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特許7468986ビールテイスト飲料及びその製造方法、並びにビールテイスト飲料のとげとげしい苦味を低減する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料及びその製造方法、並びにビールテイスト飲料のとげとげしい苦味を低減する方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/02 20190101AFI20240409BHJP
   C12C 5/02 20060101ALI20240409BHJP
   C12G 3/04 20190101ALI20240409BHJP
   C12G 3/06 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C12G3/02
C12C5/02
C12G3/04
C12G3/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018091243
(22)【出願日】2018-05-10
(65)【公開番号】P2019195299
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-04-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100215957
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 明照
(72)【発明者】
【氏名】大場 智昭
【合議体】
【審判長】植前 充司
【審判官】加藤 友也
【審判官】中村 和正
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-107101(JP,A)
【文献】特開2016-135109(JP,A)
【文献】特許第5759610(JP,B2)
【文献】特開2018-57300(JP,A)
【文献】特開2014-217347(JP,A)
【文献】特開2017-216892(JP,A)
【文献】特開2012-244971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G3/00-3/06
C12C5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール及び甘味料を含有し、
下記式(1)で定義される値が20,000以上150,000以下の範囲内にあり、香料を更に含有
前記甘味料が、アセスルファムカリウム、ステビア、スクラロース、及びネオテームからなる群より選択される1つ以上であり、
前記アセスルファムカリウムの甘味度が200であり、前記ステビアの甘味度が400であり、前記スクラロースの甘味度が600であり、前記ネオテームの甘味度が10000であり、
原料として麦原料を含む、ビールテイスト飲料(但し、プリン体の含有量が1.1mg/100mL以下であるビールテイスト飲料及び麦由来成分のエキス分が0.40g/100cm3以下であるビールテイスト飲料を除く。)。
式(1):アルコール濃度(v/v%)×甘味料含有量(質量ppm)×甘味度
【請求項2】
原料中の麦芽の比率が66質量%以下である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
原料中の麦芽の比率が25質量%未満である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
発酵飲料である、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項5】
前記甘味料が、高甘味度甘味料を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項6】
前記高甘味度甘味料が、アセスルファムカリウム又はスクラロースを含む、請求項5に記載のビールテイスト飲料。
【請求項7】
アルコール濃度が、1v/v%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項8】
下記式(1)で定義される値が20,000以上150,000以下の範囲内となるように、ビールテイスト飲料中のアルコール濃度及び甘味料含有量を調整することを含み、香料を添加することを含
前記甘味料が、アセスルファムカリウム、ステビア、スクラロース、及びネオテームからなる群より選択される1つ以上であり、
前記アセスルファムカリウムの甘味度が200であり、前記ステビアの甘味度が400であり、前記スクラロースの甘味度が600であり、前記ネオテームの甘味度が10000であり、
