(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】アンテナエクステンダ及びアンテナエクステンダを備えた電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/24 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
H01Q1/24 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022127614
(22)【出願日】2022-08-10
(62)【分割の表示】P 2020542848の分割
【原出願日】2018-03-20
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】504161984
【氏名又は名称】ホアウェイ・テクノロジーズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イルボネン、ヤンネ
(72)【発明者】
【氏名】ティアン、ルイユアン
(72)【発明者】
【氏名】ドン、リー
(72)【発明者】
【氏名】シュ、チャンニアン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ドン
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、ホンティン
(72)【発明者】
【氏名】トゥ、ドンシン
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0309007(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0076574(US,A1)
【文献】国際公開第2007/094494(WO,A1)
【文献】特開2016-111669(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147109(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び第2面を有する筐体であって、前記第2面上の誘電体カバーと、前記第1面及び前記第2面の端部に沿った導電性の周辺構造体とを備える前記筐体と、
放射アンテナ素子として構成された前記周辺構造体の部分に結合されたアンテナフィードであって、前記部分が前記部分の長手方向に沿った第1端部と第2端部とを有し、前記部分の前記第1端部が開放端であり、前記部分の前記第2端部が接地端である、アンテナフィードと、
前記誘電体カバー上又は下の導電性部材であり、前記導電性部材は、前記部分の前記長手方向に沿って第1寸法を有し、かつ前記部分から内向きに第2寸法だけ延び、前記導電性部材は前記部分に結合され、前記導電性部材および前記アンテナフィードが前記部分の前記長手方向に沿って間隔をあけて配置され、前記アンテナフィードおよび前記部分の前記第2端部が前記導電性部材の同じ側に配置される、導電性部材と、
を備
え、
前記導電性部材の前記第1寸法を有する部位の全体が、電気結合を伴って前記長手方向に沿った前記部分に結合される、
電子デバイス。
【請求項2】
前記第2寸法は、前記第1寸法の2倍より小さい、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記第1寸法は、前記第2寸法よりも大きい、請求項1または2に記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記誘電体カバーは、誘電体板であり、
前記導電性部材は、前記誘電体板により機械的に支持される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記誘電体板は、プラスチック、ガラス、セラミック、木材、又は他の誘電体材料から成り、内面及び外面を有し、
前記導電性部材は、前記誘電体板の前記内面に固定して取り付けられる1個の導電性材料である、
請求項4に記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記誘電体板は、透明又は半透明であり、前記内面上に装飾層を含み、
前記導電性部材は、前記装飾層に取り付けられることを介して、前記誘電体板に間接的に取り付けられる、
請求項5に記載の電子デバイス。
【請求項7】
前記電子デバイスは、前記誘電体カバーの下に誘電体支持構造体を含み、
前記導電性部材は、前記誘電体支持構造体により機械的に支持される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項8】
前記導電性部材と前記部分と間の前記結合は、前記部分と直接接触または間接接触する、前記導電性部材の端部とのガルバニック結合であ
る、
請求項1から
7のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項9】
前記導電性部材と前記部分との間に配置される弾性の導電性ガスケットを更に備える、請求項8に記載の電子デバイス。
【請求項10】
前記ガルバニック結合は、
前記部分及び前記導電性部材の間の直接接触と、
前記部分及び前記導電性部材の間の導電ガスケットを介した結合と、
前記部分及び前記導電性部材と間の2又はそれより多くの別個の接触部材を介した結合と、
前記部分と前記導電性部材の間の溶接、はんだ、又は接着剤接合と、
のうちの少なくとも1つを含む、
請求項
8に記載の電子デバイス。
【請求項11】
前記導電性部材と前記部分と間の前記結合のクロスオーバー周波数は、10から100メガヘルツのオーダー内である、請求項1から
10のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項12】
前記部分は、以下のモノポールアンテナ、ダイポールアンテナ、折り畳ダイポールアンテナ、容量結合要素アンテナ、逆F型アンテナ、ループアンテナ、スロットアンテナのうちの1つであるアンテナ構造体の放射アンテナ素子を構成する、請求項1から
11のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項13】
前記導電性部材は、前記部分の1または複数の動作周波数帯域における放射効率を改善するように構成される、請求項1から
12のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信に対して使用されるアンテナの分野に関し、特に導電性フレームを用いて作られる電子デバイス内の狭いスペースに篏合するアンテナに関する。さらに、発明は、複数のアンテナを備えるアンテナ装置及びアンテナ又はアンテナ装置を備える電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナは、電波を使用して通信するすべての電子デバイスにおいて必要とされる。多くのそのようなデバイスは、ポータブルで、容易に使用可能で、複数のユーザに対して美的に魅力的であると想定される。結果として、それらのサイズ、設計、全体的な外観、機械的堅牢性、及び無線通信における効率は、アンテナ設計に困難であり、場合によっては相互に矛盾する要件をもたらし得る。
【0003】
そのような電子デバイスの1つの例は、スマートフォン、タブレットコンピュータ、又はラップトップコンピュータのようなポータブル通信及び/又はコンピューティングデバイスである。そのようなデバイスは、比較的平坦で幾分細長い形状であり、2つの端部、2つの側端、並びに前面及び裏面を有してよい。前面の大部分は、ほとんどの場合に、タッチ感応式ディスプレイのためにほとんど確保される。裏面は、プラスチックから成る背面カバーによってカバーされてよいが、多くのケース内では、裏面は、ガラス及び/又は金属の層を備える。前記の端部及び側端に沿った周囲は、金属フレームを備えてもよい。デバイスは、たった数ミリメートル厚でもよく、端部及び側端は、数センチメートルから数デシメートルのサイズを取ってよい。アンテナの物理的な寸法は、通信の波長に対する特定の関連を有し、これは、アンテナが6GHzより下の波長で通信に使用される予定の場合、数センチメートルのオーダー内の物理的な寸法を有さなければならないことを意味する。一方で効率的通信及び高いデータスループットを可能にするであろうが、他方でポータブル通信デバイス内に容易に篏合するであろうように、そのサイズのアンテナを設計するのは困難である。
【0004】
従来技術は、電子デバイスの金属、そうでなければ導電性構造部品を使用してよい様々なアンテナ構造体を提案する。しかし、アンテナ性能は、電子デバイスが動作すべき必要な周波数範囲の全体及び/又はすべての周波数帯に亘って常に最適ではないことが分かっている。
【発明の概要】
【0005】
発明の目的は、コンパクトなサイズ、ポータブル電子デバイスに適用可能、多くの種類の動作条件に対して堅牢、及び電子デバイス内に含まれる他のアンテナと結合可能なアンテナを提供することである。発明の別の目的は、アンテナが、他の部品及び電子デバイスの構造体の間の閉鎖空間内に実装されることができること、さらに良好な性能を有することである。発明のさらに別の目的は、前記の種類の少なくとも1つのアンテナを含む電子デバイスを提供することである。
【0006】
前述の目的その他の目的は、独立請求項の特徴により実現される。さらなる実装形式及び利点は、従属請求項、説明及び図面から明らかである。
【0007】
