(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】水素製造プラント
(51)【国際特許分類】
C01B 3/02 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
C01B3/02 D
(21)【出願番号】P 2020044801
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 忠輝
(72)【発明者】
【氏名】清澤 正志
(72)【発明者】
【氏名】宇麼谷 雅英
(72)【発明者】
【氏名】福良 孝
(72)【発明者】
【氏名】水谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】稲員 大吾
(72)【発明者】
【氏名】久保 真治
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸幸
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/031771(WO,A1)
【文献】特開2008-208005(JP,A)
【文献】特開2012-140290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化硫黄と水とヨウ素とをブンゼン反応させて、ヨウ化水素と硫酸とを生成するブンゼン反応設備と、
前記ブンゼン反応設備で生成された前記硫酸を二酸化硫黄と酸素と水とに熱分解させ、前記二酸化硫黄及び前記水を前記ブンゼン反応
設備に送る硫酸反応設備と、
前記ブンゼン反応設備で生成された前記ヨウ化水素を水素とヨウ素とに熱分解させ、前記水素を外部に排出すると共に、前記ヨウ素を前記ブンゼン反応設備に送るヨウ化水素反応設備と、
を備え、
前記硫酸反応設備は、
蓄熱体を有する第一蓄熱器と、
太陽光を前記第一蓄熱器に導いて、前記第一蓄熱器の前記蓄熱体を加熱する第一太陽光ガイド装置と、
前記ブンゼン反応設備で生成された前記硫酸を一時的に蓄える硫酸タンクと、
前記第一蓄熱器の前記蓄熱体に蓄えられた熱を利用して、前記硫酸タンクからの前記硫酸を前記二酸化硫黄と前記酸素と前記水とに熱分解させる硫酸反応器と、
前記硫酸タンク内の前記硫酸を前記硫酸反応器に送る硫酸供給機と、
前記硫酸反応器で生成された前記二酸化硫黄を一時的に蓄える二酸化硫黄タンクと、
前記二酸化硫黄タンク内の前記二酸化硫黄を前記ブンゼン反応設備に送る二酸化硫黄供給機と、
を有し、
前記ヨウ化水素反応設備は、
蓄熱体を有する第二蓄熱器と、
太陽光を前記第二蓄熱器に導いて、前記第二蓄熱器の前記蓄熱体を加熱する第二太陽光ガイド装置と、
前記第二蓄熱器の前記蓄熱体に蓄えられた熱を利用して、前記ブンゼン反応設備で生成された前記ヨウ化水素を前記水素と前記ヨウ素とに熱分解させるヨウ化水素反応器と、
を有する、
水素製造プラント。
【請求項2】
請求項1に記載の水素製造プラントにおいて、
前記硫酸反応設備は、前記硫酸タンクから前記硫酸反応器へ送られる前記硫酸の流量を調節する硫酸流量調節器と、前記二酸化硫黄タンクから前記ブンゼン反応設備に送られる前記二酸化硫黄の流量を調節する二酸化硫黄流量調節器と、を有し、
さらに、前記第一蓄熱器の前記蓄熱体の温度が、前記硫酸の熱分解反応可能な温度より高いことを条件にして、前記硫酸流量調節器に対して、前記硫酸タンクから前記硫酸反応器へ
前記硫酸を送れる状態にするよう指示する硫酸供給制御器と、
外部から前記ブンゼン反応設備での反応開始の指示を受け付け、又は、自身が前記ブンゼン反応設備での反応を開始してよいと判断し、且つ前記二酸化硫黄タンク内の前記二酸化硫黄の量が予め定められた量以上であることを条件として、前記二酸化硫黄供給機に対して、駆動を指示すると共に、前記二酸化硫黄流量調節器に対して、前記二酸化硫黄タンクから前記ブンゼン反応設備へ前記二酸化硫黄を送れる状態にするよう指示する反応制御器と、
を備える、
水素製造プラント。
【請求項3】
請求項2に記載の水素製造プラントにおいて、
前記硫酸反応設備としての第一硫酸反応設備の他に、さらに、前記ブンゼン反応設備で生成された前記硫酸を二酸化硫黄と酸素と水とに熱分解させ、前記二酸化硫黄及び前記水を前記ブンゼン反応設備に送る第二硫酸反応設備を備え、
前記第二硫酸反応設備は、
蓄熱体を有する第一蓄熱器と、
太陽光を前記第二硫酸反応設備における前記第一蓄熱器に導いて、前記第二硫酸反応設備における前記第一蓄熱器の前記蓄熱体を加熱する第一太陽光ガイド装置と、
前記第二硫酸反応設備における前記第一蓄熱器の前記蓄熱体に蓄えられた熱を利用して、前記ブンゼン反応設備で生成された前記硫酸を前記二酸化硫黄と前記酸素と前記水とに熱分解させる硫酸反応器と、
を有し、
前記反応制御器は、前記第二硫酸反応設備から前記ブンゼン反応設備への前記二酸化硫黄の供給が停止したことを条件として、前記二酸化硫黄供給機に対して、駆動を指示すると共に、前記二酸化硫黄流量調節器に対して、前記二酸化硫黄タンクから前記ブンゼン反応設備へ前記二酸化硫黄を送れる状態にするよう指示する、
水素製造プラント。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の水素製造プラントにおいて、
前記ヨウ化水素反応設備は、前記ブンゼン反応設備で生成された前記ヨウ化水素を一時的に蓄えるヨウ化水素タンクと、前記ヨウ化水素タンク内の前記ヨウ化水素を前記ヨウ化水素反応器に送るヨウ化水素供給機と、前記ヨウ化水素反応器で生成された前記ヨウ素を一時的に蓄えるヨウ素タンクと、前記ヨウ素タンク内の前記ヨウ素を前記ブンゼン反応設備に送るヨウ素供給機と、
を有する、
水素製造プラント。
【請求項5】
請求項4に記載の水素製造プラントにおいて、
前記ヨウ化水素反応設備は、前記ヨウ化水素タンクから前記ヨウ化水素反応器へ送られる前記ヨウ化水素の流量を調節するヨウ化水素流量調節器と、前記ヨウ素タンクから前記ブンゼン反応設備に送られる前記ヨウ素の流量を調節するヨウ素流量調節器と、を有し、
さらに、前記第二蓄熱器の前記蓄熱体の温度が、前記ヨウ化水素の熱分解反応可能な温度より高いことを条件として、前記ヨウ化水素流量調節器に対して、前記ヨウ化水素タンクから前記ヨウ化水素反応器へ
前記ヨウ化水素を送れる状態にするよう指示するヨウ化水素供給制御器を備え、
前記反応制御器は、外部から前記ブンゼン反応設備での反応開始の指示を受け付け、又は、自身が前記ブンゼン反応設備での反応を開始してよいと判断し、且つ前記ヨウ素タンク内の前記ヨウ素の量が予め定められた量以上であることを条件として、前記ヨウ素供給機に対して、駆動を指示すると共に、前記ヨウ素流量調節器に対して、前記ヨウ素タンクから前記ブンゼン反応設備へ前記ヨウ素を送れる状態にするよう指示する、
水素製造プラント。
【請求項6】
請求項5に記載の水素製造プラントにおいて、
前記ヨウ化水素反応設備としての第一ヨウ化水素反応設備の他に、さらに、前記ブンゼン反応設備で生成された前記ヨウ化水素を水素とヨウ素とに熱分解させ、前記水素を外部に排出すると共に、前記ヨウ素を前記ブンゼン反応設備に送る第二ヨウ化水素反応設備を備え、
前記第二ヨウ化水素反応設備は、
蓄熱体を有する第二蓄熱器と、
太陽光を前記第二ヨウ化水素反応設備における前記第二蓄熱器に導いて、前記第二ヨウ化水素反応設備における前記第二蓄熱器の前記蓄熱体を加熱する第二太陽光ガイド装置と、
前記第二ヨウ化水素反応設備における前記第二蓄熱器の前記蓄熱体に蓄えられた熱を利用して、前記ブンゼン反応設備で生成された前記ヨウ化水素を前記水素と前記ヨウ素とに熱分解させるヨウ化水素反応器と、
を有し、
前記反応制御器は、前記第二ヨウ化水素反応設備から前記ブンゼン反応設備への前記ヨウ素の供給が停止したことを条件として、前記ヨウ素供給機に対して、駆動を指示すると共に、前記ヨウ素流量調節器に対して、前記ヨウ素タンクから前記ブンゼン反応設備へ前記ヨウ素を送れる状態にするよう指示する、
水素製造プラント。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の水素製造プラントにおいて、
前記第一蓄熱器及び前記第二蓄熱器は、いずれも、
前記蓄熱体としての複数の蓄熱材粒子と、前記複数の蓄熱材粒子を覆うケースと、前記ケース内に気体を送る送風機と、を有し、
前記ケースは、前記送風機からの気体を導入して、前記複数の蓄熱材粒子を前記ケース内で循環流動させる気体導入口を有する、
水素製造プラント。
【請求項8】
請求項7に記載の水素製造プラントにおいて、
前記複数の蓄熱材粒子は、珪砂、スラグ、金属酸化物、セラミックスのうち、少なくとも一の材料で形成されている、
水素製造プラント。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の水素製造プラントにおいて、
高温熱媒体と気体とを熱交換させて、前記気体を加熱する気体加熱器と、
前記気体加熱器で加熱された気体を前記第一蓄熱器の前記ケース内に送る予備送風機と、
前記第一蓄熱器の前記ケース内に前記第一蓄熱器の前記送風機から気体を送れる状態と、前記第一蓄熱器の前記ケース内に前記予備送風機からの気体を送れる状態とに、切り替える切替機と、
をさらに備える、
水素製造プラント。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の水素製造プラントにおいて、
高温熱媒体と気体とを熱交換させて、前記気体を加熱する気体加熱器と、
前記気体加熱器で加熱された気体を前記第二蓄熱器の前記ケース内に送る予備送風機と、
前記第二蓄熱器の前記ケース内に前記第二蓄熱器の前記送風機から気体を送れる状態と、前記第二蓄熱器の前記ケース内に前記予備送風機からの気体を送れる状態とに、切り替える切替機と、
をさらに備える、
水素製造プラント。
【請求項11】
請求項7又は8に記載の水素製造プラントにおいて、
高温熱媒体と気体とを熱交換させて、前記気体を加熱する気体加熱器と、
前記気体加熱器で加熱された気体を前記第一蓄熱器の前記ケース内及び前記第二蓄熱器の前記ケース内に送る予備送風機と、
前記第一蓄熱器の前記ケース内に前記第一蓄熱器の前記送風機から気体を送れ且つ前記第二蓄熱器の前記ケース内に前記第二蓄熱器の前記送風機から気体を送れる状態と、前記第一蓄熱器の前記ケース内及び前記第二蓄熱器の前記ケース内に前記予備送風機からの気体を送れる状態とに、切り替える切替機と、
をさらに備える、
水素製造プラント。
【請求項12】
請求項7から11のいずれか一項に記載の水素製造プラントにおいて、
前記硫酸反応器と前記ヨウ化水素反応器とのうち、少なくとも一方の反応器は、
筒状を成して両端を有し、該両端のうちの一端が閉端を成し、他端が開口を成す外筒と、
筒状を成して両端を有し、該両端のうちの一端が入口開口を成し、他端が出口開口を成す内筒と、
筒状を成して両端を有し、該両端のうちの一端が閉端を成し、他端が出口開口を成す分離筒と、
熱分解の対象である熱分解対象物を受け入れる対象物受入部と、
前記熱分解対象物の熱分解で得られた反応物の一種を排出する反応物排出部と、
を有し、
前記分離筒は、前記熱分解対象物の熱分解で得られた第一反応物と第二反応物とうち、前記第一反応物を前記分離筒の内側に通す一方で前記第二反応物を前記内側に通さない分離膜を有し、
前記外筒は、前記外筒の前記閉端を含み且つ前記開口を含まない外筒本体の外周面が前記蓄熱体に接し得るよう、前記ケースに取り付けられ、
前記内筒は、前記内筒の前記入口開口を含み且つ前記出口開口を含まない内筒本体の少なくとも一部が前記外筒本体内に位置するよう、配置され、
前記分離筒は、前記分離筒の前記閉端を含み且つ前記出口開口を含まない分離筒本体の少なくとも一部が前記外筒本体内及び前記内筒本体内に位置するよう、配置され、
前記対象物受入部は、前記外筒本体と前記内筒本体との間に前記熱分解対象物を送れるよう形成され、
前記反応物排出部は、前記内筒本体と前記分離筒本体との間の前記第二反応物を外部に排出できるよう形成され、
前記分離筒の前記出口開口は、前記第一反応物を外部に排出する排出口を成す、
水素製造プラント。
【請求項13】
請求項12に記載の水素製造プラントにおいて、
前記ケースは、鉛直方向に延びる側板を有し、
前記外筒は、前記外筒の前記開口に対して前記閉端が上に位置するように傾斜して、前記側板に取り付けられ、
前記内筒は、前記内筒の前記出口開口に対して前記入口開口が上に位置するよう傾斜している、
水素製造プラント。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の水素製造プラントにおいて、
前記少なくとも一方の反応器は、前記熱分解対象物の熱分解を促進する触媒を有し、
前記触媒は、前記分離筒本体の外周面中で、前記分離筒本体の少なくとも一部が前記外筒本体内及び前記内筒本体内に位置している部分に取り付けられている、
水素製造プラント。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の水素製造プラントにおいて、
前記ブンゼン反応設備、前記硫酸反応設備、及び前記ヨウ化水素反応設備に対して、電力を供給する電力供給設備をさらに備え、
前記電力供給設備は、
蒸気により駆動する蒸気タービンと、
前記蒸気タービンの駆動で発電する発電機と、
前記蒸気タービンから排気された蒸気を水に戻す復水器と、
前記復水器からの水を加熱し蒸気を生成し、前記蒸気を前記蒸気タービンに送る蒸気発生装置と、
を有し、
前記蒸気発生装置は、蓄熱体を有する蓄熱器と、太陽光を前記蓄熱器に導いて、前記蓄熱器の前記蓄熱体を加熱する太陽光ガイド装置と、前記蓄熱器内に配置され、前記復水器からの水と前記蓄熱体とを熱交換させて、前記水を加熱して蒸気にする蒸気発生器と、を有する、
水素製造プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱化学分解法(IS法:Iodine Sulfur Process)を利用して、水素を製造する水素製造プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
IS法は、水に特定の化学物質を反応させ、この反応において入熱或いは除熱行い、水素を生成する方法である。このIS法は、基本的に三つの反応を実行する。
【0003】
第一の反応は、水とヨウ素と二酸化硫黄とを反応させて、ヨウ化水素と硫酸とを生成するブンゼン反応である。
【0004】
第二の反応は、ブンゼン反応で得られた硫酸を二酸化硫黄と酸素と水とに熱分解させる硫酸熱分解反応である。この硫酸熱分解反応で得られた二酸化硫黄と水は、ブンゼン反応の反応材料になる。
