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特許7468780ポリウレタン鎖延長剤、ポリウレタン系樹脂形成用組成物、ポリウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂組成物、成形体及び物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ポリウレタン鎖延長剤、ポリウレタン系樹脂形成用組成物、ポリウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂組成物、成形体及び物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/65 20060101AFI20240409BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20240409BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C08G18/65 023
C08G18/10
C08G18/32 034
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023509521
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(86)【国際出願番号】 JP2022041164
(87)【国際公開番号】W WO2023085209
(87)【国際公開日】2023-05-19
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2021185805
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 雄磨
(72)【発明者】
【氏名】赤井 優花
(72)【発明者】
【氏名】花岡 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】池内 孝介
(72)【発明者】
【氏名】河野 和起
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-048411(JP,A)
【文献】特開平01-160950(JP,A)
【文献】特開2009-091519(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107663670(CN,A)
【文献】特開昭55-009699(JP,A)
【文献】特表2006-504849(JP,A)
【文献】国際公開第2014/141475(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/099204(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるアミン化合物(X)からなるポリウレタン鎖延長剤であって、
前記アミン化合物(X)におけるトランス体の比率が60モル%以上99モル%以下であり、
前記ポリウレタン鎖延長剤が、ポリイソシアネート化合物(A)及びポリオール化合物(B)と反応させるか、又は、ポリイソシアネート化合物(A)とポリオール化合物(B)とを予め反応させたイソシアネート基末端プレポリマーと反応させるものである、ポリウレタン鎖延長剤。
【化1】

(上記式(1)中、R~R12はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、p及びqはそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、p及びqの少なくとも一方は1以上である。)
【請求項2】
前記アミン化合物(X)が1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを含む、請求項1に記載のポリウレタン鎖延長剤。
【請求項3】
ポリイソシアネート化合物(A)と、ポリオール化合物(B)と、請求項1に記載のポリウレタン鎖延長剤(C)とを含む、ポリウレタン系樹脂形成用組成物。
【請求項4】
ポリイソシアネート化合物(A)とポリオール化合物(B)とが反応してなるイソシアネート基末端プレポリマーと、請求項1に記載のポリウレタン鎖延長剤(C)とを含む、ポリウレタン系樹脂形成用組成物。
【請求項5】
請求項に記載のポリウレタン系樹脂形成用組成物により形成されたポリウレタン系樹脂。
【請求項6】
請求項に記載のポリウレタン系樹脂形成用組成物により形成されたポリウレタン系樹脂。
【請求項7】
ポリイソシアネート化合物(A)、ポリオール化合物(B)、及び請求項1に記載のポリウレタン鎖延長剤(C)を反応させてなる、ポリウレタン系樹脂。
【請求項8】
前記ポリオール化合物(B)中の活性水素基数と前記ポリウレタン鎖延長剤(C)中の活性水素基数との合計量に対する前記ポリウレタン鎖延長剤(C)中の活性水素基数の比が0.01以上0.5以下である、請求項のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂。
【請求項9】
前記ポリオール化合物(B)中の活性水素基数と前記ポリウレタン鎖延長剤(C)中の活性水素基数との合計量に対する前記ポリイソシアネート化合物(A)中のイソシアネート基数の比が0.5以上1.5以下である、請求項のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂。
【請求項10】
JIS K 6251:2017に準拠し、引張速度200mm/min、チャック間距離50mmの条件で測定される、前記ポリウレタン系樹脂の引張強度が1.0MPa以上である、請求項のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂。
【請求項11】
JIS K 6251:2017に準拠し、引張速度200mm/min、チャック間距離50mmの条件で測定される、前記ポリウレタン系樹脂の引張弾性率が2.5MPa以上である、請求項のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂。
【請求項12】
JIS K 6253:2012に準拠して測定される、前記ポリウレタン系樹脂のショアA硬度が50以上である、請求項のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂。
【請求項13】
ポリウレタンウレア樹脂である、請求項のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂。
