(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】樹脂封止装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20240409BHJP
B29C 43/18 20060101ALI20240409BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01L21/56 R
B29C43/18
B29C43/34
(21)【出願番号】P 2021073930
(22)【出願日】2021-04-26
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和広
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-321137(JP,A)
【文献】特開2019-145548(JP,A)
【文献】特開2015-128908(JP,A)
【文献】特開昭57-056222(JP,A)
【文献】特開平07-142519(JP,A)
【文献】特開2002-079547(JP,A)
【文献】特開2012-138447(JP,A)
【文献】特開2004-140047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
B29C 43/18
B29C 43/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形前のワークを吸着保持する上型と樹脂が供給されるキャビティ凹部を有する下型とを有する封止金型と、
前記ワークを保持するローダハンドを搭載してX軸方向に往復動すると共にX軸方向と直交するY軸方向に前記ローダハンドが前記封止金型に向けて進退可能に構成されたローダ機構と、
前記ローダ機構から前記ローダハンドがY軸方向に前記封止金型に進入する手前側に設けられ、前記ローダハンドから受け渡された前記ワークを保持して所定温度に予熱するプリヒート機構と、を備え、
前記プリヒート機構は、Y軸方向において前記封止金型より離れる向きに引き出し可能に設けられていることを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項2】
前記プリヒート機構は、ヒータを内蔵したヒータ本体に対して成形前のワークを吸着保持するワーク保持部が着脱可能に組み付けられている請求項1記載の樹脂封止装置。
【請求項3】
前記ワーク保持部には、少なくとも前記ワークの中心エリアを吸着保持する第1吸引回路と前記ワークの中心エリアより外側エリアを吸着保持する第2吸引回路が設けられている請求項2記載の樹脂封止装置。
【請求項4】
前記プリヒート機構は、ワーク保持部が型開きした上型面と同等の高さに設けられている請求項2又は請求項3記載の樹脂封止装置。
【請求項5】
前記プリヒート機構は、複数の封止金型に対してローダハンド進入方向手前側に各々固定されている請求項1又は請求項2に記載の樹脂封止装置。
【請求項6】
前記ローダハンドは、成形前のワークを保持して前記プリヒート機構に受け渡し、そのまま型開きした封止金型へ進入して成形品を受け取って搬出し、予熱が完了した前記ワークを再度前記封止金型へ進入して受け渡してから、前記成形品を取り出す動作を繰り返す請求項1又は請求項2記載の樹脂封止装置。
【請求項7】
前記ローダハンドには、成形前のワークを保持する供給ハンドと成形品を保持する収納ハンドが昇降可能に設けられている請求項1又は請求項2に記載の樹脂封止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状部材上に電子部品が搭載されたワークを予熱して封止金型に供給する樹脂封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
板状部材上に半導体チップや電子部品等が搭載されたワークを、熱硬化性樹脂を用いて樹脂封止する際に、常温のまま封止金型に搬入すると、封止金型がワークに冷やされてしまい、成形温度まで昇温するのに時間がかかる。また、ワークに急に伸びや熱変形が発生してワークが平坦でなくなるおそれもある。また、ローダハンドから金型に受け渡すためガイドピンをストリップ基板の基板ガイド孔に挿通する際にガイド孔を変形させるバーリングが発生したり、基板にしわやうねりが発生したりするおそれもある。このため、ワークを封止金型に搬入する前に予熱(プリヒート)することが行われている。
