(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】シートパッド
(51)【国際特許分類】
A47C 7/74 20060101AFI20240409BHJP
A47C 27/14 20060101ALI20240409BHJP
B60N 2/56 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A47C7/74 Z
A47C27/14 B
B60N2/56
(21)【出願番号】P 2020109526
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592048431
【氏名又は名称】株式会社中外
(73)【特許権者】
【識別番号】000150774
【氏名又は名称】株式会社槌屋
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 鉱平
(72)【発明者】
【氏名】光森 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大竹 宏幸
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-174580(JP,A)
【文献】登録実用新案第3217165(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/74
A47C 27/14
B60N 2/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッド裏面に沿って面内方向にそれぞれ延びる第1の通風路と第2の通風路とを有するシートパッドであって、
更に、前記第1の通風路と前記第2の通風路とが合流する合流部を有し、
該合流部が、前記第1の通風路と繋がる第1流路と、前記第2の通風路と繋がる第2流路と、前記第1流路と前記第2流路との間を部分的に仕切るように立ち上がることで各々の流路内に流れ込む風を各々の流れ方向にガイドするガイド部と、を有
し、
前記ガイド部が、前記第1流路及び前記第2流路のうちの一方の流路を他方の流路よりも底上げする段差部とされるシートパッド。
【請求項2】
請求項1に記載のシートパッドであって、
前記合流部が、更に、前記第1の通風路及び前記第2の通風路とは別の通風路である第3の通風路と繋がる第3流路を有し、
前記段差部が、前記第1流路、前記第2流路及び前記第3流路のうちの真ん中に配列される1つの流路を他の2つの流路よりも底上げすることで当該他の2つの流路との間を仕切る構成とされるシートパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートパッドに関する。詳しくは、パッド裏面に沿って面内方向に延びる通風路を有するシートパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートパッドの裏面に設けられたベンチレータによりシート表面の蒸れや熱のこもりを解消する空調シートが開示されている。上記シートパッドの裏面には、ベンチレータから送られる風を面内方向に排風する複数の通風路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、複数の通風路がベンチレータとの接続口近傍で合流するため、圧力損失により空調機能の低下を招きやすい。そこで、本発明は、複数の通風路が合流しても圧力損失を招きにくいシートパッドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のシートパッドは次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明のシートパッドは、パッド裏面に沿って面内方向にそれぞれ延びる第1の通風路と第2の通風路とを有する。また、シートパッドは、更に、第1の通風路と第2の通風路とが合流する合流部を有する。合流部が、第1の通風路と繋がる第1流路と、第2の通風路と繋がる第2流路と、第1流路と第2流路との間を部分的に仕切るように立ち上がることで各々の流路内に流れ込む風を各々の流れ方向にガイドするガイド部と、を有する。
【0007】
上記構成によれば、合流部がガイド部を有することで、各々の流路内に流れ込む風が互いにぶつからないように整流される。このため、複数の通風路が合流しても圧力損失を招きにくくできる。
【0008】
また、本発明のシートパッドは、更に次のように構成されていても良い。ガイド部が、第1流路及び第2流路のうちの一方の流路を他方の流路よりも底上げする段差部とされる。
【0009】
上記構成によれば、合流部に段差を設けるという簡便な構成により、第1流路と第2流路とを合理的に仕切ることができる。
【0010】
また、本発明のシートパッドは、更に次のように構成されていても良い。合流部が、更に、第1の通風路及び第2の通風路とは別の通風路である第3の通風路と繋がる第3流路を有する。段差部が、第1流路、第2流路及び第3流路のうちの真ん中に配列される1つの流路を他の2つの流路よりも底上げすることで他の2つの流路との間を仕切る構成とされる。
【0011】
上記構成によれば、合流部の中央に段差部を設けることで、3つの流路を合理的に仕切ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係るシートバックの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
以下、本発明を実施するための形態を、
図1-5を用いて説明する。以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。
【0014】
