(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】床ふく射対流式冷暖房システム
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20240409BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20240409BHJP
E04F 15/00 20060101ALI20240409BHJP
E04F 15/18 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
F24F5/00 K
F24F13/02 C
E04F15/00 101Z
E04F15/18 Y
(21)【出願番号】P 2021009399
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-07-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1)配布による公開 [販売日]令和2年10月2日 [販売場所]京田辺市役所 [公開者]京村隆 [公開された発明の内容]特願2021-009399に係る床ふく射対流式冷暖房システムを記載した書類を配布した。
(73)【特許権者】
【識別番号】504215058
【氏名又は名称】STOコンサルティング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521035819
【氏名又は名称】株式会社関西エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【氏名又は名称】田村 善光
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【氏名又は名称】古田 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】石丸 政吉
(72)【発明者】
【氏名】京村 隆
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-51080(JP,A)
【文献】特開2007-162970(JP,A)
【文献】特開2010-223538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
F24F 13/02
E04F 15/00
E04F 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床スラブ上に垂設された複数の支持体と、
前記支持体に支持され、平行に列設され、冷暖風の流路を形成した長尺状の複数の金属製の大引と、
前記大引の上面に前記大引に対して直交する方向にかつ平行に列設され、部屋の床材の下面に当接し前記床材を支持する、冷暖風の流路を形成した長尺状の複数の金属製の根太と、
前記大引の下方に配設され、空調機からの冷暖風を前記大引に送給するための流路を形成するチャンバーと、を備え、
前記チャンバーと前記大引が接触する範囲に冷暖風が流動する第一貫通孔をそれぞれ設け、
前記大引と前記根太が交差し接触する範囲に冷暖風が流動する第二貫通孔をそれぞれ設け、
前記根太の側面に冷暖風を床下空間に噴出可能な噴出孔を所定の間隔を設けて複数並列させ、
前記チャンバーの前記大引に対する配設形態を、前記大引の長手方向と直交する方向でかつ前記大引の長手方向の端部に接触させた長尺状の第一チャンバーと、前記第一チャンバーと直角方向に連結され、前記大引の長手方向と平行でかつ前記大引の長手方向の略全長に亘って接触させた長尺状の第二チャンバーとの組み合わせによる配設形態とすることを特徴とする床ふく射対流式冷暖房システム。
【請求項2】