【0003】
例えば、ワークを上型に保持して、樹脂を下型に設けられたキャビティに供給して圧縮成形する樹脂封止装置において、ワークを半導体チップ等の搭載面を下向きにして搬送するローダ機構で、ワークを封止金型に引き渡す直前まで予熱することが行われている。具体的には、搬送機構に設けられたヒータが封止前基板を受け渡し台から移送機構に受け渡すまで加熱し、移送機構に設けられたヒータが封止前基板を搬送機構から受け取ってから上型の型面に引き渡すまで加熱する装置が提案されている(特許文献1:特開2012-33584号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ワークが供給されてから上型に受け渡されるまでの間、特許文献1のようにワークを予備加熱するためにローダハンドを常時加熱するとすれば、ローダハンドの温度変動に伴う熱膨張によって位置決めが難しくなるうえに、当該ローダハンドを用いたワークの付け外し作業によるワークの破損を招く等作業が困難になるおそれがある。よって、できるだけローダハンドを加熱しないプリヒート機構が望まれる。
【0006】
このようなプリヒート機構としては、トランスファ成形用としてローダハンドが封止金型へ進入する手前側にプリヒートユニットを設ける構成が考えられる。この種のプリヒートユニットでは、ワークの品種が変わると、プリヒートユニットのワーク保持部を交換する必要がある。このプリヒートユニットは、装置正面側であるプレス部側には移動できず、装置背面側からみてもローダが往復動する機構より奥側に配置されるため、装置の外部からのアクセスが困難となることからワーク保持部等の交換部品の交換作業がし難くなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、ローダハンドの機能を害することなく封止金型に搬入する前のワークの予備加熱ができ、容易に品種交換できる樹脂封止装置を提供することを目的とする。
【0008】
成形前のワークを吸着保持する上型と樹脂が供給されるキャビティ凹部を有する下型とを有する封止金型と、前記ワークを保持するローダハンドを搭載してX軸方向に往復動すると共にX軸方向と直交するY軸方向に前記ローダハンドが前記封止金型に向けて進退可能に構成されたローダ機構と、前記ローダ機構から前記ローダハンドがY軸方向に前記封止金型に進入する手前側に設けられ、前記ローダハンドから受け渡された前記ワークを保持して所定温度に予熱するプリヒート機構と、を備え、前記プリヒート機構は、Y軸方向において前記封止金型より離れる向きに引き出し可能に設けられていることを特徴とする。
これにより、ワークの品種が変わっても、ローダ機構が往復動するX軸方向と交差して、プリヒート機構をY軸方向に封止金型より離れる向きに引き出して装置の外部からアクセスし易く容易に品種交換を行うことができる。
【0009】
前記プリヒート機構は、ヒータを内蔵したヒータ本体に対して成形前のワークを吸着保持するワーク保持部が着脱可能に組み付けられていてもよい。
これにより、プリヒート機構の一部であるワーク保持部を交換するだけで、品種交換を容易に行うことができる。
【0010】
前記ワーク保持部には、少なくとも前記ワークの中心エリアを吸着保持する第1吸引回路と前記ワークの中心エリアより外側エリアを吸着保持する第2吸引回路が設けられていてもよい。
これにより、ワークがプリヒート機構のワーク保持部に吸着保持される際に、ワークの中心エリアを吸着しながら加熱してワークに伸びが生じた後で外側エリアを吸着保持するので、ワークの中心エリアと外側エリアの間で伸びが生じても皺が発生することがなくなる。
【0011】
プリヒート機構は、ワーク保持部が型開きした上型面と同等の高さに設けられていてもよい。
これにより、予備加熱された成形前のワークをプリヒート機構からローダハンドに受け取る距離と予備加熱された成形前のワークをローダハンドから上型面に受け渡す距離が同一となるので、封止金型にワークを搬入するローダハンドの動作を阻害することなく、かつ受け渡しの動作に無駄が生じることもなく、ワークを効率的に供給することができる。
【0012】
プリヒート機構は、複数の封止金型に対してローダハンドが進入するY軸方向手前側に各々固定されていてもよい。