【0005】
第三の反応は、ブンゼン反応で得られたヨウ化水素をヨウ素と水素とに熱分解するヨウ化水素熱分解反応である。このヨウ化水素熱分解反応で得られたヨウ素は、ブンゼン反応の反応材料になる。
【0006】
このIS法を利用する水素製造プラントとしては、例えば、以下の特許文献1に開示されているプラントがある。このプラントでは、太陽光により加熱された、溶融塩等の第一熱媒体を硫酸熱分解反応の熱源とし、この第一熱媒体により加熱された第二熱媒体をヨウ化水素熱分解反応の熱源とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のプラントでは、以上のように、再生可能エネルギーの一種である太陽光のエネルギーの有効利用を図ることができる。
【0009】
本開示は、太陽光のエネルギーをより有効利用することができる水素製造プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための発明に係る一態様の水素製造プラントは、
二酸化硫黄と水とヨウ素とをブンゼン反応させて、ヨウ化水素と硫酸とを生成するブンゼン反応設備と、前記ブンゼン反応設備で生成された前記硫酸を二酸化硫黄と酸素と水とに熱分解させ、前記二酸化硫黄及び前記水を前記ブンゼン反応設備に送る硫酸反応設備と、前記ブンゼン反応設備で生成された前記ヨウ化水素を水素とヨウ素とに熱分解させ、前記水素を外部に排出すると共に、前記ヨウ素を前記ブンゼン反応設備に送るヨウ化水素反応設備と、を備える。前記硫酸反応設備は、蓄熱体を有する第一蓄熱器と、太陽光を前記第一蓄熱器に導いて、前記第一蓄熱器の前記蓄熱体を加熱する第一太陽光ガイド装置と、前記ブンゼン反応設備で生成された前記硫酸を一時的に蓄える硫酸タンクと、前記第一蓄熱器の前記蓄熱体に蓄えられた熱を利用して、前記硫酸タンクからの前記硫酸を前記二酸化硫黄と前記酸素と前記水とに熱分解させる硫酸反応器と、前記硫酸タンク内の前記硫酸を前記硫酸反応器に送る硫酸供給機と、前記硫酸反応器で生成された前記二酸化硫黄を一時的に蓄える二酸化硫黄タンクと、前記二酸化硫黄タンク内の前記二酸化硫黄を前記ブンゼン反応設備に送る二酸化硫黄供給機と、を有する。前記ヨウ化水素反応設備は、蓄熱体を有する第二蓄熱器と、太陽光を前記第二蓄熱器に導いて、前記第二蓄熱器の前記蓄熱体を加熱する第二太陽光ガイド装置と、前記第二蓄熱器の前記蓄熱体に蓄えられた熱を利用して、前記ブンゼン反応設備で生成された前記ヨウ化水素を前記水素と前記ヨウ素とに熱分解させるヨウ化水素反応器と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様に係る水素製造プラントによれば、水素の製造にあたり、太陽光のエネルギーを有効利用し、水素製造プラントの稼働率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示に係る第一実施形態における水素製造プラントの全体系統図である。
【
図2】本開示に係る第一実施形態における蓄熱器の断面図である。
【
図3】本開示に係る第一実施形態における硫酸反応器及びヨウ化水素反応器の断面図である。
【
図4】本開示に係る第二実施形態における水素製造プラントの全体系統図である。
【
図5】本開示に係る第三実施形態における水素製造プラントの全体系統図である。
【
図6】本開示に係る第四実施形態における水素製造プラントの全体系統図である。
【
図7】本開示に係る一例における電力供給設備の全体系統図である。
【
図8】本開示に係る第一変形例における蓄熱器の断面図である。
【
図9】本開示に係る第二変形例における蓄熱器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る水素製造プラントの各種実施形態、及びこれらの各種変形例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
「第一実施形態」
本実施形態の水素製造プラントは、
図1に示すように、ブンゼン反応設備BEと、硫酸反応設備SEと、ヨウ化水素反応設備IEと、これらの設備を制御する制御装置130と、を備える。
【0015】
ブンゼン反応設備BEは、ブンゼン反応器10と、分離器11と、硫酸ライン12と、硫酸ポンプ13と、ヨウ化水素ライン14と、ヨウ化水素ポンプ15と、水補給ライン16と、を有する。
【0016】
ブンゼン反応器10は、二酸化硫黄と水とヨウ素とを反応させて、ヨウ化水素(液体)と硫酸(液体)とを生成する反応器である。このブンゼン反応器10には、水補給ライン16が接続されている。このブンゼン反応器10内には、水素の生成量に応じて、この水補給ライン16から液体の水が補給される。また、このブンゼン反応器10には、酸素を排出する酸素排出口が形成されている。分離器11は、ブンゼン反応器10で生成されたヨウ化水素(液体)と硫酸(液体)とを二液相分離現象及び比重の違いにより、両者を上層と下層とに分離する分離器11である。硫酸ライン12は、分離器11内の硫酸(液体)を硫酸反応設備SEに導くラインである。硫酸ポンプ13は、硫酸ライン12内の硫酸を硫酸反応設備SEに送るポンプである。ヨウ化水素ライン14は、分離器11内のヨウ化水素(液体)をヨウ化水素反応設備IEに導くラインである。ヨウ化水素ポンプ15は、ヨウ化水素ライン14内のヨウ化水素をヨウ化水素反応設備IEに送るポンプである。
【0017】
なお、このブンゼン反応設備BEは、さらに、硫酸精製塔、硫酸濃縮塔、ヨウ化水素精製塔、ヨウ化水素濃縮器、ヨウ化水素蒸留塔をさらに有してもよい。この場合、硫酸精製塔及び硫酸濃縮塔は、硫酸ライン12中で硫酸ポンプ13より上流側の位置に設けられる。また、ヨウ化水素精製塔、ヨウ化水素濃縮器及びヨウ化水素蒸留塔は、ヨウ化水素ライン14中に設けられる。
【0018】
硫酸反応設備SEは、ブンゼン反応設備BEからの硫酸を二酸化硫黄と酸素と水とに熱分解させ、二酸化硫黄及び水をブンゼン反応設備BEに送る設備である。この硫酸反応設備SEは、第一蓄熱器20と、第一太陽光ガイド装置40と、硫酸タンク50と、硫酸供給ライン51と、硫酸供給機52と、硫酸流量調節器53と、二酸化硫黄タンク54と、二酸化硫黄供給ライン55と、二酸化硫黄供給機56と、二酸化硫黄流量調節器57と、冷却器58と、水供給ライン59と、複数の硫酸反応器60と、を有する。
【0019】
第一蓄熱器20は、ケース21と、ケース21内に気体を送る第一送風機31と、ケース21内に配置された蓄熱体30と、を有する。第一送風機31の吐出口とケース21とは、第一気体ライン32で接続されている。この第一気体ライン32中には、第一気体ライン32を流れる流動用気体の流量を調節する第一気体調節弁33が設けられている。第一太陽光ガイド装置40は、太陽光Rを第一蓄熱器20に導いて、第一蓄熱器20の蓄熱体30を加熱する装置である。この第一太陽光ガイド装置40は、太陽光Rを目的の位置に導く一以上のヘリオスタット41と、目的の位置に配置されている固定反射鏡42と、を有する。ヘリオスタット41は、太陽光Rを反射する反射鏡41aと、この反射鏡41aの向きを変える反射鏡駆動機41bと、を有する。反射鏡駆動機41bは、太陽の日周運動に合わせて、反射鏡41aの向きを変えて、太陽光Rを目的の位置に導く装置である。固定反射鏡42は、全てのヘリオスタット41からの太陽光Rを第一蓄熱器20に導く。
【0020】
硫酸タンク50は、硫酸ライン12に接続され、ブンゼン反応設備BEからの硫酸を一時的蓄えるタンクである。硫酸供給ライン51は、硫酸タンク50と硫酸反応器60とを接続し、硫酸タンク50内の硫酸を硫酸反応器60に導くラインである。硫酸供給機52は、硫酸供給ライン51に設けられている。この硫酸供給機52は、硫酸供給ライン51内の液体の硫酸を硫酸反応器60に送るポンプである。硫酸流量調節器53は、硫酸供給ライン51に設けられ、硫酸反応器60に送る硫酸の流量を調節する流量調節弁である。硫酸反応器60は、第一蓄熱器20の蓄熱体30に蓄えらえた熱を利用して、硫酸(液体)を二酸化硫黄(気体)と酸素(気体)と水(気体)とに熱分解させる反応器である。
【0021】
二酸化硫黄供給ライン55は、硫酸反応器60とブンゼン反応器10と接続し、硫酸反応器60で生成された二酸化硫黄をブンゼン反応器10に導くラインである。二酸化硫黄タンク54は、二酸化硫黄供給ライン55に設けられている。この二酸化硫黄タンク54は、硫酸反応器60で生成された二酸化硫黄(気体)を一時的に蓄えるタンクである。この二酸化硫黄タンク54には、圧力計54pが設けられている。二酸化硫黄供給機56は、二酸化硫黄供給ライン55中で、二酸化硫黄タンク54よりもブンゼン反応器10側の位置に設けられている。この二酸化硫黄供給機56は、二酸化硫黄タンク54内の気体の二酸化硫黄をブンゼン反応器10に送る圧縮機である。二酸化硫黄流量調節器57は、二酸化硫黄供給ライン55中で、二酸化硫黄供給機56よりもブンゼン反応器10側の位置に設けられている。この二酸化硫黄流量調節器57は、ブンゼン反応器10に送る二酸化硫黄の流量を調節する流量調節弁である。水供給ライン59は、硫酸反応器60とブンゼン反応器10とを接続し、硫酸反応器60で生成された水をブンゼン反応器10に導くラインである。冷却器58は、水供給ライン59に設けられている。この冷却器58は、硫酸反応器60で生成された気体の水を冷却して、液体の水にする。
【0022】
なお、二酸化硫黄供給ライン55中で、二酸化硫黄タンク54と硫酸反応器60との間に、硫酸反応器60からの二酸化硫黄を冷却する冷却器、及びこの二酸化硫黄を昇圧するコンプレッサを設けてもよい。
【0023】
ヨウ化水素反応設備IEは、ブンゼン反応設備BEで生成されたヨウ化水素を水素とヨウ素とに熱分解させ、水素を外部に排出すると共に、ヨウ素をブンゼン反応設備BEに送る設備である。このヨウ化水素反応設備IEは、第二蓄熱器70と、第二太陽光ガイド装置80と、複数のヨウ化水素反応器90と、ヨウ素供給ライン86と、を有する。
【0024】
第二蓄熱器70は、ケース21と、ケース21内に気体を送る第二送風機71と、ケース21内に配置された蓄熱体30と、を有する。第二送風機71の吐出口とケース21とは、第二気体ライン72で接続されている。この第二気体ライン72中には、第二気体ライン72を流れる流動用気体の流量を調節する第二気体調節弁73が設けられている。第二太陽光ガイド装置80は、太陽光Rを第二蓄熱器70に導いて、第二蓄熱器70の蓄熱体30を加熱する装置である。この第二太陽光ガイド装置80は、第一太陽光ガイド装置40と同様、太陽光Rを目的の位置に導く一以上のヘリオスタット41と、目的の位置に配置されている固定反射鏡42と、を有する。
【0025】
ヨウ化水素反応器90は、第二蓄熱器70の蓄熱体30に蓄えらえた熱を利用して、ヨウ化水素(液体)をヨウ素(気体)と水素(気体)とに熱分解させる反応器である。ヨウ素供給ライン86は、ヨウ化水素反応器90とブンゼン反応器10と接続し、ヨウ化水素反応器90からのヨウ素をブンゼン反応器10に導くラインである。
【0026】
制御装置130は、反応制御器131と、硫酸供給制御器132と、を有する。反応制御器131は、外部からブンゼン反応設備BEでの反応開始指示を受け付けると、ヨウ化水素ポンプ15及び二酸化硫黄供給機56に対して駆動を指示すると共に、二酸化硫黄流量調節器57に対して二酸化硫黄タンク54からブンゼン反応器10へ二酸化硫黄を送れる状態にするよう指示する。硫酸供給制御器132は、第一蓄熱器20の蓄熱体30の温度が予め定められた温度より高くなると、硫酸供給機52に対して駆動を指示すると共に、硫酸流量調節器53に対して硫酸タンク50から硫酸反応器60へ硫酸を送れる状態にするよう指示する。
【0027】
この制御装置130は、例えば、コンピュータで構成される。この場合、制御装置130の機能構成要素である硫酸供給制御器132及び反応制御器131は、いずれも、この機能を実現するためのプログラムが記憶されている外部記憶装置と、このプログラムを実行するCPUと、CPUの実行結果等が展開される主記憶装置と、を有して構成される。
【0028】
第一蓄熱器20及び第二蓄熱器70は、いずれも、前述したように、ケース21と、ケース21内に気体を送る送風機31(71)と、蓄熱体30と、を有する。第一蓄熱器20及び第二蓄熱器70は、いずれも、
図2に示すように、さらに、分散板29を有する。ケース21は、底板27と、この底板27と間隔をあけて対向する天板22と、底板27と天板22とを接続する側板28と、を有する。分散板29は、ケース21内を流動層室29fと気体室29gとに上下に仕切る板である。蓄熱体30は、複数の蓄熱材粒子である。蓄熱材粒子は、珪砂で形成されている。流動層室29fは、分散板29を基準にして上側の室である。この流動層室29f内には、複数の蓄熱材粒子が配置されている。気体室29gは、分散板29を基準にして下側の室である。分散板29には、気体室29gから流動層室29fへ貫通する複数の孔が形成されている。ケース21の底板27には、送風機31(71)からの気体を気体室29gに導く気体導入口27iが形成されている。この気体導入口27iから気体室29gに流入した気体は、分散板29の複数の孔を経て、流動層室29f内に流入し、流動層室29f内の複数の蓄熱材粒子を流動させる。すなわち、この気体は、流動層室29f内の複数の蓄熱材粒子を流動層にする。ケース21の側板28中の上部には、気体を排気する気体排気口28oが形成されている。ケース21の天板22は、天板本体23と窓24とを有する。天板本体23は、開口を有する。窓24は、光透過性を有する材料で形成され、開口を塞ぐ。光透過性を有する材料としては、例えば、石英ガラスである。ケース21には、蓄熱体30の温度を検知する温度計21tが取り付けられている。
【0029】
硫酸反応器60とヨウ化水素反応器90とは、本実施形態において同一構造である。これらの反応器60,90は、
図3に示すように、外筒61と、内筒62と、分離筒63と、対象物受入部64と、反応物排出部65と、触媒66と、を有する。外筒61は、筒状を成して両端を有する。この両端のうちの一端が閉端61cを成し、他端が開口61iを成す。この外筒61は、外筒61の閉端61cを含み且つ開口61iを含まない外筒本体61bの外周面が蓄熱体30に接し得るよう、ケース21に取り付けられている。内筒62は、筒状を成して両端を有する。この両端のうちの一端が入口開口62iを成し、他端が出口開口62oを成す。この内筒62の外径は、外筒61の内径よりも小さい。この内筒62は、内筒62の入口開口62iを含み且つ出口開口62oを含まない内筒本体62bの少なくとも一部が外筒本体61b内に位置するよう、配置されている。分離筒63は、筒状を成して両端を有する。この両端のうちの一端が閉端63cを成し、他端が出口開口63oを成す。この分離筒63の外径は、内筒62の内径よりも小さい。分離筒63は、分離筒63の閉端63cを含み且つ出口開口63oを含まない分離筒本体63bの少なくとも一部が外筒本体61b内及び内筒本体62b内に位置するよう、配置されている。
