(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ガス分離システム及びメタン富化ガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/22 20060101AFI20240409BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20240409BHJP
C10L 3/10 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D61/58
C10L3/10
(21)【出願番号】P 2023580485
(86)(22)【出願日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2023025794
【審査請求日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2022113548
(32)【優先日】2022-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 叙彦
(72)【発明者】
【氏名】印出 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】福永 拓生
(72)【発明者】
【氏名】中村 智英
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-114475(JP,A)
【文献】特表2019-520198(JP,A)
【文献】特開2013-128868(JP,A)
【文献】特開2022-113214(JP,A)
【文献】特開2020-163282(JP,A)
【文献】特表2016-505354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C10L 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二酸化炭素とメタンを含む原料混合ガスをガス分離膜ユニットに供給し、該原料混合ガスに含まれるメタンを濃縮富化するガス分離システムであって、
前記ガス分離システムが、第1ガス分離膜ユニット及び第2ガス分離膜ユニットを備え、
各ガス分離膜ユニットは、ガス入口、透過ガス排出口及び非透過ガス排出口を少なくとも備え、
原料混合ガスは、CH
4
を30mol%以上含み、且つCO
2
を3~70mol%含み、
第1ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口と、第2ガス分離膜ユニットのガス入口とを非透過ガス排出ラインによって連結し、
第1ガス分離膜ユニットのガス入口に、原料混合ガス供給ラインを連結するとともに、該原料混合ガス供給ラインの途中に圧縮手段を介在配置し、
第1ガス分離膜ユニットの透過ガス排出口と、前記原料混合ガス供給ラインにおける圧縮手段の吸込側の位置とを、第1透過ガスリサイクルラインによって連結し、更に前記第1透過ガスリサイクルラインは、第1ガス分離膜ユニットから排出される透過ガスをガス分離システム外に少なくとも一部排出するための透過ガス排出ラインを備え、
第2ガス分離膜ユニットの透過ガス排出口と、前記原料混合ガス供給ラインにおける圧縮手段の吸込側の位置とを、第2透過ガスリサイクルラインによって連結し、
第2ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口から濃縮富化されたメタンを取り出
し、
第1ガス分離膜ユニットの透過ガス流量F1中の第1透過ガスリサイクルラインによって第1ガス分離膜ユニットに循環されるリサイクル流量F4の割合が、0.5%以上60%以下である、ガス分離システム。
【請求項2】
第1ガス分離膜ユニットの運転温度と第2ガス分離膜ユニットの運転温度とが異なる、請求項1に記載のガス分離システム。
【請求項3】
第2ガス分離膜ユニットの運転温度が、第1ガス分離膜ユニットの運転温度より高い、請求項2に記載のガス分離システム。
【請求項4】
第1ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口と、第2ガス分離膜ユニットのガス入口とを連結する非透過ガス排出ラインの途中に加熱手段を介在配置する、請求項3に記載のガス分離システム。
【請求項5】
第1ガス分離膜ユニットのガス分離選択性と第2ガス分離膜ユニットのガス分離選択性とが異なる、請求項1に記載のガス分離システム。
【請求項6】
第2ガス分離膜ユニットのガス分離選択性が、第1ガス分離膜ユニットのガス分離選択性より低い、請求項5に記載のガス分離システム。
【請求項7】
第1ガス分離膜ユニットの透過ガス流量F1中の第1透過ガスリサイクルラインによって第1ガス分離膜ユニットに循環されるリサイクル流量F4の割合が、0.5%以上60%以下である、請求項1又は2に記載のガス分離システム。
【請求項8】
少なくとも二酸化炭素とメタンを含む原料混合ガスをガス分離システムに供給してメタンが富化されたメタン富化ガスを製造する方法であって、
前記ガス分離システムが、第1ガス分離膜ユニット及び第2ガス分離膜ユニットを備え、
各ガス分離膜ユニットは、ガス入口、透過ガス排出口及び非透過ガス排出口を少なくとも備え、
原料混合ガスは、CH
4
を30mol%以上含み、且つCO
2
を3~70mol%含み、
第1ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口と、第2ガス分離膜ユニットのガス入口とを非透過ガス排出ラインによって連結し、
第1ガス分離膜ユニットのガス入口に、原料混合ガス供給ラインを連結するとともに、該原料混合ガス供給ラインの途中に圧縮手段を介在配置し、
第1ガス分離膜ユニットの透過ガス排出口と、前記原料混合ガス供給ラインにおける圧縮手段の吸込側の位置とを、第1透過ガスリサイクルラインによって連結し、更に前記第1透過ガスリサイクルラインは、第1ガス分離膜ユニットから排出される透過ガスをガス分離システム外に少なくとも一部排出するための透過ガス排出ラインを備え、
第2ガス分離膜ユニットの透過ガス排出口と、前記原料混合ガス供給ラインにおける圧縮手段の吸込側の位置とを、第2透過ガスリサイクルラインによって連結し、
