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特許7468937印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタ
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/203 20060101AFI20240409BHJP
   H01P 1/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01P1/203
H01P1/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022574418
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 CN2020095485
(87)【国際公開番号】W WO2021248392
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】202010510906.3
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518371489
【氏名又は名称】南京郵電大学
【氏名又は名称原語表記】NANJING UNIVERSITY OF POSTS AND TELECOMMUNICATIONS
【住所又は居所原語表記】No.66 Xin Mofan Road, Gulou Nanjing, Jiangsu 210003 China
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】許 鋒
(72)【発明者】
【氏名】金 俊
(72)【発明者】
【氏名】陳 洋
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111092281(CN,A)
【文献】特開平09-321502(JP,A)
【文献】特表2019-517165(JP,A)
【文献】Sharifi Sorkherizi, Milad,Microwave Filters Based on New Design Concepts in Several Technologies with Emphasis on the Printed Ridge Gap Waveguide Technology,PhD thesis, Concordia University,2016年,p. 27-57
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/203
H01P 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタであって、
下層の誘電体基板の上面に設置されたマイクロストリップフィルタ構造、上部の金属カバープレート、及び、中間層に位置し、空気ギャップを安定化するための給電誘電体層を含み、
前記マイクロストリップフィルタ構造は、入力ポート、出力ポート、2つの半波長結合伝送路共振器及び2つのT型共振器を含み、
前記入力ポートは、結合スロットを介して第1次半波長結合伝送路共振器と結合し、
前記出力ポートは、結合スロットを介して第2次半波長結合伝送路共振器と結合し、
2つのT型共振器は、入力ポート、出力ポート及び2つの半波長結合伝送路共振器が位置する直線の両側に位置し、それぞれ結合スロットを介して背中合わせに第1次、第2次半波長結合伝送路共振器と結合することを特徴とする印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタ。
【請求項2】
前記入力ポート、出力ポート、2つの半波長結合伝送路共振器及び2つのT型共振器は、いずれも、周期的に配列されて接地板に接続された金属ビアが接続され、
前記入力ポート、出力ポート、2つの半波長結合伝送路共振器及び2つのT型共振器の4周には、人工磁気導体ユニットが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタ。
【請求項3】
前記入力ポート、出力ポートは、いずれも、幅の異なる2部分の伝送路を含み、
2つの部分の伝送路の幅は、それぞれ、誘電体プレートと空気誘電体に基づいて計算して決定されることを特徴とする請求項1に記載の印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタ。
