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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】バリア素材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20240409BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20240409BHJP
   D21H 19/10 20060101ALI20240409BHJP
   D21H 19/82 20060101ALI20240409BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240409BHJP
   D21H 19/40 20060101ALI20240409BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
B32B27/10
D21H27/30 A
D21H19/10 Z
D21H19/82
B65D65/40 D
D21H19/40
C08L101/16
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022160624
(22)【出願日】2022-10-05
(62)【分割の表示】P 2019546749の分割
【原出願日】2018-10-03
(65)【公開番号】P2023011579
(43)【公開日】2023-01-24
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2017194208
(32)【優先日】2017-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】野田 貴治
(72)【発明者】
【氏名】福永 正明
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-124851(JP,A)
【文献】特開2000-052520(JP,A)
【文献】国際公開第2006/028000(WO,A1)
【文献】特開2007-076192(JP,A)
【文献】特開2012-192636(JP,A)
【文献】国際公開第2017/069127(WO,A1)
【文献】特開2002-178456(JP,A)
【文献】特開平10-024518(JP,A)
【文献】特開2003-291296(JP,A)
【文献】国際公開第2006/104114(WO,A1)
【文献】特開2014-009413(JP,A)
【文献】特開2009-184138(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107187689(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
C08J 7/04- 7/06
B65D 65/40
D21H 19/10,19/82,27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙上に、水蒸気バリア層、ガスバリア層をこの順に有する紙基材を有し、前記紙基材のガスバリア層上に樹脂層を有し、
前記水蒸気バリア層とガスバリア層が、塗工層であり、
前記樹脂層が、生分解性樹脂または生物由来樹脂を主成分とし、
温度23℃、相対湿度0%における酸素透過度が10ml/m・day・atm以下であり、且つ全体のバイオマス度が50%以上であることを特徴とするバリア素材。
【請求項2】
前記樹脂層が、生分解性樹脂を主成分とし、
前記生分解性樹脂が、ポリ乳酸、または、ポリブチレンサクシネートであることを特徴とする請求項1に記載のバリア素材。
【請求項3】
前記樹脂層が、生物由来樹脂を主成分とし、
前記生物由来樹脂が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、エステル化澱粉、酢酸セルロース、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、発酵法で得られるプロパンジオールと化石資源由来のテレフタル酸のポリエステル、大豆ポリオール、ポリヒドロキシアルカノエート、バイオポリエチレン、バイオポリエチレンテレフタレート、または、バイオポリウレタンであることを特徴とする請求項1に記載のバリア素材。
【請求項4】
前記樹脂層が塗工層であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のバリア素材。
【請求項5】
前記樹脂層が、ヒートシール性を有し、塗工量が2g/m以上20g/m以下であることを特徴とする請求項4に記載のバリア素材。
【請求項6】
バリア素材を1cm×1cm角の小片に切断し、試料濃度が2重量%となるように液温60℃の水酸化ナトリウムの2重量%水溶液に浸漬させ、Tappi標準離解機にて60分間離解処理したとき、パルプ繊維が分散するものであることを特徴とする請求項4または5に記載のバリア素材。
【請求項7】
前記ガスバリア層が、水溶性高分子および界面活性剤を含有し、
前記界面活性剤が、塗料のレベリング性を向上させる目的で配合されるものであることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のバリア素材。
【請求項8】
マイカを含有することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のバリア素材。
【請求項9】
前記水蒸気バリア層が、水蒸気バリア性樹脂および撥水剤を含有することを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のバリア素材。
【請求項10】
前記水蒸気バリア層の濡れ張力が10mN/m以上60mN/m以下であることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のバリア素材。
【請求項11】
温度40±0.5℃、相対湿度差90±2%における水蒸気透過度が100g/m・day以下であることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載のバリア素材。
【請求項12】
温度40±0.5℃、相対湿度差90±2%における水蒸気透過度が10g/m・day以下であることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載のバリア素材。
【請求項13】
下記(2)または(3)の条件を満たすことを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載のバリア素材
2)温度23℃、相対湿度0%における酸素透過度が3ml/m・day・atm以下、
(3)温度23℃、相対湿度85%における酸素透過度が3ml/m・day・atm以下。
【請求項14】
前記バイオマス度が75%以上であることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載のバリア素材。
【請求項15】
前記紙基材の坪量が、30g/m以上150g/m以下であることを特徴とする請求項1~14のいずれかに記載のバリア素材。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載のバリア素材を使用した包装材料。
【請求項17】
請求項1~15のいずれかに記載のバリア素材を使用した袋。
【請求項18】
請求項1~15のいずれかに記載のバリア素材を使用した紙器。
【請求項19】
請求項1~15のいずれかに記載のバリア素材を使用した段ボール箱。
【請求項20】
請求項1~15のいずれかに記載のバリア素材を使用したカップ。
【請求項21】
請求項1~15のいずれかに記載のバリア素材を使用した軟包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高バイオマス度でCO排出量が少なく、さらには、生分解性を有し、優れたガスバリア性と水蒸気バリア性を併せ持つバリア素材であり、特に食品などの包装材、袋、紙器、段ボール箱、カップなど、包装用途に好適に用いることのできるバリア素材に関する。
【背景技術】
【0002】
