(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】近接センサ及びコントローラ
(51)【国際特許分類】
H01H 36/00 20060101AFI20240409BHJP
G01V 3/08 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01H36/00 D
H01H36/00 V
G01V3/08 D
(21)【出願番号】P 2023522583
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2022018534
(87)【国際公開番号】W WO2022244594
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2021084098
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100199314
【氏名又は名称】竹内 寛
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴敏
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 博
(72)【発明者】
【氏名】菅原 滉平
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩一
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-100099(JP,A)
【文献】特開2019-050939(JP,A)
【文献】特開2006-112959(JP,A)
【文献】特表2008-511954(JP,A)
【文献】特表2012-523191(JP,A)
【文献】特開2016-006775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 36/00
G01V 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接する対象物と容量結合する1つ以上の検知電極と、
前記対象物に接触される接触電極と、
前記検知電極及び前記接触電極のうちの一方の電極に接続され、当該電極に励起電圧を供給する励振回路と、
前記検知電極及び前記接触電極のうちの他方の電極に接続され、当該電極における検知電圧に基づいて、前記検知電極と前記対象物との間の第1の静電容量に応じた検知信号を生成する検知回路とを備え、
前記検知回路は、前記接触電極と前記対象物との間の第2の静電容量よりも小さい前記第1の静電容量に応じて、前記接触電極に接触した対象物が前記検知電極に近接する程度を示すように前記検知信号を生成する
近接センサ。
【請求項2】
前記接触電極は、前記検知電極の面積よりも大きい面積を有する
請求項1に記載の近接センサ。
【請求項3】
前記対象物が前記接触電極に接触した状態における前記対象物と前記接触電極間の距離は、前記対象物が前記検知電極に接触した状態における前記対象物と前記検知電極間の距離よりも短い
請求項1又は2に記載の近接センサ。
【請求項4】
前記接触電極は、前記対象物と直接的に接触するように露出されており、
前記検知電極は、前記対象物と間接的に接触するように設けられる
請求項1
又は2に記載の近接センサ。
【請求項5】
前記検知電極と前記接触電極との間に設けられ、前記励振回路と前記検知回路とに共有されるグランド電極をさらに備える
請求項1
又は2に記載の近接センサ。
【請求項6】
前記検知電極及び前記接触電極のうちの前記検知電極に接続された電極と前記グランド電極間の静電容量は、前記検知電極と前記接触電極間の静電容量の100倍以下である
請求項5に記載の近接センサ。
【請求項7】
前記グランド電極の面積は、前記検知電極の面積よりも大きくて、且つ前記接触電極の面積よりも大きい
請求項
5に記載の近接センサ。
【請求項8】
前記検知回路は、前記検知電極に接続され、
前記励振回路は、前記接触電極に接続され、
前記グランド電極は、前記検知電極よりも前記接触電極に近い位置に配置された
請求項
5に記載の近接センサ。
【請求項9】
前記検知回路は、前記接触電極に接続され、
前記励振回路は、前記検知電極に接続され、
前記グランド電極は、前記接触電極よりも前記検知電極に近い位置に配置された
請求項
5に記載の近接センサ。
【請求項10】
請求項1
又は2に記載の近接センサと、
前記近接センサによって生成された検知信号に基づいて、制御信号を生成する制御回路と
を備えたコントローラ。
【請求項11】
手によって把持される把持部材をさらに備え、
前記接触電極は、前記把持部材において、把持した状態の手が接触する位置に設けられ、
前記検知電極は、前記接触電極の位置とは別の位置において、前記把持した状態の手における指が接触可能な位置に設けられる
請求項10に記載のコントローラ。
【請求項12】
前記把持した状態の手における複数の指に応じて、複数の検知電極が、前記把持部材に配置された
請求項11に記載のコントローラ。
【請求項13】
人体に装着される装着部材をさらに備え、
前記接触電極は、前記装着部材において、装着した状態の人体に接触する位置に設けられる
請求項10に記載のコントローラ。
【請求項14】
環状部材をさらに備え、
前記検知電極は、前記環状部材の外周面に設けられ、
前記接触電極は、前記環状部材の内周面に設けられる
