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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0258 20160101AFI20240409BHJP
   H01M 8/1011 20160101ALI20240409BHJP
   H01M 8/1009 20160101ALI20240409BHJP
   H01M 8/026 20160101ALI20240409BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/1011
H01M8/1009
H01M8/026
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020057229
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021157953
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻口 拓也
(72)【発明者】
【氏名】久保 厚
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 利幸
(72)【発明者】
【氏名】中井 基生
(72)【発明者】
【氏名】上田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】武田 恭英
(72)【発明者】
【氏名】林 則康
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-228517(JP,A)
【文献】特開2010-040174(JP,A)
【文献】特開2006-140153(JP,A)
【文献】特開2009-081102(JP,A)
【文献】特開2006-351222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0258
H01M 8/1011
H01M 8/1009
H01M 8/026
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギ酸又はアルコールを含む液体を燃料とする直接液体型の燃料電池において、
燃料極触媒層と燃料極拡散層と燃料極集電体とを有する燃料極と、
空気極触媒層と空気極拡散層と空気極集電体とを有する空気極と、
前記燃料極触媒層と前記空気極触媒層との間に配置された電解質膜と、
を備え、
前記燃料極集電体は、
前記燃料が供給される燃料流入口と、
前記燃料流入口よりも上方に配置されて前記燃料が排出される燃料流出口と、
前記燃料極拡散層に当接する側の面であって上下方向に延びる燃料流通面と、
前記燃料流通面に形成されて前記燃料流入口から前記燃料流出口へと前記燃料を導く燃料流通溝と、
を有し、
前記燃料流通溝は、
前記燃料流通面の一方の側縁側である一方側縁側から、前記一方側縁側に対向する他方の側縁側である他方側縁側へ延びる複数の流通溝部であって上下方向に配置された複数の前記流通溝部と、
一方側縁側及び他方側縁側において複数の前記流通溝部における所定の前記流通溝部を接続する複数の折り返し溝部と、
を有しており、
複数の前記流通溝部は、
上下に隣り合う所定数の前記流通溝部を1グループとする複数の流通溝部グループに分けられており、
それぞれの前記流通溝部グループは、
所定間隔を空けて並列配置されて前記燃料の流れる方向が同一とされた複数の前記流通溝部にて形成されており、
上下に隣り合うように配置された各流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、
前記燃料の流入側よりも流出側のほうが上方となるように水平方向に対して下流方向上方側へ傾斜しており、
複数の前記折り返し溝部のそれぞれは、
接続対象となる上下に隣り合う2つの前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部のみを接続しており、
前記燃料流通面において最も下方に配置されて前記燃料流入口が接続される前記流通溝部グループである1組目の前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、
一方側縁側または他方側縁側が前記燃料流入口に接続されており、
前記燃料流入口が一方側縁側に接続されている場合、他方側縁側が、他方側縁側において上下に延びるように最も下方に設けられた前記折り返し溝部にて、上方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の他方側縁側に接続され、
前記燃料流入口が他方側縁側に接続されている場合、一方側縁側が、一方側縁側において上下に延びるように最も下方に設けられた前記折り返し溝部にて、上方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の一方側縁側に接続され、
前記燃料流通面において最も上方に配置されて前記燃料流出口が接続される前記流通溝部グループである最終組目の前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、
一方側縁側または他方側縁側が前記燃料流出口に接続されており、
前記燃料流出口が一方側縁側に接続されている場合、他方側縁側が、他方側縁側において上下に延びるように最も上方に設けられた前記折り返し溝部にて、下方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の他方側縁側に接続され、
前記燃料流出口が他方側縁側に接続されている場合、一方側縁側が、一方側縁側において上下に延びるように最も上方に設けられた前記折り返し溝部にて、下方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の一方側縁側に接続され、
前記1組目と前記最終組目の前記流通溝部グループを除いて、一方側縁側が他方側縁側よりも上方にある前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、
一方側縁側が、一方側縁側において上下に延びるように設けられた前記折り返し溝部にて、上方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の一方側縁側に接続され、
他方側縁側が、他方側縁側において上下に延びるように設けられた前記折り返し溝部にて、下方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の他方側縁側に接続され、
前記1組目と前記最終組目の前記流通溝部グループを除いて、一方側縁側が他方側縁側よりも下方にある前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、
一方側縁側が、一方側縁側において上下に延びるように設けられた前記折り返し溝部にて、下方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の一方側縁側に接続され、
他方側縁側が、他方側縁側において上下に延びるように設けられた前記折り返し溝部にて、上方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の他方側縁側に接続され、
前記燃料流通溝は、
上下に隣り合うように配置されたそれぞれの前記流通溝部グループの前記流通溝部と、上下に隣り合う2つの前記流通溝部グループの前記流通溝部を接続するそれぞれの前記折り返し溝部にて、前記燃料流入口から流入された燃料が、一方側縁側から他方側縁側へ流れた次には他方側縁側から一方側縁側へと逆方向に流れるように、一方側縁側と他方側縁側の間で蛇行するように流れて前記燃料流出口に至るように形成されており、
前記燃料流入口から最初に燃料を供給される前記1組目の前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、少なくとも流入側の所定長さの部分が、水平方向に対して所定の第1傾斜角度以上で下流方向上方側へ傾斜するように形成されており、
前記1組目の前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、流入側の前記所定長さの部分よりも下流側の部分の傾斜角度が、前記所定長さの部分の傾斜角度よりも減少するように下流方向上方側へ傾斜している、
燃料電池。
【請求項2】
ギ酸又はアルコールを含む液体を燃料とする直接液体型の燃料電池において、
燃料極触媒層と燃料極拡散層と燃料極集電体とを有する燃料極と、
空気極触媒層と空気極拡散層と空気極集電体とを有する空気極と、
前記燃料極触媒層と前記空気極触媒層との間に配置された電解質膜と、
を備え、
前記燃料極集電体は、
前記燃料が供給される燃料流入口と、
前記燃料流入口よりも上方に配置されて前記燃料が排出される燃料流出口と、
前記燃料極拡散層に当接する側の面であって上下方向に延びる燃料流通面と、
前記燃料流通面に形成されて前記燃料流入口から前記燃料流出口へと前記燃料を導く燃料流通溝と、
を有し、
前記燃料流通溝は、
前記燃料流通面の一方の側縁側である一方側縁側から、前記一方側縁側に対向する他方の側縁側である他方側縁側へ延びる複数の流通溝部であって上下方向に配置された複数の前記流通溝部と、
一方側縁側及び他方側縁側において複数の前記流通溝部における所定の前記流通溝部を接続する複数の折り返し溝部と、
を有しており、
複数の前記流通溝部は、
上下に隣り合う所定数の前記流通溝部を1グループとする複数の流通溝部グループに分けられており、
それぞれの前記流通溝部グループは、
所定間隔を空けて並列配置されて前記燃料の流れる方向が同一とされた複数の前記流通溝部にて形成されており、
上下に隣り合うように配置された各流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、
前記燃料の流入側よりも流出側のほうが上方となるように水平方向に対して下流方向上方側へ傾斜しており、
複数の前記折り返し溝部のそれぞれは、
接続対象となる上下に隣り合う2つの前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部のみを接続しており、
前記燃料流通面において最も下方に配置されて前記燃料流入口が接続される前記流通溝部グループである1組目の前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、
