(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】基準局のための高精度単独測位装置
(51)【国際特許分類】
G01S 19/07 20100101AFI20240409BHJP
G01S 19/43 20100101ALI20240409BHJP
【FI】
G01S19/07
G01S19/43
(21)【出願番号】P 2021549649
(86)(22)【出願日】2020-05-05
(86)【国際出願番号】 IB2020054235
(87)【国際公開番号】W WO2020240307
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-01
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501141253
【氏名又は名称】マゼランシステムズジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】岸本 信弘
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/083803(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/092193(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0299728(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00-19/55
G01C 21/26-21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準局に高精度単独測位を提供するための装置であって、前記基準局は、複数の全地球航法衛星システム(GNSS)衛星から複数のGNSS信号を受信するためのGNSSアンテナと、受信されたGNSS信号に基づいてGNSSデータを生成するためのGNSS受信機とを含み、前記複数のGNSS信号は、測位補強情報を有するGNSS信号を含み、前記装置は、
他の基準局の位置情報を使用せずに、GNSS観測データと、前記受信されたGNSS信号に含まれる測位補強情報から得られたGNSS測位補強データとに基づいて基準局の現在位置を計算することができる測位プロセッサと、
前記GNSSデータに基づいて、
誤差補正情報を所定のデータフォーマットで生成するように構成された信号プロセッサであって、前記誤差補正情報は前記基準局の現在位置を含む、信号プロセッサと、
前記誤差補正情報を、通信回線を介して送信するように構成された信号送信機と、
を含む、装置。
【請求項2】
前記測位補強情報は、センチメータ級の測位補強情報である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記所定のデータフォーマットは、RTCMまたはCMRの標準補正データフォーマットに準拠する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記測位プロセッサは、前記基準局の現在位置を繰り返し計算し、それにより監視する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、前記基準局の位置情報を格納する位置メモリをさらに備え、
前記測位プロセッサは、前記基準局の現在位置を繰り返し計算し、一定の時間間隔で、前記位置メモリ内の位置情報を前記現在位置で更新する、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記信号プロセッサは、前記位置メモリに記憶された位置情報を用いて前記誤差補正情報を生成するように構成されている、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記測位プロセッサは、所定の時間間隔で得られた前記現在位置の移動平均を計算し、それによって前記基準局の平均化された位置を取得し、前記平均化された位置が前記位置情報として前記メモリに記憶される、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記現在位置は、前記基準局の現在座標である、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記現在座標は地心座標である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、前記基準局のGNSS受信機の中に組み込まれている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は前記基準局内に組み込まれている、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記装置の少なくとも一部は前記基準局の外部にあり、前記GNSS受信機と通信している、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記測位プロセッサは、高精度単独測位(PPP)または高精度単独測位-リアルタイムキネマティック(PPP-RTK)を実行する、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
GNSSアンテナおよびGNSS受信機を有する基準局に高精度単独測位を提供するための方法であって、前記方法は、
複数のGNSS衛星からの複数のGNSS信号を、GNSSアンテナを介して受信することであって、前記複数のGNSS信号は、測位補強情報を有するGNSS信号を含むことと、
受信されたGNSS信号に基づいて、前記GNSS受信機によって生成されたGNSSデータを取得することであって、前記GNSSデータは、GNSS観測データと、前記受信されたGNSS信号に含まれる測位補強情報から得られたGNSS測位補強データとを含むことと、
他の基準局の位置情報を用いずに、前記GNSSデータに基づいて測位を実行して基準局の現在位置を算出することと、
前記測位の結果に基づいて、誤差補正情報を所定のデータフォーマットで生成することであって、前記誤差補正情報は前記基準局の現在位置を含むことと、
前記誤差補正情報を通信回線を介して送信することと、
含む、方法。
【請求項15】
前記測位補強情報は、センチメータ級の測位補強情報である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記所定のデータフォーマットは、RTCMまたはCMRの標準補正データフォーマットに準拠する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、前記測位を実行する前に、所望の場所を測量または測定することなく、前記基準局を前記所望の場所に設置することをさらに含み、
前記測位は、前記基準局の現在位置を監視するために設置後に反復して実行される、
請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記基準局の位置情報をメモリに格納することと、
前記基準局の現在位置を得るために、前記測位を反復して実行することと、
前記メモリ内の位置情報を前記現在位置で更新することと、
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記誤差補正情報は、前記メモリに格納された位置情報を用いて生成される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