原料として麦原料を含む、ビールテイスト飲料(但し、プリン体の含有量が1.1mg/100mL以下であるビールテイスト飲料及び麦由来成分のエキス分が0.40g/100cm3以下であるビールテイスト飲料を除く。)の製造方法。
式(1):アルコール濃度(v/v%)×甘味料含有量(質量ppm)×甘味度
【請求項9】
下記式(1)で定義される値が20,000以上150,000以下の範囲内となるように、ビールテイスト飲料中のアルコール濃度及び甘味料含有量を調整することを含
前記甘味料が、アセスルファムカリウム、ステビア、スクラロース、及びネオテームからなる群より選択される1つ以上であり、
前記アセスルファムカリウムの甘味度が200であり、前記ステビアの甘味度が400であり、前記スクラロースの甘味度が600であり、前記ネオテームの甘味度が10000であり、
原料として麦原料を含む、ビールテイスト飲料のとげとげしい苦味を低減する方法。
式(1):アルコール濃度(v/v%)×甘味料含有量(質量ppm)×甘味度
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールテイスト飲料及びその製造方法、並びにビールテイスト飲料のとげとげしい苦味を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の嗜好性の多様化から、発泡酒、リキュール等のビールテイスト飲料が広く消費されている。このようなビールテイスト飲料の消費拡大に伴って、ビールテイスト飲料の香味を向上させる方法が種々報告されている。例えば、特許文献1には、麦の使用比率を低くした場合であっても、添加した飲用アルコールのアルコール味が突出して感じられ難いビールテイスト飲料として、麦由来のエキス分と飲用アルコールを含み、プリン体の含有量が1.1mg/100mL以下であるとともに、アルコール度数が2~9%であり、ショ糖換算で0.10~1.00w/v%の甘味料を含有していることを特徴とするビールテイスト飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-135109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、アルコール濃度(v/v%)、甘味料含有量(質量ppm)及び甘味度を乗じた値が所定の範囲内にあるビールテイスト飲料は、麦由来のまろやかさを維持しつつ、とげとげしい苦味が抑制されることを見出した。
【0005】
本発明は、この新規な知見に基づくものであり、麦由来のまろやかさを維持しつつ、とげとげしい苦味を抑制できるビールテイスト飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アルコール及び甘味料を含有し、下記式(1)で定義される値が20,000以上150,000以下の範囲内にある、ビールテイスト飲料を提供する。
式(1):アルコール濃度(v/v%)×甘味料含有量(質量ppm)×甘味度
【0007】
本発明に係るビールテイスト飲料は、上記式(1)で定義される値が所定の範囲内にあることにより、麦由来のまろやかさが維持されると共に、とげとげしい苦味が抑制されたものとなる。また、本発明に係るビールテイスト飲料は、上記構成を採用したことにより、後引きが充分に抑制されたものとなる。
【0008】
本発明のビールテイスト飲料は、香料を更に含有するものであってもよい。本発明のビールテイスト飲料は、香料を添加した場合であっても、麦由来のまろやかさが維持され、かつとげとげしい苦味が抑制されている。加えて、本発明に係るビールテイスト飲料は、上記構成を採用したことにより、香料が有するフレーバー(風味、香味)に対応する素材(例えば、レモンフレーバーであればレモン)を充分に感じられる。
【0009】
本発明のビールテイスト飲料は、原料中の麦芽の比率が66質量%以下であってもよく、25質量%未満であってもよい。
【0010】
本発明のビールテイスト飲料は、発酵飲料であってもよい。
【0011】
上記甘味料は、高甘味度甘味料を含むことが好ましい。これにより、上述した本発明による効果がより顕著に奏される。同様の観点から、上記高甘味度甘味料は、アセスルファムカリウム又はスクラロースを含むことがより好ましい。
【0012】
本発明のビールテイスト飲料は、アルコール濃度が、1v/v%以上であってもよい。
【0013】
本発明はまた、下記式(1)で定義される値が20,000以上150,000以下の範囲内となるように、ビールテイスト飲料中のアルコール濃度及び甘味料含有量を調整することを含む、ビールテイスト飲料の製造方法を提供する。
式(1):アルコール濃度(v/v%)×甘味料含有量(質量ppm)×甘味度
【0014】
本発明の製造方法によれば、麦由来のまろやかさを維持しつつ、とげとげしい苦味を抑制できるビールテイスト飲料を提供することができる。