第1の態様によれば、電子デバイスが設けられる。電子デバイスは、第1面及び第2面を有する筐体と、第2面上の誘電体カバーと、第1面及び第2面の端部に沿った導電性の周辺構造体とを備える。電子デバイスは、周辺構造体の一部を放射アンテナ素子として使用するための部分に結合されたアンテナフィードも備える。さらに、電子デバイスは、誘電体カバー上の導電性部材(例えば、誘電体カバーの内面又は外面上に取り付けられる)を備える。代替的に、導電性部材は、(例えば、筐体の内側のさらなる支持構造体上の)誘電体カバーの下に配置されてよい。導電性部材は、部分の長手方向に沿って第1寸法を有し、周辺構造体を参照して、部分から内向きに第2寸法だけ延び、第2寸法は、第1寸法の2倍未満である。電子デバイスは、部分と導電性部材の部分の長手方向に沿って延在するその部品との間の電気結合を備える。導電性部材は、アンテナエクステンダを形成し、従って、アンテナエクステンダと呼ばれることもできる。導電性部材、すなわちアンテナエクステンダの目的は、電場が分布する表面積を大きくすることである。言い換えれば、アンテナエクステンダは、放射用のアンテナ開口を増大する。所望の周波数帯(複数可)でのシャーシモードの励起を改善するであろう。アンテナエクステンダは、1)放射効率を改善する、2)共振周波数を調整する、3)インピーダンス帯域幅を増大する、4)電流分布及び放射パターンを修正して、例えばユーザの効果を制御するために使用されることができる。
【0008】
より大きなアンテナクリアランス(すなわち、放射アンテナ素子及び接地の間のより大きな距離)を要求することなくアンテナのインピーダンス帯域幅及び効率を改善するので、アンテナエクステンダは、特に、ほとんどスペースのないポータブル電子デバイス内にコンパクトなサイズのアンテナを作成することを可能にする。アンテナの性能が許容限界を下回るであろう前に、それらはより多くの限界を提供するので、インピーダンス帯域幅及び効率の改善は、準最適動作条件に対する堅牢性も増大する。アンテナエクステンダは、そうでなければ同一デバイス内の他のアンテナに必要であろうそのようなスペースを保有しない。これは、他のアンテナと非常に互換性がある解決手段を作成する。アンテナ、さらに、電子デバイスの他の部品といくつかの構造体を共有してよい。これは、さらに、閉鎖空間のその適合性を強調する。
【0009】
電子デバイスの第1実装形式では、誘電体カバーは、誘電体板であり、導電性部材は、誘電体板により機械的に支持される。これは、機械的構造が堅牢で比較的製造容易になることができるという利点を含む。導電性部材と、ディスプレイのような電気デバイスの接地部品と、の間の距離は、可能な限り大きくなることができるという利点も含まれる。これは、インピーダンス帯域幅及び効率を改善する。
【0010】
電子デバイスのさらなる実装形式では、誘電体板は、プラスチック、ガラス、セラミック、木材、又は他の誘電体材料から成り、内面及び外面を有し、導電性部材は、誘電体板の内面に固定して取り付けられる1個の導電性材料である。これは、デバイスの外観が非常に魅力的になることができる、機械的構造が堅牢で比較的製造容易になることができるという利点を含む。
【0011】
電子デバイスのさらなる実装形式では、誘電体板は、透明又は半透明であり、内面上に装飾層を含み、導電性部材は、装飾層に取り付けられることを介して、誘電体板の内面に間接的に取り付けられる。これは、たとえこの種類の導電性部材がアンテナエクステンダとして使用される場合でも、デバイスの有利な外観が損なわれる必要がないという利点を含む。
【0012】
電子デバイスのさらなる実装形式では、電子デバイスは、誘電体カバーの内側に誘電体支持構造体を含み、導電性部材は、誘電体支持構造体により機械的に支持される。これは、アンテナエクステンダの設計及び機械的構造が、特に、動作周波数及び他の影響因子に従って十分に適応されることができる、及び/又は電子デバイスの内側のいくつかの誘電体部品が、アンテナエクステンダの支持構造体として効率的に兼用できるという利点を含む。
【0013】
電子デバイスのさらなる実装形式では、電気結合は、部分及び導電性部材の間の直接接触と、部分及び導電性部材の間の導電ガスケットを介した結合と、部分及び導電性部材と間の2又はそれより多くの別個の接触部材を介した結合と、部分と導電性部材の間の溶接、はんだ、又は接着剤接合と、のうちの少なくとも1つを含むガルバニック結合である。これは、安全な電気結合が、周囲の構造体内の部品及び材料に関する多種多様な代替において行われることができる利点を含む。
【0014】
電子デバイスのさらなる実装形式では、電気結合は、容量結合、誘導結合のうちの少なくとも1つを含む非ガルバニック結合である。これは、特定の部品間で直接接触が行われる必要がないという利点を含み、これにより、構造体の設計及び組み立てが容易になり、準最適な接触が原因となり得た任意の問題を回避するのに役立つ。
【0015】
電子デバイスのさらなる実装形式では、非ガルバニック結合のクロスオーバー周波数は、10から100メガヘルツのオーダー内である。これは、十分な電磁接続が、アンテナ構造体の他の寸法で有用な周波数で行われることができるという利点を含む。
【0016】