第2ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口から濃縮富化されたメタンを取り出
し、
第1ガス分離膜ユニットの透過ガス流量F1中の第1透過ガスリサイクルラインによって第1ガス分離膜ユニットに循環されるリサイクル流量F4の割合が、0.5%以上60%以下である、メタン富化ガスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のガス分離膜ユニットを用いて混合ガスを分離するガス分離システム及びそれを用いてメタンが富化された富化ガスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる2種類以上のガスを含む混合ガスを各ガスに分離する方法として、膜に対するガスの透過速度の差を利用した膜分離法が知られている。この方法では、透過ガス及び/又は非透過ガスを回収することにより、目的ガスである高純度の高透過性ガス及び/又は高純度の低透過性ガスを得ることができる。混合ガスに含まれる各ガスの膜に対する単位膜面積・単位時間・単位分圧差あたりの透過体積である透過速度は、P’(単位は、×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg)で表すことができる。また、膜のガス分離選択性は、(高透過性ガスの透過速度/低透過性ガスの透過速度)の比で表すことができる。
【0003】
一般にガス分離膜は、ガス分離選択性の高い膜はガス透過速度が低く、反対にガス透過速度が高い膜はガスの分離選択性が低い。したがって、一段のガス分離膜を用いて混合ガスから低透過性ガスを回収する場合、回収するガスの純度が一定のときには、ガス分離選択性が高い膜を用いた場合、回収率は高くなる。しかし、透過速度が低いため、膜面積を大きくするか、又は運転圧力を高くする必要がある。一方、透過速度が高い膜は、膜面積を大きくしたり、運転圧力を高くしたりする必要はないが、ガス分離選択性が低いため、回収率が低くなる。
【0004】
一般に、ガス選択透過性を有するガス分離膜は、少なくともガス入口、透過ガス排出口、非透過ガス排出口が備えられている容器内に当該ガス分離膜を収容してなるガス分離膜モジュールとして使用されている。ガス分離膜は、そのガス供給側とガス透過側の空間が隔離されるように、容器内に装着されている。ガス分離システムにおいては、通常、所要の膜面積とするために、複数のガス分離膜モジュールを並列に組み合わせたガス分離膜ユニットとして使用される。ガス分離膜ユニットを構成する複数のガス分離膜モジュールは、ガス入口、非透過ガス排出口、透過ガス排出口を共用するため、ガス分離膜ユニットは、実質的に大きいガス分離膜モジュールとして作用する。
【0005】
目的とする低透過性ガスを高純度かつ高回収率で回収するために、このガス分離膜ユニットを多段階に備えたシステムを用いる方法が知られている。多段階のガス分離システムとしては、純度を向上させるために、低透過性ガスが富化された1段目の非透過ガスを更に分離するものや、回収率を向上させるために、1段目の透過ガスに含まれる低透過性ガスを回収するものが挙げられる。
【0006】
特許文献1には、ガス分離膜を透過しやすい易透過ガスと、前記ガス分離膜を透過し難い難透過ガスとを含む混合ガスを、圧縮機により加圧して第1ガス分離膜を備えた第1膜分離部に供給し、前記第1ガス分離膜を透過してくる第1透過性ガスを回収するとともに、前記ガス分離膜を透過せず、前記第1膜分離部より排出される第1残留性ガスを、第2ガス分離膜を備えた第2膜分離部に供給し、前記第2ガス分離膜を透過してくる第2透過性ガスを前記原料ガスに循環供給して、ガス精製をおこなうガス精製方法であって、前記第1ガス分離膜を透過して得られる前記第1透過性ガスの一部を、前記原料ガス側に循環供給して、前記混合ガスと前記循環供給される第1透過性ガスとを、前記第1ガス分離膜により精製をおこない、得られる前記第1透過性ガスの残部を回収してガス精製を行うことが記載されている。特許文献1に記載の発明は、水素等の易透過ガスを分離する時に、原料ガスの流量が減少すると、製品ガス中の水素の純度が低下することから、これを防止するため、原料ガス流量減少時には第1ガス分離膜の透過ガスを全て取り出す代わりに、一部を、前記原料ガス側に循環するというものである。
特許文献2には、メタン及び二酸化炭素を含む混合ガスから低透過性ガスであるメタンを回収するための二段のガス分離膜システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】US6197090B1
【文献】特開2013-128868号公報
【発明の概要】
【0008】
従来より、2段のガス分離膜で二酸化炭素とメタンを含む混合ガスからメタンを回収することは知られていたが、特許文献2の記載のような従来のシステムでは、メタンの回収率及び純度の両立には改善の余地がある。
また特許文献1に記載の発明は、易透過ガスの分離を目的としており、原料ガス流量が低下した場合の高透過性ガスの純度の低下に関するものであり、低透過性ガスの純度及び回収率を両立させることを考慮したものではない。
【0009】
本発明の課題は、二酸化炭素とメタンを含む原料混合ガスから、ガス分離膜を用いてメタンを回収するガス分離システムにおいて、回収するメタンの純度及び回収率を向上させることにある。
【0010】
本発明は、以下〔1〕~〔8〕を提供する。
〔1〕
少なくとも二酸化炭素とメタンを含む原料混合ガスをガス分離膜ユニットに供給し、該原料混合ガスに含まれるメタンを濃縮富化するガス分離システムであって、
前記ガス分離システムが、第1ガス分離膜ユニット及び第2ガス分離膜ユニットを備え、
各ガス分離膜ユニットは、ガス入口、透過ガス排出口及び非透過ガス排出口を少なくとも備え、
第1ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口と、第2ガス分離膜ユニットのガス入口とを非透過ガス排出ラインによって連結し、
第1ガス分離膜ユニットのガス入口に、原料混合ガス供給ラインを連結するとともに、該原料混合ガス供給ラインの途中に圧縮手段を介在配置し、