【0015】
本発明は、下記式(1)で定義される値が20,000以上150,000以下の範囲内となるように、ビールテイスト飲料中のアルコール濃度及び甘味料含有量を調整することを含む、ビールテイスト飲料のとげとげしい苦味を低減する方法と捉えることもできる。
式(1):アルコール濃度(v/v%)×甘味料含有量(質量ppm)×甘味度
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、麦由来のまろやかさを維持しつつ、とげとげしい苦味を抑制できるビールテイスト飲料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、アルコール及び甘味料を含有し、下記式(1)で定義される値(以下、「式(1)値」ともいう。)が20,000以上150,000以下の範囲内にある。
式(1):アルコール濃度(v/v%)×甘味料含有量(質量ppm)×甘味度
【0019】
本明細書において、ビールテイスト飲料とは、ビール様の香味を有する飲料を意味する。ビールテイストアルコール飲料としては、例えば、酒税法(平成二九年三月三一日法律第四号)上のビール、発泡酒、その他の発泡性酒類、リキュールに分類されるものが挙げられる。
【0020】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、式(1)値が所定の範囲内にある限り、アルコール度数(濃度)が1.0v/v%以上であるビールテイストアルコール飲料であってもよく、アルコール度数が1.0v/v%未満であるノンアルコールビールテイスト飲料であってもよい。なお、本明細書においてアルコールとは、特に言及しない限りエタノールを意味する。
【0021】
本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数は、例えば、1.0v/v%以上であるのが好ましく、2.0v/v%以上であるのがより好ましく、3.0v/v%以上であるのが更に好ましく、4.0%以上であるのが更により好ましい。アルコール度数の上限は、例えば、20.0v/v%未満であってよく、10.0v/v%以下であってよく、9.0v/v%以下であってよく、8.0v/v%以下であってよく、7.0v/v%以下であってよく、6.0v/v%以下であってよく、5.0v/v%以下であってもよい。
【0022】
本明細書において甘味料とは、飲料又は食品に甘みを与える食品添加物を意味する。甘味料としては、例えば、糖類、糖アルコール類、高甘味度甘味料が挙げられる。糖類としては、例えば、グルコース、フルクトース、キシロース、ソルボース、ガラクトース、異性化糖(例えば、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖、高果糖液糖)、スクロース、マルトース、イソマルトース、ラクトース、イソラクトース、パラチノース、マルトトリオース、ラフィノース、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、パラチノースが挙げられる。糖アルコール類としては、例えば、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトールが挙げられる。高甘味度甘味料としては、例えば、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、ステビア、酵素処理ステビア、スクラロース、ネオテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ソーマチン、ラカンカが挙げられる。中でも、甘味料としては、高甘味度甘味料が好ましく、アセスルファムカリウム及びスクラロースがより好ましい。
【0023】
甘味料は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
本実施形態に係るビールテイスト飲料における甘味料の含有量は、式(1)値が所定の範囲内となるように、甘味料の種類等に応じて設定すればよい。
【0025】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、式(1)値(アルコール濃度(v/v%)×甘味料含有量(質量ppm)×甘味度)が20,000以上150,000以下の範囲内にある。
【0026】
本明細書において「甘味度」とは、ショ糖(スクロース)換算の甘味の強度を意味し、ショ糖の甘味の強度を1としたときの各種甘味料の甘味の強度を相対値として表した値である。具体的には、ショ糖の甘味度は1であり、アセスルファムカリウムは200であり、ステビアは400であり、スクラロースは600であり、ネオテームは10000である。