請求項10に記載のコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば人の手指を含む対象物の近接を検知する近接センサ及びこれを備えたコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、手によって掴持されている携帯用デバイスを検知するためのデバイスを開示している。このデバイスは、交流電場を放出する送信電極と、交流電場が少なくとも部分的に結合される受信電極とを備える。手による携帯用デバイスの掴持は、送信電極と受信電極との間の容量結合をもたらすことで検知される。特許文献1では、携帯用デバイスの接地電位と結合される導電性構造が、携帯用デバイスの筐体の内側に配設されている。この導電性構造は、送信電極と受信電極との間の容量結合を低減させ、送信電極から受信電極までの電気力線の拡散をほぼ阻止するために提供されている。これにより、携帯用デバイスが手によって掴持されていない場合、受信電極内への電流はほぼ存在しないことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のデバイスは、手による携帯用デバイスの掴持を検知する接触センサとして機能している。しかしながら、特許文献1のような従来技術では、手指の接触だけではなく近接を検知する近接センサの機能を求めるニーズに応えることが困難である。
【0005】
本発明の目的は、コントローラに接触する対象物の近接を精度良く検知することができる近接センサ及びコントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における近接センサは、近接する対象物と容量結合する1つ以上の検知電極と、対象物に接触される接触電極と、検知電極及び接触電極のうちの一方の電極に接続され、当該電極に励起電圧を供給する励振回路と、検知電極及び接触電極のうちの他方の電極に接続され、当該電極における検知電圧に基づいて、検知電極と対象物との間の第1の静電容量に応じた検知信号を生成する検知回路とを備える。検知回路は、接触電極と対象物との間の第2の静電容量よりも小さい第1の静電容量に応じて、接触電極に接触した対象物が検知電極に近接する程度を示すように検知信号を生成する。
【0007】
本発明におけるコントローラは、上記の近接センサと、近接センサによって生成された検知信号に基づいて、制御信号を生成する制御回路とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明における近接センサ及びコントローラによると、コントローラに接触する対象物の近接を精度良く検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係るコントローラ及び近接センサの概要を説明するための図
【
図2】実施形態1に係るコントローラの構成を例示するブロック図
【
図3】コントローラの近接センサにおける検知回路の構成例を示すブロック図
【
図5】実施形態1における近接センサの動作原理を説明するための図
【
図6】近接センサにおける接続容量と距離誤差との関係を示すグラフ
【
図7】近接センサにおける寄生容量の関係を説明するための図表
【
図8】コントローラにおける近接センサの動作例を示すフローチャート
【
図9】コントローラにおける近接センサの動作例を説明するためのタイミングチャート
【
図10】実施形態2に係るコントローラの構成を例示するブロック図
【
図12】実施形態3に係るコントローラの構成を例示する斜視図
【
図13】実施形態4に係るコントローラの構成を例示する斜視図
【
図14】実施形態5に係るコントローラの構成を例示する斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して本発明に係る近接センサ及びコントローラの実施の形態を説明する。
【0011】
各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。実施形態2以降では実施形態1と共通の事項についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態毎には逐次言及しない。
【0012】
(実施形態1)
1.構成
実施形態1に係るコントローラ及び近接センサの構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るコントローラ1及び近接センサ10の概要を説明するための図である。
【0013】
本実施形態のコントローラ1は、使用者5が自身の人体51に装着又は把持した状態で使用される、各種の携帯可能な機器で構成される。コントローラ1は、使用者5が手指52を近接させたり接触させたりする操作を近接センサ10で検知して、検知結果に応じて各種の制御信号を生成する。コントローラ1は、例えば使用者5が操作のために手指52を近接させる主面である操作面11を有する。
【0014】
以下、コントローラ1の操作面11に沿った2次元方向をX,Y方向とし、操作面11の法線方向をZ方向とする。また、操作面11からコントローラ1の外部に向かう+Z側を上側といい、反対の-Z側を下側という場合がある。
図1の例では、使用者5の手指52がコントローラ1の上側から近接する一方で、使用者5の人体51が、コントローラ1の下側の主面に接触している。
【0015】
本実施形態の近接センサ10は、使用者5の手指52のような対象物の近接および接触を検知するようにコントローラ1に組み込まれる。近接センサ10は、静電容量に基づき対象物が近接する程度(接触を含む)を検知するセンサ装置である。本実施形態では、コントローラ1が使用者5の人体51に接触して使用される状態を利用して、近接センサ10が、使用者5の手指52の接触だけでなく近接を検知できる構成を備える。
【0016】
本実施形態において、コントローラ1への接触は、直接的であってもよいし間接的であってもよい。例えば、使用者5は、手袋を着用した状態でコントローラ1を使用してもよい。この場合であっても、近接センサ10は、静電容量の変化に応じて使用者5の手指52の接触等を検知できる。
【0017】
従来の近接センサでは、正確な近接検知が行える要件として、接地を充分に確保して閉回路を確立することが必要であった。こうした要件は、車両またはロボット等の用途であれば満たし易い一方、使用者5が装着する等の携帯用途においては満たし難い。また、従来の近接センサでは、使用者5以外の者の近接も検知してしまう点にも問題があった。
【0018】
これに対して、本実施形態の近接センサ10によると、上記のような従来技術の問題点も解消することができる。本実施形態におけるコントローラ1及び近接センサ10の構成の詳細を以下説明する。