これにより、ローダ機構は封止金型ごとに成形前のワークをプリヒート機構に受け渡すことで、1つのプリヒート機構で全ての封止金型へ供給されるワークの予備加熱をしなくてよいため、予備加熱の時間を十分に確保して、急な加熱によってワークに不具合が生じるのを防止することができる。
【0013】
前記ローダハンドは、成形前のワークを保持して前記プリヒート機構に受け渡し、そのまま型開きした封止金型へ進入して成形品を受け取って搬出し、予熱が完了した前記ワークを再度前記封止金型へ進入して受け渡してから、前記成形品を取り出す動作を繰り返すようにしてもよい。
これにより、成形前のワークの予備加熱動作と封止金型からの成形品の取り出し動作を併行することで作業効率を高めることができる。
【0014】
前記ローダハンドには、成形前のワークを保持する供給ハンドと成形品を保持する収納ハンドが昇降可能に設けられている。
これにより、封止金型に対する成形前のワークの供給と成形品の取り出しを同一のローダハンドの進退動作で実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ローダハンドの機能を害することなく封止金型に搬入する前のワークの予備加熱ができ、かつ容易に品種交換できる樹脂封止装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】樹脂封止装置の一例を示すレイアウト構成図である。
【
図2】
図1の樹脂封止装置のプリヒート機構の斜視説明図である。
【
図4】樹脂封止装置のプレス部に対するワークの搬入動作及び成形後品の搬出動作を示す説明図である。
【
図5】他例にかかるローダハンドによるワークの搬入動作及び成形品の搬出動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る樹脂封止装置1の一例を示すレイアウト構成図(平面図)である。なお、説明の便宜上、図中において矢印により樹脂封止装置1における左右方向をX軸方向、前後方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向として説明する場合がある。また、各実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰返しの説明は省略する場合がある。
【0018】
本実施形態に係る樹脂封止装置1は、上型で成形前のワークW(以後単に「ワークW」という)を保持し、下型に設けられたキャビティを含む下型面をフィルム(リリースフィルム)Fで覆って樹脂Rを供給し、上型と下型をクランプして、溶融した樹脂RにワークWを浸漬させて樹脂封止する圧縮成形装置を例示するものとする。
先ずワークWは、例えばストリップ基板に複数の電子部品が行列状に搭載された構成を備えている。より具体的には、ストリップ基板の例として、短冊状に形成された樹脂基板、セラミックス基板、金属基板、キャリアプレート、リードフレーム、ウェハ等の板状の部材(短冊形状の短冊ワーク)が挙げられる。また、電子部品の例として、半導体チップ、MEMSチップ、受動素子、放熱板、導電部材、スペーサ等が挙げられる。
【0019】
ストリップ基板に電子部品が搭載されたワークWの例として、フリップチップ実装、ワイヤボンディング実装等により搭載されたワークが用いられる。あるいは、樹脂封止後に成形品Wp(成形後のワークW)から基板(ガラス製や金属製のキャリアプレート)を剥離する製品の場合には、熱剥離性を有する粘着テープや紫外線照射により硬化する紫外線硬化性樹脂を用いて電子部品を貼り付けたワークWが用いられる。
【0020】
一方、樹脂Rの例として、顆粒状の熱硬化性樹脂(例えば、フィラー含有のエポキシ系樹脂)が用いられる。なお、上記の状態に限定されるものではなく、液状、粉末状、円柱状、板状、シート状等、他の状態(形状)であってもよい。
【0021】
また、フィルムFの例として、耐熱性、剥離容易性、柔軟性、伸展性に優れたフィルム材、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(ポリテトラフルオロエチレン重合体)、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等が好適に用いられる。このフィルムFとしては、例えばストリップ基板であるワークWに対応した短冊形状の短冊フィルムを用いることができる。