第1ガス分離膜ユニットの透過ガス排出口と、前記原料混合ガス供給ラインにおける圧縮手段の吸込側の位置とを、第1透過ガスリサイクルラインによって連結し、更に前記第1透過ガスリサイクルラインは、第1ガス分離膜ユニットから排出される透過ガスをガス分離システム外に少なくとも一部排出するための透過ガス排出ラインを備え、
第2ガス分離膜ユニットの透過ガス排出口と、前記原料混合ガス供給ラインにおける圧縮手段の吸込側の位置とを、第2透過ガスリサイクルラインによって連結し、
第2ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口から濃縮富化されたメタンを取り出す、ガス分離システム。
〔2〕
第1ガス分離膜ユニットの運転温度と第2ガス分離膜ユニットの運転温度とが異なる、〔1〕に記載のガス分離システム。
〔3〕
第2ガス分離膜ユニットの運転温度が、第1ガス分離膜ユニットの運転温度より高い、〔2〕に記載のガス分離システム。
〔4〕
第1ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口と、第2ガス分離膜ユニットのガス入口とを連結する非透過ガス排出ラインの途中に加熱手段を介在配置する、〔3〕に記載のガス分離システム。
〔5〕
第1ガス分離膜ユニットのガス分離選択性と第2ガス分離膜ユニットのガス分離選択性とが異なる、〔1〕に記載のガス分離システム。
〔6〕
第2ガス分離膜ユニットのガス分離選択性が、第1ガス分離膜ユニットのガス分離選択性より低い、〔5〕に記載のガス分離システム。
〔7〕
第1ガス分離膜ユニットの透過ガス流量F1中の第1透過ガスリサイクルラインによって第1ガス分離膜ユニットに循環されるリサイクル流量F4の割合が、0.5%以上60%以下である、〔1〕~〔7〕の何れか1項に記載のガス分離システム。
〔8〕
少なくとも二酸化炭素とメタンを含む原料混合ガスをガス分離システムに供給してメタンが富化されたメタン富化ガスを製造する方法であって、
前記ガス分離システムが、第1ガス分離膜ユニット及び第2ガス分離膜ユニットを備え、
各ガス分離膜ユニットは、ガス入口、透過ガス排出口及び非透過ガス排出口を少なくとも備え、
第1ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口と、第2ガス分離膜ユニットのガス入口とを非透過ガス排出ラインによって連結し、
第1ガス分離膜ユニットのガス入口に、原料混合ガス供給ラインを連結するとともに、該原料混合ガス供給ラインの途中に圧縮手段を介在配置し、
第1ガス分離膜ユニットの透過ガス排出口と、前記原料混合ガス供給ラインにおける圧縮手段の吸込側の位置とを、第1透過ガスリサイクルラインによって連結し、更に前記第1透過ガスリサイクルラインは、第1ガス分離膜ユニットから排出される透過ガスをガス分離システム外に少なくとも一部排出するための透過ガス排出ラインを備え、
第2ガス分離膜ユニットの透過ガス排出口と、前記原料混合ガス供給ラインにおける圧縮手段の吸込側の位置とを、第2透過ガスリサイクルラインによって連結し、
第2ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口から濃縮富化されたメタンを取り出す、メタン富化ガスの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態におけるガス分離システムの構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明のガス分離システムに用いられるガス分離膜モジュールの一例の構造を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施形態におけるガス分離システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
まず、
図1に基づき、本発明の第1実施形態であるガス分離システム10を説明する。
図1に示すガス分離システム10は、第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12を備えている。各ガス分離膜ユニット11及び12としては、例えば、
図2に示すとおり、中空糸膜等からなり、ガス選択透過性を有するガス分離膜30をケーシング31内に収容してなるモジュール40を用いることができる。
図1に示す本実施形態のガス分離膜ユニット11及び12は、例えば、
図2に示すガス分離膜モジュール40を1本用いたものであるか、或いは、このモジュール40を複数本並列してなるものである。モジュール40におけるケーシング31は、対向する二面が開口して開口部32を形成している。この開口部32は、ガス分離膜30をケーシング31内に挿入するためのものであり、ガス分離膜30の開口部ではない点に留意すべきである。ガス分離膜30は、この開口部32を通じてケーシング31内に収容される。ガス分離膜30が中空糸膜束からなる場合、該ガス分離膜30はその収容状態において、ケーシング31の各開口部32の付近において中空糸膜の各端部が開口するように、ケーシング31内に収容される。
【0013】
ガス分離膜30がケーシング31内に収容された状態においては、中空糸膜の延びる方向であるY方向の両端部の位置において、ガス分離膜30が管板33及び34によってケーシング31の内壁に固定されている。ケーシング31の各開口部32は、蓋体35及び36によって閉塞されている。蓋体35にはガス入口37が設けられている。一方、蓋体36には非透過ガス排出口38が設けられている。分離対象となる混合ガスは、蓋体35のガス入口37からモジュール内に導入される。導入されたガスのうち、ガス分離膜30を透過したガスは、ケーシング31に設けられた透過ガス排出口39からモジュール外に排出される。一方、ガス分離膜30を透過しなかった非透過ガスは、蓋体36の非透過ガス排出口38からモジュール外に排出される。また、場合によっては、ケーシング31にパージガスの供給口(図示せず)を設けてもよい。以上、
図2の分離膜モジュールを例に挙げて説明したが、当然ながら、本発明は他の構成の分離膜モジュールにも応用可能であり、例えば、シェルフィード型のモジュールにも応用できる。
【0014】
