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特許7468861位相差計測装置、ビーム出力装置および位相差計測方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】位相差計測装置、ビーム出力装置および位相差計測方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/00 20060101AFI20240409BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01S3/00 G
H01S3/00 A
H01S3/10 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020061991
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021163805
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591114803
【氏名又は名称】公益財団法人レーザー技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】濱本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】森岡 朋也
(72)【発明者】
【氏名】西方 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】醍醐 浩之
(72)【発明者】
【氏名】宮永 憲明
【審査官】小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/108850(WO,A1)
【文献】特開2011-254028(JP,A)
【文献】特開2014-216418(JP,A)
【文献】特表2010-533895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通過する第1レーザ光を、通過した前記第1レーザ光の光軸に直交する任意の仮想平面に含まれる前記第1レーザ光の断面において方位角方向に一周期分の位相分布を含むように変換する位相変換装置と、
前記位相変換装置を通過した前記第1レーザ光のうちの少なくとも一部の強度成分を有する第1部分強度レーザ光と、前記第1レーザ光が由来する種光としてのレーザ光に由来する第2レーザ光のうちの少なくとも一部の強度成分を有する第2部分強度レーザ光とを同一光路上に合波して得られる検出用ビームのうち、前記検出用ビームの光軸に直交する断面の一部を、前記検出用ビームの前記断面と、前記位相変換装置の中心線とが交わる点を中心として円形に切り出した整形済み検出用ビームによる干渉パターンの強度重心の方位角を検出し、前記方位角に基づいて前記第1レーザ光に対する前記第2レーザ光のビーム間位相差を検出する検出装置と
を具備する
位相差計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位相差計測装置において、
前記検出装置は、
前記干渉パターンに含まれる複数の領域のそれぞれにおける光強度を検出する複数のセンサを有するセンサ装置と、
前記光強度に基づいて、前記干渉パターンの光強度重心の方位角を演算し、前記方位角に基づいて前記ビーム間位相差を演算する演算装置と
を具備する
位相差計測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の位相差計測装置において、
前記センサ装置は、
前記干渉パターンに含まれる4つの領域にそれぞれ対応する4つの光強度をそれぞれ検出する4つのセンサを有する4象限検出器
を具備し、
前記4つの領域は、前記第1レーザ光の光軸に直交する任意の仮想平面に設けられた直交座標系によって定義される4つの象限である
位相差計測装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の位相差計測装置において、
前記位相変換装置は、
通過する前記第1レーザ光の波面を螺旋状に変換する螺旋位相板
を具備する
位相差計測装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の位相差計測装置において、
前記位相変換装置は、
通過する前記第1レーザ光の波面を螺旋状に変換する螺旋位相板のホログラム
を具備する
位相差計測装置。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の位相差計測装置において、
前記位相変換装置は、
通過する前記第1レーザ光の波面を多段階螺旋状に変換する多段階螺旋位相板
を具備する
位相差計測装置。
【請求項7】
種光となるレーザ光を第1レーザ光および第2レーザ光に分割する第1ビームスプリッタと、
通過する前記第1レーザ光を、通過した前記第1レーザ光の光軸に直交する任意の仮想平面に含まれる前記第1レーザ光の断面において方位角方向に一周期分の位相分布を含むように変換する位相変換装置と、
前記位相変換装置を通過した前記第1レーザ光のうちの少なくとも一部の強度成分を有する第1部分強度レーザ光と、前記第2レーザ光のうちの少なくとも一部の強度成分を有する第2部分強度レーザ光とを同一光路上に合波して得られる検出用ビームのうち、前記検出用ビームの光軸に直交する断面の一部を、前記検出用ビームの前記断面と、前記位相変換装置の中心線とが交わる点を中心として円形に切り出した整形済み検出用ビームによる干渉パターンの強度重心の方位角を検出し、前記方位角に基づいて前記第1レーザ光に対する前記第2レーザ光のビーム間位相差を検出する検出装置と、
前記ビーム間位相差に基づいて前記第2レーザ光の位相を制御する位相制御器と
を具備する
ビーム出力装置。
【請求項8】
請求項7に記載のビーム出力装置において、
前記検出装置は、
前記干渉パターンに含まれる複数の領域のそれぞれにおける光強度を検出する複数のセンサを有するセンサ装置と、
前記光強度に基づいて、前記干渉パターンの光強度重心の方位角を演算し、前記方位角に基づいて前記ビーム間位相差を演算する演算装置と
を具備する
ビーム出力装置。
【請求項9】
請求項8に記載のビーム出力装置において、
前記センサ装置は、
前記干渉パターンに含まれる4つの領域にそれぞれ対応する4つの光強度をそれぞれ検出する4つのセンサを有する4象限検出器
を具備し、
前記4つの領域は、前記第1レーザ光の光軸に直交する任意の仮想平面に設けられた直交座標系によって定義される4つの象限である
ビーム出力装置。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項に記載のビーム出力装置において、
前記位相変換装置は、
通過する前記第1レーザ光の波面を螺旋状に変換する螺旋位相板
を具備する
ビーム出力装置。
【請求項11】
請求項7~9のいずれか一項に記載のビーム出力装置において、
前記位相変換装置は、
通過する前記第1レーザ光の波面を螺旋状に変換する螺旋位相板のホログラム
を具備する
ビーム出力装置。
【請求項12】
請求項7~9のいずれか一項に記載のビーム出力装置において、
前記位相変換装置は、
通過する前記第1レーザ光の波面を多段階螺旋状に変換する多段階螺旋位相板
を具備する
ビーム出力装置。
【請求項13】
請求項7~12のいずれか一項に記載のビーム出力装置において、
前記第2レーザ光を増幅する増幅器
をさらに具備する
ビーム出力装置。
【請求項14】
請求項7~13のいずれか一項に記載のビーム出力装置において、
前記第2レーザ光を、前記第2レーザ光の一部の強度成分をそれぞれ有する複数の第2部分強度レーザ光に分割する分割装置と、
前記複数の第2部分強度レーザ光をそれぞれ増幅する複数の増幅器と
をさらに具備し、
前記位相変換装置は、前記第1レーザ光をビーム断面の一部で切り出した複数の第1部分断面レーザ光がそれぞれ通過するように配置された複数の位相変換装置を含み、
前記複数の位相変換装置のそれぞれは、通過する前記複数の第1部分断面レーザ光のそれぞれを、通過した前記それぞれの第1部分断面レーザ光の光軸に直交する任意の仮想平面に含まれる前記それぞれの第1部分断面レーザ光の断面において方位角方向に一周期分の位相分布を含むように変換し、
前記検出装置は、前記複数の第1部分断面レーザ光および前記複数の第2部分強度レーザ光をそれぞれ同一光路上に合波して得られる複数の検出ビームのうち、前記複数の検出ビームのそれぞれの光軸に直交する断面の一部を、前記それぞれの検出用ビームの前記断面と、前記それぞれの位相変換装置の中心線とが交わる点を中心として円形に切り出した複数の整形済み検出用ビームにおける複数の干渉パターンのそれぞれにおける強度重心の方位角を検出し、前記方位角に基づいて前記複数の第1部分断面レーザ光に対する前記複数の第2部分強度レーザ光のそれぞれのビーム間位相差を検出し、
前記位相制御器は、前記それぞれのビーム間位相差に基づいて、前記それぞれの第2部分強度レーザ光の位相を制御する
ビーム出力装置。
【請求項15】
請求項7~13のいずれか一項に記載のビーム出力装置において、
前記第1レーザ光および前記第2レーザ光の少なくとも一方の直線偏光方向を変換する半波長板と、
前記第1レーザ光を増幅する他の増幅器と
直線偏光方向が互いに異なる前記第1レーザ光および前記第2レーザ光を結合して第3レーザ光を生成する偏光ビームスプリッタと、
前記第3レーザ光を結合レーザ光および検出用レーザ光に分割する第2ビームスプリッタと、
前記検出用レーザ光を第1検出用レーザ光および第2検出用レーザ光に分割する第3ビームスプリッタと
をさらに具備し、
前記検出装置は、前記第1検出用レーザ光と前記第2検出用レーザ光が作る干渉パターンの強度重心の方位角を検出する
ビーム出力装置。
【請求項16】
位相変換装置を通過した第1レーザ光を、前記第1レーザ光の光軸に直交する任意の仮想平面に含まれる前記第1レーザ光の断面において方位角方向に一周期分の位相分布を含むように変換することと、
変換された前記第1レーザ光のうちの少なくとも一部の強度成分を有する第1部分強度レーザ光と、前記第1レーザ光が由来する種光としてのレーザ光に由来する第2レーザ光のうちの少なくとも一部の強度成分を有する第2部分強度レーザ光とを同一光路上に合波して得られる検出用ビームのうち、前記検出用ビームの光軸に直交する断面の一部を、前記検出用ビームの前記断面と、前記位相変換装置の中心線とが交わる点を中心として円形に切り出した整形済み検出用ビームによる干渉パターンの強度重心の方位角を検出し、前記方位角に基づいて前記第1レーザ光に対する前記第2レーザ光のビーム間位相差を検出することと
を具備する
位相差計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位相差計測装置、ビーム出力装置および位相差計測方法に関し、例えば、レーザ光の位相差計測装置、ビーム出力装置および位相差計測方法に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
高品質かつ高出力のレーザ光は、レーザ加工、科学研究、核融合、宇宙デブリ除去、安全保障などの分野で必要とされている。しかし、発熱、光学的な破壊、非線形光学効果などの原因により、単独のレーザ光ビームとして可能な出力には限界がある。このため、複数のレーザ光を結合して高出力化を行うビーム結合技術が研究されている。