【0030】
分離筒63は、熱分解対象物Oの熱分解で得られた第一反応物R1と第二反応物R2とうち、第一反応物R1を分離筒63の内側に通す一方で、第二反応物R2を前記内側に通さない分離膜を有する。なお、硫酸反応器60における熱分解対象物Oは、硫酸であり、第一反応物R1は、二酸化硫黄及び酸素であり、第二反応物R2は、水及び未分解の硫酸である。また、ヨウ化水素反応器90における熱分解対象物Oは、ヨウ化水素であり、第一反応物R1は、水素であり、第二反応物R2は、ヨウ素及び未分解のヨウ化水素である。分離膜は、一定のサイズ未満の分子のみを通すフィルターとして機能し、多孔質材で形成されている。この分離膜は、例えば、アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、ゼオライト、シリカ、ガラス、カーボン等で形成されている。
【0031】
対象物受入部64は、熱分解対象物Oを受け入れる入口64iを有し、この入口64iから受け入れた熱分解対象物Oを外筒61の開口61iから外筒61と内筒62との間に導く部材である。硫酸反応器60の対象物受入部64における入口64iには、硫酸供給ライン51が接続されている。また、ヨウ化水素反応器90の対象物受入部64における入口64iには、ヨウ化水素ライン14が接続されている。反応物排出部65は、熱分解対象物Oの熱分解で得られた第二反応物R2を外部に排出する排出口65oを有する。硫酸反応器60の反応物排出部65における排出口65oには、水供給ライン59が接続されている。ヨウ化水素反応器90の反応物排出部65における排出口65oには、ヨウ素供給ライン86が接続されている。分離筒63の出口開口63oは、熱分解対象物Oの熱分解で得られた第一反応物R1を外部に排出する排出口を成す。硫酸反応器60における分離筒63の出口開口63oには、二酸化硫黄供給ライン55が接続されている。ヨウ化水素反応器90における分離筒63の出口開口63oには、水素ライン94が接続されている。
【0032】
前述した外筒61は、開口61iに対して閉端61cが上に位置するように傾斜して、ケース21の側板28に取り付けられている。このため、外筒61内の内筒62も、出口開口62oに対して入口開口62iが上に位置するよう傾斜している。さらに、内筒62内の分離筒63も、出口開口63oに対して閉端63cが上に位置するよう傾斜している。本実施形態では、流動層室29f内の複数の蓄熱材粒子を流動化させるために、ケース21の下部に気体室29gを設けており、ケース21の底板27に、外筒61を設けることが困難である。このため、本実施形態では、外筒61をケース21の側板28に取り付けている。
【0033】
触媒66は、熱分解対象物Oの熱分解を促進する触媒である。この触媒66は、分離筒本体63bの外周面中で、分離筒本体63bの少なくとも一部が外筒本体61b内及び内筒本体62b内に位置している部分に取り付けられている。硫酸反応器60における触媒66は、例えば、白金、酸化鉄(III)(Fe2O3)等である。また、ヨウ化水素反応器90における触媒66は、例えば、白金、活性炭等である。
【0034】
次に、以上で説明した水素製造プラントの動作について説明する。
【0035】
太陽が水素製造プラントの敷地を照らしていると、この太陽からの太陽光Rが第一太陽光ガイド装置40により第一蓄熱器20に導かれ、第一蓄熱器20の蓄熱体30が加熱される。この結果、この蓄熱体30の温度が上昇する。また、この太陽からの太陽光Rは、第二太陽光ガイド装置80により第二蓄熱器70に導かれ、第二蓄熱器70の蓄熱体30が加熱される。この結果、この蓄熱体30の温度が上昇する。
【0036】
制御装置130の反応制御器131は、第二蓄熱器70の蓄熱体30の温度が予め定められた温度よりも高くなった後、外部からブンゼン反応設備BEでの反応開始の指示を受け付けると、硫酸ポンプ13に対して駆動を指示する。この結果、分離器11内の硫酸(液体)が硫酸タンク50内に送られ、硫酸タンク50内には、液体の硫酸が蓄えられる。
【0037】
反応制御器131は、外部からブンゼン反応設備BEでの反応開始の指示を受け付けると、さらに、ヨウ化水素ポンプ15に対して駆動を指示する。この結果、分離器11内のヨウ化水素(液体)がヨウ化水素反応器90に送られる。
【0038】
液体のヨウ化水素は、ヨウ化水素反応器90の外筒61と内筒62との間に流入する。液体のヨウ化水素は、外筒本体61bの外部に存在する蓄熱体30との熱交換により、加熱されて気化する。前述したように、外筒61は、開口61iに対して閉端61cが上に位置するように傾斜し、この外筒61内の内筒62は、出口開口62oに対して入口開口62iが上に位置するよう傾斜している。このため、液体のヨウ化水素は、外筒61と内筒62との間に留まり、気体のヨウ化水素は、内筒62の入口開口62iから内筒62と分離筒63との間に流入する。気体のヨウ化水素は、この間も、蓄熱体30との熱交換により加熱される。この結果、以下の式(1)に示すように、気体のヨウ化水素(HI)は、ヨウ素(I2)と水素(H2)とに熱分解する。
2HI→I2+H2 (1)
【0039】
なお、ヨウ化水素反応器90より上流側に蒸留塔に設けた場合には、ヨウ化水素反応器90には、蒸留塔から気体のヨウ化水素が流入することになる。
【0040】
この熱分解反応は、分離筒63の外周面に取り付けられている触媒66により促進される。この触媒環境下での熱分解に必要な温度は、約400℃である。第二蓄熱器70の蓄熱体30の温度に対する予め定められた温度は、ヨウ化水素の熱分解に必要な温度よりも、例えば、50~100℃程度高い温度である。すなわち、この予め定められた温度は、例えば、450~500℃である。このように、ヨウ化水素の熱分解に必要な温度よりも、予め定められた温度を、例えば、50~100℃程度高い温度にすることで、蓄熱体30の温度がヨウ化水素の熱分解に必要な温度以上である限り、雲天時や夜間においても、この蓄熱体30の熱よりに熱分解反応を行うことができる。
【0041】
この熱分解反応で生成されたヨウ素と水素とのうち、第一反応物R1である気体の水素は、分離筒63の分離膜を通過して、分離筒63内に流入する。この水素は、分離筒63の出口開口63oから排出される。分離筒63の出口開口63oから排出された水素は、水素ライン94を介して、例えば、水素タンク等に蓄えられる。一方、熱分解反応で生成されたヨウ素と水素とのうち、第二反応物R2である気体のヨウ素及び未分解のヨウ化水素は、分離筒63の分離膜を通過できず、内筒62と分離筒63との間を経由して、反応物排出部65の排気口から流出する。
【0042】
ヨウ化水素反応器90から流出したヨウ素は、ヨウ素供給ライン86を介して、ブンゼン反応器10内に流入する。
【0043】
反応制御器131は、外部からブンゼン反応設備BEでの反応開始の指示を受け付けると、さらに、二酸化硫黄供給機56に対して駆動を指示すると共に、二酸化硫黄流量調節器57に対して二酸化硫黄タンク54からブンゼン反応器10へ二酸化硫黄を送れる状態にするよう指示する。この結果、二酸化硫黄タンク54内の気体の二酸化硫黄は、二酸化硫黄供給ライン55を介して、ブンゼン反応器10内に流入する。
【0044】
ブンゼン反応器10内には、水とヨウ素とヨウ化水素と硫酸との混合溶液が蓄えられている。ブンゼン反応器10内では、100℃以下で、以下の式(2)に示すように、液体のヨウ素(I2)と、気体の二酸化硫黄(SO2)と、液体の水(H2O)とがブンゼン反応して、液体のヨウ化水素(HI)及び液体の硫酸(H2SO4)になる。
I2+SO2+2H2O→2HI+H2SO4 (2)
【0045】
ブンゼン反応器10内で生成された液体のヨウ化水素及び液体の硫酸は、分離器11内に流入し、ここで、二液相分離現象及び比重の違いにより、両者が上層と下層とに分離され、この分離器11内で、分離された状態で一時的に蓄えられる。
【0046】
制御装置130の反応制御器131は、第二蓄熱器70の蓄熱体30の温度がヨウ化水素の熱分解に必要な温度(例えば、400℃)以下になった場合、又は、二酸化硫黄タンク54内に二酸化硫黄がなくなった場合、硫酸ポンプ13に対して停止を指示する。この結果、分離器11内の硫酸が硫酸タンク50内に送られなくなる。なお、反応制御器131は、二酸化硫黄タンク54に設けられている圧力計54pで検知されたタンク内圧力が予め定められた圧力より低くなると、二酸化硫黄タンク54内に二酸化硫黄がなくなったと判断する。
【0047】
反応制御器131は、第二蓄熱器70の蓄熱体30の温度がヨウ化水素の熱分解に必要な温度以下になった場合、又は、二酸化硫黄タンク54内に二酸化硫黄がなくなった場合、さらに、ヨウ化水素ポンプ15に対して停止を指示する。この結果、分離器11内のヨウ化水素は、ヨウ化水素反応器90に送られなくなる。このため、ヨウ化水素反応器90から、水素及びヨウ素が流出しなくなる。すなわち、水素が製造されなくなると共に、ブンゼン反応器10内にヨウ素が流入しなくなる。
【0048】
以上のように、本実施形態では、第二蓄熱器70の蓄熱体30の温度が予め定められた温度よりも高くなった後、外部からブンゼン反応設備BEでの反応開始の指示を受け付けると、ヨウ化水素反応設備IEでのヨウ化水素の熱分解反応、及びブンゼン反応設備BEでのブンゼン反応が実行される。
【0049】
制御装置130の硫酸供給制御器132は、第一蓄熱器20の蓄熱体30の温度が予め定められた温度よりも高くなると、硫酸供給機52に対して駆動を指示すると共に、硫酸流量調節器53に対して硫酸タンク50から硫酸反応器60へ硫酸を送れる状態にするよう指示する。この結果、硫酸タンク50内の液体の硫酸は、硫酸供給ライン51を介して、硫酸反応器60内に流入する。
【0050】
液体の硫酸は、硫酸反応器60の外筒61と内筒62との間に流入する。液体の硫酸は、外筒本体61bの外部に存在する蓄熱体30との熱交換により、加熱されて気化する。前述したように、外筒61は、開口61iに対して閉端61cが上に位置するように傾斜し、この外筒61内の内筒62は、出口開口62oに対して入口開口62iが上に位置するよう傾斜している。このため、液体の硫酸は、外筒61と内筒62との間に留まり、気体の硫酸は、内筒62の入口開口62iから内筒62と分離筒63との間に流入する。気体の硫酸は、この間も、蓄熱体30との熱交換により加熱される。この結果、以下の式(3)に示すように、気体の硫酸(H2SO4)は、二酸化硫黄(SO2)と酸素(O2)と水(H2O)とに熱分解する。
2H2SO4→2SO2+O2+2H2O (3)
【0051】
この熱分解反応で生成された二酸化硫黄と酸素と水とのうち、第一反応物R1である気体の二酸化硫黄及び気体の酸素は、分離筒63の分離膜を通過して、分離筒63内に流入する。この二酸化硫黄及び酸素は、分離筒63の出口開口63oから排出される。分離筒63の出口開口63oから排出された二酸化硫黄及び酸素は、二酸化硫黄タンク54内に蓄えられる。反応制御器131は、以下の条件を満たすと、二酸化硫黄供給機56に対して駆動を指示すると共に、二酸化硫黄流量調節器57に対して開を指示する。上記条件は、反応制御器131が外部からブンゼン反応設備BEでの反応開始の指示を受け付け、又は、自身がブンゼン反応設備BEでの反応を開始してよいと判断し、且つ二酸化硫黄タンク54内の二酸化硫黄の量が予め定められた量以上であることである。この結果、二酸化硫黄タンク54内から二酸化硫黄及び酸素が、ブンゼン反応器10に送られる。一方、熱分解反応で生成された二酸化硫黄と酸素と水とのうち、第二反応物R2である気体の水は、分離筒63の分離膜を通過できず、内筒62と分離筒63との間を経由して、反応物排出部65の排気口から流出する。この気体の水は、冷却器58で冷却されて液体の水になった後、水供給ライン59を介して、ブンゼン反応器10内に流入する。
【0052】
この熱分解に必要な温度は、触媒66が存在していたとしても単なる容器内では、850~900℃である。本実施形態では、a)熱分解反応環境下に熱分解反応を促進する触媒66が存在すること、b)熱分解で生成された二酸化硫黄と酸素とは、触媒層内の熱分解環境下に留まらず、分離筒63内に流入すること、等の理由により、この熱分解に必要な温度は、650~600℃程度まで低くなる。第一蓄熱器20の蓄熱体30の温度に対する予め定められた温度は、硫酸の熱分解に必要な温度よりも、例えば、50~100℃程度高い温度である。すなわち、本実施形態において、この予め定められた温度は、例えば、650~750℃である。このように、硫酸の熱分解に必要な温度よりも、予め定められた温度を、例えば、50~100℃程度高い温度にすることで、蓄熱体30の温度が硫酸の熱分解に必要な温度以上である限り、雲天時や夜間においても、この蓄熱体30の熱よりに熱分解反応を行うことができる。
【0053】
硫酸供給制御器132は、第一蓄熱器20の蓄熱体30の温度が硫酸の熱分解に必要な温度(例えば、650~600℃)以下になると、硫酸供給機52に対して停止を指示すると共に、硫酸流量調節器53に対して硫酸タンク50から硫酸反応器60へ硫酸を送れない状態にするよう指示する。この結果、硫酸タンク50内の液体の硫酸は、硫酸反応器60内に流入しなくなる。
【0054】
以上のように、本実施形態では、第一蓄熱器20の蓄熱体30の温度が予め定められた温度よりも高くなると、硫酸反応設備SEでの硫酸の熱分解反応が実行される。ヨウ化水素反応設備IEでのヨウ化水素の熱分解反応、及びブンゼン反応設備BEでのブンゼン反応が実行されている間、第一蓄熱器20の蓄熱体30の温度が予め定められた温度より高くなることがある。この場合には、ヨウ化水素反応設備IEでのヨウ化水素の熱分解反応と、ブンゼン反応設備BEでのブンゼン反応と、硫酸反応設備SEでの硫酸の熱分解反応とが同時進行する。
【0055】
本実施形態では、太陽光のエネルギーを硫酸の熱分解及びヨウ化水素の熱分解に利用している。
【0056】