電子デバイスのさらなる実装形式では、部分は、以下のモノポールアンテナ、ダイポールアンテナ、折り畳ダイポールアンテナ、容量結合要素アンテナ、逆F型アンテナ、ループアンテナ、スロットアンテナのうちの1つであるアンテナ構造体の放射アンテナ素子を構成する。これは、最も好適なアンテナタイプが、特定の実装に対して選択されることができるという利点を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図6】電子デバイスのいくつかの構造部品をアンテナエクステンダとともに示す。
【
図8】電子デバイスのいくつかの構造部品をアンテナエクステンダとともに示す。
【
図13】アンテナエクステンダを接触部材とともに示す。
【
図15】電子デバイスのいくつかの構造部品をアンテナエクステンダとともに示す。
【
図16】アンテナエクステンダを備える及び備えないアンテナの測定性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
電子デバイスは、外側カバー内に包囲される内部部品を備えてよい。典型的に、内部部品又はシャーシは、電子デバイスの動作に必要とされる電子コンポーネントを備えるが、外側カバーの役割は、機械的支持及び保護とともに魅力的な外観を提供することである。電子デバイスが無線通信を装備する場合、1又は複数のアンテナが組み込まれていなければならない。構造体の一部及び多くの洗練されたスマートフォンの外観を構成するいわゆるリング又は外側フレームのような導電性の周辺構造体を設けることは、導電性の周辺構造体の1又は複数のセクションを放射アンテナ素子として使用することを可能にする。確立された用語によれば、放射アンテナ素子は、高周波の振動電流が無線信号を伝送するために結合される、及び/又は受信された無線信号が、順に受信信号に変換されることができる高周波の振動電流を誘導する構造部品である。
【0019】
図1、
図2、及び
図3は、導電性の周辺構造体の一部であってよい内部部品又はシャーシ101及び放射アンテナ素子を備える電子デバイスを示す。それが比較的包括的なグランドプレーンを備えることは、内部部品又はシャーシ101にとって典型的であり、そのため、それは、放射アンテナ素子の性能に効果を有する接地領域と考えられてよい。
【0020】
図1では、放射アンテナ素子102は、導電性の周辺構造体の直線部分であり、その全長は、内部部品又はシャーシ101の直線縁部から距離103に配置される。アンテナフィード104は、放射アンテナ素子102の中間点に又はその近くにある。これら(アンテナ素子が直線であること、アンテナフィードが中間に近いこと)のいずれも、厳格な要件ではなく、変更が可能である。
図1のアンテナは、CCE(容量結合素子)アンテナと呼ばれることができる。
【0021】
図2では、そうでなければ、放射アンテナ素子201は、内部部品又はシャーシ101の直線縁部から距離202に配置されるが、放射アンテナ素子201の一端には、内部部品(のグランドプレーン)又はシャーシ101への直接接触がある。この種類の接地接点は、アンテナ素子201の長さに沿った任意の箇所に配置されることができる。
図2では、アンテナフィード203は、その自由端より接点を有する放射アンテナ素子102の端部に近い。再度、すべてのこれらの特徴への変更が可能である。
図2のアンテナは、IFA(逆F型アンテナ)である。
【0022】
図3では、放射アンテナ素子301は、内部部品又はシャーシ101の直線縁部から距離302に配置される。アンテナフィード303は、アンテナをモノポール又はILA(逆L型アンテナ)にする放射アンテナ素子301の一端に配置される。
【0023】
図4及び
図5は、上の
図1の原理に従ってよい構造体のさらなる例示である。放射アンテナ素子102は、電子デバイスの導電性の周辺構造体の一部である。内部部品又はシャーシ101は、その一部が
図4及び
図5に示される厚いスラブとして簡略化された方法で示される。第1の誘電体カバー401は、電子デバイスの第1面(前面)をカバーし、第2誘電体カバー402は、電子デバイスの第2面(背面)をカバーする。組み立てられた構成では、第1及び第2誘電体カバー401、402の少し内向きに湾曲した外縁が、放射アンテナ素子102内のそれぞれの溝に行き当たるので、それにより、電子デバイスの流線形の外観が実現される。
【0024】
放射アンテナ素子が隣接する接地構造体から配置される距離103、202、又は302は、グランドクリアランス又はアンテナクリアランスと呼ばれることができる。グランドクリアランスの最適な大きさは、動作周波数及び帯域幅に依存する。スマートフォン及び他の広く使用されている無線通信デバイスにおいて共通である6GHzより小さい動作周波数に関する一般的な規則として、5から10ミリメートルのグランドクリアランスが最適に近い可能性がある。しかし、(タッチ感応式)ディスプレイを備えた電子デバイスの全側面、例えば前面をカバーすることが望ましくてよい。ディスプレイは、関連するグランドプレーンを必要とし、このグランドプレーンは、
