(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】塊状物の付着物除去装置
(51)【国際特許分類】
B08B 1/32 20240101AFI20240409BHJP
【FI】
B08B1/32
(21)【出願番号】P 2021012426
(22)【出願日】2021-01-28
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390034212
【氏名又は名称】株式会社チサキ
(74)【代理人】
【識別番号】100124257
【氏名又は名称】生井 和平
(74)【代理人】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】酒井 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 浩希
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/137436(WO,A1)
【文献】実開昭63-063173(JP,U)
【文献】特開2003-112121(JP,A)
【文献】特開昭51-073672(JP,A)
【文献】特開2018-012047(JP,A)
【文献】特開2019-010632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00 - 1/54
B07B 1/00 - 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
除去すべき付着物が付着した塊状物を投入する投入口を横方向をなす軸線の方向での一端側に、付着物除去後の塊状物を排出する排出口を上記軸線の方向の他端側に形成する筒状体と、該筒状体を上記軸線まわりに回転駆動する駆動部とを有する塊状物の付着物除去装置において、
上記筒状体は、上記軸線の方向で該筒状体の少なくとも一部域に、上記筒状体の周方向に延び該筒状体の周壁を貫通するスリット孔が形成されたスリット領域を有し、上記筒状体内で塊状物から除去された付着物を上記スリット孔から上記筒状体外へ排出することを可能としており、
該筒状体に対して上記周方向に相対速度をもって上記筒状体のスリット領域
のスリット孔に対応して設けられ
スリット孔を貫通して筒状体の内部へ進入する方向及び長さに設定され、スリット孔で目詰まりした付着物を除去する掃拭部材を備えていることを特徴とする塊状物の付着物除去装置。
【請求項2】
除去すべき付着物が付着した塊状物を投入する投入口を横方向をなす軸線の方向での一端側に、付着物除去後の塊状物を排出する排出口を上記軸線の方向の他端側に形成する筒状体と、該筒状体を上記軸線まわりに回転駆動する駆動部とを有する塊状物の付着物除去装置において、
上記筒状体は、上記軸線の方向で該筒状体の少なくとも一部域に、上記筒状体の周方向に延び該筒状体の周壁を貫通するスリット孔が形成された
複数のスリット領域
が周方向に配置され、
スリット領域のそれぞれのスリット孔は、他のスリット領域のそれぞれのスリット孔に対して周方向で互い違いとなるように形成され、上記筒状体内で塊状物から除去された付着物を上記スリット孔から上記筒状体外へ排出することを可能としており、
該筒状体に対して上記周方向に相対速度をもって上記筒状体のスリット領域へ当接して設けられ、スリット孔で目詰まりした付着物を除去する掃拭部材を備えていることを特徴とする塊状物の付着物除去装置。
【請求項3】
上記筒状体内に、付着物除去前の塊状物に対し相対摩擦して該塊状物から付着物を除去する摩擦部材が配されていることとする請求項1
または請求項2に記載の塊状物の付着物除去装置。
【請求項4】
上記掃拭部材は、上記筒状体の外周面に当接する外側掃拭部材と内周面に当接する内側掃拭部材の少なくとも一方で形成されていることとする請求項
2に記載の塊状物の付着物除去装置。
【請求項5】
上記掃拭部材は櫛体であることとする請求項1
ないし請求項
4のうちの1つに記載の塊状物の付着物除去装置。
【請求項6】