【請求項4】
前記入力ポート、出力ポート、2つの半波長結合伝送路共振器及び2つのT型共振器の4周の人工磁気導体ユニットは、誘電体基板上に周期的に配列された金属パッチ、金属ビア及び金属接地板からなることを特徴とする請求項2に記載の印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタ。
【請求項5】
前記給電誘電体層の裏面には、入力ポート、出力ポートと位置が重なる給電マイクロストリップ線が印刷されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタ。
【請求項6】
前記給電誘電体層の縁は、入力ポート、出力ポートの2つの異なる幅の伝送路の境界にそれぞれ整列されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタ。
【請求項7】
水平方向に3層の誘電体を延伸してパンチし、PPネジを用いてフィルタを固定し、3層の誘電体は、垂直方向に隙間なく密着していることを特徴とする請求項1に記載の印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタに関し、ミリ波伝送技術分野に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波システムでは、フィルタの設計において、マイクロストリップ構造形態が広く採用されている。マイクロストリップ線は、構造が簡単であり、加工しやすく、コストが安いものの、動作周波数がミリ波周波数帯に上昇すると、損失が大きく、電力容量が低いという弊害を露呈した。これは、放射波、漏れ波、表面波を含むマイクロストリップ線の迷放射に由来し、周波数が高いほど問題が顕著になる。同様に、矩形導波は、構造が簡単であり、機械的強度が大きく、損失が低く、電力容量が大きいという利点があるものの、ミリ波周波数帯で動作する場合にも、サイズが小さすぎ、加工難易度が高く、組み立てが難しいなどの問題が避けられない。金属パッケージの使用は、放射線漏れを効果的に除去することができるが、追加の金属パッケージは、フィルタの体積を大幅に増加させる。そのため、ミリ波伝送通信の高レート、低損失の要件を満たすために、新しい平面横電磁伝送導波路が必要とされている。
【0003】
近年、新型電磁材料の発展に伴い、人工磁気導体構造の研究及び応用は、現在のマイクロ波分野の注目点の一つとなっている。人工磁気導体構造は、通常、誘電体基板上に周期的に配列された金属パッチ、金属ビア及び金属接地板からなり、その電磁バンドギャップ特性は、マイクロストリップ放射損失を低減でき、マイクロ波集積回路、マイクロ波印刷アンテナ、マイクロ波高エネルギー加速器、無線周波受動デバイスなどの全体的な性能を明らかに向上させることができる。一方、印刷リッジギャップ導波路は、人工磁気導体に基づく低分散信号伝送導波路として、空気ギャップ中の電磁波を金属リッジ線に沿って伝播させることができ、また準TEMモードを伝播させ、放射漏れを抑制することができ、ミリ波通信伝送に広く応用される見通しがある。
【0004】
ミリ波周波数帯の従来のマイクロストリップ回路の高損失の問題を解決するために、印刷リッジギャップ導波路に基づくミリ波無線周波受動デバイスの多くの研究が行われている。印刷リッジギャップ導波路は、人工磁気導体構造とマイクロストリップフィルタ構造を1層の誘電体に集積することによって、人工磁気導体と理想電気導体が境界で発生する仮想磁壁を利用して、電磁波が他の方向で遮断状態にあり、マイクロストリップ伝送線共振器の上の空気ギャップに沿ってしか伝播できない。伝統的な損失性誘電体に対して、空気ギャップで伝播することは、誘電体損失を大幅に低減し、これにより、伝送特性が向上する。これにより、ミリ波周波数帯における従来のマイクロストリップフィルタの全体的な性能向上を実現するための実行可能な考え方が提供される。従来のマイクロストリップ印刷技術に比べて、印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタは、損失がより低く、伝送性能がより良く、一体性が強く、他のマイクロ波及びミリ波回路とのシステム集積が容易であり、開発が急がれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術に存在する上述の問題に対して、本発明の目的は、印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタを提案し、ミリ波伝送通信の高レート、低損失の要求を満たし、加工しやすく、性能が安定し、システム集積しやすい利点がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した発明の目的を達成するために、本発明は、以下の技術手段を採用する。
