(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】診断支援システム、診断支援サーバ、診断支援端末、診断支援プログラム、及び診断支援サーバ保守方法
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20240409BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240409BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240409BHJP
【FI】
G16H50/20
A61B5/00 A
G06T7/00 612
(21)【出願番号】P 2020095326
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】514034021
【氏名又は名称】あっと株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126675
【氏名又は名称】福本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】武野 團
(72)【発明者】
【氏名】前田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】金子 俊和
【審査官】鹿野 博嗣
(56)【参考文献】
【文献】特許第6186663(JP,B2)
【文献】特開2018-041207(JP,A)
【文献】特開2003-271743(JP,A)
【文献】特開2008-000315(JP,A)
【文献】鳥居 大哉、金子 勉、柴田 義孝,毛細血管画像を用いた遠隔自動病名判断のシステムの構築,情報処理学会研究報告 Vol.98 No.8,日本,社団法人情報処理学会,1998年01月29日,p.219~224
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61B 5/00
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援システムであって、
サーバと、前記サーバにネットワークを通じて接続可能な第1端末と、前記第1端末と同一又は異なり、前記サーバに前記ネットワークを通じて接続可能な第2端末と、を備え、
前記第1端末は、
前記被験者の毛細血管を撮影することにより前記毛細血管画像を得る撮影手段と、
前記毛細血管画像を前記サーバへ送信する画像送信手段と、を有し、
前記サーバは、
前記第2端末の要求に応じて前記被験者の生活習慣に関するアンケートを前記第2端末に送信するアンケート送信手段と、
前記第2端末から送信された、前記被験者による前記アンケートへの回答を受信する回答受信手段と、
前記第1端末が送信した前記毛細血管画像を受信する画像受信手段と、
前記画像受信手段が受信した前記毛細血管画像から毛細血管の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
抽出した前記特徴量と受信した前記アンケートへの回答とに基づいて、受信した前記毛細血管画像が表す毛細血管の状態が、あらかじめ設定された複数のクラスのいずれに該当するか、を判定するクラス判定をするクラス判定手段と、
前記クラス判定の結果を含むデータを、送信データとして前記第1端末に送信するデータ送信手段と、を有し、
前記第1端末は、
前記データ送信手段から送信された前記送信データを受信するデータ受信手段と、
受信した前記送信データを表示するデータ表示手段と、をさらに有する、診断支援システム。
【請求項2】
前記第2端末は前記第1端末とは異なる、請求項1に記載の診断支援システム。
【請求項3】
前記サーバの前記データ送信手段は、前記送信データを、前記第1端末により編集可能な形式である編集可能データとして前記第1端末に送信し、
前記第1端末は、
前記データ受信手段が受信した前記編集可能データを、前記第1端末への入力操作に従って編集する編集手段を、さらに有する、請求項1又は2に記載の診断支援システム。
【請求項4】
前記第1端末は、
編集された前記編集可能データを、編集後データとして前記サーバに送信する編集後データ送信手段を、さらに有し、
前記サーバは、
前記編集後データ送信手段が送信した前記編集後データを受信する編集後データ受信手段と、
受信した前記編集後データに基づいて、編集できない確定データを作成する確定データ作成手段と、
作成した前記確定データを、前記第1端末に送信する確定データ送信手段をさらに有し、
前記第1端末は、
前記確定データ送信手段が送信した前記確定データを受信する確定データ受信手段と、
受信した前記確定データを表示する確定データ表示手段と、をさらに有する、請求項3に記載の診断支援システム。
【請求項5】
前記サーバは、
前記複数のクラスの各々に対応する、被験者の体質を表現するデータである体質データを、対応するクラスと関連付けて記憶する体質データ記憶装置と、
前記複数のクラスのうち、前記クラス判定の結果が示すクラスに対応する体質データを、前記体質データ記憶装置から読み出す、体質データ読出手段と、をさらに有し、
前記データ送信手段は、前記送信データに、読み出した前記体質データを含めて、前記第1端末に送信する、請求項1から4のいずれかに記載の診断支援システム。
【請求項6】
前記サーバは、
前記複数のクラスの各々に対応する、被験者の体質の改善のためのアドバイスを表現する体質改善データを、対応するクラスと関連付けて記憶する体質改善データ記憶装置と、
前記複数のクラスのうち、前記クラス判定の結果が示すクラスに対応する体質改善データを、前記体質改善データ記憶装置から読み出す、体質改善データ読出手段と、をさらに有し、
前記データ送信手段は、前記送信データに、読み出した前記体質改善データを含めて、前記第1端末に送信する、請求項1から5のいずれかに記載の診断支援システム。
【請求項7】
前記サーバの前記データ送信手段は、前記送信データに、抽出した前記特徴量を含めて、前記第1端末に送信する、請求項1から6のいずれかに記載の診断支援システム。
【請求項8】
前記サーバは、
被験者特徴量記憶装置と、
抽出された前記特徴量を前記被験者と関連付けて、前記被験者特徴量記憶装置に記憶する、被験者特徴量記憶手段と、
前記被験者特徴量記憶装置から、前記被験者に関連付けられた過去の特徴量である、過去特徴量を読み出す過去特徴量読出手段と、をさらに有し、
前記サーバの前記データ送信手段は、前記送信データに、読み出された前記被験者の前記過去特徴量を含めて、前記第1端末に送信する、請求項7に記載の診断支援システム。
【請求項9】
前記サーバは、
前記複数のクラスの各々に対応する毛細血管の特徴量の範囲又は代表値を、基準データとして記憶する基準データ記憶装置と、
前記アンケートについて想定される複数通りの回答の各々について、前記複数のクラスの各々に属する可能性を表す係数の組である係数データを、記憶する係数データ記
憶装置と、をさらに有し、
前記クラス判定手段は、
前記回答受信手段が受信した前記回答が、前記想定される複数通りの回答のいずれに該当するかを判定する回答判定手段と、
前記係数データ記憶装置が記憶し、前記回答判定手段により判定された回答に対応する係数データを選択する係数データ選択手段と、
前記特徴量抽出手段が抽出した前記特徴量を、前記係数データ選択手段が選択した前記係数データが有する前記係数の組の各々の大きさに応じて、前記複数のクラスの各々が空間領域として表される特徴量空間内で変位させることにより、補正する特徴量補正手段と、
前記基準データ記憶装置が記憶する前記基準データを参照することにより、前記特徴量補正手段により補正された前記特徴量が、前記複数のクラスのいずれに該当するか、を判定することにより、前記クラス判定をする特徴量判定手段と、を有する、請求項1から8のいずれかに記載の診断支援システム。
【請求項10】
前記基準データ記憶装置は、前記複数のクラスの各々に対応する毛細血管の特徴量の代表値を、前記基準データとして記憶し、
前記特徴量補正手段は、前記特徴量抽出手段が抽出した前記特徴量を、前記係数データ選択手段が選択した前記係数データが有する前記係数の組の各々の大きさに応じて、前記特徴量空間内で、前記複数のクラスの各々の前記特徴量の前記代表値に近づくように変位させることにより補正し、
前記特徴量判定手段は、前記複数のクラスのうち、前記特徴量補正手段により補正された前記特徴量に、前記特徴量空間内で前記代表値が最も近いクラスを、前記補正された前記特徴量が該当するクラスであると判定する、請求項9に記載の診断支援システム。
【請求項11】
前記サーバは、
特徴量回答記憶装置と、
前記特徴量抽出手段が抽出した前記特徴量と前記回答受信手段が受信した前記アンケートへの回答とを、互いに関連付けて前記特徴量回答記憶装置に記憶する特徴量回答記憶手段を、さらに有する、請求項9又は10に記載の診断支援システム。
【請求項12】
被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援システムであって、
サーバと、前記サーバにネットワークを通じて接続可能な第1端末と、を備え、
前記第1端末は、
前記被験者の毛細血管を撮影することにより前記毛細血管画像を得る撮影手段と、
前記毛細血管画像を前記サーバへ送信する画像送信手段と、を有し、
前記サーバは、
前記第1端末が送信した前記毛細血管画像を受信する画像受信手段と、
前記画像受信手段が受信した前記毛細血管画像から毛細血管の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
抽出した前記特徴量に基づいて、受信した前記毛細血管画像が表す毛細血管の状態が、あらかじめ設定された複数のクラスのいずれに該当するか、を判定するクラス判定をするクラス判定手段と、
前記クラス判定の結果を含むデータを、送信データとして前記第1端末に送信するデータ送信手段と、を有し、
前記第1端末は、
前記データ送信手段から送信された前記送信データを受信するデータ受信手段と、
受信した前記送信データを表示するデータ表示手段と、をさらに有し、
前記サーバの前記データ送信手段は、前記送信データを、前記第1端末により編集可能な形式である編集可能データとして前記第1端末に送信し、
前記第1端末は、
前記データ受信手段が受信した前記編集可能データを、前記第1端末への入力操作に従って編集する編集手段を、さらに有する、診断支援システム。
【請求項13】
前記第1端末は、
編集された前記編集可能データを、編集後データとして前記サーバに送信する編集後データ送信手段を、さらに有し、
前記サーバは、
前記編集後データ送信手段が送信した前記編集後データを受信する編集後データ受信手段と、
受信した前記編集後データに基づいて、編集できない確定データを作成する確定データ作成手段と、
作成した前記確定データを、前記第1端末に送信する確定データ送信手段をさらに有し、
前記第1端末は、
前記確定データ送信手段が送信した前記確定データを受信する確定データ受信手段と、
受信した前記確定データを表示する確定データ表示手段と、をさらに有する、請求項12に記載の診断支援システム。
【請求項14】
被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援システムであって、
サーバと、前記サーバにネットワークを通じて接続可能な第1端末と、を備え、
前記第1端末は、
前記被験者の毛細血管を撮影することにより前記毛細血管画像を得る撮影手段と、
前記毛細血管画像を前記サーバへ送信する画像送信手段と、を有し、
前記サーバは、
前記第1端末が送信した前記毛細血管画像を受信する画像受信手段と、
前記画像受信手段が受信した前記毛細血管画像から毛細血管の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
抽出した前記特徴量に基づいて、受信した前記毛細血管画像が表す毛細血管の状態が、あらかじめ設定された複数のクラスのいずれに該当するか、を判定するクラス判定をするクラス判定手段と、
前記クラス判定の結果を含むデータを、送信データとして前記第1端末に送信するデータ送信手段と、を有し、
前記第1端末は、
前記データ送信手段から送信された前記送信データを受信するデータ受信手段と、
受信した前記送信データを表示するデータ表示手段と、をさらに有し、
前記サーバは、
前記複数のクラスの各々に対応する、被験者の体質を表現するデータである体質データを、対応するクラスと関連付けて記憶する体質データ記憶装置と、
前記複数のクラスのうち、前記クラス判定の結果が示すクラスに対応する体質データを、前記体質データ記憶装置から読み出す、体質データ読出手段と、をさらに有し、
前記データ送信手段は、前記送信データに、読み出した前記体質データを含めて、前記第1端末に送信する、診断支援システム。
【請求項15】
被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援システムであって、
サーバと、前記サーバにネットワークを通じて接続可能な第1端末と、を備え、
前記第1端末は、
前記被験者の毛細血管を撮影することにより前記毛細血管画像を得る撮影手段と、