図1から
図3内の内部部品又はシャーシ101として考えられるものの有効な外部寸法を画定してよい。結果として、1から2ミリメートルと小さいもの、又はさらに小さいものがグランドクリアランスとして利用可能であってよい。
【0025】
図6は、本発明の実施形態に係る電子デバイスのいくつかの部品を分解図で示す。
図7は、アンテナフィード601を通る平面に沿ったこれらの部品の断面図である。電子デバイスは、第1面及び第2面を有する筐体を備える。第1面は、
図6及び
図7内の下面であり、第2面は、上面である。電子デバイスは、第2面上の誘電体カバー602と、第1面及び第2面の端部に沿った導電性の周辺構造体とを備える。導電性の周辺構造体の部分603は、
図6及び
図7に見られる。アンテナフィード601は、導電性の周辺構造体の部分603を放射アンテナ素子として使用するための部分603に結合される。
【0026】
図4及び
図5との差として、
図6及び
図7の電子デバイスは、誘電体カバー602によりカバーされその上に配置される導電性部材604を備える。この例では、導電性部材604は、誘電体カバー602の内側(内面)上に配置される。しかし、さらなる実施形態では、導電性部材604は、誘電体カバー602の外側(外面)上に配置されてよい。導電性部材604は、放射アンテナ素子として使用される導電性の周辺構造体の部分603の長手方向に沿った第1寸法605を有する。導電性部材604は、部分603から第2寸法606だけ内向きに延在する。ここで、「内向き」は電子デバイスの周辺構造体を参照して内向きとして定義される。言い換えれば、「内向き」は、電子デバイスの中心に向かうことを意味する。
【0027】
導電性部材604の寸法のうち、第2寸法606は、第1寸法605の2倍より小さい。これらの寸法の重要性は、後でより詳細に説明されるであろう。導電性部材604は、代替的に、アンテナエクステンダと呼ばれることができる。この文書では、導電性部材及びアンテナエクステンダなる表現は、同義語として使用される。
【0028】
電気結合は、放射アンテナ素子として使用される導電性の周辺構造体の部分603と、部分の長手方向に沿って延在する導電性部材604のその部品と、の間に存在する。
図6及び
図7の構造体では、導電性部材604の1つの長い端部が、部分603の一部と直接機械的に接触し、電気結合を保証する。そのような電気結合を作成する他の方式は、後でより詳細に説明される。
【0029】
図6及び
図7の構造体では、誘電体カバー602は、誘電体板であり、導電性部材604は、誘電体板により機械的に支持される。特に、誘電体カバー602を構成する誘電体板は、例えばプラスチック又はガラスから成ることができ、内面及び外面を有してよい。導電性部材604は、例えば接着剤により又は超音波溶接により誘電体カバー602の内面に固定して取り付けられてよい。導電性部材604は、誘電体カバー602の材料に埋め込まれるような他の方式で取り付けられることもできる。取り付けの実際の方法は、ほとんど実用的に重要でない。この種類の固定取り付けは、導電性部材604が1個の金属箔又はプレートのような1個の導電性材料であるという前提に基づく。代替案は、誘電体カバー602に取り付けられる前に、導電性材料の別個の固体片の形式ではない導電性塗料又は他の物質を使用して、誘電体カバー602のいくつかの表面上に導電性部材604を形成することであろう。
【0030】
誘電体カバー602を導電性部材604に対する機械的支持として使用することは、他の構造部品がその目的に必要とされないという利点を含む。導電性部材604は最初に誘電体カバー602の内面に取り付けられてよく、それにより後の組立て段階で誘電体カバー602及び導電性の周辺構造体がともにもたらされる場合に、導電性部材604と放射アンテナ素子として使用される部分603との間の電気結合が自動的に行われるので、それは電子デバイスの容易な組立てを可能にしてもよい。導電性ガスケットが、電気結合を保証するために使用されることができるが、これは必ずしも必要ではない。プラスチック、ガラス、セラミック、木材、又は他の誘電材料の誘電体カバー602の材料としての使用は、妥当なレベルの製造コストで電子デバイスの非常に魅力的な外観を実現することを可能にしてよい。材料としてのプラスチックは、導電性部材604を誘電体カバー602に固定して取り付けるために、プラスチック物質のいくつかを部分的に溶融することに基づく超音波溶接、成形、又は他の公知の方法が利用可能であるという追加の利点を含む。
【0031】
図8及び
図9は、第1面及び第2面並びに第2面上に誘電体カバー602を有する筐体を備えるさらなる実施形態に係る電子デバイスの部品を示す。電子デバイスは、第1面及び第2面の端部に沿った導電性の周辺構造体、及び部分603を放射アンテナ素子として使用するための周辺構造体の部分603に結合するアンテナフィード601を備える。