【0027】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、本発明による効果をより顕著に発揮できることから、式(1)値が、30,000以上であることが好ましく、40,000以上であることがより好ましく、50,000以上であることが更に好ましく、60,000以上であることが更により好ましい。同様の観点から、式(1)値は、130,000以下であることが好ましく、100,000以下であることがより好ましく、80,000以下であることが更に好ましい。
【0028】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、香料を添加した場合、麦由来のまろやかさが維持され、かつとげとげしい苦味が抑制されていると共に、香料が有するフレーバー(風味、香味)に対応する素材(例えば、レモンフレーバーであればレモン)を充分に感じられるものであることから、香料の添加により、各種フレーバーを有するビールテイスト飲料として構成してもよい。
【0029】
香料(フレーバー)としては、例えば、レモンフレーバー、ナツミカンフレーバー、グレープフルーツフレーバー、オレンジフレーバー、ユズフレーバー、ライムフレーバー、カボスフレーバー等の柑橘類フレーバー、パインアップルフレーバー、パッションフルーツフレーバー、ライチフレーバー、マンゴーフレーバー、グアヴァフレーバー及びカムカムフレーバー等のトロピカルフルーツフレーバー、ジンジャーエールフレーバー、ピーチフレーバー、アップルフレーバー、カシスフレーバー、チェリーフレーバー、ハニーフレーバー、ブドウフレーバー、マスカットフレーバー、梅酒フレーバー、キャラメルフレーバーを挙げることができる。
【0030】
香料の添加量は特に制限されず、香料の種類等に応じて適宜設定することができる。香料の添加量の具体例としては、例えば、ビールテイスト飲料全量を基準として、0.01~1.0w/v%であってよい。香料の添加量は、ビールテイスト飲料全量を基準として、0.02w/v%以上、0.05w/v%以上、0.1w/v%以上であってもよく、0.5w/v%以下、0.3w/v%以下、0.2w/v%以下であってもよい。
【0031】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の苦味価(BU)は、例えば、1~50であってよい。苦味価の下限は、5以上であってよく、10以上であってもよい。苦味価の上限は40以下であってよく、30以下であってよく、20以下であってもよい。
【0032】
苦味価は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.15 苦味価」に記載されている方法により測定することができる。
【0033】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、エキス分が2度以上であってよい。エキス分とは、15℃における原容量百立方センチメートル中に含有する不揮発性成分のグラム数をいう。
【0034】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発酵飲料(ビールテイスト発酵飲料)であってよく、非発酵飲料(ビールテイスト非発酵飲料)であってもよい。発酵飲料は、酵母等による発酵を経て製造されるものである。非発酵飲料は、酵母等による発酵を行わずに製造されるものである。使用される酵母としては、上面発酵酵母、又は下面発酵酵母が挙げられる。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、下面発酵酵母を使用して発酵させたもの(下面発酵飲料)であってよい。
【0035】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、本発明による効果を阻害しない限り、飲料に通常配合される着色料、酸化防止剤、酸味料、苦味料等の添加剤を含有してもよい。
【0036】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、非発泡性であってもよく、発泡性であってもよい。ここで、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)未満であることをいい、発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)以上であることをいう。発泡性とする場合、ガス圧の上限は0.294MPa(3.0kg/cm)程度としてもよい。