一方側縁側または他方側縁側が前記燃料流入口に接続されており、
前記燃料流入口が一方側縁側に接続されている場合、他方側縁側が、他方側縁側において上下に延びるように最も下方に設けられた前記折り返し溝部にて、上方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の他方側縁側に接続され、
前記燃料流入口が他方側縁側に接続されている場合、一方側縁側が、一方側縁側において上下に延びるように最も下方に設けられた前記折り返し溝部にて、上方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の一方側縁側に接続され、
前記燃料流通面において最も上方に配置されて前記燃料流出口が接続される前記流通溝部グループである最終組目の前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、
一方側縁側または他方側縁側が前記燃料流出口に接続されており、
前記燃料流出口が一方側縁側に接続されている場合、他方側縁側が、他方側縁側において上下に延びるように最も上方に設けられた前記折り返し溝部にて、下方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の他方側縁側に接続され、
前記燃料流出口が他方側縁側に接続されている場合、一方側縁側が、一方側縁側において上下に延びるように最も上方に設けられた前記折り返し溝部にて、下方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の一方側縁側に接続され、
前記1組目と前記最終組目の前記流通溝部グループを除いて、一方側縁側が他方側縁側よりも上方にある前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、
一方側縁側が、一方側縁側において上下に延びるように設けられた前記折り返し溝部にて、上方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の一方側縁側に接続され、
他方側縁側が、他方側縁側において上下に延びるように設けられた前記折り返し溝部にて、下方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の他方側縁側に接続され、
前記1組目と前記最終組目の前記流通溝部グループを除いて、一方側縁側が他方側縁側よりも下方にある前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、
一方側縁側が、一方側縁側において上下に延びるように設けられた前記折り返し溝部にて、下方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の一方側縁側に接続され、
他方側縁側が、他方側縁側において上下に延びるように設けられた前記折り返し溝部にて、上方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の他方側縁側に接続され、
前記燃料流通溝は、
上下に隣り合うように配置されたそれぞれの前記流通溝部グループの前記流通溝部と、上下に隣り合う2つの前記流通溝部グループの前記流通溝部を接続するそれぞれの前記折り返し溝部にて、前記燃料流入口から流入された燃料が、一方側縁側から他方側縁側へ流れた次には他方側縁側から一方側縁側へと逆方向に流れるように、一方側縁側と他方側縁側の間で蛇行するように流れて前記燃料流出口に至るように形成されており、
前記燃料流入口から最初に燃料を供給される前記1組目の前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、少なくとも流入側の所定長さの部分が、水平方向に対して所定の第1傾斜角度以上で下流方向上方側へ傾斜するように形成されており、
複数の前記流通溝部のうち前記1組目の前記流通溝部グループよりも下流側となる2組目以降の前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、水平方向に対して前記第1傾斜角度よりも小さい第2傾斜角度で下流方向上方側へ傾斜するように形成されている、
燃料電池。
【請求項3】
ギ酸又はアルコールを含む液体を燃料とする直接液体型の燃料電池において、
燃料極触媒層と燃料極拡散層と燃料極集電体とを有する燃料極と、
空気極触媒層と空気極拡散層と空気極集電体とを有する空気極と、
前記燃料極触媒層と前記空気極触媒層との間に配置された電解質膜と、
を備え、
前記燃料極集電体は、
前記燃料が供給される燃料流入口と、
前記燃料流入口よりも上方に配置されて前記燃料が排出される燃料流出口と、
前記燃料極拡散層に当接する側の面であって上下方向に延びる燃料流通面と、
前記燃料流通面に形成されて前記燃料流入口から前記燃料流出口へと前記燃料を導く燃料流通溝と、
を有し、
前記燃料流通溝は、
前記燃料流通面の一方の側縁側である一方側縁側から、前記一方側縁側に対向する他方の側縁側である他方側縁側へ延びる複数の流通溝部であって上下方向に配置された複数の前記流通溝部と、
一方側縁側及び他方側縁側において複数の前記流通溝部における所定の前記流通溝部を接続する複数の折り返し溝部と、
を有しており、
複数の前記流通溝部は、
上下に隣り合う所定数の前記流通溝部を1グループとする複数の流通溝部グループに分けられており、
それぞれの前記流通溝部グループは、
所定間隔を空けて並列配置されて前記燃料の流れる方向が同一とされた複数の前記流通溝部にて形成されており、
上下に隣り合うように配置された各流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、
前記燃料の流入側よりも流出側のほうが上方となるように水平方向に対して下流方向上方側へ傾斜しており、
複数の前記折り返し溝部のそれぞれは、
接続対象となる上下に隣り合う2つの前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部のみを接続しており、
前記燃料流通面において最も下方に配置されて前記燃料流入口が接続される前記流通溝部グループである1組目の前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、
一方側縁側または他方側縁側が前記燃料流入口に接続されており、
前記燃料流入口が一方側縁側に接続されている場合、他方側縁側が、他方側縁側において上下に延びるように最も下方に設けられた前記折り返し溝部にて、上方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の他方側縁側に接続され、
前記燃料流入口が他方側縁側に接続されている場合、一方側縁側が、一方側縁側において上下に延びるように最も下方に設けられた前記折り返し溝部にて、上方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の一方側縁側に接続され、
前記燃料流通面において最も上方に配置されて前記燃料流出口が接続される前記流通溝部グループである最終組目の前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、
一方側縁側または他方側縁側が前記燃料流出口に接続されており、
前記燃料流出口が一方側縁側に接続されている場合、他方側縁側が、他方側縁側において上下に延びるように最も上方に設けられた前記折り返し溝部にて、下方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の他方側縁側に接続され、
前記燃料流出口が他方側縁側に接続されている場合、一方側縁側が、一方側縁側において上下に延びるように最も上方に設けられた前記折り返し溝部にて、下方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の一方側縁側に接続され、
前記1組目と前記最終組目の前記流通溝部グループを除いて、一方側縁側が他方側縁側よりも上方にある前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、
一方側縁側が、一方側縁側において上下に延びるように設けられた前記折り返し溝部にて、上方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の一方側縁側に接続され、
他方側縁側が、他方側縁側において上下に延びるように設けられた前記折り返し溝部にて、下方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の他方側縁側に接続され、
前記1組目と前記最終組目の前記流通溝部グループを除いて、一方側縁側が他方側縁側よりも下方にある前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、
一方側縁側が、一方側縁側において上下に延びるように設けられた前記折り返し溝部にて、下方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の一方側縁側に接続され、
他方側縁側が、他方側縁側において上下に延びるように設けられた前記折り返し溝部にて、上方に隣り合う前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部の他方側縁側に接続され、
前記燃料流通溝は、
上下に隣り合うように配置されたそれぞれの前記流通溝部グループの前記流通溝部と、上下に隣り合う2つの前記流通溝部グループの前記流通溝部を接続するそれぞれの前記折り返し溝部にて、前記燃料流入口から流入された燃料が、一方側縁側から他方側縁側へ流れた次には他方側縁側から一方側縁側へと逆方向に流れるように、一方側縁側と他方側縁側の間で蛇行するように流れて前記燃料流出口に至るように形成されており、
前記燃料流入口から最初に燃料を供給される前記1組目の前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、少なくとも流入側の所定長さの部分が、水平方向に対して所定の第1傾斜角度以上で下流方向上方側へ傾斜するように形成されており、
前記第1傾斜角度は、34度以上に設定されている、
燃料電池。
【請求項4】
請求項2または3に記載の燃料電池において、
前記1組目の前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、全長に渡って一定の傾斜角度で下流方向上方側へ傾斜している、