前記第一チャンバーと前記第二チャンバーとの配置形態を、それぞれが一つの平面視で略L字状の配置、又は、前記第一チャンバーが一つで前記第二チャンバーが二つの平面視で略コ字状の配置とすることを特徴とする請求項1に記載の床ふく射対流式冷暖房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体育館、ビル又は家屋等の建物の部屋を冷暖房する床ふく射対流式冷暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、部屋の輪郭を形成する板状の区画材を前記部屋の裏側から支える第1の支持部材であって、内部に空気の流路が形成された第1の支持部材と、前記第1の支持部材を前記区画材との間に挟む位置で支える第2の支持部材であって、前記第1の支持部材に対して交差して配置されると共に内部に空気の流路が形成された第2の支持部材とを有し、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とが前記交差により接触する位置に、互いの前記空気の流路が連絡する連絡孔が、前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材のそれぞれに形成され、前記第1の支持部材の前記空気の流路から前記部屋の裏側の空間に空気を導出する導出孔であって、該導出孔から導出された空気が前記区画材の下面に沿って流れる向きに開口した導出孔が前記第1の支持部材に形成された支持部材セットと;前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材の内部を流れる空気の温度を事前に調節する空気温度調節機器とを備え;前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材を複数有し;複数の前記第2の支持部材がそれぞれ線状に形成され、かつ、所定の間隔を持って配列され;複数の前記第2の支持部材のそれぞれの一端に空気を供給する第1のチャンバーと;複数の前記第2の支持部材のそれぞれの他端に空気を供給する第2のチャンバーとをさらに備え;前記第1のチャンバーが、配列された前記第2の支持部材のそれぞれの前記一端に順番に空気が到達する方向に空気を流すように構成され;前記第2のチャンバーが、配列された前記第2の支持部材のそれぞれの前記他端に、前記一端に空気が到達する順番とは逆の順番で空気が到達する方向に空気を流すように構成された;冷暖房システムが開示されている。
【0003】
特許文献2には、建物の床スラブに高さ調整可能な支持脚を所定間隔をおいて設置し、各支持脚の上部に設けた受け部間に断面ハット状の大引を配設し、かつ各大引を平行に配置し、上記大引の上部に、これら大引と直交する方向に根太を配置し、上記根太の上部に床材を敷設した床構造に付属する体育施設用空調構造において、上記床スラブ上に、上記大引と直交する方向に断面長方形状の筒体からなる第一のチャンバーを配置し、この第一のチャンバーに、これと連通する空調機から送り出される暖気又は冷気などの空調用空気を流通させ、上記並置された隣り合う大引間にわたり、上記床材の下方を覆う断熱シートを配置し、その際、各大引のフランジ部の上部及び上記受け部の上部に上記断熱シートの端部を固着して敷設して、床材とこの断熱シートとの間に第二のチャンバーを形成し、上記第一のチャンバーを上記床スラブを二分する状態で直線状に配置する一方、上記第二のチャンバーを第一のチャンバーからこれと直交する両方向に向けて配置し、上記第一のチャンバーの所定間隔位置に、この第一のチャンバーを通過する空調用空気を吸引して上記第二のチャンバーに送風する送風機を配置し、上記第二のチャンバーを通過する空調用空気により上記床材を暖め又は冷やして温度を調整し、この床材の上部の床材からのふく射作用により室内の空調を行ない、上記建物の壁スラブに間隔保持具を配置し、これら間隔保持具間に配置したスタッド材の前面に壁板を張り付け、上記壁スラブとこの前方に配置した上記壁板との間の空間部に、上記第二のチャンバーと連通しこの第二のチャンバーからの空調用空気を上記壁面に設けた通風口まで送る第三のチャンバーを形成し、上記通風口から空調用空気を室内へ吹き出し、室内の空気の一部或いは全部を再び上記空調機に送り、新たな空調用空気として利用する体育施設用空調構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5335376号公報
