(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】再設定可能な股関節プロテーゼおよびキット
(51)【国際特許分類】
A61F 2/32 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
A61F2/32
(21)【出願番号】P 2019563873
(86)(22)【出願日】2018-05-18
(86)【国際出願番号】 US2018033388
(87)【国際公開番号】W WO2018217566
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-05-17
(32)【優先日】2017-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518028206
【氏名又は名称】ヒップ イノベーション テクノロジー、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【氏名又は名称】米山 尚志
(74)【代理人】
【識別番号】100102761
【氏名又は名称】須田 元也
(72)【発明者】
【氏名】ターマニーニ、ゼーファー
(72)【発明者】
【氏名】ディアマントーニ、ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァニエル、ブリアン
(72)【発明者】
【氏名】デイビスム、テイラー
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-530962(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0254646(US,A1)
【文献】国際公開第2017/019330(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3165299(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0224798(US,A1)
【文献】実開平05-009520(JP,U)
【文献】特表2013-521864(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0118846(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿骨上部に移植可能な大腿骨ステムを有し、さらに、前記大腿骨ステムはその近位端にテーパーシャンクを有し、そのテーパーシャンクは、大腿骨球部要素と大腿骨カップ要素とを交換可能に受容して前記大腿骨ステムの上に取り付けるように構成されている人体に外科的に移植するように適合された再構成可能な股関節プロテーゼであって、
球部と前記テーパーシャンクを受け入れるようにテーパー加工された先細凹部とを有し、前記テーパーシャンクの周りを回転可能であり、前記球部の中心軸は前記テーパーシャンクの軸に対して角度を成して交差している大腿骨球部要素、または、
カップ部と前記テーパーシャンクを受け入れるようにテーパー加工された先細凹部とを有し、前記
テーパーシャンクの周りを回転可能であり、前記カップ部の中心軸は、前記テーパーシャンクの軸に対して角度が付けられて交差しており、さらに、寛骨臼カップの凹状部内のステムに取り付けられた寛骨臼球を有する大腿骨カップ部要素、
を具備し、
前記テーパーシャンクは、再構成可能な股関節プロテーゼを形成するために、前記
大腿骨球部要素または前記大腿骨カップ部要素のいずれかを受け取り可能である再構成可能な股関節プロテーゼ。
【請求項2】
異なる寸法の球部を有する少なくとも2つの大腿骨球部要素、および/または異なる寸法のカップ部を有する少なくとも2つ大腿骨カップ部要素を含む、請求項1に記載の再構成可能な股関節プロテーゼを提供するように適合された構成部品のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の内部において一部は大腿骨上部の内部に、別の部分は骨盤の内部に外科的に植え込み可能に構成された再設定可能な股関節プロテーゼおよびそのための要素に関する。植え込み可能なプロテーゼは、可逆的に構成されてもよく、要望または必要に応じて代替的な構成を提供してもよい。さらなる態様においては、本発明はまた、本明細書に記載のプロテーゼを人体の内部に植え込み、これに続いて要望または必要に応じて当該プロテーゼを再設定する方法を含む。本発明のさらに別の態様は、構成された植え込み可能なプロテーゼを提供する際に用いられる構成要素のキットである。
【背景技術】
【0002】
外科的に植え込み可能な股プロテーゼは典型的には2つの主要な部品すなわち、大腿骨インプラントと寛骨臼カップ部とを備えている。大腿骨インプラントは、部分的に大腿骨の上端部に埋め込まれる一方、寛骨臼カップ部は臼蓋窩または骨盤の他の部位に植え込まれる。これらの2つの要素は、大腿骨インプラントと寛骨臼カップ部との間の境界面において嵌合面を必ず備えている。これは、身体の負荷をプロテーゼを介して伝達する。典型的には、これはこれら2つの要素の互いに対する物理的並進運動を可能にする平滑な表面である。良好な境界面は、人体上部の胴体の負荷が大腿骨インプラントの大腿骨と寛骨臼カップ部とに効果的に伝達されること、しかし同時に、同負荷が骨盤に対する大腿骨インプラント(および大腿骨)の動作の程度または回転の利用可能な程度を不必要に損なわないことを確実にする。
【0003】
あるタイプの外科的に植え込み可能な股プロテーゼにおいては、大腿骨インプラントが、大腿骨内に埋め込まれた部位を有しかつ延出する球部(または同様に構成された3次元の幾何学的表面)を有するステムまたはシャフトを備える。股プロテーゼはまた、骨盤に植え込み可能な相補的な寛骨臼カップ部を備えており、これは、大腿骨インプラントのステムまたはシャフトから延びる球部(または同様に構成された3次元幾何学体)の一部と接触する空洞またはソケットを備えている。境界面は球部と寛骨臼カップ部が互いに接触しているときにこれらの間に規定される。これは、例えば、米国特許第5462563号、米国特許第8323346号および米国特許第9005306号により技術分野において知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第5462563号
【文献】米国特許第8323346号
【文献】米国特許第9005306号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
改良型の植え込み可能な股プロテーゼも知られており、これらは「リバースカップ」型と呼ばれることもある。このようなタイプのものにおいては、大腿骨インプラントは大腿骨内に埋め込まれる部位を有するステムまたはシャフトを備え、これがそこから延びる大腿骨カップ部を有し、大腿骨カップ部は、空洞またはソケットを備えている。股プロテーゼはまた、骨盤に植え込み可能な相補的な寛骨臼カップ部を備え、この寛骨臼カップ部は、少なくとも部分的にその内部に存在する球部(または同様に構成された3次元の幾何学的表面)を備えている。境界面は大腿骨カップ部の空洞またはソケットと寛骨臼カップ部の球部とが互いに接触しているときにこれらの間に規定される。これはまた、例えば、米国特許第8313531、米国特許第8845743、米国特許第8992627および米国特許第9119724により技術分野において知られている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様においては、発明は、人体において部分的に大腿骨上部内に、他の部分は骨盤内に外科的に植え込み可能であるように構成された再設定可能な股関節プロテーゼおよびそのための要素(または部品)を提供する。
【0007】
さらなる態様においては、再設定可能な股関節プロテーゼは、大腿骨球部要素のシャンクまたは大腿骨カップ部要素のシャンクを取り外し可能に収容するように構成された凹部をその近位端において備えた大腿骨インサートを有する。
【0008】
さらなる態様においては、再設定可能な股関節プロテーゼは、大腿骨球部要素の一部をなす凹部の内部または大腿骨球カップ部要素の一部をなす凹部の内部に取り外し可能に収容されるように構成された、テーパー加工されたシャンクをその近位端において備えた大腿骨インサートを有する。
【0009】
発明の別の態様においては、本明細書に記載のプロテーゼを人体の内部に植え込み、これに続いて要望または必要に応じて当該プロテーゼを再設定する方法が提供される。再設定は人体の外部でまたは人体の内部で行われうる。