【0019】
1-1.構成の詳細
図2は、本実施形態に係るコントローラ1の構成を例示するブロック図である。本実施形態のコントローラ1は、例えば
図2に示すように、近接センサ10と、制御回路20とを備える。本実施形態の近接センサ10は、例えば
図1,2に示すように、検知電極12と、接触電極13と、検知回路21と、励振回路22とを備える。
【0020】
検知電極12は、対象物の近接に応じた静電容量を検知するための電極である。検知電極12は、使用者5の手指52といった対象物と容量結合するように、コントローラ1の操作面11近傍に設けられる。
図1の例では、2つの検知電極12がY方向に並んで配置されている。近接センサ10における検知電極12の個数は、3つ以上であってもよいし、1つであってもよい。
【0021】
接触電極13は、検知電極12とは別に、コントローラ1を使用中の使用者5に接触させるための電極である。接触電極13は、特に使用者5の操作内容に拘わらず、コントローラ1において、使用者5の人体51が接触した状態となることが想定される各種の位置に設けられる。
図1の例では、接触電極13は、コントローラ1の筐体において操作面11とは反対側(-Z側)の面に設けられている(
図4参照)。
【0022】
励振回路22は、予め設定された交流電圧である励起電圧を生成する回路である。励起電圧は、種々の交流電圧であってもよく、例えばパルス波形又は正弦波形など各種の波形を有してもよい。又、励起電圧は、後述する近似条件が成り立つ程度に低周波の交流周波数を有する(例えば数MHz以下)。例えば、励振回路22は、パルス発振器などを含んでもよい。本実施形態において、励振回路22は、接触電極13に接続される。又、励振回路22は、制御回路20等によって駆動制御されてもよい。
【0023】
検知回路21は、検知電極12及び接触電極13のうち、励振回路22が接続された電極とは別の電極に接続される。検知回路21は、接続された電極から入力される電圧である検知電圧に基づいて、検知信号Sdを生成して、例えば制御回路20に出力する。検知信号Sdは、検知電極12における静電容量に応じて対象物が近接する程度を示す。本実施形態において、検知回路21は、例えば各検知電極12に接続するように設けられる。検知回路21の構成の一例を
図3に示す。
【0024】
図3では、1つの検知電極12に関する検知回路21の構成例を示す。検知回路21は、例えば、高インピーダンス入力の増幅器と、増幅器を介して検知電極12から検知電圧を入力する振幅検知回路及び/又は検波回路と、アナログ/デジタル(A/D)変換器と、デジタル信号処理部とを備える。検知回路21のデジタル信号処理部等は、コントローラ1の制御回路20と一体的に構成されてもよい。
【0025】
図2に戻り、制御回路20は、例えばコントローラ1の全体動作を制御する。例えば、制御回路20は、近接センサ10の各検知回路21からの検知信号Sdに基づいて、使用者5の操作内容に応じた制御信号を生成する。制御信号は、コントローラ1の外部の機器に出力されてもよいし、コントローラ1内部の制御に用いられてもよい。制御回路20は、近接センサ10の励振回路22等の駆動を制御してもよい。
【0026】
制御回路20は、例えばCPUで構成され、ソフトウェアと協働して所定の機能を実現する。制御回路20は、例えばROM及びRAMといった内部メモリを有し、ROMに格納されたデータ及びプログラムをRAMに読み出して種々の演算処理を行い、各種の機能を実現する。なお、制御回路20は、所定の機能を実現するように設計された専用の電子回路や再構成可能な電子回路などのハードウェア回路であってもよい。制御回路20は、CPU、MPU、DSP、FPGA、ASIC等の種々の半導体集積回路で構成されてもよい。
【0027】
図4は、本実施形態におけるコントローラ1をY方向から見た断面図である。
図4の断面は、コントローラ1において各電極12,13を通るXZ平面を示す。コントローラ1における近接センサ10は、例えば
図4に示すように、グランド電極14及び基板15をさらに備える。各種電極12,13,14は、例えばそれぞれXY面に平行な主面を有する。XY面において、検知電極12の+Z側の面積は、例えば
図1に示すように、接触電極13の-Z側の面積よりも小さい。
【0028】
グランド電極14は、コントローラ1におけるグランドを構成する電極である。グランド電極14は、例えば上記の励振回路22及び検知回路21を含む各種回路に接続され、接続された回路に共有される基準電位を与える。グランド電極14は、導体板であってもよいし、メッシュ状の導体であってもよい。グランド電極14は必ずしも平坦でなくてもよい。
【0029】
グランド電極14は、例えば
図4に示すように、コントローラ1の筐体内部において検知電極12と接触電極13との間に設けられる。又、グランド電極14は、検知電極12の面積およびグランド電極14の面積よりも大きい面積を有し、検知電極12と接触電極13とを離隔するように配置される。これにより、検知電極12と接触電極13間の寄生容量を低減できる。
【0030】
本実施形態のコントローラ1においては、例えば
図4に示すように、検知電極12とグランド電極14との間隔D11が、接触電極13とグランド電極14との間隔D12よりも大きく設定される。これにより、検知電極12とグランド電極14間の寄生容量を低減できる。例えば、基板15における+Z側の主面にグランド電極14が設けられ、反対の-Z側の主面に接触電極13が設けられる。
【0031】
基板15には、近接センサ10及びコントローラ1における各種回路が設けられてもよい。基板15は、特に平面に限定されず、曲面であってもよいし、折れ曲がっていてもよい。又、基板15等は適宜、近接センサ10から省略されてもよい。また、コントローラ1の筐体の外面も、平面の集合体で構成されている必要はなく、曲面で構成された筐体であってもよい。
【0032】