【0032】
図8及び
図9の電子デバイスは、誘電体カバー602によりカバーされその下に配置される導電性部材804を備える。特に、電子デバイスは、誘電体カバー602の下に誘電体支持構造体801を含み、導電性部材804は、誘電体支持構造体801により機械的に支持される。従って、この実施形態では、導電性部材804は、誘電体カバー602上ではなく、誘電体カバー602の下に配置された別個の誘電体支持構造体801上に配置される。誘電体支持構造体801は、バッテリコンパートメントの壁、高周波部品の導電性遮蔽缶、スピーカーボックスなどのような、電子デバイスの任意の他の部品の一部であってもよい(またはそれによって順に支持されてもよい)。
【0033】
導電性部材804は、電子デバイスの周辺構造体の上記部分603の長手方向に沿った第1寸法605を有する。導電性部材804は、第2寸法606だけ部分603から内向きに延在し、それにより、再度「内向き」方向は、周辺構造体を参照して理解される。第2寸法606は、第1寸法605の2倍より小さい。周辺構造体の部分603と導電性部材804の部分の長手方向に沿って延在するその部品との間の電気結合がある。
【0034】
図8及び
図9の実施形態では、電気結合は、周辺構造体の部分603と、部分の長手方向に沿って延在する導電性部材804のその部品との間に配置される弾性の導電性ガスケット901を備える。この種類の導電性ガスケットは、
図6及び
図7の実施形態において、任意の他の実施形態においても使用されることができる。導電性ガスケット901は、接着剤によって、又はそれを溝などに係止することによって、又は適切に保持することと電気結合を作成することの両方を保証する任意の他の手段によって、適切に保持されよい。所望の電気結合を作成するための他の代替案は、はんだ付け、溶接、又は導電性接着剤による接着のうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0035】
図10及び
図11は、導電性部材の寸法の概念を示す。
図10及び
図11では、放射アンテナ素子として使用される導電性周辺構造体の部分603は、水平バーとして概略的に示される。
図10及び
図11は、部分603の一端に接地接続がある実施形態を示すが、そのような接地接続がない実施形態もある。導電性部材の第1寸法605は、部分603の長手方向に沿ったその寸法である。導電性部材は、部分から第2寸法606だけ(周辺構造体を参照して)内向きに延在する。
図10では、第2寸法606は、第1寸法605の約2倍であるが、
図11では、第1寸法605は、第2寸法606より十分に大きい。
図10及び
図11のように接地接続がある場合、導電性の周辺構造体の一部の長手方向における接地接続からのその距離が可能な限り最大になるように導電性部材を配置することが有利であってよい。
【0036】
図12は、点1201が放射アンテナ素子を表し、点1202が上記の種類の導電性部材を表す等価回路を示す。点1203は、導電性部材の「開放」端、すなわち放射アンテナ素子から最も遠く離れたその部品を表す。点1203と局所接地電位との間のいわゆる開放端インピーダンスZは、典型的に、少なくとも100オーム、又はさらには少なくとも1キロオームのオーダーで大きい。
【0037】
放射アンテナ素子及び導電性部材の間の電気結合は、
図12の接触部材1204によって表される。一般的に、電気結合は、誘電率(又は比誘電率)がε
r(ε下付きr)である材料を介して、距離dに亘って面積Aで起こると考えられてよい。電気結合は、例えば金属間の直接接触を介した直接ガルバニック結合である場合、ε
rの値は非常に大きい又は無限である。
【0038】
図13は、
図12の素子がどれだけ実際問題として考えられてよいかを示す。接触部材1204は、放射アンテナ素子として使用される導電性周辺構造体の部分603と、
図13で参照指定子604が使用される導電性部材との間に配置される。 これは単なる例であり、
図6の実施形態の導電性部材604と同様のこれらの種類の導電性部材のみに考察を限定することを意味するものではない。面積Aは、部分603の長手方向の導電性部材604の寸法に比例する。電気接続の長手方向に沿って分布された2又はそれより多くの別個の導電ガスケットのように、部分と導電性部材との間に2又はそれより多くの別個の接触部材がある場合、面積Aは互いから最も遠く離れた2つの別個の接触部材の間の距離に比例する。
【0039】