【0010】
さらに別の態様においては、本発明は、本明細書に記載の再設定可能な股関節プロテーゼに必要とされる1つまたは複数の部品またはすべての部品を提供する際に用いられる構成部品のキットを含む。
【0011】
発明のさらなる態様は本出願の明細書、請求の範囲および図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1Aないし
図1Cは、寛骨臼カップ部およびライナーの第1の実施形態と大腿骨球部要素の第1の実施形態とを含む、再設定可能な股関節プロテーゼの実施形態および人体に外科的に植え込み可能であるように構成された当該股関節プロテーゼの要素を示す図であり、
図1Bは
図1Aの断面図であり、
図1Cは、寛骨臼カップ部およびライナーの各部のより一層の細部および大腿骨球部要素の実施形態を提供するための、再設定可能な股関節プロテーゼの一部の断面図である。
【
図2】
図2Aないし
図2Cは、寛骨臼カップ部およびライナーの第2の実施形態および大腿骨球部要素の第2の実施形態を含む、再設定可能な股関節プロテーゼの別の実施形態および人体に外科的に植え込み可能であるように構成された当該股関節プロテーゼの要素を示す図であり、
図2Bは
図2Aの断面図であり、
図2Cは、寛骨臼カップ部およびライナーの各部のより一層の細部および大腿骨球部要素の実施形態を提供するための、再設定可能な股関節プロテーゼの一部の断面図である。
【
図3】
図3Aないし
図3Cは、寛骨臼カップ部およびライナーの第3の実施形態および大腿骨球部要素の第3の実施形態を含む、再設定可能な股関節プロテーゼの別の実施形態および人体に外科的に植え込み可能であるように構成された当該股関節プロテーゼの要素を示す図であり、
図3Bは
図3Aの断面図であり、
図3Cは、寛骨臼カップ部およびライナーの各部のより一層の細部および大腿骨球部要素の実施形態を提供するための、再設定可能な股関節プロテーゼの一部の断面図である。
【
図4】
図4Aおよびその断面図である
図4Bは、大腿骨インプラントの側面図を示す。
【
図5】
図5A、
図5Cおよびその断面図である
図5Bは、大腿骨インプラントの実施形態および大腿骨球部要素の側面図を示す。
【
図7】
図7Aおよび
図7Bは、大腿骨ステムと固定可能な大腿骨球部要素とを備えた大腿骨インプラントの代替的な構成を示す図であり、
図7Cおよび
図7Dは、再設定可能な股関節プロテーゼのさらなる実施形態および当該股関節プロテーゼの各要素を示す図である。
【
図8】
図8は、大腿骨ステムに固定された大腿骨カップ部と寛骨臼カップ部に取り外し可能に固定された寛骨臼球部とを利用する、発明の実施形態に係る植え込まれた再設定可能な股関節プロテーゼおよび各要素の断面図を示す。
【
図9】
図9A、
図9B、
図9Cおよび
図9Dは、大腿骨ステムおよび固定可能な大腿骨カップ部要素の第1の実施形態を様々な視点および要素構成で示す図である。
【
図17】
図A1ないし
図A9は、異なる寸法および構成の大腿骨球部要素の様々な実施形態を示す立面図で図であり、
図A4は大腿骨球部要素の実施形態の斜視図を提供する図である。
【
図18】
図B1ないし
図B8は、異なる寸法および構成の寛骨臼カップ部要素の実施形態を幾つかの視点で示す図であり、
図B4は、寛骨臼カップ部要素の断面図を提供する。図示された各寛骨臼カップ部要素は、寛骨臼カップ部ライナーとともに用いられるように構成されている。
【
図19】
図C1ないし
図C4は、3つの貫通孔を備えた寛骨臼カップ部を幾つかの視点で示す図であり、
図C4はその断面図である。
【
図20】
図C5ないし
図C8は、12個の貫通孔を備えた寛骨臼カップ部のさらなる実施形態を幾つかの視点で示す図であり、
図C8はその断面図である。
【
図21】
図C9ないし
図C12は、6個の貫通孔を備えた寛骨臼カップ部のさらなる実施形態を幾つかの視点で示す図であり、
図C12はその断面図である。
【
図25】
図D1ないし
図D3は、寛骨臼カップ部ライナーの実施形態を幾つかの視点で示す図であり、
図D4はその断面図を提供する。
【
図26】
図D5、
図D6および
図D7は、様々な寛骨臼カップ部ライナーを断面図で示す図で、各々が異なる寸法とされた寛骨臼カップ部ライナー凹部43を有する。
【
図32】
図E3および
図E4は、表面襞部を有する大腿骨ステム要素の実施形態を2つの視点で示す。
【
図33】
図F1ないし
図F7は、再設定可能な股関節プロテーゼの第1の実施形態の各要素および寛骨臼球部要素を含む当該股関節プロテーゼの各要素を様々な視点で示す図である。
【
図34】
図F8ないし
図F14および
図F16は、再設定可能な股関節プロテーゼのさらなる実施形態の各要素および大腿骨カップ部要素を含む当該股関節プロテーゼの各要素を様々な視点で示す図である。
【
図35】
図F17ないし
図F24および
図F30は、再設定可能な股関節プロテーゼの別の実施形態の各要素および大腿骨球部要素30Aを有する当該股関節プロテーゼの各要素を様々な視点で示す図である。
【
図36】
図F25ないし
図F29および
図F31は、再設定可能な股関節プロテーゼの別の実施形態の各要素および襞付き側壁部を有する大腿骨カップ部要素および大腿骨ステム要素を含む当該股関節プロテーゼの各要素を様々な視点で示す図である。
【
図37】
図F32ないし
図F38、および
図F47は、再設定可能な股関節プロテーゼの別の実施形態の各要素および平滑な側壁部を有する大腿骨球部要素および大腿骨ステム要素を含む当該股関節プロテーゼの各要素を様々な視点で示す図である。
【
図38】
図F42ないし
図F46および
図F48は、再設定可能な股関節プロテーゼの別の実施形態の各要素および平滑な側壁部を有する大腿骨カップ部要素および大腿骨ステム10要素を含む当該股関節プロテーゼの各要素を様々な視点で示す図である。
【
図39】
図F49ないし
図F56および
図F62は、再設定可能な股関節プロテーゼの別の実施形態の各要素および平滑な側壁部を有する大腿骨カップ部要素40Aおよび大腿骨ステム10要素を有する当該股関節プロテーゼの各要素を様々な視点で示す図である。
【
図40】
図F57ないし
図F61および
図F63は、再設定可能な股関節プロテーゼの別の実施形態の各要素および大腿骨カップ部要素および大腿骨ステム要素を有する当該股関節プロテーゼの各要素を様々な視点で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
大腿骨インプラントは、大腿骨の一部に挿入するのに適した任意の要素、物品または装置でありうる大腿骨ステムを備え、その構造の一部として、着脱式大腿骨球部または着脱式大腿骨カップ部を備えていてもよく、代替的には、必要または要望に応じて交換可能でありうる大腿骨球部または大腿骨カップ部を収容するように構成されていてもよい。
【0014】
後者の構成を有する大腿骨大腿骨インプラントは、大腿骨球部および大腿骨カップ部のいずれかを含めるための大腿骨インプラントの再設定(詳細は後述する)を可能にし、好ましい実施形態は、植え込まれた大腿骨ステムを大腿骨から取り外す必要なしに、植え込まれた大腿骨インプラントが第1の(すなわち、初期)構成から第2の(すなわち、代替的)構成に再設定されることを許容する。
【0015】
例えば、第1の構成においては、大腿骨インプラントは、植え込み可能な大腿骨ステム部と、大腿骨球部(または異なる構成を有する3次元の幾何学的表面)と、寛骨臼球部の一部と接触する空洞またはソケットを含む、骨盤内に植え込み可能な相補的形状の寛骨臼カップ部とを備えていてもよい。
【0016】
空洞またはソケットは、寛骨臼カップ部に固定されたまたは寛骨臼カップ部の一部をなす寛骨臼カップ部ライナーにしばしば存在するものであり、この寛骨臼カップ部ライナーは、通常はポリマーまたはセラミック材料で製造される。
【0017】
空洞またはソケットは、大腿骨球部(または異なる構成を有する3次元の幾何学的表面)と相補的な表面を備えている。別の代替的なまたは第2の構成においては、大腿骨インプラントは植え込み可能な大腿骨ステム部と、空洞またはソケットを備えた大腿骨カップ部と、骨盤に植え込み可能な相補的な寛骨臼カップ部とを備えていてもよく、この相補的な寛骨臼カップ部は、その内部に少なくとも部分的に存在する球部(または異なる構成を有する3次元の幾何学的表面)を備えている。
【0018】
ここでもまた、空洞またはソケットは、寛骨臼カップ部に固定されたまたは寛骨臼カップ部の一部をなす寛骨臼カップ部ライナーにしばしば存在するものであり、この空洞またはソケットは、通常はポリマーまたはセラミック材料で製造される。