図4の例において、検知電極12は、コントローラ1の操作面11から距離D1だけ下側に(即ちコントローラ1の内側に)設けられる。又、接触電極13は、例えばコントローラ1の操作面11とは反対側の面から距離D2だけ上側に(即ちコントローラ1の内側に)設けられる。各距離D1,D2は、手指52等がコントローラ1に接触した状態における距離である接触距離の一例である。例えば
図4に示すように、接触電極13の接触距離D2は、検知電極12の接触距離D1よりも短くなるように、接触電極13及び検知電極12が配置される。
【0033】
接触電極13の接触距離D2は、D2=0であってもよく、接触電極13はコントローラ1から露出して設けられてもよい。又、接触電極13は、各種誘電体の積層又はフィルム貼り付け等により薄膜で被覆して設けられてもよい。さらに、検知電極12も、上記と同様に薄膜の被覆により設けられてもよい。こうした薄膜の厚みにより、各電極12,13の接触距離D1,D2がD1<D2となるように規定されてもよい。
【0034】
2.動作
以上のように構成されるコントローラ1の近接センサ10の動作について、以下説明する。
【0035】
2-1.動作原理
図5は、本実施形態における近接センサ10の動作原理を説明するための図である。
図5では、本実施形態における近接センサ10の等価回路を例示している。
図5の等価回路は、近接センサ10において検知電極12が1つの場合を例示している。
【0036】
図5では、コントローラ1の近接センサ10における各種の寄生容量を例示している。各種の寄生容量は、検知電極12と接触電極13との間の寄生容量Cabと、検知電極12とグランド電極14との間の寄生容量Cagと、接触電極13とグランド電極14との間の寄生容量Cbgとを含む。
【0037】
又、
図5の例では、コントローラ1の使用者5(
図1,2)をモデル化した人体モデル50を用いている。人体モデル50は、検知電極12との容量結合を示す検知容量Cdetと、人体モデル50における内部抵抗Rbと、接触電極13との容量結合を示す接続容量Ccと、グランド電極14との容量結合を示すグランド容量Cgとを含む。
【0038】
検知容量Cdetは、近接センサ10において検知対象とする静電容量である。接続容量Ccは、使用者5の接触による静電容量であり、検知容量Cdetよりも大きい。検知容量Cdetと接続容量Ccとは、それぞれ近接センサ10における第1及び第2の静電容量の一例である。
【0039】
本実施形態の近接センサ10において、励振回路22は、交流周波数ωを有する励起電圧veを生成して、生成した励起電圧veを接触電極13に供給する。励起電圧veは、グランド電極14の基準電位により規定される。接触電極13と検知電極12とは、人体モデル50を介して結合されることとなる。
【0040】
本実施形態の検知回路21は、励振回路22による励起電圧veの供給中に順次、検知電極12における検知電圧vdを入力して、検知電圧vdに基づき近接センサ10による検知結果を示す検知信号Sdを生成する。検知電圧vdは、グランド電極14の基準電位により規定される。検知信号Sdは、例えばvd/veに比例した値を有する。
【0041】
上記のように動作する本実施形態の近接センサ10においては、
図5の等価回路から次式(1)が成立する。
【数1】
【0042】
上式(1)において、jは複素数である。又、Zbは、人体モデル50に対応した人体インピーダンスであり、次式(10)のように表される。
【数2】
【0043】
上式(1)は、充分に接続容量Ccが大きく、且つ内部抵抗Rbが1/ωCcよりも小さい場合、次式(2)のように近似できる。この近似は、近接検知として容量の大きい場合の意図を意図しており、例えば電極面積100平方mm(10mm×10mm)、距離10mm及び周波数1MHzを想定すると、上式(10)の第1項1/jωCdet=-j1.8MΩとなる。人体の抵抗(即ちRb)は500Ωから最大10kΩと見做されるため、同式の第2項は第1項の大きさ|1/jωCdet|と比べて無視できる程度に十分小さいと言える。又、装置構成の前提よりCdet<<Ccから、同式の第3項も第2項と同様に無視できる。
【数3】
【0044】
上式(2)のように、電圧比vd/veは、容量比で表され、つまり検知電圧vdと励起電圧veとは位相差を生じず、検知電圧vdの大きさ|vd|から特定できる。上式(2)の近似条件は、使用者5が接触電極13に接触している場合に満たされる。上式(2)において、寄生容量Cab,Cagは近接センサ10における固定量であることから、電圧比vd/veは、検知容量Cdetの変化のみに依存することとなる。よって、本実施形態の近接センサ10は、検知回路21による検知信号Sdによって、人体モデル50のように使用者5が接触電極13に接触した状態で自身の手指52等を検知電極12に近接させる程度を検知することができる。
【0045】
一方、上記のようなコントローラ1の使用中の近似条件に代えて、充分に接続容量Ccが小さい場合には、上式(1)は、次式(3)のように近似できる。
【数4】
【0046】
上式(3)の近似条件は、使用者5が接触電極13に接触していない場合に満たされる。この場合、上式(3)によると、検知信号Sdにおいて検知容量Cdetを検知する感度が失われることとなる。つまり、近接センサ10の検知信号Sdにおいては、接触電極13に人体51が接触していない場合、手指52等が検知電極12に近接しても、検知されないようにすることができる。これと同様に、接触電極13に接触する使用者5とは別の人物等が検知電極12に近接しても、近接センサ10の検知信号Sdでは検知されないようにすることができる。
【0047】
又、人体モデル50のグランド容量Cgは、使用者5がコントローラ1の使用時に意図せず生じることが考えられる。しかしながら、本実施形態の近接センサ10では、グランド容量Cgが、
図5に示すように、使用者5が接触電極13に接触している場合、すなわち接続容量Ccが十分に大きい場合には、グランド容量Cgは寄生容量Cbgと並列の関係になり、動作原理の式(1)~(3)に含まれないこととなる。使用者5が接触電極13に接触しておらず、接続容量Ccが十分小さい場合も、検知容量Cdetを検知する感度が失われる状態に変わりはない。よって、使用者5によるグランド容量Cgが、近接センサ10による検知に影響しないようにすることができる。
