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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】測定システムおよび測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/10 20060101AFI20240409BHJP
   H04B 17/00 20150101ALI20240409BHJP
【FI】
G01R29/10 E
H04B17/00 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020092580
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021188969
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000227593
【氏名又は名称】日之出水道機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 英浩
(72)【発明者】
【氏名】立石 栄一
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-196027(JP,A)
【文献】特開2000-257103(JP,A)
【文献】特開2006-105901(JP,A)
【文献】特開2015-55562(JP,A)
【文献】特開平8-101126(JP,A)
【文献】特開2003-215530(JP,A)
【文献】特開2000-257147(JP,A)
【文献】特開2012-12827(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0231438(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/08
G01R 29/10
H04B 17/00
G01N 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を発生させる装置を収容するハウジングと、
前記ハウジングに設けられた開口部と、
前記開口部に対して着脱可能に取り付けられる地下構造物用、雨水桝用および側溝用の蓋と、
前記蓋の電磁波通過特性を評価するために前記蓋により覆われた前記開口部を介して通過する前記電磁波を測定する測定装置とを備え、
前記蓋は、当該蓋を貫く貫通孔を含
前記ハウジングは、前記開口部を有する導電性の蓋受け部材を含み、
前記蓋受け部材は、前記蓋を取り付ける蓋取り付け部を含む、
測定システム。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記蓋受け部材を位置調整可能に支持する誘電性の位置調整部材と、
前記位置調整部材の内壁または外壁に配置された電磁波シールド材とを含む、請求項に記載の測定システム。
【請求項3】
電磁波を発生させる装置を収容するハウジングと、
前記ハウジングに設けられた開口部と、
前記開口部に対して着脱可能に取り付けられる地下構造物用、雨水桝用および側溝用の蓋と、
前記蓋の電磁波通過特性を評価するために前記蓋により覆われた前記開口部を介して通過する前記電磁波を測定する測定装置とを備え、
前記蓋は、当該蓋を貫く貫通孔を含み、
前記ハウジングは、前記開口部を有する誘電性の蓋受け部材と、
前記蓋受け部材の内壁または外壁に配置された電磁波シールド材とを含む、
測定システム。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記蓋の中心軸から偏心した位置を貫く貫通孔であり、
当該測定システムは、前記ハウジングを前記中心軸周りに回転させることにより、前記中心軸に対する前記貫通孔の回転角度を変化させる回転装置をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項5】
前記貫通孔は、前記蓋の中心軸を貫く非円形の貫通孔であり、
当該測定システムは、前記ハウジングを前記中心軸周りに回転させることにより、前記中心軸に対する前記貫通孔の回転角度を変化させる回転装置をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造物用蓋等を含む多種多様な蓋の電磁波通過特性を評価することが可能な測定システムおよび測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地下構造物内に設置された電波を発生させる装置(例えば、無線通信装置)と、地上に設置された電波を受信する装置(例えば、無線基地局)との間で、地下構造物用蓋を介して通信を行うことが検討されている(例えば、特許文献1、2)。
