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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】カメラ装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 11/00 20210101AFI20240409BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20240409BHJP
   H04N 23/75 20230101ALI20240409BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240409BHJP
   G08G 1/04 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G03B11/00
H04N23/55
H04N23/75
G03B15/00 V
G08G1/04 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020007061
(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公開番号】P2021113928
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】320008672
【氏名又は名称】i-PRO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 英明
(72)【発明者】
【氏名】和田 穣二
(72)【発明者】
【氏名】佐野 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】尾又 章斗
(72)【発明者】
【氏名】小林 悠馬
(72)【発明者】
【氏名】富坂 直昭
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/162983(WO,A1)
【文献】特開2017-067865(JP,A)
【文献】特開2009-130709(JP,A)
【文献】特開2019-023860(JP,A)
【文献】特開2009-055107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 11/00
G03B 15/00
G08G 1/04
H04N 23/55
H04N 23/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーフィルムが貼られた車両からの、前記カーフィルムでの複屈折に基づいて生じた複数の異なる波長帯域の光を有する入射光のS波成分を制限する偏光フィルタと、
前記偏光フィルタを透過した前記入射光のP波成分が入射するレンズと、
前記レンズにより結像された前記入射光のP波成分のうち可視領域の前記入射光のP波成分を制限する可視光カットフィルタと、
前記可視光カットフィルタを透過した近赤外領域の前記入射光のP波成分に基づいて、被写体としての前記車両を撮像する撮像素子と、
前記レンズの面側に配置されて可視領域の光をカットするバンドパスフィルタと、を備え、
昼モードにおいて、前記偏光フィルタが前記レンズの前面側かつ光軸上に配置され、
夜モードにおいて、前記バンドパスフィルタが前記レンズの前面側かつ光軸上に配置され、前記バンドパスフィルタを透過した近赤外領域の前記入射光が前記レンズに入射し、
前記偏光フィルタと前記バンドパスフィルタとの配置は、前記昼モードと前記夜モードとで互いに切り替えられる、
カメラ装置。
【請求項2】
カーフィルムが貼られた車両からの、前記カーフィルムでの複屈折に基づいて生じた複数の異なる波長帯域の光を有する入射光のうち可視領域の前記入射光を制限する第3のフィルタと、
前記第3のフィルタを透過した近赤外領域の前記入射光が入射するレンズと、
前記レンズにより結像された近赤外領域の前記入射光のS波成分を制限する偏光フィルタと、
前記偏光フィルタを透過した近赤外領域の前記入射光のP波成分に基づいて、被写体としての前記車両を撮像する撮像素子と、
昼モードを検知するセンサと、
前記昼モードが検知された場合に、前記偏光フィルタが前記撮像素子の前面側に配置するように前記偏光フィルタの駆動を制御するプロセッサと、を備える、
カメラ装置。
【請求項3】
前記複数の異なる波長帯域の光は、前記車両のフロントガラスで反射した可視領域および近赤外領域の波長帯域を有する第1の光と、前記カーフィルムで複屈折したことで生じた可視領域のいずれかの色成分を示す単一波長を有する第2の光と、を少なくとも含む、
請求項1または2に記載のカメラ装置。
【請求項4】
前記第3のフィルタは、可視領域の光をカットする可視光カットフィルタあるいはバンドパスフィルタである、
請求項2に記載のカメラ装置。
【請求項5】
昼モードを検知するセンサと、
前記昼モードが検知された場合に、前記偏光フィルタが前記レンズの前面側に配置するように前記偏光フィルタの駆動を制御するプロセッサと、をさらに備える、
請求項1に記載のカメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像された画像の画質を調整するカメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、運転中の乗員の顔が位置することが予定される予定領域に向けて近赤外光を照射し、予定領域を含む撮像領域を撮像し、撮像された画像のうち乗員の顔が撮像された特定撮像範囲を特定し、特定撮像範囲の画像上の輝度が一定となるように画像処理を実行するモニタリング装置が開示されている。モニタリング装置は、特定撮像範囲内の画像を解析して乗員の顔の状態を認識することにより乗員を監視する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-174016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のモニタリング装置は、運転手の運転中のよそ見あるいは脇見の有無を監視するために車内に取り付けられるので、予定領域には運転手などの乗員の顔が必然的に撮像される。つまり、撮像された画像には乗員の顔が映り込むことが前提となっており、乗員の顔が映り込まない場合の技術的な対策は考慮されていない。
【0005】
ここで、特許文献1の構成を車外(例えば街頭などのポール)に取り付けられた監視用途のカメラに適用した場合、車両のフロントガラスに市販のカーフィルムが貼られていると、昼間の太陽光などの自然光がカーフィルムで複屈折して反射したことでカメラの撮像画像のフロントガラス部分の略全体に虹が映り込むことがあった。特に太陽光による日差しが強い国あるいは地域では、車両のフロントガラスにカーフィルムが貼られることは少なくない。この場合、撮像画像に車両内の運転手などの乗員の顔が映らないため、例えば乗員の顔の画像認識が可能となる程度の画質が得られず、車両内の乗員の監視精度の向上を図ることができなかった。
【0006】