【文献】特許第5348996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明は、空調機からの並列したチャンバーでそれぞれ相反する方向の冷暖風を大引の両端部にそれぞれ流入させる技術であるが、チャンバーと大引との連結孔の大きさの制約があってチャンバー内から大引の空洞部への流量が不足しており増加させることは困難であるという問題があった。
【0006】
特許文献2に記載の発明は、空調機からの第一のチャンバーは床スラブを二分する状態で直線状に一本のみ配置しており、大引間の中央部で下方に大引の底面より大きく撓むように取付けた断熱シートと床材間の空間に、第一のチャンバーからの冷暖風を送風機で送風させる技術である。空調機からの冷暖風は床材から離隔した大引から下方に大きく垂らした断熱シートと床材間の大きな空間に床下送風機によって噴出させ、それを部屋に送風機で貫流させるので、システムの制御、床下送風機のメンテナンス、床下メンテナンスのための最低床下高さの問題、及び、送風機入替のための床下点検口の設置等の問題があった。
【0007】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、空調機から送風された冷暖風をより多く大引に流入でき、これに従って根太にも冷暖風がより多く流入可能にして、部屋を床材からのふく射熱と、床材下方からの部屋へ還流された冷暖風の対流との相乗効果による床ふく射対流式冷暖房システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明において、熱伝達と対流は同義語であり、熱放射とふく射は同義語である。
【0009】
請求項1に記載の床ふく射対流式冷暖房システムは、床スラブ上に垂設された複数の支持体と、前記支持体に支持され、平行に列設され、冷暖風の流路を形成した長尺状の複数の金属製の大引と、前記大引の上面に前記大引に対して直交する方向にかつ平行に列設され、部屋の床材の下面に当接し前記床材を支持する、冷暖風の流路を形成した長尺状の複数の金属製の根太と、前記大引の下方に配設され、空調機からの冷暖風を前記大引に送給するための流路を形成するチャンバーと、を備え、前記チャンバーと前記大引が接触する範囲に冷暖風が流動する第一貫通孔をそれぞれ設け、前記大引と前記根太が交差し接触する範囲に冷暖風が流動する第二貫通孔をそれぞれ設け、前記根太の側面に冷暖風を床下空間に噴出可能な噴出孔を所定の間隔を設けて複数並列させ、前記チャンバーの前記大引に対する配設形態を、前記大引の長手方向と直交する方向でかつ前記大引の長手方向の端部に接触させた長尺状の第一チャンバーと、前記第一チャンバーと直角方向に連結され、前記大引の長手方向と平行でかつ前記大引の長手方向の略全長に亘って接触させた長尺状の第二チャンバーとの組み合わせによる配設形態とすることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の床ふく射対流式冷暖房システムは、請求項1において、前記第一チャンバーと前記第二チャンバーとの配置形態を、それぞれが一つの平面視で略L字状の配置、又は、前記第一チャンバーが一つで前記第二チャンバーが二つの平面視で略コ字状の配置とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の床ふく射対流式冷暖房システムは、空調機からの冷暖風を床下に流動させて、床下から床上に冷暖風を貫流させながら、冷温化又は暖温化させた床材からのふく射熱(熱放射)により部屋の冷暖房を行うシステムであり、冷暖風により大引及び根太を冷温化又は暖温化させ蓄熱させながら、根太から噴射させた冷暖風からの対流(熱伝達)と、前記大引及び前記根太からの熱放射と、根太からの熱伝導とにより床材を冷温化又は暖温化させて、その床材からのふく射熱(熱放射)で部屋の冷暖房を行うシステムである。本発明は、大引に流入する冷暖風の風量を約2~3倍も大増量化することができ、これにより大引及び根太の蓄熱量を大幅に増加でき、噴射される冷暖風の風量を大幅に増加できるので、空調機の設定温度差との温度差を従来より小さくした床下空間から冷暖風を部屋に還流させながら、床材からのふく射熱により、部屋の冷暖房機のスイッチオンから床材を極めて短時間で部屋の温度を冷房化又は暖房化の設定温度に実現でき、人の出入りが多くても室温を床材からのふく射熱により維持でき、省エネ効果もあるという効果を奏する。