しかしながら、特許文献1、2には、地下構造物用蓋の電波通過特性を評価することは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-066484号公報
【文献】特開2018-067165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、地下構造物用蓋等を含む多種多様な蓋の電磁波通過特性を評価することが可能な測定システムおよび測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、電磁波を発生させる装置を収容するハウジングと、ハウジングに設けられた開口部と、開口部に対して着脱可能に取り付けられる蓋と、蓋の電磁波通過特性を評価するために蓋により覆われた開口部を介して通過する電磁波を測定する測定装置とを備える測定システムである。
【0006】
この測定システムでは、ハウジングに設けられた開口部に対して蓋を着脱可能に取り付けることができる。このため、蓋以外の条件(例えば、開口部およびハウジングの形状、構造、材質等)を変化させずに、蓋のみを所望の条件に変化させることができる。さらに、測定装置により、蓋により覆われた開口部を介して通過する電磁波を測定することができる。このため、蓋の形状、構造、材質等の違いに起因する開口部の覆われ方の違いも含めて、蓋の電磁波通過特性を適切に評価することができる。したがって、地下構造物用蓋等を含む多種多様な蓋の電磁波通過特性を評価することが可能な測定システムを提供することができる。
【0007】
蓋は、当該蓋の中心軸から偏心した位置を貫く貫通孔を含むものであってもよく、この場合、測定システムは、ハウジングを蓋の中心軸周りに回転させることにより、蓋の中心軸に対する貫通孔の回転角度を変化させる回転装置をさらに備えることが好ましい。
また、蓋は、当該蓋の中心軸を貫く非円形の貫通孔を含むものであってもよく、この場合も、測定システムは、ハウジングを蓋の中心軸周りに回転させることにより、蓋の中心軸に対する貫通孔の回転角度を変化させる回転装置をさらに備えることが好ましい。
この回転装置によれば、ハウジングを、ハウジングの中心軸周りではなく、蓋の中心軸周りに回転させることにより、ハウジングに設けられた開口部の位置関係の影響を受けることなく、蓋の中心軸に対する貫通孔の回転角度(位置、向き)を任意に変化させることができる。このため、貫通孔の位置や向きを蓋の中心軸周りに360度回転させた状態の電磁波を測定することができる。したがって、蓋の中心軸から偏心した貫通孔を含むタイプの蓋や、蓋の中心軸を貫く非円形の貫通孔を含むタイプの蓋であっても、貫通孔の位置や向きの違いに起因して電磁波通過特性に与える影響を適切に評価することができる。
【0008】
ハウジングは、開口部を有する導電性の蓋受け部材を含み、蓋受け部材は、蓋を取り付ける蓋取り付け部を含むものであってもよい。蓋を導電性の蓋受け部材に取り付けることにより、蓋受け部材を通過する電磁波の影響を低減し易くなるため、蓋そのものの電磁波通過特性を精度よく評価しやすい。
【0009】
ハウジングは、導電性の蓋受け部材を位置調整可能に支持する誘電性の位置調整部材と、位置調整部材の内壁または外壁に配置された電磁波シールド材とを含むものであってもよい。蓋の取付け位置(例えば、蓋の高さ等)の違いに起因して電磁波通過特性に与える影響を簡易な構成で評価することができる。
【0010】
ハウジングは、開口部を有する誘電性の蓋受け部材と、蓋受け部材の内壁または外壁に配置された電磁波シールド材とを含むものであってもよい。蓋受け部材の内壁または外壁に電磁波シールド材を配置することにより、蓋受け部材を通過する電磁波の影響を低減し易くなるため、蓋そのものの電磁波通過特性を簡易な構成で評価しやすい。
【0011】
本発明の他の態様は、電磁波を発生させる装置を収容するハウジングに設けられた開口部に対して蓋を着脱可能に取り付けることと、蓋の電磁波通過特性を評価するために蓋により覆われた開口部を介して通過する電磁波を測定することとを備える測定方法である。
【0012】
測定することは、蓋の中心軸から偏心した位置を貫く貫通孔の中心軸に対する回転角度が変化するようにハウジングを中心軸周りに回転させながら電磁波を測定することを含むこと、または蓋の中心軸を貫く非円形の貫通孔の中心軸に対する回転角度が変化するようにハウジングを中心軸周りに回転させながら電磁波を測定することを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、地下構造物用蓋等を含む多種多様な蓋の電磁波通過特性を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態である測定システムの概要図。
図2】第1実施形態の変形例を示す概要図。
図3】本発明の第2実施形態である測定システムの概要図。
図4】第2実施形態の蓋の概略平面図。
図5】第2実施形態の変形例を示す概要図。