図1に戻ると、同図に示すとおり、第1ガス分離膜ユニット11と、第2ガス分離膜ユニット12とが直列に接続されている。具体的には、第1ガス分離膜ユニット11と、第2ガス分離膜ユニット12とは、第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガス排出口11bと、第2ガス分離膜ユニット12のガス入口12aとを第1非透過ガス排出ライン14によって連結することで接続されている。
【0015】
第1ガス分離膜ユニット11のガス入口11aには、原料である混合ガス源(図示せず)からの原料混合ガスを第1ガス分離膜ユニット11へ供給するための原料混合ガス供給ライン13が連結されている。原料混合ガス供給ライン13の途中には、圧縮手段21が介在配置されている。圧縮手段21は、混合ガス源から供給された混合ガスを加圧する目的で設置されている。また、第1ガス分離膜ユニット11から排出された第1透過ガスを、第1ガス分離膜ユニット11に帰還させるときに、該透過ガスを加圧し、且つ第2ガス分離膜ユニット12から排出された第2透過ガスを、第1ガス分離膜ユニット11に帰還させるときに、該透過ガスを加圧する目的で設置されている。
【0016】
第1ガス分離膜ユニット11においては、その透過ガス排出口11cが、第1透過ガスリサイクルライン16によって、原料混合ガス供給ライン13における圧縮手段21の吸込側の位置と連結している。また、第2ガス分離膜ユニット12においては、その透過ガス排出口12cが、第2透過ガスリサイクルライン17によって、原料混合ガス供給ライン13における圧縮手段21の吸込側の位置と連結している。
【0017】
第2ガス分離膜ユニット12の非透過ガス排出口12bには、濃縮富化された非透過ガスを取り出すための第2非透過ガス回収ライン15が連結されている。
【0018】
図1に示す通り、第1透過ガスリサイクルライン16には、第1ガス分離膜ユニット11から排出された透過ガスの一部をシステム外に排出するための第1透過ガス排出ライン18が設けられている。システム外に排出するとは、例えば、第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12からなるガスの流通経路の外に取り出すとの意味である。第1透過ガス排出ライン18は、その吐出側(排出口側)において、第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12のいずれにも接続せずにシステム外に接続される。
図1では第1透過ガス排出ライン18が第1透過ガスリサイクルライン16からの分岐ラインとして設けられている。当該分岐ラインは、第1透過ガスリサイクルライン16におけるガス排出口11cと原料混合ガス供給ライン13との接続箇所に亘る途中の位置からシステム外に向けて分岐している。第1ガス分離膜ユニット11から排出された全透過ガスのうち、第1透過ガス排出ライン18を通じてシステム外に排出される透過ガス(以下、「排出透過ガス」ともいう。)の割合は、第1透過ガス排出ライン18の途中に設けられた流量調整弁50及び/又は第1透過ガスリサイクルライン16に設けられた流量調整弁51により調整することができる。
【0019】
以上の構成を有する本実施形態のガス分離システム10の動作について説明する。分離対象となる原料混合ガスは、混合ガス源(図示せず)から原料混合ガス供給ライン13を通じて第1ガス分離膜ユニット11に供給される。供給に先立ち、原料混合ガスは、圧縮手段21によって加圧され、その圧力が上昇する。圧縮手段21としては、当該技術分野においてこれまで用いられてきた手段と同様のものを用いることができる。例えばコンプレッサ(圧縮機)を用いることができる。
【0020】
原料混合ガスは、分離対象となる少なくとも二酸化炭素とメタンを含むものである。圧縮手段21によって加圧された状態の混合ガスが第1ガス分離膜ユニット11に供給されると、ガス分離膜に対する透過速度の相違に起因して、ガス分離膜を透過したガスである第1透過ガスと、ガス分離膜を透過しなかったガスである第1非透過ガスとに分離される。本システムでは、二酸化炭素が、各ユニットを構成するガス分離膜に対する透過速度の大きいガス、つまり高透過性ガスであり、メタンが、各ユニットを構成するガス分離膜に対する透過速度の小さいガス、つまり低透過性ガスである。
【0021】
第1ガス分離膜ユニット11から排出された非透過ガス(以下、「第1非透過ガス」ともいう。)は、原料である混合ガスに比べてメタンが濃縮されたものである。第1非透過ガスは、第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガス排出口11bから排出され、第1非透過ガス排出ライン14を通じて第2ガス分離膜ユニット12に供給される。
一方、第1ガス分離膜ユニット11から排出された第1透過ガスは、原料である混合ガスに比べて二酸化炭素が濃縮されたものである。第1透過ガスは、一部が第1ガス分離膜ユニット11の第1透過ガス排出口11cから排出され、第1透過ガスリサイクルライン16を経由して、原料混合ガス供給ライン13における圧縮手段21の吸込側に帰還される。また、該第1透過ガスの一部は第1透過ガス排出ライン18を通じてシステム外に取り出される。
【0022】
第2ガス分離膜ユニット12に導入された第1ガス分離膜ユニットの第1非透過ガスは、同ユニット12によって第2透過ガスと第2非透過ガスとに分離される。第2ガス分離膜ユニット12から排出された第2非透過ガスは、メタンが更に濃縮富化されており、同ユニット12の第2非透過ガス排出口12bから第2非透過ガス回収ラインを通じで取り出される。
一方、第2透過ガスは、第2ガス分離膜ユニット12の第2透過ガス排出口12cから排出され、該排出口12cに接続されている第2透過ガスリサイクルライン17を経由して、原料混合ガス供給ライン13における圧縮手段21の吸込側に帰還される。
【0023】
第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12から排出され、透過ガスリサイクルライン16及び17を経由して帰還された第1透過ガス及び第2透過ガスは、原料である混合ガスと混合された後に、圧縮手段21によって加圧される。
【0024】
