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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】車両用モジュール固定構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/205 20110101AFI20240409BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20240409BHJP
   B60K 37/00 20240101ALI20240409BHJP
【FI】
B60R21/205
B62D25/08 J
B60K37/00 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023532934
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2021025555
(87)【国際公開番号】W WO2023281642
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠原 一樹
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-151239(JP,A)
【文献】特開2015-182542(JP,A)
【文献】特開平11-091479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/205
B60K 37/00
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される第1モジュール(10)と第2モジュール(20)を固定する車両用モジュール固定構造(1,101)であって、
上記第1モジュールに設けられた第1ブラケット(11,11A,111)と、
上記第2モジュールに設けられた第2ブラケット(21)と、
上記第1ブラケットと上記第2ブラケットを締結固定する締結部材(30)と、
を備え、
上記第1ブラケットには、第1締結孔(12)と第1係合部(13,113)が設けられ、上記第2ブラケットには、上記第1締結孔と位置合わせ可能な第2締結孔(22)と、上記第1係合部に係合可能な第2係合部(23)と、が設けられており、
上記第1係合部は上記第2締結孔に挿入可能な形状を有しており、
上記第1ブラケットと上記第2ブラケットは、上記第1係合部と上記第2係合部が係合し上記第1締結孔と上記第2締結孔が位置合わせされることで組付け状態となるように構成されており、
上記第1モジュールは、上記第2ブラケットに干渉可能な干渉部(14a)を有し、上記第1締結孔と上記第2締結孔の位置合わせが完了するまでの間で上記第2ブラケットが上記干渉部に干渉したときには、上記第1係合部が上記第2締結孔に挿入されて上記第1ブラケットと上記第2ブラケットが誤組付けとなるのを防ぐように構成されている、車両用モジュール固定構造(1,101)。
【請求項4】
上記第1モジュールは、車幅方向(X)に延びる補強部材であるインパネリインフォース(14)を有し、上記インパネリインフォースの表面によって上記干渉部が形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用モジュール固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用モジュールの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、上下2分割型のインストルメントパネルが記載されている。このインストルメントパネルは、インパネロアと称される第1モジュールと、インパネアッパーと称される第2モジュールと、が複数の固定箇所で固定されて一体化されるように構成されている。このインストルメントパネルにおいて、各固定箇所のブラケットに設けられた締結孔を使用し、互いに位置合わせされた2つの締結孔に締結部材を挿入して、第1モジュール側の第1ブラケットと第2モジュール側の第2ブラケットを締結部材で固定する固定構造を使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-182542号公報
【発明の概要】
【0004】