【請求項14】
請求項のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂を含むポリウレタン系樹脂組成物。
【請求項15】
請求項14に記載のポリウレタン系樹脂組成物を成形してなる成形体。
【請求項16】
請求項14に記載のポリウレタン系樹脂組成物を含む物品。
【請求項17】
請求項15に記載の成形体を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン鎖延長剤、ポリウレタン系樹脂形成用組成物、ポリウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂組成物、成形体及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン系樹脂は、例えば機械強度、柔軟性、耐摩耗性、耐油性等に優れ、各種産業分野において広く使用されている。
ポリウレタン系樹脂は、例えばポリイソシアネート、ポリオール及び鎖延長剤の反応により得ることができる。ポリイソシアネート、ポリオール及び鎖延長剤の種類や配合割合を変更することにより、得られるポリウレタン系樹脂の各種物性を調整することができる。
このようなポリウレタン系樹脂に関する技術としては、例えば、特許文献1及び2に記載のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、非水系分散媒中のイソシアネート基末端プレポリマーに、鎖伸長剤、非水系分散媒及び分散安定剤を含む鎖伸長剤の分散液を配合して、鎖伸長反応することにより得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂が記載されている。
【0004】
特許文献2には、ポリイソシアネート及び水素活性部分を有する分子、並びに任意的な連鎖延長剤及び/又は界面活性剤の混合物、を含んでなり、ポリイソシアネートがビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン化合物を含むポリウレタン分散液が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-91519号公報
【文献】特開2011-46968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討によれば、特許文献1及び2に記載されているようなポリウレタン系樹脂は、引張強度や引張弾性率、硬度等の機械的特性の観点で改善の余地があることが明らかになった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、得られるポリウレタン系樹脂の機械的特性を向上できるポリウレタン鎖延長剤及びポリウレタン系樹脂形成用組成物、並びに、機械的特性が向上したポリウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂組成物、成形体及び物品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定のアミン化合物をポリウレタン鎖延長剤に用いることにより、得られるポリウレタン系樹脂の機械的特性を向上できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示すポリウレタン鎖延長剤、ポリウレタン系樹脂形成用組成物、ポリウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂組成物、成形体及び物品が提供される。
【0009】
[1]
下記式(1)で示されるアミン化合物(X)を含むポリウレタン鎖延長剤であって、
前記アミン化合物(X)におけるトランス体の比率が50モル%以上であるポリウレタン鎖延長剤。
【化1】

(上記式(1)中、R~R12はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、p及びqはそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、p及びqの少なくとも一方は1以上である。)
[2]
前記アミン化合物(X)が1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びその誘導体から選択される少なくとも一種を含む、前記[1]に記載のポリウレタン鎖延長剤。
[3]
前記アミン化合物(X)におけるトランス体の比率が100モル%以下である、前記[1]又は[2]に記載のポリウレタン鎖延長剤。
[4]
ポリイソシアネート化合物(A)と、ポリオール化合物(B)と、前記[1]~[3]のいずれかに記載のポリウレタン鎖延長剤(C)とを含む、ポリウレタン系樹脂形成用組成物。
[5]
ポリイソシアネート化合物(A)とポリオール化合物(B)とが反応してなるイソシアネート基末端プレポリマーと、前記[1]~[3]のいずれかに記載のポリウレタン鎖延長剤(C)とを含む、ポリウレタン系樹脂形成用組成物。
[6]
前記[4]又は[5]に記載のポリウレタン系樹脂形成用組成物により形成されたポリウレタン系樹脂。
[7]
ポリイソシアネート化合物(A)、ポリオール化合物(B)、及び前記[1]~[3]のいずれかに記載のポリウレタン鎖延長剤(C)を反応させてなる、ポリウレタン系樹脂。
[8]
前記ポリオール化合物(B)中の活性水素基数と前記ポリウレタン鎖延長剤(C)中の活性水素基数との合計量に対する前記ポリウレタン鎖延長剤(C)中の活性水素基数の比が0.01以上0.5以下である、前記[6]又は[7]に記載のポリウレタン系樹脂。
[9]
前記ポリオール化合物(B)中の活性水素基数と前記ポリウレタン鎖延長剤(C)中の活性水素基数との合計量に対する前記ポリイソシアネート化合物(A)中のイソシアネート基数の比が0.5以上1.5以下である、前記[6]~[8]のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂。
[10]
JIS K 6251:2017に準拠し、引張速度200mm/min、チャック間距離50mmの条件で測定される、前記ポリウレタン系樹脂の引張強度が1.0MPa以上である、前記[6]~[9]のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂。
[11]
JIS K 6251:2017に準拠し、引張速度200mm/min、チャック間距離50mmの条件で測定される、前記ポリウレタン系樹脂の引張弾性率が2.5MPa以上である、前記[6]~[10]のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂。
