(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】腫瘍特異的抗原を特定するためのプロテオゲノミクスに基づいた方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240409BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20240409BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALI20240409BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240409BHJP
C12Q 1/6809 20180101ALI20240409BHJP
C12Q 1/6872 20180101ALI20240409BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20240409BHJP
C40B 40/08 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K7/06 ZNA
C12Q1/6886 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6809 Z
C12Q1/6872 Z
C07K14/47
C40B40/08
(21)【出願番号】P 2021536116
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(86)【国際出願番号】 CA2019051186
(87)【国際公開番号】W WO2020041876
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-23
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521083603
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ デ モントリオール
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】ラモン,セリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ティボルト,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ルミュー,セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ペロー,クロード
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】LAUMONT, C. M. et al.,Global proteogenomic analysis of human MHC class I-associated peptides derived from non-canonical reading frames,Nature Communications,2016年,Volume 7,Article number: 10238
【文献】SCHUMACHER, F.-R. et al.,Building proteomic tool boxes to monitor MHC class I and class II peptides,Proteomics,2017年,Vol. 17, No. 1-2,Article No. 1600061
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
C12Q
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍細胞試料における腫瘍抗原候補を特定するための方法であって、
前記方法は、
(a)
前記腫瘍細胞試料における
腫瘍組織適合性複合体(MHC)関連ペプチド(MAP
)を単離および配列決定することと、
(b)全トランスクリプトーム配列決定を前記腫瘍細胞試料で実施し、それによって腫瘍RNA配列を得ることと、
(c)腫瘍特異的プロテオームデータベースを、
(i)前記腫瘍RNA配列から少なくとも33ヌクレオチドを含むサブ配列のセットを抽出することと、
(ii)(i)の前記腫瘍サブ配列のセットを、正常細胞からのRNA配列から抽出された少なくとも33ヌクレオチドを含む対応するコントロールサブ配列のセットと比較することと、
(iii)前記対応するコントロールサブ配列において、存在しないか、または少なくとも4倍下方発現されている前記腫瘍サブ配列を抽出し、それによって腫瘍特異的サブ配列を得ることと、
(iv)前記腫瘍特異的サブ配列をコンピュータによって翻訳し、それによって前記腫瘍特異的プロテオームデータベースを得ることと、によって生成することと、
(d)個別化腫瘍プロテオームデータベースを、
(i)前記腫瘍RNA配列を参照ゲノム配列と比較して、前記腫瘍RNA配列における一塩基変異を特定すること
、ここで前記参照ゲノムはヒトゲノムアセンブリである、と、
(ii)(i)で特定された前記一塩基変異を前記参照ゲノム配列に挿入し、それによって個別化腫瘍ゲノム配列を作成することと、
(iii)前記個別化腫瘍ゲノム配列から、発現されるタンパク質コード転写物をコンピュータによって翻訳し、それによって前記個別化腫瘍プロテオームデータベースを得ることと、によって生成することと、
(e)個別化正常プロテオームデータベースを、
(i)正常細胞からのRNA配列を
前記参照ゲノム配列と比較して、前記正常RNA配列における一塩基変異を特定することと、
(ii)(i)で特定された前記一塩基変異を前記参照ゲノム配列に挿入し、それによって個別化正常ゲノム配列を作成することと、
(iii)前記個別化正常ゲノム配列から、発現されるタンパク質コード転写物をコンピュータによって翻訳し、それによって前記個別化正常プロテオームデータベースを得ることと、によって生成することと、
(f)正常および腫瘍k-merデータベースを、(i)正常細胞からの前記RNA配列および前記腫瘍RNA配列から少なくとも24ヌクレオチドを含むサブ配列のセットを抽出することによって生成することと、
(g)(a)で得られた前記MAPの配列を、(c)の前記腫瘍特異的プロテオームデータベースおよび(d)の前記個別化腫瘍プロテオームデータベースの配列と比較して、
腫瘍関連MAPを特定すること
、ここで、前記腫瘍関連MAPは、配列が腫瘍特異的プロテオームデータベースおよび/または個別化腫瘍プロテオームデータベース中に存在するMAPである、と、
(h)(g)で特定された前記
腫瘍関連MAPの中で腫瘍抗原候補を特定することと、を含み、腫瘍抗原候補は、(1)配列が前記個別化正常プロテオームデータベースに存在せず、かつ(2)(i)配列が前記個別化腫瘍プロテオームデータベースに存在し、かつ/または(ii)コード
ヌクレオチド配列が、前記正常k-merデータベースと比較して前記腫瘍k-merデータベースにおいて過剰発現もしくは過剰提示される、MAPに対応する
、方法。
【請求項2】
前記MAPの単離は、(i)前記MAPを前記腫瘍細胞試料から弱酸処理によって放出することと、(ii)前記放出されたMAPをクロマトグラフィーに供することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記放出されたMAPを前記クロマトグラフィーの前にサイズ排除カラムで濾過することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記腫瘍サブ配列、コントロールサブ配列および腫瘍特異的サブ配列は、33~54塩基対を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
重複する腫瘍特異的サブ配列を、より長い腫瘍サブ配列(コンティグ)に組み立てることをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記MAPの配列決定は、前記単離されたMAPを質量分析(MS)配列決定分析に供することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記MAPコードヌクレオチド配列は、前記正常k-merデータベースと比較して、前記腫瘍k-merデータベースにおいて少なくとも10倍過剰発現または過剰提示される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記MAPコードヌクレオチド配列は、前記正常k-merデータベースには存在しない、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、8~11個のアミノ酸の長さを有するMAPを選択することをさらに含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記正常細胞は、胸腺細胞である、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記腫瘍抗原候補の前記コード
ヌクレオチド配列を、正常組織からの配列と比較することをさらに含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
(i)前記腫瘍抗原候補のMHC分子との結合、
(ii)細胞集団における前記腫瘍抗原候補を認識するT細胞の頻度、
(iii)T細胞活性化を誘導する前記腫瘍抗原候補の能力、および/または
(iv)T細胞媒介性腫瘍細胞死滅を誘導し、かつ/または腫瘍成長を阻害する前記腫瘍抗原候補の前記能力
を評価することをさらに含む、請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月30日に出願された米国仮特許出願第62/724,760号の利益を主張し、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、全般的には癌に関し、より具体的にはT細胞に基づく癌免疫療法に有用である腫瘍抗原の特定に関する。
【背景技術】
【0003】
CD8 T細胞は、いくつかの癌における腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)の存在として、良好な予後および免疫チェックポイント阻害剤への応答と正の相関関係にあり、腫瘍根絶において不可欠なプレイヤーであることが知られている1、2。腫瘍細胞を排除するために、CD8 T細胞は、腫瘍細胞によって提示される異常なMHC I関連ペプチド(MAP)である腫瘍抗原を認識する。CD8 T細胞がMHC I関連ペプチド(MAP)を認識するとき、最も重要な未解決の疑問は、CD8 TILによって認識されるMAPの性質である3。多数のCD8 TILは腫瘍の変異負荷と相関することが分かっており、支配的パラダイムは、CD8 TILが一般にネオ抗原と呼ばれる変異した腫瘍特異的抗原(mTSA)を認識することを支持する2、4、5。mTSAの高い免疫原性は、腫瘍でのそれらの選択的発現に起因し、免疫耐性のリスクを最小限にする6。それにもかかわらず、いくつかのTILは、異常に発現されたTSA(aeTSA)と称される癌限定化非変異MAP7を認識することが示されている。aeTSAは、内在性レトロエレメント(ERE)などの正常細胞で発現されないゲノム配列の転写および翻訳につながる様々なシスまたはトランス作用遺伝子変化およびエピジェネティック変化に由来し得る8-10。
【0004】
治療用癌ワクチンに使用することができる実用可能なTSAの発見にかなりの努力がささげられている。最も一般的な戦略は、逆免疫学(reverse immunology)で定まり、i)エクソーム配列決定を腫瘍細胞に実施して変異を特定し、ii)MHC結合予測ソフトウェアツールを使用して、どの変異型MAPが優れたMHC結合物質であり得るかを特定する11、12。逆免疫学は、TSA候補を豊富化することができるが、利用可能なコンピュータ法はMHC結合を予測し得るが、MAP処理に含まれる他のステップを予測することはできないため14、15、これらの候補の少なくとも90%は偽陽性である5、13。この制限を克服するために、いくつかの研究は、それらのTSA発見パイプラインに質量分析(MS)解析を含めており16、それによっていくつかのTSAの厳密な分子決定をもたらす17、18。しかしながら、これらのアプローチの収率は極めて不十分であり、最も変異した腫瘍型の1つである黒色腫において、個別の腫瘍あたり平均2つのTSAがMSによって検証されているが19、一方、他の癌型についてはわずかなTSAしか認められていない15。TILまたは免疫チェックポイント阻害剤の注入は、腫瘍が免疫原性抗原を発現しなかった場合、腫瘍退縮を引き起こさないため、TSAの乏しさは難題である20。エキソン変異に基づくアプローチは、それらが2つの重要な要素を考慮しなかったため、TSAを特定することに失敗していたことが推測された。第1に、基本的には、aeTSAのハイスループット識別のための方法が現在はないため、これらのアプローチはmTSAにのみ焦点を当ててaeTSAを軽視する。これは大きな欠点を意味し、mTSAは固有抗原であるが、aeTSAは、複数の腫瘍によって共有することができ、ワクチン開発のための好ましい標的になり得るためである7、9。第2に、TSAの唯一の供給源としてエクソームに焦点を当てることは、非常に限定的である。エクソーム(すなわち、全てのタンパク質コード遺伝子)は、ヒトゲノムのわずか2%を表し、一方、ゲノムの最大75%は、転写され、潜在的に翻訳され得る22。
【0005】
したがって、T細胞に基づく癌免疫療法に使用され得る腫瘍抗原を特定するための新規アプローチが必要とされている。
【0006】
急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、骨髄、血液、および髄外部位におけるリンパ系前駆細胞の悪性形質転換および増殖である。ALLの80%は子供に生じるが、それは成人に生じるときに壊滅的な疾患を表す。米国内では、ALLの発症率は、人口10万人あたり1.6人と推定される。用量強化戦略は、小児患者の転帰の有意な改善につながっているが、高齢者の予後は非常に悪いままである。導入化学療法に対する高い割合の応答にもかかわらず、ALLを有する成人患者の30~40%のみが長期寛解を達成する。
【0007】
したがって、ALLの治療のための新規アプローチが必要とされている。
【0008】
高い侵襲性で、素早く転移し、蔓延している癌である肺癌は、アメリカ合衆国(米国)において男性および女性の両方における最も致死的な癌である。肺癌の症例の約90%は、喫煙およびタバコ製品の使用によって引き起こされる。しかしながら、ラドンガス、アスベスト、大気汚染曝露、および慢性感染症などの他の要因が、肺癌の発癌に関与し得る。加えて、肺癌に対する感受性の複数の遺伝的および後天的メカニズムが提唱されている。肺癌は、異なって成長および伝播する、2つの広範な組織学的クラスである、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)に分けられる。肺癌の治療選択肢には、手術、放射線療法、化学療法、および標的療法が含まれる。過去25年間になされた診断および治療における改善にもかかわらず、肺癌を有する患者の予後は依然として満足のいくものではない。現在の標準療法に対する応答は、最も局在化した癌を除いては乏しいものである。
【0009】
したがって、肺癌の治療のための新規アプローチが必要とされている。
【0010】
本説明は多くの文書に言及しており、その内容は参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、以下の項目1~75を提供する。
1.腫瘍細胞試料における腫瘍抗原候補を特定するための方法であって、
(a)腫瘍特異的プロテオームデータベースを、(i)腫瘍RNA配列から少なくとも33塩基対を含むサブ配列(k-mer)のセットを抽出することと、(ii)(i)の腫瘍サブ配列のセットを、正常細胞からのRNA配列から抽出された少なくとも33塩基対を含む対応するコントロールサブ配列のセットと比較することと、(iii)対応するコントロールサブ配列に存在しない腫瘍サブ配列を抽出し、それによって腫瘍特異的サブ配列を得ることと、(iv)腫瘍特異的サブ配列をコンピュータによって翻訳し、それによって腫瘍特異的プロテオームデータベースを得ることと、によって生成することと、
(b)個別化腫瘍プロテオームデータベースを、(i)腫瘍RNA配列を参照ゲノム配列と比較して、腫瘍RNA配列における一塩基変異を特定することと、(ii)(i)で特定された一塩基変異を参照ゲノム配列に挿入し、それによって個別化腫瘍ゲノム配列を作成することと、(iii)個別化腫瘍ゲノム配列から、発現されるタンパク質コード転写物をコンピュータによって翻訳し、それによって個別化腫瘍プロテオームデータベースを得ることと、によって生成することと、
(c)腫瘍からの主要組織適合性複合体(MHC)関連ペプチド(MAP)の配列を、(a)の腫瘍特異的プロテオームデータベースおよび(b)の個別化腫瘍プロテオームデータベースの配列と比較して、MAPを特定することと、
(d)(c)で特定されたMAPの中で腫瘍抗原候補を特定することと、を含み、腫瘍抗原候補は、その配列および/またはコード配列が、正常細胞と比較して腫瘍細胞中で過剰発現または過剰提示されるペプチドである、方法。
2.上記の方法は、(1)腫瘍細胞試料から主要組織適合性複合体(MHC)関連ペプチド(MAP)を単離および配列決定すること、ならびに/または(2)腫瘍細胞試料で全トランスクリプトーム配列決定を実施して、腫瘍RNA配列を得ること、をさらに含む、項目1に記載の方法。
3.当該MAPの単離は、(i)当該MAPを当該細胞試料から弱酸処理によって放出することと、(ii)放出されたMAPをクロマトグラフィーに供することと、を含む、項目2に記載の方法。
4.当該方法は、放出されたペプチドを当該クロマトグラフィーの前にサイズ排除カラムで濾過することをさらに含む、項目3に記載の方法。
5.当該サブ配列は33~54塩基対を含む、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
6.重複する腫瘍特異的サブ配列を、より長い腫瘍サブ配列(コンティグ)に組み立てることをさらに含む、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
7.当該サイズ排除カラムは、約3000Daのカットオフを有する、項目6に記載の方法。
8.当該MAPの配列決定は、単離されたMAPを質量分析(MS)配列決定分析に供することを含む、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
9.当該方法は、対応する正常細胞を使用して個別化正常プロテオームデータベースを生成することをさらに含む、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
10.当該(d)における特定は、当該MAPを、その配列が正常個別化プロテオームデータベース中で検出される場合に、除外することを含む、項目9に記載の方法。
11.方法は、当該腫瘍RNA配列および正常細胞からのRNA配列から24または39ヌクレオチドk-merデータベースを生成して腫瘍k-merデータベースおよび正常k-merデータベースを得ることと、腫瘍k-merデータベースおよび正常k-merデータベースを、MAPコード配列に由来する24または39ヌクレオチドk-merと比較することと、をさらに含み、当該正常k-merデータベースと比較して当該腫瘍k-merデータベースにおけるMAPコード配列に由来するk-merの過剰発現または過剰提示が、対応するMAPが腫瘍抗原候補であることを示す、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
12.MAPコード配列に由来するk-merは、当該正常k-merデータベースと比較して、当該腫瘍k-merデータベースにおいて少なくとも10倍過剰発現または過剰提示される、項目11に記載の方法。
13.MAPコード配列に由来するk-merは、当該正常k-merデータベースには存在しない、項目11または12に記載の方法。
14.当該方法は、
(a)腫瘍細胞試料におけるMAPを単離および配列決定することと、
(b)全トランスクリプトーム配列決定を当該腫瘍細胞試料で実施し、それによって腫瘍RNA配列を得ることと、
(c)腫瘍特異的プロテオームデータベースを、(i)当該腫瘍RNA配列から少なくとも33ヌクレオチドを含むサブ配列のセットを抽出することと、(ii)(i)の腫瘍サブ配列のセットを、正常細胞からのRNA配列から抽出された少なくとも33ヌクレオチドを含む対応するコントロールサブ配列のセットと比較することと、(iii)対応するコントロールサブ配列において、存在しないか、または少なくとも4倍下方発現される腫瘍サブ配列を抽出し、それによって腫瘍特異的サブ配列を得ることと、(iv)腫瘍特異的サブ配列をコンピュータによって翻訳し、それによって腫瘍特異的プロテオームデータベースを得ることと、によって生成することと、
(d)個別化腫瘍プロテオームデータベースを、(i)腫瘍RNA配列を参照ゲノム配列と比較して、当該腫瘍RNA配列における一塩基変異を特定することと、(ii)(i)で特定された一塩基変異を参照ゲノム配列に挿入し、それによって個別化腫瘍ゲノム配列を作成することと、(iii)個別化腫瘍ゲノム配列から、発現されるタンパク質コード転写物をコンピュータによって翻訳し、それによって個別化腫瘍プロテオームデータベースを得ることと、によって生成することと、
(e)個別化正常プロテオームデータベースを、(i)正常細胞からのRNA配列を参照ゲノム配列と比較して、当該正常RNA配列における一塩基変異を特定することと、(ii)(i)で特定された一塩基変異を参照ゲノム配列に挿入し、それによって個別化正常ゲノム配列を作成することと、(iii)個別化正常ゲノム配列から、発現されるタンパク質コード転写物をコンピュータによって翻訳し、それによって個別化正常プロテオームデータベースを得ることと、によって生成することと、
(f)正常および腫瘍k-merデータベースを、(i)正常細胞からの当該RNA配列および当該腫瘍RNA配列から少なくとも24ヌクレオチドを含むサブ配列のセットを抽出することによって、生成することと、
(g)(a)で得られたMAPの配列を、(c)の腫瘍特異的プロテオームデータベースおよび(d)の個別化腫瘍プロテオームデータベースの配列と比較して、MAPを特定することと、
(h)(g)で特定されたMAPの中で腫瘍抗原候補を特定することと、を含み、腫瘍抗原候補は、(1)配列が個別化正常プロテオームデータベースに存在せず、かつ(2)(i)配列が個別化腫瘍プロテオームデータベースに存在し、かつ/または(ii)コード配列が、当該正常k-merデータベースと比較して当該腫瘍k-merデータベースにおいて過剰発現もしくは過剰提示される、MAPに対応する、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
15.当該方法は、8~11個のアミノ酸の長さを有するMAPを選択することをさらに含む、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
16.当該正常細胞は、胸腺細胞である、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
17.当該胸腺細胞は、髄質胸腺上皮細胞(mTEC)である、項目16に記載の方法。
18.当該腫瘍抗原候補のコード配列を、正常組織からの配列と比較することをさらに含む、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
19.当該MAPは、8~11個のアミノ酸の長さを有する、項目1~18のいずれか一項に記載の方法。
20.腫瘍抗原候補のMHC分子との結合を評価することをさらに含む、項目1~19のいずれか一項に記載の方法。
21.当該結合は、MHC結合予測アルゴリズムを使用して評価される、項目20に記載の方法。
22.細胞集団における腫瘍抗原候補を認識するT細胞の頻度を評価することをさらに含む、項目1~21のいずれか一項に記載の方法。
23.腫瘍抗原候補を認識するT細胞の頻度は、当該腫瘍抗原候補をそれらのペプチド結合溝に含む多量体MHCクラスI分子を使用して評価される、項目22に記載の方法。
24.T細胞活性化を誘導する腫瘍抗原候補の能力を評価することをさらに含む、項目1~23のいずれか一項に記載の方法。
25.T細胞活性化を誘導する腫瘍抗原候補の能力は、MHCクラスI分子にそれらの細胞表面で結合した当該腫瘍抗原候補を有する細胞と接触されたT細胞によるサイトカイン産生を測定することによって評価される、項目24に記載の方法。