上記摩擦部材はブラシ体であることとする請求項
3に記載の塊状物の付着物除去装置。
【請求項7】
上記筒状体は、該筒状体の内面から半径方向内方に立ち上がり上記軸線方向に延びる塊状物掻き上げ部材が設けられており、該塊状物掻き上げ部材は、上記筒状体の回転に伴い塊状物を掻き上げるときに、上記軸線方向で上記排出口の側の端部が上記投入口の側の端部に対して下方に位置するよう上記軸線方向で傾いていることとする請求項1ないし請求項
6のうちの1つに記載の塊状物の付着物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除去すべき付着物が付着した塊状物から付着物を除去するための付着物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低品位の石灰石に付着した粘土類を石灰石の表面から除去する石灰石の洗浄システムが特許文献1に開示されている。特許文献1の洗浄システムは、1次洗浄装置と2次洗浄装置を有している。1次洗浄装置は横型回転円筒のドラムスクラバとして形成され、2次洗浄装置は横型回転ドラム式の磨鉱機として形成されている。1次洗浄装置としてのドラムスクラバでは、低品位の石灰石に付着した粘土類の塊や単独に塊状に固まった粘土類が水によって溶解されて除去される。これにより、2次洗浄における磨鉱機の負荷が軽減される。
【0003】
次に、石灰石は磨鉱機で2次洗浄される。場合によっては、石灰石は1次洗浄を省いて、磨鉱機へ直接投入される。
【0004】
磨鉱機は、ドラムの内周面に軸線方向に延びる溝が形成されていて、この溝にロッドが収められていて、ドラムの回転によりドラム内での上部へ掻き上げられたロッドが石灰石と水との混合物の上に落下し、石灰石がロッドとの衝撃により磨鉱される。石灰石に付着した粘土類は、磨鉱により除去され、添加水によりドラムから排出される。
【0005】
ドラムの排出側には、筒状のトロンメル(分離機)が設けられており、トロンメルの周面に形成された網目の隙間から、粘土類を含有する懸濁水が落下排出され、網目上の残分である大粒の石灰石はトロンメルの軸線方向端部の開口である排出口から排出される。
【0006】
トロンメルから排出された大粒の石灰石の表面には微粒の石灰石が付着している場合があり、石灰石は、脱水粗粒篩いへ送られ、微粒の石灰石が表面から除去され、さらに高品位の石灰石とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、1次洗浄でも2次洗浄でも添加水を用いており、石灰石から付着物としての粘土類等を除去している。したがって、除去した付着物と添加水の懸濁水を固液分離するなどの後処理のための装置そして手間を要するし、寒冷地で処理する場合には、懸濁水が凍結してしまい後処理が困難になる。
【0009】
添加水を用いない付着物除去方法としては、石灰石に空気を噴射することにより、付着物を除去することも可能である。しかし、かかる方法では、付着物が飛散してしまい、付着物の回収が困難なこと、周囲の環境を悪化させてしまうこと等の問題がある。
【0010】
さらには、空気を噴射せずに、網目が形成されたドラム内に石灰石を投入し、ドラムを回転させることで、石灰石同士の衝突により、石灰石から付着物を除去し、ドラムの網目から付着物を排出する方法もある。しかしながら、かかる方法では、除去された付着物が網目で目詰まりをおこしてしまい、網目の機能が低下しあるいは機能しなくなってしまう。
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑み、塊状物からの付着物の除去を、水の添加や空気の噴射によることなく行い、かつ、付着物落下孔で目詰まりを生じさせない、塊状物の付着物除去装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る塊状物の付着物除去装置は、除去すべき付着物が付着した塊状物を投入する投入口を横方向をなす軸線の方向での一端側に、付着物除去後の塊状物を排出する排出口を上記軸線の方向の他端側に形成する筒状体と、該筒状体を上記軸線まわりに回転駆動する駆動部とを有する。