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシートパッドの構成について説明する。本実施形態に係るシートパッドは、自動車用シートのシートバック1のクッション材を成すバックパッド10として構成される。上記バックパッド10は、着座乗員の背部を弾性的に受け止める発泡ウレタン製のパッド材から成る。
【0015】
上記シートバック1は、
図1に示すように、上記バックパッド10と、バックパッド10を背裏側から支持する不図示のバックフレームと、シートバック1の表面に被せられる不図示のバックカバーと、を有する。更に、上記シートバック1は、バックパッド10の背裏部に形成された通風路11に蓋をする樹脂製板状の蓋板20と、該蓋板20の開口部に接続されて通風路11に流路接続されるファン30と、を有する。
【0016】
上記シートバック1は、上記ファン30により天板面(背凭れ面)側から風を吸い込んで背面側から排出する送風機能を備えた構成とされる。具体的には、
図2に示すように、上記バックパッド10の背裏部には、その面内方向に沿って複数の通風路11が延びるように形成されている。各通風路11は、上記ファン30と接続されるバックパッド10の背裏上部から、下方に向かって放射状に延びるように形成されている。各通風路11は、それらの所々の箇所に形成された厚さ方向に貫通する貫通孔14により、バックパッド10の天板面側へと貫通している。
【0017】
各通風路11は、バックパッド10の背裏部を覆う蓋板20により、その開口を閉じられる構成とされる。これにより、バックパッド10の各貫通孔14から吸い込まれた風は、各通風路11を通ってファン30との接続口へ流される。上記蓋板20の上部には、ファン30の吸込口が接続される開口部が形成されている。この開口部を介して、バックパッド10の接続口とファン30の吸込口とは流路接続されている。それにより、ファン30の吸引圧が、バックパッド10の各通風路11に掛けられるようになっている。
【0018】
上記構成により、シートバック1の背凭れ面を成す天板面から吸気された風は、各貫通孔14から各通風路11を通ってファン30に吸い込まれ、シートバック1の背面側へと排気される。
【0019】
各通風路11は、具体的には、
図3に示すように、中央通風路11aと、左通風路11bと、右通風路11cと、左上通風路11dと、右上通風路11eと、を有する。中央通風路11aは、バックパッド10の中央領域から上向きに延びる。左通風路11bは、バックパッド10の左下側領域から上向きに延びたあと右斜め上向きに延びる。右通風路11cは、バックパッド10の右下側領域から上向きに延びたあと左斜め上向きに延びる。左上通風路11dは、バックパッド10の左上側領域から右斜め上向きに延びる。右上通風路11eは、バックパッド10の右上側領域から左斜め上向きに延びる。
【0020】
また、バックパッド10は、
図3に示すように、各通風路11が合流する合流部Aを有する。該合流部Aは、前出の中央通風路11a、左通風路11b及び右通風路11cが合流する第1合流部12と、該第1合流部12に左上通風路11dと右上通風路11eとが更に合流する第2合流部13と、を有する。つまり、合流部Aは、各通風路11が2段階に亘って合流する構成とされる。ここで、中央通風路11aが、本発明の「第1の通風路」に相当する。また、左通風路11bが、本発明の「第2の通風路」に相当する。また、右通風路11cが、本発明の「第3の通風路」に相当する。
【0021】
<第1合流部12>
上記第1合流部12は、
図3及び
図4に示すように、中央通風路11aと繋がる中央流路12aと、左通風路11bと繋がる左流路12bと、右通風路11cと繋がる右流路12cと、を有する。上記第1合流部12は、更に、中央流路12aを左流路12b及び右流路12cよりも底上げさせる第1段差部12dと、を有する。左通風路11bは、中央流路12aの左隣に配列される。右通風路11cは、中央流路12aの右隣に配列される。ここで、中央流路12aが、本発明の「第1流路」及び「一方の流路」に相当する。また、左流路12bが、本発明の「第2流路」及び「他方の流路」に相当する。また、右流路12cが、本発明の「第3流路」に相当する。また、第1段差部12dが、本発明の「段差部」に相当する。
【0022】
第1段差部12dにより、中央流路12a、左流路12b及び右流路12cは、それぞれの流路内に流れ込む風が互いにぶつからないように仕切られる構成とされる。第1段差部12dは、第1合流部12の左右の側壁を成す第1側壁部12eよりも低く突出する構成とされる。このため、第1段差部12dは、中央流路12a、左流路12b及び右流路12cの間を、第1合流部12という1つの流路の中で互いに仕切った形に形成することができる。これにより、中央通風路11a、左通風路11b及び右通風路11cから第1合流部12にそれぞれ流れ込んだ風が、互いにぶつかることなく、ファン30への接続口に向かって真っすぐに流れるようにガイドされる。ここで、第1段差部12dが、本発明の「ガイド部」に相当する。
【0023】
第1段差部12dは、中央流路12aの流れ方向となる上方に向かって、その後方への突出高さが次第に高くなっていく形状とされる。このため、第1段差部12dは、中央流路12aに流れこんだ風をファン30に近づけながら、ファン30への接続口に向かって流すことができる。
【0024】
<第2合流部13>
上記第2合流部13は、
図3及び
図5に示すように、第1合流部12の構成に加えて、左上通風路11dから繋がる左上流路13aと、右上通風路11eから繋がる右上流路13bと、を有する。上記第2合流部13は、更に、左上流路13aを左流路12bよりも底上げさせる第2段差部13cと、右上流路13bを右上通風路11eよりも底上げさせる第3段差部13dと、を有する。左上流路13aは、左流路12bの左隣に配列される。右上流路13bは、右流路12cの右隣に配列される。
【0025】