26.当該サイトカイン産生は、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)産生を含む、項目25に記載の方法。
27.T細胞媒介性腫瘍細胞死滅を誘導し、かつ/または腫瘍成長を阻害する腫瘍抗原候補の能力を評価することをさらに含む、項目1~26のいずれか一項に記載の方法。
28.項目1~27のいずれか一項で定義される方法によって特定される、腫瘍抗原ペプチド。
29.配列番号1~39のいずれか1つに示されるアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる、腫瘍抗原ペプチド。
30.配列番号17~39のいずれか1つに示されるアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる、項目29に記載の腫瘍抗原ペプチド。
31.当該腫瘍抗原ペプチドは、白血病腫瘍抗原ペプチドであり、配列番号17~28のいずれか1つに示されるアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる、項目30に記載の腫瘍抗原ペプチド。
32.当該白血病は、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)である、項目31に記載の腫瘍抗原ペプチド。
33.当該腫瘍抗原ペプチドは、HLA-A*02:01対立遺伝子のヒト白血球抗原(HLA)に結合し、配列番号17~19、27、および28のいずれか1つに示されるアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる、項目31または32に記載の腫瘍抗原ペプチド。
34.当該腫瘍抗原ペプチドは、HLA-B*40:01対立遺伝子のヒト白血球抗原(HLA)に結合し、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、項目31または32に記載の腫瘍抗原ペプチド。
35.当該腫瘍抗原ペプチドは、HLA-A*11:01対立遺伝子のヒト白血球抗原(HLA)に結合し、配列番号21~23のいずれか1つに示されるアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる、項目31または32に記載の腫瘍抗原ペプチド。
36.当該腫瘍抗原ペプチドは、HLA-B*08:01対立遺伝子のヒト白血球抗原(HLA)に結合し、配列番号24または25に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、項目31または32に記載の腫瘍抗原ペプチド。
37.当該腫瘍抗原ペプチドは、HLA-B*07:02対立遺伝子のヒト白血球抗原(HLA)に結合し、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、項目31または32に記載の腫瘍抗原ペプチド。
38.当該腫瘍抗原ペプチドは、肺腫瘍抗原ペプチドであり、配列番号29~39のいずれか1つに示されるアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる、項目30に記載の腫瘍抗原ペプチド。
39.当該肺腫瘍は、非小細胞肺癌(NSCLC)である、項目38に記載の腫瘍抗原ペプチド。
40.当該腫瘍抗原ペプチドは、HLA-A*11:01対立遺伝子のヒト白血球抗原(HLA)に結合し、配列番号29~35のいずれか1つに示されるアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる、項目38または39に記載の腫瘍抗原ペプチド。
41.当該腫瘍抗原ペプチドは、HLA-B*07:02対立遺伝子のヒト白血球抗原(HLA)に結合し、配列番号36に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、項目38または39に記載の腫瘍抗原ペプチド。
42.当該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-A*24:02対立遺伝子のヒト白血球抗原(HLA)に結合し、配列番号38または39に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、項目38または39に記載の腫瘍抗原ペプチド。
43.当該腫瘍抗原ペプチドは、HLA-C*07:01対立遺伝子のヒト白血球抗原(HLA)に結合し、配列番号37に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、項目38または39に記載の腫瘍抗原ペプチド。
44.ゲノムの非タンパク質コード領域に由来する、項目29~43のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチド。
45.ゲノムの当該非タンパク質コード領域は、遺伝子間領域、イントロン領域、5’非翻訳領域(5’UTR)、3’非翻訳領域(3’UTR)、または内在性レトロエレメント(ERE)である、項目44に記載の腫瘍抗原ペプチド。
46.項目28~45のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチドをコードする、核酸。
47.mRNAまたはウイルスベクターである、項目46に記載の核酸。
48.項目28~45のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチド、または項目46もしくは47に記載の核酸を含む、リポソーム。
49.項目28~45のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチド、項目46もしくは47に記載の核酸、または項目48に記載のリポソームと、薬学的に許容される担体と、を含む、組成物。
50.項目28~45のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチド、項目46もしくは47に記載の核酸、項目48に記載のリポソーム、または項目49に記載の組成物と、アジュバントと、を含む、ワクチン。
51.項目28~45のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチドをそのペプチド結合溝に含む、単離された主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子。
52.多量体の形態にある、項目51に記載の単離されたMHCクラスI分子。
53.当該多量体は、四量体である、項目52に記載の単離されたMHCクラスI分子。
54.項目28~45のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチドを含む、単離された細胞。
55.項目28~45のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチドをそれらのペプチド結合溝に含む主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子を、その表面で発現する、単離された細胞。
56.抗原提示細胞(APC)である、項目55に記載の細胞。
57.当該APCは、樹状細胞である、項目56に記載の細胞。
58.項目51~53のいずれか一項に記載の単離されたMHCクラスI分子および/または項目54~57のいずれか一項に記載の細胞の表面で発現されるMHCクラスI分子を特異的に認識する、T細胞受容体(TCR)。
59.項目58に記載のTCRをその細胞表面で発現する、単離されたCD8+Tリンパ球。
60.項目59に定義されるCD8+Tリンパ球の少なくとも0.5%を含む、細胞集団。
61.対象において癌を治療する方法であって、対象に有効量の(i)項目28~45のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチド、(ii)項目46もしくは47に記載の核酸、(iii)項目48に記載のリポソーム、(iv)項目49に記載の組成物、(v)項目50に記載のワクチン、(vi)項目54~57のいずれか一項に記載の細胞、(vii)項目59に記載のCD8+Tリンパ球、または(viii)項目60に記載の細胞集団、を投与することを含む、方法。
62.当該癌は、白血病である、項目61に記載の方法。
63.当該白血病は、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)である、項目62に記載の方法。
64.当該癌は、肺癌である、項目61に記載の方法。
65.当該肺腫瘍は、非小細胞肺癌(NSCLC)である、項目64に記載の方法。
66.少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤または療法を対象に投与することをさらに含む、項目61~65のいずれか一項に記載の方法。
67.当該少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤または療法は、化学療法剤、免疫療法、免疫チェックポイント阻害剤、放射線療法、または手術である、項目66に記載の方法。
68.対象において癌を治療するための、(i)項目28~45のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチド、(ii)項目46もしくは47に記載の核酸、(iii)項目48に記載のリポソーム、(iv)項目49に記載の組成物、(v)項目50に記載のワクチン、(vi)項目54~57のいずれか一項に記載の細胞、(vii)項目59に記載のCD8+Tリンパ球、または(viii)項目60に記載の細胞集団、の使用。
69.対象において癌を治療するための医薬品の製造のための、(i)項目28~45のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチド、(ii)項目46もしくは47に記載の核酸、(iii)項目48に記載のリポソーム、(iv)項目49に記載の組成物、(v)項目50に記載のワクチン、(vi)項目54~57のいずれか一項に記載の細胞、(vii)項目59に記載のCD8+Tリンパ球、または(viii)項目60に記載の細胞集団、の使用。
70.当該癌は、白血病である、項目68または69に記載の使用。
71.当該白血病は、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)である、項目70に記載の使用。
72.当該癌は、肺癌である、項目68または69に記載の使用。
73.当該肺腫瘍は、非小細胞肺癌(NSCLC)である、項目72に記載の使用。
74.少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤または療法の使用をさらに含む、項目68~73のいずれか一項に記載の使用。
75.当該少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤または療法は、化学療法剤、免疫療法、免疫チェックポイント阻害剤、放射線療法、または手術である、項目74に記載の使用。
【0012】
本発明の他の目的、利点、および特徴は、本発明の特定の実施形態の以下の非限定的な説明を読むことでさらに明らかになり、付属の図面との関連でのみ実施例の方法で示される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付図面。
【0014】
【
図1A-C】腫瘍特異的抗原(TSA)の特定のための標的化プロテオゲノミクスワークフローを示す。
図1A、B:標準的癌プロテオーム(
図1A)および癌特異的プロテオーム(
図1B)が各々の分析された試料についてどのように構築されたかを詳細に示す概略図。
図1C:次いで、包括的癌データベース(global cancer database)と称されるこれらの2つのプロテオームの組み合わせを使用して、2つの十分に特徴付けられたマウス細胞株、すなわち、CT26およびEL4、ならびに7つのヒト原発性試料、すなわち、4つのB-ALLおよび3つの肺腫瘍生検(試料あたりn=2~4)から、液体クロマトグラフィー-MS/MS(LC-MS/MS)によって配列決定されたMAP、より具体的にはTSAを特定した。包括的癌データベースの各部分に関する統計は、表4a~bで認めることができ、k-merプロファイリングによって癌特異的プロテオームを構築するための実施詳細(implementation details)は、
図7に示される。aa:アミノ酸、nt:ヌクレオチド、th:k-mer発生時の試料特異的閾値(以下の実施例1のk-merフィルタリングおよび癌特異的プロテオームの生成を参照する)。
【
図2A-D】ほとんどのTSAは非コード領域の翻訳に由来することを示す実験の結果を示す。
図2A:TSA発見に関わる主要な検証ステップを示すフローチャート。各ステップに関する詳細は、
図8に認めることができる。
図2B:ほとんどのTSA候補は、異常に発現した配列に由来する。CT26およびEL4腫瘍モデルにおけるmTSA(m)およびaeTSA候補(ae)の数を示すバープロット。
図2C:RNA-Seqデータが公開されて利用可能である22個の組織/臓器におけるaeTSA候補に関するMCSの発現を示すヒートマップ(表5を参照)。以前に報告された過剰発現したEL4 TAA
40、41におけるMCSの発現をコントロールとして示す。発現値をrphm(配列決定した1億リードあたりのリード、詳細については実施例1のMCSの末梢発現のセクションを参照)に基準化し、各組織について利用可能な全てのRNA-Seq実験にわたって平均した。太字の正方形は、関連するMCSが>0rphmで検出された組織を示す。脂肪組織(Adip.tissue):脂肪組織、乳腺(mam.gland):乳腺、および皮下脂肪組織(s.c.adip.tissue):皮下脂肪組織。
図2D:ほとんどのae/mTSAは、非コード領域に由来する。コード化エキソンのインフレーム(in-frame)翻訳(コード化-内)、コード化エキソンのアウトオブフレーム(out-of-frame)翻訳(コード化-外)、および非コード化とされる領域の翻訳(非コード化)に由来するTSAの数を示すバープロット。バー内の数値は、aeTSA/mTSAの数を表す。バー上のパーセントは、非定型的な翻訳事象に由来するTSA、すなわち、コード化-外および非コード化分類に属するTSAの割合を示す。CT26およびEL4 TSAの特徴は、それぞれ、表1aおよびbに認めることができる。
【
図3A-C】個々のTSAに対する免疫は、EL4細胞に対して異なる程度の保護を付与することを示すグラフである。C57BL/6雌
【数A】
マウスを、以下のように、個々のTSAによってパルス化したDCで2回免疫化した。(
図3A)2つのaeTSA、(
図3B)2つのERE TSA(1つのaeTSAまたは1つのmTSA)、および(
図3C)1つのmTSA。マウスに、5×10
5個の生EL4細胞(黒色の三角形)を0日目に静脈内に注入し、生存した全てのマウスを150日目に再負荷した。コントロール群を非パルス化DCで免疫化した(黒色線
は生存期間中央値を表す
)。免疫化した群対コントロール群の統計的有意性は、対数順位検定を使用して計算し、nsは有意でないことを表す(p>0.05)。ペプチド特異的免疫についての群あたり10匹のマウス、コントロール群について19匹のマウス。
【
図4A-D】ナイーブおよび免疫化マウスにおけるTSA特異的T細胞の頻度およびTSA特異的T細胞によるIFN-γ分泌を示すグラフである。
図4A:ナイーブマウスにおける10
6個のCD8
+T細胞あたりの四量体
+CD8
+T細胞の数。各円は、1匹のマウス(n=5~9匹のマウス)を表す。点線は、10
6個のCD8
+T細胞あたり1個の四量体
+T細胞の頻度を表す。p値は、両側マンホイットニー検定を使用して計算された(**、p<0.01および***、p<0.001)。
図4B:免疫後の抗原特異的CD8
+T細胞の増殖。四量体
+CD8
+T細胞の豊富化倍率は、関連(白色バー)または無関連(灰色バー)ペプチドで免疫化されたマウスにおける平均頻度を、ナイーブマウスにおける平均頻度で除することによって計算した。
図4C、4D:免疫化したマウスから選別したCD8
+T細胞を、放射線照射したペプチドパルス化脾臓細胞の存在下で48時間インキュベートした。
図4C:IFN-γ分泌性抗原特異的細胞の頻度は、免疫化マウスにおけるスポット形成細胞の平均頻度(播種された10
6個のCD8 T細胞あたりで報告されたSFC)からナイーブマウスにおけるものを減じたものとして表される。技術的反復を表す円を有する3つの独立した実験。p値は独立両側スチューデント検定tを使用して計算し、全てp<0.05(範囲:0.0025~0.0143)である。
図4D:SFCの頻度を最大値に対して基準化することによって、そして用量応答曲線を使用して各ペプチドについてEC
50を計算することによって、抗原特異的T細胞の機能的結合活性を計算した。H7
aおよびH13
aにおける機能的結合活性値は、既に公表され、比較目的のために使用した。3つの独立した実験。全ての関連パネルで、各条件の上の全ての水平線および数値は平均値を表す。コントロールとして使用されるウイルスペプチドは、灰色で強調される。
【
図5A-D】EL4由来TSAの高発現は抗白血病応答を誘導するのに重要であるが十分ではないことを示すグラフである。
図5A、B:RNAおよびペプチドレベルでのTSA発現の分析を、0日目または150日目にそれぞれ注入されたEL4細胞で実施した。
図5A:EL4 RNA-Seqリードの数を表すバープロットは、5つのEL4 TSAの各々をコードするMCSと完全に重複している。
図5B:5つのEL4 TSAの
13C合成ペプチド類似体を使用してPRM MSによって評価される、細胞あたりのTSAコピー数。TSAあたりEL4細胞の3回複製。細胞あたりのTSAコピー数の平均をグラフの
右側に示す。N.D.:検出されない。
図5C:ペプチドパルス化DCによる前免疫を伴わない生EL4細胞による注入後のTSA特異的CD8
+T細胞の増殖。四量体
+CD8
+T細胞の豊富化倍率は、EL4注入マウスにおける平均頻度をナイーブマウスの平均頻度で除することによって計算した。EL4細胞によって提示されないウイルスペプチドを認識するT細胞の豊富化倍率は陰性コントロールとして示され、灰色で強調される。
図5D:C57BL/6雌マウスを、592d(10,000cGy)放射線照射EL4細胞(青色線)またはコントロールとして非パルス化DC(黒色線)で2回免疫化し、次いで5×10
5個の生EL4細胞を静脈内注入した。
【数B】
は生存期間の中央値を表す。放射線照射されたEL4細胞免疫について10匹のマウス、コントロール群について19匹のマウス。
【
図6A-C】ヒト原発性腫瘍で検出されるほとんどのTSAは、非コード化領域の翻訳に由来することを示す。
図6A:ほとんどのヒトTSAはaeTSAである。分析した各原発性試料におけるaeTSA候補(ae)およびmTSA(m)の数を示すバープロット。
図6B:ヒトaeTSA候補およびTAAの末梢発現。RNA-Seqデータが公開されて利用可能である28個のヒト組織のパネルにわたって、Cancer Immunity Peptideデータベース
48から得られた、27個のaeTSAおよび24個の過剰発現したTAAについてMCSの発現を示すヒートマップ(表6を参照)。発現値をrphmに基準化し(詳細については、以下の実施例1のMCSの末梢発現のセクションを参照)、各組織について利用可能な全てのRNA-Seq実験にわたって平均化した。各抗原について、そのMCSが>15rphmで発現される組織の数がヒートマップの左側に示される。皮下脂肪(adip.s.c):皮下脂肪
図6C:ほとんどのヒトTSAは、非コード領域に由来する。コード化エキソンのインフレーム翻訳(コード化-内)、コード化エキソンのアウトオブフレーム翻訳(コード化-外)、および非コード化とされる領域の翻訳(非コード化)に由来するヒトTSAの数を示すバープロット。各試料において特定されたヒトTSAの特徴は、表2a~dおよび3a~cに認めることができる。
【
図7A-D】k-merプロファイリングワークフローに使用される規則の構成の概略図である。RNA-seqリードからk-merを生成し(
図7A)、k-merをフィルターにかけ(
図7B)、k-merをコンティグに組み立て(
図7C)、コンティグを翻訳する(
図7D)ために使用される規則に関する詳細。
【
図8A-C】TSA検証プロセスを示す。
図8A:MAP/タンパク質の対の免疫原性状態の計算を詳細に示す概略図。FC:腫瘍/同系mTEC
hi(マウス試料)またはTEC/mTEC(ヒト試料)。
図8B:TSA候補としてフラグ付けされたMAPのMS関連検証を実施するために使用される戦略。
図8C:MS検証済みマウスTSA候補(CT26およびEL4)、ならびにB-ALL標本および肺癌におけるMS検証済みヒトTSA候補にゲノム位置を割り当てるために使用される戦略を要約する概略図。
【
図9A-D】ナイーブおよび前免疫されたマウスにおける抗原特異的CD8
+T細胞の検出を示すグラフである。
図9A:pMHC四量体
+CD8
+T細胞のエクスビボ検出のためのゲーティング戦略。四量体豊富化を、各マウスの脾臓およびリンパ節から単離した単一細胞懸濁液で実施した。ダブレット排除後、Dump
-CD3
+細胞をCD8およびCD4発現について分析し、pMHC I四量体
+細胞をCD8
+区画内で分析した。ナイーブマウスにおけるVTPV/H-2K
b-PEおよびM45/H-2D
b-APC四量体豊富化後に得られた代表的な染色を示す。各特異性について検出された四量体
+CD8
+T細胞の絶対数を示す。Dumpチャネルは、死細胞、CD45RおよびCD19、F4/80、CD11b、CD11cについて陽性であるプールされた事象に対応する。
図9B、C:ナイーブ(上段)および前免疫化(下段)マウスにおける抗原特異的CD8 T細胞でのCD44発現の代表的な分析。磁気豊富化前(
図9B、左パネル)ならびに四量体
+ウイルス特異性(
図9B)およびTSA特異性(
図9C)におけるエクスビボ豊富化後のCD8
+細胞のCD44状態を表す。CD44陽性または陰性細胞の割合および数を示す。
図9D:免疫化およびナイーブマウスにおけるIFN-γ分泌性CD8
+T細胞の頻度の1つの代表的な実験。各条件において播種したCD8
+T細胞の
数に対するスポット形成単位(SFU)の数を各枠の下に示す。
【
図10A-D】抗原特異的T細胞の頻度を示すグラフである。
図10A:ナイーブまたは関連もしくは無関連のペプチドで免疫化されたマウスにおける抗原特異的T細胞の頻度。
図10B、C:150日目にEL4細胞で再負荷されたVTPVYQHLもしくはTVPLNHNTLに対して(
図10B)、またはVNYLHRNVもしくはVNYIHRNVに対して(
図10C)免疫化されたマウスにおける抗原特異的CD8
+T細胞の頻度。比較目的のために、
図10Aに報告されるナイーブおよび免疫化マウスにおける抗原特異的T細胞の頻度を再現する。
図10D:EL4細胞を注入した非免疫化マウスにおける抗原特異的T細胞の頻度。四量体
+CD8
+T細胞の全ての計算された頻度は、10
6個のCD8
+T細胞あたりの抗原特異的CD8
+T細胞の数として表される。各記号は、1匹のマウス(n=1~9匹のマウス)を表す。点線は、10
6個のCD8
+T細胞あたり1個の四量体
+T細胞の最小検出レベルを表す。コントロールとして使用されるウイルスペプチドを灰色で強調する。p値は、両側マンホイットニー検定(*p≦0.05)を使用して計算した。
【
図11A-C】ナイーブおよび前免疫化マウスにおける抗原特異的T細胞頻度間の相関を示すグラフである。四量体染色(
図11A)およびIFN-γ ELISpotアッセイ(
図11B)によって計算したナイーブレパートリーおよび免疫化マウスにおける抗原特異的CD8
+T細胞の頻度の相関。
図11C:四量体染色およびIFN-γ ELISpotアッセイによって計算された免疫化マウスにおける抗原特異的CD8
+T細胞の頻度における相関。平均頻度はデータのプロットに使用した。曲線のフィッティングは、決定係数(r
2)によって決定された。
【
図12A-B】ヒトTECおよびmTECトランスクリプトームランドスケープの概要を図示する。
図12A:無関係ドナーから単離されたヒトTEC(062015および102015)およびmTEC(S5~S11)は、類似のトランスクリプトームプロファイルを示す。RNA-Seqに続いて、kallistoによって推定されるように、tpm>1を有する少なくとも1つのドナーで発現された転写物を選択して、全ての1対1の散乱プロットを描いた。スピアマン順位相関係数(ρ)は、各グラフの左上隅に示され、黒色線は転写物の同一の発現を表す。