[12]
JIS K 6253:2012に準拠して測定される、前記ポリウレタン系樹脂のショアA硬度が50以上である、前記[6]~[11]のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂。
[13]
ポリウレタンウレア樹脂である、前記[6]~[12]のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂。
[14]
前記[6]~[13]のいずれかに記載のポリウレタン系樹脂を含むポリウレタン系樹脂組成物。
[15]
前記[14]に記載のポリウレタン系樹脂組成物を成形してなる成形体。
[16]
前記[14]に記載のポリウレタン系樹脂組成物又は前記[15]に記載の成形体を含む物品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、得られるポリウレタン系樹脂の機械的特性を向上できるポリウレタン鎖延長剤及びポリウレタン系樹脂形成用組成物、並びに、機械的特性が向上したポリウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂組成物、成形体及び物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明の内容を限定しない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。本実施形態において、好ましいとされている規定は任意に採用することができ、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましいといえる。本実施形態において、「XX~YY」の記載は、「XX以上YY以下」を意味する。
【0012】
[ポリウレタン鎖延長剤]
本発明のポリウレタン鎖延長剤は、下記式(1)で示されるアミン化合物(X)を含み、アミン化合物(X)におけるトランス体の比率が50モル%以上である。
【0013】
【化2】

上記式(1)中、R~R12はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、p及びqはそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、p及びqの少なくとも一方は1以上である。
【0014】
本発明のポリウレタン鎖延長剤は、ポリウレタン系樹脂を製造する際の鎖延長剤として用いることにより、得られるポリウレタン系樹脂の機械的特性を向上させることができる。ここで、本明細書において、機械的特性としては、引張強度や引張弾性率、硬度等が挙げられる。
【0015】
(アミン化合物(X))
アミン化合物(X)は、上記式(1)で示される化合物である。
上記式(1)中、R~R12は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示す。
及びRは、得られるポリウレタン系樹脂の機械的特性をより向上させる観点から、それぞれ独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基であり、更に好ましくは水素原子又はメチル基であり、更に好ましくは水素原子であり、更に好ましくはR及びRの両方が水素原子である。
~R12は、得られるポリウレタン系樹脂の機械的特性をより向上させる観点から、それぞれ独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基であり、更に好ましくは水素原子又はメチル基であり、更に好ましくは水素原子であり、更に好ましくはR~R12のすべてが水素原子である。
【0016】
p及びqは、それぞれ独立に、0以上4以下の整数であり、得られるポリウレタン系樹脂の機械的特性をより向上させる観点から、好ましくは1以上であり、そして好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1であり、p及びqの両方が1であることが更に好ましい。ただし、p及びqの少なくとも一方は1以上4以下の整数である。
【0017】
アミン化合物(X)としては、得られるポリウレタン系樹脂の機械的特性をより向上させる観点から、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びその誘導体から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンがより好ましい。
ここで、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの誘導体としては、例えば、上記式(1)中のR~R12の水素原子のうちの少なくとも1つが、炭素数1以上4以下の炭化水素基で置換された化合物が挙げられる。1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの誘導体における前記炭化水素基としては、得られるポリウレタン系樹脂の機械的特性をより向上させる観点から、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基、より好ましくはメチル基又はエチル基、更に好ましくはメチル基である。
【0018】
これらのアミン化合物(X)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。アミン化合物(X)は公知の方法により製造することができる。
【0019】
アミン化合物(X)におけるトランス体の比率は50モル%以上であり、得られるポリウレタン系樹脂の機械的特性をより向上させる観点から、好ましくは55モル%以上、より好ましくは58モル%以上、更に好ましくは60モル%以上であり、同様の観点から、好ましくは100モル%以下、より好ましくは100モル%未満、更に好ましくは99モル%以下である。なお、実用的な製造性の観点からは、アミン化合物(X)におけるトランス体の比率は、更に好ましくは97モル%以下、更に好ましくは95モル%以下、更に好ましくは93モル%以下、更に好ましくは90モル%以下、更に好ましくは88モル%以下である。
ここで、アミン化合物(X)には、前記式(1)で示される、シス体及びトランス体のアミン化合物の両方が包含され、アミン化合物(X)中のシス体及びトランス体の合計は100モル%である。また、シス体のアミン化合物(X)とは、前記式(1)における2つのアミノ基含有基が、シクロヘキサン環においてシス位にあるアミン化合物を意味し、トランス体のアミン化合物(X)とは、前記式(1)における2つのアミノ基含有基が、シクロヘキサン環においてトランス位にあるアミン化合物を意味する。