【0003】
ここで、複数のレーザ光を結合する際には、各レーザ光の位相を合わせることが好ましい。したがって、各レーザ光ビームに時間的な変調および/または復調(周波数シフトや位相変調など)を行うための装置や処理などが必要である。
【0004】
上記に関連して、特許文献1(米国特許公開公報第2009/0134310号)には、複数のレーザ光を結合するレーザシステムが開示されている。このレーザシステムでは、各レーザ光の位相を算出するために、各レーザ光に周波数シフトをかけている。
【0005】
特許文献2(特開2014-216418号公報)には、複数のレーザ光を結合する位相同期レーザ装置が開示されている。この位相同期レーザ装置では、各レーザ光の位相を算出するために、各レーザ光に周波数シフトおよび位相変調をかけている。
【0006】
また、ビーム強度変化に対応するためには、複数のセンサで干渉パターンを観測して演算する必要がある。レーザ光のポインティングが変わると、干渉縞の出方が変わる(例:干渉縞が傾く、干渉縞の間隔が変わる、など)。このような変化に対応するためには、複数のセンサで干渉パターンを観測して演算する必要がある。
【0007】
上記に関連して、特許文献3(特許第6071202号公報)には、複数のレーザ光を結合する複数ビーム結合装置が開示されている。この複数ビーム結合装置では、各レーザ光の位相を制御するために空間的な干渉パターンを利用する。1次元的な干渉パターンに基づいて位相を制御するので、1つのビームについて2ヶ所以上の場所での位相測定が必要である。
【0008】
その他、非特許文献1(K. Sueda, G. Miyaji, N. Miyanaga and M. Nakatsuka著、「Laguerre-Gaussian beam generated with a multilevel spiral phase plate for high intensity laser pulses」、OPTICS EXPRESS、Optical Society of America、2004年7月26日発行、3548~3553頁)には、16ステップ螺旋位相板の位相分布と、試作例と、16ステップ螺旋位相ビームおよび被検ビームの干渉パターンとが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許公開公報第2009/0134310号
【文献】特開2014-216418号公報
【文献】特許第6071202号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】K. Sueda, G. Miyaji, N. Miyanaga and M. Nakatsuka著、「Laguerre-Gaussian beam generated with a multilevel spiral phase plate for high intensity laser pulses」、OPTICS EXPRESS、Optical Society of America、2004年7月26日発行、3548~3553頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
高出力で高品質なレーザ光を生成するために、レーザ光の位相差を検出または計測する。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0013】
一実施形態による位相差計測装置(6)は、位相変換装置(61、7、610)と、検出装置(60)とを具備する。位相変換装置(61、7、610)は、通過する第1レーザ光(L1)を、通過した第1レーザ光(L1)の光軸に直交する任意の仮想平面に含まれる第1レーザ光(L1)の断面において方位角方向に一周期分の位相分布を含むように変換する。検出装置(60)は、位相変換装置(61、7、610)を通過した第1レーザ光(L1)のうちの少なくとも一部の強度成分を有する第1部分強度レーザ光(L12)と、第1レーザ光(L1)が由来する種光としてのレーザ光(L0)に由来する第2レーザ光(L2)のうちの少なくとも一部の強度成分を有する第2部分強度レーザ光(L22)とを同一光路上に合波して得られる検出用ビーム(L4)のうち、検出用ビーム(L4)の光軸(A4)に直交する断面の一部を、検出用ビーム(L4)の断面と、位相変換装置(61、7、610)の中心線とが交わる点を中心として円形に切り出した整形済み検出用ビーム(L5)における干渉パターンの強度重心(71)の方位角(72)を検出し、方位角(72)に基づいて、第1レーザ光(L1)に対する第2レーザ光(L2)のビーム間位相差を検出する。
【0014】
一実施形態によるビーム出力装置(1、10、100)は、第1ビームスプリッタ(3、30)と、位相変換装置(61、7、610)と、検出装置(60)と、位相制御器(53)とを具備する。第1ビームスプリッタ(3、30)は、種光となるレーザ光(L0)を第1レーザ光(L1)および第2レーザ光(L2)に分割する。位相変換装置(61、7、610)は、通過する第1レーザ光(L1)を、通過した第1レーザ光(L1)の光軸に直交する任意の仮想平面に含まれる第1レーザ光(L1)の断面において方位角方向に一周期分の位相分布を含むように変換する。検出装置(60)は、位相変換装置(61、7、610)を通過した第1レーザ光(L1)のうちの少なくとも一部の強度成分を有する第1部分強度レーザ光(L12)と、第2レーザ光(L2)のうちの少なくとも一部の強度成分を有する第2部分強度レーザ光(L22)とを同一光路上に合波して得られる検出用ビーム(L4)のうち、検出用ビーム(L4)の光軸(A4)に直交する断面の一部を、検出用ビーム(L4)の断面と、位相変換装置(61、7、610)の中心線とが交わる点を中心として円形に切り出した整形済み検出用ビーム(L5)における干渉パターンの強度重心(71)の方位角(72)を検出し、方位角(72)に基づいて、第1レーザ光(L1)に対する第2レーザ光(L2)のビーム間位相差を検出する。位相制御器(53)は、位相差に基づいて第2レーザ光(L2)の位相を制御する。
【0015】
一実施形態による位相差計測方法は、位相変換装置(61、7、610)を通過する第1レーザ光(L1)を、通過した第1レーザ光(L1)の光軸に直交する任意の仮想平面に含まれる第1レーザ光(L1)の断面において方位角方向に一周期分の位相分布を含むように変換することと、変換された第1レーザ光(L1)のうちの少なくとも一部の強度成分を有する第1部分強度レーザ光(L12)と、第1レーザ光(L1)が由来する種光としてのレーザ光(L0)に由来する第2レーザ光(L2)のうちの少なくとも一部の強度成分を有する第2部分強度レーザ光(L22)とを同一光路上に合波して得られる検出用ビーム(L4)のうち、検出用ビーム(L4)の光軸(A4)に直交する断面の一部を、検出用ビーム(L4)の断面と、位相変換装置(61、7、610)の中心線とが交わる点を中心として円形に切り出した整形済み検出用ビーム(L5)における干渉パターンの強度重心(71)の方位角(72)を検出し、方位角(72)に基づいて、第1レーザ光(L1)に対する第2レーザ光(L2)のビーム間位相差を検出することとを具備する。
【発明の効果】
【0016】
前記一実施の形態によれば、高出力で高品質なレーザ光を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施形態によるビーム出力装置の一構成例を示す図である。
図2A図2Aは、一実施形態による位相差計測装置の動作原理を説明するための図である。
図2B図2Bは、一実施形態による螺旋位相板を通過した参照ビームの光軸方向に直交する断面における位相分布の一例を示す図である。
図3図3は、一実施形態によるアパーチャの一構成例を示す図である。
図4A図4Aは、一実施形態による位相差計測装置で得られる干渉パターンから位相差を求めることを説明するための図である。
図4B図4Bは、一実施形態による位相差計測装置で得られる干渉パターンから位相差を求めることを説明するための図である。
図4C図4Cは、一実施形態による位相差計測装置で得られる干渉パターンから位相差を求めることを説明するための図である。
図5図5は、実際のビーム間位相差に対する、一実施形態による位相差計測装置で求めた干渉パターン強度重心の方位角の測定値および、位相差測定誤差の関係の一例を示すグラフである。
図6図6は、一実施形態による位相差計測装置で求めた干渉パターン強度重心の方位角を示す角度の測定結果の一例を示す図である。
図7図7は、一実施形態による位相差計測装置で求めた位相差測定誤差の一例を示すグラフである。
図8図8は、螺旋位相分布を生成可能なホログラムの一例を示す図である。
図9A図9Aは、一実施形態による16ステップ螺旋位相板の一構成例を示す俯瞰図である。
図9B図9Bは、図9Aに示した多段階螺旋位相板を通過した参照ビームの光軸方向に直交する断面における位相分布の一例を示す図である。
図9C図9Cは、図9Aに示した多段階螺旋位相板を通過した参照ビームと、被検出ビームとによる干渉パターンの一例を示す図である。
図9D図9Dは、図9Aに示した多段階螺旋位相板を通過した参照ビームと、被検出ビームとの間の実際の位相差に対する、この多段階螺旋位相板を用いた位相差計測装置で求めた干渉パターン強度重心の方位角の測定値及び、位相差測定誤差との関係の一例を示すグラフである。
図10】一実施形態によるビーム出力装置の一構成例を示す図である。
図11】一実施形態によるビーム出力装置の一構成例を部分的に示す図である。
図12】一実施形態によるビーム出力装置の一構成例を示す図である。
図13】一実施形態によるビーム出力装置の一構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明による位相差計測装置、ビーム出力装置および位相差計測方法を実施するための形態を以下に説明する。以降、レーザ光ビームをレーザ光またはビームと称する場合がある。
【0019】
(第1の実施形態)
図1を参照して、一実施形態によるビーム出力装置1の構成要素について説明する。図1は、一実施形態によるビーム出力装置1の一構成例を示す図である。
【0020】
図1のビーム出力装置1は、レーザ発振器2と、ビームスプリッタ3と、参照ビーム生成部4と、被検出ビーム生成部5と、位相差計測装置6とを備えている。
【0021】
図1の参照ビーム生成部4の構成要素について説明する。参照ビーム生成部4は、ビーム拡大器44と、反射鏡45とを備えている。
【0022】
図1の被検出ビーム生成部5の構成要素について説明する。被検出ビーム生成部5は、制御装置51と、位相制御器53と、ビーム拡大器54と、増幅器55と、反射鏡57とを備えている。
【0023】
図1の位相差計測装置6の構成要素について説明する。位相差計測装置6は、螺旋位相板61と、ビームスプリッタ62と、検出装置60とを備えている。検出装置60は、アパーチャ63と、4象限検出器64と、演算装置65とを備えている。
【0024】
図1のビーム出力装置1の構成要素の接続関係について説明する。レーザ発振器2は、種光となるレーザ光L0を生成する。ビームスプリッタ3は、レーザ発振器2の後段に配置されており、生成されたレーザ光L0を第1レーザ光および第2レーザ光に分割する。第1レーザ光および第2レーザ光は、異なる方向に向けて出力されても良い。