図12B:追加のヒトTEC/mTEC試料のRNA-Seqは、情報の最小ゲインをもたらすべきである。発現した転写物のセット(少なくとも1つの試料中でtpm>1)を使用して、追加の試料(nS、以下の実施例1のTECおよびmTEC試料中で検出された転写物の累積数のセクションを参照)をコホートに添加することによって検出されるべき転写物の累積数(cT)を、以下の関数を使用して外挿し、
【数C】
式中、a=23,892.73、b=0.8243389、およびc=75,976.11(灰色線)である。グラフ上には、nS=6(本発明のコホート、黒点)またはnS=20試料を分析することによって検出される転写物の累積数、ならびに
【数D】
(漸近線値)に対応する検出されるべき転写物の総数が示される。
【
図13A-C】FACS選別によって単離された細胞におけるゲーティング戦略を示すグラフである。
図13A:マウスmTEC
hiの単離のためのゲーティング戦略。mTEC
hi単離を、C57BL/6またはBalb/cマウスの胸腺から単離された単一細胞懸濁液で実施した。ダブレット排除後、mTEC
hi細胞を、7-AAD
-、EpCAM
+、CD45
-(C57BL/6マウスではAlexa Fluor700、またはBalb/cマウスではFITC)、UEA-1
+およびI-Ab
+(C57BL/6マウス)、またはI-A/I-E
+(Balb/cマウス)として定義した。
図13B:ヒトTECおよびmTECの単離のためのゲーティング戦略。細胞選別を、心臓血管矯正手術を受ける3ヶ月~7歳の個体から得られた胸腺から単離された単一細胞懸濁液で実施した。ダブレット排除後、TECを、CD45
-、7-AAD
-、EpCAM
+、およびHLA-DR
+として定義した。mTECの選別のために、細胞をCDR2
-としてさらに定義した。
図13C:IFN-γ ELISpotアッセイ用のCD8
+T細胞の単離のためのゲーティング戦略。CD8
+T細胞単離を、ナイーブまたは免疫化C57BL/6マウスの脾臓から単離された単一細胞懸濁液で実施した。ダブレット排除後、CD8aマーカーを使用して、CD8
+T細胞を豊富化した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用される遺伝学、分子生物学、生化学、および核酸の用語および記号は、当該分野における標準的な論文およびテキスト、例えば、Kornberg and Baker,DNA Replication,Second Edition(W.H.Freeman&Co,New York,1992)、Lehninger,Biochemistry,Sixth Edition(W.H.Freeman&Co,New York,2012)、Strachan and Read,Human Molecular Genetics,fifth Edition(CRC Press,2018)、Eckstein,editor,Oligonucleotides and Analogs:A Practical Approach(Oxford University Press,New York,1991)などのものを使用する。全ての用語は、関連技術で確立されたそれらの一般的な意味で理解されるべきである。
【0016】
冠詞「a」および「an」は、本明細書では、冠詞の文法的目的語のうちの1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または複数の要素を意味する。本明細書全体を通して、文脈が別段必要としない限り、単語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含むこと(comprising)」は、言明されたステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群の包含を意味するが、任意の他のステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群の除外を意味するものではないことが理解されるであろう。
【0017】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示がない限り、範囲内に含まれる各々の別の値を個別に言及することの簡略法として機能することが単に意図されており、各々の別の値は、本明細書に個別に列挙されるかのようにそれらは本明細書に組み込まれる。範囲内の値の全てのサブセットも、本明細書に個別に列挙されるかのように本明細書に組み込まれる。
【0018】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施することができる。
【0019】
本明細書に提供される任意および全ての実施例、または例示的な言い回し(例えば、「など」)の使用は、本発明をより良く明らかにすることが単に意図されており、特に別段の請求がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【0020】
本明細書におけるいかなる言い回しも、任意の請求されていない要素を本発明の実施に不可欠であると示すものとして解釈されるべきではない。
【0021】
本明細書において、「約」という用語は、その通常の意味を有する。「約」という用語は、値が、その値を決定するために使用されるデバイスまたは方法における固有の誤差変動を含むか、または、列挙された値に近い値を包含することを示すために使用され、例えば、列挙された値(または値の範囲)の10%もしくは5%以内である。
【0022】
治療用癌ワクチンに使用することができる実用可能なTSAの発見にかなりの努力がさげられている。最も一般的な戦略は、逆免疫学(reverse immunology)で定まり、i)エクソーム配列決定を腫瘍細胞に実施して変異を特定し、ii)MHC結合予測ソフトウェアツールを使用して、どの変異型MAPが優れたMHC結合物質であり得るかを特定する11、12。逆免疫学は、TSA候補を豊富化することができるが、利用可能なコンピュータ法はMHC結合を予測し得るが、MAP処理に含まれる他のステップを予測することはできないため14、15、これらの候補の少なくとも90%は偽陽性である5、13。この制限を克服するために、いくつかの研究は、それらのTSA発見パイプラインに質量分析(MS)解析を含めており16、それによっていくつかのTSAの厳密な分子決定をもたらす17、18。しかしながら、これらのアプローチの収率は極めて不十分であり、最も変異した腫瘍型の1つである黒色腫において、個々の腫瘍あたり平均2つのTSAがMSによって検証されているが19、一方、他の癌型についてはわずかなTSAしか認められていない15。TILまたは免疫チェックポイント阻害剤の注入は、腫瘍が免疫原性抗原を発現しなかった場合、腫瘍退縮を引き起こさないため、TSAの乏しさは難題である20。エキソン変異に基づくアプローチは、それらが2つの重要な要素を考慮しなかったため、TSAを特定することに失敗していたことが推測された。第1に、基本的には、aeTSAのハイスループット識別のための方法が現在はないため、これらのアプローチはmTSAにのみ焦点を当ててaeTSAを軽視する。これは大きな欠点を意味し、mTSAは固有抗原であるが、aeTSAは複数の腫瘍によって共有することができ、ワクチン開発のための好ましい標的になり得るためである7、9。第2に、TSAの唯一の供給源としてエクソームに焦点を当てることは、非常に限定的である。エクソーム(すなわち、全てのタンパク質コード遺伝子)は、ヒトゲノムのわずか2%を表し、一方、ゲノムの最大75%は、転写され、潜在的に翻訳され得る22。
【0023】
本明細書に記載される研究において、本発明者らは、それらがコード領域もしくは非コード領域、単純もしくは複雑な再配列、または単に癌制限型EREに由来するかにかかわらず、非寛容原性TSAを特定することができるプロテオゲノミクスワークフローを開発している。非寛容原性配列を特定するために、全てのRNA配列決定リードをマッピングし、そこに存在する潜在的な変異を再構築しようとするよりもむしろ、正しく正常とマッチングするシグナル、すなわちmTEChiのうちの1つを癌シグナルから省いて、得られた配列のコンピュータによる翻訳をMSにおけるデータベースとして使用した。他の技法と比較して、本明細書に記載のk-merプロファイリングワークフローは、いくつかの利点を有する。(i)それは速い。増大した癌データベースのk-mer由来部分の生成に要するのは、典型的には半日未満である。(ii)それは偏りがない。これは、非コード領域に由来するTSA、ならびに約7,500塩基対の欠失に由来する1つのTSAの特定によって実証されるように、それらの性質に関係なく、全ての癌特異的配列を捉える。(iii)それはモジュール式である。非寛容原性配列を豊富化するために、癌データをmTEChiでフィルタリングし、これは抗原の末梢発現のための優れた代行であることが示され、それ以外の場合、例えば、全てのENCODEデータを除去するか、またはdbSNPを混合に加えることによって、データをフィルタリングし得る。関連付けられたk-merデータベースが生成され、フィルタリングされるべき正常試料の収集に加えられる。
【0024】
一態様では、本開示は、腫瘍細胞試料中の腫瘍抗原候補を特定するための方法を提供し、本方法は、
(a)腫瘍特異的プロテオームデータベースを、
(i)腫瘍RNA配列(例えば、腫瘍細胞試料の全トランスクリプトーム配列決定によって得られるRNA配列)から少なくとも33塩基対を含むサブ配列(k-mer)のセットを抽出することと、
(ii)(i)の腫瘍サブ配列のセットを、正常細胞からのRNA配列から抽出された少なくとも33塩基対を含む対応するコントロールサブ配列のセットと比較することと、
(iii)対応するコントロールサブ配列において、存在しないか、または少なくとも4倍下方発現されている腫瘍サブ配列を抽出し、それによって腫瘍特異的サブ配列を得ることと、
(iv)腫瘍特異的サブ配列をコンピュータによって翻訳し、それによって腫瘍特異的プロテオームデータベースを得ることと、によって生成することと、
(b)個別化腫瘍プロテオームデータベースを、
(i)腫瘍RNA配列を参照ゲノム配列と比較して、当該腫瘍RNA配列における一塩基変異を特定することと、
(ii)(i)で特定された一塩基変異を参照ゲノム配列に挿入し、それによって個別化ゲノム配列を作成することと、
(iii)当該個別化ゲノム配列から、発現されるタンパク質コード転写物をコンピュータによって翻訳し、それによって個別化プロテオームデータベースを得ることと、によって生成することと、
(c)当該腫瘍からの主要組織適合性複合体(MHC)関連ペプチド(MAP)の配列を、(a)の腫瘍特異的プロテオームデータベースおよび(b)の個別化腫瘍プロテオームデータベースの配列と比較して、MAPを特定することと、
(d)(c)で特定されたMAPの中で腫瘍抗原候補を特定することと、を含み、腫瘍抗原候補は、配列および/またはコード配列が、正常細胞と比較して腫瘍細胞中で過剰発現されるペプチドである。
【0025】
一実施形態では、上記の方法は、腫瘍細胞試料から主要組織適合性複合体(MHC)関連ペプチド(MAP)を単離および配列決定することをさらに含む。
【0026】
一実施形態では、上記の方法は、腫瘍細胞試料で全トランスクリプトーム配列決定を実施し、それによって腫瘍RNA配列を得ることをさらに含む。
【0027】
本明細書で使用される「腫瘍抗原候補」という用語は、主要組織適合性分子(MHC)に結合し、腫瘍細胞の表面にのみ存在するか、または腫瘍細胞の表面において、非腫瘍細胞と比較して有意に高いレベル/頻度(少なくとも2倍、好ましくは少なくとも4倍、5倍、または10倍)で存在するペプチドを指す。そのような腫瘍抗原候補は、それらの表面で抗原を発現する腫瘍細胞に対するT細胞応答を誘導するように標的化され得る。
【0028】
細胞試料からMHC関連ペプチド(MAP)を単離するための方法は、当該技術分野で周知である。最も一般的に使用される技法は、Fortierら(J.Exp.Med.205(3):595-610,2008)によって記載されている生細胞からのMHC関連ペプチドの弱酸溶出(MAE)である。別の技法は、ペプチド-MHCクラスI複合体の免疫沈降またはアフィニティ精製、それに続くペプチド溶出である(例えば、Gebreselassie et al.Hum Immunol.2006 November;67(11):894-906を参照する)。後者のアプローチに基づく2つのハイスループット戦略が使用されている。第1は、可溶性分泌型MHCをコードする発現ベクター(機能的膜貫通ドメインを欠く)による細胞株のトランスフェクション、および分泌型MHCに関連するペプチドの溶出に基づく(Barnea et al.,Eur J Immunol.2002 Jan,32(1):213-22、およびHickman HD et al.,J Immunol.2004 Mar 1;172(5):2944-52)。第2のアプローチは、化学的または代謝的標識で定まり、MHC関連ペプチドの定量的プロファイルを提供する(Weinzierl AO et al.Mol Cell Proteomics.2007 Jan;6(1):102-13.Epub 2006 Oct 29;Lemmel Cetal.,Nat Biotechnol.2004 Apr;22(4):450-4.Epub 2004 Mar 7;Milne E,Mol Cell Proteomics.2006 Feb;5(2):357-65.Epub 2005 Nov 4)。
【0029】
溶出したMAPは、さらなる分析の前に、サイズ排除クロマトグラフィーまたは限外濾過(約5000Da、例えば、約3000Daのカットオフを有するフィルターを使用)、逆相クロマトグラフィー(疎水性クロマトグラフィー)、および/またはイオン交換クロマトグラフィー(例えば、カチオン交換クロマトグラフィー)を含む、任意の精製/豊富化ステップに供され得る。溶出したMAPの配列は、質量分析(以下に記載されるタンデム質量分析またはMS/MS)およびエドマン分解反応などの、ペプチド/タンパク質を配列決定するための当技術分野で知られている任意の方法を使用して決定され得る。
【0030】
全トランスクリプトーム配列決定(「全RNA配列決定」、「RNA配列決定」、またはRNA-seqとも称される)は、試料(腫瘍試料、正常細胞試料)中に存在する全てのRNAの配列決定を指し、コード化RNA、ならびにmiRNA、snRNA、およびtRNAなどの非コード化RNAの複数の型が含まれる。全トランスクリプトーム配列決定を実施するための方法、例えば、次世代配列決定(NGS)法は、当該技術分野で周知である。市販されている(例えば、Illumina(NextSeq(商標)、HiSeq(商標))、Thermofisher(Ion Total(商標)RNA-Seqキット)、Clontech(SMARTer(商標))から)、または文献に言及されている複数のNGSプラットフォームを、本明細書に記載の方法で使用することができ、例えば、Zhang et al.2011:The impact of next-generation sequencing on genomics.J.Genet Genomics 38(3),95-109、またはVoelkerding et al.2009:Next generation sequencing:From basic research to diagnostics.Clinical chemistry 55,641-658に詳細に記載されている。
【0031】
好ましくは、RNA調製物は、NGSの出発物質として機能する。そのような核酸は、生物学的材料などの試料から、例えば、新鮮な、急速冷凍もしくはホルマリン固定パラフィン包埋した腫瘍組織から、または新たに単離された細胞から、あるいは患者の末梢血中に存在する循環腫瘍細胞(CTC)から、容易に得ることができる。正常またはコントロールRNAは、正常な体細胞組織または生殖細胞から抽出することができる。正常細胞からのRNA配列は、正常細胞の異なるタイプ、例えば、異なる組織からの正常細胞、からのRNA配列の収集に対応し得る。正常細胞からのRNA配列はまた、胸腺細胞、好ましくは、MHC IIhigh髄質胸腺上皮細胞(mTEChi)などの髄質胸腺上皮細胞(mTEC)から得ることができる。mTEChi細胞は独自の乱雑遺伝子発現プロファイルを有利に有しており、体細胞のタンパク質コード配列の約70~90%を発現し、それらのMAPは中心免疫寛容を誘導することができる。
【0032】
本明細書に記載される方法は、k-merプロファイリングと呼ばれるアラインメントフリーRNA-seq分析ワークフローを使用して、腫瘍特異的プロテオームデータベースを生成することを含み、構造バリアント(大きな挿入もしくは欠失(InDels)または融合を含む任意のタイプの変異)および非コード領域の翻訳に由来する配列を含む。腫瘍および正常RNA配列(RNA-seqリード)は、k-mer、すなわち、k≧33ヌクレオチドを有する長さkのサブ配列に「切断」または「分割」される。MHCクラスI分子(MAP)に結合するペプチドは、一般に、11個のアミノ酸長(したがって、33個のヌクレオチド長配列によってコードされる)を超えないため、RNA配列を少なくとも33個のヌクレオチドのサブ配列に分割することは、潜在的なMAPが欠落するリスクを最小限に抑える。当業者は、腫瘍特異的プロテオームデータベースのサイズを最小化するために、RNA配列を33ヌクレオチド(すなわち、k=33ヌクレオチド)のサブ配列に分割することが、MHCクラスI制限腫瘍抗原を特定するために好ましいことを理解するであろう。当業者はまた、MHCクラスII制限腫瘍抗原を特定するために、最小k-mer長を33~54ヌクレオチド(k≧54ヌクレオチド)に、MHC II関連ペプチドを一般に13~18個のアミノ酸長の範囲に増加させるべきであることを理解するであろう。次いで、腫瘍サブ配列を対応するコントロールサブ配列(正常細胞のRNA配列から)のセットと比較して、対応するコントロールサブ配列において、存在しないか、または少なくとも4倍(好ましくは、少なくとも5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍)下方発現される腫瘍サブ配列を抽出する。一実施形態では、k-merスペースに固有の冗長性を最小限にするために、本方法は、重複する腫瘍特異的サブ配列を、より長い腫瘍サブ配列(典型的にはコンティグと称される)に組み立てることをさらに含む。次いで、腫瘍特異的サブ配列またはコンティグは、コンピュータによって翻訳されて(例えば、サブ配列またはコンティグがコード鎖または非コード鎖に由来するかに応じて、3フレームまたは6フレーム翻訳される)、腫瘍特異的プロテオームデータベースを得る。一実施形態では、8個未満のアミノ酸(MHCクラスIペプチドの最小長)または13個のアミノ酸(MHCクラスIIペプチドの最小長)のタンパク質フラグメントは、腫瘍特異的プロテオームデータベースから除去される。
【0033】
一実施形態では、本方法は、RNA配列(正常細胞および腫瘍細胞)から、k=24ヌクレオチド(MHCクラスIペプチドについて)またはk=39(MHCクラスIIペプチドについて)を有するk-merデータベースを生成して、癌/腫瘍および正常の24(または39)ヌクレオチド長のk-merデータベースを得ることをさらに含む。これらのデータベースは、以下に記載されるように、MAPコード配列(MCS)との比較のために使用されて、MCSが腫瘍細胞中で過剰発現または過剰提示されるかを決定し得る。
【0034】
本方法はまた、個別化腫瘍プロテオームデータベースの生成を含む。そのために、腫瘍RNA配列(腫瘍RNA-seqリード)を参照ゲノム配列と比較して、腫瘍RNA配列における一塩基変異を特定する。次いで、これらの変異を参照ゲノムに挿入して、個別化腫瘍ゲノムを得、そこから、発現された全てのタンパク質コード転写物配列の標準的翻訳産物配列を含む対応する個別化腫瘍プロテオームデータベースを得ることが可能である。エクソームの標準的フレームによってコードされるWT MAPおよび変異TSA(ネオ抗原)を特定することを可能にする、個別化腫瘍プロテオームデータベースの生成はまた、いくつかの偽陽性の特定をもたらすであろう腫瘍特異的配列にデータベースを過度にバイアスしないことによって、MS分析に使用されるデータベースの信頼性を改善する。
【0035】
一実施形態では、本方法は、個別化正常プロテオームデータベースの生成も含む。そのために、正常細胞からのRNA配列(正常RNA-seqリード)を参照ゲノム配列と比較して、正常RNA配列における一塩基変異を特定する。次いで、これらの変異を参照ゲノムに挿入して、個別化正常ゲノムを得、そこから、発現された全てのタンパク質コード転写物配列の標準的翻訳産物配列を含む対応する個別化正常プロテオームデータベースを得ることが可能である。この個別化正常プロテオームデータベースを使用して、正常(非腫瘍)細胞内で発現される、好適なTSA候補ではないMAPをフィルタリングし得る。
【0036】
本明細書で使用される「参照ゲノム」という用語は、文献に報告されているヒトゲノムアセンブリを指し、例えば、Genome Reference Consortium Human Build 38(GRCh38,RefSeq:受入番号GCF_000001405.37)、Hs_Celera_WGSA(Celera Genomics、Istrail S.et al.Proc,Natl Acad Sci USA.2004;101(7):1916-21).Epub 2004 Feb 9)、HuRefおよびHuRefPrime(J.Craig Venter Institute、Levy S,et al.PLoS Biology.2007;5:2113-2144)、YH1およびBGIAF(Beijing Genomics Institute;Li R,et al.Genome Research.2010;20:265-272)、HsapALLPATHS1(Broad Institute)などが含まれる。参照ヒトゲノムアセンブリのリストは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の「アセンブリ」データベースに認められ得る。一実施形態では、参照ゲノムは、GRCh38である。
【0037】
次に、方法のステップ(a)で得られたMAPの配列を、MAPの特定を可能にする腫瘍特異的プロテオームデータベースおよび個別化腫瘍プロテオームデータベースの配列と比較する(例えば、BLAST処理する)。
【0038】
腫瘍抗原候補は、上記のMAPの中で特定され得る。そのような腫瘍抗原候補は、配列および/またはコード配列が正常細胞と比較して腫瘍細胞中で過剰発現されるペプチドに対応する。
【0039】
一実施形態では、本方法は、配列が正常個別化プロテオームデータベースで検出されるMAPを排除または放棄することをさらに含む。
【0040】
一実施形態では、本方法は、特定されたMAPのコード配列、すなわちMAPコード配列(MCS)を回収することを含む。別の実施形態では、本方法は、MCSを24個(MHCクラスIペプチドの場合)または39個(MHCクラスIIペプチドの場合)のヌクレオチドのk-merセットに変換することを含む。別の実施形態では、MCSに由来するこれらのk-merセットは、癌/腫瘍および正常24-(または39-)ヌクレオチドk-merデータベースと比較される。
【0041】
一実施形態では、本方法は、
(a)腫瘍細胞試料中の主要組織適合性複合体(MHC)関連ペプチド(MAP)を単離および配列決定することと、
(b)全トランスクリプトーム配列決定を当該腫瘍細胞試料で実施し、それによって腫瘍RNA配列を得ることと、
(c)腫瘍特異的プロテオームデータベースを、
(i)当該腫瘍RNA配列から少なくとも33ヌクレオチドを含むサブ配列(k-mer)のセットを抽出することと、
(ii)(i)の腫瘍サブ配列のセットを、正常細胞からのRNA配列から抽出された少なくとも33ヌクレオチドを含む対応するコントロールサブ配列のセットと比較することと、
(iii)対応するコントロールサブ配列において、存在しないか、または少なくとも4倍下方発現されている腫瘍サブ配列を抽出し、それによって腫瘍特異的サブ配列を得ることと、
(iv)腫瘍特異的サブ配列をコンピュータによって翻訳し、それによって腫瘍特異的プロテオームデータベースを得ることと、によって生成することと、
(d)個別化腫瘍プロテオームデータベースを、
(i)腫瘍RNA配列を参照ゲノム配列と比較して、当該腫瘍RNA配列における一塩基変異を特定することと、
(ii)(i)で特定された一塩基変異を参照ゲノム配列に挿入し、それによって個別化腫瘍ゲノム配列を作成することと、
(iii)当該個別化腫瘍ゲノム配列から、発現されるタンパク質コード転写物をコンピュータによって翻訳し、それによって個別化腫瘍プロテオームデータベースを得ることと、によって生成することと、
(e)個別化正常プロテオームデータベースを、
(i)正常細胞からのRNA配列を参照ゲノム配列と比較して、当該正常RNA配列における一塩基変異を特定することと、