上記固定構造によれば、例えば、各固定箇所において2つの締結孔を位置合わせした組付け状態で締結部材による締結作業が行われる。ところが、固定箇所が目視で確認しにくいような場合、第1モジュールと第2モジュールの位置ずれが生じ易く、固定箇所の2つの締結孔の位置が実際には合っていないにもかかわらず2つの締結孔の位置が合っていると誤って判断されることがある。そして、この判断に基づいてそのまま組付けを進めると、当該固定箇所の締結作業が上手くいかない時点で気付いて、他の固定箇所の組付けおよび締結固定を最初からやり直すことになり、このための余分な工数が発生する。とりわけ、固定箇所の数が多い場合には、組付けのやり直しに要する工数が増えるとい問題が起こり得る。そこで、この種の固定構造の設計においては、モジュールの固定作業を効率良くすすめるために、誤組付けを防いて組付けに要する工数を抑える技術が求められている。
【0005】
本開示は、車両に搭載されるモジュールを固定するときの作業の効率化を図るのに有効な車両用モジュール固定構造を提供しようとするものである。
【0006】
本開示の一態様は、
車両に搭載される第1モジュールと第2モジュールを固定する車両用モジュール固定構造であって、
上記第1モジュールに設けられた第1ブラケットと、
上記第2モジュールに設けられた第2ブラケットと、
上記第1ブラケットと上記第2ブラケットを締結固定する締結部材と、
を備え、
上記第1ブラケットには、第1締結孔と第1係合部が設けられ、上記第2ブラケットには、上記第1締結孔と位置合わせ可能な第2締結孔と、上記第1係合部に係合可能な第2係合部と、が設けられており、
上記第1係合部は上記第2締結孔に挿入可能な形状を有しており、
上記第1ブラケットと上記第2ブラケットは、上記第1係合部と上記第2係合部が係合し上記第1締結孔と上記第2締結孔が位置合わせされることで組付け状態となるように構成されており、
上記第1モジュールは、上記第2ブラケットに干渉可能な干渉部を有し、上記第1締結孔と上記第2締結孔の位置合わせが完了するまでの間で上記第2ブラケットが上記干渉部に干渉したときには、上記第1係合部が上記第2締結孔に挿入されて上記第1ブラケットと上記第2ブラケットが誤組付けとなるのを防ぐように構成されている、車両用モジュール固定構造、
にある。
【発明の効果】
【0007】
上述の態様の車両用モジュール固定構造によれば、第1モジュールと第2モジュールを固定するときに、第1モジュール側の第1ブラケットと第2モジュール側の第2ブラケットとを組付け状態にして締結部材で締結固定することができる。このとき、第1係合部と第2係合部を係合させて第1締結孔と第2締結孔を位置合わせすることによって、第1ブラケットと第2ブラケットが組付け状態になる。
【0008】
これに対して、第1モジュールと第2モジュールの位置ずれ等の要因によって、第1ブラケットと第2ブラケットを正しく組付けることができない場合が生じ得る。例えば、第1係合部が第2締結孔に挿入されて第2ブラケットが第1ブラケットに着座した状態になると、第1締結孔と第2締結孔の位置合わせがなされていない誤組付けが発生しているにもかかわらず、誤組付けの状態であるとの判断が難しい。
【0009】
そこで、第1モジュールに、第2ブラケットに干渉可能な干渉部を設けることによって、第1モジュールと第2モジュールの位置ずれが生じているときには、第2ブラケットが第1ブラケットに誤って着座して誤組付けが起こることがない。そして、第2ブラケットが第1ブラケットに着座しないことにより、第1モジュールと第2モジュールの位置ずれが生じていることを作業者に気付かせることが可能になる。第1締結孔と第2締結孔の位置合わせができていない状態で誤組付けが発生するのを防ぐことができるため、誤組付けに伴う組付けのやり直しに要する工数を削減できる。
【0010】
以上のごとく、上述の態様によれば、車両に搭載されるモジュールを固定するときの作業の効率化を図るのに有効な車両用モジュール固定構造を提供することができる。
【0011】
なお、請求の範囲に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示についての上記目的およびその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
図1図1は、実施形態1の車両用モジュール固定構造を第1モジュールと第2モジュールを上下に分離した状態で示す図であり、
図2図2は、実施形態1の第1モジュールの第1ブラケットと第2モジュールの第2ブラケットの組付け前の様子を示す斜視図であり、
図3図3は、図2において第1ブラケットの第1締結孔と第2ブラケットの第2締結孔が位置合わせされた状態を示す斜視図であり、
