように決定する。もちろん、気泡発生装置1は、バネ部32の外側の端部または第2筒状体33の外側面が振動のノードとなる駆動が可能であれば、錘部34を有していなくてもよい。
【0023】
バネ部32の下面には、バネ部32の形状に合わせて中空円状の圧電素子4が設けられている。圧電素子4は、第1筒状体31の貫通方向(図中、上下方向)に振動する。圧電素子4が第1筒状体31の貫通方向に振動することにより、バネ部32を第1筒状体31の貫通方向に振動させて第1筒状体31が略均一に上下方向に変位させる。なお、圧電素子4は、中空円状ではなく、第2筒状体33の内径の全面を覆う円状であってもよい。なお、錘部34の形状、位置および質量は、圧電素子4を駆動させた場合に、振動板2が平行に上下振動する駆動が可能となる条件を満たしていることがさらに望ましい。錘部34の形状、位置および質量は、気泡発生装置1の他の構成を含めてシミュレーションを行い、当該条件を満たすように決定する。もちろん、気泡発生装置1は、振動板2が平行に上下振動する駆動が可能であれば、錘部34を有していなくてもよい。第1筒状体31の外径が振動板2の直径と同じであった場合、第2筒状体33の外径が大きくなってしまうので、必然的に圧電素子4も大径化してしまい、コストアップの要因となってしまう。そこで、第1筒状体31の外径は振動板2の直径よりも小さいことが望ましい。具体的には、気泡を発生させるために必要な空気の取り込み量が確保できる程度の空間が第1筒状体31内に形成されていればよく、第1筒状体31の外径は小さい程、圧電素子4を小径化できるので、コストダウンできる。
【0024】
第1筒状体31、バネ部32、第2筒状体33、および錘部34は、一体的に形成される。第1筒状体31、バネ部32、第2筒状体33、および錘部34は、たとえば、ステンレスなどの金属や合成樹脂からなる。好ましくは、ステンレスなどの剛性の高い金属が望ましい。なお、第1筒状体31、バネ部32、第2筒状体33、および錘部34を別体として形成してもよいし、別部材として形成してもよい。振動板2と第1筒状体31との接合方法は、特に問わない。振動板2と第1筒状体31とを、接着剤、溶着、嵌合、圧入、などで接合してもよい。
【0025】
気泡発生装置1は、図1に示すように、バネ部32の外側の端部または第2筒状体33の外側面において、液体槽10の底部の一部に開けた孔と結合している。バネ部32の外側の端部または第2筒状体33の外側面は、後述するように圧電素子4により振動板2を振動させても、ほぼ無振動である。そのため、圧電素子4の振動を液体槽10に伝えずに、実質的に振動板2のみを振動させることが可能である。
【0026】
圧電素子4は、例えば、厚み方向において分極することで振動する。圧電素子4は、チタン酸ジルコン酸鉛系圧電セラミックスからなる。もっとも、(K,Na)NbO3などの他の圧電セラミックスが用いられてもよい。さらにLiTaO3などの圧電単結晶が用いられてもよい。
【0027】
気泡発生装置1では、液体に接する振動板2の構造を例えばガラス板とし、筒状体3を介して圧電素子4により振動板2を振動させる構成にすることで、気体を導入する空間と液体とを完全分離することができる。気体を導入する空間と液体とを完全分離することで、圧電素子4の電気配線等が液体に浸かることを防止できる。また、気泡発生装置1では、液体槽10の液体に対して紫外光を発する光源を設ける場合でも、気体を導入する空間に当該光源を設けることができるので、当該光源の電気配線等が液体に浸かることも防止できる。
【0028】
次に、気泡発生装置1での振動板2の振動について詳しく説明する。図4は、本実施の形態に係る気泡発生装置1の振動板2の振動を説明するための図である。図4には、気泡発生装置1の断面図に、振動板2の振動についてシミュレーションした結果の変位が示されている。図4では、振動を開始する前の気泡発生装置1の基準位置を破線で示し、変位後の気泡発生装置1の位置を実線で示す。
【0029】
コントローラ20(図1参照)からの駆動信号に基づいて、圧電素子4を第1筒状体31の貫通方向に振動させると、たとえば、図4に示すようにバネ部32が下方に変位する。第1筒状体31を支持しているバネ部32の位置が下側に沈み込むことにより、第1筒状体31の全体が下方に変位する結果、第1筒状体31に保持されている振動板2の全体が下方に変位する。このとき、ノード(圧電素子4の振動によっても変位しない部分)は、バネ部32の外側の端部または第2筒状体33の外側面に形成される。そのため、バネ部32の外側の端部または第2筒状体33の外側面において液体槽10と結合することにより、圧電素子4の振動を実質的に液体槽10に伝えずに振動板2を振動させることができる。