【0025】
参照ビーム生成部4は、ビームスプリッタ3の後段に配置されており、第1レーザ光を入射して参照ビームL1を出力する。言い換えれば、参照ビーム生成部4は、第1レーザ光を入射する位置に配置されている。
【0026】
参照ビーム生成部4において、ビーム拡大器44は反射鏡45の前段に配置されていても良い。言い換えれば、ビーム拡大器44は第1レーザ光の断面積を拡大して出力する。また、反射鏡45は断面積を拡大された第1レーザ光を反射して、参照ビームL1として出力する。なお、断面積の拡大と、反射とは、順序を入れ替えても良い。言い換えれば、ビーム拡大器44は、反射鏡45の前段に配置されていても良いし、反射鏡45の後段に配置されていても良い。
【0027】
被検出ビーム生成部5は、ビームスプリッタ3の後段に配置されており、第2レーザ光を入射して被検出ビームL2を出力する。言い換えれば、被検出ビーム生成部5は、ビームスプリッタ3から出力された第2レーザ光を入射する位置に配置されている。
【0028】
被検出ビーム生成部5において、位相制御器53は、第2レーザ光を入射してその位相をシフトする。このとき、位相制御器53は、制御装置51から電気的に供給される位相制御信号CSに基づいて第2レーザ光の位相シフトを行う。ビーム拡大器54は、位相をシフトされた第2レーザ光を受けて、その断面積を拡大して出力する。言い換えれば、ビーム拡大器54は、位相制御器53の後段に配置されている。増幅器55は、断面積を拡大された第2レーザ光を受けて、その光強度を増幅して出力する。言い換えれば、増幅器55は、ビーム拡大器54の後段に配置されている。反射鏡57は、光強度を増幅された第2レーザ光を反射して、被検出ビームL2として出力する。言い換えれば、反射鏡57は増幅器55の後段に配置されている。制御装置51は、後述する位相差計測装置6の演算装置65から検出器信号DSを電気的に供給され、検出器信号DSに基づいて位相制御信号CSを出力する。言い換えれば、制御装置51は位相制御器53より電気的に前段に接続されているが、被検出ビーム生成部5の他の構成要素との間に光学的に接続されていなくても良い。なお、被検出ビーム生成部5の構成要素の光学的な配置は、技術的に矛盾しない範囲内で任意に入れ替え可能である。
【0029】
ビームスプリッタ62は片面が低反射コート、もう一面が無反射コートされており、被検出ビームL2のごく一部の強度成分(パワー)を反射した被検出ビームL22と、参照ビームL1の強度成分(パワー)の大部分を透過した参照ビームL12とを、互いに平行に検出装置60に導く。位相差計測装置6は、参照ビームL1および被検出ビームL2を受けて、これら2つのビームL1、L2のビーム間位相差を計測した結果を示す検出器信号DSを出力する。言い換えれば、位相差計測装置6は、参照ビーム生成部4の後段に配置されており、また、被検出ビーム生成部5の後段にも配置されている。なお、位相差計測装置6は、入力された参照ビームL1および被検出ビームL2のうち、位相差の計測に用いられなかった被検出ビームL2の大部分および参照ビームL1のごく一部を、結合ビームL3として出力する。なお、結合ビームL3は、他のビームと結合されるために出力されてもよく、この結合は図示しない別の光学系によって行われてもよい。
【0030】
位相差計測装置6において、螺旋位相板61は、参照ビームL1を受けて通過させ、通過する参照ビームL1の位相分布を変換する。ビームスプリッタ62は、一方では位相分布を変換された参照ビームL1の大部分を参照ビームL12として透過させ、ごく一部を残留反射ビームL11として反射する。また、ビームスプリッタ62は、他方では被検出ビームL2のごく一部を被検出ビームL22として反射し、被検出ビームL2の大部分を透過ビームL21として出力させる。また、被検出ビームL22および参照ビームL12は、検出用ビームL4として検出装置60に向けて出力される。言い換えれば、ビームスプリッタ62は、参照ビームL1および被検出ビームL2が交差する位置に配置されている。なお、ビームスプリッタ62の透過率および反射率は、上記の例に限定されない。
【0031】
検出装置60において、アパーチャ63は、検出用ビームL4を受けて、その一部を通過させる。4象限検出器64は、アパーチャ63を通過した一部の検出用ビームL4の光強度を検出し、その光強度分布を電気的に表す光強度信号PS1~PS4を生成する4分割センサを備える。言い換えれば、4象限検出器64は、アパーチャ63の後段に配置されているセンサ装置である。演算装置65は、光強度信号PS1~PS4を電気的に供給され、これらに基づいて位相差を演算し、演算した位相差を電気的に表す検出器信号DSを生成する。言い換えれば、演算装置65は、4象限検出器64の後段に電気的に接続されている。演算装置65は、所定の演算を行うマイコンチップ、あるいは所定のプログラムを実行するCPU(中央処理装置)と、このプログラムおよび各種のデータを格納する記憶装置と、外部とデータの入出力を行う各種のインタフェースとを備える計算機を備えていても良い。なお、制御速度を上げるには、アナログマイコンの方が有利である。
【0032】
図1のビーム出力装置1の動作、すなわち本実施形態による位相差計測方法について説明する。まず、レーザ発振器2が、種光となるレーザ光L0を生成する。このレーザ光L0は、連続波であっても良いし、パルス波であっても良い。
【0033】
次に、ビームスプリッタ3がレーザ光L0を第1レーザ光および第2レーザ光に分割する。ここで、ビームスプリッタ3は、レーザ光L0の一部を第1レーザ光として透過させ、レーザ光L0の別の一部を第2レーザ光として反射するハーフミラーであっても良い。また、透過および反射の比率は必ずしも同じでなくても良い。
【0034】
次に、参照ビーム生成部4が第1レーザ光を受けて参照ビームL1を生成する。まず、ビーム拡大器44が第1レーザ光の断面積を拡大して平行ビームとして出力する。ビーム拡大器44は、例えば、複数のレンズの組み合わせを備えていても良い。次に、断面積を拡大された第1レーザ光を反射して、参照ビームL1として出力する。なお、断面積の拡大と、反射とは、順序を入れ替えても良い。
【0035】
参照ビームL1の生成と並行して、被検出ビーム生成部5が第2レーザ光を受けて被検出ビームL2を生成する。まず、制御装置51が、検出器信号DSに基づいて位相制御信号CSを生成する。次に、位相制御器53が、位相制御信号CSに基づいて、第2レーザ光の位相を制御する。例えば、位相制御器53を通過する第2レーザ光の位相を、位相制御信号CSに基づいて調整する。次に、ビーム拡大器54が、位相をシフトされた第2レーザ光の断面積を拡大して平行ビームとして出力する。次に、増幅器55が、断面積を拡大した第2レーザ光を増幅する。次に、反射鏡57が、増幅した第2レーザ光を反射して、被検出ビームL2としてビームスプリッタ62に向けて出力する。なお、第2レーザ光に対する位相のシフト、断面積の拡大、増幅および反射を行う順序は、技術的な矛盾が生じない範囲内で入れ替えても良い。
【0036】
次に、位相差計測装置6が、参照ビームL1に対する被検出ビームL2のビーム間位相差を計測する。図2Aは、一実施形態による位相差計測装置6の動作原理を説明するための図である。まず、螺旋位相板61が、通過する参照ビームL1の位相分布を変換する。螺旋位相板61は、空間的に位相が均一である入射ビームを、空間的な位相分布を有する透過ビームに変換する。例えば、図2Aに示した螺旋位相板61は、材質が透明であって、光軸A1を回転中心とする方位角方向に徐々に厚さを増す構造を有している。この螺旋位相板61によって、参照ビームL1の変換された位相分布が、参照ビームL1の光軸A1に直交する任意の断面において、方位角に沿って一周期分の位相範囲、例えば0(ゼロ)ラジアンから2π(パイ)ラジアンまでの位相範囲を、全て含むように構成されている。好ましくは、参照ビームL1の光軸A2に直交する任意の断面において、方位角に沿って所定の方向に一周するときに、一周期分の位相範囲に含まれる任意の位相の分布密度が一様であるように、螺旋位相板61が構成されていても良い。例えば、参照ビームL1の光軸A2に直交する所望の断面において、位相が方位角に等しくなるように、螺旋位相板61が構成されていても良い。
【0037】
図2Bは、一実施形態による螺旋位相板61を通過した参照ビームL1の光軸A1に直交する断面における位相分布の一例を示す図である。図2Bの例では、本実施形態による螺旋位相板61を通過した参照ビームL1の、図2Aに示した光軸A1に直交する任意の断面に含まれる任意の点における位相と、x軸上に含まれる任意の基準点における基準位相との位相差は、参照ビームL1の光軸A1を回転中心としてx軸から任意の点までの方位角に一致する。図2Bでは、より進んだ位相が濃い色で示されており、より遅れた位相が薄い色で示されており、最も濃い色はゼロラジアンの位相を示し、最も薄い色は2πラジアンの位相を示している。このように分布する位相を、便宜上、螺旋状の位相分布と呼ぶ。
【0038】
ビームスプリッタ62は、螺旋位相板61を通過した参照ビームL1と、被検出ビームL2とを合波し、結合ビームL3及び位相差検出用の検出用ビームL4を生成する。結合ビームL3において、透過ビームL21と残留反射ビームL11の光軸は互いに平行であり、したがって、位相差検出用の検出用ビームL4において、被検出ビームL22と参照ビームL12の光軸は互いに平行であるように、被検出ビームL2と参照ビームL1の交差角度とビームスプリッタ62の設置角度を調整する必要がある。ここで、ビームスプリッタ62は、参照ビームL1の大部分(例:99%以上)を参照ビームL12として透過させ、ごく一部分(例:1%未満)を残留反射ビームL11として反射しても良い。
【0039】
ビームスプリッタ62は、被検出ビームL2の大部分(例:99%以上)を透過ビームL21として透過させ、ごく一部分(例:1%未満)を被検出ビームL22として反射しても良い。
【0040】
なお、結合ビームL3を他の結合ビームと結合して強力なレーザ光を生成する観点において、本来、残留反射ビームL11を結合ビームL3に含める必要は無い。しかし、結合ビームL3に含まれる残留反射ビームL11の割合はごくわずか(例:1万分の1)であるので、実質的に結合ビームL3の品質が下がる心配は無い。
【0041】
参照ビームL12および被検出ビームL22の集合を、検出用ビームL4と呼ぶ。検出装置60は、検出用ビームL4に含まれる参照ビームL12と被検出ビームL22が作る干渉パターンにおける強度重心の方位角を検出する。まず、アパーチャ63が、通過する検出用ビームL4の一部をマスクする。図3は、一実施形態によるアパーチャ63の一構成例を示す図である。図3の例では、検出用ビームL4のうち、図2Aに示した光軸A4を中心に半径R1を有する円の内側に含まれる部分と、光軸A4を中心に半径R2を有する円の外側に含まれる部分とが、アパーチャ63によってマスクされる。
【0042】
なお、検出用ビームL4のうち、光軸A4に近い領域に含まれる部分は、位相が不確定である可能性がある。また、検出用ビームL4のうち、光軸A4から遠い領域に含まれる部分は、光強度が不均一である可能性がある。したがって、これらの領域をアパーチャ63によってマスクすることによって、後述する強度重心の方位角の検出精度が向上することが期待される。検出用ビームL4のうち、アパーチャ63によってマスクされなかった部分を、便宜上、整形済み検出用ビームL5と呼ぶ。