本開示は、上述した従来の事情に鑑みて案出され、車両のフロントガラスを主たる被写体とした撮像画像のフロントガラス部分に虹が映り込むことの発生を効果的に抑制し、乗員の顔の画質の向上を支援するカメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、カーフィルムが貼られた車両からの、前記カーフィルムでの複屈折に基づいて生じた複数の異なる波長帯域の光を有する入射光のS波成分を制限する偏光フィルタと、前記偏光フィルタを透過した前記入射光のP波成分が入射するレンズと、前記レンズにより結像された前記入射光のP波成分のうち可視領域の前記入射光のP波成分を制限する可視光カットフィルタと、前記可視光カットフィルタを透過した近赤外領域の前記入射光のP波成分に基づいて、被写体としての前記車両を撮像する撮像素子と、前記レンズの面側に配置されて可視領域の光をカットするバンドパスフィルタと、を備え、昼モードにおいて、前記偏光フィルタが前記レンズの前面側かつ光軸上に配置され、夜モードにおいて、前記バンドパスフィルタが前記レンズの前面側かつ光軸上に配置され、前記バンドパスフィルタを透過した近赤外領域の前記入射光が前記レンズに入射し、前記偏光フィルタと前記バンドパスフィルタとの配置は、前記昼モードと前記夜モードとで互いに切り替えられる、カメラ装置を提供する。
【0008】
また、本開示は、カーフィルムが貼られた車両からの、前記カーフィルムでの複屈折に基づいて生じた複数の異なる波長帯域の光を有する入射光のうち可視領域の前記入射光を制限する第3のフィルタと、前記第3のフィルタを透過した近赤外領域の前記入射光が入射するレンズと、前記レンズにより結像された近赤外領域の前記入射光のうち近赤外領域の前記入射光の波成分を制限する偏光フィルタと、前記偏光フィルタを透過した近赤外領域の前記入射光の波成分に基づいて、被写体としての前記車両を撮像する撮像素子と、昼モードを検知するセンサと、前記昼モードが検知された場合に、前記偏光フィルタが前記撮像素子の前面側に配置するように前記偏光フィルタの駆動を制御するプロセッサと、を備える、カメラ装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、車両のフロントガラスを主たる被写体とした撮像画像のフロントガラス部分に虹が映り込むことの発生を効果的に抑制でき、乗員の顔の画質の向上を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る車両撮影カメラにおけるレンズと光学フィルタとの配置例を示す図
図2】カーフィルムが貼られていない車両のフロントガラスで反射した光が車両撮影カメラに入射する場合の撮像素子に受光される光の説明図
図3】太陽光などの自然光がカーフィルムで複屈折する原理例を示す図
図4】カーフィルムが貼られている車両のフロントガラスで反射した光が車両撮影カメラに入射する場合の撮像素子に受光される光の説明図
図5】実施の形態1に係る車両撮影カメラのハードウェア構成例を詳細に示すブロック図
図6】偏光フィルタの特性例を示す図
図7】可視光カットフィルタの特性例を示す図
図8】撮像画像データのフロントガラス部分の略全体に虹が映り込む例を示す図
図9】実施の形態1に係る車両撮影カメラにより撮像された撮像画像データの一例を示す図
図10】前面フィルタ切替モジュールによる光学フィルタの切り替え例を示す平面図
図11】前面フィルタ切替モジュールによる光学フィルタの切り替え例を示す正面図
図12】実施の形態1に係る車両撮影カメラにおけるレンズと光学フィルタとの他の配置例を示す図
図13】実施の形態1に係る車両撮影カメラの撮像に関する動作手順例を示すフローチャート
図14】実施の形態1に係る車両撮影カメラのデータ送信に関する動作手順例を示すフローチャート
図15】実施の形態1に係る車両撮影カメラの照明制御に関する動作手順例を示すフローチャート
図16】昼モードおよび夜モードのそれぞれにおける各種の動作制御例を示すテーブル
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を適宜参照しながら、本開示に係るカメラ装置および画質調整方法を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0012】
以下の説明において、本開示に係るカメラ装置として、車両を被写体として撮像する車両撮影カメラを例示し、一般道路および高速道路の両方を総括して「道路」と称する場合がある。
【0013】
図1は、実施の形態1に係る車両撮影カメラ10におけるレンズLNSと光学フィルタとの配置例を示す図である。車両撮影カメラ10は、例えば一般道路の脇に設置されたポール(図示略)に取り付け、あるいは高速道路に設置されたガントリー(図示略)から吊り下げ等して固定的に設置される。車両撮影カメラ10は、所定幅の画角内の撮像エリア(例えば道路)に進入する車両VCL0,VCL1を撮像する(図3あるいは図4参照)。車両撮影カメラ10は、ネットワーク(図示略)を介して、撮像により得られた画像(以下、「撮像画像」と称する)を受信機(図示略)に送信する。ネットワークは、例えばWi-Fi(登録商標)等の無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)およびWiGig(Wireless Gigabit)のいずれかに準じた無線ネットワークであるが、これらに限定されなくてよい。なお、ネットワークは、USB(Univesal Serial Bus)ケーブル、あるいは有線LANなどの有線ネットワークでもよい。以下の説明において、撮像画像には、撮像画像データだけでなく、その撮像画像を撮像した車両撮影カメラのカメラID(Identification)と撮像日時の情報とが含まれる。
【0014】
車両撮影カメラ10は、車両VCL0,VCL1のナンバープレートの撮像に適する画像パラメータ(後述参照)を有する第1撮像条件と、車両VCL0,VCL1の乗員の顔の撮像に適する画像パラメータ(後述参照)を有する第2撮像条件とを時分割に切り替えながら撮像する。車両撮影カメラ10は、車両の車内の乗員(例えば運転手、あるいは、運転手および同乗者)の顔の撮像に適した第1撮像条件(例えば既定の基準値より長い露光時間が設定)で車両を撮像するとともに、車両のナンバープレートの撮像に適した第2撮像条件(例えば上述した既定の基準値より短い露光時間が設定)で車両を撮像する。
【0015】
例えば、車両撮影カメラ10は、フレームレートを30fpsとした場合に、奇数番目(例えば第1番目、第3番目、…、第29番目)のフレームでは第1撮像条件下で撮像した撮像画像(つまり、乗員の顔が鮮明に映る画像)を生成できる。また、車両撮影カメラ10は、フレームレートを30fpsとした場合に、偶数番目(例えば第2番目、第4番目、…、第30番目)のフレームでは第2撮像条件下で撮像した撮像画像(つまり、ナンバープレートが鮮明に映る画像)を生成できる。このように、車両撮影カメラ10は、同一の被写体(例えば車両)について、車内の乗員の顔が鮮明に映る画像とナンバープレートが鮮明に映る画像とを略同時に撮像して生成できる。
【0016】
図1に示すように、車両撮影カメラ10は、偏光フィルタPLF1をレンズLNSの前面側に配置可能な前面フィルタ切替モジュール21と、レンズLNSが収容されたレンズブロック17と、可視光カットフィルタVCF1を撮像素子14の前面側に配置可能なレンズ内フィルタ切替モジュール19と、撮像素子14と、短波長照明16とを含む構成である。なお、以下の説明において、レンズ内フィルタ切替モジュール19には可視光カットフィルタVCF1の代わりに、可視領域の波長帯域を有する光をカットするバンドパスフィルタが配置されてもよい。個々の構成要素の詳細については、図5を参照して後述する。図1の配置例では、レンズLNSを基準にすると、偏光フィルタPLF1はレンズLNSより前面側に配置され、可視光カットフィルタVCF1はレンズLNSより後面側に配置される。なお、偏光フィルタPLF1はレンズLNSより後面側に配置され、可視光カットフィルタVCF1はレンズLNSより前面側に配置されてもよい(図12参照)。