燃料電池。
【請求項5】
請求項2に記載の燃料電池において、
前記2組目以降の前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、前記第2傾斜角度が下流側に配置される各組毎に順次小さくなる傾斜角度で下流方向上方側へ傾斜するように設定されている、
燃料電池。
【請求項6】
請求項2に記載の燃料電池において、
前記2組目以降の前記流通溝部グループのそれぞれの前記流通溝部は、各組毎に同じ前記第2傾斜角度で下流方向上方側へ傾斜するように設定されている、
燃料電池。
【請求項7】
請求項2または5または6に記載の燃料電池において、
前記第2傾斜角度は、7度以下に設定されている、
燃料電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池として、ギ酸、メタノール等の液体燃料を用いた燃料電池に関する技術が種々提案されている。例えば、下記特許文献1に記載された燃料電池は、絶縁性を有するセパレータを中心に置いて、その両側に互いに対向して長手方向に一定間隔で配置される複数の電気生成ユニットを備えている。各電気生成ユニットは、セパレータの両側に密着して配置されるアノード部と、このアノード部に密着して配置される膜-電極接合体(MEA)と、このMEAに密着して配置されるカソード部と、から構成されている。
【0003】
アノード部には、縦長矩形状の第1パス部材の長さ方向に沿って任意の間隔をおいて直線状態に配置され、その両端を交互に連結して蛇行形状に形成された厚さ方向に貫通する第1流路が設けられている。第1流路の一側端部(下側の端部)は、セパレータに形成されたマニホールドの流出口と相互に連通されている。また、第1流路の他側端部(上側の端部)は、マニホールドの流入口と相互に連通されている。これにより、燃料は、マニホールドの流入口から蛇行形状に形成された第1流路を通って上方の流出口を経てマニホールドに流れ、MEAの第1電極層に分散供給されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-95692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された燃料電池では、第1流路は、両端部が略直角に折れ曲がって、略水平に配置されるため、燃料が酸化されて発生する二酸化炭素(CO2)の小さな気泡(例えば、直径0.1mm程度の気泡)が浮力により第1流路に滞留する。そのため、蛇行形状に形成された第1流路に滞留した小さな気泡によって、触媒と燃料の反応が阻害され、発電量が低下するという問題がある。また、二酸化炭素(CO2)の小さな気泡(例えば、直径0.1mm程度の気泡)の滞留を防ぐため、燃料の流速を上げると、燃料を送る圧力が上がって、膜-電極接合体(MEA)が破れる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、燃料極に形成された燃料流通溝において、二酸化炭素の小さな気泡(例えば、直径0.1mm程度の気泡)の滞留を防ぎ、発電量の低下を抑止することができる燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の発明は、ギ酸又はアルコールを含む液体を燃料とする直接液体型の燃料電池において、燃料極触媒層と燃料極拡散層と燃料極集電体とを有する燃料極と、空気極触媒層と空気極拡散層と空気極集電体とを有する空気極と、前記燃料極触媒層と前記空気極触媒層との間に配置された電解質膜と、を備え、前記燃料極集電体は、前記燃料が供給される燃料流入口と、前記燃料流入口よりも上方に配置されて前記燃料が排出される燃料流出口と、前記燃料極拡散層に当接する側の燃料流通面に形成されて前記燃料流入口から前記燃料流出口へと前記燃料を導く燃料流通溝と、を有し、前記燃料流通溝は、前記燃料流通面の一方の側縁側から、前記一方の側縁に対向する他方の側縁側へ延び、互いに所定間隔を空けて並列配置された複数の流通溝部を有し、複数の前記流通溝部は、前記燃料の流れる方向が逆方向となる互いに隣り合う複数組となるように設けられ、前記燃料流入口から最初に燃料を供給される1組目の各流通溝部は、少なくとも流入側の所定長さの部分が、水平方向に対して所定の第1傾斜角度以上で下流方向上方側へ傾斜するように形成されている、燃料電池である。
【0008】
次に、第2の発明は、上記第1の発明に係る燃料電池において、前記1組目の各流通溝部は、全長に渡って一定の傾斜角度で下流方向上方側へ傾斜している、燃料電池である。
【0009】
次に、第3の発明は、上記第1の発明に係る燃料電池において、前記1組目の各流通溝部は、流入側の前記所定長さ部分よりも下流側の部分の傾斜角度が、前記所定長さ部分の傾斜角度よりも減少するように下流方向上方側へ傾斜している、燃料電池である。
【0010】
次に、第4の発明は、上記第1の発明乃至第3の発明のいずれか1の発明に係る燃料電池において、複数の前記流通溝部のうち前記1組目の各流通溝部よりも下流側の2組目以降の各流通溝部は、水平方向に対して前記第1傾斜角度よりも小さい第2傾斜角度で下流方向上方側へ傾斜するように形成されている、燃料電池である。
【0011】
次に、第5の発明は、上記第4の発明に係る燃料電池において、前記2組目以降の各流通溝部は、前記第2傾斜角度が下流側に配置される各組毎に順次小さくなる傾斜角度で下流方向上方側へ傾斜するように設定されている、燃料電池である。
【0012】
次に、第6の発明は、上記第4の発明に係る燃料電池において、前記2組目以降の各流通溝部は、各組毎に同じ前記第2傾斜角度で下流方向上方側へ傾斜するように設定されている、燃料電池である。
【0013】
次に、第7の発明は、上記第4の発明乃至第6の発明のいずれか1の発明に係る燃料電池において、前記第2傾斜角度は、7度以下に設定されている、燃料電池である。
【0014】
次に、第8の発明は、上記第1の発明乃至第7の発明のいずれか1の発明に係る燃料電池において、前記第1傾斜角度は、34度以上に設定されている、燃料電池である。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、燃料極集電体は、燃料極拡散層に当接する側の燃料流通面に、ギ酸又はアルコールを含む燃料を、燃料流入口から燃料流入口よりも上方に配置された燃料流出口まで導く燃料流通溝が形成されている。燃料流通溝は、燃料流通面の一方の側縁側から、一方の側縁に対向する他方の側縁側へ延び、互いに所定間隔を空けて並列配置された複数の流通溝部を有している。複数の流通溝部は、燃料の流れる方向が逆方向となる互いに隣り合う複数組となるように設けられている。そして、燃料流入口から最初に燃料を供給される1組目の各流通溝部は、少なくとも流入側の所定長さの部分が、水平方向に対して所定の第1傾斜角度以上で下流方向上方側へ傾斜するように形成されている。
【0016】
従って、燃料極に形成された燃料流通溝のうち、燃料流入口から最初に燃料を供給される1組目の各流通溝部において、燃料極拡散層から燃料内に二酸化炭素の小さな気泡(例えば、直径0.1mm程度の気泡)が出てくる。そして、この二酸化炭素の小さな気泡が、第1傾斜角度以上で下流方向上方側へ傾斜するように形成された各流通溝部の壁面まで、浮力によって上昇した場合には、この浮力が、小さな気泡に対して各流通溝部の壁面に沿った方向へ動くように作用する。
【0017】
これにより、燃料流入口から最初に燃料を供給される1組目の各流通溝部において、二酸化炭素の小さな気泡に対して、燃料の流速に加えて、第1傾斜角度以上で下流方向上方側へ傾斜するように形成された各流通溝部の壁面に沿って浮力が作用するため、二酸化炭素の小さな気泡を下流側へ移動させることができる。その結果、燃料極に形成された燃料流通溝において、二酸化炭素の小さな気泡(例えば、直径0.1mm程度の気泡)の滞留を防ぎ、発電量の低下を抑止することができる。
【0018】
第2の発明によれば、燃料流入口から最初に燃料を供給される1組目の各流通溝部は、全長に渡って一定の傾斜角度で下流方向上方側へ傾斜しているため、二酸化炭素の小さな気泡が全長に渡って移動して、互いに結合して、より大きな気泡へ成長することができる。これにより、二酸化炭素の気泡に働く浮力が更に大きくなり、二酸化炭素の小さな気泡を下流側へ移動させることができる。その結果、二酸化炭素の小さな気泡(例えば、直径0.1[mm]程度の気泡)の滞留を防ぎ、発電量の低下を抑止することができる。
【0019】
第3の発明によれば、燃料流入口から最初に燃料を供給される1組目の各流通溝部は、流入側の所定長さ部分よりも下流側の部分の傾斜角度が、所定長さ部分の傾斜角度よりも減少するように下流方向上方側へ傾斜している。これにより、二酸化炭素の小さな気泡(例えば、直径0.1mm程度の気泡)の滞留を防ぐと共に、1組目の各流通溝部が占有する上下幅を狭くし、上下方向の小型化を図ることができる。
【0020】
第4の発明によれば、複数の流通溝部のうち1組目の各流通溝部よりも下流側の2組目以降の各流通溝部は、水平方向に対して第1傾斜角度よりも小さい第2傾斜角度で下流方向上方側へ傾斜するように形成されている。これにより、2組目以降の各流通溝部に流入した二酸化炭素の気泡にも、燃料の流速に加えて、第2傾斜角度で下流方向上方側へ傾斜するように形成された各流通溝部の壁面に沿って浮力が作用するため、二酸化炭素の小さな気泡を下流側へ移動させることができる。
【0021】
その結果、燃料極に形成された燃料流通溝において、二酸化炭素の小さな気泡(例えば、直径0.1mm程度の気泡)の滞留を防ぎ、発電量の低下を抑止することができる。また、2組目以降の各流通溝部は、水平方向に対して第1傾斜角度よりも小さい第2傾斜角度で下流方向上方側へ傾斜するように形成されているため、2組目以降の各流通溝部が占有する上下幅を狭くし、上下方向の小型化を図ることができる。
【0022】
第5の発明によれば、2組目以降の各流通溝部は、第2傾斜角度が下流側に配置される各組毎に順次小さくなる傾斜角度で下流方向上方側へ傾斜するように設定されているため、2組目以降の各流通溝部が占有する上下幅を更に狭くし、上下方向の更なる小型化を図ることができる。
【0023】
第6の発明によれば、2組目以降の各流通溝部は、各組毎に同じ第2傾斜角度で下流方向上方側へ傾斜するように設定されているため、2組目以降の各流通溝部が占有する上下幅を更に狭くし、上下方向の更なる小型化を図ることができる。
【0024】
第7の発明によれば、2組目以降の各流通溝部は、第2傾斜角度は、7度以下に設定されているため、2組目以降の各流通溝部が占有する上下幅を更に狭くし、上下方向の更なる小型化を図ることができる。