【0030】
図示していないが、圧電素子4を振動させ続けることにより、バネ部32が下方に変位した後、バネ部32が上方に変位する。第1筒状体31を支持しているバネ部32の位置が上側にせり上がることにより、第1筒状体31の全体が上方に変位する結果、第1筒状体31に保持されている振動板2の全体が上方に変位する。
【0031】
本実施の形態に係る気泡発生装置1では、上述したように圧電素子4を振動させることにより、振動板2自体がほぼ変形することなく、振動板2の全体が略均一に上下方向に変位する。そのため、気泡発生装置1では、バネ部32の上下共振を利用して振動板2を平面的に駆動することにより、振動板2のどの位置においても同じせん断応力となり、振動板2の複数の細孔を通って送り込まれた気体を当該せん断応力により引きちぎり均等な気泡を発生させる。なお、本実施の形態では、振動板2の全体が略均一に上下方向に振動することをバネ振動(ピストン振動)と称し、そのような振動モードをバネ振動モードと称す。
【0032】
気泡発生装置1は、振動板2をバネ振動モードにより振動させる場合、圧電素子4に印加する駆動信号の周波数を共振周波数とする。図5は、本実施の形態に係る気泡発生装置1の圧電素子4に印加する駆動信号の周波数とインピーダンスとの関係を示す図である。
【0033】
図5から分かるように、約32kHz辺りの周波数Aにおいて圧電素子4のインピーダンスが大きく変化している。コントローラ20が、周波数Aで振動板2を駆動することにより、振動板2をバネ振動モードにより振動させることができる。この周波数Aが、バネ振動モードの共振周波数である。
【0034】
バネ振動モードの共振周波数は、振動板2を気中において駆動させた場合と、振動板2を液中において駆動させた場合とで変化する。図6は、本実施の形態に係る気泡発生装置1の振動板2を気中において駆動させた場合と、振動板2を液中において駆動させた場合と共振周波数の変化を示す図である。
【0035】
図6から分かるように、振動板2を気中において駆動させた場合、約32kHz辺りの周波数において共振周波数となり、振動板2の振動速度が最大となる。一方、振動板2を液中において駆動させた場合、約30kHz辺りの周波数において共振周波数となり、振動板2の振動速度が最大となる。振動板2を気中において駆動させた場合に比べ、振動板2を液中において駆動させた場合の方が、振動速度は低下しているが液中においても振動板2が十分に振動していることが分かる。そのため、気泡発生装置1は、振動板2が液中にあっても、振動板2の複数の細孔を通って送り込まれた気体を引きちぎり気泡を発生させるだけのせん断応力を生じていることが分かる。
【0036】
さらに、振動板2を気中において駆動させた場合と、振動板2を液中において駆動させた場合とで振動板2の変位量を比較する。図7は、本実施の形態に係る気泡発生装置1の振動板2を気中において駆動させた場合と、振動板2を液中において駆動させた場合との振動板2の変位量を示す図である。図7(a)は、振動板2を気中において駆動させた場合の振動板2の変位量を示す図で、図7(b)は、振動板2を液中において駆動させた場合の振動板2の変位量を示す図である。なお、図7(a)および図7(b)では、図4に示す上下方向をZ方向、左右方向をX方向、X方向およびZ方向に対して垂直方向をY方向としている。また、図7(a)および図7(b)では、X方向の振動板2の変位量を実線で、Y方向の振動板2の変位量を破線でそれぞれ示し、図中の矢印は振動板2を上方向に変位させている状態を示している。
【0037】
図7(a)から分かるように、振動板2を気中において2Vp-pの電圧で駆動させた場合、振動板2のXY面内においてピーク値で見て均一に約3.3nm程度変位している。一方、図7(b)から分かるように、振動板2を液中において駆動させた場合、振動板2を気中において駆動させた場合に比べて振動板2の端部における変位量が低下しているが、振動板2の中央部において振動板2のXY面内において均一に約2.0nm程度変位している。通常、振動板を液中に入れると振動が制動されて1/10程度になるが、このことからも、気泡発生装置1が、振動板2が液中にあっても、振動板2の複数の細孔を通って送り込まれた気体を振動板2の振動により引きちぎり気泡を十分発生させることが分かる。
【0038】
