(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】露光方法、蒸着マスクの製造方法、および、露光装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20240409BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C23C14/04 A
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2023561695
(86)(22)【出願日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2023015881
(87)【国際公開番号】W WO2023204295
(87)【国際公開日】2023-10-26
【審査請求日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2022070414
(32)【優先日】2022-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】雪野 竜也
(72)【発明者】
【氏名】碓氷 数馬
(72)【発明者】
【氏名】久保 好克
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 充
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭彦
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-152939(JP,A)
【文献】特開2010-196091(JP,A)
【文献】特開2020-56109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/04
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着マスク用基材上に位置するレジスト層を露光する方法であって、
前記レジスト層のうち、1枚の蒸着マスクをエッチングによって形成するために用いられる領域が、単位マスク領域であり、
前記単位マスク領域は、複数の単位露光領域を含み、
前記複数の単位露光領域に含まれる全ての単位露光領域を露光することを含み、
前記露光することは、
前記複数の単位露光領域に含まれる第1の単位露光領域を露光することと、
前記複数の単位露光領域に含まれる第2の単位露光領域を前記第1の単位露光領域とは異なるタイミングで露光することと、を含み、
前記露光することは、
前記単位マスク領域に含まれる全ての
前記単位露光領域を個別に露光することを含み、
前記蒸着マスクは、第1端部と、第2端部と、前記第1端部と前記第2端部とに挟まれる中央部とから構成され、
前記中央部は、蒸着パターンを形成するためのマスク孔を複数有し、
前記第1端部および前記第2端部は、前記マスク孔を有さず、
前記複数の単位露光領域は、
前記第1端部を形成するための第1露光領域と、
前記中央部を形成するための第2露光領域と、
前記第2端部を形成するための第3露光領域とから構成される
露光方法。
【請求項2】
蒸着マスク用基材上に位置するレジスト層を露光する方法であって、
前記レジスト層のうち、1枚の蒸着マスクをエッチングによって形成するために用いられる領域が、単位マスク領域であり、
前記単位マスク領域は、複数の単位露光領域を含み、
前記複数の単位露光領域に含まれる全ての単位露光領域を露光することを含み、
前記露光することは、
前記複数の単位露光領域に含まれる第1の単位露光領域を露光することと、
前記複数の単位露光領域に含まれる第2の単位露光領域を前記第1の単位露光領域とは異なるタイミングで露光することと、を含み、
前記露光することは、
前記単位マスク領域に含まれる全ての前記単位露光領域を個別に露光することを含み、
前記蒸着マスクは、第1端部と、第2端部と、前記第1端部と前記第2端部とに挟まれる中央部とから構成され、
前記中央部は、第1中央部と第2中央部とから構成され、
各中央部は、蒸着パターンを形成するためのマスク孔を複数有し、
前記第1端部および前記第2端部は、前記マスク孔を有さず、
前記複数の単位露光領域は、
前記第1端部を形成するための第1露光領域と、
前記第1中央部を形成するための第2露光領域と、
前記第2中央部を形成するための第3露光領域と、
前記第2端部を形成するための第4露光領域とから構成される
露光方法。
【請求項3】
蒸着マスク用基材上に位置するレジスト層を露光する方法であって、
前記レジスト層のうち、1枚の蒸着マスクをエッチングによって形成するために用いられる領域が、単位マスク領域であり、
前記単位マスク領域は、複数の単位露光領域を含み、
前記複数の単位露光領域に含まれる全て
の単位露光領域を露光することを含み、
前記露光することは、
前記複数の単位露光領域に含まれる第1の単位露光領域を露光することと、
前記複数の単位露光領域に含まれる第2の単位露光領域を前記第1の単位露光領域とは異なるタイミングで露光することと、を含み、
前記レジスト層は、前記単位マスク領域を複数含み、
複数の
前記単位マスク領域は、第1マスク領域と第2マスク領域とを含み、
前記露光することは、
前記第1マスク領域の前記単位露光領域と、前記第2マスク領域の前記単位露光領域とを同時に露光することを含む
露光方法。
【請求項4】
前記露光することは、
前記単位マスク領域に含まれる全ての前記単位露光領域を個別に露光することを含む
請求
項3に記載の露光方法。
【請求項5】
前記単位マスク領域は、1枚の長手方向に延びる帯状を有した前記蒸着マスクをエッチングによって形成するために用いられる領域であり、
前記単位マスク領域が含む前記複数の単位
露光領域は、前記長手方向に並び、
前記複数の単位露光領域は、1つの前記単位露光領域である当該単位露光領域とは異なる構造を有した他の前記単位露光領域を備える
請求項4に記載の露光方法。
【請求項6】
蒸着マスク用基材にレジスト層を形成すること、
請求項1から5のいずれか一項に記載の露光方法によって前記レジスト層を露光すること、
前記レジスト層を現像し、これによってレジストマスクを形成すること、および、
前記レジストマスクを用いて前記蒸着マスク用基材をエッチングすること、を含む
蒸着マスクの製造方法。
【請求項7】
蒸着マスク用基材上に位置するレジスト層を露光するための露光装置であって、
前記レジスト層のうち、1枚の蒸着マスクをエッチングによって形成するために用いられる領域が単位マスク領域であり、
前記単位マスク領域は、複数の単位露光領域を含み、
前記露光装置は、
単位露光領域ごとに露光する露光部と、
前記複数の単位露光領域のなかで、露光済の単位露光領域を検知することが可能に構成された検知部と、
前記複数の単位露光領域に含まれる第1の単位露光領域を前記露光部に露光させた後に、前記検知部の検知した結果に基づいて、前記レジスト層のうち、前記第1の単位露光領域とは異なる第2の単位露光領域を前記露光部に露光させる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記露光部に前記単位マスク領域に含まれる全ての前記単位露光領域を個別に露光させ、
前記蒸着マスクは、第1端部と、第2端部と、前記第1
端部と前記第2端部とに挟まれる中央部とから構成され、
前記中央部は、蒸着パターンを形成するためのマスク孔を複数有し、
前記第1端部および前記第2端部は、前記マスク孔を有さず、
前記複数の単位
露光領域は、
前記第1端部を形成するための第1露光領域と、
前記中央部を形成するための第2露光領域と、
前記第2端部を形成するための第3露光領域とから構成される
露光装置。
【請求項8】
蒸着マスク用基材上に位置するレジスト層を露光するための露光装置であって、
前記レジスト層のうち、1枚の蒸着マスクをエッチングによって形成するために用いられる領域が単位マスク領域であり、
前記単位マスク領域は、複数の単位露光領域を含み、
前記露光装置は、
単位露光領域ごとに露光する露光部と、
前記複数の単位露光領域のなかで、露光済の単位露光領域を検知することが可能に構成された検知部と、
前記複数の単位露光領域に含まれる第1の単位露光領域を前記露光部に露光させた後に、前記検知部の検知した結果に基づいて、前記レジスト層のうち、前記第1の単位露光領域とは異なる第2の単位露光領域を前記露光部に露光させる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記露光部に前記単位マスク領域に含まれる全ての前記単位露光領域を個別に露光させ、
前記蒸着マスクは、第1端部と、第2端部と、前記第1端部と前記第2端部とに挟まれる中央部とから構成され、
前記中央部は、第1中央部と第2中央部とから構成され、
各中央部は、蒸着パターンを形成するためのマスク孔を複数有し、
前記第1端部および前記第2端部は、前記マスク孔を有さず、
前記複数の単位露光領域は、
前記第1端部を形成するための第1露光領域と、
前記第1中央部を形成するための第2露光領域と、
前記第2中央部を形成するための第3露光領域と、
前記第2端部を形成するための第4露光領域とから構成される
露光装置。
【請求項9】
蒸着マスク用基材上に位置するレジスト層を露光するための露光装置であって、
前記レジスト層のうち、1枚の蒸着マスクをエッチングによって形成するために用いられる領域が単位マスク領域であり、
前記単位マスク領域は、複数の単位露光領域を含み、
前記露光装置は、
単位露光領域ごとに露光する露光部と、
前記複数の単位露光領域のなかで、露光済の単位露光領域を検知することが可能に構成された検知部と、
前記複数の単位露光領域に含まれる第1の単位露光領域を前記露光部に露光させた後に、前記検知部の検知した結果に基づいて、前記レジスト層のうち、前記第1の単位露光領域とは異なる第2の単位露光領域を前記露光部に露光させる制御部と、を備え、
前記レジスト層は、前記単位マスク領域を複数含み、
複数の
前記単位マスク領域は、第1マスク領域と第2マスク領域とを含み、
前記制御部は、前記露光部に、前記第1マスク領域の前記単位露光領域と、前記第2マスク領域の前記単位露光領域とを同時に露光させる
露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、露光方法、蒸着マスクの製造方法、露光装置、および、蒸着マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置が備える表示素子の形成には、蒸着法が用いられている。蒸着法によって表示素子を形成する際には、所定の形状を有した表示素子を形成するために、表示素子に求められる形状に応じたマスク孔を有する蒸着マスクが用いられている。近年では、有機EL表示装置の製造に要するコストの低減を目的として、蒸着対象である基板の大型化が進められている。基板の大型化に応じて、蒸着マスクの大型化も進められている。
【0003】
大型の蒸着マスクの一例を製造する際には、まず、蒸着マスクの長手方向における一対の端部と、端部間に位置する中間部とが別々に形成される。次いで、各端部と中間部とが接合されることによって、1つの蒸着マスクが形成される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蒸着マスクは、蒸着マスクを用いた成膜が行われるたびに加熱されるから、蒸着マスクは、その蒸着マスクを用いた成膜が行われた回数分だけ熱履歴を有する。端部と中間部とが接合された接合部を備える蒸着マスクでは、端部と中間部との接合部と、接合部以外の部分とにおいて、熱履歴の影響が異なることがある。そのため、蒸着マスクには熱履歴に起因した歪みが生じ、これによって、蒸着マスクが有するマスク孔の形状や位置の精度が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための露光方法は、蒸着マスク用基材上に位置するレジスト層を露光する方法である。前記レジスト層のうち、1枚の蒸着マスクをエッチングによって形成するために用いられる領域が、単位マスク領域である。前記単位マスク領域は、複数の単位露光領域を含む。前記複数の単位露光領域に含まれる全ての単位露光領域を露光することを含む。前記露光することでは、前記複数の単位露光領域に含まれる第1の単位露光領域を露光することと、前記複数の単位露光領域に含まれる第2の単位露光領域を前記第1の単位露光領域とは異なるタイミングで露光することと、を含む。
【0007】
上記課題を解決するための蒸着マスクの製造方法は、蒸着マスク用基材にレジスト層を形成すること、上記露光方法によって前記レジスト層を露光すること、前記レジスト層を現像し、これによってレジストマスクを形成すること、および、前記レジストマスクを用いて前記蒸着マスク用基材をエッチングすること、を含む。
【0008】
上記課題を解決するための露光装置は、蒸着マスク用基材上に位置するレジスト層を露光するための装置である。前記レジスト層のうち、1枚の蒸着マスクをエッチングによって形成するために用いられる領域が単位マスク領域である。前記単位マスク領域は、複数の単位露光領域を含む。前記露光装置は、単位露光領域ごとに露光する露光部と、前記複数の単位露光領域のなかで、露光済の単位露光領域を検知することが可能に構成された検知部と、前記複数の単位露光領域に含まれる第1の単位露光領域を前記露光部に露光させた後に、前記検知部の検知した結果に基づいて、前記レジスト層のうち、前記第1の単位露光領域とは異なる第2の単位露光領域を前記露光部に露光させる制御部と、を備える。
【0009】