【0043】
4象限検出器64は、整形済み検出用ビームL5を受光してその光強度を検出する。ここで、4象限検出器64が受光する整形済み検出用ビームL5には、参照ビームL12と被検出ビームL22が作る干渉パターンが描かれている。図4Aは、一実施形態による参照ビームL12と被検出ビームL22が作る基準干渉パターンの一例を示す図である。図4Aでは、干渉パターンのうち、光強度がより高い部分をより薄い色で示し、光強度がより低い部分をより濃い色で示している。図4Aの干渉パターンの外周は円形であり、この円形はアパーチャ63の半径R2を有する円に対応している。また、図4Aの干渉パターンの中心は、整形済み検出用ビームL5の光軸に対応している。図4Aの干渉パターンの光強度は、中心から見て紙面に対して右向きの方向に強度がより強く分布している。干渉パターンにおける光強度分布の重心を、便宜上、干渉パターンの光強度重心または干渉パターン強度重心71と呼ぶ。また、直交座標系x、yにおいて、干渉パターン強度重心71の方位角θは、x軸から左回りに正の値を取るように定義する。図4Aの例では、角度θがゼロラジアンであることを示しており、このことは、参照ビームL12と被検出ビームL22のビーム間位相差、即ちビームスプリッタ62上での参照ビームL1と被検出ビームL2のビーム間位相差がゼロであることを示している。
【0044】
4象限検出器64は4分割の光強度センサを有している。これら4分割の光強度センサは、整形済み検出用ビームL5を4つに分割した4つの部分の光強度をそれぞれ検出する。すなわち、整形済み検出用ビームL5の光軸に直交する仮想的な平面に、原点がこの光軸に一致する任意の直交座標系x、yを定義し、この直交座標系x、yにおける4象限を考える。第1象限は図2Bにおける方位角が0ラジアンからπ/2ラジアンの領域であり、第2象限はπ/2ラジアンからπラジアンの領域であり、第3象限はπラジアンから3π/2ラジアンの領域であり、第4象限は3π/2ラジアンから2πラジアンの領域である。
【0045】
4象限検出器64が有する4分割の光強度センサは、整形済み検出用ビームL5のうち、これら4象限にそれぞれ対応する4つの部分の光強度をそれぞれ検出する。第1象限で検出された光強度をPと呼び、第2象限で検出された光強度をPと呼び、第3象限で検出された光強度をPと呼び、第4象限で検出された光強度をPと呼ぶ。4象限検出器64は、検出された4つの光強度P~Pをそれぞれ電気的に表す光強度信号PS1~PS4を生成して演算装置65に向けて出力する。
【0046】
演算装置65は、4象限検出器64から光強度を電気的に表す光強度信号PS1、PS2、PS3およびPS4を供給されて検出器信号DSを生成する。一例として、演算装置65は、以下の公式に基づいて、干渉パターン強度重心71のx軸の座標Xおよびy軸の座標Yから、方位角72を示す角度θを算出することができる。
X=(P-P-P+P)/(P+P+P+P
Y=(P+P-P-P)/(P+P+P+P
cosθ=X/(X+Y1/2
sinθ=Y/(X+Y1/2
【0047】
図4Bおよび図4Cを参照して、干渉パターンの光強度分布と、干渉パターン強度重心71の方位角72との間の関係の例を示す。図4Bおよび図4Cは、一実施形態による位相差計測装置6で得られる干渉パターンの光強度分布と、干渉パターン強度重心71の方位角72との間の関係の例を示す図である。図4Bの例では、干渉パターン強度重心71が第2象限の、x軸およびy軸の交差角度の二等分線の上に存在しており、その方位角72を示す角度θは3π/4ラジアンである。図4Cの例では、干渉パターン強度重心71が第3象限のx軸およびy軸の交差角度の二等分線の上に存在しており、その方位角72を示す角度θは5π/4ラジアンである。
【0048】
演算装置65は、方位角72を示す角度θを算出すると、この角度θを表す検出器信号DSを生成して被検出ビーム生成部5の制御装置51に向けて出力する。
【0049】
次に、被検出ビーム生成部5が、検出器信号DSに基づいて、被検出ビームL2の位相のフィードバック制御を行う。まず、制御装置51に、位相差計測装置6の演算装置65から出力された検出器信号DSを供給される。制御装置51は、検出器信号DSが示す角度θに基づいて、位相制御器53を制御するための位相制御信号CSを生成して、位相制御器53に向けて出力する。次に、位相制御器53に、位相制御信号CSを供給し、位相制御信号CSが示す値に基づいて、参照ビームに対する位相差が所望の精度でゼロとなるように被検出ビームL2を制御する。
【0050】
図5図7を参照して、本実施形態による位相差計測装置6による、参照ビームL1と被検出ビームL2のビーム間位相差の計測が優れた精度を有していることについて説明する。図5は、実際のビーム間位相差に対する、一実施形態による位相差計測装置6で求めた干渉パターン強度重心71の方位角72の測定値および、位相差測定誤差の関係の一例を示すグラフである。図5のグラフでは、横軸が参照ビームL1に対する被検出ビームL2の実際の位相差、すなわちビーム間位相差を示し、左側の縦軸が本実施形態による位相差計測装置6で求めた干渉パターン強度重心71の方位角72の測定値を示し、右側の縦軸がこれらの間の差分値、つまり位相差測定誤差を示している。図5のグラフに含まれる2本のグラフのうち、実線のグラフは左側の縦軸に対応しており、破線のグラフは右側の縦軸に対応している。図5から読み取れるように、本実施形態におけるビーム間位相差の測定誤差は、±1.5×10-5×πラジアンのオーダーの範囲に含まれている。このように、図5の例によれば、本実施形態による位相差計測装置6による、参照ビームL1と被検出ビームL2のビーム間位相差の計測が優れた精度を有している。
【0051】
図6は、一実施形態による位相差計測装置6で求めた干渉パターン強度重心71の方位角72を示す角度θの測定結果の一例を示す図である。図6の横軸および縦軸は、検出用ビームL4の光軸に直交する平面の直交座標系x、yの各軸にそれぞれ対応している。図6の例では、参照ビームL1と被検出ビームL2のビーム間位相差Δφが、π/2ラジアンである場合と、-π/6ラジアンである場合と、-5π/6ラジアンである場合のそれぞれについて、参照ビームL12に対する被検出ビームL22の光強度比率を0.44倍から4倍まで変化させながら、方位角72を示す角度θを測定した。その結果、それぞれの位相差Δφにおいて、干渉パターン強度重心71の位置は、各位相差Δφに対応する直線D1(π/2ラジアンの場合)、直線D2(-π/6ラジアンの場合)または直線D3(-5π/6ラジアンの場合)の上で移動するだけであって、角度θは変動しない、という結果が得られた。このように、本実施形態による位相差計測装置6による、参照ビームL1および被検出ビームL2の間の位相差の計測は、参照ビームL1と被検出ビームL2の光強度の比率の違いによる影響を受けない。
【0052】
図7は、一実施形態による位相差計測装置6で求めた位相測定誤差の一例を示すグラフである。図7において、横軸は参照ビームL1と被検出ビームL2のビーム間位相差を示し、縦軸は位相測定誤差を示している。図7は、第1グラフG1、第2グラフG2、第3グラフG3および第4グラフG4を含んでいる。第1グラフG1は、被検出ビームL22の光軸方向(ポインティング)が参照ビームL12に対して垂直方向(y軸方向)にDLD/4だけずれた場合、すなわち参照ビームL12に対する被検出ビームL22の平行度が垂直方向にDLD/4だけずれた場合の、ビーム間位相差に対応する角度θの測定誤差を示している。ここで、DLDは、回折限界発散角(全角)(Diffraction Limited Divergence (Angle))であり、ここではフラットトップ強度の円形ビームに対して以下の式で定義される。
DLD=2.44×λ/D
ここで、λは整形済み検出用ビームL5の波長(実際には、レーザ発振器2に由来する各ビームの波長)を示し、Dは整形済み検出用ビームL5のビーム直径を示している。その他、第2グラフG2は、参照ビームL12に対する被検出ビームL22の平行度が水平方向(x軸方向)にDLD/4だけずれた場合の、ビーム間位相差に対応する角度θの測定誤差を示している。同様に、第3グラフG3は、参照ビームL12に対する被検出ビームL22の平行度が水平方向にDLD/5だけずれた場合の、ビーム間位相差に対応する角度θの測定誤差を示している。また、第4グラフG4は、参照ビームL12に対する被検出ビームL22の平行度が垂直方向にDLD/5だけずれた場合の、ビーム間位相差に対応する角度θの測定誤差を示している。
【0053】
図7の第1グラフG1および第2グラフG2に注目すると、測定誤差の絶対値は約0.05πラジアン未満である。また、図7の第3グラフG3および第4グラフG4に注目すると、測定誤差の絶対値は0.03πラジアン未満である。このように、本実施形態による位相差計測装置6による、参照ビームL1と被検出ビームL2のビーム間位相差の計測は、参照ビームL12と被検出ビームL22の間の光軸のずれ、すなわち参照ビームL1と被検出ビームL2の間の交差角度のずれ、言い換えれば結合ビームL3における参照ビーム成分L11と被検出ビーム成分L21の平行度による影響を比較的小さく抑制できる。
【0054】
なお、参照ビームL12に対する被検出ビームL22の光軸方向のずれがDLD/4を超えている場合には、結合ビームL3における参照ビーム成分L11と被検出ビーム成分L21の平行度がずれており、ビーム結合のいかなる方法においても、ビームポインティングの計測と補正は別途必要である。したがって、ここでは参照ビームL12に対する被検出ビームL22の光軸方向のずれがDLD/4を超えている場合を考慮する必要は無い。
【0055】
なお、図1のビーム出力装置1の構成はあくまでも一例にすぎず、上記の動作が可能である限り、上記の構成要素の一部を省略したり、別の構成要素に置き換えたり、別の構成要素を追加したり、構成要素間の位置関係を変更してもよい。
【0056】
図1に示したビーム出力装置1の変形例として、螺旋位相板61の代わりに、螺旋位相板61に対応するホログラムを用いることが出来る。このホログラムは、位相変調型ホログラムであっても良いし、振幅変調型ホログラムであっても良い。このような技術は、非特許文献1「K. Sueda, G. Miyaji, N. Miyanaga and M. Nakatsuka著、「Laguerre-Gaussian beam generated with a multilevel spiral phase plate for high intensity laser pulses」、OPTICS EXPRESS、Optical Society of America、2004年7月26日発行、3548~3553頁」に開示されているので、さらなる詳細な説明を省略する。図8は、螺旋位相分布を生成可能なホログラム7の一例を示す図である。
【0057】