前記毛細血管画像を前記サーバへ送信する画像送信手段と、を有し、
前記サーバは、
前記第1端末が送信した前記毛細血管画像を受信する画像受信手段と、
前記画像受信手段が受信した前記毛細血管画像から毛細血管の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
抽出した前記特徴量に基づいて、受信した前記毛細血管画像が表す毛細血管の状態が、あらかじめ設定された複数のクラスのいずれに該当するか、を判定するクラス判定をするクラス判定手段と、
前記クラス判定の結果を含むデータを、送信データとして前記第1端末に送信するデータ送信手段と、を有し、
前記第1端末は、
前記データ送信手段から送信された前記送信データを受信するデータ受信手段と、
受信した前記送信データを表示するデータ表示手段と、をさらに有し、
前記サーバは、
前記複数のクラスの各々に対応する、被験者の体質の改善のためのアドバイスを表現する体質改善データを、対応するクラスと関連付けて記憶する体質改善データ記憶装置と、
前記複数のクラスのうち、前記クラス判定の結果が示すクラスに対応する体質改善データを、前記体質改善データ記憶装置から読み出す、体質改善データ読出手段と、をさらに有し、
前記データ送信手段は、前記送信データに、読み出した前記体質改善データを含めて、前記第1端末に送信する、診断支援システム。
【請求項16】
前記サーバは、
特徴量記憶装置と、
前記特徴量抽出手段が抽出した前記特徴量を、前記特徴量記憶装置に記憶する特徴量記憶手段と、をさらに備える、請求項12から15のいずれかに記載の診断支援システム。
【請求項17】
被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援システムであって、
サーバと、前記サーバにネットワークを通じて接続可能な第1端末と、を備え、
前記第1端末は、
前記被験者の毛細血管を撮影することにより前記毛細血管画像を得る撮影手段と、
前記毛細血管画像を前記サーバへ送信する画像送信手段と、を有し、
前記サーバは、
前記第1端末が送信した前記毛細血管画像を受信する画像受信手段と、
前記画像受信手段が受信した前記毛細血管画像から毛細血管の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
抽出した前記特徴量に基づいて、受信した前記毛細血管画像が表す毛細血管の状態が、あらかじめ設定された複数のクラスのいずれに該当するか、を判定するクラス判定をするクラス判定手段と、
前記クラス判定の結果を含むデータを、送信データとして前記第1端末に送信するデータ送信手段と、を有し、
前記第1端末は、
前記データ送信手段から送信された前記送信データを受信するデータ受信手段と、
受信した前記送信データを表示するデータ表示手段と、をさらに有し、
前記サーバは、
被験者特徴量記憶装置と、
抽出された前記特徴量を前記被験者と関連付けて、前記被験者特徴量記憶装置に記憶する、被験者特徴量記憶手段と、
前記被験者特徴量記憶装置から、前記被験者に関連付けられた過去の特徴量である、過去特徴量を読み出す過去特徴量読出手段と、をさらに有し、
前記サーバの前記データ送信手段は、前記送信データに、抽出した前記特徴量と、読み出された前記被験者の前記過去特徴量とを含めて、前記第1端末に送信する、診断支援システム。
【請求項18】
ネットワークに接続可能であり、被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援サーバであって、前記診断支援サーバは、請求項1から17のいずれかに記載の診断支援システムが備える前記サーバである診断支援サーバ。
【請求項19】
被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援プログラムであって、前記診断支援プログラムは、コンピュータを請求項18に記載の診断支援サーバとして機能させるプログラムである診断支援プログラム。
【請求項20】
ネットワークに接続可能であり、被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援サーバであって、請求項11に記載の診断支援システムが備える前記サーバである診断支援サーバを、保守する診断支援サーバ保守方法であって、
前記特徴量回答記憶装置から、記憶されている前記特徴量の群を読み出すことと、
読み出した前記特徴量の群に基づいて、毛細血管の状態に関して前記複数のクラスを再設定することと、
再設定された前記複数のクラスの各々に対応する特徴量の範囲又は代表値を、前記基準データとして前記基準データ記憶装置に記憶させることにより、記憶される前記基準データを更新することと、
前記特徴量回答記憶装置から、前記特徴量の群と関連付けて記憶されている、前記アンケートへの回答の群を読み出すことと、
読み出した前記アンケートへの回答の群に基づいて、前記係数データを算出することと、
算出した前記係数データを、前記係数データ記憶装置に記憶させることにより、記憶される前記係数データを更新することと、を含む診断支援サーバ保守方法。
【請求項21】
ネットワークに接続可能であり、被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援サーバであって、請求項16に記載の診断支援システムが備える前記サーバである診断支援サーバを、保守する診断支援サーバ保守方法であって、
前記特徴量記憶装置から、記憶されている前記特徴量の群を読み出すことと、
読み出した前記特徴量の群に基づいて、毛細血管の状態に関して前記複数のクラスを再設定することと、を含む診断支援サーバ保守方法。
【請求項22】
ネットワークに接続可能であり、被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援サーバであって、請求項17に記載の診断支援システムが備える前記サーバである診断支援サーバを、保守する診断支援サーバ保守方法であって、
前記被験者特徴量記憶装置から、記憶されている前記特徴量の群を読み出すことと、
読み出した前記特徴量の群に基づいて、毛細血管の状態に関して前記複数のクラスを再設定することと、を含む診断支援サーバ保守方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛細血管画像に基づいて診断支援をする、診断支援システム、診断支援サーバ、診断支援端末、及び診断支援プログラム、並びに診断支援サーバの保守方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、毛細血管は、年齢や体調によって変化することから、指先や眼底等の皮下毛細血管の状態を観察することにより、健康状態、生活習慣病、疾病等を把握することができると言われている。毛細血管は非常に繊細であり、肉眼では観察できないため、顕微鏡装置等の観察装置を用いることにより診断が行われている。なお、本願において、「毛細血管」という用語には皮下血管の他、粘膜下血管等も含むものとする。
【0003】
従来において、毛細血管の画像に基づく診断を支援するシステムとして、例えば、特許文献1~3に開示される技術が知られている。特許文献1に開示されるシステムは、毛細血管を撮影した画像を処理することにより、この画像中の毛細血管の形状を認識し、認識された毛細血管の形状から、毛細血管の長さ、太さ、鮮明度、異常度などを、それぞれ単一の数値の形式で算出している(特許文献1の明細書段落0006~0016及び
図3参照)。
【0004】
特許文献2に開示されるシステムは、指先の爪上皮の毛細血管を撮影したカラー動画像から、血管の密度、太さ、形状、及び血流速度を数値化し、各数値を、予めシステムに記憶された基準テーブルの数値データと比較することによりランク分けし、ランク分けされた全データを、別の基準テーブルの経験データと比較することにより、健康状態について「軽度の異常」、「重度の異常」などの総合評価を得ている(特許文献2の明細書段落0005、0006、0025及び
図11参照)。
【0005】
本願出願人により特許文献3に開示されるシステムは、クライアント・サーバシステムであり、クライアント端末において爪上皮の毛細血管を撮影することにより毛細血管画像を取得し、サーバにおいて、毛細血管画像に基づいて、指の長手方向(縦方向)を横切って横方向に走る乳頭下血管叢の有無、体液の濁り度合い、及び指の長手方向に走る血管の先端部の曲がり度合い、を判定し、さらに判定の結果に基づいて、健康状態について、「ストレスや心臓への負担が推察される」、「代謝不良や運動不足が推察される」、「主に生活習慣の乱れが推察される」などの評価をし、クライアント端末において評価の結果を表示している(特許文献3の明細書段落0008~0010及び
図8参照)。
【0006】
しかし、これらのシステムはいずれも、診断を支援する一定の判定結果を出力するものであるとしても、判定の基になるデータが毛細血管の画像に限られていることから、判定の精度に改善の余地があるものと思われた。また、提供する判定結果の内容が、数値や簡素な内容に限られていることから、判定結果の有用性についても改善の余地があるものと思われた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-157071号公報
【文献】特開2006-325714号公報
【文献】特許第6186663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、診断支援システム、診断支援サーバ、診断支援端末、診断支援プログラム、及び診断支援サーバ保守方法に関し、被験者の健康状態に関する診断を支援する判定結果の精度を向上させること、及び判定結果の有用性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様によるものは、被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援システムであって、サーバと、前記サーバにネットワークを通じて接続可能な第1端末と、前記第1端末と同一又は異なり、前記サーバに前記ネットワークを通じて接続可能な第2端末と、を備えている。
前記第1端末は、前記被験者の毛細血管を撮影することにより前記毛細血管画像を得る撮影手段と、前記毛細血管画像を前記サーバへ送信する画像送信手段と、を有している。
そして、前記サーバは、アンケート送信手段と、回答受信手段と、画像受信手段と、特徴量抽出手段と、クラス判定手段と、データ送信手段と、を有している。アンケート送信手段は、前記第2端末の要求に応じて前記被験者の生活習慣に関するアンケートを前記第2端末に送信する。回答受信手段は、前記第2端末から送信された、前記被験者による前記アンケートへの回答を受信する。画像受信手段は、前記第1端末が送信した前記毛細血管画像を受信する。特徴量抽出手段は、前記画像受信手段が受信した前記毛細血管画像から毛細血管の特徴量を抽出する。クラス判定手段は、抽出した前記特徴量と受信した前記アンケートへの回答とに基づいて、受信した前記毛細血管画像が表す毛細血管の状態が、あらかじめ設定された複数のクラスのいずれに該当するか、を判定するクラス判定をする。データ送信手段は、前記クラス判定の結果を含むデータを、送信データとして前記第1端末に送信する。
また、前記第1端末は、前記データ送信手段から送信された前記送信データを受信するデータ受信手段と、受信した前記送信データを表示するデータ表示手段と、をさらに有する。
【0010】
この構成によれば、被験者の毛細血管の状態が、あらかじめ設定された複数のクラスのいずれに該当するかを示すクラス判定の結果が、第1端末に表示されるので、この表示されたデータを、被験者の健康状態の診断に役立てることができる。クラス判定は、撮影された被験者の毛細血管の画像から抽出された特徴量に加えて、被験者の生活習慣に関するアンケートへの回答に基づいて、行われるので、被験者の診断を支援する判定結果の精度が高まる。なお、本発明の各態様において、毛細血管画像は、静止画像、動画像、モノクロ画像、カラー画像のいずれでもよい。また、サーバは、クラウドサーバのように分散されたサーバであってもよい。さらに、特徴量は、例えば、毛細血管の長さ、太さ、本数、濁りの度合い、曲がりなどである。
【0011】
本発明のうち第2の態様によるものは、第1の態様による診断支援システムであって、前記第2端末は前記第1端末とは異なっている。
【0012】
この構成によれば、被験者は、自身の生活習慣に関するアンケートへの回答を、第1端末の操作者に知られることなく、別の端末からサーバに送信することができる。すなわち被験者は、自身の生活習慣に関するプライバシーを、第1端末の操作者から守りつつ、アンケートへの回答をサーバへ送ることができる。
【0013】
本発明のうち第3の態様によるものは、第1又は第2の態様による診断支援システムであって、前記サーバの前記データ送信手段は、前記送信データを、前記第1端末により編集可能な形式である編集可能データとして前記第1端末に送信する。そして、前記第1端末は、前記データ受信手段が受信した前記編集可能データを、前記第1端末への入力操作に従って編集する編集手段を、さらに有する。
【0014】