以上のように、本実施の形態に係る気泡発生装置1は、液体槽10に取り付け、液体槽10の液体中に微細な気泡を発生させる。気泡発生装置1は、振動板2と、第1筒状体31と、バネ部32と、第2筒状体33と、圧電素子4と、を備える。振動板2は、複数の開口部が形成され、一方の面が液体槽10の液体と接し、他方の面が気体と接する位置に設けられる。第1筒状体31は、一方の端により振動板2を支持する。バネ部32は、板状であり、第1筒状体31の他方の端を支持する。第2筒状体33は、第1筒状体31を支持する位置より外側にある位置においてバネ部32を一方の端により支持する。圧電素子4は、バネ部32を振動させる。圧電素子4は、第2筒状体33により支持される側のバネ部32の面において、第2筒状体33により支持される位置よりも内側に設けられる。
【0039】
これにより、気泡発生装置1は、圧電素子4を第2筒状体33により支持される側で、第2筒状体33により支持される位置よりも内側のバネ部32の面に設けられるので、液体槽10に入れる液体の種類によらず、微細な気泡を効果的に発生させることができる。
【0040】
圧電素子4は、第2筒状体33により支持される側のバネ部32の面において、第2筒状体33の内径の全面に設けられることが好ましい。これにより、微細な気泡をより効果的に発生させることができる。
【0041】
気泡発生装置1は、バネ部32の外側の端部、または第2筒状体33の外側面で液体槽10と接し、圧電素子4の駆動を制御することができるコントローラ20(制御部)をさらに備えることが好ましい。圧電素子4の共振周波数は、液体槽10に液体が入ることで、気中である場合に比べて変動する。コントローラ20は、バネ部32の外側の端部または第2筒状体33の外側面が振動のノードとなるように駆動周波数を周波数掃引させながらサーチし、圧電素子4の駆動を制御することが好ましい。これにより、圧電素子4の駆動を液体槽10に伝えずに振動板2を振動させることができる。
【0042】
気泡発生装置1は、第2筒状体33の他方の端に設けられる錘部34を、さらに備えることが好ましい。錘部34は、圧電素子4を駆動させた場合に、バネ部32の外側の端部または第2筒状体33の外側面が振動のノードとなる駆動が可能となる条件を満たす形状、位置および質量を有することが好ましい。これにより、バネ部32の外側の端部または第2筒状体33の外側面が振動のノードとなる駆動をより実現しやすくなる。
【0043】
錘部34は、圧電素子4を駆動させた場合に、振動板2が平行に上下振動する駆動が可能となる条件を満たす形状、位置および質量を有することが好ましい。これにより、振動板2が平行に上下振動する駆動をより実現しやすくなる。
【0044】
振動板2は、振動板2に形成された複数の細孔の貫通方向が、第1筒状体31の振動方向に対して平行となる位置において第1筒状体31に支持されていることが好ましい。これにより、気体に浮力が生じる方向に振動板2の振動方向を合わせることができる。
【0045】
(変形例1)
前述の実施の形態に係る気泡発生装置1では、錘部34の形状が第2筒状体33の形状に沿って円筒状であると説明したが、これに限定されない。錘部の形状は、例えば、振動板2が液体と接する面側から見た形状が矩形形状であってもよい。図8は、変形例1に係る気泡発生装置1aの斜視図である。なお、図8に示す気泡発生装置1aのうち、図2に示す気泡発生装置1と同じ構成については同じ符号を付して詳しい説明は繰り返さない。
【0046】
第2筒状体33の他方の端には、外側に角柱状の錘部34aを有している。なお、錘部34aの形状、位置および質量は、バネ部32の外側の端部または第2筒状体33の外側面が振動のノードとなる駆動が可能となる条件、および振動板2が平行に上下振動する駆動が可能となる条件を満たしている。錘部34aの形状、位置および質量は、気泡発生装置1aの他の構成を含めてシミュレーションを行い、当該条件を満たすように決定する。
【0047】
(変形例2)
さらに、前述の実施の形態に係る気泡発生装置1では、振動板2に形成された複数の細孔の貫通方向が、第1筒状体31の振動方向に対して平行となる位置において振動板2が第1筒状体31に支持されていると説明したが、これに限定されない。振動板は、例えば、複数の開口部の貫通方向が第1筒状体の振動方向に対して垂直となる構造体を有してもよい。図9は、変形例2に係る気泡発生装置1bの断面図である。なお、図9に示す気泡発生装置1bのうち、図3に示す気泡発生装置1と同じ構成については同じ符号を付して詳しい説明は繰り返さない。