ところで、硫酸の熱分解に必要な温度は、ヨウ化水素の熱分解に必要な温度よりも高い。夜間や雲天時には、蓄熱体が保持する熱の利用に伴い、蓄熱体に温度降下が生じて、硫酸の熱分解率が低下する。このため、水素製造プラントの年間水素製造量が低下するか、水素製造プラントの稼働率が低下する。従って、特許文献1に記載のプラントでは、太陽光のエネルギーを水素製造に十分に有効利用しているとは言い難い。
【0057】
本実施形態の硫酸反応設備SEは、ブンゼン反応器10に送る二酸化硫黄を一時的に蓄える二酸化硫黄タンク54を備えている。このため、本実施形態では、二酸化硫黄タンク54内に二酸化硫黄を蓄えている限り、ブンゼン反応器10に流入するヨウ素に対して、ブンゼン反応に必要な二酸化硫黄を確保することができる。よって、本実施形態でも、ブンゼン反応を効率的に行うことができ、太陽光のエネルギーを水素製造に有効利用することができる。この結果、本実施形態では、水素製造プラントの稼働率を向上させることができる。
【0058】
なお、本実施形態の反応制御器131は、第二蓄熱器70の蓄熱体30の温度が予め定められた温度よりも高くなった後、外部からブンゼン反応設備BEでの反応開始の指示を受け付けた場合に、硫酸ポンプ13、ヨウ化水素ポンプ15、二酸化硫黄供給機56、及び二酸化硫黄流量調節器57に指示を与える。しかしながら、反応制御器131は、外部からブンゼン反応設備BEでの反応開始の指示を受け付けた後、第二蓄熱器70の蓄熱体30の温度が予め定められた温度よりも高くなった場合に、硫酸ポンプ13、ヨウ化水素ポンプ15、二酸化硫黄供給機56、及び二酸化硫黄流量調節器57に指示を与えてもよい。また、反応制御器131は、自身がブンゼン反応設備BEでの反応を開始してよいと判断した場合に、硫酸供給機52、ヨウ化水素ポンプ15、二酸化硫黄供給機56、及び二酸化硫黄流量調節器57に指示を与えてもよい。この場合、反応制御器131は、例えば、第二蓄熱器70の蓄熱体30の温度が予め定められた温度よりも高くなったこと、及び、二酸化硫黄タンク54内の圧力が予め定められた圧力以上であることを条件にして、ブンゼン反応設備BEでの反応を開始してよいと判断する。
【0059】
「第二実施形態」
本開示に係る水素製造プラントの第二実施形態について、
図4を用いて説明する。
【0060】
本実施形態の水素製造プラントも、第一実施形態の水素製造プラントと同様、ブンゼン反応設備BEと、硫酸反応設備SEと、ヨウ化水素反応設備IEaと、制御装置130aと、を備える。但し、本実施形態のヨウ化水素反応設備IEaは、第一実施形態のヨウ化水素反応設備IEと異なる。この関係で、本実施形態の制御装置130aも、第一実施形態の制御装置130と異なる。
【0061】
本実施形態のヨウ化水素反応設備IEaは、第一実施形態のヨウ化水素反応設備IEと同様、第二蓄熱器70と、第二太陽光ガイド装置80と、ヨウ化水素反応器90と、ヨウ素供給ライン86と、を有する。本実施形態のヨウ化水素反応設備IEaは、さらに、ヨウ化水素タンク81と、ヨウ化水素供給ライン82と、ヨウ化水素供給機83と、ヨウ化水素流量調節器84と、ヨウ素タンク85と、ヨウ素供給機87と、ヨウ素流量調節器88と、を有する。
【0062】
ヨウ化水素タンク81は、ヨウ化水素ライン14に接続され、ブンゼン反応設備BEからのヨウ化水素を一時的に蓄えるタンクである。ヨウ化水素供給ライン82は、ヨウ化水素タンク81とヨウ化水素反応器90とを接続し、ヨウ化水素タンク81内のヨウ化水素をヨウ化水素反応器90に導くラインである。なお、このヨウ化水素供給ライン82は、ヨウ化水素反応器90の対象物受入部64における入口64iに接続されている。ヨウ化水素供給機83は、ヨウ化水素供給ライン82に設けられ、ヨウ化水素供給ライン82内の液体のヨウ化水素をヨウ化水素反応器90に送るポンプである。ヨウ化水素流量調節器84は、ヨウ化水素供給ライン82に設けられ、ヨウ化水素反応器90に送るヨウ化水素の流量を調節する流量調節弁である。
【0063】
ヨウ素タンク85は、ヨウ素供給ライン86に設けられている。このヨウ素タンク85は、ヨウ化水素反応器90で生成されたヨウ素(気体)を一時的に蓄えるタンクである。このヨウ素タンク85には、圧力計85pが設けられている。ヨウ素供給機87は、ヨウ素供給ライン86中で、ヨウ素タンク85よりもブンゼン反応器10側の位置に設けられている。このヨウ素供給機87は、ヨウ素タンク85内の気体のヨウ素をブンゼン反応器10に送る圧縮機である。ヨウ素流量調節器88は、ヨウ素供給ライン86中で、ヨウ素供給機87よりもブンゼン反応器10側の位置に設けられている。このヨウ素流量調節器88は、ブンゼン反応器10に送るヨウ素の流量を調節する流量調節弁である。
【0064】
本実施形態の制御装置130aは、第一実施形態の制御装置130と同様、反応制御器131と、硫酸供給制御器132と、を有する。本実施形態の制御装置130aは、さらに、ヨウ化水素供給制御器133を有する。ヨウ化水素供給制御器133は、第二蓄熱器70の蓄熱体30の温度が予め定められた温度より高くなると、ヨウ化水素供給機83に対して駆動を指示すると共に、ヨウ化水素流量調節器84に対してヨウ化水素タンク81からヨウ化水素反応器90へヨウ化水素を送れる状態にするよう指示する。
【0065】
次に、以上で説明した水素製造プラントの動作について説明する。
【0066】
制御装置130aの反応制御器131は、外部からブンゼン反応設備BEでの反応開始の指示を受け付け、且つ二酸化硫黄タンク54内の二酸化硫黄の量が予め定められた量以上であることを条件として、二酸化硫黄供給機56に対して駆動を指示すると共に、二酸化硫黄流量調節器57に対して二酸化硫黄タンク54からブンゼン反応器10へ二酸化硫黄を送れる状態にするよう指示する。この結果、二酸化硫黄タンク54内の気体の二酸化硫黄は、二酸化硫黄供給ライン55を介して、ブンゼン反応器10内に流入する。
【0067】
反応制御器131は、外部からブンゼン反応設備BEでの反応開始の指示を受け付け、且つヨウ素タンク85内のヨウ素の量が予め定められた量以上であることを条件として、ヨウ素供給機87に対して駆動を指示すると共に、ヨウ素流量調節器88に対してヨウ素タンク85からブンゼン反応器10へヨウ素を送れる状態にするよう指示する。この結果、ヨウ素タンク85内の気体のヨウ素は、ヨウ素供給ライン86を介して、ブンゼン反応器10内に流入する。
【0068】
ブンゼン反応器10内では、ブンゼン反応器10内の液体の水と、二酸化硫黄タンク54からの二酸化硫黄と、ヨウ素タンク85からのヨウ素とが、ブンゼン反応する。
【0069】
反応制御器131は、外部からブンゼン反応設備BEでの反応開始の指示を受け付けると、さらに、硫酸ポンプ13及びヨウ化水素ポンプ15に対して駆動を指示する。この結果、分離器11内の硫酸(液体)が硫酸タンク50内に送られ、硫酸タンク50内には、液体の硫酸が蓄えられる。さらに、分離器11内のヨウ化水素(液体)がヨウ化水素タンク81内に送られ、ヨウ化水素タンク81内には、液体のヨウ化水素が蓄えられる。
【0070】
反応制御器131は、二酸化硫黄タンク54内に二酸化硫黄がなくなった場合、又は、ヨウ素タンク85内のヨウ素がなくなった場合、二酸化硫黄供給機56に対して停止を指示すると共に、二酸化硫黄流量調節器57に対して二酸化硫黄タンク54からブンゼン反応器10へ二酸化硫黄を送れない状態にするよう指示する。この結果、二酸化硫黄タンク54内からブンゼン反応器10内へ二酸化硫黄は、流入しなくなる。なお、反応制御器131は、ヨウ素タンク85に設けられている圧力計85pで検知されたタンク内圧力が予め定められた圧力より低くなると、ヨウ素タンク85内にヨウ素がなくなったと判断する。
【0071】
反応制御器131は、二酸化硫黄タンク54内に二酸化硫黄がなくなった場合、又は、ヨウ素タンク85内のヨウ素がなくなった場合、さらに、ヨウ素供給機87に対して停止を指示すると共に、ヨウ素流量調節器88に対してヨウ素タンク85からブンゼン反応器10へヨウ素を送れない状態にするよう指示する。この結果、ヨウ素タンク85内からブンゼン反応器10内へヨウ素は、流入しなくなる。
【0072】
制御装置130aの硫酸供給制御器132は、第一蓄熱器20の蓄熱体30の温度が予め定められた温度(例えば、650~750℃)よりも高くなると、第一実施形態と同様、硫酸供給機52に対して駆動を指示すると共に、硫酸流量調節器53に対して硫酸タンク50から硫酸反応器60へ硫酸を送れる状態にするよう指示する。この結果、硫酸タンク50内の液体の硫酸は、硫酸供給ライン51を介して、硫酸反応器60内に流入する。硫酸反応器60内では、硫酸が熱分解反応して、二酸化硫黄と酸素と水とが生成される。二酸化硫黄と酸素とは、二酸化硫黄供給ライン55を介して、二酸化硫黄タンク54に蓄えられる。
【0073】
硫酸供給制御器132は、第一蓄熱器20の蓄熱体30の温度が硫酸の熱分解に必要な温度(例えば、650~600℃)以下になると、硫酸供給機52に対して停止を指示すると共に、硫酸流量調節器53に対して硫酸タンク50から硫酸反応器60へ硫酸を送れない状態にするよう指示する。この結果、硫酸タンク50内の液体の硫酸は、硫酸反応器60内に流入しなくなる。
【0074】
制御装置130aのヨウ化水素供給制御器133は、第二蓄熱器70の蓄熱体30の温度が予め定められた温度(例えば、450~500℃))よりも高くなると、ヨウ化水素供給機83に対して駆動を指示すると共に、ヨウ化水素流量調節器84に対してヨウ化水素タンク81からヨウ化水素反応器90へヨウ化水素を送れる状態にするよう指示する。この結果、ヨウ化水素タンク81内の液体のヨウ化水素は、ヨウ化水素供給ライン82を介して、ヨウ化水素反応器90内に流入する。ヨウ化水素反応器90内では、ヨウ化水素が熱分解反応して、ヨウ素と水素とが生成される。ヨウ素は、ヨウ素供給ライン86を介して、ヨウ素タンク85に蓄えられる。
【0075】
ヨウ化水素供給制御器133は、第二蓄熱器70の蓄熱体30の温度がヨウ化水素の熱分解に必要な温度(例えば、400℃)以下になると、ヨウ化水素供給機83に対して停止を指示すると共に、ヨウ化水素流量調節器84に対してヨウ化水素タンク81からヨウ化水素反応器90へヨウ化水素を送れない状態にするよう指示する。この結果、ヨウ化水素タンク81内の液体のヨウ化水素は、ヨウ化水素反応器90内に流入しなくなる。
【0076】
本実施形態の水素製造プラントも、第一実施形態の水素製造プラントと同様、ブンゼン反応器10に送る二酸化硫黄を一時的に蓄える二酸化硫黄タンク54を備えている。このため、本実施形態でも、二酸化硫黄タンク54内に二酸化硫黄を蓄えている限り、ブンゼン反応器10に流入するヨウ素に対して、ブンゼン反応に必要な二酸化硫黄を確保することができる。よって、本実施形態でも、ブンゼン反応を効率的に行うことができ、太陽光のエネルギーを水素製造に有効利用することができる。
【0077】
本実施形態の水素製造プラントは、ブンゼン反応器10に送るヨウ素を一時的に蓄えてヨウ素タンク85を備えている。このため、本実施形態では、ヨウ化水素の熱分解反応とブンゼン反応とを同時に実行しなくてもよく、第一実施形態よりもプラントの運用態様のパターンを多くすることができる。従って、例えば、ヨウ化水素反応器90での水素生成により、ヨウ化水素タンク81内のヨウ化水素が不足してきたときには、ブンゼン反応設備BEでのブンゼン反応を実行することで、ヨウ化水素タンク81内のヨウ化水素を補うことができる。
【0078】
「第三実施形態」
本開示に係る水素製造プラントの第三実施形態について、
図5を用いて説明する。
【0079】
本実施形態の水素製造プラントは、第二実施形態の水素製造プラントに、第二硫酸反応設備SEb及び第二ヨウ化水素反応設備IEbを追加したプラントである。なお、以下の説明の都合上、第二実施形態の水素製造プラントにおける硫酸反応設備SEを第一硫酸反応設備SEとし、第二実施形態の水素製造プラントにおけるヨウ化水素反応設備IEaを第一ヨウ化水素反応設備IEaとする。
【0080】
本実施形態のブンゼン反応設備BEbは、第一及び第二実施形態の水素製造プラントにおけるブンゼン反応設備BEと同様、ブンゼン反応器10と、分離器11と、第一硫酸反応設備SEに対する第一硫酸ライン12と、第一硫酸反応設備SEに対する第一硫酸ポンプ13と、第一ヨウ化水素反応設備IEaに対する第一ヨウ化水素ライン14と、第一ヨウ化水素反応設備IEaに対する第一ヨウ化水素ポンプ15と、水補給ライン16と、を有する。本実施形態のブンゼン反応設備BEbは、さらに、第二硫酸反応設備SEbに対する第二硫酸ライン12bと、第二硫酸反応設備SEbに対する第二硫酸ポンプ13bと、第二ヨウ化水素反応設備IEbに対する第二ヨウ化水素ライン14bと、第二ヨウ化水素反応設備IEbに対する第二ヨウ化水素ポンプ15bと、を有する。
【0081】
第二硫酸ライン12bは、第一硫酸ライン12から分岐している。第二硫酸ポンプ13bは、この第二硫酸ライン12bに設けられている。第二ヨウ化水素ライン14bは、第一ヨウ化水素ライン14から分岐している。第二ヨウ化水素ポンプ15bは、この第二ヨウ化水素ライン14bに設けられている。
【0082】
なお、本実施形態のブンゼン反応設備BEbも、第一及び第二実施形態の水素製造プランにおけるブンゼン反応設備BEと同様、さらに、硫酸精製塔、硫酸濃縮塔、ヨウ化水素精製塔、ヨウ化水素濃縮器、ヨウ化水素蒸留塔をさらに有してもよい。
【0083】
第二硫酸反応設備SEbも、第一硫酸反応設備SEと同様、ブンゼン反応設備BEbからの硫酸を二酸化硫黄と酸素と水とに熱分解させ、二酸化硫黄及び水をブンゼン反応設備BEbに送る設備である。この第二硫酸反応設備SEbは、第一蓄熱器20bと、第一太陽光ガイド装置40bと、二酸化硫黄供給ライン55bと、二酸化硫黄流量調節器57bと、冷却器58bと、水供給ライン59bと、複数の硫酸反応器60bと、を有する。但し、第二硫酸反応設備SEbは、第一硫酸反応設備SEにおける硫酸タンク50と、硫酸供給ライン51と、硫酸供給機52と、硫酸流量調節器53と、二酸化硫黄タンク54と、二酸化硫黄供給機56と、を有していない。
【0084】
第一蓄熱器20b、第一太陽光ガイド装置40b、二酸化硫黄流量調節器57b、冷却器58b、水供給ライン59b、硫酸反応器60bは、いずれも、第一硫酸反応設備SEにおける対応機器又はラインと同様である。第二硫酸ライン12bは、複数の硫酸反応器60bに接続されている。
【0085】