上記各構成によれば、単位マスク領域を構成する全ての単位露光領域が露光されるから、露光後のレジスト層から形成されたレジストマスクを用いた蒸着マスク用基材のエッチングによって、蒸着マスク用基材から1枚の蒸着マスクを形成することが可能である。これにより、蒸着マスクが、接合部を含まない単一の蒸着マスク用基材から形成されるから、蒸着マスクが有するマスク孔の形状や位置の精度が熱履歴に起因して低下することが抑えられる。
【0010】
上記露光方法において、前記露光することは、前記単位マスク領域に含まれる全ての単位露光領域を個別に露光することを含んでもよい。この露光方法によれば、単位マスク領域の露光に用いられる露光装置は、1つの単位露光領域の露光が可能な大きさの露光部を備えていればよい。これにより、露光部の大型化を抑えることが可能である。
【0011】
上記露光方法において、前記蒸着マスクは、第1端部と、第2端部と、前記第1端部と前記第2端部とに挟まれる中央部とから構成され、前記中央部は、蒸着パターンを形成するためのマスク孔を複数有し、前記第1端部および前記第2端部は、前記マスク孔を有さず、前記複数の単位露光領域は、前記第1端部を形成するための第1露光領域と、前記中央部を形成するための第2露光領域と、前記第2端部を形成するための第3露光領域から構成されてもよい。
【0012】
上記露光方法によれば、マスク孔を含む中央部の全体が同一の単位露光領域に含まれるから、露光に起因した中央部内でのずれを抑え、これによって蒸着マスクが備えるマスク孔の位置や形状の精度の低下を抑えることが可能である。
【0013】
上記露光方法において、前記蒸着マスクは、第1端部と、第2端部と、前記第1端部と前記第2端部とに挟まれる中央部とから構成され、前記中央部は、第1中央部と第2中央部とから構成され、各中央部は、蒸着パターンを形成するためのマスク孔を複数有し、前記第1端部および前記第2端部は、前記マスク孔を有さず、前記複数の単位露光領域は、前記第1端部を形成するための第1露光領域と、前記第1中央部を形成するための第2露光領域と、前記第2中央部を形成するための第3露光領域と、前記第2端部を形成するための第4露光領域とから構成されてもよい。
【0014】
上記露光方法によれば、第1中央部と第2中央部とが互いに異なる単位露光領域によって形成されるから、蒸着マスクにおいて、蒸着パターンを形成するためのマスク孔を有した領域を拡張することが可能である。
【0015】
上記露光方法において、前記レジスト層は、前記単位マスク領域を複数含み、前記複数の単位マスク領域は、第1マスク領域と第2マスク領域とを含み、前記露光することは、前記第1マスク領域の前記単位露光領域と、前記第2マスク領域の前記単位露光領域とを同時に露光することを含んでもよい。
【0016】
上記露光方法によれば、異なる単位マスク領域に含まれる単位露光領域が同時に露光されるから、単位マスク領域を1つずつ露光する場合に比べて、複数の単位マスク領域を露光するために要する時間を短縮することが可能である。
【0017】
上記課題を解決するための蒸着マスクは、第1方向に沿って延びる第1長辺と、前記第1長辺に平行な第2長辺と、前記第1方向に交差する第2方向に沿って延び、前記第1長辺を前記第2長辺に接続する一対の短辺と、備える。前記第1長辺および第2長辺の少なくとも一方が、第2方向に沿う段差部を有する。
【0018】
上記蒸着マスクによれば、蒸着マスクの長辺が段差部を有するから、長辺が段差部を有しない場合に比べて、レジスト層が有する単位マスク領域を単位露光領域ごとに露光する際のずれが、長辺の段差の分だけ許容される。それゆえに、長辺に段差部を有した蒸着マスクは、単位マスク領域を複数回に分けて露光する工程を含む製造方法に適用されることが好適な構造である。
【0019】
上記蒸着マスクにおいて、前記第1長辺から前記第2長辺に向かう方向が段差方向であり、前記第1長辺は、前記段差方向において窪む段差部を有する。前記第2長辺は、前記段差方向において突き出る段差部を有し、前記第1長辺の前記段差部と前記第2長辺の前記段差部とは、前記短辺が延びる方向において並んでいてもよい。
【0020】
上記蒸着マスクによれば、第1長辺が段差方向において窪む段差部を有する一方で、第2長辺が段差方向において突き出る段差部を有するから、段差部での段差の量分だけ、第2方向における露光時のずれが許容される。
【0021】
上記蒸着マスクにおいて、前記段差部における段差の量が、0.5μm以上5μm以下であってもよい。この蒸着マスクによれば、段差の量が0.5μm以上であることによって、蒸着マスク用基材上のレジスト層を露光する際の位置合わせに要する負荷を軽減することが可能である。段差の量が5μm以下であることによって、段差に起因した蒸着マスクにおける機械的強度の低下を抑えることが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、熱履歴による歪みを抑え、これによって、蒸着マスクが有するマスク孔の形状や位置の精度の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、一実施形態における蒸着マスクの構造を示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1が示す蒸着マスクの一部を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2が示す第1長辺の段差部を拡大して示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図1が示す蒸着マスクの一部を示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図4が示す第1長辺の段差部を拡大して示す平面図である。
【
図6】
図6は、露光装置を模式的に示すブロック図である。
【
図7】
図7は、
図6が示す露光装置が備える検知部を模式的に示す斜視図である。
【
図8】
図8は、位置合わせ後の蒸着マスク用基材と露光マスクとを示す平面図である。
【
図9】
図9は、露光装置に搭載される第1端マスクの構造を示す平面図である。
【
図10】
図10は、露光装置に搭載される第1中央マスクの構造を示す平面図である。
【
図11】
図11は、露光装置に搭載される第2中央マスクの構造を示す平面図である。
【
図12】
図12は、露光装置に搭載される第2端マスクの構造を示す平面図である。
【
図13】
図13は、露光方法に含まれる一工程を示す工程図である。
【
図14】
図14は、露光方法に含まれる一工程を示す工程図である。
【
図15】
図15は、露光方法に含まれる一工程を示す工程図である。
【
図16】
図16は、露光方法に含まれる一工程を示す工程図である。
【
図17】
図17は、蒸着マスクの製造方法に含まれる一工程を示す工程図である。
【
図18】
図18は、蒸着マスクの製造方法に含まれる一工程を示す工程図である。
【
図19】
図19は、蒸着マスクの製造方法に含まれる一工程を示す工程図である。
【
図20】
図20は、蒸着マスクの製造方法に含まれる一工程を示す工程図である。
【
図21】
図21は、蒸着マスクの製造方法に含まれる一工程を示す工程図である。
【
図22】
図22は、蒸着マスクの製造方法に含まれる一工程を示す工程図である。
【
図23】
図23は、蒸着マスクの第6変更例における構造を示す平面図である。
【
図24】
図24は、蒸着マスクの第7変更例における構造を示す平面図である。
【
図25】
図25は、露光装置の第1変更例における構造を模式的に示すブロック図である。
【
図26】
図26は、露光装置の第2変更例における構造を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1から
図22を参照して、露光方法、蒸着マスクの製造方法、露光装置、および、蒸着マスクの一実施形態を説明する。
[蒸着マスク]
図1から
図5を参照して、蒸着マスクを説明する。
図1は、1つの蒸着マスクの全体を示している。
【0025】
図1が示すように、蒸着マスク10は、帯状を有している。蒸着マスク10は、第1方向D1に沿って延びる第1長辺10L1と、第1長辺10L1に平行な第2長辺10L2とを備えている。蒸着マスク10は、一対の短辺10Sをさらに備えている。各短辺10Sは、第1方向D1に交差する第2方向D2に沿って延び、かつ、第1長辺10L1を第2長辺10L2に接続している。本実施形態では、第2方向D2は第1方向D1に直交している。各短辺10Sは、他方の短辺10Sに向けて窪む切り欠きを有している。
図1が示す例では、各短辺10Sは1つの切り欠きを有しているが、各短辺10Sは2つ以上の切り欠きを有してもよい。第2方向D2における蒸着マスク10の幅が、マスク幅Wである。
【0026】
本実施形態では、蒸着マスク10は、第1端部10E1と、第2端部10E2と、中央部10Cとから構成されている。中央部10Cは、第1方向D1において第1端部10E1と第2端部10E2とに挟まれている。第1端部10E1と第2端部10E2とは、第1方向D1において中央部10Cを挟んでいる。第1端部10E1は第1の短辺10Sを含み、かつ、第2端部10E2は第2の短辺10Sを含んでいる。
【0027】
中央部10Cは、第1中央部10C1と第2中央部10C2とから構成されている。各中央部10C1,10C2は、蒸着パターンを形成するためのマスク孔10Hを複数有している。これに対して、第1端部10E1および第2端部10E2は、マスク孔10Hを有していない。
【0028】
第1中央部10C1と第2中央部10C2とは、第1方向D1に沿って並んでいる。第1中央部10C1は、2つのマスク領域C1Mと、マスク領域C1Mを囲む周辺領域C1Sとから構成されている。2つのマスク領域C1Mは、第1方向D1に沿って並んでいる。各マスク領域C1Mでは、複数のマスク孔10Hが所定の規則に沿って並んでいる。例えば、複数のマスク孔10Hは、正方格子状に並んでもよいし、千鳥状に並んでもよい。
【0029】
第2中央部10C2は、3つのマスク領域C2Mと、マスク領域C2Mを囲む周辺領域C2Sとから構成されている。3つのマスク領域C2Mは、第1方向D1に沿って並んでいる。各マスク領域C2Mでは、複数のマスク孔10Hが所定の規則に沿って並んでいる。例えば、複数のマスク孔10Hは、正方格子状に並んでもよいし、千鳥状に並んでもよい。なお、本実施形態では、第2中央部10C2のマスク領域C2Mは、第1中央部10C1のマスク領域C1Mよりも小さいが、第2中央部10C2のマスク領域C2Mは、第1中央部10C1のマスク領域C1Mと同じ大きさであってもよい。この場合には、第2中央部10C2は、2つのマスク領域と、マスク領域を囲む周辺領域C2Sとから構成されてもよい。なお、第2中央部10C2と第1中央部10C1との両方が、3つのマスク領域を備えてもよい。
【0030】
蒸着マスク10は、金属から形成されている。蒸着マスク10を形成する金属は、例えば鉄ニッケル系合金である。鉄ニッケル系合金は、不可避の不純物を含んでよい。鉄ニッケル系合金は、36質量%のニッケルと残部の鉄とを含むインバーであることが好ましい。なお、蒸着マスク10を形成する金属は、鉄ニッケルコバルト系合金であってもよい。鉄ニッケルコバルト系合金は、32質量%のニッケル、4質量%以上5質量%以下のコバルト、および、残部の鉄を含むスーパーインバーであることが好ましい。また、蒸着マスク10を形成する金属は、鉄クロムニッケル系合金、すなわちクロムニッケル系ステンレス鋼であってもよい。蒸着マスク10は、例えば10μm以上30μm以下の厚さを有してよい。
【0031】
図2は、蒸着マスク10を上面視した場合における第1端部10E1と第1中央部10C1との境界を拡大して示している。
図2が示すように、蒸着マスク10は、第2方向D2において一定の幅であるマスク幅Wを有し、かつ、第2方向D2に沿う段差部を有する。言い換えれば、第1長辺10L1から第2長辺10L2に向かう方向が段差方向である。第1長辺10L1は、段差方向において窪む段差部である第1段差部L1Sを有している。第2長辺10L2は、段差方向において突き出る段差部である第2段差部L2Sを有している。第1段差部L1Sと第2段差部L2Sとは、第2方向D2において並んでいる。
【0032】
第1長辺10L1が段差方向において窪む第1段差部L1Sを有する一方で、第2長辺10L2が段差方向において突き出る第2段差部L2Sを有する。そのため、第2方向D2でのマスク幅Wが一定である蒸着マスク10を製造する際に、段差部L1S,L2Sでの段差の量分だけ、第2方向D2における露光時のずれが許容される。
【0033】
図3は、第1長辺10L1が有する第1段差部L1Sをさらに拡大して示している。
図3が示すように、第1長辺10L1における段差の量が、段差量SAである。段差量SAは、第1長辺10L1のうち、第1中央部10C1に含まれる部分と、第1端部10E1に含まれる部分との間における第2方向D2に沿う距離である。第1段差部L1Sは、段差方向において窪んでいるから、段差量SAは、段差方向に沿った第1長辺10L1の窪み量でもある。
【0034】
第1段差部L1Sにおける段差量SAは、0.5μm以上5μm以下であってよい。第1段差部L1Sにおける段差量SAが0.5μm以上であることによって、蒸着マスク用基材上のレジスト層を露光する際の位置合わせに要する負荷を軽減することが可能である。なお、段差量SAが1.0μm以上であることによって、位置合わせに要する負荷をさらに軽減することが可能であることから、蒸着マスク10の生産性を高めることが可能である。第1段差部L1Sにおける段差量SAが5μm以下であることによって、段差に起因した蒸着マスク10における機械的強度の低下を抑えることが可能である。また、段差量SAが5μm以下であることによって、蒸着時の位置合わせの負荷を軽減することも可能である。