所定の期間に得られた前記現在位置の移動行平均を計算し、それによって前記基準局の平均化された位置を得ることと、
前記平均化された位置を前記位置情報として前記メモリに格納することと、
をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記現在位置は、前記基準局の現在座標である、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記現在座標は地心座標である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記測位を実行すること、前記誤差補正情報を生成すること、および前記誤差補正情報を送信することは、前記基準局内で行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記測位を実行すること、前記誤差補正情報を生成すること、および前記誤差補正情報を送信することのうち少なくとも1つが、前記基準局と通信することにより前記基準局の外部で行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記測位は、高精度単独測位(PPP)または高精度単独測位-リアルタイムキネマティック(PPP-RTK)である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2019年5月30日に出願された米国仮特許出願番号62/854,822号の優先権を主張するものであり、その全開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
1.本発明の分野
本発明は、GNSS基準局のための高精度測位装置に関するものである。より具体的には、本発明は、RTCM、CMRなどの補正データの生成とともに、高精度単独測位-リアルタイムキネマティック(PPP-RTK)あるいは高精度単独測位(PPP)などの自律測位機能を実装することにより、GNSS基準局に高精度測位を提供する装置に関するするものである。
【0003】
2.関連技術の説明
今日利用可能な全地球航法衛星システム(GNSS)として、米国全地球測位システム(GPS)、ロシア全地球軌道航法衛星システム(GLONASS)、欧州連合のガリレオ(Galileo)、中国の地域ベイドゥー(BeiDou)衛星航法システム(BDS、旧称コンパス)、および日本の準天頂衛星システム(QZSS)などがある。
【0004】
リアルタイムキネマティック(RTK)測位やディファレンシャル測位(DGNSS)技術などの従来の相対測位技術では、測位精度を向上させるための疑似距離補正(PRC)情報などの誤差補正情報を生成するために、基準局の正確な位置(座標)を把握する必要がある。基準局で作成されたPRC情報は、無線ビーコン、インターネットプロトコルを介するRTCMネットワークトランスポート(NTRIP)、デジタルマルチメディア放送(DMB)、無線データシステム(RDS)、FMデータラジオチャネル(DARC)などの通信回線を介して提供される。例えば、アメリカ船舶電波技術委員会(RTCM)では、様々な差分補正アプリケーションのための差分補正情報のデータ構造を定義する伝送規格を提供している。
【0005】
基準局の位置が正確であればあるほど、基準局によって生成された誤差補正情報を用いた移動局(ローバー受信機)の測位精度が高くなる。すなわち、測位解(ソリューション)が絶対位置に近くなる。従って、基準局を設置する前に、その正確な位置(初期座標)を把握するために、精度の高い測量を行う必要がある。なお、「初期座標」とは、基準局設置時の座標や、ある年に行われた前回の測量時の座標を指すことがある。また、基準局の位置は地殻変動などにより変化する可能性があるため、移動局やローバー受信機が基準局のリアルタイムの位置(現在座標)に対する相対位置によって自身の絶対位置を正しく求めるためには、基準局の設置位置を継続的に測定することが必要である。
【0006】
初期座標と現在座標との差を継続的に監視して補正する技術は動的(ダイナミック)補正と呼ばれる。例えば、日本のGNSS地球観測ネットワークシステム(GONET)には、複数(現在は約1,300)の電子基準点(基準局)と単一の主管制局(制御センター)がある。各基準局では、GNSS衛星からの信号を24時間連続して観測し、基準局で取得されたデータは、RINEXと呼ばれる受信機に依存しない共通フォーマットで、生の観測データとして国土地理院の地理観測センターに送られる。複数の基準局からの観測データを地理観測センターのサーバーコンピュータで処理することにより、各基準局の位置が得られる。そして、そのようにして得られた各基準局のリアルタイムの位置は、地理観測センターによってインターネット経由で公開され、移動局やローバー(DGNSSユーザー)によって利用される。
【0007】
従来、新しい基準局を設置する場合には、新しい基準局と、正確な位置がわかっている他の既存の基準局とで、同時にリアルタイムのGNSS観測を実行し、DGNSSまたはRTK-GNSSを用いて、新しい基準局の位置(正確な位置)を測量する。一般的には、DGNSSでは数メートル、RTK-GNSSでは数センチの精度で位置が決定される。測量誤差が距離に依存するため、新しい基準局を設置する場所の近傍に既存の基準局があることが必要である。
【0008】
尚、高精度単独測位-リアルタイムキネマティック(PPP-RTK)は、リアルタイムキネマティック-高精度単独測位(RTK-PPP)とも呼ばれる。
【発明の概要】
【0009】
本発明の装置によってGNSS基準局に自律的高精度測位機能が提供され、基準局は自己完結型(すなわち、単独・自律型)の高精度測位(高精度単独測位)が可能となる。このような基準局は、誤差補正情報を生成してもよい。さらに、本発明の一実施形態によれば、基準局は、自身の位置を高精度に計算して監視する機能を有する。従来の基準局とは異なり、本発明に係る装置を備える基準局は、他の基準局を用いた相対測位技術(RTKやDGNSSなど)を採用せず、 その代わりに、衛星を用いた高精度単独測位技術、例えば、QZSSなどのGNSSを用いたPPPを用いることにより基準局自体の正確な位置を測量して決定する。
【0010】
つまり、従来の基準局は、上述されているように、最初に測量・測定された位置が地殻変動などにより時間的に変化するため、現在の正確な位置がわからないが、本発明による基準局は、GNSS信号に基づいて、正確な現在位置と更新位置とを独立して得ることができるため、設置のための最初測量や相対的測位のプロセス、更新のための設置位置の再測量や再測定が不要となる。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、複数のGNSS信号を受信するためのGNSSアンテナと、受信されたGNSS信号に基づいてGNSSデータを生成するためのGNSS受信機と、を有する基準局に対して、自律的な高精度測位(高精度単独測位)を行う装置が提供される。この装置は、測位プロセッサと、信号プロセッサと、信号送信装置とを備える。測位プロセッサは、他の基準局の位置情報を用いることなく、GNSSデータに基づいて基準局の現在位置を算出することができる。前記信号プロセッサは、前記GNSSデータに基づいて、所定のデータ形式の誤差補正情報を生成するように構成され、前記誤差補正情報は、前記基準局の現在位置を含む。前記信号送信機は、通信回線を介して前記誤差補正情報を送信するように構成されている。
【0012】