【0017】
車両などの被写体により反射された光(言い換えると、入射光ICL1)は、車両撮影カメラ10の偏光フィルタPLF1(第1のフィルタあるいは第4のフィルタの一例)に入射する。光学フィルタの一例としての偏光フィルタPLF1では、入射光ICL1の横波成分(いわゆるS波成分)の入射が制限され、入射光ICL1の縦波成分(いわゆるP波成分)が透過する。偏光フィルタPLF1を透過した入射光ICL1のP波成分は、レンズLNSで集光され、可視光カットフィルタVCF1(第2のフィルタあるいは第3のフィルタの一例)を経て撮像素子14の撮像面に受光可能となるように結像される。光学フィルタの一例としての可視光カットフィルタVCF1では、偏光フィルタPLF1を透過した光(つまり入射光ICL1のP波成分)のうち可視領域の波長帯域を有する成分がカットされ、残りの近赤外領域の波長帯域を有する成分が透過する。可視光カットフィルタVCF1を透過した光(入射光ICL1の近赤外領域の波長帯域を有するP波成分)は、撮像素子14に受光されて撮像される。これにより、車両撮影カメラ10は、被写体の撮像画像データを生成できる。なお、車両撮影カメラ10は、電源が供給されている間、昼夜に拘わらずに常時撮像可能であり、特に夜間においては短波長照明16から近赤外光IR1を照射することで被写体の撮像画像データを生成できる。
【0018】
図2は、カーフィルムが貼られていない車両VCL0のフロントガラスFRG1で反射した光が車両撮影カメラ10に入射する場合の撮像素子14に受光される光の説明図である。昼間の時間帯には、雲CLD1から太陽光などの自然光が降り注ぐ。このような自然光がカーフィルムの貼られていないフロントガラスFRG1で反射すると、その反射光が入射光ICL0として車両撮影カメラ10に入射する。入射光ICL0は、縦波成分のP波と横波成分のS波とからなる。車両撮影カメラ10は、入射光ICL0に基づいて、被写体としての車両VCL0を撮像する。ただし、反射率が大きなS波がカットされなければ、撮像画像データには雲CLD1が映り込んでしまい撮像画像データの画質が劣化する。言い換えると、車両VCL0内の運転手などの乗員の顔の撮像ができない。
【0019】
そこで、実施の形態1に係る車両撮影カメラ10は、反射率が大きなS波をカットすることが可能な偏光フィルタPLF1が撮像素子14より前面側(例えばレンズLNSより前面側)に配置されている。
【0020】
これにより、車両撮影カメラ10は、入射光ICL0のS波成分を偏光フィルタPLF1でカットでき、入射光ICL0のP波成分に基づいて車両VCL0の撮像画像データを生成できる。従って、車両撮影カメラ10は、雲CLD1の映り込みを低減した高画質な撮像画像データ(例えば、車両VCL0内の運転手などの乗員の顔が映り込む撮像画像データ)を生成できる。
【0021】
図3は、太陽光などの自然光がカーフィルムCFLM1で複屈折する原理例を示す図である。図3の説明において、カーフィルムCFLM1に入射する自然光を「入射光」と称する。入射光は、例えば可視領域の波長帯域(例えば400nm~700nm)を有する成分と、近赤外領域の波長帯域(例えば700nm~1000nm)を有する成分とを有する。以下、光が可視領域および近赤外領域のそれぞれの波長帯域を有することを「光(IR,R,G,B)」と表記し、光が近赤外領域の波長帯域を有することを「光(IR)」と表記し、赤色領域の波長帯域を有することを「光(R)」と表記し、青色領域の波長帯域を有することを「光(B)」と表記する。
【0022】
入射光(IR,R,G,B)はフロントガラスFRG1の表面で反射し、その反射した一部の入射光である表面反射光ICL11(IR,R,G,B)は車両撮影カメラ10に入射する。また、フロントガラスFRG1で屈折した入射光(IR,R,G,B)はカーフィルムCFLM1の第1層CFLM1L1の裏面で反射し(複屈折)、その複屈折により生じた裏面反射光ICL12(R)は単色(例えば赤色)の可視領域の波長帯域を有する光となって車両撮影カメラ10に入射する。同様に、カーフィルムCFLM1の第1層CFLM1L1で屈折した入射光(IR,R,G,B)はカーフィルムCFLM1の第2層CFLM1L2の裏面で反射し(複屈折)、その複屈折により生じた裏面反射光ICL13(B)は単色(例えば青色)の可視領域の波長帯域を有する光となって車両撮影カメラ10に入射する。なお、図3では説明を簡単にするために図示を簡略化しているが、カーフィルムCFLM1は多層のフィルムにより構成されているので、各層の裏面反射により単色(例えば赤色、橙色、黄色、緑色、青色、藍色、紫色)の可視領域の波長帯域を有する光がそれぞれ車両撮影カメラ10に入射すると、偏光フィルタPLF1でS波成分だけをカットしただけでは、車両VCL1を被写体とした撮像画像データのフロントガラス部分RNG1に虹RNBW1が映ってしまう(図8参照)。
【0023】
図8は、撮像画像データIMG1のフロントガラス部分RNG1の略全体に虹RNBW1が映り込む例を示す図である。図8に示すように、フロントガラス部分RNG1の略全体に虹RNBW1が映り込むと、車両VCL1内の運転手などの乗員の顔の撮像ができず、その顔の判別ができない。例えば事件あるいは事故を起こした人物(犯人)が車両VCL1に乗車して逃走している場合、警官が車両撮影カメラ10の撮像画像データIMG1を解析しても犯人の顔の撮像ができないために、犯人を取り逃がしてしまい警察による捜査効率が劣化することになる。
【0024】
図4は、カーフィルムCFLM1が貼られている車両VCL1のフロントガラスFRG1で反射した光が車両撮影カメラ10に入射する場合の撮像素子14に受光される光の説明図である。なお、図4の複雑化を避けるために、車両撮影カメラ10への入射光ICL1は、表面反射光ICL11および裏面反射光ICL12のみを図示しており、裏面反射光ICL13(図3参照)の図示を省略している。昼間の時間帯には、雲CLD1から太陽光などの自然光が降り注ぐ。このような自然光がカーフィルムCFLM1の貼られたフロントガラスFRG1で反射すると、表面反射光ICL11(IR,R,G,B)と裏面反射光ICL12(R)と裏面反射光ICL13(B)とが含まれる入射光ICL1が車両撮影カメラ10に入射する(図3参照)。入射光ICL1に含まれるそれぞれの光は、縦波成分のP波と横波成分のS波とからなる。車両撮影カメラ10は、入射光ICL1に基づいて、被写体としての車両VCL0を撮像する。ただし、上述したように、偏光フィルタPLF1でS波成分だけがカットされただけでは、撮像画像データには虹RNBW1が映り込んでしまい撮像画像データの画質が劣化する。言い換えると、車両VCL1内の運転手などの乗員の顔の撮像ができない。
【0025】
そこで、実施の形態1に係る車両撮影カメラ10は、反射率が大きなS波をカットすることが可能な偏光フィルタPLF1が撮像素子14より前面側(例えばレンズLNSより前面側)に配置され、さらに、可視領域の光(例えば裏面反射光ICL12のP波(R))をカットすることが可能な可視光カットフィルタVCF1が撮像素子14より前面側に配置されている。
【0026】