この構成によれば、第1端末に表示される、被験者の診断に役立つデータに、入力操作する操作者の知識及び経験、又は操作者が被験者に問診した結果を、反映させることができる。
【0015】
本発明のうち第4の態様によるものは、第3の態様による診断支援システムであって、前記第1端末は、編集された前記編集可能データを、編集後データとして前記サーバに送信する編集後データ送信手段を、さらに有している。
そして、前記サーバは、前記編集後データ送信手段が送信した前記編集後データを受信する編集後データ受信手段と、受信した前記編集後データに基づいて、編集できない確定データを作成する確定データ作成手段と、作成した前記確定データを、前記第1端末に送信する確定データ送信手段をさらに有している。
さらに、前記第1端末は、前記確定データ送信手段が送信した前記確定データを受信する確定データ受信手段と、受信した前記確定データを表示する確定データ表示手段と、をさらに有している。
【0016】
この構成によれば、第1端末の操作者による編集の内容を反映した確定したデータが、第1端末に表示される。
【0017】
本発明のうち第5の態様によるものは、第1から第4のいずれかの態様による診断支援システムであって、前記サーバは、前記複数のクラスの各々に対応する、被験者の体質を表現するデータである体質データを、対応するクラスと関連付けて記憶する体質データ記憶装置と、前記複数のクラスのうち、前記クラス判定の結果が示すクラスに対応する体質データを、前記体質データ記憶装置から読み出す、体質データ読出手段と、をさらに有している。そして、前記データ送信手段は、前記送信データに、読み出した前記体質データを含めて、前記第1端末に送信する。
【0018】
この構成によれば、被験者の体質に関する診断に役立つ体質データが、第1端末に表示される。すなわち、第1端末に表示されるデータの有用性が向上する。体質データは、例えば、高血圧、運度不足、ストレス、高血糖などを内容とする。なお、本発明の各態様において、記憶装置は、例えばハードディスク装置である。また、本発明の各態様における記憶装置は、互いに同一の記憶装置であってもよく、互いに別個の記憶装置であっても良い。
【0019】
本発明のうち第6の態様によるものは、第1から第5のいずれかの態様による診断支援システムであって、前記サーバは、前記複数のクラスの各々に対応する、被験者の体質の改善のためのアドバイスを表現する体質改善データを、対応するクラスと関連付けて記憶する体質改善データ記憶装置と、前記複数のクラスのうち、前記クラス判定の結果が示すクラスに対応する体質改善データを、前記体質改善データ記憶装置から読み出す、体質改善データ読出手段と、をさらに有している。そして、前記データ送信手段は、前記送信データに、読み出した前記体質改善データを含めて、前記第1端末に送信する。
【0020】
この構成によれば、被験者の体質の改善のためのアドバイスに役立つ体質改善データが、第1端末に表示される。すなわち、第1端末に表示されるデータの有用性が向上する。体質改善データは、例えば、休養奨励、節制奨励、運動奨励などを内容とする。
【0021】
本発明のうち第7の態様によるものは、第1から第6のいずれかの態様による診断支援システムであって、前記サーバの前記データ送信手段は、前記送信データに、抽出した前記特徴量を含めて、前記第1端末に送信する。
【0022】
この構成によれば、被験者の毛細血管の特徴量に基づく、より細かい、被験者の健康状態の診断が可能となる。
【0023】
本発明のうち第8の態様によるものは、第7の態様による診断支援システムであって、前記サーバは、被験者特徴量記憶装置と、抽出された前記特徴量を前記被験者と関連付けて、前記被験者特徴量記憶装置に記憶する、被験者特徴量記憶手段と、前記被験者特徴量記憶装置から、前記被験者に関連付けられた過去の特徴量である、過去特徴量を読み出す過去特徴量読出手段と、をさらに有している。そして、前記サーバの前記データ送信手段は、前記送信データに、読み出された前記被験者の前記過去特徴量を含めて、前記第1端末に送信する。
【0024】
この構成によれば、同一被験者の特徴量の履歴をも考慮した、被験者の健康状態の診断が可能となる。すなわち、第1端末に表示されるデータの有用性が向上する。
【0025】
本発明のうち第9の態様によるものは、第1から第8のいずれかの態様による診断支援システムであって、前記サーバは、前記複数のクラスの各々に対応する毛細血管の特徴量の範囲又は代表値を、基準データとして記憶する基準データ記憶装置と、前記アンケートについて想定される複数通りの回答の各々について、前記複数のクラスの各々に属する可能性を表す係数の組である係数データを、記憶する係数データ記憶装置と、をさらに有している。
そして、前記クラス判定手段は、回答判定手段と、係数データ選択手段と、特徴量補正手段と、特徴量判定手段と、を有している。回答判定手段は、前記回答受信手段が受信した前記回答が、前記想定される複数通りの回答のいずれに該当するかを判定する。係数データ選択手段は、前記係数データ記憶装置が記憶し、前記回答判定手段により判定された回答に対応する係数データを選択する。特徴量補正手段は、前記特徴量抽出手段が抽出した前記特徴量を、前記係数データ選択手段が選択した前記係数データが有する前記係数の組の各々の大きさに応じて、前記複数のクラスの各々が空間領域として表される特徴量空間内で変位させることにより、補正する。特徴量判定手段は、前記基準データ記憶装置が記憶する前記基準データを参照することにより、前記特徴量補正手段により補正された前記特徴量が、前記複数のクラスのいずれに該当するか、を判定することにより、前記クラス判定をする。
【0026】
この構成によれば、クラス判定が比較的簡便に行い得る。
【0027】
本発明のうち第10の態様によるものは、第9の態様による診断支援システムであって、前記基準データ記憶装置は、前記複数のクラスの各々に対応する毛細血管の特徴量の代表値を、前記基準データとして記憶する。そして、前記特徴量補正手段は、前記特徴量抽出手段が抽出した前記特徴量を、前記係数データ選択手段が選択した前記係数データが有する前記係数の組の各々の大きさに応じて、前記特徴量空間内で、前記複数のクラスの各々の前記特徴量の前記代表値に近づくように変位させることにより補正する。さらに、前記特徴量判定手段は、前記複数のクラスのうち、前記特徴量補正手段により補正された前記特徴量に、前記特徴量空間内で前記代表値が最も近いクラスを、前記補正された前記特徴量が該当するクラスであると判定する。
【0028】
この構成によれば、クラスの判定が、さらに簡便に行い得る。
【0029】
本発明のうち第11の態様によるものは、第9又は第10の態様による診断支援システムであって、前記サーバは、特徴量回答記憶装置と、前記特徴量抽出手段が抽出した前記特徴量と前記回答受信手段が受信した前記アンケートへの回答とを、互いに関連付けて前記特徴量回答記憶装置に記憶する特徴量回答記憶手段を、さらに有する。
【0030】
この構成によれば、診断支援システムの使用に伴って、特徴量回答記憶装置に互いに関連付けて蓄積される特徴量とアンケートへの回答とを、毛細血管の状態を複数のクラスに再設定し、かつ係数データを再設定するのに利用することができる。それにより、より多くのデータに基づく、より精度の高いクラス判定が可能となる。
【0031】
本発明のうち第12の態様によるものは、被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援システムであって、サーバと、前記サーバにネットワークを通じて接続可能な第1端末と、を備えている。
前記第1端末は、前記被験者の毛細血管を撮影することにより前記毛細血管画像を得る撮影手段と、前記毛細血管画像を前記サーバへ送信する画像送信手段と、を有している。
前記サーバは、画像受信手段と、特徴量抽出手段と、クラス判定手段と、データ送信手段と、を有している。画像受信手段は、前記第1端末が送信した前記毛細血管画像を受信する。特徴量抽出手段は、前記画像受信手段が受信した前記毛細血管画像から毛細血管の特徴量を抽出する。クラス判定手段は、抽出した前記特徴量に基づいて、受信した前記毛細血管画像が表す毛細血管の状態が、あらかじめ設定された複数のクラスのいずれに該当するか、を判定するクラス判定をする。データ送信手段は、前記クラス判定の結果を含むデータを、送信データとして前記第1端末に送信する。
そして、前記第1端末は、前記データ送信手段から送信された前記送信データを受信するデータ受信手段と、受信した前記送信データを表示するデータ表示手段と、をさらに有している。さらに、前記サーバの前記データ送信手段は、前記送信データを、前記第1端末により編集可能な形式である編集可能データとして前記第1端末に送信する。そして、前記第1端末は、前記データ受信手段が受信した前記編集可能データを、前記第1端末への入力操作に従って編集する編集手段を、さらに有する。
【0032】
この構成によれば、被験者の毛細血管の状態が、あらかじめ設定された複数のクラスのいずれに該当するかを示すクラス判定の結果が、第1端末に表示されるので、この表示されたデータを、被験者の健康状態の診断に役立てることができる。また、この構成によれば、第1端末に表示される、被験者の診断に役立つデータに、入力操作する操作者の知識及び経験、又は操作者が被験者に問診した結果を、反映させることができる。すなわち、第1端末に表示されるデータの有用性が向上する。
【0033】
本発明のうち第13の態様によるものは、第12の態様による診断支援システムであって、前記第1端末は、編集された前記編集可能データを、編集後データとして前記サーバに送信する編集後データ送信手段を、さらに有している。
そして、前記サーバは、前記編集後データ送信手段が送信した前記編集後データを受信する編集後データ受信手段と、受信した前記編集後データに基づいて、編集できない確定データを作成する確定データ作成手段と、作成した前記確定データを、前記第1端末に送信する確定データ送信手段をさらに有している。
また、前記第1端末は、前記確定データ送信手段が送信した前記確定データを受信する確定データ受信手段と、受信した前記確定データを表示する確定データ表示手段と、をさらに有している。
【0034】
この構成によれば、操作者による編集の内容を反映した確定したデータが、第1端末に表示される。
【0035】
本発明のうち第14の態様によるものは、被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援システムであって、サーバと、前記サーバにネットワークを通じて接続可能な第1端末と、を備えている。
前記第1端末は、前記被験者の毛細血管を撮影することにより前記毛細血管画像を得る撮影手段と、前記毛細血管画像を前記サーバへ送信する画像送信手段と、を有している。
前記サーバは、画像受信手段と、特徴量抽出手段と、クラス判定手段と、データ送信手段と、を有している。画像受信手段は、前記第1端末が送信した前記毛細血管画像を受信する。特徴量抽出手段は、前記画像受信手段が受信した前記毛細血管画像から毛細血管の特徴量を抽出する。クラス判定手段は、抽出した前記特徴量に基づいて、受信した前記毛細血管画像が表す毛細血管の状態が、あらかじめ設定された複数のクラスのいずれに該当するか、を判定するクラス判定をする。データ送信手段は、前記クラス判定の結果を含むデータを、送信データとして前記第1端末に送信する。
そして、前記第1端末は、前記データ送信手段から送信された前記送信データを受信するデータ受信手段と、受信した前記送信データを表示するデータ表示手段と、をさらに有している。また、前記サーバは、前記複数のクラスの各々に対応する、被験者の体質を表現するデータである体質データを、対応するクラスと関連付けて記憶する体質データ記憶装置と、前記複数のクラスのうち、前記クラス判定の結果が示すクラスに対応する体質データを、前記体質データ記憶装置から読み出す、体質データ読出手段と、をさらに有している。さらに、前記データ送信手段は、前記送信データに、読み出した前記体質データを含めて、前記第1端末に送信する。
【0036】
この構成によれば、被験者の毛細血管の状態が、あらかじめ設定された複数のクラスのいずれに該当するかを示すクラス判定の結果が、第1端末に表示されるので、この表示されたデータを、被験者の健康状態の診断に役立てることができる。また、この構成によれば、被験者の体質に関する診断に役立つ体質データが、第1端末に表示される。すなわち、第1端末に表示されるデータの有用性が向上する。体質データは、例えば、高血圧、運度不足、ストレス、高血糖などを内容とする。
【0037】
本発明のうち第15の態様によるものは、被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援システムであって、サーバと、前記サーバにネットワークを通じて接続可能な第1端末と、を備えている。
前記第1端末は、前記被験者の毛細血管を撮影することにより前記毛細血管画像を得る撮影手段と、前記毛細血管画像を前記サーバへ送信する画像送信手段と、を有している。
