(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】光ファイバの融着接続機、及び、光ファイバの融着接続方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/255 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
G02B6/255
(21)【出願番号】P 2021503675
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2020009854
(87)【国際公開番号】W WO2020179927
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2019041400
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110309
【氏名又は名称】住友電工オプティフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌平
(72)【発明者】
【氏名】高柳 寛
(72)【発明者】
【氏名】漁野 優太
(72)【発明者】
【氏名】遊佐 英明
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】韓国特許第10-1181895(KR,B1)
【文献】特開2010-261730(JP,A)
【文献】特開平08-021923(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0378102(US,A1)
【文献】特開昭58-220112(JP,A)
【文献】米国特許第05677973(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
G02B 6/255
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/36-6/40
G02B 6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の光ファイバを互いに融着接続するための融着接続機であって、
前記一対の光ファイバの少なくとも1本の光ファイバの側面に向けて第1波長の光及び第2波長の光を照射可能な照射部と、
前記少なくとも1本の光ファイバを透過した前記第1波長の光及び前記第2波長の光を受光可能な受光部と、
前記受光部で受光した前記第1波長の光に基づく第1輝度情報から前記少なくとも1本の光ファイバの第1特徴点データを抽出可能であると共に、前記受光部で受光した前記第2波長の光に基づく第2輝度情報から前記少なくとも1本の光ファイバの第2特徴点データを抽出可能である処理部と、
前記処理部で抽出した前記第1特徴点データ及び前記第2特徴点データが所定の範囲内であるか否かを判定する判定部と、
前記第1特徴点データ又は前記第2特徴点データが所定の範囲内であると判定された場合に、前記所定の範囲内にある特徴点データが抽出された前記第1輝度情報または前記第2輝度情報に基づいて前記一対の光ファイバの少なくとも一方を移動させて前記一対の光ファイバの互いの軸が所定の位置関係となるように配置する駆動部と、を備え、
前記処理部は、前記判定部によって前記第1特徴点データが前記所定の範囲内であると判定された場合に、前記第1特徴点データを抽出し、
前記駆動部は、前記第1特徴点データを用いて前記一対の光ファイバの少なくとも一方を移動させて前記一対の光ファイバの互いの軸が所定の位置関係となるように配置し、
前記処理部は、前記判定部によって前記第1特徴点データが前記所定の範囲内にないと判定された場合に、前記第2特徴点データを抽出
し、前記駆動部は、前記第2特徴点データを用いて前記一対の光ファイバの少なくとも一方を移動させて前記一対の光ファイバの互いの軸が所定の位置関係となるように配置する、光ファイバの融着接続機。
【請求項2】
前記照射部は、前記一対の光ファイバの側面に向けて前記第1波長の光及び前記第2波長の光を照射可能であり、
前記受光部は、前記一対の光ファイバを透過した前記第1波長の光及び前記第2波長の光を受光可能であり、
前記処理部は、前記受光部で受光した前記第1波長の光に基づく第1輝度情報から前記一対の光ファイバの第1特徴点データを抽出可能であると共に、前記受光部で受光した前記第2波長の光に基づく第2輝度情報から前記一対の光ファイバの第2特徴点データを抽出可能であり、
前記判定部は、前記処理部で抽出した、前記一対の光ファイバの少なくとも一方についての前記第1特徴点データ及び前記第2特徴点データが所定の範囲内であるか否かを判定する、
請求項1に記載の光ファイバの融着接続機。
【請求項3】
前記照射部は、前記第1波長の光及び前記第2波長の光を含む光を一括して照射可能な光源である、
請求項1または請求項2に記載の光ファイバの融着接続機。
【請求項4】
前記受光部は、前記第1波長の光及び前記第2波長の光を分離して受光可能である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光ファイバの融着接続機。
【請求項5】
前記照射部は、前記第1波長の光を照射可能な第1光源と前記第2波長の光を照射可能な第2光源とを有し、前記第1光源及び第2光源を切替え可能である、
請求項1または請求項2に記載の光ファイバの融着接続機。
【請求項6】