前記複数のGNSS信号は、センチメータ級の測位補強情報を有するGNSS信号を含んでもよい。GNSSデータは、GNSS観測データと、GNSS信号に含まれる測位補強情報から得られる測位補強データとを含んでもよい。所定のデータフォーマットは、RTCMまたはCMRの標準補正データフォーマットに従ったものであってもよい。
【0013】
前記測位プロセッサは、基準局の現在位置を繰り返し計算し、それによって現在位置を監視(モニター)してもよい。
【0014】
前記装置は、基準局の位置情報を格納する位置メモリをさらに含んでもよい。前記測位プロセッサは、基準局の現在の位置を繰り返し計算し、前記位置メモリ内の位置情報を一定の時間間隔により、現在位置で更新してもよい。前記信号プロセッサは、さらに、前記位置メモリに格納された位置情報を用いて、誤差補正情報を生成するように構成されてもよい。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、前記測位プロセッサは、所定の間中に得られた現在位置の移動平均を計算し、それによって基準局の平均化された位置を取得し、前記平均化された位置が前記位置情報としてメモリに記憶されるようにしてもよい。
【0016】
基準局の現在位置は、基準局の現在座標であってもよく、前記現在座標は、地心座標であってもよい。前記測位プロセッサは、高精度単独測位(PPP)または高精度単独測位-リアルタイムキネマティック(PPP-RTK)を実行するように構成されてもよい。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、前記装置は基準局のGNSS受信機に一体的に構成されてもよく、或いは、前記装置は前記GNSS受信機と通信するように基準局内に実装されてもよい。また、本発明の一実施形態によれば、前記装置の少なくとも一部を基準局の外部に設け、基準局のGNSS受信機と通信するようにしてもよい。
【0018】
本発明の一実施形態によれる基準局は、複数のGNSS信号を受信するGNSSアンテナと、GNSS受信機とを備える。GNSS受信機は、他の基準局の位置情報を使用せずに、前記受信されたGNSS信号に基づいて基準局の現在位置を計算することができる測位プロセッサと、前記受信されたGNSS信号に基づいて、基準局の現在位置を含む誤差補正情報を、所定のデータフォーマットで生成するように構成された信号プロセッサと、通信回線を介して前記誤差補正情報を送信するように構成された信号送信機とを含む。前記複数のGNSS信号は、センチメータ級の測位補強情報を有するGNSS信号を含んでもよい。 また、前記所定のデータフォーマットは、RTCM規格、CMR規格などに準拠していてもよい。
【0019】
前記測位プロセッサは、基準局の現在位置を繰り返しまたは継続的に計算することにより、現在位置を監視(モニター)してもよい。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、基準局のGNSS受信機は、基準局の位置情報を格納する位置メモリをさらに含んでもよい。前記測位プロセッサは、基準局の現在位置を繰り返しまたは継続的に計算し、メモリ内の位置情報を現在位置で更新する。前記信号プロセッサは、さらに、前記位置メモリに記憶された位置情報を用いて、誤差補正情報を生成するように構成される。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、前記測位プロセッサは、所定の期間中に得られた現在位置の移動平均を計算し、それによって基準局の平均化された位置を得ることができる。平均化された位置は、前記位置情報として位置メモリに格納される。
【0022】
前記現在位置は、基準局の現在座標であってもよく、前記現在座標は、地心座標であってもよい。
【0023】
本発明の一態様によれば、前記測位プロセッサは、高精度単独測位(PPP)または高精度単独測位-リアルタイムキネマティック(PPP-RTK)を実行してもよい。
【0024】
本発明の別の実施形態によれば、GNSSアンテナおよびGNSS受信機を有する基準局に、独立した高精度測位を提供するための方法が提供される。この方法は、(a)複数のGNSS衛星から複数のGNSS信号を前記GNSSアンテナを介して受信することと、(b)前記複数のGNSS信号から前記GNSS受信機によって生成されたGNSSデータを取得することと、(c)別の基準局の位置情報を使用せずに、前記GNSSデータに基づいて測位を実行して基準局の現在位置を計算することと、(d)前記測位の結果に基づいて、基準局の現在位置を含む誤差補正情報を、所定のデータフォーマットで生成することと、(e)通信回線を介して前記誤差補正情報を送信することと、を含む。
【0025】
前記複数のGNSS信号は、センチメータ級の測位補強情報を有するGNSS信号を含んでもよい。前記GNSSデータは、GNSS観測データと、前記GNSS信号に含まれる前記測位補強情報から得られる測位補強データとを含んでいてもよい。前記測位は、高精度単独測位(PPP)または高精度単独測位-リアルタイムキネマティック(PPP-RTK)であってもよい。前記所定のデータフォーマットは、RTCMまたはCMRの標準補正データフォーマットに準拠するものであってもよい。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、前記方法は、前記測位を実行する前に、所望の場所を測量または測定することなく、所望の場所に基準局を設置することをさらに含み、そこで、基準局の現在の位置を監視するように、設置後に前記測位が繰り返しまたは継続的に行われる。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、前記方法は、さらに、(c1)基準局の位置情報をメモリに格納することと、(c2)基準局の現在位置を得るために前記測位を繰り返し実行することと、および(c3)前記メモリ内の位置情報を現在位置で更新することとを含む。前記誤差補正情報は、前記メモリに格納された位置情報を用いて生成されてもよい。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、前記本方法は、さらに、(c4)所定の期間中に得られた現在位置の移動平均を計算し、それによって基準局の平均化された位置を取得することと、(c5)前記平均化された位置を位置情報として前記メモリに格納することと、をさらに含む。
【0029】
基準局の現在位置は、基準局の現在座標であってもよく、前記現在座標は、地心座標であってもよい。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、前記測位の実行、前記誤差補正情報の生成、および、前記誤差補正情報の送信は、基準局内で行われてもよい。あるいは、前記測位の実行、前記誤差補正情報の生成、および前記誤差補正情報の送信ののうちの少なくとも1つは、基準局と通信しながら基準局の外部で行われてもよい。
【0031】
本発明の別の実施形態にれば、基準局を正確な位置に設置する方法が提供される。 この方法により、測位プロセッサと、誤差補正信号プロセッサと、送信機とを有するGNSS受信機を含む基準局が提供される。基準局は、測量や計測を行うことなく望ましい場所に設置され、基準局のアンテナを介して、複数のGNSS衛星から複数のGNSS信号が受信される。前記GNSS受信機を用いて測位を行い、受信されたGNSS信号に基づいて、非衛星通信回線を介して送信される他の基準局の位置情報や誤差情報を使用せずに、基準局の現在位置が算出される。前記誤差補正情報は、前記測位の結果に基づいて所定のデータ形式で生成され、誤差補正情報には基準局の現在位置が含まれる。そして,前記誤差補正情報は,前記通信回線を介して送信される。