電気結合が、非ガルバニック結合である場合、容量結合又は誘導結合のうちの少なくとも1つを備えてよい。例示的な計算が、容量結合に対して行われることができる。例えば、接触面積Aが1.5mm×12mmであり、距離dは0.1mmであり、その間の材料が空気である場合、接触容量は約1.7pFであろう。開放端インピーダンスが1kΩであると仮定すると、それは約90MHzのクロスオーバー周波数に対応するであろう。これは、放射アンテナ素子及び導電性部材の間の十分な電磁結合が90MHzより高い周波数で実現されることを意味する。一般的に、前記の種類の非ガルバニック結合のクロスオーバー周波数は、10から100メガヘルツのオーダーであってよい。
【0040】
これまでに説明した実施形態では、アンテナエクステンダ又は導電性部材は、長方形の形状を有する。これは要件ではないが、導電性部材は多種多様な形状を取ってよい。
図14は、様々な長方形、4より少ない又はそれより多くの角を有する多角形、ひし形、台形、いくつかのその他の規則的な形状から一部を切断することにより得られる形状、部分的に丸い又は湾曲した形状、及び不規則な形状を含むそのような形状のいくつかの例を示す。形状は、例えば、電子デバイス内のアンテナエクステンダのための利用可能なスペースの形状に基づいて選択されてよい。
図14の形状における小さい白い円は、別個の接触部材の例として考えられてよく、又はそれらは、導電性部材及び放射アンテナ素子として使用される導電性の周辺構造体の一部との間の溶接、はんだ、又は接着剤接合の例であってよい。
【0041】
図15は、電子デバイスの第2面上の誘電体カバー602が透明又は半透明の誘電体板を含み、その内面に装飾層1501を含む実施形態を示す。導電性部材604は、装飾層1501への取り付けを介して誘電体板に間接的に取り付けられる。導電ガスケット901は、導電性部材604と、放射アンテナ素子として使用される導電性の周辺構造体の部分603と、の間の電気結合を保証する。
【0042】
さらに別の可能な実施形態は、電子デバイスの第2面上の誘電体カバー(の一部)を構成する誘電体板の外面上の透明な導電層として作製された導電性部材を含むことができる。
【0043】
図16は、電子デバイスがアンテナを含み、その放射アンテナ素子が電子デバイスの側面に沿った導電性の周辺構造体の一部であるシステムの測定された合計効率を示す。それぞれのケースにおいて、実線は、説明した種類のアンテナエクステンダが使用されなかった場合の測定された合計効率を示す。対応する破線は、説明した種類のアンテナエクステンダが使用された場合の測定された合計効率を示す。アンテナエクステンダが使用された場合、システムのピーク合計効率の一般的な改善は1dBのオーダーであった。これは、いわゆるシャーシモードの励起が改善され、アンテナの共振周波数が所望の周波数帯に最適化された結果であると考えられる。これらの測定結果では、長方形のアンテナエクステンダが使用され、アンテナエクステンダの寸法は、放射アンテナ素子の長手方向のその寸法が垂直方向のその寸法の約2倍になるようにした。
【0044】
アンテナ構造体の放射アンテナ素子のタイプの選択は、発明により限定されない。例として、アンテナ構造体は、以下のモノポールアンテナ、ダイポールアンテナ、折り畳みダイポールアンテナ、容量結合要素アンテナ、逆F型アンテナ、ループアンテナ、スロットアンテナのうちの1つであってよい。
【0045】
本発明は、本明細書の様々な実施形態と組み合わせて説明されている。しかし、開示された実施形態に対する他の変更は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の研究から、特許請求された発明を実施する際に当業者によって理解及び実行されることができる。説明及び特許請求の範囲において、用語「備える」は、他の要素及び段階を排除しない。不定冠詞「a」または「an」は、複数を排除しない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載されている複数の事項の機能を満たしてよい。特定の測定値が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの測定値の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。
【0046】
本発明及びその利点が詳細に説明されたが、添付の特許請求の範囲で定義されるように本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書で様々な変更、置換、及び代替が行われることができることが理解されるべきである。
【0047】
本発明は、特定の特徴及びそれらの実施形態に関連して説明されているが、本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変形及び組み合わせを行うことができることは明らかである。従って、本明細書及び図面は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の単なる例示と見なされるべきであり、本発明の範囲内に含まれる任意のすべての変形、組み合わせ、又は均等物を網羅すると想定される。