前記第1特徴点データ及び前記第2特徴点データは、
光ファイバを透過した照射光が前記受光部の撮像素子に所定の輝度以上で投影される領域である明部の間隔である明部間隔と、
光ファイバを透過した照射光が前記受光部の撮像素子に所定の輝度以下で投影される、又は、投影されない領域である暗部の端同士の間隔である暗部端間隔と、
前記明部間隔
と前記暗部端間隔
との比と、
前記明部間隔、前記暗部端間隔及び前記比に基づいて得られる判定用の特徴点データと、の少なくとも何れかを含む、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光ファイバの融着接続機。
【請求項7】
前記第1特徴点データ及び前記第2特徴点データは、
明部間隔と暗部端間隔とに基づいて換算されたコア直径観測値とファイバ外径観測値との比と、予め測定されたコア直径実測値とファイバ外径実測値との比との比率を含み、
前記明部間隔は、光ファイバを透過した照射光が前記受光部の撮像素子に所定の輝度以上で投影される領域である明部の間隔であり、
前記暗部端間隔は、光ファイバを透過した照射光が前記受光部の撮像素子に所定の輝度以下で投影される、又は、投影されない領域である暗部の端同士の間隔である、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光ファイバの融着接続機。
【請求項8】
前記第2波長の光は、波長560nm以上で且つ波長600nm以下又は波長700nm以上で且つ波長820nm以下の何れかの範囲内の光である、
請求項1から
請求項7のいずれか1項に記載の光ファイバの融着接続機。
【請求項9】
異なる2つの波長の光を照射可能な照射部と前記異なる2つの波長の光を受光可能な受光部と制御部とを備えた融着接続機により、一対の光ファイバを互いに融着接続するための融着接続方法であって、
前記一対の光ファイバの少なくとも1本の光ファイバの側面に向けて第1波長の光を前記照射部が照射する工程と、
前記少なくとも1本の光ファイバを透過した前記第1波長の光を前記受光部が受光する工程と、
前記受光部で受光した前記第1波長の光に基づく第1輝度情報から前記制御部が前記少なくとも1本の光ファイバの第1特徴点データを抽出する工程と、
前記第1特徴点データが所定の範囲内であるか否かを前記制御部が判定する工程と、
前記少なくとも1本の光ファイバの側面に向けて第2波長の光を前記照射部が照射する工程と、
前記少なくとも1本の光ファイバを透過した前記第2波長の光を前記受光部が受光する工程と、
前記少なくとも1本の光ファイバの前記第1特徴点データが前記所定の範囲内にないと判定された場合に、前記受光部で受光した前記第2波長の光に基づく前記少なくとも1本の光ファイバの第2輝度情報から前記制御部が前記少なくとも1本の光ファイバの第2特徴点データを抽出する工程と、
前記第2特徴点データが所定の範囲内であるか否かを前記制御部が判定する工程と、
前記第1特徴点データ又は前記第2特徴点データが前記所定の範囲内であると判定された場合に、前記所定の範囲内にあると判定された特徴点データが抽出された前記第1輝度情報又は前記第2輝度情報に基づいて前記一対の光ファイバの少なくとも一方を移動させて前記一対の光ファイバの互いの軸が所定の位置関係となるように配置する工程と、
前記軸が所定の位置関係に配置された前記一対の光ファイバ同士を融着接続する工程と、を備え、
前記第1特徴点データが前記所定の範囲内であると判定された場合に、前記第1特徴点データを抽出し、前記第1特徴点データを用いて前記一対の光ファイバの少なくとも一方を移動させて前記一対の光ファイバの互いの軸が所定の位置関係となるように配置し、
前記第1特徴点データが前記所定の範囲内にないと判定された場合に、前記第2特徴点データを抽出し、前記第2特徴点データを用いて前記一対の光ファイバの少なくとも一方を移動させて前記一対の光ファイバの互いの軸が所定の位置関係となるように配置する、
光ファイバの融着接続方法。
【請求項10】
前記第1波長の光を照射する工程、前記第1波長の光を受光する工程、前記第1特徴点データを抽出する工程、前記第1特徴点データを判定する工程、前記第2波長の光を照射する工程、前記第2波長の光を受光する工程、前記第2特徴点データを抽出する工程、前記第2特徴点データを判定する工程は、前記一対の光ファイバそれぞれに対して行われる、
請求項
9に記載の光ファイバの融着接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバの融着接続機、及び、光ファイバの融着接続方法に関する。
本出願は、2019年3月7日出願の日本出願第2019-041400号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2は、光ファイバの融着接続機を開示する。これらの融着接続機では、融着接続する光ファイバの種類を判別し、判別された光ファイバの種類に適した接続条件で融着接続が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-21923号公報
【文献】特開2002-169050号公報