【0013】
かかる塊状物の付着物除去装置において、本発明では、上記筒状体は、上記軸線の方向で該筒状体の少なくとも一部域に、上記筒状体の周方向に延び該筒状体の周壁を貫通するスリット孔が形成されたスリット領域を有し、上記筒状体内で塊状物から除去された付着物を上記スリット孔から上記筒状体外へ排出することを可能としており、該筒状体に対して上記周方向に相対速度をもって上記筒状体のスリット領域へ当接して設けられ、スリット孔で目詰まりした付着物を除去する掃拭部材を備えていることを特徴としている。
【0014】
本発明において、「塊状物」とは、原石や、原石を加工して得られる原石加工物を意味している。原石としては、例えば、石灰石等が挙げられ、原石加工物としては、例えば、石灰石を焼成して得られる生石灰等が挙げられる。
【0015】
本発明による塊状物の付着物除去装置では、筒状体は駆動部による駆動力を受けて回転しており、除去すべき付着物が付着した塊状物を、筒状体の一端側に形成された投入口から該筒状体へ投入すると、筒状体の回転によって、筒状体内の塊状物は、後続の塊状物の投入に伴い筒状体の他端側に形成された排出口へ自ずと移動する。筒状体の回転中、塊状物は筒状体の内周面との摩擦により周方向にもち上げられ落下する動作を繰り返す転動を行い、その間、塊状物同士が衝突、摩擦し合い、塊状物表面から付着物が剥離除去され、付着物が除去された塊状物と塊状物から除去された付着物は、筒状体内を排出口へ向い移動する。
【0016】
筒状体は、軸線方向における該筒状体の一部域に、周方向に延び筒状体の周壁を貫通するスリット孔が形成されたスリット領域を有しており、排出口へ向う付着物は、このスリット領域でスリット孔から落下排出される。付着物が除去された、主として、スリット幅以上の径の塊状物は、排出口へ達し、排出口から取り出される。
【0017】
筒状体のスリット領域に対しては掃拭部材が当接しており、筒状体の周方向、すなわち、スリットの長手方向で回転する筒状体と掃拭部材との間の相動移動によりスリット孔が掃拭されるので、スリット孔において付着物による目詰りが生じることはない。
【0018】
かくして、塊状物は、単に筒状体内で転動するのみで、付着物が除去される。
【0019】
本発明において、上記筒状体内に、付着物除去前の塊状物に対し相対摩擦して該塊状物から付着物を除去する摩擦部材が配されていることが好ましい。こうすることで塊状物は、単に塊状物同士の衝突、摩擦により付着物が剥離除去されるのみならず、摩擦部材によりきめ細かに付着物が剥離除去される。
【0020】
本発明において、上記掃拭部材は、上記筒状体の外周面に当接する外側掃拭部材と内周面に当接する内側掃拭部材の少なくとも一方で形成されているようにすることができる。掃拭部材が筒状体の外周面に当接するように設けられていれば、保守、交換等の取扱いが簡単になり、掃拭部材が筒状内の内周面に当接するように設けられていれば、装置全体がコンパクトとなる。
【0021】
本発明において、上記掃拭部材は櫛体とすることができる。櫛体を構成する細い条体は、弾性を有して撓みやすく、筒状体に対してスリット孔のない部分に当接して弾性撓みを生じ、筒状体の回転中に、スリット孔の部分に位置するようになったときに、その弾性撓みが解除されてスリット孔に進入することで、スリット孔の付着物を除去する。この結果、スリット孔での付着物による目詰りを防止できる。
【0022】
本発明において、上記摩擦部材はブラシ体とすることができる。
【0023】