【0048】
2-2.各種容量について
以上のような動作原理の近接センサ10における各種容量について、
図6~7を用いて説明する。
【0049】
図6は、近接センサ10における接続容量と距離誤差との関係を示すグラフである。上記の動作原理において、検知電極12から対象物までの測定距離の距離誤差は、特に測定距離の大小に拘わらず、
図6に示すように、接続容量Ccが小さくなるにつれて増大する。換言すると、接続容量Ccを大きく確保することで、近接センサ10の検知精度を向上できる。たとえば、5mm-50mm程度の距離を精度良く検知するためには、距離誤差は1mm程度以下にすることが望ましいと考えられる。このためには、接続容量Ccが1pF以上であることが望ましい。又、接続容量Ccの下限は、検知電極12の面積に比例する。
【0050】
図7は、近接センサ10における寄生容量Cag,Cabの関係を説明するための図表である。
図7(A)は、測定距離50mmにおける容量比Cag/Cab及び寄生容量Cab毎の電圧比vd/veを示す。
図7(B)は、測定距離10mmにおける容量比Cag/Cab及び寄生容量Cab毎の電圧比vd/veを示す。
図7(C)は、
図7(A),(B)間で測定距離が変化した場合の信号変化率を、寄生容量Cag,Cab毎に示す。
【0051】
寄生容量Cagが寄生容量Cabと比較して極めて大きい場合、
図7(A),(B)に示すように、入力の励起電圧veに比べて検知電圧vdが小さな出力しか得られない。例えば寄生容量Cagが寄生容量Cabの100倍を超える場合、検知電圧vdは励起電圧veの1%未満の振幅になり、良好な信号対雑音比が得られない。こうした観点より、寄生容量Cagは寄生容量Cabの100倍程度以内に抑えるべきである。
【0052】
又、寄生容量Cabが大きい場合、対象物の距離が
図7(A),(B)の範囲内で変化した場合の信号変化率が、
図7(C)に示すように小さくなってしまう。例えば寄生容量Cabが10pFの場合、信号変化率は2%に満たない。このように変化が小さいと、距離を正しく検知することは困難になり得る。携帯用途のコントローラ1において実用的な距離50mm~5mmの変化に対し、信号変化率10%以上を得るために、寄生容量Cabは1pF以下が望ましく、極力小さい値に押さえることがより望ましい。但し、上記議論では検知電極12の面積として100平方mmの場合を用いた。検知電極12の面積を変えた場合にはそれに比例して寄生容量Cabの上限も変化し得る。
【0053】
たとえば、10mm×20mm程度の指先を3cmの距離を経て検知するためには、平行平板コンデンサ近似で60fF程度の検知容量Cdetを検知する必要がある。検知容量Cdetは、fFオーダーまでの可能な限り小さい容量変化を検知するできることが望ましい。寄生容量Cabが小さくても、寄生容量Cagが大きいと、式(2)の電圧比vd/ve比がゼロ(あるいはCab/(Cab+Cag))に近づき、微小容量変化が検知困難になる場合が想定される。こうした観点から、寄生容量Cagを小さくすることが有用である。
【0054】
例えば、検知電極12の面積を10mm×10mmとして、グランド電極14およびグランド電極14を配したコントローラ1の筐体面から10mm離れた操作面11に検知電極12を配した場合を想定する。この場合、寄生容量Cagは88fFというように、検知したい容量とほぼ同程度のオーダーになり、近接検知が可能になる。一方、検知電極12とグランド電極14間の距離を、例えば基板15の厚み程度の1mmまで接近させた場合、寄生容量Cagは880fFと検知したい容量値の10倍以上になるため、精度の高い近接検知が行い難くなり得る。
【0055】
2-3.動作例
本実施形態のコントローラ1における近接センサ10の動作の一例について、
図8,9を用いて説明する。以下では、コントローラ1の制御回路20が近接センサ10を制御する動作例を説明する。
【0056】
図8は、コントローラ1における近接センサ10の動作例を示すフローチャートである。
図9は、近接センサ10の動作例を説明するためのタイミングチャートである。
図9(A)は、励振回路22から出力される励振信号のタイミングを示す。
図9(B)は、検知回路21に入力される検知信号Sdの電圧波形を示す。
【0057】
まず、制御回路20は、励振回路22にトリガ信号を送信して、
図9(A)の時刻t1に示すように、励起電圧veに対応する励振信号をハイレベル(Hi)に立ち上げるように励振回路22を制御する(S1)。次に、制御回路20は、時刻t1から所定期間経過後の時刻t2において(
図9(B))、検知回路21に入力される電圧をA/D変換させて(S2)、時刻t2における検知信号Sdを示す電圧値を内部メモリに格納する(S3)。
【0058】
次に、制御回路20は、再び励振回路22にトリガ信号を送信して、
図9(A)の時刻t3に示すように、励振信号をローレベル(Lo)に立ち下げるように励振回路22を制御する(S4)。次に、制御回路20は、ステップS2と同様に所定期間経過後の時刻t4において(
図9(B))、検知回路21にA/D変換させて(S5)、時刻t4における検知信号Sdを示す電圧値を内部メモリに格納する(S6)。
【0059】
次に、制御回路20は、ステップS3,S6で格納した電圧値間の差分を演算して、演算結果を検知レベルとして格納する(S7)。制御回路20は、例えば以上のステップS1~S6を所定回数だけ繰り返し(S8)、得られた演算結果に平均化処理を行う(S9)。
【0060】
制御回路20は、こうして得られた近接センサ10の検知結果に基づいて、使用者5の操作を判定して制御信号を生成するなど各種の信号処理を行う(S10)。これにより、制御回路20は本フローに示す処理を終了する。制御回路20は、例えば、所定の周期で本フローの処理を繰り返す。
【0061】
以上の処理によると、近接センサ10における近接検知の結果を適宜、平均化して(S1~S9)、コントローラ1において後続の各種信号処理に利用することができる。なお、平均化のステップS9,S10は、適宜省略されてもよい。