第2段差部13cにより、左上流路13aと左流路12bとは、それぞれの流路内に流れ込む風が互いにぶつからないように仕切られる構成とされる。第2段差部13cは、第2合流部13の左右の側壁を成す第2側壁部13eよりも突出する構成とされる。このため、第2段差部13cは、左上流路13aと左流路12bとの間を、第2合流部13という一つの流路の中で互いに仕切った形に形成することができる。これにより、左上流路13aと左流路12bとにそれぞれ流れ込んだ風が互いにぶつかることなく、ファン30への接続口に向かって真っすぐに流れるようにガイドされる。
【0026】
第3段差部13dにより、右上流路13bと右流路12cとは、それぞれの流路内に流れ込む風が互いにぶつからないように仕切られる構成とされる。第3段差部13dは、第2合流部13とバックパッド10の背裏部との境界を成す第2側壁部13eよりも突出する構成とされる。このため、第3段差部13dは、右上流路13bと右流路12cとの間を、第2合流部13という一つの流路の中で互いに仕切った形に形成することができる。これにより、右上流路13bと右流路12cとにそれぞれ流れ込んだ風が互いにぶつかることなく、ファン30への接続口に向かって真っすぐに流れるようにガイドされる。
【0027】
上述したように、各段差部12d、13c、13dにより、各通風路11を合流部Aという1つの流路に合流させても、各通風路11から流れ込んだ風を互いにぶつからせることなく、ファン30への接続口に向かって真っすぐに流せるようにガイドさせることができる。このため、合流部Aでの圧力損失を抑えて、シートバック1の表面に効率よく風を流すことができる。
【0028】
<まとめ>
以上をまとめると、本実施形態のバックパッド10は次のような構成となっている。なお、以下において、括弧書きで示す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0029】
すなわち、シートパッド(10)は、パッド裏面に沿って面内方向にそれぞれ延びる第1の通風路(11a)と第2の通風路(11b)とを有する。また、シートパッド(10)は、更に、第1の通風路(11a)と第2の通風路(11b)とが合流する合流部(A)を有する。合流部(A)が、第1の通風路(11a)と繋がる第1流路(12a)と、第2の通風路(11b)と繋がる第2流路(12b)と、第1流路(12a)と第2流路(12b)との間を部分的に仕切るように立ち上がることで各々の流路(12a、12b)内に流れ込む風を各々の流れ方向にガイドするガイド部(12d)と、を有する。
【0030】
このような構成となっていることにより、合流部(A)がガイド部(12d)を有することで、各々の流路(12a、12b)内に流れ込む風が互いにぶつからないように整流される。このため、複数の通風路(11a、11b)が合流しても圧力損失を招きにくくできる。
【0031】
また、ガイド部(12d)が、第1流路(12a)及び第2流路(12b)のうちの一方の流路(12a)を他方の流路(12b)よりも底上げする段差部(12d)とされる。
【0032】
このような構成となっていることにより、合流部(A)に段差を設けるという簡便な構成により、第1流路(12a)と第2流路(12b)とを合理的に仕切ることができる。
【0033】
また、合流部(A)が、更に、第1の通風路(11a)及び第2の通風路(11b)とは別の通風路である第3の通風路(11c)と繋がる第3流路(12c)を有する。段差部(12d)が、第1流路(12a)、第2流路(12b)及び第3流路(12c)のうちの真ん中に配列される1つの流路(12a)を他の2つの流路(12b、12c)よりも底上げすることで他の2つの流路(12b、12c)との間を仕切る構成とされる。
【0034】
このような構成となっていることにより、合流部(A)の中央に段差部(12d)を設けることで、3つの流路(12a、12b、12c)を合理的に仕切ることができる。
【0035】
<その他の実施形態>
以上、本発明を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、各種の形態で実施することができるものである。
【0036】
1.シートパッドは、自動車のリヤシートの他にフロントシートにも適用することができるものである。また、シートパッドは、シートバックの他、シートクッションにも適用することができるものである。また、自動車のシートの他に、鉄道等の自動車以外の車両、航空機、船舶等の様々な乗物用に供されるシート、もしくは映画館等の公共施設や家庭などで使用される乗物用以外のシートにも広く適用することができるものである。
【0037】
2.通風路は、パッド裏面に複数設けられる構成であれば、その数に制限はない。
【0038】
3.合流部は、第1合流部のみの構成や第2合流部のみの構成であっても良い。また、実施形態以外の複数の通風路が合流して形成されるものであっても良い。
【0039】
4.ガイド部は、各流路を部分的に仕切るものであれば、第1流路を底上げする段差部のほかに、各流路を合流部内で部分的に仕切る立板状の部位から成るものであっても良い。
【0040】
5.段差部は、合流部内に複数設けられていても良く、第2流路と第3流路とをそれぞれ底上げするように合流部内に設けられる構成であっても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 シートバック
10 バックパッド(シートパッド)
11 通風路
11a 中央通風路(第1の通風路)
11b 左通風路(第2の通風路)
11c 右通風路(第3の通風路)
11d 左上通風路
11e 右上通風路
12 第1合流部
12a 中央流路(第1流路、一方の流路)
12b 左流路(第2流路、他方の流路)
12c 右流路(第3流路)
12d 第1段差部(段差部、ガイド部)
12e 第1側壁部
13 第2合流部
13a 左上流路
13b 右上流路
13c 第2段差部
13d 第3段差部
13e 第2側壁部
14 貫通孔
20 蓋板
30 ファン
A 合流部