前記サーバは、画像受信手段と、特徴量抽出手段と、クラス判定手段と、データ送信手段と、を有している。画像受信手段は、前記第1端末が送信した前記毛細血管画像を受信する。特徴量抽出手段は、前記画像受信手段が受信した前記毛細血管画像から毛細血管の特徴量を抽出する。クラス判定手段は、抽出した前記特徴量に基づいて、受信した前記毛細血管画像が表す毛細血管の状態が、あらかじめ設定された複数のクラスのいずれに該当するか、を判定するクラス判定をする。データ送信手段は、前記クラス判定の結果を含むデータを、送信データとして前記第1端末に送信する。
また、前記第1端末は、前記データ送信手段から送信された前記送信データを受信するデータ受信手段と、受信した前記送信データを表示するデータ表示手段と、をさらに有している。
そして、前記サーバは、前記複数のクラスの各々に対応する、被験者の体質の改善のためのアドバイスを表現する体質改善データを、対応するクラスと関連付けて記憶する体質改善データ記憶装置と、前記複数のクラスのうち、前記クラス判定の結果が示すクラスに対応する体質改善データを、前記体質改善データ記憶装置から読み出す、体質改善データ読出手段と、をさらに有している。さらに、前記データ送信手段は、前記送信データに、読み出した前記体質改善データを含めて、前記第1端末に送信する。
【0038】
この構成によれば、被験者の毛細血管の状態が、あらかじめ設定された複数のクラスのいずれに該当するかを示すクラス判定の結果が、第1端末に表示されるので、この表示されたデータを、被験者の健康状態の診断に役立てることができる。また、この構成によれば、被験者の体質の改善のためのアドバイスに役立つ体質改善データが、第1端末に表示される。すなわち、第1端末に表示されるデータの有用性が向上する。体質改善データは、例えば、休養奨励、節制奨励、運動奨励などを内容とする。
【0039】
本発明のうち第16の態様によるものは、第12から第15のいずれかの態様による診断支援システムであって、前記サーバは、特徴量記憶装置と、前記特徴量抽出手段が抽出した前記特徴量を、前記特徴量記憶装置に記憶する特徴量記憶手段と、をさらに備えている。
【0040】
この構成によれば、診断支援システムの使用に伴って、特徴量記憶装置に蓄積される特徴量を、毛細血管の状態を複数のクラスに再設定するのに利用することができる。それにより、より多くのデータに基づく、より精度の高いクラス判定が可能となる。
【0041】
本発明のうち第17の態様によるものは、被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援システムであって、サーバと、前記サーバにネットワークを通じて接続可能な第1端末と、を備えている。
前記第1端末は、前記被験者の毛細血管を撮影することにより前記毛細血管画像を得る撮影手段と、前記毛細血管画像を前記サーバへ送信する画像送信手段と、を有している。
前記サーバは、画像受信手段と、特徴量抽出手段と、クラス判定手段と、データ送信手段と、を有している。画像受信手段は、前記第1端末が送信した前記毛細血管画像を受信する。特徴量抽出手段は、前記画像受信手段が受信した前記毛細血管画像から毛細血管の特徴量を抽出する。クラス判定手段は、抽出した前記特徴量に基づいて、受信した前記毛細血管画像が表す毛細血管の状態が、あらかじめ設定された複数のクラスのいずれに該当するか、を判定するクラス判定をする。データ送信手段は、前記クラス判定の結果を含むデータを、送信データとして前記第1端末に送信する。
そして、前記第1端末は、前記データ送信手段から送信された前記送信データを受信するデータ受信手段と、受信した前記送信データを表示するデータ表示手段と、をさらに有している。
また、前記サーバは、被験者特徴量記憶装置と、抽出された前記特徴量を前記被験者と関連付けて、前記被験者特徴量記憶装置に記憶する、被験者特徴量記憶手段と、前記被験者特徴量記憶装置から、前記被験者に関連付けられた過去の特徴量である、過去特徴量を読み出す過去特徴量読出手段と、をさらに有している。
さらに、前記サーバの前記データ送信手段は、前記送信データに、抽出した前記特徴量と、読み出された前記被験者の前記過去特徴量とを含めて、前記第1端末に送信する。
【0042】
この構成によれば、被験者の毛細血管の状態が、あらかじめ設定された複数のクラスのいずれに該当するかを示すクラス判定の結果が、第1端末に表示されるので、この表示されたデータを、被験者の健康状態の診断に役立てることができる。また、この構成によれば、被験者の毛細血管の特徴量に基づく、より細かい、被験者の健康状態の診断が可能となる。さらに、この構成によれば、同一被験者の特徴量の履歴をも考慮した、被験者の健康状態の診断が可能となる。すなわち、第1端末に表示されるデータの有用性が向上する。
【0043】
本発明のうち第18の態様によるものは、ネットワークに接続可能であり、被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援サーバであって、前記診断支援サーバは、第1から第17のいずれかの態様による診断支援システムが備える前記サーバである。
【0044】
この構成は、本発明の各態様による診断支援システムが備えるサーバに該当する。
【0045】
本発明のうち第19の態様によるものは、ネットワークに接続可能であり、被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援端末であって、前記診断支援端末は、第1から第17のいずれかの態様による診断支援システムが備える前記第1端末である。
【0046】
この構成は、本発明の各態様による診断支援システムが備える第1端末に該当する。
【0047】
本発明のうち第20の態様によるものは、被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援プログラムであって、前記診断支援プログラムは、コンピュータを第18の態様による診断支援サーバとして機能させるプログラムである。
【0048】
この構成は、本発明の一態様による診断支援サーバとしてコンピュータを機能させるプログラムに該当する。
【0049】
本発明のうち第21の態様によるものは、被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援プログラムであって、前記診断支援プログラムは、コンピュータを第19の態様による診断支援端末として機能させるプログラムである。
【0050】
この構成は、本発明の一態様による診断支援端末としてコンピュータを機能させるプログラムに該当する。
【0051】
本発明のうち第22の態様によるものは、ネットワークに接続可能であり、被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援サーバであって、第11の態様による診断支援システムが備える前記サーバである診断支援サーバを、保守する診断支援サーバ保守方法であって、以下の行為(a)~(f)を含んでいる。
(a)前記特徴量回答記憶装置から、記憶されている前記特徴量の群を読み出すこと。(b)読み出した前記特徴量の群に基づいて、毛細血管の状態に関して前記複数のクラスを再設定すること。(c)再設定された前記複数のクラスの各々に対応する特徴量の範囲又は代表値を、前記基準データとして前記基準データ記憶装置に記憶させることにより、記憶される前記基準データを更新すること。(d)前記特徴量回答記憶装置から、前記特徴量の群と関連付けて記憶されている、前記アンケートへの回答の群を読み出すこと。(e)読み出した前記アンケートへの回答の群に基づいて、前記係数データを算出すること。(f)算出した前記係数データを、前記係数データ記憶装置に記憶させることにより、記憶される前記係数データを更新すること。
【0052】
この構成によれば、診断支援サーバの使用に伴って特徴量回答記憶装置に蓄積される特徴量及びアンケートへの回答を利用して、より精度の高い特徴量の範囲又は代表値、及びより精度の高い係数データを算出し、これらを以後の診断支援サーバの使用に供することにより、より精度の高い健康状態の診断に役立てることができる。なお、行為(a)~(f)は、記載の順序で行われるものと、限定される訳ではない。
【0053】
本発明のうち第23の態様によるものは、ネットワークに接続可能であり、被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援サーバであって、第16の態様による診断支援システムが備える前記サーバである診断支援サーバを、保守する診断支援サーバ保守方法であって、前記特徴量記憶装置から、記憶されている前記特徴量の群を読み出すことと、読み出した前記特徴量の群に基づいて、毛細血管の状態に関して前記複数のクラスを再設定することと、を含んでいる。
【0054】
この構成によれば、診断支援サーバの使用に伴って特徴量記憶装置に蓄積される特徴量を利用して、より精度の高い複数のクラスを再設定し、再設定した複数のクラスを、以後の診断支援サーバの使用に供することにより、より精度の高い健康状態の診断に役立てることができる。
【0055】
本発明のうち第24の態様によるものは、ネットワークに接続可能であり、被験者の毛細血管画像に基づいて前記被験者の健康状態に関する診断を支援する診断支援サーバであって、第17の態様による診断支援システムが備える前記サーバである診断支援サーバを、保守する診断支援サーバ保守方法であって、前記被験者特徴量記憶装置から、記憶されている前記特徴量の群を読み出すことと、読み出した前記特徴量の群に基づいて、毛細血管の状態に関して前記複数のクラスを再設定することと、を含んでいる。
【0056】
この構成によれば、診断支援サーバの使用に伴って被験者特徴量記憶装置に蓄積される特徴量を利用して、より精度の高い複数のクラスを再設定し、再設定した複数のクラスを、以後のサーバの使用に供することにより、より精度の高い健康状態の診断に役立てることができる。
【発明の効果】
【0057】
以上のように本発明によれば、診断支援システム、診断支援サーバ、診断支援端末、診断支援プログラム、及び診断支援サーバ保守方法に関し、被験者の健康状態に関する診断を支援する判定結果の精度が向上し、また、判定結果の有用性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】本発明の一実施の形態による診断支援システムの構成を例示する概略説明図である。
【
図2】
図1の診断支援システムを構成する診断支援サーバ、診断拠点端末、及び被験者端末のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【
図3】
図1の診断支援システムにおける処理の流れと信号の流れを、同時に例示するシーケンス図形式のフローチャートである。
【
図4】
図3のクラス判定の処理の流れを展開して例示するフローチャートである。
【
図5】被験者端末の表示装置に表示されたアンケート回答受付画面を例示する画面図である。
【
図6】アンケートについて想定される複数通りの回答の各々について、係数データを算出する手順を例示する説明図である。
【
図7】クラス判定において実行される特徴量補正の要領を例示する説明図である。
【
図8】毛細血管ランクの算出に用いられる点数化関数を例示するグラフである。
【
図9】毛細血管ランクの算出に用いられる別の点数化関数を例示するグラフである。
【
図10】診断拠点端末の表示装置に表示される診断サジェスト画面を例示する画面図である。
【
図11】診断拠点端末の表示装置に表示される診断要素選択画面を例示する画面図である。
【
図12】診断拠点端末の表示装置に表示される診断結果画面を例示する画面図である。
【
図13】
図1の診断支援サーバの構築・運用・保守の手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0059】
[1.診断支援システムの概略]
図1は、本発明の一実施の形態による診断支援システムの構成を例示する概略説明図である。この診断支援システム101は、被験者1の毛細血管画像に基づいて被験者1の健康状態に関する診断を支援するシステムであり、診断支援サーバ102、診断拠点端末103、及び被験者端末104を有している。診断拠点端末103及び被験者端末104は、インターネット等のネットワーク5を通じて、診断支援サーバ102に接続される。
【0060】
診断拠点端末103は、被験者1の毛細血管を撮影することにより毛細血管画像を取得し、取得した毛細血管画像を診断支援サーバ102に送信する。被験者端末104は、診断支援サーバ102が準備したアンケートを表示し、被験者1が入力するアンケートへの回答を診断支援サーバ102に送信する。診断支援サーバ102は、診断拠点端末103から送られた毛細血管画像と、被験者端末104から送られたアンケート回答とに基づいて、被験者の健康状態に関する診断に役立つ診断支援データを作成し、作成した診断支援データを診断拠点端末103に送信する。被験者1は、診断拠点端末103を通じて、診断支援データを受け取ることができる。診断支援データには、診断拠点端末103の操作者(オペレータ)9の専門的な知識・経験に基づく内容の追加あるいは変更を加えることも可能である。
【0061】
診断支援サーバ102は、パーソナルコンピュータであってもよく、図示例のようにサーバ提供業者が提供するサーバであってもよく、中でもクラウドサーバのように分散型のサーバであってもよい。
【0062】