【0025】
第8の発明によれば、燃料流入口から最初に燃料を供給される1組目の各流通溝部は、少なくとも流入側の所定長さの部分が、水平方向に対して34度以上で下流方向上方側へ傾斜するように形成されている。これにより、燃料流入口から最初に燃料を供給される1組目の各流通溝部において、二酸化炭素の小さな気泡に対して、燃料の流速に加えて、34度以上で下流方向上方側へ傾斜するように形成された各流通溝部の壁面に沿って浮力が作用するため、二酸化炭素の小さな気泡を下流側へ移動させることができる。その結果、燃料極に形成された燃料流通溝において、二酸化炭素の小さな気泡(例えば、直径0.1mm程度の気泡)の滞留を防ぎ、発電量の低下を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を説明する斜視図である。
図2】本実施形態に係る燃料電池の構成を説明する分解斜視図である。
図3】燃料極集電体を燃料流通面から見た正面図である。
図4図3のIV部分を示す拡大斜視図である。
図5】気泡移動シミュレーションモデルの一例を示す図で、(A)は流通溝部の断面図、(B)は流通溝部の側面図である。
図6】直径0.1mmの気泡における移動速度の解析結果の一例を示す図である。
図7】直径0.3mmの気泡における移動速度の解析結果の一例を示す図である。
図8】直径0.5mmの気泡における移動速度の解析結果の一例を示す図である。
図9】気泡の直径と流通溝部の傾斜角度とに関する気泡の移動特性の一例を示す図である。
図10図3に示す燃料極集電体を流れる気泡の移動速度の一例を示す図である。
図11】他の第1実施形態に係る燃料極集電体を燃料流通面から見た正面図である。
図12図11に示す燃料極集電体を流れる気泡の移動速度の一例を示す図である。
図13】他の第2実施形態に係る燃料極集電体を燃料流通面から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る燃料電池を具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係る燃料電池7を備えた燃料電池システム1の概略構成について図1に基づいて説明する。尚、本実施形態にて説明する燃料電池システム1の燃料電池7は、ギ酸またはメタノール等のアルコールの水溶液を燃料とする直接液体型の燃料電池であり、以下の説明ではギ酸を燃料とする直接ギ酸型の燃料電池を例として説明する。
【0028】
ここで、直接液体型の燃料電池とは、液体の燃料を、改質せずに燃料極に直接投入する燃料電池を意味する。そして、直接ギ酸型の燃料電池は、燃料としてギ酸を用い、ギ酸を改質せずに燃料電池7を構成する燃料極10(図1参照)に直接投入する燃料電池である。尚、各図中のX軸、Y軸、Z軸は、互いに直交しており、Z軸方向は上下方向(鉛直方向)、Y軸方向は厚さ方向、X軸方向は水平幅方向、に対応している。
【0029】
[燃料電池システムの概略構成]
図1に示すように、燃料電池システム1は、燃料タンク50、ポンプ52、燃料電池7、排液タンク60等から構成されている。燃料タンク50には、所定濃度のギ酸を含む溶液(ギ酸水溶液)が蓄えられている。ギ酸水溶液の濃度は、例えば、約10%~約40%である。また、燃料タンク50には、燃料供給管51の一方端が接続されている。燃料供給管51の他方端は、燃料電池7の下端部に開口する燃料流入口17Aに接続されている。ポンプ52は、電動ポンプであり、燃料供給管51の途中に配置されて、燃料タンク50内の燃料を燃料電池7の燃料流入口17Aに供給(圧送)している。
【0030】
排液タンク60には、燃料電池7内で使用された後、排出された燃料と、燃料電池7を構成する空気極20にて発生して回収された水が蓄えられている。排液タンク60には燃料排出配管61の他方端が接続されている。燃料排出配管61の一方端は燃料電池7の上端部に開口する燃料流出口17Bに接続されている。また、排液タンク60には、回収配管62の他方端が接続されている。回収配管62の一方端の側は、空気極20の下方に設けられた空気流出口25Bに接続されている。
【0031】
更に、排液タンク60の上部には、内部と外部とを連通する排気口(不図示)が設けられている。排液タンク60内の気体の圧力が所定圧力よりも高くなると、排液タンク60内の気体が、上部に設けられた排気口(不図示)から排液タンク60外へ排出される。また、燃料電池7は、燃料流入口17Aから流入して、燃料流出口17Bから排出される燃料を用いて発電する。燃料電池7の構造の詳細について、以下に説明する。
【0032】
[燃料電池の概略構成]
次に、燃料電池7の概略構成について図1及び図2に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、燃料電池7は、空気極20と燃料極10にて厚さ方向に電解質膜30を挟んで一体的に構成されている。空気極20は、電解質膜30の一面に密着される空気極触媒層21と、空気極拡散層22と、空気極集電体23が、この順番で積層されて構成されている。燃料極10は、電解質膜30の他の一面に密着される燃料極触媒層11と、燃料極拡散層12と、燃料極集電体13が、この順番で積層されて構成されている。
【0033】
空気極集電体23は、厚さが約0.2~約10[mm]程度の導電性を有する平板状の金属等で形成されている。空気極集電体23には、図1に示すように、電気負荷(例えば、電動モータ)の一方端が電気的に接続される。図2に示すように、空気極集電体23は、空気極拡散層22に当接する空気流通面23Aを有しており、空気流通面23Aには、空気極拡散層22側が開口された空気流通溝23Bが形成されている。
【0034】
空気流通溝23Bは、空気極集電体23の空気流出口25Bに対して対角線上の上方側に形成された空気流入口25Aから供給(圧送)された空気を、空気極拡散層22に接触させながら空気極集電体23の下方側に形成された空気流出口25Bへ導いている。従って、空気流通溝23B内を流れる空気は、空気極拡散層22中に拡散される。尚、酸素を外部から空気流入口25Aに供給(圧送)してもよい。
【0035】
空気流通溝23Bは、空気流通面23Aの一方の側縁側(例えば、図2中、左側縁側)から、一方の側縁に対向する他方の側縁側(例えば、図2中、右側縁側)へ幅方向に沿って延び、互いに所定間隔を空けて並列配置されて、空気が流れる複数の流通溝部23Cが設けられている。また、この流通溝部23Cの上下方向の間には、空気極拡散層22に当接するランド部(リブ部)23Eが、例えば、流通溝部23Cの上下方向の幅とほぼ同じ上下方向の幅で形成されている。ランド部(リブ部)23Eは、空気極集電体23及び空気極拡散層22を導通している。
【0036】
また、空気流入口25Aは、図2中、左上角部において鉛直方向に延びる流入溝部23Fに接続されている。また、空気流出口25Bは、図2中、右下角部において鉛直方向に延びる流出溝部23Gに接続されている。そして、複数の流通溝部23Cのそれぞれは、空気極集電体23の一方の側縁、又は、他方の側縁の近傍に形成されて略鉛直方向に延びる各折り返し溝部23D1~23D6にて接続されている。また、複数の流通溝部23Cは、図2中、左上角部において、流入溝部23Fに接続されており、図2中、右下角部において、流出溝部23Gに接続されている。
【0037】
従って、空気流入口25Aから流入溝部23Fに流入した空気は、各流通溝部23Cにおいて、一方の側縁から他方の側縁へと導かれ、各折り返し溝部23D1~23D4にて方向転換されることを繰り返して、空気流通溝23B内を流れ、空気極拡散層22中に拡散される。その後、流出溝部23Gに流入した空気は、空気流出口25Bから回収配管62(図1参照)へ流れる。
【0038】
空気極拡散層22は、厚さが約0.05~約0.5[mm]程度の層状に形成されている。空気極拡散層22は、水および空気を透過できるとともに、電子伝導性を有する多孔質材であり、例えば、カーボンペーパーやカーボンクロスを用いることができる。空気極拡散層22は、空気極集電体23の空気流入口25Aから流入した空気(酸素)を、拡散させながら空気極触媒層21に導く。外気の空気に含まれる酸素は、空気極拡散層22に浸透して空気極触媒層21の電極触媒粒子に到達する。
【0039】
空気極触媒層21は、厚さが約0.05~約0.5[mm]程度の層状に形成されている。空気極触媒層21は、空気極の電極触媒粒子(不図示)と、電極触媒粒子を担持する電極触媒担持体(不図示)とを備えている。空気極20の電極触媒粒子は、空気中の酸素を還元する反応の反応速度を促進させる触媒の粒子であり、例えば白金(Pt)粒子を用いることができる。電極触媒担持体は、電極触媒粒子を担持できるとともに、導電性を備えればよく、例えば、カーボン粉末を用いることができる。燃料としてギ酸を用いた場合、空気極触媒層21の電極触媒粒子によって、下記式(1)に示す酸化還元反応が進行する。尚、生成された水(H2O)は、空気流通溝23B内を流れ、空気極集電体23の空気流出口25Bから回収配管62を経由して排液タンク60に導かれる(図1図2参照)。
【0040】
2H++1/2O2+2e- → H2O ・・・(1)
【0041】
燃料極集電体13は、厚さが約0.2~約10[mm]程度の導電性を有する平板状の金属で形成されている。燃料極集電体13は、燃料極拡散層12に当接する燃料流通面13Aを有しており、燃料流通面13Aには、燃料極拡散層12の側が開口された燃料流通溝13Bが形成されている。燃料流通溝13Bは、燃料極集電体13の下方側に形成された燃料流入口17Aから供給された燃料を、燃料極拡散層12に接触させながら燃料極集電体13の上方側に形成された燃料流出口17Bへ導いている。従って、燃料流通溝13B内を流れる燃料は、燃料極拡散層12中に拡散される。
【0042】
燃料流通溝13Bは、燃料流通面13Aの一方の側縁側(例えば、図2中、右側縁側)から、一方の側縁に対向する他方の側縁側(例えば、図2中、左側縁側)へ幅方向に沿って延び、互いに所定間隔を空けて並列配置されて、燃料が流れる複数の流通溝部13Cが設けられている。また、この流通溝部13Cの上下方向の間には、電子e-を回収するために、燃料極拡散層12に当接するリブ状のランド部(リブ部)13Eが、例えば、流通溝部13Cの上下方向の幅とほぼ同じ上下方向の幅で形成されている。燃料極集電体13には、図1に示すように、電気負荷(例えば、電動モータ)の他方端が接続される。
【0043】