具体的には、入射光ICL1に含まれる表面反射光ICL11のP波(IR,R,G,B)およびS波(IR,R,G,B)と、入射光ICL1に含まれる裏面反射光ICL12のP波(R)およびS波(R)とが車両撮影カメラ10に入射する。偏光フィルタPLF1では、入射光ICL1の横波成分(いわゆるS波成分)の入射が制限され、入射光ICL1の縦波成分(いわゆるP波成分)が透過する。偏光フィルタPLF1を透過した入射光ICL1のP波成分(具体的には、表面反射光ICL11のP波(IR,R,G,B)および裏面反射光ICL12のP波(R))は、レンズLNSで集光されて撮像素子14の撮像面に受光可能となるように結像される。可視光カットフィルタVCF1では、偏光フィルタPLF1を透過した光(つまり、表面反射光ICL11のP波(IR,R,G,B)および裏面反射光ICL12のP波(R)))のうち可視領域の波長帯域を有する成分がカットされ、残りの近赤外領域の波長帯域を有する成分が透過する。可視光カットフィルタVCF1を透過した光(具体的には、表面反射光ICL11のP波(IR))は、撮像素子14に受光されて撮像される。
【0027】
これにより、車両撮影カメラ10は、入射光ICL1に含まれる虹RNBW1の原因となるカーフィルムCFLM1での表面反射光ICL11および裏面反射光ICL12のそれぞれの可視領域の波長帯域を有するS波成分をカットでき、フロントガラスFRG1越しに映るべき車両VCL1内の運転手などの乗員の顔が映り込む撮像画像データを生成できる(図9参照)。
【0028】
図9は、実施の形態1に係る車両撮影カメラ10により撮像された撮像画像データIMG2の一例を示す図である。図9に示すように、フロントガラス部分RNG2の略全体に虹RNBW1(図8参照)が映り込まないため、車両VCL1内の運転手などの乗員PER1,PER2のそれぞれの顔の撮像が可能となり、車両撮影カメラ10あるいは車両撮影カメラ10から撮像画像データIMG2を受信した受信機において乗員PER1,PER2のそれぞれの顔の判別が可能となる。例えば事件あるいは事故を起こした人物(犯人)が車両VCL1に乗車して逃走している場合、警官が車両撮影カメラ10の撮像画像データIMG2を解析しても犯人の顔の撮像ができるため、犯人を早期に特定できて警察による捜査効率を向上させることが可能となる。従って、車両撮影カメラ10は、被写体としての車両VCL1内の乗員の顔の画質の向上を支援できる。
【0029】
図5は、実施の形態1に係る車両撮影カメラ10のハードウェア構成例を詳細に示すブロック図である。車両撮影カメラ10は、プロセッサ11と、メモリ12と、通信部13と、撮像素子14と、照明ドライバ15と、短波長照明16と、レンズブロック17と、レンズドライバ18と、レンズ内フィルタ切替モジュール19と、レンズ内フィルタ切替ドライバ20と、前面フィルタ切替モジュール21と、前面フィルタ切替ドライバ22と、偏光フィルタ旋回ドライバ23と、照度センサS1とを含む構成である。
【0030】
プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)もしくはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成される。プロセッサ11は、車両撮影カメラ10の全体的な動作を司るコントローラとして機能し、車両撮影カメラ10の各部の動作を統括するための制御処理、車両撮影カメラ10の各部との間のデータの入出力処理、データの演算処理およびデータの記憶処理を行う。プロセッサ11は、メモリ12に記憶されたプログラムに従って動作する。プロセッサ11は、動作時にメモリ12を使用し、プロセッサ11が生成または取得したデータもしくは情報をメモリ12に一時的に保存する。
【0031】
メモリ12は、例えばRAM(Random Access Memory)とROM(Read Only Memory)とを用いて構成され、車両撮影カメラ10の動作の実行に必要なプログラム、更には、動作中に生成されたデータもしくは情報を一時的に保持する。RAMは、例えば、車両撮影カメラ10の動作時に使用されるワークメモリである。ROMは、例えば、車両撮影カメラ10を制御するためのプログラムを予め記憶して保持する。
【0032】
通信部13は、有線通信回線あるいは無線ネットワーク(例えばWi-Fi(登録商標)等の無線LAN、Bluetooth(登録商標)、あるいはWiGig)を介して、受信機(図示略)との間で通信可能である。通信部13は、例えば車両のナンバープレートの撮像に適した第1撮像条件下での撮像画像(「ナンバープレート画像」とも称する場合がある)をチャネル1として受信機に送信する。通信部13は、車両の車内の乗員の顔の撮像に適した第2撮像条件下での撮像画像(「車内顔画像」とも称する場合がある)をチャネル2として設定端末30に送信する。
【0033】
また、通信部13は、受信機から送信された外部入力信号を受信してプロセッサ11に出力する。この外部入力信号は、例えば受信機に表示された設置設定画面(図示略)を閲覧した作業員の操作により、車両撮影カメラ10のカメラパラメータの変更指令である。ここで、カメラパラメータは、例えば、電子シャッタによる露光時間、撮像素子14での撮像画像の電気信号の増幅用のゲイン、短波長照明16からの照明の強度を含んでよく、これらに限定されない。プロセッサ11は、この外部入力信号に応じて、対応するカメラパラメータの値を変更して設定する。この設定されたカメラパラメータは、その内容に応じて、撮像素子14あるいは短波長照明16に設定される。
【0034】
撮像素子14は、例えば2K、4K、8K等の高精細な画像を撮像可能なイメージセンサであり、例えばCCD(Charged Coupled Device)あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子で構成される。この固体撮像素子は、撮像面に結像した入射光(図2あるいは図4参照)の光電変換に基づいて、撮像画像の電気信号を生成する。また、撮像素子14は、上述した固体撮像素子と、固体撮像素子から出力される電気信号を増幅するためのアンプと、このアンプのゲイン(感度)を調整可能なゲイン調整部と、撮像時間(いわゆる露光時間)を制御可能な電子シャッタ(単に「シャッタ」とも称する場合がある)と、電子シャッタの露光時間を制御するための露光制御回路とが実装された集積回路基板により構成されてよい。なお、撮像素子14の出力は、プロセッサ11に入力されて所定の信号処理が実行された上で撮像画像のデータが生成されてもよいし、撮像素子14において上述した所定の信号処理を実行して撮像画像のデータを生成するための制御回路が備えられてもよい。
【0035】
照明ドライバ15は、複数の短波長照明16のそれぞれの点灯あるいは消灯を切り替えるためのスイッチング回路等を用いて構成される。照明ドライバ15は、プロセッサ11からの制御指示に従い、複数の短波長照明16のそれぞれを点灯または消灯に切り替える。また、照明ドライバ15は、短波長照明16の発光量(強度)を調節可能な可変増幅回路等を更に有してよい。この場合、照明ドライバ15は、プロセッサ11からの制御指示に従い、短波長照明16の発光量(強度)を調節することで調光できる。
【0036】