第二ヨウ化水素反応設備IEbも、第一ヨウ化水素反応設備IEaと同様、ブンゼン反応設備BEbで生成されたヨウ化水素を水素とヨウ素とに熱分解させ、水素を外部に排出すると共に、ヨウ素をブンゼン反応設備BEbに送る設備である。この第二ヨウ化水素反応設備IEbは、第二蓄熱器70bと、第二太陽光ガイド装置80bと、複数のヨウ化水素反応器90bと、ヨウ素供給ライン86bと、ヨウ素流量調節器88bと、水素ライン94bと、を有する。但し、この第二ヨウ化水素反応設備IEbは、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおけるヨウ化水素タンク81と、ヨウ化水素供給ライン82と、ヨウ化水素供給機83と、ヨウ化水素流量調節器84と、ヨウ素タンク85と、ヨウ素供給機87と、を有していない。
【0086】
第二蓄熱器70b、第二太陽光ガイド装置80b、ヨウ化水素反応器90b、ヨウ素供給ライン86b、ヨウ素流量調節器88bは、いずれも、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおける対応機器又はラインと同様である。第二ヨウ化水素ライン14bは、複数のヨウ化水素反応器90bに接続されている。
【0087】
本実施形態の制御装置130bは、第二実施形態の制御装置130aと同様、反応制御器131と、硫酸供給制御器132と、ヨウ化水素供給制御器133を有する。
【0088】
次に、以上で説明した水素製造プラントの動作について説明する。
【0089】
太陽が水素製造プラントの敷地を照らしていると、第一硫酸反応設備SEにおける第一蓄熱器20の蓄熱体30、第二硫酸反応設備SEbにおける第一蓄熱器20bの蓄熱体30、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおける第二蓄熱器70の蓄熱体30、第二ヨウ化水素反応設備IEbにおける第二蓄熱器70bの蓄熱体30は、太陽光により加熱される。この結果、これら蓄熱体30の温度が上昇する。
【0090】
制御装置130bの反応制御器131は、第一蓄熱器20,20bの蓄熱体30の温度が前述の予め定められた温度(例えば、650~750℃)よりも高くなり、且つ、第二蓄熱器70,70bの蓄熱体30の温度が前述の予め定められた温度(例えば、450~500℃)よりも高くなった後、外部からブンゼン反応設備BEbでの反応開始の指示を受け付けると、第二硫酸ポンプ13b及び第二ヨウ化水素ポンプ15bに対して、駆動を指示する。
【0091】
この結果、分離器11内の硫酸が、第二硫酸ライン12bを介して、第二硫酸反応設備SEbにおける複数の硫酸反応器60b内に送られる。さらに、分離器11内のヨウ化水素が、第二ヨウ化水素ライン14bを介して、第二ヨウ化水素反応設備IEbにおける複数のヨウ化水素反応器90b内に送られる。複数の硫酸反応器60b内では、硫酸の熱分解反応により、二酸化硫黄と酸素と水とが生成される。複数の硫酸反応器60b内で生成された二酸化硫黄は、第二硫酸反応設備SEbにおける二酸化硫黄供給ライン55b及び二酸化硫黄流量調節器57bを介して、ブンゼン反応器10に流入する。また、複数の硫酸反応器60b内で生成された水は、第二硫酸反応設備SEbにおける冷却器58b及び水供給ライン59bを介して、ブンゼン反応器10内に流入する。複数のヨウ化水素反応器90b内では、ヨウ化水素の熱分解反応により、ヨウ素と水素とが生成される。複数のヨウ化水素反応器90b内で生成された水素は、水素ライン94bを介して、例えば、水素タンク等に流入する。また、複数のヨウ化水素反応器90b内で生成されたヨウ素は、第二ヨウ化水素反応設備IEbにおけるヨウ素供給ライン86b及びヨウ素流量調節器88bを介して、ブンゼン反応器10内に流入する。
【0092】
ブンゼン反応器10内では、第二硫酸反応設備SEbからの二酸化硫黄及び水と、第二ヨウ化水素反応設備IEbからのヨウ素とがブンゼン反応して、ヨウ化水素及び硫酸になる。これらヨウ化水素及び硫酸は、分離器11に送られ、ここで、これらが分離している状態で一時的に蓄えられる。
【0093】
制御装置130bの硫酸供給制御器132は、第一硫酸反応設備SEにおける硫酸タンク50内の硫酸の量が予め定められた量以下になると、第一硫酸ポンプ13に対して駆動を指示する。このため、硫酸タンク50内の硫酸の量は、基本的に、予め定められた量以上である。また、ヨウ化水素供給制御器133は、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおけるヨウ化水素タンク81内のヨウ化水素の量が予め定められた量以下になると、第一ヨウ化水素ポンプ15に対して駆動を指示する。このため、ヨウ化水素タンク81内のヨウ化水素の量は、基本的に、予め定められた量以上である。
【0094】
制御装置130bの反応制御器131は、外部からブンゼン反応設備BEbでの反応開始の指示を受け付けると、さらに、硫酸供給制御器132に対してその旨を伝える。硫酸供給制御器132は、反応制御器131から反応開始の指示を受け付けると、第一硫酸反応設備SEにおける硫酸供給機52に対して駆動を指示すると共に、第一硫酸反応設備SEにおける硫酸流量調節器53に対して開を指示する。この結果、第一硫酸反応設備SEにおける硫酸タンク50内の硫酸が、硫酸供給ライン51を介して、第一硫酸反応設備SEにおける複数の硫酸反応器60内に送られる。複数の硫酸反応器60内では、硫酸の熱分解反応により、二酸化硫黄と酸素と水とが生成される。複数の硫酸反応器60内で生成された二酸化硫黄は、第一硫酸反応設備SEにおける二酸化硫黄タンク54内に蓄えられる。このとき、第一硫酸反応設備SEにおける二酸化硫黄供給機56は駆動しておらず、且つ、第一硫酸反応設備SEにおける二酸化硫黄流量調節器57が閉じている。このため、第一硫酸反応設備SEで生成された二酸化硫黄は、ブンゼン反応器10に流入せず、二酸化硫黄タンク54内に留まる。また、第一硫酸反応設備SEにおける複数の硫酸反応器60内で生成された水は、第一硫酸反応設備SEにおける、冷却器58及び水供給ライン59を介して、ブンゼン反応器10内に流入する。
【0095】
反応制御器131は、外部からブンゼン反応設備BEbでの反応開始の指示を受け付けると、さらに、ヨウ化水素供給制御器133に対してその旨を伝える。ヨウ化水素供給制御器133は、反応制御器131から反応開始の指示を受け付けると、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおけるヨウ化水素供給機83に対して駆動を指示すると共に、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおけるヨウ化水素流量調節器84に対して開を指示する。この結果、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおけるヨウ化水素タンク81内のヨウ化水素が、ヨウ化水素供給ライン82を介して、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおける複数のヨウ化水素反応器90内に送られる。複数のヨウ化水素反応器90内では、ヨウ化水素の熱分解反応により、ヨウ素と水素とが生成される。複数のヨウ化水素反応器90内で生成された水素は、水素ライン94を介して、例えば、水素タンク等に流入する。また、複数のヨウ化水素反応器90内で生成されたヨウ素は、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおけるヨウ素タンク85内に蓄えられる。このとき、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおけるヨウ素供給機87は駆動しておらず、且つ、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおけるヨウ素流量調節器88が閉じているため、第一ヨウ化水素反応設備IEaで生成されたヨウ素は、ブンゼン反応器10に流入せず、ヨウ素タンク85内に留まる。
【0096】
以上のように、本実施形態では、第二硫酸反応設備SEbがブンゼン反応器10に二酸化硫黄を供給しているときには、第一硫酸反応設備SEはブンゼン反応器10に二酸化硫黄を供給しない。また、本実施形態では、第二ヨウ化水素反応設備IEbがブンゼン反応器10にヨウ素を供給しているときには、第一ヨウ化水素反応設備IEaはブンゼン反応器10にヨウ素を供給しない。
【0097】
晴天から雲天に変化し、又は昼間から夜間に変化し、太陽が水素製造プラントの敷地を照らさなくなると、第一硫酸反応設備SEにおける第一蓄熱器20の蓄熱体30の温度、第二硫酸反応設備SEbにおける第一蓄熱器20bの蓄熱体30の温度、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおける第二蓄熱器70の蓄熱体30の温度、第二ヨウ化水素反応設備IEbにおける第二蓄熱器70bの蓄熱体30の温度が低下する。
【0098】
反応制御器131は、第一蓄熱器20,20bの蓄熱体30の温度が前述の予め定められた温度(例えば、650~750℃)よりも低く硫酸の熱分解反応に必要な温度(600~650℃)に近くなると(例えば、620~670℃)、第二硫酸ポンプ13bに対して停止を指示すると共に、第二硫酸反応設備SEbにおける二酸化硫黄流量調節器57bに対して閉を指示する。この結果、第二硫酸反応設備SEbからブンゼン反応器10に二酸化硫黄及び水が供給されなくなる。また、反応制御器131は、硫酸供給制御器132に対して、第一蓄熱器20,20bの蓄熱体30の温度が前述の予め定められた温度よりも低く硫酸の熱分解反応に必要な温度に近くなった旨を伝える。硫酸供給制御器132は、第一硫酸反応設備SEにおける硫酸供給機52に対して停止を指示すると共に、第一硫酸反応設備SEにおける硫酸流量調節器53に対して閉を指示する。また、反応制御器131は、第一硫酸反応設備SEにおける二酸化硫黄供給機56に対して駆動を指示すると共に、第一硫酸反応設備SEにおける二酸化硫黄流量調節器57に対して開を指示する。なお、反応制御器131は、外部からブンゼン反応設備BEbでの反応開始の指示を受け付け、又は、自身がブンゼン反応設備BEbでの反応を開始してよいと判断し、且つ二酸化硫黄タンク54内の二酸化硫黄の量が予め定められた量以上であり、さらに、第二硫酸反応設備SEbからブンゼン反応設備BEbへの二酸化硫黄の供給が停止したことを条件として、二酸化硫黄供給機56への駆動指示等を行う。この結果、第一硫酸反応設備SEでは、二酸化硫黄及び水が生成されなくなるものの、この第一硫酸反応設備SEの二酸化硫黄タンク54内の二酸化硫黄がブンゼン反応器10に流入する。
【0099】
制御装置130bの反応制御器131は、第二蓄熱器70,70bの蓄熱体30の温度が前述の予め定められた温度(例えば、450~500℃)よりも低くヨウ化水素の熱分解反応に必要な温度(約400℃)に近くなると(例えば、約420℃)、第二ヨウ化水素ポンプ15bに対して停止を指示すると共に、第二ヨウ化水素反応設備IEbにおけるヨウ素流量調節器88に対して閉を指示する。この結果、第二ヨウ化水素反応設備IEbからブンゼン反応器10にヨウ素が供給されなくなる。また、反応制御器131は、ヨウ化水素供給制御器133に対して、第二蓄熱器70,70bの蓄熱体30の温度が前述の予め定められた温度よりも低くヨウ化水素の熱分解反応に必要な温度に近くなった旨を伝える。ヨウ化水素供給制御器133は、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおけるヨウ化水素供給機83に対して停止を指示すると共に、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおけるヨウ化水素流量調節器84に対して閉を指示する。また、反応制御器131は、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおけるヨウ素供給機87に対して駆動を指示すると共に、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおけるヨウ素流量調節器88に対して開を指示する。なお、反応制御器131は、外部からブンゼン反応設備BEbでの反応開始の指示を受け付け、又は、自身がブンゼン反応設備BEbでの反応を開始してよいと判断し、且つヨウ素タンク85内のヨウ素の量が予め定められた量以上であり、さらに、第二ヨウ化水素反応設備IEbからブンゼン反応設備BEbへのヨウ素の供給が停止したことを条件として、ヨウ素供給機87への駆動指示等を行う。この結果、第一ヨウ化水素反応設備IEaでは、ヨウ素及び水素が生成されなくなるものの、この第一ヨウ化水素反応設備IEaのヨウ素タンク85内のヨウ素がブンゼン反応器10に流入する。
【0100】
以上のように、本実施形態では、第一蓄熱器20,20bの蓄熱体30の温度が前述の予め定められた温度よりも低く硫酸の熱分解反応に必要な温度に近くなり、硫酸反応器60,60bでの硫酸の熱分解反応量が低下すると、若しくは熱分解反応がしなくなると、第二硫酸反応設備SEbがブンゼン反応器10に二酸化硫黄を供給しなくなり、第一硫酸反応設備SEは二酸化硫黄タンク54内の二酸化硫黄をブンゼン反応器10に供給するようになる。また、本実施形態では、第二蓄熱器70,70bの蓄熱体30の温度が前述の予め定められた温度よりも低くヨウ化水素の熱分解反応に必要な温度に近くなり、ヨウ化水素反応器90でのヨウ化水素の熱分解反応量が低下すると、若しくは熱分解反応がしなくなると、第二ヨウ化水素反応設備IEbがブンゼン反応器10にヨウ素を供給しなくなり、第一ヨウ化水素反応設備IEaはヨウ素タンク85内のヨウ素をブンゼン反応器10に供給するようになる。
【0101】
反応制御器131は、圧力計54pで検知されたタンク内圧力に基づいて、第一硫酸反応設備SEにおける二酸化硫黄タンク54内の二酸化硫黄がなくなったと判断すると、第一硫酸反応設備SEにおける二酸化硫黄供給機56に対して停止を指示すると共に、第一硫酸反応設備SEにおける二酸化硫黄流量調節器57に対して閉を指示する。また、反応制御器131は、圧力計85pで検知されたタンク内圧力に基づいて、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおけるヨウ素タンク85内のヨウ素がなくなったと判断すると、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおけるヨウ素供給機87に対して停止を指示すると共に、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおけるヨウ素流量調節器88に対して閉を指示する。