【0012】
請求項2の記載の床ふく射対流式冷暖房システムは、互いに直角に配置する複数のチャンバーの配置の組み合わせ配置によって、チャンバーから大引への冷暖風の流量を大幅に増加できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】チャンバーの端部を閉にした本発明の床ふく射対流式冷暖房システムの概要構成説明用の斜視図である。
【
図2】チャンバーの端部を説明用に開にした本発明の床ふく射対流式冷暖房システムの概要構成説明用の斜視図である。
【
図3】
図1の斜視図の構成から床材を除いた状態をわかりやすくした説明図である。
【
図4】
図1において床材を除いた状態の斜視図である。
【
図5】
図4において根太を外して上方に持ち上げた状態の説明図である。
【
図6】
図4の平面説明図で、チャンバーから根太までの冷暖風の流れの説明図である。
【
図7】
図4の平面説明図で、根太における冷暖風の流れの説明図である。
【
図13】略L字状に配設したチャンバーの大引へ冷暖風を流す第一貫通孔をチャンバーの短手方向の端部に設けた形態の説明図である。
【
図14】略L字状に配設したチャンバーの大引へ冷暖風を流す第一貫通孔をチャンバーの短手方向の中央部に設けた形態の説明図である。
【
図15】略コ字状に配設したチャンバーの大引へ冷暖風を流す第一貫通孔の説明図である。
【
図16】チャンバーと略直角方向に配設した大引の長手方向の断面イメージ説明図である。
【
図17】チャンバーと略平行に配設した大引の長手方向の断面イメージ説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の床ふく射対流式冷暖房システム1は、
図1又は
図2に示すように、体育館、ビル又は家屋等の建物の床ふく射対流式冷暖房システム1である。
【0015】
まず、現状の床ふく射対流式冷暖房システムについて説明する。
図16に示すように、空調機50からの任意で温度設定された冷暖風は床材6に設けた流入口13を通過して床下のチャンバー4aに流入し、第一貫通孔11aを通過して大引2の流路に流入し、第二貫通孔12を通過して根太3の流路に流入し、根太3に設けた噴射孔10から床材6下面近くの床下空間25に噴射する。そして、噴射され床下空間25に流動する冷暖風は床材6に設けた貫流口40から部屋100内に還流される。
【0016】
そして、使用者60が感じる温度は、第一に床材6からの熱放射と部屋100内の空気からの熱伝達である。前記床材6に伝わる熱は、第一に前記根太3から床材6への熱伝導、第二に噴射孔10から噴射された冷暖風の熱伝達、第三に流路を通過する冷暖風により熱伝達され蓄熱された大引2及び根太3からの熱放射である。また、床材6に設けた貫流口40から部屋100内に還流する空気の温度が空調機50で設定した温度との差が小さいほど部屋100の室内温度を設定温度に早く到達しやすくし前記差が大きいほど部屋100の室内温度を設定温度になかなか到達しにくくなる。
【0017】
そこで、発明者は、空調機50から大引2に流れる冷暖風の流量を増加させれば、冷暖風から大引2及び根太への熱伝達が増加して大引2及び根太から床材6への熱放射が増加し、根太3の噴射孔10から噴出する冷暖風の流量が増加して噴射された冷暖風から床材6への熱伝達が増加し、床材6と接触している箇所の根太3から床材6への熱伝導が増加し、かつ、冷暖風の流量を増加させると、従来の大きな容積の流路の床下空間25に比較して、冷暖風の温度変化が小さくなることから部屋100の室温との差が小さくなった冷暖風を貫流することになり床冷暖房の効率を高めるという考えに到達し、本発明の床ふく射対流式冷暖房システム1を想到するに至った。
【0018】
前記床ふく射対流式冷暖房システム1は、
図1、
図3又は