【0007】
印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタであって、
下層の誘電体基板の上面に設置されたマイクロストリップフィルタ構造、上部の金属カバープレート、及び中間層に位置し、空気ギャップを安定化するための給電誘電体層を含み、
前記マイクロストリップフィルタ構造は、入力ポート、出力ポート、2つの半波長結合伝送路共振器及び2つのT型共振器を含み、
前記入力ポートは、結合スロットを介して第1次半波長伝送路共振器と結合し、
前記出力ポートは、結合スロットを介して第2次半波長伝送路共振器と結合し、
2つのT型共振器は、入力ポート、出力ポート及び2つの半波長結合伝送路共振器が位置する直線の両側に位置し、それぞれ結合スロットを介して背中合わせに第1次、第2次半波長伝送路共振器と結合する。
【0008】
好ましくは、前記入力ポート、出力ポート、2つの半波長結合伝送路共振器及び2つのT型共振器は、いずれも、周期的に配列されて接地板に接続された金属ビアが接続され、前記入力ポート、出力ポート、2つの半波長結合伝送路共振器及び2つのT型共振器の4周には、人工磁気導体ユニットが配置されている。
【0009】
好ましくは、前記入力ポート、出力ポートは、いずれも、幅の異なる2部分の伝送路を含み、2つの部分の伝送路の幅は、それぞれ、誘電体プレートと空気誘電体に基づいて計算して決定される。
【0010】
好ましくは、前記入力ポート、出力ポート、2つの半波長結合伝送路共振器及び2つのT型共振器の4周の人工磁気導体ユニットは、誘電体基板上に周期的に配列された金属パッチ、金属ビア及び金属接地板からなる。
【0011】
好ましくは、前記給電誘電体層の裏面には、入力ポート、出力ポートと位置が重なる給電マイクロストリップ線が印刷されている。
【0012】
好ましくは、前記給電誘電体層の縁は、入力ポート、出力ポートの2つの異なる幅の伝送路の境界にそれぞれ整列されている。
【0013】
好ましくは、水平方向に3層の誘電体を延伸してパンチし、PPネジを用いてフィルタを固定し、3層の誘電体は、垂直方向に隙間なく密着している。
【発明の効果】
【0014】
従来技術と比較して、本発明は、以下の技術効果を有する。
1、本発明は、設計構造が簡単であり、加工しやすく、コストが低く、余分なパッケージを節約する。同時に、印刷リッジギャップ導波路の導入により、マイクロストリップ結合共振器バンドパスフィルタ自体がよりコンパクトになり、明らかな相互結合がない場合には、互いに密接に製造することができる。
2、本発明が導入した新しい平面横電磁伝送導波路は、空気ギャップ中で金属リッジ線に沿って電磁波を伝播させることができ、それによって誘電体損失を低減する。金属リッジ線の両側の人工磁気導体構造により、マイクロストリップ線からの放射漏れを抑制し、挿入損失を低減し、Ka周波数帯バンドパスフィルタの伝送性能を更に向上させることができる。
3、本発明におけるバンドパスフィルタは、2つのT型共振器の長手方向の長さを調整することによって、通過帯域外の2つの伝送零点を獲得して調整することができ、より良い周波数選択を実現し、しかもその帯域内挿損、相対帯域幅、帯域内平坦度及び帯域外抑制などの性能は、すべて伝統的なKa周波数帯マイクロストリップバンドパスフィルタより優れている。
4、本発明は、同時に加工測定方案を提供する。水平方向に3層の誘電体を延伸してパンチし、PPネジを用いてフィルタを固定し、テスト結果とシミュレーション結果はほぼ一致する。このフィルタは、構造が簡単であり、サイズが小さく、加工が容易であり、性能が安定であり、一体性が強く、他のマイクロ波及びミリ波回路とのシステム集積が容易であり、将来のミリ波通信伝送応用において広い応用がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例における電磁フィルタ構造の平面図である。
図2】本発明の実施例における給電誘電体層の三次元構造図である。
図3】本発明の実施例における人工磁性導体ユニット構造の三次元構造である。
図4】本発明の実施例の3次元構造図である。