アミン化合物(X)におけるトランス体の比率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0020】
本発明に係るポリウレタン鎖延長剤中のアミン化合物(X)の含有量は、得られるポリウレタン系樹脂の機械的特性をより向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは100質量%以下である。
【0021】
(その他の成分)
本発明に係るポリウレタン鎖延長剤は、本発明の目的を損なわない範囲でアミン化合物(X)以外の鎖延長剤を適宜含有してもよい。アミン化合物(X)以外の鎖延長剤としては、例えば、ポリウレタン系樹脂の鎖延長剤として一般的に使用される鎖延長剤が挙げられる。このような鎖延長剤としては、例えば、従来公知の多価アルコール類やアミン化合物(X)以外のアミン化合物が挙げられる。
【0022】
[ポリウレタン系樹脂形成用組成物]
本発明のポリウレタン系樹脂形成用組成物は、ポリウレタン系樹脂を形成するための組成物であって、ポリイソシアネート化合物(A)と、ポリオール化合物(B)と、前述した本発明に係るポリウレタン鎖延長剤(以下、「ポリウレタン鎖延長剤(C)」ともいう。)と、を含む。
また、本発明のポリウレタン系樹脂形成用組成物は、ポリイソシアネート化合物(A)とポリオール化合物(B)とが反応してなるイソシアネート基末端プレポリマーと、ポリウレタン鎖延長剤(C)とを含む組成物であってもよい。
本発明に係るポリウレタン系樹脂形成用組成物は、前述した本発明に係るポリウレタン鎖延長剤(C)を含むため、得られるポリウレタン系樹脂の機械的特性を向上させることができる。
【0023】
(ポリイソシアネート化合物(A))
ポリイソシアネート化合物(A)としては、イソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されず、従来公知のものを使用できる。
イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物としては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、1,5-オクチレンジイソシアネート等の鎖状脂肪族ジイソシアネート化合物;4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂環式構造含有ジイソシアネート化合物;2,4-もしくは2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート、p-もしくはm-キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリジンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルスルホンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチル-m-キシリレンジイソシアネート等の芳香環含有ジイソシアネート化合物等が挙げられる。
イソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリイソシアネートフェニルチオフォスフェート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、HDIやTDIのトリマーであるイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体等が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物(A)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
これらの中でも、ポリイソシアネート化合物(A)としては、イソシアネート基を2個有するジイソシアネートが好ましく、脂環式構造含有ジイソシアネート化合物がより好ましく、イソホロンジイソシアネートが更に好ましい。
【0025】
(ポリオール化合物(B))
ポリオール化合物(B)としては、特に限定されず、従来公知のものを使用できる。
ポリオール化合物(B)としては、例えば、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリラクトン系ポリオール等が挙げられる。
【0026】
ポリエステル系ポリオールとしては、多価カルボン酸もしくはその反応性誘導体と多価アルコールとの縮合物であれば特に限定されず、例えば、ジカルボン酸とグリコール類とを縮合重合させて得られるものが挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸等の鎖状脂肪族ジカルボン酸;オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;及びこれらの反応性誘導体;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。これらのジカルボン酸は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
グリコール類としては、例えば、ジメチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、1,2-ブタンジオール、ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジメチルブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチルペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル1,5-ペンタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、ポリエチレンブチレングリコール等の鎖状脂肪族グリコール;1,3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の脂環式グリコール;m-キシリレングリコール、p-キシリレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等の芳香環含有グリコール等が挙げられる。
これらのグリコール類は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコール、ポリエチレンブチレンアジペートグリコール等の縮合系ポリエステルポリオール等が挙げられる。
ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の低分子ポリオールと、ジエチレンカーボネート、ジプロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネート等のカーボネート化合物との脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる。
ポリラクトン系ポリオールとしては、例えば、上記低分子ポリオール等を開始剤としてラクトンを開環重合させて得られるポリラクトンジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリメチルバレロラクトンジオール等のラクトン系ポリエステルジオール等が挙げられる。
【0028】
また、ポリオール化合物(B)としては、水系ポリウレタン系樹脂に使用されるポリオールを用いてもよい。水系ポリウレタン系樹脂に使用されるポリオールとしては特に限定されないが、例えば、アニオン性基を有するポリオール類が挙げられ、好ましくはジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基を含有するポリオール類が挙げられる。
【0029】
ポリオール化合物(B)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
これらの中でも、ポリオール化合物(B)としては、ポリエステル系ポリオール及びポリエーテル系ポリオールからなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、ポリエーテル系ポリオールがより好ましく、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも一種が更に好ましく、ポリテトラメチレングリコールが更に好ましい。
【0031】
本発明に係るポリウレタン系樹脂形成用組成物において、ポリオール化合物(B)中の活性水素基数とポリウレタン鎖延長剤(C)中の活性水素基数との合計量に対するポリウレタン鎖延長剤(C)中の活性水素基数の比は、得られるポリウレタン系樹脂の機械的特性をより向上させる観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.04以上であり、同様の観点から、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.15以下である。
【0032】
本発明に係るポリウレタン系樹脂形成用組成物において、ポリオール化合物(B)中の活性水素基数とポリウレタン鎖延長剤(C)中の活性水素基数との合計量に対するポリイソシアネート化合物(A)中のイソシアネート基数の比は、得られるポリウレタン系樹脂の機械的特性をより向上させる観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.9以上であり、同様の観点から、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.4以下、更に好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.2以下、更に好ましくは1.1以下である。
【0033】
本発明に係るポリウレタン系樹脂形成用組成物は、必要に応じて、1種以上の溶媒を含むことができる。溶媒としては公知のものを使用でき、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アセトン、水等が挙げられる。
本発明に係るポリウレタン系樹脂形成用組成物が溶媒を含む場合、ポリウレタン系樹脂形成用組成物の固形分濃度は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
本発明に係るポリウレタン系樹脂形成用組成物が溶媒として水を含む場合、ポリウレタン系樹脂形成用組成物はエマルションであってもよい。
【0034】
本発明に係るポリウレタン系樹脂形成用組成物中の、ポリイソシアネート化合物(A)、ポリオール化合物(B)及びポリウレタン鎖延長剤(C)の合計含有量、又は、ポリイソシアネート化合物(A)とポリオール化合物(B)とが反応してなるイソシアネート基末端プレポリマー及びポリウレタン鎖延長剤(C)の合計含有量は、本発明に係るポリウレタン系樹脂形成用組成物に含まれる全固形分を100質量%としたとき、得られるポリウレタン系樹脂の機械的特性をより向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは100質量%以下である。
【0035】
[ポリウレタン系樹脂]
本発明のポリウレタン系樹脂は、前述した本発明に係るポリウレタン系樹脂形成用組成物により形成される。
また、本発明のポリウレタン系樹脂は、ポリイソシアネート化合物(A)、ポリオール化合物(B)、及び前述した本発明に係るポリウレタン鎖延長剤(C)を反応させてなるものであってもよい。
本発明に係るポリウレタン系樹脂は、前述した本発明に係るポリウレタン鎖延長剤(C)を含むため、機械的特性を向上させることができる。
ここで、本発明に係るポリウレタン系樹脂は、ポリウレタン鎖延長剤(C)としてアミン化合物(X)を用いているため、構造中にウレア結合を有する。そのため、本発明に係るポリウレタン系樹脂は、ポリウレタンウレア樹脂を含み、好ましくはポリウレタンウレア樹脂である。
【0036】
本発明に係るポリウレタン系樹脂は、前述した本発明に係るポリウレタン系樹脂形成用組成物を加熱することにより製造することができる。
また、本発明に係るポリウレタン系樹脂は、例えば、ポリイソシアネート化合物(A)とポリオール化合物(B)とを予め反応させたイソシアネート基末端プレポリマーと、ポリウレタン鎖延長剤(C)とを反応させる、いわゆるプレポリマー法や、ポリオール化合物(B)とウレタン鎖延長剤(C)とを予め混合し、次いでこの混合物とポリイソシアネート化合物(A)とを反応させる、いわゆるワンショット法を用いて製造することができる。
【0037】
本発明に係るポリウレタン系樹脂の引張強度は、ポリウレタン系樹脂の機械的特性をより向上させる観点から、好ましくは1.0MPa以上、より好ましくは1.1MPa以上、更に好ましくは1.2MPa以上、更に好ましくは1.3MPa以上、更に好ましくは1.4MPa以上である。ポリウレタン系樹脂の機械的特性をより向上させる観点から、前記引張強度は高ければ高いほど好ましいため、上限値は特に限定されないが、例えば10MPa以下であり、5.0MPa以下であってもよく、2.0MPa以下であってもよい。