【0022】
続いて、本実施形態に係る樹脂封止装置1のレイアウト構成について説明する。
図1に示すように、樹脂封止装置1は、ワークWの供給と、成形品Wpの収納とを主に行うワーク処理ユニット1A、ワークWを樹脂封止するプレスユニット1B(プレス部)、フィルムF及び樹脂Rの供給と、樹脂モールド後の使用済フィルムFdの収納(廃棄)とを主に行うディスペンスユニット1Cを主要構成として備えている。尚、ワーク処理ユニット、プレスユニット、ディスペンスユニットを一体として備えた樹脂封止装置であってもよい。
【0023】
本実施形態においては、ワーク処理ユニット1A、プレスユニット1B、及びディスペンスユニット1Cのようなユニットが横並びに連結されて組み立てられている。一例として、ワーク処理ユニット1A、複数のプレスユニット1B、及びディスペンスユニット1Cが、X軸方向に左からその順に並設されている。尚、各ユニット間を跨いで任意の数のガイドレール1D(
図2参照)がX軸方向に敷設されている。また、ワークW及び成形品Wpを搬送する第1ローダ3とフィルムF及び樹脂Rを搬送する第2ローダ4が、共通のガイドレール1D(
図2参照)に沿って所定のユニット間をX軸方向に往復動可能に設けられている。
【0024】
プレスユニット1Bは、ワークWを吸着保持する上型2aと樹脂Rが供給されるキャビティ凹部2cを有する下型2bとを有する封止金型2が設けられている(
図4(b)参照)。なお、本実施形態においては、下型に二つのキャビティを設けると共に二つのワークWを供給して一回の樹脂封止を行い、同時に二つの成形品Wpを圧縮成形する。
図1に示す構成は、プレスユニット1Bを三台設置した例であるが、プレスユニット1Bを一台のみ設置してもよいし、あるいは二台または四台以上連結して設置してもよい。また、例えば、ディスペンスユニット1Cとは異なる形態の樹脂Rを供給するユニットや、金型内でワークWと共に樹脂封止する部材を供給するユニット等を設置することも可能である。
【0025】
次に、ワーク処理ユニット1Aは、複数のマガジン1aが配置されている。マガジン1aからは、ワークWが取り出され供給レール1bに載置される。供給レール1bは、電子部品の搭載位置を避けてワークWを側方で支持したままY軸方向に案内する。また、供給レール1bは、二つのワークWを横並びに載置するようにX軸方向に二列に設けられている。供給レール1bはワークWが一枚ずつ供給される場合には、X軸方向に移動可能な移動機構(不図示)を有していてもよい。供給ピックアップ1cは、二列の供給レール1b上で二つのワークWを並べた状態で同時に保持して供給位置へ搬送する。
【0026】
第1収納ピックアップ1dは、X軸方向(左右方向)に移動可能に構成されている。これにより、第1ローダ3から受け渡された成形品Wpを保持して、第2収納ピックアップ1e上へ搬送することが可能となる。第2収納ピックアップ1eは、第1収納ピックアップ1dから受け渡された二つの成形品Wpを同時に保持して図示しない収納レールへ搬送し、成形品Wpは、マガジン1aと重ねて設けられたマガジン1aへ収納される。
【0027】
図1に示すように、第1ローダ3(ローダ機構)は、ローダハンドとして二つのワークWを保持する供給ハンド3A及び二つの成形品Wpを保持する収納ハンド3Bを各々昇降可能に備えている。供給ハンド3A及び収納ハンド3Bの昇降機構は様々なものが用いられるが、例えばエアシリンダにより昇降可能に設けられている。尚、エアシリンダに替えて、モータ駆動或いはソレノイド駆動等により昇降させてもよい。これにより、封止金型2に対するワークWの供給と成形品Wpの取り出しを同一のハンドの進退動作で実現することができる。ワークWを保持する第1保持部3a,3bと成形品Wpを保持する第2保持部3c,3dは下型2bのキャビティレイアウトに対応して二行二列に配置されている。これにより、プレスユニット1Bの金型レイアウトに合わせて供給ハンド3AによるワークWの供給と収納ハンド3Bによる成形品Wpの取り出しを一回の進退動作で実現することができる。
【0028】
供給ハンド3Aは、ワークWを電子部品搭載面が下向きとなるように保持し、収納ハンド3Bは、成形品Wpをパッケージ部が下向きになるようにして保持する。第1ローダ3は、供給ハンド3A及び収納ハンド3Bを搭載したまま