図11に示すように、床スラブ20上に垂設された複数の支持体7と、前記支持体7に支持され、平行に列設され、冷暖風の流路を形成した長尺状の複数の金属製の大引2と、前記大引2の上面に前記大引2に対して直交する方向にかつ平行に列設され、部100屋の床材6の下面に当接し前記床材6を支持する、冷暖風の流路を形成した長尺状の複数の金属製の根太3と、前記大引2の下方に配設され、空調機50からの冷暖風を前記大引2に送給するための流路を形成するチャンバー4と、を備え、前記チャンバー4と前記大引2が接触する範囲に冷暖風が流動する第一貫通孔11をそれぞれ設け、前記大引2と前記根太3が交差し接触する範囲に冷暖風が流動する第二貫通孔12をそれぞれ設け、前記根太3の側面に冷暖風を床下空間25に噴出可能な噴出孔10を所定の間隔で複数設け、前記チャンバー4の前記大引2に対する配設形態を、前記大引2の長手方向と直交する方向でかつ前記大引2の長手方向の端部に接触させた長尺状の第一チャンバー4aと、前記第一チャンバー4aと直角方向に連結され、前記大引2の長手方向と平行でかつ前記大引2の長手方向の略全長に亘って接触させた長尺状の第二チャンバー4bとの組み合わせによる配設形態としている。
【0019】
床ふく射対流式冷暖房システム1は、
図8に示すように、床スラブ20上に垂設された支持体7、
図3に示すように、前記支持体7に支持された大引2、前記大引2の上に前記大引2の長手方向とは直交する方向に載置され固定された根太3、
図10~
図11に示すように、前記根太3の上面16に接して固定され支持された床材6、前記床材6が構成部材となる部屋100の室内に設置された空調機50、前記空調機50からの冷暖風を前記大引2に流入させる流路を形成するチャンバー4を備える。
【0020】
前記床材6は、
図1~
図2に示すように、体育館などの部屋100の室内の全域に亘り敷設された床材6であり、水平蓄熱板としての機能を有する。また、前記床材6には、前記部屋100内に設置された空調機50からの冷暖風を床下に流動させる流入口13を設け、前記床材6の周縁部の複数個所に前記床材6の下方から上方へ冷暖風が貫流する貫流口40を設けている。
【0021】
よって、部屋100は、空調機50の設定温度差との温度差を従来より小さくした床下空間25から冷暖風の還流をうけながら、冷やされた床材6又は暖められた床材6からの熱放射によって冷暖房ができるので、部屋100を冷暖房機のスイッチオンから極めて短時間で所定の温度に到達させることができる。
【0022】
次に、前記支持体7は、
図1又は
図8に示すように、床スラブ20上に垂設され、大引2を下方から支持するものであり、一本の大引2ごとに前記大引2が屈折しないように所定の間隔を空けて複数垂設している。前記支持体7は例えば螺子により高さ調整を可能にしており、前記大引2や前記床材6の水平状態を実現させることができる。
【0023】
次に、前記大引2は、
図4に示すように、前記支持体7に支持され、平行に複数列設され、冷暖風の流路を形成した長尺状の金属製である。冷暖風が流動する流路であるので、
図9又は
図11に示すように、断面は閉断面構造であり、例えば、垂直方向の断面が四角形の長四角タイプ角形鋼管、断面が略ハット状の鋼材、断面が略コ字状の鋼材などがあるが、下面に開口部があるものについては、
図9に示すように、チャンバー4と接触しない範囲は開口部を塞ぐ底塞ぎ板17を取付けて、チャンバー4から流入する冷暖風の流路を形成している。
【0024】
また、前記大引2は、前記チャンバー4が大引2を支持可能な剛性を有するときは、支持体7に代わって、前記大引2の略全長に亘って前記チャンバー4bが直接的に支持する形態でもよい。
【0025】
大引2の前記チャンバー4と接触する範囲には、
図11に示すように下面の開口部を底塞ぎ板17で塞がずに開口した状態にして、その開口部である第一貫通孔11bを通してチャンバー4からの冷暖風を流入させている。
【0026】
前記大引2の材質を鋼材などの熱伝導率が高い金属にすることによって、前記流路を流動する冷気又は暖気が直接に大引2に接したときに前記冷気又は暖気の温度が大引2に伝熱され蓄熱され、床材6を熱放射で冷やしたり暖めることができる。
【0027】
次に、前記根太3は、
図3~
図5、
図10、
図11に示すように、前記大引2の上面に前記大引2に対して直交する方向にかつ平行に複数列設され、部屋100の床材6の下面に当接し前記床材6を支持する、冷暖風の流路を形成した長尺状の金属製である。前記平行に複数列設する間隔は、例えば体育館でスポーツ運動をしても床材6が長寿命化可能な所定の間隔で複数列設する。