【文献】特開2010-261730号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様は、一対の光ファイバを互いに融着接続するための融着接続機に関する。この融着接続機は、照射部、受光部、処理部、判定部、及び、駆動部を備える。照射部は、一対の光ファイバの少なくとも1本の光ファイバの側面に向けて第1波長の光及び第2波長の光を照射可能である。受光部は、少なくとも1本の光ファイバを透過した第1波長の光及び第2波長の光を受光可能である。処理部は、受光部で受光した第1波長の光に基づく第1輝度情報から少なくとも1本の光ファイバの第1特徴点データを抽出可能であると共に、受光部で受光した第2波長の光に基づく第2輝度情報から少なくとも1本の光ファイバの第2特徴点データを抽出可能である。判定部は、処理部で抽出した第1特徴点データ及び第2特徴点データが所定の範囲内であるか否かを判定する。駆動部は、第1特徴点データ又は第2特徴点データが所定の範囲内であると判定された場合に、所定の範囲内にある特徴点データが抽出された第1輝度情報または第2輝度情報に基づいて一対の光ファイバの少なくとも一方を移動させて一対の光ファイバの互いの軸が所定の位置関係となるように配置する。この融着接続機では、処理部は、判定部によって第1特徴点データが所定の範囲内であると判定された場合に、第1特徴点データを抽出し、判定部によって第1特徴点データが所定の範囲内にないと判定された場合に、第2特徴点データを抽出する。
【0005】
本開示の別態様は、異なる2つの波長の光を照射可能な照射部と異なる2つの波長の光を受光可能な受光部と制御部とを備えた融着接続機により、一対の光ファイバを互いに融着接続するための融着接続方法に関する。この光ファイバの融着接続方法は、一対の光ファイバの少なくとも1本の光ファイバの側面に向けて第1波長の光を照射部が照射する工程と、少なくとも1本の光ファイバを透過した第1波長の光を受光部が受光する工程と、受光部で受光した第1波長の光に基づく第1輝度情報から制御部が少なくとも1本の光ファイバの第1特徴点データを抽出する工程と、第1特徴点データが所定の範囲内であるか否かを制御部が判定する工程と、少なくとも1本の光ファイバの側面に向けて第2波長の光を照射部が照射する工程と、少なくとも1本の光ファイバを透過した第2波長の光を受光部が受光する工程と、少なくとも1本の光ファイバの第1特徴点データが所定の範囲内にないと判定された場合に、受光部で受光した第2波長の光に基づく少なくとも1本の光ファイバの第2輝度情報から制御部が少なくとも1本の光ファイバの第2特徴点データを抽出する工程と、第2特徴点データが所定の範囲内であるか否かを制御部が判定する工程と、第1特徴点データ又は第2特徴点データが所定の範囲内であると判定された場合に、所定の範囲内にあると判定された特徴点データが抽出された第1輝度情報又は第2輝度情報に基づいて一対の光ファイバの少なくとも一方を移動させて一対の光ファイバの互いの軸が所定の位置関係となるように配置する工程と、軸が所定の位置関係に配置された一対の光ファイバ同士を融着接続する工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本開示の一態様にかかる融着接続機の概要を説明するための図である。
【
図2】
図2は、融着接続機で取得する輝度プロファイルの一例を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、従来の融着接続機での焦点調整方法を説明するための図である。
【
図3B】
図3Bは、本開示の一態様にかかる融着接続機での焦点調整方法を説明するための図である。
【
図4A】
図4Aは、照射する光の波長を変更した場合の光ファイバの輝度プロファイルを示す図であって、照射する光の波長が560nm未満である場合の輝度プロファイルを示す。
【
図4B】
図4Bは、照射する光の波長を変更した場合の光ファイバの輝度プロファイルを示す図であって、照射する光の波長が560nm以上である場合の輝度プロファイルを示す。
【
図5】
図5は、本開示の一態様に係る焦点調整方法での照射光波長と、特徴点データと設計値の比率との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、
図1に示す融着接続機の制御部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1及び2に記載された融着接続機では、光ファイバの側面に光を照射しその透過光から光ファイバの輝度プロファイルを取得し、これに基づいて光ファイバのコア部を検出している。融着接続機では、この輝度プロファイルを取得する際、透過光を受光する撮像装置の位置を駆動モータで調整し、透過光の焦点位置を調整する。しかしながら、駆動モータによる焦点位置の調整に時間がかかることがあり、光ファイバのコア部の検出を高速化することが望まれていた。
【0008】
[本開示の効果]
本開示によれば、光ファイバのコア部の検出を高速化することができる。
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。本開示の一実施形態に係る融着接続機は、一対の光ファイバを互いに融着接続するための融着接続機である。この融着接続機は、照射部、受光部、処理部、判定部、及び、駆動部を備える。照射部は、一対の光ファイバの少なくとも1本の光ファイバの側面に向けて第1波長の光及び第2波長の光を照射可能である。受光部は、少なくとも1本の光ファイバを透過した第1波長の光及び第2波長の光を受光可能である。処理部は、受光部で受光した第1波長の光に基づく第1輝度情報から少なくとも1本の光ファイバの第1特徴点データを抽出可能であると共に、受光部で受光した第2波長の光に基づく第2輝度情報から少なくとも1本の光ファイバの第2特徴点データを抽出可能である。判定部は、処理部で抽出した第1特徴点データ及び第2特徴点データが所定の範囲内であるか否かを判定する。駆動部は、第1特徴点データ又は第2特徴点データが所定の範囲内であると判定された場合に、所定の範囲内にある特徴点データが抽出された第1輝度情報または第2輝度情報に基づいて一対の光ファイバの少なくとも一方を移動させて一対の光ファイバの互いの軸が所定の位置関係となるように配置する。この融着接続機では、処理部は、判定部によって第1特徴点データが所定の範囲内であると判定された場合に、第1特徴点データを抽出し、判定部によって第1特徴点データが所定の範囲内にないと判定された場合に、第2特徴点データを抽出する。