燃料極拡散層12は、厚さが約0.05~約0.5[mm]程度の層状に形成されている。燃料極拡散層12は、ギ酸水溶液が内部に浸透できるとともに、電子伝導性を有する多孔質材であり、例えば、カーボンペーパーやカーボンクロスを用いることができる。燃料極拡散層12は、燃料極集電体13の燃料流通面13Aに形成された燃料流通溝13Bに流される燃料を、拡散させながら燃料極触媒層11に導く。
【0044】
燃料極触媒層11は、厚さが約0.05~約0.5[mm]程度の層状に形成されている。燃料極触媒層11は、電極触媒粒子(不図示)と、電極触媒粒子を担持する粒子状の電極触媒担持体(不図示)とを備えている。燃料極10の電極触媒粒子は、燃料であるギ酸の酸化反応の速度を促進させる触媒の粒子であり、例えば、パラジウム(Pd)粒子を用いることができる。電極触媒担持体は、電極触媒粒子を担持できるとともに、導電性を備える粒子であればよく、例えば、カーボン粉末を用いることができる。燃料としてギ酸を用いた場合、燃料極触媒層11の電極触媒粒子によって、下記式(2)に示す酸化反応が進行する。
【0045】
HCOOH → CO2+2H++2e- ・・・(2)
【0046】
電解質膜30は、厚さが約0.01~約0.3[mm]程度の薄膜状に形成されている。電解質膜30は、燃料極10の燃料極触媒層11と空気極20の空気極触媒層21との間に挟まれており、電子伝導性を持たず、水および水素イオン(プロトン)H+を透過できるプロトン交換膜である。電解質膜30には、例えば、Du Pont社製のNafion(登録商標)等のパーフルオロエチレンスルフォン酸系膜を用いることができる。尚、燃料極触媒層11と、燃料極拡散層12と、電解質膜30と、空気極触媒層21と、空気極拡散層22とが接合されて一体化されていてもよい。
【0047】
[燃料流通溝の構成]
次に、燃料極集電体13に形成された燃料流通溝13Bの構成について図2乃至図4に基づいて説明する。図2及び図3に示すように、燃料流通溝13Bは、燃料流通面13Aの一方の側縁側(例えば、図2中、右側縁側)から、他方の側縁側(例えば、図2中、左側縁側)へ延び、互いに所定間隔を空けて並列配置されて、燃料が流れる複数の流通溝部13Cが設けられている。
【0048】
複数の流通溝部13Cは、燃料の流れる方向が逆方向となる互いに隣り合う複数組(例えば、3本の流通溝部13Cを1組とする、各流通溝部グループ131~135)となるように設けられている。各流通溝部グループ131~135をそれぞれ構成する複数(例えば、3本)の流通溝部13Cは、互いに所定間隔を空けて並列配置されて、水平方向に対して所定傾斜角度(例えば、傾斜角度2度~40度、好ましくは、傾斜角度2度~35度、更に好ましくは、傾斜角度2度~34度)で下流方向上方側へ傾斜して延びている。
【0049】
尚、各流通溝部グループ131~135を構成する流通溝部13Cの本数は、3本に限らず、1本以上(例えば、2本、4本、5本、6本等)であってもよいし、同じ本数に設定しなくてもよい。また、複数の流通溝部13Cは、燃料の流れる方向が逆方向となる互いに隣り合う5組に限らず、燃料の流れる方向が逆方向となる互いに隣り合う4組以下、若しくは、6組以上となるように設けられてもよい。
【0050】
そして、下端側の流通溝部グループ131(1組目)を構成する3本の流通溝部13Cの一方の側縁側(図3中、右側)の各端部は、下端部に形成された燃料流入口17Aから上方に延びて上端部が閉塞された正面視縦長略矩形状の流入溝部13Fに接続されている。また、下端側の流通溝部グループ131(1組目)を構成する3本の流通溝部13Cは、下流方向上側へ(図3中、左斜め上方向へ)、水平方向に対して約35度(第1傾斜角度)、好ましくは、約34度以上(例えば、約34度)の傾斜角度θ1(第1傾斜角度)で傾斜するように形成されている。尚、下端側の流通溝部グループ131を構成する各流通溝部13Cの傾斜角度θ1は、小さい角度程、燃料流通面13Aを効率的に使用して、発電効率を向上させることができる。
【0051】
また、下端側の流通溝部グループ131を構成する3本の流通溝部13Cの他方の側縁側(図3中、左側)の各端部と、その上側の流通溝部グループ132(2組目)を構成する3本の流通溝部13Cの他方の側縁側(図3中、左側)の各端部は、例えば、上下方向に延びると共に幅方向外方へ突出する正面視縦長略矩形状の折り返し溝部13D1に接続されている。
【0052】
これにより、燃料流入口17Aから流入溝部13Fに流入した燃料は、下端側の流通溝部グループ131を構成する3本の流通溝部13Cに流入して、他方の側縁側(図3中、左側)へ流れ、折り返し溝部13D1の下方側に流入する。そして、折り返し溝部13D1に流入した燃料は、折り返し溝部13D1の上方側に配置された流通溝部グループ132(2組目)を構成する3本の流通溝部13Cに流入して、一方の側縁側(図3中、右側)へ流れる。従って、下端側の流通溝部グループ131を構成する3本の流通溝部13Cと、その上側の流通溝部グループ132を構成する3本の流通溝部13Cとは、燃料の流れる方向が互いに逆方向となる。
【0053】
また、流通溝部グループ132を構成する3本の流通溝部13Cは、下流方向上側へ(図3中、右斜め上方向へ)、水平方向に対して約7度以下(第2傾斜角度)、好ましくは、約2度~約7度(例えば、約3度)の傾斜角度θ2(第2傾斜角度)で傾斜するように形成されている。尚、流通溝部グループ132を構成する各流通溝部13Cの傾斜角度θ2は、小さい角度程、燃料流通面13Aを効率的に使用して、発電効率を向上させることができる。
【0054】
また、流通溝部グループ132を構成する3本の流通溝部13Cの一方の側縁側(図3中、右側)の各端部と、その上側の流通溝部グループ133を構成する3本の流通溝部13Cの一方の側縁側(図3中、右側)の各端部は、例えば、上下方向に延びると共に幅方向外方へ突出する正面視縦長略矩形状の折り返し溝部13D2に接続されている。
【0055】
これにより、流通溝部グループ132を構成する3本の流通溝部13Cから折り返し溝部13D2の下方側に流入した燃料は、折り返し溝部13D2の上方側に配置された流通溝部グループ133を構成する3本の流通溝部13Cに流入して、他方の側縁側(図3中、左側)へ流れる。従って、流通溝部グループ132を構成する3本の流通溝部13Cと、その上側に配置された流通溝部グループ133を構成する3本の流通溝部13Cとは、燃料の流れる方向が互いに逆方向となる。
【0056】
また、流通溝部グループ133を構成する3本の流通溝部13Cは、下流方向上側へ(図3中、左斜め上方向へ)、水平方向に対して約7度以下(第2傾斜角度)、好ましくは、約2度~約7度(例えば、約3度)の傾斜角度θ2で傾斜するように形成されている。従って、流通溝部グループ133を構成する3本の流通溝部13Cと、その下側の流通溝部グループ132を構成する3本の流通溝部13Cとは、ほぼ同じ傾斜角度θ2(第2傾斜角度)に形成されている。尚、流通溝部グループ133を構成する各流通溝部13Cの傾斜角度θ2は、小さい角度程、燃料流通面13Aを効率的に使用して、発電効率を向上させることができる。
【0057】
また、流通溝部グループ133を構成する3本の流通溝部13Cの他方の側縁側(図3中、左側)の各端部と、その上側の流通溝部グループ134を構成する3本の流通溝部13Cの他方の側縁側(図3中、左側)の各端部は、例えば、上下方向に延びると共に幅方向外方へ突出する正面視縦長略矩形状の折り返し溝部13D3に接続されている。
【0058】
これにより、流通溝部グループ133を構成する3本の流通溝部13Cから折り返し溝部13D3の下方側に流入した燃料は、折り返し溝部13D3の上方側に配置された流通溝部グループ134を構成する3本の流通溝部13Cに流入して、一方の側縁側(図3中、右側)へ流れる。従って、流通溝部グループ133を構成する3本の流通溝部13Cと、その上側に配置された流通溝部グループ134を構成する3本の流通溝部13Cとは、燃料の流れる方向が互いに逆方向となる。
【0059】
また、流通溝部グループ134を構成する3本の流通溝部13Cは、下流方向上側へ(図3中、右斜め上方向へ)、水平方向に対して約7度以下(第2傾斜角度)、好ましくは、約2度~約7度(例えば、約3度)の傾斜角度θ2で傾斜するように形成されている。従って、流通溝部グループ134を構成する3本の流通溝部13Cと、その下側の流通溝部グループ133を構成する3本の流通溝部13Cとは、ほぼ同じ傾斜角度θ2(第2傾斜角度)に形成されている。尚、流通溝部グループ134を構成する各流通溝部13Cの傾斜角度θ2は、小さい角度程、燃料流通面13Aを効率的に使用して、発電効率を向上させることができる。
【0060】
また、流通溝部グループ134を構成する3本の流通溝部13Cの一方の側縁側(図3中、右側)の各端部と、その上側の流通溝部グループ135を構成する3本の流通溝部13Cの一方の側縁側(図3中、右側)の各端部は、例えば、上下方向に延びると共に幅方向外方へ突出する正面視縦長略矩形状の折り返し溝部13D4に接続されている。
【0061】
これにより、流通溝部グループ134を構成する3本の流通溝部13Cから折り返し溝部13D4の下方側に流入した燃料は、折り返し溝部13D4の上方側に配置された流通溝部グループ135を構成する3本の流通溝部13Cに流入して、他方の側縁側(図3中、左側)へ流れる。従って、流通溝部グループ134を構成する3本の流通溝部13Cと、その上側に配置された流通溝部グループ135を構成する3本の流通溝部13Cとは、燃料の流れる方向が互いに逆方向となる。
【0062】
また、流通溝部グループ135を構成する3本の流通溝部13Cは、下流方向上側へ(図3中、左斜め上方向へ)、水平方向に対して約7度以下(第2傾斜角度)、好ましくは、約2度~約7度(例えば、約3度)の傾斜角度θ2で傾斜するように形成されている。従って、流通溝部グループ135を構成する3本の流通溝部13Cと、その下側の流通溝部グループ134を構成する3本の流通溝部13Cとは、ほぼ同じ傾斜角度θ2(第2傾斜角度)に形成されている。尚、流通溝部グループ135を構成する各流通溝部13Cの傾斜角度θ2は、小さい角度程、燃料流通面13Aを効率的に使用して、発電効率を向上させることができる。
【0063】
そして、流通溝部グループ135を構成する3本の流通溝部13Cの他方の側縁側(図3中、左側)の各端部は、燃料極集電体13の上端部に形成された燃料流出口17Bから下方に延びると共に幅方向外方へ突出する正面視縦長略矩形状の流出溝部13Gに接続されている。これにより、流通溝部グループ135を構成する3本の流通溝部13Cから流出溝部13Gに流入した燃料は、燃料流出口17Bから燃料排出配管61(図1参照)へ流れる。