図4図4は、図3のIV-IV線断面矢視図であり、
図5図5は、図4において第2ブラケットを第1ブラケットに対して第1締結孔と第2締結孔の位置合わせ方向へスライドさせる様子を示す断面図であり、
図6図6は、図4において第1ブラケットと第2ブラケットの組付け時に第1モジュールのインパネリインフォースの干渉部が第2ブラケットに干渉したときの様子を示す断面図であり、
図7図7は、図2中の第1ブラケットの変形例を示す斜視図であり、
図8図8は、実施形態2の車両用モジュール固定構造を第1モジュールと第2モジュールを上下に分離した状態で示す図であり、
図9図9は、実施形態2の第1モジュールの第1ブラケットと第2モジュールの第2ブラケットの組付け前の様子を示す斜視図であり、
図10図10は、図9において第1ブラケットの第1締結孔と第2ブラケットの第2締結孔が位置合わせされた状態を示す斜視図であり、
図11図11は、図10のXI-XI線断面矢視図であり、
図12図12は、図11において第1ブラケットと第2ブラケットの組付け時に第1モジュールのインパネリインフォースの干渉部が第2ブラケットに干渉したときの様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0014】
上述の態様の車両用モジュール固定構造では、上記第1係合部と上記第2係合部は、上記第2ブラケットが上記第1ブラケットに対して上記第1締結孔と上記第2締結孔の位置合わせ方向である第1方向に移動するのを許容し、且つ上記第1方向と直交する第2方向に移動するのを規制するように係合するのが好ましい。
【0015】
この車両用モジュール固定構造によれば、第1係合部と第2係合部を係合させた状態では、第2ブラケットを第1ブラケットに対して第1方向に移動させる操作が簡単である。このため、第1係合部と第2係合部を一旦係合させれば、その後、第1ブラケットの第1締結孔と第2ブラケットの第2締結孔との位置合わせを容易に行うことができる。
【0016】
上述の態様の車両用モジュール固定構造では、上記第1ブラケットは、上記組付け状態において上記第1係合部が上記第2係合部から上記第2方向に押圧荷重を受けるように構成されているのが好ましい。
【0017】
この車両用モジュール固定構造によれば、第1係合部は第2係合部から第2方向に押圧荷重を受けることになり、第2係合部を介して入力される第2モジュール全体の重量に対する剛性が、第1係合部が第2方向に引張荷重を受ける場合に比べて高くなる。このため、押圧荷重に対する第1係合部の第2方向の変位量を小さく抑えることができ、第2モジュールを第1モジュールによって安定して支持することができる。
【0018】
上述の態様の車両用モジュール固定構造では、上記第1モジュールは、車幅方向に延びる強度部材であるインパネリインフォースを有し、上記インパネリインフォースに上記干渉部が設けられているのが好ましい。
【0019】
この車両用モジュール固定構造によれば、既存の補強部材であるインパネリインフォースの一部を干渉部に利用できる。この場合、インパネリインフォースは、車両を補強する本来の補強機能に加えて、第2ブラケットに干渉可能な干渉機能を果たす兼用部品として使用される。これにより、干渉部のための専用部品が増えるのを阻止することができ、その分、製品コストを低減させることができる。
【0020】
以下、車両用モジュール固定構造を具現化するための実施形態について、図面を参照しつつ説明する。この車両用モジュール固定構造は、車両に搭載される2つのモジュールを固定するのに使用される。
【0021】
なお、本明細書および図面では、特に断わらない限り、車両の上方を矢印UPで示し、この車両の後方を矢印RRで示し、この車両の右方を矢印RHで示すものとする。また、車幅長方向を矢印Xで示し、車長方向を矢印Yで示し、車高方向を矢印Zで示すものとする。
【0022】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1の車両用モジュール固定構造(以下、単に「固定構造」ともいう。)1は、車両に搭載される第1モジュール10と第2モジュール20を固定するためのものである。
【0023】
第1モジュール10と第2モジュール20は、上下2分割型のインストルメントパネルを構成するものである。第1モジュール10は、インストルメントパネルの下部を形成するインパネロアであり、第2モジュール20は、インストルメントパネルの上部を形成するインパネアッパーである。
【0024】