【0035】
なお、第2長辺10L2が有する第2段差部L2Sの段差量は、第2長辺10L2のうち、第1中央部10C1に含まれる部分と、第1端部10E1に含まれる部分との間における第2方向D2に沿う距離である。第2段差部L2Sは、段差方向において突き出ているから、段差量は、段差方向に沿った第2長辺10L2の突出量でもある。第2段差部L2Sの段差量は、第2方向D2において当該第2段差部L2Sと並ぶ第1段差部L1Sの段差量に実質的に等しい。
【0036】
なお、第1端部10E1と第1中央部10C1との境界では、第1段差部L1Sが段差方向において突き出る一方で、第2段差部L2Sが段差方向において窪んでいてもよい。
【0037】
図4は、第1中央部10C1と第2中央部10C2との境界を拡大して示している。
図4が示すように、蒸着マスク10は、第2方向D2において一定の幅であるマスク幅Wを有し、かつ、第2方向D2に沿う段差部を有する。言い換えれば、第1長辺10L1から第2長辺10L2に向かう方向が段差方向である。第1長辺10L1は、段差方向において窪む段差部である第1段差部L1Sを有している。第2長辺10L2は、段差方向において突き出る段差部である第2段差部L2Sを有している。第1段差部L1Sと第2段差部L2Sとは、第2方向D2において並んでいる。
【0038】
図5は、第1長辺10L1が有する第1段差部L1Sをさらに拡大して示している。
図5が示すように、第1長辺10L1における段差の量が、段差量SAである。段差量SAは、第1長辺10L1のうち、第2中央部10C2に含まれる部分と、第1中央部10C1に含まれる部分との間における第2方向D2に沿う距離である。第1段差部L1Sは、段差方向において窪んでいるから、段差量SAは、段差方向に沿った第1長辺10L1の窪み量でもある。
【0039】
第1段差部L1Sにおける段差量SAは、0.5μm以上5μm以下であってよい。第1段差部L1Sにおける段差量SAが0.5μm以上であることによって、蒸着マスク用基材上のレジスト層を露光する際の位置合わせに要する負荷を軽減することが可能である。なお、段差量SAが1.0μm以上であることによって、位置合わせに要する負荷をさらに軽減することが可能であることから、蒸着マスク10の生産性を高めることが可能である。第1段差部L1Sにおける段差量SAが5μm以下であることによって、段差に起因した蒸着マスク10における機械的強度の低下を抑えることが可能である。また、段差量SAが5μm以下であることによって、蒸着時の位置合わせの負荷を軽減することも可能である。
【0040】
第1中央部10C1に位置するマスク領域C1Mに対する第2中央部10C2に位置するマスク領域C2Mの位置の精度を高める観点では、段差量SAは、3μm以下であることが好ましい。すなわち、第1中央部10C1と第2中央部10C2との境界における第1段差部L1Sの段差量SAは、第1端部10E1と第1中央部10C1との境界における第1段差部L1Sの段差量SAよりも小さい。
【0041】
なお、第2長辺10L2が有する第2段差部L2Sの段差量は、第2長辺10L2のうち、第2中央部10C2に含まれる部分と、第1中央部10C1に含まれる部分との間における第2方向D2に沿う距離である。第2段差部L2Sは、段差方向において突き出ているから、段差量は、段差方向に沿った第2長辺10L2の突出量でもある。第2段差部L2Sの段差量は、第2方向D2において当該第2段差部L2Sと並ぶ第1段差部L1Sの段差量に実質的に等しい。
【0042】
なお、第1中央部10C1と第2中央部10C2との境界では、第1段差部L1Sが段差方向において突き出る一方で、第2段差部L2Sが段差方向において窪んでいてもよい。
【0043】
[露光装置]
図6から
図8を参照して露光装置を説明する。
本開示の露光装置は、蒸着マスク用基材上に位置するレジスト層を露光するための露光装置である。レジスト層のうち、1枚の蒸着マスク10をエッチングによって形成するために用いられる領域が単位マスク領域である。単位マスク領域は、複数の単位露光領域を含んでいる。露光装置は、露光部と、検知部と、制御部とを備えている。露光部は、単位露光領域ごとに露光する。検知部は、複数の単位露光領域のなかで、露光済の単位露光領域を検知することが可能に構成されている。制御部は、複数の単位マスク領域に含まれる第1の単位露光領域を露光部に露光させた後に、検知部の検知した結果に基づいて、レジスト層のうち、第1の単位領域とは異なる第2の単位露光領域を露光部に露光させる。
【0044】
以下、図面を参照して、露光装置を詳しく説明する。以下では、蒸着マスク用基材上に形成されるレジスト層がネガ型レジストから形成される場合に用いられる露光装置を例示する。また、以下では、蒸着マスク用基材の表面および裏面のそれぞれにレジスト層を形成する場合に用いられる露光装置を例示する。
【0045】
図6が示すように、露光装置20は、露光部21、検知部22、制御部23、および、搬送部24を備えている。搬送部24は、露光装置20による露光の対象である処理対象Sbを搬送する。本実施形態の露光部21は、第1露光部21Aと第2露光部21Bとを備えている。搬送部24は、巻出部24Aと巻取部24Bとを備えている。
【0046】
処理対象Sbは、搬送方向DTに沿って延びる帯状を有している。処理対象Sbは、蒸着マスク用基材と2つのレジスト層との積層体である。第1レジスト層は、処理対象Sbのうち、第1露光部21Aと対向する表面を含んでいる。第2レジスト層は、処理対象Sbのうち、第2露光部21Bと対向する表面を含んでいる。
【0047】
巻出部24Aは、巻き取られた状態の処理対象Sbを巻取部24Bに向けて送り出す。巻取部24Bは、巻出部24Aによって送りされた処理対象Sbを巻き取る。これにより、処理対象Sbが搬送方向DTに沿って搬送部24によって搬送される。処理対象Sbが含む各レジスト層において、複数の単位露光領域が搬送方向DTに沿って並んでいる。各レジスト層において、複数の単位露光領域のうち、所定の数の単位露光領域が、1つの単位マスク領域を構成する。これにより、各レジスト層では、複数の単位マスク領域が搬送方向DTに沿って並んでいる。
【0048】
処理対象Sbが広がる平面と対向する視点から見て、第1レジスト層における1つの単位露光領域は、第2レジスト層における1つの単位露光領域に重なっている。第2レジスト層における単位露光領域は、第1レジスト層における単位露光領域と同じ形状および大きさを有するから、第1レジスト層における1つの単位露光領域の全体が、第2レジスト層における1つの単位露光領域の全体に重なっている。
【0049】
第1露光部21Aは、第1レジスト層を硬化させるための光を硬化前の第1レジスト層に照射する。第1露光部21Aは、第1レジスト層を単位露光領域ごとに露光する。第1露光部21Aは、搬送方向における位置が固定された第1レジスト層に向けて光を照射する。言い換えれば、第1露光部21Aは、搬送部24によって搬送されていない状態の第1レジスト層に対して光を照射する。第1露光部21Aは、複数種類の露光マスクを用いて第1レジスト層を露光する。
【0050】
第2露光部21Bは、第2レジスト層を硬化させるための光を硬化前の第2レジスト層に照射する。第2露光部21Bは、第2レジスト層を単位露光領域ごとに露光する。第2露光部21Bは、複数の単位露光領域のうち、第1露光部21Aが露光する単位露光領域と対向する単位露光領域を露光する。第2露光部21Bは、搬送方向における位置が固定された第2レジスト層に向けて光を照射する。言い換えれば、第2露光部21Bは、搬送部24によって搬送されていない状態の第2レジスト層に対して光を照射する。第2露光部21Bは、複数種類の露光マスクを用いて第2レジスト層を露光する。
【0051】
本実施形態において、検知部22は、第1レジスト層が含む複数の単位露光領域のなかで、露光済の単位露光領域を検知することが可能に構成されている。検知部22は、例えば、第1レジスト層が露光されたことを示す露光済マークを検知することによって、露光済の単位露光領域を検知する。
【0052】
制御部23は、露光部21、検知部22、および、搬送部24の駆動を制御することによって、露光部21にレジスト層を露光させる。この際に、制御部23は、第1露光部21Aに第1レジスト層における単位露光領域を1つずつ露光させ、かつ、第2露光部21Bに、第1露光部21Aが露光する単位露光領域と対向する第2レジスト層における単位露光領域を露光させる。
【0053】
図7を参照して、検知部22をより詳しく説明する。
検知部22は、一対の第1検知要素22Aを備えている。各第1検知要素22Aは、処理対象Sbの表面SbFの状態から、表面SbFを含む第1レジスト層における露光済の部分を検知する。第1検知要素22Aは、例えば撮像部である。第1検知要素22Aによって撮像された画像中において、レジスト層における未露光の部分の色味は、露光済の部分の色味とは異なる。そのため、画像中における色味の違いに基づいて、第1レジスト層のうちで、露光済の部分を検知することが可能である。なお、色味は、色相、明度、および、彩度の少なくとも1つを含んでよい。すなわち、色味は、色相、明度、および、彩度のうちの1つのみであってもよいし、任意の2つの組み合わせであってもよいし、色相、明度、および、彩度の全てを含んでもよい。第1検知要素22Aが撮像した画像は、所定のネットワークを通じて制御部23に入力される。
【0054】
本実施形態において、一対の第1検知要素22Aは、幅方向DWにおいて間隔を空けて配置されている。幅方向DWは、搬送方向DTに直交する方向である。処理対象Sbの表面SbFには、一対のレジストマークRMKが形成されている。なお、レジストマークRMKは、後述するレジスト層に対する露光によって形成される。レジストマークRMKは、露光済の部分によって囲まれた未露光部である。レジストマークRMKは、当該レジストマークRMKを含む単位露光領域のうち、レジストマークRMKを除く部分が露光済であることを示す露光済マークの一例である。一対のレジストマークRMKは、幅方向DWに沿って並んでいる。一対のレジストマークRMKのうち、第1のレジストマークRMKが、第1の第1検知要素22Aによって検知され、かつ、第2のレジストマークRMKが、第2の第1検知要素22Aによって検知される。
【0055】
処理対象Sbの露光には、表面SbFを露光するための表面マスクMFと、裏面SbRを露光するための裏面マスクMRとが用いられる。検知部22は、一対の第2検知要素22Bをさらに含んでいる。一対の第2検知要素22Bは、幅方向DWにおいて間隔を空けて配置されている。第2検知要素22Bは、表面マスクMFの位置に対する裏面マスクMRの位置のずれを検知する。第2検知要素22Bは、第1検知要素22Aと同様に、例えば撮像部である。第2検知要素22Bが撮像した画像は、所定のネットワークを通じて制御部23に入力される。
【0056】
表面マスクMFは、一対のレジスト位置決め用マークRAMKと、一対の表面位置決め用マークMFMKとを備えている。一対のレジスト位置決め用マークRAMKは、幅方向DWに間隔を空けて配置され、かつ、レジスト位置決め用マークRAMKは、処理対象Sbが広がる平面と対向する視点から見て、処理対象Sbに重なる。一対の表面位置決め用マークMFMKは、幅方向DWに沿って並び、かつ、表面位置決め用マークMFMKは、処理対象Sbが広がる平面と対向する視点から見て、幅方向DWにおいて処理対象Sb外に位置している。
【0057】
表面マスクMFは、第1のレジスト位置決め用マークRAMKと第1のレジストマークRMKとを表面マスクMFを介して第1の第1検知要素22Aが撮像することができるような透過性を有する。表面マスクMFは、第2のレジスト位置決め用マークRAMKと第2のレジストマークRMKとを表面マスクMFを介して第2の第1検知要素22Aが撮像することができるような透過性を有する。
【0058】
裏面マスクMRは、一対の裏面位置決め用マークMRMKを備えている。一対の裏面位置決め用マークMRMKは、幅方向DWにおいて間隔を空けて配置され、かつ、処理対象Sbが広がる平面と対向する視点から見て、裏面位置決め用マークMRMKは、幅方向DWにおいて処理対象Sb外に位置している。
【0059】
表面マスクMFは、第1の表面位置決め用マークMFMKと第1の裏面位置決め用マークMRMKとを表面マスクMFを介して第1の第2検知要素22Bが撮像できるような透過性を有する。表面マスクMFは、第2の表面位置決め用マークMFMKと第2の裏面位置決め用マークMRMKとを表面マスクMFを介して第2の第2検知要素22Bが撮像できるような透過性を有する。
【0060】
露光装置20は、表面マスク駆動部25と裏面マスク駆動部26とをさらに備えている。表面マスク駆動部25は、一対の第1駆動軸25Aと1つの第2駆動軸25Bとを備えている。一対の第1駆動軸25Aは、幅方向DWに沿って並んでいる。各第1駆動軸25Aは、搬送方向DTにおける表面マスクMFの位置を変更することが可能に構成されている。第2駆動軸25Bは、幅方向DWにおける表面マスクMFの位置を変更することが可能に構成されている。
【0061】
裏面マスク駆動部26は、一対の第1駆動軸26Aと1つの第2駆動軸26Bとを備えている。一対の第1駆動軸26Aは、幅方向DWに沿って並んでいる。各第1駆動軸26Aは、搬送方向DTにおける裏面マスクMRの位置を変更することが可能に構成されている。第2駆動軸26Bは、幅方向DWにおける裏面マスクMRの位置を変更することが可能に構成されている。