本発明のガス分離システムは、第1ガス分離膜ユニットから排出される第1透過ガス及び第2ガス分離膜ユニットから排出される第2透過ガスの双方を原料である混合ガスと混合して第1ガス分離膜ユニットに供給することを特徴とする。このような構成とすることで、特にメタンの回収率を向上させることができる。
【0025】
第1ガス分離膜ユニット11における透過ガス流量F1中の第1透過ガス排出ライン18により排出される透過ガスの排出流量F2は、原料混合ガス中のメタンと二酸化炭素の濃度や原料混合ガス流量に基づいて適宜設定することができる。この排出流量F2が大きいほどメタンの回収率が低減しやすい。一方流量F2が小さすぎることは、単位時間当たりの原料供給圧縮動力を大きくなりすぎる等、システム運転効率の点、必要な膜面積が高くなる点で望ましくない。これらの観点から、本発明では、第1ガス分離膜ユニット11の透過ガス流量F1に対する、排出透過ガスの流量F2の比率(F2/F1)が30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。また、第1ガス分離膜ユニット11の透過ガス流量F1に対する、排出透過ガスの流量F2の比率(F2/F1)は99%以下であることが、ガスBの回収率の向上の点で好ましく、98%以下であることがより好ましい。なお、流量の単位としては、Nm3/hが挙げられる。
【0026】
本発明においては、効率よく高回収率で高純度のメタンを得るために、第1ガス分離膜ユニットのガス分離膜のガス分離選択性(二酸化炭素の透過速度P’CO2/メタンの透過速度P’CH4)は5以上100以下であることが好ましく、10以上90以下であることがより好ましく、20以上80以下であることがさらに好ましく、30以上80以下であることが特に好ましい。また第2ガス分離膜ユニットのガス分離膜のガス分離選択性(二酸化炭素の透過速度P’CO2/メタンの透過速度P’CH4)は、5以上100以下であることが好ましく、10以上90以下であることがより好ましく、10以上70以下であることがさらに好ましく、10以上60以下であることが特に好ましい。
【0027】
本発明においては、圧縮動力及び膜面積を抑制しつつ、高回収率で高純度のメタンを得るために、第1ガス分離膜ユニットのガス分離膜の二酸化炭素の透過速度P’CO2
1は1.5×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上100×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることが好ましく、2×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上80×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることがより好ましく、3×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上60×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることがさらに好ましく、4×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上40×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることが特に好ましい。また第2ガス分離膜ユニットのガス分離膜の二酸化炭素の透過速度P’CO2
2は、1.5×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上100×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることが好ましく、2×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上80×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることがより好ましく、3×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上70×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることがさらに好ましく、4×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上60×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることが特に好ましい。
【0028】
本発明においては、圧縮動力及び膜面積を抑制しつつ、高回収率で高純度のメタンを得るために、第1ガス分離膜ユニットのガス分離膜のメタンの透過速度P’CH4
1及び第2ガス分離膜ユニットのガス分離膜のメタンの透過速度P’CH4
2は、0.03×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上3×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることが好ましく、0.05×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上2.5×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることがより好ましく、1.5×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下が最も好ましい。
【0029】
上記のガス分離選択性及びガス透過速度は、40℃において上記選択性、ガス透過速度を有することが好ましい。
【0030】
本発明においては、第1ガス分離膜ユニットからの還流率(つまり、第1ガス分離膜ユニットに流入するガス流量F3に対する、第1透過ガスリサイクルラインを通じて第1ガス分離膜ユニットから原料混合ガスラインに合流される透過ガス流量F4との比率である(F4/F3))は、例えば0.5%~50%であることが、システムの運転効率や製品ガスの純度を高く保ちつつ膜面積および圧縮動力を抑え、またガスBの回収率を高くする点で好ましく、1%~40%であることがより好ましい。比率(F4/F3)が低いと回収率が低くなり、比率(F4/F3)が高いと所要膜面積と所要圧縮動力が増える。