紙製の材料、特に紙製の包装材料にガスバリア性(特に、酸素バリア性)を付与することは、包装される各種製品をガスによる劣化、例えば酸素による酸化などから守るために重要である。
従来から、紙製の包装材料へのガスバリア性の付与には、紙基材上にガスバリア層として、アルミニウム等の金属からなる金属箔や金属蒸着フィルム、ポリビニルアルコールやエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等の樹脂フィルム、あるいはこれらの樹脂をコーティングしたフィルム、さらに酸化珪素や酸化アルミニウム等の無機酸化物を蒸着したセラミック蒸着フィルム等を紙基材に押し出しラミネートする、または貼合する方法が主に用いられてきた。
上記以外のガスバリア性を付与した紙製の包装材料としては、水溶性高分子と無機層状化合物からなるガスバリア層を有する紙製のガスバリア材料(特許文献1、2)、被覆層上に特定のビニルアルコール系重合体からなるバリア層を設けた紙製のガスバリア材料(特許文献2、3)などが開示されている。
【0003】
また、紙製の包装材料に耐湿性(水蒸気バリア性)を付与することも、包装される各種製品を湿気(水蒸気)による劣化から守るために重要である。
紙製の包装材料への水蒸気バリア性の付与として、紙基材上に水蒸気バリア性に優れる樹脂フィルム、あるいはこれらの水蒸気バリア性に優れる樹脂をコーティングしたフィルム等を紙基材に押し出しラミネートする、または貼合する方法が主に用いられてきた。
これらの方法以外の水蒸気バリア性を付与した紙製の包装材料としては、合成樹脂ラテックス、ワックスおよび無機微粒子からなる防湿層を有する包装用紙(特許文献4)が開示されている。
【0004】
さらに、紙製の包装材料にガスバリア性と水蒸気バリア性の両方を付与した包装材料としては、紙基材にガスバリア性を有する樹脂と水蒸気バリア性を有する樹脂をラミネートした包装材料が知られている。
【0005】
一方で近年、地球温暖化防止のため、温室効果ガスの排出を削減する動きがあり、包装材料においても、石油由来の原料から生物由来の原料への変更が模索されている。また、世界中で包装廃棄物の問題がクローズアップされている。例えば、欧米やアジアなどでは、廃棄物を焼却処理をせず、土中に埋没あるいは野積みされて放棄されることがあり、そのため、包装材料中の石油由来の成分が自然界で分解されずマイクロプラスチックとなり、雨等により河川を通じて海洋に流れ出て、海洋汚染を引き起こすことが問題となっている。このような状況から、環境中で分解される包装材料が求められている。すなわち、包装材料として、石油由来ではなく生物由来(バイオマス由来)であり、さらに生分解性を有する包装材料が求められている。
ガスバリア性を有する紙製の包装材料において、紙は、主成分であるパルプが生物由来の材料である。しかし、紙以外のバリアフィルム、ラミネート層等に使用される樹脂の多くは石油由来である。
近年、環境への付加を軽減させるために、紙以外についても生物由来の材料を使用したバリア性を有する包装材料として、例えば、特許文献5には、紙コア層、バリア層および熱可塑性樹脂層を含む積層包装材料であって、熱可塑性樹脂層が、植物原料プラスチックを含む食品用積層包装材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-184138号公報
【文献】特開2003-094574号公報
【文献】特許第5331265号公報
【文献】特開2005-162213号公報
【文献】特開2008-105709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、紙基材にガスバリア性を有する樹脂と水蒸気バリア性を有する樹脂をラミネートや貼合した包装材料は、ラミネート可能な樹脂の種類などに制限があるため、様々な要求品質に対応できないといった問題があった。
一方、紙基材にガスバリア性を有する樹脂、水蒸気バリア性を有する樹脂をコーティングすることによってガスバリア性と水蒸気バリア性とを付与した包装材料は、使用できる樹脂の種類などの制限が少ないため、様々な要求品質への対応は可能になる。しかしながら、ガスバリア性、水蒸気バリア性の両方を付与した包装材料、例えば、特許文献1あるいは特許文献2のガスバリア性を有する包装材料の上に、特許文献4の防湿層を設けた場合、良好な水蒸気バリア性は得られるもののガスバリア性が得られなくなる問題があった。また、特許文献4の水蒸気バリア層を有する防湿紙の上に、特許文献1あるいは特許文献2のガスバリア層を設けた場合においても、十分なガスバリア性と水蒸気バリア性の両立を得ることができなかった。
【0008】
また、従来、バリア性を有する素材としては、石油由来の樹脂しか存在しなかった。そのため、バイオマス度の高いバリア素材は、生物由来である紙基材に、ガスバリア性を有する石油由来の樹脂や水蒸気バリア性を有する石油由来の樹脂を押し出しラミネート、ドライラミネートにより積層するなどして製造されていた。
しかし、使用する樹脂が石油由来であると、バイオマス度の向上やCO排出量の抑制に限界があると共に、樹脂部分は分解せずに環境中に残留するという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、高バイオマス度でCO排出量が少なく、さらには、生分解性を有し、優れたガスバリア性と水蒸気バリア性を併せ持つバリア素材であり、特に食品などの包装材、袋、紙器、段ボール箱、カップなど、包装用途に好適に用いられるバリア素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の〔1〕~〔22〕を提供するものである。
〔1〕温度23℃、相対湿度0%における酸素透過度が10ml/m・day・atm以下であり、且つ全体のバイオマス度が50%以上であることを特徴とするバリア素材。
〔2〕前記バリア素材が、基材の少なくとも一方の面に、生分解性樹脂を主成分とする樹脂層を有することを特徴とする〔1〕に記載のバリア素材。
〔3〕前記生分解性樹脂が、ポリ乳酸、または、ポリブチレンサクシネートであることを特徴とする〔2〕に記載のバリア素材。
〔4〕前記バリア素材が、基材の少なくとも一方の面に、生物由来樹脂を主成分とする樹脂層を有することを特徴とする〔1〕に記載のバリア素材。
〔5〕前記バリア素材が、基材の少なくとも一方の面に、塗工層である樹脂層を有することを特徴とする〔1〕に記載のバリア素材。
〔6〕前記バリア素材が、マイカを含有することを特徴とする〔1〕に記載のバリア素材。
〔7〕前記基材が、紙基材であることを特徴とする〔2〕~〔6〕のいずれかに記載のバリア素材。
〔8〕前記紙基材が、基紙上にガスバリア層を有することを特徴とする〔7〕に記載のバリア素材。
〔9〕前記紙基材が、基紙上に水蒸気バリア層、ガスバリア層をこの順に有することを特徴とする〔7〕または〔8〕に記載のバリア素材。
〔10〕温度40±0.5℃、相対湿度差90±2%における水蒸気透過度が100g/m・day以下であることを特徴とする〔1〕~〔9〕のいずれかに記載のバリア素材。
〔11〕温度40±0.5℃、相対湿度差90±2%における水蒸気透過度が10g/m・day以下であることを特徴とする〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のバリア素材。
〔12〕下記(1)~(3)の条件を満たすことを特徴とする〔1〕~〔11〕のいずれかに記載のバリア素材:
(1)温度40±0.5℃、相対湿度差90±2%における水蒸気透過度が3.5g/m・day以下、
(2)温度23℃、相対湿度0%における酸素透過度が3ml/m・day・atm以下、
(3)温度23℃、相対湿度85%における酸素透過度が3ml/m・day・atm以下。
〔13〕前記ガスバリア層が水溶性高分子および界面活性剤を含有することを特徴とする〔8〕または〔9〕に記載のバリア素材。
〔14〕前記水蒸気バリア層が水蒸気バリア性樹脂および撥水剤を含有することを特徴とする〔9〕に記載のバリア素材。
〔15〕前記水蒸気バリア層が水蒸気バリア性樹脂および撥水剤を含有し、且つ前記ガスバリア層が水溶性高分子および界面活性剤を含有することを特徴とする〔9〕に記載のバリア素材。
〔16〕前記紙基材の坪量が、30g/m以上150g/m以下であることを特徴とする〔7〕~〔15〕のいずれかに記載のバリア素材。
〔17〕〔1〕~〔16〕のいずれかに記載のバリア素材を使用した包装材料。