図5】本発明の実施例の3次元構造断面図である。
図6】本発明の実施例におけるネジ穴付き電磁フィルタ構造の平面図である。
図7】本発明の実施例におけるネジ穴付き給電誘電体層の平面図である。
図8】本発明の実施例におけるネジ穴付き金属カバープレートの平面図である。
図9】本発明の実施例の加工製造方案の3次元構造図である。
図10】本発明の実施例の加工製造方案の3次元構造断面図である。
図11】本発明の実施例の三層構造の実物図である。
図12】本発明の実施例の実物組立図である。
図13】本発明の実施例における周期的人工磁性導体の電磁波阻止帯分散図である。
図14】本発明の実施例のSパラメータシミュレーション波形図である。
図15】本発明の実施例のSパラメータ実測とシミュレーションの比較波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の目的、利点及び特徴は、以下の好ましい実施例の非限定的な説明によって図示及び説明される。これらの実施例は、本発明の技術方案を適用する典型的な例にすぎず、等価な置換又は等価な変換を行って形成された技術方案は、すべて本発明が要求する保護の範囲内にある。
【0017】
本発明の実施例は、図1~5に示すように、印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタを開示する。図6~10は、このフィルタの加工製造方案であり、水平方向に3層の誘電体を延伸してパンチし、PPネジを用いてフィルタを固定し、3層構造の密着を保証する。
【0018】
Ka周波数帯バンドパスフィルタは、マイクロストリップ電磁フィルタ構造3と金属接地板1を含む。マイクロストリップ電磁フィルタ構造3と金属接地板1の中間は、誘電体層2である。マイクロストリップ電磁フィルタ構造の上面は、給電誘電体板4に密着し、下方には金属ビア5が接続される。給電誘電体板4の裏面には、入力ポート、出力ポートと位置が重なる給電マイクロストリップ線6が印刷され、上部金属カバープレート7と空気ギャップ8を形成し、電磁波伝播に用いられる。
【0019】
本発明の実施例におけるマイクロストリップフィルタ構造3は、図1のように、入力ポート、出力ポート、2つの半波長結合伝送路共振器及び2つのT型共振器を含む。入力ポートは、結合スロットを介して第1次半波長伝送路共振器と結合する。出力ポートは、結合スロットを介して第2次半波長伝送路共振器と結合する。2つのT型共振器は、入力ポート、出力ポート及び2つの半波長結合伝送路共振器が位置する直線の両側に位置し、それぞれ結合スロットを介して背中合わせに第1次、第2次半波長伝送路共振器と結合する。上記4つの共振器は、バンドパスフィルタの通過帯域内に4つの伝送極を導入することに成功した。入出力ポートには、W1とW2の幅を持つ2つの部分の伝送路が含まれる。入力ポート、出力ポート、2つの半波長結合伝送路共振器及び2つのT型共振器には、周期的に配列されて接地板に接続された金属ビアが接続され、周囲には人工磁気導体ユニットが配置されている。
【0020】
本発明の実施例における人工磁気導体ユニットの構造について、図3のように、人工磁気導体の上面は、円形金属パッチ9であり、中間は、誘電体層2であり、下面は、金属接地板1であり、円形金属パッチ9の円心に接続されているのは、金属ビア5である。
【0021】
本発明の実施例に係るKa周波数帯バンドパスフィルタの加工製造方案は、図10のように、この三層構造の安定性を更に安定させるために、水平方向に3層の誘電体を延伸してパンチすることによりネジ穴10を発生させ、PPネジを用いてフィルタを固定する。
【0022】
中間層の給電誘電体板4の内側縁は、それぞれ入力、出力ポートのうち幅W1とW2の伝送路の境界に整列され、外側縁は、下層の誘電体板から延び、裏面には、入力、出力ポートと位置が重なる給電マイクロストリップ線が印刷され、後期に他のミリ波回路と集積するのに便利である。
【0023】
下層の誘電体板の上面の電磁フィルタ構造の伝送路インピーダンスは、いずれも50オームである。入出力ポートにおける幅W1の伝送路は、誘電体ロジャーズ5880を誘電体基板として計算され、幅W2の伝送路は、空気を誘電体基板として計算された。
【0024】
電磁フィルタ構造において、誘電体基板、空気ギャップを安定させるための給電誘電体層と上層金属カバー板は、垂直方向に密着した3層構造である。具体的には、本技術案では、3層構造の間に隙間がなく、密着している。
【0025】