【0062】
3.まとめ
以上のように、本実施形態における近接センサ10は、1つ以上の検知電極12と、接触電極13と、励振回路22と、検知回路21とを備える。コントローラ1の使用者5及びその各部は、本実施形態における対象物の一例である。検知電極12は、近接する対象物の一例として使用者5(の手指52)と容量結合する。接触電極13は、使用者5(の人体51)に接触される。励振回路22は、検知電極12及び接触電極13のうちの一方の電極13に接続され、当該電極13に励起電圧veを供給する。検知回路21は、検知電極12及び接触電極13のうちの他方の電極12に接続され、当該電極12における検知電圧vdに基づいて、検知電極12と対象物との間の第1の静電容量の一例である検知容量Cdetに応じた検知信号Sdを生成する。検知回路21は、接触電極13と対象物との間の第2の静電容量の一例である接続容量Ccよりも小さい検知容量Cdetに応じて、接触電極13に接触した対象物が検知電極12に近接する程度を示すように検知信号Sdを生成する。
【0063】
以上の近接センサ10によると、使用者5がコントローラ1を使用する際に接触電極13に接触することを利用して、コントローラ1に接触する使用者5の手指52等の対象物の近接を精度良く検知することができる。
【0064】
本実施形態において、接触電極13は、検知電極12の面積よりも大きい面積を有する。これにより、接続容量Ccを検知容量Cdetよりも大きく確保し易くなり、接続容量Ccよりも小さい範囲内での検知容量Cdetに応じた対象物の近接検知を行い易くすることができる。
【0065】
本実施形態において、対象物が接触電極13に接触した状態における対象物と接触電極13間の距離の一例である接触距離D2は、対象物が検知電極12に接触した状態における対象物と検知電極12間の距離の一例である接触距離D1よりも短い。これにより、接続容量Ccを検知容量Cdetよりも大きく確保し易くすることができ、対象物の近接検知を行い易くできる。
【0066】
本実施形態において、接触電極13は、対象物と直接的に接触するように露出されてもよい。検知電極12は、例えば対象物と間接的に接触するように設けられる。これにより、接続容量Ccをよりも大きく確保し易くすることができ、対象物の近接検知更にを行い易くできる。
【0067】
本実施形態において、近接センサ10は、検知電極12と接触電極13との間に設けられ、励振回路22と検知回路21とに共有されるグランド電極14をさらに備える。グランド電極14の配置により、検知電極12と接触電極13間の寄生容量Cabを低減して、対象物の近接検知の精度を良くすることができる。
【0068】
本実施形態において、検知電極12及び接触電極13のうちの検知電極12に接続された電極とグランド電極14間の静電容量である寄生容量Cagは、検知電極12と接触電極13間の静電容量である寄生容量Cabの100倍以下である。これにより、検知電極12とグラント電極14間の寄生容量Cagが過度に大きくなることを回避して、対象物の近接を精度良く検知できる。
【0069】
本実施形態において、グランド電極14の面積は、検知電極12の面積よりも大きくて、且つ接触電極13の面積よりも大きい。これにより、寄生容量Cabを低減して、対象物の近接検知の精度を良くすることができる。
【0070】
本実施形態において、検知回路21は、検知電極12に接続される。励振回路22は、接触電極13に接続される。グランド電極14は、検知電極12よりも接触電極13に近い位置に配置される。これにより、検知電極12とグラント電極14間の寄生容量Cagを低減して、対象物の近接を精度良く検知できる。
【0071】
本実施形態におけるコントローラ1は、近接センサ10と、近接センサ10によって生成された検知信号Sdに基づいて、制御信号を生成する制御回路20とを備える。こうしたコントローラ1によると、近接センサ10により、コントローラ1に接触する対象物の近接を精度良く検知することができる。
【0072】
(実施形態2)
実施形態2では、近接センサの動作原理の変形例について、
図10~11を用いて説明する。
【0073】
図10は、実施形態2に係るコントローラ1Aの構成を例示するブロック図である。実施形態1のコントローラ1における近接センサ10では、検知回路21が検知電極12に接続され、励振回路22が接触電極13に接続された。本実施形態のコントローラ1Aは、実施形態1のコントローラ1と同様の構成において、
図10に示すように、近接センサ10Aにおける検知回路21が接触電極13に接続され、励振回路22が検知電極12に接続される。
【0074】
例えば、本実施形態において、複数の検知電極12に対応する複数の励振回路22が、各検知電極12にそれぞれ接続される。各励振回路22は、時分割で励起電圧veに対応する励起信号を各々の検知電極12に供給してもよい。或いは、各励振回路22からの励振信号にFM変調或いはPWM変調などが施されてもよい。これにより、本実施形態の検知回路21は、接触電極13からの検知電圧vdにおいて、各励振信号が供給される検知電極12に応答した電圧変化を検知することができる。
【0075】
以上のように構成される本実施形態の近接センサ10Aは、実施形態1における動作原理の式(1)の代わりに、次式(21)に基づき動作する。
【数5】
【0076】
この場合、使用者5がコントローラ1の使用中の近似条件を満たすときには、実施形態1の式(2)の代わりに次式(22)が成立する。
【数6】
【0077】
一方、使用者5が接触電極13に接触していない近似条件を満たすときには、実施形態1の式(3)の代わりに次式(23)が成立する。
【数7】
【0078】
以上のような動作原理の式(21)~(23)により、本実施形態の近接センサ10Aは、実施形態1の近接センサ10と同様に、コントローラ1の使用中の使用者5を区別して、近接検知を精度良く行うことができる。
【0079】