【0019】
空洞またはソケットは、寛骨臼カップ部の一部をなす球部(または異なる構成を有する3次元の幾何学的表面)と相補的な表面を備えている。この好ましい実施形態によれば、大腿骨インプラントの構成は、大腿骨から大腿骨ステムを取り外す必要なしに説明した第1の構成から説明した第2の構成にまたは逆方向で変更することができる。
【0020】
これは、再設定可能な股関節プロテーゼを提供し、股関節プロテーゼの形で係る変更をもたらすために必要とされる手術の範囲を縮小するので、特に有利である。
【0021】
係る再設定可能な股関節プロテーゼにより、外科医にとっての股関節置換療法中の選択肢の幅が大きく広がり、大腿骨ステムの植え込みに先立って、ただしより有利には大腿骨ステムの植え込みに続いて、患者のニーズに最も適した大腿骨インプラントの適切な構成を外科医が決定できるようになり、というのも、外科医はこれにより大腿骨インプラントの最適な構成を選択しうるのであり、この最適な構成は、例えば本明細書に説明された第1の構成または第2の構成でありうる。
【0022】
このように、それによって第1の構成または第2の構成に係る植え込み可能な再設定可能な股プロテーゼが提供されまたは外科医に利用可能となるところの必要な構成部品または要素が、構成部品または要素の1つまたは複数のキットの形態等で提供されおよび/または手術室(または処置室)内の外科医に利用可能になると、外科医は、構成部品または要素を用いて、適した植え込み可能な股関節プロテーゼを組み立てることにより患者のニーズを満たす最適な構成を提供しうる。
【0023】
外科医は、かくして、従来技術において広く行われているような単一構成のプロテーゼに係る植え込み可能な股プロテーゼを用いることに制限されない、なぜなら、本発明の再設定可能な股関節プロテーゼは、その各要素が大腿骨から大腿骨ステムを取り外す必要なしに切り替えられることを可能にするとともに、大腿骨の様々な要素の再設定可能性によって、再設定可能な股関節プロテーゼの第1の構成または第2の構成を患者に提供することが可能となるからである。
【0024】
加えて、係る再設定可能な股関節プロテーゼは、股関節プロテーゼが以前に植え込まれた当初のまたは以前の手術の後、以前に植え込まれた大腿骨インプラントの取り外しを必要とすることなく、外科医が股関節プロテーゼの再設定を実施し、例えば、それを第1の構成から第2の構成にまたは第2の構成から第1の構成に「変換」することを許容する、なぜなら、大腿骨インプラントの植え込まれた部分を大腿骨から取り外すことを必要とせずに、大腿骨球部または大腿骨カップ部が、大腿骨を越えて延びている大腿骨ステムの一部分から取り外すことができ患者の身体の中で交換されることができるからである。
【0025】
これは、したがって、本明細書で説明するように、特に第1の構成から第2の構成へ、またはその逆方向で、以前に埋め込まれた股プロテーゼを再設定する、いわゆる「再置換術」において有用でありうる。本明細書で提供される再設定可能な股関節プロテーゼは、典型的には、植え込まれた大腿骨インプラントまたは大腿骨ステムの取り外しおよび従来技術において再置換ステムと呼ばれることもある、さらなる大腿骨インプラントとの交換にともなう外科手術による外傷を低減させる。これにより、患者に必要な術後の回復期間も短縮される。
【0026】
本明細書に記載された、着脱式要素または部品を含む再設定可能な大腿骨インプラントの提供は、患者内の再設定可能な股関節プロテーゼの生体内再設定を可能にするとともに、さらなる大腿骨インプラントの使用または以前に植え込まれた大腿骨ステムの取り外しを必要とすることなく再置換術を実施することを可能にする。
【0027】
したがって、本発明の態様には、本明細書に記載の再設定可能な股関節プロテーゼを人体に植え込み、これに続いて要望または必要に応じて再設定可能な股関節プロテーゼを再設定する方法も含まれている。より具体的には、この方法は、植え込まれた大腿骨インプラントの構成をここに説明された第1の構成と第2の構成との間で変更するステップを含む。さらに、以前に埋め込まれた大腿骨ステムを取り外すことなく、再設定を行いうる。
【0028】
発明のさらなる態様には、本明細書に記載のとおり構成された植え込み可能なプロテーゼを提供する際に用いられる構成部品のキットが含まれる。このキットは、大腿骨球部の一部を収容するように再設定されうる、すなわち、大腿骨ステム部に装着されまたは代替的に大腿骨カップ部の一部を収容するように再設定されうる、すなわち、設置された大腿骨球部が取り外されて大腿骨カップ部と交換され、またはこの逆に交換されるように大腿骨ステム部に装着されうる、植え込み可能な大腿骨インプラントを必ず含む。
【0029】
好ましくは、大腿骨インプラントの大腿骨球部部品と大腿骨カップ部部品とは、人体に対して外部的な大腿骨ステム部品と交換されてもよいが、大腿骨内にすでに存在している以前に植え込まれた大腿骨ステムの抜き取りを必要とすることなく人体の内部で交換可能であることが好ましい。
【0030】
任意選択的に而して非常に有利には、このキットはまた、少なくとも1つの大腿骨球部と、少なくとも1つの大腿骨カップ部とを備えているが、複数の大腿骨球部および/または大腿骨カップ部がまたキットの一部として提供されることが好ましい。
【0031】
このようにして、外科医は、手術室内で、大腿骨ステムと、設置された大腿骨球部と、あるいは代替的には設置された大腿骨カップ部とを備えた、適した大腿骨インプラントを組み立てうる。
【0032】
追加的には、このキットは、異なる構成を有する1つまたは複数の寛骨臼カップ部、植え込まれた、または植え込み可能な大腿骨ステムと相補的に構成されうる構成部品、任意の工具、ガイド、補助装置または再設定可能な股関節プロテーゼの1つまたは複数の部品の植え込み、取り外し、または変更に役立つ装置など、完全な再設定可能な股関節プロテーゼを組み立てるのに必要な構成部品をさらに備えていてもよい。
【0033】
係るキットは、必ずしも単一パッケージで、または物品の単一の集合として提供される必要はないが、それでもなお、本明細書に記載の股関節プロテーゼに関する外科手術の間に集合的に利用されうるのであれば複数の独立のパッケージに分割することができる。
【0034】
本明細書に記載の股関節プロテーゼの構成部品または要素のすべてが必ず用いられる必要はなく、実際にもこのようなことは予期されることではない、なぜなら、典型的には、異なる構成および/または寸法を有する複数の大腿骨ステム、大腿骨球部、大腿骨カップ部および寛骨臼カップ部が処置室内で提供されうる(および提供されることが有利である)かつ/または代替的には構成部品または要素の利用可能性を向上させてそれにより彼らが、植え込み可能な股関節プロテーゼ、特に再設定可能な股関節プロテーゼの最適な構成を選択して患者の必要を最善に満たしうることを確実にするために、外科医に利用可能とされるからである。
【0035】
植え込み可能な股関節プロテーゼ、キットおよび使用の方法に役立つ様々な構成部品および要素の説明は以下のとおりである。以下の説明は本質的に非限定的なものであり、添付の図面の1つまたは複数において特に説明されていないまたは具体的に示されていない他の構成も、本発明の1つまたは複数の態様にしたがって用いることができることが理解されるべきである。開示された図面および説明された構成のいくつかは、本発明の特定の態様に係る現時点において好ましい実施形態を表す。
【0036】
再設定可能な股関節プロテーゼは、大腿骨インプラントを備えており、この大腿骨インプラントは、(複数の)大腿骨ステムを備えており、この大腿骨ステムは、典型的には、大腿骨の内部に挿入されその内部に保持されるように構成された遠位端と、植え込み可能な股プロテーゼのさらなる部分、典型的には寛骨臼カップ部またはその一部、すなわち、寛骨臼カップ部ライナー、との物理的なインタフェースを提供するように構成された近位端とを備えている。近位端は、取り外し可能かつ再挿入可能な大腿骨球部または取り外し可能かつ再挿入可能な大腿骨カップ部を備えていてもよい。大腿骨ステムは、一体型であってもよく、または、組み立てられて大腿骨ステムを形成する分離可能な複数要素をモジュール式に有していてもよい。大腿骨球部または大腿骨カップ部は、大腿骨ステムの一部品に、好ましくは遠位端またはその一部においてまたはこれに近接して、取り外し可能に固定されてもよい。大腿骨球部または大腿骨カップ部は、キット内に供給される際にはすでに固定されていてもよく、または、別のやり方で使用のために提供されてもよく、さもなければ大腿骨ステムは、1つまたは複数の大腿骨球部および/または1つまたは複数の大腿骨カップ部とは別個に、すなわち、1つまたは複数の係る構成部品を収容したキット内に供給されてもよい。