〔18〕〔1〕~〔16〕のいずれかに記載のバリア素材を使用した袋。
〔19〕〔1〕~〔16〕のいずれかに記載のバリア素材を使用した紙器。
〔20〕〔1〕~〔16〕のいずれかに記載のバリア素材を使用した段ボール箱。
〔21〕〔1〕~〔16〕のいずれかに記載のバリア素材を使用したカップ。
〔22〕〔1〕~〔16〕のいずれかに記載のバリア素材を使用した軟包装材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れたガスバリア性と水蒸気バリア性を併せ持つバリア素材を提供することができる。さらに、本発明のバリア素材は、バイオマス度が高いため、特に包装材料に使用した際の製造から廃棄までの間におけるCO排出量を低減させることができ、地球温暖化防止に貢献できると共に、生分解性を付与することにより、環境中で分解されるため、マイクロプラスチックの残留防止ができる。また、原料中の再生可能材料の比率が高く、継続的な資源の活用ができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、温度23℃、相対湿度0%における酸素透過度が10ml/m・day・atm以下であり、且つ全体のバイオマス度が50%以上であるバリア素材に関する。
ここで、本発明において、「バイオマス度」とは、石油由来の原料と、生物由来(バイオマス由来)の原料との混合比率を表す指標であり、バリア素材中の生物由来の原料の重量比により決定され、下記式で表される。
バイオマス度(%)=生物由来原料の乾燥重量(g)/バリア素材の乾燥重量(g)×100
【0013】
本発明のバリア素材は、バイオマス度が70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、85%以上であることが一層好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
さらに、本発明のバリア素材は、温度40±0.5℃、相対湿度差90±2%における水蒸気透過度が100g/m・day以下とすることができる。この水蒸気透過度は、30g/m・day以下であることが好ましく、10g/m・day以下であることがより好ましく、3.5g/m・day以下であることがさらに好ましい。
また、本発明のバリア素材は、温度23℃、相対湿度0%における酸素透過度が5ml/m・day・atm以下とすることができる。この乾燥下での酸素透過度は、3ml/m・day・atm以下であることが好ましく、1.5ml/m・day・atm以下であることがより好ましい。
また、本発明のバリア素材は、温度23℃、相対湿度85%における酸素透過度が50ml/m・day・atm以下とすることができる。この高湿度下での酸素透過度は、30ml/m・day・atm以下が好ましく、3ml/m・day・atm以下であることがより好ましい。
【0014】
本発明のバリア素材は、基材の少なくとも一方の面に、生分解性樹脂を主成分とする樹脂層を有することが好ましい。基材としては、バリア素材全体としてのバイオマス度を高くするために、生物由来樹脂からなるフィルム、または、紙基材を好適に用いることができる。本発明のバリア素材は、高いバリア性を発揮するために、基紙上に、ガスバリア層を有する紙製バリア原紙を紙基材とすることが好ましく、基紙上に、水蒸気バリア層、ガスバリア層を有する紙製バリア原紙を紙基材とすることがより好ましく、基紙上に、水蒸気バリア層、ガスバリア層をこの順に有する紙製バリア原紙を紙基材とすることがさらに好ましい。樹脂層は、紙製バリア原紙の両面に設けることもできるが、空気中の水分などによる水蒸気バリア層やガスバリア層への影響(劣化)を防ぐため、少なくともこれらのバリア層上に有することが好ましい。
【0015】
基紙上に、水蒸気バリア層、ガスバリア層を有する紙製バリア原紙、特に水蒸気バリア層、ガスバリア層をこの順に有する紙製バリア原紙が優れた水蒸気バリア性およびガスバリア性を併せ持つ理由は次のように推測される。
ガスバリア層に用いられるガスバリア性を有する樹脂としては下記に例示するように水溶性高分子または水分散性樹脂(以下、併せて水系樹脂ということがある。)が一般的であり、基紙上にガスバリア層、水蒸気バリア層をこの順に設けた場合、基紙中の水分や基紙を経由して浸透する空気中の水分などにより、水系樹脂を含有するガスバリア層が劣化しやすい。一方、基紙上に、耐水性の良好な樹脂を含有する水蒸気バリア層、ガスバリア層をこの順に有することにより、水蒸気バリア層が基紙中の水分などによるガスバリア層への影響(劣化)を効果的に抑制することができる。このため、特に水蒸気バリア層、ガスバリア層をこの順に有する紙製バリア原紙は、良好な水蒸気バリア性およびガスバリア性を有する。
【0016】
本発明のバリア素材は、具体的には、
(1)温度40±0.5℃、相対湿度差90±2%における水蒸気透過度が3.5g/m・day以下
(2)温度23℃、相対湿度0%における酸素透過度が3ml/m・day・atm以下
(3)温度23℃、相対湿度85%における酸素透過度が3ml/m・day・atm以下
の条件を満たすことが好ましく、
(1-2)温度40±0.5℃、相対湿度差90±2%における水蒸気透過度が2g/m・day以下
(2-2)温度23℃、相対湿度0%における酸素透過度が2ml/m・day・atm以下
(3-2)温度23℃、相対湿度85%における酸素透過度が2ml/m・day・atm以下
の条件を満たすことがより好ましい。
【0017】
(基材)
基材としては、バリア素材のバイオマス度を高くするために、生物由来樹脂からなるフィルム、または、紙基材を好適に利用することができる。本発明においては、紙基材が好ましい。
生物由来樹脂とは、原料として再生可能な有機資源由来の物質を含み、化学的または生物学的に合成することにより得られる、数平均分子量(Mn)1,000以上の高分子材料をいう。
また、有機資源には生きている動植物、収穫された農水産・林産物、生物の遺骸などが含まれ、具体例としては以下のものが挙げられる。
廃棄物系有機資源 :食物廃棄物、家畜排泄物、建築廃材、古紙など。
未利用系有機資源 :農作物非食用部、林地残材など。
資源穀物系有機資源:エネルギー源や、製品の原料を目的として栽培される植物。
新作物系有機資源 :有機資源生産に適した、海洋植物や、遺伝子組み換え植物。
このような生物由来樹脂として、具体的には、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸、エステル化澱粉、酢酸セルロース、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、発酵法で得られるプロパンジオールと化石資源由来のテレフタル酸のポリエステル(PTT)、大豆ポリオール、ポリヒドロキシアルカノエート、バイオポリエチレン、バイオポリエチレンテレフタレート、バイオポリウレタン等が挙げられる。
【0018】
(紙基材)
本発明において紙基材とは、主としてパルプからなるシート(以下、「基紙」ともいう。)であり、このシート(基紙)上に水蒸気バリア層、ガスバリア層のいずれか、または両方を有することもできる。
パルプとしては、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未漂白パルプ(NUKP)、サルファイトパルプなどの化学パルプ、ストーングラインドパルプ、サーモメカニカルパルプなどの機械パルプ、脱墨パルプ、古紙パルプなどの木材繊維、ケナフ、竹、麻などから得られた非木材繊維などを用いることができ、適宜配合して用いることが可能である。これらの中でも、基紙中への異物混入が発生し難いこと、使用後のバリア素材を古紙原料に供してリサイクル使用する際に経時変色が発生し難いこと、高い白色度を有するため印刷時の面感が良好となり、特に包装材料として使用した場合の使用価値が高くなることなどの理由から、木材繊維の化学パルプ、機械パルプを用いることが好ましく、化学パルプを用いることがより好ましい。
【0019】