【0062】
処理対象Sbの位置に対して、表面マスクMFの位置および裏面マスクMRの位置が合わせられる際には、まず、処理対象Sbの位置に対して表面マスクMFの位置が合わせられる。次いで、表面マスクMFの位置に対して裏面マスクMRの位置が合わせられる。これにより、処理対象Sbの位置に対して、表面マスクMFの位置および裏面マスクMRの位置の両方が合わせられる。
【0063】
処理対象Sbの位置に対する表面マスクMFの位置を合わせる際には、まず、各第1検知要素22Aが、その第1検知要素22Aが撮像可能な1つのレジスト位置決め用マークRAMKおよび1つのレジストマークRMKを含む画像を撮像する。次いで、各第1検知要素22Aは、画像を制御部23に向けて出力する。
【0064】
制御部23は、各第1検知要素22Aが撮像した画像を受け取る。制御部23は、受け取った画像に基づいて、搬送方向DTと幅方向DWとから構成される二次元座標系における各レジスト位置決め用マークRAMKの位置と、レジストマークRMKの位置とを把握する。そして、制御部23は、各レジスト位置決め用マークRAMKの位置と、各レジストマークRMKの位置とから、各第1駆動軸25Aの駆動量、および、第2駆動軸25Bの駆動量を算出する。次いで、制御部23は、各駆動量に応じた駆動信号を生成し、続いて、各第1駆動軸25Aおよび第2駆動軸25Bに対して駆動信号を出力する。
【0065】
各第1駆動軸25Aおよび第2駆動軸25Bは、制御部23が出力した駆動信号を受け取る。そして、各第1駆動軸25Aおよび第2駆動軸25Bは、受け取った駆動信号に基づいて、二次元座標系における表面マスクMFの位置を変更する。第1検知要素22Aによる撮像、制御部23による各マークRAMK,RMKにおける位置の把握、および、各駆動軸25A,25Bによる表面マスクMFの位置の変更は、搬送方向DTおよび幅方向DWの両方において、レジストマークRMKに対するレジスト位置決め用マークRAMKのずれ量が所定の範囲内に含まれるまで繰り返される。
【0066】
上述したように、蒸着マスク10における段差量の下限値が0.5μmである場合には、レジストマークRMKに対するレジスト位置決め用マークRAMKのずれが許容されるから、レジスト層と表面マスクMFとの位置合わせに要する時間が短縮される。これによって、露光する際の位置合わせに要する負荷を軽減することが可能である。
【0067】
表面マスクMFの位置に対して裏面マスクMRの位置を合わせる際には、まず、各第2検知要素22Bが、その第2検知要素22Bが撮像可能な1つの表面位置決め用マークMFMKおよび1つの裏面位置決め用マークMRMKを含む画像を撮像する、次いで、各第2検知要素22Bは、画像を制御部23に向けて出力する。
【0068】
制御部23は、各第2検知要素22Bが撮像した画像を受け取る。制御部23は、受け取った画像に基づいて、搬送方向DTと幅方向DWとから構成される二次元座標系における各表面位置決め用マークMFMKの位置と、各裏面位置決め用マークMRMKの位置とを把握する。そして、制御部23は、各表面位置決め用マークMFMKの位置と、各裏面位置決め用マークMRMKの位置とから、各第1駆動軸26Aの駆動量、および、第2駆動軸26Bの駆動量を算出する。次いで、制御部23は、各駆動量に応じた駆動信号を生成し、続いて、各第1駆動軸26Aの駆動量および第2駆動軸26Bに対して駆動信号を出力する。
【0069】
各第1駆動軸26Aおよび第2駆動軸26Bは、制御部23が出力した駆動信号を受け取る。そして、各第1駆動軸26Aおよび第2駆動軸26Bは、受け取った駆動信号に基づいて、二次元座標系における裏面マスクMRの位置を変更する。第2検知要素22Bによる撮像、制御部23による各マークMFMK,MRMKにおける位置の把握、および、各駆動軸26A,26Bによる裏面マスクMRの位置の変更は、搬送方向DTおよび幅方向DWの両方において、表面位置決め用マークMFMKに対する裏面位置決め用マークMRMKのずれ量が所定の範囲内に含まれるまで繰り返される。
これにより、
図8が示すように、処理対象Sbに対して表面マスクMFと裏面マスクMRとが位置合わせされる。
【0070】
図8が示すように、処理対象Sbに対して表面マスクMFと裏面マスクMRとが位置合わせされた状態において、第1のレジスト位置決め用マークRAMK内に第1のレジストマークRMKが位置し、かつ、第2のレジスト位置決め用マークRAMK内に第2のレジストマークRMKが位置している。処理対象Sbに対して表面マスクMFと裏面マスクMRとが位置合わせされた状態において、第1の表面位置決め用マークMFMK内に第1の裏面位置決め用マークMRMKが位置し、かつ、第2の表面位置決め用マークMFMK内に第2の裏面位置決め用マークMRMKが位置している。
【0071】
[露光マスク]
図9から
図12を参照して、露光装置20に搭載される露光マスクの一例を説明する。以下に説明する露光マスクの一例では、蒸着マスク10の第1端部10E1、第1中央部10C1、第2中央部10C2、および、第2端部10E2のそれぞれに対応する露光マスクの組によって、単位マスク領域の全体が露光される。また、以下に説明する露光マスクは、第1レジスト層および第2レジスト層がネガ型のレジストから形成される場合の露光マスクの一例である。
【0072】
なお、
図9から
図12に示される露光マスクは、それぞれ第1レジスト層における単位露光領域を露光するための露光マスクである。すなわち、当該露光マスクは、
図7および
図8を参照して先に説明した表面マスクMFに対応する。蒸着マスク10を露光するためには、第2レジスト層における単位露光領域を露光するための露光マスク、すなわち裏面マスクMRも準備される。
【0073】
ただし、第2レジスト層を露光するために準備される露光マスクの数は、第1レジスト層を露光するために準備される露光マスクの数と同一である。また、第2レジスト層を露光するための各露光マスクは、各露光マスクが備える位置決め用のマーク、および、マスク孔10Hを形成するためのパターンの大きさが異なり、かつ、レジスト位置決め用マークを有しない一方で、それ以外の構造が第1レジスト層を露光するための露光マスクと共通である。
【0074】
そのため以下では、第1レジスト層を露光するための露光マスクを説明する一方で、第2レジスト層を露光するための露光マスクの説明を省略する。なお、以下に説明する露光マスクでは、表面マスクMFが備える表面位置決め用マークMFMKに対応する位置決め用マークの図示が省略されている。
【0075】
図9は、第1レジスト層のうち、蒸着マスク10の第1端部10E1に対応する部分を露光するための露光マスクの平面構造を示している。
図9が示すように、第1端マスクMFE1は、長方形状を有している。第1端マスクMFE1では、幅方向DWにおける長さが第1レジスト層における単位露光領域の幅方向DWにおける長さよりも長く、かつ、搬送方向DTにおける長さが単位露光領域の搬送方向DTにおける長さに等しい。第1端マスクMFE1は、非パターン領域FE1Aとパターン領域FE1Bとを備えている。
【0076】
非パターン領域FE1Aは、第1露光部21Aが放射した光を透過しない。そのため、処理対象Sbが広がる平面と対向する視点から見て、第1レジスト層のうち、非パターン領域FE1Aと重なる部分は露光されない。これに対して、パターン領域FE1Bは、第1露光部21Aが放射した光を透過する部分と、第1露光部21Aが放射した光を透過しない部分とを含む。
【0077】
非パターン領域FE1Aは、幅方向DWに沿って延びる長方形状を有し、かつ、第1端マスクMFE1の幅方向DWにおける全体にわたる長さを有している。パターン領域FE1Bは、幅方向DWに沿って延びる長方形状を有し、かつ、第1端マスクMFE1の幅方向DWにおける全体にわたる長さを有している。非パターン領域FE1Aとパターン領域FE1Bとは、搬送方向DTに沿って並んでいる。
【0078】
パターン領域FE1Bの中央には、第1遮光部FE1B1が位置している。第1遮光部FE1B1は、第1露光部21Aが放射した光を透過しない。第1遮光部FE1B1は、蒸着マスク10の第1端部10E1に応じた形状を有している。
【0079】
パターン領域FE1Bにおいて、搬送方向DTの端であって、かつ、非パターン領域FE1Aから離れた端には、一対の第2遮光部FE1B2が位置している。第2遮光部FE1B2は、幅方向DWに沿って並んでいる。第2遮光部FE1B2は、パターン領域FE1Bにおける幅方向DWの各端に1つずつ位置している。各第2遮光部FE1B2は、第1レジスト層に形成されるレジストマークRMKに応じた形状を有している。パターン領域FE1Bのうち、遮光部FE1B1,FE1B2を除く部分が透光部FE1B3である。
【0080】
図10は、第1レジスト層のうち、蒸着マスク10の第1中央部10C1に対応する部分を露光するための露光マスクの平面構造を示している。
図10が示すように、第1中央マスクMFC1は、長方形状を有している。第1中央マスクMFC1では、幅方向DWにおける長さが第1レジスト層における単位露光領域の幅方向DWにおける長さより長く、かつ、搬送方向DTにおける長さが単位露光領域の搬送方向DTにおける長さに等しい。第1中央マスクMFC1は、一対のレジスト位置決め用マークFC1A、一対の第1遮光部FC1B、一対のパターン部FC1C、一対の第2遮光部FC1D、および、透光部FC1Eを備えている。レジスト位置決め用マークFC1A、第1遮光部FC1B、および、第2遮光部FC1Dは、第1露光部21Aが放射する光を透過しない。パターン部FC1Cは、第1露光部21Aが放射する光を透過する部分と透過しない部分とを含んでいる。
【0081】
第1中央マスクMFC1において、搬送方向DTの一端には、一対のレジスト位置決め用マークFC1Aが位置している。レジスト位置決め用マークFC1Aは、幅方向DWに沿って並んでいる。レジスト位置決め用マークFC1Aは、幅方向DWの各端に1つずつ位置している。各レジスト位置決め用マークFC1Aは、幅方向DWに沿って並ぶ一対の線分を備えている。各線分は、搬送方向DTに沿って延びている。
【0082】
各第1遮光部FC1Bは、搬送方向DTに沿って延びる直線状を有し、かつ、第1中央マスクMFC1の搬送方向DTにおける全体にわたる長さを有している。一対の第1遮光部FC1Bは、幅方向DWに沿って並んでいる。幅方向DWにおける第1遮光部FC1B間の距離は、蒸着マスク10のマスク幅Wにほぼ等しい。
【0083】
一対のパターン部FC1Cは、一対の第1遮光部FC1B間に位置し、かつ、搬送方向DTに沿って並んでいる。パターン部FC1Cには、マスク領域C1Mにおいて複数のマスク孔10Hが並ぶ規則と同一の規則で、複数の遮光部が並んでいる。
【0084】
第1中央マスクMFC1において、搬送方向DTの端であって、かつ、レジスト位置決め用マークFC1Aが位置する端とは反対側の端には、一対の第2遮光部FC1Dが位置している。第2遮光部FC1Dは、幅方向DWに沿って並んでいる。第2遮光部FC1Dは、第1中央マスクMFC1における幅方向DWの各端に1つずつ位置している。各第2遮光部FC1Dは、第1レジスト層に形成されるレジストマークRMKに応じた形状を有している。第1中央マスクMFC1において、レジスト位置決め用マークFC1A、第1遮光部FC1B、パターン部FC1C、第2遮光部FC1D以外の部分が、透光部FC1Eである。
【0085】
図11は、第1レジスト層のうち、蒸着マスク10の第2中央部10C2に対応する部分を露光するための露光マスクの平面構造を示している。
図11が示すように、第2中央マスクMFC2は、長方形状を有している。第2中央マスクMFC2では、幅方向DWにおける長さが第1レジスト層における単位露光領域の幅方向DWにおける長さよりも長く、かつ、搬送方向DTにおける長さが単位露光領域の搬送方向DTにおける長さに等しい。第2中央マスクMFC2は、一対のレジスト位置決め用マークFC2A、一対の第1遮光部FC2B、3つのパターン部FC2C、一対の第2遮光部FC2D、および、透光部FC2Eを備えている。レジスト位置決め用マークFC2A、第1遮光部FC2B、および、第2遮光部FC2Dは、第1露光部21Aが放射する光を透過しない。パターン部FC2Cは、第1露光部21Aが放射する光を透過する部分と透過しない部分とを含んでいる。
【0086】
第2中央マスクMFC2において、搬送方向DTの一端には、一対のレジスト位置決め用マークFC2Aが位置している。レジスト位置決め用マークFC2Aは、幅方向DWに沿って並んでいる。レジスト位置決め用マークFC2Aは、幅方向DWの各端に1つずつ位置している。各レジスト位置決め用マークFC2Aは、幅方向DWに沿って並ぶ一対の線分を備えている。各線分は、搬送方向DTに沿って延びている。
【0087】
各第1遮光部FC2Bは、搬送方向DTに沿って延びる直線状を有し、かつ、第2中央マスクMFC2の搬送方向DTにおける全体にわたる長さを有している。一対の第1遮光部FC2Bは、幅方向DWに沿って並んでいる。幅方向DWにおける第1遮光部FC2B間の距離は、蒸着マスク10のマスク幅Wにほぼ等しい。
【0088】
3つのパターン部FC2Cは、一対の第1遮光部FC2B間に位置し、かつ、搬送方向DTに沿って並んでいる。パターン部FC2Cには、マスク領域C2Mにおいて複数のマスク孔10Hが並ぶ規則と同一の規則で、複数の遮光部が並んでいる。
【0089】