本発明において、上記筒状体は、該筒状体の内面から半径方向内方に立ち上がり上記軸線方向に延びる塊状物掻き上げ部材が設けられており、該塊状物掻き上げ部材は、上記筒状体の回転に伴い塊状物を掻き上げるときに、上記軸線方向で上記排出口の側の端部が上記投入口の側の端部に対して下方に位置するよう上記軸線方向で傾いていることが好ましい。筒状体内の塊状物は、筒状体の回転により、筒状体内面との摩擦でもち上げられ落下する転動を行なうが、上記塊状物掻き上げ部材を設けることで、塊状物はさらに積極的に掻き上げられ転動がより確実かつ活動的となる。また、塊状物掻き上げ部材が上述のように軸線に対して傾いていることにより、塊状物は、塊状物掻き上げ部材で掻き上げられ落下する過程で、この塊状物掻き下げ部材上を排出口側へ向け滑動するので、排出口へ向けた塊状物の移動が促進される。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、以上のように、回転する筒状体内で転動する付着物除去前の塊状物を、投入口から排出口へ向け移動させながら転動させ、塊状物から剥離除去された付着物を、排出口へ向けた移動中にスリット領域のスリット孔から落下排出させるとともに、付着物が除去された塊状物を排出口から取り出すこととし、また、スリット領域に対しては掃拭部材を当接させてスリット孔の付着物を除去することとした。したがって、本発明では、塊状物からの付着物の除去を、水の添加や空気の噴射によることなく行い、かつ、付着物落下孔で目詰まりを生じさせない塊状物の付着物除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態装置を示し、筒状体の軸線を含む面での縦断面図である。
【
図2】(A)は
図1におけるA-A断面図、(B)は
図1におけるB-B矢視図、(C)は
図1におけるC-C断面図、(D)は
図1におけるD-D断面図である。
【
図3】
図1における筒状体の周面について、スリット領域における部分を平面として示した展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態としての塊状物の付着物除去装置は、塊状物としての原石(例えば石灰石)の表面に付着している付着物(粘土等)を除去し、原石と付着物とを分離するための装置である。本実施形態に係る塊状物の付着物除去装置は、
図1に見られるように、筒状体10、シュート20、掃拭部材30、摩擦部材40、ケース50、原石搬出コンベア60、付着物搬出コンベア70を有している。
【0027】
筒状体10は、横方向に延びる軸線Xをもつ円筒もしくは多角筒の筒状をなしている(図示の例では円筒状)。筒状体10は、その軸線X方向での一端側(
図1にて左端側)に、原石の投入のための投入口11、他端側(
図1にて右端側)に、原石の排出のための排出口12が形成されている。軸線Xは、水平もしくは排出口12側が下方に向くように水平に対し若干傾斜している(図示の例では水平)。投入口11は、筒状体10の内面の隅部に傾斜環板11Aが取りつけられており、排出口12は、筒状体10本体の直径よりも小さい直径の排出筒12Aにより形成されている。筒状体10本体と排出筒12Aとの径差により、筒状体10の環状端板部10Aが排出筒12Aに対して堰部を形成している。筒状体10内の原石は筒状体10の回転中に転動し、その結果、原石同士が衝突、摩擦し合うことにより、原石表面から付着物が剥離除去される。
【0028】
筒状体10は、軸線X方向で排出口12寄りの端部域に付着物落下孔としての複数のスリット孔13を有するスリット領域Sが形成されている。このスリット領域Sは、このスリット領域Sについて周方向の一部を平面として展開して示す
図3に見られるように、軸線X方向で間隔をもった複数位置に、周方向に延びるスリット孔13が列をなして形成されている。各列でのスリット孔13は、軸線X方向での同位置において、周方向で複数に分割され分離して位置している。各スリット孔13の幅(軸線X方向での幅)は、原石から除去すべき付着物の最大粒径よりも大きく、適宜設定されている。図示の例では、設定されたスリット孔13の幅は変更できないが、例えば、スリット孔の幅寸法内で軸線X方向にスライド可能な部材を筒状体10の周面に設けて軸線X方向にずらすよう移動させることで、スリット孔13の幅を調整変更できるようにしてもよい。
【0029】