(ii)(i)で特定された一塩基変異を参照ゲノム配列に挿入し、それによって個別化正常ゲノム配列を作成することと、
(iii)当該個別化正常ゲノム配列から、発現されるタンパク質コード転写物をコンピュータによって翻訳し、それによって個別化正常プロテオームデータベースを得ることと、によって生成することと、
(f)(i)正常細胞からの当該RNA配列および当該腫瘍RNA配列から少なくとも24ヌクレオチドを含むサブ配列のセットを抽出することによって、正常および腫瘍k-merデータベースを生成することと、
(g)(a)で得られたMAPの配列を、(c)の腫瘍特異的プロテオームデータベースの配列および(d)の個別化腫瘍プロテオームデータベースと比較して、MAPを特定することと、
(h)(g)で特定されたMAPの中で腫瘍抗原候補を特定することと、を含み、腫瘍抗原候補は、(1)配列が個別化正常プロテオームデータベースに存在せず、かつ(2)(i)配列が個別化腫瘍プロテオームデータベースに存在し、かつ/または(i)コード配列は、当該正常k-merデータベースと比較して当該腫瘍k-merデータベースにおいて過剰発現もしくは過剰提示される、MAPに対応する。
【0042】
一実施形態では、コード配列は、MAP由来k-merのセット(例えば、24nt k-mer)に変換され、腫瘍および正常k-merデータベースにおけるMAP由来k-merの発現または提示が決定される。本明細書で使用される場合、過剰発現または過剰提示されるとは、配列が、腫瘍k-merデータベースにおいて、正常k-merデータベースと比較して少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3、4、または5倍、より好ましくは少なくとも10倍であるレベルで存在することを意味する。一実施形態では、コード配列またはMAP由来k-merは、正常k-merデータベースに存在しない。
【0043】
一実施形態では、
図7Aを参照し、TSA候補の特定および検証は、以下のように達成される。各MAPおよびその関連するMAPコード配列(複数可)(MCS)を、関連する癌および正常個別化プロテオーム、または癌および正常24ヌクレオチド長k-merデータベースに照会する。正常個別化プロテオームで検出されたMAPは除外した。癌個別化プロテオームおよび/または癌k-merデータベースにのみ存在するMAPは、TSA候補として特定/選択される。両方の個別化プロテオームに存在しないが両方のk-merデータベースに存在するMAPについては、それらは、それらのMCSが正常細胞と比較して癌細胞において過剰発現(例えば、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍)される場合に選択される。MAPがいくつかのMCSによってコードされている場合、それは、それらのそれぞれのMCSが一致していた場合、すなわち、それがTSA候補として一貫してフラグ付けされている場合、TSA候補として特定/選択される。一実施形態では、それらはMSによって区別することが困難であるため、I/Lバリアントを有するTSA候補は、TSA候補として除外される。
【0044】
一実施形態では、比較の前に、溶出されたMAPをフィルタリングして8~11個のアミノ酸長ペプチドについて選択する。別の実施形態では、比較の前に、溶出されたMAPをフィルタリングして、NetMHCソフトウェアバージョン4.0(http://www.cbs.dtu.dk/services/NetMHC-4.0)(Andreatta M,Nielsen M,Bioinformatics(2016)Feb 15;32(4):511-7;Nielsen M,et al.,Protein Sci.,(2003)12:1007-17)によって予測される関連MHC I分子で少なくとも1つについてパーセンタイルランク<2%を有するものを選択する。
【0045】
一実施形態では、本方法はさらに、腫瘍抗原候補のコード配列を正常な組織由来の配列と比較することを含む。実施形態では、少なくとも5、10、15、20、または25個の異なる組織の配列が使用される。正常組織からの配列は、Expression Atlas(Petryszak et al.,Nucleic Acids Research,Volume 44,Issue D1,4 January 2016,Pages D746-D752)、scRNASeqDB(Cao Y,et al.(2017).Genes8(12),368)、RNA-Seq Atlas(Krupp et al.,Bioinformatics,Volume 28,Issue 8,15 April 2012,Pages 1184-1185)、およびEncodeなどの公開データベースから入手され得、または正常組織にRNA-seqを実施することによって生成され得る。一実施形態では、本方法は、(1)そのコード配列が評価された正常組織のいずれにおいても発現されない場合、またはそれがMHCクラスI陰性組織においてのみ発現される場合、あるいは(2)そのコード配列が評価されたMHCクラスI陽性組織の50%未満、好ましくは45%、40%、35%、もしくは30%未満で発現される場合、腫瘍抗原候補を選択することをさらに含む。一実施形態では、腫瘍抗原候補は、そのコード配列が評価される正常組織の7個未満、好ましくは6、5、4、または3個未満で発現される場合に選択される。
【0046】
一実施形態では、本方法は、TSA候補のコード配列のゲノム位置を決定することと、(1)コード配列が、一致しているゲノムの位置とマッチングし、(2)コード配列が超可変領域(TCR遺伝子のH2、Igなど)または複数の遺伝子とマッチングせず、かつ(3)同義変異と重複しない場合に、TSA候補を選択することと、をさらに含む。そのような決定は、UCSC Genome Browser(Kent WJ.Genome Res.2002 Apr;12(4):656-64)および/またはIntegrative genomics viewer(IGV)ツール(Robinson et al.Nat Biotechnol.2011 Jan;29(1):24-6)からのBLATツールを使用して実施され得る。
【0047】
一実施形態では、本方法は、特定された腫瘍抗原候補(TSA候補)のMHCクラスI分子との結合を決定または予測することをさらに含む。結合は、対立遺伝子産物に対するペプチドの予測される結合親和性(IC50)であり得、NetMHCなどのツールを使用して得られ得る。様々な利用可能なMHCクラスIペプチド結合ツールの概要は、Peters B et al.,PLoS Comput Biol 2006,2(6):e65、Trost et al.Immunome Res 2007,3(1):5、Lin et al.,BMC Immunology 2008,9:8で示される。特定されたTSA候補のMHCクラスI分子との結合は、他の既知の方法、例えば、T2ペプチド結合アッセイを使用して決定され得る。T2細胞株は、TAPを欠損しているが、依然として細胞表面上に低い量のMHCクラスIを発現する。T2結合アッセイは、T2細胞株の表面でMHCクラスI複合体を安定化するペプチドの能力に基づいている。T2細胞を特異的ペプチド(例えば、TSA候補)と共にインキュベートし、汎HLAクラスI抗体を使用して安定化MHCクラスI複合体を検出し、分析を(例えば、フローサイトメトリーによって)実行し、結合を非結合陰性コントロールと関連して評価する。安定化ペプチド/MHCクラスI複合体の表面での存在は、ペプチド(例えば、候補TSA)がMHCクラスI分子に結合することを示す。
【0048】
目的のペプチド(例えば、TSA候補)のMHCとの結合はまた、放射性標識プローブペプチドのMHC分子との結合を阻害するその能力に基づいて評価され得る。MHC分子を、界面活性剤で溶解し、親和性クロマトグラフィーによって精製する。次いで、それらを、プロテアーゼ阻害剤のカクテルの存在下で、目的のペプチド(例えば、TSA候補)および過剰な放射性標識プローブペプチドと共に室温で2日間インキュベートする。インキュベーション期間の最後に、MHC-ペプチド複合体をサイズ排除ゲル濾過クロマトグラフィーによって、非結合放射性標識ペプチドから分離し、結合放射能パーセントを決定する。MHC分子における特定のペプチドの結合親和性は、様々な用量の非標識競合ペプチドを、MHC分子および標識プローブペプチドと共インキュベートすることによって決定され得る。標識ペプチドの結合を50%阻害するのに必要とされる非標識ペプチドの濃度(IC50)は、用量対阻害%をプロットすることによって決定することができる(例えば、Current Protocols in Immunology(1998)18.3.1~18.3.19,John Wiley&Sons,Inc.を参照する)。
【0049】
特定されたTSA候補のMHCクラスI分子との結合はまた、ProImmune REVEAL(登録商標)&ProVE(登録商標)T細胞エピトープ発見システムまたはNetMHCツールなどのT細胞エピトープ発見システム/ツールを使用して決定され得る(例えば、Desai and Kulkarni-Kale,Methods Mol Biol.2014;1184:333-64を参照する)。
【0050】
一実施形態では、本方法は、対象からの細胞集団、例えば、細胞試料(例えば、PBMC)における腫瘍抗原候補を認識するT細胞の数または頻度を評価することをさらに含む。所与の抗原を認識するT細胞の数または頻度は、当該技術分野で既知の様々な方法を使用して、例えば、細胞集団を、そのペプチド結合溝に当該腫瘍抗原候補を含む多量体MHCクラスI分子(例えば、MHC四量体)と接触させ、多量体MHCクラスI分子で標識される細胞の数を決定することによって評価され得る。多量体MHCクラスI分子は、フルオロフォアで検出可能に標識され得るか(直接標識)、または標識されたリガンド(間接的または二次標識)によって認識される部分でタグ化され得る。あるいは、TSA候補を認識するT細胞の数または頻度は、T細胞活性化に好適な条件下でTSA候補の存在において活性化されるT細胞の数/頻度を決定することによって評価され得る。活性化T細胞の数/頻度は、T細胞活性化によって誘導されるサイトカイン、例えば、IFN-γまたはIL-2を分泌する細胞を検出することによって評価され得る(例えば、ELISpotまたはフローサイトメトリーによる)。
【0051】
一実施形態では、本方法は、T細胞活性化を誘導する腫瘍抗原候補の能力を、例えば、T細胞集団を、MHCクラスI分子に結合する腫瘍抗原候補を有する細胞(例えば、樹状細胞などのAPC)とそれらの細胞表面で接触させ、増殖、サイトカイン/ケモカイン産生(例えば、IFN-γまたはIL-2産生)、細胞傷害性死滅などのT細胞活性化の少なくとも1つのパラメータを測定することによって、評価することをさらに含む。
【0052】
一実施形態では、本方法は、腫瘍抗原候補のT細胞媒介性腫瘍細胞死滅に対する能力および/または腫瘍増殖を阻害する能力を評価することをさらに含む。これは、腫瘍細胞を使用してインビトロで、または好適な動物モデルを使用してインビボで達成され得る。
【0053】
一実施形態では、腫瘍抗原候補は、約7~20個のアミノ酸、より具体的には約8~18個のアミノ酸の長さ、好ましくは8~11個のアミノ酸(MHCクラスI腫瘍抗原について)または13~18個のアミノ酸(MHCクラスII腫瘍抗原について)の長さを有する。
【0054】
本明細書に記載の方法は、目的の腫瘍/癌細胞試料について全トランスクリプトーム配列決定を実施することによって、任意のタイプの癌の腫瘍抗原候補を特定するために有用であり得る。そのような癌の例には、限定されないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病、より具体的には、骨癌、血液/リンパ系癌、例えば、白血病(AML、CML、ALL)、骨髄腫、リンパ腫、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域癌、胃癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、性器および生殖器癌、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、膀胱癌、腎臓癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)癌、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、および下垂体腺腫が含まれる。したがって、実施形態では、本明細書に記載される方法のステップ(a)で使用される腫瘍細胞試料は、上記の癌のいずれかの細胞を含む試料である。
【0055】
別の態様では、本開示は、本明細書で特定される腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)に関するものであり、すなわち、表1a、1b、2a~2d、もしくは3a~3c(配列番号1~39)、好ましくは表2a~2d、もしくは3a~3c(配列番号17~39)に開示されるアミノ酸配列のうちの1つ、または配列番号1~39の配列に対して1つ以上の変異を有するそのバリアントを含む。
【0056】
一般に、HLAクラスIの関連で提示される腫瘍抗原ペプチドなどのペプチドは、約7または8~約15、または好ましくは8~14個のアミノ酸残基の長さで変化する。本開示の方法のいくつかの実施形態では、本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチド配列を含む、より長いペプチドは抗原提示細胞(APC)などの細胞に人工的に加えられ、細胞によって処理されて、腫瘍抗原ペプチドがAPCの表面でMHCクラスI分子によって提示される。この方法では、15個のアミノ酸残基より長いペプチド/ポリペプチド(すなわち、腫瘍抗原前駆体ペプチド)をAPCに加えることができ、APCサイトゾル中のプロテアーゼによって処理されて、提示のために本明細書に定義される対応する腫瘍抗原ペプチドをもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチドを生成するために使用される前駆体ペプチド/ポリペプチドは、例えば、1000、500、400、300、200、150、100、75、50、45、40、35、30、25、20、もしくは15個、またはそれ以下のアミノ酸である。したがって、本明細書に記載される腫瘍抗原ペプチドを使用する全ての方法およびプロセスは、細胞(APC)による処理後の「最終的な」8~14腫瘍抗原ペプチドの提示を誘導するために、より長いペプチドまたはポリペプチド(ネイティブタンパク質を含む)、すなわち、腫瘍抗原前駆体ペプチド/ポリペプチドの使用を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で言及される腫瘍抗原ペプチドは、約8~14、8~13、または8~12個のアミノ酸長(例えば、8、9、10、11、12、または13個のアミノ酸長)であり、HLAクラスI分子における直接的なフィッティングには十分に小さい。一実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、20個以下のアミノ酸、好ましくは15個以下のアミノ酸、より好ましくは14個以下のアミノ酸を含む。一実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、少なくとも7個のアミノ酸、好ましくは少なくとも8アミノ酸、より好ましくは少なくとも9個のアミノ酸を含む。
【0057】
本明細書で使用される「アミノ酸」という用語は、天然起源のアミノ酸のL-異性体およびD-異性体の両方、ならびに腫瘍抗原ペプチドの合成類似体を調製するペプチド化学で使用される他のアミノ酸(例えば、天然起源アミノ酸、非天然起源アミノ酸、核酸配列によってコードされないアミノ酸など)が含まれる。天然起源のアミノ酸の例は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニンなどである。他のアミノ酸には、例えば、アミノ酸の非遺伝子コード形態、ならびにL-アミノ酸の保存的置換が含まれる。天然起源の非遺伝子コード化アミノ酸には、例えば、ベータ-アラニン、3-アミノ-プロピオン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、アルファ-アミノイソブチル酸(Aib)、4-アミノ-ブチル酸、N-メチルグリシン(サルコシン)、ヒドロキシプロリン、オルニチン(例えば、L-オルニチン)、シトルリン、t-ブチルアラニン、t-ブチルグリシン、N-メチルイソロイシン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、ノルロイシン(Nle)、ノルバリン、2-ナフチルアラニン(2-napthylalanine)、ピリジルアラニン、3-ベンゾチエニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、2-フルオロフェニルアラニン、3-フルオロフェニルアラニン、4-フルオロフェニルアラニン、ペニシラミン、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、β-2-チエニルアラニン、メチオニンスルホキシド、L-ホモギニン(Hoarg)、N-アセチルリジン、2-アミノ酪酸、2,4,-ジアミノ酪酸(D-またはL-)、p-アミノフェニルアラニン、N-メチルバリン、ホモシステイン、ホモセリン(HoSer)、システイン酸、イプシロン-アミノヘキサン酸、デルタ-アミノ吉草酸、または2,3-ジアミノ酪酸(D-またはL-)などが含まれる。これらのアミノ酸は、生化学/ペプチド化学の分野で周知である。実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、天然起源のアミノ酸のみを含む。
【0058】
実施形態では、本明細書に記載の腫瘍抗原ペプチドは、本明細書で言及される配列と比較して、機能的に同等なアミノ酸残基の置換を含有する変化した配列を有するバリアントペプチドを含む。例えば、配列内の1つ以上のアミノ酸残基は、機能的等価物として作用する、同様な極性(同様な物理化学特性を有する)の別のアミノ酸によって置き換えられ得、サイレント変化をもたらす。配列内のアミノ酸の置換は、アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択され得る。例えば、正荷電(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン、およびヒスチジン(ならびにホモアルギニンおよびオルニチン)が含まれる。非極性(疎水性)アミノ酸には、ロイシン、イソロイシン、アラニン、フェニルアラニン、バリン、プロリン、トリプトファン、メチオニンが含まれる。非荷電極性アミノ酸には、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれる。負荷電(酸性)アミノ酸には、グルタミン酸およびアスパラギン酸が含まれる。アミノ酸グリシンは、非極性アミノ酸ファミリーまたは非荷電(中性)極性アミノ酸ファミリーのいずれかに含まれ得る。アミノ酸のファミリー内で行われる置換は、一般に、保存的置換であると理解される。本明細書で言及される腫瘍抗原ペプチドは、全てのL-アミノ酸、全てのD-アミノ酸、またはL-アミノ酸およびD-アミノ酸の混合物を含み得る。実施形態では、本明細書で言及される腫瘍抗原ペプチドは、全てのL-アミノ酸を含む。
【0059】
一実施形態では、配列番号1~39に示される配列のうちの1つを含む腫瘍抗原ペプチドの配列において、T細胞受容体との相互作用に実質的に寄与しないアミノ酸残基は、組み込みがT細胞反応性に実質的に影響を与えず、関連するMHC分子への結合を排除しない他のアミノ酸と置換することによって改変され得る。一実施形態では、腫瘍抗原ペプチドバリアントは、MHC結合を改善するように配列最適化され、すなわち、MHC分子との結合を増強する1つ以上の変異(例えば、1、2、または3個の変異)、例えば、アミノ酸の置換を含む。腫瘍抗原ペプチドバリアントの結合親和性は、例えば、NetMHC4.0、NetMHCpan4.0、およびMHCflurry1.2.0などのMHC結合予測ツールを使用して評価され得る。配列最適化された腫瘍抗原ペプチドバリアントは、例えば、特定のHLAに対する予測結合親和性が、ネイティブ腫瘍抗原ペプチドと同等であるか、または好ましくは強い場合に考慮され得る。次いで、選択された配列最適化標的ペプチドは、当該技術分野で既知である方法を使用して、例えば、ProlmmuneのREVEALアッセイを使用して、特定のHLAへのインビトロでの結合についてスクリーニングすることができる。
【0060】
腫瘍抗原ペプチドはまた、N末端および/またはC末端をキャップ化もしくは修飾して、分解を防止し、安定性、親和性、および/もしくは取り込みを増加させ得、したがって、本開示は、式Z1-X-Z2を有する腫瘍抗原ペプチドのバリアントを提供し、式中、Xは、配列番号1~39、好ましくは17~39に示される腫瘍抗原ペプチドの配列である。一実施形態では、腫瘍抗原ペプチドのアミノ末端残基(すなわち、N末端の遊離アミノ基)は、例えば部分/化学基(Z1)の共有結合によって修飾される(例えば、分解に対する保護のため)。Z1は、1~8個の炭素の直鎖もしくは分岐アルキル基、またはアシル基(R-CO-)であり得、式中、Rは疎水性部分(例えば、アセチル、プロピオニル、ブタニル、イソプロピオニル、もしくはイソ-ブタニル)、またはアロイル基(Ar-CO-)であり得、式中、Arはアリール基である。一実施形態では、アシル基は、C1-C16またはC3-C16アシル基(直鎖または分枝、飽和または不飽和)であり、さらなる実施形態では、飽和C1-C6アシル基(直鎖または分枝)または不飽和C3-C6アシル基(直鎖または分枝)、例えば、アセチル基(CH3-CO-、Ac)である。一実施形態では、Z1は存在しない。腫瘍抗原ペプチドのカルボキシ末端残基(すなわち、腫瘍抗原ペプチドのC末端にある遊離カルボキシ基)は、例えば、部分/化学基(Z2)の共有結合によって、例えば、アミド化(NH2基によるOH基の置換)によって修飾され得、そのような例では、Z2はNH2基である。一実施形態では、Z2は、ヒドロキサメート基、ニトリル基、アミド(一級、二級、または三級)基、メチルアミン、イソ-ブチルアミン、イソ-バレリルアミン、またはシクロヘキシルアミンなどの1~10個の炭素の脂肪族アミン、アニリン、ナフチルアミン、ベンジルアミン、シナミルアミン、またはフェニルエチルアミンなどの芳香族もしくはアリールアルキルアミン、アルコール、あるいはCH2OHであり得る。一実施形態では、Z2は存在しない。一実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、配列番号1~39、好ましくは17~39に開示の配列のうちの1つを含む。一実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、配列番号1~39、好ましくは17~39に開示される配列のうちの1つからなり、すなわち、Z1およびZ2は存在しない。
【0061】
一実施形態では、本開示は、HLA-A2対立遺伝子、好ましくはHLA-A*02:01対立遺伝子のHLA分子に結合する腫瘍抗原ペプチドを提供し、配列番号17~19、27、および28のいずれか1つに示されるアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる。
【0062】
一実施形態では、本開示は、HLA-B40対立遺伝子、好ましくはHLA-B*40:01対立遺伝子のHLA分子に結合する腫瘍抗原ペプチドを提供し、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0063】
一実施形態では、本開示は、HLA-A11対立遺伝子好ましくはHLA-A*11:01対立遺伝子のHLA分子に結合する腫瘍抗原ペプチドを提供し、配列番号21~23および29~35のいずれか1つに記載のアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる。
【0064】
一実施形態では、本開示は、HLA-B08対立遺伝子、好ましくはHLA-B*08:01対立遺伝子のHLA分子に結合する腫瘍抗原ペプチドを提供し、配列番号24または25に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0065】
一実施形態では、本開示は、HLA-B07対立遺伝子、好ましくはHLA-B*07:02対立遺伝子のHLA分子に結合する腫瘍抗原ペプチドを提供し、配列番号26または36に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0066】