【0048】
第1筒状体31の端部により保持している振動板2aに複数の細孔(開口部)を設けずに、複数の細孔を設けた板2bを振動板2aに対して垂直方向に設けた構造体2Aを設けている。構造体2Aは、中空の角柱状であり、当該角柱状の対向する2面に板2bを設けている。構造体2Aの中空部分と第1筒状体31とは中空の柱2cにより接続され、第1筒状体31から構造体2Aの中空部に対して気体が送り込まれる。
【0049】
構造体2Aの中空部に送り込まれた気体は、板2bに設けた複数の細孔を通って液体側に出る。複数の細孔を通って液体側に出た気体は、振動板2aに対して垂直方向に振動させた板2bにより引きちぎられて微細な気泡200となる。気泡発生装置1bは、圧電素子4を駆動させた場合に、振動板2aが平行に上下振動するため、板2bに設けた複数の細孔の貫通方向が振動板2aに対して上下振動する。そのため、複数の細孔を通って液体側に出た気体には、振動板2を上下振動させた場合に生じるせん断応力に比べて大きいせん断応力を、振動板2aに対して垂直となる方向に振動する板2bにより加えることができる。また、気泡200は、振動板2aに対して垂直となる方向から液体側に出るので、振動板2aの振動により生じる超音波による音圧を受けず、当該音圧により強制的に上昇させられることがない。
【0050】
さらに、複数の細孔を設けた板2bが構造体2Aに設けられ、圧電素子4の駆動が振動板2aを介して構造体2Aを上下振動させるので、圧電素子4の駆動が板2bに対して直接加わらないため、板2bが屈曲振動し難くなる。板2bが屈曲振動し難くなることで、より薄い振動板を使っても屈曲変形による破損が防げる。細孔加工の限界アスペクト比は一定なので、板厚みが薄い方が微細な穴を形成しやすい。すなわち、より微細な複数の細孔を板2bに設けても破壊され難くなる。例えば、板2bにSOI基板に下限2μm以下の微細孔が0.5μmまで加工可能になる。
【0051】
なお、構造体2Aの構造は、図9に示した構造に限定されない。図9に示した構造体2Aでは、角柱状の対向する2面に板2bを設けているが、立方体の4面に板2bを設けてもよい。図10は、別の構造体2Bの斜視図である。構造体2Bでは、中空の立方体であり、当該立方体の側面の4面に板2bを設けている。構造体2Bの中空部分と第1筒状体31とは中空の柱2cにより接続され、第1筒状体31から構造体2Bの中空部に対して気体が送り込まれる。構造体2Bでは、立方体の4面から気泡200を発生させることができる。
【0052】
さらに、構造体の形状は、中空の角柱状に限定されず中空の円筒状であってもよい。図11は、さらに別の構造体2Cの斜視図である。構造体2Cでは、中空の円筒状であり、複数の細孔を設けた筒体2dを当該円筒状の側面に設けている。構造体2Cの中空部分と第1筒状体31とは中空の柱2cにより接続され、第1筒状体31から構造体2Cの中空部に対して気体が送り込まれる。構造体2Cでは、円筒状の全周から気泡200を発生させることができる。
【0053】
振動板2aは、複数の細孔の貫通方向が第1筒状体31の振動方向に対して垂直となる構造体2A~2Cを有すること好ましい。これにより、気泡200を超音波から保護でき、板2bまたは筒体2dのせん断応力が向上し、板2b自体が壊れ難くなる。なお、構造体は、筒状体であることが好ましい。これにより、構造体2Cの全周から気泡200を発生させることができる。
【0054】
第2筒状体33は、図2に示すようにフランジ部33aを設け、フランジ部33aを介して液体槽10を結合させてもよい。これにより、気泡発生装置1と液体槽10とを備える気泡発生システム100において、気泡発生装置1と液体槽10との気密性が高くなる。また、気泡発生装置1が、第2筒状体33の側面において液体槽10と結合されているので、圧電素子4の振動を液体槽10に伝えずに、振動板2のみを振動させることが可能になる。
【0055】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
1,1a,1b 気泡発生装置、2,2a 振動板、2A,2B,2C 構造体、2b 板、2c 柱、2d 筒体、3 筒状体、4 圧電素子、10 液体槽、20 コントローラ、31 第1筒状体、32 バネ部、33 第2筒状体、33a フランジ部、34,34a 錘部、100 気泡発生システム、200 気泡。
図1
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