【0102】
本実施形態では、第一硫酸反応設備SEは、太陽が水素製造プラントの敷地を照らしているとき、硫酸反応器60で生成された二酸化硫黄をブンゼン反応器10に供給せずに、二酸化硫黄タンク54内に溜めておき、太陽が水素製造プラントの敷地を照らさなくなると、この二酸化硫黄タンク54内の二酸化硫黄をブンゼン反応器10に供給する。さらに、本実施形態では、第一ヨウ化水素反応設備IEaは、太陽が水素製造プラントの敷地を照らしているとき、ヨウ化水素反応器90で生成されたヨウ素をブンゼン反応器10に供給せずに、ヨウ素タンク85内に溜めておき、太陽が水素製造プラントの敷地を照らさなくなると、このヨウ素タンク85内のヨウ素をブンゼン反応器10に供給する。このため、本実施形態では、太陽が水素製造プラントの敷地を照らさなくなっても、長時間にわたって、ブンゼン反応器10内でブンゼン反応が行われる。従って、本実施形態では、第一実施形態や第二実施形態よりも、水素製造プラントの稼働率を向上させることができる。
【0103】
本実施形態の水素製造プラントは、前述したように、第二実施形態の水素製造プラントに、第二硫酸反応設備SEb及び第二ヨウ化水素反応設備IEbを追加したプラントである。しかしながら、第一実施形態の水素製造プラントに、本実施形態の第二硫酸反応設備SEbを追加してもよい。
【0104】
「第四実施形態」
本開示に係る水素製造プラントの第四実施形態について、
図6を用いて説明する。
【0105】
本実施形態の水素製造プラントは、第一実施形態の水素製造プラントに、高温気体供給設備HGEを追加したプラントである。
【0106】
高温気体供給設備HGEは、予備送風機101と、気体加熱器102と、高温気体ライン103と、第一高温気体調節弁104aと、第二高温気体調節弁104bと、を有する。
【0107】
気体加熱器102は、高温媒体発生源105から高温媒体と気体とを熱交換させて、気体を加熱する熱交換器である。予備送風機101は、気体加熱器102に気体を圧送する。高温媒体発生源105は、原子炉等の高温ガス炉等である。この場合、高温媒体は、例えば、900℃以上のヘリウムガスである。気体加熱器102は、このような高温媒体と気体とを熱交換させて、この気体を例えば800℃程度まで加熱する。高温気体ライン103は、気体加熱器102で加熱された気体である高温気体が流れるラインである。この高温気体ライン103は、気体加熱器102に接続されている主高温気体ライン103mと、この主高温気体ライン103mから分岐している第一高温気体ライン103a及び第二高温気体ライン103bと、を有する。第一高温気体ライン103aは、第一気体ライン32中で、第一気体調節弁33よりも第一蓄熱器20のケース21側の位置に接続されている。この第一高温気体ライン103aには、第一高温気体調節弁104aが設けられている。第二高温気体ライン103bは、第二気体ライン72中で、第二気体調節弁73よりも第二蓄熱器70のケース21側の位置に接続されている。この第二高温気体ライン103bには、第二高温気体調節弁104bが設けられている。
【0108】
本実施形態では、第一気体調節弁33、第二気体調節弁73、第一高温気体調節弁104a及び第二高温気体調節弁104bで、各蓄熱器20,70のケース21内に高温気体を送れる状態と高温気体を送れない状態とに切り替える切替機を構成する。
【0109】
以上の各実施形態の水素製造プラントでは、このプラントの敷地を太陽光が照らしているときに、硫酸熱分解反応及びヨウ化水素熱分解反応が基本的に実行される。言い換えると、以上の各実施形態の水素製造プラントでは、このプラントの敷地を太陽光が照らしていないとき、硫酸熱分解反応及びヨウ化水素熱分解反は基本的に実行されない。このため、以上の各実施形態の水素製造プラントでは、このプラントの敷地を太陽光が照らしていないとき、水素は基本的に生成されない。
【0110】
本実施形態の水素製造プラントは、このプラントの敷地を太陽光が照らしていないときでも、水素を生成できるようにするために、高温媒体発生源105から高温媒体の熱を利用する。
【0111】
本実施形態の水素製造プラントでは、このプラントの敷地を太陽光Rが照らしているとき、高温気体供給設備HGEの予備送風機101を停止しておくと共に、第一高温気体調節弁104a及び第二高温気体調節弁104bを閉じておく。また、このとき、第一送風機31及び第二送風機71を駆動すると共に、第一気体調節弁33及び第二気体調節弁73を開ける。この結果、第一蓄熱器20のケース21内に、第一送風機31から気体が圧送され、このケース21内の複数の蓄熱材粒子がこのケース21内で流動する。また、第二蓄熱器70のケース21内に、第二送風機71から気体が圧送され、このケース21内の複数の蓄熱材粒子がこのケース21内で流動する。各ケース21内で流動している複数の蓄熱材粒子には、太陽光Rが照射されて、複数の蓄熱材粒子が加熱される。
【0112】
本実施形態の水素製造プラントでは、このプラントの敷地を太陽光Rが照らしていないとき、第一送風機31及び第二送風機71を停止しておくと共に、第一気体調節弁33及び第二気体調節弁73を閉じておく。また、このとき、高温気体供給設備HGEの予備送風機101を駆動すると共に、第一高温気体調節弁104a及び第二高温気体調節弁104bを開ける。この結果、第一蓄熱器20のケース21内に、気体加熱器102で加熱された高温気体が圧送され、このケース21内の複数の蓄熱材粒子がこのケース21内で流動すると共に、高温気体により複数の蓄熱材粒子が加熱される。また、第二蓄熱器70のケース21内に、気体加熱器102で加熱された高温気体が圧送され、このケース21内の複数の蓄熱材粒子がこのケース21内で流動すると共に、高温気体により複数の蓄熱材粒子が加熱される。
【0113】
よって、本実施形態では、プラントの敷地を太陽光Rが照らしていないときでも、第一蓄熱器20の蓄熱体30及び第二蓄熱器70の蓄熱体30を加熱することができる。このため、本実施形態では、プラントの敷地を太陽光Rが照らしていないときでも、硫酸反応器60内での硫酸熱分解反応及びヨウ化水素反応器90内でのヨウ化水素熱分解反応を実行することができる。
【0114】
以上のように、本実施形態では、プラントの敷地を太陽光Rが照らしていないときでも、ヨウ化水素熱分解反応を実行することができるので、水素の生産性を高めることができる。
【0115】
なお、本実施形態では、予備送風機101に対して、気体の流れの下流側に気体加熱器102を配置している。しかしながら、予備送風機101に対して、気体の流れの上流側に気体加熱器102を配置してもよい。
【0116】
また、本実施形態のプラントに、第一気体循環ライン、第二気体循環ライン、第三気体循環ライン、さらにこれらのライン内の気体の流れを調節する調節器と、を追加してもよい。第一気体循環ラインは、第一蓄熱器20の気体排気口28oと送風機31の上流側の部分とを接続するラインである。第二気体循環ラインは、第二蓄熱器70の気体排気口28oと送風機71の上流側の部分とを接続するラインである。第三気体循環ラインは、第一蓄熱器20の気体排気口28o及び第二蓄熱器70の気体排気口28oと、予備送風機101とを接続するラインである。このように、気体循環ライン等を追加することで、各蓄熱器20,70から流出した高温の気体を有効に再利用することができる。
【0117】
本実施形態は、気体加熱器102で加熱された気体を第一蓄熱器20のケース21内及び第二蓄熱器70のケース21内に送れるようにしている。しかしながら、気体加熱器102で加熱された気体を第一蓄熱器20のケース21内のみに送れるようにしてもよい。この場合、第一高温気体調節弁104aと第二高温気体調節弁104bとのうち、第一高温気体調節弁104aのみが切替機を構成する。この切替機は、第一蓄熱器20のケース21内に高温気体を送れる状態と高温気体を送れない状態とに切り替える。また、加熱器102で加熱された気体を第二蓄熱器70のケース21内のみに送れるようにしてもよい。この場合、第一高温気体調節弁104aと第二高温気体調節弁104bとのうち、第二高温気体調節弁104bのみが切替機を構成する。この切替機は、第二蓄熱器70のケース21内に高温気体を送れる状態と高温気体を送れない状態とに切り替える。
【0118】
本実施形態は、前述したように、第一実施形態の水素製造プラントに、高温気体供給設備HGEを追加したプラントである。しかしながら、第二実施形態や第三実施形態の水素製造プラントに以上で説明した高温気体供給設備HGEを追加してもよい。
【0119】
「電力供給設備の例」
本開示に係る水素製造プラントにおける電力供給設備の例について、
図7を用いて説明する。
【0120】
以上の各実施形態の水素製造プラントでは、電力供給設備について何ら限定していない。本例は、以上の各実施形態の水素製造プラントにおける電力供給設備の例である。
【0121】
この電力供給設備PEは、蒸気により駆動する蒸気タービン110と、蒸気タービン110の駆動で発電する発電機111と、蒸気タービン110から排気された蒸気を水に戻す復水器112と、給水ライン113と、給水ポンプ114と、蒸気発生装置115と、主蒸気ライン122と、を備える。
【0122】
蒸気発生装置115は、蓄熱器116と、蒸気発生器120と、太陽光ガイド装置121と、を有する。蓄熱器116は、以上の実施形態における各蓄熱器20,70と同様、ケース21と、分散板29と、ケース21内に気体を送る送風機117と、ケース21内の流動層室29fに配置された蓄熱体30と、を有する。送風機117の吐出口とケース21とは、気体ライン118で接続されている。この気体ライン118中には、気体ライン118を流れる流動用気体の流量を調節する気体調節弁119が設けられている。太陽光ガイド装置121は、太陽光Rを蓄熱器116に導いて、蓄熱器116の蓄熱体30を加熱する装置である。この太陽光ガイド装置121も、以上の実施形態における太陽光ガイド装置40,80と同様、太陽光Rを目的の位置に導く一以上のヘリオスタット41と、目的の位置に配置されている固定反射鏡42と、を有する。
【0123】
復水器112には、復水器112内の水を蒸気発生器120に導く給水ライン113の一端が接続されている。蓄熱器116の流動層室29f内には、蒸気発生器120としての伝熱管が配置されている。給水ライン113の他端は、この伝熱管の一端に接続されている。この伝熱管の他端は、主蒸気ライン122を介して、蒸気タービン110の蒸気入口に接続されている。
【0124】
蓄熱体30は、太陽光により、加熱される。蓄熱器116内の蒸気発生器120は、給水ライン113からの水と蓄熱体30とを熱交換させて、水を加熱して、この水を蒸気にする。この蒸気は、主蒸気ライン122を介して、蒸気タービン110に送られ、蒸気タービン110を駆動させる。この蒸気タービン110の駆動により、発電機111は発電する。
【0125】
発電機111には、主電力経路125が接続されている。この主電力経路125には、変圧器126及び遮断器127が設けられている。この主電力経路125には、外部系統128及び所内系統129が接続されている。発電機111で発電された電力は、主電力経路125及び所内系統129を介して、以上の各実施形態におけるブンゼン反応設備BE,BEb、硫酸反応設備SE,SEb及びヨウ化水素反応設備IE,IEa,IEbでの電気駆動源(例えば、モータ)に供給される。
【0126】
以上の各実施形態の水素製造プラントで、本例の電力供給設備PEを採用することにより、太陽光Rのエネルギーを有効利用して、外部系統128から受ける電力を少なくすることができる。
【0127】
「蓄熱器の第一変形例」
本開示に係る水素製造プラントにおける蓄熱器の第一変形例について、
図8を用いて説明する。
【0128】
本変形例の蓄熱器140は、以上の各実施形態における蓄熱器20,70,116と同様、ケース21aと、分散板29と、ケース21a内に気体を送る送風機31と、ケース21a内の流動層室29fに配置された蓄熱体30と、を有する。但し、本変形例の蓄熱器140のケース21aは、以上の各実施形態における蓄熱器20,70,116のケース21と異なる。本変形例の蓄熱器140のケース21aは、底板27と、この底板27と間隔をあけて対向する天板22aと、底板27と天板22aとを接続する側板28と、蓋25と、を有する。本変形例の天板22aは、開口を有する。蓋25は、天板22aの開口を開閉可能に設けられている。本変形例では、ヘリオスタット41(
図1等参照)に太陽光Rが届いている場合、蓋25が開状態になる。一方、ヘリオスタット41に太陽光Rが届いていない場合、蓋25が閉状態になり、ケース21a内の蓄熱体30からの放熱を抑制する。特に、前述の高温気体供給設備HGEを備えるプラントの蓄熱器として、本変形例の蓄熱器140を用いることにより、蓄熱器140からの高温の気体の放出を抑制でき、省エネルギーを図ることができる。
【0129】
「蓄熱器の第二変形例」
本開示に係る水素製造プラントにおける蓄熱器の第二変形例について、
図9を用いて説明する。
【0130】
本変形例の蓄熱器150は、以上の各実施形態における蓄熱器20,70,116と同様、ケース21bと、分散板29と、ケース21b内に気体を送る送風機31と、ケース21b内の流動層室29fに配置された蓄熱体30と、を有する。但し、本変形例の蓄熱器150のケース21bは、以上の各実施形態における蓄熱器20,70,116のケース21と異なる。本変形例の蓄熱器150のケース21bは、底板27と、この底板27と間隔をあけて対向する天板22bと、底板27と天板22bとを接続する側板28と、受光部26と、を有する。本変形の天板22bは、開口を有する。受光部26は、この天板22bの開口を塞ぐように設けられている。受光部26は、下方に向かうに連れて次第に内径が小さくなる円錐部26aと、円錐部26aの下端に接続されている円筒部26bと、を有する。円錐部26aの上端及び下端は、開口している。円筒部26bの上端は、開口し、円錐部26aの下端開口に接続されている。円筒部26bの下端は閉じている。円筒部26bの内面は、反射率の低い材料、例えば、黒塗料等で形成されている。円筒部26bは、流動層室29f内に配置されている。太陽光Rは、円錐部26aの上端開口から受光部26内に入光する。受光部26内に入光した太陽光Rの一部は、円筒部26bの内面に達し、円筒部26bを加熱する。受光部26内に入光した太陽光Rの他の一部は、円錐部26aの内面に反射してから円筒部26bの内面に達し、円筒部26bを加熱する。太陽光Rにより加熱された円筒部26bは、流動層を形成する複数の蓄熱材粒子を加熱する。