図1のX軸方向に往復動し、供給ハンド3A及び収納ハンド3Bは、X軸方向と直交するY軸方向に封止金型2に向けて(
図1のプレスユニット1Bの奥側から手前側に向けて)進退可能に設けられている。
【0029】
また、第1ローダ3から供給ハンド3A及び収納ハンド3Bが封止金型2に進入するY軸方向手前側にプリヒート機構5が設けられている。プリヒート機構5は、ワークWを金型搬入前に保持して所定温度に予熱するものである。プリヒート機構5は、例えば封止金型2の成形温度が160℃から180℃とすると、155℃から185℃にプリヒートする。本実施例ではプリヒート機構5は、プレスユニット1Bごとに各々固定されて設けられている。
これにより、第1ローダ3は封止金型2ごとに成形前のワークWをプリヒート機構5に受け渡すことで、1つのプリヒート機構5で全ての封止金型2へ供給されるワークWの予備加熱をしなくてよいため、予備加熱の時間を十分に確保して、急な加熱によってワークWに不具合が生じるのを防止することができる。
また、プリヒート機構5は、後述するワーク保持部5cが型開きした上型面と同等の高さに設けられている。
これにより、予備加熱された成形前のワークWをプリヒート機構5から供給ハンド3に受け取る距離と予備加熱された成形前のワークWを供給ハンド3から上型面に受け渡す距離が同一となるので、封止金型2にワークWを搬入する供給ハンド3の動作を阻害することなく、かつ受け渡しの動作に無駄が生じることもなく、ワークWを効率的に供給することができる。
尚、プリヒート機構5は、プレスユニット1Bごとに固定配置することなく、例えばX軸方向及びY軸方向に移動可能に設けられていてもよい。
【0030】
プリヒート機構5は、
図3に示すように、ヒータ5aを内蔵したヒータ本体5bに対してワークWを吸着保持するワーク保持部5cが着脱可能に組み付けられている。これにより、プリヒート機構5の一部であるワーク保持部5cを交換するだけで、品種交換を容易に行うことができる。
ヒータ5aとしては、例えば電熱線ヒータ、遠赤外線ヒータ等が用いられる。ワーク保持部5cには図示しないがワークWの外形をガイドするガイドピンが複数設けられている。
【0031】
また、ワーク保持部5cには、少なくともワークWの長手方向における中心エリアを吸着保持する第1吸引回路5dとワークWの中心エリアより外側エリアを吸着保持する第2吸引回路5eが設けられている。第1吸引回路5d及び第2吸引回路5eを構成する吸引孔は吸着面に複数配置されているものとする。また、ワーク保持部5cのワーク吸着面には、ワークWを両側一対で外縁部を係止可能な保持爪5fが複数箇所に開閉可能に設けられている。一対の保持爪5fは、ワークWが吸着される前は両側に開いており、ワークWが吸着されると、両側から中央に向かって閉じるようになっている。この保持爪5fは、爪先がL字状に折り曲げられており、ワーク保持部5cに吸着保持されたワークWが落下するのを防止している。
【0032】
図3にワークWのワーク保持部5cに対する吸着動作について説明する。供給ハンド3AよりワークWがワーク保持部5cに押し当てられると、第1吸引回路5dから吸引を開始しワークWの中心エリアを吸着保持する(
図3:成形前基板W1参照)。次いで第2吸引回路5eからの吸引を開始しワークWの中心エリアより外側エリアを吸着保持する(
図3:成形前基板W2参照)。
これにより、ワークWがプリヒート機構5のワーク保持部5cに吸着保持される際に、ワークWの長手方向における中心エリアを吸着しながら加熱してワークWに伸びが生じた後で外側エリアを吸着保持するので、ワークWの中心エリアと外側エリアの間で伸びが生じても皺が発生することがなくなる。
これに対して、第1吸引回路5d及び第2吸引回路5eから同時に吸引を開始した場合には、予熱によりワークWに伸びが発生したまま波打った状態で吸着保持されて皺が発生することが想定され好ましくない(
図3:成形前基板W3参照)。
また、供給ハンド3Aはワーク保持部5cにワークWを受け渡すのみであるため、ハンド自身が加熱され寸法の変化が生ずるのを可及的に防ぐことができる。
【0033】
第1ローダ3は、供給ハンド3AにワークWを保持してプリヒート機構5に受け渡し、そのまま型開きした封止金型2へ進入して収納ハンド3Bに成形品Wpを受け取って搬出し、プリヒート機構5で予熱が完了したワークWを供給ハンド3Aが受け取って再度封止金型2へ進入して受け渡してから、封止金型2より退避することで収納ハンド3Bが受け取った成形品Wpを取り出す動作を繰り返す。