本発明が導入した新しい平面横電磁伝送導波路は、空気ギャップ中で金属リッジ線に沿って電磁波を伝播させることができ、それによって誘電体損失を低減する。金属リッジ線の両側の人工磁気導体構造により、マイクロストリップ線からの放射漏れを抑制し、挿入損失を低減し、Ka周波数帯バンドパスフィルタの伝送性能を更に向上させることができる。本発明におけるバンドパスフィルタは、その帯域内挿損、相対帯域幅、帯域内平坦度、帯域外抑制及びエコー損失などの性能パラメータは、すべて伝統的なKa周波数帯バンドパスフィルタより優れている。本発明は、同時に加工測定方案を提供する。水平方向に3層の誘電体を延伸してパンチし、PPネジを用いてフィルタを固定し、テスト結果とシミュレーション結果はほぼ一致する。このフィルタは、構造が簡単であり、サイズが小さく、加工が容易であり、性能が安定であり、一体性が強く、他のマイクロ波及びミリ波回路とのシステム集積が容易であり、将来のミリ波通信伝送応用において広い応用がある。
【0026】
以下、具体的なシミュレーションと実測例を用いて本発明の技術方案について更に詳細に説明する。
【0027】
本発明の実施例において、この密着した3層構造の下層は、Rogers3003の誘電体板を用い、その誘電率が3であり、厚さが0.762mmのミリ波Ka周波数帯バンドパスフィルタであり、下層の誘電体板の上面の電磁フィルタ構造が用いた半波長マイクロストリップ共振器は、伝送路のインピーダンスがすべて50オームである。中間層は、Rogers5880の誘電体板を用い、その厚さが0.508mmの給電誘電体層である。上層は、金属カバープレートであり、厚さが0.018mmである。入力ポート、出力ポート、2つの半波長結合伝送路共振器及び2つのT型共振器が接続される金属ビアのサイズは、r=0.15mm、h=0.762mmである。入出力ポートのサイズは、W1=1.98mm、W2=1.58mmである。入力ポートと第1次半波長伝送路共振器との間のギャップは、g1=0.18mmであり、出力ポートと第2次半波長伝送路共振器との間のギャップは、g13=0.18mmである。第1次半波長伝送路共振器のサイズは、L1=4.08mm、W3=1.18mmである。第2次半波長伝送路共振器のサイズは、L3=4.12mm、W3=1.18mmである。T型共振器のサイズは、L2=4.3mm、L4=2.6mm、L5=2.86mm、W3=1.18mmである。第1次半波長伝送路共振器と第2次半波長伝送路共振器とのギャップは、g12=1.26mmである。T型共振器と半波長伝送路共振器とのギャップは、いずれもg14=0.5mmである。中間層に位置し、空気ギャップを安定させるための給電誘電体層の裏面にある給電マイクロストリップ線のサイズは、W2=1.58mmである。
【0028】
図5に示すように、ミリ波Ka周波数帯バンドパスフィルタの上には、給電誘電体層があり、給電誘電体層は、上部の金属カバープレートとの間に、電磁波の伝播、そして、より多くの誘電体損失を避けるための空気ギャップを形成している。空気ギャップの上には、電磁波の漏洩を防ぐための金属カバープレートである。
【0029】
実際のモデルでは、図4に示すように、この印刷リッジギャップ導波路に基づくKa周波数帯バンドパスフィルタは、密着した3層構造である。図11図12に示す印刷リッジギャップ導波路に基づくKa周波数帯バンドパスフィルタの実物図のように、このフィルタは、縁のPPネジによって三層構造を補強し、空気ギャップの厳密性を保証し、電磁リークを防止する。中間層の給電誘電体板は、下層誘電体基板から伸びており、他のミリ波回路との集積を容易にするための給電マイクロストリップ線が印刷されている。
【0030】
図13は、人工磁気導体構造によって生成される電磁波阻止帯を示し、この構造は、阻止帯周波数帯内に位置する電磁波の伝播を抑制することができる。Ka周波数帯バンドパスフィルタの動作周波数は、その中にあり、マイクロストリップ伝送路の浮遊放射を効果的に抑制することができ、抑制効果が良好である。図13は、本発明の周期的人工磁性導体の電磁波阻止帯分散図であり、図13中の横軸は、動作周波数を表し、縦軸は、伝播定数を表す。
【0031】
図14は、Ka周波数帯バンドパスフィルタのSパラメータシミュレーション図である。動作帯域幅は、29.8GHzから32GHz、帯域幅は、2.2GHz、相対帯域幅は、7.3%である。通過帯域全体では、エコー損失は、ほぼ-20dBより小さく、挿入損失は、-0.8dB程度であった。27GHzと33GHzにはそれぞれ1つの伝送零点があり、帯域外抑制は、-30dBに達し、帯域外抑制性能は、良好である。図14の横軸は、動作周波数を表し、縦軸は、反射係数Sパラメータを表す。