診断拠点端末103は、例えばパーソナルコンピュータであり、被験者1の毛細血管を撮影することにより毛細血管画像を得る毛細血管スコープ3が接続されている。毛細血管スコープ3は、例えば、毛細血管の像を光学的に拡大する顕微鏡と、拡大された像をCCD等の受光素子により電気信号に変換する素子とを有している。毛細血管スコープ3が取得する毛細血管画像は、一般に、静止画像、動画像、モノクロ画像、カラー画像のいずれでもよいが、一例として静止画像である。毛細血管スコープ3それ自体は、従来周知であるので、その詳細な説明は略する。診断拠点端末103は、診断拠点7に設置される。診断拠点7は、不特定の被験者1に診断サービスを提供する場所又は施設であり、例えば、薬局、病院、診療所、役所などの公共施設、ホテルのロビーなどが想定される。診断拠点端末103は、診断拠点7に配置された操作者(オペレータ)9が操作する。
【0063】
被験者端末104は、診断支援システム101のユーザ(利用者)である被験者1に帰属するなど、被験者1が管理する端末である。被験者端末104は、例えば被験者1の住居8に置かれるパーソナルコンピュータであってもよく、図示例のように、被験者1が所有するスマートフォンであってもよい。
【0064】
図2は、診断支援システム101を構成する診断支援サーバ102、診断拠点端末103、及び被験者端末104のハードウェア構成を例示するブロック図である。図示の例では、それらの装置102,103,104は、パーソナルコンピュータとして構成されており、主要回路部12、入力装置11、表示装置13及びハードディスク装置(HDD)14を有している。また、主要回路部12は、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理部)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23、インタフェース(I/F)24、及び読取装置25を有している。
【0065】
CPU21は、ROM22及びRAM23に格納されたプログラムを実行する。ROM22には、例えば、装置102,103,104の立ち上げ直後にOS(Operating System)の起動やハードウェアの設定を行うBIOS(Basic Input Output System)が格納されている。RAM23には、ハードディスク装置14に保存されているOS、アプリケーション等が必要に応じて展開され、CPU21による実行に供される。RAM23は、CPU21が処理を実行する際に生成されるデータを、一時的に格納するワークメモリとしても用いられる。
【0066】
インタフェース(I/F)24は、不図示のIDE(Integrated Device Electronics)コントローラ、LANコントローラ、入出力コントローラなどを有しており、これらの回路を通じて、入力装置11等の外部装置がCPU21に接続される。CPU21、ROM22、RAM23及びインタフェース24は、バスライン26を通じて互いに接続されている。
【0067】
入力装置11は、例えばキーボード、マウスなどを含み、操作者が手操作によりデータを入力するための装置である。表示装置13は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)装置であり、画像データを目視可能な画像として表示する装置である。ハードディスク装置14は、OS、アプリケーション等を格納すると共に、処理に要するデータを格納する。読取装置25は、プログラムやデータを記録したCD-ROM等の記録媒体27から、記録された内容を読み取る装置である。装置102,103,104は、例えばLAN15を通じて、インターネット等のネットワーク5(
図1)に接続され、例えばTCP/IPプロトコルによる通信を実現する。LAN15は、インタフェース24に含まれているLANコントローラを通じてバスライン26に接続され、ルータ(図示略)を通じてネットワーク5に接続される。
【0068】
図3は、診断支援システム101における処理の流れと信号の流れを、同時に例示するシーケンス図形式のフローチャートである。処理の流れは実線矢印で示し、信号の流れは点線矢印で示している。診断支援サーバ102は、処理S1~S17を実行する。診断拠点端末103は、処理S21~S27を実行する。また、被験者端末104は、処理S31~S37を実行する。各処理は、各処理を実行する手段に対応する。すなわち、診断支援サーバ102は、処理S1~S17をそれぞれ実行する手段を有しており、例えば、記憶装置(例えば
図2のハードディスク装置14)に特徴量を記憶する処理S6を実行する特徴量記憶手段を有している。同様に、診断拠点端末103は、処理S21~S27をそれぞれ実行する手段を有し、例えば、毛細血管スコープ3を動作させることにより毛細血管を撮影する毛細血管撮影手段を有している。被験者端末104は、処理S31~S37をそれぞれ実行する手段を有し、例えばアンケートを要求するアンケート要求手段を有している。従って、
図3は、診断支援サーバ102、診断拠点端末103、及び被験者端末104の機能ブロック図をも兼ねている。
【0069】
被験者端末104は、先ず、診断支援サーバ102に、生活習慣に関するアンケートを要求する(S31)。一例として、被験者端末104は、被験者1の操作により、診断支援サーバ102に先ずアクセスし、ログイン画面をダウンロードし、事前に登録しているユーザID(ユーザ識別符号)及び暗号を、診断支援サーバ102に送信することにより、メニュー画面をダウンロードする。被験者1がメニュー画面上で、アンケートの要求を選択すると、被験者端末104は、アンケートを要求する信号を、診断支援サーバ102に送信する。
【0070】
診断支援サーバ102は、被験者端末104が送信したアンケート要求信号を受信する(S1)。診断支援サーバ102は、アンケート要求信号を受信すると、記憶装置(例えば
図2のハードディスク装置14)に事前に記憶しているアンケートを読み出し、被験者端末104に送信する(S2)。被験者端末104は、送信されたアンケートを受信する(S32)。一例として、アンケートには、被験者1の生活習慣に関するいくつかの設問と、それに対する回答の選択肢が用意されている。被験者端末104は、アンケートを受信すると、表示装置(例えば
図2の表示装置13)に、アンケート回答受付画面を表示し、被験者1による回答操作を受け付ける(S33)。
【0071】
被験者端末104に表示されるアンケート回答受付画面上で、被験者1が回答を確定させる操作をするなどにより、被験者端末104は回答の受付(S33)を終了し、確定したアンケート回答を診断支援サーバ102に送信する(S34)。診断支援サーバ102は、送信されたアンケート回答を受信する(S3)。診断支援サーバ102は、受信したアンケート回答を、被験者1と関連付けて記憶装置(例えば
図2のハードディスク装置14)に記憶する(S3A)。被験者1を識別するには、例えばユーザIDが用いられる。
【0072】
被験者1は、例えば薬局である診断拠点7に随時に足を運び、操作者9が操作する毛細血管スコープ3により、例えば指先の皮下毛細血管を撮影してもらう(S21)。被験者1は、同時に、例えば自身のユーザIDを、診断拠点端末103に入力することができる。それにより、診断支援サーバ102は、診断拠点端末103に毛細血管画像を取得させた被験者1と、被験者端末104を通じてアンケート回答を入力した被験者1との間の同一性を、認識することが可能となる。診断拠点端末103は、取得した被験者1の毛細血管画像を、診断支援サーバ102に送信する(S22)。
【0073】
診断支援サーバ102は、送信された被験者1の毛細血管画像を受信する(S4)。診断支援サーバ102は、次に、受信した毛細血管画像から、特徴量を抽出する(S5)。特徴量は、例えば、毛細血管の長さ、太さ、本数、濁りの度合い、曲がりなどである。すなわち処理S5では、受信した毛細血管画像から、毛細血管の長さなどの特徴量が数値化される。特徴量の抽出には、従来周知の技術を用いることができる。診断支援サーバ102は、抽出した特徴量を、被験者1(例えばユーザID)と関連付けて記憶装置(例えば
図2のハードディスク装置14)に記憶する(S6)。記憶装置のうち、被験者1に関連付けて特徴量を記憶する部分は、本発明の「被験者特徴量記憶装置」の一具体例に相当する。また、記憶装置のうち、処理S3Aによりアンケート回答を被験者1と関連付けて記憶する部分と、処理S6により被験者1に関連付けて特徴量を記憶する部分とは、合わせて、本発明の「特徴量回答記憶装置」の一具体例に相当する。
【0074】
診断支援サーバ102は、さらに、抽出した特徴量と、同一の被験者1のアンケート回答とに基づいて、受信した毛細血管画像が表す毛細血管の状態を、あらかじめ設定された複数のクラスのいずれに該当するか、を判定するクラス判定を実行する(S7)。複数のクラスは、毛細血管の状態(あるいは毛細血管の特徴量)について、各クラスが共通の傾向を示すものとして、定められる。
【0075】
診断支援サーバ102は、処理S7と前後して、処理S5により抽出された被験者1の特徴量に基づいて、被験者1の毛細血管ランクを算出する(S7A)。毛細血管ランクは、抽出された特徴量について、正常な値にどれほど近いかを示す指標である。診断支援サーバ102は、クラス判定の処理S7の終了後に、被験者1の体質データを読み出す(S8)。診断支援サーバ102は、処理S8を実行するために、あらかじめ、記憶装置(例えば
図2のハードディスク装置14)に、複数のクラスの各々に対応する、被験者1の体質を表現するデータである体質データを、対応するクラスと関連付けて記憶する。記憶装置のうち、体質データを記憶する部分は、本発明の「体質データ記憶装置」の一具体例に相当する。診断支援サーバ102は処理S8において、複数のクラスのうち、クラス判定(S7)の結果が示すクラスに対応する体質データを、体質データ記憶装置から読み出す。
【0076】
診断支援サーバ102は、処理S7A、S8と前後して、被験者1の体質改善データを読み出す(S9)。診断支援サーバ102は、処理S9を実行するために、あらかじめ、記憶装置(例えば
図2のハードディスク装置14)に、複数のクラスの各々に対応する、被験者1の体質の改善のためのアドバイスを表現するデータである体質改善データを、対応するクラスと関連付けて記憶する。記憶装置のうち、体質改善データを記憶する部分は、本発明の「体質改善データ記憶装置」の一具体例に相当する。診断支援サーバ102は処理S9において、複数のクラスのうち、クラス判定(S7)の結果が示すクラスに対応する体質改善データを、体質改善データ記憶装置から読み出す。
【0077】
診断支援サーバ102は、処理S5~S9と前後して、被験者特徴量記憶装置から、被験者1に関連付けられた過去の特徴量である、過去特徴量を読み出す(S10)。診断支援サーバ102は、診断拠点端末103に送るべき送信データとして、特徴量抽出処理S5で抽出された被験者1の特徴量、クラス判定処理S6でなされたクラス判定の結果、毛細血管ランク算出処理S7Aで算出された毛細血管ランク、体質データ読出処理S8で読み出された体質データ、体質改善データ読出処理S9で読み出された体質改善データ、及び過去特徴量読出処理S10で読み出された過去特徴量を含む診断支援データを作成する(S11)。診断支援サーバ102は、診断拠点端末103により編集可能な形式である編集可能データとして、送信すべき診断支援データを作成する。診断支援サーバ102は、作成した編集可能データを診断拠点端末103に送信する(S12)。
【0078】
診断拠点端末103は、診断支援サーバ102から送られた編集可能データを受信する(S23)。診断拠点端末103は、診断拠点7の操作者9の操作に基づいて、編集可能データを編集する(S24)。これにより、被験者1の診断に役立つ編集可能データに、操作者9の知識及び経験、又は操作者9が被験者1に問診した結果を、反映させることができる。診断拠点端末103は、編集が完了すると、編集済みの編集後データを、診断支援サーバ102に送信する(S25)。
【0079】
診断支援サーバ102は、送信された編集後データを受信する(S13)。診断支援サーバ102は、さらに、受信した編集後データに基づいて、編集できない確定データを作成する(S14)。編集可能データが、操作者向けの内容及び形式であるのに対し、確定データは、被験者1に提示するのに適した内容及び形式に変換される。診断支援サーバ102は、作成した確定データを診断拠点端末103に送信する(S15)。
【0080】
診断拠点端末103は、送信された確定データを受信する(S26)。診断拠点端末103は、受信した確定データを、被験者1のために表示装置に表示する(S27)。表示装置は、例えば、
図2に例示した表示装置13、あるいは印字装置(プリンタ)である。これにより、被験者1は、自身の健康状態に関する診断結果を知ることができる。
【0081】