【0010】
従来は、融着接続機の受光部のレンズ位置を変更することで接続対象の光ファイバの特徴点データ(例えば、光ファイバの外径中心位置など)を抽出し、これにより焦点位置が合っているか否かを判断していた。これに対し、上記実施形態に係る融着接続機は、接続対象の一対の光ファイバの少なくとも1本の光ファイバに対して第1波長の光及び第2波長の光を照射可能で且つ受光可能に構成されており、波長による屈折率差を利用し、接続対象の光ファイバに照射する光の波長を変化させることで焦点位置を変えられるようになっている。その結果、本実施形態に係る融着接続機によれば、照射する光や受光する光の波長を変更するだけで焦点調整が行えることになり、光ファイバの位置検出を高速化することが可能となる。更に、上述した実施形態によれば、焦点調整のために高精度な駆動モータを使用しなくてもよくなるため、融着接続機の長期信頼性を向上させることや、受光部における撮像装置等を簡素化してコスト低減を図ることも可能となる。光ファイバの位置検出の高速化に影響を与えないようであれば、レンズ位置調整用のモータと上述した波長変化による調整機構とを併存した融着接続機であってもよい。
【0011】
一実施形態として、照射部は、一対の光ファイバの側面に向けて第1波長の光及び第2波長の光を照射可能であってもよく、受光部は、一対の光ファイバを透過した第1波長の光及び第2波長の光を受光可能であってもよい。処理部は、受光部で受光した第1波長の光に基づく第1輝度情報から一対の光ファイバの第1特徴点データを抽出可能であると共に、受光部で受光した第2波長の光に基づく第2輝度情報から一対の光ファイバの第2特徴点データを抽出可能であってもよい。判定部は、処理部で抽出した、一対の光ファイバの少なくとも一方についての第1特徴点データ及び第2特徴点データが所定の範囲内であるか否かを判定してもよい。
【0012】
一実施形態として、照射部は、第1波長の光及び第2波長の光を含む光を一括して照射可能な光源であってもよい。この態様によれば、照射部の構成を簡素化することができる。この場合において、受光部は、第1波長の光及び第2波長の光を分離して受光可能であってもよい。また、一実施形態として、照射部は、第1波長の光を照射可能な第1光源と第2波長の光を照射可能な第2光源とを有してもよく、第1光源及び第2光源を切替え可能であってもよい。この態様によれば、各光源を簡易なものとすることで故障を減らし、長期信頼性を向上することができる。
【0013】
一実施形態として、第1特徴点データ及び第2特徴点データは、(a)光ファイバを透過した照射光が受光部の撮像素子に所定の輝度以上で投影される領域である明部の間隔である明部間隔、(b)光ファイバを透過した照射光が受光部の撮像素子に所定の輝度以下で投影される、又は、投影されない領域である暗部の端同士の間隔である暗部端間隔、(c)明部間隔に対する暗部端間隔の比、および、(d)明部間隔、暗部端間隔及び上記の比に基づいて得られる判定用の特徴点データ、の少なくとも何れかを含んでもよい。この態様によれば、光ファイバへ照射した光の焦点調整の処理を迅速に行うことが可能となる。
【0014】
一実施形態として、第2波長の光は、波長560nm以上で且つ波長600nm以下又は波長700nm以上で且つ波長820nm以下の何れかの範囲内の光であってもよい。本発明者らによれば、光ファイバの照射する光の波長が低波長(560nm未満)である場合、光ファイバの輝度プロファイルが乱れてしまい(
図4Aを参照)、光ファイバの輝度情報に基づく特徴点データ(例えば明部間隔)を正確に抽出することが難しくなることが分かってきている。このため、特徴点データをより正確に抽出するには、560nm以上の波長の光であることが好ましい(
図4A及び
図4Bを参照)。また、波長を変更しても光ファイバの輝度情報に基づく特徴点データ(例えば明部間隔)の変化が少ない範囲(波長600nmを超えて波長700nm未満)があることも分かってきている(例えば
図5参照)。そこで、光ファイバに照射する光波長を上述した実施形態の範囲に設定することにより、光ファイバの透過光を観察する際の焦点調整をより確実に行え、これにより、光ファイバの位置検出をより一層高速化することが可能となる。
【0015】