【0032】
前記複数のGNSS信号は、センチメータ級の測位補強情報を有するGNSS信号を含んでもよい。前記所定のデータフォーマットは、RTCMまたはCMRの標準補正データフォーマットに準拠していてもよい。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、前記基準局の現在位置を監視するように、ある時間間隔で前記測位が継続的または反復的に実行される。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、基準局の位置情報を記憶する位置メモリをさらに設けることができる。基準局の現在位置を取得するために前記測位が継続的または反復的に行われ、前記メモリ内の位置情報が現在位置で更新される。前記誤差補正情報は,前記位置メモリに格納された位置情報を用いて生成されてもよい。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、所定の期間中に得られた複数の現在位置に対して移動平均を計算することにり基準局の平均化された位置を取得してもよい。前記平均化された位置は、位置情報として前記メモリに格納される。
【0036】
基準局の現在位置は、基準局の現在座標であってもよく、前記現在座標は地心座標であってもよい。また、前記測位は、高精度単独測位(PPP)または高精度単独測位-リアルタイムキネマティック(PPP-RTK)であってもよい。
【0037】
本発明による前記装置または基準局によれば、常に基準局の現在座標を得ることができるので、反動的(セミダイナミック)補正または動的(ダイナミック)補正を行う必要がない。
【0038】
また、新しい基準局を短時間で高精度に設置することが可能である。また、周辺に他の基準局がない場合でも、本発明による基準局を設置し、その正確な位置を得ることができる。一度基準局を設置してしまえば、その後は位置を再測量するなどのメンテナンスが不要である。
【0039】
特に、本発明による基準局、または本発明の装置を備える基準局は、複数の作業現場で使用される可搬型の基地局としても採用することができる。このような場合には、各作業現場において毎回正確に同じ位置に基準局を設置する必要はない。基準局を、衛星測位に適する環境にある任意の位置に設置することが可能である。
【0040】
また、基準局再設置のための再測量をする必要が無く、基準局を任意の位置に設置できるので、その基準局を利用して自己のGNSS測位を行うローバーのベースラインがより短くなるような場所に基準局を設置することにより、ローバーの測位精度を向上させることが可能となる。例えば、基準局は、空が開けて障害物が無く、作業現場に近い理想的な場所に設置することができる。
【0041】
さらに、基準局は任意の理想的または適切な場所に設置することができるため、仮想基準局(VRS)を使用する必要がなく、運用コストを削減することができる。
【0042】
本発明は、添付の図面において、限定としてではなく例として示されており、同様の参照番号は同様の構成要素を指している。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の一実施形態による基準局の実施例を示す概略図である。
【
図2A】障害となる構造物がある環境でのローバーによる従来の高精度単独測位を示す模式図である。
【
図2B】障害となる構造物がある環境において、本発明の一実施形態により、基準局からの誤差補正情報を用いてローバーがRTKを行う例を示す概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態による携帯型基準局が複数の作業現場に使用される例を示す概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態による基準局を模式的に示す機能的ブロック図である。
【
図5A】本発明の実施形態による、基準局に対して独立した高精度測位を提供する装置を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図5B】本発明の一実施形態による、基準局に自律的な高精度測位(高精度単独測位)を提供する装置のさらなる例を概略的に示す機能的ブロック図である。
【
図5C】本発明の一実施形態による、基準局に自律的な高精度測位(高精度単独測位)を提供する装置のさらなる例を概略的に示す機能的ブロック図である。
【
図5D】本発明の一実施形態による、基準局に自律的な高精度測位(高精度単独測位)を提供する装置のさらなる例を概略的に示す機能的ブロック図である。
【
図6】本発明の一実施形態による、基準局に自律的な高精度測位(高精度単独測位)を提供するための方法を示すブロック図である。
【
図7】本発明の一実施形態による、測量や測定を行わずに基準局を正確な位置に設置する方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明による装置は基準局に独立した高精度測位を提供し、そのことにより基準局が自身の位置を高精度で継続的、または反復的に計算および監視するような自己完結型の高精度測位機能を備える。「自己完結型」とは、他の基準局の位置情報(既知の正確な位置)を必要とする相対測位技術(RTKやDNSSなど)を採用していないことを意味する。すなわち、本発明に係る基準局は、従来の基準局とは異なり、準天頂衛星(QZSS)などのGNSSを用いたPPPやPPP-RTKなどの衛星ベースの高精度測位技術を用いており、インターネットなどの非衛星通信回線を介して受信された他の誤差補正情報や位置情報に依存していない。このような基準局は、誤差補正情報を生成して送信することもできる。
【0045】
図1は、本発明の一実施形態に係る基準局10が実施される例を模式的に示す図である。なお、基準局10は、本発明の一実施形態による装置を備えた基準局であってもよい。また、基準局10は、定位置に設置された電子基準点であってもよい。定位置は、恒久的な場所であってもよいし、一時的な場所であってもよい。また、基準局10は、必要に応じて異なる作業現場で使用される持ち運び可能な携帯型基準局であってもよい。
【0046】
図1に示すように、基準局10は、複数のGNSS衛星20から複数のGNSS信号を受信する。複数のGNSS衛星20は、少なくとも5つのGNSS衛星であり、その中にセンチメータ級測位補強(CLA)情報を有するGNSS信号を送信するGNSS衛星を含んでいてもよい。例えば、QZSS衛星は、センチメータ級測位補強サービス(CLAS)やMADOCA(Multi-GNSS Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysis)を用い、このようなセンチメータ級の測位補強情報を有するL6信号を送信する。CLA情報を送信することができるGNSS衛星は、CLAS衛星と呼ばれることがある。例えば、QZSS衛星は、センチメータ級測位補強サービス(CLAS)やMADOCA(Multi-GNSS Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysis)を用い、このようなセンチメータ―級の測位補強情報を有するL6信号を送信する。CLA情報を送信することができるGNSS衛星は、CLAS衛星と呼ばれることがある。
【0047】