第2中央マスクMFC2において、搬送方向DTの端であって、かつ、レジスト位置決め用マークFC2Aが位置する端とは反対側の端には、一対の第2遮光部FC2Dが位置している。第2遮光部FC2Dは、幅方向DWに沿って並んでいる。第2遮光部FC2Dは、第2中央マスクMFC2における幅方向DWの各端に1つずつ位置している。各第2遮光部FC2Dは、第1レジスト層に形成されるレジストマークRMKに応じた形状を有している。第2中央マスクMFC2において、レジスト位置決め用マークFC2A、第1遮光部FC2B、パターン部FC2C、および、第2遮光部FC2D以外の部分が、透光部FC2Eである。
【0090】
図12は、第1レジスト層のうち、蒸着マスク10の第2端部10E2に対応する部分を露光するための露光マスクの平面構造を示している。
図12が示すように、第2端マスクMFE2は、長方形状を有している。第2端マスクMFE2では、幅方向DWにおける長さが第1レジスト層における単位露光領域の幅方向DWにおける長さよりも長く、かつ、搬送方向DTにおける長さが単位露光領域の搬送方向DTにおける長さに等しい。第2端マスクMFE2は、非パターン領域FE2Aとパターン領域FE2Bとを備えている。
【0091】
非パターン領域FE2Aは、第1露光部21Aが放射した光を透過しない。そのため、処理対象Sbが広がる平面と対向する視点から見て、第1レジスト層のうち、非パターン領域FE2Aと重なる部分は露光されない。これに対して、パターン領域FE2Bは、第1露光部21Aが放射した光を透過する部分と、第1露光部21Aが放射した光を透過しない部分とを含む。
【0092】
非パターン領域FE2Aは、幅方向DWに沿って延びる長方形状を有し、かつ、第2端マスクMFE2の幅方向DWにおける全体にわたる長さを有している。パターン領域FE2Bは、幅方向DWに沿って延びる長方形状を有し、かつ、第2端マスクMFE2の幅方向DWにおける全体にわたる長さを有している。非パターン領域FE2Aとパターン領域FE2Bとは、搬送方向DTに沿って並んでいる。
【0093】
パターン領域FE2Bの中央には、第1遮光部FE2B1が位置している。第1遮光部FE2B1は、第1露光部21Aが放射した光を透過しない。第1遮光部FE2B1は、蒸着マスク10の第2端部10E2に応じた形状を有している。
【0094】
パターン領域FE2Bにおいて、搬送方向DTの端であって、かつ、非パターン領域FE2Aから離れた端には、一対のレジスト位置決め用マークFE2B2が位置している。レジスト位置決め用マークFE2B2は、幅方向DWに沿って並んでいる。レジスト位置決め用マークFE2B2は、パターン領域FE2Bにおける幅方向DWの各端に1つずつ位置している。レジスト位置決め用マークFE2B2は、幅方向DWに沿って並ぶ一対の線分を備えている。各線分は、搬送方向DTに沿って延びている。パターン領域FE2Bのうち、第1遮光部FE2B1およびレジスト位置決め用マークFE2B2を除く部分が透光部FE2B3である。
【0095】
[露光方法]
図13から
図16を参照して露光方法を説明する。
本開示の露光方法は、蒸着マスク用基材上に位置するレジスト層を露光する方法である。レジスト層のうち、1枚の蒸着マスクをエッチングによって形成するために用いられる領域が、単位マスク領域である。単位マスク領域は、複数の単位露光領域を含んでいる。露光方法は、複数の単位露光領域に含まれる全ての単位露光領域を露光することを含んでいる。露光することでは、複数の単位露光領域に含まれる第1の単位露光領域を露光することと、複数の単位露光領域に含まれる第2の単位露光領域を第1の単位露光領域とは異なるタイミングで露光することと、を含んでいる。
【0096】
この露光方法によれば、単位マスク領域MAを構成する全ての単位露光領域EAが露光されるから、露光後のレジスト層から形成されたレジストマスクを用いた蒸着マスク用基材のエッチングによって、蒸着マスク用基材から1枚の蒸着マスクを形成することが可能である。これにより、蒸着マスクが、接合部を含まない単一の蒸着マスク用基材から形成されるから、蒸着マスクが有するマスク孔の形状や位置の精度が熱履歴に起因して低下することが抑えられる。
【0097】
蒸着マスク10が接合部を有する場合には、成膜の繰り返しによって熱履歴が生じた際に、接合部における接合強度が低下する場合がある。また、蒸着物が付着するような隙間を接合部が有する場合には、蒸着マスク10を洗浄しても隙間に堆積した蒸着物を除去しきれず、結果として、接合部の接合強度が低下する場合がある。また、蒸着マスク10が接合部を有する場合には、端部10E1,10E2と中央部10Cを別々に作成する。そのため、端部10E1,10E2の作成に用いた金属箔のロットと、中央部10Cの作成に用いた金属箔のロットが異なり、これによって、端部10E1,10E2での物性値と、中央部10Cでの物性値とか異なる場合がある。結果として、接合部での接合強度が低下することがある。
【0098】
また、端部10E1,10E2と中央部10Cとの接合に溶接を用いた場合には、溶接の際に端部10E1,10E2に作用する熱によって端部10E1,10E1および中央部10Cに歪みが生じ、これによって、蒸着マスク10が有するマスク孔10Hの形状や位置の精度が低下する場合がある。
【0099】
この点、本開示の露光方法を含む製造方法によって製造された蒸着マスク10は、上述したように接合部を含まない。そのため、蒸着マスク10によれば、接合部の接合強度が低下することや、溶接時に作用した熱によって蒸着マスク10を構成する部材が歪むことは生じない。
【0100】
以下、図面を参照して、露光方法を詳細に説明する。なお、以下では、
図9から
図12を参照して先に説明した4つの露光マスクを用いる場合の露光方法を例示する。
図13から
図16は、露光方法に含まれる一工程を示している。
図13から
図16では、露光された部分と露光されていない部分との区別をしやすくする目的で、露光されていない部分に網点が付されている。
【0101】
なお、
図13が示す第1端マスクMFE1を用いた露光に先立ち、例えば、以下に記載の方法によって、処理対象Sbにおいて搬送方向DTに沿って延びる縁と、第1端マスクMFE1の中心軸とが平行になるように、処理対象Sbの位置に対して第1端マスクMFE1の位置が合わせられる。すなわち、第1端マスクMFE1は、処理対象Sbの縁に対する位置合わせに用いられる位置決め用マークを備えている。位置決め用マークは、搬送方向DTに沿って延びる形状を有している。露光装置20は、位置決め用マークと、処理対象Sbにおいて搬送方向DTに沿って延びる縁との両方を撮像することが可能に構成された撮像部を備えている。
【0102】
処理対象Sbの位置に対して第1端マスクMFE1の位置を合わせる際には、撮像部が、処理対象Sbにおいて搬送方向DTに沿って延びる縁と第1端マスクMFE1の位置決め用マークとを含む画像を撮像する。次いで、撮像部は、画像を制御部23に向けて出力する。制御部23は、撮像部が撮像した画像を受け取る。制御部23は、受け取った画像に基づいて、搬送方向DTと幅方向DWとから構成される二次元座標系における処理対象Sbの縁の位置と、位置決め用マークの位置とを把握する。そして、制御部23は、処理対象Sbの縁の位置と位置決め用マークの位置とから、各第1駆動軸25Aの駆動量、および、第2駆動軸25Bの駆動量を算出する。次いで、制御部23は、各駆動量に応じた駆動振動を生成し、続いて、制御部23は、各第1駆動軸25Aおよび第2駆動軸25Bに対して駆動信号を出力する。
【0103】
各第1駆動軸25Aおよび第2駆動軸25Bは、制御部23が出力した駆動信号を受け取る。そして、各第1駆動軸25Aおよび第2駆動軸25Bは、受け取った駆動信号に基づいて、二次元座標径における第1端マスクMFE1の位置を変更する。撮像部による撮像、制御部23による縁の位置および位置決め用マークの把握、および、各駆動軸25A,25Bによる第1端マスクMFE1の位置の変更は、搬送方向DTおよび幅方向DWの両方において、処理対象Sbの縁に対する位置決め用マークのずれ量が所定の範囲内に含まれるまで繰り返される。
【0104】
なお、処理対象Sbに対する第1端マスクMFE1の位置合わせが完了した後に、第1端マスクMFE1に対して、第1端マスクMFE1に対応する裏面マスクMRの位置合わせが行われる。制御部23は、第1端マスクMFE1の位置に対する裏面マスクMRの位置のずれ量が所定の範囲内に含まれる場合に、
図13から
図16を参照して以下に説明する露光に関する処理を開始する。
【0105】
図13が示すように、処理対象Sbの表面SbFを含む第1レジスト層R1は、複数の単位マスク領域MAを含んでいる。各単位マスク領域MAは、複数の単位露光領域EAを含んでいる。本実施形態では、単位マスク領域MAは、4つの単位露光領域EAによって形成されている。全ての単位露光領域EAは、互いに同一の大きさおよび形状を有している。単位マスク領域MAにおいて、第1露光領域EA1、第2露光領域EA2、第3露光領域EA3、第4露光領域EA4が、搬送方向DTに沿って記載の順に並んでいる。単位マスク領域MAに含まれる第4露光領域EA4は、その単位マスク領域MAと隣り合う別の単位マスク領域MAにおける第1露光領域EA1でもある。
【0106】
各単位露光領域EAは、搬送方向DTにおける少なくとも一方の端において、隣り合う単位露光領域EAと重なる重畳領域EAAを含んでいる。すなわち、単位露光領域EAは、搬送方向DTにおける一方の端部のみに重畳領域EAAを有するか、あるいは、搬送方向DTにおける両方の端部に重畳領域EAAを有する。単位マスク領域MAのなかで、搬送方向DTにおいて2つの単位露光領域EAに挟まれた単位露光領域EAは、搬送方向DTにおける両方の端部に重畳領域EAAを有する。これに対して、単位マスク領域MAのなかで、搬送方向DTの端に位置する単位露光領域EAは、搬送方向DTにおける一方の端部のみに重畳領域EAAを有する。
【0107】
第1露光領域EA1の一部と第2露光領域EA2の一部とが重畳した領域が第1重畳領域EAA1である。第2露光領域EA2の一部と第3露光領域EA3の一部とが重畳した領域とが第2重畳領域EAA2である。第3露光領域EA3の一部と第4露光領域EA4の一部とが重畳した領域が第3重畳領域EAA3である。
【0108】
単位マスク領域MAに対する露光を行う際には、まず、第1端マスクMFE1を用いて、第1露光領域EA1を露光する。これにより、第1露光領域EA1には、第1端マスクMFE1が備える非パターン領域FE1Aが転写された第1未露光部R1B1が形成される。また、第1露光領域EA1には、第1端マスクMFE1が備える第1遮光部FE1B1が転写された第2未露光部R1B2が形成され、かつ、各第2遮光部FE1B2が転写されたレジストマークRMKが形成される。このうち、レジストマークRMKは、第1重畳領域EAA1に形成される。また、第1露光領域EA1には、透光部FE1B3が転写された第1被露光部R1A1が形成される。
【0109】
なお、搬送方向DTにおける複数の位置に対して第1端マスクMFE1を用いた露光が行われる場合には、まず、第1の単位マスク領域MAに含まれる第1露光領域EA1に対して第1端マスクMFE1を用いた露光が行われる。次いで、制御部23が、搬送部24に処理対象Sbを予め定められた距離だけ搬送させる。そして、制御部23が、第1露光部21Aに処理対象Sbに向けて光を放射させ、これによって、第1の単位マスク領域MAに隣り合う第2の単位マスク領域MAに含まれる第1露光領域EA1に対して第1端マスクを用いた露光が行われる。
【0110】
次いで、
図14が示すように、第1中央マスクMFC1を用いて、第2露光領域EA2を露光する。この際に、第1重畳領域EAA1に位置するレジストマークRMKが、レジスト位置決め用マークFC1Aが備える線分間に位置するように、第1レジスト層R1に対して第1中央マスクMFC1が位置合わせされる。これにより、第2露光領域EA2には、第1中央マスクMFC1が備える第1遮光部FC1Bが転写された第3未露光部R1B3が、第2未露光部R1B2に接続するように形成される。また、第2露光領域EA2には、パターン部FC1Cが転写された第1パターン部R1C1が第3未露光部R1B3間に形成される。
【0111】
また、各第2遮光部FC1Dが転写されたレジストマークRMKが形成される。各レジストマークRMKは、第2重畳領域EAA2に形成される。なお、第1重畳領域EAA1に形成されたレジストマークRMKは、第2露光領域EA2の露光時に露光される。そのため、第2露光領域EA2の露光後において、第1重畳領域EAA1に位置していたレジストマークRMKは消失する。また、第2露光領域EA2には、透光部FC1Eが転写された第2被露光部R1A2が形成される。
【0112】
なお、搬送方向DTにおける複数の位置に対して第1中央マスクMFC1を用いた露光が行われる場合には、まず、第1の単位マスク領域MAに含まれる第1重畳領域EAA1に位置するレジストマークRMKを基準として、第1の単位マスク領域MAに含まれる第2露光領域EA2に対して第1中央マスクMFC1が位置合わせされる。次いで、第2の単位マスク領域MAに含まれる第1重畳領域EAA1に位置するレジストマークRMKを基準として、第1の単位マスク領域MAに隣り合う第2の単位マスク領域MAに含まれる第2露光領域EA2に対して第1中央マスクMFC1が位置合わせされる。
【0113】
図15が示すように、第2中央マスクMFC2を用いて、第3露光領域EA3を露光する。この際に、第2重畳領域EAA2に位置するレジストマークRMKが、レジスト位置決め用マークFC2Aが備える線分間に位置するように、第1レジスト層R1に対して第2中央マスクMFC2が位置合わせされる。これにより、第3露光領域EA3には、第2中央マスクMFC2が備える第1遮光部FC2Bが転写された第4未露光部R1B4が、第3未露光部R1B3に接続するように形成される。また、第3露光領域EA3には、パターン部FC2Cが転写された第2パターン部R1C2が第4未露光部R1B4間に形成される。また、各第2遮光部FC2Dが転写されたレジストマークRMKが形成される。各レジストマークRMKは、第3重畳領域EAA3に形成される。