一実施形態では、本開示は、HLA-A24対立遺伝子、好ましくはHLA-A*24:02対立遺伝子のHLA分子に結合する腫瘍抗原ペプチドを提供し、配列番号38または39に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0067】
一実施形態では、本開示は、HLA-C07対立遺伝子、好ましくはHLA-C*07:01対立遺伝子のHLA分子に結合する腫瘍抗原ペプチドを提供し、配列番号37に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0068】
一実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、白血病腫瘍抗原ペプチドであり、配列番号17~28のいずれか1つに示されるアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる。
【0069】
一実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、肺腫瘍抗原ペプチドであり、配列番号29~39のいずれか1つに示されるアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる。
【0070】
一実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、ゲノムの非コード領域に位置する配列によってコードされる。一実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、非翻訳転写領域(UTR)、すなわち3’-UTRまたは5’-UTR領域に位置する配列によってコードされる。別の実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、イントロンに位置する配列によってコードされる。別の実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、遺伝子間領域に位置する配列によってコードされる。一実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、内在性レトロエレメント(ERE)に位置する配列によってコードされる。別の実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、エキソンに位置する配列によってコードされ、フレームシフトから生じる。
【0071】
本開示の腫瘍抗原ペプチドは、腫瘍抗原ペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞における発現(組換え発現)によって、または化学合成(例えば、固相ペプチド合成)によって産生され得る。ペプチドは、当該技術分野で周知であるマニュアルおよび/または自動化固相手順によって容易に合成することができる。好適な合成は、例えば、「T-boc」または「Fmoc」手順を利用することによって実施され得る。固相合成のための技法および手順は、例えば、IRL,Oxford University Press,1989によって発行されたSolid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach,by E.Atherton and R.C.Sheppardに記載されている。あるいは、腫瘍抗原ペプチドはセグメント縮合の方法によって調製され得、例えば、Liu et al.,Tetrahedron Lett.37:933-936,1996、Baca et al.J.Am.Chem.Soc.117:1881-1887,1995、Tam et al.,Int.J.Peptide Protein Res.45:209-216,1995、Schnolzer and Kent,Science 256:221-225,1992、Liu and Tam,J.Am.Chem.Soc.116:4149-4153,1994、Liu and Tam,Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:6584-6588,1994、およびYamashiro and Li,Int.J.Peptide Protein Res.31322-334,1988に記載されている。腫瘍抗原ペプチドを合成するのに有用である他の方法は、Nakagawa et al.J.Am.Chem.Soc.107:7087-7092,1985に記載されている。一実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、化学的に合成される(合成ペプチド)。本開示の別の実施形態は、非天然起源ペプチドに関するものであり、当該ペプチドは、本明細書に定義されるアミノ酸配列からなるか、または本質的になり、薬学的に許容される塩として合成的に産生されている(例えば、合成されている)。本開示による腫瘍抗原ペプチドの塩は、インビボで生成されるペプチドは塩ではないため、インビボでのそれらの状態(複数可)のペプチドとは実質的に異なる。ペプチドの非天然塩形態は、特に、ペプチドを含む医薬組成物、例えば、本明細書に開示されるペプチドワクチンの関連において、ペプチドの溶解性を調節し得る。好ましくは、塩は、ペプチドの薬学的に許容される塩である。
【0072】
一実施形態では、本明細書で言及される腫瘍抗原ペプチドは、実質的に純粋である。化合物は、それが自然に付随する成分から分離されるとき、「実質的に純粋」である。典型的には、化合物は、それが試料中の全物質の、重量で、少なくとも60%、より一般的には75%、80%、または85%、好ましくは90%超、より好ましくは95%超である場合、実質的に純粋である。したがって、例えば、化学的に合成または組換え技術によって産生されるポリペプチドは、一般に、その天然に関連する成分、例えば、その供給源巨大分子の成分を実質的に含まないであろう。核酸分子は、核酸が由来する生物の天然起源のゲノムにおいて通常連続しているコード配列と、直接連続(すなわち、共有結合)していない場合、実質的に純粋である。実質的に純粋な化合物は、例えば、天然源から抽出によって、ペプチド化合物をコードする組換え核酸分子の発現によって、または化学合成によって、得ることができる。純度は、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、HPLCなどの任意の適切な方法を使用して測定することができる。一実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、溶液中にある。別の実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは固体形態にあり、例えば、凍結乾燥されている。
【0073】
別の態様では、本開示は、本明細書で言及される腫瘍抗原ペプチドまたは腫瘍抗原前駆体-ペプチドをコードする、核酸(単離された)をさらに提供する。一実施形態では、核酸は、約21個~約45個のヌクレオチド、約24~約45個のヌクレオチド、例えば、24、27、30、33、36、39、42、または45個のヌクレオチドを含む。本明細書で使用されるとき、「単離された」とは、分子の天然環境中に存在する他の成分または天然起源の巨大分子(例えば、他の核酸、タンパク質、脂質、糖などを含む)から分離されたペプチドまたは核酸分子を指す。本明細書で使用されるとき、「合成の」とは、その天然源から単離されない、例えば、組換え技術を通してまたは化学合成を使用して産生されるペプチドまたは核酸分子を指す。本開示の核酸は、本開示の腫瘍抗原ペプチドの組換え発現のために使用され得、宿主細胞にトランスフェクトされ得る、クローニングベクターまたは発現ベクターなどのベクターまたはプラスミドに含まれ得る。一実施形態では、本開示は、本開示の腫瘍抗原ペプチドをコードする核酸配列を含むクローニングもしくは発現ベクターまたはプラスミドを提供する。あるいは、本開示の腫瘍抗原ペプチドをコードする核酸は、宿主細胞のゲノムに組み込まれ得る。いずれの場合でも、宿主細胞は、核酸によってコードされる腫瘍抗原ペプチドまたはタンパク質を発現する。本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫または潜在的な子孫を指す。宿主細胞は、本明細書に記載の腫瘍抗原ペプチドを発現することができる任意の原核生物細胞(例えば、大腸菌)または真核生物細胞(例えば、昆虫細胞、酵母、または哺乳動物細胞)であることができる。ベクターまたはプラスミドは、挿入されたコード配列の転写および翻訳に必要な要素を含有し、抵抗遺伝子、クローニング部位などの他の成分を含有し得る。当業者に周知の方法を使用して、ペプチドまたはポリペプチドをコードする配列、ならびにそれに操作可能に連結された適切な転写および翻訳の制御/調節要素を含有する発現ベクターを構築し得る。これらの方法には、インビトロ組換えDNA技法、合成技法、およびインビボ遺伝子組換えが含まれる。そのような技法は、Sambrook.et al.(1989)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Plainview,N.Y.およびAusubel,F.M.et al.(1989)Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,N.Y.に記載されている。「操作可能に連結された」とは、成分、特にヌクレオチド配列が近接配置されており、それによって成分の正常な機能を実施することができることを指す。したがって、調節配列に操作可能に連結されるコード配列は、コード配列が調節配列の調節制御、すなわち、転写および/または翻訳の制御下で発現することができるヌクレオチド配列の構成を指す。本明細書で使用されるとき、「調節/制御領域」または「調節/制御配列」は、コード核酸の発現の調節に含まれる非コード化ヌクレオチド配列を指す。したがって、調節領域という用語は、プロモーター配列、調節タンパク質結合部位、上流活性化因子配列などを含む。実施形態では、本開示の腫瘍抗原ペプチドをコードする核酸(DNA、RNA)は、リポソームなどの小胞内に含まれるか、またはカプセル化される。
【0074】
別の態様では、本開示は、腫瘍抗原ペプチドを含む(すなわち、提示するか、または結合する)MHCクラスI分子を提供する。一実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A2分子であり、さらなる実施形態では、HLA-A*02:01分子である。一実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A11分子であり、さらなる実施形態では、HLA-A*11:01分子である。一実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A24分子であり、さらなる実施形態では、HLA-A*24:02分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-B07分子であり、さらなる実施形態では、HLA-B*07:02分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-B08分子であり、さらなる実施形態では、HLA-B*08:01分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-B40分子であり、さらなる実施形態ではは、HLA-B*40:01である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-C07分子であり、さらなる実施形態では、HLA-C*07:01分子である。一実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、MHCクラスI分子に非共有結合される(すなわち、腫瘍抗原ペプチドは、MHCクラスI分子のペプチド結合溝/ポケットに負荷されるか、または非共有結合される)。別の実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、MHCクラスI分子(アルファ鎖)に共有結合によって付着/結合される。そのような構築物において、腫瘍抗原ペプチドおよびMHCクラスI分子(アルファ鎖)は、典型的には、短い(例えば、5~20個の残基、好ましくは、約8~12個、例えば、10個)フレキシブルリンカーまたはスペーサー(例えば、ポリグリシンリンカー)を有する合成融合タンパク質として産生される。別の態様では、本開示は、MHCクラスI分子(アルファ鎖)に融合された本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチドを含む融合タンパク質をコードする核酸を提供する。一実施形態では、MHCクラスI分子(アルファ鎖)-ペプチド複合体は、多量体化される。したがって、別の態様では、本開示は、本明細書で言及される腫瘍抗原ペプチドが負荷された(共有結合的にまたは非共有的に)MHCクラスI分子の多量体を提供する。そのような多量体は、多量体の検出を可能にするタグ、例えば、蛍光タグに付着され得る。多くの戦略がMHC二量体、四量体、五量体、八量体などを含むMHC多量体の産生のために開発されている(Bakker and Schumacher,Current Opinion in Immunology 2005,17:428-433でレビューされている)。MHC多量体は、例えば、抗原特異的T細胞の検出および精製のために有用である。したがって、別の態様では、本開示は、本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチドに特異的であるCD8+Tリンパ球を検出または精製する(単離、豊富化する)ための方法を提供し、本方法は、細胞集団を腫瘍抗原ペプチドが負荷されたMHCクラスI分子の多量体と接触させることと、MHCクラスI多量体によって結合されたCD8+Tリンパ球を検出または単離することと、を含む。MHCクラスI多量体によって結合されるCD8+Tリンパ球は、既知の方法、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)または磁気活性化細胞選別(MACS)を使用して単離され得る。
【0075】
さらに別の態様では、本開示は、本明細書で言及される本開示の腫瘍抗原ペプチド、核酸、ベクター、またはプラスミド、すなわち、1つ以上の腫瘍抗原ペプチドをコードする核酸またはベクターを含む、細胞(例えば、宿主細胞)、一実施形態では、単離された細胞を提供する。別の態様では、本開示は、本開示による腫瘍抗原ペプチドと結合されるか、またはそれを提示する、MHCクラスI分子(例えば、上記で開示される対立遺伝子の1つのMHCクラスI分子)を表面で発現する細胞を提供する。一実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞、細胞株、または不死化細胞などの真核生物細胞である。別の実施形態では、細胞は、樹状細胞(DC)または単球/マクロファージなどの抗原提示細胞(APC)である。一実施形態では、宿主細胞は、一次細胞、細胞株、または不死化細胞である。核酸およびベクターは、従来の形質転換またはトランスフェクション技法を介して細胞に導入することができる。「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、外来核酸を宿主細胞に導入するための技法を指し、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、およびウイルス媒介トランスフェクションを含む。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクションするための好適な方法は、例えば、Sambrookら(上記)、および他の実験室マニュアルに認めることができる。核酸をインビボで哺乳動物細胞に導入するための方法も既知であり、遺伝子治療のために本開示のベクターまたはプラスミドを対象に送達するために使用され得る。
【0076】
APCなどの細胞は、当該技術分野で既知である様々な方法を使用して、1つ以上の腫瘍抗原ペプチドで負荷することができる。本明細書で使用される場合、腫瘍抗原ペプチドで「細胞を負荷する」とは、腫瘍抗原ペプチドをコードするRNA(mRNA)もしくはDNA、または腫瘍抗原ペプチドが細胞にトランスフェクトされること、または代替的に、APCが腫瘍抗原ペプチドをコードする核酸で形質転換されることを意味する。細胞はまた、細胞表面(例えば、ペプチドパルス化細胞)に存在するMHCクラスI分子に直接結合することができる外因性腫瘍抗原ペプチドと細胞を接触させることによって負荷することができる。腫瘍抗原ペプチドはまた、MHCクラスI分子によるその提示を容易にするドメインまたはモチーフ、例えば、小胞体(ER)回収シグナル、C末端Lys-Asp-Glu-Leu配列、に融合され得る(Wang et al.,Eur J Immunol.2004 Dec;34(12):3582-94を参照する)。
【0077】
別の態様では、本開示は、本明細書で定義される腫瘍抗原ペプチド(または、当該ペプチド(複数可)をコードする核酸)のうちのいずれか1つ、もしくは任意の組み合わせを含む、組成物またはペプチドの組み合わせ/プールを提供する。一実施形態では、組成物は、本明細書で定義される腫瘍抗原ペプチドの任意の組み合わせ(2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上の腫瘍抗原ペプチドの任意の組み合わせ)、または当該腫瘍抗原ペプチドをコードする核酸の任意の組み合わせを含む。本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチドの任意の組み合わせ/サブ組み合わせを含む組成物は、本開示によって包含される。一実施形態では、組成物またはペプチドの組み合わせ/プールは、配列番号17~28に示される配列を含むか、またはそれらからなる腫瘍抗原ペプチドの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10個を含む。一実施形態では、組成物またはペプチドの組み合わせ/プールは、配列番号29~39に示される配列を含むか、またはそれらからなる腫瘍抗原ペプチドの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10個を含む。別の実施形態では、組み合わせまたはプールは、1つ以上の既知の腫瘍抗原を含み得る。
【0078】
したがって、別の態様では、本開示は、本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチドのうちのいずれか1つ、またはそれらの任意の組み合わせと、MHCクラスI分子(例えば、上記に開示される対立遺伝子のうちの1つのMHCクラスI分子)を発現する細胞と、を含む組成物を提供する。本開示で使用するためのAPCは、特定のタイプの細胞に限定されず、樹状細胞(DC)、ランゲルハンス細胞、マクロファージ/単球、およびB細胞などのプロフェッショナルAPCを含み、これらは、CD8+Tリンパ球によって認識されるように、それらの細胞表面上にタンパク質性抗原を提示することが知られている。例えば、APCは、インビトロ、エクスビボ、またはインビボのいずれかで、末梢血単球からDCを誘導し、次いで腫瘍抗原ペプチドと接触させる(刺激する)ことによって得ることができる。APCはまた、腫瘍抗原ペプチドをインビボで提示するように活性化され得、本開示の腫瘍抗原ペプチドのうちの1つ以上が対象に投与され、腫瘍抗原ペプチドを提示するAPCが対象の体内で誘導される。「APCを誘導する」または「APCを刺激する」という語句は、細胞を1つ以上の腫瘍抗原ペプチド、または腫瘍抗原ペプチドをコードする核酸と接触させるか、またはそれらを負荷することを含み、それによって腫瘍抗原ペプチドはMHCクラスI分子によってその表面に提示される。本明細書に記載されるように、本開示に従い、腫瘍抗原ペプチドは、間接的に、例えば、腫瘍抗原ペプチド(ネイティブタンパク質を含む)の配列を含む、より長いペプチド/ポリペプチドを使用して負荷され得、次いで、APC内で処理され(例えば、プロテアーゼによって)、腫瘍抗原ペプチド/MHCクラスI複合体を細胞の表面で生成する。APCに腫瘍抗原ペプチドを負荷して、APCが腫瘍抗原ペプチドを提示することを可能にした後、APCをワクチンとして対象に投与することができる。例えば、エクスビボ投与は、(a)APCを第1の対象から収集するステップと、(b)ステップ(a)のAPCを腫瘍抗原ペプチドと接触/負荷してMHCクラスI/腫瘍抗原ペプチド複合体をAPCの表面に形成するステップと、(c)ペプチド負荷したAPCを、治療を必要とする第2の対象に投与するステップと、を含むことができる。
【0079】
第1の対象および第2の対象は、同じ対象(例えば、自己ワクチン)であり得、または異なる対象(例えば、同種ワクチン)であり得る。あるいは、本開示に従い、抗原提示細胞を誘導するための組成物(例えば、医薬組成物)を製造するための本明細書に記載の腫瘍抗原ペプチド(またはそれらの組み合わせ)の使用が提供される。加えて、本開示は、抗原提示細胞を誘導するための医薬組成物を製造するための方法またはプロセスを提供し、本方法またはプロセスは、腫瘍抗原ペプチド、またはそれらの組み合わせを薬学的に許容される担体と混合または製剤化するステップを含む。本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチドのうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせで負荷されたMHCクラスI分子(例えば、HLA-A2、HLA-A11、HLA-A24、HLA-B07、HLA-B08、HLA-B40、またはHLA-C07分子)を発現するAPCなどの細胞は、CD8+Tリンパ球、例えば、自己CD8+Tリンパ球を刺激/増殖するために使用され得る。したがって、別の態様では、本開示は、本明細書で定義される腫瘍抗原ペプチド(またはそれをコードする核酸もしくはベクター)、MHCクラスI分子を発現する細胞、およびTリンパ球、より具体的にはCD8+Tリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球を含む細胞集団)、のうちのいずれか1つ、またはそれらの任意の組み合わせを含む組成物を提供する。
【0080】
一実施形態では、本組成物は、緩衝液、賦形剤、担体、希釈剤、および/または培地(例えば、培養培地)をさらに含む。さらなる実施形態では、緩衝液、賦形剤、担体、希釈剤、および/または培地は、薬学的に許容される緩衝液(複数可)、賦形剤(複数可)、担体(複数可)、希釈剤(複数可)および/または培地(複数可)である。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される緩衝液、賦形剤、担体、希釈剤、および/または培地」は、生理学的に適合性であり、有効成分(複数可)の生物活性の有効性を妨げず、かつ対象に毒性でない、任意および全ての溶媒、緩衝液、結合剤、潤滑剤、充填剤、増粘剤、崩壊剤、可塑剤、コーティング、バリア層製剤、潤滑剤、安定化剤、放出遅延剤、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤などが含まれる。薬学的に活性な物質のためのそのような培地および薬剤の使用は、当該技術分野で周知である(Rowe et al.Handbook of pharmaceutical excipients,2003,4thedition,Pharmaceutical Press,London UK)。任意の従来の培地または薬剤が活性化合物(ペプチド、細胞)と不適合でない限り、本開示の組成物におけるそれらの使用が企図される。一実施形態では、緩衝液、賦形剤、担体、および/または培地は、非天然起源の緩衝液、賦形剤、担体、および/または培地である。一実施形態では、本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチドのうちの1つ以上、または当該1つ以上の腫瘍抗原ペプチドをコードする核酸(例えば、mRNA)は、リポソーム、例えば、カチオン性リポソーム内に含まれるか、またはリポソームと複合体化される(例えば、Vitor MT et al.Recent Pat Drug Deliv Formul.2013 Aug;7(2):99-110を参照する)。
【0081】