本発明の基紙には、填料や各種助剤を添加することができる。填料としては、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、ゼオライト、合成樹脂填料等の公知の填料を使用することができる。また、硫酸バンドや各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性あるいは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤や内添サイズ剤等の抄紙用内添助剤を必要に応じて使用することができる。さらに、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等も必要に応じて添加することができる。
【0020】
基紙の製造(抄紙)方法は特に限定されるものではなく、公知の長網フォーマー、オントップハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマーマシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ抄紙方式で抄紙して基紙を製造することができる。また、基紙は1層であってもよく、2層以上の多層で構成されていてもよい。
さらに、基紙の表面を各種薬剤で処理することが可能である。使用される薬剤としては、酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酵素変性澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、表面サイズ剤、耐水化剤、保水剤、増粘剤、滑剤などを例示することができ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。さらに、これらの各種薬剤と顔料を併用してもよい。顔料としてはカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。
【0021】
基紙の表面処理の方法は特に限定されるものではないが、ロッドメタリングサイズプレス、ポンド式サイズプレス、ゲートロールコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、カーテンコーターなど公知の塗工装置を用いることができる。
このようにして得られる基紙としては、上質紙、中質紙、塗工紙、片艶紙、クラフト紙、片艶クラフト紙、晒クラフト紙、グラシン紙、板紙、白板紙、ライナーなどの各種公知のものが例示可能である。
また、基紙の坪量は、バリア素材に所望される各種品質や取り扱い性等により適宜選択可能であるが、通常は20g/m以上600g/m以下程度のものが好ましい。食品などの包装材、袋、紙器、段ボール箱、カップなど、包装用途に使用する包装材料の場合は、25g/m以上600g/m以下のものがより好ましい。
さらに、袋用または後述する軟包装材用では30g/m以上150g/m以下、紙器用では170g/m以上600g/m以下、段ボール用ではライナー用は150g/m以上300g/m以下、中芯用は120g/m以上200g/m以下のものが特に好ましい。
【0022】
本発明において、バリア性をより高くするために、紙基材として、基紙上にガスバリア層を有する紙製バリア原紙を用いることができる。また、より高いバリア性が要求される場合は、紙基材として、基紙上に、水蒸気バリア層、ガスバリア層を有する紙製バリア原紙、さらに、基紙上に、水蒸気バリア層、ガスバリア層をこの順に有する紙製バリア原紙を用いることができる。水蒸気バリア層およびガスバリア層は、主として水を溶媒とした水系の塗工液を塗工することにより、基材上に形成することができる。
【0023】
(水蒸気バリア層)
本発明において、水蒸気バリア層に使用される水蒸気バリア性樹脂としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、パラフィン(WAX)系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成接着剤、またはそれらのパラフィン(WAX)配合合成接着剤等を単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。これらの中では、水蒸気バリア性の点からスチレン・ブタジエン系合成接着剤を使用することが好ましい。
本発明においてスチレン・ブタジエン系合成接着剤とは、スチレンとブタジエンを主構成モノマーとし、これに変性を目的とする各種のコモノマーを組み合わせ、乳化重合したものである。コモノマーの例として、メチルメタクリルレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレートや、イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸などの不飽和カルボン酸などが挙げられる。また、乳化剤としては、オレイン酸ナトリウム、ロジン酸石鹸、アルキルアリルスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤が単独、またはノニオン性界面活性剤と組み合わせて用いることができる。目的によっては、両性またはカチオン性界面活性剤を用いてもよい。
【0024】
なお、水蒸気バリア性に問題がない程度であれば、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、エチレン共重合ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパクなどのタンパク質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムなどの水溶性高分子やポリ塩化ビニリデン、変性ポリオレフィン系樹脂などの水分散性樹脂を、上記水蒸気バリア性樹脂と併用することも可能である。
【0025】
本発明において、水蒸気バリア層に顔料を含有させることは、水蒸気バリア層とガスバリア層を有する構成において、水蒸気バリア層とガスバリア層の密着性の点から好ましい。
顔料としてはカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。
これらの顔料の中でも、水蒸気バリア性の向上と、ガスバリア層の浸透抑制の両方の観点から、形状が扁平なカオリン、マイカ、タルクなどの無機顔料が好ましく、カオリン、マイカがより好ましい。また、体積50%平均粒子径(D50)(以下、「平均粒子径」ともいう。)が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料を単独または2種類以上混合して使用することが好ましい。使用する無機顔料の平均粒子径またはアスペクト比が上記範囲より小さいと、水蒸気バリア層中を水蒸気が迂回する回数が減少し、移動する距離が短くなるため、結果として水蒸気バリア性の改善効果が小さくなることがある。
【0026】
本発明において、水蒸気バリア性の向上、およびガスバリア層との密着性の点から、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料を含有する水蒸気バリア層に、さらに平均粒子径が5μm以下の顔料を含有させてもよい。平均粒子径が5μm以下の顔料を併用することにより、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料により形成された水蒸気バリア層中の空隙を減少させることができるため、さらに優れた水蒸気バリア性が発現する。つまり、水蒸気バリア層に平均粒子径の異なる顔料を含有させた場合、水蒸気バリア層中で大きな平均粒子径の無機顔料により形成される空隙に小さな平均粒子径の顔料が充填された状態となり、水蒸気は顔料を迂回して通過するため、異なる平均粒子径の顔料を含有していない水蒸気バリア層と比較して、高い水蒸気バリア性を有するものと推測される。
本発明において、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料と、平均粒子径が5μm以下の顔料を併用する場合、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料と、平均粒子径が5μm以下の顔料の配合比率は、乾燥重量で、50/50~99/1であることが好ましい。平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料の配合比率が上記範囲より少ないと、水蒸気が水蒸気バリア層中を迂回する回数が減少し、移動する距離が短くなるため、水蒸気バリア性の改善効果が小さくなることがある。一方、上記範囲より多いと、水蒸気バリア層中の大きな平均粒子径の無機顔料が形成する空隙を平均粒子径が5μm以下の顔料で十分に埋めることができないため、水蒸気バリア性のさらなる向上は見られない。