【0114】
なお、第2重畳領域EAA2に形成されたレジストマークRMKは、第3露光領域EA3の露光時に露光される。そのため、第3露光領域EA3の露光後において、第2重畳領域EAA2に位置していたレジストマークRMKは消失する。また、第3露光領域EA3には、透光部FC2Eが転写された第3被露光部R1A3が形成される。
【0115】
また、搬送方向DTにおける複数の位置に対して第2中央マスクMFC2を用いた露光が行われる場合には、まず、第1の単位マスク領域MAに含まれる第2重畳領域EAA2に位置するレジストマークRMKを基準として、第1の単位マスク領域MAに含まれる第3露光領域EA3に対して第2中央マスクMFC2が位置合わせされる。次いで、第2の単位マスク領域MAに含まれる第2重畳領域EAA2に位置するレジストマークRMKを基準として、第1の単位マスク領域MAに隣り合う第2の単位マスク領域MAに含まれる第3露光領域EA3に対して第2中央マスクMFC2が位置合わせされる。
【0116】
図16が示すように、第2端マスクMFE2を用いて、第4露光領域EA4を露光する。この際に、第3重畳領域EAA3に位置するレジストマークRMKが、レジスト位置決め用マークFE2B2が備える線分間に位置するように、第1レジスト層R1に対して第2端マスクMFE2が位置合わせされる。これにより、第4露光領域EA4には、第2端マスクMFE2が備える第1遮光部FE2B1が転写された第5未露光部R1B5が、第4未露光部R1B4に接続するように形成される。また、第4露光領域EA4には、透光部FE2B3が転写された第4被露光部R1A4が形成される。
【0117】
なお、搬送方向DTにおける複数の位置に対して第2端マスクMFE2を用いた露光が行われる場合には、まず、第1の単位マスク領域MAに含まれる第3重畳領域EAA3に位置するレジストマークRMKを基準として、第1の単位マスク領域MAに含まれる第4露光領域EA4に対して第2端マスクMFE2が位置合わせされる。次いで、第2の単位マスク領域MAに含まれる第3重畳領域EAA3に位置するレジストマークRMKを基準として、第1の単位マスク領域MAに隣り合う第2の単位マスク領域MAに含まれる第4露光領域EA4に対して第2端マスクMFE2が位置合わせされる。
【0118】
このように、第1露光領域EA1から第4露光領域EA4が順に露光されることによって、単位マスク領域MAの全体が露光される。単位マスク領域MAが露光される際には、単位マスク領域MAに含まれる全ての単位露光領域EAを個別に露光する。そのため、単位マスク領域MAの露光に用いられる露光装置20は、1つの単位露光領域EAの露光が可能な大きさの第1露光部21Aを備えていればよい。これにより、第1露光部21Aの大型化を抑えることが可能である。
【0119】
また、上述した露光方法では、複数の単位露光領域EAが、蒸着マスク10の第1中央部10C1を形成するための第2露光領域EA2と、第2中央部10C2を形成するための第3露光領域EA3とを含んでいる。そのため、第1中央部10C1と第2中央部10C2とが互いに異なる単位露光領域EAによって形成されるから、蒸着マスク10において、蒸着パターンを形成するためのマスク孔10Hを有した領域を拡張することが可能である。
【0120】
上述した露光方法では、各露光マスクを用いた処理対象Sbに対する露光が終了した後に、処理対象Sbの全体が巻取部24Bに巻き取られる。巻取部24Bによって巻き取られた処理対象Sbでは、巻出部24Aに設置された処理対象Sbにおける先頭の端部と後尾の端部とが逆である。すなわち、巻出部24Aに設置された処理対象Sbにおける先頭の端部が、巻取部24Bに巻き取られた処理対象Sbにおける後尾の端部であり、巻出部24Aに設置された処理対象Sbにおける後尾の端部が、巻取部24Bに巻き取られた処理対象Sbにおける先頭の端部である。そのため、巻取部24Bに巻き取られた処理対象Sbが巻出部24Aに再び設置される前に、処理対象Sbの巻き直しが行われる。これにより、処理対象Sbにおける先頭の端部が巻出部24Aに位置する処理対象Sbにおける先頭の端部に一致し、かつ、処理対象Sbにおける後尾の端部が巻出部24Aに位置する処理対象Sbの後尾の端部に一致する。巻き直しが行われた処理対象Sbは、再び巻出部24Aに設置される。
【0121】
[蒸着マスクの製造方法]
図17から
図22を参照して、蒸着マスク10の製造方法を説明する。
蒸着マスク10の製造方法は、蒸着マスク用基材にレジスト層を形成すること、レジスト層を露光すること、レジスト層を現像し、これによってレジストマスクを形成すること、および、レジストマスクを用いて前記蒸着マスク用基材をエッチングすること、を含んでいる。以下、図面を参照して蒸着マスク10の製造方法をより詳しく説明する。なお、以下では、蒸着マスク10の製造方法に含まれる工程のうち、上述した露光方法によって各レジスト層に対して露光が行われて以降の工程について説明する。なお、
図17から
図22では、図示の便宜上、1つのマスク孔10Hを形成する過程が図示されている。
【0122】
図17が示すように、蒸着マスク用基材10Mは、表面10MFと、表面10MFとは反対側の面である裏面10MRとを備えている。表面10MFには、第1レジスト層R1が位置している。第1レジスト層R1は、上述したようにネガ型のレジストから形成されている。第1レジスト層R1は、上述した露光方法によって露光済である。裏面10MRには、第2レジスト層R2が位置している。第2レジスト層R2は、上述したようにネガ型のレジストから形成されている。第2レジスト層R2は、上述した露光方法によって露光済である。
【0123】
図18が示すように、第1レジスト層R1と第2レジスト層R2とを現像する。これにより、第1レジスト層R1から第1レジストマスクRM1が形成され、かつ、第2レジスト層R2から第2レジストマスクRM2が形成される。各レジスト層R1,R2の現像には、例えば炭酸ナトリウム水溶液などの現像液が用いられる。第1レジストマスクRM1は、第1マスク孔RM1Hを備えている。第1マスク孔RM1Hは、第1レジストマスクRM1を第1レジストマスクRM1の厚さ方向に沿って貫通している。第2レジストマスクRM2は、第2マスク孔RM2Hを備えている。第2マスク孔RM2Hは、第2レジストマスクRM2を第2レジストマスクRM2の厚さ方向に沿って貫通している。第1レジストマスクRM1が広がる平面と対向する視点から見て、第2マスク孔RM2Hは、第1マスク孔RM1H内に位置している。
【0124】
図19が示すように、第1レジストマスクRM1の表面上に第1保護層PL1を形成する。第1保護層PL1を形成することによって、第1マスク孔RM1Hを塞ぎ、これによって、第1マスク孔RM1Hを介して蒸着マスク用基材10Mにエッチング液が達することを防ぐ。次いで、第2レジストマスクRM2を用いて蒸着マスク用基材10Mを裏面10MRからエッチングする。蒸着マスク用基材10Mのエッチングには、例えば塩化第二鉄液などのエッチング液を用いる。これにより、裏面10MRに開口した小孔部10HSを形成する。
【0125】
図20が示すように、第1レジストマスクRM1の表面から第1保護層PL1を取り除く。また、蒸着マスク用基材10Mの裏面10MRから第2レジストマスクRM2を取り除く。次いで、蒸着マスク用基材10Mの裏面10MRを第2保護層PL2によって覆う。この際に、第2保護層PL2の一部が小孔部10HS内を埋めるように、裏面10MRに第2保護層PL2が形成される。
【0126】
図21が示すように、第1レジストマスクRM1を用いて蒸着マスク用基材10Mを表面10MFからエッチングする。蒸着マスク用基材10Mのエッチングには、小孔部10HSを形成する際と同様に、例えば塩化第二鉄液などのエッチング液を用いる。これにより、表面10MFに開口した大孔部10HLを形成する。大孔部10HLは、小孔部10HS内に充填された第2保護層PL2の一部に達するように形成され、これによって、小孔部10HSに大孔部10HLが接続される。
【0127】
図22が示すように、蒸着マスク用基材10Mの表面10MFから第1レジストマスクRM1を取り除き、かつ、裏面10MRから第2保護層PL2を取り除く。これにより、蒸着マスク10を得ることができる。蒸着マスク10は、表面10Fと、表面10Fとは反対側の面である裏面10Rと、マスク孔10Hとを備えている。マスク孔10Hにおいて、大孔部10HLは表面10Fに開口し、かつ、小孔部10HSは裏面10Rに開口している。蒸着マスク10のうち、表面10Fが蒸着マスク用基材10Mの表面10MFに対応し、かつ、裏面10Rが蒸着マスク用基材10Mの裏面10MRに対応する。
【0128】
以上説明したように、露光方法、蒸着マスクの製造方法、露光装置、および、蒸着マスクの一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)単位マスク領域MAを構成する全ての単位露光領域EAが露光されるから、露光後の第1レジスト層R1から形成された第1レジストマスクRM1を用いた蒸着マスク用基材10Mのエッチングによって、蒸着マスク用基材10Mから1枚の蒸着マスク10を形成することが可能である。これにより、蒸着マスク10が、接合部を含まない単一の蒸着マスク用基材10Mから形成されるから、蒸着マスク10の機械的強度の低下が抑えられ、また、蒸着時の位置合わせの負荷が軽減され、また、蒸着マスク10が有するマスク孔10Hの形状や位置の精度が、熱履歴に起因して低下することが抑えられる。
【0129】
(2)単位マスク領域MAの露光に用いられる露光装置20は、1つの単位露光領域EAの露光が可能な大きさの第1露光部21Aを備えていればよい。これにより、第1露光部21Aの大型化を抑えることが可能である。
【0130】
(3)第1中央部10C1と第2中央部10C2とが互いに異なる単位露光領域EAによって形成されるから、蒸着マスク10において、蒸着パターンを形成するためのマスク孔10Hを有した領域を拡張することが可能である。
【0131】
(4)第1長辺10L1が段差方向において窪む第1段差部L1Sを有する一方で、第2長辺10L2が段差方向において突き出る第2段差部L2Sを有する。そのため、第2方向D2でのマスク幅Wが一定である蒸着マスク10を製造する際に、段差部L1S,L2Sでの段差の量分だけ、第2方向D2における露光時のずれが許容される。
【0132】
(5)段差量SAが0.5μm以上であることによって、蒸着マスク用基材10M上の第1レジスト層R1を露光する際の位置合わせに要する負荷を軽減することが可能である。
【0133】
(6)段差量SAが5μm以下であることによって、段差に起因した蒸着マスク10における機械的強度の低下を抑えることが可能である。
【0134】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[蒸着マスク]
蒸着マスク10は、以下に記載のように変更されてもよい。
・蒸着マスク10の第1変更例は、第1端部と、第2端部と、第1端部と前記第2端部とに挟まれる1つの中央部とから構成されてもよい。中央部は、蒸着パターンを形成するためのマスク孔を複数有する。これに対して、第1端部および第2端部は、マスク孔を有しない。
【0135】
・蒸着マスク10の第2変更例は、複数のマスク領域を備え、かつ、複数のマスク領域には、蒸着マスク10が広がる平面と対向する視点から見て、第1の形状を有するマスク領域と、第1の形状とは異なる第2の形状を有するマスク領域が含まれる。なお、蒸着マスク10の第2変更例は、上述した実施形態の蒸着マスク10と組み合わせられてもよいし、蒸着マスク10の第1変更例と組み合わせられてもよい。
【0136】
・蒸着マスク10の第3変更例では、上述した実施形態の蒸着マスク10の各中央部10C1,10C2において、搬送方向DTに沿って複数のマスク領域が並び、かつ、幅方向DWに沿って複数のマスク領域が並んでいる。例えば、蒸着マスク10の第3変更例では、各中央部10C1,10C2において、搬送方向DTに沿って2つのマスク領域が並び、かつ、幅方向DWに沿って2つのマスク領域が並んでいてもよい。なお、蒸着マスク10の第3変更例は、蒸着マスク10の第1変更例と組み合わせられてもよいし、蒸着マスク10の第2変更例と組み合わせられてもよい。
【0137】
・蒸着マスク10の第4変更例では、蒸着マスク10が、搬送方向DTに沿って並ぶ第1部分と第2部分とから構成される。第1部分は、蒸着マスク10の第1の短辺10Sを含み、かつ、複数のマスク領域を含んでいる。第2部分は、蒸着マスク10の第2の短辺10Sを含み、かつ、複数のマスク領域を含んでいる。すなわち、第1部分は、上述した実施形態における蒸着マスク10における第1端部10E1と第1中央部10C1とから構成され、かつ、第2部分は、第2中央部10C2と第2端部10E2とから構成される。
【0138】
・蒸着マスク10の第5変更例では、各マスク孔10Hが、蒸着マスク10の表面10Fに直交する断面において円弧状を有し、かつ、表面10Fに位置する表面開口と、裏面10Rに位置する裏面開口とを有してもよい。この場合には、表面開口は裏面開口よりも大きく、かつ、裏面開口は表面開口内に位置している。なお、蒸着マスク10の第5変更例は、上述した実施形態、および、第1変更例から第4変更例のそれぞれと組み合わせられてよい。
【0139】
・
図23および