これにより、ワークWの予備加熱動作と封止金型2からの成形品Wpの取り出し動作を併行することで作業効率を高めることができる。
【0034】
また、各プリヒート機構5は、
図2に示すように、第1ローダ3が往復動するX軸方向と交差してY軸方向に封止金型2より離間する向きに引き出し可能に設けられている。具体的には、ヒータ5aを内蔵したヒータ本体5bは、レール部6に沿って移動可能なスライド部材5gに吊り下げロッド5hを介して吊り下げ支持されている。吊り下げロッド5hは、レール部6の底部に設けられた長孔6aを貫通して設けられている。スライド部材5gには、連結ロッド5iを介して把手5jが連結されている。装置背面側(封止金型2よりY軸方向奥側)から把手5jを把持して引っ張ると、スライド部材5gがレール部6に沿ってY軸方向に移動し、X軸方向に敷設された第1ローダ3、第2ローダ4が移動するガイドレール1Dの上方を横切って引き出せるようになっている。尚、把手5jにはスライド部材5gのレール部6に対する位置を固定するロック機構があってもよい。
これにより、ワークWの品種が変わっても、第1ローダ3が往復動するX軸方向と交差して、プリヒート機構5をY軸方向に封止金型2より離れる向きに引き出して装置の外部からアクセスし易く容易に品種交換を行うことができる。
【0035】
図1において、ディスペンスユニット1Cは、フィルムF及びモールド樹脂Rの供給等を行うユニットである。本実施形態においては、フィルムF及び樹脂Rを封止金型2へ搬送する際に、これらを保持して搬送するための治具として搬送具7が用いられる。準備テーブル8においてフィルムF及び樹脂Rを保持していない状態の搬送具7が載置され適宜のクリーニングが行われる。搬送具ピックアップ9は、搬送具7を保持して、これを複数の所定位置(テーブル)間で搬送する。搬送具ピックアップ9は、準備テーブル8上に載置された搬送具7を保持して、フィルムテーブル10及び樹脂投下テーブル11へ搬送する。フィルムテーブル10において、長尺状のフィルムFがロール状に巻かれたフィルムロール12から繰出されたフィルムFが所定長さの短冊状に切断されて保持される。短冊状に切断された二つのフィルムFは、搬送具7の下面に吸着保持され、フィルムテーブル10の側方に設けられた樹脂投下テーブル11に載置される。ディスペンサ13は、樹脂投下テーブル11に載置された搬送具7における樹脂投入孔に樹脂Rを投入して、露出するフィルムF上に当該樹脂Rを搭載(投下)する。
【0036】
第2ローダ4は第3保持部4A及び第4保持部4Bを各々備えている。この第3保持部4Aは、その下面において、樹脂投下テーブル11上に載置された搬送具7を受け取り、下型2bの所定保持位置へ搬送すると共に、フィルムF及びモールド樹脂Rの保持が解放された搬送具7を前述の準備テーブル8上へ搬送する。第4保持部4Bは、樹脂封止された成形品Wpが封止金型2から取り出された後に下型2bに残留する使用済フィルムFdを保持して、所定位置(後述のフィルムディスポーザ16)へ搬送し廃棄する。
【0037】
ここで、プレスユニット1Bに対するワークWの搬入動作と成形品Wpの搬出動作の流れについて
図4を参照して説明する。
図4(a)は、第1ローダ3の平面図及び封止金型2を平面視した模式図である。封止金型2は先にワークWを樹脂封止しているものとする。よって、上型2aには、成形品Wpが吸着保持されている(
図4(b)参照)。第1ローダ3の進退方向(Y軸方向)前側に2個の供給ハンド3A、後側に2個の収納ハンド3Bが設けられている。供給ハンド3A及び収納ハンド3Bの配置は封止金型2(上型2a)の受け渡し位置又は受け取り位置に対応している。また、供給ハンド3A及び収納ハンド3Bとプリヒート機構5又は上型2aとの位置合わせは、図示しないロックブロックどうしの凹凸嵌合により実現される。
【0038】
図4(b)において、第1ローダ3は、
図1に示す供給ピックアップ1cにより供給ハンド3Aに供給されたワークWを保持して、X軸方向に所定のプレスユニット1Bの奥側へ移動し、ローダハンド(供給ハンド3A及び収納ハンド3B)をY軸方向に封止金型2に向かって移動させる。そして、プリヒート機構5の直下となる位置で供給ハンド3Aを停止させ、供給ハンド3Aを上昇させてワークWをワーク保持部5cへ受け渡す。