本開示の別の一実施形態に係る融着接続方法は、異なる2つの波長の光を照射可能な照射部と異なる2つの波長の光を受光可能な受光部と制御部とを備えた融着接続機により、一対の光ファイバを互いに融着接続するための融着接続方法である。この融着接続方法は、一対の光ファイバの少なくとも1本の光ファイバの側面に向けて第1波長の光を照射部が照射する工程と、少なくとも1本の光ファイバを透過した第1波長の光を受光部が受光する工程と、受光部で受光した第1波長の光に基づく第1輝度情報から制御部が少なくとも1本の光ファイバの第1特徴点データを抽出する工程と、第1特徴点データが所定の範囲内であるか否かを制御部が判定する工程と、少なくとも1本の光ファイバの側面に向けて第2波長の光を照射部が照射する工程と、少なくとも1本の光ファイバを透過した第2波長の光を受光部が受光する工程と、少なくとも1本の光ファイバの第1特徴点データが所定の範囲内にないと判定された場合に、受光部で受光した第2波長の光に基づく少なくとも1本の光ファイバの第2輝度情報から制御部が少なくとも1本の光ファイバの第2特徴点データを抽出する工程と、第2特徴点データが所定の範囲内であるか否かを制御部が判定する工程と、第1特徴点データ又は第2特徴点データが所定の範囲内であると判定された場合に、所定の範囲内にあると判定された特徴点データが抽出された第1輝度情報又は第2輝度情報に基づいて一対の光ファイバの少なくとも一方を移動させて一対の光ファイバの互いの軸が所定の位置関係となるように配置する工程と、軸が所定の位置関係に配置された一対の光ファイバ同士を融着接続する工程と、を備える。この方法によれば、上述した融着接続機と同様、複数の波長の光を用いて光ファイバの透過光の焦点調整を行うため、光ファイバの種類判別を高速化することができる。
【0016】
一実施形態として、上記の融着接続方法において、第1波長の光を照射する工程、第1波長の光を受光する工程、第1特徴点データを抽出する工程、第1特徴点データを判定する工程、第2波長の光を照射する工程、第2波長の光を受光する工程、第2特徴点データを抽出する工程、及び、第2特徴点データを判定する工程は、一対の光ファイバそれぞれに対して行われてもよい。
【0017】
[本発明の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る融着接続機及び融着接続方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
最初に、本実施形態に係る融着接続機の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本開示の一態様にかかる融着接続機の概要を説明するための図である。融着接続機1は、
図1に示すように、一対の光ファイバFを互いに融着接続するための融着接続機であり、V溝クランプ2、被覆クランプ3、一対の放電電極4、照射部5、受光部6、処理部7、判定部8、及び、駆動部9を備えている。処理部7、判定部8、及び駆動部9は、融着接続機1の制御を担う制御部10を構成する。
【0019】
V溝クランプ2及び被覆クランプ3は、融着接続する一対の光ファイバFをそれぞれ支持する部材である。各V溝クランプ2は、光ファイバFから被覆を除去しガラス部分を露出させた裸ファイブの部分を支持する。各被覆クランプ3は、光ファイバFのファイバ被覆のあるファイバ部分を保持する。これらのV溝クランプ2及び被覆クランプ3により、融着接続機1では、一対の光ファイバFの先端Faが互いに対向するように支持され、融着接続に供される。
【0020】
一対の放電電極4は、光ファイバが延びる方向と直交する方向に互いに対向して配置され、一対の光ファイバFの先端Fa同士を放電により融着接続させる装置である。融着接続機1では、後述する駆動部9を含む制御部10等により一対の光ファイバFの軸合わせを行った後、先端Fa同士を放電電極4により融着接続させる。一対の光ファイバFは、放電電極4の放電電流や放電時間等を制御することにより、光ファイバFの種類に合った融着条件で融着接続される。
【0021】
照射部5は、V溝クランプ2等に支持された光ファイバFの側面に向けて、異なる波長の光を照射可能な光照射装置である。照射部5は、例えば、互いに異なる第1波長の光及び第2波長の光を光ファイバFに対して照射する。照射部5は、波長可変部5aを備えており、制御部10等からの指示により、照射する光の波長をその都度、異ならせることができる。照射部5は、複数の異なる波長を含む光を一括して照射することができる光源(例えば、いわゆる白色光源)であってもよい。照射部5は、波長の異なる単体光源(例えばレーザやLED光源)を2種類以上備え、照射する単体光源を制御部10からの指示により切り替える構成であってもよい。照射部5から照射される第1波長の光としては、例えば波長560nm以上で且つ波長820nm以下の範囲内の光である。また、照射部5から照射される第2波長の光としては、好ましくは、波長560nm以上で且つ波長600nm以下又は波長700nm以上で且つ波長820nm以下の範囲内の、第1波長とは異なる波長の光である。
【0022】
受光部6は、照射部5から照射されて光ファイバFを透過した光を撮像素子により受光可能な受光装置であり、照射部5から照射された異なる波長の光の何れも受光可能なように構成されている。受光部6は、撮像素子を含む撮像装置やレンズを備えて構成されており、光ファイバFの透過光がレンズによって結像され、光ファイバFの輝度プロファイル(輝度情報)として、撮像装置等により取得される。受光部6は、照射部5が複数の異なる波長を含む光を一括して照射することができる光源である場合には、波長選択フィルタを備えてもよく、このフィルタにより、波長毎に光を受光してもよい。受光部6は、この取得した輝度プロファイルを処理部7に出力する。輝度プロファイルPの一例を
図2に示す。輝度プロファイルPでは、その中央部分に光ファイバを透過して集光された比較的輝度の高い領域(明部B)があり、その両側に輝度の低い(透過光量が少ない)暗部Dが生じる。受光部6では、受光した光の波長毎に微妙にその形状が異なる輝度プロファイルを取得する。