前記引張強度はJIS K 6251:2017に準拠し、引張速度200mm/min、チャック間距離50mmの条件で測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0038】
本発明に係るポリウレタン系樹脂の引張弾性率は、ポリウレタン系樹脂の機械的特性をより向上させる観点から、好ましくは2.5MPa以上、より好ましくは2.6MPa以上、更に好ましくは2.7MPa以上、更に好ましくは2.8MPa以上、更に好ましくは2.9MPa以上である。ポリウレタン系樹脂の機械的特性をより向上させる観点から、前記引張弾性率は高ければ高いほど好ましいため、上限値は特に限定されないが、例えば10MPa以下であり、5.0MPa以下であってもよく、3.5MPa以下であってもよい。
前記引張弾性率はJIS K 6251:2017に準拠し、引張速度200mm/min、チャック間距離50mmの条件で測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0039】
本発明に係るポリウレタン系樹脂のショアA硬度は、ポリウレタン系樹脂の機械的特性をより向上させる観点から、好ましくは50以上、より好ましくは53以上、更に好ましくは55以上、更に好ましくは56以上、更に好ましくは58以上、更に好ましくは59以上である。ポリウレタン系樹脂の機械的特性をより向上させる観点から、前記ショアA硬度は高ければ高いほど好ましいため、上限値は特に限定されないが、例えば80以下であり、70以下であってもよく、65以下であってもよい。
前記ショアA硬度はJIS K 6253:2012に準拠して測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0040】
[ポリウレタン系樹脂組成物]
本発明のポリウレタン系樹脂組成物は、前述した本発明に係るポリウレタン系樹脂を含むものである。本発明に係るポリウレタン系樹脂組成物は、前述した本発明に係るポリウレタン系樹脂を含むため、機械的特性を向上させることができる。
本発明に係るポリウレタン系樹脂組成物中の本発明に係るポリウレタン系樹脂の含有量は、機械的特性をより向上させる観点から、本発明に係るポリウレタン系樹脂組成物に含まれる全樹脂成分を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは100質量%以下である。
【0041】
本発明に係るポリウレタン系樹脂組成物は、必要に応じて、1種以上の溶媒を含むことができる。溶媒としては公知のものを使用でき、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アセトン、水等が挙げられる。
本発明に係るポリウレタン系樹脂組成物が溶媒を含む場合、ポリウレタン系樹脂組成物の固形分濃度は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
本発明に係るポリウレタン系樹脂組成物が溶媒として水を含む場合、ポリウレタン系樹脂組成物はエマルションであってもよい。
【0042】
本発明に係るポリウレタン系樹脂組成物は特に限定されないが、例えば、フォーム、エラストマー、塗料、繊維、繊維加工剤、接着剤、粘着剤、バインダー、インキ、床材、シーラント、コーキング、医療用材料、皮革用材料、タイヤ用材料、コーティング剤、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物等に広く用いることができる。
【0043】
本発明に係るポリウレタン系樹脂組成物は、用途や必要に応じて、例えばシランカップリング剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、繊維系補強材、顔料、蛍光増白剤、発泡剤、上記ポリウレタン系樹脂以外の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、染料、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、結晶水含有化合物、難燃剤、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、抗菌剤、防黴剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤、有機水溶性化合物、無機水溶性化合物、離型剤等の公知の添加剤を更に含んでもよい。
【0044】
本発明に係るポリウレタン系樹脂組成物の製造方法としては特に限定されないが、例えば、本発明に係るポリウレタン系樹脂と、必要に応じて上記添加剤とを、ニーダやヘンシェルミキサー等で混合した後、得られた混合物を押出成形機に供給し、一般的な熱可塑性ポリウレタン系樹脂を押し出す一般的な温度(例えば150~250℃)で溶融混練し、次いで、ストランドカット又は水中カットでペレット形状にして調製する方法;本発明に係るポリウレタン系樹脂を溶媒中に分散、溶解又は乳化させて調製する方法等が挙げられる。
【0045】
[成形体及び物品]
本発明の成形体は、前述した本発明に係るポリウレタン系樹脂組成物を成形してなるものである。また、本発明の物品は、前述した本発明に係るポリウレタン系樹脂組成物、又は本発明に係る成形体を含むものである。すなわち、前述した本発明に係るポリウレタン系樹脂組成物は、各種成形体及び物品の作製に好適に用いることができる。
本発明に係る成形体及び物品は、前述した本発明に係るポリウレタン系樹脂組成物を含むため、機械的特性を向上させることができる。
本発明に係る物品は、本発明に係るポリウレタン系樹脂組成物又は成形体により全体が構成されていてもよいし、本発明に係るポリウレタン系樹脂組成物又は成形体により一部が構成されていてもよい。本発明に係るポリウレタン系樹脂組成物又は成形体により一部が構成されている態様としては、例えば、表面又は内部に本発明に係るポリウレタン系樹脂組成物又は成形体の層を備える構成;表面又は内部に本発明に係るポリウレタン系樹脂組成物が含浸した層を備える構成等が挙げられる。
【0046】
本発明に係るポリウレタン系樹脂組成物の成形方法としては、一般的な熱可塑性ポリウレタン系樹脂の成形方法が適用でき、例えば、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、真空成形、遠心成形、回転成形、カレンダー加工、ロール加工、プレス加工等の成形方法が挙げられる。これらの成形方法により、本発明に係るポリウレタン系樹脂組成物から、樹脂板、フィルム、シート、異形品等の種々の形状の成形体を製造することができる。
【0047】