第1モジュール10は、車幅方向Xに延びる鉄鋼製の補強部材であるインパネリインフォース14を有する。インパネリインフォース14は、1または複数の円筒状のパイプ部材によって構成されている。インパネリインフォース14の左右の端部が車両のフロントピラー(図示省略)に固定される。
【0025】
インパネリインフォース14には、空調ユニット15に接続されるセンターフェイスダクト15aが取付けられている。インパネリインフォース14には、複数のブラケット11,16R,16L,17R,17L,18R,18L,29が設けられている。本実施形態において、ブラケット11を第1モジュール10に設けられた第1ブラケット11とする。
【0026】
第2モジュール20は、樹脂材料からなる複数の部材によって構成された本体パネル部20aを有する。本体パネル部20aの裏面(車室に露出する面を表面としたとき表面と反対側の面)には、空調ユニット15に接続されるサイドフェイスダクト15b,15cと、エアバッグモジュール24と、がそれぞれ取付けられている。
【0027】
エアバッグモジュール24は、乗員保護用のエアバッグ25と、折り畳み状態のエアバッグ25を展開可能に収容するリテーナー25aと、を有する。リテーナー25aにはブラケット21が設けられている。本実施形態において、ブラケット21を第2モジュール20に設けられた第2ブラケット21とする。
【0028】
本体パネル部20aには、複数の開口20b,20c,20d,20eが設けられている。また、本体パネル部20aには、複数の固定部26R,26L,27R,27L,28R,28L,29が設けられている。
【0029】
開口20bは、第1モジュール10と第2モジュール20の組付け時に、第1モジュール10側のセンターフェイスダクト15aの吹出口を配置するために設けられている。開口20cは、サイドフェイスダクト15bの吹出口を配置するために設けられている。開口20dは、サイドフェイスダクト15cの吹出口を配置するために設けられている。開口20eは、第2ブラケット21の第2締結孔22へのアクセスを可能とするものであり、第2ブラケット21を第1モジュール10側の第1ブラケット11と締結固定するときに使用される。
【0030】
第1モジュール10と第2モジュール20は複数の固定箇所で固定される。複数の固定箇所には、第1ブラケット11と第2ブラケット21との固定箇所に加えて、複数のブラケット16R,16L,17R,17L,18R,18L,29のそれぞれと複数の固定部26R,26L,27R,27L,28R,28L,29bのそれぞれとの固定箇所が含まれている。特に図示しないものの、各ブラケットおよび各固定部には、締結固定用の締結孔が設けられている。なお、固定箇所の数はこれに限定されるものではなく、必要に応じて固定箇所の数を適宜に変更してもよい。
【0031】
例えば、複数のブラケット16R,16L,17R,17L,18R,18L,29のそれぞれと複数の固定部26R,26L,27R,27L,28R,28L,29bのそれぞれとを組付け、さらに第1ブラケット11と第2ブラケット21を組付けた状態で、締結部材を使用して各組付け部を順次締結固定する。
【0032】
図2に示されるように、実施形態1の固定構造1は、第1ブラケット11と、第2ブラケット21と、第1ブラケット11と第2ブラケット21を締結固定する、後述の締結部材30(図3を参照)と、を備えている。第2ブラケット21は、前述のエアバッグモジュール24のリテーナー25aから下方へ延びている。
【0033】
第1ブラケット11は、インパネリインフォース14の上部に接合されている。第1ブラケット11の接合部分である底部は、インパネリインフォース14との接合強度を高めるために、インパネリインフォース14の湾曲面に倣うような湾曲形状であるのが好ましい。
【0034】
第1ブラケット11には、第1締結孔12と第1係合部13が設けられている。第1締結孔12は、板状部材を板厚方向に貫通してなる貫通孔である。第1係合部13は、車幅方向Xと車長方向Yによって規定される平面を有する平板部である。
【0035】
第1締結孔12と第1係合部13は、板状部材に適宜にプレス加工や曲げ加工等がなされることによって形成されるのが好ましい。本実施形態では、一例として、第1係合部13を「切り起こし」と称される加工方法を使用して形成している。この切り起こしでは、先ず、抜き加工により開口11aと支持部13aが形成される。このとき、支持部13aは、開口11aの下側縁部から上方へ延出するように設けられる。その後、支持部13aの延出先端部を概ね水平に曲げ加工することによって第1係合部13が形成される。このため、第1係合部13は、支持部13aによって下方から支持されるように設けられている。