【0023】
処理部7は、受光部6で受光した所定の波長の光に基づく輝度プロファイルから当該光ファイバFの特徴点データを抽出する。即ち、処理部7は、受光部6で受光した異なる波長の光(透過光)の輝度プロファイル毎に、光ファイバFの特徴点データ(第1特徴点データ、第2特徴点データ等)を抽出する。ここで「抽出する」とは、輝度プロファイルデータから単に特徴点データを抜き出すことだけでなく、抜き出した特徴点データを更に加工して新たな特徴点データを作り出すことも含む。特徴点データとしては、例えば、明部間隔(db)、暗部端間隔(dd)、又は、明部間隔(db)と暗部端間隔(dd)の比(rd=db/dd)を例示することができる。明部間隔(db)、暗部端間隔(dd)、明部間隔(db)と暗部端間隔(dd)の比(rd=db/dd)は、それぞれ、その光ファイバにおける実構造である、コア直径、クラッド外径、コア直径とクラッド外径との比を反映するデータである。これら、明部間隔(db)、暗部端間隔(dd)、明部間隔と暗部端間隔の比(rd)から、予め求めた関係に基づいて、コア直径、クラッド外径、コア直径とクラッド外径の比に換算し、それらを判定用の特徴点データとして用いることができる。処理部7は、抽出した光ファイバの特徴点データ(上記判定用の特徴点データを含む)を判定部8に受け渡す。明部間隔(db)、暗部端間隔(dd)、明部間隔(db)と暗部端間隔(dd)の比(rd=db/dd)は、直接、実構造のコア直径やクラッド外径等が正確に測定されるものではなく、光ファイバ観察時に使用している光学系部品の配置、材料、構造、観察対象の光ファイバによるレンズ効果による影響が加味されたものとなるが、予めこれらのデータと、実際の光ファイバの構造測定結果との対応を調べておくことで換算することができる。必要に応じてこれらの換算を処理部7で行い、換算した特徴点データを判定部8に受け渡してもよい。
【0024】
判定部8は、処理部7で抽出した光ファイバFの各特徴点データが所定の範囲内であるか否かを判定する。判定部8では、例えば、光ファイバのコア直径観測値とクラッド外径観測値の比(rd)と、コア直径実測値とクラッド外径実測値から求めた比(rdr)、との比率(R=rd/rdr)を特徴点データとした場合、一例として、上記比率(R)が90%から110%の範囲を前記所定の範囲と設定することできる。この範囲は、光ファイバFを透過した光の受光における焦点位置が適正な状態となったことを判別するための目安となる範囲であり、経験的に求めることが可能である。所定の範囲は、光ファイバの種類等によって適宜、異なる範囲を設定することができる。逆に、予め上記比率(R)が90%から110%の範囲内となるような明部間隔(db)と暗部端間隔(dd)の比(db/dd)を求めておき、前記所定の範囲として、これらを直接設定してもよい。
【0025】
判定部8では、取得した光ファイバFのある特徴点データがこれらの所定の範囲内であるか否かの判定を行い、範囲内である場合には、当該特徴点データの元となる輝度プロファイルを用いて、光ファイバのコア部を検出し、光ファイバFの軸調整を行うように駆動部9に指示する。一方、判定部8は、取得した光ファイバFのある特徴点データがこれらの所定の範囲内でないと判定した場合には、判定に供した特徴点データ用の波長とは異なる波長の透過光の特徴点データの抽出を処理部7に指示する。その後、判定部8は、取得した光ファイバFの特徴点データが所定の範囲内となるまで、この処理を繰り返す。判定部8では、光ファイバFの特徴点データが所定の範囲内となった場合には、上記と同様に、その特徴点データの元となる輝度プロファイルを用いて、光ファイバFの位置検出を行い、光ファイバFの軸調整を行うように駆動部9に指示する。
【0026】
駆動部9は、少なくとも一つの特徴点データが所定の範囲内にあると判定部8で判定された場合に、その特徴点データの元の輝度プロファイル、例えば明部領域の端部位置や、暗部領域の端部位置などに基づいて、光ファイバの中心位置を検出し、所定の駆動機構により、少なくとも一方の光ファイバFを移動させて光ファイバの互いの軸を一致させる。駆動部9は、判定部8からの軸合わせ指示に基づいて、V溝クランプ2等に支持された光ファイバF同士の軸合わせを駆動機構に行わせる部分であり、より具体的には、光ファイバFを指示するV溝クランプ2や被覆クランプ3(若しくはこれらが載置された土台)を、駆動機構である駆動モータ等により平面方向(X方向またはY方向)に移動させて軸合わせを行う。
【0027】
このような構成を有する融着接続機1では、駆動部9により所定の位置に軸合わせされた光ファイバFの先端Fa同士が、放電電極4により融着接続される。上記の処理部7、判定部8、及び、駆動部9を含む制御部10は、物理的には、
図6に示すように、CPU10a、RAM10b、ROM10c、キーボード等の入力装置10d、半導体メモリ又はハードディスク等の補助記憶装置10e、及び、ディスプレイ等の出力装置10f等のハードウェアを備えるコンピュータを含むものとして構成される。制御部10は、RAM10b等のハードウェア上に取り込まれたプログラム等により、CPU10aの制御のもとでこれらハードウェアを動作させると共にRAM10b及び補助記憶装置10e等におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで、処理部7、判定部8及び駆動部9の上述した各機能を実現する。
【0028】
次に、
図3A及び