短波長照明16は、例えばLED(Light Emission Diode)を用いて構成され、複数個(例えば10~20個程度)が配置される。短波長照明16は、車両撮影カメラ10の動作モードが夜モード中に画角内の被写体(例えば車両)を撮像可能とするために、照明ドライバ15の制御に従った強度の照明光であるIR光(近赤外光)を照射する。なお、短波長照明16は、車両撮影カメラ10の動作モードが夜モードに限らず昼モード中でも、画角内の被写体(例えば車両)を撮像可能とするために、照明ドライバ15の制御に従った強度の照明光であるIR光(近赤外光)を照射する。これは、図4を参照して説明したように、虹RNBW1の映り込みを抑制するために撮像素子14にて受光されたIR光のみに基づいて撮像が行われるため、昼間でも短波長照明16からのIR光を照射することでその撮像に適するIR光の光量の不足を補うためである。つまり、近赤外域で虹RNBW1の映り込みを抑制することで、日中もIR光の照明を点灯させて、車内の明るさを補助することができる。
【0037】
レンズブロック17は、車両撮影カメラ10から被写体までの距離に応じてフォーカスする(つまり焦点を合わせる)ことで撮像素子14の撮像面に被写体の光学像を結像させるフォーカスレンズと、望遠から広角まで変倍可能なズームレンズとを含む。レンズブロック17内におけるフォーカスレンズの位置ならびにズームレンズの位置は、それぞれカメラパラメータの一例として含まれ、ともにメモリ12に保存される。なお、フォーカスレンズの位置およびズームレンズの位置は、車両撮影カメラ10の設置時に、受信機から送られた情報を用いてプロセッサ11により算出される。また、フォーカスレンズの位置は、車両撮影カメラ10の動作モード(具体的には、昼モードあるいは夜モード)に応じて、異なる値が使用される。
【0038】
レンズドライバ18は、レンズブロック17を構成するレンズ(例えば、フォーカスレンズ、ズームレンズ)の位置を調整するための電気回路を用いて構成される。レンズドライバ18は、プロセッサ11からの制御指示に従い、レンズブロック17内のフォーカスレンズの位置を調節する。レンズドライバ18は、プロセッサ11からの制御指示に従い、ズームレンズの位置を調節してズーム倍率を変更してもよい。
【0039】
レンズ内フィルタ切替モジュール19は、レンズブロック17より後方(つまり反対物側)かつ撮像素子14の前方(つまり対物側)に配置される。レンズ内フィルタ切替モジュール19は、可視光カットフィルタVCF1と素ガラス(図示略)とを切り替え可能に配置し、可視光カットフィルタVCF1と素ガラスとを交互に切り替えて光学系の光軸上に配置する。レンズ内フィルタ切替モジュール19は、例えば昼モード中には光軸上に可視光カットフィルタVCF1を配置する。これにより、昼モード中には、撮像素子14には、虹の映り込みを誘発する可視光が遮断された光が受光され、画質の良好な撮像画像が得られる。一方、レンズ内フィルタ切替モジュール19は、例えば夜モード中には光軸上に素ガラスを配置する。これにより、夜モード中には、撮像素子14には、IR帯域の成分が素ガラスを通過した入射光が受光され、その受光された入射光に基づいて一定の明るさを有する(言い換えると、暗くなり過ぎない)IR画像が得られる。
【0040】
レンズ内フィルタ切替ドライバ20は、レンズ内フィルタ切替モジュール19を駆動するための電気回路を用いて構成される。レンズ内フィルタ切替ドライバ20は、プロセッサ11からの制御指示に従い、レンズ内フィルタ切替モジュール19を駆動し、光軸上に可視光カットフィルタVCF1あるいは素ガラスのいずれかを配置する。
【0041】
前面フィルタ切替モジュール21は、光学フィルタの一例としてのバンドパスフィルタと光学フィルタの一例としての偏光フィルタPLF1とを交互に切り替えて(例えば、図11に示す左右方向にスライド移動させて)、バンドパスフィルタあるいは偏光フィルタPLF1を光軸上に配置する(図10参照)。前面フィルタ切替モジュール21がレンズブロック17より光軸上の被写体側(つまり対物側)に配置されることで、前面フィルタ切替モジュール21の機械的調整(例えばメンテナンス)が容易となる。
【0042】
前面フィルタ切替ドライバ22は、前面フィルタ切替モジュール用モータ(図示略)を駆動させるための電気回路を用いて構成される。前面フィルタ切替ドライバ22は、プロセッサ11からの制御指示に従い、前面フィルタ切替モジュール用モータ(図示略)を駆動させることで前面フィルタ切替モジュール21を移動させ、光軸上にバンドパスフィルタBPF1または偏光フィルタPLF1を配置する。
【0043】
偏光フィルタ旋回ドライバ23は、偏光フィルタ回転用モータ(図示略)を駆動するための電気回路を用いて構成される。偏光フィルタ旋回ドライバ23は、プロセッサ11からの制御指示に従い、偏光フィルタ回転用モータ(図示略)を駆動し、光軸上に配置された偏光フィルタPLF1の偏光軸を光軸を中心に所定角度(例えば後述する偏角θp)分だけ回転させる。偏光フィルタの偏光軸が傾くことで、偏光フィルタPLF1を透過する光の量は制限される。
【0044】
偏光フィルタPLF1は、機械的な回転範囲(つまりメカストローク)内で回転可能である。偏光フィルタ回転用モータ(図示略)の回転が偏光フィルタ回転用モータ(図示略)の起動後に増速すると、偏光フィルタ回転用モータ(図示略)の角速度が徐々に上昇し、一定の角速度に達する。この場合、偏光フィルタPLF1は、加速から一定速で回転な可能な範囲(つまりソフトストローク)に移行する。
【0045】
一方、偏光フィルタ回転用モータ(図示略)の回転が減速すると、偏光フィルタ回転用モータ(図示略)の角速度が徐々に下降して0(ゼロ)になる。偏光フィルタPLF1は、一定速から減速で回転する。偏光フィルタPLF1が一定速で回転可能な範囲(つまりソフトストローク)は、偏光フィルタ回転用モータ(図示略)のトルクによって任意に調節可能である。また、偏光フィルタ回転用原点センサ(図示略)によって検出される原点からの偏光フィルタPLF1の回転量によって、偏光フィルタPLF1の偏光軸の角度(偏角)が調節される。実施の形態1において、偏光フィルタPLF1の偏角は、カメラパラメータの一例として含まれ、メモリ12に保存される。なお、詳細は後述するが、偏光フィルタPLF1の偏角は、車両撮影カメラ10の設置時に、受信機から送られた情報を用いてプロセッサ11により算出される。
【0046】
センサの一例としての照度センサS1は、車両撮影カメラ10の周囲からの光の照度を検出する。照度センサS1には、例えばフォトダイオードあるいはフォトトランジスタが用いられる。照度センサS1は、車両撮影カメラ10の被写体としての車両が存在する方向の光の照度を検出可能となるように、車両撮影カメラ10の筐体の前面に取り付けられる。照度センサS1で検出される照度情報(具体的には、照度値のデータ)はプロセッサ11に入力される。プロセッサ11は、照度情報に基づいて、現時点の車両撮影カメラ10の動作モードが昼モードあるいは夜モードのいずれであるかを判定する。
【0047】
例えば、プロセッサ11は、照度情報が既定の閾値より高い(言い換えると、周囲が明るい)と判定すると、車両撮影カメラ10の動作モードを昼モードに移行するようにセットする。また、プロセッサ11は、照度情報が既定の閾値より低い(言い換えると、周囲が暗い)と判定すると、車両撮影カメラ10の動作モードを夜モードに移行するようにセットする。なお、現時点の照度情報が既定の閾値より高くならない場合あるいは低くならない場合には、現時点の動作モードが維持される。また、昼モードあるいは夜モードを示す情報(例えばフラグ)は、例えばメモリ12に一時的に保持される。
【0048】