【0031】
また、システム運転効率の点、膜面積の点から、システムに流入する原料混合ガスの流量F0と第1リサイクルラインの透過ガス流量F4との合計量に対する該透過ガスF4の割合(F4/(F0+F4))は、50%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下が更に好ましく、15%以下が更に好ましく、12%以下が更に一層好ましく、10%以下が最も好ましい。この比率の下限としては、回収率及び純度の点から、0.1%以上であることが好ましく、0.5%以上が更に好ましく、1%以上が特に好ましい。
【0032】
また、システム運転効率の点、膜面積の点から、第1透過ガス排出ライン18による透過ガス排出流量F2は、原料混合ガスの流量F0と第1リサイクルラインの透過ガス流量F4との合計流量に対する割合(F2/(F0+F4))が、50%以下が好ましく、45%以下がより好ましい。この比率の下限としては、回収率及び純度の点から、0.1%以上であることが好ましく、0.5%以上が更に好ましく、1%以上が特に好ましい。
【0033】
また、第2ガス分離膜ユニットからの還流率(つまり、第2ガス分離膜ユニットに流入するガス流量F5に対する、第2透過ガスリサイクルラインを通じて第2ガス分離膜ユニット12から原料混合ガスラインに合流する透過ガスの流量F6の比率(F6/F5))は、例えば60%以下であることが、システムの運転効率を高く保ちつつ膜面積および圧縮動力を抑える点で好ましく、50%以下であることがより好ましい。本比率は通常5%以上である。
【0034】
回収率を高める点から、第1ガス分離膜ユニット11における透過ガス流量F1中の第2透過ガスリサイクルラインによるリサイクル流量F4の割合(F4/F1)は、0.5%以上が好ましく、より好ましくは5%以上であり、さらに好ましくは10%以上であり、特に好ましくは20%以上である。
また、膜面積を低減する点から、第1ガス分離膜ユニット11における透過ガス流量F1中の第2透過ガスリサイクルラインによるリサイクル流量F4の割合(F4/F1)は、60%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。回収率と膜面積とのバランスの点からは0.5%以上60%以下が好ましく、5%以上40%以下がより好ましく、10%以上30%以下が更に一層好ましく、20%以上30%以下が最も好ましい。
【0035】
さらに、純度及び回収率と、膜面積及び圧縮動力とのバランスを得る点から、本発明のガス分離システムにおける還流率(つまり、第1ガス分離膜ユニットに流入するガス流量F3に対する、第1透過ガスリサイクルライン及び第2透過ガスリサイクルラインそれぞれを通じて原料混合ガスに合流される透過ガスの合計の流量の割合である((F4+F6)/F3))は、例えば5%~70%であることが、システムの運転効率や製品ガスの純度を高く保ちつつ膜面積および圧縮動力を抑え、またガスBの回収率を高くする点で好ましく、10%~60%であることがより好ましい。
【0036】
各ガス分離膜ユニット11及び12におけるガス分離膜は、供給される混合ガスの種類に応じて適宜選択できる。ガス分離膜としては、当該技術分野においてこれまで用いられているものと同様のものを特に制限なく用いることができる。例えばシリコーン樹脂、ポリブタジエン樹脂などのゴム状ポリマー材料、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、セルロースなどのガラス状ポリマー材料、及びゼオライトなどのセラミックス材料が挙げられる。またガス分離膜は、均質膜、均質層と多孔層とからなる非対称膜、微多孔質膜などいずれであってもよい。ガス分離膜のケーシング内への収納形態も、プレートアンドフレーム型、スパイラル型、中空糸型などいずれであってもよい。特に好適に用いられるガス分離膜は、均質層の厚さが10nm以上200nm以下であり、多孔質層の厚さが20μm以上200μm以下の非対称構造を持ち、内径が30μm以上500μm以下程度である芳香族ポリイミドの中空糸ガス分離膜である。特に本発明において、第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12におけるガス分離膜はポリイミドからなることが、耐久性や分離性能等の点で特に好ましい。
【0037】
本発明で用いる原料混合ガスは、少なくともCO2とCH4を含むガスであり、例えば、バイオガス、ランドフィルガスや天然ガスなどが挙げられる。なおバイオガスとは、バイオマス原料を嫌気性の条件下で微生物と接触させて微生物によるメタン発酵等の発酵処理を行うことに伴い発生するガスである。バイオマス原料としては食品廃棄物、農業残渣、下水汚泥、畜産系廃棄物等の有機物が挙げられる。ランドフィルガスは、廃棄物埋立地において有機物の微生物分解等により発生するガスを指す。バイオガスやランドフィルガスは通常、主にCO2とCH4から構成される。バイオガスやランドフィルガスは運転中に組成変化等が起こる場合がある。ガス分離システムでは通常、原料混合ガス組成に応じてシステムにおける膜モジュールの種類や本数を設定しているので、運転中に原料混合ガスのCH4やCO2の比率が増減したといった状態でそのまま運転を継続すると製品ガスの純度が低減したり、回収率が低下するなどの事項が起こりうる。しかし、本発明では、当該組成の変化に対し、F2/F1の割合を増減させるなどの対応をとることで、運転中の製品ガスの純度の低下や回収率の低下を防止することができる。バイオガスやランドフィルガスは運転中のこのような組成変化が起こりうるところ、本発明ではこれらのガスに対し低コストで高純度・高回収率を維持できる。
【0038】
本発明において原料混合ガスは、CH4を30mol%以上含むものであることが好ましく、40~95mol%含むことが特に好ましい。また本発明において原料混合ガスは、CO2を3~70mol%含むものであることが、本発明のガス分離システムの技術的意義が高い点で好ましく、5~60mol%含むものであることが特に好ましい。
【0039】
なお、圧縮手段の圧力は、通常0.2MPaG以上3.0MPaG以下が好ましく、0.3MPaG以上2.4MPaG以下が更に好ましい。
【0040】