【0039】
供給ハンド3Aに支持したワークWをワーク保持部5cへ近接させると、
図3に示すように第1吸引回路5dを動作してワークWの中心エリアを吸着保持してから、第2吸引回路5eを動作させてワークWの中心エリアより外側エリアを吸着保持する。これにより、長手方向において複数箇所を一度に吸着してその後にワークWが伸びることに起因するワークWの波打ちや皺の発生のような変形を防ぎ、平坦度を維持して吸着保持してプリヒートすることができる。供給ハンド3Aは、ワークWをプリヒート機構5に受け渡すと下降して第1ローダ3は、封止金型2へ進入する。型開きした封止金型2の上型2aには、成形品Wpが吸着保持されている。
【0040】
図4(c)において、第1ローダ3は、収納ハンド3Bが上型2aの直下となる位置まで進入すると一旦停止する。このとき、供給ハンド3Aは封止金型2より先方にはみ出た位置となる。そして、収納ハンド3Bを上昇させて成形品Wpを上型2aより受け取る。具体的には、収納ハンド3Bの吸着を開始し、上型2aの吸着を解除することで成形品Wpを上型2aより受け取る。成形品Wpを受け取った収納ハンド3Bは下降する。
このようにワークWのプリヒート時間を利用して成形品Wpの取り出しを行なうことで、待ち時間を可及的に減らすことができる。
【0041】
図4(d)において、収納ハンド3Bに成形品Wpを保持した第1ローダ3は、封止金型2より後退し、供給ハンド3Aがプリヒート機構5の直下となる位置に移動すると一旦停止する。そして、供給ハンド3Aを上昇させてプリヒートされたワークWをプリヒート機構5より受け取る。具体的には、供給ハンド3Aの吸着を開始し、ワーク保持部5cの吸着を解除(第1吸引回路5d及び第2吸引回路5eの吸引を停止)することでワークWをワーク保持部5cより受け取る。ワークWを受け取った供給ハンド3Aは下降する。このとき、収納ハンド3Bは先に受け取った成形品Wpを吸着保持している。
【0042】
図4(e)において、第1ローダ3は、再度封止金型2に進入して供給ハンド3Aが上型2aの直下となる位置まで進入すると一旦停止する。このとき、収納ハンド3Bは封止金型2より手前側に待機した位置にある。そして、供給ハンド3Aを上昇させてプリヒートされたワークWを上型2aに受け渡す。具体的には上型2aの吸引を開始し供給ハンド3Aの吸着を解除する。ワークWを上型2aに受け渡した後、供給ハンド3Aは下降する。
【0043】
図4(f)において、ローダハンド(供給ハンド3A及び収納ハンド3B)がY軸方向に封止金型2より離れる向きに移動すると、第1ローダ3は
図1のワーク処理ユニット1Aへガイドレール1Dに沿ってX軸方向に移動する。そして、収納ハンド3Bに保持された成形品Wpを第1収納ピックアップ1dへ受け渡し、供給ハンド3Aに供給ピックアップ1cより次のワークWが受け渡される。
また、封止金型2において下型2bのキャビティ凹部2cに残存する使用済フィルムFdは、第2ローダ4が封止金型2へ進入して第4保持部4Bに保持されて除去され、第3保持部4Aに保持されたフィルムF及び樹脂Rがキャビティ凹部2cに供給される。そして、下型2bが上昇して型閉じが行われ、ワークWに搭載された電子部品がキャビティ凹部2c内で溶融した樹脂Rに浸漬されたまま樹脂封止される。尚、第2ローダ4は、封止金型2より退避した後、ガイドレール1Dに沿って
図1に示すディスペンスユニット1CへX軸方向に移動する。そして、第3保持部4Aに保持された搬送具7を準備テーブル8上へ受け渡し、第4保持部4Bに保持した使用済フィルムFdをフィルムディスポーザ16へ廃棄すると、次の樹脂供給に備える。
【0044】
図4(g)において、
図1の供給ピックアップ1cによりワークWを供給ハンド3Aに受け取った第1ローダ3は、再度プレスユニット1Bの手前までガイドレール1Dに沿ってX軸方向に移動する。そして、ローダハンド(供給ハンド3A及び収納ハンド3B)をY軸方向に封止金型2に向かって移動させる。尚、封止金型2は、樹脂封止作業が完了すると型開きする。そして、プリヒート機構5の直下となる位置まで供給ハンド3Aが移動すると一旦停止させてワークWをプリヒート機構5に受け渡し、
図4(b)以降と同様にプリヒート動作と成形品Wpの搬出動作を繰り返す。
【0045】