基準局10は、受信されたGNSS信号に基づいて測位を行い、基準局10の現在位置を含む誤差補正情報30を生成し、通信回線を介して誤差補正情報30を送信する。 例えば、かかる誤差補正情報30は、RTCMデータフォーマットやコンパクトメジャメントレコード(CMR)メッセージフォーマットを用いてもよい。また、基準局10は、GNSS観測データを生成して送信してもよい。
【0048】
誤差補正情報30には基準局10の正確な位置(現在座標)が含まれているので、以下に説明するように、同じくGNSS信号を受信する車両、ドローン、またはトラクターなどのローバー(移動局)40や他の測量機器(GNSSユーザ)は、誤差補正情報30とそれに含まれる基準局10の正確な位置とを用いて、自分の位置を計算して求めることができる。 すなわち、そのようなGNSSユーザ(ローバー40)は、基準局10の正確な現在位置を用いて相対GNSS測位を実行し、基準局10の正確な現在位置に対する相対的な位置を算出することにより、自分の現在位置を取得することができる。
【0049】
基準局10と各ローバー40との間の距離(ベースライン)は、GNSS衛星20からの距離に比較して無視できるので、各ローバー40は、基準局10の位置における誤差補正情報30と同じ誤差補正情報を使用できると想定されることに留意すべきである。従って、基準局10と各ローバー40との間の距離が大きくなるほど、各ローバー40で行われる相対的GNSS測位の精度は低くなる。例えば、センチメータ級の精度は約10kmの距離まで達成され得る。ローバー受信機が1つの信号周波数(例えば、L1)を使用する場合、このような相対GNSS測位は基準局10から5kmの範囲内で行うことが望ましく、また、ローバー受信機が2つの信号周波数(例えば、L1およびL2)を使用する場合には20kmの範囲内で実行することが望ましい。
【0050】
基準局10は、各ローバー40に近い場所、例えば、数十メートル程度の場所に容易に設置することができるので、各ローバー40は、インターネットや携帯電話通信システムなどの公衆通信システムの利用に必要なより複雑な受信機を備える必要が無く、簡単な無線またはワイヤレスの受信機を使用して、基準局10からの誤差補正情報30を受信することが可能となる。従って、ローバー40の受信機のコストを低減しつつ、ローバー40のセンチメータ級の高精度測位を実現することができる。
【0051】
基準局10は、GNSS衛星20から受信されたGNSS信号のみに基づいて、自身の正確な現在位置(設置位置)を取得することができるので、設置前に設置位置の測量作業を行うか、一定距離内にある既存の基準局を用いて初期RTK測位を行うか、または設置後に現在位置を更新するために設置位置を再測量する必要がない。RTK測位既存の基準局の誤差補正情報を受信する(既存の基準局の現在位置を取得する)ためにはインターネット接続などが必要である。従って、基準局10は、多くの手続き上や位置的な要件、制限、および負担を解消することができる。
【0052】
また、基準局10は、GNSS衛星からの信号経路を遮る樹木や高い建物などの障害物を避け、GNSS信号を受信するために理想的な設置場所を選択することが可能である。また、センチメータ級測位補強(CLA)情報を使用するGNSS衛星の数は限られている場合があるので(例えば、CLASの場合は11個)、高精度単独測位を行うためには、CLA情報を含むGNSS信号が良好に受信されるような場所に基準局10を設置することが望ましく、またそうすることが可能である。すなわち、視野内にある全てのGNSS衛星のうち、CLAS用に指定されたGNSS衛星を良好に目視できる位置に基準局10を設置することができる。一方、ローバー40は、基準局10から送信される誤差補正情報30を利用しながら、視野内の全てのGNSS衛星の中から、より多くの利用可能なGNSS衛星(GPS等を含む)を用いて、マルチGNSS-RTK測位を行うことができる。
【0053】
例えば、従来、農業や建設現場などで自動運転を行うために、各ローバー(トラクターやブルドーザーなどの建設機械など)が高精度単独測位を行うことにより正確な(センチメータ級の)位置を得ることは可能かもしれない。しかし、
図2Aに示すように、高木や建物などの周囲の構造物により、CLA情報を利用するGNSS衛星(例えば、GNSS衛星20a)はの視界が遮られ、ローバーに必要なGNSS信号をフィックスすることが困難になる場合がある。そこで、本発明による基準局10を、
図2Bに示すように、農業・建設現場の近傍の空が開けた場所(空き地)に設置することで、ローバーは、基準局10から送信される誤差補正情報(基準局の正確な現在位置を含む)を用いることにより、単独測位からRTK測位に切り替えることができる。このような場合、ローバーは、可視GNSS衛星20からの利用可能なより多くのGNSS信号を利用して相対測位を行うことができ、それにより、センチメータ級測位をより安定して実現することができる。
【0054】
基準局10は、空き地などの望ましい場所に設置され得るので、CLA用に指定されたGNSS衛星20aだけでなく、視野内の他のGNSS衛星20からのGNSS信号も受信することができる。基準局10は、視野内GNSS衛星20(CLA用に指定のGNSS衛星20aを含む)の誤差補正情報を生成し、ローバーに送信する。不利な場所にいるローバーは、基準局10から見えるGNSS衛星の全てを見ることができないかもしれないが、その場所で利用可能なGNSS衛星を利用して基準局10に関して満足のいくRTK(相対測位)を行うことができる。従って、本発明の基準局10によれば、基準局10における高精度単独測位(またはPPP-RTK)と、基準局10から送信される誤差補正情報を利用するローバーにおけるRTKとを組み合わせることで、様々な環境に高度に適応させ、また、環境の変化にも対応させて、ローバーにおけるセンチメータ―級測位を実現することができる。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、基準局10は、一時的または携帯型の基準局として使用することができる。例えば、
図3に示すように、基準局10をサイトA(例えば、農地や工事現場)に対して適切な場所に設置することにより、サイトAのローバ40aは基準局10からの誤差補正情報と基準局10の正確な現在位置Aとを用いてセンチメータ級測位(RTK)を行うことができる。そして、サイトAでの作業が完了するか、あるいはサイトAで基準局10が使用されていない間、基準局10をサイトB用の位置Bに移動させることにより、サイトBのローバー40bが基準局10とその誤差補正情報を利用してセンチメータ級測位を行うことができる。その他のサイトについても同様である。
【0056】
図4は、本発明の一実施形態に係る基準局10の機能的ブロック図である。
図4に示すように、基準局10は、GNSSアンテナ12と、GNSS受信機14とを含む。この例では、自律的な高精度測位(高精度単独測位)を行う装置を基準局10のGNSS受信機14として実装することにより本発明による基準局が実現される。GNSSアンテナ12は、QZSS、GPS、および/またはGLONASSなどの複数のGNSS衛星20から、複数のGNSS信号22を受信するように構成されている。少なくとも5つの
GNSS信号22がGNSSアンテナ12によって受信され、GNSS受信機14によって取得され追跡されることが想定されている。本発明の一実施形態は、CPU、メモリ(RAM、ROM)などを含むコンピュータを、例示された機能的ブロックを有するように構成することにより実現できる。これらの機能的ブロックは、その機能を実行するソフトウェア/コンピュータプログラムによって実現することができるが、その一部または全部をハードウェアによって実施してもよい。