【0064】
ここで、折り返し溝部13D4の構成について図4に基づいて説明する。尚、折り返し溝部13D2は、折り返し溝部13D4とほぼ同じ構成である。流入溝部13Fは、折り返し溝部13D4の上下方向における上半分とほぼ同じ構成である。また、各折り返し溝部13D1、13D3は、折り返し溝部13D4の鉛直線に対して線対称な構成とほぼ同じ構成である。流出溝部13Gは、折り返し溝部13D4の鉛直線に対して線対称な構成の下半分とほぼ同じ構成である。
【0065】
図4に示すように、折り返し溝部13D4は、上下方向に延びると共に幅方向外方へ突出する正面視縦長略矩形状に形成され、各流通溝部13Cの深さに対して約2倍の深さで厚さ方向に窪んでいる。また、各流通溝部13Cの一方の側縁側(図4中、右側)の端部に対向する内側壁面部15は、相対向する流通溝部13Cの端部までの距離が、上下方向全長に渡ってほぼ一定となるように形成されている。
【0066】
具体的には、例えば、折り返し溝部13D4は、上端に位置する流通溝部13Cの上側の側壁部71から、下端に位置する流通溝部13Cの下側の側壁部72までの距離の長さを上下方向の一辺とし、折り返し溝部13D4の深さの約2倍、つまり、各流通溝部13Cの深さに対して約4倍の長さを左右幅方向の一辺とする正面視縦長略矩形状に形成されている。
【0067】
従って、各ランド部(リブ部)13Eの内側壁面部15に対向する各端部は、各流通溝部13Cの内側壁面部15に対向する各端部と共に、内側壁面部15に対して平行な壁面部を形成している。従って、流通溝部グループ134の各流通溝部13Cを流れる燃料が、折り返し溝部13D4内の下方側に流入する。そして、折り返し溝部13D4内に流入した燃料が、内側壁面部15の上方側部分によって折り返し溝部13D4内を上方へ案内されて、流通溝部グループ135の各流通溝部13C内に流入する。
【0068】
次に、上記のように構成された燃料電池7の燃料極集電体13に濃度約10%~40%のギ酸水溶液の燃料を供給(圧送)した際の、二酸化炭素(CO2)の気泡が流通溝部13Cを移動する移動速度についてCAE(Computer Aided Engineering)解析を行った一例について図5乃至図10に基づいて説明する。
【0069】
このCAE解析による流体解析は、図5に示すシミュレーションモデルにより、二酸化炭素(CO2)の気泡が流通溝部13Cを移動する移動速度を算出した。図5に示すように、流通溝部13Cの水平方向に対する傾斜角度θを種々に変化させて、流通溝部13C内に発生した二酸化炭素(CO2)の気泡に働く浮力の下流方向への分力を変化させた。各傾斜角θにおいて、流通溝部13C内の二酸化炭素(CO2)の気泡に対して下流方向へ作用する運動方程式は、単位質量(質量=1)として、下記式(11)、(12)により表される。
【0070】
dup/dt=FD・(u-up)+gx・(ρp-ρ)/ρp+Fx ・・・・・・(11)
D=(18・μ/(ρp・dp 2))・CD・Re/24 ・・・(12)
【0071】
ここで、dup/dt:気泡に働く総力、FD・(u-up):気泡に働く推力、gx・(ρp-ρ)/ρp:気泡に働く浮力の下流方向成分、Fx:気泡に働く慣性力(無視できる大きさである。)、である。また、u:液体燃料の速度、up:気泡の速度、gx:重力加速度の下流方向成分、ρ:液体燃料の密度、ρp:気泡の密度、:FD:気泡に働く液体燃料の抗力、μ:液体燃料の粘度、dp:気泡の直径、CD:抗力係数、Re:レイノルズ数、である。
【0072】
次に、二酸化炭素(CO2)の気泡が移動する流通溝部13Cのシミュレーションモデルについて図5に基づいて説明する。図5(A)及び図5(B)に示すように、流通溝部13Cは幅W1で高さH1の縦長の長方形断面を有する直管に形成されている。また、気泡75は、流通溝部13Cの流路の上隅に配置した。尚、気泡75は、図5(A)中、右上隅に配置したが、左上隅に配置してもよい。
【0073】
図5(B)に示すように、流通溝部13Cの全長は、30[mm]に設定した。そして、ギ酸水溶液の燃料を流通溝部13Cの入口76から一様流で与え、出口77から流出するように設定した。また、気泡75は、流路内の燃料の流速分布が安定する入口76から下流方向10[mm]の位置に配置し、出口77に達するまでの時間を計算して、気泡75の移動速度を算出した。また、流通溝部13Cの水平方向に対する傾斜角度θを0[度]から60[度]ぐらいまで変化させて、各傾斜角度θにおける、気泡75の各直径dpにおける移動速度を上記式(11)、(12)により算出した。
【0074】
ここで、図5(A)及び図5(B)に示す流通溝部13Cの長方形断面を、幅W1=0.75[mm]、高さH1=1.5[mm]とし、ギ酸水溶液の燃料を流量Q1=0.6[ml/min]で供給した。従って、燃料は、平均流速ua=0.00889[m/sec]で流れるとした。また、気泡75は、直径dp=0.1[mm]~0.5[mm]として、流通溝部13Cの水平方向に対する傾斜角度θにおける、各直径dpの気泡75が移動する移動速度を算出した一例について、図6乃至図8に基づいて説明する。尚、図6乃至図8において、横軸は流通溝部13Cの水平方向に対する傾斜角度θ[deg]とし、縦軸は気泡75の移動速度[m/sec]とした。
【0075】
図6に示すように、直径dp=0.1[mm]の気泡75の場合には、流通溝部13Cの水平方向に対する傾斜角度θ[deg]が、0[deg]~33[deg]の範囲では、気泡75は、移動しなかった。一方、流通溝部13Cの水平方向に対する傾斜角度θ[deg]が、34[deg]の傾斜角度になると、気泡75は、移動を開始した。そして、傾斜角度θが34[deg]よりも大きくなるに従って、気泡75の移動速度は、0.003[m/sec]から徐々に増加した。しかしながら、傾斜角度θが90[deg]に達しても、気泡75の移動速度は、燃料の平均流速ua=0.00889[m/sec]に達しなかった。
【0076】
図7に示すように、直径dp=0.3[mm]の気泡75の場合には、流通溝部13Cの水平方向に対する傾斜角度θ[deg]が、0[deg]~1[deg]の範囲では、気泡75は、移動しなかった。一方、流通溝部13Cの水平方向に対する傾斜角度θ[deg]が、2[deg]の傾斜角度になると、気泡75は、移動を開始した。そして、傾斜角度θが2[deg]よりも大きくなるに従って、気泡75の移動速度は、0.0034[m/sec]から増加し、傾斜角度θが11.2[deg]のときに、燃料の平均流速ua=0.00889[m/sec]に達した。その後、傾斜角度θが11.2[deg]よりも大きくなるに従って、気泡75の移動速度は、更に増加した。
【0077】
図8に示すように、直径dp=0.5[mm]の気泡75の場合には、流通溝部13Cの水平方向に対する傾斜角度θ[deg]が、0[deg]のときに、気泡75は、0.0048[m/sec]の移動速度で移動した。そして、傾斜角度θが2.8[deg]のときに、燃料の平均流速ua=0.00889[m/sec]に達した。その後、傾斜角度θが2.8[deg]よりも大きくなるに従って、気泡75の移動速度は、更に増加した。
【0078】
ここで、気泡75の直径dpを種々変更して、気泡75が移動を開始する流通溝部13Cの傾斜角度θ[deg]と、気泡75の移動速度が燃料の平均流速ua=0.00889[m/sec]に達する流通溝部13Cの傾斜角度θ[deg]とを、上記と同様に算出した一例について図9に基づいて説明する。尚、図9において、横軸は気泡75の直径dp[mm]とし、縦軸は流通溝部13Cの水平方向に対する傾斜角度θ[deg]とした。また、気泡75の直径dpは、0.1[mm]、0.2[mm]、0.25[mm]、0.3[mm]、0.4[mm]、0.5[mm]とした。
【0079】
図9において、各直径dpに対して、気泡75が移動を開始する流通溝部13Cの水平方向に対する傾斜角度θ[deg]を黒丸印で示す。具体的には、気泡75の直径dpが0.1[mm]の場合には、気泡75が移動を開始する傾斜角度θ[deg]は、上記の通り、34[deg]であった。気泡75の直径dpが0.2[mm]の場合には、気泡75が移動を開始する傾斜角度θ[deg]は、7[deg]であった。気泡75の直径dpが0.25[mm]の場合には、気泡75が移動を開始する傾斜角度θ[deg]は、3[deg]であった。気泡75の直径dpが0.3[mm]の場合には、気泡75が移動を開始する傾斜角度θ[deg]は、上記の通り、2[deg]であった。
【0080】
これより、気泡75の各直径dpに対して、気泡75が移動を開始する流通溝部13Cの水平方向に対する傾斜角度θ[deg]を図9の破線78で示す。破線78で示すように、気泡75の直径dpが0.4[mm]以上の場合には、流通溝部13Cの水平方向に対する傾斜角度θ[deg]が0[deg]のときから、気泡75は移動した。従って、流通溝部13Cの水平方向に対する傾斜角度θ[deg]が34[deg]以上であれば、流通溝部13C内の気泡75の直径dpが約0.1[mm]程度であっても、気泡75は移動を開始することができ、流通溝部13C内における気泡75の滞留を防ぎ、発電量の低下を抑止することができる。
【0081】
また、図9において、各直径dpに対して、気泡75の移動速度が燃料の平均流速ua=0.00889[m/sec]に達したときの、流通溝部13Cの水平方向に対する傾斜角度θ[deg]を四角印で示す。具体的には、気泡75の直径dpが0.1[mm]の場合には、上記の通り、流通溝部13Cの水平方向に対する傾斜角度θ[deg]が90[deg]のときでも、気泡75の移動速度は、燃料の平均流速ua=0.00889[m/sec]に達しなかった。
【0082】
気泡75の直径dpが0.2[mm]の場合には、気泡75の移動速度が、燃料の平均流速ua=0.00889[m/sec]に達する傾斜角度θ[deg]は、約25[deg]であった。気泡75の直径dpが0.25[mm]の場合には、気泡75の移動速度が、燃料の平均流速ua=0.00889[m/sec]に達する傾斜角度θ[deg]は、約16[deg]であった。気泡75の直径dpが0.3[mm]の場合には、気泡75の移動速度が、燃料の平均流速ua=0.00889[m/sec]に達する傾斜角度θ[deg]は、上記の通り、11.2[deg]であった。
【0083】
気泡75の直径dpが0.4[mm]の場合には、気泡75の移動速度が、燃料の平均流速ua=0.00889[m/sec]に達する傾斜角度θ[deg]は、約5[deg]であった。気泡75の直径dpが0.5[mm]の場合には、気泡75の移動速度が、燃料の平均流速ua=0.00889[m/sec]に達する傾斜角度θ[deg]は、上記の通り、2.8[deg]であった。