以上、説明したように、ワークWの品種が変わっても、第1ローダ3が往復動するX軸方向と交差して、プリヒート機構5をY軸方向に封止金型2より離れる向きに引き出して装置の外部からアクセスし易く容易に品種交換を行うことができる。
また、プリヒート機構5は、ヒータ5aを内蔵したヒータ本体5bに対して成形前のワークWを吸着保持するワーク保持部5cが着脱可能に組み付けられていると、プリヒート機構5の一部であるワーク保持部5cを交換するだけで、品種交換を容易に行うことができる。
ワークWがプリヒート機構5のワーク保持部5cに吸着保持される際に、ワークWの中心エリアを吸着しながら加熱してワークWに伸びが生じた後で外側エリアを吸着保持するので、ワークWの中心エリアと外側エリアの間で伸びが生じても皺が発生することがなくなる。
【0046】
供給ハンド3Aは、ワークWを保持してプリヒート機構5に受け渡し、そのまま型開きした封止金型2へ進入して収納ハンド3Bが成形品Wpを受け取って搬出し、予熱が完了したワークWを再度封止金型2へ進入して受け渡してから、成形品Wpを取り出す動作を繰り返すことで、ワークWの予備加熱動作と封止金型2からの成形品Wpの取り出し動作を併行することで作業効率を高めることができる。
【0047】
上述した樹脂封止装置は、二つのワークW、二つのフィルムF及び樹脂R、二つの成形品Wpをハンドリングする場合について説明したが、一つのワークW、一つのフィルムF及び搭載された樹脂R、一つの成形品Wpをハンドリングする装置構成であってもよい。
【0048】
また、第1ローダ3は、供給ハンド3Aと収納ハンド3Bを二行二列で封止金型2の進退方向に前後して設けていたが、供給ハンド3Aと収納ハンド3Bを上下に重ねて配置するようにしてもよい。
例えば
図5(a)に示すように、第1ローダ3には、ワークWを半導体チップ搭載面が下向きとなるように保持する一対の保持部3eが開閉可能に設けられている。第1ローダ3のワークW又は成形品Wpを支持する支持面には吸着保持する吸引路が設けられており、保持部3eにもワークWを吸着保持する吸引路が設けられているものとする。尚、一対の保持部3eは開閉式ではなくローダ本体に対して昇降するように設けられていてもよい。
【0049】
図5(b)おいて、一対の保持部3eを開放した状態で第1ローダ3に保持したワークWをプリヒート機構5に受け渡し、そのまま型開きした封止金型2に進入して第1ローダ3に成形品Wpを受け取る。
図5(c)に示すように、第1ローダ3をプリヒート機構5の直下となる位置まで後退して一対の保持部3eを閉じて成形品Wpの上側に一対の保持部3eを介してプリヒートされたワークWを重ねて受け取る。そして、
図5(d)に示すように第1ローダ3を再度封止金型2に進入させて上型2aに一対の保持部3e上に保持されたワークWを受け渡す。この後、
図5(e)に示すように第1ローダ3は、成形品Wpを封止金型2から搬出して収納するようにしてもよい。尚、第1ローダ3は、一対の保持部3eが両側に開放した状態で成形品Wpを搬出して
図1に示すワーク処理ユニット1AにX軸方向に移動し、第1収納ピックアップ1dへ成形品Wpを受け渡す。
【0050】
これにより、第1ローダ3の供給ハンド3A及び収納ハンド3Bを平面的に並べた配置とする場合に比べて、第1ローダ3の大きさを縮小することができる。
【符号の説明】
【0051】
W ワーク Wp 成形品 F フィルム R 樹脂 1 樹脂封止装置 1A ワーク処理ユニット 1B プレスユニット 1C ディスペンスユニット 1D ガイドレール 1a マガジン 1b 供給レール 1c 供給ピックアップ 1d 第1収納ピックアップ 1e 第2収納ピックアップ 2 封止金型 2a 上型 2b 下型 2c キャビティ凹部 3 第1ローダ 3A 供給ハンド 3B 収納ハンド 3a,3b 第1保持部 3c,3d 第2保持部 3e 保持部 4 第2ローダ 4A 第3保持部 4B 第4保持部 5 プリヒート機構 5a ヒータ 5b ヒータ本体 5c ワーク保持部 5d 第1吸引回路 5e 第2吸引回路 5f 保持爪 5g スライド部材 5h 吊り下げロッド 5i 連結ロッド 5j 把手 6 レール部 7 搬送具 8 準備テーブル 9 搬送具ピックアップ 10 フィルムテーブル 11 樹脂投下テーブル 12 フィルムロール 13 ディスペンサ 16 フィルムディスポーザ