別の態様では、本開示は、本明細書で定義される腫瘍抗原ペプチド(または当該ペプチド(複数可)をコードする核酸)のいずれか1つ、またはいずれかの組み合わせのうちの1つ以上と、緩衝液、賦形剤、担体、希釈剤、および/または培地と、を含む組成物を提供する。細胞(例えば、APC、Tリンパ球)を含む組成物について、組成物は、生細胞の維持を可能にする好適な培地を含む。そのような培地の代表的な例には、生理食塩水、Earl’s Balanced Salt Solution(Life Technologies(登録商標))またはPlasmaLyte(登録商標)(Baxter International(登録商標))が含まれる。一実施形態では、組成物(例えば、医薬組成物)は、「免疫原性組成物」、「ワクチン組成物」、または「ワクチン」である。本明細書で使用される「免疫原性組成物」、「ワクチン組成物」、または「ワクチン」という用語は、1つ以上の腫瘍抗原ペプチドまたはワクチンベクターを含む組成物または製剤を指し、対象に投与されるときに、そこに存在する1つ以上の腫瘍抗原ペプチドに対する免疫応答を誘導することができる。哺乳動物における免疫応答を誘導するためのワクチン接種方法は、ワクチン分野で既知の任意の従来の経路によって、例えば、粘膜(例えば、眼、鼻腔内、肺、経口、胃、腸、直腸、膣、または尿路)表面を介して、非経口(例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、または腹腔内)経路を介して、または局所投与(例えば、パッチなどの経皮送達系を介して)によって投与されるワクチンまたはワクチンベクターの使用を含む。一実施形態では、腫瘍抗原ペプチド(またはその組み合わせ)を担体タンパク質にコンジュゲートして(コンジュゲートワクチン)、腫瘍抗原ペプチド(複数可)の免疫原性を増加させる。したがって、本開示は、腫瘍抗原ペプチド(またはその組み合わせ)と、担体タンパク質と、を含む組成物(コンジュゲート)を提供する。例えば、腫瘍抗原ペプチド(複数可)は、Toll様受容体(TLR)リガンド(例えば、Zom et al.Adv,Immunol.2012,114:177-201を参照する)、またはポリマー/デンドリマー(例えば、Liu et al.,Biomacromolecules.2013 Aug 12;14(8):2798-806を参照する)にコンジュゲートされ得る。一実施形態では、免疫原性組成物またはワクチンは、アジュバントをさらに含む。「アジュバント」とは、抗原(本開示による腫瘍抗原ペプチドおよび/または細胞)などの免疫原性薬剤に添加されるとき、混合物への曝露で宿主における薬剤に対する免疫応答を非特異的に高めるかまたは増強する物質を指す。ワクチンの分野において現在使用されているアジュバントの例には、(1)ミネラル塩(リン酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩、リン酸カルシウムゲル)、スクアレン、(2)油性エマルションおよび界面活性剤系製剤などの油系アジュバント、例えば、MF59(マイクロ流動性界面活性剤安定化水中油エマルション)、QS21(精製サポニン)、AS02[SBAS2](水中油エマルション+MPL+QS-21)、(3)微粒子アジュバント、例えば、ビロソーム(インフルエンザのヘマグルチニンを組み込んだ単層リポソームビヒクル)、AS04([SBAS4]、MPLを有するアルミニウム塩)、ISCOMS(サポニンおよび脂質の構造複合体)、ポリラクチド-コ-グリコリド(PLG)、(4)微生物誘導体(天然および合成)、例えば、モノホスホリル脂質A(MPL)、Detox(MPL+M.Phlei細胞壁骨格)、AGP[RC-529](合成アシル化単糖)、DC_Chol(リポソームに自己組織化することができるリポイド免疫刺激物質)、OM-174(脂質A誘導体)、CpGモチーフ(免疫刺激CpGモチーフを含有する合成オリゴヌクレオチド)、改変LTおよびCT(非毒性アジュバント効果をもたらすように遺伝子改変された細菌毒素)、(5)内因性ヒト免疫調節物質、例えば、hGM-CSFまたはhIL-12(タンパク質またはコードされたプラスミドのいずれかとしてコードされるサイトカイン)、イムダプチン(C3dタンデムアレイ)、および/または(6)不活性ビヒクル、例えば金粒子などが含まれる。
【0082】
一実施形態では、腫瘍抗原ペプチド(複数可)またはそれを含む組成物は、凍結乾燥形態にある。別の実施形態では、腫瘍抗原ペプチド(複数可)またはそれを含む組成物は、液体組成物中にある。さらなる実施形態では、腫瘍抗原ペプチド(複数可)は、組成物中に約0.01μg/mL~約100μg/mLの濃度である。さらなる実施形態では、腫瘍抗原ペプチド(複数可)は、組成物中に、約0.2μg/mL~約50μg/mL、約0.5μg/mL~約10、20、30、40、または50μg/mL、約1μg/mL~約10μg/mL、または約2μg/mLの濃度である。
【0083】
本明細書に記載されるように、本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチドのうちのいずれか1つ、またはそれらの任意の組み合わせで負荷されるかまたはそれらと結合されたMHCクラスI分子を発現するAPCなどの細胞は、インビボまたはエクスビボでCD8+Tリンパ球を刺激/増殖するために使用され得る。したがって、別の態様では、本開示は、本明細書で言及されるMHCクラスI分子/腫瘍抗原ペプチド複合体と相互作用または結合することができるT細胞受容体(TCR)分子、およびそのようなTCR分子をコードする核酸分子、ならびにそのような核酸分子を含むベクターを提供する。本開示によるTCRは、MHCクラスI分子に負荷されるか、またはMHCクラスI分子によって提示される腫瘍抗原ペプチドと、好ましくはインビトロまたはインビボで生細胞の表面において、特異的に相互作用または結合することができる。本開示のTCR、特にTCRをコードする核酸は、例えば、MHCクラスI/腫瘍抗原ペプチド複合体を特異的に認識する新しいTリンパ球クローンを生成するTリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)または他のタイプのリンパ球を遺伝子的に形質転換/改変するために適用され得る。特定の実施形態では、患者から得られるTリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)を形質転換して、腫瘍抗原ペプチドを認識する1つ以上のTCRを発現させ、形質転換細胞を患者に投与する(自己細胞注入)。特定の実施形態では、ドナーから得られるTリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)を形質転換して、腫瘍抗原ペプチドを認識する1つ以上のTCRを発現させ、形質転換細胞をレシピエントに投与する(同種細胞注入)。別の実施形態では、本開示は、Tリンパ球、例えば、腫瘍抗原ペプチド特異的TCRをコードするベクターまたはプラスミドによって形質転換/トランスフェクトされたCD8+Tリンパ球を提供する。さらなる実施形態では、本開示は、腫瘍抗原ペプチド特異的TCRで形質転換された自己または同種細胞によって患者を治療する方法を提供する。なおさらなる実施形態では、癌の治療のための自己細胞または同種細胞の製造における腫瘍抗原特異的TCRの使用が提供される。
【0084】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物(例えば、医薬組成物)で治療される患者は、同種幹細胞移植(ASCL)、同種リンパ球注入、または自己リンパ球注入による治療の前または後に治療される。本開示の組成物には、腫瘍抗原ペプチドに対してエクスビボで活性化された同種Tリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)、腫瘍抗原ペプチドを負荷された同種または自己APCワクチン、腫瘍抗原ペプチドワクチン、ならびに腫瘍抗原特異的TCRで形質転換された同種もしくは自己Tリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)またはリンパ球が含まれる。本開示による腫瘍抗原ペプチドを認識することができるTリンパ球クローンを提供する方法は、対象(例えば、移植片レシピエント)、例えばASCTおよび/またはドナーリンパ球注入(DLI)レシピエントにおいて、腫瘍抗原ペプチドを発現する腫瘍細胞のために生成され得、特異的に標的化することができる。したがって、本開示は、腫瘍抗原ペプチド/MHCクラスI分子複合体を特異的に認識または結合することができるT細胞受容体をコードおよび発現するCD8+Tリンパ球を提供する。当該Tリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)は、組換え(操作された)または天然で選択されたTリンパ球であり得る。したがって、本明細書は、本開示のCD8+Tリンパ球を産生するための少なくとも2つの方法を提供し、未分化リンパ球を、腫瘍抗原ペプチド/MHCクラスI分子複合体と(典型的には、APCなどの細胞の表面で発現される)、T細胞の活性化および増殖を誘発することに資する条件下で接触させるステップを含み、インビトロまたはインビボ(すなわち、APCが腫瘍抗原ペプチドで負荷されるAPCワクチンが投与される患者において、または腫瘍抗原ペプチドワクチンで治療される患者において)で行われ得る。MHCクラスI分子に結合した腫瘍抗原ペプチドの組み合わせまたはプールを使用して、複数の腫瘍抗原ペプチドを認識することができる集団CD8+Tリンパ球を生成することが可能である。あるいは、腫瘍抗原特異的または標的化Tリンパ球は、MHCクラスI分子/腫瘍抗原ペプチド複合体(すなわち、操作または組換えCD8+Tリンパ球)に特異的に結合するTCR(より具体的には、アルファおよびベータ鎖)をコードする1つ以上の核酸(遺伝子)をクローニングすることによって、インビトロまたはエクスビボで産生/生成され得る。本開示の腫瘍抗原ペプチド特異的TCRをコードする核酸は、当該技術分野で既知の方法を使用して、エクスビボで腫瘍抗原ペプチドに対して活性化されたTリンパ球(例えば、腫瘍抗原ペプチドが負荷されたAPCを有する)から、またはペプチド/MHC分子複合体に対する免疫応答を示す個体から、得られ得る。本開示の腫瘍抗原ペプチド特異的TCRは、移植片レシピエントまたは移植片ドナーから得られる宿主細胞および/または宿主リンパ球において組換えによって発現され得、任意選択的にインビトロで分化されて、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)をもたらし得る。TCRアルファおよびベータ鎖をコードする核酸(複数可)(導入遺伝子(複数可))は、トランスフェクション(例えば、エレクトロポレーション)または形質導入(例えば、ウイルスベクターを使用)などの任意の好適な方法を使用して(例えば、治療される対象または別の個体から)T細胞に導入され得る。腫瘍抗原ペプチドに特異的であるTCRを発現する操作されたCD8+Tリンパ球は、周知の培養方法を使用してインビトロで増殖され得る。
【0085】
本開示は、腫瘍抗原ペプチド(すなわち、細胞表面で発現するMHCクラスI分子に結合した腫瘍抗原ペプチド)、または腫瘍抗原ペプチドの組み合わせによって特異的に誘導、活性化、および/または増幅(増殖)される単離されたCD8+Tリンパ球を提供する。本開示はまた、本開示による腫瘍抗原ペプチド、またはそれらの組み合わせ(すなわち、MHCクラスI分子に結合した1つ以上の腫瘍抗原ペプチド)を認識することができるCD8+Tリンパ球と、当該腫瘍抗原ペプチド(複数可)と、を含む組成物を提供する。別の態様では、本開示は、本明細書に記載の1つ以上のMHCクラスI分子/腫瘍抗原ペプチド複合体(複数可)を特異的に認識する、CD8+Tリンパ球で豊富化された細胞集団または細胞培養物(例えば、CD8+Tリンパ球集団)を提供する。そのような豊富化集団は、本明細書に開示される腫瘍抗原ペプチドのうちの1つ以上が負荷された(例えば、提示する)MHCクラスI分子を発現するAPCなどの細胞を使用して、特定のTリンパ球のエクスビボ増殖を実施することによって得られ得る。本明細書で使用される「豊富化」とは、集団中の腫瘍抗原特異的CD8+Tリンパ球の割合が、細胞のネイティブ集団、すなわち、特定のTリンパ球のエクスビボ増殖のステップに供されていない集団と比較して有意に高いことを意味する。さらなる実施形態では、細胞集団における腫瘍抗原ペプチド特異的CD8+Tリンパ球の割合は、少なくとも約0.5%、例えば、少なくとも約1%、1.5%、2%、または3%である。いくつかの実施形態では、細胞集団における腫瘍抗原ペプチド特異的CD8+Tリンパ球の割合は、約0.5~約10%、約0.5~約8%、約0.5~約5%、約0.5~約4%、約0.5~約3%、約1%~約5%、約1%~約4%、約1%~約3%、約2%~約5%、約2%~約4%、約2%~約3%、約3%~約5%、または約3%~約4%である。目的の1つ以上のMHCクラスI分子/ペプチド(腫瘍抗原ペプチド)複合体(複数可)を特異的に認識するCD8+Tリンパ球で豊富化されそのような細胞集団または培養物(例えば、CD8+Tリンパ球集団)は、以下に詳細に記載されるように、腫瘍抗原に基づく癌免疫療法において使用され得る。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原ペプチド特異的CD8+Tリンパ球の集団はさらに豊富化され、例えば、本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチド(複数可)で負荷された(共有結合的または非共有的に)MHCクラスI分子の多量体などの親和性に基づいた系を使用する。したがって、本開示は、腫瘍抗原ペプチド特異的CD8+Tリンパ球の精製または単離された集団を提供し、例えば、腫瘍抗原ペプチド特異的CD8+Tリンパ球の割合は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。
【0086】
本開示は、医薬品としての、または医薬品の製造における、本開示による任意の腫瘍抗原ペプチド、核酸、発現ベクター、T細胞受容体、細胞(例えば、Tリンパ球、APC)の使用、および/または組成物、あるいはそれらの任意の組み合わせに関する。一実施形態では、医薬品は、癌の治療のためのもの、例えば、癌ワクチンである。本開示は、癌の治療における使用、例えば、癌ワクチン(例えば、治療用癌ワクチン)のための、本開示による任意の腫瘍抗原ペプチド、核酸、発現ベクター、T細胞受容体、細胞(例えば、Tリンパ球、APC)、および/または組成物(例えば、ワクチン組成物)、あるいはそれらの任意の組み合わせに関する。本明細書で特定される腫瘍抗原ペプチド配列は、i)腫瘍患者に注入される腫瘍抗原特異的T細胞のインビトロでのプライミングおよび増殖のために、かつ/またはii)癌患者における抗腫瘍T細胞応答を誘導もしくは増強するワクチンとして、好適である合成ペプチドの産生に使用され得る。
【0087】
別の態様では、本開示は、対象における癌を治療するためのワクチンとしての、本明細書に記載される腫瘍抗原ペプチド、またはそれらの組み合わせ(例えば、ペプチドプール)の使用を提供する。本開示はまた、対象における癌を治療するためのワクチンとしての使用のための、本明細書に記載の腫瘍抗原ペプチド、またはそれらの組み合わせ(例えば、ペプチドプール)を提供する。一実施形態では、対象は、腫瘍抗原ペプチド特異的CD8+Tリンパ球のレシピエントである。したがって、別の態様では、本開示は、癌を治療する方法(例えば、腫瘍細胞の数を減少させる、腫瘍細胞を死滅させる)を提供し、当該方法は、それを必要とする対象に、1つ以上のMHCクラスI分子/腫瘍抗原ペプチド複合体(APCなどの細胞の表面で発現される)を認識する(すなわち、結合するTCRを発現する)有効量のCD8+Tリンパ細胞を投与する(注入する)ことを含む。一実施形態では、本方法は、当該CD8+Tリンパ球の投与/注入後に、腫瘍抗原ペプチド、もしくはそれらの組み合わせ、および/または腫瘍抗原ペプチド(複数可)が負荷されたMHCクラスI分子(複数可)を発現する細胞(例えば、樹状細胞などのAPC)の有効量を、当該対象に投与することをさらに含む。なおさらなる実施形態では、本方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の1つ以上の腫瘍抗原ペプチドが負荷された樹状細胞を投与することを含む。なおさらなる実施形態では、本方法は、それを必要とする患者に、治療有効量の、MHCクラスI分子によって提示される腫瘍抗原ペプチドに結合する組換えTCRを発現する同種または自己細胞を投与することを含む。
【0088】
別の態様では、本開示は、対象における癌を治療する(例えば、腫瘍細胞の数を減少させ、腫瘍細胞を死滅させる)ために、腫瘍抗原ペプチド、またはそれらの組み合わせが負荷された(提示する)1つ以上のMHCクラスI分子を認識するCD8+Tリンパ球の使用を提供する。別の態様では、本開示は、対象における癌を治療するための(例えば、腫瘍細胞の数を減少させ、腫瘍細胞を死滅させるための)医薬品の調製/製造のために、腫瘍抗原ペプチド、またはそれらの組み合わせが負荷された(提示する)1つ以上のMHCクラスI分子を認識するCD8+Tリンパ球の使用を提供する。別の態様では、本開示は、対象における癌の治療における使用のために(例えば、腫瘍細胞の数を減少させ、腫瘍細胞を死滅させるために)、腫瘍抗原ペプチド、またはそれらの組み合わせが負荷された(提示する)1つ以上のMHCクラスI分子を認識するCD8+Tリンパ球(細胞傷害性Tリンパ球)を提供する。さらなる実施形態では、使用は、当該腫瘍抗原ペプチド特異的CD8+Tリンパ球の使用後に、有効量の腫瘍抗原ペプチド(またはそれらの組み合わせ)、および/または腫瘍抗原ペプチドが負荷された(提示する)1つ以上のMHCクラスI分子(複数可)を発現する細胞(例えば、APC)の使用をさらに含む。
【0089】
本開示はまた、対象において、本明細書に開示される腫瘍抗原ペプチドまたはそれらの組み合わせのうちのいずれかが負荷されたヒトクラスIMHC分子を発現する腫瘍細胞に対して免疫応答を生じさせる方法を提供し、本方法は、腫瘍抗原ペプチドまたは腫瘍抗原ペプチドの組み合わせが負荷されたクラスIMHC分子を特異的に認識する細胞傷害性Tリンパ球を投与することを含む。本開示はまた、本明細書に開示される腫瘍抗原ペプチドまたは腫瘍抗原ペプチドの組み合わせのいずれかが負荷されたクラスIMHC分子を特異的に認識する細胞傷害性Tリンパ球の使用を提供し、腫瘍抗原ペプチドまたはそれらの組み合わせが負荷されたヒトクラスIMHC分子を発現する腫瘍細胞に対して免疫応答を生じる。
【0090】
一実施形態では、本明細書に記載の方法または使用は、治療/使用の前に患者によって発現されるHLAクラスI対立遺伝子を決定することと、患者によって発現されるHLAクラスI対立遺伝子のうちの1つ以上に結合する腫瘍抗原ペプチドを投与または使用することと、をさらに含む。例えば、B-ALLに罹患している患者がHLA-A2*01およびHLA-B*08:01を発現することが決定される場合、(i)配列番号17~19、27および/または28(HLA-A2*01に結合する)、ならびに(ii)配列番号24または25(HLA-B08*01に結合する)の腫瘍抗原ペプチドの任意の組み合わせが患者において投与または使用され得る。
【0091】
一実施形態では、治療される癌、例えば、白血病または肺癌の腫瘍細胞は、本明細書に開示される腫瘍抗原ペプチド(配列番号17~39)のうちの1つ以上を発現する。別の実施形態では、本明細書に記載の方法または使用は、患者からの腫瘍細胞が本明細書に開示される腫瘍抗原ペプチド(配列番号17~39)のうちの1つ以上を発現するか決定することと、癌を治療するために患者からの腫瘍細胞によって発現される腫瘍抗原ペプチド(複数可)のうちの1つ以上を投与または使用することと、をさらに含む。
【0092】
一実施形態では、癌は、血液または血液学的癌、例えば、白血病、リンパ腫、および骨髄腫である。一実施形態では、癌は、白血病であり、限定されないが、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、有毛細胞性白血病(HCL)、T細胞前リンパ球性白血病(T-PLL)、大顆粒性リンパ球性白血病、または成人T細胞性白血病が含まれる。別の実施形態では、癌は、限定されないが、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫、前駆T細胞白血病/リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、B細胞慢性リンパ球性白血病/リンパ腫、またはMALTリンパ腫である。さらなる実施形態では、癌は、B-ALLなどのB細胞白血病である。
【0093】
別の実施形態では、癌は、肺癌などの固形癌である。さらなる実施形態では、肺癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)である。一実施形態では、肺癌は扁平上皮肺癌(SQCLC)、腺癌、または大型細胞未分化癌(LCAC)である。
【0094】
一実施形態では、本明細書に開示される腫瘍抗原ペプチド、核酸、ベクター、組成物は、化学療法、免疫療法(例えば、CAR T/NK細胞に基づく療法、チェックポイント阻害剤に基づく療法、抗体に基づく療法)、放射線療法、または手術などの他の療法(例えば、抗腫瘍療法)と組み合わせて使用され得る。免疫チェックポイント阻害剤の例には、PD-1、PD-L1、CTLA-4、KIR、CD40、TIM-3、またはLAG-3を阻害する薬剤、例えば、遮断抗体が含まれる。化学療法のための薬剤の例には、例えば、アムサクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン、グラデリムプラント、ヒドロキシカルバミド、イダルビシン、イフォスファミド、イリノテカン、ロイコボリン、リポソームドキソルビシン、リポソームダウノルビシン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル(タキソール)、ペメトレキセド、ペントスタチン、プロカルバジン、ラルチトレキセド、サトラプラチン、ストレプトゾシン、テガフル-ウラシル、テモゾロミド、テニポシド、チオテパ、チオグアニン、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、またはそれらの組み合わせが含まれる。あるいは、化学療法のための薬剤は生物学的製剤であり得、HER2抗原に対するHerceptin(登録商標)(トラスツズマブ)、VEGFに対するAvastin(登録商標)(ベバシズマブ)、またはEGF受容体に対するErbitux(登録商標)(セツキシマブ)、およびVectibix(登録商標)(パニツムマブ)などの抗体が含まれる。そのような追加の薬剤または治療は、本明細書に開示される腫瘍抗原ペプチド、核酸、ベクター、組成物の投与/使用の前、間、および/または後に投与/使用され得る。
【0095】
ALLのための現在の治療は、典型的には、ビンクリスチン、デキサメタゾン、またはプレドニゾン、ならびにドキソルビシン(アドリアマイシン)またはダウノルビシンなどのアントラサイクリン薬剤を含む。同種幹細胞移植(アロ-SCT)も、高リスク患者および再発性/難治性疾患を有する患者において実施される。B-ALLの治療のために臨床開発中の他の薬剤には、抗CD22、抗CD20、および抗CD19抗体、ならびにプロテアソーム阻害剤(ボルテゾミブ)、JAK/STATシグナル伝達経路阻害剤(ルキソリチニブ)、低メチル化剤(デシタビン)、およびPI3K/mTOR阻害剤が含まれる(例えば、Terwilliger and Abdul-Hay,Blood Cancer J.2017 Jun;7(6):e577を参照する)。
【0096】
肺癌のための現在の治療は、典型的には、手術、放射線治療、低分子チロシンキナーゼ阻害剤(エルロチニブ、クリゾチニブ)による化学療法、ならびに抗PD1抗体(ペムブロリズマブ)などのチェックポイント阻害剤による免疫療法が含まれる(例えば、Dholaria et al.J,Hematol Oncol.2016;9:138を参照する)。
【0097】
本発明を実行するための形態(複数可)
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに詳細に説明される。
【0098】
実施例1:材料および方法
マウス。C57BL/6マウスは、Jackson Laboratory(Bar Harbor、ME)から得た。マウスを特定の病原体を含まない条件下で飼育した。
【0099】
細胞株。EL4 Tリンパ芽球性リンパ腫細胞株、CT26結腸直腸癌細胞株、およびB細胞ハイブリドーマHB-124は、American Type Culture Collection(ATCC)から得た。EL4およびCT26細胞は、10%熱不活化ウシ胎児血清、1%L-グルタミン、および1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補充したRPMI 1640/HEPESで培養した。細胞培養培地にはさらに、1%非必須アミノ酸および1%ピルビン酸ナトリウムを、またはEL4細胞およびCT26細胞については1%ピルビン酸ナトリウムのみを、それぞれ補充した。抗CDR2抗体を産生するために、HB-124細胞は、10%熱不活化ウシ胎児血清を補充したIMDMで培養した。特に明記しない限り、全ての試薬はGibco(登録商標)から購入した。