図3Bを参照して、本実施形態に係る融着接続機1と、従来の融着接続機101とでの焦点調整(コントラスト調整ともいう)の違いについて、説明する。まず、従来の融着接続機101での焦点調整について、
図3Aを参照して説明する。
図3Aに示すように、融着接続機101では、照射部105からの光L100がレンズ106aを介して、受光部106の撮像装置に入射する場合、不図示の駆動モータにより受光部106をレンズ106aに近づけたり離したりして、移動させる。これにより、従来の融着接続機101では、照射部105からの光L100の光ファイバFの透過光の焦点を調整している。
【0029】
一方、本実施形態に係る融着接続機1では、
図3Bに示すように、照射部5からの光L1(第1波長の光)がレンズ6aを介して受光部6の撮像装置に入射した場合、上述した処理部7及び判定部8での特徴点データの抽出や当該特徴点データが所定の範囲内であるか否かの判定を行い、抽出された特徴点データが所定の範囲内にない場合、焦点が合っていないと判定する。その場合、融着接続機1では、光L1とは異なる波長の光L2(第2波長の光)をレンズ6aを介して受光部6の撮像装置に入射させ、処理部7及び判定部8での特徴点データの抽出や当該特徴点データが所定の範囲内であるか否かの判定を行う。この特徴点データが所定の範囲内であると判定された場合には、光ファイバFを透過した光L2の焦点が受光部6の撮像装置に位置していると判断する。本実施形態に係る融着接続機1では、光L2の特徴点データが所定の範囲内にない場合、照射部5から光ファイバFの側面に照射する光の波長を変えて、光(第3波長の光)を照射し、上述した抽出や判定の処理を、特徴点データが処置の範囲内になるまで、繰り返す。
【0030】
このように、照射する光の波長を変えることで焦点位置を変えられるのは、波長による屈折率差に基づく。これは、光ファイバFを透過する光がレンズ6aを透過して結像する際、レンズ材料の分散が原因で、中心軸上において、結像箇所がずれるものである。本実施形態では、この原理を利用して、高精度な駆動モータを使用することなく、光ファイバFを透過した光の焦点位置を、照射光の波長を異ならせることにより調整できるようにしている。
【0031】
ここで、このような原理に基づく融着接続機1による融着接続方法について、説明する。融着接続機1による融着接続方法では、まず、光ファイバFの側面に向けて第1波長の光を照射部5から照射する。そして、光ファイバFを透過した第1波長の光を受光部6により受光する。続いて、受光部6で受光した第1波長の光に基づく第1輝度プロファイルから処理部7により、光ファイバFの第1特徴点データを抽出する。一例としては、まず明部間隔(db)と暗部端間隔(dd)を求め、これら明部間隔(db)と暗部端間隔(dd)をコア直径観測値とファイバ外径観測値に換算して、これらの比(rd)を求める。次に、これら明部間隔(db)と暗部端間隔(dd)の比(rd)と、別途、測定しておいたコア直径実測値とファイバ外径実測値の比(rdr)との比率(R1=rd/rdr)を計算する。この比率R1を第1特徴点データとする。このように抽出された第1特徴点データ(この場合は、比率R1)が所定の範囲内であるか否かを判定部8により判定する。例えば、所定の範囲としては、比率R1が0.9以上、1.1以下を設定する。制御部10では、第1特徴点データが所定の範囲内であると判定された場合、即ち0.9≦R1≦1.1の場合には、第1特徴点データが抽出された第1輝度情報に基づいて光ファイバの中心位置を検出し、これにより光ファイバの少なくとも一方を駆動部9により移動させて光ファイバの互いの軸を一致させる。
【0032】
一方、制御部10では、第1特徴点データが所定の範囲内にないと判定された場合に、光ファイバFの側面に向けて第1波長とは異なる第2波長の光を照射部5から照射する。そして、光ファイバFを透過した第2波長の光を受光部6により受光する。続いて、受光部6で受光した第2波長の光に基づく第2輝度プロファイルから処理部7により、光ファイバFの第2特徴点データを抽出する。例えば、前記した第1特徴点データを抽出する場合と同様の処理を第2輝度情報に基づいて行うことで、前記比率R1と同様に、第2波長の光に基づいた比率R2が抽出され、第2特徴点データとされる。このように抽出された第2特徴点データが所定の範囲内であるか否かを判定部8により判定する。ここでの所定の範囲としては、上記と同様、比率R2が0.9以上、1.1以下を設定する。抽出された第2特徴点データが所定の範囲内であると判定された場合、即ち0.9≦R2≦1.1の場合には、第2特徴点データが抽出された第2輝度情報に基づいて光ファイバのコア中心位置或いは外径中心位置を検出し、これにより光ファイバの少なくとも一方を駆動部9により移動させて光ファイバの互いの軸を一致させる。第2特徴点データも所定の範囲内にないと判定された場合には、第1波長及び第2波長と異なる波長の光(第3波長の光)を照射部5から照射して、上述した受光、処理、判定を繰り返す。第1特徴点データ、第2特徴点データ、更には第3、第4特徴点データ等は互いに同じ特徴に基づくもの(例えば、何れもがコア直径を代表するもの)であってもよく、互いに異なる特徴に基づくものであってもよい。
【0033】
一対の光ファイバFの軸が一致した後は、これら光ファイバF同士を放電電極4によって融着接続する。以上により、一対の光ファイバFが接続される。照射部5から照射される光が複数の波長の光を含み、この複合波長の光を一括して照射する場合には、受光部6では、波長選択フィルタ等により、設定された波長毎の光を受光し、他の波長の輝度プロファイルは一時的に記憶部に格納しておき、最初の波長の輝度プロファイルでの処理で焦点調整ができなかった場合等、必要な場合に、上述した処理に使用されるようにしてもよい。