【0036】
第1係合部13を切り起こしによって形成すれば、第1係合部13を設けるのに第1ブラケット11とは別の部材を準備する必要がない。これにより、部品点数を少なくすることができる。
【0037】
第2ブラケット21には、第1ブラケット11の第1締結孔12と位置合わせ可能な第2締結孔22と、第1ブラケット11の第1係合部13に係合可能な第2係合部23と、が設けられている。第2締結孔22は、板状部材を板厚方向に貫通してなる貫通孔である。第2係合部23は、車幅方向Xと車長方向Yによって規定される平面を有する平板部である。
【0038】
第2締結孔22と第2係合部23は、板状部材に適宜にプレス加工や曲げ加工等がなされることによって形成されるのが好ましい。第2係合部23を曲げ加工で形成した場合、第2ブラケット21には、第2係合部23を上方から支持する支持部21aが形成される。
【0039】
図2および図3に示されるように、第1モジュール10と第2モジュール20を固定する作業において、第1ブラケット11と第2ブラケット21は、第1係合部13と第2係合部23が係合し第1締結孔12と第2締結孔22が位置合わせされることで組付け状態となる。第1係合部13と第2係合部23は、第2係合部23が第1係合部13の上面に着座することによって係合する。
【0040】
本実施形態では、第1締結孔12と第2締結孔22の位置合わせがなされた状態であって、且つ第1ブラケット11と第2ブラケット21が締結固定される前の一時的な状態を、第1ブラケット11と第2ブラケット21の組付け状態と定義している。
【0041】
第1締結孔12と第2締結孔22の位置合わせとは、ボルト部材30による締結が可能になるように、第1締結孔12と第2締結孔22を互いに連通するように近接させ、且つ第1締結孔12と第2締結孔22のそれぞれの孔軸を概ね合致させる態様をいう。
【0042】
第1ブラケット11と第2ブラケット21の組付け状態において、第2ブラケット21は、第1ブラケット11に対して車長方向Yの後側に配置される。また、この組付け状態において、第2ブラケット21は、第2係合部23が第1係合部13の上面に着座することにより、第1ブラケット11によって下方から支持される。
【0043】
図3および図4に示されるように、第1ブラケット11と第2ブラケット21は、組付け状態で締結部材であるボルト部材30を使用して締結固定される。ボルト部材30は、頭部31と、頭部31から延びる円柱状のボルト軸32と、を有する。このボルト部材30に対して、第1ブラケット11の裏面(第2ブラケット21に対向する面を表面としたとき表面と反対側の面)に接合されたナット部材33(図4を参照)が使用される。ボルト軸32を第1締結孔12と第2締結孔22に順次挿入した状態で、ボルト軸32の外周に形成されている雄ねじをナット部材33の開口の内壁面に形成さている雌ねじに螺合させることによって、第1ブラケット11と第2ブラケット21が締結固定される。
【0044】
図4に示されるように、第1ブラケット11は、第2ブラケット21との組付け状態において、第1係合部13が第2ブラケット21の第2係合部23から第2方向Z1に押圧荷重Faを受ける。これは、第1係合部13が支持部13aによって下方から支持されているからであり、支持部13aは第1係合部13から入力される押圧荷重Faによって下方に押圧される。ここで、第2方向Z1は第1方向Y1と直交する方向である。第1方向Y1は、車長方向Yのうち前側に向かう方向であり、第2方向Z1は、車高方向Zのうち下側に向かう方向である。
【0045】
本構成のように、第1係合部13が第2係合部23から第2方向Z1に押圧荷重Faを受ける構造は、第2係合部23を介して入力される第2モジュール20全体の重量に対する剛性が、第1係合部13が第2方向Z1に引張荷重を受ける場合に比べて高くなる。このため、押圧荷重に対する第1係合部13の第2方向Z1の変位量を小さく抑えることができ、第2モジュール20を第1モジュール10によって安定して支持することができる。
【0046】
図5に示されるように、第1ブラケット11と第2ブラケット21の組付け作業では、先ず、第2ブラケット21の第2係合部23を第1ブラケット11の第1係合部13の上面に一旦着座させるのが好ましい。このとき、第1係合部13と第2係合部23は、第2ブラケット21が第1ブラケット11に対して第1方向Y1に移動するのを許容し、且つ第2方向Z1に移動するのを規制するように係合する。