被験者1は、被験者端末104に確定データを送信するよう、診断支援サーバ102に要求することも可能である。被験者1の操作により被験者端末104が、確定データ要求を診断支援サーバ102に送信する(S35)と、診断支援サーバ102は、送信された確定データ要求を受信する(S16)。アンケート要求処理(S31)と同様に、被験者端末104が、例えば被験者1のID及びパスワードを送信することにより、診断支援サーバ102は、被験者1を特定することができる。診断支援サーバ102は、確定データ要求を受信すると、被験者1の確定データを被験者端末104に送信する(S17)。被験者端末104は、送信された確定データを受信する(S36)。被験者端末104は、受信した確定データを、表示装置に表示する(S37)。これにより、被験者1は、自身の健康状態に関する診断結果を、被験者端末104を用いて知ることができる。
【0082】
診断支援システム101は、以上のように動作するので、以下のような利点を有する。クラス判定処理(S7)は、撮影された被験者1の毛細血管の画像から抽出された特徴量に加えて、被験者1の生活習慣に関するアンケートへの回答に基づいて、行われるので、被験者の診断を支援する判定結果の精度が高まる。また、被験者1は、自身の生活習慣に関するアンケートへの回答を、自身が管理する端末を用いることにより、診断拠点端末103の操作者9に知られることなく、自身で診断支援サーバ102に送信することができる。すなわち被験者1は、自身の生活習慣に関するプライバシーを、操作者9から守りつつ、アンケートへの回答を診断支援サーバ102へ送ることができる。さらに、処理S12において、編集可能データが診断拠点端末103に送られるので、診断拠点端末103に表示され、被験者1の診断に役立つデータに、操作者9の知識及び経験、又は操作者が被験者に問診した結果を、反映させることができる。
【0083】
さらに、被験者1の体質に関する診断に役立つ体質データ、及び被験者1の体質の改善のためのアドバイスに役立つ体質改善データが、診断拠点端末103に表示されるので、診断拠点端末103に表示されるデータの有用性が向上する。また、処理S5で抽出された被験者1の毛細血管の特徴量を含めて、診断支援データである送信データが、診断支援サーバ102から診断拠点端末103に送られる(S12)ので、被験者1の毛細血管の特徴量に基づく、より細かい、被験者1の健康状態の診断が可能となる。さらに、処理S10で読み出された被験者1の過去の特徴量を含めて送信データが、診断支援サーバ102から診断拠点端末103に送られる(S12)ので、被験者1の特徴量の履歴をも考慮した、被験者1の健康状態の診断が可能となる。
【0084】
図4は、クラス判定の処理S7を展開して例示するフローチャートである。診断支援サーバ102は、クラス判定の処理S7を実行するために、あらかじめ記憶装置(例えば
図2のハードディスク装置14)に、複数のクラスの各々に対応する毛細血管の特徴量の範囲又は代表値を、基準データとして記憶するとともに、アンケートについて想定される複数通りの回答の各々について、複数のクラスの各々に属する可能性を表す係数の組である係数データを記憶する。記憶装置のうち、基準データを記憶する部分は、本発明の「基準データ記憶装置」の一具体例に相当し、係数データを記憶する部分は、本発明の「係数データ記憶装置」の一具体例に相当する。
【0085】
診断支援サーバ102は、クラス判定の処理S7を開始すると、まず、被験者1のアンケート回答が、想定される複数通りの回答のいずれに該当するかを判定する(S41)。診断支援サーバ102は、次に、記憶装置に記憶された係数データのうちから、判定された回答に対応する係数データを選択する(S42)。診断支援サーバ102は、さらに、処理S5で抽出した特徴量を、処理S42で選択した係数データが有する係数の組の各々の大きさに応じて、複数のクラスの各々が空間領域として表される特徴量空間内で変位させることにより、補正する(S43)。診断支援サーバ102は、さらに、記憶装置に記憶される基準データを参照することにより、処理S43で補正した特徴量が、複数のクラスのいずれに該当するか、を判定することにより、クラス判定をする(S44)。
【0086】
アンケート回答受信処理S3(
図3)により受信された被験者1のアンケート回答が、アンケート回答記憶処理S3Aにより、被験者1に対応づけて記憶装置に記憶され、特徴量抽出処理S5により抽出された被験者1の毛細血管の特徴量が、特徴量記憶処理S6により、被験者1に対応づけて記憶装置に記憶される。このため、特徴量とアンケート回答とが、互いに対応づけて、記憶装置に記憶されることとなる。診断支援システム101の使用に伴って、記憶装置に互いに関連付けて蓄積される特徴量とアンケートへの回答とを、毛細血管の状態を複数のクラスに再設定し、かつ係数データを再設定するのに利用することができる。それにより、より多くのデータに基づく、より精度の高いクラス判定が可能となる。
【0087】
[2.診断支援システムの詳細な具体例]
以下において、
図3及び
図4に例示した手順について、より詳細な具体例を説明する。
【0088】
(2-1.アンケート受付S33)
図5は、被験者端末104の表示装置に表示されたアンケート回答受付画面を例示する画面図である。図示の例では、幾つかの質問のうちの1つと、それに対する回答の選択肢とが表示されている。図示のように、被験者端末104がスマートフォンである例では、被験者1は指タッチにより、複数の選択肢のうちの1つを、回答として選択することができる。表1は、アンケートに含まれる設問と、それぞれに対する回答の選択肢を例示している。
【0089】
【0090】
(2-2.クラス判定S7,S41~S44)
クラス判定S7に用いられる基準データを得るには、一例として、一群の被験者から採取することにより得られた一群の毛細血管画像を、初めに準備する。一群の毛細血管画像は、数が多いほど、より精度の高い基準データ及び係数データが得られる。これら一群の毛細血管画像から、処理S5(
図3)と同様に、毛細血管の特徴量を抽出する。特徴量は、一例として、毛細血管の長さ、本数、曲がり、太さ、及び濁りの5種類のパラメータを含んでいる。従って、特徴量は、これら5種類のパラメータのそれぞれを座標軸とする5次元空間である特徴量空間におけるベクトルである特徴量ベクトルに対応させることができる。
【0091】
特徴量空間の中で、特徴量ベクトル同士の距離を定義することができるので、一群の毛細血管画像から得られる一群の特徴量ベクトルに対して、特徴量ベクトル同士の距離に基づいて、クラスター分析を実行することができる。クラスター分析により、一群の特徴量ベクトルが複数のクラスター(本願では「クラス」とも称する)にクラスタリング(本願では「クラス分け」とも称する)される。クラスター分析自体は、従来周知の技術であるので、その手順についての説明は略する。採用するクラスター分析は、一例として階層型クラスター分析である。表2は、サンプルとして準備した一群の毛細血管画像から特徴量を抽出し、抽出により得られた一群の特徴量ベクトルに、階層型クラスター分析を施すことにより得られたクラス分けの結果を例示している。表2に例示するデータは、本願出願人が、660人の被験者1から試験的に採取した8491件の毛細血管画像に基づいて得たものである。
【0092】
【0093】
表2に例示されるクラス分けでは、クラスA~Fと仮に名付けられた6クラスにクラス分けがなされている。各クラスにおける、長さ、本数等のパラメータの代表値、すなわち特徴量の代表値の一例として、中央値が算出され、表2に例示されている。毛細血管の長さ、本数等の中央値の組は、それらを成分とする5次元のベクトルである中央値ベクトルに対応させることができる。例えば、クラスAの中央値ベクトルは、(759.07, 4, 4.92762, 48.8672, 0.445833)を成分とする。
【0094】
クラスA~Fのそれぞれに対応づけて、それらのパラメータの代表値が、基準データ記憶装置に記憶される。すなわち表2は、基準データ記憶装置に記憶される内容を、表形式で例示したものに相当する。診断支援システム101の使用に伴い、処理S6(
図3参照)により、特徴量が記憶装置に蓄積されてゆく。蓄積された特徴量を用いて、クラスター分析をやり直すことにより、より大きな数の一群の特徴量に基づくクラスター分析を行うことが可能となる。それにより、クラスター分析の精度、及び代表値の精度が、より高められることとなる。新たに得られる精度の高い代表値によって、基準データ記憶装置に記憶される内容を更新することができる。これらの処理は、例えば、診断支援サーバ102の管理者又はユーザによって行われる。
【0095】
係数データ記憶装置に記憶される係数データは、診断支援サーバ102が、処理S5(
図3参照)において抽出した被験者1の特徴量を、処理S3において受信したアンケート回答に基づいて補正するのに用いられる。係数データを得るには、一群の毛細血管画像を採取した一群の被験者から、それぞれアンケート回答を同時に取得しておく。表3は、被験者1毎に、対応するアンケート回答の内容と、クラス判定の結果とを例示している。表3に例示するデータは、上記660人とは別の104人の被験者1から試験的に採取した104件の毛細血管画像と、アンケートに相当する問診への回答とに基づいて得たものである。
【0096】
【0097】
表3の例では、画像IDが「3」である毛細血管画像が採取された被験者1は、運動不足でなく(運動不足=0)、服薬中であり(服薬中=1)、喫煙しておらず(喫煙=0)、毛細血管クラスについて「クラスD」と判定されている。ここでのクラス判定は、各画像IDに対応する毛細血管画像の特徴量ベクトルが、表2に例示するクラスA~Fのうちのいずれに属するか、についての判定を意味する。一例として、各画像IDの毛細血管画像の特徴量ベクトルが、表2に例示するクラスA~Fの中央値ベクトルのうち、最も近い(すなわち特徴量空間において最も距離が小さい)中央値ベクトルに対応するクラスが選択される。例えば、画像IDが「3」である毛細血管画像は、その特徴量ベクトルがクラスA~Fの中央値ベクトルのうち、クラスDの中央値ベクトルに最も近いために、クラスDに属すると判定される。
【0098】
特徴量空間内でのベクトル同士の距離は、一例として次のように定義される。特徴量ベクトルは、前述の通り、一例として毛細血管の長さ、本数、曲がり、太さ、及び濁りという、異なる種類のパラメータを成分に持つ5次元ベクトルである。従って、一群の特徴量ベクトルの分散は、一般に次元毎(すなわち成分毎)に異なる。分散の大きな次元と小さな次元の影響を揃えるために、各画像IDに対応する特徴量ベクトルと各毛細血管クラスA~Fの中央値ベクトルとの間の距離の一例として、マハラノビス距離を採用することができる。
【0099】
ある画像IDに対応する特徴量ベクトルをx→=(x_1,x_2,x_3,x_4,x_5)Tとし、ある毛細血管クラスの中央値ベクトルをy→=(y_1, y_2, y_3, y_4, y_5)Tとし、それぞれの次元の分散を成分とする分散ベクトルを、σ→=(σ_1, σ_2, σ_3, σ_4, σ_5) Tとすると、ベクトルx→とベクトルy→との間のマハラノビス距離dは、数式1で与えられる。すなわち、マハラノビス距離dは、次元毎の分散によって規格化された、特徴空間内の距離に相当する。ここで、符号「→」はベクトルを表し、符号「T」は、行と列を入れ替えること、すなわち行列の転置を表している。
【0100】
【0101】
表3に例示する、被験者1毎のアンケート回答の内容と毛細血管クラスに関するデータに対して、一例として決定木分析を実行することにより、係数データが得られる。決定木は、アンケートの質問を進めるごとに節に含まれるクラスの純度(含まれるクラスの単一性)が高まるように作成される。
【0102】
図6は、アンケートについて想定される複数通りの回答の各々について、係数データを算出する手順の一例として、決定木を可視化した説明図である。
図6において、根・節・葉にある枠の数字は、左から順にクラスA,B,C,D,E,Fの数を指しており、枠内のアルファベットは最も多いクラスを表している。図示の例では、104人の被験者1のうち薬を服用していて((薬=0)=no;すなわち「薬=0」の分岐において「NO」が選択される)、腰痛肩こりがなく((腰痛肩こり=1)=no)、運動不足でもない((運動不足=1)=no)人は7人あって、その毛細血管クラスは、1人がクラスB、残り6人がクラスFである。
【0103】
このようにクラスAからクラスFまでの6種類のクラスに分類する決定木では、その葉において、各クラスの割合p→=(p_A, p_B, p_C, p_D, p_E, p_F) Tが計算される。係数データは係数ベクトルとして、ベクトルp→で表すことができる。上記例の回答に対応する係数ベクトルは、p→=(p_A, p_B, p_C, p_D, p_E, p_F)T=(0, 1/7, 0, 0, 0, 6/7)Tとなる。アンケートへの複数通りの回答毎、すなわち決定木の葉毎に、係数ベクトルp→が定まる。
【0104】
診断支援システム101の使用に伴い、既に述べた特徴量とともに、アンケート回答が記憶装置に蓄積されてゆく(処理S3A)。蓄積された特徴量を用いて、クラスター分析をやり直すとともに、アンケート回答に基づく決定木分析をやり直すことにより、より大きな数の一群の特徴量及びアンケート回答に基づく係数データを得ることが可能となる。それにより、係数データの精度が、より高められることとなる。新たに得られる精度の高い係数データによって、係数データ記憶装置に記憶される内容を更新することができる。これらの処理は、例えば、診断支援サーバ102の管理者又はユーザによって行われる。