図6は、偏光フィルタPLF1の特性例を示す図である。図6の横軸は波長(nm)を示し、図6の縦軸は透過率(%)を示す。波長は例えば可視領域~近赤外領域(2000nm程度)を示す。偏光フィルタPLF1の特性PR1によれば、偏光フィルタPLF1に入射する光のS波成分(例えばS波(IR,R,G,B))の透過率は、ほぼ0%である。一方で、偏光フィルタPLF1の特性PR2によれば、偏光フィルタPLF1に入射する光のP波成分(例えばP波(IR,R,G,B))の透過率は、ほぼ90%である。つまり、反射率の大きなS波の透過は波長帯域に拘わらず(つまり、可視領域でも近赤外領域でも)偏光フィルタPLF1により制限され、反射率が小さいP波は波長帯域に拘わらず(上述参照)偏光フィルタPLF1による制限を受けずに透過する。
【0049】
図7は、可視光カットフィルタVCF1の特性例を示す図である。図7の横軸は波長(nm)を示し、図7の縦軸は透過率(%)を示す。波長は例えば可視領域~近赤外領域(2000nm程度)を示す。可視光カットフィルタVCF1の特性PR3によれば、可視光カットフィルタVCF1に入射する可視領域の光(例えばP波(R,G,B))の透過率はほぼ0%であり、可視光カットフィルタVCF1に入射する近赤外領域の光(例えばP波(IR))の透過率はほぼ90%である。つまり、虹RNBW1の原因となり得る可視領域の光は可視光カットフィルタVCF1によりカットされ、虹RNBW1の原因とならない近赤外領域の光が可視光カットフィルタVCF1を透過できて撮像素子14にて受光される。
【0050】
図10は、前面フィルタ切替モジュール21による光学フィルタの切り替え例を示す平面図である。図11は、前面フィルタ切替モジュール21による光学フィルタの切り替え例を示す正面図である。図10および図11の説明において、図1あるいは図10の説明と重複する構成要素については同一の符号を付与して説明を簡略化あるいは省略し、異なる内容について説明する。
【0051】
図10に示すバンドパスフィルタBPF1は、夜モード(つまり、照度センサS1の出力に基づいてプロセッサ11による動作モードの判断結果)中にレンズLNSの前面側かつ光軸上に配置される。バンドパスフィルタBPF1は、例えば可視領域の波長帯域を有する入射光ICL1をカットし、近赤外領域の波長帯域を有する入射光ICL1を透過する。図10に示す偏光フィルタPLF1は、昼モード(つまり、照度センサS1の出力に基づいてプロセッサ11による動作モードの判断結果)中にレンズLNSの前面側かつ光軸上に配置される。偏光フィルタPLF1は、入射光ICL1のうち反射率が大きなS波成分をカットし、入射光ICL1のうち反射率が小さいP波成分を透過する。
【0052】
図11に示すように、車両撮影カメラ10では、プロセッサ11および前面フィルタ切替ドライバ22による制御に基づいて前面フィルタ切替モジュール21が左右方向にスライドすることで、バンドパスフィルタBPF1あるいは偏光フィルタPLF1のいずれかがレンズLNSの前面に配置される。なお、図11には前面フィルタ切替モジュール21が左右方向にスライドする例が図示されているが、バンドパスフィルタBPF1あるいは偏光フィルタPLF1のいずれかがレンズLNSの前面に配置されれば前面フィルタ切替モジュール21のスライド方向は左右方向に限定されない。例えば、バンドパスフィルタBPF1および偏光フィルタPLF1が回転することで、バンドパスフィルタBPF1あるいは偏光フィルタPLF1のいずれかがレンズLNSの前面に配置されてよい。
【0053】
図12は、実施の形態1に係る車両撮影カメラ10におけるレンズLNSと光学フィルタとの他の配置例を示す図である。図12の説明において、図1あるいは図10の説明と重複する構成要素については同一の符号を付与して説明を簡略化あるいは省略し、異なる内容について説明する。
【0054】
図12の配置例では、図1の配置例とは異なり、車両撮影カメラ10は、可視光カットフィルタVCF1をレンズLNSの前面側に配置可能なレンズ内フィルタ切替モジュール19と、レンズLNSが収容されたレンズブロック17と、偏光フィルタPLF1を撮像素子14の前面側に配置可能な前面フィルタ切替モジュール21と、撮像素子14と、短波長照明16とを含む構成である。個々の構成要素の詳細については、図5を参照して説明したので詳細な説明は省略する。図12の配置例では、レンズLNSを基準にすると、可視光カットフィルタVCF1はレンズLNSより前面側に配置され、偏光フィルタPLF1はレンズLNSより後面側に配置される。
【0055】
図13は、実施の形態1に係る車両撮影カメラ10の撮像に関する動作手順例を示すフローチャートである。図14は、実施の形態1に係る車両撮影カメラ10のデータ送信に関する動作手順例を示すフローチャートである。図15は、実施の形態1に係る車両撮影カメラ10の照明制御に関する動作手順例を示すフローチャートである。図16は、昼モードおよび夜モードのそれぞれにおける各種の動作制御例を示すテーブルである。
【0056】
図13に示す処理は、例えば車両撮影カメラ10の電源がオンされて電源がオフになるまで繰り返して実行される。図13において、プロセッサ11は、通信部13からの外部入力信号に基づいて、第1撮像条件の画像パラメータあるいは第2撮像条件の画像パラメータを演算し(St31)、その演算結果(画像パラメータ)をメモリ12に設定する。車両撮影カメラ10は、ナンバープレート画像と車内顔画像とを時分割に(例えばフレームごと)に切り替えながら撮像する。この時、プロセッサ11は、例えば奇数番目のフレーム(撮像画像)としてナンバープレート画像を撮像し、偶数番目のフレーム(撮像画像)として車内顔画像を撮像する。
【0057】
プロセッサ11は、ステップSt31の後、撮像素子14の電子シャッタの露光時間が「Long」あるいは「Short」のいずれであるかを判定する(St32)。
【0058】
プロセッサ11は、偶数番目のフレームを撮像する時には、車内顔画像に対応する電子シャッタの露光時間を「Long」と判定し(St32、Long)、車内顔画像の撮像に適した画像パラメータ(例えば電子シャッタの露光時間、ゲイン)を撮像素子14に設定する(St33)。撮像素子14は、ステップSt33において設定された画像パラメータに基づいて、車内顔画像のデータをプロセッサ11に転送する(St34)。プロセッサ11は、撮像素子14からの車内顔画像のデータに対して所定の信号処理(例えばノイズ除去、ホワイトバランス、画像圧縮)を実行し(St35)、信号処理が施された車内顔画像のデータをメモリ12に一時的に蓄積する(St36)。ステップSt36の後、車両撮影カメラ10の処理はステップSt31に戻る。
【0059】
一方、プロセッサ11は、奇数番目のフレームを撮像する時には、ナンバープレート画像に対応する電子シャッタの露光時間を「Short」と判定し(St32、Short)、ナンバープレート画像の撮像に適した画像パラメータ(例えば電子シャッタの露光時間、ゲイン)を撮像素子14に設定する(St37)。撮像素子14は、ステップSt37において設定された画像パラメータに基づいて、ナンバープレート画像のデータをプロセッサ11に転送する(St38)。プロセッサ11は、撮像素子14からのナンバープレート画像のデータに対して所定の信号処理(例えばノイズ除去、ホワイトバランス、画像圧縮)を実行し(St39)、信号処理が施されたナンバープレート画像のデータをメモリ12に一時的に蓄積する(St36)。これにより、車両撮影カメラ10は、フレームごとに車内顔画像用の画像パラメータとナンバープレート画像用の画像パラメータとを切り替えて、車内の乗員の顔の撮像に適した画像パラメータの下で撮像された車内顔画像を生成でき、ナンバープレートの撮像に適した画像パラメータの下で撮像されたナンバープレート画像を生成できる。
【0060】