図24が示すように、蒸着マスク10は、第1のマスク幅Wを有する部分と、第2のマスク幅Wを有する部分とを含んでもよい。
図23が示す蒸着マスク10の第6変更例では、第1端部10E1および第2端部10E2におけるマスク幅Wが、中央部10Cにおけるマスク幅Wよりも大きい。これに対して、
図24が示す蒸着マスク10の第7変更例では、第1端部10E1および第2端部10E2におけるマスク幅Wが、中央部10Cにおけるマスク幅Wよりも小さい。なお、
図23および
図24では、図示の便宜上、蒸着マスク10のうち、第1端部10E1と第1中央部10C1の一部とのみが図示されている。
【0140】
図23が示すように、蒸着マスク10の第6変更例では、第1端部10E1におけるマスク幅Wが、第1中央部10C1におけるマスク幅Wよりも大きい。そのため、第1長辺10L1が有する第1段差部L1Sと、第2長辺10L2が有する第2段差部L2Sとは、第2方向D2に沿って並んでいる。第1段差部L1Sは、第1端部10E1から第1中央部10C1に向かう方向において、第1長辺10L1から第2長辺10L2に向けて窪んでいる。これに対して、第2段差部L2Sは、第1端部10E1から第1中央部10C1に向かう方向において、第2長辺10L2から第1長辺10L1に向けて窪んでいる。各段差部L1S,L2Sでの段差量は、30μm以下であってよい。
【0141】
第1端部10E1において、第1方向D1に沿い、かつ、第2方向D2における第1端部10E1の中央を通る直線が、第1端部10E1の中心軸AE1である。第1中央部10C1において、第1方向D1に沿い、かつ、第2方向D2における第1中央部10C1の中央を通る直線が、第1中央部10C1の中心軸AC1である。第1端部10E1の中心軸AE1は、第1中央部10C1の中心軸AC1に一致することが好ましい。
図23が示す例では、第1端部10E1の中心軸AE1が、第1中央部10C1の中心軸AC1に一致している。第2方向D2において、第1端部10E1の中心軸AE1と第1中央部10C1の中心軸AC1との間の距離は、0.5μm以上5μm以下の範囲内に含まれることが好ましい。
【0142】
蒸着マスク10の第6変更例によるように、各長辺10L1,10L2が段差部L1S,L2Sを有する場合には、以下に記載の効果を得ることができる。
(7)蒸着マスク10の長辺10L1,10L2が段差部L1S,L2Sを有する。そのため、長辺10L1,10L2が段差部を有しない場合に比べて、レジスト層が有する単位マスク領域MAを単位露光領域EAごとに露光する際のずれが、長辺10L1,10L2の段差の分だけ許容される。それゆえに、長辺10L1,10L2に段差部L1S,L2Sを有した蒸着マスク10は、単位マスク領域MAを複数回に分けて露光する工程を含む製造方法に適用されることが好適な構造である。
【0143】
図24が示すように、蒸着マスク10の第7変更例では、第1端部10E1におけるマスク幅Wが、第1中央部10C1におけるマスク幅Wよりも小さい。そのため、第1長辺10L1が有する第1段差部L1Sと、第2長辺10L2が有する第2段差部L2Sとは、第2方向D2に沿って並んでいる。第1段差部L1Sは、第1端部10E1から第1中央部10C1に向かう方向において、第2長辺10L2から第1長辺10L1に向けて突き出ている。これに対して、第2段差部L2Sは、第1端部10E1から第1中央部10C1に向かう方向において、第1長辺10L1から第2長辺10L2に向けて突き出ている。各段差部L1S,L2Sでの段差量は、30μm以下であってよい。
【0144】
第1端部10E1において、第1方向D1に沿い、かつ、第2方向D2における第1端部10E1の中央を通る直線が、第1端部10E1の中心軸AE1である。第1中央部10C1において、第1方向D1に沿い、かつ、第2方向D2における第1中央部10C1の中央を通る直線が、第1中央部10C1の中心軸AC1である。第1端部10E1の中心軸AE1は、第1中央部10C1の中心軸AC1に一致することが好ましい。
図24が示す例では、第1端部10E1の中心軸AE1が、第1中央部10C1の中心軸AC1に一致している。第2方向D2において、第1端部10E1の中心軸AE1と第1中央部10C1の中心軸AC1との間の距離は、0.5μm以上5μm以下の範囲内に含まれることが好ましい。
なお、蒸着マスク10の第7変更例によっても、上述した(7)に準じた効果を得ることはできる。
【0145】
・蒸着マスク10において、第1長辺10L1および第2長辺10L2のいずれか一方のみが段差部を有してもよい。この場合であっても、長辺10L1,10L2が段差を有することによって、上述した(7)に準じた効果を得ることはできる。
【0146】
[露光方法]
・蒸着マスク10の第1変更例を製造する場合には、1つの単位マスク領域MAが、第1露光領域、第2露光領域、および、第3露光領域から構成されればよい。第1露光領域は、第1端部を形成するための単位露光領域であり、第2露光領域は、中央部を形成するための単位露光領域であり、第3露光領域は、第2端部を形成するための単位露光領域である。この場合には、第1レジスト層を露光するための露光マスクとして、第1露光領域を露光するための表面マスク、第2露光領域を露光するための表面マスク、および、第3露光領域を露光するための表面マスクを準備すればよい。また、第2レジスト層を露光するためのマスクとして、第1露光領域を露光するための裏面マスク、第2露光領域を露光するための裏面マスク、および、第3露光領域を露光するための裏面マスクを準備すればよい。
【0147】
この変更例によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(8)マスク孔10Hを含む中央部の全体が同一の単位露光領域に含まれるから、露光に起因した中央部内でのずれを抑え、これによって蒸着マスク10が備えるマスク孔10Hの位置や形状の精度の低下を抑えることが可能である。
【0148】
・蒸着マスク10の第2変更例を製造する際には、第1中央部10C1が第1の形状を有するマスク領域と第2の形状を有するマスク領域とを含む場合には、第1レジスト層を露光するための露光マスクとして、これらのマスク領域に応じたパターン部を有した第1中央マスクMFC1を準備すればよい。また、この場合には、第2レジスト層を露光するための露光マスクのうち、第1中央マスクMFC1に位置合わせされる裏面マスクが、第1の形状を有するマスク領域と第2の形状を有するマスク領域とを含む第1中央部10C1に対応した露光が可能に構成されていればよい。
【0149】
また、第2中央部10C2が第1の形状を有するマスク領域と第2の形状を有するマスク領域とを含む場合には、第1レジスト層を露光するための露光マスクとして、これらのマスク領域に応じたパターン部を有する第2中央マスクMFC2を準備すればよい。また、この場合には、第2レジスト層を露光するための露光マスクのうち、第2中央マスクMFC2に位置合わせされる裏面マスクが、第1の形状を有するマスク領域と第2の形状を有するマスク領域とを含む第2中央部10C2に対応した露光が可能に構成されていればよい。
【0150】
蒸着マスク10の第2変更例が第1変更例と組み合わせられた場合には、第2露光領域を露光するための表面マスクおよび裏面マスクが、第1の形状を有するマスク領域と第2の形状を有するマスク領域とに対応した露光が可能に構成されていればよい。
【0151】
・蒸着マスク10の第3変更例を製造する際には、第1中央マスクMFC1および第2中央マスクMFC2として、搬送方向DTに沿って複数のパターン部が並び、かつ、幅方向に沿って複数のパターン部が並ぶ露光マスクを準備すればよい。また、第1中央マスクMFC1に位置合わせされる裏面マスク、および、第2中央マスクMFC2に位置合わせされる裏面マスクも、各中央部10C1,10C2に対応した露光が可能に構成されていればよい。
【0152】
なお、第3変更例が第1変更例と組み合わせられる場合には、第2表面マスクとして、搬送方向DTに沿って複数のパターン部が並び、かつ、幅方向DWに沿って複数のパターン部が並ぶマスクを準備すればよい。また、第2表面マスクに位置合わせされる裏面マスクとして、搬送方向DTに沿って並ぶ複数のマスク領域と、幅方向DWに沿って並ぶ複数のマスク領域とに対応した露光が可能である露光マスクを準備すればよい。
【0153】
・蒸着マスク10の第4変更例を製造する際には、第1部分を形成するための第1表面マスクと、第2部分を形成するための第2表面マスクとを準備すればよい。また、第1表面マスクに位置合わせされる第1裏面マスクと、第2表面マスクに位置合わせされる第2裏面マスクとを準備すればよい。
【0154】
・蒸着マスク10の第5変更例を製造する際には、処理対象Sbは、蒸着マスク用基材10Mと、蒸着マスク用基材10Mの表面10MFに位置する第1レジスト層R1のみを備えていればよい。そして、処理対象Sbに対する露光を行う際には、第1レジスト層R1に対して光を放射する露光部のみを用いればよい。また、蒸着マスク10の第5例を製造する際には、表面マスクに対する裏面マスクの位置合わせは省略される。
【0155】
・第1レジスト層R1に対する露光は、以下のように行われてもよい。
第1レジスト層R1は、単位マスク領域MAを複数含んでいる。複数の単位マスク領域MAは、第1マスク領域と第2マスク領域とを含んでいる。露光することは、第1マスク領域の単位露光領域EAと、第2マスク領域の単位露光領域EAとを同時に露光することを含んでもよい。
【0156】
例えば、上述した実施形態において、第1の単位マスク領域MAの第4露光領域EA4と、搬送方向DTにおいて第1の単位マスク領域MAに隣り合う第2の単位マスク領域MAの第1露光領域EA1とを同時に露光することが可能に構成された表面マスクMFが用いられる。すなわち、上述した第1端マスクMFE1および第2端マスクMFE2の代わりに、1つの表面マスクMFが用いられる。表面マスクMFにおいて、第4露光領域EA4を露光するための領域と、第1露光領域EA1を露光するための領域とが、搬送方向DTに沿って並んでいる。表面マスクMFを用いた露光を行うことによって、第1の単位マスク領域MAの第4露光領域と、第2の単位マスク領域MAの第1露光領域EA1とを同時に露光することが可能である。また、上述した表面マスクMFに位置合わせされる裏面マスクとして、第1の単位マスク領域MAの第4露光領域EA4と、搬送方向DTにおいて第1の単位マスク領域MAに隣り合う第2の単位マスク領域MAの第1露光領域EA1とを同時に露光することが可能に構成された露光マスクを準備すればよい。
【0157】
この変更例によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(9)異なる単位マスク領域MAに含まれる単位露光領域EAが同時に露光されるから、単位マスク領域MAを1つずつ露光する場合に比べて、複数の単位マスク領域MAを露光するために要する時間を短縮することが可能である。
【0158】
・第1レジスト層R1および第2レジスト層R2は、ポジ型のレジストから形成されてもよい。各レジスト層R1,R2がポジ型のレジストから形成される場合には、上述した各マスクMFE1,MFC1,MFC2,MFE2において、露光部21が放射した光を透過する部分を遮光する部分に変更し、かつ、当該光を遮光する部分を透過する部分に変更すればよい。
【0159】
・レジスト層の幅方向DWにおいて2つ以上の単位マスク領域MAが並ぶように、レジスト層に対して単位マスク領域MAが設定されてもよい。この場合には、幅方向DWに沿って並ぶ2つ以上の単位マスク領域MAが含む単位露光領域EAを一度に露光することが可能な露光マスクを用いることが可能である。あるいは、レジスト層の露光には、1つ単位露光領域EAのみを露光することが可能な露光マスクを用いてもよい。
【0160】
[蒸着マスクの製造方法]
・蒸着マスク10の第5変更例を製造する際には、蒸着マスク用基材10Mは、第1レジスト層R1から形成された第1レジストマスクRM1を用いて表面10MFからエッチングが行わればよい。すなわち、蒸着マスク10の第5変更例を製造する際には、第2レジスト層R2から形成された第2レジストマスクRM2を用いたエッチングは省略される。
【0161】
[露光装置]
・表面マスク駆動部25は、第1駆動軸25Aを1つのみを備えてもよい。この場合には、第1駆動軸25Aは、表面マスクMFの幅方向DWにおける中央において搬送方向DTでの表面マスクMFの位置を変更可能であるように構成されてもよい。
【0162】
・表面マスク駆動部25は、第2駆動軸25Bを一対備えてもよい。この場合には、第1の第2駆動軸25Bは、表面マスクMFの搬送方向DTにおける一端において幅方向DWでの表面マスクMFの位置を変更可能であるように構成されてよい。また、第2の第2駆動軸25Bは、表面マスクMFの搬送方向DTにおける他端において幅方向DWでの表面マスクMFの位置を変更可能であるように構成されてよい。なお、表面マスク駆動部25が第2駆動軸25Bを一対備える場合に、表面マスク駆動部25が第1駆動軸25Aを1つのみ備えてもよい。
【0163】
・裏面マスク駆動部26は、第1駆動軸26Aを1つのみ備えてもよい。この場合には、第1駆動軸26Aは、表面マスクMFの幅方向DWにおける中央において搬送方向DTでの表面マスクMFの位置を変更可能であるように構成されてもよい。
【0164】
・裏面マスク駆動部26は、第2駆動軸26Bを一対備えてもよい。この場合には、第1の第2駆動軸26Bは、表面マスクMFの搬送方向DTにおける一端において幅方向DWでの表面マスクMFの位置を変更可能であるように構成されてよい。また、第2の第2駆動軸26Bは、表面マスクMFの搬送方向DTにおける他端において幅方向DWでの表面マスクMFの位置を変更可能であるように構成されてよい。なお、裏面マスク駆動部26が第2駆動軸26Bを一対備える場合に、裏面マスク駆動部26が第1駆動軸26Aを1つのみ備えてもよい。