また、各ガス分離膜ユニットにおける運転温度は、通常0℃以上80℃以下が好ましく、5℃以上60℃以下が更に好ましい。
【0041】
次に、
図3に基づき、本発明の第2実施形態であるガス分離システム10’を説明する。第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略し、第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0042】
図3に示すガス分離システム10’は、第1ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口11bと第2分離膜ユニットのガス入口12aとを連結する第1非透過ガス排出ライン14の途中に加熱手段22が介在配置されている。加熱手段22は、第2ガス分離膜ユニット12へ供給するガスを加熱し、同ユニット12の運転温度を第1ガス分離膜ユニット11の運転温度より高くする目的で設置されている。加熱手段22は、例えば、温度センサーとヒーターとそれらを制御する制御装置とからなる。なお、本明細書においてガス分離膜ユニットの運転温度とは、ガス分離膜ユニット(ガス分離膜モジュール)に対し混合ガスを供給している間のガス分離膜ユニットの入口のガス温度をいう。
【0043】
本発明において、第1ガス分離膜ユニットの運転温度は第2ガス分離膜ユニットの運転温度と同じであってもよく、異なっていてもよいが、本実施形態では、第2ガス分離膜ユニットの運転温度を第1ガス分離膜ユニットの運転温度より高くすることで、第2ガス分離膜ユニットで使用するガス分離膜モジュールの本数を低減することができる。
【0044】
一般にガス分離膜は、温度が上昇することによりガス分離膜を透過するガスの透過速度が増加する。そのため、第2ガス分離膜ユニットの運転温度を第1ガス分離膜ユニットの運転温度より高くすることで、回収するメタンの純度及び回収率を維持したまま第2ガス分離膜ユニットで使用するガス分離膜モジュールの膜面積を低減することができる。本発明では、製品ガスを排出する第2ガス分離膜ユニット12における膜面積は回収率を高くする等のために大きくなりがちであることから、第2ガス分離膜ユニット12の膜面積を低減できることの有利性は非常に顕著なものである。
【0045】
本実施形態における加熱手段22による加熱は、第2ガス分離膜ユニットの運転温度が第1ガス分離膜ユニットの運転温度より高くなるように行われる。第2ガス分離膜ユニットの運転温度と第1ガス分離膜ユニットの運転温度との差は、5℃以上40℃以下であることが好ましく、10℃以上30℃以下であることがより好ましい。各ガス分離膜ユニットの運転温度は、結露防止や加熱エネルギーを抑える点から、上記の通り0℃以上80℃以下の範囲が好適であるが、30℃以上であってもよく、35℃以上であってもよい。特に第2ガス分離膜ユニットの運転温度を第1ガス分離膜ユニットの運転温度より高くする場合は、第1ガス分離膜ユニットの運転温度が5~60℃であることが特に好ましく、10~50℃であることが更に一層好ましい。また第2ガス分離膜ユニットの運転温度が15~80℃であることが特に好ましく、20~70℃であることが更に一層好ましい。
【0046】
本発明の第3実施形態であるガス分離システムについて説明する。
本発明において、第1ガス分離膜ユニットのガス分離選択性は第2ガス分離膜ユニットのガス分離選択性と同じであってもよく、異なっていてもよいが、第2ガス分離膜ユニットのガス分離選択性を第1ガス分離膜ユニットのガス分離選択性より低くすることで、第2ガス分離膜ユニットで使用するガス分離膜モジュールの本数を低減することができる。
【0047】
上述のように、ガス分離膜は、ガス分離選択性が高いほどガス透過速度が小さくなり、逆にガス透過速度が大きいほどガス分離膜のガス分離選択性は低くなる。そのため、第1ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜と第2ガス分離膜ユニットを構成する分離膜とを異なるガス分離選択性を有するガス分離膜とし、かつ、第2ガス分離膜ユニットのガス分離膜のガス分離選択性を第1ガス分離膜ユニットのガス分離膜のガス分離選択性より低くすることで、回収するメタンの純度及び回収率を維持したまま第2ガス分離膜ユニットで使用するガス分離膜モジュールの膜面積(本数)を低減することができる。
【0048】
本実施形態においては、第1ガス分離膜ユニットのガス分離膜の40℃におけるガス分離選択性を1.0とした場合の第2ガス分離膜ユニットのガス分離膜のガス分離選択性が1.0未満であることが好ましく、0.1以上0.9以下であることがより好ましく、0.2以上0.8以下であることが特に好ましい。ここでいうガス分離選択性は二酸化炭素(CO2)とメタン(CH4)の分離選択性であり、(二酸化炭素の透過速度P’CO2/メタンの透過速度P’CH4)の比で表されるものである。
【0049】
本実施形態においては、第1ガス分離膜ユニットのガス分離膜の40℃における二酸化炭素の透過速度P’CO2
1を1.0とした場合の第2ガス分離膜ユニットのガス分離膜の二酸化炭素の透過速度P’CO2
2が1.0超であることが好ましく、1.2以上8以下であることがより好ましく、1.5以上7以下であることが特に好ましい。
【0050】
本実施形態においては、第1ガス分離膜ユニットのガス分離膜の40℃におけるメタンの透過速度P’CH4
1を1.0とした場合の第2ガス分離膜ユニットのガス分離膜のメタンの透過速度P’CH4
2が1.0超であることが好ましく、1.5以上30以下であることがより好ましく、2以上20以下であることが特に好ましい。
【0051】
本発明においては、上述の第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせた実施形態とすることもできる。すなわち、第2ガス分離膜ユニットの運転温度を第1ガス分離膜ユニットの運転温度より高くし、かつ、第1ガス分離膜ユニットのガス分離選択性を第2ガス分離膜ユニットのガス分離選択性より高くすることで、回収するメタンの純度及び回収率を維持したまま第2ガス分離膜ユニットで使用するガス分離膜モジュールの本数をさらに低減することができる。
【0052】