図6図3の測定システムによる蓋の電磁波透過特性の評価結果の一例。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
ここで、本願明細書でいう「蓋」とは、下水道における地下埋設物,地下構造施設等と地上とを通じる開口部を閉塞するマンホール蓋,大型鉄蓋,汚水桝蓋、電力・通信の分野における地下施設機器や地下ケーブル等を保護する開閉可能な共同溝用鉄蓋,送電用鉄蓋,配電用鉄蓋、上水道やガス配管における路面下の埋設導管およびその付属機器と地上とを結ぶ開閉扉としての機能を有する消火栓蓋,制水弁蓋,仕切弁蓋,空気弁蓋,ガス配管用蓋,量水器蓋等(総称して「地下構造物用蓋」という。)のほか、雨水桝や側溝を覆うグレーチング(格子)などの蓋を含む。
また、本願明細書でいう「電磁波」とは、放射線、光、電波等の電界と磁界が互いに影響し合いながら空間を伝達するエネルギーの波のことをいう。
【0016】
図1に、本発明の第1実施形態である測定システム10の概要を示している。
測定システム10は、電磁波を発生させる装置(電磁波発生装置)11を収容するハウジング12と、ハウジング12に設けられた開口部13と、開口部13に対して着脱可能に取り付けられる蓋14と、蓋14の電磁波通過特性を評価するために蓋14により覆われた開口部13を介して通過する電磁波を測定する測定装置15とを備えている。
この測定システム10は、外部の環境による電磁波の影響を受けにくい空間内(例えば、奥行7m、幅3m、高さ3mの壁全面に電磁波シールドを施した室内)に設置されている。
【0017】
ハウジング12内に収容される電磁波発生装置11は、一定の周波数間隔(1MHz、5MHzまたは10MHz)で、1MHzから6GHzまでの周波数帯域の電磁波を発生させるバッテリー駆動の電磁波発生器(図示省略)と、当該電磁波を放射するダイポールアンテナ(図示省略)とを備えている。
【0018】
ハウジング12は、上部に円形の開口部13を設けた箱型であり、導電性の材質よりなる。また、開口部13は蓋取り付け部12-1を含む。本実施形態においてハウジング12は架台(机)16の上に設置されている。
【0019】
蓋14は、円形であって蓋14を貫く貫通孔を含まないタイプのものであり、その材質は球状黒鉛鋳鉄である。
【0020】
測定装置15は、蓋14の電磁波通過特性を評価するために蓋14により覆われた開口部13を介して通過する電磁波を測定する。本実施形態において測定装置15は、ハウジング12の外で、蓋の中心軸Cから3m(図1中の符号LL1)離れた位置に、高さを変更可能に配置されている。また、開口部13と測定装置15の間には電磁波吸収体18が配置されている。
【0021】
以上の通り、本実施形態の測定システム10では、ハウジング12に設けられた蓋取り付け部12-1に蓋14を着脱可能に取り付けることができる。このため、蓋14以外の条件(例えば、開口部13およびハウジング12の形状、構造、材質等)を変化させずに、蓋14のみを所望の条件に変化させることができる。さらに、測定装置15により、蓋14により覆われた開口部13を介して通過する電磁波を測定することができる。
このため、蓋14の形状、構造、材質等の違いに起因する開口部13の覆われ方の違いも含めて、蓋14の電磁波通過特性を適切に評価することができる。したがって、地下構造物用蓋等を含む多種多様な蓋の電磁波通過特性を評価することが可能となる。
なお、本願明細書でいう「電磁波通過特性」とは、測定装置15により測定される、蓋14により覆われたハウジング12の開口部13を介して通過する電磁波について、周波数や測定装置15の位置の違いや、蓋の形状、構造、材質等の違いに起因する開口部13の覆われ方の違いによって変化する電界強度等を定量的に測定した特有の性質をいう。
【0022】
本実施形態ではハウジング12を導電性としたが、ハウジング12は誘電性(例えば、プラスチック)とすることもできる。この場合、例えば図2に示すように、誘電性のハウジング12の内壁に電磁波シールド材12c(例えば、アルミニウム板)を配置することが好ましい。なお、ハウジング12の内壁は、側壁の内面12-2と底壁の内面12-3とを含む。これにより、誘電性のハウジング12を通過する電磁波の影響を低減し易くなるため、蓋14そのものの電磁波通過特性を簡易な構成で評価しやすくなる。
なお、電磁波シールド材12cは、誘電性のハウジング12の外壁に配置してもよい。なお、ハウジング12の外壁は、側壁の外面12-4と底壁の外面12-5とを含む。
また、本実施形態ではハウジング12の上部に開口部13を設けたが、開口部13はハウジング12の側部に設けることもできる。
また、本実施形態ではハウジング12に円形の開口部13を設けたが、例えば、開口部13は四角形等の角形とすることもでき、また、ハウジング12を箱型ではなく、例えば、筒型とすることもできる。
また、ハウジング12の上部を、開口部13と蓋取り付け部12-1とを有する蓋受け部材とすることもできる。