図14に示す処理は、例えば車両撮影カメラ10の電源がオンされて電源がオフになるまで繰り返して実行される。図14において、プロセッサ11は、ステップSt36において一時的に蓄積された車内顔画像のデータあるいはナンバープレート画像のデータを読み出して取得する(St41)。
【0061】
プロセッサ11は、ステップSt41において取得された画像のデータに対応する撮像素子14の電子シャッタの露光時間が「Long」あるいは「Short」のいずれであるかを判定する(St42)。
【0062】
プロセッサ11は、露光時間が「Long」であると判定した場合には(St42、Long)、その露光時間に適したエンコード処理(つまり符号化処理)を行う(St43)。例えば、プロセッサ11は、車両VCL1のフロントガラスFRG1越しの乗員の顔を鮮明な顔画像として取得する場合、低圧縮率でエンコード処理を行う。プロセッサ11は、ステップSt43においてエンコード処理された車内顔画像のデータをストリーム1として、通信部13を介して宛先の受信機(図示略)に配信する(St44)。ステップSt44の後、車両撮影カメラ10の処理はステップSt41に戻る。
【0063】
一方、プロセッサ11は、露光時間が「Short」であると判定した場合には(St42、Short)、その露光時間に適したエンコード処理(つまり符号化処理)を行う(St45)。例えば、プロセッサ11は、ナンバープレートの画像を取得する場合、高圧縮率でエンコード処理を行ってよい。プロセッサ11は、ステップSt15においてエンコード処理されたナンバープレート画像のデータをストリーム2として、通信部13を介して宛先の受信機(図示略)に配信する(St46)。ステップSt46の後、車両撮影カメラ10の処理はステップSt41に戻る。これにより、車両撮影カメラ10は、撮像素子14の電子シャッタの露光時間に応じて、車内顔画像のデータあるいはナンバープレート画像のデータに応じた圧縮率でエンコード処理を行えて宛先のサーバ(図示略)に配信できる。
【0064】
図16に示すテーブルTBL1は、例えばメモリ12に予め登録されている。テーブルTBL1では、昼モードでは、前面フィルタ切替モジュール21は偏光フィルタPLF1を光軸上に配置し、レンズ内フィルタ切替モジュール19は可視光カットフィルタVCF1を光軸上に配置し、短波長照明16は消灯することの指示情報が指令されている。一方、夜モードでは、前面フィルタ切替モジュール21はバンドパスフィルタBPF1を光軸上に配置し、レンズ内フィルタ切替モジュール19は素ガラスを光軸上に配置し、短波長照明16は点灯することの指示情報が指令されている。図16に示す昼モードあるいは夜モードへの切り替えは、プロセッサ11により、このテーブルTBL1の指令内容に基づいて行われる。
【0065】
図15に示す処理は、例えば車両撮影カメラ10の電源がオンされて電源がオフになるまで繰り返して実行される。図15において、プロセッサ11は、照度センサS1によって検出された周囲の照度情報を取得する(St51)。プロセッサ11は、ステップSt51において取得された照度情報に基づいて、現時点が日中(例えば朝方あるいは昼間)または夜間(例えば夕方あるいは夜中)であるかを判定する(St52)。
【0066】
プロセッサ11は、ステップSt52の判定結果に基づいて、車両撮影カメラ10の動作モードを昼モードあるいは夜モードのいずれに設定するかを判定する(St53)。例えば、メモリ12は所定の照度に関する閾値を記憶して保持し、プロセッサ11により、この閾値より高ければ昼モードに設定され、この閾値より低ければ夜モードに設定される。
【0067】
昼モードの場合(St53、昼モード)、プロセッサ11は、図16に示すテーブルTBL1に基づいて、昼モード中の処理を実行させるための制御指示を生成して前面フィルタ切替ドライバ22に送り、前面フィルタ切替ドライバ22を介して前面フィルタ切替モジュール21を駆動する(St24)。昼モードでは、前面フィルタ切替モジュール21は、偏光フィルタPLF1が光軸上に位置するように移動する。また、プロセッサ11は、上述した昼モード用の制御指示をレンズ内フィルタ切替ドライバ20に送り、レンズ内フィルタ切替ドライバ20を介して、レンズ内フィルタ切替モジュール19を駆動する(St55)。昼モードでは、レンズ内フィルタ切替モジュール19は、例えば撮像素子14で撮像される画像に虹が映らないように、可視光カットフィルタVCF1が光軸上に位置するように移動する。なお、例えば、実施の形態1のように虹が撮像画像に映らないための技術的対策が不要となる地域、あるいはたとえ虹が映ったとしてもRGBのカラー映像が優先して撮像される必要がある場合は、IRカットフィルタを用いて、昼モードにおいて鮮明なRGB画像が得られるように、レンズ内フィルタ切替モジュール19ではIRカットフィルタ(図示略)が光軸上に配置されてもよい。
【0068】
また、プロセッサ11は、同様に上述した昼モード用の制御指示を照明ドライバ15に送り、照明ドライバ15を介して、複数の短波長照明16を消灯する(St56)。ステップSt56の後、車両撮影カメラ10の処理はステップS51に戻る。
【0069】
一方、夜モードの場合(St53、夜モード)、プロセッサ11は、図16に示すテーブルTBL1に基づいて、夜モード中の処理を実行させるための制御指示を生成して前面フィルタ切替ドライバ22に送り、前面フィルタ切替ドライバ22を介して前面フィルタ切替モジュール21を駆動する(St57)。夜モードでは、前面フィルタ切替モジュール21は、バンドパスフィルタ(図示略)が光軸上に位置するように移動する。また、プロセッサ11は、上述した夜モード用の制御指示をレンズ内フィルタ切替ドライバ20に送り、レンズ内フィルタ切替ドライバ20を介してレンズ内フィルタ切替モジュール19を駆動する(St58)。夜モードでは、レンズ内フィルタ切替モジュール19は、車両撮影カメラ10に入射するIR光を遮断しないように、素ガラスが光軸上に位置するように移動する。
【0070】
プロセッサ11は、撮像時の撮像素子14の電子シャッタの露光時間が「Long」あるいは「Short」のいずれであるかを判定する(St59)。
【0071】
プロセッサ11は、偶数番目のフレームを撮像する時には、車内顔画像に対応する電子シャッタの露光時間を「Long」と判定し(St59、Long)、夜モード中の車内顔画像の撮像に適した画像パラメータ(例えば短波長照明16からのIR光の強度)の制御指示を照明ドライバ15に送り、この制御指示の下で照明ドライバ15を介して複数の短波長照明16をパルス点灯する(St60)。ステップSt60の後、車両撮影カメラ10の処理はステップSt51に戻る。
【0072】
一方、プロセッサ11は、奇数番目のフレームを撮像する時には、ナンバープレート画像に対応する電子シャッタの露光時間を「Short」と判定し(St59、Short、夜モード中のナンバープレート画像の撮像に適した画像パラメータ(例えば短波長照明16からのIR光の強度)の制御指示を照明ドライバ15に送り、この制御指示の下で照明ドライバ15を介して複数の短波長照明16をパルス点灯する(St61)。ステップSt61の後、車両撮影カメラ10の処理はステップSt51に戻る。これにより、車両撮影カメラ10は、昼モードあるいは夜モードに応じて、前面フィルタ切替モジュール21、レンズ内フィルタ切替モジュール19、短波長照明16のオンオフを適応的に切り替えするので、昼モードでも夜モードでも高精度な撮像を実現でき、被写体としての車両の車内顔映像およびナンバープレート映像を生成できる。