【0047】
ここで、第1方向Y1は、第1締結孔12と第2締結孔22の位置合わせ方向である。このため、第2ブラケット21を第1ブラケット11に当接するまで第1係合部13の上面に沿って第2方向Y1にスライドさせることによって、第1締結孔12と第2締結孔22の位置合わせがなされる。
【0048】
第2係合部23を第1係合部13の上面に着座させて第1係合部13と第2係合部23を係合させた状態では、第2ブラケット21を第1ブラケット11に対して第1方向Y1に移動させる操作が簡単である。このため、第1係合部13と第2係合部23を一旦係合させれば、その後、第1ブラケット11の第1締結孔12と第2ブラケット21の第2締結孔22との位置合わせを容易に行うことができる。
【0049】
ところで、第2ブラケット21の第2係合部23を第1ブラケット11の第1係合部13の上面に着座させる構造を採用する場合、第1モジュール10と第2モジュール20を固定する作業時に第1モジュール10に対して第2モジュール20が下方へ位置ずれたときには、固定箇所が目視で確認しにくいため、例えば、第1係合部13が第2締結孔22に挿入されて誤組付けとなるおそれがある。
【0050】
また、複数のブラケット16R,16L,17R,17L,18R,18L,29(図1を参照)の締結固定後に、第1ブラケット11と第2ブラケット21を締結固定するような場合、締結作業が上手くいかない時点で誤組付け状態であること気付くと、全ての固定箇所の組付けおよび締結固定を最初からやり直すことになり、このための余分な工数が発生する。
【0051】
そこで、本実施形態では、図6に示されるように、第1モジュール10に対して第2モジュール20が下方へ位置ずれたときでも、第1ブラケット11と第2ブラケット21の組付け時に上記の誤組付けが発生するのを防ぐために、インパネリインフォース14は、その一部が第2ブラケット21に干渉可能な干渉部14aとなるように構成されている。本構成は、典型的には、インパネリインフォース14に対する第1係合部13の配置を、第1ブラケット11と第2ブラケット21のそれぞれの形状に基づいて工夫することによって実現される。
【0052】
本構成によれば、第2係合部23が第1係合部13の上面に着座しないときに、インパネリインフォース14の表面の干渉部14aが第2ブラケット21に干渉することによって、第1係合部13が第2締結孔22に挿入されて誤組付けとなるのを防ぐことができる。
【0053】
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0054】
上記の固定構造1によれば、第1モジュール10と第2モジュール20を固定するときに、第1モジュール10側の第1ブラケット11と第2モジュール20側の第2ブラケット21とを組付け状態にしてボルト部材30で締結固定することができる。このとき、第1係合部13と第2係合部23を係合させて第1締結孔12と第2締結孔22を位置合わせすることによって、第1ブラケット11と第2ブラケット21が組付け状態になる。
【0055】
これに対して、第1モジュール10と第2モジュール20の位置ずれ等の要因によって、第1ブラケット11と第2ブラケット21を正しく組付けることができない場合が生じ得る。例えば、第1係合部13が第2締結孔22に挿入されて第2ブラケット21が第1ブラケット11に着座した状態になると、第1締結孔12と第2締結孔22の位置合わせがなされていない誤組付けが発生しているにもかかわらず、誤組付けの状態であるとの判断が難しい。
【0056】
そこで、第1モジュール10側のインパネリインフォース14に、第2ブラケット21に干渉可能な干渉部14aを設けることによって、第1モジュール10と第2モジュール20の位置ずれが生じているときには、第2ブラケット21が第1ブラケット11に誤って着座して誤組付けが起こることがない。そして、第2ブラケット21が第1ブラケット11に着座しないことにより、第1モジュール10と第2モジュール20の位置ずれが生じていることを作業者に気付かせることが可能になる。第1締結孔12と第2締結孔22の位置合わせができていない状態で誤組付けが発生するのを防ぐことができるため、誤組付けに伴う組付けのやり直しに要する工数を削減できる。
【0057】
したがって、実施形態1によれば、車両に搭載されるモジュール10,20を固定するときの作業の効率化を図るのに有効な車両用モジュール固定構造1を提供することができる。