実施形態1の近接センサ10は、検知電極12の寄生容量Cagを低減することで近接検知の精度が向上される。これに代えて、本実施形態の近接センサ10Aは、上式(22)より、接触電極13の寄生容量Cbgを低減するように構成されることで、近接検知の精度が向上される。こうした構成の一例を、
図11を用いて説明する。
【0080】
図11は、本実施形態におけるコントローラ1Aの断面図を、
図4と同様の断面において例示する。本実施形態のコントローラ1Aにおいては、例えば
図11に示すように、近接センサ10Aの検知回路21に接続された接触電極13とグランド電極14との間隔D14が、検知電極12とグランド電極14との間隔D13よりも大きく設定される。これにより、寄生容量Cbgを低減して、近接センサ10Aの検知精度を向上できる。
【0081】
例えば、本実施形態では、グランド電極14が-Z側の主面に設けられた基板15の反対の+Z側の主面に、検知電極12が設けられる。コントローラ1Aの筐体において、基板15が操作面11近傍に配置され、接触電極13は、操作面11とは反対側の主面に配置される。これにより、接触電極13と、基板15とを離間した構成が容易に得られる。
【0082】
以上のように、本実施形態における近接センサ10Aにおいて、検知回路21は、接触電極13に接続される。励振回路22は、検知電極12に接続される。グランド電極14は、接触電極13よりも検知電極12に近い位置に配置される。これにより、検知回路21に接続された接触電極13とグラント電極14間の寄生容量Cbgを低減して、対象物の近接を精度良く検知できる。
【0083】
(実施形態3)
実施形態3では、使用者が把持して用いるコントローラの構成例について、
図12を用いて説明する。
【0084】
図12は、実施形態3に係るコントローラ1Bの構成を例示する斜視図である。本実施形態のコントローラ1Bは、実施形態1と同様の構成において、使用者の手によって把持されるグリップ状の把持部材16を備える。コントローラ1Bは、例えばゲーム用あるいは工場における製造ライン又は車両などの制御用など様々な用途に適用可能である。
【0085】
図12に例示するコントローラ1Bにおいては、把持部材16において、掌が接触する部分に接触電極13が設けられている。本実施形態において、接触電極13は、把持部材16を把持する手の人差し指、中指、薬指、小指若しくは親指の何れか又は全てに接触する部分に設けられてもよい。また、
図12の例では、コントローラ1の把持部材16に、把持した手を固定するための装着部材の一例であるベルト17が設けられている。接触電極13は、こうしたベルト17等において把持した手に接触する部分に設けられてもよい。このような接触電極13の配置によると、コントローラ1Bの使用中の手と接触電極13との接触を安定的に維持できる。
【0086】
図12の例では、コントローラ1Bにおいて、把持した手の親指用の検知電極12aと、人差し指用の検知電極12bと、中指用の検知電極12cと、薬指用の検知電極12dと、小指用の検知電極12eとがそれぞれ設けられている。
【0087】
例えば、親指用の検知電極12aは、コントローラ1Bにおいて、親指が操作すべきボタン、可倒レバー、力センサ等の各種操作部材(不図示)の近傍であって、且つ親指の可動範囲内に、1つ又は複数配置される。こうした親指用の検知電極12aによると、親指が各種操作部材に接触する前から操作しようとする動きを検知でき、コントローラ1Bにおいてスムーズ且つ高速の制御を実現可能である。
【0088】
又、他の各指用の検知電極12b~12eも、それぞれ1つの指に対して1つ設けられてもよいし、複数設けられてもよい。例えば、人差し指の根元から指先に到るまでの位置に複数の検知電極12bが設けられることにより、人差し指の曲がり具合などが検知できる。こうした構成によると、コントローラ1Bにおいて、手を握ったり開いたり、指差し動作したりピースサインを出したり、など手のリアルな動きをただしく検知できるようになる。
【0089】
以上のように、本実施形態におけるコントローラ1Bは手によって把持される把持部材16をさらに備える。接触電極13は、把持部材16において、把持した状態の手が接触する位置に設けられる。検知電極12は、接触電極13の位置とは別の位置において、把持した状態の手における指が接触可能な位置に設けられる。これにより、把持部材16を把持した手に対する接触を安定的に維持しながら、手指の近接を精度良く検知することができる。
【0090】
本実施形態において、把持した状態の手における複数の指に応じて、複数の検知電極12a~12eが、把持部材16に配置される。これにより、個々の指の近接検知が行え、各種のコントローラ1Bの操作を検知できるようにすることができる。なお、検知電極12a~12eの個数が検知したい指の本数と等しくなければならないということはなく、それ以上の数の検知電極を配置しても良いことは言うまでもない。
【0091】
(実施形態4)
実施形態4では、使用者の顔に装着して用いられるコントローラの例について、
図13を用いて説明する。
【0092】
図13は、実施形態4に係るコントローラ1Cの構成を例示する斜視図である。本実施形態のコントローラ1Cは、例えば実施形態1と同様の構成において、
図13に示すように、使用者の耳に装着されるイヤホンを構成する。本実施形態のコントローラ1Cにおいて、接触電極13は、例えば導電性を有するイヤーパッド18で構成される。これにより、イヤホンを装着した使用者と接触電極13との接触を安定的に維持できる。イヤーパッド18は、本実施形態における装着部材の一例である。
【0093】
本実施形態のコントローラ1Cによると、イヤホンの使用者が手を検知電極12に接近させる操作を検知して、イヤホンの動作を制御したり各種の情報通信を制御したりすることができる。情報通信としては、例えばBluetooth等の近距離無線通信によりイヤホンからモバイル端末への情報送信などが挙げられる。
【0094】
本実施形態のコントローラ1Cにおいて、検知電極12は、例えば