【0057】
図4に示すように、GNSS受信機14は、他の基準局の位置情報を用いることなく、受信されたGNSS信号に基づいて基準局10の現在位置を算出することができる測位プロセッサ50を含む。例えば、測位プロセッサ50は、高精度単独測位(PPP)または高精度単独測位-リアルタイムキネマティック(PPP-RTK)を実行する。本発明の一実施形態によれば、複数のGNSS信号22は、測位プロセッサ50が基準局10の現在位置をセンチメータ級の精度で取得できるような、センチメータ級測位補強(CLA)情報を有するGNSS信号を含む。測位プロセッサ50は、基準局の現在の位置を継続的または反復して計算し、監視してもよい。測位プロセッサ50は、当業者によく理解されるように、受信されたGNSS信号を処理するためのフロントエンドおよび他の構成要素(図示せず)を含むことに留意すべきである。
【0058】
図4に示すように、GNSS受信機14は、測位プロセッサによって処理された受信GNSS信号に基づいて、所定のデータフォーマットで、基準局の現在位置を含む誤差補正情報を生成するように構成された信号プロセッサ52をさらに含む。例えば、所定のフォーマットは、RTCMまたはCMRの標準補正データフォーマットであってもよい。
【0059】
測位プロセッサ50および/または信号プロセッサ52は、さらに、従来のGNSS観測データを生成してもよい。例えば、測位プロセッサ50は、受信されたGNSS信号からGNSSデータを生成するGNSSデータプロセッサ(図示せず)を含んでもよく、ここで、GNSSデータは、GNSS観測データおよびCLASデータを含む。GNSS観測データは、周波数範囲L1および/またはL2および/またはL5のGNSS信号から生成されてもよく、一方、CLASデータは、周波数範囲L6のGNSS信号から生成されてもよい。 測位プロセッサ50は、GNSSデータを使用して基準局の現在位置を取得し、信号プロセッサ52は、GNSSデータおよび現在位置に基づいて、誤差補正情報を生成する。
【0060】
また、GNSS受信機14は、無線ビーコン、インターネットプロトコルを介するRTCMネットワークトランスポート(NTRIP)、デジタルマルチメディア放送(DMB)、無線データシステム(RDS)、FMデータラジオチャネル(DARC)などの通信回線を介して、誤差補正情報を送信するように構成された信号送信機54を含む。 なお、信号送信機54は、2つ以上の通信回線を備えていてもよい。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、GNSS受信機14は、基準局10の位置情報を記憶するメモリ56をさらに含んでもよい。メモリ56は、測位プロセッサ50の一部または信号プロセッサ52の一部として構成されてもよい。また、メモリ56は、測位プロセッサ50および信号プロセッサ52の両方からアクセス可能である限り、測位プロセッサ50および信号プロセッサ52とは別に設けられてもよい。測位プロセッサ50は、基準局10の位置を継続的または反復的に計算することにより基準局10の現在位置を取得し、メモリ42内の位置情報を現在位置に更新する。なお、この現在位置は基準局10の現在座標であってもよく、現在座標は基準局10の地心座標であってもよい。信号プロセッサ52は、そのようにしてメモリ56に記憶された位置情報を用いて誤差補正情報を生成するので、生成された誤差補正情報は常に基準局10の更新された現在位置を含むようになる。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、メモリ56は、複数の更新が実行される一定期間、基準局10の更新された位置を複数個記憶してもよい。すなわち、メモリ56は、更新された複数の現在位置を保持し、測位プロセッサ50は、平均化された現在位置(平均化された現在座標)を得るように、複数の更新現在位置の移動平均を計算してもよい。この平均化された位置は、信号プロセッサ52が誤差補正情報を生成する際に使用する基準局10の位置情報としてメモリ56に格納される。また、移動平均であるため、新たな現在位置(座標)が得られるたびに、平均化された位置も更新される。なお、移動平均の期間は、例えば、10分以上、あるいはそれ以下であってもよい。
【0063】
図5Aは、基準局210に対して自律的な高精度測位(高精度単独測位)を提供する、本発明の一実施形態による装置200aを模式的に示す機能的ブロック図である。同一あるいは実質的に同一の機能および/または構造を有する構成要素は、説明の中で同じ参照数字によって示されている。
図5Aに示すように、基準局210は、GNSSアンテナ12と、GNSS受信機214とを含む。GNSSアンテナ12は、QZSS、GPS、および/またはGLONASSなどの複数のGNSS衛星20から、複数のGNSS信号22を受信するように構成されている。少なくとも5つの
GNSS信号22は、GNSSアンテナ12によって受信され、GNSS受信機214によって取得され、追跡されることが想定されている。本発明の実施形態は、CPU、メモリ(RAM、ROM)などを含むコンピュータを、例示された機能的ブロックを有するように構成することにより実現できる。これらの機能的ブロックは、その機能を実行するソフトウェア/コンピュータプログラムによって実現することができるが、その一部または全部をハードウェアによって実施してもよい。
【0064】
図5Aに示すように、GNSS受信機214は、受信されたGNSS信号に基づいてGNSSを生成するためのGNSSデータプロセッサ60を含む。GNSSデータは、GNSS信号から生成されたデータであり、GNSS観測データを含む。GNSSデータプロセッサ60は、当業者によく理解されるように、受信されたGNSS信号を処理してGNSSデータを生成するフロントエンドおよび他の構成要素(図示せず)を含み、受信されたGNSS信号の捕捉および追跡を行ってGNSSデータを生成する。GNSS観測データは、例えば、サテライトアンテナ(送信時刻)から受信機(受信アンテナ12)まで伝搬するGNSS信号の移動時間ΔTを含んでもよい。また、複数のGNSS信号22は、センチメータ級の測位補強情報(CLA)を有するGNSS信号を含んでおり、GNSSデータプロセッサ60から生成されるGNSSデータは、そのGNSS信号に含まれる測位補強情報から得られる測位補強データをさらに含んでいてもよい。
【0065】
例えば、GNSS観測データは、周波数範囲L1および/またはL2および/またはL5のGNSS信号から生成されてもよく、センチメータ級の測位補強データは、周波数範囲L6のGNSS信号から生成されてもよい。受信されたGNSS信号は、GNSSデータプロセッサ60によって一緒に処理され、GNSS観測データと補強データとを含むGNSSデータが生成されてもよい。あるいは、受信されたGNSS信号がGNSS受信部214によって周波数範囲に応じて分割され、GNSSデータプロセッサ60がL1/L2/L5信号とL6信号と別々に処理し、GNSS観測データと測位補強データとを別々の処理チャネルを介してまたは専用のデータプロセッサを使用して生成されるように構成されてもよい。
【0066】
図5Aに示すように、本実施例では、装置200aが基準局210内に設けられている。 装置