【0084】
これより、各直径dpに対して、気泡75の移動速度が燃料の平均流速ua=0.00889[m/sec]に達したときの、流通溝部13Cの水平方向に対する傾斜角度θ[deg]を図9の一点鎖線79で示す。一点鎖線79で示すように、気泡75の直径dpが0.6[mm]の場合には、気泡75の移動速度が、燃料の平均流速ua=0.00889[m/sec]に達する傾斜角度θ[deg]は、2[deg]であると考えられる。従って、流通溝部13C内の気泡75の直径dpが約0.6[mm]以上の場合には、流通溝部13Cの水平方向に対する傾斜角度θ[deg]が2[deg]以上であれば、気泡75の移動速度が、燃料の平均流速ua[m/sec]に達すると考えられる。
【0085】
次に、図3に示す燃料極集電体13の燃料流通溝13Bに対して、上記式(11)、(12)の運動方程式を用いて、各流通溝部13C内に発生する二酸化炭素(CO2)の気泡が移動する移動速度を算出した一例を図10に基づいて説明する。尚、燃料極拡散層12を介して各流通溝部13C内に発生する二酸化炭素(CO2)の気泡の直径dpは、約0.1[mm]とした。燃料流通溝13Bの水平方向の幅は、100[mm]とした。各流通溝部13Cの断面形状は、図5(A)に示すように、幅W1=0.75[mm]、高さH1=1.5[mm]の長方形断面とした。
【0086】
図10に示すように、下端側の流通溝部グループ131を構成する3本の流通溝部13Cは、全長に渡って、下流方向上側へ(図10中、左斜め上方向へ)、水平方向に対して傾斜角度θ1=34[deg]で傾斜している。このため、流通溝部グループ131の各流通溝部13C内に発生した直径dpが約0.1[mm]の二酸化炭素の気泡は、燃料の平均流速uaよりも遅い移動速度で下流方向上側へ移動する(図9参照)。
【0087】
そして、各流通溝部13C内を移動する二酸化炭素の気泡は、他の気泡と結合して徐々に直径の大きい気泡となり、各流通溝部13Cの下流側端部では、例えば、二酸化炭素の気泡の直径dpが0.6[mm]よりも大きい約0.8[mm]に達する。その結果、流通溝部グループ131の各流通溝部13C内を移動する二酸化炭素の気泡の移動速度は、下流側端部の近傍では、燃料の平均流速uaに達している、若しくは、平均流速uaを超えている(図9参照)。
【0088】
また、流通溝部グループ131の上側に配置される各流通溝部グループ132~135を構成する3本の流通溝部13Cは、それぞれ、燃料の流れる方向が互いに逆方向となる共に、下流方向上側へ(図10中、右斜め上方向、又は、左斜め上方向へ)、水平方向に対して傾斜角度θ2=2[deg]で傾斜している。また、各流通溝部グループ132~135を構成する流通溝部13C内には、例えば、二酸化炭素の気泡の直径dpが0.6[mm]よりも大きい約0.8[mm]以上の気泡が流入する。その結果、各流通溝部グループ132~135を構成する流通溝部13C内の二酸化炭素の気泡は、燃料の平均流速uaを確実に超えた移動速度で下流側へ移動する(図9参照)。
【0089】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係る燃料電池7では、燃料極集電体13の燃料流通溝13Bは、燃料流入口17Aから最初に燃料を供給される下端側の流通溝部グループ131(1組目)を構成する3本の流通溝部13Cは、全長に渡って、下流方向上側へ(図3中、左斜め上方向へ)、水平方向に対して34[deg]以上の傾斜角度θ1で傾斜している。また、流通溝部グループ131の上側に配置される、各流通溝部グループ132~135(2組目以降)は、それぞれ、燃料の流れる方向が互いに逆方向となる共に、下流方向上側へ(図3中、右斜め上方向、又は、左斜め上方向へ)、水平方向に対して7[deg]以下、つまり、2[deg]~7[deg]の傾斜角度θ2で傾斜している。
【0090】
このため、上記式(2)に示すギ酸の酸化反応によって、流通溝部グループ131の各流通溝部13C内に発生した直径dpが約0.1[mm]の二酸化炭素の気泡には、燃料の流速に加えて、浮力が水平方向に対して34[deg]以上の傾斜角度θ1で傾斜する下流方向へ働く。その結果、流通溝部グループ131の各流通溝部13C内に発生した直径dpが約0.1[mm]の二酸化炭素の気泡は、燃料の平均流速uaよりも遅い移動速度で下流方向上側へ移動する(図9参照)。
【0091】
そして、流通溝部グループ131の各流通溝部13Cの下流側端部の近傍では、二酸化炭素の気泡は他の気泡と結合して、直径dpが0.6[mm]以上、例えば、0.8[mm]になる。その結果、二酸化炭素の気泡の移動速度は、下流側端部の近傍では、燃料の平均流速uaに達している、若しくは、平均流速uaを超えている(図9参照)。
【0092】
続いて、流通溝部グループ131の上側に配置される、各流通溝部グループ132~135を構成する各流通溝部13Cは、7[deg]以下、つまり、2[deg]~7[deg]の傾斜角度θ2で傾斜している。そのため、各流通溝部グループ132~135を構成する各流通溝部13C内に流入した直径dpが0.6[mm]以上の二酸化炭素の気泡は、燃料の平均流速uaを確実に超えた移動速度で下流側へ移動する(図9参照)。従って、各流通溝部グループ131~135を構成する各流通溝部13C内に発生する二酸化炭素の気泡は、ギ酸水溶液の燃料と共にスムーズに各流通溝部13Cを流れる。
【0093】
これにより、燃料極集電体13に形成された燃料流通溝13Bにおいて、二酸化炭素の小さな気泡(例えば、直径dpが0.1[mm]程度の気泡)が滞留することを抑止することができる。その結果、燃料極触媒層11の電極触媒粒子により燃料(ギ酸水溶液)の酸化反応が増え、発電量の低下を抑止することができる。また、各流通溝部グループ132~135の各流通溝部13Cは、7[deg]以下、つまり、2[deg]~7[deg]の傾斜角度θ2に設定されているため、各流通溝部グループ132~135の各流通溝部13Cが占有する上下幅を狭くし、燃料電池7の上下方向(Z軸方向)の小型化を図ることができる。
【0094】
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形、追加、削除が可能であることは勿論である。尚、以下の説明において上記図1乃至図10の前記実施形態に係る燃料電池システム1の構成等と同一符号は、前記実施形態に係る燃料電池システム1の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0095】
[他の第1実施形態]
(A)例えば、燃料極集電体13に替えて、図11に示す燃料極集電体81を用いてもよい。燃料極集電体81に形成された燃料流通溝81Bの構成について図11に基づいて説明する。図11に示すように、燃料極集電体81に形成された燃料流通溝81Bは、燃料極集電体13に形成された燃料流通溝13Bとほぼ同じ構成である。従って、下端側の流通溝部グループ131(1組目)を構成する3本の流通溝部13Cは、下流方向上側へ(図11中、左斜め上方向へ)、水平方向に対して約34度(第1傾斜角度)、好ましくは、約34度以上(例えば、約35度)の傾斜角度θ1(第1傾斜角度)で傾斜するように形成されている。
【0096】
但し、流通溝部グループ131の上側に配置される流通溝部グループ132(2組目)を構成する3本の流通溝部13Cは、下流方向上側へ(図11中、右斜め上方向へ)、水平方向に対して約5度(第2傾斜角度)、好ましくは、約5度以上(例えば、約6度)の傾斜角度θ11(第2傾斜角度)で傾斜するように形成されている。また、流通溝部グループ132の上側に配置される流通溝部グループ133を構成する3本の流通溝部13Cは、下流方向上側へ(図11中、左斜め上方向へ)、水平方向に対して約4度(第2傾斜角度)、好ましくは、約4度以上(例えば、約5度)の傾斜角度θ12(第2傾斜角度)で傾斜するように形成されている。
【0097】
また、流通溝部グループ133の上側に配置される流通溝部グループ134を構成する3本の流通溝部13Cは、下流方向上側へ(図11中、右斜め上方向へ)、水平方向に対して約3度(第2傾斜角度)、好ましくは、約3度以上(例えば、約4度)の傾斜角度θ13(第2傾斜角度)で傾斜するように形成されている。また、流通溝部グループ134の上側に配置される流通溝部グループ135を構成する3本の流通溝部13Cは、下流方向上側へ(図11中、左斜め上方向へ)、水平方向に対して約2度(第2傾斜角度)、好ましくは、約2度以上(例えば、約3度)の傾斜角度θ14(第2傾斜角度)で傾斜するように形成されている。
【0098】
従って、流通溝部グループ131よりも上側(下流側)に配置される各流通溝部グループ132~135(2組目以降)を構成する3本の流通溝部13Cは、上側(下流側)に配置される各流通溝部グループ毎(各組毎)に順次小さくなる傾斜角度で下流方向上側へ傾斜するように設定されている。例えば、各流通溝部グループ132~135は、傾斜角度θ11=5[deg]、傾斜角度θ12=4[deg]、傾斜角度θ13=3[deg]、傾斜角度θ14=2[deg]となるように設定されている。
【0099】
尚、各流通溝部グループ132~135(2組目以降)を構成する3本の流通溝部13Cは、7[deg]以下、つまり、2[deg]~7[deg]の範囲で、上側(下流側)に配置される各流通溝部グループ毎(各組毎)に順次小さくなる傾斜角度で下流方向上側へ傾斜するように設定してもよい。
【0100】
次に、図11に示す燃料極集電体81の燃料流通溝81Bに対して、上記式(11)、(12)の運動方程式を用いて、各流通溝部13C内に発生する二酸化炭素(CO2)の気泡が移動する移動速度を算出した一例を図12に基づいて説明する。尚、燃料極拡散層12を介して各流通溝部13C内に発生する二酸化炭素(CO2)の気泡の直径dpは、約0.1[mm]とした。燃料流通溝81Bの水平方向の幅は、50[mm]とした。各流通溝部13Cの断面形状は、図5(A)に示すように、幅W1=0.75[mm]、高さH1=1.5[mm]の長方形断面とした。
【0101】
図12に示すように、下端側の流通溝部グループ131を構成する3本の流通溝部13Cは、全長に渡って、下流方向上側へ(図12中、左斜め上方向へ)、水平方向に対して傾斜角度θ1=34[deg]で傾斜している。このため、流通溝部グループ131の各流通溝部13C内に発生した直径dpが約0.1[mm]の二酸化炭素の気泡は、燃料の平均流速uaよりも遅い移動速度で下流方向上側へ移動する(図9参照)。