図13に示すように、イヤホンにおいてイヤーパッド18とは反対に外側へ向いた主面近傍において、1つ又は複数設けられる。これにより、イヤホンに触れたときの耳への負担や接触ノイズなどに煩わされることなくイヤホンの制御が行える。複数の検知電極12それぞれへの近接を正確に検知できることにより、ジャスチャー入力による多機能化も可能であり、かつ精度が高い。また、雑踏の中など、人が密集した場所でのジャスチャー入力等の折、他の人の手等がイヤホンに近づいた場合でも誤動作することはなく、イヤホンを装着した使用者本人が意図した操作を精度良く検知できる。
【0095】
以上のように、本実施形態のコントローラ1Cは、人体に装着される装着部材の一例としてイヤーパッド18をさらに備える。接触電極13は、こうした装着部材において、装着した状態の人体に接触する位置に設けられる。これにより、装着部材の装着者との接触を安定的に維持して、装着者の近接検知を精度良く行える。
【0096】
上記の説明では、使用者の顔に装着して用いられるコントローラ1Cの一例として、イヤホンについて説明した。本実施形態において、コントローラ1C及び近接センサ10はイヤホンに限らず、例えばスマートグラス、ヘッドセット或いは没入型VRゴーグルなどに適用されてもよい。
【0097】
例えば、スマートグラスにおいて、耳に掛ける部分である先セルあるいは鼻あてに近接センサ10の接触電極13を配置し、テンプルやフレーム部分に検知電極12を配置して、装着者の目の周り手の動きを検知するようにコントローラ1Cが構成されてもよい。こうした構成によると、接触電極13の上記配置により、スマートグラスの装着者の人体との接触を安定的に維持できる。又、検知電極12の上記配置により、スマートグラスの耳や鼻への負担などに煩わされることなくスマートグラスの制御が行える。又、実施形態4と同様に、複数の検知電極12によって、装着者のジェスチャー操作を精度良く検知でき、スマートグラスのコントローラ1Cの多機能化も行い易い。
【0098】
又、ヘッドセットにおいては、T型バー等の支持部材あるいは耳あてに接触電極13を設け、ヘッドバンド、スピーカ外面、マイクサポート外側に等に検知電極12を設けて、装着者の顔の周りの手の動きを検知するようにコントローラ1Cが構成されてもよい。これにより、ヘッドセットの操作制御について、上記各実施形態と同様の効果を得られる。
【0099】
また、VRゴーグルにおいては、顔あて部分を導電性部材することで接触電極13を設けし、ゴーグルの外側部分に1つまたは複数の検知電極12を設けて、装着者の顔の周りの手の動きを検知するようにコントローラ1Cが構成されてもよい。これにより、VRゴーグルの操作制御について、上記各実施形態と同様の効果を得られる。例えば、ゴーグル外面に検知電極12を設けることにより、ゴーグルを触ってゴーグルが揺れたりずれたりすることなく、操作制御が行える。また、ゴーグルによっては実際の手の位置を正確に把握し難いような場合には、イメージセンサやTOFなどで手の位置を正確に把握しながら操作するVRゴーグルの機能と併用して、本実施形態のコントローラ1C及び近接センサ10を適用してもよい。
【0100】
(実施形態5)
実施形態5では、使用者の身体に装着して用いられるコントローラの例について、
図14を用いて説明する。
【0101】
図14は、実施形態5に係るコントローラ1Dの構成を例示する斜視図である。本実施形態のコントローラ1Dは、例えば実施形態1と同様の構成において、例えば使用者の手首に装着される環状部材19を備える。環状部材19は、使用者の手首に限らず腕または指など種々の部分に装着されるように構成されてもよい。本実施形態のコントローラ1Dは、例えばスマートウォッチまたはスマートリングを構成してもよい。また、環状部材19は、バンド状の部材の両端を連結可能に構成されてもよいし、装着時にも開端となるように開環で構成されてもよい。
【0102】
本実施形態のコントローラ1Dにおいて、接触電極13は、例えば
図14に示すように、環状部材19の内周側に設けられる。また、検知電極12は、環状部材19の外周側に1つまたは複数、設けられる。こうしたコントローラ1Dによると、上記各実施形態と同様の効果が得られる。例えば、スマートウォッチまたはスマートリングが、衣服を介したり手袋を介したりした状態で操作されても、本実施形態のコントローラ1Dによると、当該操作の検知を容易に行える。
【0103】
以上のように、本実施形態において、コントローラ1Dは、環状部材19をさらに備える。検知電極12は、環状部材19の外周面に設けられる。接触電極13は、環状部材19の内周面に設けられる。これにより、環状部材19の装着者との接触を確保して、装着者の近接検知を精度良く行える。
【0104】
上記の説明では、使用者の身体に装着して用いられるコントローラ1Dの一例として、環状部材19を用いる場合について説明した。本実施形態において、コントローラ1D及び近接センサ10はこれに限らず、例えば身体に貼り付けて用いられるものであってもよい。
【0105】
例えば、貼り付け型ウェアラブル生体センサにおいて、人体の皮膚に貼り付ける部分に接触電極13を設け、その外側に検知電極12を設けるようにしてもよい。こうしたヘルスケア用途においては、安全性が重要な場合が多い。これに対して、本実施形態のコントローラ1Dを適用することにより、装着者本人のみが意図した動作のみを検知できるようにでき、安全性を向上できる。或いは、こうしたコントローラ1Dにおいて、装着者本人が手などを近づけたり触れたりしたら動作を止めたり警報を発出するような動作を設定することも可能である。また、看護師又は介護士などが本人の手を握りながら、あるいは体に触れながら操作することもでき、こうした意図をもった支援者の操作のみを許すことによる安全性確保も可能である。ヘルスケア用途としては、心音計、心電計、心拍計、脳波計、SPO2計、或いは各種マッサージ機等が挙げられる。
【符号の説明】
【0106】
1,1A~1D コントローラ
10,10A 近接センサ
12,12a~12e 検知電極
13 接触電極
14 グランド電極
16 把持部材
17,18 装着部材
19 環状部材
20 制御回路
21 検知回路
22 励振回路
5 使用者
51 人体
52 手指