【0027】
本発明において、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料と併用する平均粒子径が5μm以下の顔料としては、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。これらの顔料の中では、重質炭酸カルシウムを使用することが好ましい。
【0028】
水蒸気バリア層に顔料を含有させる場合、顔料の配合量は、乾燥重量で水蒸気バリア性樹脂と水溶性高分子の合計100重量部に対して、50重量部以上2000重量部以下の範囲で使用されることが好ましく、より好ましくは65重量部以上1000重量部以下である。
また、水蒸気バリア層には、上記した水蒸気バリア性樹脂、水溶性高分子、顔料の他、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
【0029】
本発明において、水蒸気バリア層に多価金属塩などに代表される架橋剤を添加することができる。架橋剤は水蒸気バリア層に含有される水系樹脂と架橋反応を起こすため、水蒸気バリア層内の結合の数(架橋点)が増加する。つまり、水蒸気バリア層が緻密な構造となり、良好な水蒸気バリア性を発現することができる。
本発明において、架橋剤の種類としては特に限定されるものではなく、水蒸気バリア層に含有される水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子の種類に合わせて、多価金属塩(銅、亜鉛、銀、鉄、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、チタンなどの多価金属と、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、珪酸イオン、窒素酸化物、ホウ素酸化物などのイオン性物質が結合した化合物)、アミン化合物、アミド化合物、アルデヒド化合物、ヒドロキシ酸など適宜選択して使用することが可能である。
水蒸気バリア性に優れた効果を発現するスチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系などのスチレン系の水蒸気バリア性樹脂を用いた場合、架橋効果発現の観点から、多価金属塩を使用することが好ましく、カリウムミョウバンを使用することがより好ましい。
架橋剤の配合量については、塗工可能な塗料濃度や塗料粘度の範囲内であれば特に限定されることなく配合することができるが、架橋剤の配合量は、好ましくは乾燥重量で水蒸気バリア性樹脂と水溶性高分子の合計100重量部に対して、0.5重量部以上30重量部以下の範囲で使用されることが好ましく、より好ましくは1重量部以上15重量部以下の範囲である。0.5重量部未満であると架橋剤の添加効果が十分に得られないことがある。また、30重量部より多いと塗料の粘度上昇が著しくなり、塗工が困難となることがある。
【0030】
本発明において、水蒸気バリア層用塗料に架橋剤を添加する場合、アンモニアなどの極性溶媒に架橋剤を溶解させてから塗料へ添加することが好ましい。架橋剤を極性溶媒に溶解させると架橋剤と極性溶媒で結合を作るため、塗料へ添加しても直ちには水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子との架橋反応が起こらないため、塗料の増粘を抑制することができる。その場合、紙基材への塗工後に乾燥することにより極性溶媒成分が揮発し、水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子との架橋反応が起こり、緻密な水蒸気バリア層が形成され、水蒸気バリア性が向上すると推測される。
【0031】
本発明において、水蒸気バリア性向上の観点から、水蒸気バリア層に撥水剤を含有させることが好ましい。撥水剤としては、アルカン化合物を主体とするパラフィン系撥水剤、カルナバやラノリンなどの動植物由来の天然油脂系撥水剤、シリコーンまたはシリコーン化合物を含有するシリコーン含有系撥水剤、フッ素化合物を含有するフッ素含有系撥水剤など例示することができる。これらの中では、水蒸気バリア性能発現の観点からパラフィン系撥水剤を使用することが好ましい。また、これらの撥水剤を単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。
【0032】
本発明において、撥水剤の配合量は特に限定されるものではないが、撥水剤の配合量は、乾燥重量で水蒸気バリア性樹脂と水溶性高分子の合計100重量部に対して、撥水剤が1重量部以上100重量部以下であることが好ましい。撥水剤の配合量が1重量部未満であると、水蒸気バリア性の向上効果が十分に得られない可能性がある。一方、100重量部を超えた場合には、水蒸気バリア層上にガスバリア層を設ける場合にガスバリア層が均一に形成し難くなるため、ガスバリア性が低下する可能性がある。
また、本発明において、水蒸気バリア性の向上、およびガスバリア層との密着性から、水蒸気バリア層表面の濡れ張力としては10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、15mN/m以上50mN/m以下であることがより好ましい。
水蒸気バリア層用塗工液は、水を主溶媒とすることが好ましい。
【0033】
(ガスバリア層)
本発明において、ガスバリア層に使用される水溶性高分子としては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、エチレン共重合ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパクなどのタンパク質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムなどを例示することができる。これらの中では、ガスバリア性の点から、ポリビニルアルコール類、セルロース誘導体が好ましく、ポリビニルアルコール類がさらに好ましい。また、水分散性樹脂としては、ポリ塩化ビニリデン、変性ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。
【0034】
本発明において、ガスバリア層に顔料を含有させることは、ガスバリア性の向上の点から好ましい。ガスバリア層に使用される顔料としては、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。
これらの中では、ガスバリア性の点から無機顔料を使用することが好ましく、平均粒子径が3μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料を使用することがより好ましく、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が30以上の無機顔料を使用することがさらに好ましい。無機顔料としてはカオリン、マイカが特に好ましい。
ガスバリア層に顔料を含有させた場合、酸素などのガスは顔料を迂回して通過する。このため、顔料を含有していない水溶性高分子からなるガスバリア層と比較して高湿度雰囲気下における優れたガスバリア性を有する。
本発明において、ガスバリア層に顔料を含有させる場合、顔料の配合量は、乾燥重量で水溶性高分子100重量部に対して、1重量部以上1000重量部以下の範囲で使用されることが好ましい。
なお、本発明において、顔料を水溶性高分子中に配合する際に、顔料がスラリー化したものを添加し混合することが好ましい。
【0035】
本発明において、ガスバリア層に多価金属塩などに代表される架橋剤を添加することができる。架橋剤はガスバリア層に含有される水系樹脂と架橋反応を起こすため、ガスバリア層内の結合の数(架橋点)が増加する。つまり、ガスバリア層が緻密な構造となり、良好なガスバリア性を発現することができる。
本発明において、架橋剤の種類としては特に限定されるものではなく、ガスバリア層に含有される水溶性高分子の種類に合わせて、多価金属塩(銅、亜鉛、銀、鉄、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、チタンなどの多価金属と、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、珪酸イオン、窒素酸化物、ホウ素酸化物などのイオン性物質が結合した化合物)、アミン化合物、アミド化合物、アルデヒド化合物、ヒドロキシ酸など適宜選択して使用することが可能である。なお、架橋効果発現の観点から、多価金属塩を使用することが好ましく、カリウムミョウバンを使用することがより好ましい。