図1に示したビーム出力装置1の別の変形例として、螺旋位相板61を多段階螺旋位相板610に置き換えた場合について説明する。図9Aは、一実施形態による多段階螺旋位相板610の一構成例を示す俯瞰図である。図9Aに示した多段階螺旋位相板610は、螺旋階段状の位相分布を与える機能を有しており、それぞれの階段は底面がπ/8ラジアンの中心角を有する扇型であり、厚さがそれぞれに異なる合計16の柱体を、各底面を面一に配置し、各底面の中心角が互いに接するように集合させた形状を有している。また、図9Aに示した多段階螺旋位相板610において、それぞれの扇形柱体の厚さと、厚さが最も薄い扇形柱体の厚さとの差が、π/8ラジアンの倍数であり、0ラジアンから15π/8ラジアンまでの範囲で分布している。さらに、それぞれの扇形柱体は、中心角を回転するように、厚さの順に並んでいる。言い換えれば、図9Aの多段階螺旋位相板610は、図2Aに示した螺旋位相板61の螺旋状の曲面を、複数の平行な平面の集合で近似したものである。このように構成された多段階螺旋位相板610は、螺旋状の曲面を有する螺旋位相板61と比較して、より安価に、より容易に製造できると期待される。図9Aに示した多段階螺旋位相板610は、合計16種類の厚さを有しているので、16ステップ螺旋位相板と呼んでも良い。なお、図9Aの例では段階数が16であるが、この値はあくまでも一例であって本実施形態を限定しない。
【0058】
図9Bは、図9Aに示した多段階螺旋位相板610を通過した参照ビームL1の光軸方向に直交する断面における位相分布の一例を示す図である。図2Bに示した、螺旋位相板61を用いた場合に得られる位相分布では、光軸を中心とした回転方向に位相が連続的に変化するが、図9Bに示した位相分布では、多段階螺旋位相板610の厚さが段階的に変化する位置で位相分布の位相も段階的に変化する。このような位相分布を有するレーザ光を、便宜上、多段階螺旋状の波面を有するレーザ光と呼ぶ。
【0059】
図9Cは、図9Aに示した多段階螺旋位相板610を通過した参照ビームと、被検出ビームとが作る干渉パターンの一例を示す図である。図4Bに示した、螺旋位相板61を用いた場合に得られる干渉パターンの光強度分布では、光軸を中心とした回転方向に干渉強度が連続的に変化するが、図9Cに示した干渉パターンの光強度分布では、多段階螺旋位相板610の厚さが段階的に変化する位置で干渉強度も段階的に変化する。
【0060】
図9Dは、図9Aに示した多段階螺旋位相板610を通過した参照ビームに対する、被検出ビームの実際の位相差に対する、この多段階螺旋位相板610を用いた位相差計測装置6で求めた干渉パターン強度重心71の方位角72の測定値及び、位相差測定誤差の関係の一例を示すグラフである。図9Dのグラフは、図5に示したグラフと比較して、破線で示した位相差測定誤差が異なる。すなわち、図9Dに示した測定誤差は、0ラジアンから0.007πラジアンのオーダーの範囲に含まれている。この範囲は、図5に示した、螺旋位相板61を用いた場合の測定誤差よりも広いものの、位相差測定誤差としては十分に小さいと考えられる。このように、図1に示したビーム出力装置1に含まれる螺旋位相板61を多段階螺旋位相板610で置き換えても、参照ビームL1および被検出ビームL2との間の位相差の計測を十分に高い精度で行うことが出来る。
【0061】
図1に示した螺旋位相板61と、図8に示したホログラム7と、図9Aに示した多段階螺旋位相板610とが、いずれも、通過するレーザ光を、通過したこのレーザ光の光軸に直交する任意の仮想平面に含まれるこのレーザ光の断面が、一周期分の位相分布を含むように変換する位相変換装置であることに注目されたい。
【0062】
(第2の実施形態)
図10を参照して、一実施形態によるビーム出力装置1について説明する。図10は、一実施形態によるビーム出力装置1の一構成例を示す図である。
【0063】
本実施形態によるビーム出力装置1は、図1に示したビーム出力装置1を4つ用意して一体化したものにほぼ等しい。言い換えれば、本実施形態によるビーム出力装置1は、種光となるレーザ光L0を生成して参照ビームL1および被検出ビームL2に分割し、また、被検出ビームL2を4つの被検出ビームL2A、L2B、L2CおよびL2Dに分割する。参照ビームL1は、ビーム拡大器44で断面積が拡大され、拡大された参照ビーム中には、被検出ビームL2A、L2B、L2CおよびL2Dがビームスプリッタ62で反射された光路に一致するように、螺旋位相板61A、61B、61C及び61Dが設置され、等価的に4つの参照ビームを生成している。ここで、4つの螺旋位相板61A、61B、61C及び61Dをそれぞれ通過した4つの参照ビームが同一の位相を有するように、4つの螺旋位相板61A、61B、61C及び61Dを適宜に配置してもよい。さらに、本実施形態によるビーム出力装置1は、4つの参照ビームL1および4つの被検出ビームL2の間で4つの位相差を計測し、この計測結果に基づいて4つの被検出ビームL2A、L2B、L2CおよびL2Dの位相を4つの検出器信号DSA、DSB、DSCおよびDSDと、4つの位相制御信号CSA、CSB、CSCおよびCSDとを介してフィードバック制御するとともに、4つの被検出ビームL2A、L2B、L2C、L2Dのそれぞれがビームスプリッタ62を透過した成分から構成される結合ビームL3を出力する。
【0064】
本実施形態によるビーム出力装置1の構成要素について説明する。図10のビーム出力装置1は、レーザ発振器2と、ビームスプリッタ3と、参照ビーム生成部4と、被検出ビーム生成部5と、位相差計測装置6とを備えている。
【0065】
本実施形態による参照ビーム生成部4は、光路長調整部42と、反射鏡43と、ビーム拡大器44とを備えている。図10の光路長調整部42は、4つのミラー42A、42B、42Cおよび42Dを備えているが、この値はあくまでも一例であって本実施形態を限定しない。ビーム拡大器44は、図1に示したビーム拡大器44と同様に構成されても良い。
【0066】
本実施形態による被検出ビーム生成部5は、制御装置51と、ビームスプリッタ52と、4つの位相制御器53A、53B、53Cおよび53Dと、4つのビーム拡大器54A、54B、54Cおよび54Dと、4つの増幅器55A、55B、55Cおよび55Dとを備えている。4つのビーム拡大器54A、54B、54Cおよび54Dを区別しない場合には、これらを単にビーム拡大器54とも呼ぶ。4つの増幅器55A、55B、55Cおよび55Dを区別しない場合には、これらを単に増幅器55とも呼ぶ。
【0067】
本実施形態による位相差計測装置6は、同じ素材と同じ厚さを有する4つの螺旋位相板61A、61B、61Cおよび61Dと、ビームスプリッタ62と、4つのアパーチャ63A、63B、63Cおよび63Dと、4つの4象限検出器64A、64B、64Cおよび64Dと、4つの演算装置65A、65B、65Cおよび65Dとを備えている。4つの螺旋位相板61A、61B、61Cおよび61Dを区別しない場合には、これらを単に螺旋位相板61とも呼ぶ。4つのアパーチャ63A、63B、63Cおよび63Dを区別しない場合には、これらを単にアパーチャ63とも呼ぶ。4つの4象限検出器64A、64B、64Cおよび64Dを区別しない場合には、これらを単に4象限検出器64とも呼ぶ。4つの演算装置65A、65B、65Cおよび65Dを区別しない場合には、これらを単に演算装置65とも呼ぶ。
【0068】
光路長調整部42が参照ビームL1の光路長を調節できることについて説明する。光路長調整部42は、ビームスプリッタ3から出力される参照ビームL1を入射し、4つのミラー42A、42B、42Cおよび42Dでこの順番に反射して反射鏡43に向けて出力する。このとき、例えば、ミラー42Aおよび42Dを固定し、ミラー42Bおよび42Cの位置を適宜に移動することによって、参照ビームL1がミラー42A、42B、42Cおよび42Dを通る光路長を調節し、4象限検出器64に到達する検出用ビームL4に含まれる参照ビームL1および被検出ビームL2の間の光路差をゼロに近づけることが出来る。
【0069】
特に、レーザ光L0がパルス波である場合には、この光路差はパルス時間幅の10分の1に光速を乗じた距離より短いことが好ましい。なお、レーザ光L0が連続波である場合には、この光路差はコヒーレンス長の数分の1より短いことが好ましく、コヒーレンス長の10分の1より短いことがより望ましい。
【0070】
ビームスプリッタ52は、被検出ビームL2を複数の被検出ビームL2A、L2B、L2CおよびL2Dに分割する分割装置である。ビームスプリッタ52は、ミラー52A、52C、52D、52F、52G、52H、52I、52K、52Lおよび52Mと、ハーフミラー52B、52Eおよび52Jとを備える。図10の例では、ミラー52Aと、ハーフミラー52Bと、ミラー52Cおよび52Dと、ハーフミラー52Eと、ミラー52Fおよび52Gとをこの順番に反射または透過することによって、ビームスプリッタ3から出力される被検出ビームL2の一部が被検出ビームL2Aとして位相制御器53Aに到達する。また、ミラー52Aと、ハーフミラー52Bと、ミラー52Cおよび52Dと、ハーフミラー52Eと、ミラー52Hとをこの順番に反射または透過することによって、ビームスプリッタ3から出力される被検出ビームL2の一部が被検出ビームL2Bとして位相制御器53Bに到達する。また、ミラー52Aと、ハーフミラー52Bと、ミラー52Iと、ハーフミラー52Jと、ミラー52Lおよび52Mとをこの順番に反射または透過することによって、ビームスプリッタ3から出力される被検出ビームL2の一部が被検出ビームL2Cとして位相制御器53Cに到達する。また、ミラー52Aと、ハーフミラー52Bと、ミラー52Iと、ハーフミラー52Jと、ミラー52Kとをこの順番に反射または透過することによって、ビームスプリッタ3から出力される被検出ビームL2の一部が被検出ビームL2Dとして位相制御器53Dに到達する。
【0071】
被検出ビームL2Aは、位相制御器53A、ビーム拡大器54A、増幅器55A、ビームスプリッタ62を介して4象限検出器64Aに到達する。被検出ビームL2Bは、位相制御器53B、ビーム拡大器54B、増幅器55B、ビームスプリッタ62を介して4象限検出器64Bに到達する。被検出ビームL2Cは、位相制御器53C、ビーム拡大器54C、増幅器55C、ビームスプリッタ62を介して4象限検出器64Cに到達する。被検出ビームL2Dは、位相制御器53D、ビーム拡大器54D、増幅器55D、ビームスプリッタ62を介して4象限検出器64Dに到達する。
【0072】
ビーム拡大器44から出力される参照ビームL1の一部は、螺旋位相板61A、ビームスプリッタ62およびアパーチャ63Aを通過して4象限検出器64Aに到達する。ビーム拡大器44から出力される参照ビームL1の別の一部は、螺旋位相板61B、ビームスプリッタ62およびアパーチャ63Bを通過して4象限検出器64Bに到達する。ビーム拡大器44から出力される参照ビームL1のさらに別の一部は、螺旋位相板61C、ビームスプリッタ62およびアパーチャ63Cを通過して4象限検出器64Cに到達する。ビーム拡大器44から出力される参照ビームL1のさらに別の一部は、螺旋位相板61D、ビームスプリッタ62およびアパーチャ63Dを通過して4象限検出器64Dに到達する。
【0073】
4象限検出器64、演算装置65および制御装置51については、図1の場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0074】
図11を参照して、図10に示したビーム出力装置1の変形例について説明する。図11は、一実施形態によるビーム出力装置1の一構成例を部分的に示す図である。