【0028】
冷暖風が流動する流路であるので、断面は閉断面構造であり、例えば鋼材の形態として、断面が四角形の長四角タイプ角形鋼管、断面が略ハット状の鋼材、断面が略コ字状の鋼材などがあるが、下面に開口部があるものについては、大引2と接触しない範囲は、
図5に示すように、開口部を塞ぐ底塞ぎ部材15を取付けて根太3内を流動する冷暖風の流路を形成している。前記底塞ぎ部材15としては、締結手段で締結する板状のもの、前記開口部にはめ込み式の板材、又は、開口部の両端に張り付けるテープ状のもの等あるが、開口部を塞ぐものであればいずれでもよい。
【0029】
また、前記根太3と前記大引2と接触する範囲には冷暖風を流動させるために、
図10又は
図11に示すように下面に第二貫通孔12を設け、前記根太3の側面に冷暖風を床下空間25の床材直近空間に噴出可能な噴出孔10を所定の間隔で複数設けている。前記根太3の下面は、
図5に示すように、前記底塞ぎ板15で前記第二貫通孔12以外の範囲が全面覆われている。
【0030】
前記根太3は金属製であり、前記根太3内の流路を流動する冷気又は暖気が直接に根太3に接することによって前記冷気又は暖気の温度が根太3に伝熱され蓄熱されて床材6をふく射熱で冷やしたり暖める。
【0031】
次に、前記チャンバー4は、
図4等に示すように、前記大引2の下方に配設され、前記部屋100内に設置された空調機50からの冷暖風を床材6の流入口13から、方向30で流入させ、前記大引2に送給するための流路を形成する断面形状が略四角形状の形態をしている。前記チャンバー4は断熱材料から造られ両端部は冷暖風が漏洩しないように、
図1に示すように流路を閉鎖している。
【0032】
前記チャンバー4の前記大引2に対する配設形態として、
図1、
図2、
図13~
図15に示すように、前記大引2の長手方向と直交する方向でかつ前記大引2の長手方向の端部に接触させた長尺状の第一チャンバー4aと、前記第一チャンバー4aと直角方向に連結され、前記大引2の長手方向と平行でかつ前記大引2の長手方向の略全長に亘って接触させた長尺状の第二チャンバー4bとの組み合わせによる配設形態がある。
【0033】
前記配設形態は、
図1及び
図13に示すように、平面視で略L字状で、前記チャンバー4と前記大引2の長手方向とが略全長に亘って接触させた形態で前記チャンバー4の短手方向の端部に第一貫通孔11bを設けた形態があり、
図2及び
図14に示すように、平面視で略L字状で、前記チャンバー4と前記大引2の長手方向とが略全長に亘って接触させた形態で前記チャンバー4の短手方向の略中央部に第一貫通孔11bを設けた形態があり、
図15に示すように、第二チャンバー4bを2本設け平面視で略コ字状の形態がある。前記略コ字状の形態の場合は、前記略L字状の形態の場合より冷暖風の流量を増加させることができる。前記貫通孔11aの長さは前記チャンバー4aの短手方向と略同じ長さを有し、前記貫通孔11bは前記大引2の長手方向の長さと略同じ長さである。
【0034】
前記チャンバー4bと大引2との形態について説明する。
図17に示すように、チャンバー4bから大引2への貫通孔11bは大引2の全長と略同じ長さであるので、この形態を構成することによってチャンバー4bから大引2への冷暖風の流量を大幅に増量させることができる。これによって、床材6への噴射孔10から噴射された冷暖風からの熱伝達が増加し、床材6への根太3及び大引2からの熱放射が増加し、床材6への根太3からの熱伝導が増加する。そして、大きな床下空間25から空調機50の設定温度との差を従来より小にした温度の冷暖風を部屋100に還流させることができる。
【0035】
前記第一貫通孔11の総長さは、
図13に示すように、前記大引2の長手方向と直交する方向でかつ前記大引2の端部に上壁が接触する一本の長尺状のチャンバー4aの場合は、前記大引2との第一貫通孔11aの長さは前記チャンバー4aの幅の長さL1に前記大引2の本数を乗じた長さに対して、前記大引2の長手方向と平行でかつ前記大引2の長手方向の略全長に亘って上壁が接触する長尺状のチャンバー4bの場合は、前記大引2との第一貫通孔11bの長さは前記床材6が使用された部屋100の室内の長さL2となり、かなり長く確保することができる。これにより、チャンバー4からの冷暖風の風量を前記大引2内に大幅に増量アップさせることができる。