【0105】
処理S41(
図4)では、被験者1のアンケート回答が、例えば
図6に例示する複数通りの回答のいずれに該当するかが、判定される。例えば、被験者1のアンケート回答が、上述した例、すなわち、薬を服用していて((薬=0)=no)、腰痛肩こりがなく((腰痛肩こり=1)=no)、運動不足でもない((運動不足=1)=no)という回答、に該当するものと判定される。この場合には、処理S42において、被験者1のアンケート回答に対応する係数データとして、係数ベクトルp
→=(0, 1/7, 0, 0, 0, 6/7)
Tが選択される。次に、処理S5(
図3)で抽出した特徴量を補正する処理S43(
図4)、及び補正された特徴量が属するクラスを判定する処理44について、手順の一例を詳述する。
【0106】
ある毛細血管クラスZ(Z=A~Fのいずれか)の中央値ベクトルを、(y_Z ) →=(y_1Z, y_2Z, y_3Z, y_4Z, y_5Z )Tとし、クラスA~Fの中央値行列Yを、数式2の通りに定義する。
【0107】
【0108】
さらに、補正ベクトルc→=(c_1,c_2,c_3,c_4,c_5)を、数式3により定義する。
【0109】
【0110】
補正ベクトルc→は、係数ベクトルp→で表される、被験者1のアンケート回答に対応する決定木の葉について、毛細血管クラスA~Fのそれぞれへの類似度を表している。例えば、係数ベクトルがクラスAのみを成分とするp→=(1, 0, 0, 0, 0, 0)Tである場合には、補正ベクトルはc→=(y_1A, y_2A, y_3A, y_4A, y_5A)であり、クラスAの中央値ベクトルと一致する。
【0111】
毛細血管画像によるクラスタリングは、あくまで毛細血管画像の情報のみを用いたものである。そこで、アンケート回答による情報から生成した補正ベクトルc→を用いて、ユーザの生活習慣を反映した補正を行う。処理S5で抽出した特徴量を表す特徴量ベクトルを、x→=(x_1,x_2,x_3,x_4,x_5)Tとする。補正後の特徴量ベクトル (x') →は、一例として、補正前の特徴量ベクトルx→と補正ベクトルc→を用いて、数式4で表される。数式4は、特徴量空間内で、特徴量ベクトルと補正ベクトルとの中間に、補正後の特徴量ベクトルを定めることを意味している。
【0112】
【0113】
図7は、数式4に従って実行される特徴量補正の要領を例示する説明図である。
図7では、簡略化のために、5次元の特徴量空間を、毛細血管の長さと太さのみを次元とする2次元空間に置き換えている。また、毛細血管の状態が、クラスA,B,Cの3クラスにクラス分けされているものとしている。
図7において、符号「?」が付された実線円は、処理S5で新規に抽出した特徴量に対応する補正前の特徴量ベクトルの位置を表している。同様に、符号「A」、「B」、「C」が付された実線円は、クラスA、B、Cの中央値ベクトルの位置を表している。
【0114】
図示の例は、補正前の特徴量ベクトルが、クラスA、B、Cの領域のうち、クラスAに属するがクラスBに近い場合であって、アンケート回答がクラスA、B、Cのそれぞれの場合の補正後の特徴量ベクトルの位置を、点線円で示している。例えば「アンケート回答がクラスBである」とは、係数ベクトルが、p→=(p_A, p_B, p_C)T=(0, 1, 0)Tであることを意味する。アンケート回答がクラスBである場合には、補正前の特徴量ベクトルは、補正によりクラスBの中央値ベクトル(符号「B」が付された実線円)に接近し、符号「B」が付された点線円が示す位置となる。以上のようにして、処理S5で抽出した特徴量を補正する処理S43が実行される。
【0115】
補正後の特徴量ベクトルが、どのクラスに属するかは、例えば、補正後の特徴量ベクトルに最も近い中央値ベクトルが、どのクラスの中央値ベクトルであるかによって、判断することができる。例えば、数式1において、補正後の特徴量ベクトルをベクトルx→として、各クラスの中央値ベクトルy→との距離を計算し、距離が最も小さい中央値ベクトルy→に対応するクラスに、補正後の特徴量ベクトルx→が属する、と判断することができる。
【0116】
図7の例において、符号「B」が付された点線円で表される補正後の特徴量ベクトルは、クラスA、B,Cのうち、クラスBの中央値ベクトルに最も近いため、補正後の特徴量は、クラスBに属するものと判定される。以上のようにして、補正された特徴量が属するクラスを判定する処理44が実行される。このように、特徴量ベクトルに補正を加えることにより、毛細血管の形状のみならず、被験者1のアンケート回答をも加味した多角的な評価が可能となる。
【0117】
(2-3.毛細血管ランク算出S7A)
毛細血管ランクは、毛細血管の長さ・太さ・濁り・曲がり・本数などのパラメータ(すなわち特徴量)が、正常な毛細血管の標準的な値に近いほど高いランクとなるように設計される。各パラメータを、例えば0~100点の範囲で点数化し、その合計点によりランク付けをする。ランク決めをする閾値は、例えば、処理S6により記憶装置に蓄積される特徴量を分析することにより、更新することができる。
【0118】
点数化の一つの方法として、正規分布による点数化が可能である。この方法では、
図8に例示する正規分布関数を用いて、正常な値からどれだけ離れているかを数値化する。入力値をx、正常な値をμ、母集団の分散をσとすると、点数p
scoreは、数式5により与えられる。正常な値μは、例えば、正常なサンプル群の中央値などから求めることが可能である。
【0119】
【0120】
ただし数式5は、数値が正常値より過剰でも、過小でも評価が低くなるパラメータにのみ適用できる。例えば、パラメータが毛細血管の太さであれば、点数化関数として
図8に例示するガウス関数を用いることができる。一方、数値が高いほど評価が高くなるパラメータ、例えば毛細血管の長さについては、
図9に例示する双曲線正接などの双曲線関数を用いることができる。
【0121】
パラメータ毎の点数の合計点(例えば0~500点の範囲)をそのまま毛細血管ランクとしても良いし、合計点を幾つかの区域に分けることにより毛細血管ランクを定めても良い。例えば、合計点が0~200点の範囲はランクC、201~400点の範囲はランクB、401~500点の範囲はランクA、などと定めることも可能である。
【0122】
(2-4.編集可能データ作成S11)
好ましい一具体例では、編集可能データ作成処理S11により作成され、編集可能データ送信処理S12により診断拠点端末103に送信される編集可能データには、診断拠点端末103の表示装置に表示すべき画面として、診断サジェスト画面と診断要素選択画面との2種類の画面を表現するデータが含まれる。
【0123】
図10は、診断拠点端末103の表示装置に表示される診断サジェスト画面を例示する画面図である。診断サジェスト画面は、操作者9が毛細血管画像の解析結果を確認するためのページであり、編集不能である。操作者9は、このページの情報を、ユーザの体質に対する質問の組み立てに役立てる。
【0124】
図11は、診断拠点端末103の表示装置に表示される診断要素選択画面を例示する画面図である。診断要素選択画面は、診断サジェスト画面で提示された内容と、質問を通して新たに得た情報を元に、最終的にユーザに提示すべき診断文を構成する要素を選択するためのページであり、編集可能である。操作者9は、編集可能データ受信処理S23により診断拠点端末103が受信したこれらの画面のデータを、随時にページ切替しながら診断拠点端末103の表示装置に表示させることができる。
【0125】
図10に例示する診断サジェスト画面では、左上欄に、被験者1のIDのほか、診断支援サーバ102が判定した毛細血管ランク、毛細血管タイプ(毛細血管クラスと同義)が表示される。右上欄には、毛細血管のパラメータ毎の点数が、レーダーチャートの形式で表示される。右下欄には、毛細血管撮影処理S21により撮影された毛細血管画像が表示される。このように、編集可能データ送信処理S12により診断拠点端末103に送信される編集可能データには、毛細血管のパラメータ毎の点数、毛細血管画像を含めることもできる。
【0126】
左下欄には、項目毎の診断サジェスト(すなわち、操作者9による診断の支援となる示唆)の内容が表示される。図示例では、毛細血管の形状についてのサジェスト、体質の傾向についてのサジェスト、体質改善のためのアドバイスについてのサジェストが含まれる。これらのサジェストの内容は、診断支援サーバ102が判定した毛細血管クラスに基づいて、作成したデフォルトの診断結果に相当する。このデフォルトの診断結果は、診断要素選択画面上において、操作者9により編集が可能である。すなわち、最終的な診断は操作者9に委ねられている。
【0127】
診断支援サーバ102は、毛細血管の形状についてのサジェストを作成するために、あらかじめ、記憶装置(例えば
図2のハードディスク装置14)に、複数のクラスの各々に対応する、毛細血管の形状を表現する形状表現データを、対応するクラスと関連付けて記憶する。診断支援サーバ102は、被験者1について判定した毛細血管クラスに対応する形状表現データを、記憶装置から読み出し、読み出した形状表現データを毛細血管の形状についてのサジェストとして、診断サジェスト画面に含める。体質についてのサジェストは、体質データ読出処理S8により読み出された体質データに相当する。また、体質改善のためのアドバイスについてのサジェストは、体質改善データ読出処理S9により読み出された体質改善データに、相当する。既に述べたように、診断支援サーバ102は、処理S8、S9を実行するために、あらかじめ、記憶装置(例えば
図2のハードディスク装置14)に、複数のクラスの各々に対応する体質データ及び体質改善データを、対応するクラスと関連付けて記憶する。
【0128】
表4は、
図11に例示する診断要素選択画面の構成要素の名称と役割とを説明している。
【0129】
【0130】
形状選択エリア(1)、傾向選択エリア(2)、及びアドバイス選択エリア(3)に配置される選択ボタンは、選択・非選択が見た目で分かるように、色で表示分けされる。図示例では、例えば形状選択エリア(1)では、「少ない」、「濁り」、「バイパス」が選択されている。ボタンは1クリックする毎に、選択状態と非選択状態が入れ替わる。
【0131】
形状選択エリア(1)の選択ボタンの選択・非選択状態は、操作者9が操作する前のデフォルトでは、
図10に例示する毛細血管の形状についてのサジェストに対応している。同様に、傾向選択エリア(2)の選択ボタンの選択・非選択状態は、操作者9が操作する前のデフォルトでは、
図10に例示する体質の傾向についてのサジェストに対応している。また、アドバイス選択エリア(3)の選択ボタンの選択・非選択状態は、操作者9が操作する前のデフォルトでは、
図10に例示する体質改善のためのアドバイスについてのサジェストに対応している。
【0132】
選択できるボタンの数には限界がある。限界は、例えば、形状選択については3個、傾向選択については3個、アドバイス選択については1個である。各エリア(1)~(3)の右上端部には、現在選択されている個数が限界とともに、分数の形式で表示される。限界を超えて選択しようとして、ボタンをクリックしても、クリックは無効となる。
【0133】
診断文生成ボタン(7)は、形状選択・傾向選択・アドバイス選択のいずれのボタンも選択されていない場合に、クリックされると、赤字でメッセージを表示する。例えば、「診断要素ボタンを選択してください」というメッセージが、診断文生成ボタン(7)の下方に表示される。
【0134】
毛細血管の形状、被験者1の体質、体質改善のアドバイスの3つの要素をまとめて診断要素とする。各要素の詳細を以下に例示する。
形状選択エリア(1)において選択される形状選択は、毛細血管にどのような形状的特徴があるかを選択する。選択肢は、一例として表5に示す12種類である。
【0135】
【0136】
傾向選択エリア(2)において選択される体質選択は、被験者1の体質としてあてはまると思われるものを選択する。選択肢は、一例として表6に示す12種類である。
【0137】
【0138】
アドバイス選択エリア(3)において選択されるアドバイス選択は、操作者9の専門知識・経験に基づく、被験者1へのアドバイスの内容を選択する。選択肢は、一例として表7に示す6種類である。
【0139】
【0140】
診断文(4)は、選択された診断要素から自動生成される。また、文面上でさらに編集することも可能である。操作者9が初めから全文を作成してもよい。編集及び全文作成は、例えばキーボード・マウス等の入力装置(例えば
図2に例示する入力装置11)を用いて行うことができる。診断文(4)の自動生成、すなわち文章の合成には、例えば箇条書き、あるいは合成アルゴリズムが用いられる。合成アルゴリズムとして、例えば表8に例示するデータが用いられる。例えば、毛細血管の形状について「太い」が選択されておれば、「毛細血管が太めです。」という文を、診断文(4)の中に合成する。診断支援サーバ102は、表8の内容を、記憶装置(例えば
図2のハードディスク装置14)に、あらかじめ記憶する。
【0141】
【0142】
各毛細血管クラスにおける診断サジェストの内容については、あらかじめ表9に例示する診断サジェストテーブルを作成し、診断支援サーバ102の記憶装置(例えば