【0100】
ヒト原発性試料。この研究で使用した原発性白血病試料(4個のB-ALL標本:07H103、10H080、10H118、および12H018)は、Banque de Cellules Leucemiques du Quebec(BCLQ)at Hopital Maisonneuve-Rosemontで収集されて凍結保存された。原発性白血病試料は、既に報告されている1aように、NSGマウスにおける移植後にインビボで増殖させた。簡単に説明すると、1~2×106個のB-ALL細胞を解凍し、亜致死的に照射された(250cGy、137Cs-γ線源)8~12週齢NSGマウスに静脈内注入を介して移植した。マウスを疾患の徴候で屠殺し、細胞懸濁液を、機械的に破壊された脾臓から、または07H103について、脾細胞、骨髄、および腹水の混合物から調製した。そこから、Ficoll(商標)勾配を使用して、MAP単離前にB-ALL細胞を豊富化した(MAP単離のセクションを参照)。肺腫瘍生検(lc2、lc4、およびlc6)をTissue Solutionsから購入し、MAP単離前に均質化した(MAP単離セクションを参照)。全ての試料について、HLAタイピングはOptitypeバージョン1.0を使用して、RNA配列決定(RNA-Seq)データのためのデフォルトパラメータで実行して得た(RNA抽出、ライブラリ調製、および配列決定のセクションを参照)。
【0101】
ペプチド。ネイティブおよび13C標識バージョンのTSAは、GenScriptによって合成された。純度は、製造業者によって決定されたとき、ネイティブおよび13C標識ペプチドについてそれぞれ95%および75%を超えた。
【0102】
マウスmTEC
hi抽出。胸腺を5~8週齢のC57BL/6またはBalb/cマウスから単離し、機械的に破壊して胸腺細胞を抽出した。間質細胞の豊富化を既に報告されている
2aのように実施した。胸腺間質細胞を、ビオチン化Ulex europaeus lectin1(UEA1;Vector Laboratories)、PE-Cy7コンジュゲート化ストレプトアビジン(BD Biosciences)、および以下の抗体によって染色した。Alexa Fluor(商標)700抗CD45、PE抗I-A
b(BD Biosciences)、アロフィコシアニン-Cy7抗EpCAM(BioLegend)。細胞生存率を、7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD、BD Biosciences)を使用して評価した。生きた成熟mTEC(mTEC
hi)を7-AAD
-CD45
-EpCAM
+UEA1
+MHC II
hiとしてゲーティングした。mTEC
hiを3レーザーFACS AriaIIIu(BD Biosciences、
図13A)で選別した。
【0103】
ヒトTECおよびmTEC抽出。胸腺を、心臓血管矯正手術を受ける3ヶ月~7歳の個体から得た(CHU Saint Justine Research Ethic Board、プロトコルおよびバイオバンク#2126)。簡単に説明すると、胸腺を、それらの外科的切除後数時間以内に、培地を含有する50ml円錐形チューブ中で4℃に保持し、2~5mm立方体に切断した。長期保存のため、胸腺立方体を熱不活化ヒト血清/10%DMSOを含有する凍結保存用バイアル中で凍結させ、液体窒素中で最大3年間維持した。凍結保存された胸腺試料をドライアイス上に移し、C.Stoeckleら
3aから適応したプロトコルによってヒトTECおよびmTECを単離するために使用した。胸腺組織を小断片に切断し、次いで、RPMI-1640(Gibco)中の2mg/mLコラゲナーゼA(Roche)および0.1mg/mlのDNアーゼI(Sigma-Aldrich)の溶液を使用して37℃で40分間の3~5回で消化した。2回目の消化後、トリプシン/EDTA(Gibco)の溶液を添加し、その活性を、インキュベーション終了の15分前にFBS(Invitrogen)を添加することによって中和した。TECおよびmTEC選別について(
図13B)、細胞懸濁液を、パシフィックブルーコンジュゲート化抗CD45(BioLegend)、PEコンジュゲート化抗HLA-DR(BioLegend)、APCコンジュゲート化抗EpCAM(BioLegend)、Alexa 488コンジュゲート化抗CDR2(HB-124ハイブリドーマで産生され-細胞株のセクションを参照-、mTEC試料についてのみAbcamからのDylight 488 Fastコンジュゲーションキットによってコンジュゲート化される)によって染色し、細胞生存率を7-AAD(BD Biosciences)を使用して評価した。
【0104】
RNA抽出、ライブラリ調製、および配列決定。EL4およびCT26細胞について、5×106個の細胞の1回複製を使用して、RNA配列決定を実施した。C57BL/6およびBalb/cのmTEChiについて、2匹の雌および2匹の雄から抽出した最低31,686個または16,338個のFACS選別細胞に対して、RNA配列決定を3回複製で実施した。原発性白血病細胞について、RNA-Seqを2.0~4.0×106個の細胞の単回複製で実施した。ヒトTECおよびmTECについて、ドナーあたり1回のRNA-Seq複製を、33,076~84,198個のFACS選別したTECまたは50,058~100,719個のmTECで実施した。全ての場合において、全RNAは、TRIzol(Invitrogen)を使用して単離し、RNeasyキットまたはRNeasy microキット(QIAGEN)を各製造業者によって推奨されるように使用してさらに精製した。各肺腫瘍生検について(合計3回)、全RNAを約30mgの組織から、AllPrep DNA/RNA/miRNA Universalキット(Qiagen)を製造業者によって推奨されるように使用して単離し、試料あたりRNA-Seqの1回複製を実施するために使用した。各マウス試料(EL4、CT26、およびマウスmTEChi)を、Nanodrop 2000(Thermo Fisher Scientific)で定量化し、RNA品質を2100 Bioanalyzer(Agilent Genomics)で評価して、RIN値(RNA integrity number)≧9の試料を選択した。ヒト試料(B-ALL、肺腫瘍生検、およびヒトTEC/mTEC)について、全RNAの定量化をQuBit(ABI)によって行い、全RNAの品質を2100 BioAnalyzer(Agilent Genomics)で評価してRIN値(RNA integrity number)≧7の試料を選択した。cDNAライブラリは、EL4およびCT26細胞について2~4μg、マウスmTEChiについて50~100ng、B-ALL標本について500ng、肺腫瘍生検について4μg、ヒトTECについて8~13ng、または全RNAのヒトmTECについて41~68ngから、TruSeq Stranded Total RNA Library Prepキット(EL4細胞)、KAPA Stranded mRNA-Seqキット(CT26細胞、C57BL/6のmTEChi、ヒトmTEC、肺腫瘍、およびB-ALL標本)、またはKAPA RNA HyperPrepキット(Balb/cのmTEChi、ヒトTEC)を使用して調製した。これらのライブラリは、配列決定前にPCRの9~16サイクルによってさらに増幅させた。ペアエンド(paired-end)RNA配列決定を、Illumina NextSeq(商標)500(Balb/cのmTEChi、ヒトTEC、およびmTEC)またはHiSeq(商標)2000(任意の他の試料)で実施し、マウスおよびヒト試料あたりそれぞれ平均175および199×106リードを得た。
【0105】
標準的癌および正常プロテオームの生成。全ての試料について、RNA-Seqリードを、Trimmomaticバージョン0.35を使用して配列決定アダプタおよび低品質3’塩基のためにトリミングし、次いで、マウス試料ではGRCm38.87およびヒト試料ではGRCh38.88である参照ゲノムに対して、STARバージョン2.5.1b
4aを使用し、--alignSJoverhangMin、--alignMatesGapMax、--alignIntronMax、および--alignSJstitchMismatchNmaxでは、パラメータはデフォルト値をそれぞれ10、200,000、200,000、および5-155に置き換えた以外は、デフォルトパラメータで実行してアラインメントした。最小代替カウント設定が5である一塩基変異を、freeBayesバージョン1.0.2-16-gd466dde[arXiv:1207.3907]を使用して特定し、VCFでエクスポートし、これをpyGeno
5aと互換性のある非依存SNPファイル形式に変換した(GitHub、https://github.com/tariqdaouda/pyGeno
)で入手可能。最後に、転写発現を、Kallistoバージョン0.43.1[Nicolas L Bray,Harold Pimentel,Pall Melsted and Lior Pachter,Near-Optimal probabilistic RNA-seq quantification,Nature Biotechnology 34,525-527(2016)]を用いてデフォルトパラメータで実行し、百万あたりの転写物(tpm)で定量化した。注意すべきこととして、Kallistoインデックスは、インデックス機能を使用し、Ensemblからダウンロードされた適切な*.cdna.all.fa.gzファイルを使用して構築した。各試料の標準的プロテオームを構築するために、pyGenoを使用して、(i)高品質の試料特異的一塩基変異(freeBayes品質>20)を参照ゲノムに挿入し、それによって個別化エクソームを作成し、(ii)発現した転写物(tpm>0)によって生成された既知タンパク質の試料特異的配列(複数可)をエクスポートした。これらのタンパク質配列をfast
qファイルに書き込み、その後、質量分析(MS)データベース検索(癌標準的プロテオーム)および/またはMHC I関連ペプチド(MAP)分類(癌および正常標準的プロテオーム)に使用した。概略について
図1Bを、統計について表4a~bを参照する。
【0106】
癌および正常k-merデータベースの生成。全ての癌および正常試料について、R1およびR2 fastqファイルの両方を、独立してダウンロードし、Trimmomaticバージョン0.35を使用して、配列決定アダプタおよび低品質の3’塩基のためにトリミングした。全てのリードが転写物コード鎖上にあったことを確実にするために、R1リードを、FASTX-Toolkitバージョン0.0.14のfastx_reverse_complement機能を用いて使用して逆補完した。jellyfish 2.2.3
6aを使用して、k-merプロファイリングおよびMAP分類にそれぞれ使用された33個および24個のヌクレオチド長のk-merデータベースを生成した(詳細については
図7Aを参照)。注目すべきこととして、複数の生物学的複製物(マウスmTEC
hi)または無関係ドナー(ヒトTECおよびmTEC)からの複数の試料が利用可能である場合、fastqファイルを連結して、条件(C57BL/6、Balb/cまたはヒト)あたり単一の正常k-merデータベースを生成した。
【0107】
k-merフィルタリングおよび癌特異的プロテオームの生成。TSAを生じさせる可能性のある33ヌクレオチド長のk-merを抽出するために、分析はEL4またはCT26k-mer細胞で少なくとも4回、肺腫瘍生検で7回、および原発性白血病試料で10回認められるk-merに限定した。次いで、癌特異的k-merは、関連するmTEC
hiまたはヒトTEC/mTECのk-merデータベースにおいて発現されなかったものを選択することによって得た(
図7Bを参照)。この癌特異的k-merセットは、コンティグと呼ばれる、より長い線形配列にさらに組み立てた。簡単に説明すると、提示された33ヌクレオチド長のk-merのうちの1つをランダムに選択して、次いで、同じ鎖上に32ヌクレオチドで重複する連続するk-merで両端から伸長するシードとして使用する(-rオプションを無効にし、k-merの鎖状セットとして使用した)。組み立てプロセスは、k-merが組み立てられない、すなわち、32ヌクレオチド重複k-merが認められないとき、または複数のk-merが適合するときのいずれかに停止する(線形組み立て用の-a1オプション)。そのような場合、新しいシードが選択され、提示されたリストから全てのk-merが一度使用されるまで組み立てプロセスが再開される(
図7Cを参照)。このステップは、NEKTAR(https://bitbucket.org/eaudemard/nektar)というインハウスの開発ソフトウェアのkmer_assembly機能によって行われる。タンパク質を得るために、少なくとも34ヌクレオチド長であったコンティグの3フレーム翻訳を、インハウスのpythonスクリプトを使用して実施した。次いで、癌特異的タンパク質を内部停止コドンで分割し、少なくとも8個のアミノ酸長の任意の得られたサブ配列に、関連するデータベースに含める前に独自のIDを与えた(
図7Dを参照)。概略図については
図1Bを、統計については表4a~bを参照する。
【0108】
MAP単離。EL4およびCT26細胞について、250×106個の指数的に増殖する細胞の3つの生物学的複製物を、指数的に増殖する細胞から調製した。全ての原発性白血病試料について、約450~700×106個の細胞の3つの生物学的複製物を、新たに採取した白血病細胞から調製した(ヒト原発性試料のセクションを参照)。MAPを、既に報告されている7a方法に軽微な変更を加えて得、弱酸溶出(MAE)後、ペプチドを、Oasis HLBカートリッジ(30mg、Waters)で脱塩し、3kDaの分子量カットオフ(Amicon Ultra-4、Millipore)で濾過して、β2-ミクログロブリン(β2M)タンパク質を除去した。原発性白血病試料のうちの1つ(標本10H080)について、100×106個の細胞の4つの追加の複製物を調製し、MAPを、既に報告されている1aように免疫沈降(IP)によって単離した。最後に、肺腫瘍生検(771~1,825mgの範囲の湿潤重量、ヒト原発性試料のセクションを参照)を小切片に切断し(約3mmのサイズの立方体)、タンパク質阻害剤カクテル(Sigma)を含有する氷冷PBS5mlを各組織試料に添加した。組織を、Ultra Turrax T25ホモジナイザー(20,000rpmで20秒、IKA-Labortechnik)を使用して最初に2回均質化し、次にUltra Turrax T8ホモジナイザー(25,000rpmで20秒、IKA-Labortechnik)を使用して1回均質化した。次いで、550μlの氷冷10倍溶解緩衝液(10%w/vCHAPS)を各試料に加え、MAPを既に報告されている1ように、試料あたりプロテインA磁気ビーズと共有結合によって交差結合したW6/32抗体の1mg(1ml)を使用して免疫沈降させた。MAP分離技法にかかわらず、MAP抽出物はMS分析前に、全てSpeed-Vacを使用して乾燥させ、凍結して維持した。
【0109】
質量分析解析。乾燥したMAP抽出物を全て0.2%ギ酸中に再懸濁した。EL4およびCT26について、MAP抽出物を、自家製C18プレカラム(C18Jupiter Phenomenexで充填した5mm×内径360μm)に加え、自家製C18分析カラム(C18Jupiter Phenomenexで充填した15cm×内径150μm)で、nEasy-LC IIシステムによって、0~40%アセトニトリル(0.2%ギ酸)の56分間の勾配、および600ml・分-1の流量によって分離した。全てのヒト試料について、MAP抽出物を、自家製C18分析カラム(C18Jupiter Phenomenexで充填した15cm×内径150μm)で、nEasy-LC IIシステムによって、0~40%アセトニトリル(0.2%ギ酸、07H103、10H080-MAE、10H118、および12H018)の56分間の勾配、または5~28%アセトニトリル(0.2%ギ酸、肺腫瘍生検および10H080-IP)の100分間の勾配、および600ml・分
-1
の流量で加えた。試料をQ-Exactive Plus(EL4、Thermo Fisher Scientific)またはHF(全ての他の試料、Thermo Fisher Scientific)で分析した。Q-Exactive Plusでは、70,000分解能で取得された各フルMSスペクトルに12MS/MSスペクトルが続き、最も豊富な多荷電イオンは、17,500の分解能、1e6の自動ゲイン制御標的、50msの注入時間、および25%の衝突エネルギーで、MS/MS配列決定のために選択された。Q-Exactive HFでは、60,000分解能で取得した各フルMSスペクトルに続いて、20MS/MSスペクトルを得、最も豊富な多荷電イオンは、15,000(CT26、07H103、10H080-MAE、10H118、12H018)または30,000(肺腫瘍生検、10H080-IP)の分解能、5×104の自動ゲイン制御標的、100msの注入時間、および25%の衝突エネルギーで、MS/MS配列決定のために選択された。ペプチドはピーク8.5(Bioinformatics Solution Inc.)を使用して特定し、ペプチド配列は関連する包括的癌データベースに対して検索し、標準的癌プロテオームと癌特異的プロテオームを連結することによって得た(標準的癌プロテオームおよび正常プロテオームの生成、ならびに、ならびに癌特異的プロテオームのk-merフィルタリングおよび生成のセクションを参照)。ペプチド特定のために、プレカーサーイオンおよびフラグメントイオンについて許容誤差をそれぞれ10ppmおよび0.01Daに設定した。酸化(M)および脱アミド化(NQ)の発生を翻訳後修飾として考慮した。
【0110】
MAPの特定。MAPについて選択するために、Peaksから得られた独自の識別のリストをフィルタリングして、関連するMHC I分子の少なくとも1つについてNetMHC 4.08aによって予測されるように、≦2%のパーセンタイルランクを有する8~11個のアミノ酸長ペプチドを含んだ。さらに、所与のPeaksスコア閾値を上回る標的識別の数で除したデコイ識別の数として定義される局所5%の偽発見率(FDR)を適用して、最終MAPリスト内の偽陽性識別の数を制限した。
【0111】
TSA候補の特定および検証。全ての特定されたMAPの中でTSA候補を特定するために、免疫原性ステータスをMAP/タンパク質の各対に割り当てた。そのために、各MAPおよびその関連するMAPコード配列(複数可)(MCS)を、それぞれ関連する癌および正常個別化プロテオームまたは癌および正常24ヌクレオチド長k-merデータベースに照会した。正常の標準的プロテオームで検出されたMAPは、それらが寛容原性である可能性があるため、それらのMCS検出ステータスに関係なく除外した。正当に癌特異的であったMAP、すなわち、正常標準的プロテオームまたは正常k-merでは検出されなかったMAPを、TSA候補としてフラグ付けした。両方の標準的プロテオームには存在しないが、両方のk-merデータベースに存在するMAPは、正常細胞に対して癌細胞で少なくとも10倍過剰発現されるそれらのMCSを有することが必要とされ、そのようにフラグ付けされる(
図8Aを参照)。最後に、いくつかのMCS(異なるタンパク質から)によってコードされるMAPは、それらのそれぞれのMCSが一致している場合、すなわち、このMAPがTSA候補として一貫してフラグ付けされている場合にのみ、TSA候補としてフラグ付けされ得る。全てのTSA候補のMS/MSスペクトルをマニュアルで精査して、いかなる偽の特定も除去した。加えて、複数のゲノムによって可能性があるI/Lバリアントを提示する配列をさらに精査して、両方のバリアントは、それらがMSによって区別可能であったときには両方のバリアントを、またはそれらが区別可能でなかったときには最も発現されたバリアントのみを報告した(
図8Bを参照)。最後に、ゲノム位置は、BLAT(UCSCゲノムブラウザからのツール)を使用して、MCS含有リードを参照ゲノム(GRCm38.87またはGRCh38.88)にマッピングすることによって、これらのMS検証されたTSA候補全てに割り当てた。リードが一致するゲノムの位置にマッチングしなかったか、または超可変領域(MHC、Ig、またはTCR遺伝子など)もしくは複数の遺伝子とマッチングしなかったTSA候補を除外した。一致したゲノム位置を有するものについて、Integrative Genome Viewer(IGV)
9aを使用して、それらの関連する正常な対応物に関してMCS重複同義変異を有するTSA候補、またはヒトTSA候補については、既知の生殖系多型と重複するもの(すなわち、dbSNP v.149に列挙される、
図8C)を除外した。残りのペプチドは、それらのMCSが癌特異的変異と重複するか否かに応じて、mTSAまたはaeTSA候補として分類した。
【0112】
MCSの末梢発現。TAAおよびaeTSA候補のMCSの末梢発現を評価するために、(1)RNAがENCODEコンソーシアム
10a、11aによって配列決定されている22個のマウス組織(表5)、または(2)GTExコンソーシアムによって配列決定されており、2018年4月16日にGTEx Portalからダウンロードされた28個の末梢ヒト組織(組織あたり約50ドナー)(phs000424.v7.p2、表6)、からのRNA-Seqデータを使用した。簡単に説明すると、各組織からのRNA配列決定データを、Jellyfish 2.2.3(-Cオプションを使用)によって24ヌクレオチド長k-merデータベースに変換し、各MCSの24ヌクレオチド長k-merセットを照会するために使用した。各RNA-Seq実験について、所与のMCSと完全に重複するリードの数(r
overlap)を、k-merセットの最小出現数(k
min)を使用して推定した。実際、k
min~r
overlapという仮説を立てたのは、同じk-merを複数回生成し得る低複雑性RNA-Seqリードを除いて、1つのk-merは常に単一のRNA-Seqリードから生じるためである。したがって、全ての組織にわたるMCS発現レベルを比較するために、このr
overlap値は、以下の式を使用して、配列決定された10
8リードあたり検出されたリードの数(rphm)に変換し、
【数1】
、式中、r
totは所与のRNA-Seq実験で配列決定したリードの総数を表す。次いで、そのような値を対数変換し(log
10(rphm+1))、所与の組織の全てのRNA-Seq実験にわたって平均化した。マウス候補およびヒト候補について、それぞれ、10個以下の組織(rphm>0)または肝臓以外の5個未満の組織(rphm>15)において末梢発現を示すaeTSA候補を、真のaeTSAとして考えた。これらのaeTSA、ならびにmTSAの特徴は、表1a~b、2a~d、および3a~cに報告される。
【0113】
TSA候補のMS検証。CT26 TSA候補および2つのEL4 TSA候補(ATQQFQQL-配列番号11およびSSPRGSSTL-配列番号13)について、既に取得しているMS/MSスペクトルを関連する12C類似体と比較した。インビボで試験した他の5つのEL4 TSA候補(IILEFHSL-配列番号12、TVPLNHNTL-配列番号14、VNYIHRNV-配列番号15、VNYLHRNV-配列番号15、VTPVYQHL-配列番号16)について、6つの追加のEL4複製物(複製あたり約450~1,400×106個の細胞)からMAPを溶出し、全て、前述のように処理した(MAP単離および質量分析のセクションを参照)。絶対定量化のために、6つのEL4複製物のうちの3つに、各13C標識TSAの500fmolを添加した。配列検証のために、12C TSA候補のMS/MSスペクトルを、PRM MSによる試料分析の前に取得した。簡単に説明すると、計画通りに5つのペプチドをモニタリングしたPRM取得(各ペプチドは、その溶出時間を中心とした10分間の幅でのみモニタリングされる)は、1つのMS1スキャン、続いてHCDモードでの標的MS/MSスキャンから構成された。サーベイスキャンおよびタンデムマスペクトルの自動ゲイン制御および注入時間は、それぞれ、3e6-50msおよび2e5-100msだった。全ての場合において、Skyline12aを使用して、各TSA候補の内因性MS/MSスペクトルを抽出し、それを関連する12CMS/MSスペクトル(配列検証)と比較するか、または内因性および関連する合成13C標識ペプチドの強度を抽出した(絶対定量化)。以下の式を使用し、これらの強度をさらに使用して、各複製について細胞あたりのTSAコピー数を計算し、(n合成×I内因性×NA/I合成)×(1/N細胞)、式中、n合成は考慮される合成13C標識TSAに添加されてされる初期モル数、I内因性およびI合成はそれぞれ関連する内因性および13C標識TSAの強度、NAはアボガドロ数、N細胞は弱酸溶出に使用される初期の細胞数である。