【0037】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、容器に入れて提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分及び光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0038】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、アルコール濃度及び甘味料含有量が式(1)値を満たすように調整することを含む。
【0039】
一実施形態における製造方法は、例えば、仕込工程及び発酵工程を備える。甘味料含有量は、甘味料の添加量を制御することにより調整することができる。甘味料は、仕込工程で原料に添加してもよく、発酵工程を経て得られた発酵後液に添加してもよい。アルコール濃度は、発酵工程における発酵の程度を制御することにより調整することができる。また、蒸留アルコールを添加することにより、アルコール濃度を調整してもよい。蒸留アルコールとしては、焼酎、ブランデー、ウォッカ、ウイスキー、麦スピリッツ等の各種スピリッツ、原料用アルコール等が挙げられる。蒸留アルコールは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。蒸留アルコールを添加する場合、ビールテイスト飲料のアルコール度数は、3v/v%以下、2v/v%以下、1v/v%以下であってもよい。
【0040】
仕込工程では、原料及び仕込水(仕込工程で使用される水)を用いて、発酵前液を得る。つまり、仕込工程は、発酵に用いられる発酵前液を調製する工程である。仕込工程は、例えば、原料と水とを混合して原料を糖化して発酵前液を得るものであってよく、糖化後、更にろ過、煮沸、沈殿、冷却等を行って発酵前液を得るものであってもよく、必要に応じて、これらの液にホップの添加、煮沸、冷却等を行って発酵前液を得るものであってもよい。なお、原料とは、ビールテイスト飲料の製造に用いられる全原料のうち、水及びホップ以外のものを意味する。
【0041】
原料中の麦芽の比率は、例えば、66質量%以下であってよく、50質量%未満であってよく、25質量%未満であってもよい。原料中の麦芽の比率は、例えば、5質量%以上であってよく、10質量%以上であってよく、20質量%以上であってもよい。
【0042】
麦芽は、麦を発芽させることにより得ることができる。麦としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦等であってよく、大麦であることが好ましい。麦芽にはモルトエキスが含まれる。モルトエキスは、麦芽から糖分及び窒素分を含むエキス分を抽出することにより得られる。
【0043】
原料は、麦芽以外の麦原料を含んでいてもよい。麦芽以外の麦原料としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦及びエン麦等の麦、並びに麦エキス等の麦加工物が挙げられる。麦エキスは、麦から糖分及び窒素分を含む麦エキス分を抽出することにより得られる。麦芽以外の麦原料は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
原料は、上記以外の成分を含んでいてもよい。上記以外の成分は、例えば、トウモロコシ、米類、コウリャン等の穀類、馬鈴薯、サツマイモ等のイモ類、豆類等の植物原料であってよく、スターチ、グリッツ等の澱粉原料であってもよく、果実(果実を乾燥させたもの、若しくは煮つめたもの、又は濃縮させた果汁を含む)、又は香味料(コリアンダー等一定の香味料)であってもよい。
【0045】
仕込工程で添加するホップとしては、例えば、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスを用いることができる。ホップは、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。
【0046】
発酵工程では、仕込工程で調製された発酵前液を酵母により発酵させる。発酵工程では、酵母を添加してアルコール発酵が行われる。より具体的には、発酵前液に酵母を接種して発酵させ、酵母により生成するアルコールを含む発酵後液を得る。
【0047】
本実施形態に係る製造方法では、発酵工程後の発酵後工程として、発酵工程で得られた発酵後液に対して濾過、加熱(殺菌)、各種添加剤(例えば、着色料、酸化防止剤、酸味料、苦味料、香料)の添加、アルコールの添加、カーボネーション等を行ってもよい。発酵後工程で添加するアルコールとしては、例えば、スピリッツを用いることができる。
【0048】
他の実施形態における製造方法は、例えば、水、甘味料、及び蒸留アルコールと、必要に応じて各種添加剤(例えば、着色料、酸化防止剤、酸味料、苦味料、香料)とを原料タンクに配合する配合工程を含む。甘味料含有量及びアルコール濃度は、甘味料及び蒸留アルコールの添加量を制御することにより調整することができる。
【0049】