筒状体10の内周面には、軸線X方向でスリット領域Sよりも一端側(左端側)に塊状物掻き上げ部材としての原石掻き上げ部材14が取り付けられている。図示の例では、軸線X方向で離間した二位置に原石掻き上げ部材14A,14Bが配されている。両原石掻き上げ部材14A,14Bは、軸線X方向で位置が異なるものの、本実施形態では形状そのものは同じである。しかし、両原石掻き上げ部材14A,14Bは、筒状体10内の原石の性状等に応じて、軸線X方向での寸法や、後述する周方向位置、傾斜角等が、互に異なるようにしてもよい。
【0030】
図1の例にて、原石掻き上げ部材14A,14Bは、ともに周方向の複数位置(図示の例では
図2(A)に見られるごとく四位置)に分布して位置している。原石掻き上げ部材14A,14Bは、筒状体10の内面から筒状体10の半径方向で内方へ向けて立ち上がり軸線X方向に延びる半径方向部14A-1,14B-1と、半径方向部14A-1,14B-1の先端位置でL字状に屈曲された屈曲部14A-2,14B-2とを有している。
図1の例では、原石掻き上げ部材14A,14Bは、筒状体10の回転に伴い周方向で上方移動して原石を掻き上げるときに、軸線X方向で排出口12側の端部が投入口11側の端部に対して上方に位置するように、軸線Xに対して上方に位置する傾斜角θを有している。
【0031】
換言すると、筒状体10の回転に伴い、原石掻き上げ部材14A,14Bは周方向で上方移動して軸線Xよりも上方に位置し、一部の原石が滑落し始めるときには、排出口12側の端部が投入口11側の端部よりも下方に位置するようになる。したがって、上記一部の原石は原石掻き上げ部材14A,14Bから滑落する過程で排出口12の方へ軸線Xに移動することとなり、この結果、原石の移動が促進される。
【0032】
本実施形態では、原石掻き上げ部材14A,14Bが軸線Xよりも上方に位置してから筒状体10の最上位置に至るまでの間にて、原石掻き上げ部材14A,14B上の全ての原石が滑落するわけではない。滑落しなかった原石は、屈曲部14A-2,14B-2によって落下を阻止されて原石掻き上げ部材14A,14Bに残留する。さらなる筒状体10の回転に伴い、原石掻き上げ部材14A,14Bが上記最上位置から降下し始めると、残留していた原石は、
図2(A)に見られるように、屈曲部14A-2,14B-2から大きな落差をもって、原石不在の筒状体10の底部へ直接落下する。この落下による衝撃が大きいので、原石から多くの付着物を除去することができる。
【0033】
原石掻き上げ部材14A,14Bは、
図1に示される軸線X方向の範囲に限らず、同方向における筒状体10の他の一部の範囲や筒状体10の全長にわたる範囲に分布して設けられていてもよい。例えば、原石掻き上げ部材14A,14Bはスリット領域Sの範囲に設けられていてもよい。原石掻き上げ部材14A,14Bをスリット領域Sの範囲に設けることにより、原石から除去された付着物をスリット孔13から速やかに排出することができる。
【0034】
また、本実施形態では、原石掻き上げ部材14A,14Bが筒状体10の軸線X軸に対して投入口11側よりも排出口12側が下方に向いて傾斜した姿勢で設けられていることとしたが、変形例として、軸線Xが排出口12側で下方に向くようにして筒状体10が水平に対し若干傾斜している場合には、原石掻き上げ部材14A,14Bを軸線Xに対して平行な姿勢で設けてもよい。
【0035】
筒状体10は外周面に被支持リング体15が取り付けられている。図示の場合、軸線X方向で離間した二位置に、被支持リング15A,15Bが取り付けられている。これらの被支持リング15A,15Bは、
図2(A)によく見られるように、筒状体10に対して下方に位置する回転支持体16A,16Bでそれぞれ支持されている。本実施形態では、二つの回転支持体16A,16Bは、被支持リング15A,15Bを支持するのみならず、少なくとも一方が回転駆動力を被支持リング15A,15Bの一方に伝達するようになっている。かくして、筒状体10は、被支持リング15A,15Bで回転支持体16A,16Bにより支持されつつ、
図2(A)にて矢印で示される方向で軸線Xまわりに回転する。
【0036】
筒状体10内には、排出口12から摩擦部材40が進入配置されている。摩擦部材40は、