【0075】
図11のビーム出力装置1は、図10のビーム出力装置1に、以下の変更を加えることで得られる。すなわち、図10のビームスプリッタ62の代わりに2枚のビームスプリッタ62Aおよび62Bを用いる。まず、ビーム拡大器54および増幅器55の配置を調整し、被検出ビームL2A~L2Dが互いに平行となるように調整する。次いで、参照ビームL1および被検出ビームL2の光軸が平行になるように、ビーム拡大器44の配置と2枚のビームスプリッタ62Aおよび62Bの平行度を調整する。さらに、増幅器55から出力された被検出ビームL2を、2枚のビームスプリッタ62Aおよび62Bを介して4象限検出器64に入射させる。
【0076】
図11の構成例では、図10の場合よりもビームスプリッタの数が増えたことによって、被検出ビームL2の大幅な減光が可能になる。言い換えれば、増幅器55から出力された被検出ビームL2の光強度を、4象限検出器64のセンサが耐えられる光強度まで減光するための比率がより大きければ、結合ビームL3の光強度をより大きく出来る。
【0077】
また、図11の構成例では、参照ビームL1のうち、ビームスプリッタ62Bを透過しなかった成分を、結合ビームL3とは別の方向に向けて出力することが可能になる。したがって、結合ビームL3に参照ビームL1が全く混入しないので、結合後のレーザ光の品質がさらに向上することが期待される。
【0078】
(第3の実施形態)
図12を参照して、一実施形態によるビーム出力装置10について説明する。図12は、2ビームを同一光路上に結合する一実施形態におけるビーム出力装置10の一構成例を示す図である。
【0079】
本実施形態によるビーム出力装置10では、種光となるレーザ光L0をビームスプリッタ3で第1ビームL10および第2ビームL20に分割し、第1ビームL10および第2ビームL20の両方を増幅して結合するとともに、第1ビームL10と第2ビームL20のビーム間位相差を計測して第2ビームL20の位相をフィードバック制御し、第1ビームL10の位相と一致させることによって、高出力で高品質なレーザ光を生成する。なお、一致させる対象は、第1ビームL10の位相に所定の位相差を加えた別の位相であってもよい。
【0080】
本実施形態によるビーム出力装置10の構成要素について説明する。図12のビーム出力装置10は、レーザ発振器2と、ビームスプリッタ3と、ミラー31と、ビーム結合ユニット11とを備えている。ビーム結合ユニット11は、第1ビーム生成部14と、第2ビーム生成部15と、ミラー111と、偏光ビームスプリッタ112と、位相差計測装置16とを備えている。
【0081】
第1ビーム生成部14は、半波長板41と、光路長調整部42と、ビーム拡大器54Aと、増幅器55Aとを備えている。
【0082】
第2ビーム生成部15は、制御装置51と、位相制御器53と、ビーム拡大器54Bと、増幅器55Bとを備えている。
【0083】
位相差計測装置16は、ビームスプリッタ161と、半波長板162と、偏光ビームスプリッタ163と、ビームスプリッタ164と、パワーモニタ165と、偏光ビームスプリッタ166と、光路長調整部167と、ミラー168と、半波長板169と、ミラー170と、位相差計測装置6とを備えている。位相差計測装置6の構成については、図1の場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0084】
本実施形態によるビーム出力装置10の構成要素の動作について説明する。ここで、図1に示したビーム出力装置1および/または図10に示したビーム出力装置1と符号が同じ構成要素については、同様に動作するので、詳細な説明を省略する場合がある。
【0085】
レーザ発振器2は、種光となるレーザ光L0を出力する。ビームスプリッタ3は、レーザ光L0を第1ビームL10および第2ビームL20に分割する。
【0086】
第1ビーム生成部14は、第1ビームL10を受光し、増幅して出力する。ここで、まず、半波長板41が、第1ビームL10の直線偏光方向をπ/2ラジアン回転させる。次に、レーザ光L0がパルス列である場合には、光路長調整部42が、偏光ビームスプリッタ112における第1ビームL10と第2ビームL20の光路長誤差を、パルス時間幅の10分の1に光速を乗じた距離より短い距離となるように調整する。あるいは、レーザ光L0が連続波である場合には、光路長調整部42が、偏光ビームスプリッタ112における第1ビームL10と第2ビームL20の光路長誤差を、コヒーレンス長の数分の1より短い距離となるように調整する。次に、ビーム拡大器54Aが第1ビームL10の断面積を拡大する。次に、増幅器55Aが第1ビームL10の光強度を増幅する。
【0087】
第2ビーム生成部15は、ミラー31を介して第2ビームL20を受光し、増幅して出力する。ここで、まず、制御装置51が位相差計測装置6から供給された検出器信号DSに基づいて位相制御信号CSを生成する。次に、位相制御器53が位相制御信号CSに基づいて第2ビームL20の位相を調整する。次に、ビーム拡大器54Bが第2ビームL20の断面積を拡大する。次に、増幅器55Bが第2ビームL20の光強度を増幅する。
【0088】
ここで、第1ビーム生成部14から出力される第1ビームL10と、第2ビーム生成部15から出力される第2ビームL20との間で、直線偏光方向が直交していることに注目されたい。ここでは、一例として、第1ビームL10が偏光ビームスプリッタ112に対してs偏光、第2ビームL20がp偏光であると仮定し、また、第1ビームL10と第2ビームL20の強度が等しいと仮定して説明する。
【0089】
偏光ビームスプリッタ112は、第1ビーム生成部14から出力されてミラー111で反射した第1ビームL10と、第2ビーム生成部15から出力された第2ビームL20とを結合して、結合ビームL30を出力する。このとき、結合ビームL30には、s偏光の第1ビームL10に由来する成分と、p偏光の第2ビームL20に由来する成分とが含まれている。すなわち、s偏光とp偏光の位相が等しい場合には結合ビームは45度傾いた直線偏光であり、それ以外の場合は楕円偏光あるいは円偏光となる。
【0090】
位相差計測装置16は、偏光ビームスプリッタ112から出力された結合ビームL30を受けて、結合ビームL30に含まれる第1ビームL10および第2ビームL20の間の位相差を計測し、この計測の結果に基づいて第2ビームL20の位相をフィードバック制御するための検出器信号DSを出力し、位相フィードバック制御の結果として、結合ビームL30に、偏光ビームスプリッタ163に適した直線偏光と偏光角度を与える。
【0091】
ここで、まず、ビームスプリッタ161が、結合ビームL30を結合ビームL31および検出用ビームL40に分割する。次に、半波長板162が結合ビームL30のs偏光成分およびp偏光成分それぞれの偏光方向を45度回転させる。その結果、偏光回転された結合ビームL31の、直線偏光方向あるいは楕円偏光の場合は楕円の主軸方向は、偏光ビームスプリッタ163のp偏光に一致し、出力ビームL32が得られる。このとき、偏光回転された結合ビームL31が楕円偏光である場合は、偏光回転された結合ビームL31の偏光成分のうちで、偏光ビームスプリッタ163に対するs偏光成分がダンプビームL33として、ダンプポートに向けて出力される。次に、ビームスプリッタ164が、出力ビームL32の一部を、モニタ用ビームL34として取り出し、パワーモニタ165によって、出力ビームL35の光強度をモニタする。なお、ビームスプリッタ164による分割において、出力ビームL32の大部分(例:99%以上)が出力ビームL35として透過し、出力ビームL32のごく一部(例:1%未満)がモニタ用ビームL34として分割されても良い。このとき、偏光ビームスプリッタ112の直後においてs偏光とp偏光の位相が等しい場合には、パワーモニタ165が受光するパワーは最大となる。
【0092】
次に、偏光ビームスプリッタ166が、ビームスプリッタ161によって分割された検出用ビームL40を、s偏光の第1検出用ビームL41(結合されたビームL30の内、第1ビームL10の一部を検出用ビームとしたもの)と、p偏光の第2検出用ビームL42(結合されたビームL30の内、第2ビームL20の一部を検出用ビームとしたもの)とに分割する。次に、半波長板169が、s偏光の第1検出用ビームL41の直線偏光方向を90度回転させて、p偏光の第1検出用ビームL41を出力する。次に、ミラー170と、螺旋位相板61と、ビームスプリッタ62と、アパーチャ63とを介して、第1検出用ビームL41が、位相差計測装置6の4象限検出器64に入力される。その一方で、光路長調整部167と、ミラー168と、ビームスプリッタ62と、アパーチャ63とを介して、第2検出用ビームL42も、位相差計測装置6の4象限検出器64に入力される。ここで、4象限検出器64において、第1検出用ビームL41および第2検出用ビームL42の直線偏光方向が同じであり、したがって第1検出用ビームL41と第2検出用ビームL42が作る干渉パターンの可視度が高くなることに注目されたい。なお、図12に示す一実施形態において、ビームスプリッタ62はハーフミラーであっても良い。
【0093】
その後の、4象限検出器64、演算装置65および制御装置51の動作については、前述の各実施形態の場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0094】
このように、本実施形態のビーム出力装置10によれば、種光となるレーザ光L0を2分割し、それぞれを2つの増幅器55Aおよび55Bで増幅し、その大部分を同一光路上の出力ビームL35として活用することが出来るので、複数本の結合に演繹すれば、2のn乗本(nは整数)のビームを同一光路上に結合した高出力のレーザ光を生成できることが期待される。ここで、図10に示したタイル状結合と、図12に示したFilled aperture結合とでは、形態が異なることに注目されたい。
【0095】
図13を参照して、本実施形態によるビーム出力装置10の変形例について説明する。図13は、一実施形態によるビーム出力装置100の一構成例を示す図である。
【0096】
図13のビーム出力装置100は、図12のビーム出力装置10を2つ用意し、これら2つのビーム出力装置140と150から出力される2つの結合ビームL35AおよびL35Bの間で位相差を計測して、一方の結合ビームL35Bの位相をフィードバック制御し、2つの結合ビームL35AおよびL35Bの位相を揃えて結合することができる。
【0097】
図13のビーム出力装置100の構成要素について説明する。ビーム出力装置100は、レーザ発振器2と、ビームスプリッタ30と、ミラー310と、第1ビーム出力装置140と、第2ビーム出力装置150と、ミラー111と、偏光ビームスプリッタ112と、第1結合ビームL35Aと第2結合ビームL35Bの位相差を計測するための位相差計測装置160とを備えている。
【0098】
第1ビーム出力装置140は、ビームスプリッタ3と、ミラー31と、ビーム結合ユニット11Aとを備えている。
【0099】
第2ビーム出力装置150は、第2結合ビームL35Bの位相を制御するための制御装置51と、位相制御器53と、ビームスプリッタ3と、ミラー31と、ビーム結合ユニット11Bとを備えている。
【0100】