本実施形態に係る製造方法は、配合工程において各成分を混合して得た混合液をろ過するろ過工程と、ろ過工程でろ過したろ過液を殺菌する第一の殺菌工程と、第一の殺菌工程で殺菌した殺菌済みのろ過液をビン、缶、ビン、ペットボトル等の容器に充填する充填工程と、充填工程で容器に充填されたろ過液を容器ごと殺菌する第二の殺菌工程と、を更に含んでいてもよい。
【0050】
配合工程は、各成分がよく混ざるよう、撹拌機等により撹拌しながら混合してもよい。また、ろ過工程は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。第一の殺菌工程は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行ってもよく、同様の処理を行うことができるのであれば、これに限定されることなく適用可能である。充填工程は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填してもよい。第二の殺菌工程は、所定の温度及び所定の時間でろ過液を容器ごと加熱することにより行うことができる。第一の殺菌工程及び第二の殺菌工程を行わない無殺菌充填を行うことも可能である。また、発泡性の飲料とする場合は、例えば、第一の殺菌工程と充填工程の間でカーボネーションを行うとよい。
【0051】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、麦由来のまろやかさを維持しつつ、とげとげしい苦味を抑制できるという効果を奏する。したがって、本発明の一実施形態として、式(1)値が20,000以上150,000以下の範囲内となるように、ビールテイスト飲料中のアルコール濃度及び甘味料含有量を調整することを含む、ビールテイスト飲料のとげとげしい苦味を低減する方法が提供される。
【実施例
【0052】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
〔試験例1:ビールテイスト飲料の製造及び官能評価〕
ビールテイスト飲料(麦芽比率25%未満の発泡酒)を以下の方法により調製した。まず、原料(大麦及び麦芽)と水とを混合した後、常法により糖化して、糖化液を調製した。糖化液を濾過して得た仕込液を煮沸、冷却等を行って、発酵前液を得た。発酵前液を得る過程において、ホップを添加した。次いで、発酵前液にビール酵母を添加して発酵させ、発酵後液を得た。発酵後液を濾過し、次いで表1に示す割合となるように甘味料(アセスルファムカリウム)と香料(パッションフルーツフレーバー)を添加して、サンプル1-1~1-6のビールテイスト飲料(麦芽比率25%未満の発泡酒)を得た。サンプル1-1~1-6のビールテイスト飲料は、アルコール濃度が5.0v/v%であり、苦味価(BU)が15~17であった。
【0054】
苦味価は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.15 苦味価」に記載されている方法によって測定した。
【0055】
官能評価は、選抜された識別能力のある2名のパネルにより、「とげとげしい苦味」、「後引き」及び「麦由来のまろやかさ(飲用したときに得られるまろやかさ(ボリューム×味の厚み))」について、実施した。いずれの評価項目も5段階(ない:1点~あり:5点)で評価し、その平均値を評価スコアとした。評価スコアを表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
式(1):アルコール濃度(v/v%)×甘味料含有量(質量ppm)×甘味度で定義される値が20,000以上150,000以下の範囲内である、サンプル1-2~1-5のビールテイスト飲料は、麦由来のまろやかさを充分に感じられ、とげとげしい苦味が充分に抑制されていた。また、サンプル1-2~1-5のビールテイスト飲料は、後引きが充分に抑制されていた。
【0058】
〔試験例2:ビールテイスト飲料の製造及び官能評価〕
ビールテイスト飲料(麦芽比率25%未満の発泡酒)を以下の方法により調製した。まず、原料(大麦及び麦芽)と水とを混合した後、常法により糖化して、糖化液を調製した。糖化液を濾過して得た仕込液を煮沸、冷却等を行って、発酵前液を得た。発酵前液を得る過程において、ホップを添加した。次いで、発酵前液にビール酵母を添加して発酵させ、発酵後液を得た。発酵後液を濾過し、次いで表2に示す割合となるように甘味料(アセスルファムカリウム)と香料(レモン、ナツミカン、ジンジャエール、パインアップル、グレープフルーツ及びパッションフルーツの各フレーバー)を添加して、サンプル2-1~2-6のビールテイスト飲料(麦芽比率25%未満の発泡酒)を得た。サンプル2-1~2-6のビールテイスト飲料は、アルコール濃度が5.0v/v%であり、苦味価(BU)が15~17であった。
【0059】