【0114】
ヒトTECおよびmTEC試料において検出された転写物の累積数。分析を、6つの試料(2個のTECおよび6個のmTEC)のうちの少なくとも1つにおいてtpm>1で発現された転写物に限定し、スピアマンのランク相関係数を1対1のTEC/mTEC比較ごとに計算した。次いで、発現された転写物のこれらの同じセットを使用して、検出された転写物の累積数(cT)を、各追加試料を分析する際に計算した。分析において試料が導入される順序がcT値に影響を及ぼす可能性があるため、全ての試料交換にわたるcT値を平均化し、これらの平均データ点を使用して、以下の予測曲線にフィッティングさせ(Rの「nls」関数を用いる)、
【数2】
、式中、cTは転写物の累積数であり、nSは分析した試料の数である。次いで、この方程式を使用して、最大20個の試料を研究することによって検出され、単に
【数3】
を計算することによって推定することができる転写物の数を外挿した。
【0115】
骨髄由来樹状細胞(DC)、マウス免疫化、およびEL4細胞注入の生成。骨髄由来DCを、既に報告されている13a、14aように生成した。マウス免疫化のために、雄C57BL/6マウスからのDCを、2μMの選択されたペプチドで3時間パルスし、次いで洗浄した。8~12週齢の雌C57BL/6マウスに、放射線照射されたEL4細胞(10,000cGy)添加の14日前、7日前、または同時に106個の、個別にペプチドパルス化DCを静脈内注入した。陰性コントロールとして、C57BL/6雌マウスを非パルス化DCで免疫化した。0日目および150日目に、マウスに5×105個のEL4細胞を静脈内注入し、体重減少、麻痺、または腫瘍成長についてモニタリングした。
【0116】
IFN-γ ELISpotアッセイおよび結合活性アッセイ。ELISpotアッセイおよび結合活性アッセイを、既に報告されている
14aように実施した。簡単に説明すると、Millipore MultiScreen PVDFプレートを35%エタノールで透過させ、洗浄し、マウスIFN-γ ELISpot Ready-SET-Go!試薬セット(eBioscience)を使用して一昼夜コーティングした。マウス免疫化後0日目に、免疫化したマウスまたはナイーブマウスから脾細胞を採取した。30×10
6個/mLの脾細胞を、FITCコンジュゲート化抗CD8α(BD Biosciences)によって4℃で30分間染色し、洗浄し、FACSAria(商標)IIuまたはFACSAria(商標)IIIu装置(BD Biosciences、
図13C)を使用して選別した。選別したCD8
+T細胞を播種し、関連するペプチド(ELISpotアッセイについて4μM、結合活性アッセイについて10
-4~10
-14M)でパルスした同系マウスからの放射線照射された脾細胞(4,000cGy)の存在下、37℃で48時間インキュベートした。陰性コントロールとして、ナイーブマウスからのCD8
+T細胞をペプチドパルス化脾細胞と共にインキュベートした。スポットは試薬セット製造業者プロトコルを使用して明らかにし、ImmunoSpot S5 UV Analyzer(Cellular Technology Ltd)を使用して計数した。IFN-γ産生を10
6個のCD8
+T細胞あたりのスポット形成単位の数として表し、EC
50は用量応答曲線を使用して計算した。
【0117】
リンパ組織からの細胞単離および四量体ベースの豊富化プロトコル。脾臓および鼠径部、腋窩、上腕、頸部、および腸間膜リンパ節をC57BL/6マウスから採取した。単一細胞懸濁液を、Fcブロックおよび10nMのPE-またはAPC-標識pMHC I四量体(NIH Tetramer Core Facility)によって4℃で30分間染色した。氷冷選別緩衝液(2%FBS添加PBS)で洗浄した後、細胞を200μLの選別緩衝液ならびに50μLの抗PEおよび/または抗APC抗体コンジュゲート化磁性マイクロビーズ(Miltenyi Biotech)に再懸濁し、そして4℃で20分間インキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、既に報告されている15a、16aように四量体+細胞を磁気によって豊富化した。得られた四量体+豊富化画分は、APC Fire 750コンジュゲート化抗B220、F4/80、CD19、CD11b、CD11c(BioLegend)、PerCPコンジュゲート化抗CD4(BioLegend)、BV421コンジュゲート化抗CD3(BD Biosciences)、BB515コンジュゲート化抗CD8(BD Biosciences)、BV510コンジュゲート化抗CD44(BD Biosciences)抗体、およびZombie NIR Fixable Viability Kit(BioLegend)によって染色した。抗CD11bおよびCD11cは、これらのマーカーがいくつかの活性化されたT細胞によって発現され得るため17a、18a、免疫化後レパートリーの分析について省略した。次いで、染色した試料全体をFACSCanto(商標)IIサイトメーター(BD Biosciences)で分析し、蛍光計数ビーズ(Thermo Fisher Scientific)を使用して結果を基準化した。陰性コントロールとして、3つのウイルス由来抗原であるリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)タンパク質gp-33からのgp-33(KAVYNFATC-配列番号40、H-2Db)、マウスサイトメガロウイルスタンパク質M45からのM45(HGIRNASFI-配列番号41、H-2Db)、およびワクシニアウイルスタンパク質B8RからのB8R(TSYKFESV-配列番号42、H-2Kb)を標的とする抗原特異的CD8+T細胞レパートリーを豊富化した。
【0118】
データ。この研究で使用した全ての試料に関する情報を表7に列挙する。
図1で使用される配列決定および発現データは、NCBI’s Sequence Read ArchiveおよびGEOに預託されており、両方ともSuperSeries受入コードGSE113992の下でGEOからアクセスすることができ、マウスまたはヒトの配列決定および発現データについてそれぞれGSE111092およびGSE113972受入コードを含む。SuperSeriesレコードは、枠内にトークンcnutscacjbkztebを入力することによってhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/query/acc.cgi?acc=GSE113992からアクセスすることができる。
図1で使用されるMS生データおよび関連データベースは、PRIDE
19aパートナーレポジトリを介してProteomeXchangeコンソーシアムに預託され、以下のデータセット識別子を有する。PXD009065および10.6019/PXD009065(CT26細胞株)、PXD009064および10.6019/PXD009064(EL4細胞株)、PXD009749および10.6019/PXD009749(07H103)、PXD009753および10.6019/PXD009753(10H080、弱酸溶出)、PXD007935-アッセイ#81756および10.6019/PXD007935(10H080、免疫沈降)
1a、PXD009750および10.6019/PXD009750(10H118)、PXD009751および10.6019/PXD009751(12H018)、PXD009752および10.6019/PXD009752(lc2)、PXD009754および10.6019/PXD009754(lc4)、ならびにPXD009755および10.6019/PXD009755(lc6)。
【0119】
実施例2:TSA発見のためのプロテオゲノミクスク法の根拠および設計。
様々なアルゴリズムを使用してTSAをコンピュータによって予測する試みは、極めて高い誤発見率を伴う
27。したがって、MAPレパートリーのシステムレベルの分子定義は、ハイスループットMS試験によってのみ達成することができる
3。現在のアプローチは、Peaks
28などのMS/MSソフトウェアツールを使用し、取得した各MS/MSスペクトルをペプチド配列に一致させるためにユーザ定義されたタンパク質データベースに依存する。参照プロテオームはTSAを含まないため、MSベースのTSA発見ワークフローは、プロテオゲノミクス戦略を使用して、腫瘍RNA-配列決定(RNA-Seq)データに由来するカスタマイズされたデータベースを構築しなければならず
29、考えられる腫瘍試料で発現される、注釈さえない、全てのタンパク質を理想的には含むべきである。現在のMS/MSソフトウェアツールは、全てのRNA-Seqリードを翻訳するオールフレームによって作成される大きな検索スペースに対処することができないため
30、31、癌特異的配列を豊富にするプロテオゲノミクス戦略が考案され、全てのゲノム領域によってコードされるTSAのランドスケープを包括的に特徴付けする。得られるデータベースは、包括的癌データベースと称される2つのカスタマイズ可能な部分からなる。第1の部分は、標準的癌プロテオーム(
図1A)と称され、発現されたタンパク質コード転写物をそれらの標準的フレーム内でコンピュータによって翻訳することで得られ、したがって、それは、正常であるか、または一塩基変異を含有するエキソン配列によってコードされるタンパク質を含有する。第2の部分は、癌特異的プロテオーム(
図1B)と称され、現在のマッパーおよびバリアントコーラーが構造バリアントを十分に特定しないため、k-merプロファイリングと呼ばれるアラインメントフリーのRNA-Seqワークフローを使用して生成された。この第2のデータセットは、いずれかのゲノム起源の任意のリーディングフレーム(構造バリアントを含む)によってコードされるペプチドの検出を、それらが癌特異的である限り(すなわち、正常細胞には存在しない)可能にした。ここでは、mTEChiを「正常コントロール」として使用することが選択され、それらは最も知られた遺伝子を発現し、それらの広大なトランスクリプトーム
32によってコードされるMAPに対する中枢性寛容を誘導するためである。したがって、癌特異的であったRNA配列を特定するために、癌RNA-Seqリードを、k-merと呼ばれる33ヌクレオチド長配列に切断し
33、k-merを同系mTEChiから除去した(
図7A~B)。k-merスペースに固有の冗長性は、重複する癌特異的k-merを、コンティグと呼ばれる長い配列に組み立てることによって除去し、さらにコンピュータによって3フレーム翻訳した(
図1Bおよび
図7C~D)。次いで、標準的な癌プロテオームおよび癌特異的プロテオームを連結して、各分析された試料について1つの包括的癌データベースを作成した。そのような最適化データベースを使用して、2つの十分に特徴付けられたマウス腫瘍細胞株、すなわち、Balb/cマウスからの結腸直腸癌であるCT26、およびC57BL/6マウスからのTリンパ芽球性リンパ腫であるEL4から溶出されたMAPが、MSによって配列決定されて特定された(
図1C)。
【0120】
実施例3:非コード領域はTSAの主な供給源である。
5%の偽発見率で、CT26細胞について1,875個のMAPおよびEL4細胞で783個のMAPを特定した。これらの中で、mTEC
hiプロテオームに存在しないMAPは、(i)完全癌制限型33ヌクレオチド長k-merに由来するそれらの33ヌクレオチド長MAPコード配列(MCS)がmTEChiトランスクリプトームに存在しない場合、または(ii)癌制限型33ヌクレオチド長k-merに由来するそれらの24~30ヌクレオチド長MCSが、mTEC
hi細胞に対して癌のトランスクリプトームにおいて少なくとも10倍過剰発現された場合に、TSA候補として考えた(
図8A)。MS関連の検証ステップおよびゲノム位置の割り当て(
図8B~C)に続いて、合計6個のmTSAおよび15個のaeTSA候補を得、14個はCT26細胞によって提示され、7個はEL4細胞によって提示された(
図2A~B)。変異および異常発現の両方であったMAPをmTSAカテゴリに含めた。これらのMAPは全て新規であると考えられ、Immune Epitope Database
36には存在しないが、1つだけ、AH1ペプチド(SPSYVYHQF)は逆免疫学を使用してCT26細胞上で先に特定された150個のaeTSA
9、37の1つであるため除外される。
【0121】
癌k-merからのmTEC
hik-merの除去に基づくデータベース構築戦略の厳密性を評価するために、22個の組織のパネルにわたるaeTSAをコードするMCSの末梢発現を評価した
38、39(表5)。15個のaeTSA候補のうちの4個は、それらのMCSがほとんどまたは全ての組織で発現されたため、過去に報告された「過剰発現した」腫瘍関連抗原(TAA)
40、41と同様の発現プロファイルを有した(
図2C)。したがって、これら4つのペプチドをTSAリストから除外した。対照的に、11個のMAPは、それらのMCSが、いくつかの組織において全く存在しないか、または微量で存在したため、真のaeTSAと考えられた(
図2C)。実際、低い転写物レベルの検出は、MAPが非常に豊富な転写物に優先的に由来するため
42、43、重要ではない。この概念は、肝臓、胸腺、および膀胱におけるMCSの発現が弱いにもかかわらず、有害効果を伴わない強い抗腫瘍応答を誘発するAH1 TSAによって例証される
9、37(
図2C)。これらの結果は、mTEC
hiに認められるmRNA配列を減算することが、癌制限型MCSを強力に豊富化することを示す。マウスTSAデータセット全体(6個のmTSAおよび11個のaeTSA)を考慮すると、最も顕著な発見は、それらのほとんどが、非定型的な翻訳事象であるコード化エキソンのアウトオブフレーム翻訳または非コード領域の翻訳に由来するということである(
図2D)。さらに、特定された全てのTSAは2個を除き、それらのソース配列(source sequence)がタンパク質コード化として注釈付けされないため、古典的なエクソームに基づくアプローチによって見逃されていたであろう。興味深いことに、非コード領域の任意のタイプである、遺伝子間およびイントロン配列、非コード化エキソン、UTR/エキソン接合部、ならびにEREは、TSAを生成することができることも注目され(表1)、TSAの特に豊富な供給源であるように思われる(8個のaeTSAおよび1個のmTSA)。最後に、本明細書に記載のアプローチは構造バリアントを効率的に捕捉し、EL4細胞における非常に大きな遺伝子間欠失(約7,500bp)に由来する抗原であるVTPVYQHLが特定された(表1b)。総じて、これらの結果は、非コード領域がTSAの主な供給源であり、それらが腫瘍のTSAランドスケープをかなり拡大する可能性を有することを確証する。
【0122】
さらなる試験を、最も魅力的と思われるTSA、すなわち、EL4細胞によって提示され、MCSがいかなる正常組織によっても発現されないTSAのいくつかについて実施した(
図2Cおよび表1b)。それらの免疫原性を評価するために、C57BL/6マウスを、生EL4細胞を負荷する前に、非パルス化(コントロール群)またはTSAパルス化DCのいずれかで2回免疫化した。IILEFHSLまたはTVPLNHNTLに対するプライミングは、マウスの10%で生存率を延長し、TVPLNHNTL免疫化マウスのみが150日まで生存した(
図3A)。他の3つのTSAは、20%(VNYIHRNV)、30%(VTPVYQHL)、および100%(VNYLHRNV)の150日生存率を示した(
図3B、C)。TSAワクチン接種の長期有効性を評価するために、生存しているマウスを150日目に生EL4細胞で再負荷し、疾患の徴候をモニタリングした。2匹のVNYIHRNV免疫化生存マウスは50日以内に白血病で死亡したが、他の全て(TVPLNHNTL、VTPVYQHL、またはVNYLHRNVに対して免疫化)は再負荷で生存した(
図3)。したがって、個別のTSAに対する免疫は、EL4細胞に対して異なる程度の保護を付与し、ほとんどの場合、この保護は長期継続することが結論付けられ得る。
【0123】
実施例4:ナイーブおよび免疫化マウスにおけるTSA特異的T細胞の頻度。
様々なモデルにおいて、インビボでの免疫応答の強度は、抗原反応性T細胞の数によって調節される
44、45。したがって、ナイーブおよび免疫化マウスにおけるTSA特異的T細胞の頻度を、四量体ベースの豊富化プロトコル
46、47を使用して評価し、ゲーティング戦略および1つの代表的な実験を
図9A~Cに認めることができる。陽性コントロールとして、3つのウイルスエピトープ(gp-33、M45、およびB8R)に特異的な非常に多量なCD8 T細胞を使用し、それらの頻度が過去の研究
45で観察されたものの範囲内であることを確証した(
図4A)。ナイーブマウスでは、TVPLNHNTL、VTPVYQHL、およびIILEFHSLに特異的なCD8 T細胞は稀だった(10
6個のCD8 T細胞あたり1個未満の四量体+細胞)が、ERE TSA(VNYIHRNVおよびVNYLHRNV)に特異的なCD8 T細胞は、ウイルスコントロールのものと同様の頻度を示した(
図4Aおよび
図10A)。したがって、TSAパルス化DCで免疫化されたマウスにおいて、四量体染色またはIFN-γ ELISpotアッセイによって評価される2つのERE TSAに対するT細胞頻度(
図9C~Dおよび10A)は、TVPLNHNTL、VTPVYQHL、およびIILEFHSLよりも有意に高いことが認められた(
図4B~C)。さらに、ナイーブおよび免疫化マウスの両方において、抗原特異的T細胞の頻度は高い相関にあることが認められた(
図11A~C)。最後に、VNYIHRNVおよびVNYLHRNVに特異的なT細胞の機能的結合活性は、2つの高度に免疫原性の非自己抗原である微小組織適合性抗原H7aおよびH13aに特異的なT細胞と同様であったと評価された(
図4D)。したがって、これらのTSAは、非コード化とされる領域に由来するが、高い機能的な結合活性を有する非常に多量なT細胞によって認識された。これは、未変異生殖系配列を有するため、VNYIHRNV aeTSAについて特に注目すべきである。
【0124】
総合すると、これらの結果は、TSA特異的T細胞の頻度は概してTSA免疫原性の重要なパラメータであることを示す。しかしながら、VTPVYQHLは、その同族T細胞が非常に低い頻度で存在したにもかかわらず、EL4負荷に対する第2から最善までの保護を提供した(
図3および4A~C)。白血病保護におけるT細胞増殖の重要性をより良く評価するために、150日目のEL4細胞による再負荷後の長期生存マウスにおける四量体
+CD8 T細胞の頻度を評価した(
図3)。これらの分析は、210日目に、または死亡の時点(VNYIHRNV-プライム化マウスの場合)に実施した。VTPVYQHL免疫化マウスを含む全ての長期生存マウスは、TSA特異的(四量体
+)CD8 T細胞の顕著な集団を示した(
図10B~C)。VNYIHRNVは、四量体+細胞の大集団によって認識されたが、これは、本明細書で使用される実験条件における再負荷でのマウスを保護するのに十分ではなかった。
【0125】
実施例5:EL4細胞に対する保護のための抗原発現の重要性。
次に、免疫原性に対する抗原発現の影響を、0日目に注入したEL4細胞集団におけるTSAの量をRNAレベルで査定することによって評価した(
図3)。EL4細胞に対する最良の保護を付与するTSAをコードする配列(VNYLHRNV)は、他のTSAよりもはるかに高いレベルで発現されたことが認められた(
図5A)。これは、VNYLHRNVが「クローン」(全てのEL4細胞によって発現される)である可能性があり、高度に発現されるが、一方、他のTSAはサブクローンであり、かつ/または低レベルで発現されることを示唆する。次に、並列反応モニタリング(PRM)MSを使用して、再負荷に使用されるEL4細胞集団における細胞あたりのTSAコピー数を分析した(150日目、
図5B)。RNAにおけるTSA存在量とペプチドレベルとの間には直線関係はなかった
40(
図5A~B)。特に、最良のTSAであるVNYLHRNVは、2つの最も多量なTSAの1つだった(細胞あたり>500コピー)が、本明細書で使用される実験条件下で再負荷時に有意な保護をもたらさなかったVNYIHRNV(
図3B)は、EL4細胞でもはや検出されなかった。この結果は、VNYIHRNVがサブクローナルTSAであり、抗原損失が再負荷での有意な保護の欠如の最も可能性のある説明であることを示唆する。最後に、TSAは、DCによって提示されたときには免疫原性であったが、EL4細胞によって提示されたときには免疫原性ではなかったことが注目され、i)前免疫を伴わない生EL4細胞の注入は、TSA特異的T細胞の有意な増殖を誘導せず、ii)放射線照射されたEL4細胞による免疫は、生EL4細胞に対する有意な保護を与えなかった(
図5C~Dおよび
図10D)。これは、免疫が存在しないとき、高免疫原性TSA(VNYLHRNVなど)は、それがDCによって効率的に交差提示されなかったため無視され、癌免疫療法における効率的なT細胞プライミングの重要性を強調していることを示唆する。
【0126】
実施例6:非コード領域は、ヒト原発性腫瘍のTSAランドスケープを拡大する。
非コード領域が2つのマウス細胞株におけるTSAの主な供給源であることが確立され、本明細書に記載のプロテオゲノミクスアプローチを、7つのヒト原発性腫瘍試料である4つのB系統ALLおよび3つの肺癌に適用した。そうするために、マウス同系mTEC
hiからのRNA-Seqデータを使用するよりも、心臓血管矯正手術を受ける6例の無関係ドナー由来の全TEC(n=2)および精製mTEC(n=4)のトランスクリプトームを配列決定した。注目すべきこととして、最小限の個体間差が認められ、このコホートサイズは、mTECトランスクリプトームランドスケープのほぼ全幅を網羅するのに十分であることが示された(
図12A~B)。これらのRNA-Seqデータを
図1に記載されるワークフローのための正常k-merのレパートリーとして使用して、3個のmTSAおよび27個のaeTSA候補を特定した(
図6A)。広範に検証されることに加えて、mTSAが既知の生殖系多型と重ならないことも確実にされた。aeTSA候補のステータスをさらに検証するために、28個の組織からのRNA-SeqデータにおけるaeTSA MCSの発現(組織あたり6~50個、
図6Bおよび表6)を、マウスaeTSAに行われたものと同様に分析した(
図2C)。これらのデータに基づき、6個のaeTSA候補を除外し、i)3個は広く発現され、最も以前に報告された過剰発現したTAA
48と同様であり、ii)3個は単一の臓器、肝臓において有意なレベルで発現された(
図6B)。したがって、合計3個のmTSAおよび20個の非冗長aeTSA候補が特定された(
図6Cならびに表2a~dおよび3a~c)。注目すべきこととして、SLTALVFHV aeTSAは、2つのHLA-A*02:01-陽性ALLによって共有された(表2aおよび2d)。このaeTSAは、リンパ系悪性腫瘍に関与する遺伝子であるTCL1Aの3’UTRに由来する。総じて、結果は、本明細書に記載されるプロテオゲノミクスアプローチが、個別腫瘍におけるmTSAおよびaeTSAのレパートリーを約2週間で特徴付けることができることを示す。
【0127】
表
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
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【0138】
【0139】
【0140】
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【0143】
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【0146】
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【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
本発明は、上記にその特定の実施形態によって説明されているが、添付の特許請求で定義されるように、本発明の精神および性質から逸脱することなく変更することができる。特許請求において、単語「含む」は、「含むがこれらに限定されない」という語句と実質的に同等の、制限のない用語として使用される。単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明示しない限り、対応する複数の参照物を含む。
【0156】
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