図2(A)にも見られるように、筒状体10の軸線Xに対し下方、かつ筒状体10の回転方向で、軸線Xを通る鉛直線Zよりも先方に位置している。摩擦部材40は、軸線Xに平行となる軸体41の一部の周面に多数の弾性線条体42が植設されたブラシ体をなしている。
図1の例では、弾性線条体42は、軸線X方向で離間して設けられている二つの原石掻き上げ部材14A,14Bのそれぞれの一部にまたがる範囲にわたり設けられている。摩擦部材40は、外部から軸体41が回転駆動を受けており、筒状体10内を転動する原石の表面の付着物を弾性線条体42で摩擦により原石から剥離する。
【0037】
摩擦部材40は、
図1に示される軸線X方向の範囲に限らず、同方向における筒状体10の他の一部の範囲や筒状体10の全長にわたる範囲に設けられていてもよい。例えば、摩擦部材40はスリット領域Sの範囲に設けられていてもよい。摩擦部材40をスリット領域Sの範囲に設けることにより、原石から除去された付着物をスリット孔13から速やかに排出することができる。
【0038】
軸線X方向で、筒状体10のスリット領域Sの範囲には、筒状体10の外周に位置して掃拭部材30が設けられている。掃拭部材30は、
図1、
図2(B)~(D)に見られるように、筒状体10に対して上方の位置で、軸線X方向でスリット領域Sの範囲に設けられている。掃拭部材30は、後述するケース50の内面に取り付けられた支持体31により複数の細条体32が支持された櫛体をなしている。細条体32は、弾性を有する素材、例えば、金属ワイヤで形成されている。
【0039】
掃拭部材30の細条体32は、軸線X方向で間隔をもった位置で周方向に延びて形成された各スリット孔13に対応して設けられている。該細条体32は、支持体31から延びスリット孔13を貫通して筒状体10の内部へ進入する方向そして長さに設定されている。ケース50に取り付けられた支持体31は静止しており、したがって、筒状体10が回転すると、細条体32は、スリット孔13に進入し(
図2(B),
図2(D)参照)、さらに回転が進んでスリット孔13の非形成部分の位置に達すると、該非形成部分との当接により弾性撓み変形して筒状体10の外周面に圧接するようになる(
図2(C)参照)。
【0040】
筒状体10は、軸線X方向におけるスリット領域Sの範囲でケース50により包囲されている。ケース50は、
図2(B)~(D)に見られるように、軸線Xよりも上部50Aが四角形の箱状をなし、下部50Bが下方に向け外径を小さくする角錐筒をなしており、下部50Bの下端が筒状の付着物落下排出口51を形成している。
【0041】
筒状体10の排出口12の下方には、付着物が除去された原石を搬出する原石搬出コンベア60が、筒状体10に対して軸線X方向で離間する方向(
図1にて右方)へ延びて設けられている。
【0042】
また、ケース50の付着物落下排出口51の下方には、付着物落下排出口51から落下排出された付着物を搬出する付着物搬出コンベア70が設けられている。
【0043】
次に、かかる本実施形態の付着物除去装置による原石からの付着物除去要領を説明する。
【0044】
図1において、筒状体10、摩擦部材40はそれぞれ回転駆動されており、原石搬出コンベア60そして付着物搬出コンベア70は走行駆動されている状態にある。
【0045】
かかる状態で、付着物が付着している原石を筒状体10のシュート20へ投入する。この原石は、シュート20を滑落して、筒状体10の投入口11を経て筒状体10の内部へ至る。その際、投入口11の内側には傾斜環板11Aが設けられているので、投入口11内部の隅部に原石が留まることがなく、投入口11から供給される原石は筒状体10内でその供給量が増大すると、回転している筒状体10内で自ずと軸線X方向で排出口12の方へ移動しようとする。原石が投入口11に近い原石掻き上げ部材14Aの位置までくると、筒状体10の回転に伴い、原石掻き上げ部材14Aにより掻き上げられ、軸線Xよりも上方へ達すると一部の原石が原石掻き上げ部材14Aから滑落する。原石掻き上げ部材14Aは傾斜角θをもっているので、周方向で上方移動して軸線Xよりも上方に位置すると、その傾斜は排出口12の方へ向け下方へ傾いた姿勢となり、したがって、上記一部の原石は原石掻き上げ部材14Aから滑落しながら軸線X方向で排出口12の方へ移動する。かくして、原石は次の原石掻き上げ部材14Bの位置まで達し、この原石掻き上げ部材14Bにより掻き上げられ、原石掻き上げ部材14Bからの滑落の際、さらに排出口12の方へ向け移動する。