【0165】
・
図25が示すように、露光装置20は、複数の第1露光部21Aと、第1露光部21Aと同数の第2露光部21Bとを備えてもよい。この場合には、露光装置20は、第1露光部21Aごとに検知部22を備えている。例えば、
図23が示す例では、露光装置20は、2つの第1露光部21Aと、2つの第2露光部21Bとを備えている。一方の第2露光部21Bは、処理対象Sbを挟んで一方の第1露光部21Aと対向するように配置され、かつ、他方の第2露光部21Bは、処理対象Sbを挟んで他方の第1露光部21Aと対向するように配置されている。
【0166】
各第1露光部21Aには、互いに異なる表面マスクMFが搭載され、かつ、各第2露光部21Bには、互いに異なる裏面マスクMRが搭載される。第1の検知部22は、第1の第1露光部21Aに搭載された表面マスクMFに、当該第1露光部21Aに対向する第2露光部21Bに搭載された裏面マスクMRを位置合わせする際に用いられる。第2の検知部22は、第2の第1露光部21Aに搭載された表面マスクMFに、当該第1露光部21Aに対向する第2露光部21Bに搭載された裏面マスクMRを位置合わせする際に用いられる。
【0167】
この露光装置20によれば、単位マスク領域MAに含まれる2つの単位露光領域EAを同時に露光することが可能である。これにより、1つの単位マスク領域MAの全体を露光するために要する時間を短縮することが可能である。また、第1の第1露光部21Aは第1の単位マスク領域MAに含まれる単位露光領域EAを露光する一方で、第2の第1露光部21Aは第1の単位マスク領域MAとは異なる第2の単位マスク領域MAに含まれる単位露光領域EAを露光してもよい。この場合には、処理対象Sbの全体を露光するために要する時間を短縮することが可能である。
【0168】
・蒸着マスク10の第5変更例を製造する際に用いられる露光装置20では、露光部21が、第2露光部21Bを備えなくてよい。また、検知部22が第2検知要素22Bを備えなくてよい。
【0169】
・
図26が示すように、露光装置30は、第1検知部32A、第2検知部32B、および、搬送部34を備えてもよい。搬送部34は、第1搬送ローラー34Aと第2搬送ローラー34Bとを備えている。
【0170】
第1搬送ローラー34Aおよび第2搬送ローラー34Bは、第1回転方向、および、第1回転方向とは逆方向である第2回転方向に回転することが可能に構成されている。第1搬送ローラー34Aおよび第2搬送ローラー34Bが第1回転方向に回転することによって、搬送部34は、第1搬送方向DT1に沿って処理対象Sbを搬送する。第1搬送方向DT1は、第1搬送ローラー34Aから第2搬送ローラー34Bに向かう方向である。各搬送ローラー34A,34Bが第1回転方向に回転する場合には、第1搬送ローラー34Aが上述した巻出部24Aとして機能し、かつ、第2搬送ローラー34Bが上述した巻取部24Bとして機能する。
【0171】
第1搬送ローラー34Aおよび第2搬送ローラー34Bが第2回転方向に回転することによって、搬送部34は、第2搬送方向DT2に沿って処理対象Sbを搬送する。第2搬送方向DT2は、第2搬送ローラー34Bから第1搬送ローラー34Aに向かう方向である。各搬送ローラー34A,34Bが第2回転方向に回転する場合には、第1搬送ローラー34Aが上述した巻取部24Bとして機能し、かつ、第2搬送ローラー34Bが上述した巻出部24Aとして機能する。
【0172】
第1検知部32Aおよび第2検知部32Bは、それぞれ上述した検知部22と同等の構成を備えている。第1検知部32Aおよび第2検知部32Bは、第1搬送ローラー34Aと第2搬送ローラー34Bとが並ぶ方向において、第1露光部21Aを挟んでいる。各搬送ローラー34A,34Bが第1回転方向に回転する場合には、第1搬送方向DT1において、第1検知部32Aが上流に位置し、かつ、第2検知部32Bが下流に位置する。各搬送ローラー34A,34Bが第2回転方向に回転する場合には、第2搬送方向DT2において、第2検知部32Bが上流に位置し、かつ、第1検知部32Aが下流に位置する。
【0173】
露光装置30を用いて処理対象Sbの露光を行う際には、例えば、第1搬送ローラー34Aおよび第2搬送ローラー34Bが第1回転方向に回転することによって、搬送部34が処理対象Sbを第1搬送方向DT1に沿って搬送する。この際に、第1検知部32Aを用いて処理対象Sbに対する第1端マスクMFE1および裏面マスクMRの位置合わせが行われた後に、露光部21が、第1端マスクMFE1および裏面マスクMRを用いて処理対象Sbを露光する。
【0174】
次いで、第1搬送ローラー34Aおよび第2搬送ローラー34Bが第2回転方向に回転することによって、搬送部34が処理対象Sbを第2搬送方向DT2に沿って搬送する。この際に、第2検知部32Bを用いて処理対象Sbに対する第1中央マスクMFC1および裏面マスクMRの位置合わせが行われた後に、露光部21が第1中央マスクMFC1および裏面マスクMRを用いて処理対象Sbを露光する。
【0175】
続いて、第1搬送ローラー34Aおよび第2搬送ローラー34Bが再び第1回転方向に回転することによって、搬送部34が処理対象Sbを第1搬送方向DT1に沿って搬送する。この際に、第1検知部32Aを用いて処理対象Sbに対する第2中央マスクMFC2および裏面マスクMRの位置合わせが行われた後に、露光部21が、第2中央マスクMFC2および裏面マスクMRを用いて処理対象Sbを露光する。
【0176】
次いで、第1搬送ローラー34Aおよび第2搬送ローラー34Bが再び第2回転方向に回転することによって、搬送部34が処理対象Sbを第2搬送方向DT2に沿って搬送する。この際に、第2検知部32Bを用いて処理対象Sbに対する第2端マスクMFE2および裏面マスクMRの位置合わせが行われた後に、露光部21が第2端マスクMFE2および裏面マスクMRを用いて処理対象Sbを露光する。
【0177】
このように、露光装置30によれば、各露光マスクを用いた処理対象Sbに対する露光が終了した後に、巻き取られた処理対象Sbの巻き直しを行うこと、および、巻き直し後の処理対象Sbを巻出部に設置することを省略することが可能である。
【0178】
・露光装置30では、搬送部34が第1搬送方向DT1および第2搬送方向DT2のいずれか一方のみに沿って処理対象Sbを搬送してもよい。例えば、搬送部34が第1搬送方向DT1に沿って延び処理対象Sbを搬送する場合には、第1検知部32Aを用いて処理対象Sbに対する第1端マスクMFE1および裏面マスクMRの位置合わせが行われた後に、露光部21が第1端マスクMFE1および裏面マスクMRを用いて処理対象Sbを露光する。そして、露光後の処理対象Sbを第2搬送ローラー34Bが巻き取る。
【0179】
第2搬送ローラー34Bによって巻き取られた処理対象Sbでは、露光前の処理対象Sbに対して処理対象Sbにおける先頭の端部と、後尾の端部とが逆である。そのため、処理対象Sbに対する第1中央マスクMFC1および裏面マスクMRの位置合わせが行われる際には、第2検知部32Bを用いることが好ましい。
【0180】
処理対象Sbに対して第2中央マスクMFC2および裏面マスクMRを用いた露光が行われる際には、処理対象Sbにおける先頭の端部と後尾の端部とが第1端マスクMFE1を用いた露光が行われる際と同じである。そのため、処理対象Sbに対する第2中央マスクMFC2および裏面マスクの位置合わせが行われる際には、第1検知部32Aが用いられることが好ましい。
【0181】
また、処理対象Sbに対して第2端マスクMFE2および裏面マスクMRを用いた露光が行われる際には、処理対象Sbにおける先頭の端部と後尾の端部とが第1中央マスクMFC1を用いた露光が行われる際と同じである。そのため、処理対象Sbに対する第2端マスクMFE2および裏面マスクMRの位置合わせが行われる際には、第2検知部32Bが用いられることが好ましい。
【0182】
このように、露光装置30によれば、処理対象Sbの搬送方向が第1搬送方向DT1および第2搬送方向DT2のいずれかに固定される場合であっても、搬送ローラー34A,34Bに巻き取られた処理対象Sbの巻き直しを省略することはできる。
【0183】
・
図25が示す露光装置20の構成と、
図26が示す露光装置30の構成とが組み合わせられてもよい。すなわち、
図25が示す露光装置20において、搬送部24が巻出部24Aおよび巻取部24Bに代えて、第1回転方向と第2回転方向との両方に回転することが可能に構成された第1搬送ローラー34Aと第2搬送ローラー34Bとを備えてもよい。また、露光装置20は、検知部22に代えて、各露光部21に対して、第1搬送ローラー34Aと第2搬送ローラー34Bとが並ぶ方向において露光部21を挟む第1検知部32Aおよび第2検知部32Bを備えてもよい。
【0184】
こうした露光装置20によっても、露光装置30と同様に、処理対象Sbの巻き直しを省略すること、あるいは、処理対象Sbの巻き直し、および、巻き取られた処理対象Sbの設置の両方を省略することが可能である。
【0185】
[蒸着マスク用基材]
・蒸着マスク用基材は、金属層と、金属層に積層された樹脂層とを備えてもよい。この場合には、金属層に樹脂シートを貼り付けることによって、金属層と樹脂層とを備える蒸着マスク用基材を得てもよい。あるいは、金属シートに樹脂層を形成するための塗液を塗布することによって塗膜を形成した後に、塗膜を乾燥させることによって樹脂層を形成してもよい。金属シートが上述した鉄ニッケル系合金から形成される場合には、樹脂シートは、例えばポリイミド樹脂から形成されてよい。
【0186】
こうした蒸着マスク用基材を用いて蒸着マスクを製造する際には、まず、蒸着マスク用基材が備える金属層上にレジスト層を形成する。次いで、上述した表面マスクMFを用いてレジスト層を露光する。そして、レジスト層を現像することによってレジストマスクを得た後に、レジストマスクを用いて金属層のウェットエッチングを行う。これにより、金属層を貫通する孔を形成する。樹脂層には、レーザー光線を照射することによって、樹脂層を貫通し、かつ、金属層が有する1つの孔に接続する貫通孔を形成することができる。
【0187】
蒸着マスク用基材から蒸着マスクを製造する際には、蒸着マスク用基材が含む金属層のなかで、蒸着マスクに対応する部分を囲む部分は、金属層のウェットエッチングによって取り除くことが可能である。これに対して、樹脂層のなかで蒸着マスクに対応する部分を囲む部分は、レーザー光線の照射によって取り除かれてもよいし、金型を用いた打ち抜きによって取り除かれてもよい。
【0188】
[蒸着マスクにおける長辺方向の長さ]
・蒸着マスク10を用いた蒸着の対象は、一対の電極層のうち、一方の電極層が形成されたガラス基板であってよい。一対の電極層は陽極層および陰極層であり、かつ、一方の電極層は例えば陽極層である。ガラス基板のサイズは、G6ハーフサイズからG12サイズにまで拡張されることが想定される。G12サイズのガラス基板では、長辺方向の長さが4000mmであり、短辺方向の長さが3350mmである。これに対して、G6サイズのガラス基板では、長辺方向の長さが1800mmであり、短辺方向の長さが1500mmである。また、G6ハーフサイズのガラス基板では、長辺方向の長さが1500mmであり、短辺方向の長さが900mmである。
【0189】
蒸着マスク10を用いてガラス基板に蒸着パターンが形成される際には、ガラス基板の短辺方向に対して蒸着マスク10の長辺方向DLが平行であるように、ガラス基板に対して蒸着マスク10が位置決めされることが多い。長辺方向DLにおける蒸着マスク10の長さは、通常、ガラス基板における短辺方向の長さよりも長く設定される。そのため、本開示の蒸着マスク10における長辺方向DLの長さは、例えば1100mm以上3600mm以下であってよい。
【0190】
[蒸着対象]
・蒸着対象は、上述したガラス基板に限らない。例えば、折り畳みが可能に構成された有機EL表示装置が備える表示素子を形成するための蒸着対象は、ガラス基板、ガラス基板上に位置する樹脂層、および、樹脂層上に形成された電極層を備えてよい。電極層は、陽極層であってよい。樹脂層は、樹脂層を形成するための塗液を用いてガラス基板に塗膜を形成した後に、塗膜を硬化させることによって形成されてもよい。あるいは、樹脂層は、ガラス基板に対して樹脂フィルムが貼り付けられることによって形成されてもよい。樹脂層は、例えばポリイミド樹脂から形成されてよい。
【0191】
表示素子を形成する際には、樹脂層のうち陽極層が形成された面に、蒸着マスク10を用いた蒸着が行われる。これにより、樹脂層上に蒸着パターンを形成する。その後、樹脂層に陰極層を形成する。結果として、可撓性を有した樹脂層上に陽極層、蒸着パターン、および、陰極層が形成された積層体を得ることができる。ガラス基板から積層体を剥がす際には、例えばレーザーリフトオフ法などを用いることが可能である。
【0192】
なお、蒸着マスク10を用いて樹脂層上に蒸着パターンを形成する際に、複数の有機EL表示素子に対応する蒸着パターンを形成した場合には、積層体を断裁すること、および、樹脂層を剥がすことによって、複数の有機EL表示素子を得ることが可能である。積層体の断裁は、ガラス基板から積層体を剥がした後に行われてもよいし、ガラス基板から積層体を剥がす前に行われてもよい。
【符号の説明】
【0193】
10…蒸着マスク
10C1…第1中央部
10C2…第2中央部
10E1…第1端部
10E2…第2端部
20…露光装置
21…露光部
22…検知部
23…制御部
24…搬送部