【0037】
大腿骨球部は、好ましくは、湾曲した球部分(または非球形の幾何学的表面を含む他の3次元の幾何学的表面)を備えており、この球部分は、好ましくは、約5ないし60mm、好ましくは約10mmないし50mm、の半径を有する実質的に半球形の部分と、そこから外側に向かって延びているシャンクを備えている。これは、約10ないし120mm、好ましくは約20mmないし100mmの直径に対応し、直径は約42mmを超えないのが最も好ましい。しかしながら、他の長さも可能であり有用であることが予見される。これには、当該技術分野で知られている「呼び長さ」が含まれる場合がある。
【0038】
特定の実施形態においては、大腿骨球部は、大腿骨球部の湾曲した球部分(または他の3次元の幾何学的表面)の基部または終端にシャンクを含み、このシャンクは基部から外側に向かって延びている。シャンクは異なる長さおよび寸法を有していてもよい。典型的には、シャンクは、シャンクの遠位端とベースとの間で測定した場合、約-5mmないし約+25mmの長さを有し、約-2mmないし約+12mmの長さを有するのが好ましい。
【0039】
シャンクは任意の幾何学的形状でよいが、係る幾何学的形状が大腿骨ステムまたは大腿骨(または他の)インプラントの他の部分内での配置を容易にすることから断面が円筒形または実質的に円筒形であることが有利である。より有利には、シャンクは、その遠位端でより小さい断面または直径を有し、その後、その近位および湾曲した球部分の基部または終端により近くで、厳密な公差の適合が達成されるように、大腿骨ステムの円筒形のボアまたはその他の凹部に対して相補的な表面および/または形状を有する。大腿骨ステムのシャンクおよび凹部の両方にテーパー加工がされていると有利である。
【0040】
一般に、大腿骨球部はこの半径に応じた寸法とされ、約10mmないし60mm、特に約22mmないし40mmの従来の寸法が好ましい。本発明によるキットにおいては、典型的には異なるサイズを有し、好ましくは前述のようにステムにテーパー加工しうる、異なる長さのシャンクを有する複数の大腿骨球部が提供されてもよい。
【0041】
大腿骨ステムの凹部に挿入可能な大腿骨球部または大腿骨カップ部のシャンクは、凹部の中心軸に平行な一貫した断面を有する円筒形のボアであってもよいが、その入口の直径がその遠位端の直径よりも大きい、すなわち、テーパー加工されている、凹部またはボアであることが好ましい。テーパーの構成は、大腿骨インプラントのテーパー加工されたボアまたは凹部の寸法に対して相補的であるものであればよい。シャンクの中心軸に対するテーパーの角度は変化してもよいが、約0.5ないし5度の弧、好ましくは約1ないし3度の弧の角度を有することが有利である。係るテーパーの従来の構成は好ましく、モールステーパー、ジャコブステーパー、ブラウン&シャープテーパー、ジャーノテーパーの1つまたは複数を含むが、モールステーパーについては、特に、約1ないし3度の弧度の角度をもつモールステーパーであり、好ましくは以下の角度または以下の角度の2つ以上、すなわち、0.01°、0.1°、0.2°、0.3°、0.4°、0.5°、0.6°、0.7°、0.8°、0.9°、1°、1.1°、1.2°、1.3°、1.4°、1.5°、1.6°、1.7°、1.8°、1.9°、2°、2.1°、2.2°、2.3°、2.4°、2.5°、2.6°、2.7°、2.8°、2.9°、3°、3.1°、3.2°、3.3°、3.4°、3.5°、3.6°、3.7°、3.8°、3.9°、4°、4.1°、4.2°、4.3°、4.4°、4.5°、4.6°、4.7°、4.8°、4.9°および5°の範囲内のテーパーを有するモールステーパーが好ましい。
【0042】
図面では、特に明記しないかぎり、様々な図をとおして同様の要素は同様の引用符号および/または文字で示されている。
【0043】
その球部分から延びるシャンクを有する取り外し可能に固定可能な大腿骨球部を含む大腿骨ステムを備えた大腿骨インプラントの例を
図1A、1B、
図2A、
図2B、
図3Aおよび
図3Bに示す。
図1C、
図2Cおよび
図3Cは、大腿骨球部および対応する寛骨臼カップ部の細部の断面図を示すものである。
【0044】
再設定可能な股関節プロテーゼAが
図1Aおよびその断面図である
図1Bに示されており、同図は大腿骨インプラント1を側面図で示しており、ともに遠位端12から近位端または近位領域14まで外側に向かって先細りになる大腿骨ステム10を含む。近位領域14内に存在するのは、テーパー加工された凹部50であり、この凹部50内には、相補的なテーパー加工されたシャンク60が取り外し可能に設置され、このシャンク60は各図に示すように大腿骨球部30の基部32から外側に向かって延びている。
【0045】
図示しないが、大腿骨球部要素30A、ここでは大腿骨球部30とシャンク60とを備えている大腿骨球部要素30Aが、ここでは図示されていないが以下の図において説明される大腿骨カップ部要素によって置換されることができることが理解されるべきであり、この大腿骨カップ部要素もまた、同様の相補的なテーパー加工されたシャンク60を備えている。
【0046】
図1Cは、
図1Aの各部のより一層詳細な図を示しており、その内部には、大腿骨球部30の半球表面の一部と物理的に界面接触された空洞を備えた寛骨臼カップ部ライナー72を含む寛骨臼カップ部70を示している。半球状の寛骨臼カップ部ライナー72は寛骨臼カップ部のエッジ75内にあり、したがって完全にその内部に収容されている。
【0047】
また、寛骨臼カップ部70を貫通する穿孔74も示されている。1つまたは複数の係る穿孔は、骨ねじなどの締結具の挿通に理想的に適しており、その後、寛骨臼カップ部ライナー72は、寛骨臼カップ部70内に嵌合されることができる。接触部位、より精確には、大腿骨球部30と寛骨臼カップ部70の寛骨臼カップ部ライナー72との間の界面接触領域は、これらの要素の間の界面を規定し、これらは、耐荷重表面であって、互いに対してスライド可能および/または回転可能(またはそうでない場合には移動可能)とされている。
【0048】
図2Aおよび
図2Bに示す再設定可能な股関節プロテーゼAの実施形態は、
図1Aおよび
図1Bに提示した図と実質的に同様であるが、大腿骨球部30の構成および寸法、
図2Cの図から最もよくみることができるそのシャンク60、および、大腿骨カップ部70における寛骨臼カップ部ライナー72の寸法および構成において相違している。特に、本実施形態においては、寛骨臼カップ部ライナー72の一部分73が寛骨臼カップ部70のエッジ75を越えて延びていることがわかる。実施形態は、大腿骨球部30の中心が寛骨臼カップ部70の中心から、さきの
図1Aないし
図1Cにおけるよりも、より大きな距離でずれていることを示している。
【0049】
図3Aおよび
図3Bに示す再設定可能な股関節プロテーゼAの実施形態は
図1Aおよび
図1Bに提示した図と実質的に同様であるが、大腿骨球部30の構成および寸法、
図3Cの図から最もよくみることができるそのシャンク60、および、大腿骨カップ部70における寛骨臼カップ部ライナー72の寸法および構成において相違している。特に、本実施形態においては、寛骨臼カップ部ライナー72の一部分73が寛骨臼カップ部70のエッジ75を越えて延びていることがわかる。
【0050】
図1A、
図1B、
図1C、
図2A、
図2B、
図2C、
図3A、
図3Bおよび
図3Cの記載は、再設定可能な股関節プロテーゼAの好ましい一実施形態を示すものであって、ここでは、対応する寸法を有するテーパー加工されたシャンク(ここではシャンク60)を有するさらなる要素とのインタフェースをなすように構成された単一の収容空洞(またはテーパー加工された凹部50)が、大腿骨ステム10内に存在しており、そして、大腿骨インプラント1が係る接合部を1つのみ有し、この点において、従来技術において知られているいくつかのプロテーゼ・インプラントと相違している。
【0051】
前述の従来技術に係るプロテーゼの特徴として必要となるような追加の介在部または要素は、大腿骨内に植え込まれたプロテーゼの部品とその寛骨臼カップ部またはライナーと接触する部品との間にはまったく存在しない。好ましくはまた、単一の収容空洞の中心軸方向形状およびテーパー加工されたシャンクの中心軸方向形状は相補的であり、各々の軸方向形状が中心軸回りを回転する際に均一であるように、垂直方向断面において、円を規定している。これは、円錐台形の区画であってもよい。
【0052】