【0036】
例えば、従来のチャンバー4aが一本の形態の場合は、L1を1mとしその個所を40か所とした場合は40mであるが、本発明のチャンバー4a、4bが略L字状の形態の場合は、例えば部屋100の室内の長さが35mの場合は(1m×39か所+35m×1か所)の74mとなり、約2倍の大きな差がある。これは大引2に流動する冷暖風の流量が大幅に増加するという顕著で有利な効果を奏することを示している。
【0037】
また、従来のチャンバー4aが一本の形態の場合は、L1を1mとしその個所を40か所とした場合は40mであるが、本発明のチャンバー4a、4b1、4b2が略コ字状の形態の場合は、
図15に示すように、例えば部屋100の室内の長さが35mの場合は(1m×39か所+35m×2か所)の109mとなり、約2.7倍の大きな差がある。これは大引2に流動する冷暖風の流量がさらに大幅に増加することを示している。
【0038】
次に、冷暖風の流れを説明する。
図1~
図4、
図6~
図7、
図11~
図12に示すように、前記空調機50からの冷暖風は方向30で流れてきて流入口13を経由してチャンバー4aに流入しチャンバー4bまで方向K1に流動する。そして、チャンバー4aでは
図6や
図13~
図15に示すように第一貫通孔11aを経由して前記大引2に冷暖風が流入し、チャンバー4bでは
図6や
図12~
図15に示すように第一貫通孔11bを経由して前記大引2に冷暖風が流入する。そして、前記大引2の流路内では
図6や
図12に示すように方向K2に冷暖風が流れる。
【0039】
そして、前記大引2から前記根太3には、
図7、
図10~
図11に示すように第二貫通孔12を経由して冷暖風が前記根太3の流路に流入し、
図6、
図7及び
図12に示すように方向K3に流れる。そして、
図7、
図12に示すように前記根太3の両側壁に配置した噴出孔10から冷暖風が床下空間25に方向K4a又は方向K4bに噴出される。そして、床下空間25に流動する冷暖風は前記床材6に複数設けられた貫流口40を経由して部屋100に貫流される。
【0040】
前記した冷暖風の流れから前記床材6の温度を下げたり上げたりする伝熱の流れは、第一に前記根太3からのとの熱伝導、第二に噴射孔10から噴射された冷暖風の熱伝達、第三に流路を通過する冷暖風により熱伝達され冷暖風の温度に近づいた大引2及び根太3からの熱放射である。また、床材6に設けた貫流口40から部屋100内に還流する空気の温度が空調機50で設定した温度との差が小さいほど部屋100の室内温度を設定温度に早く到達しやすくし前記差が大きいほど部屋100の室内温度を設定温度になかなか到達しにくくなる。
【0041】
前記伝熱の流れから、部屋100内に熱放射する前記床材6をより強力に冷やしたり暖めたり、部屋100へ還流させる冷暖風の温度を空調機の設定温度との差を小さくするには、チャンバー4から最初に流入する大引2への冷暖風の流量の増加を図ることが重要である。
【0042】
そのために、本発明の床ふく射対流式冷暖房システム1は、空調機50から送出された冷暖風を大引2に多く流入させることを実現させ、前記根太3から床材6近傍への冷暖風の噴射量を大幅に増加させ、前記大引2及び根太3への熱伝達量を大幅に増加させ、部屋100へ還流させる冷暖風の温度を設定温度との温度差を従来より小さすることができた。これにより、前記床材6からの熱放射(ふく射熱)と、床材6の下方から貫流させた、温度差が小さくなった冷暖風との相乗効果により、部屋100の冷暖房を空調機50のスイッチオンから極めて短時間に設定温度にもっていくことができる。
【符号の説明】
【0043】
1 床ふく射対流式冷暖房システム
2 大引
3 根太
4 チャンバー
6 床材
7 支持体
10 噴出孔
11 第一貫通孔
12 第二貫通孔
13 流入口
15 底塞ぎ板
16 上面
17 底塞ぎ板
20 床スラブ
25 床下空間
30 方向
40 貫流口
50 空調機
60 使用者
100 部屋