【0046】
このように付着物が付着している原石は、軸線X方向での二位置に設けられた原石掻き上げ部材14A,14Bで掻き上げられ、そしてこれらの原石掻き上げ部材14A,14Bから滑落することで、筒状体10内を転動しながら排出口12へ向け移動する。
【0047】
筒状体10内では、ブラシ体をなす摩擦部材40が回転しており、転動中の原石は、この摩擦部材40の弾性線条体42と摩擦され、その結果、原石から付着物が剥離除去される。
【0048】
また、原石掻き上げ部材14A,14Bが筒状体10の最上位置に至るまでの間に滑落することなく残留した原石は、原石掻き上げ部材14A,14Bが上記最上位置から降下し始めると、屈曲部14A-2,14B-2から大きな落差をもって、原石不在の筒状体10の底部へ直接落下し、この落下による衝撃により、原石から多くの付着物が除去される。
【0049】
かくして、付着物が除去された原石と、原石から除去された付着物との混合物は、筒状体10内を軸線X方向で排出口12の方へ向け移動し、スリット領域Sへ達する。スリット領域Sには、軸線X方向で間隔をもった複数位置に、周方向に延びるスリット孔13が形成されており、微細粒である付着物はこのスリット孔13から落下排出される。その結果、付着物が除去された原石が筒状体10の環状端板部10A近傍へ達する。環状端板部10Aは排出口12へ至る間の堰を形成しているので、原石や残留した付着物は、環状端板部10A近傍に滞留するが、後続の原石や残留した付着物が転動しながら投入口11の方から間断なく運ばれてくることで堰の高さ以上まで堆積する結果、この堰を越えた原石のみが排出口12から排出されることとなる。
【0050】
排出口12から落下した、付着物が除去された原石は原石搬出コンベア60上に落下し、この原石搬出コンベア60により搬出され、適宜処理される。一方、原石から除去された付着物はスリット孔13を通って付着物搬出コンベア70上に落下し、この付着物搬出コンベア70により搬出され、適宜処理される。
【0051】
付着物は、スリット領域Sにてスリット孔13の縁部に付着してスリット孔13にて目詰りを生ずる虞れがある。しかし、本実施形態装置では、スリット領域Sで、筒状体10の外面に当接するように掃拭部材30が設けられており、後述する要領で、掃拭部材30により目詰まりが防止される。
【0052】
既述したように、櫛体をなす掃拭部材30は、弾性をもつ素材の複数の細条体32を有している。スリット領域Sでは、軸線X方向の複数位置にスリット孔13が形成されスリット孔の列をなしている。各列のスリット孔13は、周方向で複数に分割され分離しているので、スリット領域Sには、周方向において、スリット孔13の範囲と、スリット孔13同士間に位置するスリット非形成部分の範囲とがある。掃拭部材30の細条体32は、周方向でのスリット孔13の範囲ではスリット孔13に進入し(
図2(D)参照)、スリット孔13の縁部に付着した付着物を除去し、スリット非形成部分の範囲では弾性撓みを生じて筒状体10の外周面に当接する(
図2(C)参照)。
【0053】
かくして、細条体32は対応するスリット孔13に進入して、スリット孔13の縁部に付着した付着物を除去する。その結果、スリット孔13はほぼ常時、掃拭されることとなり、目詰りを生ずることがない。
【0054】
筒状体10内からスリット孔13を通して落下した付着物、及び掃拭部材30によりスリット孔13の縁部から除去された付着物は、ケース50外へ飛散することなくケース50内で落下し、付着物落下排出口51から排出され、付着物搬出コンベア70上に落下する。
【0055】
本発明は、図示され説明された形態に限定されず、種々変更が可能である。例えば、掃拭部材30は、図示の例では、筒状体10の外部に設けられたが、これに代えて、筒状体10の内部に設けることもできる。その場合には、装置全体がコンパクトになる。また、掃拭部材30を筒状体10の外部と内部の両方に設けることも可能である。