これは、楕円体などの不規則な形状や、中央の軸方向の形状とともに不規則な垂直断面を有する他の形状と区別されるものである。単一の接合部を有し、しかもそこで雌部品、すなわち単一の収容空洞(またはテーパー加工された凹部50)が、植え込まれた大腿骨ステム10内に存在することによって、人体の胴体および上肢によって加えられる負荷が下側に向かうことが確実になり、膝および足へ向かう方向での内在的な圧縮を提供し、これが、その遠位端61よりもその近位基部62において、より広い寸法を有する相補的な形状とされたテーパー加工されたシャンク(ここではシャンク60)を確実なものとする。
【0053】
図4Aおよびその断面図である
図4Bは、大腿骨インプラント1を側面図で示しており、両図において、大腿骨インプラント1は、遠位端12からテーパー加工された凹部50を含む近位および/または近位領域14まで若干のテーパーをともなって外側に向かって延びる大腿骨ステム10を含み、凹部50は、その内部に、取り外し可能に設置可能な大腿骨球部30を収容および保持するように構成され、大腿骨球部30は、その基部32から外側に向かって延びる相補的なテーパー加工されたシャンク60を有する。
【0054】
図4Aには示されていないが、理解されるべきは、大腿骨球部30が、同様の相補的なテーパー加工されたシャンク60を有する大腿骨カップ部によって置換されることができるということである。
【0055】
図5Aおよび5Cならびに
図5Bに提示された
図5Aの断面図は、大腿骨インプラント1を側面図で示しており、いずれも、遠位端12から、その基部32から外側に向かって延びる相補的なテーパー加工されたシャンク60を有する取り外し可能に設置可能な大腿骨球部30を内部で収容および保持するように構成されたテーパー加工された凹部50を収容する近位および/または近位領域14まで若干のテーパーをともなって外側に向かって延びる大腿骨ステム10を含む。
【0056】
図5Aには示されていないが、理解されるべきは、大腿骨球部30が、同様の相補的なテーパー加工されたシャンク60を有する大腿骨カップ部によって置換されることができるということである。
図5Cは、大腿骨ステム10から分離された大腿骨球部30を補助的に示しており、これらの要素が互いに分離可能であることを示している。
図5Aおよび
図5Bは、再設定可能な股関節プロテーゼの実施形態とこれを構成するための各要素とを示している。大腿骨インプラント1およびその構成部品のさらなる非限定的な実施例が、
図E1ないし
図E4または
図F1ないし
図F63に示されているものを含め、本特許出願の一部をなす図面において示されている。
【0057】
側面図で示す
図6A、
図6Bおよび
図6Cは、異なる寸法および構成を有する大腿骨球部30を有する大腿骨球部要素30Aの3つの実施形態を示している。特筆すべき点として、大腿骨球部30のそれぞれの部品は実質的に半球形であり、シャンク60に依存する基部32を含むことがわかる。図示されたシャンク法線60は、長さが異なり、様々な平均直径を有し、かつ、モールステーパーである。シャンク60の構成は、凹部50内の共通の保持部への挿入に適した相補的な形状を有する部品を必ず含むことが理解されるべきである。大腿骨球部のさらなる非限定的な実施例が、本特許出願の一部をなすさらなる図面に示されている。これらは、
図A1ないし
図A9の各図を含む。
図A1ないし
図A9の各図は、異なる形状および構成の大腿骨球部要素の様々な実施形態を立面図で示しており、
図A4は大腿骨球部要素の実施形態の斜視図を提供する。
【0058】
図7A、
図7B、
図7Cおよび
図7Dは、大腿骨ステム10要素と固定可能な大腿骨球部要素30Aとを備えた大腿骨インプラント1の代替的な構成を示す。
図7Bは、
図7Aの断面であって、それ自体として大腿骨球部30を有する大腿骨球部要素30Aと、テーパー加工された凹部50を内部に備えた基部32とを備えた構成部品から分離された大腿骨ステム10を示しており、これは、大腿骨ステム10の一部として形成されたテーパー加工されたシャンク50’上に取り付けられているとともにその近位領域14から外側に向かって延びるように適切に形状を付与されている。
【0059】
テーパー加工された凹部50のテーパーの度合いおよび/または大腿骨ステムの近位端14から延びるテーパー加工されたシャンク50’のテーパーの度合いは、前述したとおりであってもよく、すなわち、有利には、約0.5ないし5度の弧の角度、好ましくは約1ないし3度の角度を有する。従来の係るテーパーの従来の構成は好ましく、モールステーパー、ジャコブステーパー、ブラウン&シャープテーパー、ジャーノテーパーの1つまたは複数を含むが、モールステーパーについては、特に、約1ないし3度の弧度の角度をもつモールステーパーである。
【0060】
図7Cおよび
図7Dは、大腿骨インプラント1のこの代替的な構成の構成部品を組み立てられた形で示しており、ここでは、
図7Dは
図7Cの断面図であり、
図7Cおよび7Dは再設定可能な股関節プロテーゼAの実施形態およびこれを構成するための各要素を示している。
図7Aおよび
図7Cにおいてさらにみてとることができるのは、大腿骨内に挿入された際に大腿骨ステムの各部品との係合を支援しうる、大腿骨ステム10の外部の表面外形である。大腿骨ステム10の外部上の係る表面外形は、例えば場合により「再置換術」というような、大腿骨インサートを交換することが必要な再置換術において利用されることが有利であり、係る再置換術においては、従来技術の大腿骨インプラントまたは従来技術の大腿骨ステムが本発明との関連で本明細書において説明されるような大腿骨インプラントまたは大腿骨ステムに交換されることが想定される。
【0061】
表面外形(surface profiling)「P」は、植え込み時に大腿骨内での保持の可能性を有利に改善する可能性のある任意の非平滑表面または非平滑表面の特徴、または要素であってもよく、非限定的な例示的態様としては、これは非平滑表面、粗表面またはテクスチャ表面であってもよく、あるいは、図面において示されているような一連の襞部またはリブPのような1つまたは複数の顕著な要素を含んでいてもよい。勿論、図示された襞部Pに代えて構成や形状が用いられてもよい。
【0062】
また、
図7Aないし
図7Dにおいて示されているのは、例えば、大腿骨もしくは他の身体構造の一部、すなわち骨または他の植え込み要素にも固定されうる手術用ワイヤ、縫合糸、またはそれを通過する他の物品または要素などの保持要素(図示せず)の一部を覆うために用いられうる1つまたは複数の貫通孔「h」である。
【0063】
【0064】
大腿骨カップ部要素40Aの非限定的な例は、
図8の断面図に一般的に示されており、同図は、植え込まれた本発明の股関節プロテーゼの細部を断面図で示したものである。大腿骨Fに植え込まれているのは、図中では部分的に視認できるようになっているが、シャフト部10と骨盤(pelvis)Pとを備えた大腿骨インプラント1である。大腿骨インプラント1の部分断面図が
図8に示されており、大腿骨インプラント1の一部のみが示されているが、これは、大腿骨カップ部40から延びるシャンク60を内部に収容して保持するように構成されたテーパー加工された凹部50を収容する近位および/または近位領域14を有する大腿骨ステム10を含み、シャンク60および大腿骨カップ部40は、大腿骨カップ部要素40Aの各部分である。
【0065】
この具体的な図には示されていないが、大腿骨カップ部40は、本明細書の他の箇所で説明される寛骨臼カップ部に関連して説明されるようなライニングを備えていてもよい。大腿骨カップ部40は、球部凹部76、ここでは、寛骨臼カップ部70の凹状内部79内に延びている突起またはステム77に取り外し可能に嵌合される、(好ましい)テーパー加工された凹部、を介して取り付けられている寛骨臼球部78との界面接触を有する。
【0066】
寛骨臼球部78は、これをステム77から引き抜くことによって寛骨臼カップ部70から取り外されてもよいことが理解されるべきである。寛骨臼カップ部70は孔部74を貫通して延びこれに係留されている従来の骨ねじ90を介して骨盤Pに取り付けられている。しかしながら、寛骨臼カップ部70および寛骨臼球部78は、必要であれば、発明の寛骨臼カップ部70を
図8に示されたのと同一の構成を有するものと交換すること必要であるまたは望ましい場合には従来の外科手術的技術にしたがって、あるいは、代替的な構成にしたがって、取り外されてもよいことが理解されるべきである。
【0067】
【0068】
大腿骨インプラント1が
図9Aの側面図に示されており、
図9Aは、大腿骨ステム10の一部に、より具体的にはその近位端14において取り外し可能に取り付けられている大腿骨カップ部要素40Aを示している。