成形体及び物品としては、例えば、ベルト、チューブ、ホース、電線被覆材、ケーブル被覆材、消防ホース、ギアー、キャスター、パッキング類、風力発電用風車等の機械工業部品;タイヤ、タイヤ部品、バンパー、サイドモール、テールランプシール、スノーチェーン、ボールジョイントシール、等速ジョイントブーツ、ベローズ、バネカバー材、ABSケーブル、ABSケーブルプラグ、インパネ表皮、ギヤノブ、コンソールボックス、ドアシールカバー、シート材、ノブ類等の乗り物部品;各種シート類、各種積層体、エアーマット、人工皮革、合成皮革、保護フィルム等のフィルム・シート;靴底、時計バンド、カメラグリップ、アニマルイヤータッグ、スマホケース、タブレットケース、キーボード保護カバー、装飾品等の日用品;心臓バルブ、バイバス装置、人工心室、透析用チューブ、薄膜、コネクター、カテーテル、医療用チューブ、ペースメーカーの絶縁体等の医療用途品;内外装材等の建築用資材;スキー板、ラケット等のスポーツ用品;塗装物品;印刷物等を挙げることができる。
【実施例
【0048】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。
【0049】
(アミン化合物におけるトランス体の比率の測定)
GC装置Agilent 7890B GC(Agilent Technologies,inc.製)を使用し、トランス体の比率を測定した。具体的には、FID検出強度(面積値)の比からトランス体の比率を算出した。
【0050】
各実施例・比較例において、ポリウレタン鎖延長剤、ポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物としては以下のものを用いた。
【0051】
(ポリウレタン鎖延長剤)
1,3-BAC:1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(トランス体の比率:25モル%、三菱瓦斯化学株式会社製)
1,4-BAC:1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(トランス体の比率:43モル%、三菱瓦斯化学株式会社製)
1,4-BAC:1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(トランス体の比率:85モル%、三菱瓦斯化学株式会社製)
1,4-BAC:1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(トランス体の比率:100モル%、東京化成工業株式会社製)
1,4-BAC:1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(トランス体の比率:99モル%、以下の製造例1に従って作製した。)
1,4-BAC:1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(トランス体の比率:70モル%、以下の製造例2に従って作製した。)
1,4-BAC:1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(トランス体の比率:60モル%、以下の製造例3に従って作製した。)
IPDA:イソホロンジアミン(東京化成工業株式会社製)
【0052】
(製造例1:1,4-BAC(トランス体の比率:99モル%))
トランス体の比率が43モル%の1,4-BAC(2質量部)と、トランス体の比率が100モル%の1,4-BAC(98質量部)と、を混合することにより作製した。
【0053】
(製造例2:1,4-BAC(トランス体の比率:70モル%))
トランス体の比率が43モル%の1,4-BAC(35質量部)と、トランス体の比率が85モル%の1,4-BAC(65質量部)と、を混合することにより作製した。
【0054】
(製造例3:1,4-BAC(トランス体の比率:60モル%))
トランス体の比率が43モル%の1,4-BAC(58質量部)と、トランス体の比率が85モル%の1,4-BAC(42質量部)と、を混合することにより作製した。
【0055】
(ポリイソシアネート化合物)
IPDI:イソホロンジイソシアネート(東京化成工業株式会社製)
(ポリオール化合物)
PTMG:ポリテトラメチレングリコール(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(その他の化合物)
MEK:メチルエチルケトン(関東化学株式会社製)
【0056】
実施例1
(1)イソシアネート基末端プレポリマー1の合成
攪拌翼及び熱電対を備えた500mLの4口セパラブルフラスコにPTMG(OH基当量:500g/eq.)を101g加え、100℃/減圧度100~200hPaの条件で1時間脱水処理を行った。その後、70℃まで空冷した後、冷却管を備え付け、MEK79g、ジブチル錫ジラウレート0.045g加え、窒素雰囲気下、70℃になるまで加熱した。70℃に到達後、滴下漏斗を備え付け、IPDI25gを60分かけて滴下し、その後70℃で3時間攪拌した。その後、MEK210gを加えて固形分濃度を30質量%とし、イソシアネート基末端プレポリマー(プレポリマー1)の溶液として取り出した。
【0057】
(2)鎖延長反応によるポリウレタンウレア樹脂の合成
窒素雰囲気下で、攪拌翼、窒素導入管、熱電対、冷却管及び滴下漏斗を備えた500mLの4口セパラブルフラスコに前記プレポリマー1の溶液150gを加え、60℃になるまで加熱した。60℃に到達後、ポリウレタン鎖延長剤である1,4-BAC(トランス体の比率:85モル%)0.51gを1分かけて滴下し、その後60℃で30分撹拌した。得られた溶液を離型剤を塗布したステンレス製の型に流し入れ、23℃/50%RHの条件で1週間養生した後、庫内温度60℃のオーブンにて1時間養生し、厚み1.5mmのポリウレタンウレア樹脂の試験板を得た。
得られたポリウレタンウレア樹脂の試験板について、以下の各評価をおこなった。得られた結果を表に示す。
【0058】
(引張強度及び引張弾性率)
試験板の引張試験を実施し、引張強度(MPa)及び引張弾性率(MPa)をそれぞれ測定した。具体的には、JIS K 6251:2017に記載の方法に準拠し、試験板から幅10mmのサンプルを切り出し、引張試験機(株式会社東洋精機製作所製、ストログラフEII-L05)にて、引張速度200mm/min、チャック間距離50mmの条件で測定した。なお、引張弾性率は下記式より算出した。
E=(σ2-σ1)/(ε2-ε1)
E:引張弾性率(MPa)
σ1:ひずみε1=0.05において測定された引張応力
σ2:ひずみε2=0.1において測定された引張応力
【0059】