架橋剤の配合量については、塗工可能な塗料濃度や塗料粘度の範囲内であれば特に限定されることなく配合することができるが、架橋剤の配合量は、好ましくは乾燥重量で水溶性高分子100重量部に対して、0.1重量部以上30重量部以下の範囲で使用されることが好ましく、より好ましくは1重量部以上15重量部以下である。0.1重量部未満であると架橋剤の添加効果が十分に得られないことがある。また、30重量部より多いと塗料の粘度上昇が著しくなり、塗工が困難となることがある。
【0036】
本発明において、水蒸気バリア層との密着性の観点より、ガスバリア層中に界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤のイオン性は制限されるものはなく、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤のいずれの種類でも単独もしくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、具体的な種類としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アルコール系界面活性剤、アセチレン基を有するアセチレン系界面活性剤、アセチレン基と2つの水酸基を有するアセチレンジオール系界面活性剤、アルキル基とスルホン酸を有するアルキルスルホン酸系界面活性剤、エステル系界面活性剤、アミド系界面活性剤、アミン系界面活性剤、アルキルエーテル系界面活性剤、フェニルエーテル系界面活性剤、硫酸エステル系界面活性剤、フェノール系界面活性剤などを例示することができる。これらの中では塗料のレベリング性の向上効果が大きい、アセチレンジオール系界面活性剤を使用することが好ましい。なお、塗料のレベリング性が向上すると、ガスバリア層の均一性が向上するため、ガスバリア性が向上する。
本発明において、水蒸気バリア層との密着性の観点から、ガスバリア層用塗料の表面張力を、10mN/m以上60mN/m以下に調整することが好ましく、15mN/m以上50mN/m以下に調整することが好ましい。
また、水蒸気バリア層表面の濡れ張力に対して、ガスバリア層用塗料の表面張力を±20mN/mとすることが、水蒸気バリア層とガスバリア層との密着性の観点から好ましい。
ガスバリア層用塗工液は、水を主溶媒とすることが好ましい。
【0037】
本発明において、ガスバリア層には、上記した水溶性高分子、顔料の他、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
【0038】
(水蒸気バリア層、ガスバリア層の塗工)
本発明において、水蒸気バリア層、ガスバリア層の塗工方法については特に限定されるものではなく、公知の塗工装置および塗工系で塗工することができる。例えば、塗工装置としてはブレードコーター、バーコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーターなどが挙げられる。また、塗工系としては、水等の溶媒を使用した水系塗工、有機溶剤等の溶媒を使用した溶剤系塗工などが挙げられる。
水蒸気バリア層、ガスバリア層を乾燥させる手法としては、例えば、蒸気加熱ヒーター、ガスヒーター、赤外線ヒーター、電気ヒーター、熱風加熱ヒーター、マイクロウェーブ、シリンダードライヤー等の通常の方法が用いられる。
【0039】
本発明において、水蒸気バリア層の塗工量は、乾燥重量で3g/m以上50g/m以下とすることが好ましく、5g/m以上40g/m以下とすることがより好ましく、7g/m以上30g/m以下とすることがさらに好ましい。水蒸気バリア層の塗工量が3g/m未満であると、基紙を塗工液が完全に被覆することが困難となり、十分な水蒸気バリア性が得られなくなることや、ガスバリア層が基紙にまで浸透して、十分なガスバリア性が得られなくなることがある。一方、50g/mより多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなる。
なお、本発明において、水蒸気バリア層は1層であってもよく、2層以上の多層で構成してもよい。水蒸気バリア層を2層以上の多層で構成する場合は、全ての水蒸気バリア層を合計した塗工量を上記範囲とすることが好ましい。
【0040】
本発明において、ガスバリア層の塗工量は、乾燥重量で0.2g/m以上20g/m以下とすることが好ましい。ガスバリア層の塗工量が0.2g/m未満であると、均一なガスバリア層を形成することが困難であるため、十分なガスバリア性が得られなくなることがある。一方、20g/mより多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなる。
なお、本発明において、ガスバリア層は1層であってもよく、2層以上の多層で構成してもよい。ガスバリア層を2層以上の多層で構成する場合は、全てのガスバリア層を合計した塗工量を上記範囲とすることが好ましい。
【0041】
(樹脂層)
本発明のバリア素材は、基材の少なくとも一面に樹脂層を有することができる。樹脂層は、バリア素材にさらなる水蒸気バリア性、ガスバリア性を付与する、あるいは耐油性、耐溶剤性、耐熱性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐光性、ヒートシール性などを付与することができる。特に、基材が紙製バリア原紙である場合は、空気中の水分などによる水蒸気バリア層、ガスバリア層への影響(劣化)を効果的に防ぐことができる。樹脂層は、紙製バリア原紙からなる基材のどちらの側に設けることもできるが、バリア層側に設けることが好ましい。
【0042】
樹脂層の樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸、エステル化澱粉、酢酸セルロース、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、発酵法で得られるプロパンジオールと化石資源由来のテレフタル酸のポリエステル(PTT)、大豆ポリオール、ポリヒドロキシアルカノエート、バイオポリエチレン、バイオポリエチレンテレフタレート、バイオポリウレタン等の生物由来樹脂、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、アクリロニトリル・スチレン、ポリメチルメタアクリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド(ナイロン)、ポリアセタール、ポリカーボネート等の石油由来樹脂を含むことができる。
なお、生物由来樹脂とは、原料として再生可能な有機資源由来の物質を含み,化学的または生物学的に合成することにより得られる、数平均分子量(Mn)1,000以上の高分子材料をいう。
また、有機資源には生きている動植物、収穫された農水産・林産物、生物の遺骸などが含まれ、具体例としては以下のものが挙げられる。
廃棄物系有機資源 :食物廃棄物、家畜排泄物、建築廃材、古紙など。
未利用系有機資源 :農作物非食用部、林地残材など。
資源穀物系有機資源:エネルギー源や、製品の原料を目的として栽培される植物。
新作物系有機資源 :有機資源生産に適した、海洋植物や、遺伝子組み換え植物。
【0043】
本発明において、樹脂層の樹脂は生分解性樹脂を主成分とすることが好ましい。なお、生分解性樹脂とは、微生物の働きにより、分子レベルまで分解され、最終的には二酸化炭素と水となって自然界へと循環していく性質の樹脂をいう。
ここで、生分解性樹脂を主成分とするとは、生分解性樹脂を50重量%以上含むことを意味する。
【0044】
本発明において、樹脂層は、塗工や樹脂ラミネート法により塗工層や樹脂ラミネート層を形成し、設けることが可能である。
袋用または後述する軟包装材用では、用途や基材上に設ける樹脂の種類、フィルムの種類等に応じて樹脂層の厚みを適宜設計することができるが、通常は、10μm以上300μm以下とすることが好ましく、10μm以上100μm以下とすることがより好ましい。
【0045】