図9Bは、
図9Aの大腿骨インプラント1の側部断面を示しており、大腿骨インプラント40と、大腿骨ステム10の近位端14内で対応するように構成された凹部50内に挿入されたそのシャンク60とのさらなる細部を示している。
【0069】
図中でさらに視認できるのは、大腿骨カップ部40内に挿入されかつその内部にライナー凹部43を有する大腿骨カップ部ライナー42である。ライナー42は、セラミック、金属、金属合金などの任意の材料で形成されてもよいが、対応するように構成された寛骨臼球部(図面には示せず)内で円滑な回転および/または並進を確保するために潤滑を提供するポリオレフィンなどの合成ポリマー(またはコポリマー)(好ましくは、高架橋ポリエチレンなど、高度に架橋されたポリオレフィン)で形成されるのが好ましい。
【0070】
大腿骨カップ部ライナー42の材料は前述した寛骨臼カップ部ライナー72を形成するのに用いられるものと同じタイプのものであってもよく、場合によっては、前述するとともに本特許出願に含まれるさらなる図面において示されている寛骨臼カップ部ライナー72の1つまたは複数の構成または特徴を有していてもよいことが理解されるべきである。これはまた、必要な変更を適宜行ったうえで適用され、
図9Cは、本質的に
図9Aと同一の図を示しているが、大腿骨ステム10の近位端から分離された寛骨臼カップ部40を示している。
図9Dは、
図9Aの大腿骨インプラント1の前側斜視図を示しており、寛骨臼カップ部40の内部およびライナー42のより一層の細部を示す図を提供する。
【0071】
ここでは、大腿骨ステム10の構成が
図4Aに係る大腿骨ステム10に密接に対応しており、これは、
図5A、
図5Bおよび
図5Cに示されている大腿骨球部30が
図9A、9Bに示す大腿骨カップ部40と交換可能であるという原理を示していることが看取される。係る再設定は、例えば、患者の体内への植え込みの前に、患者の体内において生体内でまたは患者の体外で生じうる。また、係る再設定は、大腿骨ステム10が大腿骨から取り外されることを必要としない。
【0072】
さらなる大腿骨カップ部要素40Aが
図10A、
図10B、
図10Cおよび
図10Dに示されており、同図は、発明に係る大腿骨インプラント1のさらなる実施形態を示している。
図10Aは側面図を示し、
図10Bは
図10Aの断面を示している。これらの図においては、大腿骨カップ部40は大腿骨ステム10から分離されている。
図10Cは
図10Aの大腿骨インプラントの側面図を示しているが、ここでは、大腿骨カップ部40は、大腿骨ステム10上に取り付けられている。
【0073】
【0074】
図10Aの大腿骨カップ部40は、テーパー加工された凹部50を備えており、これは、大腿骨ステム10の一部として形成されその近位領域14から外側に向かって延びているテーパー加工されたシャンク50’上に取り付けられるように適切な形状とされている。
【0075】
すべてのタイプの寛骨臼カップ部は、本明細書に示されているか説明されているものやいずれの図面にも必ずしも示されていないものを含む、本発明による大腿骨インプラントの特定の実施形態とともに利用されうるが、大腿骨球部または大腿骨カップ部とともに動作可能な任意の寛骨臼カップ部が用いられてもよく、本発明の範囲内にあるものと見なされることが明示的に理解されるべきである。大腿骨インプラントが大腿骨カップ部を含む場合に有用な寛骨臼カップ部には、寛骨臼球部を含む寛骨臼カップ部が含まれる。その好ましい実施形態を示す
図8を参照されたい。
【0076】
大腿骨インプラントが大腿骨球部を含む場合に有用な寛骨臼カップ部には、従来技術で従来知られているものが含まれる。本質的に、これらは、骨盤に埋め込まれうる寛骨臼カップ部であってもよく、適切な形状とされた大腿骨球部を受け入れることができるものである。係るタイプの寛骨臼カップ部70の非限定的な実施例は、
図1C、
図2Cおよび
図3Cに示すものが含まれる。寛骨臼カップ部7のさらなる実施例には、
図11A、
図11B、
図11C、
図11D、
図12A、
図12B、
図13Aおよび
図13Bに示すものが含まれる。
【0077】
図11A、
図11B、
図11Cおよび
図11Dは、それぞれ、寛骨臼カップ部70の実施形態の内部の平面図、内部の側面斜視図、立面図および断面図を示している。図面においては、寛骨臼カップ部70は、湾曲したまたは少なくとも部分的に半球状の構成を有する凹状内部79と、外部表面71とを有する。凹状内部79は、寛骨臼カップ部70が骨盤内に設置された後で寛骨臼カップ部ライナー72(図面には示さず)を受容するように構成されている。
【0078】
ライナー72は、圧入、スナップ嵌め、またはスナップリングまたは寛骨臼カップ部のエッジ75付近の要素を含むがこれらに限定されない任意の適切な手段によって保持されてもよく、ライナー72の一部と寛骨臼カップ部70との間に介在する接着剤によって保持されてもよく、あるいは、技術分野において知られているその他の手段もしくは方法によって保持されてもよい。
図11Aに示すような寛骨臼カップ部70それ自体は、骨セメント、圧入または技術分野において知られているその他の手段もしくは方法を用いることによって、骨盤に取り付けられこれに保持されてもよい。
【0079】
図12Aおよび
図12Bは寛骨臼カップ部70のさらなる実施形態の平面図および側面斜視図を示しており、これは
図11Aに係る寛骨臼カップ部と実質的に同様のものであるが、複数の貫通穿孔74を備えるためのものである。これらの貫通穿孔74の1つまたは複数が、骨ねじまたは貫通穿孔74の1つまたは複数の内部におよび/またはこれを貫通して挿入されることにより骨盤に取り付けおよび保持されるその他の締結具の利用を容易にする。
【0080】
図13Aおよび
図13Bは寛骨臼カップ部70のさらなる実施形態の平面図および側面斜視図を示しており、これは
図11Aに係る寛骨臼カップ部と実質的に同様のものであるが、
図12Aおよび
図12Bに示すものよりも多くの複数の貫通穿孔74を備えるためのものであり、而して他のいかなる有意な態様においても相違するものではない。ここでもまた、これらの貫通穿孔74のうちの1つまたは複数が、骨ねじまたは貫通穿孔74の1つまたは複数の内部におよび/またはこれを貫通して挿入されることにより骨盤に取り付けおよび保持されるその他の締結具の利用を容易にする。
【0081】
寛骨臼カップ部に関しては、
図11A、
図11B、
図11Cおよび
図11Dの実施形態が貫通孔のない寛骨臼カップ部を示している一方、
図12Aおよび
図12Bの実施形態は、3つの貫通孔74をもつ寛骨臼カップ部を示しており、
図13Aおよび
図13Bは12個の貫通孔74をもつ寛骨臼カップ部を示しており、寛骨臼カップ部における貫通孔74の数および具体的な配置および位置決めは大きく異なりうることが理解されるべきである。寛骨臼カップ部のさらなる非限定的な実施例が、本特許出願の一部をなすさらなる図面に示されている。これは、
図B1ないし
図B8、
図C1ないし
図C24に示されたもの、さらには本出願の一部をなすさらなる図面に示されたものを含む。
【0082】
【0083】
図14Aは寛骨臼カップ部ライナー72の平面図を示し、
図14Bはその側面斜視図を示している。寛骨臼カップ部ライナー72は寛骨臼カップ部70の凹状内部79内に挿入可能かつ保持可能である。寛骨臼カップ部ライナー72はその内部に凹部43を備えており、この凹部43は大腿骨球部(図示せず)と界面接触するように構成された凹形状またはプロファイルを有している。
【0084】
図15Aは寛骨臼カップ部ライナー72のさらなる実施形態の平面図を示し、
図15Bはその側面斜視図を示している。寛骨臼カップ部ライナー72は寛骨臼カップ部70の凹状内部79内に挿入可能かつ保持可能である。ライナー72はその内部にライナー凹部43を備えており、このライナー凹部43は大腿骨球部(図示せず)と界面接触するように構成された凹形状またはプロファイルを有している。特に、本実施形態においては、寛骨臼カップ部ライナー72の一部分73が、寛骨臼カップ部ライナー72が寛骨臼カップ部70に設置されると、当該部分73が例えば
図2Cに示すように寛骨臼カップ部70のエッジ75を越えて延びるように、隆起していることがわかる。
【0085】