図2のハードディスク装置14)に記憶しておく。すなわち診断支援サーバ102は、表9の内容をも、記憶装置にあらかじめ記憶する。診断支援サーバ102は、クラス判定処理S7により被験者1の毛細血管クラスを判定すると、診断サジェストテーブルを参照し、判定した毛細血管クラスに対応する診断サジェストを読み出す(処理S8、S9など)。表9の内容は、診断支援サーバ102のメンテナンスやバージョンアップの際に、記憶装置に収集されたデータに基づいて改善していくことが可能である。これらの作業は、例えば、診断支援サーバ102の管理者又はユーザによって行われる。
【0143】
【0144】
診断文(4)を生成する機能について、さらに説明する。文章の骨格としては、例えば「毛細血管の形状→そこから読み取れる傾向→それらを踏まえたアドバイス」の構成を採る。文章を生成するには、テンプレートを利用することができる。例えば、表10に例示するテンプレートを、診断支援サーバ102の記憶装置(例えば
図2のハードディスク装置14)に記憶させておく。診断支援サーバ102は、表9に例示する診断サジェストテーブルを参照することにより、毛細血管クラスに対応する診断サジェストの文章片を読出し、読み出した文章片によって、表10に例示するテンプレートの各要素を埋めてゆく。表10において、要素A1, A2, A3には毛細血管の形状、要素B1, B2, B3には体質の傾向、要素C1にはアドバイスに関する文章片が充てられる。
【0145】
【0146】
文章片はテンプレートに合わせて、違和感なく文章を合成できるように設計することが望ましい。表11に示すテーブルは、表8に例示した診断サジェストに対応する、より洗練された文章片を例示する。表11に例示するテーブルをも、診断支援サーバ102の記憶装置(例えば
図2のハードディスク装置14)にあらかじめ記憶させておく。診断支援サーバ102は、表9に例示する診断サジェストテーブルを参照することにより、毛細血管クラスに対応する診断サジェストを読出すとともに、読み出した診断サジェストに対応する文章片を、表11から読み出す。そうして、診断支援サーバ102は、読み出した文章片によって、表10に例示するテンプレートの各要素を埋めてゆく。
【0147】
【0148】
表12は、このようにして作成された診断文(4)の一例を示している。
【0149】
【0150】
(2-5.確定データ作成S14)
図12は、診断拠点端末103の表示装置に表示される診断結果画面を例示する画面図である。診断結果画面は、診断支援サーバ102が、確定データ作成処理S14により、確定データを表示する画面として作成する。図示例では、診断結果画面は、A4縦向きで印刷が可能なフォーマットにより構成され、以下の7つの要素を含んでいる。
【0151】
(1)ヘッダー部
ヘッダー部は、画面最上段に位置し、日付・場所等の情報を表示する。
(2)基本データ部
基本データ部は、基本データと診断結果の要約となる情報を表示する。以下の項目を含む。
・被験者1の識別符号(ID)。毛細血管撮影処理S21に前後して、被験者1又は操作者9が診断拠点端末103に入力する。
・性別。毛細血管撮影処理S21に前後して、被験者1又は操作者9が診断拠点端末103に入力する。
・年代。毛細血管撮影処理S21に前後して、被験者1又は操作者9が診断拠点端末103に入力する。
・毛細血管ランク。
・毛細血管クラス。
(3)毛細血管画像部
毛細血管画像部は、毛細血管撮影処理S21により撮影され、診断支援サーバ102による解析に使用された被験者1の毛細血管画像を表示する。
(4)二次元バーコード部
二次元バーコード部は、被験者端末104に診断結果を表示するための二次元バーコードを表示する。被験者端末104がスマートフォンである場合には、被験者端末104がこの二次元バーコードを読み取ることにより、確定データ要求処理S35(
図3)が実行され、続いて処理S16、S17、S36、S37が実行されることにより、
図12に例示する確定データが被験者端末104の表示装置に表示される。
(5)経時データ部
経時データ部は、横軸を日付、縦軸を毛細血管パラメータの点数とする折れ線グラフを表示する。すなわち、経時データ部は、毛細血管パラメータの点数の経時変化を表示する。毛細血管パラメータ(すなわち毛細血管の特徴量)を点数により表示することは、毛細血管の特徴量を表示する好ましい一形式である。
(6)パラメータ部
パラメータ部は、点数化された現在の毛細血管パラメータを、レーダーチャート形式により表示する。
(7)解析結果部
解析結果部は、解析及び診断の結果をまとめた文章を表示する。図示例は、3種類の文章により構成されている。
解析結果部のうち、毛細血管ランクの説明文については、例えば表13のテーブルを参照することにより、作成される。
【0152】
【0153】
解析結果部のうち、毛細血管クラスの説明文については、例えば表14のテーブルを参照することにより、作成される。
【0154】
【0155】
これらの表13及び表14に例示するテーブルも、診断支援サーバ102の記憶装置(例えば
図2のハードディスク装置14)にあらかじめ記憶される。表13及び表14の内容も、診断支援サーバ102のメンテナンスやバージョンアップの際に、記憶装置に収集されたデータに基づいて改善していくことが可能である。
【0156】
解析結果部のうち、アドバイスの文章は、
図11に例示する診断要素選択画面において、編集がなされた後の診断文の内容を表示する。このように、診断支援サーバ102は、診断拠点端末103によって編集(S24)がなされた編集後データに、画面のフォーマット及び文章の形式・内容などに、適宜の変更を加えて、被験者1が情報を受け取り易い形態へと変更を加えることにより、確定データを作成する(S14)ことができる。
【0157】
[3.診断支援サーバ102の構築・運用・保守]
次に、診断支援サーバ102を構築し、運用し、かつ保守する手順について、これまでに例示した内容をまとめて示す。
図13は、診断支援サーバ102の構築・運用・保守の手順を例示するフローチャートである。
図13に例示する手順に沿った作業は、例えば、診断支援サーバ102の管理者又は診断支援サーバ102のユーザによって行われる。診断支援サーバ102を運用する前に、当然ながら診断支援サーバ102の構築が行われる。診断支援サーバ102の構築は、診断支援サーバ102の動作を規定するプログラムを作成し、診断支援サーバ102の記憶装置(例えば
図2のハードディスク装置14)に記憶させるとともに(S51)、プログラムが参照する様々な参照データを作成し、診断支援サーバ102の記憶装置(例えば
図2のハードディスク装置14)に記憶させる(S52)ことによって行われる。
表15は、参照データを例示している。参照データD1~D10の全ては、これまでに既に説明しているため、それぞれの詳細については、説明を略する。表15は、参照データD1~D10の各々について、既に例示した表などの具体例との対応関係についても示している。
【表15】
【0158】
診断支援サーバ102の構築が終了すると、診断支援サーバ102は運用に供される(S53)。診断支援サーバ102は、運用時にはプログラムに従って自動的に動作する。診断支援サーバ102の運用時の動作は、
図3に処理S1~S17として例示されている。診断支援サーバ102は、診断支援サーバ102の管理者等が、診断支援サーバ102を保守すべきと判断するか、診断支援サーバ102の運用を終了すべきと判断するのでなければ(S54)、運用(S53)の動作、例えば処理S1~S17を自動的に反復する。運用(S53)を繰り返すのに伴い、診断支援サーバ102の記憶装置には、特徴量、アンケート回答などのデータが蓄積される。
【0159】
管理者等は、診断支援サーバ102を保守すべきと判断すると(S54)、保守の作業に移行する。保守の作業では、記憶装置に蓄積された特徴量、アンケート回答などのデータに基づいて、クラスタリング解析及び決定木分析を新たに行い、その結果に基づいて、参照データD1~D10の全て又は一部を新たに作成する。参照データD1~D10のうち新たに作成されたデータにより、記憶装置に記憶される参照データD1~D10が置き換えられる(S52)。このようにして、記憶装置に記憶される参照データD1~D10は、運用を繰り返す中で、適宜に更新されてゆく。それにより、より精度の高い、被験者1の健康状態の診断に役立つ診断支援データを、提供することが可能となる。
【0160】
参照データD1~D10の更新(S52)が終了することにより、診断支援サーバ102の保守作業が終了すると、診断支援サーバ102は、再び運用に供される(S53)。管理者等は、診断支援サーバ102の運用を終了すべきと判断すると(S54)、診断支援サーバ102の運用を終了する。なお、診断支援サーバ102の構築の作業、保守の作業は、プログラムに従って自動で実行してもよい。例えば、診断支援サーバ102に、保守用のプログラムを組み込んでおき、保守を行うときには、診断支援サーバ102自身が、記憶装置に蓄積された特徴量、アンケート回答などのデータに基づいて、クラスタリング解析及び決定木分析を新たに行い、その結果に基づいて、参照データD1~D10の少なくとも一部を新たに作成し、記憶装置に記憶させても良い。
【0161】
[4.その他の実施の形態]
診断支援システム101では、アンケートは被験者端末104に表示され、アンケート回答は被験者端末104を通じて、診断支援サーバ102に送られた。これに対して、アンケートが診断拠点端末103に表示され、アンケート回答は、被験者1又は操作者9の操作により診断拠点端末103に入力され、かつ診断拠点端末103から診断支援サーバ102に送られても良い。この場合には、被験者端末104は不要である。
【0162】
処理S11(
図3)により、クラス判定の結果等を含むデータとして作成され、処理S12により診断支援サーバ102から診断拠点端末103に送られる、送信データは、編集可能な形式に代えて、初めから確定した形式であってもよい。この場合には、編集処理S24以下の処理(S24、S25、S13、S14、S15、S26)は無用となる。
【0163】
クラス判定処理(S7)は、アンケート回答無しで実行することも可能である。この場合には、処理S5により抽出された特徴量を補正することなく、処理44(
図4)と同様の手順により特徴量のクラス判定を行うことができる。
【0164】
図12に例示される診断結果画面では、解析結果部に毛細血管ランクの説明文(表13の内容)及び毛細血管クラスの説明文(表14の内容)が含まれていた。これに対して、毛細血管ランク及び毛細血管クラスの表示に、それらの説明文が付随しない形態を採ることも可能である。それらの説明文は、別の媒体、例えば、パンフレット等の印刷物、診断支援サーバ102の一部として又はそれとは別個に設けられるウェブサイト、あるいは操作者9の口頭での説明などにより、被験者1に伝達することも可能である。逆に例えば、毛細血管クラスの表示(例えば「クラスB」などの表示)が無く、毛細血管クラスの説明文(例えば、クラスBに対応する説明文)のみが表示されてもよい。いずれも、クラス判定の結果を表示していることに変わりはなく、表示形式が異なるに過ぎない。また、いずれの表示形式であっても、被験者1の健康状態の診断に役立てることは可能である。
【0165】
クラス判定処理S7の具体例の説明では、「基準データ」として、複数のクラスの各々に対応する毛細血管の特徴量の「代表値」を用い、特に、代表値として「中央値」を用いる例を示した。これに対して、「中央値」に代えて、例えば「平均値」、あるい「最頻値」(特徴量空間において各クラスに属する特徴量が最も密集している座標値)など、他の代表値を用いることも可能である。さらに、「基準データ」として、「代表値」に代えて、複数のクラスの各々に対応する毛細血管の特徴量の範囲を用いても良い。「特徴量の範囲」は、
図7の例では、各クラスの境界線によって囲まれた多角形領域に相当する。この場合には、係数ベクトルを定めるための特徴量ベクトルのクラス判定(例えば表3の毛細血管クラスの判定)、あるいは補正後の特徴量ベクトルのクラス判定は、これらの特徴量ベクトルがいずれの領域に属するか、を判定することによって達成することができる。「係数データ」については、例えば既に例示した手順により、係数ベクトルp
→として同様に導くことができる。特徴量ベクトルから補正後の特徴量ベクトルを導くには、例えば、各領域の中心値を算出し、この中心値に基づく中心値行列を数2に代えて用い、さらに数3及び数4を用いることができる。
【符号の説明】
【0166】
1 被験者、 3 毛細血管スコープ、 5 ネットワーク、 7 診断拠点、 8 住居、 9 操作者(オペレータ)、 11 入力装置、 12 主要回路部、 13 表示装置、 14 ハードディスク装置(HDD)、 15 LAN、 21 CPU(Central Processing Unit;中央演算処理部)、 22 ROM(Read Only Memory)、 23RAM(Random Access Memory)、 24インタフェース(I/F)、 25 読取装置、 26 バスライン、 101 診断支援システム、 102 診断支援サーバ(サーバ)、 103 診断拠点端末(第1端末、診断支援端末)、 104 被験者端末(第2端末)。