【0032】
図15は、Ka周波数帯バンドパスフィルタのSパラメータ実測とシミュレーションの比較波形図である。28GHzから32.3GHzの通過帯域内では、エコー損失は、ほぼ-15dBより小さく、ほぼ1.1dB前後であり、帯域内平坦度が良好であり、テスト結果がシミュレーション結果とほぼ一致した。27GHzと33GHzにはそれぞれ伝送零点があり、帯域外抑制性能が良好である。試験結果は、シミュレーション結果とほぼ一致した。図15の横軸は、動作周波数を表し、縦軸は、反射係数Sパラメータを表す。
【0033】
以上、本発明は、印刷リッジギャップ導波路に基づくKa周波数帯バンドパスフィルタを提案する。このKa周波数帯バンドパスフィルタは、構造が簡単で、低断面で、集積しやすい特徴のほか、伝統的なKa周波数帯バンドパスフィルタに比べて、追加のパッケージを節約し、誘電損失を大幅に減少し、伝統的なマイクロストリップフィルタ構造の高損失の問題を解決し、それによってミリ波回路の研究に堅固な基礎を築いた。
【0034】
(付記)
(付記1)
印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタであって、
下層の誘電体基板の上面に設置されたマイクロストリップフィルタ構造、上部の金属カバープレート、及び、中間層に位置し、空気ギャップを安定化するための給電誘電体層を含み、
前記マイクロストリップフィルタ構造は、入力ポート、出力ポート、2つの半波長結合伝送路共振器及び2つのT型共振器を含み、
前記入力ポートは、結合スロットを介して第1次半波長伝送路共振器と結合し、
前記出力ポートは、結合スロットを介して第2次半波長伝送路共振器と結合し、
2つのT型共振器は、入力ポート、出力ポート及び2つの半波長結合伝送路共振器が位置する直線の両側に位置し、それぞれ結合スロットを介して背中合わせに第1次、第2次半波長伝送路共振器と結合することを特徴とする印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタ。
【0035】
(付記2)
前記入力ポート、出力ポート、2つの半波長結合伝送路共振器及び2つのT型共振器は、いずれも、周期的に配列されて接地板に接続された金属ビアが接続され、
前記入力ポート、出力ポート、2つの半波長結合伝送路共振器及び2つのT型共振器の4周には、人工磁気導体ユニットが配置されていることを特徴とする付記1に記載の印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタ。
【0036】
(付記3)
前記入力ポート、出力ポートは、いずれも、幅の異なる2部分の伝送路を含み、
2つの部分の伝送路の幅は、それぞれ、誘電体プレートと空気誘電体に基づいて計算して決定されることを特徴とする付記1に記載の印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタ。
【0037】
(付記4)
前記入力ポート、出力ポート、2つの半波長結合伝送路共振器及び2つのT型共振器の4周の人工磁気導体ユニットは、誘電体基板上に周期的に配列された金属パッチ、金属ビア及び金属接地板からなることを特徴とする付記2に記載の印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタ。
【0038】
(付記5)
前記給電誘電体層の裏面には、入力ポート、出力ポートと位置が重なる給電マイクロストリップ線が印刷されていることを特徴とする付記1に記載の印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタ。
【0039】
(付記6)
前記給電誘電体層の縁は、入力ポート、出力ポートの2つの異なる幅の伝送路の境界にそれぞれ整列されていることを特徴とする付記1に記載の印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタ。
【0040】
(付記7)
水平方向に3層の誘電体を延伸してパンチし、PPネジを用いてフィルタを固定し、3層の誘電体は、垂直方向に隙間なく密着していることを特徴とする付記1に記載の印刷リッジギャップ導波路に基づく4次Ka周波数帯バンドパスフィルタ。
図1
図2
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