【0058】
また、既存の補強部材であるインパネリインフォース14の一部を干渉部14aに利用することで、インパネリインフォース14は、車両を補強する本来の補強機能に加えて、第2ブラケット21に干渉可能な干渉機能を果たす兼用部品として使用される。これにより、干渉部14aのための専用部品が増えるのを阻止することができ、その分、製品コストを低減させることができる。
【0059】
なお、上記の固定構造1に特に関連する変更例では、図7に示されるような第1ブラケット11Aを採用することもできる。この第1ブラケット11Aは、切り起こしを用いることなく設けられた第1係合部13および支持部13aを有する。第1係合部13と支持部13aは、ブラケット本体とは別部材とされており、溶接やリベット留めなどの固定方法を用いてブラケット本体に後付け固定されている。
【0060】
以下、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0061】
(実施形態2)
図8に示されるように、実施形態2の固定構造101は、第1ブラケット111の構成が実施形態1の第1ブラケット11のものと相違している。固定構造101のその他の構成は、実施形態1の固定構造1と同様である。
【0062】
図9に示されるように、第1ブラケット111の第1係合部113は、実施形態1の第1係合部13と同様に切り起こしによって形成されている。この切り起こしにおいて、先ず、抜き加工により開口11aと支持部113aが形成される。このとき、支持部113aは、開口11aの上側縁部から下方へ延出するように設けられる。その後、支持部113aの延出先端部を概ね水平に曲げ加工することによって第1係合部113が形成される。このため、第1係合部113は、支持部113aによって上方から支持されるように設けられている。
【0063】
図9および図10に示されるように、第1モジュール10と第2モジュール20を固定する作業において、第1ブラケット111と第2ブラケット21は、第1係合部113と第2係合部23が係合し第1締結孔12と第2締結孔22が位置合わせされることで組付け状態となる。第1係合部113と第2係合部23は、第2係合部23が第1係合部113の上面に着座することによって係合する。
【0064】
図11に示されるように、第1ブラケット111は、第2ブラケット21との組付け状態において、第1係合部113が第2ブラケット21の第2係合部23から第2方向Z1に引張荷重Fbを受ける。これは、第1係合部113が支持部113aによって上方から支持されているからであり、支持部113aは第1係合部113から入力される引張荷重Fbによって下方に引っ張られる。
【0065】
図12に示されるように、第2係合部23が第1係合部113の上面に着座しないときに、インパネリインフォース14の表面の干渉部14aが第2ブラケット21に干渉することによって、第1係合部113が第2締結孔22に挿入されて誤組付けとなるのを防ぐことができる。
【0066】
したがって、実施形態2によれば、車両に搭載されるモジュール10,20を固定するときの作業の効率化を図るのに有効な車両用モジュール固定構造101を提供することができる。
【0067】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0068】
なお、特に図示しないものの、上記の固定構造101に特に関連する変更例では、図7の第1ブラケット11Aと同様に、第1係合部113および支持部113aを構成する別部材を溶接やリベット留めなどの固定方法を用いてブラケット本体に後付け固定するようにしてもよい。
【0069】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0070】
上述の実施形態では、第1モジュール10のインパネリインフォース14の一部を干渉部14aに用いる場合について例示したが、これに代えて、インパネリインフォース14に干渉部14aを構成する別部材が接合された構造を採用することができる。また、干渉部14aは、インパネリインフォース14とは別部材を利用して構成されてもよい。
【0071】
上述の実施形態では、第1モジュール10であるインパネロアと第2モジュール20であるインパネアッパーとの固定構造について例示したが、この固定構造を、インパネロアやインパネアッパーとは別モジュールの固定構造に適用することもできる。
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図12