図13のビーム出力装置100の動作について説明する。図13のビーム出力装置100は、図12のビーム出力装置10と同様に動作する。まず、図13のレーザ発振器2、ビームスプリッタ30およびミラー310は、それぞれ、図12のレーザ発振器2、ビームスプリッタ3およびミラー31に対応する。次に、図13の第1ビーム出力装置140および第2ビーム出力装置150は、それぞれ、図12のビーム結合ユニット11を備えている。図13の例では、第1ビーム出力装置140が備える、図12のビーム結合ユニット11に対応する構成を、ビーム結合ユニット11Aと表記し、第2ビーム出力装置150が備える、図12のビーム結合ユニット11に対応する構成を、ビーム結合ユニット11Bと表記している。次に、図13のミラー111、偏光ビームスプリッタ112および位相差計測装置160は、それぞれ、図12のミラー111、偏光ビームスプリッタ112および位相差計測装置16に対応する。また、図13のビームスプリッタ3、ミラー31は、図12のビームスプリッタ3、ミラー31に対応し、図13の制御装置51および位相制御器53は、それぞれ、図12の制御装置51および位相制御器53と同じ機能を有する。
【0101】
より詳細には、まず、2つのビーム結合ユニット11Aおよび11Bは、それぞれ、図12のビーム結合ユニット11と同様に動作する。すなわち、入力されたレーザ光をビームスプリッタ3で2つに分け、これら2つのレーザ光をそれぞれ増幅し、増幅された2つのレーザ光の間の位相差を計測し、この計測の結果に基づいて一方のレーザ光の位相をフィードバック制御し、位相を揃えた2つのレーザ光を結合したビームを出力する。
【0102】
次に、偏光ビームスプリッタ112および位相差計測装置160は、図12の偏光ビームスプリッタ112および位相差計測装置16と同様に動作する。すなわち、図13の偏光ビームスプリッタ112は、ビーム結合ユニット11Aから出力されてミラー111を介して届いた第1結合ビームと、ビーム結合ユニット11Bから出力された第2結合ビームとを結合した第3結合ビームを出力する。また、位相差計測装置160は、第3結合ビームに含まれる、第1結合ビームの少なくとも一部と、第2結合ビームの少なくとも一部との間で位相差を計測し、この計測の結果に基づいて第2結合用ビームの位相をフィードバック制御するための検出器信号を生成する。制御装置51は、この検出器信号に基づいて位相制御信号を生成し、位相制御器53はこの位相制御信号に基づいてミラー310を介して届いたレーザ光の位相を制御する。
【0103】
このように、図13のビーム出力装置100は、図12のビーム出力装置10の構成を再帰的な入れ子構造(ツリー構造)にすることによって、レーザ光L0を4つに分割してそれぞれ個別に増幅してから位相を合わせて結合することが出来る。さらに、図13のビーム出力装置100の構成を再帰的な入れ子構造にすれば、レーザ光L0を8つに分割してそれぞれ個別に増幅してから位相を合わせて結合することも出来る。同様に、再帰的な入れ子構造を繰り返すことによって、レーザ光L0を2の任意のべき乗に分割してそれぞれ個別に増幅してから位相を合わせて結合することが可能となるので、さらに高出力で高品質なレーザ光を生成することが出来る。
【0104】
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、前記実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。
【0105】
各実施形態に記載の位相差計測装置6は、例えば以下の様に把握される。
【0106】
(1)第1の態様に係る位相差計測装置6は、位相変換装置61、7、610と、検出装置60とを備える。
【0107】
第1の態様に係る位相差計測装置6は、位相変換装置61、7、610と、検出装置60とにより、参照ビームに対する被検出ビームのビーム間位相差を計測して調整することができる、という効果を奏する。
【0108】
位相変換装置61、7、610は、通過する第1レーザ光L1を、通過した第1レーザ光L1の光軸に直交する任意の仮想平面に含まれる第1レーザ光L1の断面において方位角方向に一周期分の位相分布を含むように変換する機能を有する。位相分布をこのように変換する装置としては、通過するレーザ光の部位によって透過光の位相が異なるような光学素子が挙げられる。このような光学素子としては、螺旋位相板61、螺旋位相板61に対応するホログラム7、多段階螺旋位相板610などが挙げられる。言い換えれば、位相変換装置61、7、610は、螺旋位相板61、ホログラム7および多段階螺旋位相板610の上位概念を示す。
【0109】
検出装置60は、位相変換装置61、7、610を通過した第1レーザ光L1のうちの少なくとも一部の強度成分を有する第1部分強度レーザ光である参照ビームL12と、第1レーザ光L1が由来する種光としてのレーザ光L0に由来する第2レーザ光L2のうちの少なくとも一部の強度成分を有する第2部分強度レーザ光である被検出ビームL22とを同一光路上に合波して得られる検出用ビームL4のうち、検出用ビームL4の光軸A4に直交する断面の一部を、検出用ビームL4の断面と、位相変換装置61、7、610の中心線とが交わる点を中心として円形に切り出した整形済み検出用ビームL5における干渉パターンの強度重心71の方位角72を検出し、方位角72に基づいて、第1レーザ光L1に対する第2レーザ光L2のビーム間位相差を検出する機能を有する。このような機能を有する装置としては、干渉パターンの4象限にそれぞれ含まれる光強度P、P、P、Pを検出する4つのセンサを備える4象限検出器64などが挙げられる。
【0110】
(2)第2の態様に係る位相差計測装置6は、第1の態様に係る位相差計測装置6であって、さらにセンサ装置64および演算装置65を備える。これにより、干渉パターンに含まれる複数の領域における光強度P、P、P、Pをそれぞれ検出し、この検出の結果に基づいて干渉パターンの強度重心71の方位角72を演算し、方位角72に基づいてビーム間位相差を演算することが出来るため、ビーム間位相差の検出をより少ないセンサでより高精度に実現できる、という効果を奏する。このような光強度P、P、P、Pは、干渉パターンの4象限の光強度P、P、P、Pであってもよい。
【0111】
(3)第3の態様に係る位相差計測装置6は、第2の態様に係る位相差計測装置6であって、さらに4象限検出器64を備える。これにより、方位角の検出を4つのセンサで高精度に実現できる、という効果を奏する。
【0112】
(4)第4の態様に係る位相差計測装置6は、第1~第3のいずれかの態様に係る位相差計測装置6であって、さらに螺旋位相板61を備える。これにより、干渉パターンの4象限にそれぞれ含まれる光強度P、P、P、Pを一度検出すれば、参照ビームの断面に含まれる一周期分の位相分布における特定の位相に測定したいビーム間位相差を対応させることが出来る、という効果を奏する。
【0113】
(5)第5の態様に係る位相差計測装置6は、第1~第3のいずれかの態様に係る位相差計測装置6であって、さらに螺旋位相板61のホログラム7を備える。これにより、螺旋位相板61そのものを使用する場合よりも容易に、干渉パターンの4象限にそれぞれ含まれる光強度P、P、P、Pを一度検出すれば、参照ビームの断面に含まれる一周期分の位相分布における特定の位相に測定したいビーム間位相差を対応させることが出来る、という効果を奏する。
【0114】
(6)第6の態様に係る位相差計測装置6は、第1~第3のいずれかの態様に係る位相差計測装置6であって、さらに多段階螺旋位相板610を備える。これにより、螺旋位相板61そのものを使用する場合よりも容易に、干渉パターンの4象限にそれぞれ含まれる光強度P、P、P、Pを一度検出すれば、参照ビームの断面に含まれる一周期分の位相分布における特定の位相に測定したいビーム間位相差を対応させることが出来る、という効果を奏する。
【0115】
(7)第1の態様に係るビーム出力装置1、10、100は、第1ビームスプリッタ3、30と、位相変換装置61、7、610と、検出装置60と、位相制御器53とを具備する。
【0116】
ビーム出力装置1、10、100は、第1ビームスプリッタ3、30と、位相変換装置61、7、610と、検出装置60と、位相制御器53とにより、高出力で高品質なレーザ光を生成することができる、という効果を奏する。
【0117】
第1ビームスプリッタ3、30は、種光となるレーザ光L0を第1レーザ光L1および第2レーザ光L2に分割する機能を有する。
【0118】
位相変換装置61、7、610は、通過する第1レーザ光L1を、通過した第1レーザ光L1の光軸に直交する任意の仮想平面に含まれる第1レーザ光L1の断面において方位角方向に一周期分の位相分布を含むように変換する機能を有する。位相分布をこのように変換する装置としては、通過するレーザ光の部位によって位相が異なるような光学素子が挙げられる。このような光学素子としては、螺旋位相板61、螺旋位相板61に対応するホログラム7、多段階螺旋位相板610などが挙げられる。
【0119】
検出装置60は、位相変換装置61、7、610を通過した第1レーザ光L1のうちの少なくとも一部の強度成分を有する第1部分強度レーザ光である参照ビームL12と、第2レーザ光L2のうちの少なくとも一部の強度成分を有する第2部分強度レーザ光である被検出ビームL22とを同一光路上に合波して得られる検出用ビームL4のうち、検出用ビームL4の光軸A4に直交する断面の一部を、検出用ビームL4の断面と、位相変換装置61、7、610の中心線とが交わる点を中心として円形に切り出した整形済み検出用ビームL5における干渉パターンの強度重心71の方位角72を検出し、方位角72に基づいて、第1レーザ光L1に対する第2レーザ光L2のビーム間位相差を検出する機能を有する。このような機能を有する装置としては、干渉パターンの4象限にそれぞれ含まれる光強度P、P、P、Pを検出する4つのセンサを備える4象限検出器64などが挙げられる。
【0120】
位相制御器53は、方位角72の測定値に基づいて第2レーザ光L2の位相を制御する機能を有する。これにより、位相基準となる第1レーザ光L1と第2レーザ光L2の合波の際に両ビームのビーム間位相差を調整することができる。このような機能を有する装置としては、通過するレーザ光の位相を調整可能な位相変調器が挙げられる。
【0121】
(8)第2の態様に係るビーム出力装置1、10、100は、第1の態様に係るビーム出力装置1、10、100であって、さらにセンサ装置64および演算装置65を備える。これにより、干渉パターンに含まれる複数の領域における光強度P、P、P、Pをそれぞれ検出し、この検出の結果に基づいて干渉パターンの強度重心71の方位角72を演算し、方位角72に基づいてビーム間位相差を演算することが出来るため、ビーム間位相差の検出をより少ないセンサでより高精度に実現できる、という効果を奏する。このような光強度P、P、P、Pは、干渉パターンの4象限の光強度P、P、P、Pであってもよい。また、このようなセンサ装置64としては、4象限検出器64などが挙げられる。
【0122】
(9)第3の態様に係るビーム出力装置1、10、100は、第2の態様に係るビーム出力装置1、10、100であって、さらに4象限検出器64を備える。これにより、方位角72の検出を4つのセンサで高精度に実現できる、という効果を奏する。
【0123】