本発明において、塗工により塗工層として樹脂層を形成する場合は、ヒートシール性を有する樹脂を含有する水系または溶剤系の塗工液を塗工することにより、バリア素材にヒートシール性を付与することもできる。ヒートシール性を有する樹脂を使用して塗工層として樹脂層を形成すると、樹脂ラミネート層として樹脂層を形成するよりも、得られるバリア素材は離解性が良好であるため、古紙として容易にリサイクル可能である。従って、環境負荷を下げることができるため好ましい。
ヒートシール性を有する樹脂としては、生分解性を有するものでも生分解性を有しないものでも適宜使用できる。これらの樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)樹脂、スチレンアクリル酸エステル共重合樹脂、ポリオレフィン系共重合物、エチレンメタクリル酸共重合物などが挙げられる。ポリ乳酸(PLA)樹脂の具体例としては、中京油脂社製、商品名:レゼムPLA-1、ミヨシ油脂社製、商品名:ランディPL-1000などが、スチレンアクリル酸エステル共重合樹脂の具体例としては、第一塗料社製、商品名:ハービルHS-1などが、ポリオレフィン系共重合物の具体例としては、住友精化社製、商品名:ザイクセンACなどが、エチレンメタクリル酸共重合物の具体例としては、三井化学社製、商品名:ケミパールS100などが、それぞれ挙げられる。
ヒートシール性を有する樹脂の塗工量は、求められるヒートシール性により適宜調整可能であり特に限定されないが、乾燥重量で2~20g/m程度である。
【0046】
本発明において、樹脂ラミネート法としては、樹脂を溶融してそれを基材上に押し出してラミネートする押し出しラミネート法や、フィルムを接着剤を介して、または介さずに基材に貼合(フィルム貼合)するドライラミネート法、サンドラミネート法などが挙げられる。また、樹脂ラミネート層としては、押し出しラミネート層や、バリアフィルム、蒸着フィルム等のフィルム貼合層を挙げることができる。
樹脂ラミネート層が押し出しラミネート層の場合は、紙製バリア原紙からなる基材の少なくとも一方の面上に、上記した各種生物由来樹脂、石油由来樹脂を溶融して押し出しラミネート法により樹脂ラミネート層として積層する。また、樹脂ラミネート層がフィルム貼合層の場合は、紙製バリア原紙からなる基材の少なくとも一方の面上に、上記した各種生物由来樹脂、石油由来樹脂製のフィルムをドライラミネート法、サンドラミネート法等により樹脂ラミネート層として貼合する。
【0047】
本発明において、フィルム貼合層に使用するフィルムとしては、上記した各種生物由来樹脂、石油由来樹脂製のフィルムが挙げられる。石油由来樹脂としては、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等の樹脂を主成分としたフィルム、上記した各種樹脂製のフィルムにこれらポリビニルアルコール等の樹脂をコーティングしたフィルム、上記した各種樹脂製のフィルムにアルミニウム等の各種金属からなる金属箔を貼合したフィルム、上記した各種樹脂製のフィルムにアルミニウム等の各種金属、または酸化珪素や酸化アルミニウム等の無機酸化物を蒸着させた蒸着フィルム等のバリアフィルムが挙げられる。目的に応じてこれらのフィルムを1層または複数層を貼合して使用することができる。
【0048】
本発明のバリア素材は、バリア素材のまま、または各種樹脂等と積層する、各種汎用フィルム、バリアフィルム、アルミ箔等と貼合するなどして、食品などの包装材、袋、紙器、段ボール箱、カップ等の包装用途に用いられる包装材料、または産業用資材などに用いられる積層体とすることが可能である。これらの中で、食品などの包装材、袋、紙器、段ボール箱、カップ等の包装用途に用いられる包装材料として好適に使用することができ、食品などの軟包装材として特に好適に使用することができる。なお、軟包装材とは、構成としては、柔軟性に富む材料で構成されている包装材であり、一般には紙、フィルム、アルミ箔等の薄く柔軟性のある材料を、単体あるいは貼り合せた包装材を指す。また、形状としては、袋など、内容物を入れることにより立体形状を保つような包装材を指す。
本発明のバリア素材を食品などの包装材、特に軟包装材として用いる場合は、ヒートシール性を有する樹脂と積層することにより、包装材料としての密閉性を高め、内容物を酸素による酸化や湿気などによる劣化などから守り、保存期間の延長を可能にすることができる。
また、本発明のバリア素材は、壁紙、建築用資材、紙管、防錆紙などの産業用資材としても用いることができる。産業用資材などに用いられる積層体として使用する場合においても、酸素や湿気の侵入を抑えることで、腐敗、劣化、湿度を防止できるほか、溶剤の臭気が漏れ出るのを防止するフレーバーバリア性などの効果が期待される。
【0049】
さらに、本発明のバリア素材は、全体のバイオマス度が50%以上であることから、これまで広く用いられている合成樹脂フィルム系のバリア素材と比較して、1m当たりの環境影響、特に、地球温暖化影響(CO排出量)を半分程度にすることができる。
ここでいう、環境影響は、ライフサイクルアセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)手法に基づき、ライフサイクルのうちの原材料の製造・調達、抄紙・塗工、ラミネート加工、廃棄(焼却)段階における環境負荷(CO排出量)を定量的に評価したものである。LCAについては、ISO(国際標準化機構)による環境マネジメントの国際規格の中で、ISO14040/44により国際規格化されているものである。
本発明のバリア素材は、全体のバイオマス度が50%以上であり、廃棄(焼却)の際に発生するCOのうち、植物由来のものはカーボンニュートラル(地球温暖化に影響しないものとする)とされるため、合成樹脂フィルム系のバリア素材と比較して、1m当たりの環境影響、特に、地球温暖化影響を半分程度にすることができるものと考えられる。
【実施例
【0050】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、もちろんこれらの例に限定される物ではない。なお、特に断らない限り、例中の部および%は、それぞれ重量部、重量%を示す。なお、得られたバリア素材について以下に示す評価法に基づいて試験を行った。
【0051】
(評価方法)
(1)酸素透過度(ガスバリア性):MOCON社製、OX-TRAN2/21を使用し、23℃-0%RH条件および23℃-85%RH条件にて測定した。
(2)水蒸気透過度(水蒸気バリア性):温度40±0.5℃、相対湿度差90±2%の条件下で、JIS K 7129:2008 プラスチック-フィルム及びシート-水蒸気透過度の求め方(機器測定法)に準拠して、透湿度測定器(Dr.Lyssy社製、L80-4000)を用いて測定した。
(3)離解性
バリア素材を1cm×1cm角の小片に切断し、試料濃度が2重量%となるように液温60℃の水酸化ナトリウムの2重量%水溶液に浸漬させ、Tappi標準離解機にて60分間離解処理したときの、水溶液中への離解の程度を評価した。
[評価基準]
○:パルプ繊維が分散しており、離解性が良好。
△:樹脂層上に塊はあるが、パルプ繊維分は分散している。
×:変化なし。
【0052】
[実施例1]
(基紙の作製)
カナダ式標準ろ水度(CSF)500mlの広葉樹クラフトパルプ(LBKP)とCSF530mlの針葉樹クラフトパルプ(NBKP)を80/20の重量比で配合して、原料パルプとした。
原料パルプに、乾燥紙力増強剤として分子量250万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.1%、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)を対絶乾パルプ重量あたり0.35%、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロロヒドリン(PAEH)系樹脂を対絶乾パルプ重量あたり0.15%、さらに歩留剤として分子量1000万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.08%添加した後、長網抄造機で抄紙し、坪量50g/mの基紙を得た。
【0053】
(水蒸気バリア層用塗工液1の調製)