【0023】
図3に、本発明の第2実施形態である測定システム10Aの概要を示している。
測定システム10Aは、電磁波発生装置11を収容するハウジング12Aと、ハウジング12Aに設けられた開口部13Aと、開口部13Aに対して着脱可能に取り付けられる蓋14Aと、蓋14Aの電磁波通過特性を評価するために蓋14Aにより覆われた開口部13Aを介して通過する電磁波を測定する測定装置15と、回転装置17とを備えている。
本実施形態においても測定システム10A全体が、外部の環境による電磁波の影響を受けにくい空間内に設置されている。
なお、本実施形態において電磁波発生装置11および測定装置15は、第1実施形態と同じ構成である。
【0024】
図4は、本実施形態の蓋14Aの概略平面図である。この蓋14Aは円形で、その中心軸Cから偏心した位置を貫く円弧状の貫通孔14aを複数含む雨水流入式タイプのものであり、その材質は球状黒鉛鋳鉄である。
【0025】
本実施形態のハウジング12Aは、円形の開口部13Aを有する導電性の蓋受け部材12aを含み、この蓋受け部材12aは、蓋14Aを取り付ける蓋取り付け部12a-1を含む。なお、本実施形態において蓋受け部材12aは地下構造物用蓋を支持する円形の受枠に相当し、その材質は蓋14Aと同様に球状黒鉛鋳鉄である。すなわち、本実施形態において蓋受け部材12aは導電性である。
【0026】
本実施形態のハウジング12Aは、蓋14Aの取付け位置(例えば、蓋14Aの高さ等)の違いに起因して電磁波通過特性に与える影響を簡易な構成で評価することができるように蓋受け部材12aを位置調整可能に支持する円筒型の位置調整部材12bと、位置調整部材12bを通過する電磁波の影響を低減し易くするため、この位置調整部材12bの内壁12b-1および下端開口部12b-2に配置された電磁波シールド材12cとを含む。
本実施形態において位置調整部材12bは、地下構造物であるマンホール(人孔)の下桝を模したもので、その材質はレジンコンクリートである。すなわち、本実施形態において位置調整部材12bは誘電性である。
電磁波シールド材12cは、例えばアルミニウム板である。なお、本実施形態では位置調整部材12bの内壁12b-1および下端開口部12b-2に電磁波シールド材12cを配置したが、位置調整部材12bの外壁12b-3および下端開口部12b-2を含む底面12b-4に電磁波シールド材12cを配置してもよい。
【0027】
ハウジング12Aは回転装置17の上に設置されている。この回転装置17は、ハウジング12Aを蓋14Aの中心軸C周りに回転させることにより、中心軸Cに対する貫通孔14aの回転角度を変化させる。
なお、本実施形態において回転装置17の高さH1は800mm、位置調整部材12bの高さH2は200mm、蓋受け部材12aの高さH3は110mmである。
【0028】
本実施形態において電磁波発生装置11は、ハウジング12Aの円筒型の位置調整部材12b内に収納されるように下端開口部12b-2の電磁波シールド材12cの上に設置されている。
【0029】
また、本実施形態の測定システム10Aは回転装置17を備えており、この回転装置17によれば、ハウジング12Aを、ハウジング12Aの中心軸C1周りではなく、蓋14Aの中心軸C周りに回転させることにより、ハウジング12Aの形状やハウジング12Aに設けられた開口部13Aの位置関係の影響を受けることなく、蓋14Aの中心軸Cに対する各貫通孔14aの回転角度(位置)を任意に変化させることができる。このため、各貫通孔14aの位置を蓋14Aの中心軸C周りに360度回転させた状態の電磁波を測定することができる。したがって、中心軸Cから偏心した貫通孔14aを複数含むタイプの蓋14Aであっても、各貫通孔14aの位置の違いに起因して電磁波通過特性に与える影響を適切に評価することができる。
なお、本実施形態では、蓋14Aの中心軸C(開口部13Aの中心軸)、ハウジング12Aの中心軸C1および回転装置17の回転中心軸C2が全て一致しているが、蓋14Aの中心軸C(開口部13Aの中心軸)とハウジング12Aの中心軸C1とが、一致せずにずれている場合であっても測定システム10Aを適用することができる。すなわち、蓋14Aの中心軸C(開口部13Aの中心軸)と回転装置17の回転中心軸C2とが一致していれば、回転装置17によりハウジング12Aを蓋の中心軸C周りに回転させることができる。
また、本実施形態において蓋14Aは、中心軸Cから偏心した貫通孔14aを複数含むタイプであるが、蓋の中心軸Cを貫く非円形の貫通孔(例えば、C字形状やI字形状や円弧形状等)を含むタイプとすることもできる。この場合も、回転装置17の回転中心軸C2と蓋の中心軸Cを一致させ、回転装置17によりハウジング12Aを蓋の中心軸C周りに回転させることにより、貫通孔の向きの違いに起因して電磁波通過特性に与える影響を適切に評価することができる。
【0030】