寛骨臼カップ部ライナー72の隆起部分73は、寛骨臼カップ部ライナー72の円弧状平面72’から角度「a」だけオフセットされた円弧状平坦隆起面73’をなす。好ましくは角度「a」は0.5ないし35の弧度であり、好ましくは約5ないし25の弧度である。したがって、円弧状平坦隆起面73’はライナー72の円弧状平面72’から上方に傾斜している。さらに好ましくは、ライナー72の隆起部73は、円弧状平面72’および円弧状平坦隆起面73’から測定して、寛骨臼カップ部ライナー72の円周の少なくとも約半分(点線「l」で示す)を取り囲んでいる。
【0086】
図16Aは寛骨臼カップ部ライナー72のさらなる実施形態の平面図を示し、
図16Bはその側面斜視図を示している。寛骨臼カップ部ライナー72は寛骨臼カップ部70の凹状内部79内に挿入可能かつ保持可能である。寛骨臼カップ部ライナー72はライナー凹部43をその内部に有しており、このライナー凹部43は大腿骨球部(図示せず)と界面接触するように構成された凹形状またはプロファイルを有している。特に、本実施形態においては、寛骨臼カップ部ライナー72の一部分73が、寛骨臼カップ部ライナー72が寛骨臼カップ部70に設置されると、当該部分73が例えば
図3Cに示すように寛骨臼カップ部70のエッジ75を越えて延びるように、隆起していることがわかる。
【0087】
図15Aおよび
図15Bの実施形態とやや類似しているがライナー72の円弧状平面72’から角度「a」だけオフセットされた円弧状平坦隆起面73’と、第2の円弧状平面73”との双方を備えた寛骨臼カップ部ライナー72の隆起部分73が存在しており、第2の円弧状平面73”は、平坦平面72’に対して平行であるがこれに対してオフセットされている。したがって、2つの面73’は寛骨臼カップ部ライナー72の円弧状平面72’から上方に傾斜しており、かつ、第2の円弧状平面73”まで伸びている。ここでもまた、好ましくは角度「a」は0.5ないし35の弧度であり、好ましくは約5ないし25の弧度である。ライナーのさらなる非限定的な実施例が、本特許出願の一部をなすさらなる図面に示されている。これは、
図D1ないし
図D24および本特許出願の一部をなすさらなる図面に示したものが含まれる。
【0088】
発明の特定の好ましい実施形態が
図F1ないし
図F7および
図F15に開示されており、各図は再設定可能な股関節プロテーゼの第1の実施形態および当該股関節プロテーゼの各要素の各要素を様々な図で示しており、
図F3、
図F5および
図F7はそれぞれ
図F2、
図F4および
図F6の断面図であり、
図F1、
図F6、
図F7および
図F15は、大腿骨球部要素30Aと襞付き側壁部を有する大腿骨ステム要素10とを備えた組み立てられた再設定可能な股関節プロテーゼAの様々な図を示している。
【0089】
【0090】
発明の特定のさらなる好ましい実施形態が
図F17ないし
図F24および
図F30に開示されており、各図は、再設定可能な股関節プロテーゼの別の実施形態および当該股関節プロテーゼの各要素を様々な図で示しており、
図F19および
図F22はそれぞれ
図F18および
図F21の断面図であり、
図F21、
図F22および
図F30は、大腿骨球部要素30Aと襞付き側壁部を有する大腿骨ステム要素10とを備えた組み立てられた再設定可能な股関節プロテーゼAを様々な図で示している。
【0091】
発明の別の好ましい実施形態が
図F25ないし
図F29および
図F31に開示されており、各図は、再設定可能な股関節プロテーゼの別の実施形態および当該股関節プロテーゼの各要素を様々な図で示しており、
図F27は
図F26の断面図であり、
図F26、
図F27および
図F31は、大腿骨カップ部要素40Aと襞付き側壁部を有する大腿骨ステム要素10とを備えた組み立てられた再設定可能な股関節プロテーゼAを示している。
【0092】
【0093】
【0094】
発明のさらなる好ましい実施形態が
図F49ないし
図F56および
図F62に開示されており、各図は、再設定可能な股関節プロテーゼの別の実施形態および当該股関節プロテーゼの各要素を様々な図で示しており、
図F51および
図F54はそれぞれ
図F50および
図F53の断面図であり、
図F52ないし
図F54および
図F62は、大腿骨球部要素30Aと平滑な側壁部を有する大腿骨ステム10要素とを備えた組み立てられた再設定可能な股関節プロテーゼAを様々な図で示している。
【0095】
発明の別の好ましい実施形態が
図F57ないし
図F61および
図F63に開示されており、各図は、再設定可能な股関節プロテーゼの別の実施形態および当該股関節プロテーゼの各要素を様々な図で示しており、
図F59は
図F59の断面図であり、
図F57、
図F58、
図F59および
図F63は、大腿骨カップ部要素40Aと平滑な側壁部を有する大腿骨ステム10要素とを備えた組み立てられた再設定可能な股関節プロテーゼAを示している。
【0096】
前述の要素はいずれも、それらの目的に効果的な構造の適切な材料から製造しうるものであって、また、好ましくは滅菌可能でありおよび/または周囲の組織および骨と生体適合性をもつ。大腿骨インプラントの各部品およびその一部を形成するのに有用な非限定的な例としては、金属および金属合金、特にチタンおよびチタン合金が含まれる。係る金属は典型的には高強度で耐久性がある。非金属部品に関しては、本発明のライナーに関して説明したものを含む合成ポリマーが特に好ましい。
【0097】
しかしながら、セラミックなどの他の材料が用いられてもよい。また、その各部品または各構成部品のいずれにもコーティング材料が提供されてもよい。これは膜を形成してもよい。複合層または薄層構造など多数のコーティングが提供されてもよい。コーティングを提供するための有用な材料の非限定的な例には、骨セメントの付着の改善および/または骨成長の誘発など所望の特性を付与するために適用される任意の材料が含まれる。
【0098】
コーティング材料の非限定的な例には、ヒドロキシ酢酸、リン酸カルシウムおよび生物活性ガラス、ヒドロキシアパタイトセラミックなどの一部のインプラントの表面に形成された生物学的ヒドロキシル炭酸アパタイトならびにその他の生物活性材料等が含まれる。また、その部品または構成部品のいずれにも、機械的または化学的エッチング、パターニング、粗面化などによって提供されるような非平滑表面特徴が提供されてもよく、これは例えば表面多孔性の改善、骨セメントの接着の改善または骨成長の誘発などの所望の特性を付与しうる。前述の各要素のいずれも少なくとも1つのコーティングと非平滑表面特徴を備えていてもよい。
【0099】
本明細書に開示されるように、大腿部ステムの配置に関して、大腿骨ステム挿入装置(または他の同様の動作のための装置または器具)が大腿骨インプラントを大腿骨の一部に挿入するために用いられてもよい。係る機能を提供する工具は、技術分野において知られており、実際に、本明細書に記載の大腿骨ステムにこの機能を提供するのに効果的な任意の工具であってもよい。使用中、大腿骨を用意して大腿骨ステムの一部を収容し、大腿骨ステムの上側部分を大腿骨に挿入した大腿骨ステムに係合させる。大腿骨内での大腿骨ステムの適切な配置を確認後、大腿骨ステム挿入装置を引き抜く。
【0100】
寛骨臼カップ部インパクタは、骨盤内に植え込まれるべき寛骨臼カップ部の配置(または取り外し)のために用いられてもよい。係る機能を提供する工具は技術分野において知られており、実際に、この機能を提供するうえで効果的な任意の工具であってもよい。寛骨臼カップ部インパクタを用いて寛骨臼カップ部を骨盤に挿入しおよび/または取り外してもよい。適切に配置すると、寛骨臼カップ部は所定の位置に保持され、寛骨臼カップ部インパクタは取り外されうる。その後、寛骨臼カップ部は、1つまたは複数のねじ、締結具、骨セメントまたは股関節置換療法において一般に用いられる他の材料または方法の利用を含むがこれに限定されない従来の手段によって、骨盤骨などの骨に固定されてもよい。他の構成およびタイプの寛骨臼カップ部インパクタや、等価的な機能を提供する装置が、本発明のもう1つの態様にしたがって用いられてもよいことが想定されている。
【0101】
前述のように、発明は、本明細書に記載された構成された植え込み可能なプロテーゼを提供する際に用いられる構成部品のキットを含む。係るキットは、再設定可能な股関節プロテーゼの1つまたは複数の要素を有する容器、カートリッジまたはトレーを含む。完全な再設定可能な股関節プロテーゼを提供するためのすべての必要な要素を含むキットが考えられる。また、完全な再設定可能な股関節プロテーゼを提供するためのすべての必要な要素には足りない要素を含むキットも考えられる。
【0102】
一態様においては、キットには、1つまたは複数の、好ましくは複数の大腿骨球部とともに、1つまたは複数の大腿骨ステムが含まれる。異なる構成、すなわち、
図1Aないし
図1C、および/または
図2Aないし
図2C、および/または
図3Aないし