200aは、別の基準局の位置情報を用いることなく、GNSS受信機214から得られたGNSSデータに基づいて基準局210の現在位置を計算する測位プロセッサ250を含む。例えば、測位プロセッサ250は、高精度単独測位(PPP)または高精度単独測位-リアルタイムキネマティック(PPP-RTK)を実行する。複数のGNSS信号22には、上述されているように、センチメータ級の測位補強情報を有するGNSS信号が含まれているので、測位プロセッサ250は、GNSSデータにおけるGNSS観測データと共に測位補強データを用いて、基準局210の現在位置をセンチメータ級の精度で求める。なお、測位プロセッサ250は、基準局の現在位置を継続的または反復して計算して監視してもよい。このような計算は、例えば、秒、分、10分から数時間のオーダーで、一定の時間間隔で実行されてもよい。
【0067】
図5Aに示すように、装置200aは、測位プロセッサ250によって処理されたGNSSデータに基づいて、基準局210の現在位置を含む誤差補正情報を所定のデータフォーマットで生成するように構成された信号プロセッサ52をさらに含む。例えば、所定のフォーマットは、RTCMまたはCMRの標準補正データフォーマットであってもよい。
【0068】
また、装置200aは、無線ビーコン、インターネットプロトコルを介するRTCMネットワークトランスポート(NTRIP)、デジタルマルチメディア放送(DMB)、無線データシステム(RDS)、FMデータラジオチャネル(DARC)などの通信回線を介して、誤差補正情報を送信するように構成された信号送信機54を含む。なお、信号送信機54は、2つ以上の通信回線を備えていてもよい。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、装置200aは、基準局210の位置情報を記憶するメモリ56をさらに含んでもよい。メモリ56は、測位プロセッサ250の一部または信号プロセッサ52の一部として構成されてもよい。または、メモリ56が測位プロセッサ250および信号プロセッサ52の両方からアクセス可能である限り、測位プロセッサ250および信号プロセッサ52とは別に設けられてもよい。測位プロセッサ250は、基準局210の現在位置を得るように、基準局210の位置を継続的または反復して計算し、メモリ42内の位置情報を現在位置で更新する。なお、現在位置は、基準局210の現在座標であってもよく、現在座標は、基準局210の地心座標であってもよい。信号プロセッサ52がメモリ56に記憶された位置情報を用いて誤差補正情報を生成するので、誤差補正情報は常に基準局210の更新された現在位置を含むようになる。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、メモリ56は、複数の更新が行われる一定期間、基準局210の更新された位置を複数個記憶してもよい。すなわち、メモリ56は、更新された複数の現在位置を保持し、測位プロセッサ250は、平均化された位置(平均化された現在座標)を得るように、複数の更新現在位置の移動平均を計算してもよい。この平均化された位置は、信号プロセッサ52が誤差補正情報を生成する際に使用する基準局210の位置情報としてメモリ56に記憶される。また、移動平均であるため、新たな現在位置(座標)が得られるたびに、平均化された位置も更新される。なお、移動平均の期間は、例えば、10分以上、あるいはそれ以下であってもよい。
【0071】
図5Bは、基準局210に対して自律的な高精度測位(高精度単独測位)を提供する、本発明の一実施形態による装置200bを模式的に示す機能的ブロック図である。同一あるいは実質的に同一の機能および/または構造を有する構成要素は、説明の中で同じ参照数字によって示されている。
図5Bに示すように、基準局210は、複数のGNSS信号を受信するGNSSアンテナ12と、受信されたGNSS信号に基づいて、GNSS観測データを含むGNSSデータを生成するGNSSデータプロセッサ60を含むGNSS受信機214と、を備える。
【0072】
この例では、
図5Bに示すように、装置200bは基準局210の外部に設けられてGNSS受信機214と通信しており、GNSSデータプロセッサ60からのGNSSデータが測位プロセッサ250によって受信される。装置200bは、基準局210に物理的に取り付けられていてもよいし、短距離通信回線を介して基準局210の近傍に設けられていてもよい。あるいは、利用可能な通信回線を介して基準局と通信していてもよい。
【0073】
図5Cは、基準局210に対して自律的な高精度測位(高精度単独測位)を提供する、本発明の一実施形態による装置200cを模式的に示す機能的ブロック図である。同一あるいは実質的に同一の機能および/または構造を有する構成要素は、説明の中で同じ参照数字によって示されている。
図5Cに示すように、基準局210は、複数のGNSS信号を受信するGNSSアンテナ12と、受信されたGNSS信号に基づいてGNSS観測データを含むGNSSデータを生成するGNSSデータプロセッサ60を含むGNSS受信機214と、を含む。
【0074】
図5Cに示すように、装置200cの一部は基準局210の外部にあり、GNSS受信機214と通信している。この例では、測位プロセッサ250が外部に設けられており、信号プロセッサ52および信号送信装置54は基準局210に設置されているか、あるいは内部に設けられている。また、メモリ52は、
図5Cに示すように、信号プロセッサ52とは別に基準局210に設けられていてもよいし、信号プロセッサ52に統合されていてもよい。 あるいは、メモリ
56は、測位プロセッサ250に備えられるか、あるいは統合されていてもよい。
【0075】
図5Dは、基準局210に対して自律的な高精度測位(高精度単独測位)を提供する、本発明の一実施形態による装置200dを模式的に示す機能的ブロック図である。同一あるいは実質的に同一の機能および/または構造を有する構成要素は、説明の中で同じ参照数字によって示されている。
図5Dに示すように、基準局210は、複数のGNSS信号を受信するGNSSアンテナ12と、受信されたGNSS信号に基づいてGNSS観測データを含むGNSSデータを生成するためのGNSSデータプロセッサ60を含むGNSS受信機214と、を含む。
【0076】
図5Dに示すように、装置200dの一部は、基準局210の外部にあり、GNSS受信機214と通信している。この例では、測位プロセッサ250、メモリ56、および信号プロセッサ52が外部に設けられており、信号送信機54は基準局210に設置されているか、または組み込まれている。 他の例と同様に、メモリ56は、
図5Dに示すように、測位プロセッサ250および信号プロセッサ52とは別に設けられてもよいし、測位プロセッサ250および信号プロセッサ52のいずれかに組み込まれていてもよい。あるいは、メモリ
56は、測位プロセッサ250と一緒に設けられてもよいし、測位プロセッサ250内に統合されてもよい。
【0077】
図6は、本発明の一実施形態による、基準局の自律的な高精度測位(高精度単独測位)を行う方法100を示す。 基準局は、上述の実施例における基準局210であってもよい。自律的な高精度測位を行うことにより、基準局210は、測量作業を行うことなく、正確な位置に容易に設置することができる。
図6に示すように、GNSSアンテナとGNSS受信機とを含む基準局は、測位を行う前に、その場所を測量または測定することなく、所望の場所に設置される(102)。設置後、 基準局のGNSSアンテナを介して、複数のGNSS衛星から複数のGNSS信号が受信される(104)。なお、複数のGNSS信号は、センチメータ級の測位補強情報を有するGNSS信号を含んでもよい。GNSS受信機によって複数のGNSS信号からGNSS観測データを含むGNSSデータが生成され(106)、GNSS観測データに基づいて測位が行われ、基準局の現在位置が算出される(108)。測位は、高精度単独測位(PPP)または高精度単独測位-リアルタイムキネマティック(PPP-RTK)であってもよい。測位108は、他の基準局の位置情報や誤差情報を用いることなく、得られたGNSSデータに基づいて行われる。