以上の通り、本実施形態の測定システム10Aにおいても、ハウジング12Aに設けられた開口部13Aに対して蓋14Aを着脱可能に取り付けることができる。このため、蓋14A以外の条件(例えば、開口部13Aおよびハウジング12Aの形状、構造、材質等)を変化させずに、蓋14Aのみを所望の条件に変化させることができる。さらに、測定装置15により、蓋14Aにより覆われた開口部13Aを介して通過する電磁波を測定することができる。
このため、蓋14Aの形状、構造、材質等の違いに起因する開口部13Aの覆われ方の違いも含めて、蓋14Aの電磁波通過特性を適切に評価することができる。したがって、地下構造物用蓋等を含む多種多様な蓋の電磁波通過特性を評価することが可能となる。
【0031】
本実施形態においてハウジング12Aは、導電性の蓋受け部材12aと誘電性の位置調整部材12bとを含む構成としたが、これに限定されるものではなく位置調整部材12bは省略することができる。ただし、この場合、図5に示すように導電性の蓋受け部材12aの下端開口部12a-2に電磁波シールド材12cを配置することが好ましい。また、蓋受け部材12aが誘電性とすることもできる。この場合、誘電性の蓋受け部材12aを通過する電磁波の影響を低減し易くするため、蓋受け部材12aの下端開口部に加え、当該蓋受け部材12aの内壁または外壁に電磁波シールド材12cを配置することが好ましい。
また、本実施形態において位置調整部材12bは誘電性で円筒型であるが、位置調整部材12bは図2に示すハウジング12のように誘電性で箱型とすることもできる。
【0032】
なお、蓋14、14Aならびにハウジング12、ハウジング12Aを構成する蓋受け部材12a、位置調整部材12bおよび電磁波シールド材12cの材質は、上述した実施形態に限定されるものではなく、導電性の場合、例えば、球状黒鉛鋳鉄、鉄鋼、アルミニウムなどであってもよく、誘電性の場合、例えば、レジンコンクリート、セメント、ゴム、プラスチックなどであってもよい。
【0033】
図1図5に示して説明した通り、まず、電磁波を発生させる装置11を収容するハウジング12に設けられた開口部13に対して蓋14を着脱可能に取り付け、次に、測定装置15により、蓋14の電磁波通過特性を評価するために蓋14により覆われた開口部13を介して通過する電磁波を測定することにより、地下構造物用蓋等を含む多種多様な蓋の電磁波通過特性を評価することができる。
また、蓋14Aが、蓋14Aの中心軸Cから偏心した位置を貫く貫通孔14aを含む場合には、には、電磁波を測定する際に、蓋14Aの中心軸Cから偏心した位置を貫く貫通孔14aの中心軸Cに対する回転角度が変化するようにハウジング12Aを蓋14Aの中心軸C周りに回転させながら電磁波を測定することにより、蓋14Aの中心軸Cから偏心した貫通孔14aを含むタイプの蓋であっても、貫通孔14aの位置の違いに起因して電磁波通過特性に与える影響を適切に評価することができる。
また、中心軸Cを貫く非円形の貫通孔を含む場合には、電磁波を測定する際に、蓋14Aの中心軸Cを貫く非円形の貫通孔の中心軸Cに対する回転角度が変化するようにハウジング12Aを蓋14Aの中心軸C周りに回転させながら電磁波を測定することにより、蓋14Aの中心軸を貫く非円形の貫通孔を含むタイプの蓋であっても、貫通孔の向きの違いに起因して電磁波通過特性に与える影響を適切に評価することができる。
【実施例
【0034】
図3に示した測定システム10Aにより、図4に示した蓋14Aの電磁波通過特性を評価した結果の一例を図6に示す。具体的には、測定装置15の高さを床面から150cm、電磁波発生装置11が放射する電波の周波数を920MHzとし、回転装置17を5度ピッチで360度回転させて電波の電界強度を測定し、指向特性図(360度の電界強度を示すグラフ)を作成したものである。図6の指向特性図によれば、図4に示した蓋14Aの形状においては電界強度が弱くなる角度が存在することがわかる。このように、多種多様な蓋の電磁波通過特性を評価することができる。
なお、本例では電磁波通過特性を指向特性図によって評価したが、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0035】
10、10A 測定システム
11 電磁波を発生させる装置(電磁波発生装置)
12、12A ハウジング
12-1 蓋取り付け部
12-2 側壁の内面
12-3 底壁の内面
12-4 側壁の外面
12-5 底壁の外面
12a 蓋受け部材
12a-1 蓋取り付け部
12a-2 下端開口部
12b 位置調整部材
12b-1 内壁
12b-2 下端開口部
12b-3 外壁
12b-4 底面
12c 電磁波シールド材
13、13A 開口部
14、14A 蓋
14a 貫通孔
15 測定装置
16 架台(机)
17 回転装置
18 電磁波吸収体
C 蓋の中心軸
C1 ハウジングの中心軸
C2 回転装置の中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6