エンジニアードカオリン(イメリス社製、バリサーフHX、平均粒子径9.0μm、アスペクト比80-100)に分散剤としてポリアクリル酸ソーダを添加し(対顔料0.2%)、セリエミキサーで分散して固形分濃度55%のカオリンスラリーを調製した。得られたカオリンスラリー中に、顔料100部(固形分)に対し水蒸気バリア性樹脂としてスチレン・ブタジエン系ラテックス(日本ゼオン社製、PNT7868)を100部(固形分)となるように配合し、固形分濃度50%の水蒸気バリア層用塗工液Aを得た。
【0054】
(ガスバリア層用塗工液1の調製)
エンジニアードカオリン(イメリス社製、バリサーフHX、平均粒子径9.0μm、アスペクト比80-100)に分散剤としてポリアクリル酸ソーダを添加し(対顔料0.2%)、セリエミキサーで分散して固形分濃度55%のカオリンスラリーを調製した。ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)水溶液を固形分濃度10%となるよう調製し、PVA水溶液を得た。得られたカオリンスラリーと、PVA水溶液を固形分で顔料:PVA水溶液=100:100として固形分濃度が10%となるよう混合し、ガスバリア層用塗工液Bを得た。
【0055】
(紙製バリア原紙、バリア素材の作製)
得られた基紙に、水蒸気バリア層用塗工液1を乾燥重量で塗工量12g/mとなるようブレードコーターを用いて片面塗工、乾燥した後、その上にガスバリア層用塗工液1を乾燥重量で塗工量3.0g/mとなるようロールコーターを用いて片面塗工、乾燥し、紙製バリア原紙1を得た。得られた紙製バリア原紙1の生分解性(JIS K6955:2006)は、試験開始90日後で90%であった。
さらに、得られた紙製バリア原紙1のガスバリア層上に、押し出しラミネート法によりポリ乳酸(PLA)樹脂を厚み20μm(25.2g/m)積層し、バリア素材を得た。このバリア素材において、生物由来原料は、パルプ、ポリ乳酸樹脂であり、バイオマス度は、83.4%であった。
【0056】
[実施例2]
得られた紙製バリア原紙1のガスバリア層上に、ポリ乳酸(PLA)樹脂(ミヨシ油脂社製、商品名:ランディPL-1000)を乾燥重量で塗工量10.0g/mとなるよう片面塗工した以外は、実施例1と同様にして、バリア素材を得た。このバリア素材において、生物由来原料は、パルプ、ポリ乳酸樹脂であり、バイオマス度は、80.0%であった。
【0057】
[実施例3]
得られた紙製バリア原紙1のガスバリア層上に、押し出しラミネート法によりバイオマスポリエチレン樹脂(Braskem社製、商品名:グリーンポリエチレン)を厚み20μm(25.2g/m)積層し、バリア素材を得た。このバリア素材において、生物由来原料は、パルプ、バイオマスポリエチレン樹脂であり、バイオマス度は、83.4%であった。
【0058】
[実施例4]
(水蒸気バリア層用塗工液2の調製)
エンジニアードカオリン(イメリス社製、バリサーフHX、平均粒子径9.0μm、アスペクト比80-100)に分散剤としてポリアクリル酸ソーダを添加し(対顔料0.2%)、セリエミキサーで分散して固形分濃度60%のカオリンスラリーを調製した。得られたカオリンスラリー中に、顔料100部(固形分)に対し水蒸気バリア性樹脂としてスチレン・アクリル系共重合体エマルジョン(サイデン化学社製、X-511-374E)を100部(固形分)、パラフィン系撥水剤(丸芳化学社製、MYE-35G、ワックス含有ポリエチレンエマルジョン)を100部(固形分)となるように配合し、固形分濃度45%の水蒸気バリア層用塗工液2を得た。
【0059】
(ガスバリア層用塗工液2の調製)
エンジニアードカオリン(イメリス社製、バリサーフHX、平均粒子径9.0μm、アスペクト比80-100)に分散剤としてポリアクリル酸ソーダを添加し(対顔料0.2%)、セリエミキサーで分散して固形分濃度60%のカオリンスラリーを調製した。別に、ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)水溶液を固形分濃度10%となるよう調製した。得られたポリビニルアルコール水溶液中に、ポリビニルアルコール100部(固形分)に対しカオリンスラリーを145部(固形分)、シリコーン系界面活性剤(サンノプコ社製、SNウェット125)を1部(固形分)となるように配合し、ガスバリア層用塗工液2を得た。
【0060】
(紙製バリア原紙、バリア素材の作製)
実施例1で得られた基紙に、水蒸気バリア層用塗工液2を乾燥重量で塗工量15g/mとなるよう片面塗工、乾燥した後、その上にガスバリア層用塗工液2を乾燥重量で塗工量5.0g/mとなるよう片面塗工し、紙製バリア原紙2を得た。得られた紙製バリア原紙2の生分解性(JIS K6955:2006)は、試験開始90日後で90%であった。
さらに、得られた紙製バリア原紙2のガスバリア層上に、押し出しラミネート法によりポリ乳酸(PLA)樹脂を厚み20μm(25.2g/m)積層し、バリア素材を得た。このバリア素材において、生物由来原料は、パルプ、ポリ乳酸樹脂であり、バイオマス度は、79.0%であった。
【0061】
[実施例5]
得られた紙製バリア原紙2のガスバリア層上に、ポリ乳酸(PLA)樹脂(ミヨシ油脂社製、商品名:ランディPL-1000)を乾燥重量で塗工量10.0g/mとなるよう片面塗工した以外は、実施例4と同様にして、バリア素材を得た。このバリア素材において、生物由来原料は、パルプ、ポリ乳酸樹脂であり、バイオマス度は、75.0%であった。
【0062】
[実施例6]
得られた紙製バリア原紙2のガスバリア層上に、アクリル酸エステル共重合樹脂(第一塗料社製、商品名:ハービルHS-1)を乾燥重量で塗工量10.0g/mとなるよう片面塗工した以外は、実施例4と同様にして、バリア素材を得た。このバリア素材において、生物由来原料は、パルプであり、バイオマス度は、62.5%であった。
【0063】
[実施例7]
得られた紙製バリア原紙2のガスバリア層上に、押し出しラミネート法によりバイオマスポリエチレン樹脂(Braskem社製、商品名:グリーンポリエチレン)を厚み20μm(25.2g/m)積層し、バリア素材を得た。このバリア素材において、生物由来原料は、パルプ、バイオマスポリエチレン樹脂であり、バイオマス度は、79.0%であった。
【0064】
[実施例8]
(水蒸気バリア層用塗工液3の調製)
マイカスラリー(トピー工業社製、製品名:NTS-10、アスペクト比:1500、固形分濃度10%)中に、顔料100部(固形分)に対し水蒸気バリア性樹脂としてスチレン・アクリル系共重合体エマルジョン(サイデン化学社製、X-511-374E)を100部(固形分)、パラフィン系撥水剤(丸芳化学社製、MYE-35G、ワックス含有ポリエチレンエマルジョン)を100部(固形分)となるように配合し、固形分濃度32%の水蒸気バリア層用塗工液3を得た。
【0065】
(ガスバリア層用塗工液3の調製)
マイカスラリー(トピー工業社製、製品名:NTS-10、アスペクト比:1500、固形分濃度10%)を用意した。別に、ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)水溶液を固形分濃度10%となるよう調製した。得られたポリビニルアルコール水溶液中に、ポリビニルアルコール100部(固形分)に対しマイカスラリーを30部(固形分)、シリコーン系界面活性剤(サンノプコ社製、SNウェット125)を1部(固形分)となるように配合し、ガスバリア層用塗工液3を得た。
【0066】
(紙製バリア原紙、バリア素材の作製)
実施例1で得られた基紙に、水蒸気バリア層用塗工液3を乾燥重量で塗工量15g/mとなるよう片面塗工、乾燥した後、その上にガスバリア層用塗工液3を乾燥重量で塗工量5.0g/mとなるよう片面塗工し、紙製バリア原紙3を得た。得られた紙製バリア原紙3の生分解性(JIS K6955:2006)は、試験開始90日後で90%であった。
さらに、得られた紙製バリア原紙3のガスバリア層上に、押し出しラミネート法によりポリ乳酸(PLA)樹脂を厚み20μm(25.2g/m)積層し、バリア素材を得た。このバリア素材において、生物由来原料は、パルプ、ポリ乳酸樹脂であり、バイオマス度は、79.0%であった。
【0067】
[比較例1]
厚さ12μmのEVOHフィルムの一方の面上に、ドライラミネート法により厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを、反対の面上に、ドライラミネート法により厚さ25μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを、それぞれ貼合して、バリア素材を得た。
【0068】
【表1】