本実施形態のガス分離システムを用いて分離回収されたメタンガスを都市ガスライン等へ供給するときにおいては、第2非透過ガス回収ライン15の途中に、圧縮手段としてのガス圧縮機を設けてメタンガスを高圧にしてもよい。
【0053】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されない。例えば上記実施形態では、各ガス分離膜ユニットの一例として、中空糸膜を有するガス分離膜モジュールで構成されるユニットを用いたが、これに代えて他の形態のガス分離膜ユニットを用いてもよい。
【0054】
また、上記の実施形態における圧縮手段に加えて、各ガス分離膜ユニットの何れか1つ又は2つの透過側に減圧手段を設けることで各ガス分離膜ユニットに供給される混合ガスに分離膜を通過する動力を付与してもよい。そのような減圧手段としては公知の真空ポンプ等を用いることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかし本発明の範囲はこれら実施例により制限されない。
【0056】
<ガス分離膜モジュール>
実施例において用いたガス分離膜モジュールの40℃でのガス分離特性を表1に示す。このガス分離膜モジュールは、ポリイミド中空糸膜から構成されるガス分離膜をケース内に収容したものである。ガス分離膜モジュールAは、ガス分離膜モジュールBよりガス分離選択性が高くガス透過速度が小さいガス分離膜により構成されている。
表1中のP’CO2及びP’CH4の単位は、×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHgである。
【0057】
【0058】
[実施例1]
図1に示すガス分離システム10を用いて、二酸化炭素及びメタンを含む混合ガスの分離を行い、製品ガスとしてメタンを得た。第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12はいずれもガス分離膜モジュールAで構成した。同システム10における圧縮手段21としては圧縮機を用いた。原料混合ガスは35℃であり、圧縮手段による圧縮により加熱された後、不図示の冷却装置にて冷却されて各ガス分離膜ユニットに供給された。原料混合ガスの流量(システムに流入する流量)及び組成、各ユニットに流入する流量及び各排出口から排出される流量並びに第1透過ガスリサイクルラインの流量(F4)は、以下の表2に示すとおりであった。
【0059】
[実施例2]
第2ガス分離膜ユニット12の運転温度を以下の表2に示すとおりに変更した以外は実施例1と同様にして製品ガスを得た。なお、第2ガス分離膜ユニット12の50℃のガス分離選択性は、第2ガス分離膜ユニット12の40℃のガス分離選択性の0.86倍である。
【0060】
[実施例3]
第2ガス分離膜ユニット12をガス分離膜モジュールBで構成した以外は実施例1と同様にして製品ガスを得た。
【0061】
[実施例4]
第2ガス分離膜ユニット12をガス分離膜モジュールBで構成し、運転温度を以下の表2に示すとおりに変更した以外は実施例1と同様にして製品ガスを得た。
【0062】
[比較例1]~[比較例4]
図1のシステムにおいて、第1透過ガスリサイクルライン16を有さず、第一透過ガスは全量がシステム外に排出される点以外、
図1と同様の比較例のシステムを用いた。この比較例のシステムは特許文献2に相当する。その点以外は実施例1~4とそれぞれ同様にして製品ガスを得た。
【0063】
[実施例5]~[実施例8]
第1透過ガスリサイクルラインの流量(F4)を表2に示す値に設定した。その点以外は実施例1と同様にして製品ガスを得た。
【0064】
[実施例9]~[実施例12]
第2ガス分離膜ユニット12をガス分離膜モジュールBで構成し、第1透過ガスリサイクルラインの流量(F4)を表2に示す値に設定した。その点以外は実施例1と同様にして製品ガスを得た。
【0065】
【0066】
表2における実施例1~4と比較例1~4との結果の比較から、本発明のガス分離システムは、第一ガス分離膜ユニットから透過ガスを還流させない各比較例に比して、必要な膜面積及び圧縮動力の増加を一定以下としながら、二酸化炭素とメタンを含む原料混合ガスから、高純度のメタンをより高い回収率で得られることが判る。
また実施例1、3と実施例2、4との比較から、第2ガス分離膜ユニットの運転温度を第1ガス分離膜ユニットの運転温度より高くすることで、回収するメタンの純度及び回収率を維持したまま第2ガス分離膜ユニットで使用するガス分離膜モジュールの本数を低減できることが判る。さらに実施例1、2と実施例3、4との比較から、第2ガス分離膜ユニットのガス分離膜のガス分離選択性を第1ガス分離膜ユニットのガス分離膜のガス分離選択性より低くすることで、回収するメタンの純度及び回収率を維持したまま第2ガス分離膜ユニットで使用するガス分離膜モジュールの本数を低減することができることが判る。
更に、実施例1と、実施例5~8との比較、実施例3と実施例9~12との比較から、本発明では、第1ガス分離膜ユニットの透過ガス流量F1中の第1透過ガスリサイクルラインによるリサイクル量F4の割合を所定範囲に調整することで、膜面積の増加の程度を一定以下としながら、回収率を効果的に向上させることができることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、少なくとも二酸化炭素とメタンを含む原料混合ガスから、高純度のメタンを高回収率で得ることができる。
【要約】
第1ガス分離膜ユニット11のガス入口に原料混合ガス供給ライン13を連結する。第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガス排出口11bと、第2ガス分離膜ユニット12のガス入口とを第1非透過ガス排出ライン14によって連結する。第2ガス分離膜ユニット12の第2非透過ガス排出口12bに第2非透過ガス回収ライン15を連結する。第1ガス分離膜ユニット11の第1透過ガス排出口11cは、第1透過ガスリサイクルライン16によって、第2ガス分離膜ユニット12の第2透過ガス排出口12cは、第2透過ガスリサイクルライン17によって、それぞれ原料混合ガス供給ライン13に連結する。ライン16は第1ガス分離膜ユニットの透過ガスを少なくとも一部システム外に排出するための透過ガス排出ライン18を備える。