官能評価は、訓練された2名のパネルにより、「とげとげしい苦味」、「後引き」、「麦由来のまろやかさ(飲用したときに得られるまろやかさ(ボリューム×味の厚み))」及び「素材感(各フレーバーに対応する素材を感じる度合い)」について、実施した。いずれの評価項目も5段階(ない:1点~あり:5点)で評価し、その平均値を評価スコアとした。評価スコアを表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
サンプル2-1~2-6のビールテイスト飲料は、添加したフレーバー(香料)の種類に依らず、麦由来のまろやかさを充分に感じられ、とげとげしい苦味が充分に抑制されていた。サンプル2-1~2-6のビールテイスト飲料は、いずれも後引きが充分に抑制されていた。また、サンプル2-1~2-6のビールテイスト飲料は、素材感が充分に感じられるものであった。
【0062】
〔試験例3:ビールテイスト飲料の製造及び官能評価〕
サンプル3-1~3-2のビールテイスト飲料(麦芽比率25%未満の発泡酒)を以下の方法により調製した。まず、原料(大麦及び麦芽)と水を混合した後、常法により糖化して、糖化液を調製した。糖化液を濾過して得た仕込液を煮沸した後、表3に示す割合となるように甘味料(アセスルファムカリウム)を混合した後、冷却等を行って、発酵前液を得た。発酵前液を得る過程において、ホップを添加した。次いで、発酵前液にビール酵母を添加して発酵させ、発酵後液を得た。発酵後液を濾過し、次いで表3に示す割合となるように香料(パッションフルーツフレーバー)を添加して、サンプル3-1~3-2のビールテイスト飲料(麦芽比率25%未満の発泡酒)を得た。サンプル3-1~3-2のビールテイスト飲料は、アルコール濃度が3.0v/v%であり、苦味価(BU)が15~17であった。
【0063】
サンプル3-3のビールテイスト飲料(麦芽比率25%未満の発泡酒)を以下の方法により調製した。まず、原料(大麦及び麦芽)と水とを混合した後、常法により糖化して、糖化液を調製した。糖化液を濾過して得た仕込液を煮沸、冷却等を行って、発酵前液を得た。発酵前液を得る過程において、ホップを添加した。次いで、発酵前液にビール酵母を添加して発酵させ、発酵後液を得た。発酵後液を濾過し、次いで表3に示す割合となるように甘味料(アセスルファムカリウム)と香料(パッションフルーツフレーバー)を添加して、サンプル3-3のビールテイスト飲料(麦芽比率25%未満の発泡酒)を得た。サンプル3-3のビールテイスト飲料は、アルコール濃度が5.0v/v%であり、苦味価(BU)が15~17であった。
【0064】
官能評価は、訓練された2名のパネルにより、「とげとげしい苦味」、「後引き」及び「麦由来のまろやかさ(飲用したときに得られるまろやかさ(ボリューム×味の厚み))」について、実施した。いずれの評価項目も5段階(ない:1点~あり:5点)で評価し、その平均値を評価スコアとした。評価スコアを表3に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
サンプル3-1~3-3のビールテイスト飲料は、アルコール濃度及び甘味料濃度に依らず、麦由来のまろやかさを充分に感じられ、とげとげしい苦味が充分に抑制されていた。また、サンプル3-1~3-3のビールテイスト飲料は、いずれも後引きが充分に抑制されていた。
【0067】
〔試験例4:ビールテイスト飲料の製造及び官能評価〕
ビールテイスト飲料(麦芽比率25%未満の発泡酒)を以下の方法により調製した。まず、原料(大麦及び麦芽)と水とを混合した後、常法により糖化して、糖化液を調製した。糖化液を濾過して得た仕込液を煮沸、冷却等を行って、発酵前液を得た。発酵前液を得る過程において、ホップを添加した。次いで、発酵前液にビール酵母を添加して発酵させ、発酵後液を得た。発酵後液を濾過し、次いで表4に示す割合となるように甘味料(アセスルファムカリウム及びスクラロース)と香料(パッションフルーツフレーバー)を添加して、サンプル4-1~4-2のビールテイスト飲料(麦芽比率25%未満の発泡酒)を得た。サンプル4-1~4-2のビールテイスト飲料は、アルコール濃度が5.0v/v%であり、苦味価(BU)が15~17であった。
【0068】
官能評価は、訓練された2名のパネルにより、「とげとげしい苦味」、「後引き」及び「麦由来のまろやかさ(飲用したときに得られるまろやかさ(ボリューム×味の厚み))」について、実施した。いずれの評価項目も5段階(ない:1点~あり:5点)で評価し、その平均値を評価スコアとした。評価スコアを表4に示す。
【0069】
【表4】
【0070】
サンプル4-1~4-2のビールテイスト飲料は、甘味料の種類に依らず、麦由来のまろやかさを充分に感じられ、とげとげしい苦味が充分に抑制されていた。また、サンプル4-1~4-2のビールテイスト飲料は、いずれも後引きが充分に抑制されていた。