【0131】
「蓄熱体の変形例」
以上の実施形態における蓄熱材粒子は、珪砂である。しかしながら、蓄熱材粒子は、珪砂でなくてもよい。例えば、蓄熱材粒子は、スラグ、金属酸化物(例えば、鉄酸化物等)、セラミックス(例えば、炭化ケイ素、アルミナ等)で形成されていてもよい。また、蓄熱材粒子は、珪砂、スラグ、金属酸化物、セラミックスのうち、二以上の材料の混合物であってもよい。また、蓄熱体30は、複数の蓄熱材粒子でなくてもよい。具体的に、蓄熱体30は、例えば、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、若しくはこれらの混合物である溶融塩等であってもよい。なお、蓄熱体30として複数の蓄熱材粒子を用いる場合、蓄熱体30として溶融塩を用いる場合よりも、蓄熱体30の購入コストを抑えることができる。さらに、この場合、蓄熱体30の取り扱いが簡単な上に、ケース21からの蓄熱体30の漏れを厳重に管理する必要もない。このため、以上の各実施形態のように、蓄熱体30として、珪砂、スラグ、金属酸化物、セラミックスのうち、少なくとも一の材料で形成されている複数の蓄熱材粒子を用いる場合、高温水供給設備の製造コストを抑えることができる。
【0132】
「付記」
以上の実施形態における水素製造プラントは、例えば、以下のように把握される。
(1)第一態様における水素製造プラントは、
二酸化硫黄と水とヨウ素とをブンゼン反応させて、ヨウ化水素と硫酸とを生成するブンゼン反応設備BE,BEbと、前記ブンゼン反応設備BE,BEbで生成された前記硫酸を二酸化硫黄と酸素と水とに熱分解させ、前記二酸化硫黄及び前記水を前記ブンゼン反応設備BE,BEbに送る硫酸反応設備SEと、前記ブンゼン反応設備BE,BEbで生成された前記ヨウ化水素を水素とヨウ素とに熱分解させ、前記水素を外部に排出すると共に、前記ヨウ素を前記ブンゼン反応設備BE,BEbに送るヨウ化水素反応設備IE,IEaと、を備える。前記硫酸反応設備SEは、蓄熱体30を有する第一蓄熱器20と、太陽光を前記第一蓄熱器20に導いて、前記第一蓄熱器20の前記蓄熱体30を加熱する第一太陽光ガイド装置40と、前記ブンゼン反応設備BE,BEbで生成された前記硫酸を一時的に蓄える硫酸タンク50と、前記第一蓄熱器20の前記蓄熱体30に蓄えられた熱を利用して、前記硫酸タンク50からの前記硫酸を前記二酸化硫黄と前記酸素と前記水とに熱分解させる硫酸反応器60と、前記硫酸タンク50内の前記硫酸を前記硫酸反応器60に送る硫酸供給機52と、前記硫酸反応器60で生成された前記二酸化硫黄を一時的に蓄える二酸化硫黄タンク54と、前記二酸化硫黄タンク54内の前記二酸化硫黄を前記ブンゼン反応設備BE,BEbに送る二酸化硫黄供給機56と、を有する。前記ヨウ化水素反応設備IE,IEaは、蓄熱体30を有する第二蓄熱器70と、太陽光を前記第二蓄熱器70に導いて、前記第二蓄熱器70の前記蓄熱体30を加熱する第二太陽光ガイド装置80と、前記第二蓄熱器70の前記蓄熱体30に蓄えられた熱を利用して、前記ブンゼン反応設備BE,BEbで生成された前記ヨウ化水素を前記水素と前記ヨウ素とに熱分解させるヨウ化水素反応器90と、を有する。
【0133】
ブンゼン反応設備BE,BEbでは、二酸化硫黄と水とヨウ素とがブンゼン反応して、ヨウ化水素と硫酸とが生成される。硫酸反応設備SEでは、ブンゼン反応設備BE,BEbで生成された硫酸が二酸化硫黄と酸素と水とに熱分解する。本態様では、太陽光で加熱された蓄熱体30の熱を利用して硫酸を加熱し、この硫酸を熱分解させる。硫酸反応設備SEは、硫酸の熱分解で生成された二酸化硫黄及び水をブンゼン反応設備BE,BEbに送る。ヨウ化水素反応設備IE,IEaでは、ブンゼン反応設備BE,BEbで生成されたヨウ化水素が水素とヨウ素とに熱分解する。本態様では、太陽光で加熱された蓄熱体30の熱を利用してヨウ化水素を加熱し、このヨウ化水素を熱分解させる。
【0134】
以上のように、本態様では、太陽光のエネルギーを硫酸の熱分解及びヨウ化水素の熱分解に利用している。
【0135】
ところで、硫酸の熱分解に必要な温度は、ヨウ化水素の熱分解に必要な温度よりも高い。夜間や雲天時には、蓄熱体が保持する熱の利用に伴い、蓄熱体に温度降下が生じて、硫酸の熱分解率が低下する。このため、水素製造プラントの年間水素製造量が低下するか、水素製造プラントの稼働率が低下する。従って、特許文献1に記載のプラントでは、太陽光のエネルギーを水素製造に十分に有効利用しているとは言い難い。
【0136】
本態様の硫酸反応設備SEは、ブンゼン反応設備BE,BEbに送る二酸化硫黄を一時的に蓄えて二酸化硫黄タンク54を備えている。このため、本態様では、二酸化硫黄タンク54内に二酸化硫黄を蓄えている限り、ブンゼン反応設備BE,BEbに流入するヨウ素に対して、ブンゼン反応に必要な二酸化硫黄を確保することができる。よって、本態様では、ブンゼン反応を効率的に行うことができ、太陽光のエネルギーを水素製造に有効利用して、水素製造プラントの稼働率を向上させることができる。
【0137】
(2)第二態様における水素製造プラントは、
前記第一態様の水素製造プラントにおいて、前記硫酸反応設備SEは、前記硫酸タンク50から前記硫酸反応器60へ送られる前記硫酸の流量を調節する硫酸流量調節器53と、前記二酸化硫黄タンク54から前記ブンゼン反応設備BE,BEbに送られる前記二酸化硫黄の流量を調節する二酸化硫黄流量調節器57と、を有する。さらに、前記第一蓄熱器20の前記蓄熱体30の温度が、前記硫酸の熱分解反応可能な温度より高いことを条件にして、前記硫酸流量調節器53に対して、前記硫酸タンク50から前記硫酸反応器60へ硫酸を送れる状態にするよう指示する硫酸供給制御器132と、外部から前記ブンゼン反応設備BE,BEbでの反応開始の指示を受け付け、又は、自身が前記ブンゼン反応設備BE,BEbでの反応を開始してよいと判断し、且つ前記二酸化硫黄タンク内の前記二酸化硫黄の量が予め定められた量以上であることを条件として、前記二酸化硫黄供給機56に対して、駆動を指示すると共に、前記二酸化硫黄流量調節器57に対して、前記二酸化硫黄タンク54から前記ブンゼン反応設備BE,BEbへ前記二酸化硫黄を送れる状態にするよう指示する反応制御器131と、を備える。
【0138】
(3)第三態様における水素製造プラントは、
前記第二態様における水素製造プラントにおいて、前記硫酸反応設備としての第一硫酸反応設備SEの他に、さらに、前記ブンゼン反応設備BEbで生成された前記硫酸を二酸化硫黄と酸素と水とに熱分解させ、前記二酸化硫黄及び前記水を前記ブンゼン反応設備BEbに送る第二硫酸反応設備SEbを備える。前記第二硫酸反応設備SEbは、蓄熱体30を有する第一蓄熱器20bと、太陽光を前記第二硫酸反応設備SEbにおける前記第一蓄熱器20bに導いて、前記第二硫酸反応設備SEbにおける前記第一蓄熱器20bの前記蓄熱体30を加熱する第一太陽光ガイド装置40bと、前記第二硫酸反応設備SEbにおける前記第一蓄熱器20bの前記蓄熱体30に蓄えられた熱を利用して、前記ブンゼン反応設備BEbで生成された前記硫酸を前記二酸化硫黄と前記酸素と前記水とに熱分解させる硫酸反応器60bと、を有する。前記反応制御器131は、前記第二硫酸反応設備SEbから前記ブンゼン反応設備BEbへの前記二酸化硫黄の供給が停止したことを条件として、前記二酸化硫黄供給機56に対して、駆動を指示すると共に、前記二酸化硫黄流量調節器57に対して、前記二酸化硫黄タンク54から前記ブンゼン反応設備BEbへ前記二酸化硫黄を送れる状態にするよう指示する。
【0139】
太陽が水素製造プラントの敷地を照らしていると、第一硫酸反応設備SEにおける第一蓄熱器20の蓄熱体30、第二硫酸反応設備SEbにおける第一蓄熱器20bの蓄熱体30は、太陽光により加熱される。この結果、これら蓄熱体30の温度が上昇する。このため、第一硫酸反応設備SEの硫酸反応器60及び第二硫酸反応設備SEbの硫酸反応器60b内で、硫酸が熱分解して、二酸化硫黄と酸素と水とが生成される。第二硫酸反応設備SEbの硫酸反応器60b内で生成された二酸化硫黄は、ブンゼン反応設備BEbに送られ、二酸化硫黄と水とヨウ素とがブンゼン反応する。一方、第一硫酸反応設備SEにおける硫酸反応器60内で生成された二酸化硫黄は、二酸化硫黄タンク54に送られて、ここに留まり、ブンゼン反応設備BEbに送られない。
【0140】
太陽が水素製造プラントの敷地を照らさなくなると、第一硫酸反応設備SEにおける第一蓄熱器20の蓄熱体30の温度、第二硫酸反応設備SEbにおける第一蓄熱器20bの蓄熱体30の温度は、次第に低下する。このため、第一硫酸反応設備SEの硫酸反応器60及び第二硫酸反応設備SEbの硫酸反応器60b内では、硫酸が熱分解しなくなる。第二硫酸反応設備SEbの硫酸反応器60b内で硫酸が熱分解しなくなり、第二硫酸反応設備SEbからブンゼン反応設備BEbへ二酸化硫黄が供給されなくなると、第一硫酸反応設備SEにおける二酸化硫黄タンク54に蓄えられていた二酸化硫黄がブンゼン反応設備BEbに送られる。この結果、ブンゼン反応設備BEbでは、水とヨウ素と第一硫酸反応設備SEからの二酸化硫黄とがブンゼン反応する。
【0141】
以上のように、本態様では、太陽が水素製造プラントの敷地を照らさなくなっても、長時間にわたって、ブンゼン反応器10内でブンゼン反応が行われる。従って、本態様では、水素製造プラントの稼働率を向上させることができる。
【0142】
(4)第四態様における水素製造プラントは、
前記第二態様又は前記第三態様の水素製造プラントにおいて、前記ヨウ化水素反応設備IEaは、前記ブンゼン反応設備BE,BEbで生成された前記ヨウ化水素を一時的に蓄えるヨウ化水素タンク81と、前記ヨウ化水素タンク81内の前記ヨウ化水素を前記ヨウ化水素反応器90に送るヨウ化水素供給機83と、前記ヨウ化水素反応器90で生成された前記ヨウ素を一時的に蓄えるヨウ素タンク85と、前記ヨウ素タンク85内の前記ヨウ素を前記ブンゼン反応設備BE,BEbに送るヨウ素供給機87と、を有する。
【0143】
本態様のヨウ化水素反応設備IEaは、ブンゼン反応設備BE,BEbに送るヨウ素を一時的に蓄えてヨウ素タンク85を備えている。このため、本態様では、ヨウ化水素の熱分解反応とブンゼン反応とを同時に実行しなくてもよく、プラントの運用態様のパターンを多くすることができる。従って、例えば、ヨウ化水素反応器90での水素生成により、ヨウ化水素タンク81内のヨウ化水素が不足してきたときには、ブンゼン反応設備BE,BEbでのブンゼン反応を実行することで、ヨウ化水素タンク81内のヨウ化水素を補うことができる。
【0144】
(5)第五態様における水素製造プラントは、
前記第四態様の水素製造プラントにおいて、前記ヨウ化水素反応設備IEaは、前記ヨウ化水素タンク81から前記ヨウ化水素反応器90へ送られる前記ヨウ化水素の流量を調節するヨウ化水素流量調節器84と、前記ヨウ素タンク85から前記ブンゼン反応設備BE,BEbに送られる前記ヨウ素の流量を調節するヨウ素流量調節器88と、を有する。さらに、前記第二蓄熱器70の前記蓄熱体30の温度が、前記ヨウ化水素の熱分解反応可能な温度より高いことを条件として、前記ヨウ化水素流量調節器84に対して、前記ヨウ化水素タンク81から前記ヨウ化水素反応器90へヨウ化水素を送れる状態にするよう指示するヨウ化水素供給制御器133を備える。前記反応制御器131は、外部から前記ブンゼン反応設備BE,BEbでの反応開始の指示を受け付け、又は、自身が前記ブンゼン反応設備BE,BEbでの反応を開始してよいと判断し、且つ前記ヨウ素タンク内の前記ヨウ素の量が予め定められた量以上であることを条件として、前記ヨウ素供給機87に対して、駆動を指示すると共に、前記ヨウ素流量調節器88に対して、前記ヨウ素タンク85から前記ブンゼン反応設備BE,BEbへ前記ヨウ素を送れる状態にするよう指示する。
【0145】
(6)第六態様における水素製造プラントは、
前記第五態様における水素製造プラントにおいて、前記ヨウ化水素反応設備としての第一ヨウ化水素反応設備IEaの他に、さらに、前記ブンゼン反応設備BEbで生成された前記ヨウ化水素を水素とヨウ素とに熱分解させ、前記水素を外部に排出すると共に、前記ヨウ素を前記ブンゼン反応設備BEbに送る第二ヨウ化水素反応設備IEbを備える。前記第二ヨウ化水素反応設備IEbは、蓄熱体30を有する第二蓄熱器70bと、太陽光を前記第二ヨウ化水素反応設備IEbにおける前記第二蓄熱器70bに導いて、前記第二ヨウ化水素反応設備IEbにおける前記第二蓄熱器70bの前記蓄熱体30を加熱する第二太陽光ガイド装置80bと、前記第二ヨウ化水素反応設備IEbにおける前記第二蓄熱器70bの前記蓄熱体30に蓄えられた熱を利用して、前記ブンゼン反応設備BEbで生成された前記ヨウ化水素を前記水素と前記ヨウ素とに熱分解させるヨウ化水素反応器90bと、を有する。前記反応制御器131は、前記第二ヨウ化水素反応設備IEbから前記ブンゼン反応設備BEbへの前記ヨウ素の供給が停止したことを条件として、前記ヨウ素供給機87に対して、駆動を指示すると共に、前記ヨウ素流量調節器88に対して、前記ヨウ素タンク85から前記ブンゼン反応設備BEbへ前記ヨウ素を送れる状態にするよう指示する。
【0146】
太陽が水素製造プラントの敷地を照らしていると、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおける第二蓄熱器70の蓄熱体30、第二ヨウ化水素反応設備IEbにおける第二蓄熱器70bの蓄熱体30は、太陽光により加熱される。この結果、これら蓄熱体30の温度が上昇する。このため、第一ヨウ化水素反応設備IEaのヨウ化水素反応器90及び第二ヨウ化水素反応設備IEbのヨウ化水素反応器90b内で、ヨウ化水素が熱分解して、ヨウ素と水素とが生成される。第二ヨウ化水素設備IEbのヨウ化水素反応器90b内で生成されたヨウ素は、ブンゼン反応設備BEbに送られ、二酸化硫黄と水とヨウ素とがブンゼン反応する。一方、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおけるヨウ化水素反応器90内で生成されたヨウ素は、ヨウ素タンク85に送られて、ここに留まり、ブンゼン反応設備BEbに送られない。
【0147】