【0056】
本実施形態では、スリット領域Sは軸線X方向で筒状体10の排出口12寄りの端部域に形成されていることとしたが、軸線X方向におけるスリット領域Sの位置はこれに限定されず、軸線X方向で適宜位置に形成することが可能である。例えば、スリット領域Sを軸線X方向における筒状体10の中間域に形成してもよい。
【0057】
本実施形態では、原石掻き上げ部材14A,14Bのいずれもが、原石を排出口12側へ滑落させるような傾斜角をもって設けられていたが、これに代えて、原石掻き上げ部材14A,14Bのうち、排出口12側に位置する原石掻き上げ部材14Bが、原石を投入口11側へ滑落させるような傾斜角をもって設けられていてもよい。この場合、原石掻き上げ部材14Bは、原石を掻き上げるときに、軸線X方向で投入口11側の端部が排出口12側の端部に対して上方に位置するように、軸線Xに対して上方に位置する傾斜角を有している。つまり、この原石掻き上げ部材14Bは、筒状体10の回転に伴い、周方向で上方移動して軸線Xよりも上方に位置するとき、投入口11側の端部が排出口12側の端部よりも下方に位置するようになる。
【0058】
この変形例では、原石掻き上げ部材14Aによって掻き上げられた原石は排出口12側へ滑落し、原石掻き上げ部材14Bによって掻き上げられた原石は投入口11側へ戻る方向に滑落することとなる。この結果、原石が筒状体10内を循環するようになって筒状体10内に滞留する時間が長くなるので、より良好に原石から付着物を除去することができる。この変形例においても、投入口11から次々と原石が投入されているので、原石は長時間にわたって筒状体10内に滞留するものの、最終的には排出口12側へ移動し、次第に排出口12から排出されることとなる。
【0059】
本実施形態では、掃拭部材30が櫛体をなしている例を説明したが、櫛体であることは必須ではなく、例えば、ブラシ体であってもよい。また、掃拭部材30は、軸線X方向に延びる軸体をなす支持体に複数の細条体を揺動自在に、例えばピン結合で設けることにより構成されていてもよい。このような構成の掃拭部材30では、細条体は、例えば、スリット孔13の幅寸法よりも若干細い棒状あるいは板状をなし、軸線X方向で各スリット孔13と同位置に設けられている。これらの細条体は、上端部が上記支持体の軸線まわりに揺動自在な状態で支持されていて、自由状態にあるときは自重により垂下する。したがって、細条体は、周方向でのスリット孔13の範囲では、垂下した姿勢のままスリット孔13に進入して、スリット孔13の縁部に付着した付着物を除去し、一方、スリット非形成部分の範囲では、筒状体10の外周面によってもち上げられるようにして支持体の軸線まわりに揺動し、筒状体10の外周面に当接する。
【0060】
本実施形態では、付着物除去装置によって、塊状物としての原石から付着物を除去する例を説明したが、付着物が除去されるべき対象は原石には限られず、塊状物としての原石の加工物であってもよい。例えば、原石である石灰石を焼成して得られる加工物としての生石灰には、様々な粒径のものが含まれていることが多い。このような生石灰が、本実施形態に係る付着物除去装置の筒状体10に投入されると、粒径の大きい塊状の生石灰の表面に付着している微粒の生石灰が既述の要領で除去されてスリット孔13から排出され、一方、塊状の生石灰は排出口12から排出される。このとき、スリット孔13からは、除去された微粒の生石灰だけでなく、スリット孔13よりも小径の生石灰、すなわち塊状の生石灰に付着することなく混在していた生石灰も排出される。つまり、本実施形態に係る装置を、微粒の生石灰を除去するための装置としてだけでなく、生石灰を分級するための装置として使用することもできる。
【符号の説明】
【0061】
10 筒状体
11 投入口
12 排出口
13 スリット孔
14A,14B 原石掻き上げ部材(塊状物掻き上げ部材)
30 掃拭部材
40 摩擦部材
50 ケース
51 付着物落下排出口
S スリット領域
X 軸線