【0102】
そして、各流通溝部13C内を移動する二酸化炭素の気泡は、他の気泡と結合して徐々に直径の大きい気泡となり、各流通溝部13Cの下流側端部では、例えば、二酸化炭素の気泡の直径dpが約0.4[mm]に達する。その結果、流通溝部グループ131の各流通溝部13C内を移動する二酸化炭素の気泡の移動速度は、下流側端部の近傍では、燃料の平均流速uaに達している、若しくは、平均流速uaを超えている(図9参照)。
【0103】
また、流通溝部グループ131の上側に配置される流通溝部グループ132を構成する3本の流通溝部13Cは、下流方向上側へ(図12中、右斜め上方向へ)、水平方向に対して傾斜角度θ11=5[deg]で傾斜している。このため、流通溝部グループ132の各流通溝部13C内に流入した直径dpが約0.4[mm]の二酸化炭素の気泡は、燃料の平均流速uaを確実に超えた移動速度で下流側へ移動する(図9参照)。
【0104】
また、流通溝部グループ132の上側に配置される各流通溝部グループ133~135を構成する3本の流通溝部13Cは、水平方向に対して下流方向上側へ、傾斜角度θ12=4[deg]、傾斜角度θ13=3[deg]、傾斜角度θ14=2[deg]で傾斜している。従って、直径dpが約0.4[mm]以上の二酸化炭素の気泡が、各流通溝部グループ133~135を構成する3本の流通溝部13C内に流入した場合には、燃料の平均流速uaを確実に超えた移動速度で下流側へ移動する(図9参照)。
【0105】
以上説明した通り、流通溝部グループ131(1組目)の上側(下流側)に配置される各流通溝部グループ132~135(2組目以降)の各流通溝部13Cは、上側(下流側)に配置される各流通溝部グループ毎(各組毎)に順次小さくなる傾斜角度で下流方向上側へ傾斜するように設定されている。例えば、各流通溝部グループ132~135は、傾斜角度θ11=5[deg]、傾斜角度θ12=4[deg]、傾斜角度θ13=3[deg]、傾斜角度θ14=2[deg]となるように設定されている。
【0106】
これにより、燃料極集電体81の燃料流通溝81Bの水平方向の幅を、前記実施形態に係る燃料極集電体13の燃料流通溝13Bの水平方向の幅(例えば、100mm)よりも狭い幅、例えば、約半分の幅(例えば、約50mm)に設定しても、燃料極集電体81に形成された燃料流通溝81Bにおいて、二酸化炭素の小さな気泡(例えば、直径dpが0.1[mm]程度の気泡)が滞留することを抑止することができる。つまり、燃料極触媒層11の電極触媒粒子により燃料(ギ酸水溶液)の酸化反応が増え、発電量の低下を抑止することができる。従って、燃料電池7の水平方向(X軸方向)の小型化を図ることができる。
【0107】
また、各流通溝部グループ132~135の各流通溝部13Cは、上側(下流側)に配置される各流通溝部グループ毎に順次小さくなる傾斜角度で下流方向上側へ傾斜するように設定されている。その結果、各流通溝部グループ132~135の流通溝部13Cの傾斜角度を、流通溝部グループ132と同じ傾斜角度(例えば、傾斜角度θ=5[deg])に設定する場合よりも、各流通溝部グループ132~135の各流通溝部13Cが占有する上下幅を狭くし、燃料電池7の上下方向(Z軸方向)の小型化を図ることができる。
【0108】
[他の第2実施形態]
(B)また、例えば、燃料極集電体13に替えて、図13に示す燃料極集電体91を用いてもよい。燃料極集電体91に形成された燃料流通溝91Bの構成について図13に基づいて説明する。図13に示すように、燃料極集電体91に形成された燃料流通溝91Bは、燃料極集電体13に形成された燃料流通溝13Bとほぼ同じ構成である。従って、下端に設けられた流通溝部グループ131(1組目)の上側に配置された各流通溝部グループ132~135(2組目以降)の各流通溝部13Cは、前記実施形態と同様に、下流方向上側へ水平方向に対して傾斜角度θ2(例えば、傾斜角度θ2=2[deg]又は傾斜角度θ2=2[deg]~7[deg])で傾斜するように設けられている。
【0109】
但し、燃料流通溝91Bの下端に設けられた流通溝部グループ131の各流通溝部13Cは、流入溝部13Fに接続される例えば、全長の約1/3の第1部分M1(所定長さの部分)と、第1部分M1の下流側に接続される例えば、全長の約1/3の第2部分M2と、第2部分M2の下流側に接続される例えば、全長の約1/3の第3部分M3と、を有する点で、燃料流通溝13Bと異なっている。各流通溝部13Cの第3部分M3は、下流側端部が折り返し溝部13D1に接続されている。
【0110】
具体的には、流入溝部13Fに接続される各流通溝部13Cの第1部分M1は、下流方向上側へ(図13中、左斜め上方向へ)、水平方向に対して約34度(第1傾斜角度)、好ましくは、約34度以上(例えば、約35度)の傾斜角度θ1で傾斜するように形成されている。また、各流通溝部13Cの第1部分M1の下流側に接続される第2部分M2は、下流方向上側へ(図13中、左斜め上方向へ)、水平方向に対して約24度(第1傾斜角度)、好ましくは、約24度以上(例えば、約25度)の傾斜角度θ21で傾斜するように形成されている。従って、各流通溝部13Cの第2部分M2の傾斜角度θ21は、第1部分M1の傾斜角度θ1よりも減少するように設定されている。
【0111】
また、各流通溝部13Cの第2部分M2の下流側に接続される第3部分M3は、下流方向上側へ(図13中、左斜め上方向へ)、水平方向に対して約14度(第1傾斜角度)、好ましくは、約14度以上(例えば、約15度)の傾斜角度θ22で傾斜するように形成されている。従って、各流通溝部13Cの第3部分M3の傾斜角度θ22は、第2部分M2の傾斜角度θ21よりも減少するように設定されている。
【0112】
これにより、上記式(2)に示すギ酸の酸化反応によって、流通溝部グループ131の各流通溝部13Cの第1部分M1内に発生した直径dpが約0.1[mm]の二酸化炭素の気泡は、燃料の平均流速uaよりも遅い移動速度で下流方向上側へ移動する。そして、各流通溝部13Cの第1部分M1の下流側端部の近傍では、二酸化炭素の気泡は他の気泡と結合して、直径dpが0.2[mm]以上、例えば、0.25[mm]になる。その結果、各流通溝部13Cの第2部分M2内に流入した二酸化炭素の気泡の移動速度は、第2部分M2の下流側端部の近傍では、燃料の平均流速uaに達している、若しくは、平均流速uaを超えている(図9参照)。
【0113】
また、各流通溝部13Cの第2部分M2の下流側端部の近傍では、二酸化炭素の気泡は他の気泡と結合して、直径dpが0.4[mm]以上、例えば、0.6[mm]になる。その結果、各流通溝部13Cの第2部分M2内に流入した二酸化炭素の気泡の移動速度は、第3部分M3の下流側端部の近傍では、燃料の平均流速uaに達している、若しくは、平均流速uaを超えている(図9参照)。
【0114】
そして、流通溝部グループ131(1組目)の上側に配置される、各流通溝部グループ132~135(2組目以降)を構成する各流通溝部13C内に流入した直径dpが0.6[mm]以上の二酸化炭素の気泡は、燃料の平均流速uaを確実に超えた移動速度で下流側へ移動する(図9参照)。従って、各流通溝部グループ131~135を構成する各流通溝部13C内に発生する二酸化炭素の気泡は、ギ酸水溶液の燃料と共にスムーズに各流通溝部13Cを流れる。
【0115】
これにより、燃料極集電体91に形成された燃料流通溝91Bにおいて、二酸化炭素の小さな気泡(例えば、直径dpが0.1[mm]程度の気泡)が滞留することを抑止することができる。つまり、燃料極触媒層11の電極触媒粒子により燃料(ギ酸水溶液)の酸化反応が増え、発電量の低下を抑止することができる。
【0116】
また、流通溝部グループ131の各流通溝部13Cは、第2部分M2の傾斜角度θ21は、第1部分M1の傾斜角度θ1(第1傾斜角度)よりも減少するように設定され、第2部分M2の下流側に接続される第3部分M3の傾斜角度θ22は、第2部分M2の傾斜角度θ21よりも減少するように設定されている。これにより、流通溝部グループ131の各流通溝部13Cが占有する上下幅を狭くし、燃料電池7の上下方向(Z軸方向)の小型化を図ることができる。
【0117】
尚、流通溝部グループ131の各流通溝部13Cは、第1部分M1~第3部分M3に分けたが、4つ以上の部分に分けて、それぞれの部分の水平方向に対する傾斜角度が下流側に向かって、傾斜角度θ1から順次減少するように構成してもよい。また、流通溝部グループ131の各流通溝部13Cの分割数を多くすると共に、それぞれの部分の水平方向に対する傾斜角度が下流側に向かって、傾斜角度θ1から順次減少するように設定して、略円弧状に構成してもよい。
【0118】
[他の第3実施形態]
(C)また、例えば、図3に示す燃料極集電体13の燃料流通溝13Bと、図11に示す燃料極集電体81の燃料流通溝81Bと、図13に示す燃料極集電体91の燃料流通溝91Bと、において、互いに所定間隔を空けて並列配置された3本の流通溝部13Cが、それぞれ折り返しにより蛇行する所謂サーペンタイン形状流路に構成されるようにしてもよい。
【0119】
具体的には、各折り返し溝部13D1~13D4に替えて、各流通溝部グループ131~135の各流通溝部13Cの各折り返し溝部13D1~13D4側の端部同士を水平方向に所定間隔を空けて、それぞれ上下方向に延ばして互いに接続するようにしてもよい。これにより、各燃料極集電体13、81、91に形成された各燃料流通溝13B、81B、91Bにおいて、二酸化炭素の小さな気泡(例えば、直径dpが0.1[mm]程度の気泡)が滞留することを抑止することができる。その結果、燃料極触媒層11の電極触媒粒子により燃料(ギ酸水溶液)の酸化反応が増え、発電量の低下を抑止することができる。
【0120】
(D)前記実施形態と前記他の第1実施形態乃至前記他の第3実施形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。
【符号の説明】
【0121】
1 燃料電池システム
7 燃料電池
10 燃料極
11 燃料極触媒層
12 燃料極拡散層
13、81、91 燃料極集電体
13A 燃料流通面
13B、81B、91B 燃料流通溝
13C 流通溝部
13D1~13D4 折り返し溝部
13F 流入溝部
13G 流出溝部
17A 燃料流入口
17B 燃料流出口
20 空気極
21 空気極触媒層
22 空気極拡散層
23 空気極集電体
30 電解質膜
131~135 流通溝部グループ
図1
図2
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