図3C、および/または
図5Aないし
図5C、および/または
図6Aないし
図6C、
図7Aないし
図7D、および/または
図A1ないし
図A9、および/または
図F1ないし
図F7、および/または
図F17ないし
図F24、および/または
図F32ないし
図F38、および/または
図F49ないし
図F55および/または
図F64ないし
図F72に示す異なる寸法、を有する複数の(a)大腿骨球部の提供は、外科的処置の間に外科医に利用可能とされうる大腿骨球部のアレイを提供するので、適切な寸法とされた大腿骨球部が患者への挿入のために手元に用意される。係るキットは、トレーまたはその他の容器の形態をとってもよく、これが複数の大腿骨球部を規則正しい配置で、すなわち、寸法が大きくなる順序で提供する。
【0103】
一態様においては、キットは、1つまたは複数の大腿骨カップ部、好ましくは複数の大腿骨カップ部とともに、1つまたは複数の大腿骨ステムを含む。異なる構成、すなわち、
図9Aないし
図9D、および/または
図F8ないし
図F16、および/または
図F25ないし
図F31、および/または
図F40ないし
図F48、および/または
図F57ないし
図F63に示す異なる構成を有する複数の(b)大腿骨カップ部の提供は、外科的処置の間に外科医に利用可能とされうる大腿骨カップ部のアレイを提供するので、適切な寸法とされた大腿骨カップ部が患者への挿入のために手元に用意される。係るキットは、複数の大腿骨カップ部を規則正しい配置で、すなわち、寸法が大きくなる順序で提供するトレーまたはその他の容器の形態をとってもよい。
【0104】
さらなる態様においては、大腿骨ステム構成要素を除外しているが異なる構成を有する複数の(c)寛骨臼球部を含むキットが提供される。異なる寸法を有する複数の(c)寛骨臼球部(すなわち、
図8の寛骨臼球部78)の提供は、外科的処置の間に外科医に利用可能とされうる寛骨臼球部のアレイを提供するので、適切な寸法とされた寛骨臼球部が患者への挿入のために手元に用意される。係るキットは、複数の寛骨臼球部を規則正しい配置で、すなわち、寸法が大きくなる順序で提供するトレーまたはその他の容器の形態をとってもよい。
【0105】
さらなる態様においては、大腿骨ステム構成要素を除外しているが異なる構成を有する複数の(a)大腿骨球部を含むキットが提供される。係るキットは、複数の大腿骨球部を規則正しい配置で、すなわち、寸法が大きくなる順序で提供するトレーまたはその他の容器の形態をとってもよい。
【0106】
さらなる態様においては、キットは大腿骨ステム構成部品を除外しているが、異なる構成を有する複数の(b)大腿骨カップ部を含むキットが提供される。係るキットは、複数の大腿骨カップ部を規則正しい配置で、すなわち、寸法が大きくなる順序で提供するトレーまたはその他の容器の形態をとってもよい。
【0107】
さらなる態様においては、キットは大腿骨ステム構成部品を除外しているが異なる構成を有する複数の(c)寛骨臼球部を含むキットが提供される。係るキットは、複数の寛骨臼球部を規則正しい配置で、すなわち、寸法が大きくなる順序で提供するトレーまたはその他の容器の形態をとってもよい。
【0108】
さらなる態様においては、キットは、1つまたは複数のトレーを含み、各トレーが、再設定可能な股関節プロテーゼの少なくとも1つの要素を含み、各トレーは、開披される前はその内容物が無菌であることを確保するとともにその後1つまたは複数の要素が取り除かれ、かつ任意選択的にトレーに返却されうるように、汚染源に対して密閉されている。
【0109】
さらに別の態様においては、キットは、1つまたは複数の工具、ガイドまたは補助装置または再設定可能な股関節プロテーゼの1つまたは複数の部品の植え込み、取り外し、または変更に役立つ装置を含む。
【0110】
さらなる態様においては、トレーは、1つまたは複数の工具、ガイドまたは補助装置または再設定可能な股関節プロテーゼの1つまたは複数の部品の植え込み、取り外し、または変更に役立つ装置を1つまたは複数の寛骨臼カップ部と同時に含んでいてもよい。
【0111】
さらなる態様においては、トレーは、1つまたは複数の工具、ガイドまたは補助装置または再設定可能な股関節プロテーゼの1つまたは複数の部品の植え込み、取り外し、または変更に役立つ装置を1つまたは複数の大腿骨ステムと同時に含んでいてもよい。
【0112】
さらなる態様においては、トレーは、1つまたは複数の工具、ガイドまたは補助装置または再設定可能な股関節プロテーゼの1つまたは複数の部品の植え込み、取り外し、または変更に役立つ装置を1つまたは複数の(a)大腿骨球部と同時に含んでいてもよい。
【0113】
さらなる態様においては、トレーは、1つまたは複数の工具、ガイドまたは補助装置または再設定可能な股関節プロテーゼの1つまたは複数の部品の植え込み、取り外し、または変更に役立つ装置を1つまたは複数の(b)大腿骨カップ部と同時に含んでいてもよい。
【0114】
さらなる態様においては、トレーは、1つまたは複数の工具、ガイドまたは補助装置または再設定可能な股関節プロテーゼの1つまたは複数の部品の植え込み、取り外し、または変更に役立つ装置を1つまたは複数の(c)寛骨臼球部と同時に含んでいてもよい。
【0115】
1つまたは複数のトレーは、密閉可能な、任意選択的には再密閉可能な、容器などの容器であってもよい。
【0116】
キットは、異なる内容物を有する異なるトレー(および/または容器)のある前述したような1つまたは複数のトレーおよび/または容器を含んでいてもよい。トレーおよび/または容器は使い捨てタイプのものであってもよく、これらは、その内容物の一部または全部を取り外すために開披されるのに続いて処分されることを意図したものである。代替的には、トレーおよび/または容器は、トレーおよび/または容器および/またはキットから紛失してしまった要素の再補充や後の使用のための回収のためにトレーおよび残りの内容物が供給者、ベンダまたは再パッケージ業者に返却されるような再利用可能なタイプのものであってもよい。
【0117】
発明はまた、患者、好ましくは人間の患者に対して再設定可能な股関節プロテーゼを提供する外科的方法を含む。
【0118】
第1の方法は、外科的処置の間に外科医または他の医療専門家に対して本明細書に記載の再設定可能な股関節プロテーゼの構成要素を提供するステップを含み、構成要素は、本明細書に記載の再設定可能な股関節プロテーゼの1つまたは複数の部品または要素のいずれであってもよいが、完全な再設定可能な股関節プロテーゼのすべての部品が外科医に利用可能である必要はない。係る方法が用いられてもよく、ここでは既存の患者に以前に植え込まれた再設定可能な股関節プロテーゼが、その部品の交換または取り外しによって再設定され、すなわち、第1の構成から第2の構成へまたは逆方向に変換され、あるいは、代替的には、既存の再設定可能な股関節プロテーゼの1つまたは複数の要素が、第1の構成から第2の構成へまたは逆方向に完全に変換することなく、交換される。
【0119】
好ましい方法においては、方法は、完全な再設定可能な股関節プロテーゼが外科的処置の間に患者に植え込み可能であるように外科医が外科的処置の間に完全な再設定可能な股関節プロテーゼを組み立てうるように、外科的処置の間に外科医に対して本明細書に記載の再設定可能な股関節プロテーゼの充分な構成要素を提供するステップを含む。構成要素は、本明細書に記載の再設定可能な股関節プロテーゼの1つまたは複数の部品または要素のいずれであってもよい。
【0120】
本明細書においては、開示された好ましい実施形態について、植え込み可能な股関節プロテーゼとの関連において説明および開示するとともに大腿骨、大腿骨ステム、骨盤および寛骨臼カップ部について言及されているが、本明細書に記載のプロテーゼおよび要素はまた肩プロテーゼにおける使用を見出しうること、および、上腕骨に植え込み可能な上腕骨インプラントを備えていてもよく、また、関節窩に植え込み可能な関節窩カップを備えていてもよいことが理解されるべきである。肩関節プロテーゼを提供するのに有用な係る実施形態においては、上腕骨インプラントは、そこから延びる球部(または同様に構成された3次元の幾何学的表面)または代替的には、空洞またはソケットを有する上腕骨カップのいずれかを備えて構成されてもよく、他方、関節窩カップは、相補的な空洞またはソケットまたは少なくとも部分的に関節窩カップ内にある球部(または同様に構成された3次元の幾何学的表面)のいずれかを有して構成されていてもよい。いずれの構成においても、上腕骨インプラントは、そこから延びる上腕骨カップまたは球部(または同様に構成された3次元の幾何学的表面)を備えて再設定されていてもよい。