【0078】
測位の結果に基づいて、所定のデータフォーマットで誤差補正情報が生成される(110)。 誤差補正情報には、基準局の現在位置が含まれる。なお、所定のデータフォーマットは、RTCMやCMRの標準補正データフォーマットに従ったものであってもよい。そして、誤差補正情報は、通信回線を介して送信される(112)。また、複数のGNSS信号22がセンチメータ級の測位補強情報を有するGNSS信号を含むため、生成されたGNSSデータは、GNSS観測データと共に、測位補強情報から得られる測位補強データを含む。従って、測位処理(108)は、測位補強データを用いることにより、基準局210の現在位置をセンチメータ級の精度で取得する。基準局の現在位置を有する誤差補正情報を受信して使用することにより、各ローバーはセンチメータ級の測位を行うことができる。
【0079】
本発明の一実施形態によれば、基準局の位置情報(計算された座標)が位置メモリに格納される。基準局の現在位置は、測位処理をその処理時間および/または特定の実施形態に応じた時間間隔で反復あるいは継続的に実行することにより取得してもよい。そのような時間間隔は、秒単位、分単位、10分から15分、或いは数時間単位でもよい。位置メモリ内の位置情報は取得された現在位置で更新され、位置メモリに格納され、そのように更新された位置情報を用いて誤差補正情報が生成される。
【0080】
図7は、本発明の一実施形態による、基準局を設置するための方法120を示す。基準局は、上述されている基準局10であってもよい。基準局は、測量作業を行うことなく、正確な位置に容易に設置することができる。
図7に示すように、測位プロセッサ、誤差補正信号プロセッサ、および送信部を有するGNSS受信機を含む基準局が提供される(122)。 基準局は、その場所を測量または測定することなく、所望の場所に設置され(124)、基準局のアンテナを介して、複数のGNSS衛星から複数のGNSS信号が受信される(126)。複数のGNSS信号は、センチメータ級の測位補強情報を有するGNSS信号を含んでいてもよい。GNSS受信機を用いて測位を行い、基準局の現在位置を算出する(128)。測位は、高精度単独測位(PPP)または高精度単独測位-リアルタイムキネマティック(PPP-RTK)であってもよい。測位処理128は、非衛星通信回線を介して送信される別の基準局の位置情報や誤差情報を用いることなく、受信されたGNSS信号に基づいて実行される。
【0081】
測位の結果に基づいて、所定のデータフォーマットで誤差補正情報が生成される(130)。 誤差補正情報は、基準局の現在位置を含む。所定のデータフォーマットは、RTCMまたはCMRの標準補正データフォーマットに従ったものであってもよい。そして、通信回線を介して誤差補正情報が送信され(132)、基準局の現在位置を有する誤差補正情報を用いることにより、各ローバーはセンチメータ級の測位を行うことができる。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、基準局の位置情報(計算された座標)が位置メモリに格納される。基準局の現在位置は、測位処理をその処理時間および/または特定の実施形態に応じた時間間隔で反復あるいは継続的に実行することにより取得してもよい。そのような時間間隔は、秒単位、分単位、10分から15分、或いは数時間単位でもよい。位置メモリ内の位置情報は取得された現在位置で更新され、位置メモリに格納され、そのように更新された位置情報を用いて誤差補正情報が生成される。
【0083】
本発明の一実施形態によれば、位置メモリは、所定の期間に計算された複数の座標を保持するように構成されてもよい。すなわち、所定の期間に得られた現在位置の複数の更新情報が位置メモリに保持される。本実施形態では、測位処理108において、所定の期間に得られた現在位置(位置メモリに保持された最近の更新情報)について、移動平均を算出することにより、基準局の平均化された位置を生成してもよい。例えば、位置メモリには、所定の期間に対応する所定数の更新情報が保持され、新たな更新情報が位置メモリに追加されると、最も古い更新情報が破棄されるようにしてもよい。このようにして、所定数の最新の更新情報から基準局の平均化された位置が生成される。また、平均化された位置は、誤差補正情報を生成する際に使用される位置情報として、メモリに格納される。
【0084】
上述されているように、現在位置は基準局の現在座標であってもよく、現在座標は地心座標であってもよい。
【0085】
本発明の一実施形態によれば、測位プロセッサ50および/または信号プロセッサ52は、基準局10の現在位置を含むGNSS観測データを生成し、信号送信機54を介して1つ以上の制御センターにGNSS観測データを送信してもよい。例えば、基準局10が観測/調査ネットワークの一部としての電子基準点として実装される場合、測位プロセッサ50および/または信号プロセッサ52は、そのようなネットワークに適するデータ形式でGNSS観測データを提供してもよい。
【0086】
本発明による基準局によれば、常に基準局の現在座標を得ることが可能であり、従って、半動的(セミダイナミック)補正または動的(ダイナミック)補正を行うことは不要である。
【0087】
また、新しい基準局を短時間で高精度に設置することが可能である。周辺に他の基準局がない場合でも、本発明による基準局を設置し、その正確な位置を得ることができる。また、一旦基準局を設置してしまえば、地殻変動や地殻変動によって設置位置が変わったとしても、その後に再測量するなどのメンテナンスは不要である。
【0088】
特に、本発明による基準局を、例えば、複数の作業現場で使用される可搬型の基地局として採用する場合には、各作業現場において、毎回、全く同じ位置に基準局を設置する必要はない。基準局を、衛星測位に適する環境にある任意の位置に設置することが可能である。
【0089】
本発明の基準局は、基準局設置のための再測量が不要であり、任意の適切な位置に設置することができる。従って、基準局を利用するローバーがより短いベースラインを得ることができるような位置に基準局を設置することで、ローバーが行うGNSS測位のの測位精度を向上させることができる。例えば、基準局は、空が開けていて、作業現場に近い理想的な場所に設置することができる。
【0090】
また、本発明を用いれば、PPP/PPP-RTKサービスが利用可能な任意の場所に基地局(基準局)を迅速に設置することができ、例えば、基地局を中心とする半径~5kmの範囲において、安価なL1RTKローバーを複数台使用することができる。
【0091】
さらに、基準局は任意の理想的または適切な場所に設置することができるので、仮想基準局(VRS)を使用する必要がなく、運用コストを削減することができる。
【0092】
本発明をいくつかの好ましい実施形態によって説明してきたが、代替物、置換物、修正物、および様々な代用物があり、それらは本発明の範囲内である。また、本発明の方法および装置を実施する多くの代替な方法があることにも留意すべきである。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の主旨および範囲内に含まれるものとして、そのようなすべての代替形態、置換形態、および様々な代替均等物を含むと解釈されることが意図されている。