(10)第4の態様に係るビーム出力装置1、10、100は、第1~第3のいずれかの態様に係るビーム出力装置1、10、100であって、さらに螺旋位相板61を備える。これにより、干渉パターンの4象限にそれぞれ含まれる光強度P、P、P、Pを一度検出すれば、参照ビームの断面に含まれる一周期分の位相分布における特定の位相に測定したいビーム間位相差を対応させることが出来る、という効果を奏する。
【0124】
(11)第5の態様に係るビーム出力装置1、10、100は、第1~第3のいずれかの態様に係るビーム出力装置1、10、100であって、さらに螺旋位相板61のホログラム7を備える。これにより、螺旋位相板61そのものを使用する場合よりも容易に、干渉パターンの4象限にそれぞれ含まれる光強度P、P、P、Pを一度検出すれば、参照ビームの断面に含まれる一周期分の位相分布における特定の位相に測定したいビーム間位相差を対応させることが出来る、という効果を奏する。
【0125】
(12)第6の態様に係るビーム出力装置1、10、100は、第1~第3のいずれかの態様に係るビーム出力装置1、10、100であって、さらに多段階螺旋位相板610を備える。これにより、螺旋位相板61そのものを使用する場合よりも容易に、干渉パターンの4象限にそれぞれ含まれる光強度P、P、P、Pを一度検出すれば、参照ビームの断面に含まれる一周期分の位相分布における特定の位相に測定したいビーム間位相差を対応させることが出来る、という効果を奏する。
【0126】
(13)第7の態様に係るビーム出力装置1、10、100は、第1~第6の態様に係るビーム出力装置1、10、100であって、さらに増幅器55を備える。増幅器55は、第2レーザ光L2を増幅する。これにより、高品質でより高出力のレーザ光を生成できる、という効果を奏する。
【0127】
(14)第8の態様に係るビーム出力装置1、10、100は、第1~第7の態様に係るビーム出力装置1、10、100であって、さらに分割装置52と、複数の増幅器55とを備える。分割装置52は、第2レーザ光L2を、第2レーザ光L2の一部の強度成分をそれぞれ有する複数の第2部分強度レーザ光である複数の被検出ビームL2A、L2B、L2C、L2Dに分割する機能を有する。このような機能を有する装置としては、ミラーおよびハーフミラーの組み合わせ52などが挙げられる。複数の増幅器55は、複数の被検出ビーム(第2部分強度レーザ光)L2A、L2B、L2C、L2Dをそれぞれ増幅する。第8の態様に係る位相変換装置61A、61B、61C、61Dは、第1レーザ光L1をビーム断面の一部で切り出した複数の第1部分断面レーザ光がそれぞれ通過するように配置された複数の位相変換装置61A、61B、61C、61Dを含む。複数の位相変換装置61A、61B、61C、61Dのそれぞれは、通過する複数の第1部分断面レーザ光のそれぞれを、通過したそれぞれの第1部分断面レーザ光の光軸に直交する任意の仮想平面に含まれるそれぞれの第1部分断面レーザ光の断面において方位角方向に一周期分の位相分布を含むように変換する機能を有する。第8の態様に係る検出装置60は、複数の第1部分断面レーザ光および複数の被検出ビーム(第2部分強度レーザ光)L2A、L2B、L2C、L2Dをそれぞれ同一光路上に合波して得られる複数の検出ビームのうち、複数の検出ビームのそれぞれの光軸に直交する断面の一部を、それぞれの検出用ビームの断面と、それぞれの位相変換装置61A、61B、61C、61Dの中心線とが交わる点を中心として円形に切り出した複数の整形済み検出用ビームによる複数の干渉パターンのそれぞれにおける強度重心71の方位角72を検出し、方位角72に基づいて、複数の第1部分断面レーザ光に対する、複数の被検出ビーム(第2部分強度レーザ光)L2A、L2B、L2C、L2Dのそれぞれのビーム間位相差を検出する機能を有する。第8の態様に係る位相制御器53A、53B、53C、53Dは、それぞれのビーム間位相差に基づいて、それぞれの被検出ビーム(第2部分強度レーザ光)L2A、L2B、L2C、L2Dの位相を制御する機能を有する。これにより、複数の第1部分断面レーザ光に対する、複数の被検出ビーム(第2部分強度レーザ光)L2A、L2B、L2C、L2Dのそれぞれのビーム間位相差を同時に制御できるため、高品質でより高出力のレーザ光を生成できる、という効果を奏する。
【0128】
(15)第9の態様に係るビーム出力装置1、10、100は、第1~第8の態様に係るビーム出力装置1、10、100であって、半波長板41と、第7または第8の態様における増幅器55とは別の増幅器55Aと、偏光ビームスプリッタ112と、第2ビームスプリッタ161と、第3ビームスプリッタ166とを備える。レーザ発振器2が出力するレーザ光L0が直線偏光である場合、これをハーフミラーであるビームスプリッタ3で2分割してそれぞれ増幅した後に偏光ビームスプリッタ112で偏光合成して結合するためには、第1ビームL10の偏光方向を偏光ビームスプリッタ112に対してs偏光、第2ビームL20の偏光方向をp偏光にする必要がある。そのために、半波長板41は、第1レーザ光L10および第2レーザ光L20の少なくとも一方の直線偏光方向を回転する。図12では、便宜上、第1ビームL10の光路にのみ、半波長板41を図示しているが、本態様はこの例に限定されない。第7または第8の態様における増幅器55とは別の増幅器55Aは、第2レーザ光L20を増幅する。偏光ビームスプリッタ112は、直線偏光方向が互いに異なる第1レーザ光L10および第2レーザ光L20を結合して第3レーザ光L30を生成する。第2ビームスプリッタ161は、第3レーザ光L30を結合レーザ光L31および検出用レーザ光L40に分割する。第3ビームスプリッタ166は、検出用レーザ光L40を第1検出用レーザ光L41および第2検出用レーザ光L42に分割する。第9の態様に係る検出装置60は、第1検出用レーザ光L41と第2検出用レーザ光L42が作る干渉パターンの強度重心71の方位角72を検出する。これにより、干渉パターンを生成するための参照光として増幅されていたビームを用いることができ、2つのビームを同一光路上に結合することが可能になるため、高品質でより高出力のレーザ光を生成できる、という効果を奏する。
【0129】
(16)第1の態様に係る位相差計測方法は、位相変換装置61、7、610を通過した第1レーザ光L1を、第1レーザ光L1の光軸に直交する任意の仮想平面に含まれる第1レーザ光L1の断面において方位角方向に一周期分の位相分布を含むように変換する第1の工程と、変換された第1レーザ光L1のうちの少なくとも一部の強度成分を有する第1部分強度レーザ光である参照ビームL12と、第1レーザ光L1が由来する種光としてのレーザ光L0に由来する第2レーザ光L2のうちの少なくとも一部の強度成分を有する第2部分強度レーザ光である被検出ビームL22とを同一光路上に合波して得られる検出用ビームL4のうち、検出用ビームL4の光軸A4に直交する断面の一部を、検出用ビームL4の断面と、位相変換装置61、7、610の中心線とが交わる点を中心として円形に切り出した整形済み検出用ビームL5における干渉パターンの強度重心71の方位角72を検出し、方位角72に基づいて、第1レーザ光L1に対する第2レーザ光L2のビーム間位相差を検出する第2の工程とを具備する。
【0130】
第1の態様に係る位相差計測方法は、第1の工程と、第2の工程により、高出力で高品質なレーザ光を生成することができる、という効果を奏する。
【0131】
第1の工程は、通過する第1レーザ光L1を、通過した第1レーザ光L1の光軸に直交する任意の仮想平面に含まれる第1レーザ光L1の断面において方位角方向に一周期分の位相分布を含むように変換する機能を有する。このような機能としては、通過するレーザ光の部位によって位相が異なるような光学素子を用いて実現することなどが挙げられる。このような光学素子としては、螺旋位相板61、螺旋位相板61に対応するホログラム7、多段階螺旋位相板610などが挙げられる。
【0132】
第2の工程は、変換された第1レーザ光L1のうちの少なくとも一部の強度成分を有する第1部分強度レーザ光である参照ビームL12と、第1レーザ光L1が由来する種光としてのレーザ光L0に由来する第2レーザ光L2のうちの少なくとも一部の強度成分を有する第2部分強度レーザ光である被検出ビームL22とを同一光路上に合波して得られる検出用ビームL4のうち、検出用ビームL4の光軸A4に直交する断面の一部を、検出用ビームL4の断面と、位相変換装置61、7、610の中心線とが交わる点を中心として円形に切り出した整形済み検出用ビームL5による干渉パターンの強度重心71の方位角72を検出し、方位角72に基づいて、第1レーザ光L1に対する第2レーザ光L2のビーム間位相差を検出する機能を有する。このような機能を有する素子としては、干渉パターンの4象限にそれぞれ含まれる光強度P、P、P、Pを検出する4つのセンサを備える4象限検出器64などが挙げられる。
【符号の説明】
【0133】
1、10、100 ビーム出力装置
2 レーザ発振器
3、30 ビームスプリッタ
31、310 ミラー
4 参照ビーム生成部
41 半波長板
42 光路長調整部
42A、42B、42C、42D ミラー
43 反射鏡
44 ビーム拡大器
45 反射鏡
5 被検出ビーム生成部
51、51A、51B 制御装置
52 ビームスプリッタ
52A、52C、52D、52F、52G、52H、52I、52K、52L、52M ミラー
52B、52E、52J ハーフミラー
53、53A、53B、53C、53D 位相制御器
54、54A、54B、54C、54D ビーム拡大器
55、55A、55B、55C、55D 増幅器
57 反射鏡
6 位相差計測装置
60 検出装置
61、61A、62B、62C、62D 螺旋位相板
610 多段階螺旋位相板
62、62A、62B ビームスプリッタ
63、63A、63B、63C、63D アパーチャ
64、64A、64B、64C、64D 4象限検出器
65、65A、65B、65C、65D 演算装置
7 ホログラム
71 強度重心
72 方位角
11、11A、11B ビーム結合ユニット
111 ミラー
112 偏光ビームスプリッタ
14 第1ビーム生成部
140 第1ビーム出力装置
15 第2ビーム生成部
150 第2ビーム出力装置
16、160 位相差計測装置
161 ビームスプリッタ
162 半波長板
163 偏光ビームスプリッタ
164 ビームスプリッタ
165 パワーモニタ
166 偏光ビームスプリッタ
167 光路長調整部
168 ミラー
169 半波長板
170 ミラー
A1、A2、A3、A4 光軸
CS、CSA、CSB、CSC、CSD 位相制御信号
DS、DSA、DSB、DSC、DSD 検出器信号
D1、D2、D3 直線
G1、G2、G3、G4 グラフ
L0 レーザ光
L1 参照ビーム
L10 第1ビーム
L11 残留反射ビーム
L12 参照ビーム
L2、L2A、L2B、L2C、L2D 被検出ビーム
L20 第2ビーム
L21 透過ビーム
L22 被検出ビーム
L3、L30 結合ビーム
L31 (偏光回転された)結合ビーム
L32、L35 出力ビーム
L33 ダンプビーム
L34 モニタ用ビーム
L4、L40、L41、L42 検出用ビーム
L5 整形済み検出用ビーム
、P、P、P 光強度
PS1、PS2、PS3、PS4 光強度信号
R1、R2 半径
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12
図13