太陽が水素製造プラントの敷地を照らさなくなると、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおける第二蓄熱器70の蓄熱体30の温度、第二ヨウ化水素反応設備IEbにおける第二蓄熱器70bの蓄熱体30の温度は、次第に低下する。このため、第一ヨウ化水素反応設備IEaのヨウ化水素反応器90及び第二ヨウ化水素反応設備IEbのヨウ化水素反応器90b内では、ヨウ化水素が熱分解しなくなる。第二ヨウ化水素反応設備IEbのヨウ化水素反応器90b内でヨウ化水素が熱分解しなくなり、第二ヨウ化水素反応設備IEbからブンゼン反応設備BEbへヨウ素が供給されなくなると、第一ヨウ化水素反応設備IEaにおけるヨウ素タンク85に蓄えられていたヨウ素がブンゼン反応設備BEbに送られる。この結果、ブンゼン反応設備BEbでは、水と二酸化硫黄と第一ヨウ化水素反応設備IEaからのヨウ素とがブンゼン反応する。
【0148】
以上のように、本態様では、太陽が水素製造プラントの敷地を照らさなくなっても、長時間にわたって、ブンゼン反応器10内でブンゼン反応が行われる。従って、本態様では、水素製造プラントの稼働率を向上させることができる。
【0149】
(7)第七態様における水素製造プラントは、
前記第一から前記第六態様のいずれかの水素製造プラントにおいて、前記第一蓄熱器20及び前記第二蓄熱器70は、いずれも、前記蓄熱体30としての複数の蓄熱材粒子と、前記複数の蓄熱材粒子を覆うケース21と、前記ケース21内に気体を送る送風機31(71)と、を有する。前記ケース21は、前記送風機31(71)からの気体を導入して、前記複数の蓄熱材粒子を前記ケース21内で循環流動させる気体導入口27iを有する。
【0150】
本態様では、蓄熱体30として複数の蓄熱材粒子を用いる。このため、本態様では、蓄熱体30として溶融塩を用いる場合よりも、蓄熱体30の購入コストを抑えることができる。さらに、本態様では、蓄熱体30の取り扱いが簡単な上に、ケース21からの蓄熱体30の漏れを厳重に管理する必要もない。このため、本態様では、蓄熱器の製造コストを抑えることができる。
【0151】
(8)第八態様における水素製造プラントは、
前記第七態様の水素製造プラントにおいて、前記複数の蓄熱材粒子は、スラグ、金属酸化物、セラミックスのうち、少なくとも一の材料で形成されている。
【0152】
(9)第九態様における水素製造プラントは、
前記第七態様又は前記第八態様の水素製造プラントにおいて、高温熱媒体と気体とを熱交換させて、前記気体を加熱する気体加熱器102と、前記気体加熱器102で加熱された気体を前記第一蓄熱器20の前記ケース21内に送る予備送風機101と、前記第一蓄熱器20の前記ケース21内に前記送風機31から気体を送れる状態と、前記第一蓄熱器20の前記ケース21内に前記予備送風機101からの気体を送れる状態とに、切り替える切替機と、をさらに備える。
【0153】
本態様では、プラント敷地を太陽光が照らしているとき、この太陽光で第一蓄熱器20の蓄熱体30を加熱する。また、本態様では、プラント敷地を太陽光が照らしていないとき、気体加熱器102で加熱された気体で第一蓄熱器20の蓄熱体30を加熱する。
【0154】
よって、本態様では、プラントの敷地を太陽光が照らしていないときでも、硫酸反応器60内での硫酸熱分解反応を実行することができる。このため、本態様では、プラントの敷地を太陽光が照らしていないときでも、硫酸熱分解反応を実行することができるので、水素の生産性を高めることができる。
【0155】
(10)第十態様における水素製造プラントは、
前記第七態様又は前記第八態様の水素製造プラントにおいて、高温熱媒体と気体とを熱交換させて、前記気体を加熱する気体加熱器102と、前記気体加熱器102で加熱された気体を前記第二蓄熱器70の前記ケース21内に送る予備送風機101と、前記第二蓄熱器70の前記ケース21内に前記送風機71から気体を送れる状態と、前記第二蓄熱器70の前記ケース21内に前記予備送風機101からの気体を送れる状態とに、切り替える切替機と、をさらに備える。
【0156】
本態様では、プラント敷地を太陽光が照らしているとき、この太陽光で第二蓄熱器70の蓄熱体30を加熱する。また、本態様では、プラント敷地を太陽光が照らしていないとき、気体加熱器102で加熱された気体で第二蓄熱器70の蓄熱体30を加熱する。
【0157】
よって、本態様では、プラントの敷地を太陽光が照らしていないときでも、ヨウ化水素反応器90内でのヨウ化水素熱分解反応を実行することができる。このため、本態様では、プラントの敷地を太陽光が照らしていないときでも、ヨウ化水素熱分解反応を実行することができるので、水素の生産性を高めることができる。
【0158】
(11)第十一態様における水素製造プラントは、
前記第七態様又は前記第八態様の水素製造プラントにおいて、高温熱媒体と気体とを熱交換させて、前記気体を加熱する気体加熱器102と、前記気体加熱器102で加熱された気体を前記第一蓄熱器20の前記ケース21内及び前記第二蓄熱器70の前記ケース21内に送る予備送風機101と、前記第一蓄熱器20の前記ケース21内に前記送風機31から気体を送れ且つ前記第二蓄熱器70の前記ケース21内に前記送風機71から気体を送れる状態と、前記第一蓄熱器20の前記ケース21内及び前記第二蓄熱器70の前記ケース21内に前記予備送風機101からの気体を送れる状態とに、切り替える切替機と、をさらに備える。
【0159】
本態様では、プラント敷地を太陽光が照らしているとき、この太陽光で第一蓄熱器20及び第二蓄熱器70の蓄熱体30を加熱する。また、本態様では、プラント敷地を太陽光が照らしていないとき、気体加熱器102で加熱された気体で第一蓄熱器20及び第二蓄熱器70の蓄熱体30を加熱する。
【0160】
よって、本態様では、プラントの敷地を太陽光が照らしていないときでも、硫酸反応器60内での硫酸熱分解反応及びヨウ化水素反応器90内でのヨウ化水素熱分解反応を実行することができる。このため、本態様では、プラントの敷地を太陽光が照らしていないときでも、硫酸熱分解反応及びヨウ化水素熱分解反応を実行することができるので、水素の生産性を高めることができる。
【0161】
(12)第十二態様における水素製造プラントは、
前記第七態様から前記第十一態様のいずれかの水素製造プラントにおいて、前記硫酸反応器60と前記ヨウ化水素反応器90とのうち、少なくとも一方の反応器は、筒状を成して両端を有し、該両端のうちの一端が閉端61cを成し、他端が開口61iを成す外筒61と、筒状を成して両端を有し、該両端のうちの一端が入口開口62iを成し、他端が出口開口62oを成す内筒62と、筒状を成して両端を有し、該両端のうちの一端が閉端63cを成し、他端が出口開口63oを成す分離筒63と、熱分解の対象である熱分解対象物Oを受け入れる対象物受入部64と、前記熱分解対象物Oの熱分解で得られた反応物の一種を排出する反応物排出部65と、を有する。前記分離筒63は、前記熱分解対象物Oの熱分解で得られた第一反応物R1と第二反応物R2とうち、前記第一反応物R1を前記分離筒63の内側に通す一方で前記第二反応物R2を前記内側に通さない分離膜を有する。前記外筒61は、前記外筒61の前記閉端61cを含み且つ前記開口61iを含まない外筒本体61bの外周面が前記蓄熱体30に接し得るよう、前記ケース21に取り付けられている。前記内筒62は、前記内筒62の前記入口開口62iを含み且つ前記出口開口62oを含まない内筒本体62bの少なくとも一部が前記外筒本体61b内に位置するよう、配置されている。前記分離筒63は、前記分離筒63の前記閉端63cを含み且つ前記出口開口63oを含まない分離筒本体63bの少なくとも一部が前記外筒本体61b内及び前記内筒本体62b内に位置するよう、配置されている。前記対象物受入部64は、前記外筒本体61bと前記内筒本体62bとの間に前記熱分解対象物Oを送れるよう形成されている。前記反応物排出部65は、前記内筒本体62bと前記分離筒本体63bとの間の前記第二反応物R2を外部に排出できるよう形成されている。前記分離筒63の前記出口開口63oは、前記第一反応物R1を外部に排出する排出口を成す。
【0162】
本態様では、分離筒本体63bの外側が、熱分解対象物Oが熱分解反応する反応領域になる。本態様では、熱分解対象物Oの熱分解で得られた第一反応物R1は、反応領域に留まらず、分離筒63内に流入する。このため、本態様では、熱分解対象物Oの熱分解反応が促進される。
【0163】
(13)第十三態様における水素製造プラントは、
前記第十二態様の水素製造プラントにおいて、前記ケース21は、鉛直方向に延びる側板28を有し、前記外筒61は、前記外筒61の前記開口61iに対して前記閉端61cが上に位置するように傾斜して、前記側板28に取り付けられている。前記内筒62は、前記内筒62の前記出口開口62oに対して前記入口開口62iが上に位置するよう傾斜している。
【0164】
本態様では、液体の熱分解対象物Oは、外筒61と内筒62との間に流入する。液体の熱分解対象物Oは、外筒本体61bの外部に存在する蓄熱体30との熱交換により、加熱されて気化する。本態様の外筒61は、開口61iに対して閉端61cが上に位置するように傾斜し、この外筒61内の内筒62は、出口開口62oに対して入口開口62iが上に位置するよう傾斜している。このため、本態様では、液体の熱分解対象物Oが、外筒61と内筒62との間に留まり、気体の熱分解対象物Oが、内筒62の入口開口62iから内筒62と分離筒63との間に流入する。気体の熱分解対象物Oは、この間も、蓄熱体30との熱交換により加熱される。この結果、気体の熱分解対象物Oは、熱分解する。
【0165】
従って、本態様では、気体の熱分解対象物Oが熱分解する環境下には、液体の熱分解対象物Oがほぼ存在しないので、気体の熱分解対象物Oの熱分解を促進することができる。
【0166】
(14)第十四態様における水素製造プラントは、
前記第十二態様又は前記第十三態様の水素製造プラントにおいて、前記少なくとも一方の反応器は、前記熱分解対象物Oの熱分解を促進する触媒66を有する。前記触媒66は、前記分離筒本体63bの外周面中で、前記分離筒本体63bの少なくとも一部が前記外筒本体61b内及び前記内筒本体62b内に位置している部分に取り付けられている。
【0167】
本態様では、熱分解対象物Oの熱分解反応を促進することができる。
【0168】
(15)第十五態様における水素製造プラントは、
前記第一態様から前記第十二態様のいずれかの水素製造プラントにおいて、前記ブンゼン反応設備BE,BEb、前記硫酸反応設備SE,SEb、及び前記ヨウ化水素反応設備IE,IEa,IEbに対して、電力を供給する電力供給設備PEをさらに備える。前記電力供給設備PEは、蒸気により駆動する蒸気タービン110と、前記蒸気タービン110の駆動で発電する発電機111と、前記蒸気タービン110から排気された蒸気を水に戻す復水器112と、前記復水器112からの水を加熱し蒸気を生成し、前記蒸気を前記蒸気タービン110に送る蒸気発生装置115と、を有する。前記蒸気発生装置115は、蓄熱体30を有する蓄熱器116と、太陽光を前記蓄熱器116に導いて、前記蓄熱器116の前記蓄熱体30を加熱する太陽光ガイド装置121と、前記蓄熱器116内に配置され、前記復水器112からの水と前記蓄熱体30とを熱交換させて、前記水を加熱して蒸気にする蒸気発生器120と、を有する。
【0169】
本態様では、太陽光のエネルギーを有効利用して、外部から受ける電力を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0170】
BE,BEb:ブンゼン反応設備
10:ブンゼン反応器
11:分離器
12:硫酸ライン(又は第一硫酸ライン)
12b:第二硫酸ライン
13:硫酸ポンプ(又は第一硫酸ポンプ)
13b:第二硫酸ポンプ
14:ヨウ化水素ライン(又は第一ヨウ化水素ライン)
14b:第二ヨウ化水素ライン
15:ヨウ化水素ポンプ(又は第一ヨウ化水素ポンプ)
15b:第二ヨウ化水素ポンプ
16:水補給ライン
SE:硫酸反応設備(又は第一硫酸反応設備)
SEb:第二硫酸反応設備
20,20b:第一蓄熱器
21,21a,21b:ケース
21t:温度計
22,22a,22b:天板
23:天板本体
24:窓
25:蓋
26:受光部
26a:円錐部
26b:円筒部
27:底板
27i:気体導入口
28:側板
28o:気体排気口
29:分散板
29f:流動層室
29g:気体室
30:蓄熱体
31:第一送風機
32:第一気体ライン
33:第一気体調節弁
40,40b:第一太陽光ガイド装置
41:ヘリオスタット
41a:反射鏡
41b:反射鏡駆動機
42:固定反射鏡
50:硫酸タンク
51:硫酸供給ライン
52:硫酸供給機
53:硫酸流量調節器
54:二酸化硫黄タンク
54p:圧力計
55,55b:二酸化硫黄供給ライン
56:二酸化硫黄供給機
57,57b:二酸化硫黄流量調節器
58,58b:冷却器
59,59b:水供給ライン
60,60b:硫酸反応器
61:外筒
61c:閉端
61i:開口
61b:外筒本体
62:内筒
62i:入口開口
62o:出口開口
62b:内筒本体
63:分離筒
63c:閉端
63o:出口開口
63b:分離筒本体
64:対象物受入部
64i:入口
65:反応物排出部
65o:排出口
66:触媒
IE,IEa:ヨウ化水素反応設備(又は第一ヨウ化水素反応設備)
IEb:第二ヨウ化水素反応設備
70,70b:第二蓄熱器
71:第二送風機
72:第二気体ライン
73:第二気体調節弁
80,80b:第二太陽光ガイド装置
81:ヨウ化水素タンク
82:ヨウ化水素供給ライン
83:ヨウ化水素供給機
84:ヨウ化水素流量調節器
85:ヨウ素タンク
85p:圧力計
86,86b:ヨウ素供給ライン
87:ヨウ素供給機
88,88b:ヨウ素流量調節器
90,90b:ヨウ化水素反応器
94,94b:水素ライン
HGE:高温気体供給設備
101:予備送風機
102:気体加熱器
103:高温気体ライン
103m:主高温気体ライン
103a:第一高温気体ライン
103b:第二高温気体ライン
104a:第一高温気体調節弁
104b:第二高温気体調節弁
105:高温媒体発生源
PE:電力供給設備
110:蒸気タービン
111:発電機
112:復水器
113:給水ライン
114:給水ポンプ
115:蒸気発生装置
116:蓄熱器
117:送風機
118:気体ライン
119:気体調節弁
120:蒸気発生器
121:太陽光ガイド装置
122:主蒸気ライン
125:主電力経路
126:変圧器
127:遮断器
128:外部系統
129:所内系統
130,130a:制御装置
131::反応制御器
132:硫酸供給制御器
133:ヨウ化水素供給制御器
140,150:蓄熱器
O:熱分解対象物
R1:第一反応物
R2:第二反応物
R:太陽光