【0034】
以上、本実施形態に係る融着接続機1では、接続対象の光ファイバFに対して異なる波長の光を照射可能で且つ受光可能に構成されており、波長による屈折率差を利用し、接続対象の光ファイバFに照射する光の波長を変化させることで焦点位置を変化させることが可能になっている。このため、従来は、融着接続機の受光部のレンズ位置を移動することで接続対象の光ファイバの特徴点データが所定の範囲となるように調整して焦点を合わせていたのに対し、融着接続機1では、照射する光や受光する光の波長を変更するだけで焦点調整が行えることになり、光ファイバのコア部の検出を高速化することが可能となる。更に、融着接続機1によれば、焦点調整のために高精度な駆動モータを使用しなくてもよくなるため、融着接続機1の長期信頼性を向上させることや、受光部6における撮像装置等を簡素化してコスト低減を図ることも可能となる。
【0035】
融着接続機1では、照射部5は、複数の波長を含む光を一括して照射可能な光源であってもよい。この態様によれば、照射部5の構成を簡素化することができる。この場合、受光部6は、異なる波長の光を波長選択フィルタ等により分離して受光する。
【0036】
融着接続機1では、照射部5は、異なる波長の光を照射可能な単体光源を複数備えてもよく、これら複数の単体光源を切替え可能であってもよい。この態様によれば、各光源を簡易なものとすることで故障を減らし、融着接続機1の長期信頼性を向上することができる。
【0037】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明してきたが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な実施形態に適用することができる。例えば上記の実施形態では、レンズ位置調整のための高精度な駆動モータを使用しない例を示したが、光ファイバFのコア部検出の高速化に影響を与えないようであれば、レンズ位置調整用のモータと上述した波長変化による調整機構とを併存した融着接続機であってもよい。例えば、駆動モータによりレンズ位置の粗調整を行った後、波長変化による焦点位置の調整を行うような融着接続機であってもよい。
【0038】
上述した実施形態では、照射部5から照射される異なる波長の光について、より詳細に限定してはいなかったが、光ファイバFを透過した光の輝度プロファイルに基づく特徴点データを明部間隔(bd)と暗部端間隔(dd)の比(rd)に基づく値とした場合に、2番目以降に照射する光(第2波長の光)が波長560nm以上で且つ波長600nm以下又は波長700nm以上で且つ波長820nm以下の何れかの範囲内の光であるように設定してもよい。これは、次のような理由による。まず、明部間隔(bd)と暗部端間隔(dd)の比(rd)が観測可能な波長領域として、低波長光源を使用すると、
図4Aに示すように、光ファイバFを光が透過する際に輝度プロファイルである画像プロファイルの一部(図示、点線で示した領域A内の輝度値)が乱れてしまい、その抽出(特に明部間隔(bd)の抽出)が困難若しくは正確にできなくなってしまうことがある。一方、
図4Bに示すように、光ファイバFを透過する光が波長560nm以上で且つ波長820nm以下の範囲内では、乱れることがなく、その抽出を行うことができるようになっている。
【0039】
波長600nmを超えて波長700nm未満の間の光を除外する理由について、
図5を参照して説明する。
図5は、波長を変化させた際の、コア直径観測値とファイバ外径観測値の比(rd)と、コア直径実測値とファイバ外径実測値の比(rdr)との比率(R=rd/rdr)の関係を示している。横軸は照射する光の波長を示し、縦軸は比率(R)を示したものである。
図5には、四角で示す複数のプロットを含む実測値との比率Rを示すグラフと、その近似式によるグラフの両方が示されている。照射する光の波長を変更することでこの比率(R)は一般に変化するものの、
図5に示すように、波長に対して比率(R)の値が略U字状のような軌跡を描くことがあり、波長を変更しても、波長600nmを超えて波長700nm未満の間ではこの比率(R)があまり変化しない。そこで、この600nmを超えて波長700nm未満の波長範囲の光の使用を第2番目以降の光の波長から予め外しておくことで、より高速な処理が可能となる。波長の上限値には特に限定はないものの、一般的に使用できる光源としての能力を考慮し、照射する光の波長の上限については、820nmとしている。以上により、2番目以降に照射する光の波長は上述した範囲内であることが好ましい。
【0040】
上述した実施形態では、融着接続機1は、一対の光ファイバFの中心位置を検出し、少なくとも一方の光ファイバFを移動させて一対の光ファイバFの互いの軸を一致させていたが、一対の光ファイバFの中心軸を意図的にずらした状態で接続してもよい。つまり、融着接続機1は、一対の光ファイバFの中心軸が所定の位置関係になるように配置して接続させればよい。
【符号の説明】
【0041】
1…融着接続機
2…V溝クランプ
3…被覆クランプ
4…放電電極
5…照射部
6…受光部
6a…レンズ
7…処理部
8…判定部
9…駆動部
10…制御部
B…明部
D…暗部
db…明部間隔
dd…暗部端間隔
F…光ファイバ
L1…第1波長の光
L2…第2波長の光
P…輝度プロファイル