【0073】
以上により、実施の形態1に係る車両撮影カメラ10は、カーフィルムCFLM1が貼られた車両VCL1からの、カーフィルムCFLM1での複屈折に基づいて生じた複数の異なる波長帯域の光を有する入射光ICL1(図3あるいは図4参照)の横波成分(例えばS波成分)を偏光フィルタPLF1で制限する。車両撮影カメラ10は、偏光フィルタPLF1を透過した入射光の縦波成分(例えばP波成分)が入射するレンズLNSを有する。車両撮影カメラ10は、レンズLNSにより結像された入射光の縦波成分のうち可視領域の入射光の縦波成分を可視光カットフィルタVCF1で制限する。車両撮影カメラ10は、可視光カットフィルタVCF1を透過した近赤外領域の入射光の縦波成分に基づいて、被写体としての車両VCL1を撮像素子14で撮像する。
【0074】
これにより、車両撮影カメラ10は、車両VCL1のフロントガラスFRG1を主たる被写体とした撮像画像データにおいて、フロントガラス部分に虹RNBW1が映り込むことの発生を効果的に抑制できるので、車両VCL1内の運転手などの乗員の顔の画質の向上を支援できる。従って、例えば事件あるいは事故を起こした人物(犯人)が車両VCL1に乗車して逃走している場合、警官が車両撮影カメラ10の撮像画像データIMG2(図9参照)を解析しても犯人の顔の撮像ができるため、犯人を早期に特定できて警察による捜査効率を向上させることが可能となる。
【0075】
また、実施の形態1に係る車両撮影カメラ10は、カーフィルムCFLM1が貼られた車両VCL1からの、カーフィルムCFLM1での複屈折に基づいて生じた複数の異なる波長帯域の光を有する入射光ICL1(図3あるいは図4参照)のうち可視領域の入射光を可視光カットフィルタVCF1で制限する。車両撮影カメラ10は、可視光カットフィルタVCF1を透過した近赤外領域の入射光が入射するレンズLNSを有する。車両撮影カメラ10は、レンズLNSにより結像された近赤外領域の入射光のうち近赤外領域の入射光の横波成分(例えばS波成分)を偏光フィルタPLF1で制限する。車両撮影カメラ10は、偏光フィルタPLF1を透過した近赤外領域の入射光の縦波成分に基づいて、被写体としての車両VCL1を撮像素子14で撮像する。
【0076】
これにより、車両撮影カメラ10は、車両VCL1のフロントガラスFRG1を主たる被写体とした撮像画像データにおいて、フロントガラス部分に虹RNBW1が映り込むことの発生を効果的に抑制できるので、車両VCL1内の運転手などの乗員の顔の画質の向上を支援できる。従って、例えば事件あるいは事故を起こした人物(犯人)が車両VCL1に乗車して逃走している場合、警官が車両撮影カメラ10の撮像画像データIMG2(図9参照)を解析しても犯人の顔の撮像ができるため、犯人を早期に特定できて警察による捜査効率を向上させることが可能となる。
【0077】
また、複数の異なる波長帯域の光は、車両VCL1のフロントガラスFRG1で反射した可視領域および近赤外領域の波長帯域を有する第1の光(例えばP波(IR,R,G,B)およびS波(IR,R,G,B))と、カーフィルムCFLM1で複屈折したことで生じた可視領域のいずれかの色成分を示す単一波長を有する第2の光(例えばP波(R)およびS波(R))と、を少なくとも含む。これにより、偏光フィルタPLF1により反射率の大きなS波成分の透過が制限され、かつ、可視光カットフィルタVCF1により可視領域の波長帯域を有する光の透過が制限されるので、上述した第1の光の近赤外領域の波長帯域を有する光が撮像素子14に受光されることで、虹の映り込みが抑制された撮像画像データが得られる。
【0078】
また、第1のフィルタは、入射光の横波成分(例えば反射率の大きなS波成分)の透過を制限する偏光フィルタPLF1である。第2のフィルタは、可視領域の光の透過をカットする可視光カットフィルタVCF1あるいはバンドパスフィルタである。これにより、撮像画像データに映り込む虹RNBW1の発生原因となり得る、可視領域の波長帯域を有しかつ反射率の大きな光が撮像素子14に受光されることを阻止できる。従って、近赤外領域のP波(IR)に基づく撮像素子14の撮像により、モノクロの撮像画像データが得られるが、フロントガラスFRG1越しに存在する運転手などの乗員の顔の撮像が可能となる。
【0079】
また、第3のフィルタは、可視領域の光をカットする可視光カットフィルタVCF1あるいはバンドパスフィルタである。第4のフィルタは、入射光の横波成分(例えば反射率の大きなS波成分)の透過を制限する偏光フィルタPLF1である。これにより、撮像画像データに映り込む虹RNBW1の発生原因となり得る、可視領域の波長帯域を有しかつ反射率の大きな光が撮像素子14に受光されることを阻止できる。従って、近赤外領域のP波(IR)に基づく撮像素子14の撮像により、モノクロの撮像画像データが得られるが、フロントガラスFRG1越しに存在する運転手などの乗員の顔の撮像が可能となる。
【0080】
また、車両撮影カメラ10は、昼モードを検知する照度センサS1と、昼モードが検知された場合に、第1のフィルタ(例えば偏光フィルタPLF1)がレンズLNSの前面側に配置するように第1のフィルタの駆動を制御するプロセッサ11と、をさらに備える。これにより、車両撮影カメラ10は、雲CLD1から太陽光などの自然光が降り注ぐ昼間の時間帯に、入射光ICL0のS波成分を偏光フィルタPLF1でカットでき、入射光ICL0のP波成分に基づいて車両VCL0の撮像画像データを生成できる。従って、車両撮影カメラ10は、雲CLD1の映り込みを低減した高画質な撮像画像データ(例えば、車両VCL0内の運転手などの乗員の顔が映り込む撮像画像データ)を生成できる。
【0081】
また、車両撮影カメラ10は、昼モードを検知する照度センサS1と、昼モードが検知された場合に、第4のフィルタ(例えば偏光フィルタPLF1)が撮像素子14の前面側に配置するように第4のフィルタの駆動を制御するプロセッサ11と、をさらに備える。これにより、車両撮影カメラ10は、雲CLD1から太陽光などの自然光が降り注ぐ昼間の時間帯に、入射光ICL0のS波成分を偏光フィルタPLF1でカットでき、入射光ICL0のP波成分に基づいて車両VCL0の撮像画像データを生成できる。従って、車両撮影カメラ10は、雲CLD1の映り込みを低減した高画質な撮像画像データ(例えば、車両VCL0内の運転手などの乗員の顔が映り込む撮像画像データ)を生成できる。
【0082】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本開示は、車両のフロントガラスを主たる被写体とした撮像画像のフロントガラス部分に虹が映り込むことの発生を効果的に抑制し、乗員の顔の画質の向上を支援するカメラ装置として有用である。
【符号の説明】
【0084】
10 車両撮影カメラ
11 プロセッサ
12 メモリ
13 通信部
14 撮像素子
15 照明ドライバ
16 短波長照明
17 レンズブロック
18 レンズドライバ
19 レンズ内フィルタ切替モジュール
20 レンズ内フィルタ切替ドライバ
21 前面フィルタ切替モジュール
22 前面フィルタ切替ドライバ
23 偏光フィルタ旋回ドライバ
BPF1 バンドパスフィルタ
CFLM1 カーフィルム
FRG1 フロントガラス
ICL1 入射光
IR1 近赤外光
LNS レンズ
PLF1 偏光フィルタ
S1 照度センサ
VCF1 可視光カットフィルタ
図1
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