(硬度(ショアA))
試験板の硬度(ショアA)を測定した。具体的には、JIS K 6253:2012に記載の方法に準拠し、硬度計(株式会社テクロック製、デュロメータ タイプA GS―719N)を試験板に押し付け、値を読み取った。
【0060】
実施例4~6、比較例1~2
ポリウレタン鎖延長剤である1,4-BAC(トランス体の比率:85モル%)を表に示すポリウレタン鎖延長剤に変更した以外は実施例1と同様にしてポリウレタンウレア樹脂の試験板をそれぞれ得た。
得られたポリウレタンウレア樹脂の試験板について、上記の各評価をおこなった。得られた結果を表に示す。
【0061】
比較例3
ポリウレタン鎖延長剤である1,4-BAC(トランス体の比率:85モル%)0.51gを表に示すIPDA0.61gに変更した以外は実施例1と同様にしてポリウレタンウレア樹脂の試験板をそれぞれ得た。
得られたポリウレタンウレア樹脂の試験板について、上記の各評価をおこなった。得られた結果を表に示す。
【0062】
実施例2
(1)イソシアネート基末端プレポリマー2の合成
攪拌翼及び熱電対を備えた500mLの4口セパラブルフラスコにPTMG(OH基当量:500g/eq.)を90g加え、100℃/減圧度100~200hPaの条件で1時間脱水処理を行った。その後、70℃まで空冷した後、冷却管を備え付け、MEK77g、ジブチル錫ジラウレート0.045g加え、窒素雰囲気下、70℃になるまで加熱した。70℃に到達後、滴下漏斗を備え付け、IPDI25gを30分かけて滴下し、その後70℃で3時間攪拌した。その後、MEK199gを加えて固形分濃度を30質量%とし、イソシアネート基末端プレポリマー(プレポリマー2)の溶液として取り出した。
【0063】
(2)鎖延長反応によるポリウレタンウレア樹脂の合成
窒素雰囲気下で、攪拌翼、窒素導入管、熱電対、冷却管及び滴下漏斗を備えた500mLの4口セパラブルフラスコに前記プレポリマー2の溶液156gを加え、60℃になるまで加熱した。60℃に到達後、ポリウレタン鎖延長剤である1,4-BAC(トランス体の比率:85モル%)1.28gを1分かけて滴下し、その後60℃で30分撹拌した。得られた溶液を離型剤を塗布したステンレス製の型に流し入れ、23℃/50%RHの条件で1週間養生した後、庫内温度60℃のオーブンにて1時間養生し、厚み1.5mmのポリウレタンウレアの試験板を得た。
得られたポリウレタンウレア樹脂の試験板について、上記の各評価をおこなった。得られた結果を表に示す。
【0064】
比較例4
攪拌翼及び熱電対を備えた500mLの4口セパラブルフラスコにPTMG(OH基当量:500g/eq.)を112.5g加え、100℃/減圧度100~200hPaの条件で1時間脱水処理を行った。その後、70℃まで空冷した後、冷却管を備え付け、MEK77g、ジブチル錫ジラウレート0.045g加え、窒素雰囲気下、70℃になるまで加熱した。70℃に到達後、滴下漏斗を備え付け、IPDI25gを30分かけて滴下し、その後70℃で3時間攪拌した。その後、MEK200gを加えて固形分濃度を30質量%とし、ポリウレタン樹脂の溶液として取り出した。得られた溶液を離型剤を塗布したステンレス製の型に流し入れ、23℃/50%RHの条件で1週間養生した後、庫内温度60℃のオーブンにて1時間養生し、厚み1.5mmのポリウレタン樹脂の試験板を得た。
【0065】
比較例5及び6
ポリウレタン鎖延長剤である1,4-BAC(トランス体の比率:85モル%)を表に示すポリウレタン鎖延長剤に変更した以外は実施例2と同様にしてポリウレタンウレア樹脂の試験板をそれぞれ得た。
得られたポリウレタンウレア樹脂の試験板について、上記の各評価をおこなった。得られた結果を表に示す。
【0066】
比較例7
ポリウレタン鎖延長剤である1,4-BAC(トランス体の比率:85モル%)1.28gを表に示すIPDA1.53gに変更した以外は実施例2と同様にしてポリウレタンウレア樹脂の試験板をそれぞれ得た。
得られたポリウレタンウレア樹脂の試験板について、上記の各評価をおこなった。得られた結果を表に示す。
【0067】
実施例3
(1)イソシアネート基末端プレポリマー3の合成
攪拌翼及び熱電対を備えた500mLの4口セパラブルフラスコにPTMG(OH基当量:500g/eq.)を107g加え、100℃/減圧度100~200hPaの条件で1時間脱水処理を行った。その後、70℃まで空冷した後、冷却管を備え付け、MEK88g、ジブチル錫ジラウレート0.045g加え、窒素雰囲気下、70℃になるまで加熱した。70℃に到達後、滴下漏斗を備え付け、IPDI25gを30分かけて滴下し、その後70℃で3時間攪拌した。その後、MEK222gを加えて固形分濃度を30質量%とし、イソシアネート基末端プレポリマー(プレポリマー3)の溶液として取り出した。
【0068】
(2)鎖延長反応によるポリウレタンウレア樹脂の合成
窒素雰囲気下で、攪拌翼、窒素導入管、熱電対、冷却管及び滴下漏斗を備えた500mLの4口セパラブルフラスコに前記プレポリマー3の溶液80gを加え、60℃になるまで加熱した。60℃に到達後、ポリウレタン鎖延長剤である1,4-BAC(トランス体の比率:85モル%)0.14gを1分かけて滴下し、その後60℃で30分撹拌した。得られた溶液を離型剤を塗布したステンレス製の型に流し入れ、23℃/50%RHの条件で1週間養生した後、庫内温度60℃のオーブンにて1時間養生し、厚み1.5mmのポリウレタンウレアの試験板を得た。
得られたポリウレタンウレア樹脂の試験板について、上記の各評価をおこなった。得られた結果を表に示す。
【0069】
比較例8及び9
ポリウレタン鎖延長剤である1,4-BAC(トランス体の比率:85モル%)を表に示すポリウレタン鎖延長剤に変更した以外は実施例3と同様にしてポリウレタンウレア樹脂の試験板をそれぞれ得た。
得られたポリウレタンウレア樹脂の試験板について、上記の各評価をおこなった。得られた結果を表に示す。
【0070】
比較例10
ポリウレタン鎖延長剤である1,4-BAC(トランス体の比率:85モル%)0.14gを表に示すIPDA 0.17gに変更した以外は実施例3と同様にしてポリウレタンウレア樹脂の試験板をそれぞれ得た。
得られたポリウレタンウレア樹脂の試験板について、上記の各評価をおこなった。得られた結果を表に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
表1~4において、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物及びポリウレタン鎖延長剤の割合が揃っている実施例と比較例を比べた場合、実施例のポリウレタンウレア樹脂の方が、機械的特性が向上していることが分かる。